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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-25
(45)【発行日】2025-05-08
(54)【発明の名称】流速センサ及び流速検出方法
(51)【国際特許分類】
   G01P 5/04 20060101AFI20250428BHJP
   G01F 1/28 20060101ALI20250428BHJP
【FI】
G01P5/04 F
G01F1/28 C
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2021183776
(22)【出願日】2021-11-11
(65)【公開番号】P2023071188
(43)【公開日】2023-05-23
【審査請求日】2023-12-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】100162031
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 豊彦
(74)【代理人】
【識別番号】100175721
【弁理士】
【氏名又は名称】高木 秀文
(72)【発明者】
【氏名】中平 佑
(72)【発明者】
【氏名】塚原 尚起
(72)【発明者】
【氏名】森村 克
【審査官】岡村 京輔
(56)【参考文献】
【文献】実開昭57-61562(JP,U)
【文献】特開2017-3422(JP,A)
【文献】特開平8-114617(JP,A)
【文献】特開2017-156204(JP,A)
【文献】特開2006-23240(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102005001171(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01P 5/04
G01F 1/28-1/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
管内の流体の流速を検出する流速センサであって、
前記流体の圧力を受けて変形可能な本体部と、
前記本体部の変形量を検出するセンサ部と、
を有する検出部を具備し、
前記本体部は、
前記センサ部が設けられる変形部と、
前記流体の圧力を受けて前記変形部を変形させる受圧部と、
を有し
記検出部は、
高感度検出部及び低感度検出部を含み、
前記高感度検出部の前記変形部の剛性に対する前記高感度検出部の前記受圧部の受圧面積の比は、前記低感度検出部の前記変形部の剛性に対する前記低感度検出部の前記受圧部の受圧面積の比よりも大きく、
前記高感度検出部は、前記流体の流通方向に前記低感度検出部を挟むようにして一対配置され、
前記高感度検出部と前記低感度検出部との間には、所定の隙間が形成されている、
流速センサ。
【請求項2】
管内の流体の流速を検出する流速センサであって、
前記流体の圧力を受けて変形可能な本体部と、
前記本体部の変形量を検出するセンサ部と、
を有する検出部を具備し、
前記本体部は、
前記センサ部が設けられる変形部と、
前記流体の圧力を受けて前記変形部を変形させる受圧部と、
を有し、
前記検出部は、
高感度検出部及び低感度検出部を含み、
前記高感度検出部の前記変形部の剛性に対する前記高感度検出部の前記受圧部の受圧面積の比は、前記低感度検出部の前記変形部の剛性に対する前記低感度検出部の前記受圧部の受圧面積の比よりも大きい、
前記流速センサを用いて、前記センサ部による検出結果に基づいて前記流体の流速を検出する流速検出方法であって、
塑性変形を起こした前記高感度検出部の前記センサ部による検出結果を、前記低感度検出部の前記センサ部による検出結果で補正して、前記流体の流速を検出する、
流速検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管内の流体の流速を検出する流速センサ及び流速センサを用いた流速検出方法の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水道管内の流体の流速を検出する技術が知られている。例えば特許文献1には、可撓性を有する検出板を用いて、水道管内の流量(流速)を計測する方法が開示されている。上記検出板の表面には歪ゲージが設けられている。歪ゲージは、水道管内の流体に押圧されることによる検出板のたわみを検出し、当該検出値に基づいて水道管内の流量を計測する。
【0003】
このような検出板を用いて水道管内の流量を計測する構成では、低流速での流速を精度よく検出するために検出板を比較的変形し易く形成すれば、流体の圧力により検出板が塑性変形を起こすおそれがある。このため高流速での流速を検出し難いことが考えられる。また、高流速での流速を検出するために検出板の剛性を大きく形成すれば、検出板がたわみ難くなるため、低流速での流速を検出し難いことが考えられる。このため、検出可能な流体の流速範囲が狭くなることが懸念される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平1-150859号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は以上の如き状況に鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、幅広い流速範囲で流体の流速を検出することができる流速センサ及び流速検出方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0007】
即ち、請求項1においては、管内の流体の流速を検出する流速センサであって、前記流体の圧力を受けて変形可能な本体部と、前記本体部の変形量を検出するセンサ部と、を有する検出部を具備し、前記本体部は、前記センサ部が設けられる変形部と、前記流体の圧力を受けて前記変形部を変形させる受圧部と、を有し、前記検出部は、高感度検出部及び低感度検出部を含み、前記高感度検出部の前記変形部の剛性に対する前記高感度検出部の前記受圧部の受圧面積の比は、前記低感度検出部の前記変形部の剛性に対する前記低感度検出部の前記受圧部の受圧面積の比よりも大きく、前記高感度検出部は、前記流体の流通方向に前記低感度検出部を挟むようにして一対配置され、前記高感度検出部と前記低感度検出部との間には、所定の隙間が形成されているものである。
【0008】
請求項2においては、管内の流体の流速を検出する流速センサであって、前記流体の圧力を受けて変形可能な本体部と、前記本体部の変形量を検出するセンサ部と、を有する検出部を具備し、前記本体部は、前記センサ部が設けられる変形部と、前記流体の圧力を受けて前記変形部を変形させる受圧部と、を有し、前記検出部は、高感度検出部及び低感度検出部を含み、前記高感度検出部の前記変形部の剛性に対する前記高感度検出部の前記受圧部の受圧面積の比は、前記低感度検出部の前記変形部の剛性に対する前記低感度検出部の前記受圧部の受圧面積の比よりも大きい、前記流速センサを用いて、前記センサ部による検出結果に基づいて前記流体の流速を検出する流速検出方法であって、塑性変形を起こした前記高感度検出部の前記センサ部による検出結果を、前記低感度検出部の前記センサ部による検出結果で補正して、前記流体の流速を検出するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0012】
請求項1においては、幅広い流速範囲で流体の流速を検出することができる。また、高感度検出部が塑性変形することを抑制することができる。
【0013】
請求項2においては、幅広い流速範囲で流体の流速を検出することができる。また、流体の流速を精度よく検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】管理システムの側面一部断面図。
図2】第一実施形態に係る流速センサの斜視図。
図3】(a)流速がV1未満の状態の流速センサの様子を示す側面図。(b)流速がV1以上V2未満の状態の流速センサの様子を示す側面図。(c)流速がV2以上の状態の流速センサの様子を示す側面図。
図4】(a)実際の流速の時間変化を示すグラフ。(b)流速センサの検出値の時間変化を示すグラフ。(c)高感度検出部の検出値の補正を行った例を示すグラフ。
図5】センサ部が検出したひずみと実際の流速との関係を示すグラフ。
図6】流速の検出結果の一例を示すグラフ。
図7】(a)流速センサの第一変形例の正面図。(b)流速センサの第二変形例の正面図。(c)流速センサの第三変形例の正面図。
図8】第二実施形態に係る流速センサの斜視図。
図9】(a)流速がV1未満の状態の流速センサの様子を示す側面図。(b)流速がV1である状態の流速センサの様子を示す側面図。(c)流速がV2以上の状態の流速センサの様子を示す側面図。
図10】センサ部が検出したひずみと実際の流速との関係を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下では、図中の矢印U、矢印D、矢印F及び矢印Bで示した方向を、それぞれ上方向、下方向、前方向及び後方向と定義して説明を行う。なお、以下の説明で用いる図は模式図であり、説明の便宜ため各部材の形状や寸法等を適宜誇張して示している。このため、各部材の具体的な形状や寸法等は図示されたものに限定されない。
【0018】
以下では図1を参照して、本発明の一実施形態に係る流速センサ10を用いた管理システム1について説明する。
【0019】
管理システム1は、流速センサ10を用いて流路内の流体の管理を行うものである。より詳細には、管理システム1は、水道管2(流路)内を流通する水の流速を取得して確認することができる。以下の説明では、水道管2内の水は前方から後方へ向けて流通しているものとする。
【0020】
管理システム1は、地中に埋設された水道管2の中途部において、上方に分岐した流路である分岐部3を介して水の流速を取得する。分岐部3の上部は、消火栓ボックス5内において、消火栓4と接続されている。消火栓ボックス5は、水道管2の上方に位置するように埋設されている。消火栓ボックス5は、上方へ向けて開口している。上記開口には、開閉可能な蓋(不図示)が設けられている。消火栓4は、必要に応じて水道管2を流通する水を、ホース等の供給先に供給可能なものである。消火栓4は、適宜の開閉弁を備える。消火栓4の内部には、分岐部3と連通する空間が形成される。
【0021】
管理システム1は、流速センサ10、通信部20、バッテリ30及びサーバ40を具備する。
【0022】
流速センサ10は、水道管2内の水の流速を検出するものである。なお、流速センサ10の構成の詳細な説明は後述する。
【0023】
通信部20は、流速センサ10と他の機器(本実施形態では、サーバ40)との間で情報のやり取りを行うための機器である。通信部20は、適宜の回線を介してサーバ40と情報のやり取りを行うことができる。通信部20は、適宜のリード線を介して流速センサ10と接続される。通信部20は、消火栓ボックス5内に配置される。
【0024】
バッテリ30は、流速センサ10及び通信部20の電源となるものである。バッテリ30は、リード線を介して流速センサ10及び通信部20と接続される。バッテリ30は、消火栓ボックス5内に配置される。
【0025】
サーバ40は、他の機器からの要求に応じて適宜処理を行うものである。サーバ40は、演算装置(例えば、CPU等)、記憶装置(例えば、HDD等)及び入出力装置(例えば、マウス、キーボード及びディスプレイ等)を具備する。サーバ40は、通信部20を介して流速センサ10からの信号(後述するセンサ部220、320の信号)を受信し、上記信号に基づいて水道管2内の水の流速の検出値を取得することができる。
【0026】
また、サーバ40は、上記流速の検出値を補正する処理を行うことができる。なお、補正の処理の詳細な説明は後述する。また、サーバ40は、適宜の端末(例えばPCやスマートフォン、タブレット端末等)との通信を実行可能である。
【0027】
以下では、図1から図3までを用いて、本発明の第一実施形態に係る流速センサ10の構成の詳細について説明する。図1に示すように、流速センサ10は、分岐部3に沿って上下に延びる取付棒6を介して、消火栓4に固定される。取付棒6は、上端部が消火栓4の内部に固定される。取付棒6の下端部は、分岐部3と水道管2との接続部分に位置する。流速センサ10は、取付棒6の下端部に固定され、水道管2内に位置するように設けられる。流速センサ10は、検出部100を有する。
【0028】
図2及び図3に示す検出部100は、高感度及び低感度で水の流速を検出可能なものである。検出部100は、高感度検出部200及び低感度検出部300を具備する。
【0029】
高感度検出部200は、比較的高感度で水の流速を検出するものである。高感度検出部200は、本体部210及びセンサ部220を具備する。
【0030】
図2及び図3に示す本体部210は、水道管2内を流通する水の圧力を受けて弾性変形可能な部分である。本体部210は、板面を水の流通方向(前後方向)に向けた板形状に形成される。本体部210は、正面視において上下に長尺な略矩形状に形成される。本体部210の厚さ寸法は、高感度で水の流速を検出する観点から適宜設定される。本体部210は、可撓性を有する材料で形成される。本体部210の材料としては、例えばステンレス等の金属材料を採用可能である。本体部210は、固定部211、変形部212及び受圧部213を具備する。
【0031】
固定部211は、取付棒6の下端部に固定される部分である。固定部211は、本体部210の上端部を構成する。固定部211には、固定に用いられるボルト等の止具(不図示)が挿通される孔部211aが形成される。図例では、孔部211aを左右に一対形成した例を示している。
【0032】
変形部212は、後述するセンサ部220が設けられる部分である。変形部212は、本体部210の上部のうち、固定部211の下方の部分を構成する。具体的には変形部212は、本体部210のうち、当該本体部210に設けられたセンサ部220の上下幅の範囲の部分である。
【0033】
受圧部213は、水道管2内を流通する水の圧力を受けて、変形部212を変形させる部分である。受圧部213は、本体部210のうち、変形部212よりも下方の部分を構成する。受圧部213は、分岐部3を挿通すると共に、少なくとも下部が水道管2内に位置するように設けられる(図1を参照)。
【0034】
センサ部220は、変形部212の変形量(ひずみ)を検出するものである。より詳細には、センサ部220は、本体部210が前後方向に屈曲した際の変形部212の変形量を電気信号として検出する。センサ部220としては、ひずみゲージを採用可能である。センサ部220は、ひずみを検出可能な方向(測定軸方向)を上下方向に向けて配置される。センサ部220は、変形部212の前面及び後面にそれぞれ設けられる。センサ部220は、リード線を介して、通信部20及びバッテリ30と接続される。また、センサ部220は、防水処置が施される。上記防水処置としては、例えば保護テープ等によるコーティングを採用可能である。
【0035】
低感度検出部300は、比較的低感度で水の流速を検出するものである。すなわち、低感度検出部300は、高感度検出部200よりも低い感度で水の流速を検出する。低感度検出部300は、本体部310及びセンサ部320を具備する。低感度検出部300は、高感度検出部200とは別体に形成される。低感度検出部300は、高感度検出部200の側方(左方)に配置される。なお、低感度検出部300の構成は、一部を除いて高感度検出部200の構成と概ね同様である。従って、以下では、本体部310及びセンサ部320の詳細な説明を適宜省略する。
【0036】
図2及び図3に示す本体部310は、本体部210の左方において、水道管2内を流通する水の圧力を受けて弾性変形可能な部分である。図2に示すように、本体部210及び本体部310は、左右方向(板面方向)に並べて配置される。
【0037】
本体部310は、厚さ寸法が本体部210の厚さ寸法よりも大きい点を除いて、本体部210と同様に形成される。すなわち、本体部310は、厚さ寸法を除いた他の寸法が、本体部210と同様な板形状に形成される。従って、本体部310の正面視における面積は、本体部210の正面視における面積と同様である。なお、本体部310の厚さ寸法は、低感度で水の流速を検出する観点から適宜設定される。
【0038】
本体部310は、固定部311、変形部312及び受圧部313を具備する。なお、固定部311(孔部311a)、変形部312及び受圧部313は、本体部210の各部(固定部211(孔部211a)、変形部212及び受圧部213)と概ね同様である。
【0039】
センサ部320は、変形部312の変形量(ひずみ)を検出するものである。センサ部320は、変形部312の前面及び後面にそれぞれ設けられる。センサ部320の構成は、高感度検出部200のセンサ部220と同様である。
【0040】
上述の如き流速センサ10において、高感度検出部200の本体部210は、低感度検出部300の本体部310よりも変形し易く形成される。より詳細には、高感度検出部200の変形部212の剛性に対する受圧部213の受圧面積の比は、低感度検出部300の変形部312の剛性に対する受圧部313の受圧面積の比よりも大きく形成される。剛性に対する受圧面積の比が大きい程、部材は変形し易い。
【0041】
ここで、「剛性」とは、部材の変形のし難さを示す度合いである。本体部210及び本体部310のような板形状の部材では、部材の厚さ寸法や部材の幅寸法(左右寸法)が大きい程、剛性が高くなる(変形し難くなる)。剛性が高くなれば、本体部210及び本体部310の強度は向上する一方、変形部212及び変形部312の変化量は小さくなり、センサ部220及びセンサ部320による検出が行い難くなる(感度が低くなる)。すなわち、剛性と感度とは、トレードオフの関係である。
【0042】
また、「受圧面積」とは、水道管2内を流通する水の圧力を受ける面の面積である。本実施形態では、「受圧面積」は、受圧部213及び受圧部313のうち、水道管2内に突出している部分の正面視における面積を指す。受圧面積が大きい程、部材が水の圧力を受け易くなるため、当該部材は変形し易くなる。本実施形態では、受圧部213及び受圧部313の受圧面積が同じになるように、受圧部213及び受圧部313が同じ面積だけ水道管2内に突出するように、高感度検出部200及び低感度検出部300を配置している。
【0043】
本実施形態では、高感度検出部200の本体部210(変形部212)の厚さ寸法が、低感度検出部300の本体部310(変形部312)の厚さ寸法よりも小さく、また、変形部212及び変形部312の幅寸法は同じである。従って、変形部212の剛性は、変形部312の剛性よりも小さい。
【0044】
また、本実施形態では、受圧部213及び受圧部313の受圧面積は同じである。以上から、高感度検出部200の変形部212の剛性に対する受圧部213の受圧面積の比は、低感度検出部300の変形部312の剛性に対する受圧部313の受圧面積の比よりも大きいと言える。
【0045】
以下では、上述の如き流速センサ10を用いて水道管2内を流通する水の流速を検出する様子を説明する。
【0046】
図3に示すように、流速センサ10の検出部100(高感度検出部200及び低感度検出部300)は、水道管2内を流通する水の圧力を受けて、本体部210及び本体部310が変形する。具体的には、本体部210及び本体部310は、前方から後方へ流通する水の圧力を、受圧部213及び受圧部313の前面で受ける。これにより変形する変形部212及び変形部312の変形量(ひずみ)を、センサ部220及びセンサ部320で検出する。
【0047】
上記センサ部220及びセンサ部320の検出結果は、通信部20によりサーバ40に送信される。サーバ40は、上記検出結果に基づいて流速を検出する。サーバ40は、例えば、本体部210及び本体部310の特性(寸法や剛性等)に基づいて、センサ部220及びセンサ部320が検出した変形量(ひずみ)を変換することで流速を検出する。このようにして、管理システム1は、流速センサ10を用いた流速の検出を行うことができる。
【0048】
本実施形態では、変形部212及び変形部312の前後両面にセンサ部220及びセンサ部320が設けられている。これにより、流速センサ10は、前後方向の両方の流速を検出することができる。サーバ40は、前後の各センサ部の検出値に基づき、水が流通する方向(流向)を判定する。また、サーバ40は、前後の各センサ部の検出値を用いることで、温度変化による各変形部のひずみを無効化(キャンセル)することができる。
【0049】
また、サーバ40は、水道管2内を流通する水の流速に応じて、高感度検出部200及び低感度検出部300のうち、流速の検出に適した方の検出結果を用いて流速の検出を行うことができる。
【0050】
以下では、図3から図6までを用いて、流速センサ10を用いた流速検出方法を説明する。
【0051】
まず、図3から図5までを用いて、流速センサ10の高感度検出部200及び低感度検出部300が検出可能な流速の範囲について説明する。
【0052】
図4に示すグラフは、水道管2内を流通する水の流速の時間変化を示したものである。図4(a)において二点鎖線で示す線は、水道管2内を流通する水の実際の流速を示すものである。上記実際の流速は、途中までは時間の経過と共に上昇し、その後時間の経過と共に下降している。
【0053】
図4(b)、(c)で実線及び一点鎖線で示す線(太い線)は、それぞれ高感度検出部200及び低感度検出部300のそれぞれの流速の検出値を示す。上記グラフに示す高感度検出部200及び低感度検出部300の検出値が実際の流速と一致していれば、流速センサ10による流速の検出が正確であることが示される。
【0054】
図5に示すグラフは、検出部100(高感度検出部200及び低感度検出部300)におけるセンサ部220及びセンサ部320の検出結果(ひずみ)と、実際の流速と、の関係を示すものである。図5では、高感度検出部200の塑性変形前と塑性変形後のそれぞれの検出結果を示している。なお、図5では、変形部212及び変形部312が弾性変形可能なひずみの範囲(弾性域)を実線及び一点鎖線で示し、弾性域を超える(塑性変形を起こす可能性のある)ひずみの範囲(塑性域)を破線で示している。
【0055】
図3(a)は、水道管2内の水の流速が、低流速(例えば0.1m/s程度)である場合を示している。この状態では水の圧力は小さいため、低感度検出部300の変形部312の変形量は小さい。このため、流速がある程度の大きさになるまでセンサ部320による検出を行い難い。具体的には、図4(b)に示すように、流速がV1以上となるまで、低感度検出部300の検出値は実際の流速を下回っている。また、図5に示すように、流速がV1近傍になるまで、センサ部320によるひずみの検出は行われていない。すなわち、低感度検出部300では、V1未満の流速の範囲(流速範囲)を検出し難い。
【0056】
一方、図3(a)に示すように、低流速の場合でも、高感度検出部200の変形部212の変形量は大きい。このため、センサ部220による検出を行い易い。具体的には、図4(b)に示すように、高感度検出部200の検出値は、V1未満の流速範囲(流速が上昇している部分)で、実際の流速と概ね一致している。すなわち、上記流速範囲では、高感度検出部200により流速を精度よく検出可能である。
【0057】
図3(b)は、流速が、図3(a)の流速よりも上がった場合を示している。この状態では変形部212及び変形部312の変化量は、流速がV1未満の場合と比べて大きくなる。図4(b)に示すように、流速がV2以上となるまでは、高感度検出部200及び低感度検出部300の検出値はいずれも、実際の流速と概ね一致している。すなわち、流速がV1以上V2未満の流速範囲(より詳細には、図4(b)におけるV1以上V2未満の流速範囲において、流速が時間経過と共に上昇している範囲)では、高感度検出部200及び低感度検出部300の両方で流速を精度よく検出可能である。なお、図5に示すように、V2未満の範囲では、変形部212及び変形部312のひずみは弾性域である。
【0058】
図3(c)は、流速が高流速(例えば2.0m/s程度)である場合を示している。この状態では、変形部212及び変形部312の変化量は更に大きくなる。この場合、剛性が低い高感度検出部200の変形部212は、過剰に変形するおそれがある。図5に示すように、流速がV2以上の場合、変形部212のひずみは塑性域となり、変形部212は、弾性変形可能な範囲を超えて変形する(図4(b)も参照)。例えば、流速がV2より大きい流速V3となった場合、変形部212は塑性変形を起こす。この場合、図4(b)に示すように、高感度検出部200の検出値は、実際の流速を上回る。このため、高感度検出部200では、V2より大きい流速範囲を正確に検出できない。
【0059】
一方、図5に示すように、剛性が高い低感度検出部300の変形部312は、流速がV3となっても、変形部312のひずみは弾性域であるため、センサ部320による検出を行うことができる。図4(b)に示すように、低感度検出部300の検出値は、V2以上の流速範囲で、実際の流速と概ね一致している。すなわち、上記流速範囲では、低感度検出部300により流速を精度よく検出可能である。
【0060】
上述のように、流速センサ10によれば、高感度検出部200及び低感度検出部300の両方を用いることで、幅広い流速範囲で水の流速を検出することができる。すなわち、流速が小さい場合には、比較的変形し易く低流速の検出に適した高感度検出部200を用いて流速を検出することができる。また、流速が大きい場合には、比較的変形し難く高流速の検出に適した低感度検出部300を用いて流速を検出することができる。
【0061】
ここで、図4(b)及び図5に示すように、変形部212のひずみが塑性域となり、変形部212が塑性変形を起こした場合、高感度検出部200は、実際の流速よりも所定量大きい検出値を検出し続ける。すなわち、図5に示すように、高感度検出部200は、変形部212の本来の変形量(塑性変形前の変形量)に、塑性変形により生じた変形量(塑性ひずみ)を加えた値を検出し続ける。このため、図4(b)に示すように、変形部212が塑性変形した後は、流速がV2未満になったとしても、高感度検出部200で流速を精度よく検出することは困難となる。また、V1未満の流速範囲では、高感度検出部200及び低感度検出部300の両方が正確な流速を検出できないことになる。
【0062】
そこで、管理システム1(サーバ40)は、高感度検出部200の本体部210が塑性変形を起こした場合に、高感度検出部200による検出結果を、低感度検出部300による検出結果を用いて補正することを可能としている。
【0063】
図4(c)では、塑性変形を起こした高感度検出部200の検出値を補正した例を示している。図4(c)で示す例では、時刻txにおいて高感度検出部200の検出値の誤差を補正することで、時刻tx以降の高感度検出部200の検出値を実際の流速と概ね一致させている。なお、検出結果の補正の詳細な説明は後述する。
【0064】
次に、図6を用いて、上述の如き流速センサ10を用いて実際に流速を取得した例について説明する。
【0065】
図6に示すグラフは、ある時刻における検出部100(高感度検出部200及び低感度検出部300)の検出結果(流速)を示すものである。本実施形態において、サーバ40は、所定の時間間隔(例えば15分間隔)を空けて、時刻t1、t2、t3の検出結果を取得している。なお、上記時間間隔は上述した例に限られず、種々の時間間隔を採用可能である。
【0066】
また、サーバ40は、流速センサ10の各時刻の検出値に基づいて、必要に応じて検出結果の補正を行う。
【0067】
図6では、時刻t1において高感度検出部200及び低感度検出部300により検出された流速が、V1未満の流速範囲であることが示されている。上述したように、V1未満の流速範囲では、低感度検出部300は正確な検出値を検出し難い(図4及び図5を参照)。このため、サーバ40は、V1未満の流速範囲では、上記検出結果のうち低感度検出部300の検出結果を無効とし、高感度検出部200の検出結果に基づいて流速を取得する。なお、この場合は、検出結果の補正は行われない。
【0068】
また、図6では、時刻t2及び時刻t3において高感度検出部200及び低感度検出部300により検出された流速が、V1以上V2未満の流速範囲であることが示されている。
【0069】
ここで、サーバ40は、高感度検出部200及び低感度検出部300の検出結果が流速がV1以上V2未満の場合、各検出結果に基づいて、検出結果の補正の要否の判定を行う。
【0070】
具体的には、上述したように高感度検出部200が塑性変形を起こしている場合、高感度検出部200の検出結果と低感度検出部300の検出結果とに差が生じる。サーバ40は、上記検出結果の差が所定の範囲以上である場合に、誤差が生じていると判断する。この場合、サーバ40は、検出値の補正が必要であると判断する。上記所定の範囲は、例えば低感度検出部300の検出結果に対する上記検出結果の差の割合(%)に基づいて設定可能である。
【0071】
図6では、時刻t2において高感度検出部200及び低感度検出部300により検出された流速が概ね一致しており、流速の差が所定の範囲内である例を示している。この場合、サーバ40は、検出値の補正が必要でないと判断すると共に、高感度検出部200及び低感度検出部300の検出結果に基づいて流速を取得する。なお、この場合は、サーバ40は、高感度検出部200及び低感度検出部300の検出結果のうちの一方の検出結果のみを用いて流速を取得してもよく、両方の検出結果を用いて(例えば両方の検出結果の平均値を算出して)、流速を取得してもよい。
【0072】
また、図6では、時刻t3において高感度検出部200及び低感度検出部300により検出された流速の差が所定の範囲以上である例を示している。すなわち、図6に示す例では、時刻t2から時刻t3までの間に管内の流速がV2以上となり、高感度検出部200の本体部210に塑性変形が起きたものと考えられる。この場合、サーバ40は、検出値の補正が必要であると判断すると共に、検出値の補正を行う。
【0073】
サーバ40は、検出値の補正が必要であると判断した場合、例えばディスプレイ等の入出力装置により、管理システム1の管理者や利用者等に、補正の処理を行う旨を報知する。上記報知は、入出力装置に限られず、例えば適宜の端末でも実行可能である。
【0074】
補正の処理において、サーバ40は、図5に示す塑性変形前の高感度検出部200検出値と、塑性変形後の高感度検出部200検出値と、の差である塑性ひずみを、測定誤差として算出する。
【0075】
上記測定誤差は、種々の方法により算出することができる。例えば、V1以上V2未満の流速範囲では、低感度検出部300の検出結果は概ね正確であると考えられるため、当該流速範囲における低感度検出部300と高感度検出部200の検出結果の差を、測定誤差として算出することができる。またその他、塑性変形前後の高感度検出部200の検出結果の差(図5参照)を、測定誤差として算出することができる。
【0076】
次に、サーバ40は、塑性変形後の高感度検出部200の検出値から、測定誤差を減算する。これにより、高感度検出部200の検出結果が補正される。図4(c)のtx以降では、補正後の高感度検出部200の検出結果を示している。上記補正後の検出値は、実際の流速と概ね一致している。
【0077】
上述したように、本実施形態においては、高感度検出部200及び低感度検出部300が共に正確な検出値を検出可能な流速範囲(V1以上V2未満の流速範囲)において、各検出値の差(測定誤差)を取得し、上記測定誤差の分、高感度検出部200の検出値を補正することができる。上記補正を行うことで、変形部212が塑性変形を起こした場合であっても、高感度検出部200を用いた流速の検出を続けることができる。
【0078】
また、上記補正を行った後に再び変形部212が塑性変形を起こした場合、サーバ40は、上記補正を繰り返し行う。
【0079】
なお、上述した流速測定方法は一例であり、流速センサ10を用いた流速測定方法は上述した例に限られない。例えば、上述した例では、所定の時間間隔を空けて、サーバ40が時刻t1、t2、t3の検出結果を取得する例を示したが、このような態様に限られず、サーバ40が常時、検出結果を取得する構成としてもよい。
【0080】
以上の如く、本実施形態に係る流速センサ10は、
管内の流体(水道管2内の水)の流速を検出する流速センサ10であって、
前記流体の圧力を受けて変形可能な本体部(本体部210及び本体部310)と、
前記本体部(本体部210及び本体部310)の変形量を検出するセンサ部(センサ部220及びセンサ部320)と、
を有する検出部100を具備し、
前記本体部(本体部210及び本体部310)は、
前記センサ部(センサ部220及びセンサ部320)が設けられる変形部(変形部212及び変形部312)と、
前記流体の圧力を受けて前記変形部(変形部212及び変形部312)を変形させる受圧部(受圧部213及び受圧部313)と、
を有し、
前記検出部100は、
高感度検出部200及び低感度検出部300を含み、
前記高感度検出部200の前記変形部212の剛性に対する前記高感度検出部200の前記受圧部213の受圧面積の比は、前記低感度検出部300の前記変形部312の剛性に対する前記低感度検出部300の前記受圧部313の受圧面積の比よりも大きいものである。
このように構成することにより、幅広い流速範囲で流体の流速を検出することができる。すなわち、流体の流速が小さい場合には、比較的変形し易く低流速の検出に適した高感度検出部200を用いて流速を検出することができる。また、流体の流速が大きい場合には、比較的変形し難く高流速の検出に適した低感度検出部300を用いて流速を検出することができる。このように、高感度検出部200及び低感度検出部300を用いることで、幅広い流速範囲で流体の流速を検出することができる。
【0081】
また、前記高感度検出部200の前記本体部210及び前記低感度検出部300の前記本体部310は、
それぞれ板形状に形成され、板面方向に並べて配置されるものである。このように構成することにより、流速センサ10の小型化を図ることができる。すなわち、板形状の高感度検出部200及び低感度検出部300を、板面方向に並べて配置したことで、板厚さ方向の寸法の小型化を図ることができる。
【0082】
また、本実施形態に係る流速検出方法は、
流速センサ10を用いて、前記センサ部(センサ部220及びセンサ部320)による検出結果に基づいて前記流体の流速を検出する流速検出方法であって、
前記高感度検出部200の前記センサ部220による検出結果を、前記低感度検出部300の前記センサ部320による検出結果で補正して、前記流体の流速を検出するものである。
このように構成することにより、流体の流速を精度よく検出することができる。
すなわち、比較的変形し易い高感度検出部200は、流体の流速が想定以上に高くなると塑性変形することも考えられるが、この場合に低感度検出部300の検出結果を用いて高感度検出部200の検出結果を補正することで、塑性変形後も精度よく流速の検出を行うことができる。
【0083】
なお、流速センサ10の検出部100(高感度検出部200及び低感度検出部300)の構成としては、上述した例に限られない。以下では、図7を参照して、検出部100の各変形例について説明する。
【0084】
以下に示す各変形例は、高感度検出部200の本体部210及び低感度検出部300の本体部310の厚さ寸法を、互いに同寸法とした点で、検出部100とは異なる。
【0085】
図7(a)に示す第一変形例に係る検出部100Aでは、一枚の板形状の部材を左右に分割するようにして、本体部210及び本体部310を形成している。具体的には、本体部210は、上部より下部の幅寸法(左右寸法)が大きく、本体部310は、下部より上部の幅寸法が大きく形成されている。本体部210の上部と本体部310の下部の幅寸法は同寸法であり、本体部210の下部と本体部310の上部の幅寸法は同寸法である。
【0086】
検出部100Aでは、センサ部220及びセンサ部320は、各本体部(本体部210及び本体部310)の上部に設けられている。すなわち、各本体部の上部が、変形部212及び変形部312に相当する。従って、変形部212の幅寸法は、変形部312の幅寸法よりも小さく形成される。このため、変形部212の剛性は、変形部312の剛性よりも小さい。
【0087】
また、検出部100Aでは、受圧部213及び受圧部313は、本体部210及び本体部310の下部に形成されている。従って、受圧部213の幅寸法は、受圧部313の幅寸法よりも大きく形成される。このため、受圧部213の受圧面積は、受圧部313の受圧面積よりも大きい。
【0088】
上述の如き検出部100Aにおいても、変形部212の剛性に対する受圧部213の受圧面積の比は、変形部312の剛性に対する受圧部313の受圧面積の比よりも大きい。従って、検出部100Aは、検出部100と概ね同様な効果を奏する。
【0089】
また、図7(a)に示すように、検出部100Aでは、本体部310の上部の幅寸法を大きくした分、本体部210の上部の幅寸法を小さく形成し、本体部210の下部を大きくした分、本体部310の下部の幅寸法を小さく形成し、両部材を組み合わせることで、全体として正面視矩形状に形成している。これにより、検出部100Aの幅方向のコンパクト化を図ることができる。
【0090】
図7(b)に示す第二変形例に係る検出部100Bでは、一枚の板形状の部材にスリットを入れて、本体部210及び本体部310を形成している。具体的には、板形状の部材の正面視右下の角から対角に向かって延びるスリットを形成することで、左右に分割された本体部210及び本体部310を形成している。また、検出部100Bは、共通の固定部311を有する。
【0091】
検出部100Bでは、左側の本体部210の幅寸法は、下方に向かうに従い大きく形成される。一方、右側の本体部310の幅寸法は、下方に向かうに従い小さく形成される。検出部100Bでは、各本体部(本体部210及び本体部310)の上部にセンサ部220及びセンサ部320が設けられている。すなわち、各本体部の上部が変形部212及び変形部312に相当し、上記各変形部より下方の部分が受圧部213及び受圧部313に相当する。
【0092】
検出部100Bでは、変形部212の幅寸法が変形部312の幅寸法よりも小さいため、変形部212の剛性は、変形部312の剛性よりも小さい。また、検出部100Bは、受圧部213及び受圧部313の下部において、水圧を受ける。受圧部213の下部の幅寸法は、受圧部313の下部の幅寸法よりも大きいため、受圧部213の受圧面積は、受圧部313の受圧面積よりも大きい。
【0093】
上述の如き検出部100Bにおいても、変形部212の剛性に対する受圧部213の受圧面積の比は、変形部312の剛性に対する受圧部313の受圧面積の比よりも大きい。従って、検出部100Bは、検出部100と概ね同様な効果を奏する。
【0094】
また、図7(b)に示すように、検出部100Bでは、高感度検出部200及び低感度検出部300を一体的に形成している。このため、検出部100Bの脱着等の作業性を向上させることができる。
【0095】
図7(c)に示す第三変形例に係る検出部100Cは、一枚の板形状の部材に適宜の切欠き等を形成することで形成される。具体的には、検出部100Cは、共通の固定部211を構成する上端部100Caの下方に、上端部100Caよりも幅寸法が小さい幅狭部100Cbが形成されている。また、検出部100Cは、幅狭部100Cbの下方に、上端部100Caよりも幅寸法が大きい幅広部100Ccが形成されている。幅広部100Ccには、下端部から上方に向かって延びると共に、左右方向に間隔を空けて形成される一対のスリットが形成される。上記一対のスリットが形成されたことで、各スリットの間に中央部100Cdが形成される。中央部100Cdの幅寸法は、幅狭部100Cbの幅寸法と同じである。
【0096】
検出部100Cでは、幅狭部100Cbにセンサ部220が設けられる。すなわち、幅狭部100Cbのうちセンサ部220が設けられた部分が変形部212に相当する。また、検出部100Cでは、変形部212より下方の部分(幅広部100Cc全体を含む部分)が受圧部213に相当する。
【0097】
また、検出部100Cでは、中央部100Cdにセンサ部320が設けられる。すなわち、中央部100Cdのうちセンサ部320が設けられた部分が変形部312に相当する。また、検出部100Cでは、変形部312より下方の部分が受圧部313に相当する。すなわち、検出部100Cでは、高感度検出部200の本体部210の受圧部213に、低感度検出部300の本体部310(変形部312及び受圧部313)が含まれる。
【0098】
検出部100Cは、変形部212の幅寸法と変形部312の幅寸法とが同じである。また、受圧部213の受圧面積は、受圧部313の受圧面積よりも大きい。
【0099】
上述の如き検出部100Cにおいても、変形部212の剛性に対する受圧部213の受圧面積の比は、変形部312の剛性に対する受圧部313の受圧面積の比よりも大きい。従って、検出部100Cは、検出部100と概ね同様な効果を奏する。
【0100】
また、図7(c)に示すように、検出部100Cでは、高感度検出部200及び低感度検出部300を一体的に形成している。このため、検出部100Cの脱着等の作業性を向上させることができる。
【0101】
また、以下では、本願発明の第二実施形態について説明する。
【0102】
上述の第一実施形態では、図2に示すように、高感度検出部200及び低感度検出部300を、左右方向に並べて配置するものとしたが、図8及び図9に示す第二実施形態のように、高感度検出部200及び低感度検出部300を前後方向に配置することも可能である。
【0103】
本発明の第二実施形態に係る流速センサ10Aは、図8に示すように、低感度検出部300を挟むようにして、前後一対の高感度検出部200を配置している。なお、流速センサ10Aの高感度検出部200及び低感度検出部300は、第一実施形態に係る流速センサ10の高感度検出部200及び低感度検出部300と概ね同様である。
【0104】
高感度検出部200と低感度検出部300との間には、所定の隙間が形成されている。上記所定の隙間は、対向するセンサ部(センサ部220及びセンサ部320)同士が接触することなく、高感度検出部200の変形量が弾性域の範囲内で、高感度検出部200が低感度検出部300に接触することができるように形成される(図9(b)、(c)を参照)。上記隙間は、例えば高感度検出部200と低感度検出部300との間にスペーサを配置することで形成可能である。
【0105】
図9(a)に示すように、水道管2内の水の流速が比較的小さい場合は、一対の高感度検出部200のうち、水の水圧を受ける方(上流側)の本体部210が、低感度検出部300との隙間の範囲で変形する。また、図9(b)、(c)に示すように、流速が比較的大きい場合は、上記本体部210が、低感度検出部300の本体部310に接触する。また、本体部310は、本体部210を介した圧力を受けることで、本体部210と共に変形する。
【0106】
以下では、図9及び図10を用いて、異なる流速ごとに場合分けして流速センサ10Aによる流速検出方法を説明する。具体的には、比較的小さい流速V1と、比較的大きい流速V2を基準として流速検出方法を説明する。
【0107】
図9(a)は、水道管2内の水の流速がV1未満である場合を示している。この状態では水の圧力は小さいため、高感度検出部200の本体部210は、低感度検出部300との隙間の範囲で変形する。なお、図10に示すように、V1未満の流速範囲では、低感度検出部300は殆ど変形しない。このため、サーバ40は、V1未満の流速範囲では、低感度検出部300の検出結果を無効とし、高感度検出部200の検出結果に基づいて流速を取得する。
【0108】
図9(b)は、水道管2内の水の流速がV1である場合を示している。この状態では、本体部210が、本体部310に接触する。
【0109】
水道管2内の水の流速がV1より大きい場合(例えばV2)、図9(c)及び図10に示すように、本体部310は、本体部210を介して水圧を間接的に受けることで変形する。サーバ40は、V1より大きい流速範囲では、低感度検出部300の検出結果に基づいて流速を取得する。
【0110】
上述の如き流速センサ10Aでは、高感度検出部200が所定量以上変形すると低感度検出部300に接触し、変形が抑制されるため、当該高感度検出部200が過剰に変形して塑性変形することを抑制することができる。
【0111】
また、本実施形態では、前後に低感度検出部300を挟むようにして、一対の高感度検出部200を配置しているため、前後方向の両方の流速を検出することができる。
【0112】
なお、上記流速センサ10Aでは、本体部210及び本体部310の形状を、第一実施形態に係る流速センサ10の本体部210及び本体部310の形状と同様な構成としたが、このような態様に限られない。例えば、高感度検出部200の感度をより向上させる観点から、本体部210の変形部212の幅寸法を、受圧部213の幅寸法よりも小さくしてもよい。その他、本体部210及び本体部310の形状としては種々の形状を採用可能である。
【0113】
また、本実施形態においても、高感度検出部200による検出結果を、低感度検出部300による検出結果で補正して流速を取得するように構成してもよい。
【0114】
以上の如く、本実施形態に係る流速センサ10Aは、
前記高感度検出部200は、前記流体の流通方向に前記低感度検出部300を挟むようにして一対配置され、
前記高感度検出部200と前記低感度検出部300との間には、所定の隙間が形成されているものである。
このように構成することにより、高感度検出部200が塑性変形することを抑制することができる。すなわち、高感度検出部200が所定量以上変形すると低感度検出部300に接触し、変形が抑制されるため、当該高感度検出部200が過剰に変形して塑性変形することを抑制することができる。
【0115】
以上、本発明の各実施形態を説明したが、本発明は上記構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能である。
【0116】
例えば、上記各実施形態では、流速センサ10(10A)を消火栓4に設けた例を示したが、流速センサ10(10A)の設置対象は消火栓4に限定されるものではなく、バルブ等の種々の設備に適用可能である。
【0117】
また、上記実施形態では、センサ部220及びセンサ部320を、本体部210及び本体部310の両面に設けた例を示したが、このような態様に限られない。例えば、センサ部220及びセンサ部320を、本体部210及び本体部310の前後方向一方面にのみ設けてもよい。
【0118】
また、上記第二実施形態では、センサ部220及びセンサ部320を、高感度検出部200及び低感度検出部300の両方に設けた例を示したが、このような態様に限られない。例えば、高感度検出部200のみにセンサ部220を設け、低感度検出部300にはセンサ部320を設けないようにしてもよい。この場合は、サーバ40は、センサ部220が検出した検出値のみを用いて流速を取得する。
【0119】
また、上記実施形態では、流速センサ10(10A)の本体部210及び本体部310を板形状に形成した例を示したが、本体部210及び本体部310の形状は板形状に限定されるものではなく、任意の形状に形成することが可能である。
【0120】
また、上記実施形態では、流速センサ10(10A)を、取付棒6に固定した例を示したが、このような態様に限られない。例えば、取付棒6を介さずに、流速センサ10(10A)を消火栓4に直接固定してもよい。
【0121】
また、上記実施形態では、流速センサ10(10A)を、水道管2内の水の流速を検出するものとしたが、このような態様に限られない。流速センサ10(10A)は、種々の管内の流体の流速を検出可能である。
【符号の説明】
【0122】
10 流速センサ
100 検出部
200 高感度検出部
300 低感度検出部
図1
図2
図3
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図5
図6
図7
図8
図9
図10