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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-25
(45)【発行日】2025-05-08
(54)【発明の名称】ハロゲンフリー難燃性ポリマー組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/08 20250101AFI20250428BHJP
   C08L 53/00 20060101ALI20250428BHJP
   C08L 23/26 20250101ALI20250428BHJP
   C08K 3/016 20180101ALI20250428BHJP
   H01B 7/295 20060101ALI20250428BHJP
【FI】
C08L23/08
C08L53/00
C08L23/26
C08K3/016
H01B7/295
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022534263
(86)(22)【出願日】2020-12-07
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-21
(86)【国際出願番号】 US2020063570
(87)【国際公開番号】W WO2021126573
(87)【国際公開日】2021-06-24
【審査請求日】2023-11-22
(31)【優先権主張番号】62/949,535
(32)【優先日】2019-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【弁理士】
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 修二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100144417
【弁理士】
【氏名又は名称】堂垣 泰雄
(72)【発明者】
【氏名】イェルチュ、クリスチャン
(72)【発明者】
【氏名】クリー、ステファン エイチ.
【審査官】藤井 明子
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-512427(JP,A)
【文献】特表2013-529706(JP,A)
【文献】特開2014-091753(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00-13/08
H01B 7/29-7/36、7/42
C08F 251/00-283/00、283/02-289/00、
291/00-297/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマー組成物であって、前記ポリマー組成物の重量パーセントで、
(a)10重量%~30重量%のポリオレフィンエラストマーと、
(b)1重量%~重量%のプロピレン系ポリマーと、
(c)2重量%~20重量%の結晶性ブロックコポリマーと、
(d)1重量%~10重量%のマレイン化ポリオレフィンエラストマーと、
(e)40重量%~80重量%のハロゲンフリー難燃性充填剤と、を含んでなり、
該ポリオレフィンエラストマーはエチレンとα-オレフィンとのランダムコポリマーであり、かつ、該α-オレフィンは3~12個の炭素原子を有し、
該プロピレン系ポリマーはプロピレンホモポリマーであり、
該結晶性ブロックコポリマーはポリプロピレンとポリエチレンとのジブロックコポリマーであり、ここで成分(a)は成分(d)を含まないことを特徴とする、ポリマー組成物。
【請求項2】
前記ポリマー組成物が、50重量%~70重量%の前記ハロゲンフリー難燃性充填剤を含み、前記ハロゲンフリー難燃性充填剤が、水酸化マグネシウムである、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項3】
前記マレイン化ポリオレフィンエラストマーが、無水マレイン酸グラフト化ポリオレフィンエラストマーであり、更に、前記ポリマー組成物が、3重量%~7重量%の無水マレイン酸グラフト化ポリオレフィンエラストマーを含む、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項4】
前記ポリマー組成物が、15重量%~25重量%の前記ポリオレフィンエラストマーを含み、更に、前記ポリオレフィンエラストマーが、ASTM D792に従って測定される場合に、0.87g/cm~0.91g/cmの範囲の密度を有する、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項5】
前記ポリマー組成物が、4重量%~重量%のプロピレン系ポリマーを含む、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項6】
前記ポリマー組成物が、4重量%~12重量%の前記結晶性ブロックコポリマーを含む、請求項5に記載のポリマー組成物。
【請求項7】
前記ポリオレフィンエラストマーエチレンとブチレンとのポリオレフィンエラストマーである、請求項1~6のいずれか1項に記載のポリマー組成物。
【請求項8】
前記ポリプロピレンポリエチレンとのジブロックコポリマーが、ASTM D792に従って測定される場合に、0.89g/cm~0.92g/cmの範囲の密度を有する、請求項1~6のいずれか1項に記載のポリマー組成物。
【請求項9】
前記ポリプロピレンポリエチレンとのジブロックコポリマーが、230℃及び2.16kgで8g/10分~12g/10分のメルトフローインデックスを有する、請求項1~6のいずれか1項に記載のポリマー組成物。
【請求項10】
ケーブルであって、
導体と、
前記導体の周りに位置付けられた、請求項1~9のいずれかに記載のポリマー組成物と、を含む、ケーブル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、ポリマー組成物に関し、より具体的には、水和鉱物充填剤を含む相溶化ポリマー組成物に関する。
【0002】
序論
ポリオレフィン系ハロゲンフリー難燃性(halogen free flame retardant、HFFR)ケーブルジャケット組成物は、絶縁/ジャケティング材料の難燃性が重要である様々な用途に有用である。難燃性は、可燃性ポリマー材料の濃度を希釈して、熱に曝露されるとポリマーの分解温度未満で分解する水和鉱物充填剤の添加によって達成される。水和鉱物充填剤の分解により水が放出され、それによって火源から熱が除去される。従来のHFFRケーブルジャケット組成物は、屋内、建物内、列車内、車内、又は人々が存在し得る場所で使用される。
【0003】
ポリオレフィンワイヤ及びケーブル配合物中の水和鉱物充填剤の使用には、多くの欠点があり、その大部分は、難燃仕様を満たすために必要な比較的高レベルの充填剤に起因する。ポリオレフィン中に60重量パーセント(重量%)又は65重量%の充填剤を装填することは、珍しいことではない。この充填剤の装填は、HFFRケーブルジャケット組成物の特性に影響を及ぼし、密度が高く、可撓性が限られ、かつ破断時伸びなどの機械的特性が低下した化合物がもたらされる。
【0004】
多くの場合、いくつかの機械的特性を維持しながら、そのような高い充填剤装填の組み込みを可能にするために、異なるポリマーのブレンドを使用しなければならない。例えば、ケーブルジャケット組成物の強度を追加するためにポリプロピレンを利用することが多く、一方、ポリオレフィンエラストマーは、充填剤装填を可能にする。相溶化剤は、異なるポリマーが一緒にブレンドされてポリマーの混合及び接着を増加させる系で使用される。例えば、国際公開第2017/100175号は、エチレン-プロピレンジブロックコポリマーを利用して、プロピレン及び高密度ポリエチレン(high-density polyethylene、HDPE)系を相溶化する。しかしながら、HFFRケーブルジャケットのポリマー相が少数相であることを考えると、従来の試行及び理解は、相溶化努力が、ポリマー相と水和無機充填剤との相溶化及び接着を増加させることを対象とするべきであることを教示している。例えば、米国特許出願公開第2010/0319960(A1)号は、極性-モノマー系相溶化剤を利用してHFFRとオレフィンマルチブロックインターポリマーとを一緒に結合するHFFR、オレフィンマルチブロックインターポリマーを開示している。更に他のマルチポリマーHFFR系は、ポリマー相の相溶化剤を含まないことを利点と考える。例えば、国際公開第2011/079457(A1)号は、「有利には、本組成物は、PPと熱可塑性エラストマー成分との間に相溶化剤(例えば、官能性ポリマー)を必要とせず、実施形態では、相溶化剤を含まない」と説明している。
【0005】
HFFRケーブルジャケットの用途が従来とは異なる領域に拡張し始めるため、一度HFFRケーブルジャケットに関連しないとみなされた機械的特性が、関連してきている。例えば、環境応力亀裂(environmental stress cracking、ESCR)は、水分(例えば、屋外及び/又は下地ケーブル)、水分の欠如(例えば、砂漠環境)、及び幅広い温度変動に曝露されるケーブルジャケットに関連する機械的特性である。結果として、「熱圧」又は「ホットナイフ」押込試験などのHFFRケーブルジャケットの従来の特性は、ESCR、機械的特性(例えば、引張強度及び破断時伸び)、及び全体的な組成物コストなどの他の特性に加えて評価されなければならない。この特性のバランスを複雑化しているのは、1つの特性の改善が多くの場合別の特性を損なうことになるという事実であり、そのため、特性の許容可能なバランスの達成が依然として分かりにくい。
【0006】
したがって、1000時間超のESCR、50%未満のホットナイフ押込、70%超の破断時伸び、及び10MPa以上の引張強度を示す40重量%以上のHFFR含有量を有するケーブルジャケット組成物を発見することは驚くべきことであろう。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、1000時間超のESCR、50%未満のホットナイフ押込、70%超の破断時伸び、及び10MPa以上の引張強度を示す40重量%以上のHFFR充填剤含有量を有するポリマー組成物を提供する。本発明は、ケーブルジャケットに特に有用である。
【0008】
本発明は、ポリマー相がHFFRケーブル組成物中の少数相であるにもかかわらず、ポリマー相内の複数の異なるポリマー型の有効な相溶化が、臨界環境に必要な特性のバランスを提供するのに有効であるという発見の結果である。無水マレイン酸グラフト化相溶化剤を利用してポリオレフィンエラストマーをHFFR充填剤と相溶化することによって、HFFR充填剤は、ポリマー相に結合される。HFFRケーブルジャケットのポリプロピレン及びポリオレフィンエラストマーポリマー相中に結晶性ブロック複合体相溶化剤を使用することによって、ポリオレフィンエラストマーは、ポリプロピレン相により有効に結合される。驚くべきことに、得られる組成物の単一の特性を単に増加させるのではなく、ESCR、引張強度、破断時伸び、及びホットナイフの押込の特性がすべて改善される。結果として、本発明のHFFRケーブルジャケットは、従来のHFFRケーブルジャケット以外の用途での利用が可能である。
【0009】
本発明は、ケーブルのジャケットに特に有用である。
【0010】
本開示の第1の特徴によると、ポリマー組成物は、ポリマー組成物の重量パーセントで、(a)10重量%~30重量%のポリオレフィンエラストマーと、(b)1重量%~20重量%のポリプロピレン系ポリマーと、(c)1重量%超~20重量%の結晶性ブロック複合体と、(d)1重量%~10重量%のマレイン化ポリオレフィンエラストマーと、(e)40重量%~80重量%のハロゲンフリー難燃性充填剤と、を含む。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書で使用される場合、「及び/又は」という用語は、2つ以上の項目の列挙で使用される場合、列挙された項目のうちのいずれか1つをそれ自体で用いることができるか、又は列挙された項目のうちの2つ以上の任意の組み合わせを用いることができることを意味する。例えば、組成物が成分A、B、及び/又はCを含有するものとして説明されている場合、組成物はAを単独で、Bを単独で、Cを単独で、A及びBを組み合わせて、A及びCを組み合わせて、B及びCを組み合わせて、又はA、B、及びCを組み合わせて、含有することができる。
【0012】
別途記載のない限り、すべての範囲は、終点を含む。ポリマー式の添え字値は、ポリマーの指定された成分の1分子当たりのモル平均単位数を指す。
【0013】
試験方法は、試験方法番号でハイフン付きの2桁の数字で日付が示されていない限り、この文書の優先日における最新の試験方法を指す。試験方法への言及は、試験の協会及び試験方法番号への参照の両方を含む。試験方法組織は、以下の略語のうちの1つによって参照され、ASTMは、ASTMインターナショナル(ASTM International)(旧称、米国材料試験協会、American Society for Testing and Materials)を指し、ENは、欧州規格(European Norm)を指し、DINは、ドイツ規格協会(Deutsches Institut fur Normung)を指し、ISOは、国際標準化機構(International Organization for Standards)を指し、IECは、国際電気標準会議(International Electrotechnical Commission)を指す。
【0014】
本明細書で使用される場合、重量パーセント(「重量%」)という用語は、別途明記しない限り、成分がポリマー組成物の総重量に占める重量のパーセンテージを示す。
【0015】
本明細書で使用される場合、「エラストマー」は、ASTM D638-72の方法を使用して、23℃で非架橋状態で、約68.95MPa(10,000psi)以下の弾性率及び200%を超える伸びを有するゴム様ポリマーである。
【0016】
本明細書で使用される場合、「ハロゲンフリー」という用語は、物体又は材料が、イオンクロマトグラフィ(ion chromatography、IC)によって測定される場合に、2000mg/kg以下のハロゲンを含有することを意味する。この量未満のハロゲン含有量は、ワイヤ又はケーブルカバーとしての組成物の有効性に重要ではないと考えられるため、「ハロゲンフリー」と称され得る。
【0017】
ポリマー組成物
本発明のポリマー組成物は、ポリオレフィンエラストマー、ポリプロピレン系ポリマー、結晶性ブロック複合体、マレイン化ポリオレフィンエラストマー、及びハロゲンフリー難燃性充填剤を含む。
【0018】
ポリオレフィンエラストマー
ポリオレフィンエラストマーは、エチレン系エラストマー/プラストマー、エチレンブロックコポリマー、及びプロピレン系エラストマーを含み得るエラストマーである。
【0019】
ポリオレフィンエラストマーは、α-オレフィンブロックコポリマーを含んでもよい。「オレフィンブロックコポリマー」は、直鎖状方式で接合された、2つ以上の化学的に異なる領域又はセグメント(「ブロック」と称される)を含むポリマー、すなわち、ペンダント又はグラフト様式ではなく、重合オレフィン系、好ましくはエチレン系官能基に関して端部と端部とが接合している化学的に区別された単位を含むポリマーを指す。ブロックは、組み込まれたコモノマーの量若しくは種類、密度、結晶化度の程度、そのような組成物のポリマーに起因し得る結晶子径、立体規則性の種類若しくは程度(アイソタクチック若しくはシンジオタクチック)、レジオ規則性若しくはレジオ不規則性、分岐の程度(長鎖分岐若しくは超分岐を含む)、均質性、又は任意の他の化学的若しくは物理的特性において異なる。
【0020】
オレフィンブロックコポリマーの調製での使用に好適なモノマーは、オレフィン又はジオレフィンコモノマーが含まれ得る。好適なコモノマーの例としては、2~30の直鎖又は分岐α-オレフィンが挙げられる。好適な分岐α-オレフィンには、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、3-メチル-1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、3-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、及び1-エイコセン;3~30個、好ましくは3~20個の炭素原子のシクロオレフィン、例えば、シクロペンテン、シクロヘプテン、ノルボルネン、5-メチル-2-ノルボルネン、テトラシクロドデセン、及び2-メチル-1,4,5,8-ジメタノ-1,2,3,4,4a,5,8,8a-オクタヒドロナフタレン;ジ-及びポリ-オレフィン、例えば、ブタジエン、イソプレン、4-メチル-1,3-ペンタジエン、1,3-ペンタジエン、1,4-ペンタジエン、1,5-ヘキサジエン、1,4-ヘキサジエン、1,3-ヘキサジエン、1,3-オクタジエン、1,4-オクタジエン、1,5-オクタジエン、1,6-オクタジエン、1,7-オクタジエン、エチリデンノルボルネン、ビニルノルボルネン、ジシクロペンタジエン、7-メチル-1,6-オクタジエン、4-エチリデン-8-メチル-1,7-ノナジエン、及び5,9-ジメチル-1,4,8-デカトリエンが含まれ得る。
【0021】
ポリオレフィンエラストマーとしての本発明の実施において有用なオレフィンブロックコポリマーの例は、The Dow Chemical Company、Midland,Michigan,USAからINFUSE(商標)D9100、D9500 D9507、又はD9530オレフィンブロックコポリマーとして市販されている。
【0022】
ポリオレフィンエラストマーは、エラストマー系エチレンホモポリマー又はエチレン及びα-オレフィンランダムコポリマーを含み得る。エチレン及びα-オレフィンコポリマーのα-オレフィンは、3~12個の炭素原子及び好ましくは3~8個の炭素原子を有し得る。好ましくは、α-オレフィンは、1-ブテン、1-ヘキセン、及び1-オクテンのうちの1つ以上である。本発明の実施において使用されるエチレンポリマーは、3つ以上の異なるモノマーから誘導される単位を含み得る。例えば、第3のコモノマーは、別のα-オレフィン又はエチリデンノルボルネン、ブタジエン、1,4-ヘキサジエン、又はジシクロペンタジエンなどのジエンであり得る。
【0023】
本発明の実施において有用なエチレンポリマーの例としては、均一に分岐した直鎖状のエチレン/アルファ-オレフィンコポリマー、例えば、Mitsui Petrochemicals Company Limited、New York,NY,USAからのTAFMER(商標)コポリマー及びExxon Chemical CompanyによるEXACT(商標)コポリマーが挙げられる。均一に分岐した実質的に直鎖状のエチレン及びα-オレフィンポリマーの例としては、The Dow Chemical Company、Midland,MI,USAから入手可能なAFFINITY(商標)プラストマー、ENGAGE(商標)エラストマー、及びSEC 39001エチレン-ブテンコポリマーが挙げられる。そのようなポリオレフィンエラストマーの樹脂は、少なくとも1つのメタロセン触媒で調製されてもよいか、又は複数のエラストマー樹脂のブレンドは、異なるメタロセン触媒を用いて調製されてもよい。いくつかの実施形態では、エラストマーは、実質的に直鎖状のエチレンポリマー(substantially linear ethylene polymer、SLEP)である。SLEP及び他のメタロセン触媒化エラストマーは、当該技術分野、例えば、米国特許第5,272,236号で既知である。
【0024】
ポリオレフィンエラストマーは、ASTM D792により測定される場合に、1立方センチメートル当たり0.86グラム以上、又は0.87g/cc以上、又は0.88g/cc以上、又は0.89g/cc以上、又は0.90g/cc以上、又は0.91g/cc以上、又は0.92g/cc以上、又は0.93g/cc以上、又は0.94g/cc以上、又は0.95g/cc以上、0.96g/cc以上、一方で同時に、0.97g/cc以下、又は0.965g/cc以下、又は0.96g/cc以下、又は0.95g/cc以下、又は0.94g/cc以下、又は0.93g/cc以下、又は0.92g/cc以下、又は0.91g/cc以下、又は0.90g/cc以下、又は0.89g/cc以下、又は0.88g/cc以下、又は0.87g/cc以下の密度を有し得る。
【0025】
ポリオレフィンエラストマーは、10分当たり1グラム(g/10分)以上、又は2g/10分以上、3g/10分以上、4g/10分以上、5g/10分以上、6g/10分以上、7g/10分以上、8g/10分以上、9g/10分以上、10g/10分以上、又は11g/10分以上、又は12g/10分以上、13g/10分以上、14g/10分以上、15g/10分以上、16g/10分以上、17g/10分以上、18g/10分以上、1g/10分以上、一方で同時に、20g/10分以下、又は19g/10分以下、又は18g/10分以下、又は17g/10分以下、又は16g/10分以下、又は15g/10分以下、又は14g/10分以下、又は13g/10分以下、又は12g/10分以下、又は11g/10分以下、又は10g/10分以下、又は9g/10分以下、又は8g/10分以下、又は7g/10分以下、又は6g/10分以下、又は5g/10分以下、又は4g/10分以下、又は3g/10分以下、又は2g/10分以下のメルトフローインデックス(melt flow index、MFI)を有する。MFIは、ASTM D1238に従って、190℃及び2.16kgで測定される。
【0026】
ポリマー組成物は、10重量%以上、又は11重量%以上、又は12重量%以上、又は13重量%以上、又は14重量%以上、又は15重量%以上、又は16重量%以上、又は17重量%以上、又は18重量%以上、又は19重量%以上、又は20重量%以上、又は21重量%以上、又は22重量%以上、又は23重量%以上、又は24重量%以上、又は25重量%以上、又は26重量%以上、又は27重量%以上、又は28重量%以上、又は29重量%以上、一方で同時に、30重量%以下、又は29重量%以下、又は28重量%以下、又は27重量%以下、又は26重量%以下、25重量%以下、又は24重量%以下、又は23重量%以下、又は22重量%以下、又は21重量%以下、又は20重量%以下、又は19重量%以下、又は18重量%以下、又は17重量%以下、又は16重量%以下、15重量%以下、又は14重量%以下、又は13重量%以下、又は12重量%以下、又は11重量%以下以下のポリオレフィンエラストマーを含み得る。
【0027】
ポリプロピレン系ポリマー
ポリマー組成物は、プロピレン系ポリマーを含む。本明細書で使用される場合、「プロピレン系ポリマー」は、50重量%超の重合プロピレンモノマー(重合性モノマーの総量に基づく)を含有するポリマーであり、任意選択的に、1つ以上のコモノマーを含有してもよい。「プロピレン系ポリマー」及び「ポリプロピレン」という用語は、交換可能に使用され得る。プロピレン系ポリマーには、プロピレンホモポリマー、及びプロピレンコポリマー(プロピレン及び1つ以上のコモノマーから誘導される単位を意味する)が含まれる。本明細書で使用される場合、「プロピレンホモポリマー」は、重合プロピレンモノマーのみからなるか、又は本質的にすべての重合プロピレンモノマーであるポリマーを意味する。本明細書で使用される場合、「プロピレンコポリマー」は、重合プロピレン及びエチレン、並びに/又はC4~20の直鎖、分岐、若しくは環状α-オレフィンなどの1つ以上の他の不飽和コモノマーから誘導される単位を含むポリマーを意味する。C4~20α-オレフィンの例としては、1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、及び1-オクタデセンが挙げられる。プロピレンコポリマーの場合、コモノマー含有量は、10重量%以下、又は5重量%以下、又は3重量%以下である。当技術分野で既知であるポリプロピレンの一般的な形態には、ホモポリマーポリプロピレン(homopolymer polypropylene、hPP)、ランダムコポリマーポリプロピレン(random copolymer polypropylene、rcPP)、耐衝撃性コポリマーポリプロピレン(hPP+、少なくとも1つのエラストマー系耐衝撃性改質剤)(impact copolymer polypropylene、ICPP)又は高耐衝撃性ポリプロピレン(high impact polypropylene、HIPP)、高溶融強度ポリプロピレン(high melt strength polypropylene、HMS-PP)、アイソタクチックポリプロピレン(isotactic polypropylene、iPP)、シンジオタクチックポリプロピレン(syndiotactic polypropylene、sPP)、及びそれらの組み合わせが含まれる。
【0028】
ポリマー組成物は、1重量%以上、又は2重量%以上、又は3重量%以上、又は4重量%以上、又は5重量%以上、又は6重量%以上、又は7重量%以上、又は8重量%以上、又は9重量%以上、又は10重量%以上、又は11重量%以上、又は12重量%以上、又は13重量%以上、又は14重量%以上、又は15重量%以上、又は16重量%以上、又は17重量%以上、又は18重量%以上、又は19重量%以上、一方で同時に、20重量%以下、又は19重量%以下、又は18重量%以下、又は17重量%以下、又は16重量%以下、15重量%以下、又は14重量%以下、又は13重量%以下、又は12重量%以下、又は11重量%以下、又は10重量%以下、又は9重量%以下、又は8重量%以下、又は7重量%以下、又は6重量%以下、又は5重量%以下、又は4重量%以下、又は3重量%以下、又は2重量%以下のポリプロピレンを含み得る。
【0029】
プロピレン系ポリマーは、1g/10分以上、又は2g/10分以上、3g/10分以上、4g/10分以上、5g/10分以上、6g/10分以上、7g/10分以上、8g/10分以上、9g/10分以上、10g/10分以上、又は11g/10分以上、又は12g/10分以上、13g/10分以上、14g/10分以上、15g/10分以上、16g/10分以上、17g/10分以上、18g/10分以上、19g/10分以上、一方で同時に、20g/10分以下、又は19g/10分以下、又は18g/10分以下、又は17g/10分以下、又は16g/10分以下、又は15g/10分以下、又は14g/10分以下、又は13g/10分以下、又は12g/10分以下、又は11g/10分以下、又は10g/10分以下、又は9g/10分以下、又は8g/10分以下、又は7g/10分以下、又は6g/10分以下、又は5g/10分以下、又は4g/10分以下、又は3g/10分以下、又は2g/10分以下のMFIを有する。MFIは、ASTM D1238に従って、230℃及び2.16kgで測定される。
【0030】
本発明の実施において有用なポリプロピレンホモポリマーは、The Dow Chemical Company、Midland,Michigan,USA又はBraskem America、Philadelphia,Pennsylvania,USAのいずれかから入手可能なH700-12ポリプロピレンとして市販されている。本発明の実施において有用なランダムコポリマーポリプロピレン樹脂を含むコポリマーポリプロピレンは、The Dow Chemical Company、Midland,Michigan,USAから入手可能なDS6D82、6D83K、及びC715-12NHPポリプロピレンとして市販されている。本発明の実施において有用な耐衝撃改質プロピレンコポリマーは、The Dow Chemical Company、Midland,Michigan,USAから、C766-03、C7057-07、C7061-01N、及びC706-21NA HPポリプロピレンとして市販されている。
【0031】
結晶性ブロック複合体
ポリマー組成物は、結晶性ブロック複合体を含む。「結晶性ブロック複合材料」(「crystalline block composite、CBC」)という用語は、以下の3つのポリマー成分:
(i)結晶性エチレン系ポリマー(crystalline ethylene-based polymer、CEP)であって、CEP中の重合モノマー単位の総モルに基づいて、90モル%以上のエチレン含有量を有する、CEPと、
(ii)結晶性アルファ-オレフィン系ポリマー(crystalline alpha-olefin based polymer、CAOP)であって、CAOP中の重合モノマー単位の総モルに基づいて、90モル%超のアルファ-オレフィン含有量を有する、CAOPと、
(iii)結晶性エチレンブロック(crystalline ethylene block、CEB)及び結晶性アルファ-オレフィンブロック(crystalline alpha-olefin block、CAOB)を含むブロックコポリマーと、を含有する、ポリマーを指し、
結晶性エチレンブロックは、成分(i)のCEPと同じ又は類似の溶融温度(melting temperature、Tm)を有し、
結晶性アルファ-オレフィンブロックは、成分(ii)のCAOPと同じ又は類似のTmを有し、
「同じ又は類似の」という句は、0.1℃~10℃の温度ランピング速度で示差走査熱量測定(differential scanning calorimetry、DSC)を使用して測定される場合の、≦5℃の絶対Tm差を指す。
【0032】
CBCを作製するためのプロセス、及びCBCを分析する方法は、例えば、すべて2011年12月22日に公開されている米国特許出願公開第2011/0313106号、同第2011/0313108号、及び同第2011/0313108号、並びにPCT公開第WO2014/043522(A1)号に記載されている。好適なα-オレフィンの例としては、C3、C4、C5、C6、及びC8α-オレフィンなどのC3~C10α-オレフィンが挙げられる。α-オレフィンは、プロピレンであり得る。
【0033】
「結晶性エチレン系ポリマー」(「CEP」)は、CEP中に90モル%以上の重合モノマー単位を含有し、任意のコモノマー含有量がCEP中に10モル%以下の重合モノマー単位であるエチレン単位である。
【0034】
「結晶性アルファ-オレフィン系ポリマー」(「CAOP」)は、重合α-オレフィン単位を含有する結晶性ポリマーである。重合α-オレフィン単位は、1-プロピレンであり得る。重合α-オレフィン単位(例えば、プロピレン)は、結晶性α-オレフィン系ポリマー(プロピレン)の総重量に基づいて、90モル%以上、又は93モル%以上、又は95モル%以上、又は98モル%以上の量で存在する。コモノマーは、エチレンであり得る。CAOP中のコモノマー含有量は、10モル%以下である。プロピレン結晶化度を有するCAOPは、80℃以上の融点を有する。CAOPは、すべて又は実質的にすべてのプロピレン単位を含み得る。
【0035】
CAOPで使用され得る他の好適なα-オレフィン単位(プロピレンに加えて)は、1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、及び1-オクテンなどの4~10個の炭素原子を含有するものである。CAOPで使用され得る好適なジオレフィンには、イソプレン、ブタジエン、1,4-ペンタジエン、1,4-ヘキサジエン、1,5-ヘキサジエン、1,7-オクタジエン、1,9-デカジエン、ジシクロペンタジエン、メチレン-ノルボルネン、5-エチリデン-2-ノルボルネンなど、及び前述のα-オレフィン単位のうちの少なくとも1つを含有する組み合わせが含まれる。
【0036】
CBCのブロックコポリマーは、CEB及び結晶性アルファオレフィンブロックCAOBを含有する。CEBでは、重合エチレンは、CEBの総モル数に基づいて、90モル%以上の量で存在する。CEBポリマーは、ポリエチレンであり得る。
【0037】
CAOBは、4~10個の炭素原子を含有する他のα-オレフィン単位と共重合しているポリプロピレンブロックを含む。ポリプロピレンは、CAOBの総モル数に基づいて、90モル%以上の量でCAOB中に存在する。CAOB中のコモノマー含有量は、CAOB中の総モル数に基づいて、10モル%以下である。プロピレン結晶化度を有するCAOBは、80℃以上の融点を有する。ある実施形態では、CAOBは、すべての、又は実質的にすべてのプロピレン単位を含む。
【0038】
CBCは、プロピレン、1-ブテン、又は4-メチル-1-ペンテン、及び1つ以上のコモノマーを含有し得る。CBCは、重合形態で、プロピレン及びエチレン、並びに/若しくは1つ以上のC4~20α-オレフィンコモノマー、並びに/若しくは1つ以上の追加の共重合性コモノマーを含有し得るか、又はCBCは、4-メチル-1-ペンテン及びエチレン、並びに/若しくは1つ以上のC4~20α-オレフィンコモノマーを含有するか、又はCBCは、1-ブテン及びエチレン、プロピレン、並びに/若しくは1つ以上のC5~C20α-オレフィンコモノマー、並びに/若しくは1つ以上の追加の共重合性コモノマーを含有する。追加の好適なコモノマーは、ジオレフィン、環状オレフィン、及び環状ジオレフィン、ハロゲン化ビニル化合物、並びにビニリデン芳香族化合物から選択される。モノマーはプロピレンであり得、コモノマーはエチレンであり得る。
【0039】
CBCは、CBCの総重量に基づいて、50重量%以上のプロピレンに誘導される単位を含有するプロピレン系ポリマーであり得る。CBC中のコモノマー含有量は、核磁気共鳴(nuclear magnetic resonance、NMR)分光法を使用して測定され得る。
【0040】
CBCは、1g/10分以上、又は2g/10分以上、3g/10分以上、4g/10分以上、5g/10分以上、6g/10分以上、7g/10分以上、8g/10分以上、9g/10分以上、9.5g/10分以上、又は10g/10分以上、又は11g/10分以上、又は12g/10分以上、13g/10分以上、14g/10分以上、15g/10分以上、16g/10分以上、17g/10分以上、18g/10分以上、19g/10分以上、一方で同時に、20g/10分以下、又は19g/10分以下、又は18g/10分以下、又は17g/10分以下、又は16g/10分以下、又は15g/10分以下、又は14g/10分以下、又は13g/10分以下、又は12g/10分以下、又は11g/10分以下、又は10g/10分以下、又は9g/10分以下、又は8g/10分以下、又は7g/10分以下、又は6g/10分以下、又は5g/10分以下、又は4g/10分以下、又は3g/10分以下、又は2g/10分以下のMFIを有する。MFIは、ASTM D1238に従って、230℃、2.16kgで測定される。
【0041】
CBCは、10,000g/モル以上、又は20,000g/モル以上、又は30,000g/モル以上、又は40,000g/モル以上、又は50,000g/モル以上、又は60,000g/モル以上、又は70,000g/モル以上、又は80,000g/モル以上、又は90,000g/モル以上、又は100,000g/モル以上、又は110,000g/モル以上、又は120,000g/モル以上、又は130,000g/モル以上、又は140,000g/モル以上、又は150,000g/モル以上、又は160,000g/モル以上、又は170,000g/モル以上、又は180,000g/モル以上、又は190,000g/モル以上、一方で同時に、200,00g/モル以下、又は190,000g/モル以下、又は180,000g/モル以下、又は170,000g/モル以下、又は160,000g/モル以下、又は150,000g/モル以下、又は140,000g/モル以下、又は130,000g/モル以下、又は120,000g/モル以下、又は110,000g/モル以下、又は100,000g/モル以下、又は90,000g/モル以下、又は80,000g/モル以下、又は70,000g/モル以下、又は60,000g/モル以下、又は50,000g/モル以下、又は40,000g/モル以下、又は30,000g/モル以下、又は20,000g/モル以下の重量平均分子量(molecular weight、Mw)を有し得る。重量平均分子量は、ゲル透過クロマトグラフィを使用して測定される。
【0042】
CBC中のCEP、CAOP、及びブロックコポリマーの重量パーセントの和は、100%に等しい。CBCは、0.5重量%以上、又は1重量%以上、又は5重量%以上、又は10重量%以上、又は20重量%以上、又は30重量%以上、又は40重量%以上、又は50重量%以上、又は60重量%以上、又は70重量%以上、又は80重量%以上、一方で同時に、90重量%以下、又は80重量%以下、又は70重量%以下、又は60重量%以下、又は50重量%以下、又は40重量%以下、又は30重量%以下、又は20重量%以下、又は10重量%以下のCEPであり得る。
【0043】
CBCは、0.5重量%以上、又は1重量%以上、又は5重量%以上、又は10重量%以上、又は20重量%以上、又は30重量%以上、又は40重量%以上、又は50重量%以上、又は60重量%以上、又は70重量%以上、又は80重量%以上、一方で同時に、90重量%以下、又は80重量%以下、又は70重量%以下、又は60重量%以下、又は50重量%以下、又は40重量%以下、又は30重量%以下、又は20重量%以下、又は10重量%以下のCAOPであり得る。
【0044】
CBCは、0.5重量%以上、又は1重量%以上、又は5重量%以上、又は10重量%以上、又は20重量%以上、又は30重量%以上、又は40重量%以上、又は50重量%以上、又は60重量%以上、又は70重量%以上、又は80重量%以上、一方で同時に、90重量%以下、又は80重量%以下、又は70重量%以下、又は60重量%以下、又は50重量%以下、又は40重量%以下、又は30重量%以下、又は20重量%以下、又は10重量%以下のブロックコポリマーであり得る。
【0045】
CBCのブロックコポリマーは、0.5重量%以上、又は1重量%以上、又は5重量%以上、又は10重量%以上、又は20重量%以上、又は30重量%以上、又は40重量%以上、又は50重量%以上、又は60重量%以上、又は70重量%以上、又は80重量%以上、一方で同時に、90重量%以下、又は80重量%以下、又は70重量%以下、又は60重量%以下、又は50重量%以下、又は40重量%以下、又は30重量%以下、又は20重量%以下、又は10重量%以下の結晶性エチレンブロック(CEB)を含有し得る。CBCのブロックコポリマーは、0.5重量%以上、又は1重量%以上、又は5重量%以上、又は10重量%以上、又は20重量%以上、又は30重量%以上、又は40重量%以上、又は50重量%以上、又は60重量%以上、又は70重量%以上、又は80重量%以上、一方で同時に、90重量%以下、又は80重量%以下、又は70重量%以下、又は60重量%以下、又は50重量%以下、又は40重量%以下、又は30重量%以下、又は20重量%以下、又は10重量%以下の結晶性アルファ-オレフィンブロック(CAOB)を含有し得る。
【0046】
CBCは、(i)結晶性エチレン/プロピレンコポリマー(CEP)であるCEPと、(ii)アイソタクチック結晶性プロピレンホモポリマー(iPP)であるCAOPと、(iii)iPPブロック(CAOB)及びエチレン/プロピレンブロック(CEB)を含有するブロックコポリマーと、を含有し得、ブロックコポリマーは、以下の式(1)を有するジブロックを含む。
(CEP)-(iPP) 式(1)
【0047】
ポリマー組成物は、1重量%以上、又は2重量%以上、又は3重量%以上、又は4重量%以上、又は5重量%以上、又は6重量%以上、又は7重量%以上、又は8重量%以上、又は9重量%以上、又は10重量%以上、又は11重量%以上、又は12重量%以上、又は13重量%以上、又は14重量%以上、又は15重量%以上、又は16重量%以上、又は17重量%以上、又は18重量%以上、又は19重量%以上、一方で同時に、20重量%以下、又は19重量%以下、又は18重量%以下、又は17重量%以下、又は16重量%以下、15重量%以下、又は14重量%以下、又は13重量%以下、又は12重量%以下、又は11重量%以下、又は10重量%以下、又は9重量%以下、又は8重量%以下、又は7重量%以下、又は6重量%以下、又は5重量%以下、又は4重量%以下、又は3重量%以下、又は2重量%以下の結晶性ブロック複合体を含み得る。
【0048】
マレイン化ポリオレフィンエラストマー
ポリマー組成物は、マレイン化ポリオレフィンエラストマーを含む。本明細書で使用される場合、「マレイン化」という用語は、無水マレイン酸モノマーを組み込むように修飾されているエラストマー(例えば、ポリオレフィンエラストマー)を示す。マレイン化ポリオレフィンエラストマーは、無水マレイン酸モノマーをエチレン及び他のモノマー(存在する場合)と共重合して、ポリマー骨格に組み込まれた無水マレイン酸を有するインターポリマーを調製することによって形成され得る。追加的に、又は代替的に、無水マレイン酸は、ポリオレフィンエラストマーにグラフト重合され得る。マレイン化されるポリオレフィンエラストマーは、前述のポリオレフィンエラストマーのいずれかであり得る。
【0049】
マレイン化ポリオレフィンエラストマーは、ASTM D792により測定される場合に、0.86g/cc以上、又は0.87g/cc以上、又は0.88g/cc以上、又は0.89g/cc以上、又は0.90g/cc以上、又は0.91g/cc以上、又は0.92g/cc以上、又は0.93g/cc以上、又は0.94g/cc以上、又は0.95g/cc以上、0.96g/cc以上、一方で同時に、0.97g/cc以下、又は0.965g/cc以下、又は0.96g/cc以下、又は0.95g/cc以下、又は0.94g/cc以下、又は0.93g/cc以下、又は0.92g/cc以下、又は0.91g/cc以下、又は0.90g/cc以下、又は0.89g/cc以下、又は0.88g/cc以下、又は0.87g/cc以下の密度を有し得る。
【0050】
マレイン化ポリオレフィンエラストマーは、1g/10分以上、又は2g/10分以上、3g/10分以上、4g/10分以上、5g/10分以上、6g/10分以上、7g/10分以上、8g/10分以上、9g/10分以上、10g/10分以上、又は11g/10分以上、又は12g/10分以上、13g/10分以上、14g/10分以上、15g/10分以上、16g/10分以上、17g/10分以上、18g/10分以上、19g/10分以上、一方で同時に、20g/10分以下、又は19g/10分以下、又は18g/10分以下、又は17g/10分以下、又は16g/10分以下、又は15g/10分以下、又は14g/10分以下、又は13g/10分以下、又は12g/10分以下、又は11g/10分以下、又は10g/10分以下、又は9g/10分以下、又は8g/10分以下、又は7g/10分以下、又は6g/10分以下、又は5g/10分以下、又は4g/10分以下、又は3g/10分以下、又は2g/10分以下のMFIを有する。MFIは、ASTM D1238に従って、190℃及び2.16kgで測定される。
【0051】
マレイン化ポリオレフィンエラストマーは、マレイン化ポリオレフィンエラストマーの総重量に基づいて、0.25重量%以上、又は0.50重量%以上、又は0.75重量%以上、又は1.00重量%以上、又は1.25重量%以上、又は1.50重量%以上、又は1.75重量%以上、又は2.00重量%以上、又は2.25重量%以上、又は2.50重量%以上、又は2.75重量%以上、一方で同時に、3.00重量%以下、2.75重量%以下、又は2.50重量%以下、又は2.25重量%以下、又は2.00重量%以下、又は1.75重量%以下、又は1.50重量%以下、又は1.25重量%以下、又は1.00重量%以下、又は0.75重量%以下、又は0.5重量%以下の無水マレイン酸含有量を有し得る。無水マレイン酸濃度は、滴定分析によって決定される。滴定分析は、乾燥樹脂を利用することによって実施し、0.02N KOHで滴定して無水マレイン酸の量を決定する。乾燥ポリマーは、0.3~0.5グラムのマレイン化ポリマーを約150mLの還流キシレンに溶解することにより滴定される。完全に溶解した後、脱イオン水(4滴)を溶液に添加し、溶液を1時間還流する。次に、1%チモールブルー(数滴)を溶液に添加し、紫色の形成で示されるように、溶液をエタノール中0.02N KOHで滴定する。次に、溶液を0.05N HClのイソプロパノール溶液で黄色の終点まで逆滴定する。
【0052】
ポリマー組成物は、1重量%以上、又は2重量%以上、又は3重量%以上、又は4重量%以上、又は5重量%以上、又は6重量%以上、又は7重量%以上、又は8重量%以上、又は9重量%以上、一方で同時に、10重量%以下、又は9重量%以下、又は8重量%以下、又は7重量%以下、又は6重量%以下、又は5重量%以下、又は4重量%以下、又は3重量%以下、又は2重量%以下のマレイン化ポリオレフィンエラストマーを含み得る。
【0053】
好適な市販されているマレイン化ポリオレフィンエラストマーの例は、The Dow Chemical Company、Midland,MI,USAから入手可能なAMPLIFY(商標)GR216である。
【0054】
ハロゲンフリー難燃性(HFFR)充填剤
ポリマー組成物のハロゲンフリー難燃剤は、炎の生成を阻害、抑制、又は遅延させ得る。本開示による組成物での使用に好適なハロゲンフリー難燃剤の例としては、金属水酸化物、赤リン、シリカ、アルミナ、水酸化アルミニウム、二水酸化マグネシウム、三水和アルミナ、水酸化アルミニウム、酸化チタン、カーボンナノチューブ、タルク、粘土、有機改質粘度、炭酸カルシウム、ホウ酸亜鉛、三酸化アンチモン、珪灰石、マイカ、オクタモリブデン酸アンモニウム、フリット、中空ガラス微小球、膨張性化合物、膨張グラファイト、及びそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。ある実施形態では、ハロゲンフリー難燃剤は、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、及びそれらの組み合わせからなる群から選択され得る。ハロゲンフリー難燃剤は、8~24個の炭素原子、若しくは12~18個の炭素原子を有する飽和若しくは不飽和カルボン酸、又はその酸の金属塩で任意選択的に表面処理(被覆)され得る。例示的な表面処理は、米国特許第4,255,303号、米国特許第5,034,442号、米国特許第7,514,489号、米国特許出願公開第2008/0251273号、及び国際公開第2013/116283号に記載されている。代替的に、酸又は塩は、表面処理手順を使用するのではなく、単に同様の量で組成物に添加され得る。シラン、チタネート、ホスフェート、及びジルコネートを含む当該技術分野で既知の他の表面処理も使用されてもよい。
【0055】
本開示による組成物での使用に好適なハロゲンフリー難燃剤の市販の例としては、Nabaltec AGから入手可能なAPYRAL(商標)40CD水酸化アルミニウム、Magnifin Magnesiaprodukte GmbH&Co KGから入手可能なMAGNIFIN(商標)H5水酸化マグネシウム、及びそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0056】
ポリマー組成物は、ポリマー組成物の重量に基づいて、40重量%以上、又は42重量%以上、又は44重量%以上、又は46重量%以上、又は48%以上、又は50重量%以上、又は52重量%以上、又は54重量%以上、又は56重量%以上、又は58%以上、又は60重量%以上、又は62重量%以上、又は64重量%以上、又は66重量%以上、又は68%以上、又は70重量%以上、又は72重量%以上、又は74重量%以上、又は76重量%以上、又は78%以上、一方で同時に、80重量%以下、又は78重量%以下、又は76重量%以下、又は74重量%以下、又は72重量%以下、又は70重量%以下、又は68重量%以下、又は66重量%以下、又は64重量%以下、又は62重量%以下、又は60重量%以下、又は58重量%以下、又は56重量%以下、又は54重量%以下、又は52重量%以下、又は50重量%以下、又は48重量%以下、又は46重量%以下、又は44重量%以下、又は42重量%以下の濃度でHFFR充填剤を含み得る。
【0057】
HFFR充填剤は、0.5μm以上、又は0.6μm以上、又は0.7μm以上、又は0.8μm以上、又は0.9μm以上、又は1.0μm以上、又は1.1μm以上、又は1.2μm以上、又は1.3μm以上、又は1.4μm以上、又は1.5μm以上、又は1.6μm以上、又は1.7μm以上、又は1.8μm以上、又は1.9μm以上、一方で同時に、2.0μm以下、又は1.9μm以下、又は1.8μm以下、又は1.7μm以下、又は1.6μm以下、又は1.5μm以下、又は1.4μm以下、又は1.3μm以下、又は1.2μm以下、又は1.1μm以下、又は1.0μm以下、又は0.9μm以下、又は0.8μm以下、又は0.7μm以下、又は0.6μm以下のD50粒径を有し得る。HFFR充填剤の粒径は、静的レーザ光散乱を使用して決定され得る。
【0058】
添加剤
ポリマー組成物は、酸化防止剤、架橋助剤、硬化促進剤及びスコーチ抑制剤、加工助剤、カップリング剤、紫外線安定剤(UV吸収剤を含む)、帯電防止剤、追加の成核剤、スリップ剤、潤滑剤、粘度調整剤、粘着付与剤、ブロッキング防止剤、界面活性剤、エクステンダオイル、酸捕捉剤、難燃剤、及び金属不活性化剤の形態で追加の添加剤を含み得る。ポリマー組成物は、0.01重量%~10重量%の追加の添加剤のうちの1つ以上を含み得る。
【0059】
UV光安定剤は、ヒンダードアミン光安定剤(「hindered amine light stabilizers、HALS」)及びUV光吸収剤(「UV light absorber、UVA」)添加剤を含み得る。代表的なUVA添加剤には、Ciba,Inc.から市販されているTINUVIN 326(商標)光安定剤及びTINUVIN 328(商標)光安定剤などのベンゾトリアゾール型が含まれる。HAL’s添加剤及びUVA添加剤のブレンドも有効である。
【0060】
酸化防止剤は、テトラキス[メチレン(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシヒドロ-シンナメート)]メタンなどのヒンダードフェノール;ビス[(ベータ-(3,5-ジtert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)メチルカルボキシエチル)]-スルフィド、4,4’-チオビス(2-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、4,4’-チオビス(2-tert-ブチル-5-メチルフェノール)、2,2’-チオビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、及びチオジエチレンビス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシ)-ヒドロシンナメート;トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト及びジ-tert-ブチルフェニル-ホスホナイトなどのホスファイト及びホスホナイト;ジラウリルチオジプロピオネート、ジミリスチルチオジプロピオネート、及びジステアリルチオジプロピオネートなどのチオ化合物;様々なシロキサン;重合2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン、n,n’-ビス(1,4-ジメチルペンチル-p-フェニレンジアミン)、アルキル化ジフェニルアミン、4,4’-ビス(アルファ、アルファ-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン、ジフェニル-p-フェニレンジアミン、混合ジ-アリール-p-フェニレンジアミン、及び他のヒンダードアミン劣化防止剤又は安定剤を含み得る。
【0061】
加工助剤は、ステアリン酸亜鉛又はステアリン酸カルシウムなどのカルボン酸の金属塩;ステアリン酸、オレイン酸、又はエルカ酸などの脂肪酸;ステアラミド、オレアミド、エルカミド、又はN,N’-エチレンビス-ステアラミドなどの脂肪アミド;ポリエチレンワックス;酸化ポリエチレンワックス;エチレンオキシドのポリマー;エチレンオキシド及びプロピレンオキシドのコポリマー;植物ワックス;石油ワックス;非イオン性界面活性剤;シリコーン流体及びポリシロキサンを含み得る。
【0062】
調合及びケーブル形成
ポリマー組成物の成分は、溶融ブレンドのためにバッチ又は連続ミキサーに添加されて、溶融ブレンドされた組成物を形成し得る。成分は、他の成分とブレンドするために、任意の順序で、又は最初に1つ以上のマスターバッチを調製して添加することができる。溶融ブレンドは、最高溶融ポリマーを超える温度で行われ得る。次に、溶融ブレンドされた組成物を、押出機若しくは射出成形機に送達するか、又はダイを通過させて所望の物品に成形するか、あるいは材料の保管又は調製のためにペレット、テープ、ストリップ、若しくはフィルム、又は他の形態に変換して次の成形又は加工工程に供給する。任意選択的に、ペレット又は何らかの類似の構成に成形される場合、ペレットなどを粘着防止剤でコーティングして、保管中の取り扱いを容易にすることができる。
【0063】
調合設備の例としては、BANBURY(商標)又はBOLLING(商標)内部ミキサーなどの内部バッチミキサーが挙げられる。代替的に、FARRELL(商標)連続ミキサー、WERNER(商標)及びPFLEIDERER(商標)二軸スクリューミキサー、又はBUSS(商標)混錬連続押出機などの、連続単軸又は二軸スクリューミキサーを使用してもよい。利用するミキサーの種類、及びミキサーの動作条件は、粘度、体積抵抗率、及び押出表面平滑性などの組成物の特性に影響を及ぼす。
【0064】
ポリマー組成物は、導体上に配置されるか、又は導体の周りに位置付けられて、ケーブルを形成し得る。本明細書で使用される場合、「導体」は、熱、光、及び/又は電気を伝導するための1つ以上のワイヤ又は1つ以上のファイバである。導体は、単一ワイヤ/ファイバ又は複数ワイヤ/ファイバであってもよく、撚り線形態又は管状形態であってもよい。好適な導体の非限定的な例としては、炭素及び様々な金属、例えば、銀、金、銅、及びアルミニウムが挙げられる。導体はまた、ガラス又はプラスチックのいずれかから作製される光ファイバであってもよい。ポリマー組成物を保護シースとして使用してケーブルを形成してもよい。次いで、ポリマー組成物を導体に押し出してケーブルを形成する。ポリマー組成物は、
【0065】
ポリマー組成物特性
ポリマー組成物は、10.0MPa以上、又は10.5MPa以上、又は11.0MPa以上、又は11.5MPa以上、又は12.0MPa以上、又は12.5MPa以上、又は13.0MPa以上、又は13.5MPa以上、又は14.0MPa以上、又は14.5MPa以上、又は15.0MPa以上、又は15.5MPa以上、又は16.0MPa以上、又は16.5MPa以上、又は17.0MPa以上、又は17.5MPa以上、又は18.0MPa以上、又は18.5MPa以上、又は19.0MPa以上、又は19.5MPa以上、一方で同時に、20.0MPa以下、又は19.5MPa以下、又は19.0MPa以下、又は18.5MPa以下、又は18.0MPa以下、又は17.5MPa以下、又は17.0MPa以下、又は16.5MPa以下、又は16.0MPa以下、又は15.5MPa以下、又は15.0MPa以下、又は14.5MPa以下、又は14.0MPa以下、又は13.5MPa以下、又は13.0MPa以下、又は12.5MPa以下、又は12.0MPa以下、又は11.5MPa以下、又は11.0MPa以下、又は10.5MPa以下の引張強度を示し得る。引張強度は、以下の試験方法のセクションで説明されている手順に従って決定される。
【0066】
ポリマー組成物は、70%以上、又は75%以上、又は80%以上、又は85%以上、又は90%以上、又は95%以上、又は100%以上、又は105%以上、又は110%以上、又は115%以上、又は120%以上、又は125%以上、一方で同時に、130%以下、又は125%以下、又は120%以下、又は115%以下、又は110%以下、又は105%以下、又は100%以下、又は95%以下、又は90%以下、又は85%以下、又は80%以下、又は75%以下の破断時伸びを示し得る。破断時伸び係数は、以下の試験方法のセクションで説明されている手順に従って決定される。
【0067】
ポリマー組成物は、200MPa以上、又は210MPa以上、又は220MPa以上、又は230MPa以上、又は240MPa以上、又は250MPa以上、又は260MPa以上、又は270MPa以上、又は280MPa以上、又は290MPa以上、又は300MPa以上、又は310MPa以上、又は320MPa以上、又は330MPa以上、又は340MPa以上、一方で同時に、350MPa以下、又は340MPa以下、又は330MPa以下、又は320MPa以下、又は310MPa以下、又は300MPa以下、又は290MPa以下、又は280MPa以下、又は270MPa以下、又は260MPa以下、又は250MPa以下、又は240MPa以下、又は230MPa以下、又は220MPa以下、又は210MPa以下の曲げ弾性率を示し得る。曲げ弾性率は、以下の試験方法のセクションで説明されている手順に従って決定される。
【0068】
ポリマー組成物は、1.0g/分以上、又は1.1g/分以上、又は1.2g/分以上、又は1.3g/分以上、又は1.4g/分以上、又は1.5g/分以上、又は1.6g/分以上、又は1.7g/分以上、又は1.8g/分以上、又は1.9g/分以上、2.0g/分以上、又は2.1g/分以上、又は2.2g/分以上、又は2.3g/分以上、又は2.4g/分以上、又は2.5g/分以上、又は2.6g/分以上、又は2.7g/分以上、又は2.8g/分以上、又は2.9g/分以上、一方で同時に、3.0g/分以下、又は2.9g/分以下、又は2.8g/分以下、又は2.7g/分以下、又は2.6g/分以下、又は2.5g/分以下、又は2.4g/分以下、又は2.3g/分以下、又は2.2g/分以下、又は2.1g/分以下、又は2.0g/10分以下、又は1.9g/分以下、又は1.8g/分以下、又は1.7g/分以下、又は1.6g/分以下、又は1.5g/分以下、又は1.4g/分以下、又は1.3g/分以下、又は1.2g/分以下、又は1.1g/分以下のMFIを示し得る。MFIは、以下の試験方法のセクションで説明されている手順に従って決定される。
【0069】
ポリマー組成物は、50%以下、又は45%以下、又は40%以下、又は35%以下、又は30%以下、又は25%以下、又は20%以下、又は15%以下、又は10%以下、又は15%以下、又は10%以下、又は5%以下のホットナイフ押込値を示す。ホットナイフの押込値は、DIN EN 60811-3-1に従って、厚さ1.9mmで測定される。
【0070】
ポリマー組成物は、1000時間以上、又は1100時間以上、又は1200時間以上、又は1300時間以上、又は1400時間以上、又は1500時間以上、又は1600時間以上、又は1700時間以上、又は1800時間以上、又は1900時間以上、又は2000時間以上のESCR値を示す。ESCR値は、ASTM D1693に従って測定される。
【実施例
【0071】
材料
以下の材料を、以下の実施例で用いる。
【0072】
LLDPEは、0.92g/ccの密度及び1g/10分(190℃/21.6kg)のMFIを有する直鎖状低密度ポリエチレンであり、その例は、The Dow Chemical Company、Midland,MI,USAからDOWLEX(商標)2045Gポリエチレン樹脂として市販されている。
【0073】
ポリプロピレン(Polypropylene、PP)は、12g/10分(230℃、2.16kg)のメルトフローインデックス及び160℃の溶融温度を有するポリプロピレンホモポリマーであり、その例は、Braskem、Sao Paulo,BrazilからPP H700-12ポリプロピレンとして市販されている。
【0074】
POEは、4.5g/10分(190℃/21.6kg)のメルトフローインデックス、0.89g/ccの密度、及び80℃の溶融温度を有するエチレン及びブチレンのポリオレフィンエラストマーであり、その例は、The Dow Chemical Company、Midland,MI,USAからSEC 39001の商品名で市販されている。
【0075】
CBCは、ポリプロピレン及びポリエチレンジブロック複合体である結晶性ブロックコポリマーである。本明細書で使用される場合、ポリプロピレン及びポリエチレンジブロック複合体は、(i)結晶性エチレン/プロピレンコポリマーであるCEPと、(ii)アイソタクチック結晶性プロピレンホモポリマー(iPP)であるCAOPと、(iii)iPPブロック(CAOB)及びエチレン/プロピレンブロック(CEB)を含有するブロックコポリマーと、の複合体であり、その特性は、以下の表1に提供される。
【0076】
【表1】
・重量%PP-高温液体クロマトグラフィにより測定される場合の、CBC中のプロピレンポリマーの重量パーセンテージ。
・Mw-上述のようにゲル浸透クロマトグラフィにより決定される場合の、kg/モル単位のCBCの重量平均分子量。
・Mw/Mn-上述のようにゲル浸透クロマトグラフィによって決定される場合の、CBCの分子量分布。
・総重量%C-C13核磁気共鳴分光法により決定される場合の、CBC中のエチレンの重量パーセンテージ。
・Tm(℃)ピーク1(ピーク2)-DSCからの第2の加熱曲線により決定される場合のピーク溶融温度。ピーク1は、CEB/CEP(CBCの場合)又は(BC)の場合EB/EPの溶融を指し、ピーク2は、CEB又はCEPの溶融を指す。
・Tc(℃)-DSC冷却スキャンにより決定される場合のピーク結晶化温度。
【0077】
CBCの生成に有用な好適なプロセスは、例えば、米国特許出願公開第2008/0269412号において見出され得る。具体的には、重合は、触媒成分、モノマー、並びに任意選択的に溶媒、アジュバント、捕捉剤、及び重合助剤が1つ以上の反応器又は区画に連続的に供給され、そこからポリマー生成物が連続的に除去される連続的な重合、好ましくは連続的な溶液重合として実行されることが望ましい。この文脈において使用される場合、「連続的」及び「連続的に」という用語の範囲内にあるのは、反応物質の断続的な添加及び規則的又は不規則な小間隔での生成物の除去が存在し、そのため経時的に、全体的なプロセスが実質的に連続的であるそれらのプロセスである。連鎖シャトリング剤は、第1の反応器又は区域の出口、あるいは第1の反応器の出口の少し前、あるいは第1の反応器若しくは区域と、第2の又はその後の任意の反応器若しくは区域との間を含む重合中の任意の時点で添加され得る。直列に連結された反応器又は区画のうちの少なくとも2つの間の、モノマー、温度、圧力の相違、又は重合条件における他の相違に起因して、同じ分子内において、異なる組成、例えば、コモノマー含有量、結晶化度、密度、タクチシティ、部位規則性、又は他の化学的若しくは物理的相違などを有するポリマーセグメントは、その異なる反応器又は区画中で形成される。各セグメント又はブロックのサイズは、連続ポリマー反応条件によって決定され、好ましくは最も蓋然性の高いポリマーサイズ分布である。結晶性ブロック複合材料の形成に使用するための例示的な触媒及び触媒前駆体には、国際公開第2005/090426号に開示されるような金属錯体が含まれる。
【0078】
MAH-g-HDPEは、0.87g/ccの密度及び1.25g/10分のメルトインデックスを有する無水リンゴ酸グラフト化ポリオレフィンエラストマーであり、その例は、The Dow Chemical Company、Midland,MI,USAからAMPLIFY(商標)GR 216の商品名で市販されている。
【0079】
HFFRは、水酸化マグネシウムであり、その例は、Albemarle Corporation、Charlotte,NC,USAからMAGNIFIN(商標)H-5MVの商品名で市販されている。
【0080】
安定剤は、4重量%のTiO、0.1重量%のIRGASTAB(商標)FS301FF安定剤、及び0.75重量%のCHIMASSORB(商標2020光安定化添加剤、残りがVERSIFY(商標)2300プロピレン-エチレンコポリマーのブレンドである。IRGASTAB(商標)及びCHIMASSORB(商標)は、BASF、Ludwigshafen,Germanyから市販されており、VERSIFY(商標)2300は、The Dow Chemical Company、Midland,MI,USAから入手可能である。
【0081】
PAは、Dow Corning、MidlandMichigan,USAから入手可能なMB50-313(商標)マスターバッチとして市販されている超高分子量シロキサンポリマーを含む加工助剤である。
【0082】
試料調製
以下の工程に従って、本発明の実施例(「Inventive Example、IE」)及び比較実施例(「Comparative Example、CE」)を調製する。IE及びCEの各々の材料を、BUSS(商標)混錬機、モデルMDK/E 46に装填する。材料を混合して、CE及びIE試料を均質化する。IE及びCEの試料を圧縮成形して、試験のために2mmのプラークを形成する。
【0083】
試験方法
以下の試験方法を用いて、以下のIE及びCE試料の圧縮成形プラークの特性を決定する。
【0084】
引張強度及び破断時伸び
25mm/分の速度、3ニュートン(newton、N)の予荷重、1%の歩留感度、50mmのグリップ距離、及び10,000Nロードセルで、INSTRON(商標)4202試験機においてIEC 60811-512に従って試料の引張強度及び破断時伸びを試験する。
【0085】
曲げ弾性率
INSTRON(商標)4202試験機のフレックスフィクスチャーに圧縮成形試料を配置し、5.08cmのスパン及び0.127cm/分のクロスヘッド速度を使用して、3点偏向を行う。ISO 178に従って試験中に持続する最大曲げ応力での曲げ弾性率を決定する。
【0086】
MFI
ASTM D1238に従って190℃及び21.6kgでの試料のメルトフローインデックスを測定する。
【0087】
ホットナイフ押込
厚さ1.9mmの試料でDIN EN 60811-3-1に従ってホットナイフの押込値を測定する。
【0088】
ESCR
ASTM D1693に従って試料のESCR値を測定する。
【0089】
結果
表2は、重量パーセントでCE1~CE4の組成物データを提供する。
【0090】
【表2】
【0091】
表3は、IE1~IE4の組成物及び機械的特性のデータを提供する。
【0092】
【表3】
【0093】
CE1~CE4は、CE1~CE4が1重量%以下の結晶性ブロック複合体を含むという点で組成的に類似している。表3に提供される機械的特性データから明らかなように、CE1~CE4は、いくつかの特性において、許容可能なケーブルジャケット特性を示すが、IE1~IE4が示すようにすべての機械的特性カテゴリにおいて許容可能な特性のバランスを提供しない。例えば、CE1、CE3、及びCE4は、10MPaの引張強度及び50%未満のホットナイフ押込のケーブルジャケット特性を満たすが、70%の破断時伸び又は1000時間のESCR値を満たさない。同様に、CE2は、10MPaの引張強度をほぼ満たし、50%未満のホットナイフ押込を有するが、CE2は、70%の破断時伸び又は1000時間のESCR値を満たさない。
【0094】
IE1~IE4は、IE1~IE4が1重量%超の結晶性ブロック複合体を含むという点で組成的に類似している。具体的には、IE1~IE4は各々、4重量%以上の結晶性ブロック複合体及び具体的にはプロピレン及びポリエチレンコポリマーを含む。表3に提供される機械的特性データから明らかなように、IE1~IE4は、すべての機械的特性カテゴリにおいて許容可能なケーブルジャケット特性を示す。このように、IE1~IE4の各々は、10MPaの引張強度、70%の破断時伸び、50%未満のホットナイフ押込、及び1000時間のESCR値のケーブルジャケット特性を満たすか、又はそれを超える。