(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-25
(45)【発行日】2025-05-08
(54)【発明の名称】化合物、組成物、及び疾患の治療方法
(51)【国際特許分類】
C07H 21/04 20060101AFI20250428BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20250428BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20250428BHJP
A61P 31/00 20060101ALI20250428BHJP
A61K 31/7125 20060101ALI20250428BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20250428BHJP
A61P 31/12 20060101ALI20250428BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20250428BHJP
A61P 31/14 20060101ALI20250428BHJP
【FI】
C07H21/04 Z
A61P43/00 111
A61P35/00
A61P31/00
A61K31/7125
A61K45/00
A61P31/12
A61P37/04
A61P31/14
C07H21/04 CSP
(21)【出願番号】P 2023070638
(22)【出願日】2023-04-24
(62)【分割の表示】P 2020512430の分割
【原出願日】2018-08-30
【審査請求日】2023-05-23
(32)【優先日】2017-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2018-04-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】524326990
【氏名又は名称】インボックス・ファーマ・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アンジャーネユル・シェリ
(72)【発明者】
【氏名】ギータ・メヘル
(72)【発明者】
【氏名】スリーロッパ・チャラ
(72)【発明者】
【氏名】シュヨンホワ・ジョウ
(72)【発明者】
【氏名】ラーダークリシュナン・ピー・アイヤー
【審査官】松澤 優子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/027646(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/093933(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/106740(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/077354(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07H 21/04
A61P
A61K
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I)の化合物又は該化合物の薬学的に許容される塩若しくは立体異性体。
【化1】
[式中、
ZはOであり;
B
1
は天然のプリニル核酸塩基であり、かつ、B
2
は天然のピリミジニル核酸塩基であるか、又は
B
2
は天然のプリニル核酸塩基であり、かつ、B
1
は天然のピリミジニル核酸塩基であり;
X
1及びX
2のそれぞれは、Oであり;
Y
1及びY
2のそれぞれは独立に、O、又はSであり;
L
1及びL
2のそれぞれは独立に、非存在であるか、又はC
1-C
6アルキルであり;
R
1及びR
2のそれぞれは独立に、水素、ハロ、-CN、C
1-C
20アルキル、又はOR
7であり;
R
3及びR
4のそれぞれは独立に、水素、又はアリールであり、各アリールは、1以上のR
8で置換されていても良く;
R
7は水素、又はC
1-C
20アルキルであり;
各R
8は独立に、C
1-C
20アルキル、O-アリール、C(O)-アリール、OC(O)-アリール、C(O)O-アリール、C(O)N(H)-アリール、N(H)C(O)-アリール、N(H)
2C(O)-アリール、又はS(O)
2N(H)-アリールであり、各アリールは、1以上のR
9によって置換されていても良く;及び
各R
9は独立に、C
1-C
20アルキル、又はO-C
1-C
20アルキルである。]
【請求項2】
前記化合物が、下記式(I-a)、(I-b)、(I-c)、又は(I-d)の化合物である、請求項1に記載の化合物又は該化合物の薬学的に許容される塩。
【化2】
【請求項3】
B
1が天然のプリニル核酸塩基であり、B
2が天然のピリミジニル核酸塩基である、請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項4】
B
1がアデニニル又はグアニニルであり、B
2がシトシニル、チミニル又はウラシリルである、請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項5】
B
1がアデニニルであり、B
2がウラシリルである、請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項6】
R
1及びR
2のそれぞれが独立に水素、ハロ又はOR
7である、請求項1~5のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項7】
R
1及びR
2のそれぞれが独立に、ハロである、請求項1~6のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項8】
R
1及びR
2のそれぞれが水素でもOR
7でもない、請求項1~5のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項9】
Y
1及びY
2の一方がOであり、Y
1及びY
2の他方がSである、請求項1~8のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項10】
Y
1及びY
2のそれぞれが独立にSである、請求項1~8のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項11】
Y
1及びY
2のそれぞれが独立にOである、請求項1~8のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項12】
L
1及びL
2のそれぞれが独立に非存在であるか、又はC
1-C
6アルキルである、請求項1~11のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項13】
R
3及びR
4のそれぞれが独立に水素、アリール、又はヘテロアリールであり、アリール及びヘテロアリールが1~5個のR
8で置換されていても良い、請求項1~12のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項14】
R
3がアリール又はヘテロアリールであり、それらのそれぞれが1~5個のR
8で置換されていても良く、R
4が水素である、請求項1~13のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項15】
R
3が1個のR
8で置換されたフェニルであり、R
4が水素である、請求項1~14のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項16】
R
3及びR
4のそれぞれが独立に、1個のR
8で置換されたフェニルである、請求項1~13のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項17】
Y
1及びY
2のそれぞれがOであり、R
3及びR
4のそれぞれが独立に水素である、請求項1~8のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項18】
Y
2がOであり、R
4が水素である、請求項1~9及び11のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項19】
Y
1及びY
2のそれぞれが独立にSであり、R
3及びR
4のそれぞれが独立に、1個のR
8で置換されている、請求項1~8のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項20】
Y
1がSであり、R
3が1個のR
8で置換されている、請求項1~10のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項21】
R
8が、1~5個のR
9によって置換されていても良いC(O)-アリールである、請求項1~20のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項22】
R
8が、1~5個のR
9によって置換されていても良いOC(O)-アリールである、請求項1~20のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項23】
R
9がO-C
1-C
12アルキルである、請求項21又は22に記載の化合物。
【請求項24】
前記化合物が下記の表から選択される、請求項1に記載の化合物又は該化合物の薬学的に許容される塩。
【表1】
【請求項25】
請求項1~24に記載のいずれか1項に記載の化合物、該化合物の薬学的に許容される塩又は立体異性体を含む、がんを治療するための医薬組成物。
【請求項26】
前記がんが、乳房、骨、脳、子宮頸部、結腸、消化管、眼、胆嚢、リンパ節、血液、肺、肝臓、皮膚、口腔、前立腺、卵巣、陰茎、膵臓、子宮、精巣、胃、胸腺、甲状腺、又は他の身体部分のがんである、請求項25に記載の医薬組成物。
【請求項27】
前記がんが肝臓のがんである、請求項26に記載の医薬組成物。
【請求項28】
腫瘍内投与用に製剤化された、請求項25~27のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項29】
経口投与用に製剤化された、請求項25~27のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項30】
非経口投与用に製剤化された、請求項25~27のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項31】
非経口投与が、静脈投与、皮下投与、又は筋肉投与である、請求項30に記載の医薬組成物。
【請求項32】
腹腔内投与用に製剤化された、請求項30に記載の医薬組成物。
【請求項33】
さらに追加の治療剤を含む、請求項25~32のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項34】
追加の治療剤とともに投与される、請求項25~32のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項35】
追加の治療剤が抗がん剤である、請求項33又は34に記載の医薬組成物。
【請求項36】
追加の治療剤が、メトトレキセート、5-フルオロウラシル、ドキソルビシン、ビンクリスチン、ブレオマイシン、ビンブラスチン、ダカルバジン、トポシド(toposide)、シスプラチン、エピルビシン又はソラフェニブトシレートである、請求項33又は34に記載の医薬組成物。
【請求項37】
請求項1~24のいずれか1項に記載の化合物、該化合物の薬学的に許容される塩又は立体異性体を含む、微生物感染を治療するための医薬組成物。
【請求項38】
請求項1~24のいずれか1項に記載の化合物、該化合物の薬学的に許容される塩又は立体異性体を含む、ウィルス感染を治療するための医薬組成物。
【請求項39】
ウィルス感染が、C型肝炎ウィルス、ノロウィルス、フニンウィルス、呼吸器合胞体ウィルス、又はデング熱ウィルスである、請求項38に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本願は、2018年4月30日出願の米国暫定特許出願第62/664,493号;及び2017年8月31日出願の同62/552,473号(これらそれぞれの内容は、参照によって全体が本明細書に組み込まれるものである。)に対する優先権の恩恵を主張するものである。
【0002】
宿主において自然免疫防御系を活性化し、パターン認識受容体の発現を誘導する化合物及び組成物、並びに微生物感染若しくは増殖性疾患(例えば、がん)の治療のためにそれらを使用する方法が開示される。
【背景技術】
【0003】
自然免疫系の重要な特徴は、異物の認識及び排除である。それらの病原性侵入物の特定は、病原体関連分子パターン(PAMP)として既知である進化的に保存された微生物構造の宿主認識を通じて起こる(Jensen, S. and Thomsen, A. R. J Virol(2012) 86:2900-2910)。それらのPAMPは、複数の微生物種によって広く共有され得るものであり、それらの生存及び/又は病原性にとって非常に重要である、核酸、リポ多糖、及び糖タンパク質などの広範な分子構造を含む。宿主認識は、パターン認識受容体(PRR)の活性化などの複数の経路によって起こり得て、それによって最終的に、下流のシグナル伝達事象が生じ、ついには免疫応答の亢進となる。
【0004】
今日までに、病原性感染のセンサーとして役立ついくつかのPRRが特定されている。例えば、レチノイン酸誘導遺伝子I(RIG-I)タンパク質は、微生物由来RNAのセンサーとしても機能するRNAヘリカーゼである。RIG-Iは、フラビウィルス科(例えば、西ナイルウィルス、C型肝炎ウィルス、日本脳炎ウィルス、デング熱ウィルス)、パラミクソウィルス科(例えば、センダイウィルス、ニューカッスル病ウィルス、呼吸器合胞体ウィルス、麻疹ウィルス)、ラブドウィルス科(例、狂犬病ウィルス)、オルソミクソウィルス科(例、インフルエンザウィルスA型、インフルエンザウィルスB型)、及びアレナウィルス科(例、ラッサウィルス)などの種々の異なるウィルス科に由来するRNAウィルスの宿主認識における重要な因子である。インターフェロン遺伝子刺激因子(STING)は、TBK1-IRF3シグナル伝達複合体を活性化させ、I型インターフェロン(IFN-β及びIFN-α)及び他の免疫経路タンパク質の誘導を結果として生じる、細胞質アダプタータンパク質である。他のPRRはまた、細胞表面上及びエンドソーム区画内で発現するNOD2、LGP2、MDA5、並びにいくつかのToll様受容体(TLR)を含む、微生物由来の核酸を感知することにおいて役割を担っている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】Jensen, S. and Thomsen, A. R. J Virol(2012) 86:2900-2910
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
多くの現行の抗ウィルス療法の欠点は、広範に使用すると生じる薬剤耐性変異体の出現に関するものである。さらに、多くの利用可能な治療で、持続的且つ長期の療法が必要であり、その結果、望ましくない副作用が生じ,治療終了での再発リスクが生じることが多い。さらに、多くのウィルスが異なる遺伝子型に細分され得るものであり、一つの遺伝子型に対して開発されたある種の薬剤が他の遺伝子型に対しては不活性となり得る。対照的に、PRR誘発し得るウィルス由来RNAの小分子摸倣体を用いると、それらの化合物は遺伝子型に対して作動性である可能性があり、直接の抗ウィルス活性並びに宿主免疫応答を活性化する能力の両方を有し得るものであり、薬剤抵抗性の発達及び毒性を制限可能であることから、ウィルス感染治療への別のアプローチが提供され得る。従って、疾患治療で使用される,そして診断ツールとして使用されるPRRの発現を誘発する新世代の療法が必要とされている。
【0007】
さらに、RIG-Iは、ある種類のがん、例えば肝細胞癌の予後を予測するバイオマーカーとして働く(Hou, J. et al, Cancer Cell (2014) 25:49-63)。最近の刊行物により、自然免疫及び適応免疫の仲介物としてのRIG-I及びSTINGの重要性が強調されており、RIG-I及びSTINGのアゴニストはがん療法における免疫腫瘍薬として認識されている(Li, X. Y. et al, Mol Cell Oncol(2014)1:e968016、Woo, S. R. Trends in Immunol(2015)36:250-256)。特に、RIG-Iは、造血性の増殖及び分化、白血病性幹細胞性の維持、並びに肝細胞癌の腫瘍形成など、基本的な細胞プロセスの調節に関与しており、それは、RIG-Iが腫瘍抑制因子として非常に重要な機能を果たすことを示している。重要な点として、サイトソルDNAセンシングのSTING経路は、自然免疫センシングにおける重要な機序上の役割を担っており、がんにおける並びに治療薬及び診断薬などの免疫腫瘍用途に関連するI型IFN産生を駆動することが明らかになっている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
環状ジヌクレオチド化合物、環状ジヌクレオチド化合物を含む組成物、及び関連する使用方法が、本明細書で記載されている。
【0009】
1態様において、開示は、下記式(I)の化合物又はそれの薬学的に許容される塩若しくは立体異性体を特徴とする。
【0010】
【化1】
式中、
ZはS又はOであり;B
1及びB
2のそれぞれは独立に、プリニル核酸塩基又はピリミジニル核酸塩基であり;X
1及びX
2のそれぞれは独立に、O又はSであり;Y
1及びY
2のそれぞれは独立に、O、S、又はNR
5であり;L
1及びL
2のそれぞれは独立に、非存在、C
1-C
6アルキル又はC
1-C
6ヘテロアルキルであり、各アルキル及びヘテロアルキルは、R
6で置換されていても良く;R
1及びR
2のそれぞれは独立に、水素、ハロ、-CN、C
1-C
20アルキル(例:C
1-C
6アルキル)、又はOR
7であり;R
3及びR
4のそれぞれは独立に、水素、C
1-C
20アルキル(例:C
1-C
6アルキル)、C
1-C
20ヘテロアルキル(例:C
1-C
6ヘテロアルキル)、OC(O)OC
1-C
20アルキル(例:C
1-C
6アルキル)、シクロアルキル、複素環、アリール、又はヘテロアリールであり、各アルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、複素環、アリール、及びヘテロアリールは、1以上のR
8で置換されていても良く;R
5は水素又はC
1-C
20アルキル(例:C
1-C
6アルキル)であり;R
6はハロ、-CN、C
1-C
20アルキル(例:C
1-C
6アルキル)、OR
7、オキソ、シクロアルキル、複素環、アリール、又はヘテロアリールであり、各アルキル、シクロアルキル、複素環、アリール、及びヘテロアリールは、1以上のR
9で置換されていても良く;R
7は水素、C
1-C
20アルキル(例:C
1-C
6アルキル)、シクロアルキル、複素環、アリール、又はヘテロアリールであり、各アルキル、シクロアルキル、複素環、アリール、及びヘテロアリールは、1以上のR
9で置換されていても良く;各R
8は独立に、C
1-C
20アルキル(例:C
1-C
6アルキル)、C
1-C
20ヘテロアルキル、C(O)-C
1-C
20アルキル、OC(O)-C
1-C
20アルキル(例:C
1-C
6アルキル)、C(O)O-C
1-C
20アルキル(例:C
1-C
6アルキル)、OC(O)O-C
1-C
20アルキル(例:C
1-C
6アルキル)、C(O)N(R
5)-C
1-C
20アルキル(例:C
1-C
6アルキル)、N(R
5)C(O)-C
1-C
20アルキル(例:C
1-C
6アルキル)、OC(O)N(R
5)-C
1-C
20アルキル(例:C
1-C
6アルキル)、O-アリール、O-ヘテロアリール、C(O)-アリール、C(O)-ヘテロアリール、OC(O)-アリール、C(O)O-アリール、OC(O)-ヘテロアリール、C(O)O-ヘテロアリール、C(O)O-アリール、C(O)O-ヘテロアリール、C(O)N(R
5)-アリール、C(O)N(R
5)-ヘテロアリール、N(R
5)C(O)-アリール、N(R
5)
2C(O)-アリール、又はN(R
5)C(O)-ヘテロアリール、S(O)
2N(R
5)-アリールであり、各アルキル、ヘテロアルキル、アリール、及びヘテロアリールは、1以上のR
9によって置換されていても良く;及び各R
9は独立に、C
1-C
20アルキル、O-C
1-C
20アルキル、C
1-C
20ヘテロアルキル、ハロ、-CN、OH、オキソ、アリール、ヘテロアリール、O-アリール、又はO-ヘテロアリールである。
【0011】
一部の実施形態において、当該化合物は、下記式(I-a)、(I-b)、(I-c)、又は(I-d)の化合物又はそれの薬学的に許容される塩である。
【0012】
【化2】
式中、Z、B
1、B
2、X
1、X
2、Y
1、Y
2、L
1、L
2、R
1、R
2、R
3、R
4、及びそれらの下位可変要素のそれぞれは、前記の通りである。
【0013】
1態様において、本開示は、微生物感染を患う対象者におけるパターン認識受容体の発現を誘発する方法であって、対象者に対して有効量の式(I)の化合物又はそれの薬学的に許容される塩若しくは立体異性体を投与することを含む方法について記載するものである。
【0014】
【化3】
式中、
ZはS又はOであり、
B
1及びB
2のそれぞれは独立に、プリニル核酸塩基又はピリミジニル核酸塩基であり;
X
1及びX
2のそれぞれは独立に、O又はSであり;
Y
1及びY
2のそれぞれは独立に、O、S、又はNR
5であり;
L
1及びL
2のそれぞれは独立に、非存在、C
1-C
6アルキル又はC
1-C
6ヘテロアルキルであり、各C
1-C
6アルキル及びC
1-C
6ヘテロアルキルは、R
6で置換されていても良く;
R
1及びR
2のそれぞれは独立に、水素、ハロ、-CN、C
1-C
20アルキル(例:C
1-C
6アルキル)、又はOR
7であり;
R
3及びR
4のそれぞれは独立に、水素、C
1-C
20アルキル(例:C
1-C
6アルキル)、C
1-C
20ヘテロアルキル(例:C
1-C
6ヘテロアルキル)、シクロアルキル、複素環、OC(O)OC
1-C
20アルキル(例:C
1-C
6アルキル)、アリール、又はヘテロアリールであり、各C
1-C
20アルキル、C
1-C
20ヘテロアルキル、シクロアルキル、複素環、アリール、OC(O)OC
1-C
20アルキル(例:C
1-6アルキル)、及びヘテロアリールは、1~5個のR
8で置換されていても良く;
各R
5は独立に、水素又はC
1-C
20アルキル(例:C
1-C
6アルキル)であり;
R
6は、ハロ、-CN、C
1-C
20アルキル(例:C
1-C
6アルキル)、OR
7、オキソ、シクロアルキル、複素環、アリール、又はヘテロアリールであり、各C
1-C
20アルキル、シクロアルキル、複素環、アリール、又はヘテロアリールは、1~5個のR
9で置換されていても良く;
R
7は、水素、C
1-C
20アルキル(例:C
1-C
6アルキル)、シクロアルキル、複素環、アリール、又はヘテロアリールであり、各C
1-C
20アルキル、シクロアルキル、複素環、アリール、又はヘテロアリールは、1~5個のR
9で置換されていても良く;
各R
8は独立に、C
1-C
20アルキル(例:C
1-C
6アルキル)、O-アリール、OC(O)NR
5-C
1-C
20アルキル(例:C
1-C
6アルキル)、S(O)
2NR
5-アリール、NR
5C(O)-アリール、NR
5R
5C(O)-アリール、C(O)-アリール、C(O)-ヘテロアリール、OC(O)-アリール、又はOC(O)-ヘテロアリール、OC(O)-C
1-C
20アルキル(例:C
1-C
6)、OC(O)O-C
1-C
20アルキル(例:C
1-C
6)であり、各C
1-C
20アルキル、O-アリール、OC(O)NR
5-C
1-C
20アルキル、S(O)
2NR
5-アリール、NR
5C(O)-アリール、CH
2NR
5C(O)-アリール、C(O)-アリール、C(O)-ヘテロアリール、OC(O)-アリール、又はOC(O)-ヘテロアリール、OC(O)-C
1-C
20アルキル(例:C
1-C
6)、OC(O)O-C
1-C
20アルキル(例:C
1-C
6)は、1~5個のR
9によって置換されていても良く;
各R
9は独立に、C
1-C
20アルキル(例:C
1-C
6アルキル)、ハロ、-CN、OH、O-C
1-C
20アルキル、O-C
1-C
20ヘテロアルキル、O-アリール、O-ヘテロアリールである。
【0015】
別の態様において、開示は、対象者においてがんを治療する方法であって、当該対象者に対して治療上有効量の式(I)の化合物又はそれの薬学的に許容される塩若しくは立体異性体を投与することを含む方法を特徴とする。
【0016】
【化4】
式中、
ZはSまたはOであり;B
1及びB
2のそれぞれは独立に、プリニル核酸塩基又はピリミジニル核酸塩基であり;X
1及びX
2のそれぞれは独立に、O又はSであり;Y
1及びY
2のそれぞれは独立に、O、S、又はNR
5であり;L
1及びL
2のそれぞれは独立に、非存在、C
1-C
6アルキル又はC
1-C
6ヘテロアルキルであり、各アルキル及びヘテロアルキルは、R
6で置換されていても良く;R
1及びR
2のそれぞれは独立に、水素、ハロ、-CN、C
1-C
20アルキル(例:C
1-C
6アルキル)、又はOR
7であり;R
3及びR
4のそれぞれは独立に、水素、C
1-C
20アルキル(例:C
1-C
6アルキル)、C
1-C
20ヘテロアルキル(例:C
1-C
6ヘテロアルキル)、OC(O)OC
1-C
20アルキル(例:C
1-C
6アルキル)、シクロアルキル、複素環、アリール、又はヘテロアリールであり、各アルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、複素環、アリール、及びヘテロアリールは、1以上のR
8で置換されていても良く;R
5は水素又はC
1-C
20アルキル(例:C
1-C
6アルキル)であり;R
6はハロ、-CN、C
1-C
20アルキル(例:C
1-C
6アルキル)、OR
7、オキソ、シクロアルキル、複素環、アリール、又はヘテロアリールであり、各アルキル、シクロアルキル、複素環、アリール、及びヘテロアリールは、1以上のR
9で置換されていても良く;R
7は水素、C
1-C
20アルキル(例:C
1-C
6アルキル)、シクロアルキル、複素環、アリール、又はヘテロアリールであり、各アルキル、シクロアルキル、複素環、アリール、及びヘテロアリールは、1以上のR
9で置換されていても良く;各R
8は独立に、C
1-C
20アルキル(例:C
1-C
6アルキル)、C
1-C
20ヘテロアルキル、C(O)-C
1-C
20アルキル、OC(O)-C
1-C
20アルキル(例:C
1-C
6アルキル)、C(O)O-C
1-C
20アルキル(例:C
1-C
6アルキル)、OC(O)O-C
1-C
20アルキル(例:C
1-C
6アルキル)、C(O)N(R
5)-C
1-C
20アルキル(例:C
1-C
6アルキル)、N(R
5)C(O)-C
1-C
20アルキル(例:C
1-C
6アルキル)、OC(O)N(R
5)-C
1-C
20アルキル(例:C
1-C
6アルキル)、O-アリール、O-ヘテロアリール、C(O)-アリール、C(O)-ヘテロアリール、OC(O)-アリール、C(O)O-アリール、OC(O)-ヘテロアリール、C(O)O-ヘテロアリール、C(O)O-アリール、C(O)O-ヘテロアリール、C(O)N(R
5)-アリール、C(O)N(R
5)-ヘテロアリール、N(R
5)C(O)-アリール、N(R
5)
2C(O)-アリール、又はN(R
5)C(O)-ヘテロアリール、S(O)
2N(R
5)-アリールであり、各アルキル、ヘテロアルキル、アリール、及びヘテロアリールは、1以上のR
9によって置換されていても良く;各R
9は独立に、C
1-C
20アルキル、O-C
1-C
20アルキル、C
1-C
20ヘテロアルキル、ハロ、-CN、OH、オキソ、アリール、ヘテロアリール、O-アリール、又はO-ヘテロアリールである。
【0017】
別の態様において、開示は、ワクチン、及び式(I)の化合物又はそれの薬学的に許容される塩若しくは立体異性体を含むワクチンアジュバントを含む組成物を特徴とする。
【0018】
【化5】
式中、
ZはSまたはOであり;B
1及びB
2のそれぞれは独立に、プリニル核酸塩基又はピリミジニル核酸塩基であり;X
1及びX
2のそれぞれは独立に、O又はSであり;Y
1及びY
2のそれぞれは独立に、O、S、又はNR
5であり;L
1及びL
2のそれぞれは独立に、非存在、C
1-C
6アルキル又はC
1-C
6ヘテロアルキルであり、各アルキル及びヘテロアルキルは、R
6で置換されていても良く;R
1及びR
2のそれぞれは独立に、水素、ハロ、-CN、C
1-C
20アルキル(例:C
1-C
6アルキル)、又はOR
7であり;R
3及びR
4のそれぞれは独立に、水素、C
1-C
20アルキル(例:C
1-C
6アルキル)、C
1-C
20ヘテロアルキル(例:C
1-C
6ヘテロアルキル)、OC(O)OC
1-C
20アルキル(例:C
1-C
6アルキル)、シクロアルキル、複素環、アリール、又はヘテロアリールであり、各アルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、複素環、アリール、及びヘテロアリールは、1以上のR
8で置換されていても良く;R
5は水素又はC
1-C
20アルキル(例:C
1-C
6アルキル)であり;R
6はハロ、-CN、C
1-C
20アルキル(例:C
1-C
6アルキル)、OR
7、オキソ、シクロアルキル、複素環、アリール、又はヘテロアリールであり、各アルキル、シクロアルキル、複素環、アリール、及びヘテロアリールは、1以上のR
9で置換されていても良く;R
7は水素、C
1-C
20アルキル(例:C
1-C
6アルキル)、シクロアルキル、複素環、アリール、又はヘテロアリールであり、各アルキル、シクロアルキル、複素環、アリール、及びヘテロアリールは、1以上のR
9で置換されていても良く;各R
8は独立に、C
1-C
20アルキル(例:C
1-C
6アルキル)、C
1-C
20ヘテロアルキル、C(O)-C
1-C
20アルキル、OC(O)-C
1-C
20アルキル(例:C
1-C
6アルキル)、C(O)O-C
1-C
20アルキル(例:C
1-C
6アルキル)、OC(O)O-C
1-C
20アルキル(例:C
1-C
6アルキル)、C(O)N(R
5)-C
1-C
20アルキル(例:C
1-C
6アルキル)、N(R
5)C(O)-C
1-C
20アルキル(例:C
1-C
6アルキル)、OC(O)N(R
5)-C
1-C
20アルキル(例:C
1-C
6アルキル)、O-アリール、O-ヘテロアリール、C(O)-アリール、C(O)-ヘテロアリール、OC(O)-アリール、C(O)O-アリール、OC(O)-ヘテロアリール、C(O)O-ヘテロアリール、C(O)O-アリール、C(O)O-ヘテロアリール、C(O)N(R
5)-アリール、C(O)N(R
5)-ヘテロアリール、N(R
5)C(O)-アリール、N(R
5)
2C(O)-アリール、又はN(R
5)C(O)-ヘテロアリール、S(O)
2N(R
5)-アリールであり、各アルキル、ヘテロアルキル、アリール、及びヘテロアリールは、1以上のR
9によって置換されていても良く;各R
9は独立に、C
1-C
20アルキル、O-C
1-C
20アルキル、C
1-C
20ヘテロアルキル、ハロ、-CN、OH、オキソ、アリール、ヘテロアリール、O-アリール、又はO-ヘテロアリールである。
【0019】
別の態様において、開示は、対象者における免疫調節のためのパターン認識受容体(PRR)の発現を誘発する方法であって、対象者に対して有効量の式(I)の化合物又はそれの薬学的に許容される塩若しくは立体異性体を投与することを含む方法を特徴とする。
【0020】
【化6】
式中、
ZはSまたはOであり;B
1及びB
2のそれぞれは独立に、プリニル核酸塩基又はピリミジニル核酸塩基であり;X
1及びX
2のそれぞれは独立に、O又はSであり;Y
1及びY
2のそれぞれは独立に、O、S、又はNR
5であり;L
1及びL
2のそれぞれは独立に、非存在、C
1-C
6アルキル又はC
1-C
6ヘテロアルキルであり、各アルキル及びヘテロアルキルは、R
6で置換されていても良く;R
1及びR
2のそれぞれは独立に、水素、ハロ、-CN、C
1-C
20アルキル(例:C
1-C
6アルキル)、又はOR
7であり;R
3及びR
4のそれぞれは独立に、水素、C
1-C
20アルキル(例:C
1-C
6アルキル)、C
1-C
20ヘテロアルキル(例:C
1-C
6ヘテロアルキル)、OC(O)OC
1-C
20アルキル(例:C
1-C
6アルキル)、シクロアルキル、複素環、アリール、又はヘテロアリールであり、各アルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、複素環、アリール、及びヘテロアリールは、1以上のR
8で置換されていても良く;R
5は水素又はC
1-C
20アルキル(例:C
1-C
6アルキル)であり;R
6はハロ、-CN、C
1-C
20アルキル(例:C
1-C
6アルキル)、OR
7、オキソ、シクロアルキル、複素環、アリール、又はヘテロアリールであり、各アルキル、シクロアルキル、複素環、アリール、及びヘテロアリールは、1以上のR
9で置換されていても良く;R
7は水素、C
1-C
20アルキル(例:C
1-C
6アルキル)、シクロアルキル、複素環、アリール、又はヘテロアリールであり、各アルキル、シクロアルキル、複素環、アリール、及びヘテロアリールは、1以上のR
9で置換されていても良く;各R
8は独立に、C
1-C
20アルキル(例:C
1-C
6アルキル)、C
1-C
20ヘテロアルキル、C(O)-C
1-C
20アルキル、OC(O)-C
1-C
20アルキル(例:C
1-C
6アルキル)、C(O)O-C
1-C
20アルキル(例:C
1-C
6アルキル)、OC(O)O-C
1-C
20アルキル(例:C
1-C
6アルキル)、C(O)N(R
5)-C
1-C
20アルキル(例:C
1-C
6アルキル)、N(R
5)C(O)-C
1-C
20アルキル(例:C
1-C
6アルキル)、OC(O)N(R
5)-C
1-C
20アルキル(例:C
1-C
6アルキル)、O-アリール、O-ヘテロアリール、C(O)-アリール、C(O)-ヘテロアリール、OC(O)-アリール、C(O)O-アリール、OC(O)-ヘテロアリール、C(O)O-ヘテロアリール、C(O)O-アリール、C(O)O-ヘテロアリール、C(O)N(R
5)-アリール、C(O)N(R
5)-ヘテロアリール、N(R
5)C(O)-アリール、N(R
5)
2C(O)-アリール、又はN(R
5)C(O)-ヘテロアリール、S(O)
2N(R
5)-アリールであり、各アルキル、ヘテロアルキル、アリール、及びヘテロアリールは、1以上のR
9によって置換されていても良く;各R
9は独立に、C
1-C
20アルキル、O-C
1-C
20アルキル、C
1-C
20ヘテロアルキル、ハロ、-CN、OH、オキソ、アリール、ヘテロアリール、O-アリール、又はO-ヘテロアリールである。
【0021】
別の態様において、開示は、がんを有する対象者における免疫調節及び治療応答誘発のためのパターン認識受容体(PRR)の発現を誘発する方法であって、対象者に対して有効量の式(I)の化合物又はそれの薬学的に許容される塩若しくは立体異性体を投与することを含む方法を特徴とする。
【0022】
【化7】
式中、
ZはSまたはOであり;B
1及びB
2のそれぞれは独立に、プリニル核酸塩基又はピリミジニル核酸塩基であり;X
1及びX
2のそれぞれは独立に、O又はSであり;Y
1及びY
2のそれぞれは独立に、O、S、又はNR
5であり;L
1及びL
2のそれぞれは独立に、非存在、C
1-C
6アルキル又はC
1-C
6ヘテロアルキルであり、各アルキル及びヘテロアルキルは、R
6で置換されていても良く;R
1及びR
2のそれぞれは独立に、水素、ハロ、-CN、C
1-C
20アルキル(例:C
1-C
6アルキル)、又はOR
7であり;R
3及びR
4のそれぞれは独立に、水素、C
1-C
20アルキル(例:C
1-C
6アルキル)、C
1-C
20ヘテロアルキル(例:C
1-C
6ヘテロアルキル)、OC(O)OC
1-C
20アルキル(例:C
1-C
6アルキル)、シクロアルキル、複素環、アリール、又はヘテロアリールであり、各アルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、複素環、アリール、及びヘテロアリールは、1以上のR
8で置換されていても良く;R
5は水素又はC
1-C
20アルキル(例:C
1-C
6アルキル)であり;R
6はハロ、-CN、C
1-C
20アルキル(例:C
1-C
6アルキル)、OR
7、オキソ、シクロアルキル、複素環、アリール、又はヘテロアリールであり、各アルキル、シクロアルキル、複素環、アリール、及びヘテロアリールは、1以上のR
9で置換されていても良く;R
7は水素、C
1-C
20アルキル(例:C
1-C
6アルキル)、シクロアルキル、複素環、アリール、又はヘテロアリールであり、各アルキル、シクロアルキル、複素環、アリール、及びヘテロアリールは、1以上のR
9で置換されていても良く;各R
8は独立に、C
1-C
20アルキル(例:C
1-C
6アルキル)、C
1-C
20ヘテロアルキル、C(O)-C
1-C
20アルキル、OC(O)-C
1-C
20アルキル(例:C
1-C
6アルキル)、C(O)O-C
1-C
20アルキル(例:C
1-C
6アルキル)、OC(O)O-C
1-C
20アルキル(例:C
1-C
6アルキル)、C(O)N(R
5)-C
1-C
20アルキル(例:C
1-C
6アルキル)、N(R
5)C(O)-C
1-C
20アルキル(例:C
1-C
6アルキル)、OC(O)N(R
5)-C
1-C
20アルキル(例:C
1-C
6アルキル)、O-アリール、O-ヘテロアリール、C(O)-アリール、C(O)-ヘテロアリール、OC(O)-アリール、C(O)O-アリール、OC(O)-ヘテロアリール、C(O)O-ヘテロアリール、C(O)O-アリール、C(O)O-ヘテロアリール、C(O)N(R
5)-アリール、C(O)N(R
5)-ヘテロアリール、N(R
5)C(O)-アリール、N(R
5)
2C(O)-アリール、又はN(R
5)C(O)-ヘテロアリール、S(O)
2N(R
5)-アリールであり、各アルキル、ヘテロアルキル、アリール、及びヘテロアリールは、1以上のR
9によって置換されていても良く;各R
9は独立に、C
1-C
20アルキル、O-C
1-C
20アルキル、C
1-C
20ヘテロアルキル、O-C
1-C
20-NR
10R
10、ハロ、-CN、OH、オキソ、アリール、ヘテロアリール、O-アリール、又はO-ヘテロアリールである。
【0023】
別の態様において、本開示は、対象者における免疫応答を誘発する方法であって、対象者に対して治療上有効量の式(I)の化合物又はそれの薬学的に許容される塩若しくは立体異性体を投与することを含む方法を特徴とする。
【0024】
【化8】
式中、
ZはSまたはOであり;B
1及びB
2のそれぞれは独立に、プリニル核酸塩基又はピリミジニル核酸塩基であり;X
1及びX
2のそれぞれは独立に、O又はSであり;Y
1及びY
2のそれぞれは独立に、O、S、又はNR
5であり;L
1及びL
2のそれぞれは独立に、非存在、C
1-C
6アルキル又はC
1-C
6ヘテロアルキルであり、各アルキル及びヘテロアルキルは、R
6で置換されていても良く;R
1及びR
2のそれぞれは独立に、水素、ハロ、-CN、C
1-C
20アルキル(例:C
1-C
6アルキル)、又はOR
7であり;R
3及びR
4のそれぞれは独立に、水素、C
1-C
20アルキル(例:C
1-C
6アルキル)、C
1-C
20ヘテロアルキル(例:C
1-C
6ヘテロアルキル)、OC(O)OC
1-C
20アルキル(例:C
1-C
6アルキル)、シクロアルキル、複素環、アリール、又はヘテロアリールであり、各アルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、複素環、アリール、及びヘテロアリールは、1以上のR
8で置換されていても良く;R
5は水素又はC
1-C
20アルキル(例:C
1-C
6アルキル)であり;R
6はハロ、-CN、C
1-C
20アルキル(例:C
1-C
6アルキル)、OR
7、オキソ、シクロアルキル、複素環、アリール、又はヘテロアリールであり、各アルキル、シクロアルキル、複素環、アリール、及びヘテロアリールは、1以上のR
9で置換されていても良く;R
7は水素、C
1-C
20アルキル(例:C
1-C
6アルキル)、シクロアルキル、複素環、アリール、又はヘテロアリールであり、各アルキル、シクロアルキル、複素環、アリール、及びヘテロアリールは、1以上のR
9で置換されていても良く;各R
8は独立に、C
1-C
20アルキル(例:C
1-C
6アルキル)、C
1-C
20ヘテロアルキル、C(O)-C
1-C
20アルキル、OC(O)-C
1-C
20アルキル(例:C
1-C
6アルキル)、C(O)O-C
1-C
20アルキル(例:C
1-C
6アルキル)、OC(O)O-C
1-C
20アルキル(例:C
1-C
6アルキル)、C(O)N(R
5)-C
1-C
20アルキル(例:C
1-C
6アルキル)、N(R
5)C(O)-C
1-C
20アルキル(例:C
1-C
6アルキル)、OC(O)N(R
5)-C
1-C
20アルキル(例:C
1-C
6アルキル)、O-アリール、O-ヘテロアリール、C(O)-アリール、C(O)-ヘテロアリール、OC(O)-アリール、C(O)O-アリール、OC(O)-ヘテロアリール、C(O)O-ヘテロアリール、C(O)O-アリール、C(O)O-ヘテロアリール、C(O)N(R
5)-アリール、C(O)N(R
5)-ヘテロアリール、N(R
5)C(O)-アリール、N(R
5)
2C(O)-アリール、又はN(R
5)C(O)-ヘテロアリール、S(O)
2N(R
5)-アリールであり、各アルキル、ヘテロアルキル、アリール、及びヘテロアリールは、1以上のR
9によって置換されていても良く;各R
9は独立に、C
1-C
20アルキル、O-C
1-C
20アルキル、C
1-C
20ヘテロアルキル、ハロ、-CN、OH、オキソ、アリール、ヘテロアリール、O-アリール、又はO-ヘテロアリールである。
【0025】
一部の実施形態において、前記免疫応答は抗腫瘍免疫を含む。一部の実施形態において、前記免疫応答は、PRR(例:STING、RIG-I、MDA5)の誘発を含む。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】化合物2又は化合物4及びジギトニンのいずれかで5.5時間処理したSZ14細胞を描く図である[ISG54 ISRE-ルシフェラーゼ活性を求め、DMSO処理細胞に対して正規化した(三連ウェル/刺激剤の平均±標準偏差)。]。
【
図2】化合物3及びジギトニンで6時間にわたり処理したSZ14細胞を描く図である[ISG54 ISRE-ルシフェラーゼ活性を求め、DMSO処理細胞に対して正規化した(三連ウェル/刺激剤の平均±標準偏差)。]。
【
図3A】NK-92細胞を、IL-2の非存在下に化合物4単独で23時間刺激したことを描く図である[培養上清中のIFN-γのレベルを、ELISAを用いて定量し、結果をpg/mLとして示した。細胞を対照DMSOでも処理し、そしてIL-2の存在下/非存在下で培地とともに培養した。]。
【
図3B】NK-92細胞の増殖がIL-2依存性であることを描く図である[IL-2の存在によって、IFN-γの産生を誘発することができる。]。
【
図4】RAW-Lucia-ISG-WT及びRAW-Lucia-ISG-STING KO細胞を、化合物2又は化合物4単独で19時間刺激したことを描く図である[細胞培養上清中の分泌型ルシフェラーゼの活性(IRF I型IFN活性)を、InvivogenのQuanti-lucを用いて測定した。データは、DMSO処理細胞と比較した誘発倍率として示している(三連ウェル/刺激剤の平均±標準偏差)。XLfitを用いてEC
50値を計算した。いずれの化合物も、STING KO細胞でIRF活性を誘発しなかった。]。
【
図5】肺微小血管、肝洞様微小血管、及び大腸微小血管から単離したヒト内皮細胞を、96ウェルプレートに蒔き、化合物4単独で刺激したことを描く図である[細胞培養上清を、処理後6時間及び23時間に回収した。培養上清中のRANTESのレベルを、ELISAを用いて定量し、結果をpg/mLとして示した。濃度(1.25、2.5、5、及び10ミクロモル)は、6種類の各棒グラフ内で左から右の方向で上昇している。]。
【
図6A】化合物単独で20時間刺激したTHP1-Dual-KI-STING-R232細胞を描く図である[細胞培養上清中の分泌型ルシフェラーゼ(IRF-I型IFN活性)(上のパネル)及びNF-κB(下のパネル)の活性を、それぞれInvivogenのQuanti-luc及びQuanti-blueを用いて測定した。データは、DMSO処理細胞と比較した誘発倍率として示してある(三連ウェル/刺激剤の平均±標準偏差)。EC
50値を、XL適合を用いて計算した。STING-R232(STING-WT)を挿入することでSTINGシグナル伝達経路をレスキューすることによって、THP-Dual-STINGKO細胞から、THP1-Dual-KI-STING-R232レポーター細胞系を発生させた。化合物は、STING KO細胞においてIRF活性を誘発しなかった。]。
【
図6B】化合物単独で20時間刺激したTHP1-Dual-KI-STING-R232細胞を描く図である[細胞培養上清中の分泌型ルシフェラーゼ(IRF-I型IFN活性)(上のパネル)及びNF-κB(下のパネル)の活性を、それぞれInvivogenのQuanti-luc及びQuanti-blueを用いて測定した。データは、DMSO処理細胞と比較した誘発倍率として示してある(三連ウェル/刺激剤の平均±標準偏差)。EC
50値を、XL適合を用いて計算した。STING-R232(STING-WT)を挿入することでSTINGシグナル伝達経路をレスキューすることによって、THP-Dual-STINGKO細胞から、THP1-Dual-KI-STING-R232レポーター細胞系を発生させた。化合物は、STING KO細胞においてIRF活性を誘発しなかった。]。
【
図7A】化合物単独で20時間刺激したTHP1-Dual-WT細胞を描く図である[細胞培養上清中の分泌型ルシフェラーゼ(IRF I型IFN活性)(上のパネル)及びNF-κB(下のパネル)の活性を、それぞれInvivogenのQuanti-luc及びQuanti-blueを用いて測定した。データは、DMSO処理細胞と比較した誘発倍率として示してある(三連ウェル/刺激剤の平均±標準偏差)。EC
50値を、XL適合を用いて計算した。THP1-Dual-WT細胞は、STING-HAQ変異体を発現する。化合物は、STING KO細胞においてIRF活性を誘発しなかった。]。
【
図7B】化合物単独で20時間刺激したTHP1-Dual-WT細胞を描く図である[細胞培養上清中の分泌型ルシフェラーゼ(IRF I型IFN活性)(上のパネル)及びNF-κB(下のパネル)の活性を、それぞれInvivogenのQuanti-luc及びQuanti-blueを用いて測定した。データは、DMSO処理細胞と比較した誘発倍率として示してある(三連ウェル/刺激剤の平均±標準偏差)。EC
50値を、XL適合を用いて計算した。THP1-Dual-WT細胞は、STING-HAQ変異体を発現する。化合物は、STING KO細胞においてIRF活性を誘発しなかった。]。
【
図8A】三連で化合物4単独により20時間刺激したTHP1-Dual-WT細胞を描く図である[細胞培養上清中のIRF駆動分泌型ルシフェラーゼの活性を、それぞれInvivogenのQuanti-luc及びQuanti-blueを用いて測定した。データは、DMSO処理細胞と比較した増加倍率として示してある(三連ウェル/刺激剤の平均±標準偏差)。]。
【
図8B】三連で化合物4単独によって20時間刺激したTHP1-Dual-WT細胞を描く図である[細胞培養上清中のNF-κBの活性を、それぞれInvivogenのQuanti-luc及びQuanti-blueを用いて測定した。データは、DMSO処理細胞と比較した増加倍率として示してある(三連ウェル/刺激剤の平均±標準偏差)。]。
【
図8C】三連で化合物4単独によって20時間刺激したTHP1-Dual-WT細胞を描く図である[培養上清中のRANTESのレベルを、ELISAを用いて定量し、結果をpg/mLとして示した。]。
【
図8D】三連で化合物4単独によって20時間刺激したTHP1-Dual-WT細胞を描く図である[培養上清中のIL-29のレベルを、ELISAを用いて定量し、結果をpg/mLとして示した。]。
【
図9A】THP1-Dual(WT)細胞を、化合物3単独(上のパネル)又は化合物/リポ混合物(下のパネル)によって20時間刺激したことを描く図である[細胞培養上清中の分泌型ルシフェラーゼ(IRF I型IFN活性)の活性を、それぞれInvivogenのQuanti-luc及びQuanti-blueを用いて測定した。データは、DMSO処理細胞と比較した誘発倍率として示している(三連ウェル/刺激剤の平均±標準偏差)。EC
50を、XL適合を用いて計算した。]。
【
図9B】THP1-Dual(WT)細胞を、化合物3単独(上のパネル)又は化合物/リポ混合物(下のパネル)によって20時間刺激したことを描く図である[細胞培養上清中のsNF-κBの活性を、それぞれInvivogenのQuanti-luc及びQuanti-blueを用いて測定した。データは、DMSO処理細胞と比較した誘発倍率として示している(三連ウェル/刺激剤の平均±標準偏差)、EC
50を、XL適合を用いて計算した。]。
【
図10】完全培地で増殖させたTHP1二重&STING KO THP1二重細胞を、各種濃度の化合物2又はDMSO対照とリポフェクタミンLTXで処理したことを描く図である[二重細胞は、NF-κB活性を測定するためのNF-κBコンセンサス転写応答エレメントの5個のコピーに融合したIFN-b最小プロモーターの制御下にある分泌型胚性アルカリホスファターゼ(SEAP)レポーター遺伝子及びIRF活性を測定するためのISG54最小プロモーターの制御下にあるLuciaレポーター遺伝子の両方を有する。20時間のインキュベーション後、QUANTI-lucを用いてIRF活性を評価してLuciaのレベルを測定し、620~655nmでのSEAPレベルを測定することでNF-κB活性を求めた。DMSO処理サンプルと比較した発光/吸光度における変化倍率から、誘発%を計算した。]。
【
図11】化合物及びジギトニンで処理したSZ14レポーター細胞(HEK293由来I型IFN誘発性レポーター細胞系)を描く図である[ISG54 ISRE-ルシフェラーゼ活性を求め、DMSO処理細胞に対して正規化した(三連ウェル/刺激剤の平均±標準偏差)。]。
【
図12】三連で8種類の濃度の化合物4によって20時間刺激した、96ウェルプレート中のTHP1-Dual-WT細胞を描く図である[細胞培養上清中のIRF駆動分泌型ルシフェラーゼ及びNF-κB駆動SEAPの活性を、それぞれInvivogenのQuanti-luc及びQuanti-blueを用いて測定した。データは、DMSO処理細胞と比較した増加倍率として示している(三連ウェル/刺激剤の平均±標準偏差)。化合物4は、THP1-STING KO細胞においてIRF活性を誘発しなかった。]。
【
図13】9mg/kgで生理食塩水対照若しくは化合物4を尾静脈を介して静脈投与したBalb/Cマウス5匹の群(雌、8週齢)の治療を描く図である[血清、脾臓及び肝臓サンプルを処置後2、4及び24時間に回収した。RANTES(A、C、E)及びTNF-α(B、D、F)のレベルを、ELISAを用いて測定した。結果を、血清サンプルについてはpg/mLとして、脾臓及び肝臓サンプルについてはpg/組織gとして示している。]。
【
図14】9mg/kgで生理食塩水対照若しくは化合物3を尾静脈を介して静脈投与したBalb/Cマウス5匹の治療群(雌、10週齢)を描く図である[血清、脾臓及び肝臓サンプルを処置後2及び24時間に回収した。RANTES及びTNF-αのレベルを、ELISAを用いて測定し、結果を、血清サンプルについてはpg/mLとして、脾臓及び肝臓サンプルについてはpg/組織gとして示している。]。
【
図15】雌balb/cマウスを用いるCT26マウス結腸癌における化合物4の効力を求めるための試験での応答の概要を示す[治療群のマウスは、媒体群と比較した場合に、エンドポイントに到達するのに少なくとも10日長く要した。]。
【
図16】雌balb/cマウスを用いるCT26マウス結腸癌モデルでの化合物4の効力を求めるための試験における腫瘍増殖阻害を示す[治療群のマウスは、媒体群と比較した場合、腫瘍増殖阻害の少なくとも89%増加を示した。]。
【
図17】雌balb/cマウスを用いるCT26マウス結腸癌モデルでの化合物4の効力を求めるための試験におけるマウスについての個々のエンドポイントまでの時間を描く図である[処置群のマウスは、媒体群と比較した場合、エンドポイントに到達するのにより長い時間を要した。]。
【
図18】雌balb/cマウスを用いるCT26マウス結腸癌モデルにおける化合物4の効力を求めるための、試験における第18日の腫瘍体積分布を描く図である[処置群のマウスは、媒体群と比較した場合、有意に小さい腫瘍体積を有していた。]。
【
図19】雌balb/cマウスを用いるCT26マウス結腸癌モデルにおける化合物4の効力を求めるための試験についてのカプラン・マイヤープロットを描く図である[処置群は、媒体群より、第21日で残ったマウスのパーセントが高かった。]。
【
図20】CT26結腸がんモデルでマウスに1mg/kg及び3mg/kgにて静注投与した化合物4を描く図である[腫瘍増殖が、媒体と比較して、化合物4群において遅くなった。]。
【
図21】IRF及びNF-κB活性を測定するために両方若しくはいずれか一方のレポーターを安定に発現する細胞を、広範囲の濃度の化合物1若しくはDMSO対照で20時間処理したことを描く図である[QUANTI-lucを用いてIRF活性を評価して、Luciaのレベルを測定し、620~655nmでのSEAPレベルを測定することでNF-κB活性を求めた。DMSO処理サンプルと比較しての、発光/吸光度における変化倍率から、誘発%を計算した。Xl適合での曲線適合によって、EC
50値が得られる。化合物1は、STING KO細胞において、IRF活性もNF-κβも誘発しなかった。化合物1は、STING依存性活性を有している。]。
【
図22】IRF及びNF-κB活性を測定するために両方若しくはいずれか一方のレポーターを安定に発現する細胞を、広範囲の濃度の化合物2若しくはDMSO対照で20時間処理したことを描く図である[QUANTI-lucを用いてIRF活性を評価して、Luciaのレベルを測定し、620~655nmでのSEAPレベルを測定することでNF-κB活性を求めた。DMSO処理サンプルと比較しての、発光/吸光度における変化倍率から、誘発%を計算した。Xl適合での曲線適合によって、EC
50値が得られる。化合物2は、STING KO細胞において、IRF活性もNF-κβも誘発しなかった。化合物2は、野生型STING、hSTINGのR71H-G230A-R293Q(HAQ)変異体及びwt-mSTINGに対する活性を有している。]。
【
図23】広範囲の濃度の化合物2又はDMSO対照で20時間処理した凍結保存マウス骨髄由来樹状細胞(DC)及びマクロファージを描く図である[細胞ペレットを回収して、総RNAを得た。ISGの遺伝子発現レベルを、Taqmanアッセイによって測定した。化合物2は、マウス骨髄由来DC及びマクロファージにおいてISG発現を誘発する。]。
【
図24】IRF及びNF-κB活性を測定するために両方若しくはいずれか一方のレポーターを安定に発現する細胞を、広範囲の濃度の化合物3若しくはDMSO対照で20時間処理したことを描く図である[QUANTI-lucを用いてIRF活性を評価して、Luciaのレベルを測定し、620~655nmでのSEAPレベルを測定することでNF-κB活性を求めた。DMSO処理サンプルと比較しての、発光/吸光度における変化倍率から、誘発%を計算した。Xl適合での曲線適合によって、EC
50値が得られる。化合物は、STING KO細胞において、IRF活性もNF-κβも誘発しなかった。化合物3は、野生型STING、STING-HAQ及びwt-mSTINGに対する活性を有している。]。
【
図25】広範囲の濃度の化合物3又はDMSO対照で20時間処理した単離したばかりの末梢血単核球(PBMC)を描く図である[上清を回収して、それぞれVerikine-ヒトIFNβ血清ELISAキット及びヒトTNFαELISAキットによって、IFNb及びTNFa分泌を測定した。上清中へのサイトカイン放出の量を、標準曲線によって計算した。化合物3は、処理後のPBMCにおけるIFNβ及びTNFα分泌を誘発する。]。
【
図26】CT26結腸がんモデルでのマウスに対して3mg/kgで静注投与した化合物3を描く図である[腫瘍増殖が、媒体と比較して、化合物3群において遅くなった。]。
【
図27】IRF及びNF-κB活性を測定するために両方若しくはいずれか一方のレポーターを安定に発現する細胞を、広範囲の濃度の化合物4若しくはDMSO対照で20時間処理したことを描く図である[QUANTI-lucを用いてIRF活性を評価して、Luciaのレベルを測定し、620~655nmでのSEAPレベルを測定することでNF-κB活性を求めた。DMSO処理サンプルと比較しての、発光/吸光度における変化倍率から、誘発%を計算した。Xl適合での曲線適合によって、EC
50値が得られる。化合物4は、STING KO細胞において、IRF活性もNF-κβも誘発しなかった。化合物4は、野生型STING、R71H-G230A-R293Q(HAQ)、hSTINGのR232H変異体、MYD88ノックアウト細胞及びwt-mSTINGに対する活性を有している。]。
【
図28】IRF及びNF-κB活性を測定するために両方若しくはいずれか一方のレポーターを安定に発現する細胞を、広範囲の濃度の化合物4若しくはDMSO対照で20時間処理したことを描く図である[QUANTI-lucを用いてIRF活性を評価して、Luciaのレベルを測定し、620~655nmでのSEAPレベルを測定することでNF-κB活性を求めた。DMSO処理サンプルと比較しての、発光/吸光度における変化倍率から、誘発%を計算した。Xl適合での曲線適合によって、EC
50値が得られる。RIG-Iは、化合物4の作用機序に係わっていない。]。
【
図29】広範囲の濃度の化合物4又はDMSO対照で20時間処理した単離したばかりのPBMCを描く図である[上清を回収して、それぞれVerikine-ヒトIFNβ血清ELISAキット及びヒトTNFαELISAキットによって、IFNb及びTNFa分泌を測定した。上清中へのサイトカイン放出の量を、標準曲線によって計算した。化合物4は、処理後のPBMCにおけるIFNβ及びTNFα分泌を誘発する。]。
【
図30】静注投与した(9mg/kg)化合物3が正常Balb/CマウスにおいてISG/I型IFN応答の上昇を強く誘発したことを描く図である。
【
図31A】各種濃度の化合物3及びそれのジアステレオマーの二つ(3A及び3B)、又はDMSO対照で20時間処理した細胞を描く図である[細胞は、IRF活性を測定するのに用いられるレポーターの一方又は両方を安定に発現した。IRF活性を、QUANTI-lucを用いて評価することで、Luciaのレベルを測定した。DMSO処理サンプルと比較しての、発光/吸光度における変化倍率から、誘発%を計算した。]。
【
図31B】各種濃度の化合物3及びそれのジアステレオマーの二つ(3-A及び3-B)、又はDMSO対照で20時間処理した細胞を描く図である[細胞は、NF-κB活性を測定するのに用いられるレポーターの一方又は両方を安定に発現した。NF-κB活性を、620~655nmでSEAPレベルを測定することで求めた。DMSO処理サンプルと比較しての、発光/吸光度における変化倍率から、誘発%を計算した。]。
【
図31C】各種濃度の化合物3及びそれのジアステレオマーの二つ(3-A及び3-B)、又はDMSO対照で20時間処理した細胞を描く図である[細胞は、NF-κB活性を測定するのに用いられるレポーターの一方又は両方を安定に発現した。IRF活性を、QUANTI-lucを用いて評価することで、Luciaのレベルを測定した。DMSO処理サンプルと比較しての、発光/吸光度における変化倍率から、誘発%を計算した。]。
【
図32】化合物3及びそれのジアステレオマー(3-A及び3-B)が、高アフィニティでSTINGに結合することを描く図である[10mM HEPES(pH7.5)中2mM~0.05μMの化合物3及びそれのジアステレオマーの二つ(3-A及び3-B)の各種希釈液、140mM NaCl及びSYPRO Orange色素(Invitrogen)の5倍希釈液とともに0.1mg/mLのSTINGCTDを用いて、サーマルシフトアッセイを行った。温度の関数としての蛍光を、Real Time PCR装置(Thermo Fisher)を用いて記録した。60分間かけて0.2℃の傾斜で25~80℃の範囲で、温度勾配を行った。Thermal Shiftソフトウェア(Thermo Fisher)及びDSF解析を用いて、データを解析した。微分モデルを用いて、蛍光データを適合させて、曲線適合ソフトウェアであるPrismを用いて熱的タンパク質アンフォールディング遷移の中間温度(Tm)を得た。]。
【
図33-1】化合物3及びそれのジアステレオマー(3-A及び3-B)が高アフィニティでSTINGに結合することを描く図である[等温熱量測定法を、25℃で、MicroCal Itc200にて行った。1.5mMの化合物3及びそれのジアステレオマーの二つ(3-A及び3-B)を、132.5μMヒトwtSTING-CTD(SUMOタグを有する)に対して力価測定した。バッファー減算後、得られた結合曲線を、2結合部位(3-A)又は1結合部位(3-B)のいずれかを用いて適合させた。]。
【
図33-2】化合物3及びそれのジアステレオマー(3-A及び3-B)が高アフィニティでSTINGに結合することを描く図である[等温熱量測定法を、25℃で、MicroCal Itc200にて行った。1.5mMの化合物3及びそれのジアステレオマーの二つ(3-A及び3-B)を、132.5μMヒトwtSTING-CTD(SUMOタグを有する)に対して力価測定した。バッファー減算後、得られた結合曲線を、2結合部位(3-A)又は1結合部位(3-B)のいずれかを用いて適合させた。]。
【
図33-3】化合物3及びそれのジアステレオマー(3-A及び3-B)が高アフィニティでSTINGに結合することを描く図である[等温熱量測定法を、25℃で、MicroCal Itc200にて行った。1.5mMの化合物3及びそれのジアステレオマーの二つ(3-A及び3-B)を、132.5μMヒトwtSTING-CTD(SUMOタグを有する)に対して力価測定した。バッファー減算後、得られた結合曲線を、2結合部位(3-A)又は1結合部位(3-B)のいずれかを用いて適合させた。]。
【
図34A】化合物4及びそれのジアステレオマー(4-A及び4-B)が、IRFシグナル伝達誘発において有効であることを描く図である[細胞を、各種濃度の化合物3及びそれのジアステレオマーの二つ(4-A及び4-B)、又はDMSO対照で20時間処理した。細胞は、IRF活性を測定するのに用いられるレポーターの一方又は両方を安定に発現した。IRF活性を、QUANTI-lucを用いて評価して、Luciaのレベルを測定した。DMSO処理サンプルと比較しての、発光/吸光度における変化倍率から、誘発%を計算した。]。
【
図34B】化合物4及びそれのジアステレオマー(4-A及び4-B)が、NF-κBシグナル伝達誘発において有効であることを描く図である[細胞を、各種濃度の化合物4及びそれのジアステレオマーの二つ(4-A及び4-B)、又はDMSO対照で20時間処理した。細胞は、NF-κB活性を測定するのに用いられるレポーターの一方又は両方を安定に発現した。NF-κB活性を、620~655nmでSEAPレベルを測定することで求めた。DMSO処理サンプルと比較しての、発光/吸光度における変化倍率から、誘発%を計算した。]。
【
図34C】化合物4及びそれのジアステレオマー(4-A及び4-B)が、IRFシグナル伝達誘発において有効であることを描く図である[細胞を、各種濃度の化合物4及びそれのジアステレオマーの二つ(4-A及び4-B)、又はDMSO対照で20時間処理した。細胞は、IRF活性を測定するのに用いられるレポーターの一方又は両方を安定に発現した。IRF活性を、QUANTI-lucを用いて評価して、Luciaのレベルを測定した。DMSO処理サンプルと比較しての、発光/吸光度における変化倍率から、誘発%を計算した。]。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本開示は、対象者におけるPRR(例えば、STING)の発現を活性化及び/又は誘発する方法、特に微生物感染又は増殖性疾患(例えば、がん)の治療方法に関する。一部の実施形態において、当該方法は、式(I)の化合物又はそれの薬学的に許容される塩の投与を含む。留意すべき点として、これらの化合物を用いたあらゆるPRRの誘発は、フィードバック機構により誘発可能な遺伝子である各種PRRの発現を誘発し得るインターフェロン及び/又はNF-KB産生を刺激することができる。
【0028】
定義
本明細書において使用される場合、冠詞「a」及び「an」は、冠詞の文法上対象の1以上(即ち、少なくとも一つ)を指す。
【0029】
「約」及び「およそ」は、概して、測定の性質又は精度を考慮して、測定された量についての誤差の許容される程度を意味する。例示的な誤差の程度は、所与の値又は値の範囲の20パーセント(%)以内、代表的には10%以内、より代表的には5%以内である。
【0030】
本明細書において使用される場合、「取得する」又は「取得すること」という用語は、これらの用語が本明細書において使用される場合、物理的実体(例えば、試料、例えば、血液試料又は肝生検試料)の所有、又は、物理的実体又は値を「直接的に取得すること」又は「間接的に取得すること」によって値、例えば、数値を得ることを指す。「直接的に取得すること」とは、物理的実体又は値を得るためのプロセス(例えば、分析方法)を実行することを意味する。「間接的に取得すること」とは、別の当事者又は供給元(例えば、物理的実体又は値を直接取得した第三者研究室)から物理的実体又は値を受け取ることを指す。値を直接取得することは、試料又は別の物質の物理的変化を含むプロセスを実行すること、例えば、物質、例えば試料の物理的変化を含む分析プロセスを実行すること、分析方法、例えば、本明細書に記載される方法を、例えば、質量分析、例えば、LC-MSによる血液などの体液の試料分析によって実行することを含む。
【0031】
本明細書において使用される場合、「誘発する」又は「の誘発」という用語は、機能の増加又は増強、例えば、パターン認識受容体(例えば、STING)の発現の増加又は増強を指す。一部の実施形態において、「PRR発現の誘発」とは、PRR RNA、例えば、STING RNAの転写の誘発(例えば、mRNA、例えば、その増加又は増強)、又はPRRタンパク質、例えば、STINGタンパク質の翻訳(例えば、その増加又は強化)を指す。一部の実施形態において、PRR発現(例えば、STING発現)の誘発とは、例えば、細胞内でのPRRのRNA、例えば、STINGのRNA(例えば、mRNA)又はSTINGのタンパク質の濃度の上昇又は増強を指す。一部の実施形態において、PRR発現(例えば、STING発現)の誘発とは、例えば、細胞内でのPRR RNA、例えば、STING RNA(例えば、mRNA)のコピー数、又はPRRタンパク質、例えば、STINGタンパク質の増加を指す。一部の実施形態において、PRR(例えば、STING)の発現を誘発することは、PRR RNA(例えば、STINGのRNA(例えば、mRNA))の開始、又は翻訳、又はPRRタンパク質(例えば、STINGタンパク質)の翻訳を指すことがある。一部の実施形態において、PRR(例えば、STING)の発現を誘発することは、PRR RNA(例えば、STING RNA(例えば、mRNA))転写速度の上昇、又はPRRタンパク質(例えば、STINGタンパク質)の発現速度の上昇を指すことがある。
【0032】
本明細書において使用される場合、「活性化させる」又は「活性化」という用語は、機能、例えば、下流経路、例えば、下流シグナル伝達経路の刺激又は誘起を指す。一部の実施形態において、パターン認識受容体(PRR)(例えば、STING)の活性化とは、例えば、下流のシグナル伝達相手(例えば、IFN-βプロモーター刺激因子1(IPS-1)、IRF3、IRF7、NF-kB、インターフェロン(例えば、IFN-α又はIFN-β)及び/又はサイトカイン)との相互作用を通した特定のタンパク質又は経路の刺激を指す。一部の実施形態において、活性化は、PRRの発現の誘発とは異なる。一部の実施形態において、PRRは、PRR発現(例えば、STINGの発現)の誘発を結果的に生じることなく活性化し得る。一部の実施形態において、活性化は、PRR(例えば、STING)の発現の誘発を含み得る。一部の実施形態において、PRRの活性化は、PRR(例えば、STING)の発現誘発を、基準標準(例えば、PRR(例えば、STING)の基礎発現レベル)と比較して約0.1%、約0.5%、約1%、約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約95%、又はそれより多く)誘起することがある。
【0033】
本明細書において使用される場合、障害(例えば、本明細書において記載される障害)を治療するのに有効な化合物、複合体、若しくは物質の量、「治療上有効量」、「有効量」又は「有効コース」は、対象者への単回投与又は複数回投与の際に、対象者を治療する上で、又はこのような治療が存在しない状態で予期したものを超えた障害(例えば、微生物感染)に罹患している対象者を治癒、軽減、緩和、又は改善する上で有効である、化合物、物質、又は組成物の量を指す。
【0034】
本明細書において使用される場合、障害又は疾患の文脈で使用する「予防する」又は「予防すること」という用語は、障害又は疾患のうちの少なくとも1つの症状の発症が、薬剤投与を行わずに認められると考えられるものと比較して遅延するような、対象者への薬剤の投与、例えば、対象者への本開示の化合物(例えば、式(I)の化合物)の投与を指す。
【0035】
本明細書において使用される場合、「基準治療」又は「基準標準」という用語は、比較のために基礎として使用される標準化されたレベル又は標準化された治療を指す。一部の実施形態において、基準標準又は基準治療は、当技術分野で承認されているか、十分に既知であるか、又は十分に特徴付けられている標準又は治療である。一部の実施形態において、基準標準は、本明細書に記載する方法の転帰を記述するものである。一部の実施形態において、基準標準は、例えば、本明細書に記載される化合物又は組成物を用いて、例えば、治療の開始前の、対象者又は試料におけるマーカーのレベル(例えば、PRR、例えば、STINGの誘発のレベル)を記述するものである。一部の実施形態において、基準標準は、疾患又はその症状の存在、進行、又は重症度の尺度(例えば、治療(例えば、本明細書に記載される化合物又は組成物を用いたもの)の開始前のもの)を記述するものである。
【0036】
本明細書において使用される場合、「対象者」という用語は、ヒト及び非ヒト動物を含むよう意図される。例示的なヒト対象者は、障害、例えば、本明細書に記載される障害に罹患しているヒト患者、又は正常対象者を含む。「非ヒト動物」という用語は、脊椎動物全体、例えば、非哺乳動物(ニワトリ、両生類、爬虫類など)及び非ヒト霊長類、飼育動物及び/又は農業上有用な動物、例えば、ヒツジ、イヌ、ネコ、ブタなどの哺乳動物を含む。本開示の例示的な実施形態において、対象者は、ウッドチャック(例えば、イースタン・ウッドチャック(Eastern Woodchuck)(Marmota monax))である。
【0037】
本明細書において使用される場合、障害又は疾患に罹患している対象者を「治療する」又は「治療すること」という用語は、障害又は疾患のうちの少なくとも一つの症状が治癒する(cured)か、治癒する(healed)か、軽減するか、緩和する(relieved)か、変化するか、緩和する(remedied)か、寛解するか、又は改善するよう、対象者を治療計画、例えば、式(I)の化合物若しくは組成物、又はその薬学的に許容される塩、又は式(I)若しくはその薬学的に許容される塩を含む組成物の投与へ供することを指す。治療することは、障害若しくは疾患、又は障害若しくは疾患の症状を軽減させ、緩和させる(relieve)か、変化させるか、緩和させる(remedy)か、寛解させるか、改善させるか、又は影響を及ぼすのに有効な量を投与することを含む。治療は、障害又は疾患の症状の悪化(deterioration)又は悪化(worsening)を抑制し得る。
【0038】
本明細書において使用される場合、「化合物(Cmd)」という用語は、「化合物(compound)」又は「化合物(Compound)」という言葉を指し、それらの用語はいずれも、互換的に使用される。
【0039】
数多くの範囲、例えば、1日あたり投与される薬剤の量についての範囲が本明細書において提供される。一部の実施形態において、範囲は両方の終点を含む。他の実施形態において、範囲は片方又は両方の終点を除外する。例として、範囲は下限値を除外することができる。従って、このような実施形態において、下限値を除外した、250~400mg/日の範囲は、400mg/日以下である250を超える量を網羅するものと考えられる。
【0040】
本明細書において使用される「アルキル」という用語は、本明細書において、各C1-C12アルキル、C1-C10アルキル、及びC1-C6アルキルと称される、1~12、1~10、又は1~6個の炭素原子の直鎖基又は分枝基などの、一価の飽和の直鎖又は分枝炭化水素を指す。アルキル基の例としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、sec-ペンチル、イソペンチル、tert-ブチル、n-ペンチル、ネオペンチル、n-ヘキシル、sec-ヘキシルなどがあるが、それらに限定されない。
【0041】
「アルケニル」及び「アルキニル」という用語は、当技術分野において認識されており、長さ及び起こり得る置換において上記のアルキルと類似しているが、各々少なくとも一つの二重結合又は三重結合を含有する不飽和脂肪族基を指す。例示的なアルケニル基には、-CH=CH2及び-CH2CH=CH2などがあるが、これらに限定されない。
【0042】
「アルキレン」という用語は、アルキル基のジラジカルを指す。
【0043】
「アルケニレン」及び「アルキニレン」という用語は、各々アルケニル基及びアルキニル基のジラジカルを指す。
【0044】
「メチレン単位」という用語は、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルキレン、アルケニレン、又はアルキニレン部分に存在する二価の-CH2-基を指す。
【0045】
本明細書において使用される場合、「炭素環系」という用語は、単環式、又は縮合、スピロ縮合、及び/若しくは架橋の二環式又は多環式炭化水素環系を意味し、ここで、各環は完全に飽和しているか、又は1単位以上の不飽和を含有しているかのいずれかであるが、どの環も芳香族ではない。
【0046】
「炭素環式」という用語は、炭素環式環系のラジカルを指す。代表的な炭素環式基には、シクロアルキル基(例えば、シクロペンチル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルなど)、及びシクロアルケニル基(例えば、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、シクロペンタジエニルなど)などがある。
【0047】
「芳香環系」という用語は、当技術分野において認識されており、少なくとも一つの環が芳香族である単環式、二環式又は多環式の炭化水素環系を指す。
【0048】
「アリール」という用語は、芳香環系のラジカルを指す。代表的なアリール基には、フェニル、ナフチル、及びアントラセニルなどの完全芳香環系、並びにインダニル、フタルイミジル、ナフチミジル、又はテトラヒドロナフチルなど、芳香族炭素環が1以上の非芳香族炭素環と縮合している環系などがある。
【0049】
「ヘテロアルキル」という用語は、炭素分子のうちの少なくとも一つがO、S、又はNなどのヘテロ原子で置き換えられている「アルキル」部分を指す。
【0050】
「ヘテロ芳香族環系」という用語は、当技術分野において認識されており、少なくとも一つの環が芳香族であり、かつヘテロ原子を含み、他のどの環も複素環ではない、単環式、二環式又は多環式の環系を指す(以下に定義)。ある特定の場合において、芳香族であり、ヘテロ原子を含む環は、このような環において1、2、3、又は4個の独立して選択された環ヘテロ原子を含有する。
【0051】
「ヘテロアリール」という用語は、ヘテロ芳香族環系のラジカルを指す。代表的なヘテロアリール基としては、(i)環が各々ヘテロ原子を含み、芳香族である環系、例えば、イミダゾリル、オキサゾリル、チアゾリル、トリアゾリル、ピロリル、フラニル、チオフェニルピラゾリル、ピリジニル、ピラジニル、ピリダジニル、ピリミジニル、インドリジニル、プリニル、ナフチリジニル、及びプテリジニル、(ii)環が各々芳香族又は炭素環であり、少なくとも一つの芳香環がヘテロ原子を含み、少なくとも一つの他の環が炭化水素環、又は例えば、インドリル、イソインドリル、ベンゾチエニル、ベンゾフラニル、ジベンゾフラニル、インダゾリル、ベンズイミダゾリル、ベンズチアゾリル、キノリル、イソキノリル、シンノリニル、フタラジニル、キナゾリニル、キノキサリニル、カルバゾリル、アクリジニル、フェナジニル、フェノチアジニル、フェノキサジニル、ピリド[2,3-b]-1,4-オキサジン-3(4H)-オン、5,6,7,8-テトラヒドロキノリニル及び5,6,7,8-テトラヒドロイソキノリニルである環系、並びに(iii)環が各々芳香族又は炭素環であり、少なくとも一つの芳香環が別の芳香環と橋頭ヘテロ原子を共有する環系、例えば4H-キノリジニルが挙げられる。ある特定の実施形態において、ヘテロアリールは、単環式環又は二環式環であり、該環の各々は、1、2、3又は4個の該環原子が、N、O、及びSから独立して選択されるヘテロ原子である5又は6個の環原子を含有する。
【0052】
「複素環式環系」という用語は、少なくとも一つの環が飽和若しくは部分的に不飽和(だが芳香族ではない)であり、ヘテロ原子を含む、単環式、又は縮合、スピロ縮合、及び/若しくは架橋した二環式及び多環式の環系を指す。複素環式環系は、安定した構造を結果的にもたらすあらゆるヘテロ原子又は炭素原子における複素環式環系のペンダント基へも結合することができ、環原子のいずれも、置換されていても良い。
【0053】
「複素環」という用語は、複素環系のラジカルを指す。代表的な複素環としては、(i)全ての環が非芳香族であり、少なくとも一つの環がヘテロ原子を含む環系、例えば、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロチエニル、ピロリジニル、ピロリドニル、ピペリジニル、ピロリニル、デカヒドロキノリニル、オキサゾリジニル、ピペラジニル、ジオキサニル、ジオキソラニル、ジアゼピニル、オキサゼピニル、チアゼピニル、モルホリニル、及びキヌクリジニル、(ii)少なくとも一つの環が非芳香族であり、ヘテロ原子を含み、少なくとも一つの他の環が芳香族炭素環である環系、例えば、1,2,3,4-テトラヒドロキノリニル、1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリニル、並びに(iii)少なくとも一つの環が非芳香族でヘテロ原子を含み、少なくとも一つの他の環が芳香族であり、ヘテロ原子を含む環系、例えば、3,4-ジヒドロ-1H-ピラノ[4,3-c]ピリジン、及び1,2,3,4-テトラヒドロ-2,6-ナフチリジンが挙げられる。ある特定の実施形態において、複素環は、単環式又は二環式の環であり、ここで該環の各々は、3~7個の環原子を含有し、該環原子の1、2、3又は4個は、N、O、及びSから独立して選択されるヘテロ原子である。
【0054】
「飽和複素環」という用語は、あらゆる環が飽和している複素環系のラジカル、例えば、テトラヒドロフラン、テトラヒドロ-2H-ピラン、ピロリジン、ピペリジン及びピペラジンを指す。
【0055】
「部分不飽和」とは、少なくとも一つの二重結合又は三重結合を含む基を指す。「部分不飽和」環系はさらに、複数の不飽和部位を有する環を包含することを意図しているが、本明細書において定義される芳香族基(例えば、アリール基又はヘテロアリール基)を含むことは意図していない。同様に、「飽和」とは、二重結合又は三重結合を含有しない、即ち全ての単結合を含有する基を指す。
【0056】
本明細書において使用される「核酸塩基」という用語は、ヌクレオシド、即ちデオキシリボ核酸(DNA)及びリボ核酸(RNA)の基本ビルディングブロック内の糖へ結合していることが認められる窒素含有生体化合物である。一次、又は天然の核酸塩基は、シトシン(DNA及びRNA)、グアニン(DNA及びRNA)、アデニン(DNA及びRNA)、チミン(DNA)及びウラシル(RNA)であり、各C、G、A、T、及びUと略される。A、G、C、及びTはDNA中に現れるため、これらの分子はDNA塩基と呼ばれ、A、G、C、及びUはRNA塩基と呼ばれる。アデニン及びグアニンはプリン(Rと略される)と呼ばれる二重環クラスの分子に属する。シトシン、チミン、及びウラシルは全てピリミジンである。遺伝暗号の正常な部分として機能しない他の核酸塩基は、非天然と呼ばれる。
【0057】
本明細書において記載される場合、本開示の化合物は、「置換されていても良い」部分を含有し得る。概して、「置換された」という用語は、「されていても良い」という用語があるか否かにかかわらず、指定された部分の1個以上の水素が適切な置換基で置き換えられていることを意味する。別段の記載がない限り、「置換されていても良い」基は、この基の置換可能な位置で各々適切な置換基を有し得るものであり、所与の構造における複数位置が、指定の基から選択される複数の置換基で置換され得るとき、置換基は各々の位置において同一であっても異なっていてもよい。本開示の下で想定される置換基の組み合わせは、好ましくは、安定した又は化学的に実現可能な化合物の形成をもたらすものである。本明細書において使用される場合、「安定な」という用語は、本明細書に開示される目的のうちの1以上のための化合物の生成、検出、及び、ある特定の実施形態においては、回収、精製、及び使用を可能にする条件下になった場合に、実質的に変化しない化合物を指す。
【0058】
本明細書において使用される場合、各々の表現、例えば、アルキル、m、nなどの定義は、この表現がいかなる構造中にも複数ある場合、同じ構造中の他の箇所でこの表現の定義とは無関係であるものである。
【0059】
本明細書において記載される場合、本開示の化合物は、「置換されていても良い」部分を含有し得る。概して、「置換された」という用語は、「されていても良い」という用語があるか否かにかかわらず、指定された部分の1個以上の水素が適切な置換基で置き換えられていることを意味する。別段の記載がない限り、「置換されていても良い」基は、この基の置換可能な位置で各々適切な置換基を有し得るものであり、所与の構造における複数の位置が、指定された基から選択される複数の置換基で置換され得る場合、置換基は各々の位置において同一であっても異なっていてもよい。本開示の下で想定される置換基の組み合わせは、好ましくは、安定な又は化学的に実現可能な化合物の形成をもたらすものである。本明細書において使用される場合、「安定な」という用語は、本明細書に開示される目的のうちの1以上のための化合物の生成、検出、及び、ある特定の実施形態においては、回収、精製、及び使用を可能にする条件下になった場合に、実質的に変化しない化合物を指す。
【0060】
パターン認識受容体
本明細書において提示される本開示は、対象者、例えば、微生物感染(例えば、ウィルス感染、最近感染、真菌感染、又は寄生生物感染)又は増殖性疾患(例えば、がん)に罹患している対象者におけるPRR発現(例えば、STING発現)の活性化及び誘発のための方法を特徴とする。パターン認識受容体(PRR)とは、病原性侵入物内に保存されている病原体関連分子パターン(PAMP)を認識する広範なクラスのタンパク質である。PAMPは、代表的には、病原体の生存及び/又は感染力に不可欠な生合成経路の産物、例えば、リポ多糖、糖タンパク質、及び核酸である。これらの同族のPRRによるPAMPの認識は、炎症促進性及び抗炎症性サイトカイン、I型インターフェロン(IFN-α、IFN-β)、並びに/又はインターフェロン刺激遺伝子(ISG)などの免疫防御因子の産生をもたらすシグナル伝達経路を活性化させる。自然免疫シグナル伝達の誘発はまた、T細胞応答の活性化並びに適応免疫の誘発を結果的にもたらすことも十分に既知である。これらの下流の免疫効果は、細胞傷害性Tリンパ球を通じての感染細胞のアポトーシス及び殺滅を経たウィルスの排除並びに他の防御機序にとって不可欠である。インターフェロンが、抗ウィルス細胞防御において重要な役割を担っているISGの産生を誘起することができるISRE(インターフェロン応答エレメント)に作用することも十分に既知である。
【0061】
インターフェロン遺伝子の刺激因子(STING)は、二本鎖DNA及び環状ジヌクレオチド(例えば、環状ジ-GMP)に対して特に感受性があることが示されてきた細胞質微生物由来DNAセンサーである(Burdette, D. L. and Vance, R. E.(2013) Nat Immuno l14:19~26)。2分子のSTINGは、C末端二量体化ドメイン中に存在するαヘリックスによって仲介されるホモ二量体を形成し、分子結合研究によって、STING二量体が各々1分子の微生物核酸、例えば、DNA又は環状ジヌクレオチドを結合することを明らかになってきた。リガンドの結合の際に、STINGは、RIG-IとIPS-1との相互作用を通じて自然免疫応答を活性化させ、その結果、インターフェロン産生(例えば、IFN-α及びIFN-β)及び他の下流のシグナル伝達事象を結果的にもたらす。発見以来、STINGは、ウィルス(例えば、アデノウィルス、単純ヘルペスウィルス、B型肝炎ウィルス、水疱性口内炎ウィルス、C型肝炎ウィルス)、細菌(例えば、リステリア・モノサイトゲネス(Listeria monocytogenes)、レジオネラ・ニューモフォリア(Legionella pneumopholia)、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)及び原虫(熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)、齧歯類マラリア原虫(Plasmodium berghei))の重要なセンサーとして機能することが示されてきた。加えて、STINGは、いくつかのがんにおいて樹状細胞活性化及びそれに続くT細胞プライミングを駆動する、腫瘍抗原に対する自然免疫応答における主要な役割を担っていることが示されてきた(Woo, S. R. et al. Trends in Immunol(2015) 36:250-256)。
【0062】
別の種類のPRRはRIG-Iを含み、これは主として外来源由来のRNAを検出するRIG-I様受容体(RLR)と呼ばれるPRRのファミリーの最初のメンバーである。それは、ほとんどの細胞における微生物感染(例えば、ウィルス感染)の重要なセンサーであり、細胞質ゾルにおいて低レベルで恒常的に発現する。リガンド結合の後、RIG-Iの発現は急速に増強され、細胞中のRIG-I濃度の上昇をもたらす(Jensen, S. and Thomsen,A. R. J Virol(2012) 86:2900-2910、Yoneyama M. et al. Nat Immunol(2004) 5:730-737)。RIG-Iは、中央のDExD/HボックスATPaseドメインと、下流のシグナル伝達を仲介する縦列N末端カスパーゼ動員ドメイン(CARD)とを含有するATP依存性ヘリカーゼである。RIG-IのC末端は、結合していないときにN末端でCARD機能を沈黙させるように作用するssRNA/dsRNA結合ドメインを含む。理論に拘束されることを望むものではないが、標的RNA構造の認識の際に、二つのN末端CARDが露出し、下流の結合相手であるCARDとの、並びにミトコンドリア抗ウィルスシグナル伝達分子(MAVS)及びCARDIFとしても既知のIFN-βプロモーター刺激因子1(IPS-1)との相互作用を可能にする。この相互作用は次に、IRF3、IRF7、NF-κB、IFN、及びサイトカイン産生の誘発などのさらなる下流のシグナル伝達を誘起し、それが宿主免疫応答の開始を結果的にもたらす。
【0063】
MDA5、LGP2、及びRNase Lを含む他のRLRは、RIG-Iと相同的であり、類似の様式で機能する。MDA5はRIG-Iと非常に相同的であり、ピコルナウィルス(例えば、脳心筋炎ウィルス(EMCV)、テイラーウィルス、及びメンゴウィルス)、センダイウィルス、狂犬病ウィルス、西ナイルウィルス、狂犬病ウィルス、ロタウィルス、マウス肝炎ウィルス、及びマウスノロウィルスによる感染の際にサイトカイン応答を誘起するために極めて重要であることが示されている。LPG2は、IPS-1との直接相互作用が下流のシグナル伝達を開始する原因となる、RIG-I及びMDA5に見出されるCARDドメインを欠失している。このようなものとして、LPG2は、RIG-I及びMDA5のような他のCARD保有RLRと共に自然免疫応答の調節因子として挙動すると考えられている。
【0064】
別の種類のPRRは、ヌクレオチド結合受容体及びオリゴマー化ドメイン(NOD)様受容体、又はNLRファミリーを包含し(Caruso, R. et al, Immunity(2014) 41:898-908)、これには微生物センサーNOD2を含む。NOD2は、N末端CARD、中央に位置するヌクレオチド結合オリゴマー化ドメイン、並びに細菌ペプチドグリカンフラグメント及び微生物核酸などの微生物PAMPを結合する原因となるC末端ロイシン豊富反復ドメインから構成される。リガンド結合はNOD2を活性化させ、CARD含有キナーゼRIPK2との相互作用を駆動すると考えられており、これが次に、NF-κB、MAPK、IRF7、及びIRF3を含む多数の下流タンパク質を活性化させ、これらのうちの後者は1型インターフェロンの誘発を結果的にもたらす。NOD2は、マクロファージ、樹状細胞、パネート細胞、上皮細胞(例えば、肺上皮細胞、腸上皮)、及び骨芽細胞を含む多様な組み合わせの細胞型において発現する。NOD2は、原虫(例えば、トキソプラズマ原虫(Toxoplasma gondii)及び齧歯類マラリア原虫(Plasmodium berghei))、細菌(例えば、炭疽菌(Bacillus anthracis)、ライム病ボレリア(Borrelia burgdorferi)、類鼻疽菌(Burkholderia pseudomallei)、ヘリコバクター・ヘパティカス(Helicobacter hepaticus)、レジオネラ・プリューモフィリア(Legionella pneumophilia)、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)、プロピオニバクテリウム・アクネス(Propionibacterium acne)、ポルフィロモナス・ジンジバリス(Porphyromonas gingivalis)、サルモネラ・エンテリカ(Salmonella enterica)、及び肺炎球菌(Streptococcus pneumonia))、並びにウィルス(例えば、呼吸器合胞体ウィルス及びマウスノロウィルス1)など、種々の病原性侵入体による感染のセンサーとして確立されてきた(Moreira, L. O. and Zamboni, D. S. Front Immunol(2012) 3:1-12)。最近の研究により、NOD2の変異がクローン病などの炎症性疾患の一因となり得るものであり、刺激の際に異常な炎症応答を結果的にもたらすことが明らかになっている。
【0065】
代表的化合物
本開示は、有効量の式(I)の化合物又はそれの薬学的に許容される塩若しくは立体異性体の投与を含む、対象者(例えば、微生物感染(例えば、ウィルス感染、細菌感染、真菌感染若しくは寄生生物感染)又は増殖性疾患(例えば、がん)に罹患している対象者)におけるPRR発現(例えば、STING発現)の誘発のための化合物及び方法を特徴とする。
【0066】
一部の実施形態において、本開示は、第1のヌクレオシドの3′-OH末端が第2の連結部を介して第2のヌクレオシドの5′-OHに結合しており;及び第2のヌクレオシドの2′-OH末端が連結部を介して第1のヌクレオシドの5′-OHに結合している式(I)の化合物を特徴とする。
【0067】
一部の実施形態において、当該化合物は、下記式(I)の化合物又はそれの薬学的に許容される塩若しくは立体異性体である。
【0068】
【化9】
式中、ZはSまたはOであり;B
1及びB
2のそれぞれは独立に、プリニル核酸塩基又はピリミジニル核酸塩基であり;X
1及びX
2のそれぞれは独立に、O又はSであり;Y
1及びY
2のそれぞれは独立に、O、S、又はNR
5であり;L
1及びL
2のそれぞれは独立に、非存在、C
1-C
6アルキル又はC
1-C
6ヘテロアルキルであり、各アルキル及びヘテロアルキルは、R
6で置換されていても良く;R
1及びR
2のそれぞれは独立に、水素、ハロ、-CN、C
1-C
20アルキル(例:C
1-C
6アルキル)、又はOR
7であり;R
3及びR
4のそれぞれは独立に、水素、C
1-C
20アルキル(例:C
1-C
6アルキル)、C
1-C
20ヘテロアルキル(例:C
1-C
6ヘテロアルキル)、OC(O)OC
1-C
20アルキル(例:C
1-C
6アルキル)、シクロアルキル、複素環、アリール、又はヘテロアリールであり、各アルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、複素環、アリール、及びヘテロアリールは、1以上のR
8で置換されていても良く;R
5は水素又はC
1-C
20アルキル(例:C
1-C
6アルキル)であり;R
6はハロ、-CN、C
1-C
20アルキル(例:C
1-C
6アルキル)、OR
7、オキソ、シクロアルキル、複素環、アリール、又はヘテロアリールであり、各アルキル、シクロアルキル、複素環、アリール、及びヘテロアリールは、1以上のR
9で置換されていても良く;R
7は水素、C
1-C
20アルキル(例:C
1-C
6アルキル)、シクロアルキル、複素環、アリール、又はヘテロアリールであり、各アルキル、シクロアルキル、複素環、アリール、及びヘテロアリールは、1以上のR
9で置換されていても良く;各R
8は独立に、C
1-C
20アルキル(例:C
1-C
6アルキル)、C
1-C
20ヘテロアルキル、C(O)-C
1-C
20アルキル、OC(O)-C
1-C
20アルキル(例:C
1-C
6アルキル)、C(O)O-C
1-C
20アルキル(例:C
1-C
6アルキル)、OC(O)O-C
1-C
20アルキル(例:C
1-C
6アルキル)、C(O)N(R
5)-C
1-C
20アルキル(例:C
1-C
6アルキル)、N(R
5)C(O)-C
1-C
20アルキル(例:C
1-C
6アルキル)、OC(O)N(R
5)-C
1-C
20アルキル(例:C
1-C
6アルキル)、O-アリール、O-ヘテロアリール、C(O)-アリール、C(O)-ヘテロアリール、OC(O)-アリール、C(O)O-アリール、OC(O)-ヘテロアリール、C(O)O-ヘテロアリール、C(O)O-アリール、C(O)O-ヘテロアリール、C(O)N(R
5)-アリール、C(O)N(R
5)-ヘテロアリール、N(R
5)C(O)-アリール、N(R
5)
2C(O)-アリール、又はN(R
5)C(O)-ヘテロアリール、S(O)
2N(R
5)-アリールであり、各アルキル、ヘテロアルキル、アリール、及びヘテロアリールは、1以上のR
9によって置換されていても良く;各R
9は独立に、C
1-C
20アルキル、O-C
1-C
20アルキル、C
1-C
20ヘテロアルキル、ハロ、-CN、OH、オキソ、アリール、ヘテロアリール、O-アリール、又はO-ヘテロアリールである。
【0069】
一部の実施形態において、ZはSである。一部の実施形態において、ZはOである。一部の実施形態において、B1又はB2の少なくとも一方がプリニル核酸塩基である。一部の実施形態において、B1又はB2のそれぞれが独立に、プリニル核酸塩基である。一部の実施形態において、B1はプリニル核酸塩基である。一部の実施形態において、B2はピリミジニル核酸塩基である。一部の実施形態において、B1はプリニル核酸塩基であり、B2はピリミジニル核酸塩基である。
【0070】
一部の実施形態において、ZはSである。一部の実施形態において、ZはOである。
【0071】
一部の実施形態において、B1又はB2の少なくとも一方がプリニル核酸塩基である。一部の実施形態において、B1又はB2のそれぞれが独立に、プリニル核酸塩基である。一部の実施形態において、B1はプリニル核酸塩基である。一部の実施形態において、B2はピリミジニル核酸塩基である。一部の実施形態において、B1はプリニル核酸塩基であり、B2はピリミジニル核酸塩基である。一部の実施形態において、B1はピリミジニル核酸塩基である。一部の実施形態において、B2はプリニル核酸塩基である。一部の実施形態において、B1はピリミジニル核酸塩基であり、B2はプリニル核酸塩基である。
【0072】
一部の実施形態において、B1又はB2のそれぞれが、天然核酸塩基又は修飾核酸塩基から選択される。一部の実施形態において、B1又はB2のそれぞれが、アデノシニル、グアノシニル、シトシニル、チミニル、ウラシリル、5′-メチルシトシニル、5′-フルオロウラシリル、5′-プロピニルウラシリル、及び7-デアザアデノシニルから選択される。一部の実施形態において、B1又はB2のそれぞれが、
【0073】
【0074】
【化11】
」は、核酸塩基のリボース環への連結を示す。
【0075】
一部の実施形態において、B1又はB2の一方が、天然核酸塩基から選択され、B1又はB2の他方が修飾核酸塩基である。一部の実施形態において、B1又はB2の一方が、アデノシニル、グアノシニル、チミニル、シトシニル、又はウラシリルであり、B1又はB2の他方が5′-メチルシトシニル、5′-フルオロウラシリル、5′-プロピニルウラシリル、又は7-デアザアデノシニルである。
【0076】
一部の実施形態において、B1はアデノシニル又はグアノシニルである。一部の実施形態において、B2はシトシニル、チミニル、又はウラシリルである。一部の実施形態において、B1はアデノシニル又はグアノシニルであり、B2はシトシニル、チミニル、又はウラシリルである。一部の実施形態において、B2はアデノシニル又はグアノシニルである。一部の実施形態において、B1はシトシニル、チミニル、又はウラシリルである。一部の実施形態において、B2はアデノシニル又はグアノシニルであり、B1はシトシニル、チミニル、又はウラシリルである。
【0077】
一部の実施形態において、B1及びB2のそれぞれは独立に、ウラシリルである。一部の実施形態において、B1及びB2のそれぞれは独立に、アデノシニルである。
【0078】
一部の実施形態において、R1及びR2のそれぞれが独立に、水素、ハロ、又はOR7である。一部の実施形態において、R1及びR2のそれぞれが独立に、ハロ(例:フルオロ)である。一部の実施形態において、R1及びR2のそれぞれが、水素でもOR7でもない。
【0079】
一部の実施形態において、X1はOである。一部の実施形態において、X2はOである。一部の実施形態において、X1及びX2のそれぞれが独立に、Oである。
【0080】
一部の実施形態において、Y1はO又はSである。一部の実施形態において、Y2はO又はSである。一部の実施形態において、Y1及びY2のそれぞれが独立に、O又はSである。一部の実施形態において、Y1又はY2の一方がOであり、Y1又はY2の他方がSである。一部の実施形態において、Y1又はY2のそれぞれが独立に、Sである。一部の実施形態において、Y1又はY2のそれぞれが独立に、Oである。
【0081】
一部の実施形態において、L1はC1-C6アルキル(例:CH2)である。一部の実施形態において、L2はC1-C6アルキル(例:CH2)である。一部の実施形態において、L1及びL2のそれぞれが独立に、C1-C6アルキル(例:CH2)である。
【0082】
一部の実施形態において、R3は水素、アリール、又はヘテロアリールであり、アリール及びヘテロアリールは、1~5個のR8で置換されていても良い。一部の実施形態において、R3はアリール又はヘテロアリールであり、そのそれぞれは、1~5個のR8で置換されていても良い。一部の実施形態において、R3は、1個のR8で置換されたフェニルである。
【0083】
一部の実施形態において、R4は独立に、水素、アリール、又はヘテロアリールであり、アリール及びヘテロアリールは、1~5個のR8で置換されていても良い。一部の実施形態において、R4はアリール又はヘテロアリールであり、そのそれぞれは、1~5個のR8で置換されていても良い。一部の実施形態において、R4は、1個のR8で置換されたフェニルである。
【0084】
一部の実施形態において、R3及びR4のそれぞれが独立に、水素、アリール、又はヘテロアリールであり、アリール及びヘテロアリールは、1~5個のR8で置換されていても良い。一部の実施形態において、R3はアリール又はヘテロアリールであり、そのそれぞれは、1~5個のR8で置換されていても良く、R4は水素である。一部の実施形態において、R3は、1個のR8で置換されたフェニルであり、R4は水素である。一部の実施形態において、R3及びR4のそれぞれが独立に、1個のR8で置換されたフェニルである。
【0085】
一部の実施形態において、Y1及びY2のそれぞれがOであり、R3及びR4のそれぞれが独立に水素である。一部の実施形態において、Y2はOであり、R4は水素である。一部の実施形態において、Y1及びY2のそれぞれが独立にSであり、R3及びR4のそれぞれが独立に1個のR8で置換されている。一部の実施形態において、Y1はSであり、R3は1個のR8で置換されている。
【0086】
一部の実施形態において、各R8は独立に、C1-C20アルキル(例:C1-C6アルキル)、C1-C20ヘテロアルキル、C(O)-C1-C20アルキル、OC(O)-C1-C20アルキル、OC(O)O-C1-C20アルキル、OC(O)N(R5)-C1-C20アルキル、O-アリール、C(O)-アリール、OC(O)-アリール、又はC(O)N(R5)-アリールであり、各アルキル、ヘテロアルキル、アリール、及びヘテロアリールは、1以上のR9によって置換されていても良い。
【0087】
一部の実施形態において、R8は、1~5個のR9(例:1個のR9)によって置換されていても良いC(O)-アリールである。一部の実施形態において、R8は、1~5個のR9(例:1個のR9)によって置換されていても良いOC(O)-アリールである。
【0088】
一部の実施形態において、R9はO-C1-C12アルキル(例:O-CH2(CH2)8CH3)である。一部の実施形態において、R9はO-C1-C10アルキル(例:O-CH2(CH2)8CH3)である。一部の実施形態において、R9はO-C1-C8アルキル(例:O-CH2(CH2)6CH3)である。一部の実施形態において、R9は1~5個のR9によって置換されたO-C1-C6アルキル(例:O-CH2(CH2)4CH3)であり;各R9は独立にO-C1-C20アルキルである。
【0089】
一部の実施形態において、式(I)の化合物は、表1に描かれたものから選択される。
【0090】
表1(表中で別段の断りがない限り、式CnH(2n+1)は、n-アルキル基を指す。例えば、C10H21は、別段の断りがない限り、n-デシルを指す。)
【0091】
【0092】
式中、Xは、薬学的に許容される対イオン、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム、アンモニウム、エチルアミン、ジエチルアミン、エチレンジアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、ピペラジンなど(例えば、Bergeら(上記)を参照する。)であり;「n」という表記は、関連するアルキル鎖が「ノルマル」(即ち、分岐していない)であることを示している。一部の実施形態において、表1の化合物は、塩ではない(即ち、それは遊離酸又は遊離塩基である。)。
【0093】
1実施形態において、本明細書で記載の化合物は、薬学的に許容される塩の形態である。塩の例は本明細書に記載されており、例えばアンモニウム塩である。一部の実施形態において、当該化合物は、モノ塩である。一部の実施形態において、当該化合物は、ジ塩である。一部の実施形態において、本明細書に記載の化合物(例:表1中の化合物)は塩ではない(例えば、遊離酸若しくは遊離塩基である)。
【0094】
理論に拘束されることを望むものではないが、式(I)の化合物は、抗ウィルス活性及び免疫調節活性の両方を組み合わせた小分子核酸ハイブリッド(環状ジヌクレオチド)化合物である。後者の活性は、例えば、ウィルス感染を患う患者においてIFN-α療法によっても達成されるものと同様の生来の免疫応答の刺激を介したウィルス感染肝細胞の制御されたアポトーシスに介在する。式(I)の化合物の作用機序は、それの宿主免疫刺激活性を伴うものであり、それは、PRR、例えばRIG-I、NOD2、及びSTINGの活性化を介して内因性IFNを誘発することができる。活性化は、前述のように、PRR(例:STING)のヌクレオチド結合ドメインへの式(I)の化合物の結合によって起こり得るものであり、さらに、PRR発現(例:STING発現)の誘発を生じ得るものである。
【0095】
本明細書で提供される化合物は、1以上の不斉中心を含有し得ることから、ラセミ体及びラセミ混合物、単一のエナンチオマー、個々のジアステレオマー、及びジアステレオマー混合物として生じ得る。これらの化合物のこのような異性体型は全て、明確に本範囲に含まれる。化合物が立体化学を特定せずに構造によって命名又は描写されており、1以上のキラル中心を有する場合、別段の記載がない限り、考えられ得る化合物の立体異性体全てを表すものと理解される。本明細書で提供される化合物はまた、結合(例えば、炭素間結合、リン酸素間結合、又はリン-硫黄間結合)又は結合回転を制限し得る置換基、例えば、環又は二重結合の存在から結果的に生じる制限も含み得る。一部の実施形態において、式(I)の化合物は、式(I)の化合物の異性体(例:Rp-異性体又はSp異性体)又は異性体混合物(例:Rp-異性体又はSp異性体)を含む。
【0096】
使用方法例
本開示は、有効量の式(I)の化合物又はそれの薬学的に許容される塩若しくは立体異性体の投与によって対象者におけるPRR(例えば、STING)の発現を誘発する方法に関する。一部の実施形態において、対象者は、以下に説明する状態、例えば、ウィルス感染(例えば、ウィルス潜伏)、細菌感染、がん(例えば、増殖性疾患)に罹患していることがあり得る。
【0097】
ウィルス感染の治療
STING、RIG-I、及びNOD2などのパターン認識受容体が、各種の異なるウィルスファミリーからの多数のRNAウィルスの宿主認識において重要な要素であることが明らかになっている。一部の実施形態において、本明細書に開示のPRR(例:STING)の発現誘発方法は、微生物感染した対象者への有効量の式(I)の化合物又はそれの薬学的に許容される塩若しくは立体異性体の投与を含む。一部の実施形態において、微生物感染はウィルスである。一部の実施形態において、ウィルスは、RNAウィルス(例:二本鎖RNA(dsRNA)ウィルス、一本鎖RNA(ssRNA)ウィルス(例:プラス鎖(センス)ssRNAウィルス又はマイナス鎖(アンチセンス)ssRNAウィルス)、又はssRNAレトロウィルス)又はDNAウィルス(例:dsDNAウィルス、ssDNAウィルス、又はdsDNAレトロウィルス)である。一部の実施形態において、ウィルスは、例えばバルチモア分類システムによる、第I群、第II群、第III群、第IV群、第V群、第VI群、又は第VII群のウィルスであることができる。
【0098】
一部の実施形態において、ウィルスは、dsRNAウィルス、例えば第III群ウィルスである。一部の実施形態において、PRR(例:STING)の発現が、宿主産生又はウィルス由来RNAによって誘発される。一部の実施形態において、ウィルスはdsRNAウィルスであり、ビルナウィルス科、クリソウィルス科、シストウィルス科、エンドルナウィルス、ハイポウィルス科、パルティティウィルス科、ピコビルナウィルス科、レオウィルス科、又はトティウィルス科、又はdsRNAウィルスの他の科の構成員である。dsRNAウィルス及びウィルス属の例には、ピコビルナウィルス、ロタウィルス、セアドルナ、コルチウィルス、オルビウィルス、及びオルソレオウィルス、又はそれの亜型、種又は変異体などがあるが、これらに限定されるものではない。
【0099】
一部の実施形態において、ウィルスは、ssRNAウィルス、例えばプラス鎖(センス)ssRNAウィルス、例えば第IV群ウィルスである。一部の実施形態において、PRR(例:STING)の発現が、宿主産生又はウィルス由来RNAによって誘発される。一部の実施形態において、ウィルスはプラス鎖(センス)ssRNAウィルスであり、アルテリウィルス科、コロナウィルス科、メゾニウィルス科、ロニウィルス科、ジシストロウィルス科、イフラウィルス科、マルナウィルス科、ピコルナウィルス科、セコウィルス科、アルファフレキシウィルス科、ベータフレキシウィルス科、ガンマフレキシウィルス科、ティモウィルス科、アルファテトラウィルス科、アルベルナウィルス科(Alvernaviridae)、アストロウィルス科、バルナウィルス科、ブロモウィルス科、カリシウィルス科、カルモテトラウィルス科、クロステロウィルス科、フラビウィルス科、レビウィルス科、ルテオウィルス科、ナルナウィルス科、ノダウィルス科、ペルムトテトラウィルス科、ポティウィルス科、トガウィルス科、又はビルガウィルス科、又はプラス鎖(センス)ssRNAウィルスの他の科の構成員である。プラス鎖(センス)ssRNAウィルス及びウィルス属の例には、黄熱病ウィルス、西ナイルウィルス、C型肝炎ウィルス、デング熱ウィルス、風疹ウィルス、ロスリバーウィルス、シンドビスウィルス、チクングニアウィルス、ノーウォークウィルス、日本脳炎ウィルス、ダニ媒介性脳炎ウィルス、セントルイス脳炎ウィルス、マーレーバレー脳炎ウィルス、キャサヌール森林病ウィルス(例:サル病(Monkey disease)ウィルス)、西部ウマ脳炎ウィルス、東部ウマ脳炎ウィルス、ベネズエラウマ脳炎ウィルス、サッポロウィルス、ノロウィルス、サポウィルス、カリシウィルス、パレコウィルス、A型肝炎ウィルス、ライノウィルス(例:ライノウィルスA、ライノウィルスB、及びライノウィルスC)、エンテロウィルス(例:エンテロウィルスA、エンテロウィルスB、エンテロウィルスC(例:ポリオウィルス)、エンテロウィルスD、エンテロウィルスE、エンテロウィルスF、エンテロウィルスG、又はエンテロウィルスH)、アフトウィルス(例:口蹄疫ウィルス)、ニドウィルス目(例:カバリウィルス(Cavally virus)、ナムディンウィルス(Nam Dinh virus)、中東呼吸器症候群コロナウィルス(MERS-CoV)、コロナウィルスHKU1、コロナウィルスNL63、SARS-CoV、コロナウィルスOC43、及びコロナウィルス229E)、ベニウィルス、ブルネウィルス(Blune virus)、シレウィルス(Cile virus)、ヘペウィルス(例:E型肝炎ウィルス)、ヒグレウィルス(Higre virus)、イダエオウィルス、ネゲウィルス(Nege virus)、ウルミアウィルス、ポレモウィルス(Polemo virus)、ソベモウィルス(Sobemo virus)、又はアンブラウィルス、又はそれの亜型、種若しくは変異体などがあるが、これらに限定されるものではない。
【0100】
一部の実施形態において、ウィルスは、ノロウィルス属の構成員、又はそれの亜型、種若しくは変異体である。一部の実施形態において、ウィルスは、ノーウォークウィルス、ハワイウィルス、スノーマウンテンウィルス、メキシコウィルス、デザートシールドウィルス、サウサンプトンウィルス、ローズデールウィルス、又はウィルキンソンウィルス(Wilkinson virus)、又はそれらの亜型若しくは変異体である。一部の実施形態において、ウィルスはノロウィルス属の構成員であり、遺伝子型群GI、遺伝子型群GII、遺伝子型群GIII、遺伝子型群GIV、又は遺伝子型群GVと分類することができる。
【0101】
一部の実施形態において、ウィルスは、ssRNAウィルス、例えばマイナス鎖(アンチセンス)ssRNAウィルス、例えば第V群ウィルスである。一部の実施形態において、PRR(例:STING)の発現が、宿主産生又はウィルス由来RNAによって誘発される。一部の実施形態において、ウィルスは、マイナス鎖(アンチセンス)ssRNAウィルスであり、ボルナウィルス科、フィロウィルス科、パラミクソウィルス科、ラブドウィルス科、ニヤミウィルス科、アレナウィルス科、ブニヤウィルス科、オフィオウィルス科、若しくはオルトミクソウィルス科、又はマイナス鎖(アンチセンス)ssRNAウィルスの他の科の構成員である。マイナス鎖(アンチセンス)ssRNAウィルス及びウィルス属の例には、ボルナ病(Brona disease)ウィルス、エボラウィルス、マールブルグウィルス、麻疹ウィルス、おたふく風邪ウィルス、ニパウィルス、ヘンドラウィルス、呼吸器合胞体ウィルス、インフルエンザ及びパラインフルエンザウィルス、メタ肺炎ウィルス、ニューカッスル病ウィルス、デルタウィルス(例:D型肝炎ウィルス)、ジコハウィルス(Dichoha virus)、エマラウィルス、ニャウィルス(Nya virus)、テヌイウィルス、バリコサウィルス、又はそれらの亜型、種若しくは変異体などがあるが、これらに限定されるものではない。
【0102】
一部の実施形態において、ウィルスは、ssRNAレトロウィルス(ssRNA RTウィルス)、例えば第VI群ウィルスである。一部の実施形態において、PRR(例:STING)の発現が、宿主産生又はウィルス由来RNAによって誘発される。一部の実施形態において、ウィルスは、ssRNARTウィルスであり、メタウィルス科、シュウドウィルス科、又はレトロウィルス科、又はssRNARTウィルスの他の科の構成員である。ssRNARTウィルス及びウィルス属の例には、メタウィルス、エルランチウィルス(Erranti virus)、アルファレトロウィルス(例:トリ白血病ウィルス、ラウス肉腫ウィルス)、ベータレトロウィルス(例:マウス乳がんウィルス)、ガンマレトロウィルス(例:マウス白血病ウィルス、猫白血病ウィルス)、デルタレトロウィルス(例:ヒトTリンパ球向性ウィルス)、イプシロンレトロウィルス(例:ウォールアイ皮膚肉腫ウィルス)、レンチウィルス(例:ヒト免疫不全ウィルス1(HIV))、又はそれらの亜型、種若しくは変異体などがあるが、これらに限定されるものではない。
【0103】
一部の実施形態において、ウィルスは、DNAウィルス、例えばdsDNAウィルス又はssDNAウィルスである。一部の実施形態において、ウィルスは、dsDNAウィルス、例えば、第I群ウィルスであり、PRR(例:STING)の発現が、宿主産生又はウィルス由来RNAによって誘発される。一部の実施形態において、ウィルスは、dsDNAウィルスであり、マイオウィルス科、ポドウィルス科、サイフォウィルス科、アロヘルペスウィルス科、ヘルペスウィルス科、カキヘルペスウィルス科、リポスリクスウィルス科、ルディウィルス科、アデノウィルス科、アンプラウィルス科、アスコウィルス科、アスファウィルス科、バキュロウィルス科、ビカウダウィルス科、クラバウィルス科(Clavaviridae)、コルチコウィルス科、フセロウィルス科、グロブロウィルス科(Globuloviridae)、グッタウィルス科、ヒトロサウィルス科(Hytrosaviridae)、イリドウィルス科、マルセイユウィルス科、ニマウィルス科、パンドラウィルス科、パピローマウィルス科、フィコドナウィルス科、ポリドナウィルス、ポリオーマウィルス科、ポックスウィルス科、シェロリポウィルス科(Sphaerolipoviridae)、テクティウィルス科、又はツリウィルス科(Turriviridae)、又はdsDNAウィルスの他の科の構成員である。dsDNAウィルス及びウィルス属の例には、ジノDNAウィルス、ヌディウィルス(Nudi virus)、天然痘、ヒトヘルペスウィルス、水痘・帯状疱疹ウィルス、ポリオーマウィルス6、ポリオーマウィルス7、ポリオーマウィルス9、ポリオーマウィルス10、JCウィルス、BKウィルス、KIウィルス、WUウィルス、メルケル細胞ポリオーマウィルス、トリコジスプラシア・スピヌロサ(Trichodysplasia spinulosa)関連ポリオーマウィルス、MXポリオーマウィルス、シミアンウィルス40、又はそれらの亜型、種若しくは変異体などがあるが、それらに限定されるものではない。
【0104】
一部の実施形態において、ウィルスは、ssDNAウィルス、例えば第II群ウィルスであり、PRR(例:STING)の発現が、宿主産生又はウィルス由来RNAによって誘発される。一部の実施形態において、ウィルスはssDNAウィルスであり、アネロウィルス科、バチラリオドナウィルス科(Bacillariodnaviridiae)、ビドゥナウィルス科(Bidnaviridae)、サーコウィルス科、ジェミニウィルス科、イノウィルス科、ミクロウィルス科、ナノウィルス科、パルボウィルス科、若しくはスピラウィルス科(Spiraviridae)、又はssDNAウィルスの他の科の構成員である。ssDNAウィルス及びウィルス属の例には、トルクテノウィルス、トルクテノミディウィルス、トルクテノミニウィルス、ジャイロウィルス、サーコウィルス、パルボウィルスB19、ボカパルボウィルス、デペンドパルボウィルス、エリスロパルボウィルス、プロトパルボウィルス、テトラパルボウィルス、カイコ濃核病ウィルス2型、リンパ球(lymphoidal)パルボ様ウィルス、肝膵臓パルボ様ウィルス、又はそれらの亜型、種若しくは変異体などがあるが、これらに限定されるものではない。
【0105】
一部の実施形態において、ウィルスは、dsDNA逆転写酵素(RT)ウィルス、例えば第VII群ウィルスであり、PRR(例:STING)の発現が宿主産生又はウィルス由来RNAによって誘発される。一部の実施形態において、ウィルスはdsDNA RTウィルスであり、ヘパドナウィルス科、又はカリモウィルス科、又はdsDNA RTウィルスの他の科の構成員である。dsDNA RTウィルス及びウィルス属の例には、B型肝炎ウィルス、又はそれの亜型、種若しくは変異体などがあるが、これらに限定されるものではない。
【0106】
一部の実施形態において、ウィルス(例:本明細書で記載のウィルス)は、例えば細胞内で潜伏性である。一部の実施形態において、ウィルスは、RNAウィルス(例:二本鎖RNA(dsRNA)ウィルス、一本鎖RNA(ssRNA)ウィルス(例:プラス鎖(センス)ssRNAウィルス又はマイナス鎖(アンチセンス)ssRNAウィルス)、又はssRNAレトロウィルス)又はDNAウィルス(例:dsDNAウィルス、ssDNAウィルス、又はdsDNAレトロウィルス)であり、例えば細胞内で潜伏性である。一部の実施形態において、ウィルスは、例えばバルチモア分類システムによる第I群、第II群、第III群、第IV群、第V群、第VI群、又は第VII群のウィルスであり、例えば細胞内で潜伏性である。
【0107】
一部の実施形態において、ウィルスは、RNAウィルス(例:本明細書で記載のRNAウィルス)であり、例えば細胞内で潜伏性である。一部の実施形態において、ウィルスは、ssRNAレトロウィルス(ssRNARTウィルス)、例えば第VI群ウィルスであり、例えば細胞内で潜伏性である。一部の実施形態において、ウィルスは、ヒト免疫不全ウィルス1(HIV))、又はそれの亜型、種若しくは変異体であり、例えば細胞内で潜伏性である。
【0108】
一部の実施形態において、本明細書に開示のウィルス感染を患う対象者におけるPRR(例:STING)の発現誘発方法によって、PRR発現(例:STING発現)が上昇する。一部の実施形態において、PRR(例:STING)の発現は、約1.1、約1.2、約1.3、約1.4、約1.5、約1.6、約1.7、約1.8、約1.9、約2、約2.5、約3、約4、約5、約7.5、約10、約15、約20、約25、約30、約40、約50、約75、約100、約150、約200、約250、約500、約1000、約1500、約2500、約5000、約10,000、又はそれより大きい倍数で誘発される。一部の実施形態において、PRR(例:STING)発現の誘発は、式(I)の化合物又はそれの薬学的に許容される塩の投与から約5分以内に起こる。一部の実施形態において、PRR(例:STING)発現の誘発は、対象者への式(I)の化合物又はそれの薬学的に許容される塩の投与から約10分、約15分、約20分、約25分、約30分、約45分、約1時間、約1.5時間、約2時間、約3時間、約4時間、約5時間、約6時間、約7時間、約8時間、約10時間、約12時間又はそれ以上の時間以内に起こる。
【0109】
細菌感染の治療
最近の研究により、PRR(例:STING)が多様な生物種由来の細菌感染の宿主認識において必須の役割を果たすことが明らかになっている(Dixit, E. and Kagan, J.C. Adv Immunol(2013)117:99-125)。一部の場合、細菌は、指数増殖期に核酸を分泌し得るものであり(例:リステリア・モノサイトゲネス(Listeria monocytogenes);Abdullah,Z. et al, EMBO J(2012) 31:4153-4164)、そしてRIG-IなどのPRRによって検出され、従って、さらなるPRR発現の誘発を促進する。他の場合、例えばレジオネラ・ニューモフィラ(Legionella pneumophila)の場合、感染経過期間にわたり、細菌DNAがサイトゾルに進入し、RIG-IへのRNAリガンドに転写されることから(Chiu, Y. H. et al, Cell(2009) 138:576-591)、下流PRR介在シグナル伝達事象を誘発する。細菌の食作用取り込み時に放出されるRNAが認識されると、PRR発現(例:STING発現)がさらに誘発され得る。更に、ペプチドグリカン類(例:ムラミールジペプチド、即ちMDP)などの細菌細胞壁成分が、PRR、即ちNOD2の活性化及び誘発のためのリガンドとして働き得るものであり、環状ジヌクレオチド(例:環状ジ-GMP)などの細菌由来核酸が、PRR、特にSTINGに結合し、それらを活性化し得る。一部の実施形態において、1以上のPRRの発現が、本明細書で明瞭に記載されていない他の手段によって誘発され得る。
【0110】
一部の実施形態において、本明細書で開示のPRR(例:STING)の発現誘発方法は、微生物感染、例えば細菌感染した対象者に対して、有効量の式(I)の化合物又はそれの薬学的に許容される塩を投与することを含む。
【0111】
一部の実施形態において、細菌は、グラム陰性菌又はグラム陽性菌である。細菌の例には、リステリア菌(例:リステリア・モノサイトゲネス(Listeria monocytogenes))、フランシセラ菌(例:フランシセラ・ツラレンシス(Francisella tularensis))、マイコバクテリウム菌(例:マイコバクテリア・ツベルクロシス(Mycobacteria tuberculosis))、ブルセラ菌(例:ブルセラ・アボルチす(Brucella abortis))、連鎖球菌(例:B群連鎖球菌)、レジオネラ菌(例:レジオネラ・ニューモフィラ(Legionella pneumophila))、大腸菌(例:エシェリキア・コリ(Escherichia coli))、シュードモナス菌(例:シュードモナス・アエルギノサ(Psuedomonas aeruginosa))、サルモネラ菌(例:サルモネラ・チフィ(Salmonella typhi))、シゲラ菌(例:シゲラ・フレクスネリ(Shigella flexneri))、カンピロバクター菌(例:カンピロバクター・ジェジュニ(Campylobacter jejuni))、クロストリジウム菌(例:クロストロジウム・ボツリヌム(Clostrodium botulinum))、腸球菌(例:エンテロコッカス・フェーカリス(Enterococcus faecalis))、ビブリオ菌(例:ビブリオ・コレラ(Vibrio cholera))、エルシニア菌(例:エルシニア・ペスチス(Yersinia pestis))、ブドウ球菌(例:スタフィロコッカス・オーレウス(Staphylococcus aureus))、又はそれらの他の属、種、亜型若しくは変異体などがあるが、これらに限定されるものではない。
【0112】
一部の実施形態において、本明細書に開示の細菌感染を患う対象者においてPRR(例:STING)の発現を誘発する方法により、PRR発現(例:STING発現)が上昇する。一部の実施形態において、PRR(例:STING)の発現は、約1.1、約1.2、約1.3、約1.4、約1.5、約1.6、約1.7、約1.8、約1.9、約2、約2.5、約3、約4、約5、約7.5、約10、約15、約20、約25、約30、約40、約50、約75、約100、約150、約200、約250、約500、約1000、約1500、約2500、約5000、約10,000、又はそれより大きい倍数で誘発される。一部の実施形態において、PRR(例:STING)の発現誘発は、式(I)の化合物又はそれの薬学的に許容される塩の投与から約5分以内に起こる。一部の実施形態において、PRR(例:STING)の発現誘発は、対象者への式(I)の化合物又はそれの薬学的に許容される塩の投与から約10分、約15分、約20分、約25分、約30分、約45分、約1時間、約1.5時間、約2時間、約3時間、約4時間、約5時間、約6時間、約7時間、約8時間、約10時間、約12時間又はそれ以上の時間以内に起こる。
【0113】
がんの治療
多くの進行固形腫瘍患者が、自然発生T細胞炎症腫瘍微小環境を示し、それは予後及び免疫療法に対する臨床応答を予測させるものである。最近の知見により、サイトゾルDNAセンシングのSTING経路が、腫瘍の関連でのI型IFN産生を駆動する重要な生来の免疫センシング機序であることが示唆されている。この経路についての知見によって、新規な免疫療法戦略のさらなる開発が進められている。
【0114】
早期結腸直腸がんにおいて、腫瘍微小環境内の活性化CD8+T細胞の存在は、良好な転帰を予想させるものである。他の固形腫瘍組織像を有する患者も、同様の陽性予後値を有し得る自然発生T細胞浸潤物を有するように思われる。それには、乳がん、腎細胞癌、メラノーマ、卵巣がん、及び消化器腫瘍などがある。T細胞浸潤物は、恐らくは免疫学的監視機序によって、増殖する腫瘍に応答して自然に活性化された腫瘍抗原特異的T細胞を含むものと考えられている。この宿主免疫応答の試みは、例えばそれによって腫瘍が完全に排除されないとしても、腫瘍進行を遅延させ、従って、臨床転帰の改善をもたらすものと考えられる。さらに、生来の免疫機序により、外因性感染がない場合であっても腫瘍抗原に対する適応T細胞応答が生じ得る。これに関しては、ヒトがん遺伝子発現プロファイリング研究により、I型IFN特性、T細胞浸潤、及び臨床転帰の間の関連がわかる。従って、I型IFN産生を誘発する生来の免疫センシング経路が、必須の中間機序段階を代表するものである可能性がある。メラノーマの遺伝子発現プロファイリングにおいて、T細胞浸潤物を示す転写プロファイルの存在又は非存在を示す、腫瘍微小環境の二つの主要なサブセットが見出されている。実際、CD8+T細胞、マクロファージ、並びにメラノーマ転移におけるこれら病変中の一部のB細胞及び形質細胞が、活性化T細胞が好ましい予後に関連していた早期結腸がん及び他の腫瘍で記載の表現型に類似している。CD8+T細胞は、腫瘍微小環境内の全ての免疫学的因子の上昇に必要であった。研究により、IFN産生が、腫瘍抗原に対する至適なT細胞プライミングに必要であることが示されている。STINGなどのイン・ビボで増殖腫瘍に応答して宿主DCによるIFN-β産生を誘発する多くのPRRがある。STINGは、環状GMP-AMPシンターゼ(cGAS)によって生成される環状ジヌクレオチドによって活性化されるアダプタータンパク質であり、そしてそれは、サイトゾルDNAによって直接活性化される。これらの環状ジヌクレオチド及び/又はDNAの存在下に、STINGが小胞体から各種の核周囲成分に移行する。例えば、ゴルジ体でのSTINGのパルミトイル化が、STING活性化に必須であることが明らかになっている(Mukai, K. et al(2016) Nat Commun doi:10.1038/ncomms11932)。
【0115】
活性化STINGは凝集体を形成し、TBK1を活性化させ、そして、それによって、I型IFN遺伝子転写に直接寄与するインターフェロン制御因子3(IRF3)がリン酸化される。この経路は、DNAウィルスのセンシングで、そして特定の自己免疫モデルでも示唆されている。さらに、最近、STINGの活性化突然変異が、I型IFN産生増加を特徴とする血管炎/肺炎症症候群のヒト患者で確認されている。マウス可移植性腫瘍モデルを用いる機序研究によって、STING-ノックアウトマウス及びIRF3-ノックアウトマウスが、イン・ビボで腫瘍抗原に対する不完全な自然発生T細胞プライミングを示し、免疫原性腫瘍の拒絶が排除されることがわかった。同様に、腫瘍浸潤性DCの主要な群のサイトゾル内で、腫瘍由来DNAが認められており、それはSTING経路活性化及びIFN-β産生と関連していた。従って、宿主STING経路は、腫瘍の存在を検出する重要な生来の免疫センシング経路であり、DC活性化及びそれに続くイン・ビボでの腫瘍関連抗原に対するT細胞プライミングを駆動するように思われる。イン・ビボでのSTING経路の機能的役割も、他のマウス腫瘍系で報告されている。誘発性神経膠腫モデルは、宿主応答の一部としてのI型IFN遺伝子特性の誘発をもたらすことが明らかになっている。この誘発は、STING-ノックアウトマウスで大幅に低下し、腫瘍がより強く増殖して、マウスの生存をより短くした。STING作動薬としての環状ジヌクレオチドの外因性送達が、イン・ビボで治療効果を発揮した。宿主I型IFN及び宿主STING経路の非常に重要な役割は、冷凍アブレーションに応答したB16.OVAモデル及びEL4.OVAモデルでも確認された。興味深い点として、宿主STINGが抗DNA抗体の最大産生にも必要であったことから、関与する機序が、紅斑性狼瘡のBm12マウスモデルで認められるものと類似していた。従って、腫瘍DNAによって部分的に誘発される抗腫瘍免疫応答は、細胞外DNAによって駆動される自己免疫に関与する機序と重複している。STINGについての役割も、誘発性結腸がんモデルで調査されている。個々の患者におけるがんがSTING経路活性化を支援する能力が、T細胞炎症腫瘍微小環境の自然発生と関連している可能性があると思われる。この表現型は早期がん患者の予後改善に関連しており、転移状況での免疫療法に対する臨床応答とも関連していることから、STING活性化の不首尾は、早期機能ブロックを表すものであり、従って、それ自体がバイオマーカーとしての予後値/予測値を有し得るものである。第2に、宿主STING経路の出力を活性化若しくは模倣する戦略は、診療所における免疫療法の可能性を有するはずである。非T細胞炎症腫瘍がI型IFN転写特性の兆候を持たないように見えることから、腫瘍微小環境におけるAPCを介した堅牢な生来のシグナル伝達を促進する戦略は、腫瘍抗原特異的CD8+T細胞の交差プライミングの改善を促進し、さらにはその後の腫瘍崩壊活性のためのケモカイン産生を増加させる可能性があると考えられる。
【0116】
cGAS、RIG-I、及び/STINGなどのPRRによる核酸リガンドの認識は、I型インターフェロン(例えば、IFN-α又はIFN-β)の産生を刺激し、従って罹患しやすい細胞においてアポトーシスをもたらし得る一連の下流シグナル伝達事象を誘起する。近年、PRR発現の誘発と多数のがんとの間の関連が発見された。例えば、RIG-I発現は、肝細胞がんにおいて有意に低下することが示されており、腫瘍において低いRIG-I発現を呈する患者はより短い生存期間及びIFN-α療法に対するより乏しい応答を有していた(Hou, J. et al, Cancer Cell(2014) 25:49-63)。従って、RIG-I発現のレベルは予後の予測及び免疫療法に対する応答のためのバイオマーカーとして有用であり得ることが示唆されている。他の場合において、RIG-I発現の誘発は、膵臓がん細胞、前立腺がん細胞、乳がん細胞、皮膚がん細胞、及び肺がん細胞の免疫原性細胞死を誘発することが示されており(Duewell, P. et al, Cell Death Differ(2014) 21:1825-1837、Besch, R. et al, J Clin Invest(2009) 119:2399-2411、Kaneda, Y. Oncoimmunology(2013) 2:e23566、Li, X. Y. et al, Mol Cell Oncol(2014) 1:e968016)、免疫介在のがん治療における新たなアプローチが強調されている。
【0117】
STINGは、cGAS-STING-IFNカスケードにおける鍵となるアダプタータンパク質として認識されているが、DNAに対するセンサーであることも報告されている。がんに応答した自然免疫の刺激におけるSTINGの役割も確認されている。最近の研究では、腫瘍細胞ストレス又は細胞死を通じて生じるとみられる、腫瘍浸潤樹状細胞などのある特定の抗原提示細胞の細胞質ゾル中の腫瘍由来DNAの存在が明らかになった。この腫瘍由来DNAは、STINGを活性化することが示されている環状ヌクレオチドの産生を引き起こしてcGASを活性化させ、結果的に、関連する1型インターフェロンの産生を引き起こすことが知られている(Woo, S. R. et al, Immunity(2014) 41:830-842)。STINGの刺激及びその結果生じる下流のシグナル伝達経路も、炎症を起こした腫瘍微小環境へのエフェクターT細胞の動員に寄与するとみられる(Woo, S. R. Trends in Immunol(2015) 36:250-256)。腫瘍微小環境におけるSTING活性化は、抗腫瘍活性をもたらす適応免疫応答を誘発することができる。従って、STING欠損である腫瘍において、本明細書に記載のものは、抗原提示細胞及び樹状細胞の活性化、(APC及びDC)並びに適応免疫応答の誘発を通じての抗腫瘍活性を依然として有し得る。
【0118】
一部の実施形態において、PRR(例えば、本明細書において記載されるPRR)の発現を誘発する方法は、がんに罹患している対象者への、有効量の式(I)の化合物又はそれの薬学的に許容される塩の投与を含む。一部の実施形態において、本明細書において開示されるSTINGの発現を誘発する方法は、がんに罹患している対象者への、式(I)の化合物又はそれの薬学的に許容される塩の投与を含む。一部の実施形態において、本明細書に開示されるRIG-Iの発現の誘発する方法は、がんに罹患している対象者への、式(I)の化合物又はそれの薬学的に許容される塩の投与を含む。一部の実施形態において、本明細書に開示されるNOD2の発現の誘発する方法は、がんに罹患している対象者への、式(I)の化合物又はそれの薬学的に許容される塩の投与を含む。一部の実施形態において、がんは、乳房、骨、脳、子宮頸部、結腸、消化管、眼、胆嚢、リンパ節、血液、肺、肝臓、皮膚、口腔、前立腺、卵巣、陰茎、膵臓、子宮、精巣、胃、胸腺、甲状腺、又は他の身体部分のがんから選択される。一部の実施形態において、がんは固形腫瘍(例えば、癌腫、肉腫、又はリンパ腫)を含む。一部の実施形態において、がんは肝細胞癌又は他の肝臓がんである。一部の実施形態において、がんは白血病又は他の血液のがんである。一部の実施形態において、がんは、乳がん、腎細胞癌、結腸がん、黒色腫、卵巣がん、頭頸部扁平上皮癌、膵がん、前立腺がん、肺がん、脳がん、甲状腺がん、腎がん、精巣がん、胃がん、尿路上皮がん、皮膚がん、子宮頸がん、子宮内膜がん、肝がん、肺がん、リンパ腫又は消化管間質がん、及び固形腫瘍を含む。一部の実施形態において、がん細胞(例えば、腫瘍細胞)は、T細胞仲介性抗腫瘍応答を誘発する特異的がん関連抗原を含む。
【0119】
一部の実施形態において、本明細書において開示されるがんに罹患している対象者においてPRR(例えば、STING、RIG-I、MDA5、LGP2)の発現を誘発する方法は、PRR発現(例えば、STINGの発現)の上昇をもたらす。一部の実施形態において、PRR(例えば、STING)の発現は、約1.1、約1.2、約1.3、約1.4、約1.5、約1.6、約1.7、約1.8、約1.9、約2、約2.5、約3、約4、約5、約7.5、約10、約15、約20、約25、約30、約40、約50、約75、約100、約150、約200、約250、約500、約1000、約1500、約2500、約5000、約10,000、又はそれより大きい倍数で誘発される。一部の実施形態において、PRR(例えば、STING)の発現の誘発は、式(I)の化合物又はそれの薬学的に許容される塩の投与から約5分以内に生じる。一部の実施形態において、PRR(例えば、STING)の発現の誘発は、式(I)の化合物又はそれの薬学的に許容される塩の投与から約5分以内に生じる。一部の実施形態において、PRR(例えば、STING)の発現の誘発は、式(I)の化合物又はそれの薬学的に許容される塩の投与後、約10分、約15分、約20分、約25分、約30分、約45分、約1時間、約1.5時間、2時間、約3時間、約4時間、約5時間、約6時間、約7時間、約8時間、約10時間、約12時間又はそれより長時間以内の時間で生じる。化合物によるSTINGの活性化が、RIG-I、MDA5、NOD2などの他のPRRの発現の誘発をもたらし得て、このことが腫瘍微小環境におけるIFN産生をさらに増幅することができ、抗腫瘍活性の増強のためにT細胞を刺激し得ることが認識されている。
【0120】
一部の実施形態において、本明細書において開示されるがんに罹患している対象者においてPRR(例えば、STING)の発現を誘発する方法は、PRR発現(例えば、STINGの発現)の上昇をもたらす。一部の実施形態において、PRR(例えば、STING)の発現は、約1.1、約1.2、約1.3、約1.4、約1.5、約1.6、約1.7、約1.8、約1.9、約2、約2.5、約3、約4、約5、約7.5、約10、約15、約20、約25、約30、約40、約50、約75、約100、約150、約200、約250、約500、約1000、約1500、約2500、約5000、約10,000、又はそれより大きい倍数で誘発される。一部の実施形態において、PRR(例えば、STING)の発現の誘発は、式(I)の化合物又はそれの薬学的に許容される塩若しくは立体異性体の投与から約5分以内に生じる。一部の実施形態において、PRR(例えば、STING)の発現の誘発は、式(I)の化合物又はそれの薬学的に許容される塩の投与後、約10分、約15分、約20分、約25分、約30分、約45分、約1時間、約1.5時間、2時間、約3時間、約4時間、約5時間、約6時間、約7時間、約8時間、約10時間、約12時間又はそれより長時間以内に生じる。
【0121】
医薬組成物
本開示の化合物(例えば、式(I)の化合物)を単独で投与することは可能であるが、該化合物を医薬組成物又は医薬製剤として投与することが好ましく、該化合物は、1以上の薬学的に許容される希釈剤、賦形剤又は担体と組み合わせられる。本発明による化合物は、人間医学又は獣医学で使用するためのあらゆる簡便な方法での投与のために製剤することができる。ある種の実施形態において、医薬調製物中に含まれる化合物は、それ自体活性があり得るか、例えば、生理的状況において活性化合物へと転換され得るプロドラッグであることができる。選択された投与経路にかかわらず、好適な水和形態で使用可能な本開示の化合物、及び/又は本開示の医薬組成物は、以下に記載するような薬学的に許容される剤形へと、又は当業者に既知の他の従来法によって製剤される。
【0122】
医薬組成物中の本開示の化合物(例えば、式(I)の化合物)の量及び濃度、並びに対象者へ投与される医薬組成物の量は、対象者の医学的に関連する特徴(例えば、年齢、体重、性別、他の医学的状態など)、医薬組成物中での化合物の溶解度、化合物の効力及び活性、並びに医薬組成物の投与様式などの臨床的に関連する要素に基づいて選択することができる。投与経路及び投与法に関するさらなる情報については、Comprehensive Medicinal Chemistry(Corwin Hansch;Chairman of Editorial Board), Pergamon Press1990の第5巻における第25.3章を参照する。
【0123】
従って、本開示の別の態様は、1以上の薬学的に許容される担体(添加物)及び/又は希釈剤と一緒に製剤された、治療上有効量又は予防上有効量の本明細書に記載の化合物(例えば、式(I)の化合物)を含む薬学的に許容される組成物を提供する。以下に詳細に記載されるように、本開示の医薬組成物は、経口投与、腫瘍内投与、非経口投与、例えば、滅菌液剤若しくは懸濁液として、例えば、皮下注射、筋肉注射若しくは静脈注射に適したものを含む、固体又は液体での投与のために特別に製剤することができる。しかしながら、ある種の実施形態において、本発明の化合物は、滅菌水中に単純に溶解又は懸濁させることができる。ある種の実施形態において、医薬製剤は非発熱性、即ち患者の体温を上昇させない。
【0124】
本明細書で使用される「全身投与」、「全身に投与される」、「末梢投与」及び「末梢に投与される」という表現は、中枢神経系への直接的な投与以外の化合物の投与であって、それにより化合物が患者の系に入り、従って、代謝及び他の類似のプロセスへ供されること、例えば、皮下投与を意味する。
【0125】
「薬学的に許容される」という表現は、正常な医学的判断の範囲内で、過剰な毒性、刺激、アレルギー反応、又はその他の問題若しくは合併症を伴うことなく、妥当な利益/リスク比に相応して、ヒト及び動物の組織と接触させて使用するのに適した化合物、材料、組成物、及び/又は剤形を指すために本明細書において採用される。
【0126】
本明細書で使用される「薬学的に許容される担体」という表現は、対象のアンタゴニストを一つの器官又は身体の一部から別の器官又は身体の一部へと運搬又は輸送することに関与する、液体若しくは固体の充填剤、希釈剤、安定化剤、賦形剤、溶剤又は封入材料などの薬学的に許容される材料、組成物若しくは媒体を意味する。担体は各々、製剤の他の成分と適合性があり、患者に対して有害ではないという意味で「許容され」なければならない。薬学的に許容される担体として役立つことができる材料のいくつかの例としては、以下に限定するものではないが、(1)乳糖、グルコース及びショ糖などの糖、(2)トウモロコシデンプン及びジャガイモデンプンなどのデンプン、(3)カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース及び酢酸セルロースなどのセルロース及びその誘導体、(4)粉状トラガカント、(5)麦芽、(6)ゼラチン、(7)タルク、(8)カカオバター及び坐剤ロウなどの賦形剤、(9)ラッカセイ油、綿実油、ベニバナ油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油及び大豆油などの油、(10)プロピレングリコールなどのグリコール、(11)グリセリン、ソルビトール、マンニトール、ポリエチレングリコールなどのポリオール、(12)オレイン酸エチル及びラウリン酸エチルなどのエステル、(13)寒天、(14)水酸化マグネシウム及び水酸化アルミニウムなどの緩衝剤、(15)アルギン酸、(16)アスコルビン酸、(17)発熱物質非含有水、(18)等張性塩類溶液、(19)リンガー溶液、(20)エチルアルコール、(21)リン酸緩衝液、(22)Captisol(R)などのシクロデキストリン、(23)医薬製剤に採用される酸化防止剤及び抗微生物薬などの他の無毒性の適合性物質が挙げられる。
【0127】
上述のように、本明細書に記載の化合物のある種の実施形態は、アミンなどの塩基性官能基を含有してもよく、従って、薬学的に許容される酸を用いて薬学的に許容される塩を形成することができる。この点における「薬学的に許容される塩」という用語は、本開示の化合物の比較的無毒性の無機酸付加塩及び有機酸付加塩を指す。これらの塩は、本開示の化合物の最終的な単離及び精製の中にイン・サイツで、或いは遊離塩基形態の本開示の精製化合物を適切な有機酸又は無機酸と別々に反応させ、こうして形成された塩を単離することによって調製することができる。代表的な塩は、臭化水素酸塩、塩酸塩、硫酸塩、重硫酸塩、リン酸塩、硝酸塩、酢酸塩、吉草酸塩、オレイン酸塩、パルミチン酸塩、ステアリン酸塩、ラウリン酸塩、安息香酸塩、乳酸塩、リン酸塩、トシル酸塩、クエン酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、ナフチル酸塩、メシル酸塩、グルコヘプトン酸塩、ラクトビオン酸塩、及びラウリルスルホン酸塩などを含む(例えば、Berge et al. (1977) ″Pharmaceutical Salts″, J. Pharm. Sci. 66:1-19を参照する)。
【0128】
他の場合において、本開示の化合物は、1以上の酸性官能基を含有することができることから、薬学的に許容される塩基を用いて薬学的に許容される塩を形成することができる。これらの場合における「薬学的に許容される塩」という用語は、本開示の化合物(例えば、式(I)の化合物)の比較的無毒性の無機塩基付加塩及び有機塩基付加塩を指す。これらの塩は同様に、化合物の最終的な単離及び精製の間にイン・サイツで、或いは遊離酸形態の精製化合物を、薬学的に許容される金属カチオンの水酸化物、炭酸塩又は重炭酸塩などの好適な塩基と、アンモニアと、或いは薬学的に許容される有機第一級、第二級又は第三級アミンと別々に反応させることによって調製することができる。代表的なアルカリ塩又はアルカリ土類塩には、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、及びアルミニウム塩などがある。塩基付加塩の形成に有用な代表的な有機アミンには、エチルアミン、ジエチルアミン、エチレンジアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、ピペラジンなどがある(例えば、前出のBerge et al.を参照する)。
【0129】
湿展剤、乳化剤、並びにラウリル硫酸ナトリウム及びステアリン酸マグネシウムなどの潤滑剤、並びに着色料、剥離剤、コーティング剤、甘味料、香味剤及び香料、保存料並びに酸化防止剤も組成物中に存在させることができる。薬学的に許容される酸化防止剤の例には、(1)アスコルビン酸、塩酸システイン、重硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウムなどの水溶性酸化防止剤、(2)パルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、レシチン、没食子酸プロピル、α-トコフェロールなどの油溶性酸化防止剤、及び(3)クエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ソルビトール、酒石酸、リン酸などの金属キレート剤などがある。
【0130】
薬学的に許容される担体、並びに湿展剤、乳化剤、潤滑剤、着色料、剥離剤、コーティング剤、甘味料、香味剤、香料、保存料、酸化防止剤、及び他の追加成分は、本明細書において記載される組成物の約0.001%~99%の量で存在し得る。例えば、該薬学的に許容される担体、並びに湿展剤、乳化剤、潤滑剤、着色料、剥離剤、コーティング剤、甘味料、香味剤、香料、保存料、酸化防止剤、及び他の追加成分は、本明細書に記載の組成物の約0.005%、約0.01%、約0.05%、約0.1%、約0.25%、約0.5%、約0.75%、約1%、約1.5%、約2%、約3%、約4%、約5%、約6%、約7%、約8%、約9%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約85%、約90%、約95%、又は約99%から存在し得る。
【0131】
本開示の医薬組成物は、経口投与に適した形態、例えば、液体又は固体の経口剤形であり得る。一部の実施形態において、液体剤形は、懸濁剤、液剤、舐剤、乳濁液、飲料、エリキシル剤、又はシロップを含む。一部の実施形態において、固体剤形は、カプセル、錠剤、粉剤、糖衣剤、又は粉剤を含む。医薬組成物は、正確な投与量の単回投与に適した単位剤形であり得る。医薬組成物は、本明細書に記載の化合物(例えば、式(I)の化合物)又はその薬学的に許容される塩に加えて、薬学的に許容される担体を含んでもよく、任意に、さらに、例えば、安定化剤(例えば、結合剤、例えば、ポリマー、例えば、沈殿防止剤、希釈剤、結合剤、及び潤滑剤など、1以上の薬学的に許容される賦形剤を含んでもよい。
【0132】
一部の実施形態において、本明細書に記載の組成物は、経口投与用の液体剤形、例えば、液剤又は懸濁剤を含む。他の実施形態において、本明細書において記載される組成物は、錠剤へと直接圧縮することができる経口投与用の固体剤形を含む。さらに、該錠剤は、他の医用剤又は医薬剤、担体、及び/又は補助剤を含み得る。例示的な医薬組成物は、例えば、本開示の化合物(例えば、式(I)の化合物)又はその薬学的に許容される塩を含む圧縮錠(例えば、直接圧縮錠)を含む。
【0133】
本開示の製剤は、非経口投与に適したものを含む。製剤は、単位剤形で簡便に提供することができ、医薬の分野で周知の方法によって調製することができる。単一剤形を製造するために担体材料と合わせることができる有効成分の量は、治療される宿主、特定の投与形態によって変わることになっている。単一剤形を製造するために担体材料と合わせることができる有効成分の量は概して、治療効果を生じる化合物の量になる。概して、100パーセントのうち、この量は、有効成分の約1パーセント~約99パーセント、好ましくは約5パーセント~約70パーセント、最も好ましくは約10パーセント~約30パーセントの範囲になる。非経口投与に適した本開示の医薬組成物は、本開示の化合物を、酸化防止剤、緩衝剤、静菌薬、製剤を所期の被投与者の血液と等張性にする溶質、又は懸濁剤若しくは増粘剤を含有し得る、1以上の薬学的に許容される無菌等張性水溶液若しくは非水溶液、分散液、懸濁液若しくは乳濁液、又は使用前に無菌注射液若しくは注射分散液に再生することができる無菌分散液との組み合わせで含む。
【0134】
本開示の医薬組成物において採用され得る好適な水系及び非水系担体の例には、水、エタノール、多価アルコール(グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)、及びこれらの好適な混合物、オリーブ油などの植物油、並びにオレイン酸エチルなどの注射用有機エステルが挙げられる。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティング材料の使用によって、分散液の場合には必要とされる粒径の維持によって、及び界面活性剤の使用によって維持することができる。
【0135】
これらの組成物は、保存料、湿展剤、乳化剤及び分散剤などの補助剤を含有してもよい。微生物の作用の防止は、種々の抗菌薬及び抗真菌薬、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノールソルビン酸などを含めることによって確保され得る。糖、塩化ナトリウムなどの等張剤を組成物に含めることも望ましい場合がある。さらに、モノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンなど、吸収を遅らせる薬剤を含めることによって、注射用医薬形態の長期吸収がもたらされ得る。
【0136】
一部の場合において、本開示の化合物(例えば、式(I)の化合物)の効果を持続させるために、皮下注射、腹腔内注射又は筋肉注射からの薬物の吸収を遅らせることが望ましい場合がある。このことは、難水溶性である結晶質材料又は非晶質材料の液状懸濁液の使用によって達成することができる。次に、薬物の吸収速度はその溶解速度によって決まり、このことは次に、結晶の大きさ及び結晶形態によって決まり得る。或いは、非経口投与形態の本開示の化合物の遅延吸収は、化合物を油性媒体中で溶解させ又は懸濁することによって達成される。
【0137】
一部の実施形態において、本開示の化合物(例えば、式(I)の化合物)を持続した様式で投与することは有利であり得る。持続吸収特性を提供する製剤が使用され得ることは明らかであろう。ある種の実施形態において、本開示の化合物を他の薬学的に許容される成分、希釈剤、又は全身循環への本開示の化合物の放出特性を遅らせる担体と合わせることによって、持続吸収を達成することができる。
【0138】
投与経路
本明細書に記載の方法において使用される化合物及び組成物は、当業者には理解されるように、選択された投与経路に応じた各種形態で対象者へ投与することができる。本明細書に記載の方法で使用する組成物の例示的な投与経路には、局所投与、経腸投与、又は非経口投与などがある。局所投与としては、経皮、吸入、浣腸、点眼薬、点耳薬、及び体内の粘膜を経た投与が挙げられるが、これらに限定されるものではない。経腸投与としては、経口投与、直腸投与、膣内投与、及び経管栄養用チューブなどがある。非経口投与としては、静脈、動脈、嚢内、眼窩内、心内、皮内、気管内、皮下(subcuticular)、関節内、被膜下、くも膜下、脊髄内、硬膜外、骨内、腹腔内、皮下(subcutaneous)、筋肉、経上皮、鼻腔内、肺内、髄腔内、直腸内、及び局所的投与形態が挙げられる。非経口投与は、選択された期間にわたる連続注入によるものであることができる。本開示のある種の実施形態において、式(I)の化合物を含む本明細書に記載の組成物は、経口投与される。本開示の他の実施形態において、式(I)の化合物を含む本明細書に記載の組成物は、非経口(例えば、腹腔内)投与される。固形腫瘍の治療のために、腫瘍内への化合物の直接注射も実施され得る(例えば、腫瘍内投与)ことがわかっている。固形腫瘍の治療のために、腫瘍内への化合物の直接注射も実施され得る(例えば、腫瘍内投与)ことがわかっている。
【0139】
静脈、腹腔内、若しくは髄腔内送達又は直接注射(例えば、腫瘍内)のためには、組成物は、組成物が注射器によって送達可能な程度まで無菌かつ流動的でなければならない。水に加えて、担体は、等張性緩衝生理食塩水、エタノール、多価アルコール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、及び液状ポリエチレングリコールなど)、及びこれらの適切な混合物であることができる。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティング剤の使用によって、分散液の場合には必要とされる粒径の維持によって、及び界面活性剤の使用によって維持することができる。多くの場合、組成物中に等張剤、例えば糖、マンニトール又はソルビトールなどの多価アルコール、及び塩化ナトリウムを含むことが好ましい。注射用組成物の長期吸収は、組成物中に吸収を遅らせる薬剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウム又はゼラチンを含めることによってもたらすことができる。
【0140】
投与経路の選択は、局所的効果が達成されるべきか全身的効果が達成されるべきかによって決まることになる。例えば、局所作用のために、組成物は局所投与用に製剤することができ、その作用が望まれる箇所へ直接投与することができる。全身での長期作用のために、組成物は経腸投与用に製剤することができ、消化管を介して与えることができる。全身での、即時的及び/又は短期間での作用のために、組成物は、非経口投与用に製剤することができ、消化管を経る以外の経路によって与えることができる。
【0141】
投与量
本開示の組成物は、当業者に既知の従来法によって、許容される剤形へと製剤される。本開示の組成物中の有効成分(例えば、式(I)の化合物)の実際の薬用量レベルは、患者にとって有毒にならずに、特定の対象者、組成物、及び投与様式に対して所望の治療応答を達成するのに有効な有効成分の量を得るように変化させてもよい。選選択された薬用量レベルは、採用される本開示の特定の組成物の活性、投与経路、投与時間、採用される特定の薬剤の吸収速度、治療期間、採用される特定の組成物と併用される他の薬剤、物質、及び/又は材料、治療される対象者の年齢、性別、体重、容態、全般的な健康状態及びこれまでの病歴、並びに医学分野において周知の同様の因子を含む種々の薬物動態因子に依存することになっている。当業者である医師又は獣医は、必要とされる組成物の有効量を容易に判断及び処方することができる。例えば、医師又は獣医は、所望の治療効果を達成して、所望の作用が達成されるまで薬用量を漸増させるために必要とされるレベルよりも低レベルで組成物中に採用される本開示の物質の投与を開始することができる。概して、本開示の組成物の適切な1日用量は、治療効果を生じるのに有効な最低用量である物質の量であることになっている。このような有効量は概して、上述の因子に依存することになっている。好ましくは、治療組成物の有効な日用量は、当日を通して適切な間隔で別々に投与される2、3、4、5、6又はそれより多数回の部分用量として、任意で単位剤形で投与することができる。
【0142】
好ましい治療薬用量レベルは、本明細書に記載する障害(例えば、HBV感染)に罹患している対象者へ(例えば、経口で又は腹腔内に)投与される、1日当たりの組成物の約0.1mg/kg~約1000mg/kg(例えば、約0.2mg/kg、0.5mg/kg、1.0mg/kg、1.5mg/kg、2mg/kg、3mg/kg、4mg/kg、5mg/kg、10mg/kg、15mg/kg、20mg/kg、25mg/kg、30mg/kg、35mg/kg、40mg/kg、45mg/kg、50mg/kg、60mg/kg、70mg/kg、80mg/kg、90mg/kg、100mg/kg、125mg/kg、150mg/kg、175mg/kg、200mg/kg、250mg/kg、300mg/kg、350mg/kg、400mg/kg、450mg/kg、500mg/kg、600mg/kg、700mg/kg、800mg/kg、900mg/kg、又は1000mg/kg)である。好ましい予防薬用量レベルは、対象者へ(例えば、経口で又は腹腔内に)投与された1日当たり組成物の約0.1mg/kg~約1000mg/kg(例えば、約0.2mg/kg、0.5mg/kg、1.0mg/kg、1.5mg/kg、2mg/kg、3mg/kg、4mg/kg、5mg/kg、10mg/kg、15mg/kg、20mg/kg、25mg/kg、30mg/kg、35mg/kg、40mg/kg、45mg/kg、50mg/kg、60mg/kg、70mg/kg、80mg/kg、90mg/kg、100mg/kg、125mg/kg、150mg/kg、175mg/kg、200mg/kg、250mg/kg、300mg/kg、350mg/kg、400mg/kg、450mg/kg、500mg/kg、600mg/kg、700mg/kg、800mg/kg、900mg/kg、又は1000mg/kg)である。用量はまた、用量設定され得る(例えば、頭痛、下痢、又は吐き気などの毒性の徴候が現れるまで、用量は漸増され得る)。
【0143】
治療の頻度も異なり得る。対象者は、1日に1回以上(例えば、1回、2回、3回、4回又はそれより多数回)又は非常に多くの時間ごと(例えば、約2、4、6、8、12、又は24時間ごと)に治療することができる。組成物は、24時間あたり1回又は2回投与することができる。治療の時間経過は、変動する持続期間であり得、例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、又はそれより多くの日数、2週間、1か月、2か月、4か月、6か月、8か月、10か月、又は1年超である。例えば、治療は、3日間1日2回、7日間1日2回、10日間1日2回であることができる。治療周期は、一定間隔、例えば、毎週、隔月又は毎月で反復することができ、治療周期は、治療を与えない期間によって分離される。治療は、単回治療であることができ、又は対象者の寿命がある限り(例えば、長年)続くことができる。
【0144】
患者選択及びモニタリング
本明細書に記載の本開示の方法は、IFN、ISG及びサイトカインの産生に向けてPRRを活性化させるために、又はPRR(例えば、RIG-I、STINGなど)の発現をさらに誘発するために、対象者への式(I)の化合物又はそれの薬学的に許容される塩の投与を必要とする。一部の実施形態において、対象者は、状態、例えば、増殖性疾患、例えば、がんに罹患しているか又はそれと診断されている。従って、患者及び/又は対象者は、最初にその患者及び/又は対象者を評価して、その対象者が増殖性疾患、例えばがんに感染しているか否かを確認することで、式(I)の化合物又はそれの薬学的に許容される塩を使用した治療に選択することができる。対象者は、この分野で既知の方法を用いて増殖性疾患(例えば、がん)に感染していると評価され得る。例えば、本明細書に記載の化合物(例えば、式(I)の化合物)又はそれの薬学的に許容される塩の投与後に、対象者をモニタリングすることもできる。
【0145】
一部の実施形態において、対象者とは哺乳類である。一部の実施形態において、対象者とはヒトである。一部の実施形態において、対象者とは成人である。一部の実施形態において、対象者は、増殖性疾患、例えば、がんに罹患している。一部の実施形態において、対象者は、乳房、骨、脳、子宮頸部、結腸、消化管、眼、胆嚢、リンパ節、血液、肺、肝臓、皮膚、口腔、前立腺、卵巣、陰茎、膵臓、子宮、精巣、胃、胸腺、甲状腺、又は他の身体部分のがんに罹患している。一部の実施形態において、対象者は、固形腫瘍(例えば、癌腫、肉腫、又はリンパ腫)を含むがんに罹患している。一部の実施形態において、対象者は、肝細胞癌又は他の肝がんに罹患している。一部の実施形態において、対象者は、白血病又は他の血液のがんに罹患している。一部の実施形態において、対象者は、乳がん、腎細胞癌、結腸がん、メラノーマ、卵巣がん、頭頸部扁平上皮癌、膵がん、前立腺がん、肺がん、脳がん、又は消化管間質がんに罹患している。一部の実施形態において、対象者は、T細胞応答を誘発する特異的がん関連抗原を含むがん細胞(例えば、腫瘍細胞)を有する。
【0146】
一部の実施形態において、対象者は、治療を受けたことがない。一部の実施形態において、対象者は、増殖性疾患(例えば、がん)について以前治療を受けたことがある。一部の実施形態において、対象者は再発している。
【0147】
併用療法
本明細書に記載の化合物は、他の既知の療法と併用することができる。本明細書で使用される場合、「組み合わせて」とは、対象者が障害に罹患している間に2つ(又はそれより多数)の異なる治療が対象者へ送達されることを意味し、例えば、2つ以上の治療は、対象者が障害に罹患していると診断された後で、障害が治癒若しくは排除される前に又は他の理由のために治療を中止する前に送達される。一部の実施形態において、一つの治療の送達は、第2の送達の開始時に依然として生じているので、投与に関して重複がある。このことは、本明細書において時に「同時」又は「同時送達」と呼ばれる。他の実施形態において、一つの治療の送達は、他の治療の送達が始まる前に終了する。いずれかの場合の一部の実施形態において、併用投与なので治療はより有効である。例えば、第2の治療はより有効である、例えば、より少ない第2の治療で等価な効果が見られるか、第2の治療によって、第1の治療をせずに第2の治療を行った場合に見られると考えられるものより大きく症状を軽減するか、第1の治療で類似の状況が見られる。一部の実施形態において、送達は、症状の軽減、又は障害と関連する他のパラメータが、その他のパラメータのない状態で送達される一つの治療で認められると考えられるものよりも大きくなるようにする。その二つの治療の効果は、部分的に相加的、全体的に相加的、又は相加よりも大きくあり得る。送達は、送達された第1の治療の効果が、第2の治療が送達されたときに依然として検出可能であるようなものであることができる。
【0148】
本明細書に記載の化合物、及び少なくとも一つの追加の治療薬は、同時に、同じ組成物中で若しくは別々の組成物中で、又は順次に投与することができる。順次投与のために、本明細書に記載の化合物を最初に投与することができ、追加の薬剤を2番目に投与することができるか、投与の順序を逆にすることができる。
【0149】
一部の実施形態において、式(I)の化合物又はそれの薬学的に許容される塩と追加の薬剤との組み合わせは、相乗作用又は相加作用を有する。一部の実施形態において、「相加的」という用語は、二つの薬剤を併用したときに、薬剤の組み合わせが薬剤それぞれの個々の活性の合計と等しいがそれより大きくはない形で作用する結果を指す。
【0150】
一部の実施形態において、「相加的」という用語は、二つの薬剤を併用したときに、薬剤の組み合わせが薬剤それぞれの個々の活性の合計と等しいがそれより大きくはない形で作用する結果を指す。一部の実施形態において、「相乗性」又は「相乗的」という用語は、二つの薬剤を併用したときに、薬剤の組み合わせが、他薬剤のない状態で有効であるのに必要な濃度よりも低濃度の各個々の薬剤を必要とするように作用する。一部の実施形態において、相乗効果は結果的に、一方又は両方の薬剤の最小阻害濃度の低下に至り、それにより、効果は相加的効果より大きくなる。相乗効果は相加効果より大きい。一部の実施形態において、本明細書の組成物中の薬剤は、相乗作用を示してもよく、その場合、特定の濃度での活性は、いずれかの薬剤単独の活性の少なくとも約1.25、1.5、1.75、2、2.5、3、4、5、10、12、15、20、25、50、又は100倍より大きい。
【0151】
例えば、本明細書に記載する方法のいかなるものも、治療上有効量の追加の薬剤の投与をさらに含み得る。例示的な追加の医薬としては、抗増殖薬、抗がん薬、抗糖尿病薬、抗炎症薬、免疫抑制薬、及び疼痛寛解薬が挙げられるが、これらに限定されるものではない。医薬は、薬剤化合物(例えば、連邦規則集(CFR)に規定されているように米国食品医薬品局によって承認された化合物)、ペプチド、タンパク質、炭水化物、単糖類、オリゴ糖、多糖類、核タンパク質、ムコタンパク、リポタンパク質、合成ポリペプチド又はタンパク質、タンパク質に結合した小分子、糖タンパク質、ステロイド、核酸、DNA、RNA、ヌクレオチド、ヌクレオシド、オリゴヌクレオチド、アンチセンスオリゴヌクレオチド、脂質、ホルモン、ビタミン、及び細胞を含む。一部の実施形態において、追加の薬剤は、抗がん薬、例えばアルキル化薬(例えば、シクロホスファミド)である。
【0152】
1実施形態において、追加の薬剤はがん免疫薬、例えば、免疫系を活性化させる、例えば、がん細胞を認識してそれを破壊することを可能にする薬剤である。例示的ながん免疫化合物は、免疫チェックポイント遮断経路を阻害する化合物である。1実施形態において、化合物は、PD-1抗体若しくはPD-L1抗体又は同時刺激抗体などの抗体である。一部の実施形態において、化合物は抗CTLA4抗体である。別の実施形態において、薬剤は、CAR-t療法などの細胞系薬剤である。
【実施例】
【0153】
本開示は、下記の実施例及び合成図式によってさらに説明されるが、それらは本開示を範囲若しくは精神において、本明細書に記載の具体的な手順に限定するものと解釈すべきではない。理解すべき点として、ある種の実施形態を説明するために実施例が提供されているが、それによって本開示の範囲への制限が意図されるものでは全くない。さらに理解すべき点として、本開示の精神及び/又は添付の特許請求の範囲から逸脱しない限りにおいて、当業者が想定し得る様々な他の実施形態、改変及び均等物があり得ることは理解されるであろう。
【0154】
下記の実施例及び本明細書の他の箇所で使用される略称は、次の通りである。
【0155】
3H-BD:アイヤー・ビューケイジ(Iyer-Beaucage)試薬
Ac:アセチル
DCA:ジクロロ酢酸
DCC:N,N′-ジシクロヘキシルカルボジイミド
DCM:ジクロロメタン
DMAP:4-ジメチルアミノピリジン
DMT:ジメトキシトリチル
EtOAc:酢酸エチル
ETT:5-(エチルチオ)-1H-テトラゾール
h:時間
IPA:イソプロピルアルコール
LCMS:液体クロマトグラフィー-質量分析
MeOH:メタノール
MSNT:1-メシチレン-2-スルホニル-3-ニトロ-1,2,4-トリアゾール
PTSA:p-トルエンスルホン酸
Py:ピリジン
r.t.:室温
TBHP:tert-ブチルヒドロペルオキシド
TEA:トリエチルアミン
THF:テトラヒドロフラン
TLC:薄層クロマトグラフィー。
【0156】
[実施例1]
本開示の例示化合物の合成
【0157】
【0158】
アリル((2R,3R,4R,5R)-5-(6-ベンズアミド-9H-プリン-9-イル)-4-フルオロ-2-(ヒドロキシメチル)テトラヒドロフラン-3-イル)(2-シアノエチル)ホスフェート(C)の合成
【0159】
【0160】
段階1
5′O-DMT-2′F-3′ホスホロアミダイト-dA(15.0g、17.12mmol)について、脱水アセトニトリル(100mLで2回)との共留去を行い、高真空下に1時間乾燥させた。フラスコ中の残留物にアルゴンを流した。残留物に、アルゴン下でアセトニトリル(150mL、脱水)を加えた。アリルアルコール(Aldrich、99%)(2.32mL、34.24mmol)を溶液に加え、次にアセトニトリル(20mL)中のETT(2.22g、17.12mmol)を加えた。反応混合物を室温でアルゴン下に2.5時間攪拌した。TLC分析(98:2DCM:MeOH、複数回)により、反応が完結していることが示された。次に、それを氷水浴で冷却して0~5℃とした。tert-ブチルヒドロペルオキシド(TBHP、5~6Mノナン中溶液、2.0当量)を反応混合物に0~5℃で(氷水浴)滴下した。混合物を昇温させて室温とし、室温でさらに30分間攪拌した。溶液を冷却し、次に飽和チオ硫酸塩溶液(10mL)を加えることで、過剰のTBHPを失活させた。反応混合物を昇温させて室温とし、溶媒を減圧下に留去して、アセトニトリルを除去した。反応混合物を、DCM(150mL)と水(100mL)の間で分配した。有機層を分離し、水層をDCM(50mL)で抽出した。合わせた有機層をNa2SO4で脱水し、濾過して、Na2SO4塩を除去した。
【0161】
段階2:脱トリチル
上記で得られた粗DMT-N-bz-3′-O-アリル-2′-FdAのDCM中溶液(200mL)を氷水浴で冷却した。パラトルエンスルホン酸(PTSA)(10.0g)をMeOH(60mL)に溶かし、DCM(140mL)で希釈して、5%PTSAのDCM:MeOH(7:3、200mL)中溶液を調製し、DMT-N-bz-3′-O-アリル-2′-FdAに加えた。これを0~5℃で約30分攪拌し、TLC(95:5DCM:MeOH、Rf=0.2)によって反応完結をチェックした。DMT脱保護が完了したら、水(100mL)を加え、15分間攪拌しながら、反応液を昇温させて室温とした。混合物を分液漏斗に移し、層を分離した。水層をDCM(25mL)で抽出し、合わせた有機層をNaHCO3水溶液で洗浄した(5%、100mLで2回)。次に、有機層を飽和ブライン(100mL)で洗浄し、Na2SO4で脱水した。塩を濾過後、溶液を減圧下に濃縮して、粗生成物を得て、それを高真空下で乾燥して、泡状固体を得た。粗生成物をDCM(30mL)に溶かし、t-ブチルメチルエーテル(180mL)に加えて、白色沈澱を得て、それを濾取した。最初の濾過後、生成物をt-ブチルメチルエーテル(150mL)で摩砕し、濾過して白色固体を得て、それを高真空下で終夜乾燥させて、純粋な生成物C9.3g(収率99%)を白色固体として得た。
【0162】
アリル((2R,3R,4R,5R)-5-(6-ベンズアミド-9H-プリン-9-イル)-2-((((2-シアノエトキシ)(((2R,3S,4R,5R)-2-(2,4-ジオキソ-3,4-ジヒドロピリミジン-1(2H)-イル)-4-フルオロ-5-(ヒドロキシメチル)テトラヒドロフラン-3-イル)オキシ)ホスホロチオイル)オキシ)メチル)-4-フルオロテトラヒドロフラン-3-イル)(2-シアノエチル)ホスフェート(F)の合成
【0163】
【0164】
段階1:ホスホロチオエート二量体の合成のためのカップリング反応
C(1.09g、2.0mmol)及びE(1.5g、2.0mmol)の混合物について無水アセトニトリル(40mLで2回)との共留去を行い、高真空下で1時間乾燥した。アルゴンを丸底フラスコに流し、無水アセトニトリル(40mL)を反応混合物に加えた。アセトニトリル(2.0mL)中のETT(260mg、2.0mmol)を、アルゴン下にC及びEの混合物に加えた。混合物を室温でアルゴン下に2時間攪拌した。TLC分析(95:5DCM:MeOH、Rf=0.5)は、反応完結を示した。脱酸素水を反応混合物に加えた(72μL、Eに対して2当量)。
【0165】
段階2:硫化
シラン化処理フラスコ中、アイヤー・ビューケイジ試薬(3H-BD)(800mg、4.0mmol)をアセトニトリル(10.0mL)に溶かした。上記からのC及びEの反応混合物を、硫化試薬(3H-BD)の溶液にアルゴン下で加え、室温で45分間攪拌して、硫化反応を完結させた。メタノール(10mL)を反応混合物に加え、それを30分間攪拌してから、乾燥するまで減圧下に濃縮した。乾燥残留物をDCM(50mL)に溶かし、水(50mL)で洗浄した。DCM層を回収し、Na2SO4で脱水し、濾過した。
【0166】
段階3:脱トリチル
脱水DCM溶液(50mL)を、丸底フラスコ中、冷却して約0℃とした。PTSA(2.5g)をメタノール(15mL)に溶かし、DCM(35mL)で希釈して、5%PTSAのDCM:MeOH(7:3、50mL)中溶液を調製し、それをDCM反応混合物溶液に加え、氷水浴で15~20分間攪拌した。反応の進行を、TLC(95:5DCM:MeOH、Rf=0.15)によってモニタリングした。水(50mL)を加え、さらに15分間混和した。混合物を分液漏斗に移し、水層を分離し、有機層を回収した。水層をDCM(25.0mL)で抽出した。合わせた有機層を5%NaHCO3溶液で洗浄して(50mLで2回)、水層のpHが>7.0となるようにした。次に、有機層を飽和ブラインで洗浄し、Na2SO4で脱水し、濾過し、減圧下に濃縮して粗生成物を得て、それを高真空下に乾燥させた。粗生成物を、0-5%MeOH/DCMを用いるcombiflashシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製して、所望の生成物F 550mgをオフホワイト固体として得た。
【0167】
(2S,3S,4S,5S)-5-(6-ベンズアミド-9H-プリン-9-イル)-2-((((2-シアノエトキシ)(((2S,3R,4S,5S)-2-(2,4-ジオキソ-3,4-ジヒドロピリミジン-1(2H)-イル)-4-フルオロ-5-(ヒドロキシメチル)テトラヒドロフラン-3-イル)オキシ)ホスホロチオイル)オキシ)メチル)-4-フルオロテトラヒドロフラン-3-イル(2-シアノエチル)水素ホスフェート(G)の合成
【0168】
【0169】
3′-アリル保護二量体(500mg、0.565mmol)のアセトン(10mL)中溶液に、ヨウ化ナトリウム(810mg、5.41mmol)を加え、得られた溶液を60℃で1時間攪拌した。TLC分析(80:20DCM:MeOH、Rf=0.15)によって、反応完了が示された。反応混合物を冷却して室温とした。DCM(10mL)を懸濁液に加えて、生成物を沈殿させた。生成物を遠心によって回収し、それをDCM(25mL)で摩砕し、次に2回目の遠心を行って生成物を得た。生成物を高真空乾燥して、オフホワイト固体を得た。この固体を20%MeOH/DCM:tブチルメチルエーテル(1:1、25mL)で摩砕し、遠心によって回収して、それを高真空乾燥して、生成物500mgをオフホワイト固体として得た。
【0170】
(H)の合成
【0171】
【0172】
ジヌクレオチドG(500mg、0.565mmol)について、無水ピリジンとの共留去を行い(20mLで2回)、真空乾燥し、アルゴンを流し(3回)、無水ピリジン(20mL)に溶かした。1-メシチレン-2-スルホニル-3-ニトロ-1,2,4-トリアゾール(MSNT)(0.838g、2.82mmol)をGの溶液に室温で加えた。得られた混合物を室温で1.5時間攪拌した。反応進行をTLC分析(90:10DCM:MeOH)によってモニタリングし、1.5時間後に環化の完了が示された。トルエン(20mL)を反応混合物に加えた。溶媒を減圧下に留去して粗生成物を得た。得られた混合物を25%IPA/DCM(50mL)に溶かし、水(50mL)で洗浄した。水層を25%IPA/DCM(50mL)で抽出し、合わせた有機層を飽和NaHCO3水溶液(10mL)及びブライン(10mL)で洗浄した。有機層をNa2SO4で脱水し、濾過し、減圧下に濃縮して粗生成物を得た。粗生成物を10%MeOH/DCM(5mL)に溶かし、t-ブチルメチルエーテル(10mL)に加えることで沈殿させた(着色した不純物を除去するため)。沈殿を遠心によって回収した。生成物をDCM:t-ブチルメチルエーテル(1:1、15mL)で摩砕し、生成物を遠心によって回収して、明黄色生成物を得た。粗生成物をcombiflashシリカゲルカラムクロマトグラフィー(勾配0-10%MeOH/DCM)によって精製して、生成物H 80mgをオフホワイト固体として得た。
【0173】
4-(ヨードメチル)フェニル4-(デシルオキシ)ベンゾエート(I)の合成
【0174】
【0175】
段階1
250mL一頸フラスコ中の安息香酸誘導体(10g、0.054mol)のトルエン中懸濁液に、塩化チオニル(7.8mL)をゆっくり加え、室温で15分間攪拌し、次に80~85℃の油浴で加熱して透明溶液を得て、それを約3時間維持した。反応混合物を冷却して室温とし、過剰の塩化チオニルを減圧下に除去した。トルエンを、40~45℃でロータリーエバポレータを用いて濃縮した。次に、それを、酢酸エチル(25mL)で2回共留去した。残留物を酢酸エチル(15mL)に取った。4-ヒドロキシベンジルアルコール(4.5g、0.054mol)を酢酸エチル(25mL)に懸濁させ、氷浴で冷却した。攪拌しながらTEA(5.5mL)を加え、次に攪拌しながら酸塩化物の酢酸エチル溶液を加えた。懸濁液が形成され、これを終夜攪拌した。不溶固体を濾過によって除去し、濾液を分液漏斗に移した。濾液を酢酸エチル(200mL)で希釈し、水(50mL)で洗浄し、有機層をブライン(50mL)で洗浄した。乾燥後の濃縮によって粗生成物を得て、それを4:1ヘキサン(又はヘプタン):EtOAc200mLに取り、2時間攪拌して、生成物を沈殿した。沈殿した生成物を濾過し、固体を高真空乾燥して、所望の生成物9.0g(収率67%)を得た。
【0176】
段階2
250mL一頸フラスコ中の4-ヒドロキシルベンジルアルコールカップリング誘導体(9.0g、0.026mol)の無水アセトニトリル(80mL)及び無水ジクロロメタン(30mL)混合物中懸濁液に、CsI(18.2g、0.078mol)を1回で加えた。これに、BF3・Et2O(8.7mL)をゆっくり加え、暗所(アルミホイルで覆う)にてアルゴン下に室温で終夜攪拌した。TLC ヘキサン:EtOAc(7:3)によって反応が完結していることが認められた。生成物を濃縮し、反応混合物を、水(50mL)を加えることで後処理し、次に分液漏斗中でDCM(200mL)によって抽出した。有機層を飽和重炭酸ナトリウム(25mL)で洗浄し、次にNaHSO3(5%、30mL)で洗浄した。有機層を無水Na2SO4で脱水し、濾過し、濃縮してフィルム状物を得て、その後に2日間真空乾燥して、所望の生成物I 9.6g(収率85%)を得た。
【0177】
実施例4の合成
【0178】
【0179】
段階1:環状ホスホロモノチオジホスフェートの脱保護
完全保護環状ホスホロモノチオジホスフェート(70mg)を濃NH4OH(2.0mL)及びDCM(5.0mL)の混合物に溶かし、室温で終夜攪拌した。LC-MS分析で、反応の完結が示された。反応混合物を分液漏斗に移し、DCM層を除去した。水層を減圧下に留去してアンモニアを除去し、次に、酢酸エチルで洗浄して(5mLで3回)、ベンズアミド副生成物を完全に除去した。生成物を凍結乾燥によって水層から単離して、60mgを白色固体として得た。
【0180】
段階2:
環状ホスホロモノチオジホスフェート(50mg、0.072mmol)を水(500μL)に溶かした。I(53mg、0.108mmol)のTHF:アセトンの混合物(1:1、3.5mL)中溶液を反応混合物に加えた。溶液を室温で2日間攪拌した。溶媒を減圧下に除去した。粗生成物をTHF:アセトン(1:1、5.0mL)に再溶解し、ジエチルエーテル(10mL)に加えることで沈殿させて、未反応のヨード化合物を除去した。沈殿を遠心によって回収して、生成物をオフホワイト固体として得た。これをIPA:DCM(1:1、20mL)に再溶解させ、水(20mL)と混合し、それは単一相溶液として形成された。飽和塩化ナトリウム(5mL)を加えて、二相の分離を達成した。有機層を回収し(下層)、水層をIPA:DCM(1:1、10mLで2回)で再抽出した。合わせた有機層をNa2SO4で脱水し、濾過し、減圧下に濃縮して、生成物をオフホワイト固体として得た。生成物を5%アセトニトリル/水(2.0mL)に再溶解させ、凍結乾燥して、生成物4 76mgをオフホワイト固体として得た。
【0181】
[実施例2]
THP1細胞でのIRF及びNF-κβのイン・ビトロ誘発
【0182】
【0183】
[実施例3]
IRF及びNF-KBの誘発の評価
完全培地で増殖させたTHP1二重細胞を各種濃度の本開示の化合物又はDMSO対照で処理した。二重細胞は、NF-κB活性を測定するためのNF-κBコンセンサス転写応答エレメントの五つのコピーに融合したIFN-β最小プロモーターの制御下の分泌型胚性アルカリホスファターゼ(SEAP)レポーター遺伝子及びIRF活性を測定するためのISG54最小プロモーターの制御下のLuciaレポーター遺伝子の両方を有する。20時間のインキュベーション後、IRF活性を、QUANTI-lucを用いて評価してLuciaのレベルを測定し、620~655nmでSEAPレベルを測定することでNF-κB活性を求めた。DMSO処置サンプルと比較した発光/吸光度における変化倍率から、誘発%を計算した。用量応答を正確に示すために対数スケールでデータをプロットするため、負の値には基底値1を与えた。Xlfitでの曲線適合によってEC50値を得た。
【0184】
完全培地で増殖した細胞を、各種濃度の開示の化合物又はDMSO対照で処理した。二重細胞は、NF-κB活性を測定するためのNF-κBコンセンサス転写応答エレメントの五つのコピーに融合したIFN-β最小プロモーターの制御下の分泌型胚性アルカリホスファターゼ(SEAP)レポーター遺伝子及びIRF活性を測定するためのISG54最小プロモーターの制御下のLuciaレポーター遺伝子の両方を有する。20時間のインキュベーション後、IRF活性を、QUANTI-lucを用いて評価してLuciaのレベルを測定し、620~655nmでSEAPレベルを測定することでNF-κB活性を求めた。DMSO処置サンプルと比較した発光/吸光度における変化倍率から、誘発%を計算した。Xlfitでの曲線適合によってEC50値を得る。
【0185】
[実施例4]
雌BALB/cマウスを用いるCT26マウス結腸癌モデルにおける化合物4の効力を求める試験
マウス
雌BALB/cマウス(BALB/cAnNcr1、Charles River)は、試験第1日に8週齢であり、体重範囲は15.1~19.7gであった。動物には、水(逆浸透、1ppm Cl)及び18.0%粗タンパク質、5.0%粗脂肪及び5.0%粗繊維からなるNIH 31変性及び放射線照射実験飼料を自由に摂取させた。
【0186】
腫瘍細胞培養
CT26マウス結腸癌細胞を、10%ウシ胎仔血清、2mMグルタミン、100単位/mLペニシリンGナトリウム、100μg/mL硫酸ストレプトマイシン、及び25μg/mLゲンタマイシンを含むRPMI-1640培地で増殖させた。細胞を、5%CO2及び95%空気の雰囲気で、37℃の加湿インキュベータ中、組織培養フラスコにて細胞を培養した。
【0187】
イン・ビボ移植及び腫瘍増殖
移植当日、培養したCT26細胞を対数増殖期に回収し、濃度3×106細胞/mLでリン酸緩衝生理食塩水、pH7.4(PBS)に再懸濁させた。各マウスに、右脇腹に3×105腫瘍細胞(0.1mL細胞懸濁液)を皮下注射し、80~120mm3の目標範囲に近づけながら腫瘍をモニタリングした。腫瘍細胞移植から11日後、試験第1日に、動物を3群に分け(n=8/群)、個々の腫瘍体積は63~126mm3であり、群平均腫瘍体積は105mm3であった。試験期間中、週2回、キャリパーを用いて腫瘍を測定した。腫瘍の大きさを、下記式を用いて計算した。
【0188】
【数1】
式中、wは腫瘍の幅であり、lは長さ(単位:mm)である。腫瘍重量は、1mgが腫瘍体積1mm
3と等価であると仮定して推算することができる。
【0189】
試験品
各管に適切な体積の無菌生理食塩水(媒体)を加え、渦攪拌し、37℃で2~5分間インキュベートし、次に必要に応じて超音波処理することで化合物4を溶かした。化合物4の調製によって、適切な0.2及び0.6mg/mL投与溶液が得られ、それらは動物の体重に対して調節された、投与体積5mL/kg中1及び3mg/kgの用量を提供するものであった。各投与日に、新鮮なバイアルを準備した。
【0190】
処置
試験第1日に、BALB/cマウスの3群(n=8)について、
図20中のプロトコールに従って投与を開始した。化合物4及び媒体を静注(i.v.)投与した。群1には、第1、5、9及び14日に媒体を投与した。群2及び3には、第1、5、9及び14日に、それぞれ1及び3mg/kgでCMD4を投与した。
【0191】
腫瘍増殖遅延エンドポイント
試験エンドポイントは、腫瘍体積2000mm3又は第30日のいずれか最初に来たものとした。試験は第29日に終了した。試験プロトコールは、処置群対対照群でのエンドポイントまでの時間中位値(TTE)に基づく腫瘍増殖遅延アッセイを規定するものであった。週2回、キャリパーを用いて腫瘍を測定し、各動物は、それの腫瘍が2000mm3体積エンドポイントに到達した時点で腫瘍進行(TP)のため屠殺した。各マウスについてのTTEは、下記等式を用いて計算した。
【0192】
【数2】
式中、bは、対数変換腫瘍増殖データセットの線形回帰によって得られた直線の切片であり、mはそれの勾配である。そのデータセットは、試験エンドポイント体積を超えた第1の所見及びエンドポイント体積取得直前の3連続所見からなるものである。エンドポイントに達しなかった動物は、試験終了後に屠殺し、試験最終日(第29日)に等しいTTE値に割り当てた。対数変換TTE計算値がエンドポイントに達する前日の前であるか、腫瘍体積エンドポイントに到達する日を超えた場合、線形補間を行って、TTEに近似させる。
【0193】
第29日に、MTV(n)を、最終日まで生存し、腫瘍が体積エンドポイントに達しなかった動物数nの腫瘍体積中位値と定義した。処置関連(TR)の原因によって死亡したと決定された動物は、死亡日と等しいTTE値に割り当てるべきとした。非処置関連(NTR)の原因によって死亡した動物は、解析から除外されるべきとした。処置結果を、対照群と比較した処置群についてのTTE中位値における増加と定義される腫瘍増殖遅延(TGD)から評価した。
【0194】
TGD=T-C
これは日数で表現されるか、対照群のTTE中位値のパーセントとして表される。
【0195】
【数3】
式中、Tは、処置群についてのTTE中位値であり、Cは対照群についてのTTE中位値である。
【0196】
腫瘍増殖阻害(TGI)分析
試験エンドポイントは、対照群における平均腫瘍体積2000mm3(両脇腹腫瘍の合計)又は30日の、いずれか最初に来たものと定義した。試験は、第18日にTGIエンドポイントに達した。全ての動物が試験に残った最終日(第18日)からのデータを用いて、治療効力を求めた。MTV(n)、最終日における動物数nについての腫瘍体積中位値を、各群について求めた。腫瘍増殖阻害パーセント(%TGI)は、指定の対照群(群1)のMTVと薬剤処置群のMTVの間の差と定義され、対照群のMTVのパーセントとして表している。
【0197】
【0198】
TGI分析のためのデータセットには、サンプル採取のために屠殺した動物(ES)及び処置関連(TR)若しくは非処置関連(NTR)の原因のために死んだ動物を除く、群中の全ての動物が含まれる。
【0199】
退行応答の基準
治療効力は、退行応答の数からも求めた。処置により、動物における腫瘍の部分退行(PR)又は完全退行(CR)を引き起こすことができる。PR応答では、腫瘍体積は、試験期間中の3連続測定について第1日体積の50%以下であり、これら三つの測定の1以上について13.5mm3以上である。CR応答では、腫瘍体積は、試験期間中の3連続測定については13.5mm3未満である。動物は、PR若しくはCR事象については試験中に1回のみ、そしてPR基準及びCR基準の両方が満足された場合はCRとしてのみ評点した。試験最終日にCR応答のあった動物はさらに、腫瘍無し生存動物(TFS)として分類した。
【0200】
毒性
動物は、試験の最初の5日間は1日1回、その後は週2回体重測定した。マウスは、健康状態及び何らかの有害処置関連(TR)副作用の明らかな徴候について頻繁に観察し、顕著な臨床所見を記録した。個々の体重低下をプロトコールによってモニタリングし、1回の測定で30%を超える体重低下があるか、3回の測定で25%を超える体重低下があった動物は、健康上の理由から、TR死として屠殺すべきとした。群平均体重が回復した場合は、投与をその群において再開することができるが、相対的に低い用量若しくは低頻度の投与スケジュールとした。許容される毒性は、試験中の20%未満の群平均BW低下及び処置動物10匹若しくは10%における1以下のTR死と定義した。より大きい毒性を生じる投与法は、最大耐容用量(MTD)を超えると見なされる。死亡は、それが臨床徴候及び/又は剖検によって確認された処理副作用が原因とされた場合、TRと分類すべきとしたが、或いは、投与期間中若しくは最終用量の14日以内に不明の原因によるものである場合、TRと分類することもできる。死亡は、その死亡が処置関連ではなく腫瘍モデルに関連したものであることを示す証拠があった場合は、NTRと分類した。NTR死はさらに、NTRa(偶発的若しくは人為的ミスによるもの)、NTRm(侵襲若しくは転移による剖検で確認された腫瘍播種によるもの)、及びNTRu(未知の原因によるもの)と分類される。
【0201】
試験設計
【0202】
【0203】
表1は、試験第1日現在での試験設計を示している。媒体は生理食塩水である。
【0204】
均等物
本明細書に引用された各及び全ての特許、特許出願及び公開物の開示内容は、参照によって全体が本明細書に組み込まれる。上記において、本開示について具体的な態様を参照して説明したが、本開示の真の趣旨及び範囲から逸脱しない限りにおいて、他の態様及び改変型が当業者によって考案され得ることは明らかである。添付の特許請求の範囲は、このような態様及び均等な改変型を全て含むと解釈されるものである。参照により本明細書に組み込まれると言われるいかなる特許、公開物、又は他の開示物も、その全体又は一部が、本開示において明らかにされた既存の定義、説明、又は他の開示物と矛盾しない程度でのみ本明細書に組み込まれる。従って、そして必要な程度まで、本明細書において明瞭に記載された本開示は、参照により本明細書に組み込まれたいかなる矛盾する物に優先する。
【0205】
以上、本開示について、特に、それの好ましい実施形態を参照して示し、説明したが、添付の特許請求の範囲によって包含される本開示の範囲から逸脱しない限りにおいて、形態及び詳細における各種変更を行い得ることは当業者によって理解されるであろう。