(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-24
(45)【発行日】2025-05-07
(54)【発明の名称】歯肉移植
(51)【国際特許分類】
A61L 27/14 20060101AFI20250425BHJP
A61C 13/10 20060101ALI20250425BHJP
A61L 27/16 20060101ALI20250425BHJP
A61L 27/18 20060101ALI20250425BHJP
A61L 27/20 20060101ALI20250425BHJP
A61L 27/22 20060101ALI20250425BHJP
A61L 27/24 20060101ALI20250425BHJP
A61L 27/40 20060101ALI20250425BHJP
A61L 27/50 20060101ALI20250425BHJP
A61L 27/54 20060101ALI20250425BHJP
A61L 27/56 20060101ALI20250425BHJP
A61P 1/02 20060101ALI20250425BHJP
【FI】
A61L27/14
A61C13/10
A61L27/16
A61L27/18
A61L27/20
A61L27/22
A61L27/24
A61L27/40
A61L27/50
A61L27/54
A61L27/56
A61P1/02
(21)【出願番号】P 2022508911
(86)(22)【出願日】2020-08-12
(86)【国際出願番号】 IL2020050879
(87)【国際公開番号】W WO2021028912
(87)【国際公開日】2021-02-18
【審査請求日】2022-07-13
【審判番号】
【審判請求日】2023-05-17
(32)【優先日】2019-08-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-04-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】517426797
【氏名又は名称】コーニート ビジョン リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】弁理士法人大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リトヴィン、ジラド
(72)【発明者】
【氏名】アレイ-ラズ、アルモグ
(72)【発明者】
【氏名】アスーリン、パトリシア
【合議体】
【審判長】前田 佳与子
【審判官】井上 千弥子
【審判官】石井 徹
(56)【参考文献】
【文献】特表2002-531193(JP,A)
【文献】医学大辞典, 日本, 2005, 発行日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
5μm未満の細孔を有する多孔性ポリマー構造を有し、かつ、非分解性である組織置換合成歯肉パッチグラフト。
【請求項2】
約0.01μm~約5μmの細孔を有する多孔性ポリマー構造を有し、かつ、非分解性である、請求項1に記載の合成歯肉パッチグラフト。
【請求項3】
生体適合性パッチである、請求項1または2に記載の合成歯肉パッチグラフト。
【請求項4】
10~100μmの厚さを有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の合成歯肉パッチグラフト。
【請求項5】
100~1000μmの厚さを有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の合成歯肉パッチグラフト。
【請求項6】
1000~2500μmの厚さを有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の合成歯肉パッチグラフト。
【請求項7】
前記多孔性ポリマー構造が少なくとも1種類のポリマーを含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の合成歯肉パッチグラフト。
【請求項8】
前記多孔性ポリマー構造がナノ繊維を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の合成歯肉パッチグラフト。
【請求項9】
前記多孔性ポリマー構造が、少なくとも1種類の多孔性電界紡糸ポリマーを含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の合成歯肉パッチグラフト。
【請求項10】
少なくとも1種類の活性剤をさらに含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の合成歯肉パッチグラフト。
【請求項11】
少なくとも1種類の前記活性剤が、タンパク質、I型コラーゲン、フィブロネクチン、またはTGF-β2、ヘパリン、成長因子、抗体、代謝拮抗剤、化学療法剤、抗炎症剤、抗生物質製剤、及びそれらの任意の組み合わせから選択される、請求項10に記載の合成歯肉パッチグラフト。
【請求項12】
少なくとも1つの非多孔質層をさらに含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の合成歯肉パッチグラフト。
【請求項13】
歯周病、その症状またはその徴候の治療に使用するための、請求項1~12のいずれか1項に記載の合成歯肉パッチグラフト。
【請求項14】
歯肉退縮の治療に使用するための、請求項1~13のいずれか一項に記載の合成歯肉パッチグラフト。
【請求項15】
歯根の疾患、その症状またはその徴候の治療に使用するための、請求項1~14のいずれか一項に記載の合成歯肉パッチグラフト。
【請求項16】
請求項1~15のいずれか一項に定義されているような合成歯肉パッチグラフトを少なくとも1つ含むデバイス。
【請求項17】
請求項1~
15のいずれか一項に定義されるような合成歯肉パッチグラフトを少なくとも1つ含み、対象の歯肉組織へのその移植/配置のための手段、及び使用説明書を含むキット。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
歯肉退縮は、歯肉の後退とも呼ばれ、歯肉組織の損失及び/または歯冠からの歯肉縁部の後退によって発生する歯根の露出が顕在化した症状であり、まず歯頸が露出し、最終的には歯根の一部が露出する。歯肉退縮は、40歳以上の成人によく見られる症状であるが、10代、または10歳前後で発症することもある。歯肉退縮には、歯冠と歯根の比率の低下(歯槽骨の後退)を伴う場合と伴わない場合とがある。大抵の場合、歯肉の後退は何年もかけて徐々に起こる進行性の症状である。症状の分類は、歯間乳頭、並びに頬、舌及び口蓋後退の位置に基づいて行われる。
【0002】
歯肉退縮には、多くの原因が考えられる。例えば、(i)最も一般的な原因として、歯肉の疾患(歯周病)、(ii)歯肉に切り傷を付けるような過度のブラッシングやデンタルフロスの不適切な使用(例えば、乱暴な使用や強引な使用)、(iii)歯肉組織が遺伝的に薄い、脆い、または不十分であることにより、歯肉退縮を起こしやすいこと、(iv)口腔内の粘膜に影響を及ぼすタバコ製品の摂取、(v)爪や鉛筆を歯肉に食い込ませるような癖や、唇や舌に開けたピアスなど、自らの行為による外傷、(vi)壊血病(食事でのビタミンC不足)や、急性壊死性潰瘍性歯肉炎などの疾患、(vii)歯の叢生などにより歯の位置が正常でないことや、1以上の歯を顎の骨により十分に被覆できないこと、(viii)歯科口腔外科手術の際に行われる意図的な歯肉の後退などである。
【0003】
次に挙げる兆候や症状は、歯肉退縮を示している可能性がある。例えば、歯の動揺、象牙質知覚過敏、歯の外観の変化(歯が長く見える、歯根が露出して見える、歯が歯肉の線で刻み目を入れられているように感じる、歯の色が変化する、歯の間に空間がある)、歯肉の線の下にできる虫歯などである。歯肉退縮が歯肉炎によって引き起こされる場合、次の症状が現れる可能性もある。例えば、歯肉の腫れ、赤み、または肥大化(炎症)、歯磨き中もしくはデンタルフロス使用中の歯肉からの出血、ならびに口臭(口臭症)などである。場合によっては、歯肉炎の治療により、それまで歯肉の腫れによって隠されていた歯肉退縮の問題が明らかになることもある。
【0004】
歯肉退縮の症状に対する解決策は、歯肉退縮の様子や歯の周囲の骨のレベルによって異なる。このような解決策には、様々な歯肉移植手順を使用した、新たな歯肉組織による歯肉退縮領域の再生が含まれる。これらの手順には、隣接する歯肉組織を再配置することによる後退のカバー(有茎移植と呼ばれる)、または、口蓋から採取した結合組織移植の有無にかかわらず、歯肉の遊離移植片の使用(総称して遊離歯肉移植または上皮下結合組織移植と呼ばれる)が含まれる。あるいは、患者自身の口蓋から採取した結合組織の代わりに、無細胞性真皮基質(提供されたヒト皮膚同種移植片を加工したもの)と呼ばれる材料を使用してもよい。
【0005】
最近の進歩により、血小板由来増殖因子(PDGF)を注入した骨移植材が導入されている。この材料は通常、細胞マトリックスと組み合わせることにより柔らかい骨ペーストを形成し、その後、その上を同種移植片によってカバーされる。この種類の骨及び組織の細胞マトリックス(オルトフィラーとしても知られている)の発達は、患者の健康な骨及び軟組織とのよりよい骨結合をもたらす。数ヶ月後に結果を評価し、場合によっては、最適な結果を得るために、新しい組織をさらに整形する必要がある。
【0006】
歯肉退縮に利用できる解決策には多くの欠点がある。これらの解決策は、少なくとも2回の痛みを伴う、技術的に困難で時間のかかる歯科手術を必要とし、潜在的な移植片の厚さ及び長さによっても制限される。現在の解決策は、組織をベースにしているため、生分解性であり、現在の専門文献によると、長期的な効率と安定性に限界がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】国際公開第2002/049535号
【文献】国際公開第2002/049536号
【文献】国際公開第2002/049678号
【文献】国際公開第2002/074189号
【文献】国際公開第2002/074190号
【文献】国際公開第2002/074191号
【文献】国際公開第2005/032400号
【文献】国際公開第2005/065578号
【文献】米国特許第3737508号明細書
【文献】米国特許第3950478号明細書
【文献】米国特許第3996321号明細書
【文献】米国特許第4189336号明細書
【文献】米国特許第4402900号明細書
【文献】米国特許第4421707号明細書
【文献】米国特許第4431602号明細書
【文献】米国特許第4557732号明細書
【文献】米国特許第4643657号明細書
【文献】米国特許第4804511号明細書
【文献】米国特許第5002474号明細書
【文献】米国特許第5122329号明細書
【文献】米国特許第5387387号明細書
【文献】米国特許第5667743号明細書
【文献】米国特許第6248273号明細書
【文献】米国特許第6252031号明細書
【非特許文献】
【0008】
【文献】A review of recent advances in the field of keratoprosthesis, Salvador-Culla et al. Journal of Functional Biomaterial. 2016, 7, 13.
【文献】Electrospinning, J. Stanger, N. Tucker, and M. Staiger, I-Smithers Rapra publishing (UK).
【文献】An introduction to Electrospinning and Nanofibers, S. Ramakrishna, K. Fujihara, W-E Teo, World Scientific Publishing Co. Re Ltd (Jun 2005).
【文献】Electrospinning of micro- and nanofibers: fundamentals and applications in separation and filtration processes, Y. Fillatov, A. Budyka, and V. Kirichenko (Trans. D. Letterman), Begell House Inc., New York, USA, 2007.
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
したがって、一方では汎用性があり、処置を簡単に行うことができ、他方では生体安定性を有し、改善された持続的な効果を有する、歯肉退縮のための有効かつ安定した解決策の提供が求められている。
【0010】
「合成歯肉パッチグラフト」を指す場合、対象の歯肉組織の欠損を修復するために使用される合成ポリマー材料のインプラントに関連するものであることを理解されたい。実施形態によっては、本発明のパッチグラフトは、シートの形態を有する。
【0011】
実施形態によっては、多孔性ポリマー構造を有する合成歯肉パッチグラフトは、約0.01μm~5μmの間の細孔を有する。実施形態によっては、多孔性ポリマー構造を有する合成歯肉パッチグラフトは、0.01、0.05、0.1、0.5、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5または5μmの細孔を有する。
【0012】
本発明はさらに、5~20μmの細孔を有する多孔性ポリマー構造を有する合成歯肉パッチグラフトを提供する。実施形態によっては、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20μmの細孔を有する多孔性ポリマー構造を有する合成歯肉パッチグラフトであるように構成される。
【0013】
実施形態によっては、合成歯肉パッチグラフトは、生体適合性パッチであるように構成される。他の実施形態では、本発明の合成歯肉パッチグラフトは、非分解性パッチであるように構成される。
【0014】
実施形態によっては、本発明の合成歯肉パッチグラフトは、100~1000μmの厚さを有する。他の実施形態では、本発明の合成歯肉パッチグラフトは、10~100μmの厚さを有する。他の実施形態において、本発明の合成歯肉パッチグラフトは、1000~2500μmの厚さを有する。
【0015】
実施形態によっては、多孔性ポリマー構造は、少なくとも1つのポリマーを含む。他の実施形態では、多孔性ポリマー構造は、ナノ繊維を含む(実施形態によっては、ナノ繊維は、500nm~数μmの厚さを有する)。
【0016】
実施形態によっては、多孔性ポリマー構造は、少なくとも1種類の多孔性エレクトロスピニングポリマーを含む。他の実施形態によっては、多孔性ポリマー構造は、少なくとも1種類の多孔性プリントポリマーを含む(例えば、3Dプリンタを使用する)。
【0017】
さらなる実施形態によっては、多孔性ポリマー構造は、ポリカーボネート、ポリDTEカーボネート、ポリカプロラクトン、(DL-ラクチド-コ-カプロラクトン)コポリマー、エチレン酢酸ビニルコポリマー、ポリメチルメタクリレート、ポリプロピレンカーボネート、ポリフッ化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリカルボメチルシラン、ポリスチレン、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド、ポリウレタン(芳香族ポリウレタンを含む)、ポリ塩化ビニル、キトサン、アルギン酸塩、ポリヒドロキシブチレート及びそのコポリマー、ナイロン11、酢酸セルロース、ポリ(3-ヒドロキシ酪酸-コ-3-ヒドロキシ吉草酸)、ポリ-DL-ラクチド、及びポリ-L-ラクチドまたはこれらの任意の組み合わせから選択される少なくとも1種類のポリマーを含む。
【0018】
電界紡糸繊維は、通常、従来の紡糸技術を使用して製造されたものよりも数桁小さい。次のようなパラメータ、例えば、i)溶媒の極性や表面張力、ポリマー鎖の分子量や立体配座、溶液の粘性、弾性や導電性、及び溶液の固有の特性、並びに、ii)電界強度、紡糸口金とコレクタとの距離、及び溶液の供給速度などの操作条件を最適化することにより、電界紡糸法で直径数十ナノメートルの細い繊維を生成することが可能である。電界紡糸繊維の特性に影響を与える追加のパラメータは、ポリマーの分子量、分子量分布や構造(分岐や線形など)、溶液の特性(粘度、導電率や表面張力)、電位、流量や濃度、キャピラリーと収集スクリーンとの間の距離、周囲パラメータ(チャンバ内の温度、粘度や空気速度)、及びターゲットスクリーン(コレクタ)の動きなどを含む。高多孔性繊維の製造は、ジェットを極低温液体に直接電界紡糸することにより達成することができる。ポリマーと溶媒との間の温度による相分離、及び凍結乾燥条件下での溶媒の蒸発の結果として、各繊維の表面に明確な細孔が発達した。
【0019】
電界紡糸繊維を配列したアレイへと組織化するために、いくつかのアプローチが開発されてきた。例えば、電界紡糸繊維は、単一コレクタをボイドギャップにより分離された一対の導電性基板に置き換えることにより、一軸アレイに配列させることができる。この場合、ナノ繊維は、電極の端部に垂直に方向付けられたギャップを横切って伸びるようになる。また、一対の電極を石英またはポリスチレンなどの絶縁基板上にパターニングすることにより、一軸に配列した繊維を積層して3次元格子にすることができることも示された。電極パターン及び/または高圧印加シーケンスを制御することにより、配向の揃ったナノ繊維を含む複雑な構造を生成することも可能である。
【0020】
電界紡糸ナノ繊維をさまざまなオブジェクトに直接堆積させることにより、形状が明確で制御可能なナノ繊維ベースの構造を得ることができる。さらに、電界紡糸後、配列またはランダムに配列したナノ繊維の膜を手動で加工することにより様々な種類の構造を得ることができる。例えば、例えば、繊維膜を巻き上げてチューブを作ったり、繊維膜を打ち抜いて直径を制御可能なディスクを調製したりすることができる。
【0021】
実施形態によっては、本発明の合成歯肉パッチグラフトは、少なくとも1種類の活性剤をさらに含む。タンパク質、I型コラーゲン、フィブロネクチン、またはTGF-β2、ヘパリン、成長因子、抗体、代謝拮抗剤、化学療法剤、抗炎症剤、抗生物質製剤、及びそれらの任意の組み合わせから選択される。
【0022】
実施形態によっては、本発明の合成歯肉パッチグラフトは、指定された形状に切断される(実施形態によっては、当該切断は、レーザ切断、手動切断、及び圧力切断などによる)。
【0023】
実施形態によっては、本発明の合成歯肉パッチグラフトは、少なくとも1つの非多孔質層をさらに含む。実施形態によっては、少なくとも1つの非多孔質層は、膜の形態であるように構成される。歯周手術で組織代替物として使用される場合、少なくとも1つの非多孔質層または膜が、充填される空洞の骨側に配置される。
【0024】
「非多孔質層」に言及する場合、本発明の歯肉パッチグラフトの多孔質層と比較して、実質的に細孔を有さず、したがって浸透性がなく、不浸透性である膜層を包含することを理解されたい。
【0025】
実施形態によっては、非多孔質層は生体適合性パッチであるように構成される。他の実施形態では、非多孔質層は非分解性パッチであるように構成される。
【0026】
実施形態によっては、非多孔質層は、100~1000μmの厚さを有する。他の実施形態では、非多孔質層は、10~100μmの厚さを有する。他の実施形態では、非多孔質層は、1000~2500μmの厚さを有する。
【0027】
実施形態によっては、非多孔性ポリマー構造は、少なくとも1種類のポリマーを含む。他の実施形態では、非多孔性ポリマー構造は、ナノ繊維を含む(実施形態によっては、ナノ繊維は、500nm~数μmの厚さである)。
【0028】
さらなる実施形態によっては、多孔性ポリマー構造は、ポリカーボネート、ポリDTEカーボネート、(DL-ラクチド-コ-カプロラクトン)コポリマー、エチレン酢酸ビニルコポリマー、ポリメチルメタクリレート、ポリプロピレンカーボネート、ポリフッ化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリカルボメチルシラン、ポリスチレン、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド、ポリウレタン(芳香族ポリウレタンを含む)、ポリ塩化ビニル、キトサン、アルギン酸塩、ポリヒドロキシブチレート及びそのコポリマー、ナイロン11、酢酸セルロース、ポリ(3-ヒドロキシ酪酸-コ-3-ヒドロキシ吉草酸)、ポリ-DL-ラクチド、及びポリ-L-ラクチドまたはこれらの任意の組み合わせから選択される少なくとも1種類のポリマーを含む。
【0029】
「歯周病、その症状またはその徴候」に言及する場合、例えば歯周病、歯肉炎、歯周炎、虫歯、歯の喪失、骨の喪失及びそれらの任意の組み合わせなどの歯の周囲の組織に影響を及ぼす炎症状態を包含することを理解されたい。
【0030】
実施形態によっては、そのような歯周病、その症状またはその徴候は、歯周手術を必要とする場合がある。
【0031】
「歯周手術」という用語は、骨、歯肉、もしくは歯槽粘膜の解剖学的、外傷性、発達性、またはプラーク誘発性などの欠陥を予防もしくは矯正する歯科手術の形態を包含する。この手術の目的は、歯根への器具のアクセス、炎症の除去、プラークコントロールのための口腔内環境の構築、歯周病コントロール、口腔衛生維持、適切な歯間鼓形空隙の維持、歯肉・歯槽粘膜の問題への対応、審美性の改善などである。外科的処置には、とりわけ、歯冠延長術、小帯切除術、歯肉歯槽粘膜弁形成術、歯肉切除、歯肉弁根尖側移動術(APF)、骨縮小(骨形成術/骨切除)を伴う歯肉弁根尖側移動術(APF)及びそれらの任意の組み合わせが含まれる。
【0032】
本発明はさらに、歯周及び/または歯科手術で使用するための、本明細書で上記及び下記に開示するような合成歯肉パッチグラフトを提供する。
【0033】
本発明はさらに、歯周病、その症状またはその徴候の治療に使用するための、本明細書で上記及び下記に開示するような合成歯肉パッチグラフトを提供する。
【0034】
本発明はさらに、歯肉退縮の治療に使用するための、本明細書で上記及び下記に開示するような合成歯肉パッチグラフトを提供する。
【0035】
本発明はさらに、歯根面被覆術で使用するための、本明細書で上記及び下記に開示するような合成歯肉パッチグラフトを提供する。
【0036】
本発明はさらに、歯根の疾患、その症状またはその徴候の治療に使用するための、本明細書で上記及び下記に開示するような合成歯肉パッチグラフトを提供する。
【0037】
実施形態によっては、本発明の合成歯肉パッチグラフトは、歯周組織置換パッチであるように構成される。
【0038】
他の実施形態では、本発明の合成歯肉パッチグラフトは、歯周組織サプリメントパッチであるように構成される。
【0039】
さらなる実施形態において、本発明の合成歯肉パッチグラフトは、歯周組織再構築/再生パッチであるように構成される。
【0040】
本発明はさらに、本発明の少なくとも1つの合成歯肉パッチグラフトを含むデバイスを提供する。実施形態によっては、デバイスは、本発明の少なくとも1つの合成歯肉パッチグラフトを含む歯科インプラントであるように構成される(例えば、本発明の少なくとも1つの合成歯肉パッチグラフトによって覆われる)。
【0041】
本発明はさらに、本発明の少なくとも1つの合成歯肉パッチグラフト、対象の歯肉組織へのその歯周移植/配置のための手段、及び使用説明書を含むキットを提供する。
【0042】
実施形態によっては、使用説明書は、本発明のパッチグラフトをカスタムカットする方法、例えば、歯の上及び歯肉組織上にパッチグラフトの発明を配置する方法を介助者に指示するステップを含んでいてもよい(例えば、
図1の110を参照)。
【図面の簡単な説明】
【0043】
本発明とみなされる主題は、本明細書の結論部分において特に指摘され、明確に主張されている。しかし、本発明は、構成及び操作方法の両方に関して、その目的、特徴及び利点と共に、添付の図面と共に読まれた場合、以下の詳細な説明を参照することによって最もよく理解され得る。
【0044】
【
図1A】本発明の合成歯肉パッチグラフトの実施形態を示す図である。
【
図1B】本発明の合成歯肉パッチグラフトの実施形態を示す図である。
【
図1C】本発明の合成歯肉パッチグラフトの実施形態を示す図である。
【
図1D】本発明の合成歯肉パッチグラフトの実施形態を示す図である。
【
図1E】本発明の合成歯肉パッチグラフトの実施形態を示す図である。
【
図2A】本発明の合成歯肉パッチグラフトの実施形態を示す図である。
【
図2B】本発明の合成歯肉パッチグラフトの実施形態を示す図である。
【0045】
例示を単純かつ明確にするために、図に示されている要素は必ずしも一定の縮尺で描いていないことを理解されたい。例えば、一部の要素の寸法について、図を明確にするために、他の要素に比べて誇張して描いていることがある。さらに、適切であると考えられる場合には、対応するまたは類似の要素を示すために、図間で参照番号を繰り返すことがある。
【発明を実施するための形態】
【0046】
以下の詳細な説明では、本発明の完全な理解を提供するための、多くの具体的な詳細を示している。しかしながら、本発明は、これらの具体的な詳細が無くても実施され得ることが、当業者は理解されるであろう。他の例では、本発明を不明瞭にしないように、周知の方法、手順、及び構成要素は詳細に説明していない。
【0047】
図1Aは、本発明の合成歯肉パッチグラフト(100)を示している。
図1Bは、歯周に配置するために所定の形状にカットされた溝(102)を備えた本発明の合成歯肉パッチグラフト(101)を示している。
図1C及び
図1Dは、歯周に配置するために所定の形状にカットされた孔(104)及び(106)を有する本発明の合成歯肉パッチグラフト(103)及び(105)の実施形態を示す。
図1Eは、典型的な歯周セグメント(109)に配置された本発明の合成歯肉パッチグラフト(107)を示し、パッチに切り込まれた孔(108)は、歯及び歯肉組織(110)上への配置を可能にする。
【0048】
図2Aは、多孔質層(202)に加えて非多孔質(膜)層(203)を含む、本発明の合成歯肉パッチグラフト(200のAA断面である200及び201)を示す。
図2Bは、2つの多孔質層(302及び303)とそれらの間に1つの非多孔質(膜)層(304)を含む本発明の合成歯肉パッチグラフト(300のAA断面である300及び301)を示す。