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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-25
(45)【発行日】2025-05-08
(54)【発明の名称】コンバイン
(51)【国際特許分類】
   A01F 12/32 20060101AFI20250428BHJP
   A01D 41/127 20060101ALI20250428BHJP
   A01F 12/48 20060101ALI20250428BHJP
【FI】
A01F12/32 C
A01D41/127
A01F12/48 B
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022106255
(22)【出願日】2022-06-30
(65)【公開番号】P2024005844
(43)【公開日】2024-01-17
【審査請求日】2024-06-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】100129643
【弁理士】
【氏名又は名称】皆川 祐一
(72)【発明者】
【氏名】堀 高範
(72)【発明者】
【氏名】林 壮太郎
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 直
(72)【発明者】
【氏名】堀内 真幸
【審査官】小林 謙仁
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-193944(JP,A)
【文献】特開2021-087417(JP,A)
【文献】特開2022-007070(JP,A)
【文献】特開2015-050947(JP,A)
【文献】特開2022-007916(JP,A)
【文献】特開2021-003055(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0013776(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01F 12/30-12/54
A01D 41/00-41/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
脱穀部で作物を脱穀して得られる穀粒および夾雑物を含む選別対象物を選別部に漏下させ、前記選別部で前記選別対象物から穀粒を選別して、その選別された1番物を回収し、前記選別部で前記1番物を除いた前記選別対象物から穀粒を選別して、その選別された2番物を前記選別部に還元する脱穀装置と、
前記2番物の還元流量と相関する値を検出する2番流量センサと、
制御装置と、を含み、
前記選別部は、開度に応じて前記2番物の選別量が変化する第2チャフシーブ、を備えており、
前記制御装置は、
前記還元流量の目標値を設定し、前記2番流量センサの検出値から得られる前記還元流量が前記目標値に一致するように、前記選別部を制御し、
前記第2チャフシーブの開度に応じて前記目標値を変更する、コンバイン。
【請求項2】
前記選別部は、開度に応じて前記1番物の選別量が変化する第1チャフシーブ、を備えており、
前記制御装置は、前記2番流量センサの検出値から得られる前記還元流量が前記目標値よりも小さい場合、前記第1チャフシーブの開度を小さくし、前記2番流量センサの検出値から得られる前記還元流量が前記目標値よりも大きい場合、前記第1チャフシーブの開度を大きくする、請求項1に記載のコンバイン。
【請求項3】
前記選別部は、前記選別対象物の風選のための選別風を発生させる唐箕、を備えており、
前記制御装置は、前記2番流量センサの検出値から得られる前記還元流量が前記目標値よりも小さい場合、前記唐箕による選別風の風量を小さくし、前記2番流量センサの検出値から得られる前記還元流量が前記目標値よりも大きい場合、前記唐箕による選別風の風量を大きくする、請求項に記載のコンバイン。
【請求項4】
前記制御装置は、作物別に前記目標値を設定する、請求項1に記載のコンバイン。
【請求項5】
前記目標値の変更の指示を入力する入力装置、をさらに含み、
前記制御装置は、前記入力装置から入力される指示に応じて前記目標値を変更する、請求項1に記載のコンバイン。
【請求項6】
前記脱穀装置を含む機体を支持し、動力源の動力により駆動される左右1対の走行装置、をさらに含み、
前記制御装置は、前記第1チャフシーブの開度が最大の状態で、前記2番流量センサの検出値から得られる前記還元流量が前記目標値よりも所定量以上大きい場合、前記走行装置による車速を低下させる、請求項2に記載のコンバイン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンバインに関する。
【背景技術】
【0002】
コンバインでは、圃場に植立している作物が刈取装置により刈られ、その刈られた作物が刈取装置から脱穀装置に搬送されて、脱穀装置で作物の穀稈から穀粒が外され、穀粒が選別されて穀粒タンクに搬送される。
【0003】
脱穀装置では、具体的に、穀稈が扱室内に供給されて、扱胴の回転により、穀稈が扱室の供給側から排出口側に向けて移送されながら、穀稈から穀粒が外される。穀稈から外れた穀粒は、切れ稈などの夾雑物とともに受網を漏下し、選別対象物として、たとえば、第1チャフシーブおよび第2チャフシーブ上に落下する。第1チャフシーブの下方には、グレンシーブが備えられている。選別対象物が第1チャフシーブ上に落下する過程および選別対象物が第1チャフシーブおよびグレンシーブを漏下する過程で、選別対象物から穀粒が選別され、その選別された1番物が穀粒タンクに搬送される。第1チャフシーブから漏下せずに第1チャフシーブ上に残った選別対象物は、第1チャフシーブ上から第2チャフシーブ上に移送される、選別対象物が第2チャフシーブ上に落下する過程および選別対象物が第2チャフシーブを漏下する過程で、選別対象物から穀粒が選別され、その選別された2番物は、第1チャフシーブ上に落下する位置に還元される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2022-7916号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
刈取時のコンバインの車速に応じて、単位時間当たりに脱穀装置に供給される作物量が変化するので、従来のコンバインでは、その車速に応じて、第1チャフシーブの開度および唐箕の風量が設定される。すなわち、刈取時のコンバインの車速が大きいほど、第1チャフシーブの開度および唐箕の風量がそれぞれ大きい値に設定される。これにより、脱穀装置に供給される作物量に応じた処理速度で脱穀処理(脱穀および選別)が行われる。
【0006】
ところが、圃場条件によっては、脱穀装置の選別性能が悪化する場合がある。たとえば、反収が低い圃場の作物が高車速で刈り取られると、脱穀装置に供給される作物量に対して第1チャフシーブの開度が大きいために、1番物に含まれる夾雑物の割合が大きくなる。
【0007】
本発明の目的は、圃場条件による選別性能の悪化を抑制できる、コンバインを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の目的を達成するため、本発明に係るコンバインは、脱穀部で作物を脱穀して得られる穀粒および夾雑物を含む選別対象物を選別部に漏下させ、選別部で選別対象物から穀粒を選別して、その選別された1番物を回収し、選別部で1番物を除いた選別対象物から穀粒を選別して、その選別された2番物を選別部に還元する脱穀装置と、2番物の還元流量と相関する値を検出する2番流量センサと、制御装置とを含み、制御装置は、還元流量の目標値を設定し、2番流量センサの検出値から得られる還元流量が目標値に一致するように、選別部を制御する。
【0009】
この構成によれば、2番流量センサによって、2番物の還元流量に相関する値が検出される。一方、制御装置によって、2番物の還元流量の目標値が設定される。そして、制御装置によって、2番流量センサの検出値から得られる還元流量が目標値に一致するように、選別部が制御される。これにより、2番物の還元流量が目標値に調整されるので、脱穀装置内に貯まっている選別対象物の量が安定する。その結果、脱穀装置に供給される作物量に応じた処理速度で選別対象物の選別を行うことができながら、圃場条件による選別性能の悪化を抑制することができる。
【0010】
選別部は、開度に応じて1番物の選別量が変化するチャフシーブを備えており、制御装置は、2番流量センサの検出値から得られる還元流量が目標値よりも小さい場合、チャフシーブの開度を小さくし、2番流量センサの検出値から得られる還元流量が目標値よりも大きい場合、チャフシーブの開度を大きくしてもよい。
【0011】
この構成では、チャフシーブの開度の調節により、2番物の還元流量を目標値に調整することができる。
【0012】
選別部は、選別対象物の風選のための選別風を発生させる唐箕を備えており、制御装置は、2番流量センサの検出値から得られる還元流量が目標値よりも小さい場合、唐箕による選別風の風量を小さくし、2番流量センサの検出値から得られる還元流量が目標値よりも大きい場合、唐箕による選別風の風量を大きくしてもよい。
【0013】
この構成では、唐箕が発生する選別風の風量の調節により、2番物の還元流量を目標値に調整することができる。
【0014】
作物ごとに適切なチャフシーブの開度および選別風の風量が異なるので、制御装置は、作物別に目標値を設定することが好ましい。
【0015】
コンバインは、目標値の変更の指示を入力する入力装置をさらに含み、制御装置は、入力装置から入力される指示に応じて目標値を変更してもよい。
【0016】
この構成により、ユーザが目標値を変更することができ、その変更により、選別処理速度および選別性能(1番物に含まれる夾雑物の割合)を調整することができる。
【0017】
選別部は、開度に応じて2番物の選別量が変化するチャフシーブを備えており、制御装置は、チャフシーブの開度に応じて目標値を変更してもよい。
【0018】
当該チャフシーブの開度によって2番物の選別量が変化するので、当該チャフシーブの開度に応じて目標値が変更されることにより、脱穀装置内に貯まっている選別対象物の量を安定に保つことができる。
【0019】
コンバインは、脱穀装置を含む機体を支持し、動力源の動力により駆動される左右1対の走行装置をさらに含み、制御装置は、チャフシーブの開度が最大の状態で、2番流量センサの検出値から得られる還元流量が目標値よりも所定量以上大きい場合、走行装置による車速を低下させてもよい。
【0020】
これにより、脱穀装置に供給される作物量が低減し、2番物の還元流量が低減するので、選別ロスの増加を抑制することができる。
【0021】
所定量は、0であってもよいし、0よりも大きい値であってもよい。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、2番物の還元流量が目標値に調整されるので、脱穀装置内に貯まっている選別対象物の量が安定する。その結果、脱穀装置に供給される作物量に応じた処理速度で選別対象物の選別を行うことができながら、圃場条件による選別性能の悪化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の一実施形態に係るコンバインの右側面図である。
図2】コンバインの上面図である。
図3】脱穀装置を前後方向に沿った切断面で切断したときの断面を左から見た断面図である。
図4】脱穀装置および搬送装置の正面図であり、それらとともに穀粒タンクを断面で示す。
図5】搬送装置を前後方向に沿った切断面で切断した断面を右から見た断面図である。
図6】脱穀装置を左右方向に沿った切断面で切断した断面図である。
図7】コンバインの電気的構成の要部を示すブロック図である。
図8】目標値設定処理の流れを示すフローチャートである。
図9】2番還元流量制御の流れを示すフローチャートである。
図10】車速制御の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下では、本発明の実施の形態について、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0025】
<コンバインの全体構成>
図1は、本発明の一実施形態に係るコンバイン1の右側面図である。図2は、コンバイン1の上面図である。
【0026】
コンバイン1は、圃場を走行しながら作物の刈り取りおよび作物からの脱穀を行う農業機械である。
【0027】
コンバイン1は、圃場などの不整地を走破する能力を有する走行装置として、左右1対のクローラ走行装置2を採用している。左右のクローラ走行装置2により、機体フレーム3が支持され、クローラ走行装置2には、機体フレーム3上に設けられたエンジン4の動力がトランスミッション5を介して伝達される。
【0028】
また、機体フレーム3上には、キャビン6、脱穀装置7および穀粒タンク8が設けられている。クローラ走行装置2および機体フレーム3の前方には、作物を刈り取る刈取装置9が設けられている。脱穀装置7と刈取装置9との間には、刈取装置9により刈り取られた作物を脱穀装置7まで搬送するフィーダ11が設けられている。
【0029】
キャビン6は、機体フレーム3の前端部上に配置されている。キャビン6は、その内部にユーザが搭乗する空間を提供し、その空間内には、たとえば、ユーザが着座する運転席12、ユーザが操作する操作レバー13などが配置されている。キャビン6の右側面には、開閉可能なドア14が設けられており、ユーザは、ドア14を開いて、キャビン6内に乗り込むことができる。
【0030】
脱穀装置7は、キャビン6の左後方に配置されている。穀粒タンク8は、キャビン6の後方かつ脱穀装置7の右方に配置されている。脱穀装置7では、フィーダ11により搬送されてくる作物の穀稈から穀粒が外される。脱穀装置7と穀粒タンク8との間には、搬送装置15が設けられており、脱穀装置7で脱穀された穀粒は、搬送装置15により脱穀装置7から穀粒タンク8に搬送されて、穀粒タンク8に貯留される。穀粒タンク8には、アンローダ16が接続されており、穀粒タンク8に貯留された穀粒は、アンローダ16により、穀粒タンク8から機外に排出することができる。
【0031】
<脱穀装置>
図3は、脱穀装置7を前後方向に沿った切断面で切断したときの断面を左から見た断面図である。
【0032】
脱穀装置7は、脱穀部21および選別部22を備えている。
【0033】
脱穀部21は、脱穀装置7の上部に設けられる扱室23に、扱胴24および受網(コンケーブ)25を備えている。
【0034】
扱室23は、左側板31(図2参照)、右側板32、前側板33および後側板34により側方が取り囲まれ、天板35により上方が閉塞されて、下方に開放されている。フィーダ11により搬送されてくる作物は、前側板33に形成されている作物投入口36を介して、扱室23に投入される。
【0035】
扱胴24は、扱室23に収容されて、前側板33および後側板34により、前後方向に延びる回転軸線を中心に回転可能に支持されている。扱胴24には、多数の扱歯37が回転径方向に延びるように設けられている。扱胴24の回転に伴って、扱室23に投入された作物の穀稈から穀粒が扱歯37により扱き落とされる。
【0036】
受網25は、扱胴24の下方に、扱室23を下方から閉塞するように設けられている。受網25は、扱胴24の周方向に沿った半円筒状に形成されている。穀稈から扱き落とされた穀粒は、受網25に受けられる。また、受網25は、格子状の網目を有しており、受網25に受けられた穀粒は、比較的小さな切れ稈などの夾雑物とともに、受網25を漏下する。
【0037】
選別部22は、扱室23の下方に設けられるシーブケース41内に、グレンパン42、第1チャフシーブ43、第2チャフシーブ44およびグレンシーブ45を備えている。
【0038】
グレンパン42は、シーブケース41の前端部に配置されている。第1チャフシーブ43は、グレンパン42の後方に配置されている。第2チャフシーブ44は、第1チャフシーブ43の後方に配置されている。グレンシーブ45は、第1チャフシーブ43の下方に配置されている。
【0039】
また、選別部22は、選別風を発生させる唐箕46を備えている。唐箕46は、シーブケース41の前下方に配置されており、唐箕46が発生する選別風は、シーブケース41内を後方に向かって通過する。
【0040】
脱穀部21の受網25を漏下する穀粒および夾雑物からなる選別対象物は、シーブケース41内に入り、グレンパン42、第1チャフシーブ43または第2チャフシーブ44上に落下する。選別対象物を搬送および篩い選別するために、シーブケース41が揺動されて、グレンパン42、第1チャフシーブ43、第2チャフシーブ44およびグレンシーブ45が揺動される。
【0041】
グレンパン42上に落下した選別対象物は、グレンパン42の揺動により、後方に移送されながら、相対的に比重の小さい夾雑物と相対的に比重の大きい穀粒とに上下に層分けされる。下層の穀粒は、グレンパン42上から落下して、第1チャフシーブ43上に移送される。
【0042】
第1チャフシーブ43には、複数の板状のチャフリップ47が前後方向に並べて設けられている。各チャフリップ47は、左右方向に延びる軸線を中心に揺動可能に構成されており、その揺動により傾斜角度が変更される。各チャフリップ47の傾斜角度の変更により、チャフリップ47の間隔が増減し、第1チャフシーブ43の開度が変わる。第1チャフシーブ43の揺動により、第1チャフシーブ43上の選別対象物が後方に移送されながら篩い選別され、チャフリップ47の間隔よりも小さい選別対象物がチャフリップ47間から漏下する。また、穀粒よりも比重の小さい選別対象物が唐箕46からの選別風により第1チャフシーブ43上から後方に吹き飛ばされる。
【0043】
第1チャフシーブ43から漏下する選別対象物は、グレンシーブ45上に落下する。この落下の過程において、唐箕46からの選別風により選別対象物が風選され、穀粒よりも比重の小さい夾雑物が後方に吹き飛ばされる。グレンシーブ45は、たとえば、格子状の網目を有している。グレンシーブ45の揺動により、グレンシーブ45上の選別対象物が篩い選別され、グレンシーブ45の網目よりも小さい選別対象物が網目から漏下する。グレンシーブ45に残った選別対象物は、唐箕46からの選別風により後方に吹き飛ばされる。
【0044】
第1チャフシーブ43上に残った選別対象物は、第1チャフシーブ43の後端から第2チャフシーブ44上に落下する。第2チャフシーブ44には、複数の板状のチャフリップ48が前後方向に並べて設けられている。各チャフリップ48は、左右方向に延びる軸線を中心に揺動可能に構成されており、その揺動により傾斜角度が変更される。各チャフリップ48の傾斜角度の変更により、前後方向に隣り合うチャフリップ48の間隔が増減し、第2チャフシーブ44の開度が変わる。第2チャフシーブ44の揺動により、第2チャフシーブ44上の選別対象物が後方に移送されながら篩い選別され、チャフリップ48の間隔よりも小さい選別対象物がチャフリップ48間から漏下する。第2チャフシーブ44上に残った選別対象物は、唐箕46からの選別風により後方に吹き飛ばされる。
【0045】
脱穀装置7には、選別部22の下方に、1番物回収部51および2番物回収部52が備えられている。
【0046】
グレンシーブ45から漏下する選別対象物は、唐箕46からの選別風により風選される。この風選により、穀粒よりも比重の小さい選別対象物が後方に吹き飛ばされ、穀粒を主に含む選別対象物が1番物として1番物回収部51に回収される。1番物回収部51には、左右方向に延びる回転軸線を中心に回転するスクリュオーガ53が備えられており、1番物回収部51に回収される1番物は、スクリュオーガ53により搬送装置15に搬送される。
【0047】
第2チャフシーブ44から漏下する選別対象物は、2番物として、2番物回収部52に回収される。2番物回収部52に回収される2番物は、1番物として回収されなかった穀粒を主に含み、還元装置54により、受網25の外側で第1チャフシーブ43の上方の位置に設けられる還元口55から選別部22に還元される。これにより、2番物は、選別部22において、1番物として回収される選別対象物(主に穀粒)と、1番物として回収されない選別対象物(主に夾雑物)とに再選別される。
【0048】
<搬送装置>
図4は、脱穀装置7および搬送装置15の正面図であり、それらとともに穀粒タンク8を断面で示す。図5は、搬送装置15を前後方向に沿った切断面で切断した断面を右から見た断面図である。
【0049】
搬送装置15は、脱穀装置7と穀粒タンク8との間に設けられている。搬送装置15は、脱穀装置7の1番物回収部51から搬送されてくる1番物を上方に搬送する縦搬送部61と、縦搬送部61により送られてくる1番物を右方に搬送して穀粒タンク8内に投入する横搬送部62とを備えている。
【0050】
縦搬送部61は、上下方向に延びる縦搬送ケース63を備えている。縦搬送ケース63内の下端部には、駆動スプロケット64が左右方向に延びる回転軸線を中心に回転可能に設けられ、縦搬送ケース63内の上端部には、従動スプロケット65が左右方向に延びる回転軸線を中心に回転可能に設けられている。駆動スプロケット64および従動スプロケット65には、無端状のチェーン66が巻き掛けられており、チェーン66には、複数のバケット67が一定間隔で取り付けられている。
【0051】
横搬送部62は、縦搬送ケース63の上端部に結合された横搬送ケース71を備えている。横搬送ケース71は、左右方向に延び、穀粒タンク8の左側壁72に挿通されて、左端部が穀粒タンク8内に配置されている。横搬送ケース71の右端部は、連通口73を介して、縦搬送ケース63内と連通している。横搬送ケース71の左端部の下面は、排出口74として、下方に開放されている。横搬送ケース71内には、左右方向に延びる回転軸線を中心に回転するスクリュオーガ75が備えられている。
【0052】
脱穀装置7の1番物回収部51からスクリュオーガ53により搬送されてくる1番物は、縦搬送ケース63内に搬入される。駆動スプロケット64に入力される駆動力により、駆動スプロケット64が回転し、その回転に伴って、チェーン66が周回移動し、従動スプロケット65が回転する。チェーン66の周回移動により上昇するバケット67に1番物が積載され、その1番物を積載したバケット67が従動スプロケット65の周囲で移動方向が反転される際に、バケット67に積載されている1番物がバケット67から連通口73を通して横搬送ケース71内に放出される。横搬送ケース71に受け取られた1番物は、スクリュオーガ75の回転により、横搬送ケース71内を排出口74に向けて搬送され、排出口74から穀粒タンク8内に排出される。
【0053】
<1番流量センサ>
搬送装置15の横搬送ケース71に、縦搬送部61から横搬送部62に放出される1番物の流量を検出する1番流量センサ81が取り付けられている。1番流量センサ81は、アクチュエータ82を備えている。アクチュエータ82は、左右方向に延びる回動軸線を中心に揺動可能に設けられて、その先端部が連通口73に対向するように配置されている。
【0054】
縦搬送部61のバケット67に積載されている1番物が連通口73を通して横搬送ケース71内に放出されると、その放出された1番物がアクチュエータ82に衝突し、アクチュエータ82が揺動する。1番流量センサ81は、ポテンショメータを内蔵しており、アクチュエータ82の揺動角度に応じた検出信号(電圧)を出力する。
【0055】
<2番流量センサ>
図6は、脱穀装置7を左右方向に沿った切断面で切断した断面図である。
【0056】
脱穀装置7の左側板31の内面には、脱穀装置7の2番物回収部52から選別部22に還元される2番物の流量を検出する2番流量センサ83が取り付けられている。2番流量センサ83は、アクチュエータ84を備えている。アクチュエータ84は、前後方向に延びる回動軸線を中心に揺動可能に設けられて、その先端部が還元口55に対向するように配置されている。
【0057】
還元装置54により、2番物回収部52から選別部22に還元される2番物が還元口55を通して放出されると、その放出された2番物がアクチュエータ84に衝突し、アクチュエータ84が揺動する。2番流量センサ83は、ポテンショメータを内蔵しており、アクチュエータ84の揺動角度に応じた検出信号(電圧)を出力する。
【0058】
<コンバインの電気的構成の要部>
図7は、コンバイン1の電気的構成の要部を示すブロック図である。
【0059】
コンバイン1には、コンバイン1の各部を制御するため、制御装置91が搭載されている。制御装置91は、マイコン(マイクロコントローラ)を備えており、マイコンには、たとえば、CPU、フラッシュメモリなどの不揮発性メモリおよびDRAM(Dynamic Random Access Memory)などの揮発性メモリが内蔵されている。
【0060】
制御装置91には、1番流量センサ81および2番流量センサ83の各検出信号が入力される。また、制御装置91には、各部の制御に必要な情報、たとえば、コンバイン1の車速などが入力される。
【0061】
制御装置91に内蔵された不揮発性メモリには、1番流量センサ81のアクチュエータ82の揺動角度と横搬送ケース71内に放出される1番物の流量との関係を示すマップまたは式が記憶されており、制御装置91は、そのマップまたは式に基づいて、1番流量センサ81の検出信号が表す揺動角度に応じた1番物の流量を1番回収流量として推定する。また、制御装置91に内蔵された不揮発性メモリには、2番流量センサ83のアクチュエータ84の揺動角度と選別部22に還元される2番物の流量との関係を示すマップまたは式が記憶されており、制御装置91は、そのマップまたは式に基づいて、2番流量センサ83の検出信号が表す揺動角度に応じた2番物の流量を2番還元流量として推定する。
【0062】
制御装置91は、脱穀装置7を制御する機能を有している。脱穀装置7の制御については、後述する。
【0063】
また、制御装置91は、エンジン4およびトランスミッション5を制御することにより、クローラ走行装置2に伝達される駆動力を変更して、クローラ走行装置2によるコンバイン1の車速を制御する機能を有している。
【0064】
キャビン6内には、運転席12に着座したユーザが操作可能な位置に、タッチパネル92が配置されている。タッチパネル92は、たとえば、液晶表示器などのディスプレイ上に感圧式または静電容量式の透明フィルムスイッチを重ねて構成されている。タッチパネルには、各種の情報や操作ボタンなどの画像が表示される。ユーザが操作ボタンをタッチ操作することにより、そのタッチ操作された操作ボタンの種類に応じた指示がタッチパネル92に受け付けられる。タッチパネル92に指示が受け付けられると、その指示の内容に応じた信号がタッチパネル92から制御装置91に入力される。また、ユーザは、タッチ操作により、数値を入力することができる。数値が入力されると、その入力された数値に応じた信号がタッチパネル92から制御装置91に入力される。
【0065】
<目標値設定処理>
図8は、目標値設定処理の流れを示すフローチャートである。
【0066】
脱穀装置7を制御するため、制御装置91により、目標値設定処理が実行される。
【0067】
目標値設定処理では、コンバイン1による刈取対象の作物が指定されたか否かが判断される(ステップS11)。コンバイン1による作物の刈り取りの開始前に、ユーザによりタッチパネル92がタッチ操作されて、刈取対象の作物が指定される。刈取対象の作物には、米、大麦および小麦が含まれる。刈取対象の作物が指定されずに、作物の刈り取りが開始された場合、制御装置91により、刈取対象の作物が予め定められた作物に自動的に指定されてもよい。
【0068】
刈取対象の作物が指定されると(ステップS11のYES)、その指定された作物に応じた2番物の還元流量の目標値が設定される(ステップS12)。
【0069】
その後、目標値を変更する指示が入力されたか否かが判断される(ステップS13)。目標値を変更する指示は、ユーザがタッチパネル92をタッチ操作することにより、変更後の目標値または目標値の変更量に応じた信号とともに、タッチパネル92から制御装置91に入力される。
【0070】
目標値を変更する指示が入力された場合(ステップS13のYES)、先に設定された目標値が指示に従って変更されることにより(ステップS14)、目標値が再設定される。そして、第2チャフシーブ44の開度(以下、「Rチャフ開度」という。)が基準値であるか否かが判断される(ステップS15)。
【0071】
目標値の設定から所定時間が経過しても、目標値を変更する指示が入力されない場合(ステップS13のNO)、目標値が変更されずに、Rチャフ開度が基準値であるか否かが判断される(ステップS15)。
【0072】
Rチャフ開度が基準値である場合(ステップS15のYES)、目標値設定処理が終了される。
【0073】
2番還元流量の目標値は、作物別に、Rチャフ開度が基準値である状態で設定されている。そのため、Rチャフ開度が基準値からずれていると、2番還元流量の目標値を適切に設定することができない。そこで、たとえば、車速に応じてRチャフ開度が変更されて、Rチャフ開度が基準値からずれている場合(ステップS15のNO)、先に設定された目標値がRチャフ開度に応じて変更されることにより(S16)、目標値が再設定される。具体的には、Rチャフ開度が基準値よりも小さい場合、そのRチャフ開度に応じて目標値が下げられる。一方、Rチャフ開度が基準値よりも大きい場合、そのRチャフ開度に応じて目標値が上げられる。目標値の変更後、目標値設定処理が終了される。
【0074】
<2番還元流量制御>
図9は、2番還元流量制御の流れを示すフローチャートである。
【0075】
コンバイン1による作物の刈り取りが開始されると、制御装置91により、2番還元流量制御が開始される。
【0076】
2番還元流量制御では、2番流量センサ83の検出信号に基づいて、2番還元流量が推定される(ステップS21)。
【0077】
なお、図9および図10の説明で使用する「2番還元流量」は、ステップS21で推定された2番還元流量を意味する。
【0078】
その後、2番還元流量が目標値設定処理で設定された目標値と一致しているか否かが判断される(ステップS22)。2番還元流量が目標値と一致しているか否かの判断は、2番還元流量が目標値を含む所定範囲に含まれるか否かの判断であってもよい。
【0079】
2番還元流量が目標値と一致している場合(ステップS22のYES)、コンバイン1による作物の刈り取りが終了したか否かが判断される(ステップS23)。刈り取りが終了していない場合(ステップS23のNO)、ステップS21に戻って、2番還元流量が再び推定される。
【0080】
2番還元流量が目標値と一致していない場合(ステップS22のNO)、2番還元流量が目標値よりも小さい値であるか否かが判断される(ステップS24)。
【0081】
2番還元流量が目標値よりも小さい値である場合(ステップS24のYES)、第1チャフシーブ43の開度(以下、「Fチャフ開度」という。)が減らされるとともに、唐箕46による選別風の風量が減らされる(ステップS25)。Fチャフ開度の低減量および選別風の風量の低減量は、それぞれ一定量であってもよいし、2番還元流量の目標値からの乖離量に応じた量であってもよい。
【0082】
その後、コンバイン1による作物の刈り取りが終了したか否かが判断されて(ステップS23)、刈り取りが終了していない場合(ステップS23のNO)、2番還元流量が再び推定される(ステップS21)。
【0083】
2番還元流量が目標値よりも小さい値ではない場合(ステップS24のNO)、つまり2番還元流量が目標値よりも大きい値である場合、Fチャフ開度が増やされるとともに、唐箕46による選別風の風量が増やされる(ステップS26)。Fチャフ開度の増加量および選別風の風量の増加量は、それぞれ一定量であってもよいし、2番還元流量の目標値からの乖離量に応じた量であってもよい。
【0084】
その後、コンバイン1による作物の刈り取りが終了したか否かが判断されて(ステップS23)、刈り取りが終了していない場合(ステップS23のNO)、2番還元流量が再び推定される(ステップS21)。
【0085】
コンバイン1による作物の刈り取りが終了するまで、ステップS21~S26の処理が繰り返されて、刈り取りが終了すると(ステップS23のYES)、2番還元流量制御が終了される。
【0086】
<車速制御>
図10は、車速制御の流れを示すフローチャートである。
【0087】
コンバイン1による作物の刈り取りが行われている間、制御装置91により、車速制御が所定の周期で実行される。
【0088】
車速制御では、2番還元流量が目標値よりも大きい値であるか否かが判断される(ステップS31)。
【0089】
2番還元流量が目標値よりも大きい値である場合(ステップS31のYES)、Fチャフ開度が最大であるか否かが判断される(ステップS32)。
【0090】
2番還元流量が目標値よりも大きく、かつ、Fチャフ開度が最大である場合(ステップS32のYES)、言い換えれば、Fチャフ開度が最大であるにもかかわらず、2番還元流量が目標値よりも大きい場合、車速が減速されて(ステップS33)、車速制御が終了される。車速の減速量は、一定量であってもよいし、2番還元流量の目標値からの乖離量に応じた量であってもよい。
【0091】
2番還元流量が目標値よりも大きい値でない場合(ステップS31のNO)、または、Fチャフ開度が最大ではない場合(ステップS32のNO)、車速が減速されずに、車速制御が終了される。
【0092】
<作用効果>
以上のように、2番流量センサ83によって、2番物の還元流量に相関する値が検出される。一方、制御装置91によって、2番物の還元流量の目標値が設定される。そして、制御装置91によって、2番流量センサ83の検出値から推定される2番還元流量が目標値に一致するように、第1チャフシーブ43および唐箕46が制御されて、Fチャフ開度および唐箕46による選別風の風量が変更される。これにより、2番物の還元流量が目標値に調整されるので、脱穀装置7内に貯まっている選別対象物の量が安定する。その結果、脱穀装置7に供給される作物量に応じた処理速度で選別対象物の選別を行うことができながら、圃場条件による選別性能の悪化を抑制することができる。
【0093】
2番物の還元流量の目標値は、作物別に設定される。これにより、作物別に目標値を適切に設定することができる。
【0094】
また、ユーザがタッチパネル92をタッチ操作して、2番物の還元流量の目標値を変更することができる。その変更により、ユーザが選別処理速度および選別性能(1番物に含まれる夾雑物の割合)を調整することができる。
【0095】
Rチャフ開度によって2番物の選別量が変化するので、Rチャフ開度に応じて目標値が変更される。これにより、脱穀装置7内に貯まっている選別対象物の量を安定に保つことができる。
【0096】
Fチャフ開度が最大の状態で、2番流量センサ83の検出値から推定される2番還元流量が目標値よりも大きい場合、コンバイン1の車速が減速される。これにより、脱穀装置7に供給される作物量が低減し、2番物の還元流量が低減するので、選別ロスの増加を抑制することができる。
【0097】
<変形例>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、他の形態で実施することもできる。
【0098】
たとえば、2番流量センサ83の検出値から推定される2番還元流量が基準よりも小さい場合に、2番物の還元流量が増加するように、1番流量センサ81の検出値から推定される1番還元流量に応じて、唐箕46による選別風の風量が変更されてもよい。
【0099】
その他、前述の構成には、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0100】
1:コンバイン
2:クローラ走行装置(走行装置)
3:機体フレーム(機体)
6:キャビン(機体)
7:脱穀装置(機体)
8:穀粒タンク(機体)
21:脱穀部
22:選別部
43:第1チャフシーブ(チャフシーブ)
44:第2チャフシーブ(チャフシーブ)
46:唐箕
81:1番流量センサ
83:2番流量センサ
91:制御装置
92:タッチパネル(入力装置)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10