(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-24
(45)【発行日】2025-05-07
(54)【発明の名称】動作監視方法および製造装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/02 20060101AFI20250425BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20250425BHJP
【FI】
H01L21/02 Z
H01L21/304 643A
H01L21/304 648H
(21)【出願番号】P 2021212535
(22)【出願日】2021-12-27
【審査請求日】2024-06-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100135013
【氏名又は名称】西田 隆美
(72)【発明者】
【氏名】岡本 悟史
(72)【発明者】
【氏名】古田 智靖
【審査官】安田 雅彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-057236(JP,A)
【文献】特開2006-099241(JP,A)
【文献】特開2016-080515(JP,A)
【文献】特開2014-165607(JP,A)
【文献】国際公開第2018/216476(WO,A1)
【文献】特開2019-062007(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/02-21/48
H10F 39/00-39/95
B05C 5/00- 5/04
B05C 11/00-11/115
B05D 1/00- 1/42
B05D 3/00
G01B 11/00-11/30
G06T 7/20- 7/292
H04N 19/00-19/98
G05B 23/00-23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理ユニットの動作監視方法であって、
a)前記処理ユニットの特定の動作を複数回撮影することにより、複数の動画を取得する工程と、
b)前記複数の動画に含まれる複数のフレーム画像について、オプティカルフロー法により、画素毎に動きベクトルを算出する工程と、
c)前記複数の動画において、同一時刻・同一画素の前記動きベクトルを比較することにより、画素毎に前記動きベクトルに基づく評価値を算出する工程と、
d)前記評価値に基づいて、前記処理ユニットの前記動作を評価する工程と、
を有する、動作監視方法。
【請求項2】
請求項1に記載の動作監視方法であって、
前記評価値は、前記複数の動画における同一時刻・同一画素の前記動きベクトルを母集団とする前記動きベクトルの標準偏差である、動作監視方法。
【請求項3】
請求項2に記載の動作監視方法であって、
前記フレーム画像は、x軸およびy軸により規定される二次元画像であり、
前記工程c)では、前記動きベクトルのx軸成分の標準偏差と、前記動きベクトルのy軸成分の標準偏差と、を算出し、
前記工程d)では、前記x軸成分の標準偏差と、前記y軸成分の標準偏差と、の平均値に基づいて、前記処理ユニットの前記動作を評価する、動作監視方法。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の動作監視方法であって、
前記工程b)の後、前記工程c)の前に、
x)前記複数の動画のそれぞれについて、前記フレーム画像毎に、前記動きベクトルに基づいて特徴量を算出する工程と、
y)前記特徴量の経時変化波形に基づいて、前記複数の動画のタイミングを揃える工程と、
を有する、動作監視方法。
【請求項5】
請求項4に記載の動作監視方法であって、
前記特徴量は、前記フレーム画像に含まれる複数の画素の前記動きベクトルの長さの平均値である、動作監視方法。
【請求項6】
請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載の動作監視方法であって、
前記工程d)では、前記評価値が、予め設定された許容範囲から外れた場合に、前記動作のばらつきが大きいことを示す評価結果を出力する、動作監視方法。
【請求項7】
請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載の動作監視方法であって、
前記工程a)では、基準となる処理ユニットと、他の処理ユニットとにおいて、それぞれ、前記特定の動作を複数回撮影することにより、複数の動画を取得し、
前記工程d)では、前記基準となる処理ユニットの前記評価値と、前記他の処理ユニットの前記評価値との差が、予め設定された許容範囲から外れた場合に、前記他の処理ユニットの前記動作のばらつきが大きいことを示す評価結果を出力する、動作監視方法。
【請求項8】
請求項6または請求項7に記載の動作監視方法であって、
前記評価結果の出力において、前記フレーム画像の前記評価値が前記許容範囲から外れた画素に、着色、文字、または図形を重ねて表示する、動作監視方法。
【請求項9】
請求項1から請求項8までのいずれか1項に記載の動作監視方法であって、
前記処理ユニットは、基板の表面に処理液を供給するユニットである、動作監視方法。
【請求項10】
特定の動作を行うことにより、処理対象物を処理する処理ユニットと、
前記処理ユニットの前記動作を撮影するカメラと、
前記カメラから得られる動画に基づいて、前記動作を評価するコンピュータと、
を備え、
前記コンピュータは、
a)前記カメラに、前記処理ユニットの前記動作を複数回撮影させることにより、複数の動画を取得する処理と、
b)前記複数の動画に含まれる複数のフレーム画像について、オプティカルフロー法により、画素毎に動きベクトルを算出する処理と、
c)前記複数の動画において、同一時刻・同一画素の前記動きベクトルを比較することにより、画素毎に前記動きベクトルに基づく評価値を算出する処理と、
d)前記評価値に基づいて、前記処理ユニットの前記動作を評価する処理と、
を実行する、製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、処理ユニットの動作監視方法および当該処理ユニットを備えた製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
産業機械などの装置において、動作の再現性は重要な問題である。特に、半導体製造装置のように、基板に対して精密・微細な加工を行う装置では、僅かな動作の差異が、製品の品質を大きく低下させる要因となり得る。このため、装置において実行される動作の僅かなばらつきを、定量的に評価することが求められている。
【0003】
従来、装置にカメラを設置し、動作の異常を監視する技術が知られている。例えば、特許文献1には、基板を処理するプロセスをカメラで撮影し、得られた動画に基づいて、異常の発生を検出することが、記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の技術は、突発的または不規則に発生する異常を、動画のフレーム毎に検出するものである。このため、特許文献1の方法では、装置内において繰り返される複数回の動作の再現性を、画素毎に評価することはできない。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みなされたものであり、処理ユニットの動作のばらつきを、画素毎に評価できる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本願の第1発明は、処理ユニットの動作監視方法であって、a)前記処理ユニットの特定の動作を複数回撮影することにより、複数の動画を取得する工程と、b)前記複数の動画に含まれる複数のフレーム画像について、オプティカルフロー法により、画素毎に動きベクトルを算出する工程と、c)前記複数の動画において、同一時刻・同一画素の前記動きベクトルを比較することにより、画素毎に前記動きベクトルに基づく評価値を算出する工程と、d)前記評価値に基づいて、前記処理ユニットの前記動作を評価する工程と、を有する。
【0008】
本願の第2発明は、第1発明の動作監視方法であって、前記評価値は、前記複数の動画における同一時刻・同一画素の前記動きベクトルを母集団とする前記動きベクトルの標準偏差である。
【0009】
本願の第3発明は、第2発明の動作監視方法であって、前記フレーム画像は、x軸およびy軸により規定される二次元画像であり、前記工程c)では、前記動きベクトルのx軸成分の標準偏差と、前記動きベクトルのy軸成分の標準偏差と、を算出し、前記工程d)では、前記x軸成分の標準偏差と、前記y軸成分の標準偏差と、の平均値に基づいて、前記処理ユニットの前記動作を評価する。
【0010】
本願の第4発明は、第1発明から第3発明までのいずれか1発明の動作監視方法であって、前記工程b)の後、前記工程c)の前に、x)前記複数の動画のそれぞれについて、前記フレーム画像毎に、前記動きベクトルに基づいて特徴量を算出する工程と、y)前記特徴量の経時変化波形に基づいて、前記複数の動画のタイミングを揃える工程と、を有する。
【0011】
本願の第5発明は、第4発明の動作監視方法であって、前記特徴量は、前記フレーム画像に含まれる複数の画素の前記動きベクトルの長さの平均値である。
【0012】
本願の第6発明は、第1発明から第5発明までのいずれか1発明の動作監視方法であって、前記工程d)では、前記評価値が、予め設定された許容範囲から外れた場合に、前記動作のばらつきが大きいことを示す評価結果を出力する。
【0013】
本願の第7発明は、第1発明から第5発明までのいずれか1発明の動作監視方法であって、前記工程a)では、基準となる処理ユニットと、他の処理ユニットとにおいて、それぞれ、前記特定の動作を複数回撮影することにより、複数の動画を取得し、前記工程d)では、前記基準となる処理ユニットの前記評価値と、前記他の処理ユニットの前記評価値との差が、予め設定された許容範囲から外れた場合に、前記他の処理ユニットの前記動作のばらつきが大きいことを示す評価結果を出力する。
【0014】
本願の第8発明は、第6発明または第7発明の動作監視方法であって、前記評価結果の出力において、前記フレーム画像の前記評価値が前記許容範囲から外れた画素に、着色、文字、または図形を重ねて表示する。
【0015】
本願の第9発明は、第1発明から第8発明までのいずれか1発明の動作監視方法であって、前記処理ユニットは、基板の表面に処理液を供給するユニットである。
【0016】
本願の第10発明は、特定の動作を行うことにより、処理対象物を処理する処理ユニットと、 前記処理ユニットの前記動作を撮影するカメラと、前記カメラから得られる動画に基づいて、前記動作を評価するコンピュータと、を備え、前記コンピュータは、a)前記カメラに、前記処理ユニットの前記動作を複数回撮影させることにより、複数の動画を取得する処理と、b)前記複数の動画に含まれる複数のフレーム画像について、オプティカルフロー法により、画素毎に動きベクトルを算出する処理と、c)前記複数の動画において、同一時刻・同一画素の前記動きベクトルを比較することにより、画素毎に前記動きベクトルに基づく評価値を算出する処理と、d)前記評価値に基づいて、前記処理ユニットの前記動作を評価する処理と、を実行する。
【発明の効果】
【0017】
本願の第1発明~第10発明によれば、処理ユニットの動作のばらつきを、画素毎に、動きベクトルに基づいて評価できる。
【0018】
特に、本願の第4発明によれば、複数の動画のタイミングを揃えることができる。これにより、工程c),d)において、処理ユニットの動作のばらつきを、精度よく評価できる。また、複数の動画のタイミングを揃えるための特徴量を、動きベクトルに基づいて算出する。このため、動きベクトルとは別に、動画のタイミングを揃えるためのパラメータを計測する必要がない。
【0019】
特に、本願の第8発明によれば、動作のばらつきが大きい部分を、視覚的に容易に把握できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図3】カメラによる撮影の様子を、概念的に示した図である。
【
図4】制御部と処理ユニット内の各部との接続を示したブロック図である。
【
図5】基板の処理手順を示すフローチャートである。
【
図6】動作監視の流れを示すフローチャートである。
【
図9】1つのフレーム画像について算出される動きベクトルの例を示した図である。
【
図10】2つの動画の特徴量の経時変化波形の例を示したグラフである。
【
図11】標準偏差の算出処理を、概念的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0022】
<1.基板処理装置の全体構成>
図1は、本発明に係る製造装置の一例となる基板処理装置100の平面図である。この基板処理装置100は、半導体ウェハの製造工程において、円板状の基板W(シリコンウェハ)の表面に処理液を供給して、基板Wの表面を処理する装置である。
図1に示すように、基板処理装置100は、インデクサ101と、複数の処理ユニット102と、主搬送ロボット103とを備えている。
【0023】
インデクサ101は、処理前の基板Wを外部から搬入するとともに、処理後の基板Wを外部へ搬出するための部位である。インデクサ101には、複数の基板Wを収容するキャリアが、複数配置される。また、インデクサ101は、図示を省略した移送ロボットを有する。移送ロボットは、インデクサ101内のキャリアと、処理ユニット102または主搬送ロボット103との間で、基板Wを移送する。
【0024】
処理ユニット102は、基板Wを1枚ずつ処理する、いわゆる枚様式の処理部である。複数の処理ユニット102は、主搬送ロボット103の周囲に配置されている。本実施形態では、主搬送ロボット103の周囲に配置された4つの処理ユニット102が、高さ方向に3段に積層されている。すなわち、本実施形態の基板処理装置100は、全部で12台の処理ユニット102を有する。複数の基板Wは、各処理ユニット102において、並列に処理される。ただし、基板処理装置100が備える処理ユニット102の数は、12台に限定されるものではなく、例えば、1台、4台、8台、24台などであってもよい。
【0025】
主搬送ロボット103は、インデクサ101と複数の処理ユニット102との間で、基板Wを搬送するための機構である。主搬送ロボット103は、例えば、基板Wを保持するハンドと、ハンドを移動させるアームとを有する。主搬送ロボット103は、インデクサ101から処理前の基板Wを取り出して、処理ユニット102へ搬送する。また、処理ユニット102における基板Wの処理が完了すると、主搬送ロボット103は、当該処理ユニット102から処理後の基板Wを取り出して、インデクサ101へ搬送する。
【0026】
<2.処理ユニットの構成>
続いて、処理ユニット102の詳細な構成について説明する。以下では、基板処理装置100が有する複数の処理ユニット102のうちの1つについて説明するが、他の処理ユニット102も同等の構成を有する。
【0027】
図2は、処理ユニット102の縦断面図である。
図2に示すように、処理ユニット102は、チャンバ10、基板保持部20、回転機構30、処理液供給部40、処理液捕集部50、遮断板60、カメラ70、および制御部80を備えている。
【0028】
チャンバ10は、基板Wを処理するための処理空間11を内包する筐体である。チャンバ10は、処理空間11の側部を取り囲む側壁12と、処理空間11の上部を覆う天板部13と、処理空間11の下部を覆う底板部14と、を有する。基板保持部20、回転機構30、処理液供給部40、処理液捕集部50、遮断板60、およびカメラ70は、チャンバ10の内部に収容される。側壁12の一部には、チャンバ10内への基板Wの搬入およびチャンバ10から基板Wの搬出を行うための搬入出口と、搬入出口を開閉するシャッタとが、設けられている。
【0029】
基板保持部20は、チャンバ10の内部において、基板Wを水平に(法線が鉛直方向を向く姿勢で)保持する機構である。
図2に示すように、基板保持部20は、円板状のスピンベース21と、複数のチャックピン22とを有する。複数のチャックピン22は、スピンベース21の上面の外周部に沿って、等角度間隔で設けられている。基板Wは、パターンが形成される被処理面を上側に向けた状態で、複数のチャックピン22に保持される。各チャックピン22は、基板Wの周縁部の下面および外周端面に接触し、スピンベース21の上面から僅かな空隙を介して上方の位置に、基板Wを支持する。
【0030】
スピンベース21の内部には、複数のチャックピン22の位置を切り替えるためのチャックピン切替機構23が設けられている。チャックピン切替機構23は、複数のチャックピン22を、基板Wを保持する保持位置と、基板Wの保持を解除する解除位置と、の間で切り替える。
【0031】
回転機構30は、基板保持部20を回転させるための機構である。回転機構30は、スピンベース21の下方に設けられたモータカバー31の内部に収容されている。
図2中に破線で示したように、回転機構30は、スピンモータ32と支持軸33とを有する。支持軸33は、鉛直方向に延び、その下端部がスピンモータ32に接続されるとともに、上端部がスピンベース21の下面の中央に固定される。スピンモータ32を駆動させると、支持軸33がその軸芯330を中心として回転する。そして、支持軸33とともに、基板保持部20および基板保持部20に保持された基板Wも、軸芯330を中心として回転する。
【0032】
処理液供給部40は、基板保持部20に保持された基板Wの上面に、処理液を供給する機構である。処理液供給部40は、上面ノズル41および下面ノズル42を有する。
図1および
図2に示すように、上面ノズル41は、ノズルアーム411と、ノズルアーム411の先端に設けられたノズルヘッド412と、ノズルモータ413とを有する。ノズルアーム411は、ノズルモータ413の駆動により、ノズルアーム411の基端部を中心として、水平方向に回動する。これにより、ノズルヘッド412を、基板保持部20に保持された基板Wの上方の処理位置(
図1中の二点鎖線の位置))と、処理液捕集部50よりも外側の退避位置(
図1中の実線の位置)との間で、移動させることができる。
【0033】
ノズルヘッド412は、処理液を供給するための給液部(図示省略)と接続されている。処理液には、例えば、SPM洗浄液(硫酸と過酸化水素水との混合液)、SC-1洗浄液(アンモニア水、過酸化水素水、純水の混合液)、SC-2洗浄液(塩酸、過酸化水素水、純水の混合液)、DHF洗浄液(希フッ酸)、純水(脱イオン水)などが使用される。ノズルヘッド412を処理位置に配置した状態で、給液部のバルブを開放すると、給液部から供給される処理液が、ノズルヘッド412から、基板保持部20に保持された基板Wの上面に向けて吐出される。
【0034】
なお、ノズルヘッド412は、処理液と加圧した気体とを混合して液滴を生成し、その液滴と気体との混合流体を基板Wに噴射する、いわゆる二流体ノズルであってもよい。また、1つの処理ユニット102に、複数本の上面ノズル41が設けられていてもよい。
【0035】
下面ノズル42は、スピンベース21の中央に設けられた貫通孔の内側に配置されている。下面ノズル42の吐出口は、基板保持部20に保持された基板Wの下面に対向する。下面ノズル42も、処理液を供給するための給液部に接続されている。給液部から下面ノズル42に処理液が供給されると、当該処理液が、下面ノズル42から基板Wの下面に向けて吐出される。
【0036】
処理液捕集部50は、使用後の処理液を捕集する部位である。
図2に示すように、処理液捕集部50は、内カップ51、中カップ52、および外カップ53を有する。内カップ51、中カップ52、および外カップ53は、図示を省略した昇降機構により、互いに独立して昇降移動することが可能である。
【0037】
内カップ51は、基板保持部20の周囲を包囲する円環状の第1案内板510を有する。中カップ52は、第1案内板510の外側かつ上側に位置する円環状の第2案内板520を有する。外カップ53は、第2案内板520の外側かつ上側に位置する円環状の第3案内板530を有する。また、内カップ51の底部は、中カップ52および外カップ53の下方まで広がっている。そして、当該底部の上面には、内側から順に、第1排液溝511、第2排液溝512、および第3排液溝513が設けられている。
【0038】
処理液供給部40の上面ノズル41および下面ノズル42から吐出された処理液は、基板Wに供給された後、基板Wの回転による遠心力で、外側へ飛散する。そして、基板Wから飛散した処理液は、第1案内板510、第2案内板520、および第3案内板530のいずれかに捕集される。第1案内板510に捕集された処理液は、第1排液溝511を通って、処理ユニット102の外部へ排出される。第2案内板520に捕集された処理液は、第2排液溝512を通って、処理ユニット102の外部へ排出される。第3案内板530に捕集された処理液は、第3排液溝513を通って、処理ユニット102の外部へ排出される。
【0039】
このように、この処理ユニット102は、処理液の排出経路を複数有する。このため、基板Wに供給された処理液を、種類毎に分別して回収できる。したがって、回収された処理液の廃棄や再生処理も、各処理液の性質に応じて別々に行うことができる。
【0040】
遮断板60は、乾燥処理などの一部の処理を行うときに、基板Wの表面付近における気体の拡散を抑制するための部材である。遮断板60は、円板状の外形を有し、基板保持部20の上方に、水平に配置される。
図2に示すように、遮断板60は、昇降機構61に接続されている。昇降機構61を動作させると、遮断板60は、基板保持部20に保持される基板Wの上面から上方へ離れた上位置と、上位置よりも基板Wの上面に接近した下位置との間で、昇降移動する。昇降機構61には、例えば、モータの回転運動をボールねじにより直進運動に変換する機構が用いられる。
【0041】
また、遮断板60の下面の中央には、乾燥用の気体(以下「乾燥気体」と称する)を吹き出す吹出口62が設けられている。吹出口62は、乾燥気体を供給する給気部(図示省略)と接続されている。乾燥気体には、例えば、加熱された窒素ガスが用いられる。
【0042】
上面ノズル41から基板Wに対して処理液を供給するときには、遮断板60は、上位置に退避する。処理液の供給後、基板Wの乾燥処理を行うときには、昇降機構61により、遮断板60が下位置に降下する。そして、吹出口62から基板Wの上面に向けて、乾燥気体が吹き付けられる。このとき、遮断板60により、気体の拡散が防止される。その結果、基板Wの上面に乾燥気体が効率よく供給される。
【0043】
カメラ70は、チャンバ10内の特定の動作を撮影する装置である。カメラ70は、例えば、チャンバ10の側壁12の内面に近接した位置に設置される。
図3は、カメラ70による撮影の様子を、概念的に示した図である。本実施形態では、スピンベース21に支持された基板Wと、ノズルヘッド412と含む矩形の領域が、カメラ70の撮影領域Aとなっている。ノズルヘッド412から基板Wの表面に処理液を吐出する動作を行うとき、カメラ70は、撮影領域A内の当該動作を動画撮影する。そして、カメラ70は、得られた動画Mを、制御部80へ送信する。
【0044】
制御部80は、処理ユニット102内の各部を動作制御するための手段である。
図4は、制御部80と、処理ユニット102内の各部との電気的接続を示したブロック図である。
図4中に概念的に示したように、制御部80は、CPU等のプロセッサ81、RAM等のメモリ82、およびハードディスクドライブ等の記憶部83を有するコンピュータにより構成される。
【0045】
記憶部83内には、動作制御プログラムP1と、動作監視プログラムP2とが、記憶されている。動作制御プログラムP1は、処理ユニット102における基板Wの処理を実行するために、処理ユニット102の各部を動作制御するためのコンピュータプログラムである。動作監視プログラムP2は、カメラ70から得られる動画Mに基づいて、処理ユニット102内の特定の動作を監視および評価するためのコンピュータプログラムである。
【0046】
図4に示すように、制御部80は、上述したチャックピン切替機構23、スピンモータ32、ノズルモータ413、処理液供給部40のバルブ、処理液捕集部50の昇降機構、遮断板60の昇降機構61、およびカメラ70と、それぞれ有線または無線により通信可能に接続されている。また、制御部80は、液晶ディスプレイ等の表示部84とも、電気的に接続されている。制御部80は、記憶部83に記憶された動作制御プログラムP1および動作監視プログラムP2に基づいて、上記の各部を動作制御する。これにより、後述するステップS1~S5およびステップS11~S16の処理が進行する。
【0047】
<3.基板処理装置の動作>
次に、上記の処理ユニット102における基板Wの処理について、説明する。
図5は、基板Wの処理手順を示すフローチャートである。
【0048】
処理ユニット102において基板Wを処理するときには、まず、主搬送ロボット103が、処理対象となる基板Wを、チャンバ10内に搬入する(ステップS1)。チャンバ10内に搬入された基板Wは、基板保持部20の複数のチャックピン22により、水平に保持される。その後、回転機構30のスピンモータ32を駆動させることにより、基板Wの回転を開始させる(ステップS2)。具体的には、支持軸33、スピンベース21、複数のチャックピン22、およびチャックピン22に保持された基板Wが、支持軸33の軸芯330を中心として回転する。
【0049】
続いて、処理液供給部40からの処理液の供給を行う(ステップS3)。ステップS3では、ノズルモータ413の駆動により、ノズルヘッド412が、基板Wの上面に対向する処理位置へ移動する。そして、処理位置に配置されたノズルヘッド412から、処理液が吐出される。制御部80内の記憶部83には、処理液の吐出速度や吐出時間等のパラメータが、予め設定されている。制御部80は、当該設定に従って、上面ノズル41からの処理液の吐出動作を実行する。
【0050】
なお、ステップS3では、上面ノズル41から処理液を吐出しつつ、上面ノズル41を、処理位置において水平方向に揺動させてもよい。また、必要に応じて、下面ノズル42からの処理液の吐出を行ってもよい。
【0051】
ステップS3の処理液供給工程の間、遮断板60は、上面ノズル41よりも上方の上位置に配置されている。基板Wへの処理液の供給が完了し、上面ノズル41が退避位置に配置されると、制御部80は、昇降機構61を動作させて、遮断板60を上位置から下位置へ移動させる。そして、スピンモータ32の回転数を上げて基板Wの回転を高速化するとともに、遮断板60の下面に設けられた吹出口62から基板Wへ向けて、乾燥用の気体を吹き付ける。これにより、基板Wの表面を乾燥させる(ステップS4)。
【0052】
基板Wの乾燥処理が終了すると、スピンモータ32を停止させて、基板Wの回転を止める。そして、複数のチャックピン22による基板Wの保持を解除する。その後、主搬送ロボット103が、処理後の基板Wを、基板保持部20から取り出して、チャンバ10の外部へ搬出する(ステップS5)。
【0053】
各処理ユニット102は、順次に搬送される複数の基板Wに対して、上述のステップS1~S5の処理を、繰り返し実行する。
【0054】
<4.動作監視について>
続いて、基板処理装置100の動作監視機能について、説明する。動作監視機能は、処理ユニット102において繰り返し実行される特定の動作を監視し、当該動作のばらつきを検出する機能である。以下の説明においては、監視対象となる動作を、上述したステップS3の処理液の供給動作とする。ただし、監視対象となる動作は、処理液の供給動作以外の動作であってもよい。
【0055】
図6は、動作監視の流れを示すフローチャートである。基板処理装置100は、まず、ステップS3の処理液の供給動作を複数回実行する。そして、カメラ70により、当該動作を複数回撮影する(ステップS11)。これにより、複数の動画Mを取得する。ここで、処理液の供給動作は、製品としての基板Wに対して行うものであってもよく、あるいは、処理ユニット102の調整時に、調整用のダミー基板に対して行うものであってもよい。カメラ70は、得られた複数の動画Mを、制御部80へ送信する。制御部80は、カメラ70から送信された動画Mを、記憶部83に記憶する。
【0056】
図7は、動画Mの構成を概念的に示した図である。
図7に示すように、動画Mは、微小な時間間隔で撮影された複数のフレーム画像Fにより構成されている。各フレーム画像Fは、x軸およびy軸により規定される二次元画像である。各フレーム画像Fは、xy平面に沿って配列された複数の画素により構成され、画素毎に画素値(例えば、輝度値)をもつ。
【0057】
次に、制御部80は、複数の動画Mに含まれる複数のフレーム画像Fについて、オプティカルフロー法により、画素毎に動きベクトルVを算出する(ステップS12)。
図8は、1つのフレーム画像Fの例を示した図である。
図9は、当該フレーム画像Fについて算出される動きベクトルVの例を示した図である。なお、
図9においては、フレーム画像Fを破線で示し、当該フレーム画像Fにおいて算出される動きベクトルVを、フレーム画像Fに重ねて矢印にて示している。
【0058】
ステップS12では、制御部80が、フレーム画像Fと、時系列において前後に隣接する1枚または複数枚のフレーム画像Fとを比較し、同一の画素値の位置が変化する方向および変化の大きさに基づいて、動きベクトルVを算出する。算出された動きベクトルVは、撮影領域Aに含まれる部品等の移動の向きおよび大きさを示す情報となる。
図9の例では、処理液の吐出に伴って生じる上面ノズル41の僅かな振動が、動きベクトルVに反映されている。
【0059】
制御部80は、いわゆる密なオプティカルフロー法により、フレーム画像Fに含まれる全ての画素について、動きベクトルVを算出する。ただし、制御部80は、いわゆる疎なオプティカルフロー法により、フレーム画像Fの一部の画素についてのみ、動きベクトルVを算出してもよい。また、フレーム画像Fの画素数を低減する縮小処理を行った上で、密なオプティカルフロー法により、縮小処理後のフレーム画像Fに含まれる全ての画素について、動きベクトルVを算出してもよい。
【0060】
続いて、制御部80は、複数の動画Mのそれぞれについて、フレーム画像F毎に、動きベクトルVに基づく特徴量を算出する(ステップS13)。例えば、制御部80は、フレーム画像Fに含まれる複数の画素の動きベクトルVの大きさ(絶対値)の平均値を、当該フレーム画像Fの特徴量とする。ただし、動きベクトルVに基づいて算出される他の数値を、フレーム画像Fの特徴量としてもよい。例えば、フレーム画像Fに含まれる複数の画素の動きベクトルVの大きさの和を、当該フレーム画像Fの特徴量としてもよい。
【0061】
複数の動画Mの各フレーム画像Fの特徴量が算出されると、動画M毎に、特徴量の経時変化波形WFが得られる。
図10は、2つの動画Mの特徴量の経時変化波形WFの例を示したグラフである。
図10のグラフにおいて、横軸は時刻であり、縦軸は特徴量である。
【0062】
制御部80は、複数の動画Mの特徴量の経時変化波形WFを比較することにより、複数の動画Mのタイミングを揃える(ステップS14)。具体的には、制御部80は、基準となる1つの動画Mの経時変化波形WFと、他の動画Mの経時変化波形WFとの、相互相関関数を求める。そして、制御部80は、相互相関関数が最大値となる時間ずれ量を求める。その後、制御部80は、当該時間ずれ量が解消されるように、他の動画Mの時刻をずらす。これにより、複数の動画Mにおける動作のタイミングが、基準となる動画Mに揃えられる。すなわち、複数の動画Mにおいて、同じ時刻に同じ動作が行われるようになる。
【0063】
複数の動画Mのタイミングが揃うと、次に、制御部80は、時刻毎に、各画素の動きベクトルVの標準偏差σを算出する(ステップS15)。
図11は、標準偏差σの算出処理を、概念的に示した図である。
図11に示すように、制御部80は、複数の動画Mにおいて、同一時刻・同一画素の動きベクトルVを比較することにより、画素毎に、動きベクトルVの標準偏差σを算出する。より具体的には、制御部80は、動きベクトルVのx軸成分Vxの標準偏差σxと、動きベクトルVのy軸成分Vyの標準偏差σyとを、それぞれ算出する。そして、制御部80は、算出された2つの標準偏差σx,σyの平均値を、当該時刻における当該画素の動きベクトルVの標準偏差σとする。
【0064】
ステップS15の処理により、時刻毎に、各画素の動きベクトルVの標準偏差σが算出される。この標準偏差σは、各画素の座標における部品等の動きが、複数の動画Mにおいてどれくらいばらついているかを表す情報となる。動きのばらつきが大きいほど、標準偏差σの値が大きくなる。制御部80は、画素毎に算出された標準偏差σを記録し、それを時系列に配列した情報を取得する。
【0065】
続いて、制御部80は、ステップS15で算出された標準偏差σに基づいて、処理ユニット102の動作を評価する(ステップS16)。制御部80の記憶部83には、予め標準偏差σの許容範囲を示す情報(例えば閾値)が、記憶されている。制御部80は、時刻毎に、各画素の標準偏差σが、許容範囲内か否かを判定する。そして、制御部80は、標準偏差σが許容範囲から外れた場合に、当該時刻における当該画素の動作のばらつきが大きいことを検出する。
【0066】
制御部80は、ステップS16の評価結果を、表示部84に表示する。評価結果には、標準偏差σが許容範囲から外れた時刻および画素を示す情報が含まれる。基板処理装置100のユーザは、表示部84に表示された評価結果を確認することにより、どの時刻のどの座標において、動作のばらつきが大きいかを確認することができる。
【0067】
図12は、評価結果の例を示した図である。
図12の例では、評価結果として、フレーム画像Fが表示されるとともに、標準偏差σが許容範囲から外れた画素(以下「検出画素P」と称する)が、着色により強調表示されている。このように、フレーム画像Fの検出画素Pに、着色、文字、または図形を重ねて表示すれば、基板処理装置100のユーザは、動作のばらつきが大きい部分を、視覚的に容易に把握することができる。また、このような評価結果の画像を、時系列に配列することにより、強調表示された検出画素Pが経時変化する動画を作成し、当該動画を表示部84に表示してもよい。
【0068】
以上のように、この基板処理装置100では、処理ユニット102の特定の動作Mを複数回撮影し、得られた動画Mの各フレーム画像Fにおいて、画素毎に動きベクトルVを算出する。そして、動きベクトルVの標準偏差σに基づいて、動作のばらつきを検出する。これにより、処理ユニット102の特定の動作に、どの程度のばらつきがあるかを、定量的に評価することができる。
【0069】
特に、本実施形態の動作監視方法では、複数の動画Mにおいて、フレーム画像Fの画素値を単純に比較するのではなく、動きベクトルVに着目し、動きベクトルVの標準偏差σを評価値としている。このようにすれば、処理ユニット102の動作を、動きとして評価することができる。したがって、処理ユニット102における動作の再現性を、より適切に評価できる。
【0070】
また、本実施形態の動作監視方法では、ステップS15において標準偏差σを算出する前に、ステップS13~S14において、複数の動画Mのタイミングを揃える処理を行っている。このようにすれば、ステップS15において、動作のタイミングが一致した複数の動画Mに基づいて、標準偏差σをより精度よく算出できる。その結果、ステップS16において、処理ユニット102の動作を、より精度よく評価できる。
【0071】
また、本実施形態の動作監視方法では、複数の動画Mのタイミングを揃えるための特徴量を、動きベクトルVに基づいて算出している。すなわち、動作のばらつきを評価するための動きベクトルVを、タイミング合わせにも利用している。このようにすれば、動きベクトルVとは別に、動画Mのタイミングを揃えるためのパラメータを計測する必要がない。したがって、動作監視のために必要な計測処理を減らすことができる。
【0072】
<5.変形例>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではない。
【0073】
<5-1.第1変形例>
上記の実施形態では、1つの処理ユニット102において繰り返される動作を撮影し、当該動作のばらつきを評価していた。しかしながら、複数の処理ユニット102において、同一の動作を撮影し、得られた動画Mに基づいて、処理ユニット102間の機差を評価してもよい。
【0074】
例えば、基準となる処理ユニット102と、他の処理ユニット102とにおいて、それぞれ、特定の動作を複数回撮影する。そして、各処理ユニット102について、上記の実施形態と同様の手順により、標準偏差σを算出する。その後、基準となる処理ユニット102の標準偏差σと、他の処理ユニット102の標準偏差σとの差が、予め設定された許容範囲から外れた場合に、当該他の処理ユニット102の動作のばらつきが大きいとする評価結果を出力してもよい。
【0075】
<5-2.第2変形例>
上記の実施形態では、複数の動画Mにおける同一時刻・同一画素の動きベクトルVを母集団とする動きベクトルVの標準偏差σを、動作のばらつきを表す評価値としていた。しかしながら、動作のばらつきを表す評価値は、動きベクトルVに基づいて、他の計算方法により算出される値であってもよい。例えば、標準偏差σに代えて、動きベクトルVの分散値を使用してもよい。
【0076】
<5-3.他の変形例>
上記の実施形態では、基板Wの表面に処理液を供給する処理ユニット102の動作を評価する例について、説明した。しかしながら、評価対象となる処理ユニットは、基板Wに対して他の処理を行うユニットであってもよい。また、処理対象物は、基板W以外の物であってもよい。本発明の動作監視方法は、動きを伴う処理を行う装置に、広く適用することができる。
【0077】
ただし、半導体ウェハ等の精密電子部品用の基板Wに対して処理液を供給する装置においては、動作の再現性を極めて精密に管理する必要がある。このため、当該基板Wに対して処理液を供給する装置においては、本発明の動作監視方法を適用する意義が、特に大きい。
【符号の説明】
【0078】
10 チャンバ
20 基板保持部
30 回転機構
40 処理液供給部
50 処理液捕集部
60 遮断板
70 カメラ
80 制御部
84 表示部
100 基板処理装置
102 処理ユニット
P1 動作制御プログラム
P2 動作監視プログラム
W 基板
A 撮影領域
M 動画
F フレーム画像
p 検出画素
V 動きベクトル
WF 特徴量の経時変化波形
σ 標準偏差