(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-24
(45)【発行日】2025-05-07
(54)【発明の名称】藻場評価システム及び藻場評価方法
(51)【国際特許分類】
G01S 15/89 20060101AFI20250425BHJP
【FI】
G01S15/89 Z
(21)【出願番号】P 2025033876
(22)【出願日】2025-03-04
【審査請求日】2025-03-04
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】517302413
【氏名又は名称】株式会社AquaFusion
(74)【代理人】
【識別番号】100170025
【氏名又は名称】福島 一
(72)【発明者】
【氏名】松尾 行雄
【審査官】藤脇 昌也
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-24377(JP,A)
【文献】特開平8-271629(JP,A)
【文献】特開平7-49376(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2021/116554(US,A1)
【文献】欧州特許出願公開第3754374(EP,A1)
【文献】中国特許出願公開第115356768(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/52 - 7/64
15/00 - 15/96
A01G 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水面付近を走行する移動体の位置情報を取得する位置情報取得部と、
前記移動体の底面に設けられ、当該移動体の幅方向に配置された複数の超音波送受波器を用いて、前記水面から海底までの深度に対して超音波の強度の変化を示すエコー強度を、前記超音波送受波器毎に取得するエコー強度取得部と、
前記取得されたエコー強度から、前記海底の藻に対応する藻エコーを検知する藻エコー検知部と、
前記検知された藻エコーに基づいて、前記藻の高さを推定する高さ推定部と、
前記超音波送受波器毎のエコー強度から推定される藻の高さと、前記複数の超音波送受波器による前記移動体の幅方向の検知位置とに基づいて、前記移動体の位置情報において、前記移動体の幅方向に存在する藻の面積を算出する面積算出部と、
前記移動体の位置情報の取得から、当該移動体の位置情報における藻の面積の算出までを、前記移動体の走行航路で繰り返し、当該移動体の走行航路の各位置情報毎の藻の面積と、当該移動体の移動距離と、に基づいて、当該移動体の走行航路の各位置情報毎の間に存在する藻の体積を算出して、藻量を推定する藻量推定部と、
を備える藻場評価システム。
【請求項2】
前記高さ推定部は、前記藻の高さを推定するとともに、前記藻エコーの特徴量と、予め登録された藻エコーの特徴量と藻の密度とを関連付けた関連情報とに基づいて、前記藻の密度を推定し、
前記藻量推定部は、前記移動体の走行航路の各位置情報毎の藻の面積と、当該移動体の移動距離と、前記推定された藻の密度と、に基づいて、藻量を推定する
請求項1に記載の藻場評価システム。
【請求項3】
前記移動体の底面に設けられ、前記複数の超音波送受波器による前記移動体の幅方向の検知エリアを撮影可能な水中カメラを用いて、前記検知エリアに存在する藻を含む水中画像を取得する画像取得部と、
前記取得された画像に基づいて、前記藻を示す藻画像を検知する藻画像検知部と、
前記検知された藻画像に基づいて、前記検知エリアにおける藻の領域を推定する藻領域推定部と、
を備える
請求項1に記載の藻場評価システム。
【請求項4】
水面付近を走行する移動体の位置情報を取得する位置情報取得工程と、
前記移動体の底面に設けられ、当該移動体の幅方向に配置された複数の超音波送受波器を用いて、前記水面から海底までの深度に対して超音波の強度の変化を示すエコー強度を、前記超音波送受波器毎に取得するエコー強度取得工程と、
前記取得されたエコー強度から、前記海底の藻に対応する藻エコーを検知する藻エコー検知工程と、
前記検知された藻エコーに基づいて、前記藻の高さを推定する高さ推定工程と、
前記超音波送受波器毎のエコー強度から推定される藻の高さと、前記複数の超音波送受波器による前記移動体の幅方向の検知位置とに基づいて、前記移動体の位置情報において、前記移動体の幅方向に存在する藻の面積を算出する面積算出工程と、
前記移動体の位置情報の取得から、当該移動体の位置情報における藻の面積の算出までを、前記移動体の走行航路で繰り返し、当該移動体の走行航路の各位置情報毎の藻の面積と、当該移動体の移動距離と、に基づいて、当該移動体の走行航路の各位置情報毎の間に存在する藻の体積を算出して、藻量を推定する藻量推定工程と、
を備える藻場評価方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、藻場評価システム及び藻場評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、超音波送受波器を用いて、海中の藻場を測定したり、藻場を評価したりする技術が存在する。例えば、特開平6-281736号公報(特許文献1)には、送信回路と、送受波器と、増幅回路と、TVG回路と、検波回路と、前後縁検出回路と、藻抽出ゲート回路と、藻出力回路と、演算回路と、を備える超音波藻計測装置が開示されている。ここで、送信回路は、送信パルス信号を出力し、送受波器は、送信パルス信号を受けて海底に向けて超音波パルスを送波し海中からの反射波を受けて受信信号を出力する。増幅回路は、受信信号を増幅し、TVG回路は、増幅回路の出力信号に対し伝搬減衰の補正を行う。検波回路は、TVG回路の出力信号を包絡線検波し、前後縁検出回路は、検波回路が出力する各種信号の前縁と後縁をそれぞれ検出する。藻抽出ゲート回路は、検波回路が出力する各種信号から海底信号を検出し、その検出した海底信号の時間位置を基準に所定時間幅の藻抽出ゲート信号を形成出力する。藻出力回路は、前後縁検出回路が出力する前縁と後縁とを示す信号であって、藻抽出ゲート信号の時間幅内に存する前縁信号と後縁信号の各時間位置の間を通過時間幅とする藻出力用ゲート信号を形成し、その藻出力用ゲート信号により検波回路が出力する各種信号から藻信号を取り出す。演算回路は、藻出力回路が出力する藻信号の時間幅と振幅とにより藻の高さと量を算出する。これにより、藻信号を海底信号から分離し、藻の高さと量の自動計測を行えるとしている。
【0003】
又、特開平7-49375号公報(特許文献2)には、第1の手段と、第2の手段と、藻信号抽出手段と、演算手段と、を備える超音波計測装置が開示されている。第1の手段は、水中略垂直下方向へ超音波パルスを送受波し、受信した第1の反射信号を、TVGによって補正し、海底からの反射信号の前に出現する藻からの反射信号の伝播減衰量を補正する。第2の手段は、海底からの反射信号レベルと藻からの反射信号レベルとのレベル差を大きくするため水中斜め方向に所定の俯角で超音波パルスを送受波し、受信した第2の反射信号を所定のスレショールドレベルを設定することで、海底からの反射信号の時間的範囲を得る。藻信号抽出手段は、第1の手段で補正された第1の反射信号から第2の手段で得た海底からの反射信号の時間的範囲を利用して第1の反射信号から藻からの反射信号のみを抽出する。演算手段は、藻信号抽出手段によって抽出された藻からの反射信号の時間的な長さにより、測定する藻の高さを算出し、且つ、その反射信号レベルにより藻茂密度を算出する。これにより、海底に着底する藻の高さ及び密度を、例えば、船上などの遠隔から自動測定出来るとしている。又、特開平7-49376号公報(特許文献3)には、特許文献2に記載の技術と同様の技術が開示されている。
【0004】
又、特開平8-271629号公報(特許文献4)には、超音波を海・湖底に送受波して海・湖底に繁茂する藻の反射映像を出力する超音波藻計測装置が開示されている。反射信号レベルが、藻の茎の部分<藻の葉の部分<海・湖底、の順になり、且つ、反射信号レベルの一番弱い藻の茎の部分が中間に位置することに着目する。反射信号レベルのレベル差を拡大してから藻の葉の部分の反射信号レベルより下のレベルを0レベルに設定する。藻が繁茂した海・湖底からの反射映像に藻と海・湖底との間に0レベルの分離帯を形成して反射映像を出力する。これにより、従来は判別が容易でなかった藻と海・湖底との判別を、二層に分離して表示することで明確に判別出来、超音波による藻場の調査・計測が正確に行えるとしている。
【0005】
又、特開2013-252096号公報(特許文献5)には、藻場分布測定方法が開示されている。ここで、この方法は、測定対象水域の空撮カラー画像中の画素のg成分強度の優位性に基づいて第1の藻場候補領域を決定し、測定対象水域について行った音響水深探査の測定水深zの変化に基づいて第2の藻場候補領域を決定し、第1の藻場候補領域と第2の藻場候補領域とを対比して両者の一致した領域を藻場域と推定する。これにより、藻場域の分布を簡便且つ精確に測定出来るとしている。
【0006】
又、特開2019-024377号公報(特許文献6)には、藻場の種別分布の取得方法が開示されている。ここで、この方法は、藻場を含む調査対象水域においてソナー・システムにより位置情報と共に計測された測深値及び超音波の反射強度を、調査対象水域を複数に分割してなる各区画に位置的に対応させる。又、この方法は、各区画について、測深値の散らばりの代表値、反射強度の代表値、測深値から算出される区画の凸度を取得し、測深値の散らばりの代表値、反射強度の代表値、凸度の1つあるいは複数を用いて、統計的に区画毎に藻類種及び底質の判別を行う。又、この方法は、各区画の判別結果を統合して調査対象水域における藻場の種別分布を取得する。これにより、高い空間解像度で、広範囲の水域における藻場の種類とその分布、および生物量分布を取得出来るとしている。
【0007】
又、特開2024-071116号公報(特許文献7)には、カメラと、LiDAR(Light Detection And Ranging)と、移動体と、CO2吸収量評価装置と、を備えるCO2吸収量評価システムが開示されている。移動体は、カメラ及びLiDARを取り付けられ、水中を移動可能に構成される。CO2吸収量評価装置は、計測部と、算出部と、を備える。計測部は、カメラによって水中を撮影した画像から藻場における一株当たりの海藻の正面の面積を計測し、且つ、LiDARによって水中を走査した結果から一株当たりの海藻の奥行きを計測する。算出部は、計測部による計測結果に基づいて一株当たりの海藻の重量を算出するとともに、算出した一株当たりの海藻の重量と、藻場における海藻の株数と、に基づいて、藻場における海藻によるCO2吸収量を算出する。これにより、評価対象の藻場における海藻によるCO2吸収量を高精度に評価出来るとしている。
【0008】
又、特開2024-125623号公報(特許文献8)には、取得部と、モデリング部と、推定部と、を有するデータ処理装置が開示されている。取得部は、水中カメラによって水中の海藻類を海藻類の上方とは異なる方向から撮像することにより生成された撮像画像データを取得する。モデリング部は、撮像画像データを画像解析することによって海藻類の水深方向の長さと海藻類の幅とを含む形状をモデリングする。推定部は、モデリングした前記形状に基づいて海藻類の二酸化炭素吸収量を推定する。これにより、海藻類のCO2吸収量を求める際の精度を向上出来るとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開平6-281736号公報
【文献】特開平7-49375号公報
【文献】特開平7-49376号公報
【文献】特開平8-271629号公報
【文献】特開2013-252096号公報
【文献】特開2019-024377号公報
【文献】特開2024-071116号公報
【文献】特開2024-125623号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ここで、藻場における二酸化炭素の貯留量を正確に評価するためには、藻場に生息する藻の乾燥重量を用いることが好ましい。例えば、藻場の藻を取り出して、その藻を実際に乾燥して、乾燥重量を測定することで、この藻の乾燥重量を算出することが出来る。しかしながら、このような方法は、時間や手間が掛かるため、現実的ではない。
【0011】
一方、超音波送受波器を用いて、藻場における藻の面積や体積を算出することが出来れば、その藻の乾燥重量を概算で推定することが出来るであろう。
【0012】
ここで、特許文献1-4に記載の技術は、超音波を用いて、藻からの反射信号の時間的長さと反射強度から、藻の高さと密度を算出しているが、使用される超音波が、狭帯域であり、送信信号長が長いため、海底エコーと藻エコーが重なる可能性があり、子の技術では、適切に藻の面積や体積を算出することが出来ないという課題がある。又、特許文献5に記載の技術は、空撮カメラを用いて、藻場の分布を検出しているが、空撮カメラでは、藻の体積や密度を測定することが出来ないという課題がある。又、特許文献6に記載の技術は、ナロー・マルチビーム・ソナーを用いて、測深値と超音波の反射強度を測定し、藻の種類や底質の判別を行なっているが、ナロー・マルチビーム・ソナーは、高価であり、手軽に実施することが出来ないという課題がある。更に、特許文献7に記載の技術は、カメラとLiDARを用いて、藻の面積と高さと株数を測定しているが、水中では、光の減衰が強いため、藻場の状況に応じて、測定が困難な場合があるという課題がある。そして、特許文献8に記載の技術は、水中カメラを用いて、藻の高さと幅を測定しているが、水中カメラだけでは、藻の面積や体積を測定することが出来ないという課題がある。
【0013】
そこで、本発明は、前記課題を解決するためになされたものであり、一般の魚群探知に用いられる安価な超音波送信波器を用いて、水中の藻場を手軽に評価することが可能な藻場評価システム及び藻場評価方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係る藻場評価システムは、位置情報取得部と、エコー強度取得部と、藻エコー検知部と、高さ推定部と、面積算出部と、藻量推定部と、を備える。ここで、位置情報取得部は、水面付近を走行する移動体の位置情報を取得する。エコー強度取得部は、前記移動体の底面に設けられ、当該移動体の幅方向に配置された複数の超音波送受波器を用いて、前記水面から海底までの深度に対して超音波の強度の変化を示すエコー強度を、前記超音波送受波器毎に取得する。藻エコー検知部は、前記取得されたエコー強度から、前記海底の藻に対応する藻エコーを検知する。高さ推定部は、前記検知された藻エコーに基づいて、前記藻の高さを推定する。面積算出部は、前記超音波送受波器毎のエコー強度から推定される藻の高さと、前記複数の超音波送受波器による前記移動体の幅方向の検知位置とに基づいて、前記移動体の位置情報において、前記移動体の幅方向に存在する藻の面積を算出する。藻量推定部は、前記移動体の位置情報の取得から、当該移動体の位置情報における藻の面積の算出までを、前記移動体の走行航路で繰り返し、当該移動体の走行航路の各位置情報毎の藻の面積と、当該移動体の移動距離と、に基づいて、当該移動体の走行航路の各位置情報毎の間に存在する藻の体積を算出して、藻量を推定する。
【0015】
本発明に係る藻場評価方法は、位置情報取得工程と、エコー強度取得工程と、藻エコー検知工程と、高さ推定工程と、面積算出工程と、藻量推定工程と、を備える。本発明に係る藻場評価方法の各工程は、本発明に係る藻場評価システムの各部に対応する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、一般の魚群探知に用いられる安価な超音波送信波器を用いて、水中の藻場を手軽に評価することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施形態に係る藻場評価システムの一例を示す概略図(
図1A)と、移動体の走行航路の一例を示す図(
図1B)と、である。
【
図2】本発明の実施形態に係る藻場評価システムの一例を示す機能ブロック図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る藻場評価方法の一例を示すフローチャートである。
【
図4】本発明の実施形態に係る藻場評価システムにおいて、移動体が走行する場合の一例を示す図(
図4A)と、複数の超音波送受波器が超音波を海中に送波する場合の一例を示す図(
図4B)と、である。
【
図5】本発明の実施形態に係る藻場評価システムにおいて、第一の位置情報と第二の位置情報におけるエコー強度の一例を示す図(
図5A)と、縦軸を深度とし、横軸を計測時間とするエコー強度の一例を示す図(
図5B)と、である。
【
図6】本発明の実施形態に係る藻場評価システムにおいて、エコー強度から藻エコーを検知する場合の一例を示す図である。
【
図7】本発明の実施形態に係る藻場評価システムにおいて、藻エコーから藻の高さを推定する場合の一例を示す図(
図7A)と、藻エコーからエコー積分値を算出する場合の一例を示す図(
図7B)と、藻エコーの特徴量がエコー積分値の場合の第一の関連情報と、藻エコーの特徴量が藻の高さの場合の第二の関連情報との一例を示す図(
図7C)と、である。
【
図8】本発明の実施形態に係る藻場評価システムにおいて、第一の角度と第二の角度で傾斜した藻の高さを上下方向に換算した場合の一例を示す図(
図8A)と、第一の角度と第二の角度で傾斜した海底の深さを超音波送受波器の検知位置に換算して、藻の面積を算出する場合の一例を示す図(
図8B)と、である。
【
図9】本発明の実施形態に係る藻場評価システムにおいて、第一の位置情報と第二の位置情報との間の藻の体積を算出する場合の一例を示す図(
図9A)と、第一の位置情報と第二の位置情報との間の藻の体積と藻の密度とを用いて藻量を算出する場合の一例を示す図(
図9B)と、である。
【
図10】本発明の実施形態に係る藻場評価システムにおいて、第一の位置情報と第二の位置情報との間で藻場を生成する場合の一例を示す図(
図10A)と、走行航路の各位置情報毎の間で藻場を生成する場合の一例を示す図(
図10B)と、である。
【
図11】本発明の実施形態に係る藻場評価システムにおいて、航行調査からエコー強度の解析、藻量の推定、二酸化炭素の貯留量の推定までの手順の一例を示す図である。
【
図12】本発明の実施形態に係る藻場評価システムにおいて、水中カメラによって水中画像を撮影して、藻の領域を推定する場合の一例を示す図(
図12A)と、藻の領域を推定しない場合の藻場の生成と、藻の領域を推定した場合の藻場の生成の一例を示す図(
図12B)と、である。
【
図13】本発明の実施形態に係る藻場評価システムにおいて、航行調査からエコー強度の解析、藻量の推定、二酸化炭素の貯留量の推定と、水中カメラによる水中画像の撮影、藻の領域の推定までの手順の一例を示す図である。
【
図14】水槽中にホンダワラを配置した場合の一例を示す図(
図14A)と、ホンダワラの本数を増減させた場合の水槽中のエコー強度の一例を示す図(
図14B)と、エコー積分値と藻の密度との関係を示す第一の関連情報と、藻の高さと藻の密度との関係を示す第二の関連情報との一例を示す図(
図14C)と、である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、添付図面を参照して、本発明に係る実施形態について説明し、本発明の理解に供する。尚、以下の実施形態は、本発明を具体化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定する性格のものではない。
【0019】
本発明の実施形態に係る藻場評価システム1は、
図1Aに示すように、移動体10と、GPSアンテナ20と、複数の超音波送受波器30と、水中カメラ40と、制御部50と、通信用アンテナ60と、を備える。
【0020】
ここで、移動体10は、ユーザ(測定者、管理者等)の指示に従って、海Oの上を走行可能である。ここで、移動体10に特に限定は無いが、例えば、船舶や水上ドローンや水中ドローン等を挙げることが出来る。
【0021】
又、GPSアンテナ20は、移動体10に取り付けられ、GPS衛星から移動体10の位置情報を取得する。位置情報は、地理的座標系における位置情報であり、例えば、経度や緯度等を挙げることが出来る。
【0022】
又、複数の超音波送受波器30は、移動体10の底面に設けられ、移動体10の幅方向に配置される。ここで、例えば、超音波送受波器30は、超音波を送波する送波素子(超音波振動子)と、その反射波を受波する受波素子(超音波振動子)を備えている。又、超音波送受波器30は、海Oの中に超音波を送波し、藻70や海底80からのエコーを受波する。
【0023】
ここで、複数の超音波送受波器30の配置形態に特に限定は無いが、例えば、移動体10の幅方向の寸法の中央付近から下方に向かって扇状に配置する形態や移動体10の幅方向に沿って配置する形態等を挙げることが出来る。複数の超音波送受波器30が超音波を送受波するエリアは、移動体10の幅方向に沿って広がり、所定の検知エリアDを構成している。
【0024】
ここで、超音波送受波器30は、例えば、
図1Aに示すように、5個配置されており、5個の超音波送受波器30は、移動体10の幅方向に沿って均等に扇状に配置されている。又、各超音波送受波器30は、例えば、移動体10の底面で、上方から下方に向けて超音波を送波し、下方から上方に向かって反射した超音波を受波する。複数の超音波送受波器30は、ch(チャンネル)などの識別情報が設定される。
【0025】
又、超音波は、例えば、指向角が5度の円錐状に拡がる円錐ビームを使用することが出来る。ここで、円錐形は、超音波送受波器30の振動子の形状が円形の場合であり、振動子の形状が四角の場合は、四角錐となる。更に、超音波は、ファンビームを使用してもよい。超音波の周波数は、例えば、240kHzや480kHzを使用することが出来る。
【0026】
又、水中カメラ40は、移動体10の底面に設けられる。ここで、水中カメラ40は、耐水性カメラであり、具体的には、防水性を有する密封容器に、撮影素子等を収納した水中撮影用のカメラである。又、水中カメラ40は、複数の超音波送受波器30による移動体10の幅方向の検知エリアDを撮影可能であり、水中カメラ40の撮影エリアは、例えば、
図1Aに示すように、検知エリアDに含まれる撮影エリアCを構成している。又、水中カメラ40の配置形態に特に限定は無いが、例えば、移動体10における複数の超音波送受波器30のうち、中央に配置された特定の超音波送受波器30の前後付近や左右付近に配置する形態等を挙げることが出来る。
【0027】
又、制御部50は、藻場評価システム1を構成する各部を制御し、藻場評価システム1の動作に係る処理を実行する。ここで、制御部50の構成に特に限定は無いが、例えば、制御部50は、CPUや専用回路等で構成される。又、制御部50は、図示しないCPU、ROM、RAM等を内蔵しており、CPUは、例えば、RAMを作業領域として利用し、ROM等に記憶されているプログラムを実行する。又、後述する各部についても、CPUがプログラムを実行することで、当該各部の機能を実現する。
【0028】
又、通信用アンテナ60は、移動体10に取り付けられ、船舶や司令塔等の外部と無線通信を行う。ここで、通信用アンテナ60は、例えば、移動体10において、外部からの指示や命令を受け取り、制御部50に反映させることが出来る。又、移動体10に乗り込んだユーザが、制御部50を用いて、指示や命令を、通信用アンテナ60を介して外部へ送信することが出来る。ここで、通信用アンテナ60の通信規格として、特に限定は無いが、例えば、3G、4G、5G、3GPP(登録商標:3rd Generation Partnership Project)、5GPP(5th Generation Partnership Project)、LTE(Long Term Evolution)、WIMAX(World Interoperability for Microwave Access)、Wi-Fi、インターネット(Internet)、LAN(Local Area Network)、Wireless LAN、WAN(Wide Area Network)等を挙げることが出来る。
【0029】
さて、移動体10は、
図1Bに示すように、浜辺B(陸地)にある浅瀬の海Oを走行して、海Oの中の藻量を推定する。ここで、ユーザが、藻量の推定をする浜辺Bの地図を用いて、海Oに所定の航路A(経路)を設定する。この航路Aは、移動体10に搭載された複数の超音波送受波器30が海Oの藻をくまなく検知することが出来るように、例えば、複数の超音波送受波器30の検知エリアDを考慮して、ユーザにより、蛇腹状に設定される。つまり、航路Aは、各位置毎の検知エリアDが重複しないように設定されると好ましい。又、移動体10は、ユーザの操作又は外部からの操作により、航路Aを走行する。例えば、移動体10が船舶の場合、ユーザは船舶に乗船し、船舶を操縦することで、船舶が航路Aを走行する。又、例えば、移動体10が、水上ドローンや水中ドローンの場合、ユーザは、GPS等の位置情報に基づく航路Aを予め作成しておき、移動体10が、作成された航路Aに基づいて、自動で走行することが出来る。又、水上ドローンや水中ドローンは、通信用アンテナ60を用いて、陸地にいるユーザと無線通信することで、ユーザの操作に基づいて走行することも可能である。
【0030】
次に、
図2-
図13を参照しながら、本発明の実施形態に係る構成及び実行手順について説明する。先ず、ユーザは、移動体10に乗り込み、移動体10を操縦して、例えば、
図4Aに示すように、海Oの上の航路Aの測定開始点ASに移動する。この航路Aは、上述のように、ユーザにより予め設定されている。
【0031】
次に、ユーザは、移動体10に搭載された藻場評価システム1を起動する(
図3:S101)。ここで、藻場評価システム1の起動方法に特に限定は無いが、例えば、ユーザが、藻場評価システム1の処理に必要な各部(複数の超音波送受波器30や水中カメラ40、制御部50)の電源を投入して、各部の電力供給が開始される。
【0032】
さて、藻場評価システム1が起動すると、複数の超音波送受波器30による超音波の送受波が可能となるため、次に、ユーザが、藻場評価システム1の制御部50にスタートキーを入力すると、制御部50が処理を開始し、制御部50の位置情報取得部101は、移動体10の位置情報を取得する(
図3:S102)。
【0033】
ここで、位置情報取得部101の取得方法に特に限定は無いが、例えば、位置情報取得部101は、GPSアンテナ20を用いて、移動体10の現時点の位置情報P1(例えば、第一の位置情報)(x1,y1)を取得する。ここで、取得される位置情報P1は、例えば、地理座標系における2次元座標値で表現される。又、位置情報取得部101は、位置情報P1の取得とともに、所定のタイマー(例えば、時計回路)を用いて、位置情報P1が取得された現時点の時刻t1(例えば、第一の時刻)を取得しても構わない。
【0034】
さて、位置情報取得部101が位置情報P1を取得すると、次に、制御部50のエコー強度取得部102が、複数の超音波送受波器30を用いて、水面から海底までの深度に対して超音波(エコー)の強度の変化を示すエコー強度を、超音波送受波器30毎に取得する(
図3:S103)。
【0035】
ここで、エコー強度取得部102の取得方法に特に限定は無いが、例えば、
図4Bに示すように、エコー強度取得部102は、各超音波送受波器30毎に、海中に向けて、一斉に超音波Sを送波する。そして、送波された超音波Sは、海Oの中に存在する魚Fや藻70、海底80等に入射して、反射される。更に、エコー強度取得部102は、複数の超音波送受波器30を用いて、反射された超音波Sを受波し、その超音波Sの反射強度をエコー強度として取得する。
【0036】
ここで、例えば、
図4Bに示すように、5つの超音波送受波器30は、移動体10の右から左に向かって1chから5chと設定されている場合は、エコー強度取得部102は、1chのエコー強度、2chのエコー強度、3chのエコー強度、4chのエコー強度、5chのエコー強度のように、ch毎にエコー強度を取得する。又、5つの超音波送受波器30は、移動体10の幅方向の寸法の中央付近から下方に向かって扇状に配置されていることから、中央の超音波送受波器30(3ch)は、上方から下方に向かって垂直に超音波Sを送波し、右から2つ目と4つ目の超音波送受波器30(2ch、4ch)は、上方から下方に向かって第一の角度θ1で傾斜して超音波Sを送波し、右から1つ目と5つ目の超音波送受波器30(1ch、5ch)は、上方から下方に向かって第二の角度θ2で傾斜して超音波Sを送波する。そして、第一の角度θ1と第二の角度θ2は、藻70の面積を算出する際に使用される。
【0037】
尚、上述では、エコー強度取得部102が、各超音波送受波器30の超音波Sを一斉に発信したが、これに限らず、例えば、エコー強度取得部102が、各超音波送受波器30の超音波Sを所定の順番に一つずつ発信しても構わない。
【0038】
さて、エコー強度取得部102がエコー強度を取得すると、例えば、このエコー強度は、
図5Aに示すように、特定の超音波送受波器30(例えば、1ch)において、第一の位置情報P1(x1,y1)と第一の時刻t1に対して、縦軸をエコー強度(10^4)とし、横軸を深度(m)としたエコー強度のグラフとして表現される。
【0039】
そして、例えば、移動体10が更に走行し、位置情報取得部101は、次の時点での位置情報P2(例えば、第二の位置情報)を取得し(
図3:S102)、エコー強度取得部102が、特定の超音波送受波器30(1ch)を用いて、エコー強度を取得すると(
図3:S103)、このエコー強度は、
図5Aに示すように、特定の超音波送受波器30(1ch)において、第二の位置情報P2(x2,y2)と第二の時刻t2に対するエコー強度のグラフとなる。
【0040】
このように、特定の超音波送受波器30(1ch)において、移動体10の位置情報毎にエコー強度が順次取得されると、
図5Bに示すように、縦軸を深度(m)とし、横軸を特定の時刻(計測時間)(又は、特定の位置情報)とした時刻毎のエコー強度を得ることが出来る。この時刻毎のエコー強度は、超音波送受波器30毎に取得することが可能であり、この時刻毎のエコー強度を解析・分析することで、例えば、藻のエコー(藻エコー)を検知することが出来る。
【0041】
さて、エコー強度取得部102がエコー強度を取得すると、次に、制御部50の藻エコー検知部103は、取得されたエコー強度から、海底80の藻70に対応する藻70のエコーを検知する(
図3:S104)。
【0042】
ここで、藻エコー検知部103の検知方法に特に限定は無いが、
図6に示すように、例えば、特定の超音波送受波器30(1ch)において、第一の位置情報P1(x1,y1)と第一の時刻t1に対するエコー強度では、浅い深度において、鋭く尖ったピークP1が存在し、深い深度において、複数のピークと合体して全体としてなだらかなピークP2が存在している。
【0043】
ここで、例えば、浅い深度において、尖ったピークP1は、特定の超音波送受波器30に接近した対象物からの超音波に対応し、通常、魚のピークと想定することが出来る。一方、深い深度において、なだらかなピークP2は、特定の超音波送受波器30から離れた対象物からの超音波に対応して、例えば、海底80から茂った藻70のピークと想定することが出来る。そこで、藻エコー検知部103は、特定の深度に対応する所定の閾値zdよりも深い深度範囲に存在するピークP2を藻エコーとして検知する。ここで、所定の閾値zdは、例えば、海底80から藻70が茂っていると推定される深度に設定されると好ましい。
【0044】
又、上述では、藻エコー検知部103が、所定の深度範囲に存在するピークP2を藻エコーとして検知したが、これに限らず、例えば、魚のピークは、尖った鋭いピークであり、藻のピークは、なだらかなピークであるため、例えば、藻エコー検知部103が、エコー強度に存在するピークの形状に基づいて、なだらかなピークを藻エコーとして検知しても構わない。ここで、藻エコー検知部103がピークの形状を特定する方法として、例えば、ピークの集中度を算出する方法を挙げることが出来る。このピークの集中度とは、特定の深度におけるピークのエコー強度を分子とし、特定の深度から所定の距離(m)だけ前後に離れたピークのエコー強度の合計値を分母として定義される。ここで、ピークの集中度が、距離(m)が0に対して尖って算出される場合は、ピークが尖っていることを意味し、魚のピークと検知することが出来る。又、ピークの集中度が、距離(m)が0に対してなだらかに算出される場合は、ピークがなだらかであることを意味し、藻エコーと検知することが出来る。このように、エコー強度から、藻70に起因する藻エコーだけを検知することは可能である。
【0045】
さて、藻エコー検知部103が藻のエコーを検知すると、次に、制御部50の高さ推定部104は、検知された藻エコーに基づいて、藻70の高さh(m)を推定する(
図3:S105)。
【0046】
ここで、高さ推定部104の推定方法に特に限定は無いが、例えば、
図7Aに示すように、高さ推定部104は、検知された藻エコーのピークP2について、開始深度zs(m)と、終了深度ze(m)とを算出し、算出した終了深度ze(m)から、算出した開始深度zs(m)を減算した減算値を藻の高さh1(m)として推定する。これにより、藻の高さh1(m)を容易に推定することが出来る。
【0047】
ここで、高さ推定部104は、藻エコーを利用して、藻70の高さh(m)と、藻70の密度d(g/m3)とを推定しても構わない。具体的には、高さ推定部104は、藻エコーに基づいて、藻70の高さh(m)を推定するとともに、藻エコーの特徴量αを算出し、予め登録された藻エコーの特徴量αと藻の密度d(g/m3)とを関連付けた関連情報を用いて、藻の密度d(g/m3)を推定する。
【0048】
例えば、
図7Bに示すように、高さ推定部104は、先ず、検知された藻エコーのピークP2から、藻70の高さh1(m)を推定する。次に、高さ推定部104は、藻エコーのピークP2について、藻エコーの強度を深度に対して積分したエコー積分値I1を特徴量αとして算出する。そして、高さ推定部104は、所定のメモリに予め記憶された第一の関連情報700を参照する。
【0049】
ここで、第一の関連情報700には、エコー積分値Iと、藻の密度d(g/m3)とが関連付けて記憶されており、
図7Cに示すように、第一の関連情報700は、縦軸をエコー積分値Iとし、横軸を藻の密度d(g/m3)としたグラフとして表現される。これは、エコー積分値Iと藻70の密度d(g/m3)とに一定の相関関係があることを意味する。
【0050】
そこで、高さ推定部104は、藻エコーの特徴量αに対応するエコー積分値I1と、第一の関連情報700のエコー積分値Iとを照合して、照合した第一の関連情報700のエコー積分値Iに対応する藻の密度d1(g/m3)を特定し、特定した藻70の密度d1(g/m3)を推定する。これにより、エコー積分値Iから藻70の密度d1(g/m3)を容易に推定することが出来る。ここで、藻70の高さh(m)と、藻70の密度d(g/m3)とを推定することで、藻70の面積や体積から藻量をより具体的に算出することが出来るようになる。
【0051】
ところで、上述では、藻エコーの特徴量αとしてエコー積分値Iを用いて、藻の密度d1(g/m3)を推定したが、これに限らず、例えば、藻の高さh1(m)を藻エコーの特徴量αとして、藻の密度d(g/m3)を推定しても良い。
【0052】
例えば、高さ推定部104は、上述と同様に、検知された藻エコーのピークP2について、藻の高さh1(m)を推定する。次に、高さ推定部104は、藻の高さh1(m)を利用し、所定のメモリに予め記憶された第二の関連情報701を参照する。
【0053】
ここで、第二の関連情報701には、藻の高さh(m)と、藻の密度d(g/m3)とが関連付けて記憶されており、
図7Cに示すように、第二の関連情報701は、縦軸を藻の高さh(m)とし、横軸を藻の密度d(g/m3)としたグラフとして表現される。これは、藻の高さh(m)と藻の密度d(g/m3)とに一定の相関関係があることを意味する。
【0054】
そこで、高さ推定部104は、推定した藻の高さh1(m)と、第二の関連情報701の藻の高さh(m)とを照合して、照合した第二の関連情報701の藻の高さh(m)に対応する藻の密度d2(g/m3)を特定し、特定した藻の密度d2(g/m3)を推定する。これにより、藻の高さh(m)から藻の密度d2(g/m3)を容易に推定することが出来る。この場合は、エコー積分値Iのように、所定の算出処理が不要であるため、より簡単に藻の密度d2(g/m3)を推定することが出来るであろう。
【0055】
さて、高さ推定部104が推定を完了すると、制御部50の面積算出部105は、超音波送受波器30毎のエコー強度から推定される藻の高さh(m)と、複数の超音波送受波器30による移動体の幅方向の検知位置Dとに基づいて、移動体10の位置情報P1(x1、y1)において、移動体10の幅方向に存在する藻70の面積s(m2)を算出する(
図3:S106)。
【0056】
ここで、面積算出部105の算出方法に特に限定は無い。例えば、
図8Aに示すように、中央の超音波送受波器30(3ch)の直下に存在する藻70の高さh(m)は、中央の超音波送受波器30(3ch)の藻エコーから推定された藻の高さh(m)に対応する。ここで、右から2つ目と4つ目の超音波送受波器30(2ch、4ch)の藻エコーから推定された藻の高さha(m)は、上方から下方に向かって第一の角度θ1で傾斜した藻の高さha(m)に対応し、右から1つ目と5つ目の超音波送受波器30(1ch、5ch)の藻エコーから推定された藻の高さhb(m)は、上方から下方に向かって第二の角度θ2で傾斜した藻の高さhb(m)に対応する。
【0057】
そこで、面積算出部105は、三角関数を用いて、第一の角度θ1で傾斜した藻の高さha(m)にcosθ1を乗算した乗算値を、2つ目と4つ目の超音波送受波器30(2ch、4ch)の藻の高さhc(m)として換算する。又、面積算出部105は、三角関数を用いて、第二の角度θ2で傾斜した藻の高さhb(m)にcosθ2を乗算した乗算値を、1つ目と5つ目の超音波送受波器30(1ch、5ch)の藻の高さhd(m)として換算する。
【0058】
又、
図8Bに示すように、中央の超音波送受波器30(3ch)の海底80の深さL1(m)は、中央の超音波送受波器30(3ch)の藻エコーの終了深度ze(m)から算出される。ここで、右から2つ目と4つ目の超音波送受波器30(2ch、4ch)の海底80の深さLa(m)は、上方から下方に向かって第一の角度θ1で傾斜した藻エコーの終了深度ze(m)から算出され、右から1つ目と5つ目の超音波送受波器30(1ch、5ch)の海底80の深さLb(m)は、上方から下方に向かって第二の角度θ2で傾斜した藻エコーの終了深度ze(m)から算出される。
【0059】
そして、面積算出部105は、三角関数を用いて、第一の角度θ1で傾斜した海底80の深さLa(m)にsinθ1を乗算した乗算値を、2つ目と4つ目の超音波送受波器30(2ch、4ch)の位置から移動体10の幅方向に移動した、2つ目と4つ目の超音波送受波器30(2ch、4ch)の検知位置Dc(m)として換算する。又、面積算出部105は、三角関数を用いて、第二の角度θ2で傾斜した海底80の深さLb(m)にsinθ2を乗算した乗算値を、1つ目と5つ目の超音波送受波器30(1ch、5ch)の位置から移動体10の幅方向に移動した、1つ目と5つ目の超音波送受波器30(1ch、5ch)の検知位置Dd(m)として換算する。
【0060】
ここで、2つ目と4つ目の超音波送受波器30(2ch、4ch)の検知位置Dc(m)と、1つ目と5つ目の超音波送受波器30(1ch、5ch)の検知位置Dd(m)とは、中央の超音波送受波器30(3ch)の位置から移動体10の幅方向に移動した検知位置と概算することが可能である。
【0061】
そのため、面積算出部105は、1つ目から5つ目までの超音波送受波器30(1ch~5ch)の藻の高さh1(m)、hc(m)、hd(m)を、台形の上辺と下辺とみなし、1つ目から5つ目までの超音波送受波器30(1ch~5ch)の検知位置Dc(m)、Dd(m)の間隔を、台形の高さとみなして、(hd+hc)*(Dd-Dc)/2+(hc+h1)*Dc/2+(hd+hc)*(Dd-Dc)/2+(hc+h1)*Dc/2を、藻70の面積s(m2)として算出することが出来る。
【0062】
尚、上述では、三角関数を用いて、第一の角度θ1や第二の角度θ2で傾斜した藻70の高さや海底の深さを、所望の藻70の高さや検知位置に換算したが、これに限らず、例えば、所定の補完方法を用いて換算しても構わない。
【0063】
又、複数の超音波送受波器30が、移動体10に対して扇状に配置されている場合について説明したが、これに限らず、複数の超音波送受波器30が、移動体10の幅方向に沿って配置されている場合であっても、各超音波送受波器30における藻70の高さと検知位置とを算出することで、藻70の面積s(m2)を算出することが出来る。つまり、各超音波送受波器30の位置関係や藻70の高さから、藻70の面積s(m2)を算出すれば良い。
【0064】
さて、面積算出部105が算出を完了すると、次に、制御部50の藻量推定部106は、移動体10の走行が完了したか否かを判定する(
図3:S107)。ここで、未だ、走行航路Aの第一の位置情報P1(x1,y1)であるため、藻量推定部106は、移動体10の走行が完了していないと判定する(
図3:S107NO)。すると、藻量推定部106は、S102に戻って、移動体10の位置情報Pの取得(
図3:S102)から、移動体10の位置情報Pにおける藻70の面積sの算出(
図3:S106)までを、移動体10の走行航路Aで繰り返す(
図3:S107)。
【0065】
一方、移動体10が、ユーザの操縦により、走行航路Aの測定完了点AEまで移動した際に、面積算出部105が算出を完了して、藻量推定部106が、移動体10の走行が完了したか否かを判定する(
図3:S107)。
【0066】
ここでは、移動体10が、既に走行航路Aの測定完了点AEまで移動したことから、藻量推定部106は、移動体10の走行が完了したと判定する(
図3:S107YES)。これにより、走行航路Aでの藻70の面積sの算出が完了する。尚、移動体10の走行の完了について、これに限らず、例えば、ユーザが、移動体10の走行が完了したとか、藻場の評価を辞めたいとか思った際に、制御部50にエンドキーを入力すると、藻量推定部106は、エンドキーの入力を受けて、移動体10の走行が完了したと判定しても良い(
図3:S107YES)。
【0067】
すると、藻量推定部106は、当該移動体10の走行航路Aの各位置情報P毎の藻70の面積s(m2)と、当該移動体10の移動距離p(m)と、に基づいて、当該移動体10の走行航路Aの各位置情報P毎の間に存在する藻70の体積v(m3)を算出して、藻量m(g)を推定する(
図3:S108)。
【0068】
ここで、藻量推定部106の推定方法に特に限定は無いが、例えば、藻70の高さh(m)が推定されている場合は、下記のようになる。即ち、
図9Aに示すように、第一の位置情報P1(x1、y1)において、藻70の第一の面積s1(m2)が算出され、第二の位置情報P2(x2、y2)において、藻70の第二の面積s2(m2)が算出されている。
【0069】
そこで、先ず、藻量推定部106が、第二の位置情報P2(x2、y2)と第一の位置情報P1(x1、y1)との間の距離p(m)を、第一の位置情報P1(x1、y1)から第二の位置情報P2(x2、y2)までの移動距離として算出する。次に、藻量推定部106は、算出した移動距離p(m)と、藻70の第一の面積s1(m2)と、藻70の第二の面積s2(m2)とをそれぞれ乗算した乗算値を、第一の位置情報P1(x1、y1)から第二の位置情報P2(x2、y2)までに存在する藻70の体積v1(m3)として算出する。
【0070】
そして、藻量推定部106は、所定のメモリに予め登録された一般的な藻の密度d(g/m3)を利用して、算出した藻70の体積v1(m3)に藻70の密度(g/m3)を乗算した乗算値を、第一の位置情報P1(x1、y1)から第二の位置情報P2(x2、y2)までに存在する藻量m1(g)として算出する。これにより、所定の走行航路Aにおける藻量(g)を容易に推定することが出来る。
【0071】
尚、藻量推定部106は、上述の処理を、走行航路Aの各位置情報P毎に繰り返すことで、各位置情報P毎の間隔に存在する藻70の体積v(m3)を算出し、藻70の体積v(m3)と藻70の密度d(g/m3)を利用して、藻量m(g)を推定することで、走行航路Aにおける藻量m(g)を容易に推定することが出来るのである。
【0072】
特に、本発明では、ナロー・マルチビーム・ソナー等の高価な超音波送受波器を用いることなく、一般の魚群探知に用いられる安価な超音波送信波器を用いて、関連情報を活用し、エコー強度を適切に解析することで、水中の藻場を手軽に評価することが出来る。
【0073】
ここで、上述では、一般的な藻の密度d(g/m3)を利用して、藻量(g)を推定したが、これに限らず、藻エコーを利用して、藻70の高さh(m)と、藻70の密度d(g/m3)とが推定された場合、より具体的な藻量(g)を推定することが出来る。
【0074】
具体的には、
図9Bに示すように、第一の位置情報P1(x1、y1)において、藻70の第一の面積s1(m2)が算出され、1つ目から5つ目までの超音波送受波器30(1ch~5ch)の藻70の密度d11(g/m3)~d15(g/m3)が推定され、第二の位置情報P2(x2、y2)において、藻70の第二の面積s2(m2)が算出され、1つ目から5つ目までの超音波送受波器30(1ch~5ch)の藻70の密度d21(g/m3)~d25(g/m3)が推定されている。
【0075】
つまり、各超音波送受波器30毎に、それぞれ異なる藻70の密度d(g/m3)が推定されているのである。
図9Bでは、藻70の密度d(g/m3)が大きい程、藻70の色が濃くなるように表示されている。場所によって藻70の茂具合が異なるため、より現実的に藻量を求めることが出来るであろう。
【0076】
そこで、先ず、藻量推定部106が、第一の位置情報P1(x1、y1)から第二の位置情報P2(x2、y2)までの移動距離を算出し、算出した移動距離p(m)と、藻70の第一の面積s1(m2)と、藻70の第二の面積s2(m2)とをそれぞれ乗算した乗算値を、第一の位置情報P1(x1、y1)から第二の位置情報P2(x2、y2)までに存在する藻70の体積v1(m3)として算出する。
【0077】
そして、藻量推定部106は、第一の位置情報P1(x1、y1)における1つ目から5つ目までの藻70の密度d11(g/m3)~d15(g/m3)と、第二の位置情報P2(x2、y2)における1つ目から5つ目までの藻70の密度d21(g/m3)~d25(g/m3)とを利用して、算出した藻70の体積v1(m3)に藻70の密度(g/m3)を乗算した乗算値を、第一の位置情報P1(x1、y1)から第二の位置情報P2(x2、y2)までに存在する藻量m1(g)として算出する。
【0078】
ここで、藻量推定部106の藻70の密度d(g/m3)の利用方法に特に限定は無いが、例えば、単純に、第一の位置情報P1(x1、y1)における藻70の密度d11(g/m3)~d15(g/m3)と、第二の位置情報P2(x2、y2)における藻70の密度d21(g/m3)~d25(g/m3)との平均値を算出して、その平均値を第一の位置情報P1(x1、y1)から第二の位置情報P2(x2、y2)までに存在する藻70の密度d(g/m3)として推定して、それを藻70の体積v1(m3)に乗算しても良い。その他に、藻70の面積s(m2)を算出する際に用いられる藻70の高さh(m)を用いて、それぞれの藻70の密度d(g/m3)に重み付けをして、重み付けをした藻70のd(g/m3)を藻70の体積v1(m3)に乗算しても良い。これにより、所定の走行航路Aにおける藻量(g)を精度高く推定することが出来る。
【0079】
ここで、推定された藻量m(g)を用いて、藻場MPを生成する場合は、下記のようになる。即ち、藻量推定部106が推定を完了すると、制御部50の藻場生成部107は、移動体10の走行航路Aと、走行航路Aの各位置情報P毎の間の藻量m(g/m3)とに基づいて、走行航路Aを含む藻場MPを生成する(
図3:S109)。
【0080】
ここで、藻場生成部107の生成方法に特に限定は無いが、例えば、
図10Aに示すように、藻場生成部107は、今回の調査対象となる浜辺Bの海Oの地図を用意し、その地図上において、移動体10の幅方向の検知サイズを考慮して、第一の位置情報P1(x1、y1)と第二の位置情報P2(x2、y2)との間の区画(例えば、四角形の区画)を特定し、その区画に、藻量m1に応じた色を付す。そして、藻場生成部107は、
図10Bに示すように、走行航路Aの各位置情報P毎の間の区画の特定と、区画への色の付与とを繰り返すことで、走行航路Aを含む藻場MPを生成する。これにより、ユーザが視覚的に藻70の分布状況を捉えることが可能となる。
【0081】
ここで、その他に、推定された藻量m(g)を用いて、藻70により貯留される二酸化炭素の貯留量を算出する場合は、下記のようになる。即ち、藻量推定部106が推定を完了すると、制御部50の貯留量算出部108は、走行航路Aの各位置情報P毎の間の藻量m(g)に基づいて、藻70により貯留される二酸化炭素の貯留量を算出する(
図3:S110)。
【0082】
ここで、貯留量算出部108の算出方法に特に限定は無いが、例えば、貯留量算出部108は、走行航路Aの各位置情報P毎の間の藻量m(g)を全て合計した合計値mt(g)を全体藻量として算出し、所定の換算式を用いて、全体藻量mt(g)から全体の藻の乾燥重量mtd(g)を算出する。次に、貯留量算出部108は、所定の換算式を用いて、算出した乾燥重量mtd(g)から、藻70が貯留すると推定される二酸化炭素の貯留量を算出する。この場合、
図11に示すように、移動体10を走行させて、複数の超音波送受波器30からのエコー強度を取得し、解析することで、藻量mの推定や藻場MPの生成をし、今回の藻場で、どの程度の二酸化炭素が貯留されるのかを数値的に評価することが可能となるのである。
【0083】
さて、以上のように、複数の超音波送受波器30を用いて、藻量mを推定する方法について説明したが、ここからは、複数の超音波送受波器30に加えて、水中カメラ40を用いた場合の藻場評価方法について説明する。
【0084】
即ち、S102において、位置情報取得部101が移動体10の位置情報P1(例えば、第一の位置情報)(x1,y1)を取得すると、エコー強度取得部102が、複数の超音波送受波器30を用いて、超音波送受波器30毎のエコー強度を取得する(
図3:S103)とともに、それと並行して、制御部50の画像取得部201は、水中カメラ40を用いて、検知エリアDに存在する藻70を含む水中画像を取得する(
図3:S201)。
【0085】
ここで、画像取得部201の取得方法に特に限定は無いが、例えば、位置情報取得部101が位置情報P1を取得した際に(又は、エコー強度取得部102がエコー強度を取得した際に)、画像取得部201が、
図12Aに示すように、水中カメラ40を起動して、藻70を含む水中の様子を撮影し、藻70を含む水中画像1200を取得する。これにより、超音波送受波器30により超音波Sが当てられる検知エリアDでの水中画像1200を取得することが出来る。
【0086】
さて、画像取得部201が取得を完了すると、次に、制御部50の藻画像検知部202は、取得された水中画像1200に基づいて、藻70を示す藻画像を検知する(
図3:S202)。
【0087】
ここで、藻画像検知部202の検知方法に特に限定は無いが、例えば、
図12Aに示すように、藻画像検知部202は、取得された水中画像1200から、藻の形状に対応する藻画像1200aを検索して、藻画像1200aを検知する。又、藻画像検知部202は、水中画像1200から、予め登録された藻の色成分を有する藻画像1200aを検索して、藻画像1200aを検知しても良い。更に、藻画像検知部202は、所定の画像機械学習部に藻画像を予め学習させておき、水中画像1200から、画像機械学習部で学習された藻画像と同一又は類似する藻画像1200aを検索して、藻画像を検知しても良い。
【0088】
さて、藻画像検知部202が検知を完了すると、次に、藻領域推定部203は、検知された藻画像1200aに基づいて、検知エリアDにおける藻70の領域R1を推定する(
図3:S203)。
【0089】
ここで、藻領域推定部203の推定方法に特に限定は無いが、例えば、
図12Aに示すように、藻領域推定部203は、検知された藻画像1200aのうち、藻と水中との境界を示す境界部分を特定し、特定した境界部分のうち、藻画像1200aから外部に最も位置する境界部分を繋ぎ合わせることで、検知エリアDにおける藻70の領域R1を推定する。複数の境界部分を大まかに繋ぎ合わせて、藻70の領域R1を推定しても構わない。すると、推定された藻70の領域R1は、例えば、海底80の領域R2と区別される。
【0090】
ここで、藻領域推定部203は、各位置情報P毎に取得される水中画像1200に対して藻70の領域R1の推定を繰り返す。これにより、今回の調査対象となる浜辺Bの海Oにおいて、藻70の領域R1が推定され、上述した藻場MPをより詳細に表現することが出来る。例えば、
図12Bに示すように、藻70の領域R1が推定されない場合は、藻場MPは、所定の形状の区画に色が付された構成となるが、藻70の領域R1が推定される場合は、藻場MPは、区画に対して藻70の領域R1が湾曲して規定された構成となる。つまり、水中カメラ40を用いることで、複数の超音波送受波器30の検知エリアDにおける藻70の領域R1を具体的に特定することが出来る。これにより、より正確に藻場MPを表現することが可能となる。
【0091】
又、藻領域推定部203は、藻画像1200aから、藻場MPの種類を推定しても構わない。藻場は、通常、アマモの種類で構成されるアマモ場やホンダワラの種類で構成されるガラモ場、アラメ等で構成されるアラメ場、カジメ等で構成されるカジメ場、コンブ場、ワカメ場等に分けられる。これらの藻場は、構成する藻の種類を特定することで、具体的な藻場の種類を特定することが可能である。そこで、藻領域推定部203は、所定の画像機械学習部に、藻場を構成する藻画像を藻場の種類毎に予め学習させておき、藻画像1200aから、画像機械学習部で学習された藻画像と同一又は類似する藻画像を検索して、検索した藻画像に対応する藻場MPの種類を推定しても良い。これにより、より具体的に藻場MPを表現することが可能となる。
【0092】
このように、本発明では、
図13に示すように、移動体10を走行させて、複数の超音波送受波器30からのエコー強度に基づいて、藻量mを推定し、二酸化炭素の貯留量を推定することが出来るとともに、水中カメラ40からの水中画像に基づいて、藻70の領域R1を推定し、より正確な藻場MPを生成することが可能となるのである。
【0093】
ところで、本発明では、より具体的に藻量を推定するために、簡易的な実験を実施したため、その実験結果を以下に示しておく。
【0094】
先ず、
図14Aに示すように、水を入れた水槽を用意し、水槽中に藻のホンダワラを配置し、超音波送受波器30によって水槽中のエコー強度を取得した。その際に、水槽中のホンダワラの本数を増減させることで、エコー強度の変化を確認した。ここで、ホンダワラの本数の増減は、藻の密度の増減に対応する。取得されたエコー強度は、
図14Bに示すように、ホンダワラの本数の増減(藻の密度の増減)に応じて変化したことが分かる。又、エコー強度から藻エコーを検知して、藻エコーのピークの開始深度と終了深度とを算出し、藻の高さを算出したところ、水槽中でのホンダワラの長さに対応したため、藻エコーから藻の高さを推定することが出来た。
【0095】
次に、藻エコーから、藻の密度の算出を試みた。具体的には、ホンダワラの本数毎のエコー強度から藻エコーを検知して、検知された藻エコーに基づいて、ホンダワラの本数毎の藻のエコー積分値を算出した。そして、エコー積分値を縦軸とし、ホンダワラの本数に対応する藻の密度を横軸としたグラフを作成した。その結果、
図14Cに示すように、藻のエコー積分値に対して藻の密度は、一定の相関関係があることが分かった。
【0096】
今度は、ホンダワラの本数毎の藻エコーに基づいて、ホンダワラの長さ(藻の高さ)を算出し、ホンダワラの長さに対応する藻の高さを縦軸とし、ホンダワラの本数に対応する藻の密度を横軸としたグラフを作成した。その結果、
図14Cに示すように、藻の高さに対して藻の密度は、一定の相関関係があることが分かった。
【0097】
このように、藻エコーから、藻の高さを推定することが出来た。更に、藻エコーの特徴量αとして、藻エコーのエコー積分値を用いたり、藻の高さを用いたりすることで、藻の密度を推定することが出来た。そして、本発明は、上述した実験結果を用いることで、藻量の推定はもちろん、それに関連する藻場の評価や二酸化炭素の貯留量の推定を可能とし、これらの推定結果は、海洋開発や地球温暖化対策に極めて有用であることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0098】
以上のように、本発明に係る藻場評価システム及び藻場評価方法は、海洋分野はもちろん、地球温暖化対策分野でも極めて有用であり、一般の魚群探知に用いられる安価な超音波送信波器を用いて、水中の藻場を手軽に評価することが可能な藻場評価システム及び藻場評価方法として有効である。
【符号の説明】
【0099】
1 藻場評価システム
10 移動体
20 GPSアンテナ
30 超音波送受波器
40 カメラ
50 制御部
60 通信用アンテナ
101 位置情報取得部
102 エコー強度取得部
103 藻エコー検知部
104 高さ推定部
105 面積算出部
106 藻量推定部
107 藻場生成部
108 貯留量算出部
201 画像取得部
202 藻画像検知部
203 藻領域推定部
【要約】
【解決手段】位置情報取得部101は、水面付近を走行する移動体の位置情報を取得する。エコー強度取得部102は、複数の超音波送受波器を用いてエコー強度を前記超音波送受波器毎に取得する。藻エコー検知部103は、前記取得されたエコー強度から、藻エコーを検知する。高さ推定部104は、藻の高さを推定する。面積算出部105は、前記移動体の位置情報において、前記移動体の幅方向に存在する藻の面積を算出する。藻量推定部106は、前記移動体の走行航路の各位置情報毎の藻の面積と、当該移動体の移動距離と、に基づいて、当該移動体の走行航路の各位置情報毎の間に存在する藻の体積を算出して、藻量を推定する。
【選択図】
図1