(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-24
(45)【発行日】2025-05-07
(54)【発明の名称】投写型映像表示装置
(51)【国際特許分類】
G03B 21/14 20060101AFI20250425BHJP
G03B 21/00 20060101ALI20250425BHJP
G03B 21/28 20060101ALI20250425BHJP
H04N 5/74 20060101ALI20250425BHJP
【FI】
G03B21/14 Z
G03B21/00 D
G03B21/28
H04N5/74 A
(21)【出願番号】P 2021082665
(22)【出願日】2021-05-14
【審査請求日】2024-05-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000005821
【氏名又は名称】パナソニックホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【氏名又は名称】岡部 博史
(72)【発明者】
【氏名】山本 紀和
【審査官】武田 知晋
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-220080(JP,A)
【文献】特開2010-271717(JP,A)
【文献】国際公開第2019/012806(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/163844(WO,A1)
【文献】特開2017-068090(JP,A)
【文献】特開2005-173357(JP,A)
【文献】特開2004-062092(JP,A)
【文献】特開2007-206343(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03B 21/00-21/10
21/12-21/13
21/134-21/30
33/00-33/16
H04N 5/66-5/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
P偏光及びS偏光のいずれか一方の第1の偏光状態の映像光を出射する映像光出射部と、
前記映像光出射部から入射される前記第1の偏光状態の映像光を透過させ、P偏光及びS偏光のいずれか他方の第2の偏光状態の光を反射する偏光分離
部を有する光路分離部と、
前記光路分離部を透過した映像光を投写対象に拡大投写し、前記投写対象に反射された前記映像光を含む外部光が入射する投写レンズユニットと、
前記光路分離部と前記投写レンズユニットとの間に配置され、前記第1の偏光状態の映像光を円偏光の映像光に変換し、前記投写対象に反射された円偏光の映像光を第2の偏光状態の映像光に変換する
位相差板と、
前記投写レンズユニット及び前記光路分離部を介して前記外部光を撮像する撮像素子と、
前記光路分離部と、前記撮像素子との間に配置され、前記第2の偏光状態の外部光を透過させる偏光板と、
前記光路分離部内で反射された映像光を減衰する反射光減衰部と、
を備える、投写型映像表示装置。
【請求項2】
前記偏光板は回転可能である、
請求項1に記載の投写型映像表示装置。
【請求項3】
前記反射光減衰部は、前記光路分離部に対して前記撮像素子の反対側に配置さ
れる、
請求項1または2に記載の投写型映像表示装置。
【請求項4】
前記反射光減衰部は、
前記光路分離部に対して傾斜して配置された反射光減衰板と、
前記反射光減衰板によって反射された映像光を吸収する反射光吸収部と、を備える、 請求項1から3のいずれか1つに記載の投写型映像表示装置。
【請求項5】
前記光路分離部と前記偏光板との間に配置された絞りを備える、
請求項1から4のいずれか1つに記載の投写型映像表示装置。
【請求項6】
前記
位相差板は前記光路分離部から前記投写レンズユニットへ入射する映像光の光路上で抜き差し可能である、
請求項1から5のいずれか1つに記載の投写型映像表示装置。
【請求項7】
前記
位相差板を前記光路分離部から前記投写レンズユニットへ入射する映像光の光路上で抜き差しする駆動部を備える、
請求項6に記載の投写型映像表示装置。
【請求項8】
前記投写対象の少なくとも一部は移動可能な物体を含み、
前記撮像素子が撮像した映像の中の前記物体を画像処理により認識する画像処理部と、
前記映像の中の前記物体に前記映像光を投写するように前記物体の移動に追随して前記映像光出射部から出射する映像光を表示制御する制御部と、を備える、
請求項6または7に記載の投写型映像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像素子を備える投写型映像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、投写型映像表示装置は、スクリーンまたは建物など投写対象物に対して映像を投写する。投写対象物と投写される映像との位置関係(歪み)を確認するために、投写対象物に投写された映像を撮影する場合がある。撮影画像を基に、投写位置が微調整される。
【0003】
投写型映像表示装置と、投写された映像を撮影する撮像素子とが別体である場合、画角調整が煩わしいので、撮像素子を内蔵する投写型映像表示装置がある。投写型映像表示装置から出射される映像光の光路と投射面から反射した光を撮像する光路とそれぞれの光軸を共用することで、画角調整を省略することができる。
【0004】
例えば、特許文献1は、光路分岐素子を用いて投写型映像表示装置から出射される映像光の光路と投射面から反射した光を撮像する光路とのそれぞれの光軸を共用している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の技術において、光路分岐素子は偏光分離膜を用いて撮像素子へ入射する映像光を分岐しているが、投写対象物から反射した光の半分の光量しか利用できないので、撮像素子で取得する光量が少ないという問題がある。
【0007】
本開示は、撮像素子へ入射する光量を増加させる投写型映像表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示に係る投写型映像表示装置は、P偏光及びS偏光のいずれか一方の第1の偏光状態の映像光を出射する映像光出射部と、映像光出射部から入射される第1の偏光状態の映像光を透過させ、P偏光及びS偏光のいずれか他方の第2の偏光状態の光を反射する偏光分離膜を有する光路分離部と、光路分離部を透過した映像光を投写対象に拡大投写し、投写対象に反射された映像光を含む外部光が入射する投写レンズユニットと、光路分離部と投写レンズユニットとの間に配置され、第1の偏光状態の映像光を円偏光の映像光に変換し、投写対象に反射された円偏光の映像光を第2の偏光状態の映像光に変換する1/4波長板と、投写レンズユニット及び光路分離部を介して外部光を撮像する撮像素子と、光路分離部と、撮像素子との間に配置され、第2の偏光状態の外部光を透過させる偏光板と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本開示は、撮像素子へ入射する光量を増加させる投写型映像表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施の形態1の投写型映像表示装置の構成を示す図
【
図2】実施の形態1の投写撮像光学系の構成を示す図
【
図3】光路分離プリズム内の迷光の光路を示す説明図
【
図4】実施の形態1の変形例の投写撮像光学系の構成を示す図
【
図5】実施の形態2の投写撮像光学系の構成を示す図
【
図6】実施の形態3の投写撮像光学系の構成を示す図
【
図7】実施の形態4の投写撮像光学系の構成を示す図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、適宜図面を参照しながら、実施の形態を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。
【0012】
なお、添付図面及び以下の説明は、当業者が本開示を十分に理解するために、提供されるのであって、これらにより特許請求の範囲に記載の主題を限定することは意図されていない。
【0013】
(実施の形態1)
[1-1.投写型映像表示装置の構成]
図1を参照して実施の形態1の投写型映像表示装置1を説明する。
図1は、実施の形態1に係る投写型映像表示装置1の構成を示す図である。
【0014】
投写型映像表示装置1は、画像形成手段として、例えば、TN(Twisted Nematic)モードもしくはVA(Vertical Alignment)モードであって、画素領域に薄膜トランジスタを形成したアクティブマトリクス方式の透過パネル型の液晶表示素子を用いている。
【0015】
光源装置101は、例えば、青色半導体レーザー116、青色固体光源ユニット119、レンズ126、127、第1拡散板128、第1の位相差板129、ダイクロイックミラー130、コンデンサレンズ131、132、138、1/4波長板139、拡散反射板140、及び蛍光体ホイール111で構成される。
【0016】
光源装置101から出射した光は、第1のレンズアレイ板20、第2のレンズアレイ板21、偏光変換素子22、重畳用レンズ23、赤反射のダイクロイックミラー24、緑反射のダイクロイックミラー25、反射ミラー26、27、28、リレーレンズ29、30、フィールドレンズ31、32、33、液晶表示素子37、38、39、赤反射のダイクロイックミラーと青反射のダイクロイックミラーから構成される色合成プリズム43からなる光学系を介して投写レンズユニット61に入射される。色合成プリズム43は、例えば、クロスキューブプリズムである。
【0017】
光源装置101からの白色光は、複数のレンズ素子から構成される第1のレンズアレイ板20に入射する。第1のレンズアレイ板20に入射した光束は多数の光束に分割される。分割された多数の光束は、複数のレンズから構成される第2のレンズアレイ板21に収束する。第1のレンズアレイ板20のレンズ素子は液晶表示素子37、38、39と相似形の開口形状である。第2のレンズアレイ板21のレンズ素子は第1のレンズアレイ板20と液晶表示素子37、38、39とが略共役関係となるようにその焦点距離を決めている。第2のレンズアレイ板21から出射した光は偏光変換素子22に入射する。
【0018】
偏光変換素子22は、偏光分離プリズムと1/2波長板により構成され、光源装置101からの自然光を一つの偏光方向の光に変換する。蛍光光は自然光であるので、一つの偏光方向に偏光変換されるが、例えば、青色光はS偏光の光で入射するため、P偏光に変換される。偏光変換素子22からの光は重畳用レンズ23に入射する。重畳用レンズ23は第2のレンズアレイ板21の各レンズ素子から出射した光を液晶表示素子37、38、39上に重畳照明するためのレンズである。
【0019】
重畳用レンズ23からの光は、色分離手段である赤反射のダイクロイックミラー24、緑反射のダイクロイックミラー25により、青、緑、赤のそれぞれの色光に分離される。緑色光はフィールドレンズ31を透過して、液晶表示素子37に入射する。赤色光は反射ミラー26で反射した後、フィールドレンズ32を透過して液晶表示素子38に入射する。青色光はリレーレンズ29、30や反射ミラー27、28を透過屈折および反射して、フィールドレンズ33を透過して、液晶表示素子39に入射する。
【0020】
3枚の液晶表示素子37、38、39は映像信号に応じた画素への印加電圧の制御により入射する光の偏光状態を変化させ、それぞれの液晶表示素子37、38、39の両側に透過軸を直交するように配置されたそれぞれの入射側偏光板および出射側偏光板を組み合わせて光を変調し、緑、赤、青の画像を形成する。液晶表示素子37、38、39を透過した各色光は色合成プリズム43により、赤、青の色光がそれぞれ赤反射のダイクロイックミラー、青反射のダイクロイックミラーによって反射し、緑の色光と合成され、投写撮像光学系51に入射する。
【0021】
[1-2.出射部及び撮像素子の構成]
次に、
図2を参照して、投写撮像光学系51の説明をする。
図2は、実施の形態1の投写撮像光学系51の構成を示す図である。投写撮像光学系51は、映像光出射部45と、光路分離プリズム53と、1/4波長板55と、投写レンズユニット61と、プリズムスペーサ71と、偏光板73と、撮像素子75とを備える。映像光出射部45は、液晶表示素子37、38、39と色合成プリズム43と狭帯域位相差板52とで構成される。本実施の形態において、S偏光は図面の紙面に垂直な振動面を有する偏光であり、P偏光は、図面の紙面に平行な振動面を有する偏光とする。
【0022】
色合成プリズム43、狭帯域位相差板52、光路分離プリズム53、1/4波長板55、及び、投写レンズユニット61は、色合成プリズム43から出射される光の光軸に沿って順に配置されている。プリズムスペーサ71、偏光板73、及び撮像素子75は、色合成プリズム43から出射される光の光軸と垂直方向に配置されている。実施の形態1では、光路分離プリズム53の上方に配置されている。
【0023】
狭帯域位相差板52は、液晶表示素子37、38、及び39から出射された各偏光を揃えて光路分離プリズム53に出射する。実施の形態1において、一例として、液晶表示素子37からS偏光である映像光Lsが出射され、液晶表示素子38及び39からP偏光である映像光Lpが出射されているが、狭帯域位相差板52は、入射したS偏光の映像光LsをP偏光の映像光Lp1に変換して出射し、入射したP偏光の映像光LpはそのままP偏光の映像光Lp1として出射する。
【0024】
光路分離プリズム53は、偏光分離膜53aを有し、入射したP偏光の映像光Lp1を透過させ、入射したS偏光の映像光Lsを反射してその進行方向を90度曲げる。したがって、狭帯域位相差板52から入射した映像光Lp1は、光路分離プリズム53を透過して1/4波長板55に向けて出射する。
【0025】
1/4波長板55は、入射する直線偏光を円偏光に変換して出射し、入射する円偏光を直線偏光に変換して出射する。したがって、1/4波長板55は、狭帯域位相差板52から入射するP偏光の映像光Lp1を円偏光の映像光Lcに変換する。1/4波長板55から出射した映像光Lcは、投写レンズユニット61により拡大されてスクリーン200に投写され、映像Im1がスクリーン200に映る。
【0026】
スクリーン200上の映像Im1を構成する円偏光の映像光Lcは、投写レンズユニット61に入射して光路分離プリズム53に向けて進行し、1/4波長板55に入射する。1/4波長板55に入射した円偏光の映像光Lcは、S偏光の映像光Lsに変換され光路分離プリズム53に入射する。
【0027】
光路分離プリズム53に入射したS偏光の映像光Lsは、光路分離プリズム53で反射して進行方向を90度変更され、プリズムスペーサ71に入射する。
【0028】
プリズムスペーサ71は、撮像素子75のバックフォーカス整合用の素子である。プリズムスペーサ71に入射したS偏光の映像光Lsは、プリズムスペーサ71を透過して偏光板73に入射する。
【0029】
偏光板73は、直線偏光を透過させる。実施の形態1において、偏光板73は、S偏光の映像光Lsを透過させ、その他のS偏光以外の偏光状態の光を遮断する。したがって、プリズムスペーサ71を透過したS偏光の映像光Lsは偏光板73を透過して撮像素子75へ入射するが、S偏光以外の迷光は偏光板73によって遮断される。偏光板73の撮像素子75に対向する面は、撮像素子75の撮像面よりも大きい。
【0030】
撮像素子75は、入射するS偏光による映像Im1を撮像する。撮像素子75は、例えば、CMOSセンサ、CCDセンサである。
【0031】
このように、スクリーン200上に投影された映像Im1が再び投写レンズユニット61を介して光路分離プリズム53に入射する際にS偏光に変換することで、外部映像が撮像素子75に向かう光量を増やし、シグナルを増幅することができる。
【0032】
[1-3.効果等]
以上のように、実施の形態1において、投写型映像表示装置1は、P偏光及びS偏光のいずれか一方の第1の偏光状態の映像光Lp1を出射する映像光出射部45と、映像光出射部45から入射される第1の偏光状態の映像光を透過させ、P偏光及びS偏光のいずれか他方の第2の偏光状態の光を反射する偏光分離膜53aを有する光路分離プリズム53と、を備える。投写型映像表示装置1は、さらに、光路分離プリズム53を透過した映像光Lp1をスクリーン200に拡大投写し、スクリーン200に反射された映像光を含む外部光が入射する投写レンズユニット61と、光路分離プリズム53と投写レンズユニット61との間に配置され、第1の偏光状態の映像光Lp1を円偏光の映像光Lcに変換し、スクリーン200に反射された円偏光の映像光Lcを第2の偏光状態の映像光Lsに変換する1/4波長板と、を備える。投写型映像表示装置1は、さらに、投写レンズユニット61及び光路分離プリズム53を介して外部光を撮像する撮像素子75と、光路分離プリズム53と、撮像素子75との間に配置され、第2の偏光状態の外部光を透過させる偏光板73と、を備える。
【0033】
映像光出射部45から出射した映像光Lp1は、P偏光及びS偏光のいずれか一方の偏光を有し、1/4波長板で映像光出射部45から出射した映像光Lp1を円偏光Lcへ変換してスクリーン200に投写する。スクリーン200に投写された映像Im1はスクリーン200で反射して外部光として再び1/4波長板に入射し、円偏光Lcから、映像光出射部45から出射したときの偏光と異なる他方の偏光に変換される。この他方の偏光が光路分離プリズム53で反射して進行方向を変更し、偏光板73を透過して撮像素子75に入射する。
【0034】
このように、光路分離プリズム53からスクリーン200に向けて出射する映像光Lp1の偏光と、スクリーン200で反射して光路分離プリズム53に入射する外部光としての映像光Lsの偏光とが、それぞれ、P偏光及びS偏光のいずれか異なる偏光状態であるので、偏光板73によって、スクリーン200で反射した映像光の偏光状態の光だけを撮像素子75へ入射することができる。したがって、映像光出射部45から入射した映像光Lp1が光路分離プリズム53内で反射により迷光となって撮像素子75の方へ進行しても偏光板73によって遮断することができる。また、映像光以外の外部光は一般的に自然光が多いので、スクリーン200で反射した映像光の偏光状態と同じ光成分のみ撮像素子75へ入射することが可能となる。したがって、スクリーン200で反射した映像光と外部光で照明されたスクリーン200上の映像Im1とを同時に取り込むことができる。
【0035】
ここで、迷光によるノイズが低減することについて
図3を参照してさらに説明する。
図3は、光路分離プリズム53内の迷光の光路を示す説明図であり、
図3(a)は、偏光板を有しない投写撮像光学系の光路を示す説明図であり、
図3(b)はは偏光板を有する投写撮像光学系の光路を示す説明図である。
【0036】
図3(a)に示すように、狭帯域位相差板52から光路分離プリズム53に入射したP偏光の映像光Lp1は、光路分離プリズム53の偏光分離膜53aを完全に透過することなく、その一部が反射されて光路分離プリズム53内で反射を繰り返す迷光Lptとなる。このP偏光の迷光Lptの一部は光路分離プリズム53から撮像素子75に向けて出射する。したがって、スクリーン200から反射したS偏光の映像光Lsとは別にP偏光の迷光Lptが撮像素子75に入射するので、スクリーン200に投写された映像Im1に迷光Lptのノイズが重畳した画像が撮像される。
【0037】
これに対して、実施の形態1の投写撮像光学系51は、
図3(b)に示すように、光路分離プリズム53と撮像素子75との間に偏光板73が配置されているので、光路分離プリズム53から撮像素子75に向けて出射するP偏光の迷光Lptを偏光板73で遮断することができる。したがって、撮像素子75にP偏光の迷光Lptが入射するのを防止し、迷光Lptのノイズを低減することができるので、S/N比を大幅に向上した映像Im1を撮像することができる。
【0038】
また、偏光板73は、手動またはモータ駆動により回転可能な構成でもよい。偏光板73の回転角度を調整することで、撮像素子75に入射するS偏光の映像光Lsの光量を調整することができ、外光の取り込み量とのバランスを調整することができる。
【0039】
次に、
図4を参照して実施の形態1の変形例を説明する。
図4は、実施の形態1の変形例の投写撮像光学系51の構成を示す図である。実施の形態1において、プリズムスペーサ71、偏光板73、及び撮像素子75は、光路分離プリズム53の上方に配置されていたが、これに限らない。プリズムスペーサ71、偏光板73、及び撮像素子75は、光路分離プリズム53の側方に配置されてもよい。変形例の狭帯域位相差板52の位相は、実施の形態1の狭帯域位相差板52の位相から90度反転している。
【0040】
(実施の形態2)
次に、
図5を参照して、実施の形態2の投写撮像光学系51A及び投写型映像表示装置1Aを説明する。
図5は、実施の形態2の投写撮像光学系51Aの構成を示す図である。
【0041】
実施の形態2の投写撮像光学系51Aは、
図5に示すように、実施の形態1の投写撮像光学系51に反射光減衰部81が設けられている。この点及び以下に説明する点以外の構成について、実施の形態1の投写型映像表示装置1と実施の形態2の投写型映像表示装置1Aとは共通であるので説明を省略する。
【0042】
反射光減衰部81は、光路分離プリズム53に対して偏光板73及び撮像素子75の反対側に配置されており、
図5では、光路分離プリズム53の下方に配置されている。したがって、反射光減衰部81とプリズムスペーサ71との間に光路分離プリズム53が配置されている。
【0043】
反射光減衰部81は、光路分離プリズム53から反射光減衰部81に向けて出射した迷光を減衰させる。反射光減衰部81は、反射光減衰板81aと反射光吸収部81bとを有する。
【0044】
反射光減衰板81aは、光路分離プリズム53から入射した迷光Lptが反射して光路分離プリズム53に向かうのを抑制する。反射光減衰板81aは、光路分離プリズム53に対して傾斜して配置されている。複数の反射光減衰板81aを用いて、三角形状に配置してもよい。
【0045】
反射光吸収部81bは、反射光減衰板81aによって、反射された迷光Lptを吸収する。反射光吸収部81bは、例えば、反射光減衰板81aを収容する容器であり、光路分離プリズム側に開口81cを有する。
【0046】
実施の形態2における投写撮像光学系51A及び投写型映像表示装置1Aによれば、光路分離プリズム53に対して撮像素子75の反対側に配置され、光路分離プリズム53内で反射された映像光を減衰する反射光減衰部81を備える。元は映像光Lpであった迷光Lptが光路分離プリズム53から撮像素子75と反対方向に出射して、光路分離プリズム53の外部の構造体に反射して再び光路分離プリズム53に入射し、撮像素子75に向かうことを抑制することができる。これにより、光源装置101からの光を高輝度化した際の偏光板73の温度上昇及び高温による劣化を防止することができ、投写撮像光学系51Aの信頼性を向上することができる。
【0047】
また、反射光減衰部81は、光路分離プリズム53に対して傾斜して配置された反射光減衰板81aと、反射光減衰板81aによって反射された映像光を吸収する反射光吸収部81bとを有する。反射光減衰板81aが光路分離プリズム53に対して傾斜して配置されているので、元は映像光Lpであった迷光Lptは、反射光減衰板81aに反射すると、光路分離プリズム53とは異なる方向へ進行する光量が多くなる。また、反射光吸収部81bが反射光減衰板81aによって反射された迷光Lptを吸収するので、迷光Lptが再び撮像素子75の方へ進行するのを防止することができる。
【0048】
(実施の形態3)
次に、
図6を参照して、実施の形態3の投写撮像光学系51B及び投写型映像表示装置1Bを説明する。
図6は、実施の形態3の投写撮像光学系51Bの構成を示す図である。
【0049】
実施の形態3の投写撮像光学系51Bは、
図6に示すように、実施の形態1の投写撮像光学系51に絞り83が設けられている。この点及び以下に説明する点以外の構成について、実施の形態1の投写型映像表示装置1と実施の形態3の投写型映像表示装置1Bとは共通であるので説明を省略する。
【0050】
絞り83は、光路分離プリズム53から撮像素子75へ入射される迷光を低減する。絞り83は、偏光板73と光路分離プリズム53との間、例えば、偏光板73とプリズムスペーサ71との間に配置されている。絞り83は、中心部に開口部83aを有する。開口部83aの大きさは、スクリーン200で反射された映像光の光束が通過できる大きさである。絞り83が偏光板73と光路分離プリズム53との間に配置されていることで、投写レンズユニット61内のレンズ61a及び61bによる迷光Lptが撮像素子75へ入射するのを低減することできる。
【0051】
実施の形態3における投写撮像光学系51B及び投写型映像表示装置1Bによれば、光路分離プリズム53と偏光板73との間に配置された絞り83を備える。これにより、投写レンズユニット61内の迷光Lptが撮像素子75へ入射するのを低減することできる。迷光によるノイズを低減することができるので、撮像素子75はS/N比をさらに向上した映像Im1を撮像することができる。
【0052】
(実施の形態4)
次に、
図7を参照して、実施の形態4の投写撮像光学系51C及び投写型映像表示装置1Cを説明する。
図7は、実施の形態4の投写撮像光学系51Cの構成を示す図である。
【0053】
実施の形態4の投写撮像光学系51Cは、
図7に示すように、実施の形態1の投写撮像光学系51の1/4波長板55を光路分離プリズム53から投写レンズユニット61へ入射する映像光Lpの光路上で抜き差し可能な構成である。この点及び以下に説明する点以外の構成について、実施の形態1の投写型映像表示装置1と実施の形態3の投写型映像表示装置1Bとは共通であるので説明を省略する。
【0054】
投写撮像光学系51Cは、1/4波長板55を光路分離プリズム53から投写レンズユニット61へ入射する映像光の光路上にて抜き差しする駆動部91を備える。駆動部91は、ユーザーからの指示により、1/4波長板55を光路上で抜き差しする。駆動部91は、例えば、アクチュエータとロッドで構成される。駆動部91は、1/4波長板55を回転させることにより1/4波長板55を光路上で抜き差ししてもよい。なお、駆動部91を省略してユーザーが手動で1/4波長板55を光路上から抜き差し可能な構成でもよい。
【0055】
実施の形態4において、スクリーン200の前で移動可能な物体hmが存在してもよい。物体hmは、例えば、人間またはロボットである。実施の形態4において、投写される映像光の一部がスクリーン200に映像Im2として映され、一部は物体hmに映像Im3として映される。
図7では、映像Im2及びIm3の一例として文字が映されている。
【0056】
この物体hmに向けて外部照明光源210から照明光Ln1が照射されてもよいし、または、スクリーン周辺の環境光により照射されてもよい。照明光Ln1または環境光は無偏光の光であり、照明光Ln1または環境光が物体hmを照射して物体hmに反射された反射光Ln2は、投写レンズユニット61を通って1/4波長板55へ入射する。
【0057】
また、投写撮像光学系51Cは、さらに、画像処理部93と、制御部95とを備えてもよい。画像処理部93は、撮像素子75が撮像した画像においてスクリーン200の前で移動可能な物体hmを認識する。画像処理部93は、例えば、プロセッサ、または、FPGAなどの演算回路である。
【0058】
制御部95は、画像処理部93が認識した物体hmの移動に合わせて、映像Im3を追随させるように、光変調素子である液晶表示素子37、38、39を制御する。制御部95は、例えば、プロセッサ、または、FPGAなどの演算回路である。
【0059】
次に、1/4波長板55を光路上で抜き差しすることで光の性質の変化を
図8及び
図9を参照してさらに説明する。
図8は光路分離プリズム内の光路を示す説明図であり、
図8(a)は光路上に1/4波長板55を配置した状態の投写撮像光学系51Cの光路を示す説明図であり、
図8(b)は光路上から1/4波長板55を外した状態の投写撮像光学系51Cの光路を示す説明図である。
図9は撮像素子75により撮像された映像を示す説明図であり、
図9(a)は光路上に1/4波長板55を配置した状態で撮像された映像であり、
図9(b)は光路上から1/4波長板55を外した状態で撮像された映像である。
【0060】
図8(a)に示すように、光路上に1/4波長板55が存在する場合、無偏光の反射光Ln2が1/4波長板55を透過して位相を回転させられても無偏光の反射光Ln2が1/4波長板55から出射する。1/4波長板55から出射した反射光Ln2は光路分離プリズム53に入射して偏光分離膜53aにより、S偏光成分Lnsだけが反射して進行方向を90度変更して撮像素子75に向かって進行する。なお、反射光Ln2の残りの光の成分Lnvは、偏光分離膜53aを透過して狭帯域位相差板52に向けて直進する。反射光Ln2のS偏光成分Lnsは、光路分離プリズム53から出射して、プリズムスペーサ71及び偏光板73を透過して撮像素子75へ入射する。これにより、反射光Ln2のS偏光成分Lnsは、スクリーン200に投写して反射したS偏光の映像光Lsと共に撮像素子75に撮像される。
【0061】
したがって、光路上に1/4波長板55が存在する場合、
図9(a)に示すように、スクリーン200に投写された映像Im2と、外部照明光源210の照明光Ln1に照射された物体hmと、物体hmに投写された映像Im3とを共に撮像することができる。
【0062】
一方、
図8(b)に示すように、光路上から1/4波長板55が抜かれて光路上に1/4波長板55が存在しない場合、映像光出射部45から出射されたP偏光の映像光Lp2がそのままスクリーン200に投写される。スクリーン200に投写される映像Im2及び物体hmに投写される映像Im3はP偏光の映像光Lp2である。スクリーン200及び物体hmにそれぞれ反射された映像光Lp2は、投写レンズユニット61を通過して光路分離プリズム53も透過するので、撮像素子75へ進行しない。
【0063】
したがって、反射光Ln2のS偏光成分Lnsだけが光路分離プリズム53の偏光分離膜53aにより反射して撮像素子75に向かって進行する。これにより、スクリーン200に投写して反射したP偏光の映像光Lp2は撮像されず、反射光Ln2のS偏光成分Lnsだけが撮像素子75に撮像される。
【0064】
したがって、光路上に1/4波長板55が存在しない場合、
図9(b)に示すように、スクリーン200及び物体hmで反射した照明光及び環境光のみで構成された映像が撮像される。このように、投写光に影響されない映像を撮像できるので、投写光を含まない映像を用いて、物体hmの検出を行い、投写映像と合成することで、物体hmに追従したマッピングが可能となる。
【0065】
実施の形態4における投写撮像光学系51C及び投写型映像表示装置1Cによれば、1/4波長板55は光路分離プリズム53から投写レンズユニット61へ入射する映像光の光路上で抜き差し可能である。これにより、スクリーン200に投写された映像Im2と、外部照明光源210の照明光Ln1に照射された物体hmと、物体hmに投写された映像Im3とを共に撮像することもできるし、スクリーン200及び物体hmで反射した照明光及び環境光のみで構成された映像を撮像することもできる。
【0066】
また、照明光や環境光は光量が少ない場合が多いので、
図9(b)に示すように、投写映像を除いて撮影するために、光路分離プリズム53や投写レンズユニット61のレンズ61a、61bから発生する迷光が撮像素子75に入り込まないように確実に取り除くことが望ましい。そのため、実施の形態2及び3による迷光を除去する構成は非常に効果が高いので、実施の形態4と実施の形態2及び3とを組み合わせることも大変有用である。
【0067】
また、投写対象の少なくとも一部は移動可能な物体hmを含み、投写型映像表示装置1Cは、撮像素子75が撮像した映像の中の物体hmを画像処理により認識する画像処理部93と、映像の中の物体hmに映像光を投写するように物体hmの移動に追随して映像光出射部45から出射する映像光を表示制御する制御部95と、を備える。
【0068】
(他の実施の形態)
以上のように、本出願において開示する技術の例示として、上記実施の形態を説明した。しかしながら、本開示における技術は、これに限定されず、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施の形態にも適用できる。また、上記実施の形態で説明した各構成要素を組み合わせて、新たな実施の形態とすることも可能である。
【0069】
各実施の形態において、S偏光とP偏光の映像光を用いているが、これらの偏光状態を入れ替えてもよい。例えば、狭帯域位相差板52から出射される映像光をS偏光とし、撮像素子75に入射される映像光をP偏光にしてもよい。
【0070】
各実施の形態において、光路分離部として光路分離プリズム53を用いているがこれに限らない。光路分離部として、偏光分離膜53aが形成されたミラーでもよい。
【0071】
各実施の形態において、映像光出射部45は、光変調部として3つの液晶表示素子を備えていたがこれに限らない。映像光出射部45は、液晶表示素子の代わりにDMD(デジタル・マイクロミラー・デバイス)を備えてもよい。DMDから出射される映像光も狭帯域位相差板52によって偏光が揃えられるので、実施の形態と同じ効果を得ることができる。
【0072】
以上のように、本開示における技術の例示として、実施の形態を説明した。そのために、添付図面及び詳細な説明を提供した。したがって、添付図面及び詳細な説明に記載された構成要素の中には、課題解決のために必須な構成要素だけでなく、上記技術を例示するために、課題解決のためには必須でない構成要素も含まれ得る。したがって、それらの必須ではない構成要素が添付図面や詳細な説明に記載されていることをもって、直ちに、それらの必須ではない構成要素が必須であるとの認定をするべきではない。
【0073】
また、上述の実施の形態は、本開示における技術を例示するためのものであるから、特許請求の範囲またはその均等の範囲において種々の変更、置き換え、付加、省略などを行うことができる。
【0074】
(実施の形態の概要)
(1)本開示の投写型映像表示装置は、P偏光及びS偏光のいずれか一方の第1の偏光状態の映像光を出射する映像光出射部と、映像光出射部から入射される第1の偏光状態の映像光を透過させ、P偏光及びS偏光のいずれか他方の第2の偏光状態の光を反射する偏光分離膜を有する光路分離部と、を備える。投写型映像表示装置は、光路分離部を透過した映像光を投写対象に拡大投写、投写対象に反射された映像光を含む外部光が入射する投写レンズユニットと、光路分離部と投写レンズユニットとの間に配置され、第1の偏光状態の映像光を円偏光の映像光に変換し、投写対象に反射された円偏光の映像光を第2の偏光状態の映像光に変換する1/4波長板と、を備える。投写型映像表示装置は、投写レンズユニット及び光路分離部を介して外部光を撮像する撮像素子と、光路分離部と、撮像素子との間に配置され、第2の偏光状態の外部光を透過させる偏光板と、を備える。
【0075】
これにより、光路分離部から投写対象に向けて出射する映像光の偏光と、投写対象で反射して光路分離部に入射する外部光としての映像光の偏光とが、それぞれ、P偏光及びS偏光のいずれか異なる偏光状態であるので、偏光板によって、投写対象で反射した映像光の偏光状態の光だけを撮像素子へ入射することができる。したがって、映像光出射部から入射した映像光が光路分離部内で反射により迷光となって撮像素子の方へ進行しても偏光板によって遮断することができる。また、外部光も、投写対象で反射した映像光の偏光状態と同じ光成分しか撮像素子へ入射しないので、投写対象で反射した映像光以外の外部光が撮像されるのを低減することができる。
【0076】
(2)(1)の投写型映像表示装置において、偏光板は回転可能である。
【0077】
(3)(1)または(2)の投写型映像表示装置において、光路分離プリズムに対して撮像素子の反対側に配置され、光路分離プリズム内で反射された映像光を減衰する反射光減衰部を備える。
【0078】
(4)(1)から(3)のいずれか1つの投写型映像表示装置において、反射光減衰部は、光路分離プリズムに対して傾斜して配置された反射光減衰板と、反射光減衰板によって反射された映像光を吸収する反射光吸収部と、を備える。
【0079】
(5)(1)から(4)のいずれか1つの投写型映像表示装置において、光路分離プリズムと偏光板との間に配置された絞りを備える。
【0080】
(6)(1)から(5)のいずれか1つの投写型映像表示装置において、1/4波長板は光路分離プリズムから投写レンズユニットへ入射する映像光の光路上で抜き差し可能である。
【0081】
(7)(6)の投写型映像表示装置において、1/4波長板を光路分離プリズムから投写レンズユニットへ入射する映像光の光路上で抜き差しする駆動部を備える。
【0082】
(8)(6)または(7)の投写型映像表示装置において、投写対象の少なくとも一部は移動可能な物体を含み、撮像部が撮像した映像の中の物体を画像処理により認識する画像処理部と、映像の中の移動体に映像光を投写するように移動体の移動に追随して映像光出射部から出射する映像光を表示制御する制御部と、を備える。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本開示は、映像を投写する投写型映像表示装置に利用可能である。
【符号の説明】
【0084】
1、1A、1B 投写型映像表示装置
37、38、39液晶表示素子 37緑 38赤 39青
43 色合成プリズム (クロスキューブプリズム)
45 映像光出射部
51、51A、51B 投写撮像光学系
52 狭帯域位相差板
53 光路分離プリズム
53a 偏光分離膜
55 1/4波長板
61 投写レンズユニット
61a、61b レンズ
71 プリズムスペーサ
73 偏光板
75 撮像素子
81 反射光減衰部
83 絞り
83a 開口部
91 駆動機構
93 画像処理部
95 制御部
101 光源装置
111 蛍光体ホイール
200 スクリーン
210 外部照明光源
hm 物体
Im1、Im2、Im3 映像
Ln2 反射光
Lpt 迷光
Ls 映像光