(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-24
(45)【発行日】2025-05-07
(54)【発明の名称】発進制御装置
(51)【国際特許分類】
E01F 13/06 20060101AFI20250425BHJP
G07B 15/00 20110101ALI20250425BHJP
【FI】
E01F13/06
G07B15/00 510
G07B15/00 M
(21)【出願番号】P 2022039007
(22)【出願日】2022-03-14
【審査請求日】2024-03-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002491
【氏名又は名称】弁理士法人クロスボーダー特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】永松 明大
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 耀司
【審査官】荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-196367(JP,A)
【文献】特開2004-164498(JP,A)
【文献】特開2006-092284(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01F 13/06
G07B 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
阻止バーを保持するバーホルダであって、車両の通行を許可しない閉位置に前記阻止バーがある閉状態のときに通行レーンを車両が通過すると、前記阻止バーを退避位置に移動させるバーリリース機能を有するバーホルダと、
前記閉位置から前記退避位置へ向かう退避方向の力に対して前記阻止バーを前記閉位置に保持する保持力を、
前記通行レーンに設けられた通信装置が、前記通行レーンに進入した進入車両と通信できない状態である特定状態の場合には、前記特定状態ではない通常状態の場合よりも、前記保持力を小さくする保持力調整装置と
を備える発進制御装置。
【請求項2】
前記特定状態は、前記通信装置が前記進入車両から前記通行レーンの通行を許可するための情報が送信されない状態である
請求項
1に記載の発進制御装置。
【請求項3】
前記発進制御装置は、さらに、
前記進入車両が前記阻止バーから基準距離以内に入ったことを検知する接近センサ
を備え、
前記保持力調整装置は、前記進入車両の状態が特定状態であり、かつ、前記接近センサにより前記進入車両が基準距離以内に入ったことが検知された場合には、前記特定状態の場合よりも前記保持力を小さくする
請求項
1又は2に記載の発進制御装置。
【請求項4】
阻止バーを保持するバーホルダであって、車両の通行を許可しない閉位置に前記阻止バーがある閉状態のときに通行レーンを車両が通過すると、前記阻止バーを退避位置に移動させるバーリリース機能を有するバーホルダと、
前記車両が前記通行レーンに進入する前に前記閉位置から前記退避位置へ向かう退避方向
に働いている力に対して前記阻止バーを前記閉位置に保持する保持力を、
前記通行レーンに進入した進入車両の速度が閾値よりも速い状態である特定状態の場合には、前記特定状態でない通常状態の場合よりも小さくする保持力調整装置と
を備える発進制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両の発進を制御するための発進制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
高速道路の料金所といった場所に設置されたETC(登録商標)レーン等には、車両の発進を制御するための発進制御装置が設置されている。
発進制御装置は、阻止バーと呼ばれるバーを開閉動作させることにより、車両の通行が許可されているか、許可されていないかを車両の運転手に知らせる。
【0003】
車両の通行を許可しない閉位置に阻止バーがある場合に車両が通過すると、車両が阻止バーに衝突してしまう。車両が阻止バーに衝突すると、発進制御装置及び車両が損傷する恐れがある。この損傷を低減するため、車両が阻止バーに衝突すると、阻止バーが車両の進行方向に移動するバーリリース機能が設けられた発進制御装置がある(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のバーリリース機能では、車両が阻止バーに衝突した衝撃によって阻止バーが進行方向に移動する仕組みになっている。そのため、衝突により阻止バーが破損する恐れがある。また、何度も衝突することで、阻止バーを保持するバーホルダの耐久限界を超え、バーホルダが破損する恐れがある。また、車両に対する衝撃を緩和する措置も十分ではなく、車体を傷つける恐れがある。
本開示は、阻止バーに車両が衝突する際の衝撃を緩和可能することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る発進制御装置は、
阻止バーを保持するバーホルダであって、車両の通行を許可しない閉位置に前記阻止バーがある閉状態のときに通行レーンを車両が通過すると、前記阻止バーを退避位置に移動させるバーリリース機能を有するバーホルダと、
前記閉位置から前記退避位置へ向かう退避方向の力に対して前記阻止バーを前記閉位置に保持する保持力を、前記通行レーンに進入した進入車両の状態に応じて調整する保持力調整部と
を備える。
【発明の効果】
【0007】
本開示では、進入車両の状態に応じて阻止バーを閉位置に保持する保持力が調整される。これにより、阻止バーに車両が衝突する際の衝撃を緩和可能な制御を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施の形態1に係る発進制御装置10の構成図。
【
図2】実施の形態1に係る発進制御装置10の開閉動作の説明図。
【
図3】実施の形態1に係る発進制御装置10の退避動作の説明図。
【
図4】実施の形態1に係る発進制御装置10の保持力調整動作を示すフローチャート。
【
図5】実施の形態1に係る通常状態における保持力の説明図。
【
図7】実施の形態1に係る保持力調整処理の説明図。
【
図8】実施の形態2に係る発進制御装置10の構成図。
【
図9】実施の形態2に係る発進制御装置10の保持力調整動作を示すフローチャート。
【
図10】実施の形態2に係る第2保持力調整処理の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態1.
***構成の説明***
図1を参照して、実施の形態1に係る発進制御装置10の構成を説明する。
発進制御装置10は、筐体1と、阻止バー2と、バーホルダ3と、保持力調整装置4とを備える。
【0010】
筐体1は、車両20が通行する通行レーンの端の路上といった場所に設置される。筐体1は、直方体状の箱体である。
【0011】
阻止バー2は、バーホルダ3を介して筐体1に取り付けされる棒体である。阻止バー2は、車両20の運転手に、通行レーンの通行が許可されているか否かを示すためのものである。
【0012】
バーホルダ3は、筐体1に取り付けられる。バーホルダ3は、閉位置Cから開位置O(
図2参照)まで、車両20の進行方向と垂直な方向に回動するように取り付けられる。閉位置Cと開位置Oとの間の回動は、駆動部の動力により行われる。閉位置Cは、車両20の通行を許可しないことを示す。開位置Oは、車両20の通行を許可することを示す。
また、バーホルダ3は、閉位置Cから退避位置V(
図3参照)まで、車両20の進行方向に90度程度折れ曲がるようになっている。退避位置Vは、阻止バー2を車両20と接触しないように退避させた位置である。つまり、バーホルダ3は、閉位置に阻止バー2がある閉状態のときに通行レーンを車両20が通過すると、阻止バー2を退避位置に移動させるバーリリース機能を有する。
なお、バーホルダ3は、閉位置Cと開位置Oとの間を回動中であっても、車両20の進行方向に折れ曲がることが可能である。
【0013】
保持力調整装置4は、閉位置Cから退避位置Vへ向かう退避方向の力に対して阻止バー2を閉位置Cに保持する保持力を調整する装置である。保持力調整装置4は、コンピュータ等によって実現される。実施の形態1では、保持力は磁力によって発生される。
【0014】
***動作の説明***
図2から
図7を参照して、実施の形態1に係る発進制御装置10の動作を説明する。
【0015】
図2を参照して、実施の形態1に係る発進制御装置10の開閉動作を説明する。
開閉動作では、発進制御装置10は、駆動部の動力によりバーホルダ3を回動させる。これにより、阻止バー2が、略水平に延びて車両20の通行を許可しない閉位置Cと、略鉛直に延びて車両20の通行を許可する開位置Oとの間で、回動する。
原則として、車両20は、阻止バー2が開位置Oにあるときに、通行レーンを通行する。車両20は、阻止バー2が他の位置にあるときには、通行レーンを通行しない。しかし、阻止バー2が開位置O以外の位置にあるときに、車両20が通行レーンを通行する場合がある。この場合、車両20と阻止バー2とが接触してしまう。
【0016】
図3を参照して、実施の形態1に係る発進制御装置10の退避動作を説明する。
阻止バー2が開位置O以外の位置にあるときに、車両20が通行レーンを通行し、車両20と阻止バー2とが接触すると、退避動作が行われる。退避動作では、バーホルダ3が折れ、阻止バー2が退避位置Vに、車両20の進行方向に略水平方向に回動する。阻止バー2が退避位置Vに移動すると、退避位置Vで一時的に固定される。
退避動作が行われることにより、車両20と阻止バー2とが接触した場合に、阻止バー2等の損傷を低減することが可能である。
【0017】
図4を参照して、実施の形態1に係る発進制御装置10の保持力調整動作を説明する。
前提として、保持力調整装置4は、通常状態においては保持力を基準値に設定しておく。通常状態は、後述する特定状態ではない状態である。
図5に示すように、バーホルダ3には、弾性体による弾性力が退避方向に働いている。また、風等の環境的な外力が退避方向に働く可能性がある。基準値は、弾性体による弾性力に想定される外力が加わった力よりも大きい力である。つまり、磁力による保持力は、弾性力と想定される外力との和よりも大きい。これにより、車両20の衝突等が起こらなければ、バーホルダ3は退避方向に折れることはない。
【0018】
(ステップS11:進入判定処理)
保持力調整装置4は、通行レーンに車両20が侵入したか否かを判定する。保持力調整装置4は、通行レーンに車両20が侵入した場合には、処理をステップS12に進める。一方、保持力調整装置4は、通行レーンに車両20が侵入していない場合には、再びステップS11の処理を実行する。
【0019】
(ステップS12:状態判定処理)
保持力調整装置4は、通行レーンに進入した車両20である進入車両の状態が特定状態であるか否かを判定する。保持力調整装置4は、特定状態である場合には、処理をステップS13に進める。一方、保持力調整装置4は、特定状態でない場合には、処理をステップS11に戻す。特定状態は、進入車両が発進制御装置10に接触する恐れが高いと認められる状態である。
【0020】
特定状態は、具体例としては、以下の(1)から(3)のうち少なくともいずれかの状態である。(1)進入車両の速度が閾値よりも速い状態。(2)通行レーンに設けられた通信装置が進入車両と通信できない状態。(3)進入車両から通行レーンの通行を許可するための情報が送信されない状態。
(2)は、発進制御装置10がETC(登録商標)レーンに設置されている場合に、進入車両がETC(登録商標)に対応していない車両20である場合である。具体的には、進入車両にETC(登録商標)の車載器が搭載されていない、あるいは、車載器が故障している場合である。(3)は、発進制御装置10がETC(登録商標)レーンに設置されている場合に、進入車両のETC(登録商標)の車載器から適切な情報が送信されない場合である。具体的には、車載器に適切なカードが挿入されていないような場合である。
【0021】
図6に示すように、通行レーンにおける発進制御装置10の手前に複数の車両検知器21を設置する。保持力調整装置4は、各車両検知器21での進入車両の検知時刻から進入車両の速度を計算する。そして、保持力調整装置4は、計算された速度が閾値よりも速いか否かを判定する。これにより、(1)で定義される特定状態であるか否かが判定される。
この際、保持力調整装置4は、進入車両が減速度合を計算してもよい。保持力調整装置4は、速度に加えて減速度合を考慮して特定状態であるか否かを判定してもよい。具体例としては、保持力調整装置4は、速度が閾値よりも遅くても、減速度合が一定未満である場合には特定状態とするといったことが考えられる。また、保持力調整装置4は、減速度合に応じて閾値を変更してもよい。なお、保持力調整装置4は、車両検知器21A及び車両検知器21Bでの進入車両の検知時刻から計算される速度と、車両検知器21B及び車両検知器21Cでの進入車両の検知時刻から計算される速度との差を計算する。これにより、進入車両の減速度合を計算することができる。
【0022】
(ステップS13:保持力調整処理)
保持力調整装置4は、通常状態の場合よりも、磁力による保持力を小さくする。
図7に示すように、保持力調整装置4は、弾性体による弾性力よりもある程度大きい保持力になるように、
図5に示す場合に比べて保持力を小さくする。
これにより、進入車両が阻止バー2に衝突することに備えた状態になる。
【0023】
その後、保持力調整装置4は、以下の(A)(B)の場合に、保持力を基準値に戻す。(A)進入車両が阻止バー2に衝突せず、バーホルダ3が開位置Oに移動した場合。(B)バーホルダ3が退避位置Vに移動し、その後閉位置Cに復帰した場合。
【0024】
***実施の形態1の効果***
以上のように、実施の形態1に係る発進制御装置10は、進入車両が特定状態である場合に、保持力を小さくする。これにより、進入車両が阻止バー2に衝突した場合に、阻止バー2及びバーホルダ3と、進入車両とが受ける衝撃を緩和可能である。その結果、阻止バー2及びバーホルダ3の破損、及び、車両20の車体に傷がつくことを防止できる。
【0025】
***他の構成***
<変形例1>
実施の形態1では、
図4のステップS11の処理及びステップS12の処理を発進制御装置10が備える保持力調整装置4が行った。しかし、これらの処理は発進制御装置10の外部のサーバで行われてもよい。この場合には、保持力調整装置4は、特定状態となった場合に、外部のサーバから信号を受信する。そして、保持力調整装置4は、信号を受信した場合に、ステップS13の処理を行い、保持力を小さくする。
【0026】
実施の形態2.
実施の形態2は、進入車両が阻止バー2に衝突する前にさらに保持力を小さくする点が実施の形態1と異なる。実施の形態2では、この異なる点を説明し、同一の点については説明を省略する。
【0027】
***構成の説明***
図8を参照して、実施の形態2に係る発進制御装置10の構成を説明する。
発進制御装置10は、接近センサ5を備える点が
図1に示す発進制御装置10と異なる。接近センサ5は、筐体1に取り付けられている。接近センサ5は、進入車両が阻止バー2から基準距離以内に入ったことを検知するセンサである。
【0028】
***動作の説明***
図9を参照して、実施の形態2に係る発進制御装置10の保持力調整動作を説明する。
ステップS21からステップS23の処理は、
図4のステップS11からステップS13の処理と同じである。
【0029】
(ステップS24:接近判定処理)
保持力調整装置4は、接近センサ5によって進入車両が基準距離以内に入ったことが検知されたか否かを判定する。保持力調整装置4は、検知された場合には、処理をステップS25に進める。一方、保持力調整装置4は、検知されていない場合には、再びステップS24の処理を実行する。
【0030】
(ステップS25:第2保持力調整処理)
保持力調整装置4は、特定状態の場合よりも、磁力による保持力をさらに小さくする。つまり、保持力調整装置4は、進入車両の状態が特定状態であり、かつ、進入車両が基準距離以内に入ったことが検知された場合には、特定状態の場合よりも保持力を小さくする。
実施の形態2では、
図10に示すように、保持力調整装置4は、磁力による保持力を0にする。これにより、弾性体の弾性力により、バーホルダ3が退避位置Vに移動する。つまり、阻止バー2に進入車両が衝突する前に、バーホルダ3が退避位置Vに移動する。
【0031】
***実施の形態2の効果***
以上のように、実施の形態2に係る発進制御装置10は、進入車両が基準距離以内に入ったことが検知された場合には、保持力をさらに小さくする。これにより、進入車両が阻止バー2に衝突した場合に、阻止バー2及びバーホルダ3と、進入車両とが受ける衝撃をさらに緩和可能である。
【0032】
特に、実施の形態2では、進入車両が基準距離以内に入ったことが検知された場合には、保持力を0にする。これにより、阻止バー2に進入車両が衝突する前に、バーホルダ3が退避位置Vに移動する。その結果、阻止バー2に進入車両が衝突することが防止される。
【0033】
以上、本開示の実施の形態及び変形例について説明した。これらの実施の形態及び変形例のうち、いくつかを組み合わせて実施してもよい。また、いずれか1つ又はいくつかを部分的に実施してもよい。なお、本開示は、以上の実施の形態及び変形例に限定されるものではなく、必要に応じて種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0034】
1 筐体、2 阻止バー、3 バーホルダ、4 保持力調整装置、5 接近センサ、10 発進制御装置、20 車両、21 車両検知器。