(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-24
(45)【発行日】2025-05-07
(54)【発明の名称】吐出圧力評価方法、吐出圧力評価プログラム、記録媒体および基板処理装置
(51)【国際特許分類】
B05C 11/10 20060101AFI20250425BHJP
B05C 5/02 20060101ALI20250425BHJP
【FI】
B05C11/10
B05C5/02
(21)【出願番号】P 2021211192
(22)【出願日】2021-12-24
【審査請求日】2024-06-17
(31)【優先権主張番号】P 2021036995
(32)【優先日】2021-03-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100105935
【氏名又は名称】振角 正一
(74)【代理人】
【識別番号】100136836
【氏名又は名称】大西 一正
(72)【発明者】
【氏名】木村 崇也
(72)【発明者】
【氏名】安陪 裕滋
(72)【発明者】
【氏名】仲村 武瑠
(72)【発明者】
【氏名】古田 智靖
【審査官】吉田 昌弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-005465(JP,A)
【文献】特開2020-040046(JP,A)
【文献】特開2004-327781(JP,A)
【文献】特開2003-093959(JP,A)
【文献】米国特許第05199607(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05C 11/10
B05C 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理液に吐出圧力を与えてノズルから処理液を吐出する吐出装置における前記吐出圧力を互いに異なる評価項目によってそれぞれ評価する1番目からN番目までのN個(Nは2以上の整数)の評価段階のうち、1番目の評価段階に係る評価項目によって前記吐出圧力を評価する工程と、
前記N個の評価段階のうち、I番目(Iは1以上でN未満の整数)の評価段階に係る評価項目による評価において前記吐出圧力が適正と判断された場合に、(I+1)番目の評価段階に係る評価項目による前記吐出圧力の評価を実行する一方、前記I番目の評価段階に係る評価項目による評価において前記吐出圧力が不適正と判断された場合には前記I番目の評価段階より後の順番の評価段階による前記吐出圧力の評価を実行しない工程と
を備えた吐出圧力評価方法。
【請求項2】
前記N個の評価段階のうち、前記吐出圧力の評価を実行した評価段階の数の違いに応じて、互いに異なる評価値を前記吐出圧力に与える請求項1に記載の吐出圧力評価方法。
【請求項3】
前記ノズルからの処理液の吐出を開始してから前記吐出圧力の所定圧力までの上昇を経て前記吐出圧力の前記所定圧力からの減少が開始するまでの主要期間を少なくとも含む評価対象期間において、前記吐出圧力を測定した結果に基づき、前記評価対象期間の全体における前記吐出圧力の時間変化が持つ特徴量を全体特徴量として抽出する工程と、
前記全体特徴量に基づき前記吐出圧力の時間変化を評価する工程と
を実行することで、前記吐出圧力を評価するという評価項目を、前記1番目の評価段階が有する請求項1または2に記載の吐出圧力評価方法。
【請求項4】
前記評価対象期間は、前記主要期間であり、
前記主要期間の全体における前記吐出圧力の時間変化が持つ特徴量である主要特徴量が前記全体特徴量として抽出される請求項3に記載の吐出圧力評価方法。
【請求項5】
前記主要特徴量は、前記主要期間の全体における前記吐出圧力の時間変化を近似した主要近似波形と、前記主要期間の全体における前記吐出圧力の時間変化との差を示す請求項4に記載の吐出圧力評価方法。
【請求項6】
前記主要近似波形は、
前記ノズルからの処理液の吐出の開始後に時間経過に伴って増大する前記吐出圧力の時間変化を直線近似した、吐出開始圧力から前記吐出開始圧力より大きい定常圧力まで時間経過に伴って線形に増大する立ち上がり近似直線と、
前記ノズルからの処理液の吐出の開始時点と前記立ち上がり近似直線との間に設けられて前記吐出開始圧力を示す開始時近似直線と、
前記立ち上がり近似直線が前記定常圧力に到達してから前記主要期間の最後までの間に設けられて前記定常圧力を示す定常直線と
を有する請求項5に記載の吐出圧力評価方法。
【請求項7】
前記評価対象期間は、前記ノズルからの処理液の吐出を開始してから前記ノズルからの処理液の吐出を終了するまでの第1期間であり、
前記第1期間の全体における前記吐出圧力の時間変化が持つ特徴量である第1特徴量が前記全体特徴量として抽出される請求項3に記載の吐出圧力評価方法。
【請求項8】
前記第1特徴量は、前記第1期間の全体における前記吐出圧力の時間変化を近似した第1近似波形と、前記第1期間の全体における前記吐出圧力の時間変化との差を示す請求項7に記載の吐出圧力評価方法。
【請求項9】
前記第1近似波形は、
前記ノズルからの処理液の吐出の開始後に、時間経過に伴って増大する前記吐出圧力の時間変化を直線近似することで、吐出開始圧力から前記吐出開始圧力より大きい定常圧力まで時間経過に伴って線形に増大する立ち上がり近似直線と、
前記ノズルからの処理液の吐出の開始時点と前記立ち上がり近似直線との間に設けられて前記吐出開始圧力を示す開始時近似直線と、
前記ノズルからの処理液の吐出の終了前に、時間経過に伴って減少する前記吐出圧力の時間変化を直線近似することで、前記定常圧力から前記定常圧力より小さい吐出終了圧力まで時間経過に伴って線形に減少する立ち下がり近似直線と、
前記立ち下がり近似直線と前記ノズルからの処理液の吐出の終了時点との間に設けられて前記吐出終了圧力を示す終了時近似直線と、
前記立ち上がり近似直線および前記立ち下がり近似直線のそれぞれの間を接続して、前記定常圧力を示す定常直線と
を有する請求項8に記載の吐出圧力評価方法。
【請求項10】
前記評価対象期間のうち、前記評価対象期間より短い第2期間における前記吐出圧力の時間変化が持つ特徴量を第2特徴量として抽出する工程と、
前記第2特徴量に基づき前記吐出圧力の時間変化を評価する工程と
を実行することで、前記吐出圧力を評価するという評価項目を、前記N個の評価段階のうちの2番目の評価段階が有する請求項3ないし9のいずれか一項に記載の吐出圧力評価方法。
【請求項11】
前記ノズルからの処理液の吐出の開始から所定の立ち上がり初期期間が、前記第2期間として設定され、
前記立ち上がり初期期間を通じて、前記吐出圧力は時間経過に伴って増大し、
前記立ち上がり初期期間における前記吐出圧力の時間変化の回帰曲線と、前記立ち上がり初期期間における前記吐出圧力の時間変化との差を示す特徴量が、前記第2特徴量として抽出される請求項10に記載の吐出圧力評価方法。
【請求項12】
前記ノズルからの処理液の吐出の開始から、前記吐出圧力が前記所定圧力に増大するまでの立ち上がり期間が、前記第2期間として設定される請求項10または11に記載の吐出圧力評価方法。
【請求項13】
前記立ち上がり期間の長さが、前記第2特徴量として抽出される請求項12に記載の吐出圧力評価方法。
【請求項14】
前記立ち上がり期間において、前記吐出圧力の時間変化の一回微分が所定の閾値と交差する回数が、前記第2特徴量として抽出される請求項12または13に記載の吐出圧力評価方法。
【請求項15】
前記立ち上がり期間において、前記吐出圧力の時間変化の二回微分の絶対値が所定の閾値と交差する回数が、前記第2特徴量として抽出される請求項12ないし14のいずれか一項に記載の吐出圧力評価方法。
【請求項16】
前記立ち上がり期間において、前記吐出圧力の時間変化の二回微分が所定の正の閾値より大きくなる時間と、前記吐出圧力の時間変化の二回微分が、前記正の閾値と同じ絶対値を有する所定の負の閾値より小さくなる時間との比が、前記第2特徴量として抽出される請求項12ないし15のいずれか一項に記載の吐出圧力評価方法。
【請求項17】
前記吐出圧力が前記所定圧力に増大するまでの所定の立ち上がり終期期間が、前記第2期間として設定され、
前記立ち上がり終期期間における前記吐出圧力の時間変化を近似した立ち上がり終期近似波形と、前記立ち上がり終期期間における前記吐出圧力の時間変化との差を示す特徴量が、前記第2特徴量として抽出され、
前記立ち上がり終期近似波形は、
前記所定圧力よりも小さい圧力範囲において時間経過に伴って増大する前記吐出圧力の時間変化を直線近似することで求めた近似曲線に重なり、前記立ち上がり終期期間より後の定常期間での前記吐出圧力の時間変化の平均値である定常圧力まで時間経過に伴って線形に増大する立ち上がり終期近似直線と、
前記立ち上がり終期近似直線から前記立ち上がり終期期間の終了時点まで延設された、前記定常圧力を示す延設直線と
を有する請求項10ないし16のいずれか一項に記載の吐出圧力評価方法。
【請求項18】
前記吐出圧力が最大値に達した時点から、前記吐出圧力の時間変化の二回微分が2回ゼロに交差した時点までの初期振動期間が、前記第2期間として設定され、
前記初期振動期間における前記吐出圧力の最小値および前記初期振動期間より後の所定の定常期間における前記吐出圧力の平均値のうち小さい方の圧力と、前記吐出圧力の前記最大値との差が、前記第2特徴量として抽出される請求項10ないし17のいずれか一項に記載の吐出圧力評価方法。
【請求項19】
前記吐出圧力が前記所定圧力を超えた時点から所定の遷移期間が、前記第2期間として設定され、
前記遷移期間より後の所定の定常期間における前記吐出圧力の平均値に対する、前記遷移期間における前記吐出圧力の差を示す特徴量が、前記第2特徴量として抽出される請求項10ないし18のいずれか一項に記載の吐出圧力評価方法。
【請求項20】
前記吐出圧力が前記所定圧力を超えた時点から、前記ノズルからの処理液の吐出の終了に向けて前記吐出圧力の減少が開始する時点までの定圧期間が、前記第2期間として設定され、
前記定圧期間における前記吐出圧力の最大値と最小値との差を示す特徴量が、前記第2特徴量として抽出される請求項10ないし19のいずれか一項に記載の吐出圧力評価方法。
【請求項21】
Nが3以上である請求項10ないし20のいずれか一項に記載に吐出圧力評価方法であって、
前記評価対象期間のうち、前記評価対象期間より短い第3期間における前記吐出圧力の時間変化が持つ特徴量を第3特徴量として抽出する工程と、
前記第3特徴量に基づき前記吐出圧力の時間変化を評価する工程と
を実行することで、前記吐出圧力を評価するという評価項目を、前記N個の評価段階のうちの3番目の評価段階が有する吐出圧力評価方法。
【請求項22】
前記ノズルからの処理液の吐出の開始後に、前記吐出圧力が下側基準値から前記下側基準値より大きい上側基準値まで時間経過とともに増加する圧力上昇期間が、前記第3期間として設定され、
前記下側基準値と前記上側基準値との間における前記吐出圧力の測定値のうちの一の測定値であって、
前記下側基準値と前記一の測定値との間の区間において前記吐出圧力の時間変化に対する線形回帰により求めた近似直線と前記吐出圧力の時間変化との二乗平均平方誤差と、
前記一の測定値と前記上側基準値との間の区間において前記吐出圧力の時間変化に対する線形回帰により求めた近似直線と前記吐出圧力の時間変化との二乗平均平方誤差と
の和が最小となる前記一の測定値を求め、
前記下側基準値と前記一の測定値との間の直線の傾きと、前記一の測定値と前記上側基準値との間の直線の傾きとの比をが、前記第3特徴量として抽出される請求項21に記載の吐出圧力評価方法。
【請求項23】
前記吐出圧力が前記所定圧力に増大するまでの所定の立ち上がり終期期間が、前記第3期間として設定され、
前記立ち上がり終期期間における前記吐出圧力の時間変化を近似した立ち上がり終期近似波形と、前記立ち上がり終期期間における前記吐出圧力の時間変化との差を示す特徴量が、前記第3特徴量として抽出され、
前記立ち上がり終期近似波形は、
前記所定圧力よりも小さい圧力範囲において時間経過に伴って増大する前記吐出圧力の時間変化を直線近似することで求めた近似曲線に重なり、時間経過に伴って前記所定圧力まで線形に増大する立ち上がり終期近似直線と、
前記立ち上がり終期近似直線に接続されて、前記所定圧力を示す延設直線と
を有する請求項21または22に記載の吐出圧力評価方法。
【請求項24】
前記吐出圧力が最大値に達した時点から、前記吐出圧力の時間変化の二回微分が2回ゼロに交差した時点までの初期振動期間が、前記第3期間として設定され、
前記吐出圧力の前記最大値から、前記初期振動期間より後の所定の定常期間における前記吐出圧力の平均値である定常圧力を減算した値と、前記定常圧力から前記初期振動期間における前記吐出圧力の最小値を減算した値との和が、前記第3特徴量として抽出される請求項21ないし23のいずれか一項に記載の吐出圧力評価方法。
【請求項25】
処理液に吐出圧力を与えてノズルから処理液を吐出する吐出装置における前記吐出圧力を互いに異なる評価項目によってそれぞれ評価する1番目からN番目までのN個(Nは2以上の整数)の評価段階のうち、1番目の評価段階に係る評価項目によって前記吐出圧力を評価する工程と、
前記N個の評価段階のうち、I番目(Iは1以上でN未満の整数)の評価段階に係る評価項目による評価において前記吐出圧力が適正と判断された場合に、(I+1)番目の評価段階に係る評価項目による前記吐出圧力の評価を実行する一方、前記I番目の評価段階に係る評価項目による評価において前記吐出圧力が不適正と判断された場合には前記I番目の評価段階より後の順番の評価段階による前記吐出圧力の評価を実行しない工程と
をコンピュータに実行させる吐出圧力評価プログラム。
【請求項26】
請求項25に記載の吐出圧力評価プログラムを、コンピュータにより読み出し可能に記録する記録媒体。
【請求項27】
ノズルと、
処理液に吐出圧力を与えて前記ノズルに処理液を吐出させる圧力付与部と、
前記吐出圧力を測定する測定部と、
処理液に吐出圧力を与えてノズルから処理液を吐出する吐出装置における前記吐出圧力を互いに異なる評価項目によってそれぞれ評価する1番目からN番目までのN個(Nは2以上の整数)の評価段階での実行内容を記憶する制御部と
を備え、
前記制御部は、
前記N個の評価段階のうち、1番目の評価段階に係る評価項目によって前記吐出圧力を評価し、
前記N個の評価段階のうち、I番目(Iは1以上でN未満の整数)の評価段階に係る評価項目による評価において前記吐出圧力が適正と判断された場合に、(I+1)番目の評価段階に係る評価項目による前記吐出圧力の評価を実行する一方、前記I番目の評価段階に係る評価項目による評価において前記吐出圧力が不適正と判断された場合には前記I番目の評価段階より後の順番の評価段階による前記吐出圧力の評価を実行しない基板処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、処理液に吐出圧力を与えることで処理液をノズルから吐出する技術に関する。なお、ノズルから処理液を吐出する対象物としては、例えば半導体基板、フォトマスク用基板、液晶表示用基板、有機EL表示用基板、プラズマ表示用基板、FED(Field Emission Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板などが含まれる。
【背景技術】
【0002】
特許文献1、2に示されるように、ノズルから吐出した処理液を基板に塗布する場合、処理液に与えられる吐出圧力が、基板に塗布される処理液の厚みに大きく影響する。そこで、特許文献1では、吐出圧力の波形を複数の区間に分割して、各区間での波形の傾きに基づき、吐出圧力が許容範囲であるか否かが評価される。また、特許文献2では、立ち上がり領域や定常吐出領域といった各領域について、吐出圧力に関連するパラメータの最適化が図られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-005465号公報
【文献】特開2020-040046号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
つまり、特許文献1、2では、複数の区分あるいは領域のそれぞれにおいて吐出圧力の波形を評価することで、吐出圧力の高精度な評価を可能にしている。一方で、このように多くの評価項目について評価を行うことは、吐出圧力の評価に要する時間が長くなる原因となる。特に、不適正な吐出圧力に対して、長時間をかけて全評価項目を評価することは、必ずしも合理的とは言えなかった。
【0005】
この発明は上記課題に鑑みなされたものであり、ノズルから処理液を吐出するために処理液に与えられる吐出圧力の評価を、吐出圧力の適否に応じた合理的な時間で行うことを可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る吐出圧力評価方法は、処理液に吐出圧力を与えてノズルから処理液を吐出する吐出装置における吐出圧力を互いに異なる評価項目によってそれぞれ評価する1番目からN番目までのN個(Nは2以上の整数)の評価段階のうち、1番目の評価段階に係る評価項目によって吐出圧力を評価する工程と、N個の評価段階のうち、I番目(Iは1以上でN未満の整数)の評価段階に係る評価項目による評価において吐出圧力が適正と判断された場合に、(I+1)番目の評価段階に係る評価項目による吐出圧力の評価を実行する一方、I番目の評価段階に係る評価項目による評価において吐出圧力が不適正と判断された場合にはI番目の評価段階より後の順番の評価段階による吐出圧力の評価を実行しない工程とを備える。
【0007】
本発明に係る吐出圧力評価プログラムは、処理液に吐出圧力を与えてノズルから処理液を吐出する吐出装置における吐出圧力を互いに異なる評価項目によってそれぞれ評価する1番目からN番目までのN個(Nは2以上の整数)の評価段階のうち、1番目の評価段階に係る評価項目によって吐出圧力を評価する工程と、N個の評価段階のうち、I番目(Iは1以上でN未満の整数)の評価段階に係る評価項目による評価において吐出圧力が適正と判断された場合に、(I+1)番目の評価段階に係る評価項目による吐出圧力の評価を実行する一方、I番目の評価段階に係る評価項目による評価において吐出圧力が不適正と判断された場合にはI番目の評価段階より後の順番の評価段階による吐出圧力の評価を実行しない工程とをコンピュータに実行させる。
【0008】
本発明に係る記録媒体は、上記の吐出圧力評価プログラムを、コンピュータにより読み出し可能に記録する。
【0009】
本発明に係る基板処理装置は、ノズルと、処理液に吐出圧力を与えてノズルに処理液を吐出させる圧力付与部と、吐出圧力を測定する測定部と、処理液に吐出圧力を与えてノズルから処理液を吐出する吐出装置における吐出圧力を互いに異なる評価項目によってそれぞれ評価する1番目からN番目までのN個(Nは2以上の整数)の評価段階での実行内容を記憶する制御部とを備え、制御部は、N個の評価段階のうち、1番目の評価段階に係る評価項目によって吐出圧力を評価し、N個の評価段階のうち、I番目(Iは1以上でN未満の整数)の評価段階に係る評価項目による評価において吐出圧力が適正と判断された場合に、(I+1)番目の評価段階に係る評価項目による吐出圧力の評価を実行する一方、I番目の評価段階に係る評価項目による評価において吐出圧力が不適正と判断された場合にはI番目の評価段階より後の順番の評価段階による吐出圧力の評価を実行しない。
【0010】
このように構成された本発明(吐出圧力評価方法、吐出圧力評価プログラム、記録媒体および基板処理装置)では、吐出圧力を互いに異なる評価項目によってそれぞれ評価する1番目からN番目までのN個の評価段階が設けられており、1番目からN番目までの評価段階を順番に実行することができる。ただし、I番目の評価段階に係る評価項目による評価において吐出圧力が適正と判断された場合に、(I+1)番目の評価段階に係る評価項目による吐出圧力の評価が実行される一方、I番目の評価段階に係る評価項目による評価において吐出圧力が不適正と判断された場合にはI番目の評価段階より後の順番の評価段階による吐出圧力の評価が実行されない。つまり、1~N番目までの評価段階によって順番に吐出圧力の評価をした際に、いずれかの評価段階で吐出圧力が不適正と判断されると、以後の評価段階による評価が実行されない。これによって、ノズルから処理液を吐出するために処理液に与えられる吐出圧力の評価を、吐出圧力の適否に応じた合理的な時間で行うことが可能となっている。
【0011】
また、N個の評価段階のうち、吐出圧力の評価を実行した評価段階の数の違いに応じて、互いに異なる評価値を吐出圧力に与えるように、吐出圧力評価方法を構成してもよい。かかる構成では、実行された評価段階の数が多い吐出圧力ほど良好な評価値を与えることができ、吐出圧力の適否に応じた適正な評価値を当該吐出圧力に与えることが可能となる。
【0012】
また、ノズルからの処理液の吐出を開始してから吐出圧力の所定圧力までの上昇を経て吐出圧力の所定圧力からの減少が開始するまでの主要期間を少なくとも含む評価対象期間において、吐出圧力を測定した結果に基づき、評価対象期間の全体における吐出圧力の時間変化が持つ特徴量を全体特徴量として抽出する工程と、全体特徴量に基づき吐出圧力の時間変化を評価する工程とを実行することで、吐出圧力を評価するという評価項目を、1番目の評価段階が有するように、吐出圧力評価方法を構成してもよい。かかる構成では、ノズルからの処理液の吐出を開始してから吐出圧力の所定圧力までの上昇を経て吐出圧力の所定圧力からの減少が開始するまでの主要期間を少なくとも含む評価対象期間において測定された吐出圧力の測定値に基づき、評価対象期間の全体における吐出圧力の時間変化が持つ特徴量が全体特徴量として抽出され、全体特徴量に基づき吐出圧力の時間変化が評価される。これによって、基板に塗布される処理液の厚みに影響する期間(換言すれば、評価対象期間)の全体における吐出圧力の適否を吐出圧力の評価に反映させることが可能となっている。
【0013】
また、評価対象期間は、主要期間であり、主要期間の全体における吐出圧力の時間変化が持つ特徴量である主要特徴量が全体特徴量として抽出されるように、吐出圧力評価方法を構成してもよい。かかる構成では、主要期間が基板に塗布される処理液の厚みに与える影響が特に大きい場合(換言すれば、主要期間を経過後の期間の影響が僅かな場合)に、当該主要期間の全体における吐出圧力の適否を吐出圧力の評価に反映させることが可能となっている。
【0014】
また、主要特徴量は、主要期間の全体における吐出圧力の時間変化を近似した主要近似波形と、主要期間の全体における吐出圧力の時間変化との差を示すように、吐出圧力評価方法を構成してもよい。かかる構成では、主要期間全体における吐出圧力の時間変化に対する近似波形に基づき、当該主要期間全体における吐出圧力を適切に評価できる。
【0015】
また、主要近似波形は、ノズルからの処理液の吐出の開始後に時間経過に伴って増大する吐出圧力の時間変化を直線近似した、吐出開始圧力から吐出開始圧力より大きい定常圧力まで時間経過に伴って線形に増大する立ち上がり近似直線と、ノズルからの処理液の吐出の開始時点と立ち上がり近似直線との間に設けられて吐出開始圧力を示す開始時近似直線と、立ち上がり近似直線が定常圧力に到達してから主要期間の最後までの間に設けられて定常圧力を示す定常直線とを有するように、吐出圧力評価方法を構成してもよい。かかる構成では、主要期間全体における吐出圧力の時間変化を近似して、当該期間全体における吐出圧力を適切に評価できる。
【0016】
また、評価対象期間は、ノズルからの処理液の吐出を開始してからノズルからの処理液の吐出を終了するまでの第1期間であり、第1期間の全体における吐出圧力の時間変化が持つ特徴量である第1特徴量が全体特徴量として抽出されるように、吐出圧力評価方法を構成してもよい。かかる構成では、ノズルからの処理液の吐出を開始してからノズルからの処理液の吐出を終了するまでの第1期間を通じて、吐出圧力が基板に塗布される処理液の厚みに影響を与える場合に、当該第1期間の全体における吐出圧力の適否を吐出圧力の評価に反映させることが可能となっている。
【0017】
また、第1特徴量は、第1期間の全体における吐出圧力の時間変化を近似した第1近似波形と、第1期間の全体における吐出圧力の時間変化との差を示すように、吐出圧力評価方法を構成してもよい。かかる構成では、ノズルからの処理液の吐出の開始から終了までの期間全体における吐出圧力の時間変化に対する近似波形に基づき、当該期間全体における吐出圧力を適切に評価できる。
【0018】
また、第1近似波形は、ノズルからの処理液の吐出の開始後に、時間経過に伴って増大する吐出圧力の時間変化を直線近似することで、吐出開始圧力から吐出開始圧力より大きい定常圧力まで時間経過に伴って線形に増大する立ち上がり近似直線と、ノズルからの処理液の吐出の開始時点と立ち上がり近似直線との間に設けられて吐出開始圧力を示す開始時近似直線と、ノズルからの処理液の吐出の終了前に、時間経過に伴って減少する吐出圧力の時間変化を直線近似することで、定常圧力から定常圧力より小さい吐出終了圧力まで時間経過に伴って線形に減少する立ち下がり近似直線と、立ち下がり近似直線とノズルからの処理液の吐出の終了時点との間に設けられて吐出終了圧力を示す終了時近似直線と、立ち上がり近似直線および立ち下がり近似直線のそれぞれの間を接続して、定常圧力を示す定常直線とを有するように、吐出圧力評価方法を構成してもよい。かかる構成では、ノズルからの処理液の吐出の開始から終了までの期間全体における吐出圧力の時間変化を台形波形により近似して、当該期間全体における吐出圧力を適切に評価できる。
【0019】
また、評価対象期間のうち、評価対象期間より短い第2期間における吐出圧力の時間変化が持つ特徴量を第2特徴量として抽出する工程と、第2特徴量に基づき吐出圧力の時間変化を評価する工程とを実行することで、吐出圧力を評価するという評価項目を、N個の評価段階のうちの2番目の評価段階が有するように、吐出圧力評価方法を構成してもよい。かかる構成では、ノズルからの処理液の吐出の開始から終了までの期間全体より短い期間における吐出圧力の時間変化に基づき、吐出圧力を高精度に評価することができる。
【0020】
また、ノズルからの処理液の吐出の開始から所定の立ち上がり初期期間が、第2期間として設定され、立ち上がり初期期間を通じて、吐出圧力は時間経過に伴って増大し、立ち上がり初期期間における吐出圧力の時間変化の回帰曲線と、立ち上がり初期期間における吐出圧力の時間変化との差を示す特徴量が、第2特徴量として抽出されるように、吐出圧力評価方法を構成してもよい。かかる構成では、ノズルからの処理液の開始直後における吐出圧力の時間変化を加味して、吐出圧力を評価することができる。
【0021】
また、ノズルからの処理液の吐出の開始から、吐出圧力が所定圧力に増大するまでの立ち上がり期間が、第2期間として設定されるように、吐出圧力評価方法を構成してもよい。かかる構成では、立ち上がり期間における吐出圧力の時間変化を加味して、吐出圧力を評価することができる。
【0022】
具体的には、立ち上がり期間の長さが、第2特徴量として抽出されるように、吐出圧力評価方法を構成してもよい。かかる構成では、吐出圧力の立ち上がりの速さを加味して、吐出圧力を評価することができる。
【0023】
また、立ち上がり期間において、吐出圧力の時間変化の一回微分が所定の閾値と交差する回数が、第2特徴量として抽出されるように、吐出圧力評価方法を構成してもよい。かかる構成では、立ち上がり期間における吐出圧力の時間変化の滑らかさを加味して、吐出圧力を評価することができる。
【0024】
また、立ち上がり期間において、吐出圧力の時間変化の二回微分の絶対値が所定の閾値と交差する回数が、第2特徴量として抽出されるように、吐出圧力評価方法を構成してもよい。かかる構成では、立ち上がり期間における吐出圧力の時間変化の滑らかさを加味して、吐出圧力を評価することができる。
【0025】
また、立ち上がり期間において、吐出圧力の時間変化の二回微分が所定の正の閾値より大きくなる時間と、吐出圧力の時間変化の二回微分が、正の閾値と同じ絶対値を有する所定の負の閾値より小さくなる時間との比が、第2特徴量として抽出されるように、吐出圧力評価方法を構成してもよい。かかる構成では、立ち上がり期間の初期と終期とでの吐出圧力の時間変化の違いを加味して、吐出圧力を評価することができる。
【0026】
また、吐出圧力が所定圧力に増大するまでの所定の立ち上がり終期期間が、第2期間として設定され、立ち上がり終期期間における吐出圧力の時間変化を近似した立ち上がり終期近似波形と、立ち上がり終期期間における吐出圧力の時間変化との差を示す特徴量が、第2特徴量として抽出され、立ち上がり終期近似波形は、所定圧力よりも小さい圧力範囲において時間経過に伴って増大する吐出圧力の時間変化を直線近似することで求めた近似曲線に重なり、立ち上がり終期期間より後の定常期間での吐出圧力の時間変化の平均値である定常圧力まで時間経過に伴って線形に増大する立ち上がり終期近似直線と、立ち上がり終期近似直線から立ち上がり終期期間の終了時点まで延設された、定常圧力を示す延設直線とを有するように、吐出圧力評価方法を構成してもよい。かかる構成では、立ち上がり期間の終期における吐出圧力の失速の程度を加味して、吐出圧力を評価することができる。
【0027】
また、吐出圧力が最大値に達した時点から、吐出圧力の時間変化の二回微分が2回ゼロに交差した時点までの初期振動期間が、第2期間として設定され、初期振動期間における吐出圧力の最小値および初期振動期間より後の所定の定常期間における吐出圧力の平均値のうち小さい方の圧力と、吐出圧力の最大値との差が、第2特徴量として抽出されるように、吐出圧力評価方法を構成してもよい。かかる構成では、吐出圧力のオーバーシュートを加味して、吐出圧力を評価することができる。
【0028】
また、吐出圧力が所定圧力を超えた時点から所定の遷移期間が、第2期間として設定され、遷移期間より後の所定の定常期間における吐出圧力の平均値に対する、遷移期間における吐出圧力の差を示す特徴量が、第2特徴量として抽出されるように、吐出圧力評価方法を構成してもよい。かかる構成では、吐出圧力が所定圧力に到った後の吐出圧力の安定度を加味して、吐出圧力を評価することができる。
【0029】
また、吐出圧力が所定圧力を超えた時点から、ノズルからの処理液の吐出の終了に向けて吐出圧力の減少が開始する時点までの定圧期間が、第2期間として設定され、定圧期間における吐出圧力の最大値と最小値との差を示す特徴量が、第2特徴量として抽出されるように、吐出圧力評価方法を構成してもよい。かかる構成では、吐出圧力の定圧期間における吐出圧力の安定性を加味して、吐出圧力を評価することができる。
【0030】
また、Nが3以上である吐出圧力評価方法であって、評価対象期間のうち、評価対象期間より短い第3期間における吐出圧力の時間変化が持つ特徴量を第3特徴量として抽出する工程と、第3特徴量に基づき吐出圧力の時間変化を評価する工程とを実行することで、吐出圧力を評価するという評価項目を、N個の評価段階のうちの3番目の評価段階が有するように、吐出圧力評価方法を構成してもよい。かかる構成では、ノズルからの処理液の吐出の開始から終了までの期間全体より短い期間における吐出圧力の時間変化に基づき、吐出圧力を高精度に評価することができる。
【0031】
また、ノズルからの処理液の吐出の開始後に、吐出圧力が下側基準値から下側基準値より大きい上側基準値まで時間経過とともに増加する圧力上昇期間が、第3期間として設定され、下側基準値と上側基準値との間における吐出圧力の測定値のうちの一の測定値であって、下側基準値と一の測定値との間の区間において吐出圧力の時間変化に対する線形回帰により求めた近似直線と吐出圧力の時間変化との二乗平均平方誤差と、一の測定値と上側基準値との間の区間において吐出圧力の時間変化に対する線形回帰により求めた近似直線と吐出圧力の時間変化との二乗平均平方誤差との和が最小となる一の測定値を求め、下側基準値と一の測定値との間の直線の傾きと、一の測定値と上側基準値との間の直線の傾きとの比をが、第3特徴量として抽出されるように、吐出圧力評価方法を構成してもよい。かかる構成では、吐出圧力の増大の線形性を加味して、吐出圧力を評価することができる。
【0032】
また、吐出圧力が所定圧力に増大するまでの所定の立ち上がり終期期間が、第3期間として設定され、立ち上がり終期期間における吐出圧力の時間変化を近似した立ち上がり終期近似波形と、立ち上がり終期期間における吐出圧力の時間変化との差を示す特徴量が、第3特徴量として抽出され、立ち上がり終期近似波形は、所定圧力よりも小さい圧力範囲において時間経過に伴って増大する吐出圧力の時間変化を直線近似することで求めた近似曲線に重なり、時間経過に伴って所定圧力まで線形に増大する立ち上がり終期近似直線と、立ち上がり終期近似直線に接続されて、所定圧力を示す延設直線とを有するように、吐出圧力評価方法を構成してもよい。かかる構成では、立ち上がり期間の終期における吐出圧力の失速の程度を加味して、吐出圧力を評価することができる。
【0033】
また、吐出圧力が最大値に達した時点から、吐出圧力の時間変化の二回微分が2回ゼロに交差した時点までの初期振動期間が、第3期間として設定され、吐出圧力の最大値から、初期振動期間より後の所定の定常期間における吐出圧力の平均値である定常圧力を減算した値と、定常圧力から初期振動期間における吐出圧力の最小値を減算した値との和が、第3特徴量として抽出されるように、吐出圧力評価方法を構成してもよい。かかる構成では、吐出圧力のオーバーシュートを加味して、吐出圧力を評価することができる。
【発明の効果】
【0034】
以上のように、本発明によれば、ノズルから処理液を吐出するために処理液に与えられる吐出圧力の評価を、吐出圧力の適否に応じた合理的な時間で行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】
図1は本発明に係る基板処理装置の一実施形態である塗布装置の全体構成を模式的に示す図。
【
図3】制御ユニットの構成の一例を示すブロック図。
【
図4】吐出圧力評価プログラムに基づき実行される吐出圧力評価方法の一例を示すフローチャート。
【
図5】吐出圧力の評価に用いる各期間を説明するための図。
【
図6】吐出圧力の時間変化に対して圧力評価部が実行する演算の一例を模式的に示す図。
【
図7】特徴量Fv1に基づき吐出圧力の時間変化を評価する評価項目を説明するための図。
【
図8】特徴量Fv2に基づき吐出圧力の時間変化を評価する評価項目を説明するための図。
【
図9】特徴量Fv3に基づき吐出圧力の時間変化を評価する評価項目を説明するための図。
【
図10A】特徴量Fv4に基づき吐出圧力の時間変化を評価する評価項目を説明するための図。
【
図10B】特徴量Fv4に基づく評価によって不適正と判断される吐出圧力の時間変化の例を示す図。
【
図11A】特徴量Fv5に基づき吐出圧力の時間変化を評価する評価項目を説明するための図。
【
図11B】特徴量Fv5に基づく評価によって不適正と判断される吐出圧力の時間変化の例を示す図。
【
図12】特徴量Fv6に基づき吐出圧力の時間変化を評価する評価項目を説明するための図。
【
図13】特徴量Fv7に基づき吐出圧力の時間変化を評価する評価項目を説明するための図。
【
図14】特徴量Fv8に基づき吐出圧力の時間変化を評価する評価項目を説明するための図。
【
図15】特徴量Fv9に基づき吐出圧力の時間変化を評価する評価項目を説明するための図。
【
図16】特徴量Fv10に基づき吐出圧力の時間変化を評価する評価項目を説明するための図。
【
図17】特徴量Fv11に基づき吐出圧力の時間変化を評価する評価項目を説明するための図。
【
図18】特徴量Fv12に基づき吐出圧力の時間変化を評価する評価項目を説明するための図。
【
図19】特徴量Fv13に基づき吐出圧力の時間変化を評価する評価項目を説明するための図。
【
図20】特徴量Fv14に基づき吐出圧力の時間変化を評価する評価項目を説明するための図。
【
図21】測定結果評価の詳細を示すフローチャート。
【
図22】
図21のフローチャートに従って実行される動作の一例を模式的に示す図。
【
図23】吐出圧力の評価項目の変形例で用いる各期間を説明するための図。
【
図24】特徴量Fv1_1に基づき吐出圧力の時間変化を評価する評価項目の変形例を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0036】
図1は本発明に係る基板処理装置の一実施形態である塗布装置の全体構成を模式的に示す図である。この塗布装置1は、
図1の左手側から右手側に向けて水平姿勢で搬送される基板Sの上面Sfに塗布液を塗布するスリットコータである。なお、以下の各図において装置各部の配置関係を明確にするために、基板Sの搬送方向を「X方向」とし、
図1の左手側から右手側に向かう水平方向を「+X方向」と称し、逆方向を「-X方向」と称する。また、X方向と直交する水平方向Yのうち、装置の正面側を「-Y方向」と称するとともに、装置の背面側を「+Y方向」と称する。さらに、鉛直方向Zにおける上方向および下方向をそれぞれ「+Z方向」および「-Z方向」と称する。
【0037】
塗布装置1では、基板Sの搬送方向Dt(+X方向)に沿って、入力コンベア100、入力移載部2、浮上ステージ部3、出力移載部4、出力コンベア110がこの順に近接して配置されており、以下に詳述するように、これらにより略水平方向に延びる基板Sの搬送経路が形成されている。なお、以下の説明において基板Sの搬送方向Dtと関連付けて位置関係を示すとき、「基板Sの搬送方向Dtにおける上流側」を単に「上流側」と、また「基板Sの搬送方向Dtにおける下流側」を単に「下流側」と略することがある。この例では、ある基準位置から見て相対的に(-X)側が「上流側」、(+X)側が「下流側」に相当する。
【0038】
処理対象である基板Sは
図1の左手側から入力コンベア100に搬入される。入力コンベア100は、コロコンベア101と、これを回転駆動する回転駆動機構102とを備えており、コロコンベア101の回転により基板Sは水平姿勢で下流側、つまり(+X)方向に搬送される。入力移載部2は、コロコンベア21と、これを回転駆動する機能および昇降させる機能を有する回転・昇降駆動機構22とを備えている。コロコンベア21が回転することで、基板Sはさらに(+X)方向に搬送される。また、コロコンベア21が昇降することで基板Sの鉛直方向Zの位置が変更される。このように構成された入力移載部2により、基板Sは入力コンベア100から浮上ステージ部3に移載される。
【0039】
浮上ステージ部3は、基板の搬送方向Dtに沿って3分割された平板状のステージを備える。すなわち、浮上ステージ部3は入口浮上ステージ31、塗布ステージ32および出口浮上ステージ33を備えており、これらの各ステージの上面は互いに同一平面の一部をなしている。さらに、浮上ステージ部3は、リフトピン駆動機構34、浮上制御機構35および昇降駆動機構36を有する。リフトピン駆動機構34は、入口浮上ステージ31に設けられたリフトピンを昇降させることができる。浮上制御機構35は、基板Sを浮上させるための圧縮空気を浮上ステージ部3の各ステージに供給することができる。昇降駆動機構36は、出口浮上ステージ33を昇降させることができる。
【0040】
入口浮上ステージ31および出口浮上ステージ33のそれぞれの上面には浮上制御機構35から供給される圧縮空気を噴出する噴出孔がマトリクス状に多数設けられており、噴出される気流から付与される浮力により基板Sが浮上する。こうして基板Sの下面Sbがステージ上面から離間した状態で水平姿勢に支持される。基板Sの下面Sbとステージ上面との距離、つまり浮上量は、例えば10マイクロメートルないし500マイクロメートルとすることができる。
【0041】
一方、塗布ステージ32の上面では、圧縮空気を噴出する噴出孔と、基板Sの下面Sbとステージ上面との間の空気を吸引する吸引孔とが交互に配置されている。浮上制御機構35が噴出孔からの圧縮空気の噴出量と吸引孔からの吸引量とを制御することにより、基板Sの下面Sbと塗布ステージ32の上面との距離が精密に制御される。これにより、塗布ステージ32の上方を通過する基板Sの上面Sfの鉛直方向Zの位置が規定値に制御される。浮上ステージ部3の具体的構成としては、例えば特許第5346643号に記載のものを適用可能である。なお、塗布ステージ32での浮上量については後で詳述するセンサ61、62による検出結果に基づいて制御ユニット9により算出され、また気流制御によって高精度に調整可能となっている。
【0042】
入力移載部2を介して浮上ステージ部3に搬入される基板Sは、コロコンベア21の回転により(+X)方向への推進力を付与されて、入口浮上ステージ31上に搬送される。入口浮上ステージ31、塗布ステージ32および出口浮上ステージ33は基板Sを浮上状態に支持するが、基板Sを水平方向に移動させる機能を有していない。浮上ステージ部3における基板Sの搬送は、入口浮上ステージ31、塗布ステージ32および出口浮上ステージ33の下方に配置された基板搬送部5により行われる。
【0043】
基板搬送部5は、基板Sの下面周縁部に部分的に当接することで基板Sを下方から支持するチャック機構51と、チャック機構51上端の吸着部材に設けられた吸着パッド(図示省略)に負圧を与えて基板Sを吸着保持させる機能およびチャック機構51をX方向に往復走行させる機能を有する吸着・走行制御機構52とを備えている。チャック機構51が基板Sを保持した状態では、基板Sの下面Sbは浮上ステージ部3の各ステージの上面よりも高い位置に位置している。したがって、基板Sは、チャック機構51により周縁部を吸着保持されつつ、浮上ステージ部3から付与される浮力により全体として水平姿勢を維持する。なお、チャック機構51により基板Sの下面Sbを部分的に保持した段階で基板Sの上面の鉛直方向Zの位置を検出するために板厚測定用のセンサ61がコロコンベア21の近傍に配置されている。このセンサ61の直下位置に、基板Sを保持していない状態のチャック(図示省略)が位置することで、センサ61は吸着部材の上面、つまり吸着面の鉛直方向Zの位置を検出可能となっている。
【0044】
入力移載部2から浮上ステージ部3に搬入された基板Sをチャック機構51が保持し、この状態でチャック機構51が(+X)方向に移動することで、基板Sが入口浮上ステージ31の上方から塗布ステージ32の上方を経由して出口浮上ステージ33の上方へ搬送される。搬送された基板Sは、出口浮上ステージ33の(+X)側に配置された出力移載部4に受け渡される。
【0045】
出力移載部4は、コロコンベア41と、これを回転駆動する機能および昇降させる機能を有する回転・昇降駆動機構42とを備えている。コロコンベア41が回転することで、基板Sに(+X)方向への推進力が付与され、基板Sは搬送方向Dtに沿ってさらに搬送される。また、コロコンベア41が昇降することで基板Sの鉛直方向Zの位置が変更される。出力移載部4により、基板Sは出口浮上ステージ33の上方から出力コンベア110に移載される。
【0046】
出力コンベア110は、コロコンベア111と、これを回転駆動する回転駆動機構112とを備えており、コロコンベア111の回転により基板Sはさらに(+X)方向に搬送され、最終的に塗布装置1外へと払い出される。なお、入力コンベア100および出力コンベア110は塗布装置1の構成の一部として設けられてもよいが、塗布装置1とは別体のものであってもよい。また例えば、塗布装置1の上流側に設けられる別ユニットの基板払い出し機構が入力コンベア100として用いられてもよい。また、塗布装置1の下流側に設けられる別ユニットの基板受け入れ機構が出力コンベア110として用いられてもよい。
【0047】
このようにして搬送される基板Sの搬送経路上に、基板Sの上面Sfに塗布液を塗布するための塗布機構7が配置される。塗布機構7はスリット状の吐出口を有するスリットノズル(以下、単に「ノズル」という)71を有している。また、図示を省略するが、ノズル71には位置決め機構が接続されており、位置決め機構によりノズル71は塗布ステージ32の上方の塗布位置(
図1中で実線で示される位置)や後で説明するメンテナンス位置に位置決めされる。さらに、ノズル71には、塗布液供給機構8が接続されており、塗布液供給機構8から塗布液が供給され、ノズル下部に下向きに開口する吐出口から塗布液が吐出される。
【0048】
図2は塗布液供給機構の構成を示す図である。塗布液供給機構8は、
図2に示すように、塗布液をノズル71に送給するための送給源として体積変化により塗布液を送給するポンプ81を用いている。ポンプ81としては、例えば特開平10-61558号公報に記載されたベローズタイプのポンプを使用することができる。このポンプ81は、径方向に弾性膨張収縮自在の可撓性チューブ811を有している。この可撓性チューブ811の一方端は配管82により塗布液補充ユニット83と接続され、他方端は配管84によりノズル71と接続されている。
【0049】
可撓性チューブ811の外側には、軸方向に弾性変形自在のベローズ812が配置されている。このベローズ812は小型ベローズ部813と大型ベローズ部814とを有し、可撓性チューブ811とベローズ812との間のポンプ室815には非圧縮性媒体が封入されている。また、小型ベローズ部813と大型ベローズ部814との間に作動ディスク部816が設けられている。作動ディスク部816には駆動部817が接続されている。制御ユニット9からの指令に応じて駆動部817が作動すると、所定の移動パターン(時間経過に対する作動ディスク部816の速度の変化を示すパターン)で作動ディスク部816が軸方向に変位し、ベローズ812の内側の容積を変化させる。これによって、可撓性チューブ13が径方向に膨張収縮してポンプ動作を実行し、塗布液補充ユニット83から適宜補給される塗布液をノズル71に向けて送給する。このため、作動ディスク部816の移動パターンはノズル71から吐出される塗布液の吐出特性(吐出圧力の時間変化)と密接に関連しており、移動パターンに応じて所定の吐出特性が得られる。
【0050】
塗布液補充ユニット83は塗布液を貯留する貯留タンク831を有している。この貯留タンク831は配管82によりポンプ81と接続されている。また、配管82には、開閉弁833が介挿されている。この開閉弁833は制御ユニット9から補充指令に応じて開成し、貯留タンク831内の塗布液をポンプ81の可撓性チューブ811に補充可能とする。逆に、制御ユニット9から補充停止指令に応じて閉成し、貯留タンク831からポンプ81の可撓性チューブ811への塗布液の補充を規制する。
【0051】
ポンプ81の出力側(同図の左手側)に接続された配管84には、開閉弁85が介挿されており、制御ユニット9からの開閉指令に応じて開閉する。これによってノズル71への塗布液の送液と送液停止を切替可能となっている。また、配管84には、圧力計86が取り付けられており、ノズル71に送液される塗布液の圧力(吐出圧力)を検出し、その検出結果(圧力値)を制御ユニット9に出力する。
【0052】
このように塗布液供給機構8から塗布液が供給されるノズル71には、
図2に示すように、基板Sの浮上高さを非接触で検知するための浮上高さ検出用のセンサ62が設置されている。このセンサ62によって、浮上した基板Sと、塗布ステージ32のステージ面の上面との離間距離を測定することが可能であり、その検出値に応じて制御ユニット9が位置決め機構(図示省略)を制御することでノズル71が下降する位置を調整する。なお、センサ62としては、光学式センサや、超音波式センサなどを用いることができる。
【0053】
ノズル71に対して所定のメンテナンスを行うために、
図1に示すように、塗布機構7にはノズル洗浄待機ユニット72が設けられている。ノズル洗浄待機ユニット72は、主にローラ721、洗浄部722、ローラバット723などを有している。そして、これらによってノズル洗浄および液だまり形成を行い、ノズル71の吐出口を次の塗布処理に適した状態に整える。また、ノズル洗浄待機ユニット72が設けられた位置、つまりメンテナンス位置にノズル71を位置させ、塗布液に加わる吐出圧力を評価するためにノズル71から塗布液を吐出する疑似吐出が実行される。
【0054】
さらに、塗布装置1には、装置各部の動作を制御するための制御ユニット9(
図3)が具備されている。
図3は制御ユニットの構成の一例を示すブロック図である。
図3に示すように、制御ユニット9は、演算部91、記憶部93およびUI(User Interface)95を備えるコンピュータである。演算部91はCPU(Central Processing Unit)などで構成されるプロセッサであり、吐出圧力評価プログラム97を実行することで、吐出圧力の測定を実行する測定実行部911と、測定された吐出圧力を評価する圧力評価部913とを構築する。記憶部93は、HDD(Hard Disk Drive)あるいはSDD(Solid State Drive)などの記憶装置であり、上記の吐出圧力評価プログラム97や、吐出圧力評価プログラム97の実行に伴って測定された吐出圧力測定データ99を記憶する。この吐出圧力評価プログラム97は、制御ユニット9とは別に設けられた記録媒体Mによって例えば提供される。この記録媒体Mは、吐出圧力評価プログラム97をコンピュータ(制御ユニット9)によって読み出し可能に記録する。かかる記録媒体Mとしては、例えばUSB(Universal Serial Bus)メモリ、メモリカードあるいは外部のサーバコンピュータの記憶装置などが挙げられる。また、UI95は、ユーザに情報を表示するディスプレイや、ユーザによる入力操作を受け付ける入力機器を有する。このような構成を備える制御ユニット9としては、例えばデスクトップ型、ラップトップ型あるいはタブレット型の各種のコンピュータを用いることができる。
【0055】
図4は吐出圧力評価プログラムに基づき実行される吐出圧力評価方法の一例を示すフローチャートである。ステップ101では、測定実行部911が、吐出圧力評価プログラム97に規定される移動パターンに基づき作動ディスク部816を移動させることで、ノズル71から塗布液を吐出させる(疑似吐出)。これによって、作動ディスク部816は、大局的には、速度ゼロから所定の目標速度まで加速すると、目標速度で等速移動してから、当該目標速度から速度ゼロまで減速する。ただし、特許文献2に示されているように、作動ディスク部816の速度が最高速度に達してから目標速度に安定するまでの局所的な期間においては、作動ディスク部816の速度(パラメータ)が調整されて、移動パターンが設定されている。
【0056】
具体的には、吐出圧力が次の順
・吐出圧力が、初期圧力Piから当該初期圧力Piより大きい目標圧力Ptまで増加する
・吐出圧力が、目標圧力Ptで安定する
・吐出圧力が、目標圧力Ptから初期圧力Piまで減少する
で変化するように、作動ディスク部816の移動パターンが吐出圧力評価プログラム97に規定されている。
【0057】
さらに、ステップS101では、測定実行部911は、作動ディスク部816の移動に伴うノズル71からの塗布液の吐出と並行して、所定のサンプリング周期で圧力計86による吐出圧力の測定値を周期的に取得する。こうして、ノズル71から塗布液が吐出される吐出期間Tt(
図5)において、塗布液に与えられた吐出圧力を測定した結果が取得されて、吐出圧力測定データ99として記憶部93に記憶される。この吐出圧力測定データ99は、時刻と、当該時刻で測定された吐出圧力の値とを対応付けて示す。
【0058】
ステップS102では、圧力評価部913が吐出圧力測定データ99が示す吐出圧力の時間変化を所定の評価項目に従って評価する。この評価項目は、後述するように、吐出圧力測定データ99が示す吐出圧力の時間変化から所定の特徴量を抽出して、この特徴量に基づき吐出圧力の時間変化を評価する。続いては、吐出圧力測定データ99が示す吐出圧力の時間変化を評価するための各評価項目について詳述する。
【0059】
図5は吐出圧力の評価に用いる各期間を説明するための図である。
図5では、横軸で時刻を表しつつ縦軸で吐出圧力を示すグラフにおいて、吐出圧力の時間変化が模式的に示されている。なお、かかるグラフの表記は、後に示す各図においても同様である。
図5の例では、ノズル71からの塗布液の吐出を開始する前からノズル71からの塗布液の吐出を終了した後に亘って(すなわち、吐出期間Ttの前後に亘って)、吐出圧力測定データ99が取得される。なお、ここの例では、ノズル71からの塗布液の吐出を開始する時刻taにおける吐出圧力と、ノズル71からの塗布液の吐出を終了した時刻teにおける吐出圧力とは、初期圧力Piとなっている。ただし、吐出の開始時および終了時それぞれの圧力が、常に初期圧力Piに一致するとは限らない。
【0060】
図5に示すように、吐出期間Ttは、4つの期間Ta、Tb、Tc、Tdに分割することができる。立ち上がり期間Ta、遷移期間Tb、定常期間Tcおよび立ち下がり期間Tdの詳細は次の通りである。
【0061】
立ち上がり期間Taは、塗布液供給機構8がノズル71からの塗布液の吐出を開始する時刻ta(すなわち、塗布液供給機構8が作動ディスク部816の移動を開始する時刻ta)から、吐出圧力が目標圧力Ptに到達する時刻tbまでの期間である。つまり、時刻taにおいてノズル71からの塗布液の吐出が開始されると、吐出圧力は、時刻taから時刻tbまでの間に、初期圧力Piから目標圧力Ptまで増加する。
【0062】
遷移期間Tbは、時刻tbから、所定の振動減衰期間を経過する時刻tcまでの期間である。この振動減衰期間は、吐出圧力の時間変化が安定するのに要する期間であり、例えばユーザによるUI95への入力操作によって設定されて、記憶部93に記憶されている。
【0063】
定常期間Tcは、時刻tcから、塗布液供給機構8が吐出圧力の減少を開始する時刻td(すなわち、塗布液供給機構8が作動ディスク部816の目標速度からの減速を開始する時刻td)までの期間である。つまり、塗布液供給機構8は、時刻tcから時刻tdまでの間、作動ディスク部816を等速で移動させ、時刻tdに作動ディスク部816の減速を開始する。なお、定常期間Tcにおいて、吐出圧力は基本的に目標圧力Ptで安定する。ただし、定常期間Tcにおいても、吐出圧力の時間変化は微小な振動を含んでおり、吐出圧力は、目標圧力Ptより大きくなったり小さくなったりする。
【0064】
また、遷移期間Tbと定常期間Tcとで定圧期間Tbcが構成される。つまり、定圧期間Tbcは、時刻tbから時刻tdの間の期間となる。
【0065】
立ち下がり期間Tdは、時刻tdから、塗布液供給機構8がノズル71からの塗布液の吐出を終了する時刻te(すなわち、塗布液供給機構8が作動ディスク部816を停止させる時刻te)までの期間である。つまり、吐出圧力は、時刻tdから時刻teまでの間に初期圧力Piまで減少し、時刻teにおいて、ノズル71からの塗布液の吐出が停止する。
【0066】
図6は吐出圧力の時間変化に対して圧力評価部が実行する演算の一例を模式的に示す図である。
図6に示すように、圧力評価部913は、吐出圧力の時間変化を時間で微分することで、吐出圧力の時間変化の1回微分D1を算出する。さらに、圧力評価部913は、吐出圧力の時間変化の1回微分D1を時間で微分することで、吐出圧力の時間変化の2回微分D2を算出する。また、圧力評価部913は、次の各式
MAE(α、β)=(1/n)・(Σ|α-β|)
RMSE(α、β)=((1/n)・(Σ(α-β)
2))
1/2
n=データ数
に基づき、平均絶対誤差MAEおよび二乗平均平方根誤差RMSEを算出する。
【0067】
図7は特徴量Fv1に基づき吐出圧力の時間変化を評価する評価項目を説明するための図である。
図7の評価項目は、定常期間Tcにおける吐出圧力の平均値(すなわち定常圧力Pm)と初期圧力Piとの差に相当する振幅を有する台形波形と、吐出圧力測定データ99との誤差(理想台形絶対誤差)に基づき、吐出圧力測定データ99が示す吐出圧力の時間変化を評価する。
【0068】
具体的には、立ち上がり期間Taのうち、所定の下側基準圧力と、当該下側基準圧力より大きい所定の上側基準圧力との間における吐出圧力の時間変化に対して線形回帰分析が実行されて、立ち上がり回帰直線Lr_Rが算出される。この立ち上がり回帰直線Lr_Rは、時刻t11から時刻t12の間で、初期圧力Piから定常圧力Pmまで線形に増加する。
【0069】
同様に、立ち下がり期間Tdのうち、上側基準圧力と下側基準圧力との間における吐出圧力の時間変化に対して線形回帰分析が実行されて、立ち下がり回帰直線Lr_Fが算出される。この立ち下がり回帰直線Lr_Fは、時刻t13から時刻t14の間で、定常圧力Pmから初期圧力Piまで線形に減少する。
【0070】
なお、下側基準圧力および上側基準圧力は、初期圧力Piより大きくて目標圧力Ptより小さい圧力であり、例えばユーザによるUI95への入力操作によって設定されて、記憶部93に記憶されている。ここの例では、下側基準圧力は、初期圧力Piと目標圧力Ptとの差の絶対値の20%の圧力を初期圧力Piに加算した圧力であり、上側基準圧力は、初期圧力Piと目標圧力Ptとの差の絶対値の80%の圧力を初期圧力Piに加算した圧力である。
【0071】
また、時刻taから時刻t11までの区間に対して、開始時近似直線Lr_sが設定される。この開始時近似直線Lr_sは、初期圧力Piを示す傾きがゼロの直線である。つまり、開始時近似直線Lr_sは、ノズル71からの塗布液の吐出開始時点(時刻ta)から、立ち上がり回帰直線Lr_Rの開始時点までを接続する直線である。なお、回帰直線の状態(傾き)によっては、時刻t11は時刻taより前になることがあり、時刻t12は時刻tbより後になることもある。その結果、t11<taとなる場合には、開始時近似直線Lr_sは省略される。
【0072】
また、時刻t14から時刻teまでの区間に対して、終了時近似直線Lr_eが設定される。この終了時近似直線Lr_eは、初期圧力Piを示す傾きがゼロの直線である。つまり、終了時近似直線Lr_eは、立ち下がり回帰直線Lr_Fの終了時点から、ノズル71からの塗布液の吐出終了時点(時刻te)までを接続する直線である。なお、te<t14となる場合には、終了時近似直線Lr_eは省略される。
【0073】
さらに、時刻t12から時刻t13の区間に対して、定常直線Lr_mが設定される。この定常直線Lr_mは、定常圧力Pmを示す傾きがゼロの直線である。つまり、定常直線Lr_mは、立ち上がり回帰直線Lr_Rの終了時点(時刻t12)と立ち下がり回帰直線Lr_Fの開始時点(時刻t13)とを接続する、定常圧力Pmを示す直線である。
【0074】
こうして、時系列で配列された開始時近似直線Lr_s、立ち上がり回帰直線Lr_R、定常直線Lr_m、立ち下がり回帰直線Lr_Fおよび終了時近似直線Lr_eで構成された近似波形WF1が算出される。そして、圧力評価部913は、時刻taから時刻teまでの吐出期間Ttの全体において、吐出圧力測定データ99と近似波形WF1との間の平均絶対誤差MAE(理想台形絶対誤差)を、特徴量Fv1として算出する。また、圧力評価部913は、所定の閾値Th1(例えば、0.05)に基づき、特徴量Fv1を0以上で2以下の範囲に正規化する。具体的には、次式
Fv1<Th1であるなら、Fv1=0
Fv1≧Th1であるなら、Fv1=(Fv1+1-Th1)×c1
に基づき、特徴量Fv1を、規格化された特徴量Fv1(すなわち、評価値V1)に変換する。ここで、係数c1は規格化係数であり、特徴量Fv1が2以下の範囲に収まる値(例えば、15)に予め設定されている。
【0075】
図7の特徴量Fv1に基づく評価によれば、吐出期間Ttの全体における吐出圧力の時間変化が理想的な形状(すなわち、台形形状)から大きく乖離する場合に、この吐出圧力に対して大きなスコア(すなわち、悪い評価)を与えることができる。
【0076】
図8は特徴量Fv2に基づき吐出圧力の時間変化を評価する評価項目を説明するための図である。
図8の評価項目は、吐出圧力の立ち上がりの滑らかさを評価する。具体的には、立ち上がり期間Taのうち、下側基準圧力P2_lと、当該下側基準圧力P2_lより大きい上側基準圧力P2_uとの間における吐出圧力の時間変化に対して曲線回帰分析が実行されて、立ち上がり回帰曲線Nrが算出される。この曲線回帰分析は二次曲線によって実行される。
【0077】
下側基準圧力P2_lは初期圧力Piに設定される。一方、上側基準圧力P2_uは、下側基準圧力P2_lより大きくて目標圧力Ptより小さい圧力であり、例えばユーザによるUI95への入力操作によって設定されて、記憶部93に記憶されている。ここの例では、上側基準圧力P2_uは、初期圧力Piと目標圧力Ptとの差の絶対値の20%の圧力を初期圧力Piに加算した圧力である。この立ち上がり回帰曲線Nrは、時刻t21から時刻t22の間で、下側基準圧力P2_l(初期圧力Pi)から上側基準圧力P2_uまで増加する。なお、時刻t21は時刻taに一致し、時刻t22は時刻taより後で時刻tbより前の時刻である。
【0078】
こうして、立ち上がり回帰曲線Nrで構成された波形WF2が算出される。そして、圧力評価部913は、時刻t21ら時刻t22までの立ち上がり初期期間Ta_sにおいて、吐出圧力測定データ99と波形WF2との間の二乗平均平方根誤差RMSEを、特徴量Fv2として算出する。また、圧力評価部913は、所定の閾値Th2(例えば、0.05)に基づき、特徴量Fv2を0以上で2以下の範囲に正規化する。具体的には、次式
Fv2<Th2であるなら、Fv2=0
Fv2≧Th2であるなら、Fv2=2
に基づき、特徴量Fv2を、規格化された特徴量Fv2(すなわち、評価値V2)に変換する。
【0079】
図8の特徴量Fv2に基づく評価によれば、ノズル71からの塗布液の吐出開始前の状態の影響を受けて、吐出開始直後の吐出圧力に異常が発生した場合に、この吐出圧力に対して大きなスコア(すなわち、悪い評価)を与えることができる。なお、曲線回帰分析に使用可能な曲線は二次曲線に限られず、指数関数などの別の曲線でもよい。
【0080】
図9は特徴量Fv3に基づき吐出圧力の時間変化を評価する評価項目を説明するための図である。
図9の評価項目は、立ち上がり期間Taが一定期間内に収まっているかを評価する。具体的には、圧力評価部913は、初期圧力Piから目標圧力Ptへ吐出圧力が増大するのに要する時刻taから時刻tbまでの立ち上がり期間Taの長さ(=tb-ta)を特徴量Fv3として算出する。また、圧力評価部913は、所定の閾値Th3(例えば、350ms)に基づき、特徴量Fv3を0以上で1以下の範囲に正規化する。具体的には、次式
Fv3<Th3であるなら、Fv3=0
Fv3≧Th3であるなら、Fv2=1
に基づき、特徴量Fv3を、規格化された特徴量Fv3(すなわち、評価値V3)に変換する。
【0081】
図9の特徴量Fv3に基づく評価によれば、目標圧力Ptまでの立ち上がりに時間を要する吐出圧力に対して大きなスコア(すなわち、悪い評価)を与えることができる。
【0082】
図10Aは特徴量Fv4に基づき吐出圧力の時間変化を評価する評価項目を説明するための図であり、
図10Bは特徴量Fv4に基づく評価によって不適正と判断される吐出圧力の時間変化の例を示す図である。
図10Aの評価項目は、吐出圧力の立ち上がりにおける異常の有無を評価する。具体的には、圧力評価部913は、時刻taから時刻tbまでの立ち上がり期間Taについて、吐出圧力の時間変化の1回微分D1を算出して、1回微分波形WF4を求める。
【0083】
そして、圧力評価部913は、立ち上がり期間Taにおいて、1回微分波形WF4が、所定の閾値Th4と交差する回数を、特徴量Fv4として求める。
図10Aの例では、1回微分波形WF4と閾値Th4(例えば、0.002)とは、時刻t41および時刻t42のそれぞれで交差しており、交差回数(特徴量Fv4)は2回となる。また、圧力評価部913は、特徴量Fv4を0以上で1以下の範囲に正規化する。具体的には、次式
Fv4≦2であるなら、Fv4=0
Fv4>2であるなら、Fv4=1
に基づき、特徴量Fv4を、規格化された特徴量Fv4(すなわち、評価値V4)に変換する。
【0084】
図10Aの特徴量Fv4に基づく評価によれば、立ち上がり期間Taにおける吐出圧力の時間変化に段が生じた場合に(例えば、
図10Bに示すように)、この吐出圧力に対して大きなスコア(すなわち、悪い評価)を与えることができる。
【0085】
図11Aは特徴量Fv5に基づき吐出圧力の時間変化を評価する評価項目を説明するための図であり、
図11Bは特徴量Fv5に基づく評価によって不適正と判断される吐出圧力の時間変化の例を示す図である。
図11Aの評価項目は、吐出圧力の立ち上がりにおける異常の有無を評価する。具体的には、圧力評価部913は、時刻taから時刻tbまでの立ち上がり期間Taについて、吐出圧力の時間変化の2回微分D2を算出して、2回微分波形WF5を求める。
【0086】
そして、圧力評価部913は、立ち上がり期間Taにおいて、2回微分波形WF5の絶対値が、所定の閾値Th5と交差する回数を、特徴量Fv5として求める。
図11Aの例では、2回微分波形WF5の絶対値と閾値Th5(例えば、0.0002)とは、時刻t51、t52、t53およびt54のそれぞれで交差しており、交差回数(特徴量Fv5)は4回となる。また、圧力評価部913は、特徴量Fv5を0以上で1以下の範囲に正規化する。具体的には、次式
Fv5=4であるなら、Fv5=0
Fv5≠4であるなら、Fv5=1
に基づき、特徴量Fv5を、規格化された特徴量Fv5(すなわち、評価値V5)に変換する。
【0087】
図11Aの特徴量Fv5に基づく評価によれば、立ち上がり期間Taにおける吐出圧力の時間変化に段が生じた場合に(例えば、
図11Bに示すように)、この吐出圧力に対して大きなスコア(すなわち、悪い評価)を与えることができる。
【0088】
図12は特徴量Fv6に基づき吐出圧力の時間変化を評価する評価項目を説明するための図である。
図12の評価項目は、吐出圧力の立ち上がりが後半において失速していないかを評価する。具体的には、圧力評価部913は、時刻taから時刻tbまでの立ち上がり期間Taについて、吐出圧力の時間変化の2回微分D2を算出して、2回微分波形WF6を求める。
【0089】
そして、圧力評価部913は、立ち上がり期間Taにおいて、2回微分波形WF6が、所定の正の閾値(Th5)より大きくなる時間T_1stと、2回微分波形WF6が所定の負の閾値(-Th5)より小さくなる時間T_2ndとをそれぞれ求める。ここで、正の閾値と負の閾値とは、同一の絶対値(Th5)を有して、互いに異なる符号を有する。かかる正および負の閾値の絶対値(Th5)は、上記の特徴量Fv5による評価で用いた閾値Th5のそれと等しい。そして、圧力評価部913は、これらの時間の比(=T_1st/T_2nd)を、特徴量Fv6として求める。さらに、圧力評価部913は、次式
Fv6=|1-Fv6|
に基づき、特徴量Fv6を変換する。
【0090】
また、圧力評価部913は、こうして変換された特徴量Fv6を、所定の閾値Th6(例えば、0.2)を用いて、0以上で2以下の範囲に正規化する。具体的には、次式
Fv6<Th6であるなら、Fv6=0
Fv6≧Th6であるなら、Fv6=f(Fv6)
f(γ)=4×γ-0.8
に基づき、特徴量Fv6を、規格化された特徴量Fv6(すなわち、評価値V6)に変換する。なお、γを変数とする関数f(γ)は、ここの例に限られず、任意に変更できる。
【0091】
塗布液の塗布対象となる基板Sの搬送速度は、加速期間の後半においても失速することなく目標速度に到達する。したがって、塗布液に与えられる吐出圧力も立ち上がり期間Taにおいて失速することなく、目標圧力Ptに到達することが好適となる。これに対して、
図12の特徴量Fv6に基づく評価によれば、立ち上がり期間Taにおいて吐出圧力が失速した場合に、この吐出圧力に対して大きなスコア(すなわち、悪い評価)を与えることができる。
【0092】
図13は特徴量Fv7に基づき吐出圧力の時間変化を評価する評価項目を説明するための図である。
図13の評価項目は、立ち上がりの終了時における吐出圧力の時間変化の鋭さを評価する。具体的には、立ち上がり期間Taのうち、下側基準圧力P7_lと、当該下側基準圧力P7_lより大きい上側基準圧力P7_uとの間における吐出圧力の時間変化に対して直線回帰分析が実行されて、立ち上がり終期回帰直線Lrが算出される。ここで、下側基準圧力P7_lは、初期圧力Piと目標圧力Ptとの差の絶対値の80%の圧力を初期圧力Piに加算した圧力であり、上側基準圧力P7_uは、初期圧力Piと目標圧力Ptとの差の絶対値の90%の圧力を初期圧力Piに加算した圧力であり、吐出圧力は、時刻t71から時刻t72までの間に、下側基準圧力P7_lから上側基準圧力P7_uへ増大する。
【0093】
この立ち上がり終期回帰直線Lrは、時間経過に伴って増大して、時刻t73において定常圧力Pm(定常期間Tcにおける吐出圧力の平均値)に到達する。こうして、時刻t71から時刻t73の区間に対して、立ち上がり終期回帰直線Lrが設定される。さらに、圧力評価部913は、時刻t73から時刻tbまでの間において定常圧力Pmを示す傾きがゼロの延設直線Lmを設定する。上述の通り、時刻tbは、吐出圧力が目標圧力Ptに到達する時刻であり、立ち上がり期間Taの終了時刻に相当する。つまり、この延設直線Lmは、立ち上がり終期回帰直線Lr(の終了時点)から立ち上がり期間Taの終了時点まで延設するように設けられる。なお、tb<t73の場合には、延設直線Lmは省略される。
【0094】
こうして、時系列で配列された立ち上がり終期回帰直線Lrおよび延設直線Lmで構成された近似波形WF7が算出される。そして、圧力評価部913は、吐出圧力が目標圧力Ptの90%となる時刻t72から100%となる時刻tbまでの立ち上がり終期期間Ta_eにおいて、吐出圧力測定データ99と近似波形WF7との間の差を示す値を、特徴量Fv7として算出する。具体的には、重み基準時間幅Tw=t73-t72が設定される。そして、重み付き二乗平方根誤差和が、次式
Fv7=(Σ(P_measure-WF7)2×W)1/2
P_measure=吐出圧力測定データ99
時刻tb≦t73+2×Twの範囲でW=1
時刻tb>t73+2×Twの範囲でW=w
wは1より大きい重み係数であり、例えば10である
に基づき算出される。
【0095】
また、圧力評価部913は、所定の閾値Th7(例えば、0.6)に基づき、特徴量Fv7を0以上で2以下の範囲に正規化する。具体的には、次式
Fv7<Th7であるなら、Fv7=0
Fv7≧Th7であるなら、Fv7=Fv7/c7
c7は任意の正の定数であり、例えば1.1である
に基づき、特徴量Fv7を、規格化された特徴量Fv7(すなわち、評価値V7)に変換する。
【0096】
図13の特徴量Fv7に基づく評価によれば、立ち上がりの勢いが弱く丸みを帯びた波形を吐出圧力の時間変化が示す場合に、この吐出圧力に対して大きなスコア(すなわち、悪い評価)を与えることができる。
【0097】
図14は特徴量Fv8に基づき吐出圧力の時間変化を評価する評価項目を説明するための図である。
図14の評価項目は、吐出圧力の立ち上がりに発生するオーバーシュートの程度を評価する。具体的には、圧力評価部913は、吐出圧力が最大値Pmaxに達した時刻t81において、吐出圧力の2回微分D2の符号(正/負)を求める。そして、圧力評価部913は、吐出圧力の2回微分D2の符号が、時刻t81での符号から2回切り替わる時刻t82を算出する。そして、時刻t81から時刻t82までの初期振動期間Tb_sにおける吐出圧力の時間変化が評価される。
【0098】
具体的には、この初期振動期間Tb_sにおける吐出圧力の時間変化の最小値P8minが求められて、定常圧力Pmおよび圧力P8minのうち、小さい方の圧力が、対象圧力Pgに選択される。そして、最大圧力Pmaxと対象圧力Pgとの差、すなわち次式
Fv8=Pmax-Pg
に基づき、特徴量Fv8が算出される。
【0099】
さらに、圧力評価部913は、所定の閾値Th8(例えば、0.035)を用いて、特徴量Fv8を0以上で2以下の範囲に正規化する。具体的には、次式
Fv8<Th8であるなら、Fv8=0
Fv8≧Th8であるなら、Fv8=Fv8/c8
c8は任意の正の定数であり、例えば0.12である
に基づき、特徴量Fv8を、規格化された特徴量Fv8(すなわち、評価値V8)に変換する。
【0100】
図14の特徴量Fv8に基づく評価によれば、立ち上がりの勢いが強く、大きなオーバーシュートを吐出圧力の時間変化が示す場合に、この吐出圧力に対して大きなスコア(すなわち、悪い評価)を与えることができる。
【0101】
図15は特徴量Fv9に基づき吐出圧力の時間変化を評価する評価項目を説明するための図である。
図15の評価項目は、遷移期間Tbにおける吐出圧力の時間変化の安定度を評価する。具体的には、圧力評価部913は、遷移期間Tbにおける吐出圧力と、定常期間Tcにおける吐出圧力の平均値である定常圧力Pmとについて、次式
Fv9=RMSE(P_measure,Pm)
P_measure=吐出圧力測定データ99
に基づき、二乗平均平方根誤差RMSE(P_measure,Pm)を特徴量Fv9として算出する。
【0102】
さらに、圧力評価部913は、特徴量Fv9を0以上で2以下の範囲に正規化する。具体的には、次式
Fv9=Fv9/c9
c9は任意の正の定数であり、例えば0.04である
に基づき、特徴量Fv9を、規格化された特徴量Fv9(すなわち、評価値V9)に変換する。
【0103】
図15の特徴量Fv9に基づく評価によれば、遷移期間Tbにおけるリンギングを吐出圧力の時間変化が示す場合に、この吐出圧力に対して大きなスコア(すなわち、悪い評価)を与えることができる。
【0104】
図16は特徴量Fv10に基づき吐出圧力の時間変化を評価する評価項目を説明するための図である。
図16の評価項目は、定圧期間Tbcにおける吐出圧力の時間変化の安定度を評価する。具体的には、圧力評価部913は、定圧期間Tbcにおいて、吐出圧力の最大値Pmaxと最小値P10minとを求める。そして、圧力評価部913は、定圧期間Tbcにおける最大圧力Pmaxと最小圧力P10minとの差、すなわち次式
Fv10=Pmax-P10min
に基づき、特徴量Fv10を算出する。
【0105】
さらに、圧力評価部913は、閾値Th10(例えば、0.12)を用いて、特徴量Fv10を0以上で2以下の範囲に正規化する。具体的には、次式
Fv10<Th10であるなら、Fv10=0
Fv10≧Th10であるなら、Fv10=Fv10/Th10
に基づき、特徴量Fv10を、規格化された特徴量Fv10(すなわち、評価値V10)に変換する。
【0106】
図16の特徴量Fv10に基づく評価によれば、塗布液の膜厚に影響の大きな定常期間Tcにおいて大きなばらつきを吐出圧力の時間変化が示す場合に、この吐出圧力に対して大きなスコア(すなわち、悪い評価)を与えることができる。
【0107】
図17は特徴量Fv11に基づき吐出圧力の時間変化を評価する評価項目を説明するための図である。
図17の評価項目は、立ち上がり期間Taにおける吐出圧力の時間変化の真直度を評価する。具体的には、立ち上がり期間Taにおいて、吐出圧力が下側基準圧力P11_lになる時刻t111から、吐出圧力が当該下側基準圧力P11_lより大きい上側基準圧力P11_uになる時刻t113までの圧力上昇期間Tarが求められる。ここで、下側基準圧力P11_lは、初期圧力Piと目標圧力Ptとの差の絶対値の20%の圧力を初期圧力Piに加算した圧力であり、上側基準圧力P11_uは、初期圧力Piと目標圧力Ptとの差の絶対値の80%の圧力を初期圧力Piに加算した圧力であり、吐出圧力は、時刻t111から時刻t113までの間に、下側基準圧力P11_lから上側基準圧力P11_uへ増大する。
【0108】
さらに、圧力評価部913は、下側基準圧力P11_lと上側基準圧力P11_uとの間における吐出圧力測定データ99のうちから、所定条件を満たす特定データDmを求める。かかる所定条件について、次に詳述する。
【0109】
吐出圧力測定データ99のうちから、下側基準圧力P11_lと上側基準圧力P11_uとの間の一の測定データを、候補データDcとして選択する。そして、下側基準圧力P11_lを示す測定データDlと候補データDcとの間の吐出圧力の時間変化に対して線形回帰分析を行って求めた回帰直線を近似直線Lr_1とする。また、上側基準圧力P11_uを示す測定データDuと候補データDcとの間の吐出圧力の時間変化に対して線形回帰分析を行って求めた回帰直線を近似直線Lr_2とする。さらに、測定データDlと候補データDcとの間の区間において、吐出圧力の時間変化と近似直線Lr_1との二乗平均平方根誤差RMSE(P_measure,Lr1)が求められる。同様に、候補データDcと測定データDuとの間の区間において、吐出圧力の時間変化と近似直線Lr_2との二乗平均平方根誤差RMSE(P_measure,Lr2)が求められる。ここで、P_measureは、吐出圧力測定データ99を示す。
【0110】
さらに、これらの和が次式
Er=RMSE(P_measure,Lr1)+RMSE(P_measure,Lr2)
に基づき求められる。そして、吐出圧力測定データ99のうち、和Erが最小となる候補データDcが、特定データDmとして特定される。
【0111】
そして、特定データDmについて求められる上記の近似直線Lr_1および近似直線Lr_2それぞれの傾きをK1およびK2として、特徴量Fv11が、次式
K1>K2であるなら、Fv11=1-K1/K2
K1≦K2であるなら、Fv11=1-K2/K1
に基づき算出される。
【0112】
また、圧力評価部913は、所定の閾値Th11(例えば、0.25)に基づき、特徴量Fv11を0以上で1以下の範囲に正規化する。具体的には、次式
Fv11<Th11であるなら、Fv11=0
Fv11≧Th11であるなら、Fv11=f(Fv11)
f(γ)=4×γ-1
に基づき、特徴量Fv11を、規格化された特徴量Fv11(すなわち、評価値V11)に変換する。なお、γを変数とする関数f(γ)は、ここの例に限られず、任意に変更できる。
【0113】
図17の特徴量Fv11に基づく評価によれば、立ち上がり期間Taにおいて真直性の悪い時間変化を吐出圧力が示す場合に、この吐出圧力に対して大きなスコア(すなわち、悪い評価)を与えることができる。
【0114】
図18は特徴量Fv12に基づき吐出圧力の時間変化を評価する評価項目を説明するための図である。
図18の評価項目は、立ち上がりの終了時における吐出圧力の時間変化の鋭さを評価する。具体的には、立ち上がり期間Taのうち、下側基準圧力P12_lと、当該下側基準圧力P12_lより大きい上側基準圧力P12_uとの間における吐出圧力の時間変化に対して直線回帰分析が実行されて、立ち上がり終期回帰直線Lrが算出される。ここで、下側基準圧力P12_lは、初期圧力Piと目標圧力Ptとの差の絶対値の70%の圧力を初期圧力Piに加算した圧力であり、上側基準圧力P12_uは、初期圧力Piと目標圧力Ptとの差の絶対値の90%の圧力を初期圧力Piに加算した圧力であり、吐出圧力は、時刻t121から時刻t122までの間に、下側基準圧力P12_lから上側基準圧力P12_uへ増大する。
【0115】
この立ち上がり終期回帰直線Lrは、時間経過に伴って増大して、時刻t123において目標圧力Ptに到達する。こうして、時刻t121から時刻t123の区間に対して、立ち上がり終期回帰直線Lrが設定される。さらに、圧力評価部913は、時刻t123から時刻tbまでの間において目標圧力Ptを示す傾きがゼロの延設直線Lmを設定する。上述の通り、時刻tbは、吐出圧力が目標圧力Ptに到達する時刻であり、立ち上がり期間Taの終了時刻に相当する。つまり、この延設直線Lmは、立ち上がり終期回帰直線Lr(の終了時点)から立ち上がり期間Taの終了時点まで延設するように設けられる。なお、tb<t123の場合には、延設直線Lmは省略される。
【0116】
こうして、時系列で配列された立ち上がり終期回帰直線Lrおよび延設直線Lmで構成された近似波形WF12が算出される。そして、圧力評価部913は、吐出圧力が目標圧力Ptの90%となる時刻t122から100%となる時刻tbまでの立ち上がり終期期間Ta_eにおいて、吐出圧力測定データ99と近似波形WF12との間の差を示す値を、特徴量Fv12として算出する。具体的には、二乗平方根誤差和を次式
Fv12=(Σ(P_measure-WF12)2)1/2
P_measure=吐出圧力測定データ99
に基づき算出する。
【0117】
また、圧力評価部913は、所定の閾値Th12(例えば、0.8)に基づき、特徴量Fv12を0以上で1以下の範囲に正規化する。具体的には、次式
Fv12<Th12であるなら、Fv12=0
Fv12≧Th12であるなら、Fv12=f(Fv12)
f(γ)=5×γ-4
に基づき、特徴量Fv12を、規格化された特徴量Fv12(すなわち、評価値V12)に変換する。なお、γを変数とする関数f(γ)は、ここの例に限られず、任意に変更できる。
【0118】
図18の特徴量Fv12に基づく評価によれば、立ち上がりの勢いが弱く、大局的に見て丸みを帯びた波形を吐出圧力の時間変化が示す場合に、この吐出圧力に対して大きなスコア(すなわち、悪い評価)を与えることができる。
【0119】
図19は特徴量Fv13に基づき吐出圧力の時間変化を評価する評価項目を説明するための図である。
図19の評価項目は、立ち上がりの終了時における吐出圧力の時間変化の鋭さを評価する。具体的には、立ち上がり期間Taのうち、下側基準圧力P13_lと、当該下側基準圧力P13_lより大きい上側基準圧力P13_uとの間における吐出圧力の時間変化に対して直線回帰分析が実行されて、立ち上がり終期回帰直線Lrが算出される。ここで、下側基準圧力P13_lは、初期圧力Piと目標圧力Ptとの差の絶対値の90%の圧力を初期圧力Piに加算した圧力であり、上側基準圧力P13_uは、初期圧力Piと目標圧力Ptとの差の絶対値の95%の圧力を初期圧力Piに加算した圧力であり、吐出圧力は、時刻t131から時刻t132までの間に、下側基準圧力P13_lから上側基準圧力P13_uへ増大する。
【0120】
この立ち上がり終期回帰直線Lrは、時間経過に伴って増大して、時刻t133において目標圧力Ptに到達する。こうして、時刻t131から時刻t133の区間に対して、立ち上がり終期回帰直線Lrが設定される。さらに、圧力評価部913は、時刻t133から時刻tbまでの間において目標圧力Ptを示す傾きがゼロの延設直線Lmを設定する。上述の通り、時刻tbは、吐出圧力が目標圧力Ptに到達する時刻であり、立ち上がり期間Taの終了時刻に相当する。つまり、この延設直線Lmは、立ち上がり終期回帰直線Lr(の終了時点)から立ち上がり期間Taの終了時点まで延設するように設けられる。なお、tb<t133の場合には、延設直線Lmは省略される。
【0121】
こうして、時系列で配列された立ち上がり終期回帰直線Lrおよび延設直線Lmで構成された近似波形WF13が算出される。そして、圧力評価部913は、吐出圧力が目標圧力Ptの95%となる時刻t132から100%となる時刻tbまでの立ち上がり終期期間Ta_eにおいて、吐出圧力測定データ99と近似波形WF13との間の差を示す値を、特徴量Fv13として算出する。具体的には、二乗平方根誤差和を次式
Fv13=(Σ(P_measure-WF13)2)1/2
P_measure=吐出圧力測定データ99
に基づき算出する。
【0122】
また、圧力評価部913は、所定の閾値Th13(例えば、0.1)に基づき、特徴量Fv13を0以上で1以下の範囲に正規化する。具体的には、次式
Fv13<Th13であるなら、Fv13=0
Fv13≧Th13であるなら、Fv13=f(Fv13)
f(γ)=(10×γ-1)/3
に基づき、特徴量Fv13を、規格化された特徴量Fv13(すなわち、評価値V13)に変換する。なお、γを変数とする関数f(γ)は、ここの例に限られず、任意に変更できる。
【0123】
図19の特徴量Fv13に基づく評価によれば、立ち上がりの勢いが弱く、局所的に見て丸みを帯びた波形を吐出圧力の時間変化が示す場合に、この吐出圧力に対して大きなスコア(すなわち、悪い評価)を与えることができる。
【0124】
図20は特徴量Fv14に基づき吐出圧力の時間変化を評価する評価項目を説明するための図である。
図20の評価項目は、吐出圧力の立ち上がりに発生するオーバーシュートの程度を評価する。具体的には、圧力評価部913は、吐出圧力が最大値Pmaxに達した時刻t141において、吐出圧力の2回微分D2の符号(正/負)を求める。そして、圧力評価部913は、吐出圧力の2回微分D2の符号が、時刻t141での符号から2回切り替わる時刻t142を算出する。そして、時刻t141から時刻t142までの初期振動期間Tb_sにおける吐出圧力の時間変化が評価される。
【0125】
具体的には、この初期振動期間Tb_sにおける吐出圧力の時間変化の最小値P14minが求められる。そして、最大圧力Pmaxと定常圧力Pmとの差を次式
OVER=Pmax-Pm
に基づき算出し、定常圧力Pmと最小圧力P14minとの差を次式
UNDER=Pm-P14min
に基づき算出する。そして、OVERとUNDERとの和、すなわち次式
Fv14=OVER+UNDER
に基づき、特徴量Fv14が算出される。
【0126】
さらに、圧力評価部913は、所定の閾値Th14(例えば、0.01)を用いて、特徴量Fv14を0以上で1以下の範囲に正規化する。具体的には、次式
Fv14<Th14であるなら、Fv14=0
Fv14≧Th14であるなら、Fv14=f(Fv14)
f(γ)=(100×γ-1)/9
に基づき、特徴量Fv14を、規格化された特徴量Fv14(すなわち、評価値V14)に変換する。
【0127】
図20の特徴量Fv14に基づく評価によれば、オーバーシュートした点とリングバッ(急激な立ち上がりの後に反動で圧力が下がる現象)した点のそれぞれについて、目標圧力Ptからの誤差を算出している。そのため、大きなオーバーシュートやリングバックを吐出圧力の時間変化が示す場合に、この吐出圧力に対して大きなスコア(すなわち、悪い評価)を与えることができる。
【0128】
以上が、吐出圧力の時間変化を評価するために使用できる各評価項目と、各評価項目で抽出される特徴量Fv1~Fv14や評価値V1~V14の説明である。なお、ステップS102の測定結果評価では、上記の全評価項目による評価が常に実行されるわけではなく、吐出圧力の時間変化の適正度に応じて、実行される評価項目の個数が変化する。続いては、この点について説明する。
【0129】
図21は測定結果評価の詳細を示すフローチャートであり、
図22は
図21のフローチャートに従って実行される動作の一例を模式的に示す図である。
図21の測定結果評価は、圧力評価部913によって実行される。また、この測定結果評価では、N個の評価段階(Nは2以上の整数であり、ここの例ではN=3)が準備されており、これらN個の評価段階が順番に実行される。
【0130】
図22に示すように、1番目(I=1)の評価段階に対しては、
図7により示した特徴量Fv1に基づく評価項目が割り当てられている。2番目(I=2)の評価段階に対しては、
図8~
図16により示した特徴量Fv2~Fv10に基づく評価項目が割り当てられている。3番目(I=3)の評価段階に対しては、
図17~
図20により示した特徴量Fv11~Fv14に基づく評価項目が割り当てられている。そして、各評価段階Iでは、割り当てられた評価項目に基づき吐出圧力の時間変化が評価される。なお、Iは、評価段階を識別するための番号であり、1以上であってN以下の整数となる。
【0131】
このように、N個の評価段階に対しては、互いに異なる評価項目が割り当てられている。さらに、N個の評価段階に対しては、互いに異なる範囲(値域)の最終評価値Vfが割り当てられている。したがって、次に説明するように、I番目までの評価段階による評価が実行された吐出圧力に対しては、I番目の評価段階に割り当てられた値域内の最終評価値Vfが与えられる。
【0132】
図21に示すように、ステップS201では、Iがゼロにリセットされ、ステップS202では、Iが1だけインクリメントされる。ステップS203では、I番目の評価段階の評価項目に基づき吐出圧力が評価される。ここでは、I=1であるため、特徴量Fv1が算出されて、評価値V1が求められる。そして、この評価値V1が1番目の評価段階の評価結果となる。
【0133】
ステップS204では、I=Nであるかが判断される。ここでは、I<Nであるため、ステップS205に進む。ステップS205では、ステップS203での評価結果に基づき、吐出圧力の時間変化が良好であるか否かが判断される。評価結果(評価値V1)が所定の振り分け閾値At1以上である場合には、ステップS205で不良(NO)と判断されて、2~3番目の評価段階(すなわち、I番目より後の評価段階)による評価を省略して、ステップS206に進む。
【0134】
ステップS206では、実行済みの評価段階の数(I)と、I番目の評価段階での評価結果とに応じた最終評価値Vfが決定される。ここの例では、1番目の評価段階のみが実行済みであるため、
図22の例に従って、1番目の評価段階に対する値域の最小評価値(=20)に、1番目の評価段階の評価結果(評価値V1)を加算した値が最終評価値Vfとして決定される。これによって、1番目の評価段階に対して設けられた値域(20~40)内の最終評価値Vfが吐出圧力の時間変化に与えられる。
【0135】
あるいは、ステップS204での評価結果(評価値V1)が振り分け閾値At1未満である場合には、ステップS205で良好(YES)と判断され、ステップS202に戻って、Iが1だけインクリメントされる。
【0136】
そして、ステップS203では、I番目の評価段階の評価項目に基づき吐出圧力が評価される。ここでは、I=2であるため、特徴量Fv2~Fv10が算出されて、評価値V2~V10が求められる。そして、評価値V2~V10の合計が2番目の評価段階の評価結果となる。つまり、I番目の評価段階に属する評価項目による評価値の合計が、I番目の評価段階での評価結果となる。
【0137】
ステップS204では、I=Nであるかが判断される。ここでは、I<Nであるため、ステップS205に進む。ステップS205では、ステップS203での評価結果に基づき、吐出圧力の時間変化が良好であるか否かが判断される。評価結果(評価値V2~V10の合計)が所定の振り分け閾値At2以上である場合には、ステップS205で不良(NO)と判断されて、3番目の評価段階による評価を省略して、ステップS206に進む。
【0138】
ステップS206では、実行済みの評価段階の数(I)と、I番目の評価段階での評価結果とに応じた最終評価値Vfが決定される。ここの例では、1~2番目の評価段階が実行済みであるため、
図22の例に従って、2番目の評価段階に対する値域の最小評価値(=4)に、2番目の評価段階の評価結果(評価値V2~V10の合計)を加算した値が最終評価値Vfとして決定される。これによって、2番目の評価段階に対して設けられた値域(4~20)内の最終評価値Vfが吐出圧力の時間変化に与えられる。
【0139】
あるいは、ステップS205での評価結果(評価値V2~V10の合計)が振り分け閾値At2未満である場合には、ステップS205で良好(YES)と判断され、ステップS202に戻って、Iが1だけインクリメントされる。
【0140】
そして、ステップS203では、I番目の評価段階の評価項目に基づき吐出圧力が評価される。ここでは、I=3であるため、特徴量Fv11~Fv14が算出されて、評価値V11~V14が求められる。そして、上記と同様に、評価値V11~V14の合計が3番目の評価段階の評価結果となる。
【0141】
ステップS204では、I=Nであるかが判断される。ここでは、I=Nであるため、ステップS206に進む。ステップS206では、実行済みの評価段階の数(I)と、I番目の評価段階での評価結果とに応じた最終評価値Vfが決定される。ここの例では、1~3番目の評価段階が実行済みであるため、
図22の例に従って、3番目の評価段階の最小評価値(=0)に、3番目の評価段階の評価結果(評価値V11~V14の合計)を加算した値が最終評価値Vfとして決定される。これによって、3番目の評価段階に対して設けられた値域(0~4)内の最終評価値Vfが吐出圧力の時間変化に与えられる。
【0142】
以上に説明した実施形態では、吐出圧力を互いに異なる評価項目によってそれぞれ評価する1番目からN番目までのN個の評価段階が設けられており、1番目からN番目までの評価段階を順番に実行することができる。ただし、I番目の評価段階に係る評価項目による評価において吐出圧力が適正と判断された場合(ステップS205で「YES」)に、(I+1)番目の評価段階に係る評価項目による吐出圧力の評価が実行される一方、I番目の評価段階に係る評価項目による評価において吐出圧力が不適正と判断された場合(ステップS205で「NO」)にはI番目の評価段階より後の順番の評価段階による吐出圧力の評価が実行されない(すなわち、省略される)。つまり、1~N番目までの評価段階によって順番に吐出圧力の評価をした際に、いずれかの評価段階で吐出圧力が不適正と判断されると、以後の評価段階による評価が実行されない。これによって、ノズル71から塗布液を吐出するために塗布液に与えられる吐出圧力の評価を、吐出圧力の適否に応じた合理的な時間で行うことが可能となっている。
【0143】
また、N個の評価段階のうち、吐出圧力の評価を実行した評価段階の数(I)の違いに応じて、互いに異なる最終評価値Vf(評価値)を吐出圧力に与える。かかる構成では、実行された評価段階の数が多い吐出圧力ほど良好な最終評価値Vfを与えることができ、吐出圧力の適否に応じた適正な最終評価値Vfを当該吐出圧力に与えることが可能となる。
【0144】
また、1番目の評価段階では、ノズル71からの塗布液(処理液)の吐出を開始してからノズル71からの塗布液の吐出を終了するまでの吐出期間Tt(第1期間、評価対象期間)において、吐出圧力が測定される(ステップS101)。そして、吐出期間Ttの全体における吐出圧力の時間変化が持つ理想台形絶対誤差が特徴量Fv1(第1特徴量、全体特徴量)として抽出され、この特徴量Fv1に基づき吐出圧力の時間変化が評価される(ステップS102)。これによって、ノズル71からの塗布液の吐出の開始から終了までの吐出期間Ttの全体における吐出圧力の適否を、吐出圧力の評価に反映させることが可能となっている。
【0145】
また、
図7に示すように、特徴量Fv1は、吐出期間Ttの全体における吐出圧力の時間変化を近似した近似波形WF1(第1近似波形)と、吐出期間Ttの全体における吐出圧力の時間変化との差を示す。かかる構成では、ノズル71からの塗布液の吐出の開始から終了までの吐出期間Ttの全体における吐出圧力の時間変化に対する近似波形WF1に基づき、当該吐出期間Ttの全体における吐出圧力を適切に評価できる。
【0146】
特に、近似波形WF1は、
・ノズル71からの塗布液の吐出の開始後に、時間経過に伴って増大する吐出圧力の時間変化を直線近似することで、初期圧力Pi(吐出開始圧力)から初期圧力Piより大きい定常圧力Pmまで時間経過に伴って線形に増大する立ち上がり回帰直線Lr_R(立ち上がり近似直線)と、
・ノズル71からの塗布液の吐出の開始時点(時刻ta)と立ち上がり回帰直線Lr_Rとの間に設けられて初期圧力Piを示す開始時近似直線Lr_sと、
・ノズル71からの塗布液の吐出の終了前に、時間経過に伴って減少する吐出圧力の時間変化を直線近似することで、定常圧力Pmから定常圧力Pmより小さい初期圧力Pi(吐出終了圧力)まで時間経過に伴って線形に減少する立ち下がり回帰直線Lr_F(立ち下がり近似直線)と、
・立ち下がり回帰直線Lr_Fとノズル71からの塗布液の吐出の終了時点(時刻te)との間に設けられて初期圧力Pi(吐出終了圧力)を示す終了時近似直線Lr_eと、
・立ち上がり回帰直線Lr_Rおよび立ち下がり回帰直線Lr_Fのそれぞれの間を接続して、定常圧力Pmを示す定常直線Lr_mと
を有する。かかる構成では、ノズル71からの塗布液の吐出の開始から終了までの吐出期間Ttの全体における吐出圧力の時間変化を台形波形により近似して、当該吐出期間Ttの全体における吐出圧力を適切に評価できる。
【0147】
また、2番目の評価段階では、吐出期間Ttのうち、吐出期間Ttより短い期間(第2期間)における吐出圧力の時間変化が持つ特徴量Fv2~Fv10(第2特徴量)が抽出されて、特徴量Fv2~Fv10に基づき吐出圧力の時間変化が評価される(ステップS102)。かかる構成では、ノズル71からの塗布液の吐出の開始から終了までの吐出期間Ttより短い期間における吐出圧力の時間変化に基づき、吐出圧力を高精度に評価することができる。
【0148】
また、
図8に示す評価項目では、ノズル71からの塗布液の吐出の開始から所定の立ち上がり初期期間Ta_s(第2期間)における吐出圧力が評価される。この立ち上がり初期期間Ta_sを通じて、吐出圧力は時間経過に伴って増大し、立ち上がり初期期間Ta_sにおける吐出圧力の時間変化の立ち上がり回帰曲線Nrと、立ち上がり初期期間Ta_sにおける吐出圧力の時間変化との差を示す特徴量Fv2(第2特徴量)が抽出される。かかる構成では、ノズル71からの塗布液の開始直後における吐出圧力の時間変化を加味して、吐出圧力を評価することができる。
【0149】
また、ノズル71からの塗布液の吐出の開始から、吐出圧力が目標圧力Pt(所定圧力)に増大するまでの立ち上がり期間Ta(第2期間)における吐出圧力が評価される。かかる構成では、立ち上がり期間Taにおける吐出圧力の時間変化を加味して、吐出圧力を評価することができる。
【0150】
具体的には、
図9に示す評価項目では、立ち上がり期間Taの長さが特徴量Fv2(第2特徴量)として抽出される。かかる構成では、吐出圧力の立ち上がりの速さを加味して、吐出圧力を評価することができる。
【0151】
また、
図10Aおよび
図10Bに示す評価項目では、立ち上がり期間Taにおいて、吐出圧力の時間変化の一回微分D1が所定の閾値Th4と交差する回数が、特徴量Fv4(第2特徴量)として抽出される。かかる構成では、立ち上がり期間における吐出圧力の時間変化の滑らかさを加味して、吐出圧力を評価することができる。
【0152】
また、
図11に示す評価項目では、立ち上がり期間Taにおいて、吐出圧力の時間変化の二回微分D2の絶対値が所定の閾値Th5と交差する回数が、特徴量Fv5(第2特徴量)として抽出される。かかる構成では、立ち上がり期間Taにおける吐出圧力の時間変化の滑らかさを加味して、吐出圧力を評価することができる。
【0153】
また、
図12に示す評価項目では、立ち上がり期間Taにおいて、吐出圧力の時間変化の二回微分D2が所定の正の閾値(Th5)より大きくなる時間T_1stと、吐出圧力の時間変化の二回微分D2が、正の閾値と同じ絶対値を有する負の閾値(-Th5)より小さくなる時間T_2ndとの比が、特徴量Fv6(第2特徴量)として抽出される。かかる構成では、立ち上がり期間Taの初期と終期とでの吐出圧力の時間変化の違いを加味して、吐出圧力を評価することができる。
【0154】
また、
図13に示す評価項目では、吐出圧力が目標圧力Pt(所定圧力)に増大するまでの立ち上がり終期期間Ta_e(第2期間)における吐出圧力が評価される。つまり、立ち上がり終期期間Ta_eにおける吐出圧力の時間変化を近似した近似波形WF7(立ち上がり終期近似波形)と、立ち上がり終期期間Ta_eにおける吐出圧力の時間変化との差を示す特徴量Fv7(第2特徴量)が抽出される。この近似波形WF7は、立ち上がり終期回帰直線Lr(立ち上がり終期近似直線)と延設直線Lmとで構成される。立ち上がり終期回帰直線Lrは、目標圧力Ptよりも小さい圧力範囲(P7_l~P7_u)において時間経過に伴って増大する吐出圧力の時間変化を直線近似することで求めた近似曲線に重なり、時間経過に伴って定常圧力Pmまで線形に増大する。延設直線Lmは、立ち上がり終期回帰直線Lr(の終了時点)から立ち上がり終期期間Ta_eの終了時点まで延設されて定常圧力Pmを示す。かかる構成では、立ち上がり期間Taの終期における吐出圧力の失速の程度を加味して、吐出圧力を評価することができる。
【0155】
また、
図14に示す評価項目では、吐出圧力が最大値Pmaxに達した時点(時刻t81)から、吐出圧力の時間変化の二回微分D2が2回ゼロに交差した時点(時刻t82)までの初期振動期間Tb_s(第2期間)における吐出圧力が評価される。具体的には、初期振動期間Tb_sにおける吐出圧力の最小値P8minが求められ、この最小値P8minと定常圧力Pmとのうちの小さい方の圧力と、吐出圧力の最大値Pmaxとの差が、特徴量Fv8(第2特徴量)として抽出される。かかる構成では、吐出圧力のオーバーシュートを加味して、吐出圧力を評価することができる。
【0156】
また、
図15に示す評価項目では、吐出圧力が目標圧力Pt(所定圧力)を超えた時点(時刻tb)から所定の遷移期間Tb(第2期間)における吐出圧力が評価される。具体的には、定常圧力Pmに対する、立ち上がり期間Taにおける吐出圧力の差を示す特徴量Fv9(第2特徴量)が抽出される。かかる構成では、吐出圧力が目標圧力Ptに到った後の吐出圧力の安定度を加味して、吐出圧力を評価することができる。
【0157】
また、
図16に示す評価項目では、吐出圧力が目標圧力Pt(所定圧力)を超えた時点(時刻tb)から、ノズル71からの塗布液の吐出の終了に向けて吐出圧力の減少が開始する時点(時刻td)までの定圧期間Tbcにおける吐出圧力が評価される。具体的には、定圧期間Tbcにおける吐出圧力の最大値Pmaxと最小値P10minとの差を示す特徴量Fv10が抽出される。かかる構成では、吐出圧力の定圧期間Tbcにおける吐出圧力の安定性を加味して、吐出圧力を評価することができる。
【0158】
また、3番目の評価段階では、吐出期間Ttのうち、吐出期間Ttより短い期間(第3期間)における吐出圧力の時間変化が持つ特徴量Fv11~Fv14(第3特徴量)が抽出されて、特徴量Fv11~Fv14に基づき吐出圧力の時間変化が評価される(ステップS102)。かかる構成では、ノズル71からの塗布液の吐出の開始から終了までの吐出期間Ttより短い期間における吐出圧力の時間変化に基づき、吐出圧力を高精度に評価することができる。
【0159】
また、
図17に示す評価項目では、ノズル71からの塗布液の吐出の開始後に、吐出圧力が下側基準圧力P11_l(下側基準値)から上側基準圧力P11_u(上側基準値)まで時間経過とともに増加する圧力上昇期間Tar(第3期間)における吐出圧力が評価される。具体的には、下側基準圧力P11_lと上側基準圧力P11_uとの間における吐出圧力測定データ99のうちの一の測定データであって、下側基準圧力P11_lと一の測定データとの間の区間(t111~t112)において吐出圧力の時間変化に対する線形回帰により求めた近似直線Lr_1と吐出圧力の時間変化との二乗平均平方誤差と、一の測定データと上側基準圧力P11_uとの間の区間(t112~t113)において吐出圧力の時間変化に対する線形回帰により求めた近似直線Lr_2と吐出圧力の時間変化との二乗平均平方誤差との和が最小となる一の測定値が求められる。そして、下側基準圧力P11_lと一の測定データとの間の直線の傾きK1と、一の測定データと上側基準圧力P11_uとの間の直線の傾きK2との比をが、特徴量Fv11(第3特徴量)として抽出される。かかる構成では、吐出圧力の増大の線形性を加味して、吐出圧力を評価することができる。
【0160】
また、
図18に示す評価項目では、吐出圧力が目標圧力Pt(所定圧力)に増大するまでの立ち上がり終期期間Ta_e(第3期間)における吐出圧力が評価される。つまり、立ち上がり終期期間Ta_eにおける吐出圧力の時間変化を近似した近似波形WF12(立ち上がり終期近似波形)と、立ち上がり終期期間Ta_eにおける吐出圧力の時間変化との差を示す特徴量Fv12(第3特徴量)が抽出される。ここで、立ち上がり終期近似波形WF12は、立ち上がり終期回帰直線Lrと延設直線Lmとで構成される。立ち上がり終期回帰直線Lrは、目標圧力Ptよりも小さい圧力範囲(P12_l~P12_u)において時間経過に伴って増大する吐出圧力の時間変化を直線近似することで求めた近似曲線に重なり、時間経過に伴って目標圧力Ptまで線形に増大する。延設直線Lmは、立ち上がり終期回帰直線Lr(の終了時点)から立ち上がり終期期間Ta_eの終了時点まで延設されて、目標圧力Ptを示す。かかる構成では、立ち上がり期間Taの終期における吐出圧力の失速の程度を加味して、吐出圧力を評価することができる。
【0161】
また、
図19に示す評価項目では、吐出圧力が目標圧力Pt(所定圧力)に増大するまでの立ち上がり終期期間Ta_e(第3期間)における吐出圧力が評価される。つまり、立ち上がり終期期間Ta_eにおける吐出圧力の時間変化を近似した近似波形WF13(立ち上がり終期近似波形)と、立ち上がり終期期間Ta_eにおける吐出圧力の時間変化との差を示す特徴量Fv13(第3特徴量)が抽出される。ここで、立ち上がり終期近似波形WF13は、立ち上がり終期回帰直線Lrと延設直線Lmとで構成される。立ち上がり終期回帰直線Lrは、目標圧力Ptよりも小さい圧力範囲(P13_l~P13_u)において時間経過に伴って増大する吐出圧力の時間変化を直線近似することで求めた近似曲線に重なり、時間経過に伴って目標圧力Ptまで線形に増大する。延設直線Lmは、立ち上がり終期回帰直線Lr(の終了時点)から立ち上がり終期期間Ta_eの終了時点まで延設されて、目標圧力Ptを示す。かかる構成では、立ち上がり期間Taの終期における吐出圧力の失速の程度を加味して、吐出圧力を評価することができる。
【0162】
また、
図20に示す評価項目では、吐出圧力が最大値Pmaxに達した時点(時刻t141)から、吐出圧力の時間変化の二回微分D2が2回ゼロに交差した時点(時刻t142)までの初期振動期間Tb_s(第3期間)における吐出圧力が評価される。具体的には、吐出圧力の最大値Pmaxから定常圧力Pmを減算した値と、定常圧力Pmから初期振動期間Tb_sにおける吐出圧力の最小値P14minを減算した値との和が、特徴量Fv14(第3特徴量)として抽出される。かかる構成では、吐出圧力のオーバーシュートを加味して、吐出圧力を評価することができる。
【0163】
以上のように上記実施形態では、塗布装置1が本発明の「基板処理装置」の一例に相当し、ノズル71が本発明の「ノズル」の一例に相当し、塗布液供給機構8が本発明の「圧力付与部」の一例に相当し、ノズル71および塗布液供給機構8が協働して本発明の「吐出装置」の一例を構成し、圧力計86が本発明の「測定部」の一例に相当し、制御ユニット9が本発明の「コンピュータ」および「制御部」の一例に相当し、吐出圧力評価プログラム97が本発明の吐出圧力評価プログラムの一例に相当し、記録媒体Mが本発明の「記録媒体」の一例に相当し、塗布液が本発明の「処理液」の一例に相当し、圧力計86により測定される圧力が本発明の「吐出圧力」の一例に相当する。
【0164】
また、吐出期間Ttが本発明の「第1期間」の一例に相当し、特徴量Fv1が本発明の「第1特徴量」の一例に相当し、近似波形WF1が本発明の「第1近似波形」の一例に相当し、初期圧力Piが本発明の「吐出開始圧力」および「吐出終了圧力」の一例に相当し、立ち上がり回帰直線Lr_Rが本発明の「立ち上がり近似直線」の一例に相当し、開始時近似直線Lr_sが本発明の「開始時近似直線」の一例に相当し、立ち下がり回帰直線Lr_Fが本発明の「立ち下がり近似直線」の一例に相当し、終了時近似直線Lr_eが本発明の「終了時近似直線」の一例に相当し、定常直線Lr_mが本発明の「定常直線」の一例に相当する。
【0165】
さらに、立ち上がり初期期間Ta_s、立ち上がり期間Ta、立ち上がり終期期間Ta_e、初期振動期間Tb_s、遷移期間Tbおよび定圧期間Tbcが本発明の「第2期間」の一例に相当し、特徴量Fv2~Fv10が本発明の「第2特徴量」の一例に相当し、初期期間Ta_sが本発明の「立ち上がり初期期間」の一例に相当し、回帰曲線Nrが本発明の「回帰曲線」の一例に相当し、立ち上がり期間Taが本発明の「立ち上がり期間」の一例に相当し、立ち上がり終期期間Ta_eが本発明の「立ち上がり終期期間」の一例に相当し、近似波形WF7が本発明の「立ち上がり終期近似波形」の一例に相当し、立ち上がり終期回帰直線Lrが本発明の「立ち上がり終期近似直線」の一例に相当し、延設直線Lmが本発明の「延設直線」の一例に相当し、初期振動期間Tb_sが本発明の「初期振動期間」の一例に相当し、定常期間Tcが本発明の「定常期間」の一例に相当し、遷移期間Tbが本発明の「遷移期間」の一例に相当し、定圧期間Tbcが本発明の「定圧期間」の一例に相当する。
【0166】
また、圧力上昇期間Tar、立ち上がり終期期間Ta_eおよび初期振動期間Tb_sが本発明の「第3期間」の一例に相当し、特徴量Fv11~Fv14が本発明の「第3特徴量」の一例に相当し、下側基準圧力P11_lが本発明の「下側基準値」の一例に相当し、上側基準圧力P11_uが本発明の「上側基準値」の一例に相当し、圧力上昇期間Tarが本発明の「圧力上昇期間」の一例に相当し、立ち上がり終期期間Ta_eが本発明の「立ち上がり終期期間」の一例に相当し、近似波形WF12、WF13が本発明の「立ち上がり終期近似波形」の一例に相当し、立ち上がり終期回帰直線Lrが本発明の「立ち上がり終期近似直線」の一例に相当し、延設直線Lmが本発明の「延設直線」の一例に相当し、初期振動期間Tb_sが本発明の「初期振動期間」の一例に相当する。
【0167】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば上記実施形態では、配管82に取り付けられた圧力計86により検出された圧力値に基づいて吐出特性を計測しているが、圧力計86の取付位置はこれに限定されず、ノズル71に送給される塗布液の圧力を検出することができる位置であれば、その取付位置は任意である。
【0168】
また、上記実施形態では、ベローズタイプのポンプ81を用いているが、ポンプの種類はこれに限定されるものではなく、例えばピストンを用いたシリンジタイプのポンプ(例えば特開2008-101510号公報)を用いてもよい。
【0169】
また、上記実施形態では、基板Sを浮上させた状態で基板Sの表面Sfに塗布液を供給する塗布装置1に対して本発明を適用しているが、本発明の適用対象はこれに限定されるものではなく、ノズルに処理液を送給することで当該ノズルから基板の上面に処理液を供給して所定の処理を施す基板処理技術全般に本発明を適用可能である。
【0170】
また、2番目の評価段階において、上記の特徴量Fv2~Fv10の全てに基づいて吐出圧力を評価することは必須ではなく、これらの一部のみに基づいて吐出圧力を評価するように構成してもよい。3番目の評価段階についても同様に、上記の特徴量Fv11~Fv14の一部のみに基づいて吐出圧力を評価してもよい。
【0171】
また、
図7の近似波形WF1を算出するにあたって、定常直線Lr_mに代えて、目標圧力Ptを示す傾きがゼロの直線を用いてもよい。
【0172】
また、3個の評価段階の全てを準備する必要は必ずしもない。したがって、上記の1~3番目の評価段階のうち、1および2番目の評価段階のみを実行するように構成してもよいし、2および3番目の評価段階のみを実行するように構成してもよいし、1および3番目の評価段階のみを実行するように構成してもよい。あるいは、上記の3個の評価段階とは異なる評価項目で吐出圧力を評価する評価段階を設けてもよい。
【0173】
また、最終評価値Vfを求めるにあたって、対応する評価段階での各評価値(例えば、V2~V10、V11~V14)の合計を取る際に、評価値によって異なる重み係数を乗じて、重みづけを行ってもよい。
【0174】
さらに、
図7に示す特徴量Fv1に代えて、次の変形例で説明する特徴量Fv1_1を算出して、この特徴量Fv1_1に基づき吐出圧力の時間変化を評価してもよい。
図23は吐出圧力の評価項目の変形例で用いる各期間を説明するための図であり、
図24は特徴量Fv1_1に基づき吐出圧力の時間変化を評価する評価項目の変形例を説明するための図である。ここでは、
図23と上記の
図5との差異点を主に説明することとし、これらの共通点は相当符号を付して適宜説明を省略する。同様に、
図24と上記の
図7との差異点を主に説明することとし、これらの共通点は相当符号を付して適宜説明を省略する。
【0175】
図23に示すように、評価項目の変形例では、注目期間Troiが使用される。この注目期間Troiは、時刻taから時刻tdまでの期間である。すなわち、注目期間Troiは、立ち上がり期間Ta、遷移期間Tbおよび定常期間Tcで構成され、換言すれば、立ち上がり期間Taおよび定圧期間Tbcで構成される。このように、注目期間Troiは、本発明における「ノズルからの処理液の吐出を開始してから吐出圧力の所定圧力までの上昇を経て吐出圧力の所定圧力からの減少が開始するまでの主要期間」の一例に相当し、目標圧力Ptが本発明の「所定圧力」の一例に相当する。
【0176】
図24に示すように、この変形例では、上述の特徴量Fv1の場合と同様にして、立ち上がり回帰直線Lr_Rが算出されるとともに、開始時近似直線Lr_sが設定される。さらに、時刻t12から時刻tdの期間において、定常圧力Pm(すなわち、定常期間Tcにおける吐出圧力の測定値の平均)を示す傾きゼロの直線である定常直線Lr_m_1が設定される。
【0177】
こうして、時系列で配列された開始時近似直線Lr_s、立ち上がり回帰直線Lr_Rおよび定常直線Lr_m_1で構成された近似波形WF1_1が算出される。そして、圧力評価部913は、時刻taから時刻tdまでの注目期間Troiの全体において、吐出圧力測定データ99と近似波形WF1_1との間の平均絶対誤差MAEを、特徴量Fv1_1として算出する。また、圧力評価部913は、所定の閾値Th1_1(例えば、0.05)に基づき、特徴量Fv1_1を所定の範囲に正規化する。具体的には、次式
Fv1_1<Th1_1であるなら、Fv1_1=0
Fv1_1≧Th1_1であるなら、Fv1_1=(Fv1_1+1-Th1_1)×c1_1
に基づき、特徴量Fv1_1を、規格化された特徴量Fv1_1(すなわち、評価値V1_1)に変換する。ここで、Fv1_1の上限は2×c1_1とし、係数c1_1は規格化係数であって任意の正の定数である。なお、特徴量Fv1_1の正規化の具体的手法は、ここの例に限られず、適宜変更してもよい。
【0178】
図24の特徴量Fv1_1に基づく評価によれば、注目期間Troiの全体における吐出圧力の時間変化が理想的な形状から大きく乖離する場合に、この吐出圧力に対して大きなスコア(すなわち、悪い評価)を与えることができる。
【0179】
かかる変形例では、
図4に示す吐出圧力評価の測定結果評価(ステップS102)において、圧力評価部913は、特徴量Fv1ではなくて特徴量Fv1_1を吐出圧力から抽出した結果に基づき評価値V1_1を算出する。特に、1番目(I=1)の評価段階に対しては、
図7に示した特徴量Fv1に基づく評価ではなく、
図24に示した特徴量Fv1_1に基づく評価が割り当てられる。その上で、
図21に示す測定結果評価が実行される。すなわち、
図22の表において、評価段階Iが1の場合の評価項目の特徴量は、特徴量Fv1ではなくて
図24に示す特徴量Fv1_1となる。
【0180】
この変形例においても、吐出圧力を互いに異なる評価項目によってそれぞれ評価する1番目からN番目までのN個の評価段階が設けられており、1番目からN番目までの評価段階を順番に実行することができる。ただし、I番目の評価段階に係る評価項目による評価において吐出圧力が適正と判断された場合(ステップS205で「YES」)に、(I+1)番目の評価段階に係る評価項目による吐出圧力の評価が実行される一方、I番目の評価段階に係る評価項目による評価において吐出圧力が不適正と判断された場合(ステップS205で「NO」)にはI番目の評価段階より後の順番の評価段階による吐出圧力の評価が実行されない(すなわち、省略される)。つまり、1~N番目までの評価段階によって順番に吐出圧力の評価をした際に、いずれかの評価段階で吐出圧力が不適正と判断されると、以後の評価段階による評価が実行されない。これによって、ノズル71から塗布液を吐出するために塗布液に与えられる吐出圧力の評価を、吐出圧力の適否に応じた合理的な時間で行うことが可能となっている。
【0181】
また、ノズル71からの処理液の吐出を開始してから吐出圧力の目標圧力Pt(所定圧力)までの上昇を経て吐出圧力の目標圧力Ptからの減少が開始するまでの注目期間Troi(主要期間、評価対象期間)において、吐出圧力が測定される。そして、1番目(I=1)の評価段階では、注目期間Troiの全体における吐出圧力の時間変化が持つ特徴量Fv1_1(全体特徴量)が抽出され、特徴量Fv1_1に基づき吐出圧力の時間変化が評価される。これによって、基板Sに塗布される処理液の厚みに影響する注目期間Troiの全体における吐出圧力の適否を吐出圧力の評価に反映させることが可能となっている。
【0182】
さらに言えば、かかる変形例では、注目期間Troiが基板Sに塗布される処理液の厚みに与える影響が特に大きい場合(換言すれば、注目期間Troiを経過後の期間の影響が僅かな場合)に、当該注目期間Troiの全体における吐出圧力の適否を吐出圧力の評価に反映させることが可能となっている。
【0183】
また、特徴量Fv1_1(主要特徴量)は、注目期間Troi(主要期間)の全体における吐出圧力の時間変化を近似した近似波形WF1_1(主要近似波形)と、注目期間Troiの全体における吐出圧力の時間変化との差を示す。かかる構成では、注目期間Troiの全体における吐出圧力の時間変化に対する近似波形WF1_1に基づき、当該注目期間Troiの全体における吐出圧力を適切に評価できる。
【0184】
特に、近似波形WF1_1は、
・ノズル71からの塗布液の吐出の開始後に、時間経過に伴って増大する吐出圧力の時間変化を直線近似した、初期圧力Pi(吐出開始圧力)から初期圧力Piより大きい定常圧力Pmまで時間経過に伴って線形に増大する立ち上がり回帰直線Lr_R(立ち上がり近似直線)と、
・ノズル71からの塗布液の吐出の開始時点(時刻ta)と立ち上がり回帰直線Lr_Rとの間に設けられて初期圧力Piを示す開始時近似直線Lr_sと、
・立ち上がり回帰直線Lr_Rが定常圧力Pmに到達してから注目期間Troiの最後までの間(時刻t12から時刻tdの間)に設けられて定常圧力Pmを示す定常直線Lr_m_1と
を有する。かかる構成では、注目期間Troiの全体における吐出圧力の時間変化を近似して、当該注目期間Troiの全体における吐出圧力を適切に評価できる。
【0185】
ちなみに、
図24に示す特徴量Fv1_1を用いて吐出圧力を評価する場合には、ステップS101において、注目期間Troiを経過後の期間(すなわち、立ち下がり期間Td)の吐出圧力を計測する必要はない。
【0186】
また、上述の2つの特徴量Fv1および特徴量Fv1_1のうち、いずれの特徴量を用いて吐出圧力を評価するかを、UI95で選択できるように構成してもよい。この場合、ステップS102では、特徴量Fv1および特徴量Fv1_1のうち、ユーザによるUI95への入力操作によって選択された一方の特徴量で吐出圧力を評価する。また、
図21の測定結果評価では、1番目(I=1)の評価段階に対しては、特徴量Fv1および特徴量Fv1_1のうちから選択された一方の特徴量で吐出圧力を評価する。
【産業上の利用可能性】
【0187】
この発明は、処理液をノズルに送給することでノズルから処理液を目標特性で基板に吐出して供給する基板処理技術全般に適用可能である。
【符号の説明】
【0188】
1…塗布装置(基板処理装置)
71…ノズル(吐出装置)
8…塗布液供給機構(圧力付与部、吐出装置)
86…圧力計(測定部)
9…制御ユニット(コンピュータ、制御部)
97…吐出圧力評価プログラム
M…記録媒体
Tt…吐出期間(第1期間)
Fv1…特徴量(第1特徴量)
WF1…近似波形(第1近似波形)
Pi…初期圧力(吐出開始圧力、吐出終了圧力)
Lr_R…立ち上がり回帰直線(立ち上がり近似直線)
Lr_s…開始時近似直線
Lr_F…立ち下がり回帰直線
Lr_e…終了時近似直線
Lr_m…定常直線
Ta_s…立ち上がり初期期間(第2期間)
Ta…立ち上がり期間(第2期間)
Ta_e…立ち上がり終期期間(第2期間)
Tb_s…初期振動期間(第2期間)
Tb…遷移期間(第2期間)
Tbc…定圧期間(第2期間)
Fv2~Fv10…特徴量(第2特徴量)
Nr…回帰曲線
WF7…近似波形(立ち上がり終期近似波形)
Lr…立ち上がり終期回帰直線(立ち上がり終期近似直線)
Lm…延設直線
Tc…定常期間
Tar…圧力上昇期間(第3期間)
Ta_e…立ち上がり終期期間(第3期間)
Tb_s…初期振動期間(第3期間)
Fv11~Fv14…特徴量(第3特徴量)
P11_l…下側基準圧力(下側基準値)
P11_u…上側基準圧力(上側基準値)
Tar…圧力上昇期間
Ta_e…立ち上がり終期期間
WF12、WF13…近似波形(立ち上がり終期近似波形)
Lr…立ち上がり終期回帰直線(立ち上がり終期近似直線)
Lm…延設直線
Tb_s…初期振動期間