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特許7672839インクジェット印刷装置およびインクジェット印刷方法
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  • 特許-インクジェット印刷装置およびインクジェット印刷方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-25
(45)【発行日】2025-05-08
(54)【発明の名称】インクジェット印刷装置およびインクジェット印刷方法
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20250428BHJP
   B41J 2/175 20060101ALI20250428BHJP
【FI】
B41J2/01 201
B41J2/01 305
B41J2/175
B41J2/01 209
B41J2/175 503
B41J2/01 401
B41J2/175 501
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021028579
(22)【出願日】2021-02-25
(65)【公開番号】P2022129768
(43)【公開日】2022-09-06
【審査請求日】2023-12-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100135013
【弁理士】
【氏名又は名称】西田 隆美
(72)【発明者】
【氏名】安田 友則
(72)【発明者】
【氏名】村田 章
(72)【発明者】
【氏名】辻 孝則
【審査官】上田 正樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-082703(JP,A)
【文献】特開2012-016904(JP,A)
【文献】特開2012-006302(JP,A)
【文献】特開2016-020081(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0320331(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01
B41J 2/175
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクジェット印刷装置であって、
基材を所定の搬送方向に搬送する基材搬送部と、
前記基材搬送部によって搬送される前記基材の表面にインク滴を吐出する第1吐出ヘッドおよび第2吐出ヘッドと、
前記第1吐出ヘッドおよび前記第2吐出ヘッドにインクを供給するインク供給部と、
前記基材に形成される画像を表す画像データを、前記第1吐出ヘッドが前記基材に形成する画像を表す第1画像データと、前記第2吐出ヘッドが前記基材に形成する画像を表す第2画像データとに分割する画像データ分割部と、
前記第1画像データに基づいて前記インク供給部が前記第1吐出ヘッドに供給するインクの量を変更するとともに、前記第2画像データに基づいて、前記インク供給部が前記第2吐出ヘッドに供給するインクの量を変更する供給量変更部と、
を備え
前記インク供給部は、
インクが貯留可能な供給タンクと、
前記供給タンクと前記第1吐出ヘッドおよび前記第2吐出ヘッドとを接続する供給配管と
を有し、
前記供給配管は、
共通配管と、
前記共通配管に一端が接続され、他端が前記第1吐出ヘッドに接続された第1分岐配管部と、
前記共通配管に一端が接続され、他端が前記第2吐出ヘッドに接続された第2分岐配管部と、
を有し、
前記供給量変更部は、
前記第1分岐配管部に介挿された第1流量調整弁と、
前記第2分岐配管部に介挿された第2流量調整弁と、
前記第1流量調整弁および前記第2流量調整弁と電気的に接続され、これらを動作させる制御信号を送信する制御部と、
を有し、
前記制御部は、前記第1画像データおよび第2画像データそれぞれの印字率に基づいて前記第1吐出ヘッドおよび前記第2吐出ヘッドそれぞれの吐出量を算出すると共に、前記第1分岐配管部を介して前記第1吐出ヘッドに供給されるインクの量が前記第1吐出ヘッドについて算出した前記吐出量よりも大きい値になり、かつ、前記第2分岐配管部を介して前記第2吐出ヘッドに供給されるインクの量が前記第2吐出ヘッドについて算出した前記吐出量よりも大きい値になるように、前記第1流量調整弁および前記第2流量調整弁を制御する制御信号を生成する、インクジェット印刷装置。
【請求項2】
請求項1に記載のインクジェット印刷装置であって、
前記第1吐出ヘッドおよび前記第2吐出ヘッドは、前記基材に対して、前記搬送方向と交差する幅方向において、互いに異なる位置にインク滴を吐出する、インクジェット印刷装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のインクジェット印刷装置であって、
前記第1吐出ヘッドおよび前記第2吐出ヘッドは、同じ種類のインク滴を吐出する、インクジェット印刷装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のインクジェット印刷装置であって、
前記第1吐出ヘッドから吐出されなかったインクを前記第1吐出ヘッドから回収して前記供給タンクへ戻すインク回収部、
をさらに備える、インクジェット印刷装置。
【請求項5】
請求項に記載のインクジェット印刷装置であって、
前記インク回収部は、
前記第1吐出ヘッドから吐出されなかったインクを回収して貯留する回収タンクと、
前記回収タンクと前記供給タンクとを接続するリターン配管と、
を有し、
前記インク供給部は、
前記供給タンクと前記回収タンクとの間に圧力差を形成することによって、前記供給タンクから、前記第1吐出ヘッドおよび前記第2吐出ヘッドへ向けてインクを送る圧力差形成部、
を有する、インクジェット印刷装置。
【請求項6】
請求項5に記載のインクジェット印刷装置であって、
前記インク供給部の前記圧力差形成部は、予測された前記第1吐出ヘッドおよび前記第2吐出ヘッドのインクの吐出量の変動に応じたタイミングで、前記供給タンクと前記回収タンクとの間の圧力差を調整する、インクジェット印刷装置。
【請求項7】
請求項1から請求項のいずれか1項に記載のインクジェット印刷装置であって、
前記供給量変更部は、所定の期間における前記第1吐出ヘッドのインクの吐出量の平均値に応じて、前記第1吐出ヘッドに供給するインクの量を変更する、インクジェット印刷装置。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか1項に記載のインクジェット印刷装置であって、
前記第1流量調整弁および前記第2流量調整弁は、通過するインクの流量をゼロよりも大きい2段階以上に変更する、インクジェット印刷装置。
【請求項9】
インクジェット印刷方法であって、
a) 基材を所定の搬送方向に搬送する工程と、
b) インクが貯留された供給タンクと、該供給タンクに接続された共通配管と、該共通配管に一端が接続され他端が第1吐出ヘッドに接続された第1分岐配管部と、該共通配管に一端が接続され他端が第2吐出ヘッドに接続された第2分岐配管部とを通じて、前記第1吐出ヘッドおよび前記第2吐出ヘッドにインクを供給する工程と、
) 前記工程a)によって搬送される前記基材の表面に、前記工程b)によって供給されたインクを前記第1吐出ヘッドおよび前記第2吐出ヘッドから吐出する工程と、
を含み、
前記工程b)は、
b-1) 前記基材に形成される画像を表す画像データを、前記第1吐出ヘッドが前記基材に形成する画像を表す第1画像データと、前記第2吐出ヘッドが前記基材に形成する画像を表す第2画像データとに分割する工程と、
b-2) 前記第1画像データおよび前記第2画像データに基づいて、前記第1吐出ヘッドおよび前記第2吐出ヘッドのそれぞれのインクの吐出量を算出する工程と、
b-3) 前記第1分岐配管部に介挿された第1流量調整弁および前記第2分岐配管部に介挿された第2流量調整弁を制御するため、前記算出した吐出量に基づいて、前記第1吐出ヘッドに供給されるインクの量が前記吐出量よりも大きくなるように、かつ、前記第2吐出ヘッドに供給されるインクの量が前記吐出量よりも大きくなるように制御信号を生成し、前記第1流量調整弁および前記第2流量調整弁を制御する工程と、
を含む、インクジェット印刷方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット印刷装置およびインクジェット印刷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット方式で印刷を行うインクジェット印刷装置では、長尺帯状の基材を搬送しつつ、基材の表面に複数の吐出ヘッドからインクの液滴(以下、「インク滴」と称する。)を吐出することによって、基材の表面に画像が形成される。
【0003】
このようなインクジェット印刷装置では、印刷途中でインクが不足すると、所望の印刷物が得られず、インクや基材に多大な無駄が生じる。このため、特許文献1のインクの消費量を見積もることが行われている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-155748号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、複数の吐出ヘッドからのインクの吐出量は、印刷する画像の濃淡に応じて、各吐出ヘッドで逐次変動し得る。このため、各吐出ヘッドに対して、同じようにインクを供給した場合、吐出ヘッドごとに、インクの供給量が過剰な場合と、インクの供給量が不足する場合とが発生し得るため、各吐出ヘッドの各吐出口におけるインクのメニスカスの形状が不安定となる場合があった。インクのメニスカスの形状が不安定となると、インク滴の吐出速度またはインクの着弾精度が低下したり、インク滴の吐出不良(ノズル欠け)が発生したりすることによって、印刷品質が低下するおそれがあった。
【0006】
本発明の目的は、複数の吐出ヘッドを用いる場合において、印刷品質の低下を抑止する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、第1態様は、インクジェット印刷装置であって、基材を所定の搬送方向に搬送する基材搬送部と、前記基材搬送部によって搬送される前記基材の表面にインク滴を吐出する第1吐出ヘッドおよび第2吐出ヘッドと、前記第1吐出ヘッドおよび前記第2吐出ヘッドにインクを供給するインク供給部と、前記基材に形成される画像を表す画像データを、前記第1吐出ヘッドが前記基材に形成する画像を表す第1画像データと、前記第2吐出ヘッドが前記基材に形成する画像を表す第2画像データとに分割する画像データ分割部と、前記第1画像データに基づいて前記インク供給部が前記第1吐出ヘッドに供給するインクの量を変更するとともに、前記第2画像データに基づいて、前記インク供給部が前記第2吐出ヘッドに供給するインクの量を変更する供給量変更部とを備える。前記インク供給部は、インクが貯留可能な供給タンクと、前記供給タンクと前記第1吐出ヘッドおよび前記第2吐出ヘッドとを接続する供給配管とを有し、前記供給配管は、共通配管と、前記共通配管に一端が接続され、他端が前記第1吐出ヘッドに接続された第1分岐配管部と、前記共通配管に一端が接続され、他端が前記第2吐出ヘッドに接続された第2分岐配管部と、を有し、前記供給量変更部は、前記第1分岐配管部に介挿された第1流量調整弁と、前記第2分岐配管部に介挿された第2流量調整弁と、前記第1流量調整弁および前記第2流量調整弁と電気的に接続され、これらを動作させる制御信号を送信する制御部と、を有し、前記制御部は、前記第1画像データおよび第2画像データそれぞれの印字率に基づいて前記第1吐出ヘッドおよび前記第2吐出ヘッドそれぞれの吐出量を算出すると共に、前記第1分岐配管部を介して前記第1吐出ヘッドに供給されるインクの量が前記第1吐出ヘッドについて算出した前記吐出量よりも大きい値になり、かつ、前記第2分岐配管部を介して前記第2吐出ヘッドに供給されるインクの量が前記第2吐出ヘッドについて算出した前記吐出量よりも大きい値になるように、前記第1流量調整弁および前記第2流量調整弁を制御する制御信号を生成する。
【0008】
第2態様は、第1態様のインクジェット印刷装置であって、前記第1吐出ヘッドおよび前記第2吐出ヘッドは、前記基材に対して、前記搬送方向と交差する幅方向において、互いに異なる位置にインク滴を吐出する。
【0009】
第3態様は、第1態様または第2態様のインクジェット印刷装置であって、前記第1吐出ヘッドおよび前記第2吐出ヘッドは、同じ種類のインク滴を吐出する。
【0011】
態様は、第態様から第3態様のいずれかのインクジェット印刷装置であって、前記第1吐出ヘッドから吐出されなかったインクを前記第1吐出ヘッドから回収して前記供給タンクへ戻すインク回収部をさらに備える。
【0013】
態様は、第様のインクジェット印刷装置であって、前記インク回収部は、前記第1吐出ヘッドから吐出されなかったインクを回収して貯留する回収タンクと、前記回収タンクと前記供給タンクとを接続するリターン配管と、を有し、前記インク供給部は、前記供給タンクと前記回収タンクとの間に圧力差を形成することによって、前記供給タンクから、前記第1吐出ヘッドおよび前記第2吐出ヘッドへ向けてインクを送る圧力差形成部を有する。
第6態様は、第5態様のインクジェット印刷装置であって、前記インク供給部の前記圧力差形成部は、予測された前記第1吐出ヘッドおよび前記第2吐出ヘッドのインクの吐出量の変動に応じたタイミングで、前記供給タンクと前記回収タンクとの間の圧力差を調整する。
【0014】
態様は、第1態様から第態様のいずれか1つのインクジェット印刷装置であって、前記供給量変更部は、所定の期間における前記第1吐出ヘッドのインクの吐出量の平均値に応じて、前記第1吐出ヘッドに供給するインクの量を変更する。
第8態様は、第1態様から第7態様のいずれかのインクジェット印刷装置であって、前記第1流量調整弁および前記第2流量調整弁は、通過するインクの流量をゼロよりも大きい2段階以上に変更する。
【0015】
第9態様は、インクジェット印刷方法であって、a)基材を所定の搬送方向に搬送する工程と、b)インクが貯留された供給タンクと、該供給タンクに接続された共通配管と、該共通配管に一端が接続され他端が第1吐出ヘッドに接続された第1分岐配管部と、該共通配管に一端が接続され他端が第2吐出ヘッドに接続された第2分岐配管部とを通じて、前記第1吐出ヘッドおよび前記第2吐出ヘッドにインクを供給する工程と、c)前記工程a)によって搬送される前記基材の表面に、前記工程b)によって供給されたインクを前記第1吐出ヘッドおよび前記第2吐出ヘッドから吐出する工程と、を含み、前記工程b)は、b-1)前記基材に形成される画像を表す画像データを、前記第1吐出ヘッドが前記基材に形成する画像を表す第1画像データと、前記第2吐出ヘッドが前記基材に形成する画像を表す第2画像データとに分割する工程と、b-2)前記第1画像データおよび前記第2画像データに基づいて、前記第1吐出ヘッドおよび前記第2吐出ヘッドのそれぞれのインクの吐出量を算出する工程と、b-3)前記第1分岐配管部に介挿された第1流量調整弁および前記第2分岐配管部に介挿された第2流量調整弁を制御するため、前記算出した吐出量に基づいて、前記第1吐出ヘッドに供給されるインクの量が前記吐出量よりも大きくなるように、かつ、前記第2吐出ヘッドに供給されるインクの量が前記吐出量よりも大きくなるように制御信号を生成し、前記第1流量調整弁および前記第2流量調整弁を制御する工程と、を含む。
【発明の効果】
【0016】
第1から第8態様のインクジェット印刷装置によれば、第1画像データおよび第2画像データに基づいて、第1吐出ヘッドおよび第2吐出ヘッドに適切な量のインクを供給できる。したがって、第1吐出ヘッドと第2吐出ヘッドに対するインクの供給量が不足したりあるいは過剰になったりすることを抑制できるため、第1吐出ヘッドおよび第2吐出ヘッドの各吐出口におけるインクのメニスカスの形状を安定化できる。したがって、印刷品質の低下を抑制できる。
また、共通のタンクから第1吐出ヘッドおよび第2吐出ヘッドへインクが供給される。
また、第1吐出ヘッドよりも上流側でインクの流量が制御される。この場合、第1吐出ヘッドよりも下流側でインクの流量を変更する場合と比べて、第1吐出ヘッドに対するインクの供給量を精度良く制御できる。
【0017】
第2態様のインクジェット印刷装置によれば、第1吐出ヘッドと第2吐出ヘッドとで、基材対して、幅方向に異なる位置に画像を形成できる。
【0018】
第3態様のインクジェット印刷装置によれば、第1吐出ヘッドおよび第2吐出ヘッドから同じ種類のインク滴を吐出する場合に、印刷品質の低下を抑制できる。
【0020】
態様のインクジェット印刷装置によれば、インク回収部が第1吐出ヘッドで吐出されなかったインクを供給タンクへ戻すことによって、供給タンクと第1吐出ヘッドとの間で、インクを循環させることができる。これにより、第1吐出ヘッドが吐出する量以上のインクを第1吐出ヘッドに供給できるため、第1吐出ヘッドにおいてインクが不足することを抑制できる。
【0022】
態様のインクジェット印刷装置によれば、圧力差を形成することによって、供給タンクから第1吐出ヘッドおよび第2吐出ヘッドにインクを送ることができる。
【0023】
態様のインクジェット印刷装置によれば、所定の期間における第1吐出ヘッドのインクの吐出量の平均値に応じて、第1吐出ヘッドに対するインクの供給量が変更される。このため、吐出量が比較的大きく変動する場合であっても、供給量の変動量を相対的に小さくすることができるため、インクが通過する配管内等の圧力変動を小さくできる。これにより、第1吐出ヘッドの吐出口におけるインクのメニスカスの形状を安定化できる。
【0024】
第9態様のインクジェット印刷方法によれば、第1画像データおよび第2画像データに基づいて、第1吐出ヘッドおよび第2吐出ヘッドに適切な量のインクを供給できる。したがって、第1吐出ヘッドと第2吐出ヘッドに対するインクの供給量が不足したりあるいは過剰になったりすることを抑制できるため、第1吐出ヘッドおよび第2吐出ヘッドの各吐出口におけるインクのメニスカスの形状を安定化できる。したがって、印刷品質の低下を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】実施形態のインクジェット印刷装置を示す図である。
図2図1に示す印刷部を示す上面図である。
図3図1に示すインク供給部の構成を示す図である。
図4】制御部と、第1流量調整弁と、第2流量調整弁との電気的接続を示す図である。
図5】吐出ヘッドが吐出するインクの吐出量と供給量の経時変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。なお、この実施形態に記載されている構成要素はあくまでも例示であり、本発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。図面においては、理解容易のため、必要に応じて各部の寸法や数が誇張又は簡略化して図示されている場合がある。
【0027】
<1. 実施形態>
図1は、実施形態のインクジェット印刷装置1を示す図である。インクジェット印刷装置1は、長尺帯状の基材9を搬送しつつ、印刷部3の複数のヘッドユニット31~34から基材9へ向けてインクを吐出することにより、基材9に画像を形成する。基材9は、例えば、印刷用紙である。ただし、基材9は、樹脂製のフィルム、金属箔、または、ガラス製の基材などであってもよい。図1に示すように、インクジェット印刷装置1は、基材搬送部2と、印刷部3と、4つのインク供給部41と、制御部8とを備えている。
【0028】
基材搬送部2は、基材9を所定の搬送方向に搬送する。搬送方向は、基材9の長手方向と平行である。基材搬送部2は、巻き出しローラ21と、複数の搬送ローラ22と、巻き取りローラ23とを有する。基材9は、巻き出しローラ21から繰り出され、複数の搬送ローラ22によって構成される搬送経路に沿って搬送される。各搬送ローラ22は、水平方向に延びる回転軸を中心として回転することによって、基材9を搬送経路の下流側へ案内する。搬送後の基材9は、巻き取りローラ23に回収される。
【0029】
巻き出しローラ21および巻き取りローラ23の回転軸には、それぞれモータ25が接続されている。各モータ25は、制御部8と電気的に接続されている。各モータ25は、制御部8が送信する制御信号に基づいて、巻き出しローラ21および巻き取りローラ23を所定の回転速度で回転させる。これにより、基材9が、所定の搬送速度で、搬送経路に沿って搬送される。なお、モータ25は、複数の搬送ローラ22のいずれかに接続されていてもよい。
【0030】
搬送ローラ22の少なくとも1つには、エンコーダ26が設けられている。エンコーダ26は、搬送ローラ22の回転量を検出する。より具体的には、エンコーダ26は、搬送ローラ22が所定の角度回転するごとに、パルス信号を制御部8へ出力する。後述する制御部8は、パルス信号に基づいて、ヘッドユニット31~34がインクを吐出するタイミングを決定する。なお、エンコーダ26は、搬送ローラ22とは異なるローラの回転量を検出してもよい。
【0031】
基材9は、複数のヘッドユニット31~34の下方において、複数のヘッドユニット31~34の配列方向と略平行に移動する。基材9の表面は、ヘッドユニット31~34側に向けられている。また、基材9は、張力が掛かった状態で、複数の搬送ローラ22に掛け渡される。これにより、搬送中における基材9の弛みや皺が抑制される。
【0032】
印刷部3は、基材搬送部2により搬送される基材9に対して、インクの液滴(以下「インク滴」と称する。)を吐出する。本実施形態の印刷部3は、4つのヘッドユニット31~34を有する。ヘッドユニット31~34は、基材9の搬送経路に沿って配置されている。
【0033】
図2は、図1に示す印刷部3を示す上面図である。印刷部3のヘッドユニット31~34は、それぞれ、基材9の幅方向の全体を覆っている。また、図2中に破線で示したように、各ヘッドユニット31~34の下面には、基材9の幅方向と平行に配列された複数の吐出口35が設けられている。各ヘッドユニット31~34は、複数の吐出口35から基材9の上面へ向けて、多色画像の色成分となるK(ブラック)、C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)の各色のインク滴を、それぞれ吐出する。
【0034】
4つのヘッドユニット31~34は、インク滴を吐出することによって、基材9の上面に、それぞれ単色画像を形成する。また、4つの単色画像の重ね合わせにより、基材9の上面に、多色画像が形成される。
【0035】
図2に示すように、ヘッドユニット31~34は、それぞれ2つの吐出ヘッド311,312を有する。吐出ヘッド311,312は、幅方向に配列されている。幅方向は、搬送方向に垂直な方向であって、かつ、基材9の表面と平行な方向である。なお、ヘッドユニット31~34は、3つ以上の吐出ヘッドを有していてもよい。
【0036】
吐出ヘッド311,312は、基材搬送部2によって搬送される基材9の表面と対向する吐出面を有する。吐出面には、幅方向に沿って並ぶ複数の吐出口35が設けられている。各吐出口35は、ピエゾ方式またはサーマル方式等のインクジェット素子に接続されている。インクジェット素子は、制御部8の制御に基づいて、対応する吐出口35からインクを吐出させる。吐出ヘッド311,312は、基材9に対して、幅方向に互いに異なる位置にインクを吐出する。
【0037】
吐出ヘッド311,312は、インクを一時的に貯留するためのインク室36を有する。インク室36は、複数の吐出口35に連通している。インク室36のインクは、各インクジェット素子の動力によって、各吐出口35から吐出される。4つのインク供給部41は、それぞれヘッドユニット31~34にインクを供給する。より詳細には、各インク供給部41は、吐出ヘッド311,312のインク室36にインクを供給する。
【0038】
図3は、図1に示すインク供給部41の構成を示す図である。インク供給部41は、供給タンク42と、回収タンク43と、供給配管44と、回収配管45と、リターン配管46と、圧力差形成部5と、補充タンク61とを備える。供給タンク42および回収タンク43は、それぞれインクを貯留可能である。
【0039】
供給配管44は、供給タンク42と吐出ヘッド311,312とを接続する流路であって、供給タンク42から各吐出ヘッド311,312へ向かうインクの流路を構成する。供給タンク42に貯留されているインクは、供給配管44を通って、供給タンク42から吐出ヘッド311,312のインク室36,36に、それぞれインクが供給される。したがって、例えば、ヘッドユニット31の吐出ヘッド311,312には、同じ種類のインクが供給されるため、吐出ヘッド311,312は、同じ種類のインク滴を吐出する。
【0040】
供給配管44は、共通配管440と第1分岐配管部441と、第2分岐配管部442とを有する。共通配管440の一端は、供給タンク42に接続されている。共通配管440の他端は、第1分岐配管部441および第2分岐配管部442の各一端に接続されている。第1分岐配管部441の他端は吐出ヘッド311の供給口に接続されており、第2分岐配管部442の他端は吐出ヘッド312の供給口に接続されている。
【0041】
第1分岐配管部441には、第1流量調整弁471が介挿されている。第2分岐配管部442には、第2流量調整弁472が介挿されている。第1流量調整弁471および第2流量調整弁472は、第1分岐配管部441および第2分岐配管部442を通過するインクの流量をゼロよりも大きい2段階以上に変更する。第1流量調整弁471および第2流量調整弁472は、例えば比例制御電磁弁である。第1流量調整弁471および第2流量調整弁472は、制御部8と電気的に接続されており、制御部8が送信する制御信号に基づいて動作する。供給量制御部87と、第1流量調整弁471と、第2流量調整弁472とは、供給量変更部を構成する。
【0042】
第1流量調整弁471は、吐出ヘッド311に供給されるインクの単位時間あたりの量(以下、単に「供給量」と称する。)を変更する。第2流量調整弁472は、吐出ヘッド312に供給されるインクの供給量を変更する。制御部8と第1流量調整弁471は、吐出ヘッド311に対するインクの供給量を変更する供給量変更部を構成する。また、制御部8と第2流量調整弁472は、吐出ヘッド312に対するインクの供給量を変更する供給量変更部を構成する。
【0043】
回収配管45は、吐出ヘッド311,312と回収タンク43とを接続する流路であって、吐出ヘッド311,312から回収タンク43へ向かうインクの流路を構成する。回収配管45は、共通配管450と、第1分岐配管部451と、第2分岐配管部452とを有する。第1分岐配管部451の一端は吐出ヘッド311の排出口に接続されており、第2分岐配管部452の一端は吐出ヘッド312の排出口に接続されている。第1分岐配管部451および第2分岐配管部452の各他端は、共通配管450の一端に接続されている。共通配管450の他端は、回収タンク43に接続されている。
【0044】
リターン配管46は、回収タンク43と供給タンク42とを接続する流路であって、回収タンク43から供給タンク42へ向かうインクの流路を構成する。回収タンク43に貯留されたインクは、リターン配管46を通って、供給タンク42に移動する。リターン配管46には、リターンポンプ461が取り付けられている。リターンポンプ461は、回収タンク43から供給タンク42へインクを送る。回収配管45、リターン配管46、およびリターンポンプ461は、インク回収部を構成する。なお、回収タンク43から供給タンク42へのインクの移動が、重力を利用して行われるようにしてもよい。
【0045】
補充タンク61は、補充用のインクを貯留する。補充タンク61は、補充配管62を介して、供給タンク42と接続されている。補充配管62には、補充ポンプ621が介挿されている。補充ポンプ621は、補充タンク61のインクを供給タンク42へ圧送する。例えば、印刷等によって、供給タンク42、ヘッドユニット31、および回収タンク43を循環するインクの総量が減少した場合には、補充ポンプ621によって、補充タンク61から供給タンク42にインクが補充される。
【0046】
圧力差形成部5は、供給タンク42内の圧力および回収タンク43内の圧力を調整することによって、供給タンク42と回収タンク43と間に圧力差を形成する。以下、圧力差形成部5が形成する圧力差を、単に「圧力差」と称する。圧力差形成部5が圧力差を形成することによって、供給タンク42から回収タンク43へ向けてインクが送られる。
【0047】
圧力差形成部5は、第1圧力調整部51aと、第2圧力調整部51bとを備える。第1圧力調整部51aは、供給タンク42内の圧力を調整する。第2圧力調整部51bは、回収タンク43内の圧力を調整する。
【0048】
第1圧力調整部51aは、第1圧力変更部52と、加圧タンク53とを有する。第1圧力変更部52は、制御部8が出力する制御信号に基づいて、加圧タンク53内の圧力を変更する。第1圧力変更部52は、具体的には、空圧センサ521と、加圧ポンプ522と、減圧ポンプ523と、吸引ポンプ524とを備える。
【0049】
空圧センサ521は、加圧タンク53内に連通する配管内の圧力を計測する。空圧センサ521は計測した圧力を示す測定信号を、制御部8に出力する。
【0050】
加圧ポンプ522および減圧ポンプ523は、加圧タンク53内に接続される配管に設けられている。加圧ポンプ522は、加圧タンク53にエアを送ることによって、加圧タンク53内の圧力を増大させる。減圧ポンプ523は、加圧タンク53のエアを吸引することによって、加圧タンク53内の圧力を低下させる。
【0051】
吸引ポンプ524は、一端が加圧タンク53内に接続され、他端が大気開放された配管の途中に設けられている。吸引ポンプ524は、加圧タンク53内のエアを大気に放出する圧力を配管内に発生させる。
【0052】
加圧タンク53は、供給タンク42との間は、エアが流通可能な配管で連結されている。加圧タンク53内の圧力が変更されることによって、供給タンク42の圧力が変更される。
【0053】
第2圧力調整部51bは、第2圧力変更部54と、負圧タンク55とを有する。第2圧力調整部51bは、負圧タンク55に接続されており、負圧タンク55内の圧力を調整する。第2圧力変更部54は、制御部8が出力する制御信号に基づいて、負圧タンク55内の圧力を変更する。第2圧力変更部54は、第1圧力変更部52と同じ構成を備えるため、説明を省略する。負圧タンク55は、回収タンク43と連通している。負圧タンク55内の圧力が変更されることによって、回収タンク43内の圧力が変更される。
【0054】
圧力差形成部5は、供給タンク42内および回収タンク43内の両方を負圧にした状態で、圧力差を形成してもよい。また、圧力差形成部5は、供給タンク42内を正圧、回収タンク43内を負圧にした状態で、圧力差を形成するようにしてもよい。
【0055】
制御部8は、CPUなどのプロセッサ、プログラムを記憶するROM、および、各種情報を記憶するRAMなど、コンピュータとしての構成を有する。制御部8は、画像データと、エンコーダ26が出力するパルス信号とに基づいて、各ヘッドユニット31~34からインク滴を吐出させる。これにより、基材9の表面に、画像データが表現する画像が形成される。
【0056】
図3に示すように、制御部8のプロセッサがプログラムにしたがって動作することにより、制御部8は、吐出量予測部81、圧力制御部83、画像データ分割部85、供給量制御部87、および吐出制御部89として機能する。なお、制御部8の機能のうち一部または全部は、専用回路によって実現されていてもよい。
【0057】
吐出量予測部81は、画像データに基づいて、現時点よりも先の時点においてヘッドユニット31~34が吐出するインクの単位時間当たりの吐出量を予測する。吐出量予測部81は、例えば、画像データから印字率を算出する。印字率は、基材9に付与される単位面積当たりのインクの量を表す。吐出量予測部81は、印字率に基づいて、吐出量の予測値である予測吐出量を算出する。なお、吐出量予測部81は、印字率を予測吐出量としてもよい。
【0058】
圧力制御部83は、吐出量予測部81が予測した予測吐出量に応じて、圧力差形成部5を制御することにより、供給タンク42から回収タンク43へのインクの供給量を制御する。
【0059】
圧力制御部83は、例えば、フィードフォワード制御を行う。より具体的には、圧力制御部83は、予測吐出量と、タイムラグとに基づいて、圧力差形成部5を制御する。圧力制御部83による圧力差形成部5の制御によって、予測吐出量の変動に応じたタイミングで、圧力差が調整される。タイムラグは、圧力制御部83が、第1圧力調整部51aまたは第2圧力調整部51bに対して、圧力差を変更するための制御信号を出力した時刻から、実際に圧力差が変更される時刻までの差(時間差)である。タイムラグの大きさは、例えば、圧力差形成部5、供給配管44、回収配管45に応じて適宜決定される。より具体的には、タイムラグの大きさは、例えば、第1圧力調整部51aまたは第2圧力調整部51bが有する加圧ポンプ522、減圧ポンプ523の特性、加圧タンク53の大きさや形状、または、供給配管44、回収配管45の長さや断面の大きさ等に応じて適宜決定される。また、タイムラグの大きさは、インクの粘性や温度などに応じて決定されてもよい。
【0060】
図4は、制御部8と、第1流量調整弁471と、第2流量調整弁472との電気的接続を示す図である。画像データ分割部85は、ヘッドユニット31が基材9に形成するべき画像データを、吐出ヘッド311が形成する第1画像データと、吐出ヘッド312が形成する第2画像データとに分割する。画像データ分割部85は、生成した第1画像データおよび第2画像データを、供給量制御部87および吐出制御部89に送信する。画像データ分割部85は、ヘッドユニット32~34に対応する画像データについても、ヘッドユニット31に対応する画像データと同様に、各吐出ヘッド311,312に対応する第1画像データおよび第2画像データに分割する。
【0061】
供給量制御部87は、第1画像データおよび第2画像データに基づいて、第1流量調整弁471および第2流量調整弁472を制御する。具体的には、供給量制御部87は、第1画像データおよび第2画像データの印字率に基づいて、吐出ヘッド311,312のインクの吐出量をそれぞれ算出する。そして、供給量制御部87は、吐出ヘッド311,312に対するインクの供給量が、算出した吐出量よりも大きい値となるように、第1流量調整弁471および第2流量調整弁472を制御する。これにより、吐出ヘッド311,312が実際に吐出するインクの吐出量に対して適切な量のインクを、吐出ヘッド311,312に供給できる。なお、画像データ分割部85は、第1画像データおよび第2画像データの代わりに、第1画像データおよび第2画像データが示す各印字率を供給量制御部87に送信してもよい。
【0062】
第1流量調整弁471によってインクの流量を制御する場合、圧力差形成部5のように圧力差で供給量を制御するよりも、迅速に吐出ヘッド311に対するインクの供給量を制御できる。したがって、供給量制御部87は、圧力制御部83が圧力差形成部5に対して設定するタイムラグよりも短いタイムラグで(もしくは、タイムラグなしで)、第1流量調整弁471を制御するようにしてもよい。
【0063】
吐出制御部89は、受信した第1画像データおよび第2画像データに基づいて、吐出ヘッド311,312の各吐出口35から、インク滴を吐出させる。これにより、吐出ヘッド311,312は、第1画像データに対応した画像および第2画像データに対応する画像を基材9に形成する。したがって、基材9に、元の画像データに対応する画像が形成される。
【0064】
図5は、吐出ヘッド311が吐出するインクの吐出量と供給量の経時変化を示す図である。図5中、横軸は時間であり、縦軸はインクの量を示す。また、図5中、グラフG11は、インクの吐出量の変化を示し、グラフG21は、インクの供給量の変化を示す。また、グラフG12は、吐出量のグラフG11の移動平均を示す図である。
【0065】
供給量制御部87は、所定の期間における吐出ヘッド311からのインクの吐出量の平均値に応じて、吐出ヘッド311に対するインクの供給量が変更されるように、第1流量調整弁471を制御してもよい。例えば、図5に示すように、供給量制御部87は、対象時刻T1における供給量QS1を求める場合、まず、対象時刻T1と、対象時刻T1より先の時刻T0と、対象時刻T1よりも後の時刻T2とにおける吐出量(QD0,QD1,QD2)を、第1画像データから算出する。そして、第1流量調整弁471は、算出した吐出量の平均(平均吐出量)AQD1を求める。さらに、供給量制御部87は、算出した平均吐出量AQD1に所定の量を加算した値を、対象時刻T1における供給量QS1としてもよい。
【0066】
なお、供給量制御部87は、対象時刻T1以降、または、対象時刻T1以前の期間の吐出量のみの平均値に基づいて、対象時刻T1の供給量を決定してもよい。また、供給量制御部87は、2つの時刻または4つ以上の時刻の吐出量に基づいて、対象時刻T1の供給量QS1を求めてもよい。
【0067】
所定の期間における吐出ヘッド311のインクの吐出量の平均値に応じて、吐出ヘッド311に対するインクの供給量が変更される。このため、吐出ヘッド311の吐出量の変動に対して、吐出ヘッド311に対する供給量の変動を相対的に小さくできる。これにより、吐出ヘッド311の吐出量が急変化する場合であっても、インクが通過する流路内(第1分岐配管部441、吐出ヘッド311のインク室36等)の圧力が急に変動することを抑制できる。したがって、第1吐出ヘッドの吐出口におけるインクのメニスカスの形状を安定化できる。
【0068】
供給量制御部87は、第1流量調整弁471の制御と同様に、吐出ヘッド312に対するインクの供給量が、平均吐出量に応じた値となるように、第2流量調整弁472を制御してもよい。
【0069】
インクジェット印刷装置1によると、吐出ヘッド311,312ごとに、インクの吐出量に合わせてインクの供給量が制御される。このため、吐出ヘッド311,312それぞれに対して、適切な量のインクを供給できる。これにより、吐出ヘッド311,312の双方に対して、インクが不足したり、インクが過剰に供給されたりすることを抑制できる。したがって、吐出ヘッド311,312の各吐出口35におけるインクのメニスカスの形状を安定化できる。メニスカスの形状が安定化することによって、インク滴の吐出不良(ノズル欠け)が抑制されるとともに、インク滴の吐出速度および着弾精度が安定化する。したがって、印刷品質の低下を抑制できる。
【0070】
また、吐出ヘッド311,312に対して、インクが過剰に供給されることを抑制できるため、リターンポンプ461などの各ポンプの寿命を延ばすことができる。また、インクか過剰に循環することを抑制できるため、インクの劣化を低減できる。
【0071】
<2. 変形例>
以上、実施形態について説明してきたが、本発明は上記のようなものに限定されるものではなく、様々な変形が可能である。
【0072】
上記実施形態では、ヘッドユニット31の予測吐出量に応じて、圧力差形成部5が圧力差を調整するようにしている。しかしながら、ヘッドユニット31の予測吐出量に応じて圧力差が調整されることは必須ではない。例えば、圧力差形成部5は、予測吐出量に関わらず、一定の圧力差を形成するようにしてもよい。
【0073】
上記実施形態では、供給配管44の第1分岐配管部441に1つの第1流量調整弁471が設けられているが、第1分岐配管部441に複数の第1流量調整弁471が設けられてもよい。そして、供給量制御部87が複数の第1流量調整弁471を制御することによって、吐出ヘッド311に対するインクの供給量が変更されてもよい。複数の第1流量調整弁471を備えることによって、吐出ヘッド311に対するインクの供給量を多段に変更することが容易となる。また、供給量制御部87が複数の第1流量調整弁471を制御する際、供給量制御部87が各第1流量調整弁471を時間差で制御するようにしてもよい。これにより、第1分岐配管部441内の圧力変化を小さくすることができるため、吐出ヘッド311の各吐出口35におけるインクのメニスカスの形状を、さらに安定化できる。
【0074】
上記実施形態では、第1流量調整弁471が吐出ヘッド311より上流に位置する供給配管44に設けられている。しかしながら、第1流量調整弁471が吐出ヘッド311より下流に位置する回収配管45に設けられてもよい。例えば、第1流量調整弁471は、回収配管45の第1分岐配管部451に設けられていてもよい。また、第2流量調整弁472についても、第2分岐配管部452に設けられていてもよい。なお、第1流量調整弁471を吐出ヘッド311よりも上流に設けた場合、吐出ヘッド311に流れるインクの流量を直接制御できる。このため、第1流量調整弁471を吐出ヘッド311よりも下流に設けた場合と比べて、インクの供給量を精度良く制御できる。
【0075】
第1流量調整弁471または第2流量調整弁472の代わりに、流量の調整が可能なポンプを設けてもよい。ポンプを制御することにより、吐出ヘッド311,312に対するインクの供給量が変更されてもよい。
【0076】
この発明は詳細に説明されたが、上記の説明は、すべての局面において、例示であって、この発明がそれに限定されるものではない。例示されていない無数の変形例が、この発明の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。上記各実施形態および各変形例で説明した各構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わせたり、省略したりすることができる。
【符号の説明】
【0077】
1 インクジェット印刷装置
2 基材搬送部
3 印刷部
5 圧力差形成部
8 制御部
9 基材
31~34 ヘッドユニット
41 インク供給部
42 供給タンク
43 回収タンク
44 供給配管
45 回収配管
46 リターン配管
83 圧力制御部
85 画像データ分割部
87 供給量制御部
311 吐出ヘッド(第1吐出ヘッド)
312 吐出ヘッド(第2吐出ヘッド)
461 リターンポンプ
471 第1流量調整弁
472 第2流量調整弁
図1
図2
図3
図4
図5