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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-24
(45)【発行日】2025-05-07
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 25/07 20060101AFI20250425BHJP
   H01L 25/18 20230101ALI20250425BHJP
   H01L 23/48 20060101ALI20250425BHJP
   H01L 23/00 20060101ALI20250425BHJP
   H05K 1/02 20060101ALI20250425BHJP
   H01L 23/12 20060101ALI20250425BHJP
【FI】
H01L25/04 C
H01L23/48 H
H01L23/00 B
H05K1/02 J
H01L23/12 Q
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2024507337
(86)(22)【出願日】2022-03-17
(86)【国際出願番号】 JP2022012189
(87)【国際公開番号】W WO2023175823
(87)【国際公開日】2023-09-21
【審査請求日】2024-02-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002941
【氏名又は名称】弁理士法人ぱるも特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】門脇 和丈
(72)【発明者】
【氏名】塩田 裕基
【審査官】齊藤 健一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2021/002132(WO,A1)
【文献】特開2016-63015(JP,A)
【文献】米国特許第8199518(US,B1)
【文献】特開平7-212077(JP,A)
【文献】特開2010-10441(JP,A)
【文献】特表2011-529638(JP,A)
【文献】中国実用新案第210575941(CN,U)
【文献】中国特許出願公開第106033755(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 25/07
H01L 23/48
H01L 23/498
H01L 23/00
H01L 23/552
H01L 23/60
H05K 1/02
H01L 23/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁基板と、前記絶縁基板の上面に形成された薄板状の金属からなるパターンと、前記パターンの上面に接合された半導体チップとを備え、
前記パターンの外周に沿って、前記パターンの上方に、前記パターンに複数の接続点において接続された金属製のワイヤを備え
隣り合う前記接続点の間では、前記ワイヤは、前記パターンの上方の領域から、前記絶縁基板の端部側に向かって外側にせり出すように湾曲している半導体装置。
【請求項2】
2本の前記ワイヤを備え、
一方の前記ワイヤの隣り合う2つの前記接続点の間に、他方の前記ワイヤの前記接続点を設ける請求項に記載の半導体装置。
【請求項3】
一方の前記ワイヤの前記接続点を結んだ線と、他方の前記ワイヤの前記接続点を結んだ線とは、前記パターンの外周に沿って平行に並ぶ請求項に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記パターンは、角部がR加工されている請求項に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記ワイヤの、前記パターンの上方の領域から、前記絶縁基板の端部側に向かって外側にせり出した部分と、前記絶縁基板との間に、絶縁性と硬化性を有する樹脂からなる絶縁コーティングを備える請求項から請求項のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記ワイヤは、アーチ状のワイヤループを形成している請求項1から請求項のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項7】
ケースと、前記ケースの一方の開口部を塞ぐように前記ケースの内側に設けられたベース板とを備え、
前記絶縁基板は、前記ベース板の上面に重ねられ、前記ワイヤは、前記ケースの内側面に対向する前記パターンの外周に沿って備えられている請求項1から請求項のいずれか1項に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、半導体装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体装置では、接地されたベース板の上面に絶縁基板が接合され、絶縁基板の上面には電極が形成されている。この構造において、電極の端部は、電界集中により絶縁破壊が生じ易い。そこで、電極から見てベース板の対称位置に、電極と同電位の第2の金属基板を配置することにより、最大電界を緩和させて絶縁能力を向上させる半導体装置の構造が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2003-086763号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の半導体装置では、第2の金属基板を配置しなければならず、絶縁能力の向上と半導体装置のさらなる小型化を両立させることが困難であった。
【0005】
本願は、上記のような課題を解決するための技術を開示するものであり、絶縁能力を向上しつつ、小型化が可能な半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願に開示される半導体装置は、
絶縁基板と、前記絶縁基板の上面に形成された薄板状の金属からなるパターンと、前記パターンの上面に接合された半導体チップとを備え、
前記パターンの外周に沿って、前記パターンの上方に、前記パターンに複数の接続点において接続された金属製のワイヤを備え
隣り合う前記接続点の間では、前記ワイヤは、前記パターンの上方の領域から、前記絶縁基板の端部側に向かって外側にせり出すように湾曲しているものである
【発明の効果】
【0007】
本願に開示される半導体装置によれば、絶縁能力を向上しつつ、小型化が可能な半導体装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態1による半導体装置の断面模式図である。
図2】実施の形態1による半導体装置の要部を示す斜視図である。
図3】実施の形態1による半導体装置の要部であり、図2の破線Aの部分において上下方向に切断した断面模式図である。
図4】実施の形態2による半導体装置の要部を示す断面模式図である。
図5】実施の形態3による半導体装置の要部を示す斜視図である。
図6】実施の形態3による半導体装置の要部であり、図5の破線Bの部分において上下方向に切断した断面模式図である。
図7図7A図7Dは、パターンへのワイヤの設置工程を示す斜視図である。
図8】実施の形態4によるパターンの1つの角部を示す平面模式図である。
図9】実施の形態4による半導体装置の要部であり、ワイヤを取り付けたパターンの角部を示す平面模式図である。
図10】実施の形態5による半導体装置の要部であり、パターンの外周の近傍を示す断面模式図である。
図11】実施の形態6による半導体装置の断面模式図である。
図12】実施の形態6によるパターンの外周の近傍を示す断面模式図である。
図13】実施の形態6によるパターンの角部近傍を示す平面模式図である。
図14】実施の形態6によるパターンの変形例の平面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態1.
以下、実施の形態1による半導体装置を、図を用いて説明する。
図1は、実施の形態1による半導体装置100の断面模式図である。
本明細書において、内側、外側と言及するときは、半導体装置100の中心側を内側、その反対側を外側とする。また、上下関係に言及するときは、半導体装置100のベース板20側を下、その反対側を上とする。
【0010】
半導体装置100は、略直方体の金属からなるベース板20と、ベース板20の上面に接合された薄板状の絶縁基板30とを備え、絶縁基板30のうちベース板20と接合されていないもう一方の面(上面)には薄板状の金属からなるパターン40が形成されており、パターン40の上面には薄板状の半導体チップ50が接合されている。絶縁基板30は、絶縁性のエポキシ樹脂に、同じく絶縁性のフィラーを混錬したものを薄板状に成形したものでも良いし、その他の構成として、例えばセラミックスを用いたものでも構わない。
【0011】
半導体チップ50は、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(Insulated Gate Bipolar Transistor)、パワーMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)、フリー・ホイーリング・ダイオード(Free Wheeling Diode,FWD)などのパワー半導体素子であり、これらのうち1種類でも2種類以上を組み合わせて用いても構わない。半導体チップ50は、シリコン基板に形成したものでも良いし、炭化ケイ素、窒化ガリウム、その他の半導体材料に形成したものでも構わない。
【0012】
半導体装置100は、外部回路との接続端子90を備え、断面が口の字型のケース80を備える。ケース80は、内側壁の上下間の中央部に、内側に突出する係止部81を有する。そして、ベース板20と、ベース板20の上面に重ねられた絶縁基板30は、絶縁基板30の上面の縁が、上述の係止部81に当接するようにケース80の内側に嵌め込まれ、ケース80の一方の開口部を塞いでいる。なお、絶縁基板30とケース80とは接着してもよい。
【0013】
接続端子90は、パターン40および半導体チップ50と、所望の電気回路を構成するように金属製の導体(図示せず)によって電気的に接続されている。
【0014】
ケース80の内部には、封止樹脂60が充填されており、半導体チップ50およびパターン40の部材の保護と電気的な絶縁をとっている。封止樹脂60としては、典型的には絶縁性のフィラーを混錬したエポキシ樹脂を用いるが、絶縁性を有する固体であれば良く、エポキシ樹脂の他の例としては、シリコーンゲルが挙げられる。
【0015】
ケース80の内側面80inに対向するパターン40の外周40Gに沿って、パターン40の上方に、金属製のワイヤ70が備えられており、このワイヤ70は、パターン40に複数箇所で接続されている。したがって、ワイヤ70は、パターン40と電気的に同電位となっている。ワイヤ70の材質としては、例としてアルミ、銅等が挙げられるが、金属であれば良く、特に限定しない。
【0016】
図2は、半導体装置100の要部を示す斜視図である。図2では、ケース80、封止樹脂60、接続端子90を省略している。ワイヤ70は、パターン40の外周40Gのうち、パターン40の外側面40outが、ケース80の内側面80inに対向する外周40Gの部分に沿って、パターン40の上方に備えられており、ワイヤ70とパターン40とは、上述のように複数箇所で電気的に接続されている。
【0017】
同じパターン40に対して、図2に示すように、複数のワイヤ70を配置しても良いし、単一のワイヤ70のみを用いて連続して配置しても良い。ワイヤ70とパターン40との接続点C同士の間では、ワイヤ70は、アーチ状のワイヤループを形成しており、ワイヤ70とパターン40との間の距離は、ワイヤ70の直径の5倍以下とする。
【0018】
ワイヤ70とパターン40との接続点Cのうち、隣り合う接続点C間の間隔が長すぎる場合、半導体装置100の製造プロセスにおいて、封止樹脂60の注入時にワイヤ70が樹脂と一緒に流れて、予め定められた位置から外れてしまうことがあるため、典型的には5mm以下の間隔で接続点Cを配置する。ワイヤ70が流れないように、当該間隔は、封止樹脂60の材質、注入手法と合わせて決定すれば良い。
【0019】
図3は、半導体装置100の要部であり、図2の破線Aの部分において上下方向に切断した断面模式図である。次に、図3を用いて、ワイヤ70による絶縁能力の向上効果について説明する。図3において、ベース板20の電位は、接地電位であり、パターン40とワイヤ70とには高電圧が印加される。したがって、絶縁基板30とパターン40との接合端部Sには、電界集中が発生する。
【0020】
その上、さらに悪いことに、接合端部Sは、封止樹脂60の硬化時にボイドが残留したり、封止樹脂60と絶縁基板30との間で剥離が生じたりし易い部位となっており、絶縁上の弱点部分となっている。
【0021】
したがって、接合端部Sの電界を緩和することによって、半導体装置100の絶縁能力を向上させることができる。ここで、パターン40と同じ電位のワイヤ70が、パターン40の外周40Gに沿って、その上方に設けられていることによって、ワイヤ70が存在しない場合に比べて、パターン40の外側面40outの電界分布を平坦化することができ、接合端部Sの電界を緩和することができる。
【0022】
ワイヤ70を設ける領域は、従来構造(ワイヤ70を使用しない場合)でも封止樹脂60で満たされていた領域であることから、ワイヤ70を設けることによって何らの半導体装置100の大型化を要しない。また、電界緩和効果を得られる分、従来と比較して絶縁基板30の端部で、パターン40が設けられていなかった領域を縮小することが可能となることから、半導体装置100をさらに小型化できる。
【0023】
実施の形態1による半導体装置100によれば、絶縁能力を向上しつつ、小型化が可能な半導体装置を提供できる。
【0024】
実施の形態2.
以下、実施の形態2による半導体装置を、実施の形態1と異なる部分を中心に説明する。
図4は、半導体装置200の要部を示す断面模式図である。パターン40の外周40Gの近傍を示す断面模式図であり、実施の形態1の図3に相当する。ケース80の内側面80inに対向するパターン40の外周40Gに沿って、パターン40の上面にはワイヤ270が、実施の形態1と同様に接続点Cにおいて接続されている。そして隣り合う接続点Cの間では、ワイヤ270は、パターン40の上方の領域から、絶縁基板30の端部側に向かって外側にせり出すように湾曲している。このような構造とすることで、ワイヤ270のせり出した部位の直下では、パターン40の外側面40outの電界分布をさらに平坦化でき、接合端部Sの電界を緩和し、半導体装置200の絶縁性を一層強化できる。ワイヤ270をこのような構造とするために、半導体装置100の製造工程には、パターン40の外周40Gに沿ってワイヤを接続する工程と、ワイヤを所定の位置に湾曲させる工程を含む。
【0025】
実施の形態3.
以下、実施の形態3による半導体装置を、実施の形態2と異なる部分を中心に説明する。
図5は、半導体装置300の要部を示す斜視図である。図5では、ケース80、封止樹脂60、接続端子90を省略している。
ワイヤ370は、ケース80の内側面80inに対向するパターン40の外周40Gに沿って、パターン40の上面に複数箇所で接続されている。ワイヤ370を取り付けるパターン40の外周40Gの一辺に対して、それぞれ2本のワイヤ370が接続されており、2本のワイヤ370は、互いに交差している。
【0026】
図6は、半導体装置300の要部であり、図5の破線Bの部分において上下方向に切断した断面模式図である。
パターン40の一辺に接続されている2本のワイヤ370のうち、図6の断面において、一方のワイヤ370aがパターン40と接続点Cと接続されている部分では、他方のワイヤ370bは、絶縁基板30の水平方向にせり出して配置されるように、ワイヤ370bは外側に湾曲して配置されている。
【0027】
図7A図7Dは、パターン40へのワイヤ370の設置工程を示す斜視図である。まず、図7Aに示すように、パターン40の外周40Gに沿って、1本目のワイヤ370aを、複数の接続点Cにて接続する。接続点Cの間は、予め定められた高さのワイヤループが形成されるように設定する。次に、図7Bに示すように、1本目のワイヤ370aを、パターン40の端部から外側に向かってせり出すように、予め定められた位置に湾曲させる。
【0028】
次に、図7Cに示すように、2本目のワイヤ370bをパターン40に接続する。その際には、先に配置された1本目のワイヤ370aとパターン40との隣り合う2つの接続点Cの、パターン40の外周方向の間に、新たに接続するワイヤ370bの接続点Cを設けるようにパターン40に接続する。次に、図7Dに示すように、2本目のワイヤ370bを、1本目のワイヤ370aと同様に、パターン40の外周40Gから外側にせり出すように湾曲させて配置する。
【0029】
実施の形態3による半導体装置300によれば、ワイヤ370bを湾曲させた部分の直下でも、パターン40の外側面40out全体において電界分布を平坦化できる領域を確保でき、接合端部Sの電界を緩和し、絶縁性を一層強化した半導体装置300を提供できる。
【0030】
実施の形態4.
以下、実施の形態4による半導体装置を、実施の形態1~3と異なる部分を中心に説明する。
図8は、パターン440の1つの角部を示す平面模式図である。
図9は、半導体装置400の要部であり、ワイヤ470in、470outを取り付けたパターン440の角部を示す平面模式図である。
図8に示すように、パターン440は、外周440Gの四隅が同様にR加工されており、R加工部440Rを含む外周440Gに沿って、概ね平行に2本のワイヤ接続部441in、441outが設定されている。図に示すワイヤ接続部441in、441outは、2本のワイヤ470in、470outについて、それぞれの接続点Cを結ぶ線である。
【0031】
パターン440の外周440Gに沿って接続される2本のワイヤ470in、470outのうちの外側のワイヤ470outは、外側のワイヤ接続部441outのみに接続点Cを有するように設置されており、内側のワイヤ470inは、内側のワイヤ接続部441inのみに接続点Cを有するように設置されている。
【0032】
ワイヤ470in、470outを設置する工程には、パターン440の外周440Gに近い方のワイヤ接続部441outに1本目のワイヤ470outを接続する工程と、当該ワイヤ470outをパターン440の外側に向かって、予め定められた位置に湾曲させる工程と、内側のワイヤ接続部441inに2本目のワイヤ470inを接続する工程と、パターン440の外側に向かって2本目のワイヤ470inを湾曲させる工程を備えている。
【0033】
実施の形態4による半導体装置400によれば、ワイヤ470in、470outの湾曲させた部分の直下で、パターン440の外側面440outの電界分布を平坦化することができる領域を、パターン440の外周440Gの全体に拡大できるため、接合端部Sの電界を緩和し、絶縁性を一層強化した半導体装置400を提供できる。その上さらに、ワイヤ接続部441out、441inをパターン440の外周440GのR加工部440Rに沿って平行に2本設けていることから、2本目のワイヤ470inをパターン440と接続する際に、1本目のワイヤ470outと2本目のワイヤ470inとが干渉することがなくなる。これにより、さらに信頼性の高い半導体装置400と製造工程を実現できる。
【0034】
実施の形態5.
以下、実施の形態5による半導体装置を、実施の形態1~4と異なる部分を中心に説明する。
図10は、半導体装置500の要部であり、パターン540の外周540Gの近傍を示す断面模式図である。パターン540の外周540Gに沿ってワイヤ570が接続され、ワイヤ570は、パターン540の外側にせり出している。そして、ワイヤ570と絶縁基板30との間には絶縁コーティングGが設けられている。
【0035】
絶縁コーティングGは、塗布後に何らかの手段で硬化させることが可能な樹脂であって、一例としては、シリコーンゴムが挙げられるが、シリコーンゴムに限らず、絶縁性と硬化性を兼ね備えていれば良い。硬化手段としてもシリコーンゴムのように熱硬化させられるものでも良いし、その他の例としては、紫外線の作用で硬化させるようなものであっても良く、特に限定しない。
【0036】
ワイヤ570の設置工程には、絶縁基板30に絶縁コーティングGを塗布する工程と、絶縁コーティングGを硬化させる工程と、ワイヤ570をパターン540に接続する工程とが含まれる。実施の形態2で説明したワイヤ70を湾曲させる構造、或いは、実施の形態3で説明した2本のワイヤ270を設けて交差させる構造、或いは、実施の形態4で説明した2本のワイヤの接続部を平行にずらして設ける構造とは、設計上の必要性に基づいて適切に組み合わせることが可能である。
【0037】
実施の形態5による半導体装置500によれば、ワイヤ570を湾曲させる工程、および封止樹脂60を注入して硬化させる工程において、ワイヤ570が必要以上に絶縁基板30側に倒れ込んでしまい、電界緩和の効果が得られなくなることを防止できる。これにより、信頼性を一層高めた半導体装置500を提供できる。
【0038】
実施の形態6.
以下、実施の形態6による半導体装置を、実施の形態1~5と異なる部分を中心に説明する。
図11は、実施の形態6による半導体装置600の断面模式図である。
ケース80の内側面80inに対向するパターン640の外周640Gに沿って、パターン640の厚みを絶縁基板30の上方側に厚くするように突出した金属製の突起640Pを設け、突起640Pとパターン640とを電気的に接続して同電位にする。突起640Pの形成にあたっては、絶縁基板30に厚いパターン640を設けてから、突起640P以外の部分を削り込むことで形成しても良いし、薄いパターン640に対して金属製の部材を別途接合して形成しても良い。
【0039】
図12は、パターン640の外周640Gの近傍を示す断面模式図である。
ケース80の内側面80inに対向するパターン640の外周部だけに突起640Pを設けることで、パターン640全体の厚みを増すことなく、絶縁基板30とパターン640の接合端部Sの電界を緩和することができる。
【0040】
図13は、パターン640の角部近傍を示す平面模式図である。
ケース80の内側面80inに対向するパターン640の外周640Gに沿って、突起640Pが形成されている。これにより、絶縁基板30の全周にわたって電界を緩和する領域を設けることができる。したがって、絶縁性を一層強化した半導体装置600を提供できる。
【0041】
パターン640をこのような構造とすることによって、さらに好ましいことに、電界緩和に影響しないパターン640の中央部の領域において、パターン640の厚みを薄くすることが可能であることから、半導体チップ50の発熱をベース板20に逃がすにあたって、パターン640の熱抵抗を下げることが可能になる。
【0042】
図14は、実施の形態6の変型例であり、図13とは異なったパターン640Bを示す平面模式図である。
絶縁基板30の端部には、回路構成の都合で半導体チップ50の搭載されない、幅の狭いパターンが設けられることがある。このように、パターン幅が狭くて突起を設けることができないケースが想定されるが、このような場合には、当該部分のパターン全体を厚くした厚パターン642とし、突起640Pを設けたパターン640Bと混在させても良い。厚パターン642の厚みは、パターン640Bの突起640Pを設けた部分の厚みと同じ厚みとすれば良い。
【0043】
本願は、様々な例示的な実施の形態及び実施例が記載されているが、1つ、または複数の実施の形態に記載された様々な特徴、態様、及び機能は特定の実施の形態の適用に限られるのではなく、単独で、または様々な組み合わせで実施の形態に適用可能である。
従って、例示されていない無数の変形例が、本願に開示される技術の範囲内において想定される。例えば、少なくとも1つの構成要素を変形する場合、追加する場合または省略する場合、さらには、少なくとも1つの構成要素を抽出し、他の実施の形態の構成要素と組み合わせる場合が含まれるものとする。
【符号の説明】
【0044】
100,200,300,400,500,600 半導体装置、20 ベース板、30 絶縁基板、40,440,540,640,640B パターン、40out,440out 外側面、40G,440G,540G,640G 外周、440R R加工部、441in,441out ワイヤ接続部、640P 突起、642 厚パターン、50 半導体チップ、60 封止樹脂、70,270,370,370a,370b,470in,470out,570 ワイヤ、80 ケース、80in 内側面、81 係止部、90 接続端子、A,B 破線、C 接続点、G 絶縁コーティング、S 接合端部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14