(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-24
(45)【発行日】2025-05-07
(54)【発明の名称】シリコン系シーリング材用補修液およびシリコン系シーリング材の補修方法
(51)【国際特許分類】
C09K 3/10 20060101AFI20250425BHJP
E04B 1/682 20060101ALN20250425BHJP
【FI】
C09K3/10 E
C09K3/10 G
E04B1/682 A
(21)【出願番号】P 2024211987
(22)【出願日】2024-12-05
【審査請求日】2024-12-05
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】718004002
【氏名又は名称】金本 里咲
(72)【発明者】
【氏名】金本 里咲
【審査官】中野 孝一
(56)【参考文献】
【文献】特開平4-89971(JP,A)
【文献】特開平1-141978(JP,A)
【文献】特開2019-111472(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K3/10-3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主成分がポリアクリル酸ナトリウムと純水とから成り、前記ポリアクリル酸ナトリウム1グラムに対して前記純水を0.7リットル(700グラム)以上1.1リットル(1100グラム)以下混合したことを特徴とするシリコン系シーリング材用補修液。
【請求項2】
請求項1に記載のシリコン系シーリング材用補修液において、前記ポリアクリル酸ナトリウム1グラムに対して前記純水を0.8リットル(800グラム)以上1.0リットル(1000グラム)以下混合したことを特徴とするシリコン系シーリング材用補修液。
【請求項3】
塗布後硬化前のシリコン系シーリング材に対して、請求項1または請求項2に記載のシリコン系シーリング材用補修液を塗布した後、当該シリコン系シーリング材用補修液を介して前記塗布後硬化前のシリコン系シーリング材の変形又は崩れを補修することを特徴とするシリコン系シーリング材の補修方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、シリコン系シーリング材を目地(隙間)に充填後に変形や崩れを補修することに有効なシリコン系シーリング材用補修液およびシリコン系シーリング材の補修方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコン系シーリング材は接着剤の一種であり、2つの表面間の接合部に水密または気密状態や断熱の為に詰め物をして塞ぐためのものであり、通常塗布時に液体のゲル状の粘度を持っており、適切な温度および湿度条件下で一定時間乾燥すると、頑丈なゴム状の質感へと硬化し耐久性と柔軟性を兼ね備えた固形となる。又構造物の目地(隙間)に充填する事で水等の侵入口を防ぐ働きをする。なお、シーリング材は、シーリング剤、コーキング材、充填材等と呼ばれる場合がある。
【0003】
シリコン系シーリング材の用途は、主に建物の外壁の目地に充填することによって、水の侵入口を防いで防水することで外壁が一枚岩のように機能する。その他にも内装や浴室、キッチンなどの水廻り部分に用いられ住宅の補修やメンテナンス、建築物のシーリングや接着、工芸品やペット用、ガラスやプラスチックの接着、電子機器や家電、自動車などの幅広い製品に使用され、シリコン系シーリング材は、液体のゲル状の粘度を持っており適切な温度および湿度の条件下で一定時間乾燥すると、頑丈なゴム状の質感へと硬化し耐久性と柔軟性を兼ね備えた固形の質感になり、屋内外のさまざまな厳しい条件に耐え表面や素材に簡単に接着することができ、熱膨張や建物の反りなどの影響による隙間が生じる場所でも長期的な密着性を保ち、さらに紫外線や風雨といった外部環境の影響に対しても強い耐性を持っている。
【0004】
シリコン系シーリング材は目地(隙間)に充填後は硬化するまでゲル状の粘度があり必要以上に触れることが困難であり、施工中に誤って触れてしまうと変形し形が崩れてしまい内部にも影響する為、硬化が完了するまで補修することは難しかった。シリコン系シーリング材の充填後、触れて補修できる商品作りが重要である。
【0005】
シリコン系シーリング材を施工するには2つの表面間または角の接合部に防水性と気密性を要する結合部の目地の隙間に、その材料であるシリコン系シーリング材を充填する。又、美観性を保つためにシリコン系シーリング材が目地以外に付着してしまわないように、目地の外側に養生用にマスキングテープを貼りシリコン系シーリング材を充填し、盛り上がったシリコン系シーリング材をヘラ等で表面に段差がつかないように丁寧にならし、他に付着したりしないようマスキングテープを剥がし硬化するまで触れない。又、触れてしまうと形が変形し崩れてしまい美観も悪く、さらに内部にも影響を及ぼす恐れがありため硬化が完了するまで触れることができない。
【0006】
シリコン系シーリング材が完全に硬化するまでには、表面硬化、皮膜硬化、完全硬化と大きく分けて3段階あり、表面硬化はシリコン系シーリング材硬化の1段階目となり、内部がまだ軟らかく強く押してしまうとシリコン系シーリング材部分が崩れて変形する。又、皮膜硬化は2段階目で表面が硬化していれば塗装を施すことが可能な状態である。さらに最終段階の完全硬化になると内部まで乾燥し触れることが可能の状態であり、シリコン系シーリング材の耐久性、柔軟性、美観性等を保つことができる。
【0007】
特許文献1はシリコン系シーリング材を目地等に充填後、完全硬化により耐久年数がたち、老朽による剥離や亀裂を生じたシリコン系シーリング材の上から盛り付ける工法である、又、特許文献2はシリコン系シーリング材の柔軟性を改良し目地切れを防止することであり、さらに特許文献3は、シリコン系シーリング材の対応年数が経過し目地等に充填したシリコン系シーリング材の老朽した部分を撤去し、新たにシリコン系シーリング材を目地等に充填改修する工法である。これらはいずれもシリコン系シーリング材の塗布直後にその補修を行うものではない。
【0008】
又、インターネットによる投稿には、コーキング作業に石鹸水を指につけ、すべりがよくなると掲載されており、水に僅かの中性洗剤を数滴入れることで表面を仕上げると記述されている。又、シャボン玉が出来る程に洗剤を入れた石鹸水だと、施工後直ぐだと表面に洗剤成分が残っているのが目に見えてわかると記述されている。このように、石鹸水や中性洗剤を利用して補修を行った場合には、シーリング材の表面に石鹸水や中性洗剤成分が残存することになり、シーリング材処理後の美観が損なわれるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開昭59-98944号公報
【文献】特開平11-172234号公報
【文献】特開2007-146539号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
シリコン系シーリング材を目地(隙間)に充填後はゲル状の粘度があり、表面硬化前に誤って表面に触れることで変形や崩れ、又は増粘した箇所の糸引きや起き上がりによる目地際などの仕上がり(美観)が損なわれた状態となることから完全硬化するまで補修する術はなかった。特許文献1,特許文献2、特許文献3は、上述したように、いずれもシリコン系シーリング材の塗布直後にその補修を行えるものではない。
【0011】
本発明は、以上の課題を解決しシリコン系シーリング材は目地(隙間)に充填後に変形や崩れを必要に補修することができない欠点を重視し、触れて補修する術ができる有効なシリコン系シーリング材用補修液の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
通常シリコン系シーリング材は充填後ゲル状の粘度があるため補修すること困難であったが、主成分がポリアクリル酸ナトリウムと純水とから成るシリコン系シーリング材用補修液を表面に塗布することにより、液体の膜を形成し覆い被さることで、ゲル状の粘度の摩擦を減少し直接触れることで必要に応じて補修出来ることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によりシリコン系シーリング材充填後、シリコン系シーリング材用補修液を表面に塗布する事で膜を形成し、粘度の摩擦を減少することで必要に応じて表面に触れる術ができ、変形や崩れた箇所の補修が可能となり、さらに増粘した糸引きや起き上がりによる目地際などの補修ができ、より良い仕上がりができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施前準備であり、個体表面の2点間の目地(隙間)とマ スキングテープによる目地際を養生した図である。
【
図2】目地(隙間)にシリコン系シーリング材を充填している図である。
【
図3】目地(隙間)にシリコン系シーリング材を充填後、ヘラ等で均して いる図である。
【
図4】シリコン系シーリング材を均し終え、マスキングテープの剥離前の 図である。
【
図6】シリコン系シーリング材表面にシリコン系シーリング材補修液を塗 布している図である。
【
図7】シリコン系シーリング材補修液の表面をヘラ等で均している図であ る。
【
図8】シリコン系シーリング材を均し終えた図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を、添付図面を参照しながら説明する。
作り方については、容器にポリアクリル酸ナトリウム1グラムと純水を少量ずつ数回に分けて入れて混合させていく。純水が0.7リットル(700グラム)以下では、容器を逆さまにしてもなかなか落ちてこないので補修液としては使用できない。また純水が1.1リットル(1100グラム)以上になると粘度がなくなり、シリコン系シーリング材の上に塗布した際に補修液が流れてしまうため補修液としては使用できない。
この発明に係る補修液における成分のポリアクリル酸ナトリウムは高い吸水性を持ち自重の数百倍から約千倍までの吸水量のみならず、無味無臭、保水性、増粘性、凝集力があり、さらに安全性は人体に無害で毒性もなく自然環境で分解され環境汚染の無い事から多くの商品に使用されている。
又、この明細書に述べる純水とは、不純物や有機物を何らかの方法で除去した水であり、精製水、蒸留水、RO水、イオン交換水等を含む概念である。純水は水道水をろ過等により不純物を除去した純度の高い水であり、水道水には不純物が多くミネラルや塩素消毒、薬品等が含まれる。また水道水に含まれる炭酸カルシウム(石灰)は水の蒸発とともに結晶化し水垢(スケール)となる。水垢が石灰化することで白い汚れとなり、だんだんと小さな半円を幾重にも重ねた形が魚の鱗のように見えることからスケール(鱗)と呼ばれる。さらに一例として50mプールに水を満たした場合水道水の不純物はドラム缶2本から数本、純水の不純物はコップ1杯で無味無臭、電流も通さず物を溶かす性質が強い事から多くの商品に使用されている。
次に、この発明に係るシリコン系シーリング材を使用したシリコン系シーリング材の補修方法について説明する。
図1~
図12に示すシリコン系シーリング材用補修液9は本発明に係る一例を示したものである。
【0016】
図1に示す個体表面1の目地(隙間)4にシリコン系シーリング材5を充填する際に目地以外に付着を避けるのに目地の外側にマスキングテープ3を貼り、
図2の固体表面1の目地(隙間)4にシリコン系シーリング材5を充填し、さらに充填後の表面は段差があり
図3の盛り上がったシリコン系シーリング材5をヘラ等6で表面に段差がつかないように均しているものである。
【0017】
図4に示す個体表面1の目地(隙間)4にシリコン系シーリング材5を均し終えて、目地以外に付着しているシリコン系シーリング材5はマスキングテープ2を剥離することにより目地部分のみ残すことができるが、
図5のマスキングテープ2を剥離する際に増粘したシリコン系シーリング材5の糸引き7や起き上がり8ができるが、通常この時点で施工は完了となりシリコン系シーリング材5が硬化するまで触れることができず、触れてしまうと変形や形が崩れてしまい、内部にも影響し硬化が完了するまで触れることができない。
【0018】
通常シリコン系シーリング材5の施工は
図1~
図5で完了し、触れない事で完全硬化まで補修する術はないが、
図6に示すシリコン系シーリング材5の表面にシリコン系シーリング材用補修液9を表面に塗布することで、
図7の膜を形成し粘度の摩擦を減少することで必要に応じて表面に触れることができる。又、変形や崩れた箇所の補修が可能となり、さらに増粘した糸引き7や起き上がり8による目地際3などの補修ができる。
図8の 均し終え補修後シリコン系シーリング材補修液9は、99.9%の純水を使用しているので乾燥後ほとんど跡が残らない。
【符号の説明】
【0019】
1 個体表面
2 マスキングテープ
3 目地際
4 目地(隙間)
5 シリコン系シーリング材
6 ヘラ等
7 糸引き
8 起き上がり
9 シリコン系シーリング材用補修液
【要約】
【課題】通常シリコン系シーリング材充填後はゲル状の粘度があり、表面硬化前に誤って表面に触れて変形や崩れた箇所、又は増粘した箇所の糸引きや起き上がりによる目地際などの仕上がりや美観が損なわれた状態は完全硬化するまで補修する術はなかった。
【0020】
【解決手段】シリコン系シーリング材はゲル状の粘度があり、主成分がポリアクリル酸ナトリウムと純水とから成るシリコン系シーリング材用補修液を表面に塗布することで液体の膜が覆い被さり、粘度の摩擦を減少し直接触れることで補修が可能となった。
【選択図】
図6