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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-25
(45)【発行日】2025-05-08
(54)【発明の名称】繊維強化プラスチック複合管
(51)【国際特許分類】
   F16L 9/12 20060101AFI20250428BHJP
   C08F 283/01 20060101ALI20250428BHJP
   B32B 1/08 20060101ALI20250428BHJP
   B32B 5/00 20060101ALI20250428BHJP
   B32B 27/36 20060101ALI20250428BHJP
【FI】
F16L9/12
C08F283/01
B32B1/08 Z
B32B5/00 B
B32B27/36 101
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2021123304
(22)【出願日】2021-07-28
(65)【公開番号】P2023018923
(43)【公開日】2023-02-09
【審査請求日】2024-04-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(72)【発明者】
【氏名】森武 博
(72)【発明者】
【氏名】南出 実穂
【審査官】石塚 寛和
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2007/0032608(US,A1)
【文献】特開平11-129363(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L
C08F
B32B
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状であり、内面から順に、内面保護層と、内面繊維強化樹脂層と、樹脂モルタル層と、外面繊維強化樹脂層と、外面保護層とを有し、
前記外面繊維強化樹脂層は、強化繊維と、不飽和ポリエステル樹脂(A)と、トリアジン骨格を有する化合物である紫外線吸収剤(B)と、硬化促進剤(E)を含み、前記硬化促進剤(E)が金属石鹸(E1)を含み、前記不飽和ポリエステル樹脂(A)100質量部に対して、前記紫外線吸収剤(B)の含有量が1~5質量部であり、
前記外面保護層は、前記不飽和ポリエステル樹脂(A)と、前記紫外線吸収剤(B)と、前記硬化促進剤(E)を含み、前記硬化促進剤(E)が前記金属石鹸(E1)を含み、前記不飽和ポリエステル樹脂(A)100質量部に対して、前記紫外線吸収剤(B)の含有量が1~5質量部であり、
外面が耐候性塗料で被覆されている、繊維強化プラスチック複合管。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物及び繊維強化プラスチック複合管に関する。
【背景技術】
【0002】
硬化性樹脂と強化繊維を含む複合材料を硬化させた繊維強化プラスチック(FRP)は、農業、下水道、建築、輸送等様々な分野で用いられている。FRPを含む成形物(FRP成形物)としては、FRP複合管等が挙げられる。
繊維強化プラスチック(FRP)に使用される樹脂として、不飽和ポリエステル樹脂がある。FRPを屋外で使用した場合、FRPの樹脂には、紫外線による光劣化や加水分解が生じて、減肉や亀裂が生じ、FRPの強度維持が難しいという問題があった。
【0003】
FRP成形品の耐候性能(日光による耐変色性)を向上する手段として、FRP成形品の最外面に耐候性塗料を塗布して、塗膜を形成する方法がある。FRP成形品の最外面に耐候性塗料の塗膜を形成した場合、飛来物により塗膜が剥がれると、その剥離箇所からFRPの劣化が進行するという問題がある。
こうした問題に対して、FRPの樹脂に、紫外線吸収剤や光安定剤等の耐候性添加剤を配合する方法がある(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-206630号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者等の知見によれば、紫外線吸収剤を添加すると樹脂の硬化性が低下する場合がある。例えば、硬化反応の反応速度が遅くなる、硬化が十分に進行しない等の問題が生じる場合がある。
本発明は、紫外線吸収剤の添加による硬化性の低下を抑制できる樹脂組成物を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、樹脂組成物が反応促進剤として金属石鹸を含む場合に、紫外線吸収剤の添加による硬化性の低下が生じやすいことを知見した。そして、特定の紫外線吸収剤を用いることにより、かかる硬化性の低下を抑制できることを見出して本発明に至った。
【0007】
本発明は、以下の態様を有する。
<1>
不飽和ポリエステル樹脂(A)と、トリアジン骨格を有する化合物、ベンゾフェノン骨格を有する化合物、及びシアノアクリレート骨格を有する化合物からなる群から選ばれる1種以上の紫外線吸収剤(B)と、硬化促進剤(E)とを含み、前記硬化促進剤(E)が金属石鹸(E1)を含み、前記不飽和ポリエステル樹脂(A)100質量部に対して、前記紫外線吸収剤(B)の含有量が1~5質量部である、樹脂組成物。
<2>
さらに、光安定剤(D)を含む、<1>の樹脂組成物。
<3>
前記不飽和ポリエステル樹脂(A)100質量部に対して、前記光安定剤(D)の含有量が0.01~1質量部である、<2>の樹脂組成物。
<4>
筒状であり、内面から順に、内面保護層と、内面繊維強化樹脂層と、樹脂モルタル層と、外面繊維強化樹脂層と、外面保護層とを有し、
前記外面繊維強化樹脂層は、強化繊維と、不飽和ポリエステル樹脂(A)と、トリアジン骨格を有する化合物、ベンゾフェノン骨格を有する化合物、及びシアノアクリレート骨格を有する化合物からなる群から選ばれる1種以上の紫外線吸収剤(B)と、硬化促進剤(E)を含み、前記硬化促進剤(E)が金属石鹸(E1)を含み、前記不飽和ポリエステル樹脂(A)100質量部に対して、前記紫外線吸収剤(B)の含有量が1~5質量部である、繊維強化プラスチック複合管。
<5>
前記外面保護層は、前記不飽和ポリエステル樹脂(A)と、前記紫外線吸収剤(B)と、前記硬化促進剤(E)を含み、前記硬化促進剤(E)が前記金属石鹸(E1)を含み、前記不飽和ポリエステル樹脂(A)100質量部に対して、前記紫外線吸収剤(B)の含有量が1~5質量部である、<4>の繊維強化プラスチック複合管。
<6>
外面が耐候性塗料で被覆されている、<5>の繊維強化プラスチック複合管。
【発明の効果】
【0008】
本発明の樹脂組成物によれば、紫外線吸収剤の添加による硬化性の低下を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の繊維強化プラスチック複合管の一実施形態を示す斜視図である。
図2】実施例及び比較例における加熱硬化試験の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下の用語の定義は、本明細書および特許請求の範囲にわたって適用される。
「~」を用いて表される数値範囲は、その数値範囲の両端の数値を含む。
(メタ)アクリルは、アクリル及びメタクリルを総称するものとする。(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイル、(メタ)アクリロイルオキシ及び(メタ)アクリルアミドについても同様である。
【0011】
(樹脂組成物)
本発明の樹脂組成物は、不飽和ポリエステル樹脂(A)(以下、「(A)成分」ともいう)と、紫外線吸収剤(B)(以下、「(B)成分」ともいう)と、硬化促進剤(E)(以下、「(E)成分」ともいう)とを含有する。
さらに光安定剤(D)(以下、「(D)成分」ともいう)を含むことが好ましい。
【0012】
<不飽和ポリエステル樹脂(A)>
樹脂組成物は、(A)成分を含有することで、硬化して成形体となる。
(A)成分は、不飽和ポリエステル(a1)と、重合性不飽和単量体(a2)とを含む。
【0013】
不飽和ポリエステル(a1)は、飽和二塩基酸(a11)、不飽和二塩基酸(a12)、及びグリコール(a13)を原料として用いることが好ましい。
【0014】
飽和二塩基酸(a11)は、オルソフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸又はアジピン酸等の1分子中に炭素原子間非共役二重結合を含まない二塩基酸である。飽和二塩基酸(a11)は、必要に応じて、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
不飽和二塩基酸(a12)は、無水マレイン酸又はフマル酸等の1分子中に1個以上の炭素原子間非共役二重結合を含む二塩基酸である。不飽和二塩基酸(a12)は、必要に応じて、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0015】
グリコール(a13)は、エチレングリコールもしくはプロピレングリコール等のアルキレングリコール、ジアルキレングリコールもしくはトリアルキレングリコール等のポリオキシアルキレングリコール、又は、ビスフェノールAもしくはビスフェノールF等のビスフェノール等の1分子中に2個のヒドロキシ基を含むジオールである。グリコール(a13)は、必要に応じて、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0016】
不飽和ポリエステル(a1)は、さらに、不飽和二塩基酸(a12)及びグリコール(a13)のいずれにも包含されない、1分子中に1個又は2個の炭素原子間非共役二重結合を有する単量体(a14)を原料として用いることができる。このような単量体(a14)としては、スチレン、プロピレン、ジシクロペンタジエン及び(メタ)アクリル酸アルキルエステル等が例示できるが、これらに限定されない。単量体(a14)は、必要に応じて、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0017】
不飽和ポリエステル(a1)の合成方法は、特に限定されず、飽和二塩基酸(a11)、不飽和二塩基酸(a12)及びグリコール(a13)、所望により、単量体(a14)を同時に仕込み、縮合させる合成方法等である。
【0018】
(A)成分は、飽和二塩基酸(a11)の種類又はグリコール(a13)の種類によって、オルソ系不飽和ポリエステル樹脂、イソ系不飽和ポリエステル樹脂、テレ系不飽和エステル樹脂又はビス系不飽和ポリエステル樹脂に分類する場合がある。
【0019】
重合性不飽和単量体(a2)は、特に限定されず、従来、不飽和ポリエステル樹脂に使用されているものを使用できる。
重合性不飽和単量体(a2)の例は、スチレン、α-メチルスチレン、クロロスチレン、ジクロロスチレン、ジビニルベンゼン、t-ブチルスチレン、ビニルトルエン、酢酸ビニル、ジアリールフタレ-ト、トリアリールシアヌレ-ト、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸トリデシル、ジシクロペンテニロキシエチル(メタ)アクリレート、エチレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、エチレングリコールモノエチルエーテル(メタ)アクリレート、エチレングリコールモノブチルエーテル(メタ)アクリレート、エチレングリコールモノヘキシルエーテル(メタ)アクリレート、エチレングリコールモノ2-エチルヘキシルエーテル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノ2-エチルヘキシルエーテル(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールモノヘキシルエーテル(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールモノ2-エチルヘキシルエーテル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジメタアクリレート、1,3-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-1,3-ジメタクリロキシプロパン、2,2-ビス〔4-(メタクリロキシエトキシ)フェニル〕プロパン、2,2-ビス〔4-(メタクリロキシジエトキシ)フェニル〕プロパン、2,2-ビス〔4-(メタクリロキシポリエトキシ)フェニル〕プロパン、テトラエチレングリコールジアクリレート、ビスフェノールAエチレンオキサイド付加(n=2)ジアクリレート、イソシアヌル酸エチレンオキサイド付加(n=3)ジアクリレート及びペンタエリスリトールジアクリレートモノステアレート等である。
重合性不飽和単量体(a2)は、必要に応じて、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0020】
(A)成分の数平均分子量は、特に限定されないが、400~1500が好ましく、400~1200がより好ましく、400~1000がさらに好ましい。(A)成分の数平均分子量が上記範囲内であると、樹脂組成物の流動性等が良好であり、成形性がより良好となる。
数平均分子量は、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)分析で測定される値である。
【0021】
(A)成分中、不飽和ポリエステル(a1)及び重合性不飽和単量体(a2)の含有量は、特に限定されないが、不飽和ポリエステル(a1)及び重合性不飽和単量体(a2)の合計量を100質量部として、不飽和ポリエステル(a1)が80~60質量部、重合性不飽和単量体(a2)が残部であることが好ましい。即ち、(a1)/{(a1)+(a2)}で表される質量比の好ましい範囲は、0.6~0.8である。この範囲内であると、(A)成分の収縮性、物性及び成形性がより良好になる。
【0022】
(A)成分には、不飽和ポリエステル(a1)の合成に用いた化合物、及び重合性不飽和単量体(a2)以外の化合物を、本発明の効果を失わない範囲で、混合してもよい。
【0023】
樹脂組成物の総質量に対する(A)成分の含有割合は、90.0~99.9質量%が好ましく、95.0~99.9質量%がより好ましい。上記範囲の下限値以上であると、樹脂組成物の硬化物である成形体(以下、「樹脂成形体」ともいう)の強度がより高められる。上限値以下であると、(A)成分以外の添加成分の含有量を高めることができる。例えば(B)成分の含有量を高めて、耐候性のさらなる向上を図れる。
【0024】
高物性、耐食性の点で、(A)成分がイソ不飽和ポリエステル樹脂を含むことが好ましい。
イソ不飽和ポリエステル樹脂の市販品としては、イソ系不飽和ポリエステル樹脂(日本ユピカ社製)等が例示できる。
(A)成分の総質量に対して、イソ不飽和ポリエステル樹脂の含有割合は、60~100質量%が好ましく、90~100質量%がより好ましく、95~100質量%がさらに好ましい。
【0025】
<紫外線吸収剤(B)>
(B)成分は、トリアジン骨格を有する化合物(以下、「トリアジン系化合物」ともいう)、ベンゾフェノン骨格を有する化合物(以下、「ベンゾフェノン系化合物」ともいう)、及びシアノアクリレート骨格を有する化合物(以下、「シアノアクリレート系化合物」ともいう)からなる群から選ばれる1種以上である。
トリアジン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、及びシアノアクリレート系化合物は、紫外線吸収剤として公知の化合物を用いることができる。
(A)成分及び(E)成分を含む樹脂組成物に、(B)成分を添加することにより、樹脂組成物の硬化性の低下を防止しつつ、紫外線吸収能を付与することができる。
トリアジン系化合物、ベンゾフェノン系化合物及びシアノアクリレート系化合物はいずれも、後述の金属石鹸(E1)と反応しないため、紫外線吸収剤の添加による硬化性の低下を防止できると考えられる。
【0026】
具体例としては以下が挙げられる。
[トリアジン系化合物]
トリアジンは、下記(b1)式で表される化合物である。
【0027】
【化1】
【0028】
「トリアジン骨格を有する化合物」とは、(b1)式で表される化合物、又は(b1)式の化合物の水素原子の一部又は全部が他の置換基で置換された化合物である。
置換基としては、フェニル基、メチルフェニル基、ジメチルフェニル基、トリメチルフェニル基、メトキシフェニル基、ヒドロキシメトキシフェニル基等を例示できる。
【0029】
トリアジン系化合物の具体例としては、2,4-ジフェニル-6-(2-ヒドロキシ-4-メトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ジフェニル-6-(2-ヒドロキシ-4-エトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ジフェニル-(2-ヒドロキシ-4-プロポキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ジフェニル-(2-ヒドロキシ-4-ブトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ジフェニル-6-(2-ヒドロキシ-4-ブトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ジフェニル-6-(2-ヒドロキシ-4-ヘキシルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ジフェニル-6-(2-ヒドロキシ-4-オクチルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ジフェニル-6-[2-ヒドロキシ-4-(1-イソオクチルオキシカルボニルエトキシ)]-1,3,5-トリアジン、2,4-ジフェニル-6-(2-ヒドロキシ-4-ドデシルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ジフェニル-6-(2-ヒドロキシ-4-ベンジルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジン等を例示できる。
市販品としては、LA-46(ADEKA社製)、EVERSORB40(栄光化学社製)等を例示できる。
【0030】
[ベンゾフェノン系化合物]
ベンゾフェノンは、下記(b2)式で表される化合物である。
【0031】
【化2】
【0032】
「ベンゾフェノン骨格を有する化合物」とは、(b2)式で表される化合物、又は(b2)式の化合物の水素原子の一部又は全部が他の置換基で置換された化合物である。
置換基としては、ヒドロキシ基、アルキル基、アルコキシ基、スルホン基、アルキルアミノ基等を例示できる。
【0033】
ベンゾフェノン系化合物の具体例としては、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-n-オクチルオキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン-5-スルホン酸、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-n-オクチルオキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’-テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4,4’-ジメトキシベンゾフェノン等を例示できる。
市販品としては、1413(ADEKA社製)、EVERSORB11(栄光化学社製)、EVERSORB12(栄光化学社製)、ユビナール3049(BASF社製)、ユビナール3050(BASF社製)、JF-51(城北化学工業社製)等を例示できる。
【0034】
[シアノアクリレート系化合物]
α-シアノアクリレートは、アクリル酸エステルのα位の炭素に結合している水素原子の1つがCN基で置換された化合物であり、好ましくは(b3)式で表される化合物である。
CH=C(CN)COOR・・・(b3)
(b3)式において、Rは炭素数2~6の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を表す。
【0035】
「シアノアクリレート骨格を有する化合物」とは、α-シアノアクリレート又はα-シアノアクリレートの水素原子の一部又は全部が他の置換基で置換された化合物である。
好ましくは、(b3)式で表される化合物、又は(b3)式の化合物の水素原子の一部又は全部が他の置換基で置換された化合物である。
置換基としては、ベンジル基を例示できる。
【0036】
シアノアクリレート系化合物の具体例としては、2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリル酸2-エチルヘキシル、2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリル酸エチル、2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリル酸2-エチルヘキシル、2,2-ビス{[(2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリロイル)オキシ]メチル}プロパン-1,3-ジイル=ビス(2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリラート)等を例示できる。
市販品としては、ユビナール3035、(BASF社製)、ユビナール3039(BASF社製)、ユビナール3030(BASF社製)等を例示できる。
【0037】
樹脂組成物中の(B)成分の含有量は、(A)成分の100質量部に対して1~5質量部であり、1~4質量部が好ましく、1~3質量部がより好ましい。上記範囲の下限値以上であると、硬化した樹脂成形体の耐候性のさらなる向上を図れる。上限値以下であると、硬化した樹脂成形体の強度を高められる。
【0038】
<他の紫外線吸収剤(C)>
樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、(B)成分以外の他の紫外線吸収剤(C)(以下、「(C)成分」ともいう)を含んでもよい。
(C)成分としては、トリアジン系化合物、ベンゾフェノン系化合物及びシアノアクリレート系化合物のいずれにも該当しない、公知の紫外線吸収剤を用いることができる。
例えば、ベンゾトリアゾール骨格を有する化合物(以下、「ベンゾトリアゾール系化合物」ともいう)等が挙げられる。
具体例としては以下が挙げられる。
【0039】
[ベンゾトリアゾール系化合物]
ベンゾトリアゾールは、下記(c1)式で表される化合物又は下記(c2)式で表される化合物である。
【0040】
【化3】
【0041】
「ベンゾトリアゾール骨格を有する化合物」とは、(c1)式もしくは(c2)式で表される化合物、又は、(c1)式の化合物もしくは(c2)式の化合物の水素原子の一部又は全部が他の置換基で置換された化合物である。
置換基としては、ヒドロキシフェニル基、3-t-ブチル-2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル基、2-ヒドロキシ-5-オクチルフェニル基、2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル基、2-ヒドロキシ-3,5-ジ(1,1ジメチルベンジル)フェニル基等を例示できる。
【0042】
ベンゾトリアゾール系化合物としては、例えば、2-(3’-t-ブチル-2’ヒドロキシ-5’-メチルフェニル)5-クロロベンゾトリアゾール、3-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-ヒドロキシフェネチル=メタクリラート(CAS:153175-43-0)、2-(2’-ヒドロキシ-3’-t-ブチル-5’-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-5’-t-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール-2-リル)-6-t-ブチル-4-メチルフェノール等を例示できる。
市販品としては、EVERSORB73(永光化学社製)、バナレジンUVA-5080(新中村化学工業社製)、JF-79(城北化学工業社製)、JF-83(城北化学工業社製)、アデカスタブLA-36(ADEKA社製)等を例示できる。
【0043】
樹脂組成物中の(C)成分の含有量は、(A)成分の100質量部に対して1質量部未満が好ましく、0.1質量部以下がより好ましく、0.01質量部以下がさらに好ましい。ゼロが特に好ましい。上記上限値以下であると、樹脂組成物の硬化性が低下し難い。
(B)成分と(C)成分の合計の含有量は、(A)成分の100質量部に対して1~5質量部が好ましく、1~4質量部が好ましく、1~3質量部がより好ましい。
【0044】
<光安定剤(D)>
樹脂組成物に(D)成分を添加することにより、樹脂成形体の耐候性をより高められる。
紫外線吸収剤が紫外線を吸収して耐候性を向上させるのに対し、光安定剤は紫外線の照射により発生したラジカルと反応することで、ラジカルに起因する劣化反応を防止して耐候性を向上させる。
(D)成分としては、ヒンダードアミン型光安定剤(D1)(以下、「(D1)成分」ともいう)が好ましい。(D1)成分は1種でもよく、2種以上の組み合わせでもよい。
(D)成分は(D1)成分以外の他の光安定剤の1種以上を含んでもよい。他の光安定剤は公知の光安定剤を用いることができる。
【0045】
[(D1)成分]
(D1)成分は、ヒンダードアミン構造を有する化合物である。
ヒンダードアミン構造を有する化合物とは、下記(d1)式で表される化合物、又は、下記(d1)式の水素原子の一部又は全部が他の置換基で置換された化合物である。
【0046】
【化4】
【0047】
(D1)成分としては、ヒンダードアミン構造を1つ有する化合物、ヒンダードアミン構造を2つ有する化合物、ヒンダードアミン構造を3つ有する化合物、ヒンダードアミン構造を4つ有する化合物、ヒンダードアミン構造を有するポリマー等を例示できる。
(D1)成分としては、例えば、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン骨格を有する化合物を例示できる。
(D1)成分の種類は、N-H型、N-R型、N-OR型がある。本発明において、(D1)成分は、いずれの型でもよいが、相溶性及び酸塩基性度の観点から、N-OR型が好ましい。
(D1)成分の具体例としては、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)カーボネート、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)オキサレート、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)マロネート、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)アジペート、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)テレフタレート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)カーボネート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)オキサレート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)マロネート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)アジペート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)テレフタレート、N,N’-ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル)-1,3-ベンゼンジカルボキシアミド、1,2-ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジルオキシ)エタン、α,α’-ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジルオキシ)-p-キシレン、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)トリレン-2,4-ジカルバメート、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)-ヘキサメチレン-1,6-ジカルバメート等が挙げられる。
【0048】
樹脂組成物が(D)成分を含む場合、(A)成分の100質量部に対する(D)成分の含有量は、0.01~1質量部が好ましく、0.05~0.3質量部がより好ましい。上記範囲の下限値以上であると、耐候性の向上効果に優れる。上限値以下であると、成形反応時に硬化不良を起こし難く、耐候性向上効果が得られやすい。
(D)成分に対して(D1)成分の含有割合は50~100質量%が好ましく、80~100質量%がより好ましく、90~100質量%がさらに好ましい。100質量%が特に好ましい。
【0049】
<(E)成分>
(E)成分は金属石鹸(E1)を含む。金属石鹸(E1)は1種でもよく、2種以上の組み合わせでもよい。
(E)成分は金属石鹸(E1)以外の他の硬化促進剤の1種以上を含んでもよい。
【0050】
金属石鹸(E1)としては、オクテン酸バナジル、ナフテン酸銅、ナフテン酸バリウム、ナフテン酸コバルト及びオクテン酸コバルト等が挙げられる。
【0051】
他の硬化促進剤としては、Li〔Co(NO〕、Li〔Co(NOCl〕、Li〔Co(NOBr〕、Li〔Co(NOCl〕、Li〔Co(NOBr〕、Na〔Co(NO〕、Na〔Co(NOCl〕、Na〔Co(NOBr〕、Na〔Co(NOCl〕、Na〔Co(NOBr〕、K〔Co(NO〕、K〔Co(NOCl〕、K〔Co(NOBr〕、K〔Co(NOCl〕及びK〔Co(NOBr〕等のコバルト化合物、バナジルアセチルアセテート、コバルトアセチルアセテート及び鉄アセチルアセトネート等の金属キレート化合物、並びにN,N-ジメチルアミノ-p-ベンズアルデヒド、N,N-ジメチルアニリン、N,N-ジエチルアニリン、メチルヒドロキシエチルアニリン、N,N-ジメチル-p-トルイジン、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-p-トルイジン、4-N,N-ジメチルアミノベンズアルデヒド、4-N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)アミノベンズアルデヒド、4-メチルヒドロキシエチルアミノベンズアルデヒド、N,N-ビス(2-ヒドロキシプロピル)-p-トルイジン、N-エチル-m-トルイジン、トリエタノールアミン、m-トルイジン、ジエチレントリアミン、ピリジン、フェニルモルホリン、ピペリジン及びジエタノールアニリン等のアミンを例示できる。
【0052】
(A)成分の100質量部に対する(E)成分の含有量は、0.001~5質量部が好ましく、0.01~1質量部がより好ましい。上記範囲の下限値以上であると硬化時間を十分に短縮でき、環境変化影響を受け硬化不良の影響を抑制しやすい。上限値以下であると急激な発熱温度上昇による効果収縮(ワレ)を抑制しやすい。
【0053】
<硬化剤(G)>
樹脂組成物は、硬化剤(G)を含むことが好ましい。硬化促進剤(E)と硬化剤(G)が共存すると硬化反応がより促進される。
硬化剤(G)は、特に限定されないが、有機過酸化物触媒が好ましい。有機過酸化物触媒としては、ベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシベンゾエート、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ビス(t-ブチルパーオキシ)ヘキシン-3,3-イソプロピルヒドロパーオキサイド、t-ブチルヒドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジクミルヒドロパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、ビス(4-t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、イソブチルパーオキサイド、3,3,5-トリメチルヘキサノイルパーオキサイド及びラウリルパーオキサイド等の有機過酸化物、並びにアゾビスイソブチロニトリル及びアゾビスカルボンアミド等のアゾ系重合開始剤を例示できる。
硬化剤(G)は、1種単独でもよいし、2種以上の組み合わせでもよい。
樹脂組成物が硬化剤(G)を含む場合の含有量は、特に限定されないが、(A)成分の100質量部に対して、0.1~4質量部が好ましく、0.3~3質量部がより好ましい。
【0054】
<その他の成分>
本発明の樹脂組成物は、上述の(A)~(E)成分及び硬化剤(G)以外のその他の成分を含有してもよい。その他の成分としては、酸化防止剤、重合禁止剤、充填剤、顔料、減粘剤、老化防止剤、可塑剤、難燃剤、安定剤、補強材等を例示できる。
【0055】
酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、リン酸系酸化防止剤、芳香族アミン系酸化防止剤(1次酸化防止剤)、硫黄系酸化防止剤(2次酸化防止剤)、チオエーテル系酸化防止剤等を例示できる。
【0056】
重合禁止剤としては、特に制限されないが、ハイドロキノン、トルハイドロキノン、トリメチルハイドロキノン、ターシャリーブチルハイドロキノン、ジターシャリーブチルハイドロキノン、ターシャリーブチルカテコール、メトキシハイドロキノン、ベンゾキノン、ターシャリーブチルキノン及びフェノチアジン等を例示できる。
重合禁止剤は、1種単独でもよいし、2種以上の組み合わせでもよい。
重合禁止剤を含有することにより、不飽和ポリエステル(a1)と重合性不飽和単量体(a2)との反応が抑制されるため、安全性が高まる。
本発明の樹脂組成物が重合禁止剤を含む場合、重合禁止剤の含有量は、(A)成分の100質量部に対して、0.0001~0.1質量部が好ましい。
【0057】
<樹脂組成物の製造方法>
本発明の樹脂組成物の製造方法は、特に限定されない。例えば、硬化剤(G)以外の全成分を含む予備混合物に、硬化剤(G)を添加し、混合して樹脂組成物を製造する方法が好ましい。
2種以上の紫外線吸収剤を用いる場合、予めこれらを混合した混合物を用いてもよい。
紫外線吸収剤と光安定剤を併用する場合、予めこれらを混合した混合物を用いてもよい。
【0058】
(樹脂成形体)
樹脂成形体は、本発明の樹脂組成物を硬化し、任意の形状としたものである。
樹脂成形体としては、例えば、FRPの樹脂部分、繊維強化プラスチック複合管の樹脂部分、マンホール、排水ます、建材ブロック、舗装体ブロック、蓋、管材、補修材等の土木建築用成形品、人工大理石成形品、景観用成形品、イス、ベンチ、C.C.(情報通信電力地下埋設用)ボックス、情報関連成形品、電力関連成形品等がある。
【0059】
<樹脂成形体の製造方法>
樹脂組成物を成形し、加熱して硬化させることにより、特定の形状を有する樹脂成形体を製造できる。
樹脂成形体の製造方法としては、特に限定されないが、例えば、注型成形法、遠心成形法、圧縮成形法及び連続成形法を例示できる。
【0060】
注型成形法では、樹脂組成物を型に流し込み、加熱硬化する。
遠心成形法では、樹脂組成物を円筒状の型内に流し込んだ後、型を回転させ、その遠心力により樹脂組成物を均一な厚さに賦型し、加熱して硬化する。
圧縮成形法では、樹脂組成物を合わせ型の中に流し込んだ後、プレス機により圧縮し、加熱して硬化する。
注型成形法、遠心成形法及び圧縮成形法においては、型に強化繊維を配置し、樹脂組成物を強化繊維に含浸させ、硬化させて、FRPとしてもよい。強化繊維としては、ガラス繊維、炭素繊維、ボロン繊維等を例示できる。強化繊維の太さ(直径)は、例えば、5~30μmである。なお、強化繊維は、一方向に引き揃えた束又シート状でもよいし、平織又は綾織にした織物でもよい。
【0061】
連続成形法では、回転したマンドレルに樹脂組成物を巻き付けながら、樹脂組成物を前方へ一定速度で送りながら硬化炉を通過させて、加熱して硬化する。樹脂組成物を巻き付ける前後において、強化繊維を巻き付け、巻き付けた繊維に含浸した樹脂組成物を硬化させて、FRPとしてもよい。
【0062】
樹脂組成物の硬化温度は、特に限定されないが、50℃以上が好ましく、50~70℃がより好ましく、55~65℃がさらに好ましい。
樹脂組成物の硬化時間は、特に限定されないが、6時間以上が好ましく、12時間以上がより好ましく、24~48時間がさらに好ましい。
【0063】
(繊維強化プラスチック複合管)
図1を参照しながら、本発明の繊維強化プラスチック複合管(FRPM管)の実施形態を説明する。
図1のFRPM管1は、管軸O方向に延びる円筒状であり、環状又は筒状の樹脂モルタル層4と、樹脂モルタル層4の内周面に位置する内面繊維強化樹脂層3と、樹脂モルタル層4の外周面に位置する外面繊維強化樹脂層5と、内面繊維強化樹脂層3の内周面に位置する内面保護層2と、外面繊維強化樹脂層5の外周面に位置する外面保護層6とを有する。
即ち、FRPM管1は、内周側から順に、内面保護層2、内面繊維強化樹脂層3、樹脂モルタル層4、外面繊維強化樹脂層5、及び外面保護層6を有する。内面繊維強化樹脂層3及び外面繊維強化樹脂層5は、いずれか一方のみを有すればよいが、両方を有することが好ましい。内面保護層2及び外面保護層6は、いずれも有しなくてもよいが、一方又は両方を有することが好ましい。
なお、FRPM管は、円筒状に限らず、四角筒状等の角筒状でもよい。
【0064】
本実施形態において、内面繊維強化樹脂層3は、繊維が周方向に延びている第一の内面繊維強化樹脂層3aと、繊維が軸方向に延びている第二の内面繊維強化樹脂層3bとを有する。しかしながら、本発明はこれに限定されず、内面繊維強化樹脂層3が1層で構成されていてもよい。この場合、内面繊維強化樹脂層3を構成する強化繊維は、織物でもよい。
【0065】
本実施形態において、外面繊維強化樹脂層5は、繊維が周方向に延びている第一の外面繊維強化樹脂層5aと、繊維が軸方向に延びている第二の外面繊維強化樹脂層5bとを有する。しかしながら、本発明はこれに限定されず、外面繊維強化樹脂層5が1層で構成されていてもよい。この場合、外面繊維強化樹脂層5を構成する強化繊維は、織物でもよい。
【0066】
内面保護層2を形成する樹脂組成物としては、熱硬化性樹脂を含有する従来公知の樹脂組成物(イソ系不飽和ポリエステル樹脂及び硬化剤を有する組成物等)でもよいし、本発明の樹脂組成物でもよい。
【0067】
内面繊維強化樹脂層3としては、強化繊維と、樹脂組成物の硬化物との組み合わせを例示できる。この樹脂組成物は、内面保護層2を形成する樹脂組成物と同様である。
【0068】
樹脂モルタル層4は、レジンコンクリート組成物の硬化物である。レジンコンクリート組成物は、例えば、レジンモルタルと骨材との混合物を例示できる。
レジンモルタルとしては、不飽和ポリエステル樹脂等の熱硬化性樹脂を例示できる。
骨材としては、珪砂、砂利、砕石、玉石、高炉スラグ骨材又は人工軽量骨材等の従来レジンコンクリート組成物に配合されてきた骨材を例示できる。骨材の平均粒子径は、例えば、0.1~10mmである。
レジンコンクリート中、レジンモルタル100質量部に対する骨材の量は、例えば、60~90質量部である。
レジンコンクリート組成物は、重合禁止剤、硬化剤、硬化促進剤等の添加剤を含有してもよい。
【0069】
外面繊維強化樹脂層5としては、強化繊維と、樹脂組成物との組み合わせを例示できる。この樹脂組成物は、内面保護層2を形成する樹脂組成物と同様である。中でも、外面繊維強化樹脂層5を形成する樹脂組成物としては、本発明の樹脂組成物が好ましい。本発明の樹脂組成物を用いることで、外面繊維強化樹脂層5の耐候性を高めて、FRPM管の耐候性を高められる。
【0070】
外面保護層6を形成する樹脂組成物は、内面保護層2を形成する樹脂組成物と同様である。中でも、外面保護層6を形成する樹脂組成物は、本発明の樹脂組成物が好ましい。外面保護層6を本発明の樹脂組成物で形成することで、樹脂成形体の耐候性を高めて、FRPM管の耐候性を高められる。
【0071】
FRPM管1の内径Rは、FRPM管1の用途に応じて適宜決定できる。
FRPM管1の管軸O1方向の長さは、FRPM管1の用途に応じて適宜決定できる。
FRPM管1を構成する各層の厚みは、内径R、管軸O1方向の長さ、及びFRPM管1に求める強度等を関して適宜決定できる。
【0072】
<FRPM管の製造方法>
FRPM管1の製造方法は、特に限定されず、フィラメントワインディング法、遠心成形法、引抜成形法又はハンドレイアップ法等、従来公知の製造方法が挙げられる。
フィラメントワインディング法は、芯筒を回転させながら一定速度で送り、内面保護層2、内面繊維強化樹脂層3、樹脂モルタル層4、外面繊維強化樹脂層5、外面保護層6の材料を順次巻き付け、順次加熱硬化させてFRPM管を連続的に製造する製造方法である。これらの方法によれば、芯筒のサイズを変更することにより、様々なサイズのFRPM管を製造できる。
【0073】
また、FRPM管1の製造方法としては、特開2001-205711号公報の[0016]~[0019]に記載されたFRPM管の製造方法、特開2001-205712号公報の[0020]~[0028]に記載されたFRPM管の製造方法又は特開平10-193467号公報の[0009]~[0019]に記載されたFRPM管の製造方法も挙げられる。
即ち、管軸を中心に回転する円筒状の金型の周面に、無端のスチールベルトを螺旋状に巻き付けつつ、巻き付けたスチールベルトの表面に、内面保護層2を形成する樹脂組成物と、強化繊維と、FRP用樹脂組成物と、レジンコンクリート組成物と、強化繊維と、FRP用樹脂組成物と、外面保護層6を形成する樹脂組成物とをこの順で供給し、かつ各樹脂組成物を硬化して、FRPM管1を連続的に形成する。スチールベルトは、円筒状の金型の回転により前進し、円筒状の金型の終端から金型の内部を通って金型の始端に戻る。
このため、FRPM管1は、円筒状の金型の軸線方向に伸長する。伸長したFRPM管1を任意の長さで切断することで、FRPM管1の製品を得る。
この製造方法によれば、金型の外径を変更することで、FRPM管1の内径Rを調節できる。
【0074】
本発明のFRPM管は上述の実施形態に限定されない。本発明のFRPM管は、耐候性のさらなる向上を図るため、外面が耐候性塗料で被覆されていてもよい。即ち、本発明のFRPM管は、最外面に、耐候性塗料の被覆層を有してもよい。
一般的に屋外使用の構造物、配管、輸送機器等、構成基材の劣化防止のため、最外層には塗装が施される。塗装による塗膜で被覆することにより、構成部材における紫外線、水分、温度又は異物付着等の劣化因子影響を抑制できる。耐候性塗料としては、フッ素系塗料、シリコン系塗料、アクリル系塗料が挙げられる。また、耐候性塗料としては、屋外使用のFRP製品表面に被覆されるトップコートが挙げられる。FRPM管との密着性をより高める観点から、耐候性塗料としては、フッ素系塗料、アクリル系塗料がより好適である。
塗装方法としては、例えば、スプレーによる塗布、刷毛又はローラーによる塗布等が挙げられる。中でも、塗装方法としては、膜厚の安定、仕上り具合を考慮し、スプレー塗装が好ましい。
外面に耐候性塗料の被覆層を有することで、FRPM管を構成する樹脂組成物への紫外線と水分透過をより減少させ、耐候性のさらなる向上を図れる。
耐候性塗料の塗布量は、例えば、80~300g/cmが好ましく、200~260g/cmがより好ましい。
【0075】
本発明の樹脂組成物によれば、後述の実施例に示されるように、(A)成分と(E1)成分を含む樹脂組成物に、紫外線吸収剤として特定の紫外線吸収剤(B)を添加することにより、紫外線吸収剤の添加による硬化性の低下を抑制しつつ、紫外線吸収能を付与できる。紫外線吸収能を付与することで樹脂成形体の耐候性を高められる。
本発明の樹脂組成物は、FRP用の樹脂組成物として特に好適である。
【実施例
【0076】
以下では、実施例により、本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲は、後述する実施例に限定されず、本発明の要旨を変更しない限り、種々の変更が可能である。
【0077】
(使用原料)
<不飽和ポリエステル樹脂(A)>
(A-1):イソ系不飽和ポリエステル樹脂(日本ユピカ社製)。
<紫外線吸収剤(B)>
(B-1):トリアジン骨格を有する紫外線吸収剤、ADEKA社製品名「LA-46」。
<他の紫外線吸収剤(C)>
(C-1):ベンゾトリアゾール骨格を有する紫外線吸収剤、栄光化学社製品名「EVERSORB73」。
<光安定剤(D)>
(D1-1):官能基がN-OR型のヒンダードアミン型光安定剤、栄光化学社製品名「EVERSORB95」。
<硬化促進剤(E)>
(E1-1):ナフテン酸コバルト
<硬化剤(G)>
(G-1):有機過酸化物触媒、日油社製品名「パーメックN」
【0078】
以下の各例では、表1に示す配合で樹脂組成物を製造した。
<実施例1>
(B)成分と、(A)成分と(E)成分をミキサーで混練し、得られた混練物に硬化剤(G)を添加し、混合して樹脂組成物を得た。
<実施例2>
予め(B)成分と(D)成分を混合した。得られた混合物と(A)成分と(E)成分をミキサーで混練し、得られた混練物に硬化剤(G)を添加し、混合して樹脂組成物を得た。
<比較例1>
予め(B)成分と(C)成分と(D)成分を混合した。得られた混合物と(A)成分と(E)成分をミキサーで混練し、得られた混練物に硬化剤(G)を添加し、混合して樹脂組成物を得た。
<比較例2>
(A)成分と(E)成分をミキサーで混練し、得られた混練物に硬化剤(G)を添加し、混合して樹脂組成物を得た。
【0079】
各例で得られた樹脂組成物について下記の方法で加熱硬化試験を実施し、硬化性を評価した。結果を図2に示す。図2の横軸は加熱開始からの経過時間(分)、縦軸は樹脂組成物の温度(℃)を示す。図2の結果に基づく、最高温度到達時間(分)、最高温度(℃)、反応速度(℃/分)を表2に示す。
【0080】
<加熱硬化試験>
発熱反応により硬化する樹脂組成物を試験管に入れ、オイルバスで加熱すると、硬化が進行するにしたがって樹脂組成物の温度は上昇し、オイルバスの温度より高温になり、最高温度に達した後、放熱してオイルバスと同じ温度まで降温する過程の温度変化を測定した。
具体的には、30℃の樹脂組成物25gを試験管の中へ入れた。試験管の底から樹脂組成物の上面までの深さは70mmであった。試験管内において試験管の底から10mm上方の位置にK型熱電対をセットした。この試験管を60℃のオイルバスで加熱し、試験管内の樹脂組成物の温度の経時変化を測定した。
オイルバスでの加熱を開始してから、最高温度に到達するまでの時間(最高温度到達時間)、最高温度、加熱開始時の温度を記録し、下記式(I)により反応速度を求めた。最高温度が高いことは硬化反応が充分に進行したことの指標となる。
反応速度(単位:℃/分)=(最高温度(℃)-加熱開始時の温度(℃))/最高温度到達時間(分)・・・(I)
【0081】
【表1】
【0082】
【表2】
【0083】
比較例2は、(A)成分、(E1)成分及び硬化剤(G)のみからなるブランク試験である。
図2及び表2の結果に示されるように、実施例1、2は、(B)成分を添加したにもかかわらず、比較例2と同等の硬化性(最高温度、反応速度)を示した。
【符号の説明】
【0084】
1 繊維強化プラスチック複合管
2 内面保護層
3 内面繊維強化樹脂層
3a 第一の内面繊維強化樹脂層
3b 第二の内面繊維強化樹脂層
4 樹脂モルタル層
5 外面繊維強化樹脂層
5a 第一の外面繊維強化樹脂層
5b 第二の外面繊維強化樹脂層
6 外面保護層
図1
図2