(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-25
(45)【発行日】2025-05-08
(54)【発明の名称】非相溶性反応性成分及びブロックコポリマーを基礎とする硬化性組成物
(51)【国際特許分類】
C08F 287/00 20060101AFI20250428BHJP
C08F 2/44 20060101ALI20250428BHJP
B29C 64/00 20170101ALI20250428BHJP
B33Y 70/00 20200101ALI20250428BHJP
B33Y 80/00 20150101ALI20250428BHJP
【FI】
C08F287/00
C08F2/44 A
B29C64/00
B33Y70/00
B33Y80/00
(21)【出願番号】P 2023126877
(22)【出願日】2023-08-03
(62)【分割の表示】P 2020524145の分割
【原出願日】2018-10-15
【審査請求日】2023-08-25
(32)【優先日】2017-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505005522
【氏名又は名称】アルケマ フランス
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアム・ウルフ
(72)【発明者】
【氏名】デイビッド・シン-レン・リウ
(72)【発明者】
【氏名】マヘンドラ・クリフトファー・オリラール
【審査官】横山 法緒
(56)【参考文献】
【文献】特表2008-531789(JP,A)
【文献】特開平06-199969(JP,A)
【文献】特開2006-055781(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0032563(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0178845(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 283/02-289/00
C08F 291/00-297/08
C08F 2/00-2/60
B29C 64/00-64/40
B33Y 70/00-80/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化性組成物であって、
a)少なくとも第1のブロック及び第2のブロックから構成されるブロックコポリマーであって、前記第1のブロック及び前記第2のブロックが異なるモノマー組成を有するブロックコポリマー、
b)前記ブロックコポリマーの前記第2のブロックよりも、前記ブロックコポリマーの前記第1のブロックに対してより高い結合する傾向を有する第1の反応性成分、
c)前記ブロックコポリマーの前記第1のブロックよりも、前記ブロックコポリマーの前記第2のブロックに対してより高い結合する傾向を有する第2の反応性成分、
から構成され、前記第1の反応性成分及び前記第2の反応性成分が、前記ブロックコポリマーの非存在下では、非相溶性であ
り、
前記第1の反応性成分が、親水性エポキシド、親水性オキセタン、親水性ビニル化合物、親水性アクリルアミド及び親水性(メタ)アクリレート官能性化合物からなる群から選択される少なくとも1つの親水性モノマーから構成される、硬化性組成物。
【請求項2】
前記第1の反応性成分が、親水性(メタ)アクリレート官能性化合物からなる群から選択される少なくとも1つの親水性モノマーから構成される、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項3】
前記第1の反応性成分が、アセトキシエチル(メタ)アクリレート、2-カルボキシエチル(メタ)アクリレート、ホスフェート(メタ)アクリレートモノマー、モノ-(2-(メタ)アクロイルオキシエチル)サクシネート、ラクトン(メタ)アクリレート、ラクタム(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン、N-ビニルホルムアミド、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート及びジアセトン(メタ)アクリルアミドからなる群から選択される少なくとも1つの親水性モノマーから構成される、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項4】
前記少なくとも1つの親水性モノマーが、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート又はアルコキシル化ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートと、ジカルボン酸又はカルボン酸無水物との反応生成物であるハーフエステルを含む、請求項
2に記載の硬化性組成物。
【請求項5】
前記ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートが、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート及びヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートからなる群から選択される、請求項
4に記載の硬化性組成物。
【請求項6】
前記ジカルボン酸又はカルボン酸無水物が、コハク酸、無水コハク酸、マロン酸、メチルコハク酸及びメチルコハク酸無水物からなる群から選択される、請求項
4に記載の硬化性組成物。
【請求項7】
前記少なくとも1つの親水性モノマーが、ヒドロキシエチルアクリレートとコハク酸との反応生成物であるハーフエステルを含む、請求項
4に記載の硬化性組成物。
【請求項8】
前記第2の反応性成分が、少なくとも1つのC
4-C
24脂肪族モノ-アルコールの(メタ)アクリレートエステルを含む、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項9】
前記第2の反応性成分が、少なくとも1つのC
4-C
24アルキルアクリレートを含む、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項10】
前記第2の反応性成分が、芳香族(メタ)アクリレート、脂環式(メタ)アクリレート、ビニル芳香族化合物、ビニル脂環式化合物、C
6-C
24オレフィン及びC
6-C
24アルキル基を含む(メタ)アクリルアミドからなる群から選択される、少なくとも1つの疎水性反応性化合物を含む、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項11】
前記ブロックコポリマーが、ジブロックコポリマー又はトリブロックコポリマーの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項12】
前記ブロックコポリマーが、少なくとも25℃のガラス転移温度を有する少なくとも1つのブロック及び25℃未満のガラス転移温度を有する少なくとも1つのブロックを含む、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項13】
前記ブロックコポリマーが、少なくとも50℃のガラス転移温度を有する少なくとも1つのブロック及び-25℃未満のガラス転移温度を有する少なくとも1つのブロックを含む、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項14】
前記ブロックコポリマーが、a)少なくとも1つのポリ(n-ブチルアクリレート)ブロック及び少なくとも1つのポリ(メチルメタクリレート)ブロックによって構成されるブロックコポリマー、b)少なくとも1つのポリスチレンブロック及び少なくとも1つのポリブタジエンブロックによって構成されるブロックコポリマー、並びにc)少なくとも1つのポリスチレンブロック及び少なくとも1つのポリイソプレンブロックによって構成されるブロックコポリマーからなる群から選択されるブロックコポリマーである、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項15】
前記ブロックコポリマーが、3,000~200,000ダルトンの数平均分子量を有する、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項16】
前記硬化性組成物が、前記硬化性組成物の総重量を基準として、1~40重量%のブロックコポリマーにより構成される、請求項1~
15のいずれかに記載の硬化性組成物。
【請求項17】
少なくとも1種の光開始剤をさらに含む、請求項1~
16のいずれかに記載の硬化性組成物。
【請求項18】
無機ナノ粒子をさらに含む、請求項1~
17のいずれかに記載の硬化性組成物。
【請求項19】
前記無機ナノ粒子が、前記第1の反応性成分又は前記第2の反応性成分の1つ又は両方に分散する、請求項
18に記載の硬化性組成物。
【請求項20】
前記無機ナノ粒子が、シリカナノ粒子、アルミナナノ粒子、酸化鉄ナノ粒子、ニオビアナノ粒子、チタニアナノ粒子、混合酸化物ナノ粒子、合金ナノ粒子、ジルコニアナノ粒子、金属ナノ粒子、粘土ナノ粒子及びこれらの組合せからなる群から選択される、請求項
18に記載の硬化性組成物。
【請求項21】
第1の反応性成分及び第2の反応性成分の総重量を基準として、10~90重量%の第1の反応性成分及び90~10重量%の第2の反応性成分を含む、請求項1~
20のいずれかに記載の硬化性組成物。
【請求項22】
請求項1~
21のいずれかに記載の硬化性組成物を硬化させることを含む、方法。
【請求項23】
請求項1~
21のいずれかに記載の硬化性組成物を硬化させることにより得られる、硬化組成物。
【請求項24】
インク、成形用樹脂、3Dプリント樹脂、コーティング材又は接着剤としての、請求項1~
21のいずれかに記載の硬化性組成物の使用。
【請求項25】
硬化組成物であって、重合した形態の第1の反応性成分から構成される1以上のポリマー領域の第1のセット、重合した形態の第2の反応性成分から構成される1以上のポリマー領域の第2のセット、並びに前記ポリマー領域の第1のセットと結合する少なくとも1つのブロック及び前記ポリマー領域の第2のセットと結合する少なくとも1つのブロックから構成されるブロックコポリマーを含み、前記第1の反応性成分及び前記第2の反応性成分が、前記ブロックコポリマーの非存在下では、25℃で互いに完全には相溶性ではな
く、
前記第1の反応性成分が、親水性エポキシド、親水性オキセタン、親水性ビニル化合物、親水性アクリルアミド及び親水性(メタ)アクリレート官能性化合物からなる群から選択される少なくとも1つの親水性モノマーから構成される、硬化組成物。
【請求項26】
請求項1~
21のいずれか一項に記載の硬化性組成物の硬化の結果として得られる3D物品。
【請求項27】
3Dプリント物品である、請求項
26に記載の3D物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性組成物、そのような組成物を製作する方法及び使用する方法、並びにそのような硬化性組成物から作られる物品及び硬化組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
硬化組成物又は硬化物品、例えば接着剤、コーティング、シーラント、成形用などを提供する、様々な官能性モノマー及び/又はオリゴマーの重合又は硬化については、長年にわたり研究されている。例えば、(メタ)アクリレート官能化モノマー/オリゴマーは、場合により光開始剤などの他の成分と組み合わせられてもよく、その後、(メタ)アクリレート官能基が互いに反応し、重合したマトリックスの形成を効果的に引き起こす条件(放射線源、例えば、紫外線などへの暴露)にさらされる。通常、このような硬化性組成物は最初は液体(例えば、均一な溶液)であり、硬化反応の結果として固体に変換される。
【0003】
硬化性モノマー及び/又はオリゴマーの反応により形成された固体のポリマーマトリックスは、通常均質である、すなわち、単一の相のみが存在する。このような単相マトリックスの特性及び特徴は、異なる種類の反応物を選択する、組み合わせる、異なる硬化技術を用いることである程度は制御し、変化させることもできるが、得られる硬化生成物が単相の形態であるという事実により、達成できることには実質的に限界がある。したがって、単相ポリマー系を調製するのに通常使用される、同様の一般的なモノマー及びオリゴマーの種類から出発し、生成することができる、ミクロ相で分離するポリマー系(すなわち、互いに組成的に異なる2種以上のポリマー相又はポリマー領域から構成される硬化組成物)の製法を開発することが、極めて望ましいであろう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の発明者らは、こうして、ブロックコポリマーを使用して、重合性化合物の特定の組合せを、ブロックコポリマーの相挙動によって制御される構造体に、構造を管理することができることを発見した。バルクでは、ブロックコポリマーのミクロ相は分子スケール(例えば、5~100nm)で分離して、複合体、すなわちブロックの1種類の、別の種類のブロックに対する体積分率、及びブロックの種類の相対的な相溶性に応じて、様々なモルフォロジーを有する、秩序ナノ構造体を生成する。これに対して、放射線硬化型モノマー及びオリゴマー材料は、通常いかなる秩序も呈さず、したがって、硬化した場合に秩序を欠くランダムなネットワークに重合する。本発明で実施されるように、特定の重合性化合物系へのブロックコポリマーの添加は、例えば、放射線にさらすことで重合性化合物が硬化する場合に、重合性化合物を秩序モルフォロジーへ構造を管理するための効果的な機構が提供されることが見出された。これにより硬化組成物における、構造体の寸法、組成及び立体配置への系統的調節が可能となる。したがって、本発明は、公知の技術では達成することができない、特有の性質を有する硬化組成物の調製を可能とする。
【0005】
理論に拘束されることを望むものではないが、秩序系は、少なくとも部分的にはブロックコポリマーの存在のために、重合性化合物の硬化前に液相に形成される、と考えられている。硬化(重合)過程は、速度論的に液相構造を補足すると考えられる。
【0006】
それによって得られた硬化組成物は、長距離秩序がある構造とは対照的に、短距離秩序がある構造を有する。用語「短距離秩序(がある)」は、当該技術分野において、ナノメートル長のスケールでの秩序を示すが、ナノメートル以下のスケールでは秩序がない(すなわち、結晶性でない)材料を表す、と理解されている。例えば、Li et al.,「Block copolymer patterns and templates」,Materials Today,September 2006,Vol.9,No.9,pp.30-39.を参照のこと。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一態様によれば、本発明は、硬化性組成物であって、25℃において秩序ミクロ相分離状態で存在し、
a)少なくとも第1のブロック及び第2のブロックで構成されるブロックコポリマーであって、第1のブロック及び第2のブロックが異なるモノマー組成を有するブロックコポリマー、
b)ブロックコポリマーの第2のブロックよりも、ブロックコポリマーの第1のブロックに対してより高い親和性を有する第1の反応性成分並びに
c)ブロックコポリマーの第1のブロックよりも、ブロックコポリマーの第2のブロックに対してより高い親和性を有する第2の反応性成分、から構成され、
d)第1の反応性成分及び第2の反応性成分は、ブロックコポリマーの非存在下では、25℃で互いに完全には相溶性ではない、
硬化性組成物を提供する。
【0008】
概して、第1の反応性成分及び第2の反応性成分は、分子レベルで互いに非相溶性であるように、25℃でその他の物質(本発明のブロックコポリマー構成部分のような)の非存在下で混合されるときに、それら構成部分が、補助がない人間の目でも見えるように別の相に分離するように、化学構造及び特性において十分に異なるように選択される。所望の非類似性を達成する1つの手法は、もう一方の反応性成分よりも、著しく親水性が高い1つの反応性成分を有することである。便宜上、より親水性の高い反応性成分は、本明細書において「親水性反応性成分」と称されてもよく、より親水性の低い反応性成分は、本明細書において「疎水性反応性成分」と称されてもよい。反応性成分の非相溶性はまた、反応性成分の極性又は、双極子モーメント又は、分子間結合を形成する能力(例えば、水素結合を通してなど)に関して互いに著しく異なる反応性成分を選択することによって、達成されてもよい。秩序ミクロ相分離状態で存在することによって、硬化性組成物は2つ以上の別の領域を有し、各々異なる相を有し、マイクロスケール範囲のオーダーでの寸法を有する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の特定の例示的な非限定な態様を示している。
【
図2】本発明の特定の例示的な非限定な態様を示している。
【
図3】本発明の特定の例示的な非限定な態様を示している。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1、
図2及び
図3は、通常、互いに十分には相溶性でない第1の反応性成分及び第2の反応性成分がブロックコポリマーと混合され、25℃で秩序ミクロ相分離状態で存在する硬化性組成物を提供する、本発明の代表的な形態であり、様々な態様と、加えて、比較目的のための、ブロックコポリマーを含有していない類似のモノマー混合物と、を概略的に例示する。
【0011】
反応性成分に存在する化合物は、硬化性組成物が硬化する場合に、(例えば、重合反応を通して)反応可能な、1分子当たり1以上の官能基又は部分を含有してもよい。一実施形態において、すべての反応性化合物は一官能性である、すなわち、それらは各々、1分子当たりそのような官能基又は部分を1のみ含有する。しかしながら、その他の実施形態では、硬化性組成物は、一官能性反応性化合物及び多官能性反応性化合物(1分子当たり2個以上の反応性官能基を含有する化合物)の両方を含む。硬化性組成物において、一官能性反応性化合物に対する多官能性反応性化合物の比率を増加させると、通常は、硬化組成物で達成される架橋の量(架橋密度)が増加する傾向がある。
【0012】
各反応性成分は単一の反応性化合物で構成されてもよく、第1の反応性成分に存在する反応性化合物は、第2の反応性成分に存在する反応性化合物とは異なる。その他の実施形態では、反応性成分の一方又は両方は、互いに相溶性であるが、混合物としてはもう一方の反応性成分とは非相溶性である、2個以上の反応性化合物で構成されてもよい。
【0013】
親水性反応性成分
前述のように、本発明の硬化性組成物は、親水性反応性成分を含んでもよい。親水性反応性成分は1以上の親水性反応性化合物で構成され、その親水性反応性化合物は反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマーであり得る。例えば、親水性反応性成分は、親水性エポキシド、親水性オキセタン、親水性ビニル化合物、親水性(メタ)アクリルアミド及び親水性(メタ)アクリレート官能性化合物(特に好ましい)からなる群から選択される少なくとも1つの親水性モノマーで構成されてもよい。本明細書で使用する場合、用語「(メタ)アクリレート」は、アクリレート(-O-C(=O)-CH=CH2)官能基及びメタクリレート(-O-C(=O)-C(CH3)=CH2)官能基の両方を指す。
【0014】
本明細書で使用する場合、用語「反応性」は、化合物が重合又は硬化反応に関与できる少なくとも1つの部分を含有し、それによって複数の反応性化合物分子が共有結合で互いに結合し、ポリマー構造を形成するようになることを意味する。好適な反応性部分には、エチレン系不飽和の部位(すなわち、炭素-炭素二重結合、C=C)が挙げられる。エチレン系不飽和のこのような部位は、例えば、(メタ)アクリロイル基、マレイル基、アリル基、プロペニル基及び/又はビニル基によって提供され得る。本明細書で使用する場合、用語「(メタ)アクリロイル」は、メタクリロイル及びアクリロイルの両方を包含することを意図する。
【0015】
反応性化合物は通常、1以上の極性官能基及び/又は1以上の水素結合に関与できる官能基を含有させることによって、親水性となってもよい。このような官能基としては、例えば、ヒドロキシル基、カルボン酸基、オキシエチレン基、カルボキシル(エステル)基、アミド基などが挙げられ、反応性化合物の総炭素原子数に対して、このような官能基の比率は比較的高い。
【0016】
本発明の特定の態様によれば、少なくとも1つの親水性モノマーは、アセトキシエチル(メタ)アクリレート、2-カルボキシエチル(メタ)アクリレート、ホスフェート(メタ)アクリレートモノマー(例えば、ヒドロアルキル(メタ)アクリレートのホスフェートエステル)、モノ-(2-(メタ)アクロイルオキシエチル)サクシネート、ラクトン及びラクタム(メタ)アクリレート(例えば、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートと1以上(例えば、1~10)のカプロラクトン又はカプロラクタム同等物の反応によって得られるもの)、(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N-ビニルホルムアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン並びにジアセトン(メタ)アクリルアミドからなる群から選択され得る。
【0017】
例えば、少なくとも1つの親水性の反応性成分は、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートと、ジカルボン酸又はカルボン酸無水物との反応生成物であり、ジカルボン酸又はカルボン酸無水物の2個のカルボキシル基のうち1つのみがエステル化されるハーフエステルを、少なくとも1つ含み得る。ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートは、例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート及びヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート並びにアルコキシル化ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート(例えば、1以上のエポキシド同等物、例えばエチレンオキシド又はプロピレンオキシドなどと反応したヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート)からなる群から選択されてもよい。ジカルボン酸又はカルボン酸無水物は、本発明の例示的実施形態において、コハク酸、無水コハク酸、マロン酸、メチルコハク酸及びメチルコハク酸無水物からなる群から選択され得る。本発明の特定の態様によると、少なくとも1つの親水性反応性成分は、ヒドロキシエチルアクリレートとコハク酸との反応生成物であるハーフエステルを含む。
【0018】
好適な親水性反応性モノマーは、「ハーフエステル」と見なされ得る式(I):
HO-C(=O)-R1-C(=O)-O-R2-O-C(=O)CR3=CH2(I)
に相当してもよく、式中、R3はH又はCH3であり、R1及びR2は同一又は異なり、各々が1つ、2つ、又はそれ以上の炭素原子を含有する二価の有機部分であり、R1及びR2は共に、好ましくは、合計で10個以下又は8個以下の炭素原子を含有する。例えば、R1はC1-C4アルキレン、例えば-CH2-、-CH2CH2-、-CH2CH2CH2-、-CH2CH(CH3)-又は-CH2CH2CH2CH2-であってもよく、R2はC2-C4アルキレン、例えば-CH2-、-CH2CH2-、-CH2CH2CH2-、-CH2CH(CH3)-又は-CH2CH2CH2CH2-であってもよい。
【0019】
前述のように、本発明に好適に用いられるエチレン系不飽和官能基としては、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を含有している官能基、特に反応(例えば、フリーラジカル反応)に関与できる炭素-炭素二重結合を含有している官能基であって、炭素-炭素二重結合の少なくとも1つの炭素が、第2の分子において、原子、特に炭素原子と共有結合で結合するようになる官能基が挙げられる。そのような反応は、重合又は硬化になり得るが、その反応によって、1以上のエチレン系不飽和官能基を含有している化合物は、重合したマトリックス又はポリマー鎖の一部となる。炭素-炭素二重結合は、例えば、α,β-不飽和カルボニル部分の一部として、例えば、アクリレート官能基(H2C=CH-C(=O)O-)又はメタクリレート官能基(H2C=C(CH3)-C(=O)O-)などのα,β-不飽和エステル部分として存在してもよい。炭素-炭素二重結合は、また、ビニル基-CH=CH2又はアリル基(-CH2-CH=CH2)の形態のエチレン系不飽和官能基で存在してもよい。
【0020】
好適な親水性(メタ)アクリレート官能性化合物の追加例としては、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、アルコキシル化(例えば、エトキシル化)ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート及びアルコキシル化(例えば、エトキシル化)ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、N-(メタ)アクリロイルモルホリン、2-(2-エトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールモノメチルエーテルモノ(メタ)アクリレート、ポリエトキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸のハーフエステル、トリメチロールプロパンモノ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールモノ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノ(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールモノ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート(ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとイソシアネート、例えば、ブチルイソシアネートとの反応生成物などのモノ(メタ)アクリレート官能化ウレタン(メタ)アクリレートなどのモノマー及びオリゴマーの両方)、並びにエポキシ(メタ)アクリレート(例えば、(メタ)アクリル酸とエポキシド、例えばグリシドール、グリシジル末端処理ポリエチレンオキシド、フェノール(例えば、クレゾール)及びビスフェノール(例えば、ビスフェノールA)のグリシジルエーテル、C2-C8脂肪族アルコール(例えばブタンジオール及びトリメチロールプロパンなどのモノアルコール及びポリオールなど)のグリシジルエーテルとの反応生成物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0021】
一実施形態では、親水性(メタ)アクリレート官能性化合物は、ポリエチレングリコールモノアクリレート又はポリエチレングリコールモノアクリレートの混合物である。そのようなポリエチレングリコールモノアクリレートは、構造式H2C=CHC(=O)(OCH2CH2)nOH、に相当してもよく、式中、nは2~30の整数(例えば、4~12)である。
【0022】
好適な親水性エポキシドの例としては、グリシジルエーテル、例えば、2-ヒドロキシエチルグリシジルエーテル、ヒドロキシプロピルグリシジルエーテル、アルコキシル化(例えば、エトキシル化)ヒドロキシエチルグリシジルエーテル、アルコキシル化(例えば、エトキシル化)ヒドロキシプロピルグリシジルエーテルなど、ポリアルキレングリコールのグリシジルエーテル、例えば、ポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコールなど、ポリアルキレングリコールモノエーテルのグリシジルエーテル、例えば、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、2-(2-エトキシエトキシ)エチルグリシジルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテルモノグリシジルエーテルなど、ポリエトキシエチルグリシジルエーテル、トリメチロールプロパン及びトリメチロールエタンのグリシジルエーテル、例えば、トリメチロールプロパンモノグリシジルエーテルなど、ペンタエリスリトールのグリシジルエーテル、例えば、ペンタエリスリトールモノグリシジルエーテルなど、ジペンタエリスリトールのグリシジルエーテル、例えば、ジペンタエリスリトールモノグリシジルエーテルなど、グリセロールのグリシジルエーテル、例えば、グリセロールモノグリシジルエーテルなど、ネオペンチルグリコールのグリシジルエーテル、例えば、ネオペンチルグリコールモノグリシジルエーテルなど、糖及び糖アルコールのグリシジルエーテル、ウレタングリシジルエーテル(モノマー及びオリゴマーの両方)、並びにグリシジル(メタ)アクリレートが挙げられるが、これらに限定されない。
【0023】
好適な親水性オキセタンの例としては、オキセタニルメタノールエーテル、例えば、2-ヒドロキシエチルオキセタニルメタノールエーテル、ヒドロキシプロピルオキセタニルメタノールエーテル、アルコキシル化(例えば、エトキシル化)ヒドロキシエチルオキセタニルメタノールエーテル及びアルコキシル化(例えば、エトキシル化)ヒドロキシプロピルオキセタニルメタノールエーテル、2-(2-エトキシエトキシ)エチルオキセタニルメタノールエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテルモノオキセタニルメタノールエーテル、ポリエトキシエチルオキセタニルメタノールエーテル、トリメチロールプロパンモノオキセタニルメタノールエーテル、ペンタエリスリトールモノオキセタニルメタノールエーテル、ジペンタエリスリトールモノオキセタニルメタノールエーテル、グリセロールモノオキセタニルメタノールエーテル、ネオペンチルグリコールモノオキセタニルメタノールエーテル、及びウレタンオキセタニルメタノールエーテル(モノマー及びオリゴマーの両方)など、並びにヒドロキシル及びカルボン酸官能化オキセタン、例えば、3-ヒドロキシオキセタン、オキセタン-3-カルボン酸、オキセタン-3-メタノール、3-エチル-3-ヒドロキシメチルオキセタン及び3-ヒドロキシメチル-3-メチルオキセタンなど、が挙げられるが、これらに限定されない。
【0024】
好適な親水性ビニル化合物の例としては、アリルアルコール、エチレングリコールビニルエーテル(2-ヒドロキシエチルビニルエーテル)、アルコキシル化(例えば、エトキシル化)アリルアルコール、トリメチロールプロパンモノアリルエーテル、ヒドロキシポリエトキシアリルエーテル、N-ビニル-N-メチルアセトアミド、ビニルホスホン酸、ジエチルビニルホスホン酸、フェニルビニルホスホン酸、ジメチルビニルホスホン酸、ジ-n-ブチルビニルホスホン酸、ジ-イソブチルビニルホスホン酸、ジ-イソプロピルビニルホスホン酸、2-アミノエチルビニルエーテル、メチルビニルエーテル、2-アセトキシエチルビニルエーテル、ビニルピロリドン、ビニルカプロラクタムなど、が挙げられるが、これらに限定されない。
【0025】
好適な親水性(メタ)アクリルアミドの例としては、N-イソ-プロピルアクリルアミド、N-(2-ヒドロキシプロピル)(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド及びジアセトン(メタ)アクリルアミドなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0026】
好適なリン酸エステル(メタ)アクリレートモノマーの例としては、以下の式(II):
H2C=CR1C(=O)-(-O-(-CR2R3)m)n-OP(=O)(OH)2(II)
に相当する化合物が挙げられるが、これらに限定されない。式中、R1は水素又はメチル基であり、R2及びR3は独立して、水素又は1~8個の炭素原子を有するアルキル基を表し、m及びnは独立して整数1~20を表す。好適なリン酸エステル(メタ)アクリレートモノマーの具体例には、2-(メタ)アクリルオキシエチルホスフェート、3-(メタ)アクリルオキシプロピルホスフェート、2-(メタ)アクリルオキシプロピルホスフェート、4-(メタ)アクリルオキシブチルアクリレート、リン酸ジエチレングリコール(メタ)アクリレート、リン酸トリエチレングリコール(メタ)アクリレート及びリン酸ポリエチレングリコール(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0027】
疎水性反応性成分
前述のように、疎水性反応性成分は、ブロックコポリマーの非存在下では、25℃で親水性反応性成分と十分には相溶性でない(すなわち、構成部分が混合されるとき、疎水性反応性成分は、親水性反応性成分から目に見えて相が分離する)反応性化合物又は反応性化合物の混合物であるように選択される。通常、疎水性反応性成分は、親水性反応性成分よりも極性が小さいが、1以上の極性官能基、例えばエステル基などを含有してもよい。概して、反応性化合物の疎水性は、例えば、長鎖アルキル基、C5+脂環式環及び/若しくは芳香族環を含有させることによって、並びに/又は、極性官能基及び/若しくは活性水素含有官能基(例えばヒドロキシル基、カルボン酸基、オキシエチレン基、カルボキシル(エステル)基など)に対する合計炭素原子の比率を高めることによって増大され得る。
【0028】
本発明の特定の態様によると、少なくとも1つの疎水性反応性成分は、少なくとも1つのC4-C24脂肪族モノ-アルコールの(メタ)アクリレートエステル(すなわち、アクリル酸又はメタクリル酸でエステル化されたC4-C24脂肪族モノ-アルコール)を含んでもよい。脂肪族モノ-アルコールは、直鎖又は分枝鎖の構造であってもよい。脂肪族モノ-アルコールは、1以上の脂環式環で構成されてもよい。シクロアルキル基は、単環式アルキル基、例えばシクロペンチル基、シクロヘキシル基若しくはシクロヘプチル基、又は(置換された若しくは非置換の)多環式アルキル基、例えばイソボルニル基若しくはトリシクロデシル基であってもよい。好適な多環式アルキル基としては、縮合環系を有する多環式アルキル基、橋掛け環構造を有する多環式アルキル基、並びに縮合環系及び橋掛け環の両方を有する多環式アルキル基が挙げられる。
【0029】
脂肪族モノ-アルコールのヒドロキシル基は、脂環式の環上で直接置換されてもよく、又は脂環式環に結合する非脂環式の有機部分(例えば-CH2-)上で置換されてもよい。脂肪族モノ-アルコールのヒドロキシル基は、第1級、第2級又は第3級ヒドロキシル基であってよい。本発明の一実施形態において、脂肪族モノ-アルコールは飽和している。
【0030】
好適な脂肪族モノ-アルコールの例としては、n-ブタノール、sec-ブチルアルコール、n-ペンタノール、n-ヘキサノール、n-ヘプタノール、n-オクタノール、3-メチル-3-ペンタノール、ペラルゴンアルコール、1-デカノール、脂肪族アルコール(例えば、ラウリルアルコール、ステアリルアルコール、ウンデシルアルコール、トリデシルアルコール、ミリスチルアルコール、ペンタデシルアルコール、セチルアルコール、ノナデシルアルコール、1-エイコサノール、1-ヘンエイコサノール)、シクロヘキサノール、4-tert-ブチル-シクロヘキサノール、シクロヘキサンエタノール、シクロヘキサンメタノール、4-メチルシクロヘキサンメタノール、メンソール、2-エトキシエタノール、イソボルニルアルコール、2-メチル-2-ブタノール、3-メチルブタノール、2-メチル-1-プロパノールなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0031】
本発明の他の態様によると、少なくとも1つの疎水性反応性成分は、C4-C24アルキルアクリレートを含む。
【0032】
アルキル化芳香族(メタ)アクリレート及びアラルキル(メタ)アクリレートを含む、芳香族(メタ)アクリレートもまた、疎水性反応性成分において又は疎水性反応性成分として、使用に適している。
【0033】
脂環式(メタ)アクリレートは、本発明における疎水性反応性モノマーとして有用な、別のタイプの(メタ)アクリレート官能性化合物を表す。本明細書で使用する場合、用語「脂環式(メタ)アクリレート」とは、1分子当たり少なくとも1つの脂環式部分及び、直接又は間接的に(例えば、-CH2-又は-CH2CH2-などのアルキレン基を通して)、脂環式部分に結合し得るアクリレート官能基又はメタクリレート官能基を含有する化合物を意味する。脂環式部分は、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプタン(cyclooheptane)、シクロオクチルなどであってよく、単環式又は多環式でもよく、及び/又は1以上の他の基、例えば直鎖又は分枝鎖アルキル基で置換されてもよい。
【0034】
疎水性反応性成分における使用に好適な化合物の実例は、n-ブチル(メタ)アクリレート、sec-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、n-ペンチル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、n-ヘプチル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、イソ-オクチル(メタ)アクリレート、3-メチル-3-ペンチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、t-アミル(メタ)アクリルアミド、ペラルゴニル(メタ)アクリレート、1-デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、脂肪族(メタ)アクリレート(例えば、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ミリスチル(メタ)アクリレート、ペンタデシル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、ノナデシル(メタ)アクリレート、1-エイコサニル(メタ)アクリレート、1-ヘンエイコサニル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート)、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキサンエチル(メタ)アクリレート、シクロヘキサンメチル(メタ)アクリレート、4-メチルシクロヘキサンメチル(メタ)アクリレート、メンチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、2-メチル-2-ブタノール、3-メチルブチル(メタ)アクリレート、2-メチル-1-プロピル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、2-ナフチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、アルキルフェニル(メタ)アクリレート、4-tert-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレートなど及びそれらの組合せである。
【0035】
疎水性反応性成分は、ビニル芳香族化合物、特に、芳香環上にいかなる極性置換基も有しないビニル芳香族化合物を含んでもよい、又はであってよい。芳香環(例えば、フェニル環又はナフテニル環)は、1以上のアルキル基などで置換されてもよい。好適な疎水性ビニル芳香族化合物の例としては、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルナフタレン、3-メチルスチレン、4-メチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、2,5-ジメチルスチレン、3,5-ジメチルスチレン、2,4,6-トリメチルスチレン及び4-tert-ブチルスチレン、ジビニルベンゼン、ビニルトルエンなどが挙げられる。
【0036】
ビニル脂環式化合物(例えば、ビニルシクロヘキサン)及び長鎖オレフィン(例えば、1-デセンなどのC6-C24オレフィン)は、疎水性反応性成分として、又は疎水性反応性成分において使用されてもよい。
【0037】
また、本発明において、疎水性(メタ)アクリルアミド、特に窒素原子上で置換された、比較的長鎖のアルキル基、例えばC6-C24アルキル基(例えば、直鎖又は分枝鎖であり得る)を含有する(メタ)アクリルアミドも使用されてよい。本発明で好適に使用される疎水性(メタ)アクリルアミドとしては、N-(n-デシル)(メタ)アクリルアミド、N-(n-オクタデシル)(メタ)アクリルアミド、N-(n-ドデシル)(メタ)アクリルアミド、N-tert-オクチル(メタ)アクリルアミドなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0038】
第1の反応性成分及び第2の反応性成分の量
硬化性組成物における、第1の(例えば、親水性の)反応性成分及び第2の(例えば、疎水性の)反応性成分の相対量は、硬化性組成物を硬化させることにより得られる、硬化組成物又は硬化物品中で特定の秩序構造を得るために、所望のように容易に変動及び制御され得る。硬化性組成物は、例えば、第1の(例えば、親水性の)反応性成分及び第2の(例えば、疎水性の)反応性成分の総重量を基準として、10~90重量%の第1の(例えば、親水性の)反応性成分及び90~10重量%の第2の(例えば、疎水性の)反応性成分によって構成され得る。
【0039】
第1及び第2の反応性成分の相対比を変動させることは、組成物が硬化する場合に組成物内で得られる相構造のタイプに影響を与える可能性がある。例えば、硬化組成物における一相のモルフォロジーは、第2の反応性成分に対する第1の反応性成分の比率に応じて、分散球体、シリンダー、ジャロイド又はラメラとして特徴づけられ得る。
【0040】
ブロックコポリマー
本発明の硬化性組成物は、少なくとも1つのブロックコポリマーを含む。理論に拘束されることを望むものではないが、ブロックコポリマーは、非相溶性の第1及び第2の反応性成分が硬化する場合に、秩序ナノ構造のポリマーマトリックスの形成を補助すると考えられている。第1の反応性成分は、ブロックコポリマーに存在するブロックの1つと優先的に結合(「溶媒和となる」)してもよく、一方で第2の反応性成分は、ブロックコポリマーに存在するブロックのもう1つと優先的に結合(「溶媒和となる」)してもよい。その結果、ブロックコポリマーの第1のブロックに隣接した領域における、第1の反応性成分の濃度は、同一領域における第2の反応性成分の濃度よりも高くなり得る。同様に、ブロックコポリマーの第2のブロック(第1のブロックとは異なるモノマー組成を有する)に隣接した領域における第2の反応性成分の濃度は、同一領域における第1の反応性成分の濃度よりも高くなり得る。したがって、ブロックコポリマーは、ブロックの各々のタイプに対応する親和性(すなわち、結合する傾向)と結合が起こる液相中の領域に、反応性成分を予め集合させる際の、補助となり得る。一例として、第1の反応性成分が第2の反応性成分よりも親水性であり、ブロックコポリマーが第2のブロックよりも親水性の高い第1のブロックを含有する領域では、第1の反応性成分は、第1のブロックとより強く関連する傾向があり、一方で、第2の反応性成分は、第2のブロックとより強く関連する傾向があるだろう。ブロックコポリマーは、したがって、水相と強く結合する親水性末端及び油相と強く結合する疎水性末端を有する、界面活性剤又は石鹸の機能に類似した方法で機能していると考えられ得る。
【0041】
特定の実施形態において、硬化性組成物は、ジブロックコポリマー又はトリブロックコポリマーの少なくとも1つにより構成される。ブロックコポリマーの構造は、ブロックコポリマーが2つの異なる種類のブロックを含み、1つの種類のブロックが、第2の反応性成分(例えば、疎水性反応性成分)に対してよりも、第1の反応性成分(例えば、親水性反応性成分)に対してより高い親和性を有し、もう1つの種類のブロックが、第1の反応性成分に対してよりも、第2の反応性成分に対してより高い親和性を有するように選択され得る。したがって、第1の反応性成分、第2の反応性成分及びブロックコポリマーが混合されて混合物を形成するとき、第1の反応性成分は、ブロックコポリマーの1つのブロックとの結合度合いがより大きくなってよく、一方で、第2の反応性成分は、ブロックコポリマーのもう1つのブロックとの結合度合いがより大きくなり得る。ブロックコポリマーに存在する各々の種類のブロックは、他の種類のブロックのガラス転移温度とは異なるガラス転移温度を有し得る。少なくとも1つのブロックコポリマーは、例えば、少なくとも25℃のガラス転移温度を有する少なくとも1つのブロック、及び25℃未満のガラス転移温度を有する少なくとも1つのブロックを含んでもよい。その他の実施形態では、少なくとも1つのブロックコポリマーは、少なくとも50℃のガラス転移温度を有する少なくとも1つのブロック、及び-25℃未満のガラス転移温度を有する少なくとも1つのブロックを含んでもよい。「Tg」とは、規格ASTM E1356に従って示差走査熱量計(DSC)によって測定されるポリマーのガラス転移温度を意味する。
【0042】
様々な好ましい実施形態によると、少なくとも1つのブロックコポリマーは、a)少なくとも1つのポリ(n-ブチルアクリレート)ブロック及び少なくとも1つのポリ(メチルメタクリレート)ブロックによって構成されるブロックコポリマー、b)少なくとも1つのポリスチレンブロック及び少なくとも1つのポリブタジエンブロックによって構成されるブロックコポリマー、並びにc)少なくとも1つのポリスチレンブロック及び少なくとも1つのポリイソプレンブロックによって構成されるブロックコポリマーからなる群から選択される少なくとも1つのブロックコポリマーを含む。
【0043】
ブロックコポリマーの全体的な分子量は、特に重要とは考えられてはいない。例えば、少なくとも1つのブロックコポリマーは、ポリスチレン標準物質を使用して、3,000~200,000ダルトンの数平均分子量(ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)で測定)を有し得る。ブロックコポリマーの多分散度は、例えば、1~2、1~1.5、又は1~1.3であり得る。
【0044】
本発明の一態様によると、硬化性組成物は、少なくとも1種の熱可塑性アクリルブロックコポリマーを含む。例えば、硬化性組成物は、一般式(A)nBを有する少なくとも1つの熱可塑性アクリルブロックコポリマーによって構成されてよく、式中、nは1に等しい又は1を超える整数であり、Aは50℃を超える、好ましくは80℃を超えるTgを有するアクリル又はメタクリルホモポリマー若しくはコポリマー、又はポリスチレン又はアクリル/スチレン又はメタクリル/スチレンコポリマーである。好ましくは、Aは、メチルメタクリレート、フェニルメタクリレート、ベンジルメタクリレート又はイソボルニルメタクリレートである。好ましくは、ブロックAは、PMMA又はアクリル若しくはメタクリルコモノマーによって変性されるPMMAであり、Bは、20℃未満のTgを有し、好ましくは(重合した形態の)メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、エチルヘキシルアクリレート又はブチルメタクリレート、より好ましくはブチルアクリレートからなる、アクリル又はメタクリルホモポリマー又はコポリマーである。
【0045】
さらに、ブロックA及び/又はBは、当業者にとって公知である様々な官能基、例えば、酸官能基、アミド官能基、アミン官能基、ヒドロキシル官能基、エポキシ官能基又はアルコキシ官能基を有する、他のアクリル又はメタクリルコモノマーを含むことができる。Aブロックは、温度安定性を高めるために、アクリル酸又はメタクリル酸などのモノマーを組み込むことができる。
【0046】
様々な好ましい態様によると、ブロックコポリマーは、ABA、AB、A3B2及びA4B3(式中、A3B2及びA4B3は、直鎖、放射状又は分岐鎖タイプの構造を有してもよい)から選択される構造を有してもよい。
【0047】
好ましくは、熱可塑性アクリルブロックコポリマーは、以下のトリブロックコポリマー、pMMA-pBuA-pMMA、p(MMAcoMAA)-pBuA-p(MMAcoMAA)及びp(MMAcoAA)-pBuA-p(MMAcoAA)、式中MMA=メチルメタクリレート、BuA=ブチルアクリレート、MAA=メタクリル酸、AA=アクリル酸である、から選択され得る。一実施形態では、ブロックコポリマーは、MAMのタイプ(PMMA-pBuA-PMMA)である。
【0048】
本発明の特定の態様において、ブロックコポリマーは、少なくとも1つの比較的親水性のブロック(例えば、ポリエチレンオキシドブロック、ポリヒドロキシエチル(メタ)アクリレートブロック、ポリ(N,N-ジメチルアクリルアミド)ブロック、又は先だって反応性成分に関連して言及された1以上の親水性モノマーから調製されるブロック)、並びに少なくとも1つの親水性の低いブロック(例えば、ポリスチレンブロック、ポリシクロヘキサンブロック、又は先だって反応性成分に関連して言及された1以上の疎水性モノマーから調製されるブロック)を含む。
【0049】
本発明の様々な実施形態における硬化性組成物の構成部分は、硬化性組成物が、少なくとも第1のブロック及び第2のブロックにより構成され、第1の反応性成分は、第1のブロックの重合形態に存在する少なくとも1つのモノマーに相当する少なくとも1つのモノマーにより構成され、第2の反応性成分は、第2のブロックの重合形態に存在する少なくとも1つのモノマーにより構成され、第1のブロック及び第2のブロックは、異なるモノマー組成を有するように選択され得る。さらなる実施形態では、硬化性組成物は、少なくとも第1のブロック及び第2のブロックにより構成され、第1の反応性成分は、第1のブロックの重合形態に存在する少なくとも1つのモノマーに相当する少なくとも1つのモノマーにより構成され、第2の反応性成分は、第1のブロックの重合形態に存在する少なくとも1つのモノマーとは異なる少なくとも1つのモノマーにより構成される。
【0050】
特定の実施形態によると、ブロックBは、ブロックコポリマーの総重量の25%~75%、例えば、40%~65%に相当し得る(その場合、特定の実施形態において、ブロックAは、ブロックコポリマーの総重量の残部に相当する)。各ブロックBは、例えば、5,000g/mol~200,000g/mol、例えば、10,000g/mol~50,000g/molの数平均分子量を有してもよい。各ブロックAの数平均分子量も同様にそのような範囲であり得るが、ブロックA及びブロックBの数平均分子量は、互いに類似していても、異なっていてもよい。
【0051】
本発明の一態様では、硬化性組成物は、PMMA-pBuA-PMMAブロックコポリマーを含み、各PMMAブロックの数平均分子量は、5000~10,000g/molであり、pBuAブロックの数平均分子量は、10,000~20,000g/molである。
【0052】
他の種類の好適なブロックコポリマーとしては、ポリエチレンオキシド/ポリプロピレンオキシド/ポリエチレンオキシド(PEO/PPO/PEO)ブロックコポリマー、ポリエチレンオキシド/ポリプロピレンオキシド(PEO/PPO)ブロックコポリマー、ポリプロピレンオキシド/ポリエチレンオキシド/ポリプロピレンオキシド(PPO/PEO/PPO)ブロックコポリマー、ポリスチレン/ポリエチレンブチレン/ポリスチレン(PS/PEB/PS)ブロックコポリマー、ポリスチレン/ポリブタジエン/ポリスチレン(PS/PB/PS)ブロックコポリマー、ポリスチレン/ポリエチレンオキシド(PS/PEO)ブロックコポリマー、ポリエチレン/ポリエチレンオキシドブロックコポリマー、ポリジメチルアクリルアミド/ポリブチルアクリレート/ポリジメチルアクリルアミドブロックコポリマー、セグメント化ポリウレタン(複数の比較的親水性セグメント、例えばポリエーテルセグメント及び複数の比較的疎水性セグメント、例えばウレタンセグメントを有する)、ポリ(ジメチルシロキサン/ポリカプロラクトン/ポリジメチルシロキサンブロックコポリマー、ポリアミド/ポリエーテルブロックコポリマー、ポリエーテル/ポリエステルブロックコポリマー、ポリ乳酸/ポリエチレンオキシドブロックコポリマー、ポリ(ラクチド-co-グリコリド)/ポリエチレンオキシドブロックコポリマー、ポリカプロラクトン/ポリエチレンオキシドブロックコポリマー、ポリエチレンオキシド/シリコーンブロックコポリマーなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0053】
本発明で好適に使用されるブロックコポリマーは、当該技術分野において公知の従来法(例えば、精密ラジカル重合(CRP)又はアニオン重合)を用いて、容易に調製され得る。又は市販の供給源、例えば、Arkema Groupからの商標名「Nanostrength」で販売されるブロックコポリマーから得られる。
【0054】
本発明の様々な実施形態において、硬化性組成物は、均一で安定した硬化性組成物の提供に有効な量のブロックコポリマーを含む。例えば、ブロックコポリマーの量は、7日後に25℃で、第1の(例えば、親水性の)反応性成分及び第2の(例えば、疎水性)反応性成分のバルクの相分離を呈しない硬化性組成物を提供するのに十分であり得る。特定の態様によると、硬化性組成物は、硬化性組成物の総重量を基準として、1~40重量%、又は2~20重量%のブロックコポリマーによって構成され得る。
【0055】
硬化性組成物は、他の種類の構成部分が存在することなく、第1の(例えば、親水性の)反応性成分、第2の(例えば、疎水性の)反応性成分、及びブロックコポリマーからなり得る。しかし、その他の実施形態では、硬化性組成物は、以下に記載されるような1種以上の追加の構成部分を付加的に含んでもよい。特定の実施形態によると、硬化性組成物は、第1の(例えば、親水性の)反応性成分、第2の(例えば、疎水性の)反応性成分、及びブロックコポリマー以外の構成部分を、硬化性組成物の総重量を基準として、0~50重量%、0~25重量%、0~10重量%、0~5重量%又は0~1重量%、含んでもよい。
【0056】
光開始剤
紫外線などの光を利用して硬化性組成物を硬化させる場合、通常、組成物が1種以上の光開始剤を含むように配合することが望ましいだろう。しかし、電子線による硬化又は化学的な硬化が使用される場合、硬化性組成物は、いかなる光開始剤も含有する必要はない。
【0057】
光開始剤は光の吸収を受け光化学反応を経て、反応種を生成する化合物である。生成された反応種は、その後、硬化性組成物の反応性成分、例えば、第1の(例えば、親水性の)反応性成分及び第2の(例えば、疎水性の)反応性成分の重合を開始する。概して、反応性成分に存在する化合物が炭素-炭素二重結合を含有する場合、このような重合(硬化)は、このような炭素-炭素二重結合の反応を伴う。本発明の様々な実施形態において、反応種は、例えば、フリーラジカル種又はアニオン性種であってもよい。好適な光開始剤としては、例えば、α-ヒドロキシケトン、フェニルグリオキシル酸、ベンジルジメチルケタール、α-アミノケトン、モノ-アシルホスフィン、ビス-アシルホスフィン、メタロセン、ホスフィンオキシド、ベンゾインエーテル及びベンゾフェノン並びにこれらの組合せが挙げられる。
【0058】
好適な光開始剤の具体例には、2-メチルアントラキノン、2-エチルアンスラキノン、2-クロロアントラキノン、2 ベンジルアントラキノン(benzyanthraquinone)、2-t-ブチルアントラキノン、1,2-ベンゾ-9,10-アントラキノン、ベンジル、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、α-メチルベンゾイン、α-フェニルベンゾイン、ミヒラーケトン、ベンゾフェノン、4,4’-ビス-(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、アセトフェノン、2,2 ジエチルオキシアセトフェノン、ジエチルオキシアセトフェノン、2-イソプロピルチオキサントン、チオキサントン、ジエチルチオキサントン、アセチルナフタレン、エチル-p-ジメチルアミノベンゾエート、ベンジルケトン、α-ヒドロキシケト、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ベンジルジメチルケタール、ベンジルケタール(2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタノン)、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(hydroxycylclohexyl phenyl ketone)、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパノン-1、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパノン、オリゴマーα-ヒドロキシケトン、フェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、エチル-4-ジメチルアミノベンゾエート、エチル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィネート、アニソイン、アントラキノン、アントラキノン-2-スルホン酸、ナトリウム塩一水和物、(ベンゼン)トリカルボニルクロム、ベンジル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾフェノン/1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンの50/50のブレンド、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、4-ベンゾイルビフェニル、2-ベンジル-2-(ジメチルアミノ)-4’-モルホリノブチロフェノン、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、カンファーキノン、2-クロロチオキサンテン-9-オン、ジベンゾスベレノン、4,4’-ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2-ジメトキシ-2ーフェニルアセトフェノン、4-(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’-ジメチルベンジル、2,5-ジメチルベンゾフェノン、3,4-ジメチルベンゾフェノン、ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド/2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノンノ50/50のブレンド、4’-エトキシアセトフェノン、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド(trimethylbenzoyldiphenylphophine oxide)、フェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、フェロセン、3’-ヒドロキシアセトフェノン、4’-ヒドロキシアセトフェノン、3-ヒドロキシベンゾフェノン、4-ヒドロキシベンゾフェノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン、2-メチルベンゾフェノン、3-メチルベンゾフェノン、メチルベンゾイルギ酸塩、2-メチル-4’-(メチルチオ)-2-モルホリノプロピオフェノン、フェナントレンキノン、4’-フェノキシアセトフェノン、(クメン)シクロペンタジエニルアイロン(ii)ヘキサフルオロホスフェート、9,10-ジエトキシ及び9,10-ジブトキシアントラセン、2-エチル-9,10-ジメトキシアントラセン、チオキサンテン-9-オン並びにこれらの組合せが挙げられるが、これらに限定されない。
【0059】
好適な光開始剤の例示的な組合せとしては、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-1-プロパノン、2,4,6-トリメチルベンゾイルフェニルホスフィン酸エチルエステル及びフェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシドのブレンド並びに2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-1-プロパノン及びジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシドのブレンドが挙げられる。
【0060】
また、本発明において有用なものは、有機金属のチタノセン光開始剤、例えば、Irgacure(R)784ビス(η5-2,4-シクロペンタジエン-1-イル)-ビス(2,6-ジフロロ-3-(1H-ピロール-1-イル)-フェニル)チタンがある。
【0061】
硬化性組成物中で光開始剤が使用される場合、通常、硬化性組成物の総重量を基準として、最大約15重量%(例えば、硬化性組成物の総重量を基準として約0.1~約5重量%の濃度)の合計濃度で存在し得る。
【0062】
無機ナノ粒子
本発明の硬化性組成物は、1種以上の種類の無機ナノ粒子を付加的に含んでもよいが、無機ナノ粒子は有機成分(例えば、有機的に変性された無機ナノ粒子)を含有しても含有しなくてもよい。このような無機ナノ粒子は、第1の(例えば、親水性の)反応性成分又は第2の(例えば、疎水性の)反応性成分の1つ又は両方において分散し得る。無機ナノ粒子の好適な種類としては、例えば、シリカナノ粒子、アルミナナノ粒子、酸化鉄ナノ粒子、ニオビアナノ粒子、チタニアナノ粒子、混合酸化物ナノ粒子(例えば、シリカ/アルミナナノ粒子)、金属ナノ粒子、合金ナノ粒子、ジルコニアナノ粒子、粘土ナノ粒子(有機的に変性された粘土ナノ粒子及び/又は挿入型粘土ナノ粒子など)、グラフェン並びにこれらの組合せが挙げられる。硬化性組成物中に無機ナノ粒子を含み、このような無機ナノ粒子含有硬化性組成物を硬化させることで、秩序ハイブリッド無機ポリマー複合体の生成が可能である。
【0063】
無機ナノ粒子の候補は、化学的な性質は前述の通りであるが、問題の粒子の一般的な幾何学的形状に応じて、多くの寸法のうちの1つで測定される粒子の物理的寸法によっても規定され得る。例えばシリカなどの、典型的な三次元球状様の粒子は、1つの端部から垂直に粒子の中心を通って、粒子の反対側の端部へ粒子直径を測定することによって規定され得る。ファセット、樹状又はそれ以外の幾何学的形状の粒子の場合、直径は、1つのファセット表面又は頂点から、垂直に粒子の中心を通って、反対側の面又は頂点への測定によって規定することができる。複数のナノ粒子が、より大きな構造体に凝集されてもよい場合は、本発明の説明は、このような凝集体の最小の三次元サブユニットに関する。本発明において適用するために、三次元ナノ粒子は、0.5nm~1000nm、好ましくは1.0~200nm、最も好ましくは1.0~100nmの範囲の、既に述べたような直径を有するだろう。
【0064】
シート状の二次元ナノ粒子の場合、個々の粒子は1nm未満の厚みを有する見込みとして規定されることができ、その長さ及び幅の寸法は、1.0nm~100μm、好ましくは5.0nm~10μm、最も好ましくは10.0nm~5μmの範囲と比較的大きい可能性がある。これら種類の材料は、通常、複数の「シート」の積み重ねとして存在し、当該技術分野において公知の様々な物理的加工又は化学的な方法によって個々の「シート」又は粒子へと分離され得る。
【0065】
硬化性組成物中に無機ナノ粒子が使用される場合、通常、無機ナノ粒子は、硬化性組成物の総重量を基準として、最大約50重量%の合計濃度(例えば、硬化性組成物の総重量を基準として、約0.1~約25重量%の濃度)で存在してもよい。
【0066】
硬化性組成物のその他の成分
本発明の硬化性組成物は、任意選択的に、上述の構成部分に代えて、又は上述の構成部分に加えて、1種以上の添加剤を含有してもよい。このような添加剤には、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、抑泡剤、流れ調整剤又はレベリング剤、着色剤、顔料、分散剤(湿潤剤)、スリップ剤、フィラー(無機ナノ粒子以外のもの、若しくは無機ナノ粒子に加えて)、チキソトロープ剤、艶消し剤、促進剤、接着促進剤(酸性接着促進剤など)、熱可塑性プラスチック及び他の種類のポリマー(上述したブロックコポリマー以外のもの、若しくは上述したブロックコポリマーに加えて)、ワックス又はコーティング、シーラント、接着剤、成形用若しくはインク技術で通常使用される任意の添加剤を含む、他の様々な添加剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0067】
使用方法
本発明の硬化性組成物は、他の見込みのある用途に加えて、インク(食品包装などの印刷用途)、樹脂成形用、3Dプリント樹脂、コーティング(例えば、光ファイバーのコーティング及び「ソフトタッチ」コーティング)、シーラント及び接着剤(例えば、UV硬化性積層接着剤、UV硬化性ホットメルト接着剤)として有用である。
【0068】
本明細書に記載される硬化性組成物から調製される硬化組成物は、例えば、三次元物品(三次元物品は硬化組成物から本質的になり得る、若しくは硬化組成物からなり得る)、被覆物品(基材が1以上の硬化組成物の層でコーティングされる)、積層化物品又は接着物品(物品の第1の成分が、硬化組成物によって第2の成分に積層化される若しくは接着される)、又は印刷物品(図形などが硬化組成物を使用して、基材上、例えば、紙、プラスチック若しくは金属基材に刷り込まれる)において使用されてもよい。
【0069】
硬化性組成物は、フリーラジカル重合又は他の種類の重合(例えば、アニオン性重合若しくはカチオン性重合)による硬化が実施されてもよい。
【0070】
本発明に従う硬化性組成物の硬化は、任意の好適な方法、例えば、フリーラジカル重合、カチオン性重合及び/又はアニオン性重合によって実施され得る。ラジカル開始剤(例えば、光開始剤、過酸化物開始剤)などの1種以上の反応開始剤が、硬化性組成物中に存在してもよい。硬化の前に、硬化性組成物は、任意の公知の従来法、例えば、吹付け、ナイフコーティング、ローラーコーティング、鋳造、ドラムコーティング、浸漬など及びこれらの組合せによって、基材表面に適用され得る。転写工程を用いる間接的な適用もまた、使用され得る。基材は、例えば、高表面エネルギー基材又は低表面エネルギー基材、例えば、それぞれ金属基材若しくはプラスチック基材などの、任意の商業的に妥当な基材でもよい。基材は、金属、紙、厚紙、ガラス、熱可塑性プラスチック、例えば、ポリオレフィン、ポリカーボネート、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)及びこれらのブレンドなど、複合体、木材、革並びにこれらの組合せを含み得る。接着剤として使用する場合、組成物は2つの基材の間に配置され、その後硬化し、それによって硬化組成物は基材を結合させる。
【0071】
硬化は、組成物にエネルギーを供給すること、例えば、組成物を加熱することによって、並びに/又は組成物を可視光線若しくは紫外線、赤外線及び/若しくは電子線放射などの放射線源にさらすことによって、加速又は促進されてもよい。したがって、硬化組成物は、硬化により形成される硬化性組成物の反応生成物と見なされ得る。
【0072】
本発明の硬化性組成物は、LED(発光ダイオード)を用いた硬化(例えば、UV LEDデバイスからの放射線を用いるUV LED硬化)及び高速適用での使用(例えば、コーティング)に特に適している。
【0073】
本発明に従う組成物の複数の層は基材表面に適用されてもよい。複数の層は、同時に硬化してもよく(例えば、放射線照射への一度のみの暴露によって)、又は各層は組成物の追加の層を適用する前に連続的に硬化してもよい。
【0074】
本明細書に記載される硬化性組成物は、特に3Dプリント樹脂配合物、すなわち、3Dプリント技術を使用して三次元物品を製造する場合に使用するための組成物として有用である。このような三次元物品は独立型/自己支持型であってよく、硬化した硬化性組成物から本質的になり得る、又は硬化した硬化性組成物からなり得る。三次元物品は、また、前述のような硬化組成物から本質的になる、又は硬化組成物からなる少なくとも1つの構成部分、及びこのような硬化組成物以外の1種以上の材料(例えば、金属部分又は熱可塑性部分)から構成される、少なくとも1種の追加の構成部分を含む複合体であってもよい。
【0075】
本発明に従う硬化性組成物を用いる三次元物品の製造方法は、
a)本発明に従う硬化性組成物の第1の層を表面上へコーティングするステップ、
b)第1の層を硬化させ、第1の硬化層を提供するステップ、
c)第1の硬化層上へ硬化性組成物の第2の層をコーティングするステップ、
d)第2の層を硬化させ、第1の硬化層に接着した第2の硬化層を提供するステップ、並びに
e)ステップc)及びステップd)を所望の回数繰り返し、三次元物品を構築するステップ、を含み得る。
【0076】
硬化ステップは任意の好適な手段によって実施され得るが、一部の場合には、硬化性組成物に存在する構成部分に依存し、本発明の特定の実施形態では、硬化は、硬化される層を有効量の放射線(例えば、電子線放射、紫外線放射、可視光線など)に暴露させることによって達成される。
【0077】
したがって、様々な実施形態において、本発明は、
a)本発明に従う硬化性組成物の第1の層を、液体の形態で表面上へコーティングするステップ、
b)第1の層を化学線に像様に露光し、第1の露光撮像断面を形成するステップであって、放射線は、露光領域中の層の、少なくとも部分硬化(例えば、少なくとも80%又は少なくとも90%の硬化)を起こすのに十分な強度及び持続時間であるステップ、
c)先だって露光した撮像断面上へ、硬化性組成物の追加の層をコーティングするステップ、
d)追加の層を化学線に像様に露光し、追加の撮像断面を形成するステップであって、放射線は、露光領域における追加の層中で、少なくとも部分硬化(例えば、少なくとも80%又は少なくとも90%の硬化)を起こし、先だって露光した撮像断面への追加の層の接着を起こすのに十分な強度及び持続時間であるステップ、
e)ステップc)及びステップd)を所望の回数繰り返し、三次元物品を構築するステップ
を含む工程を提供する。
【0078】
本発明の一態様によると、ブロックコポリマーは一般構造A-B-Aのトリブロックコポリマーであり、式中、末端Aブロックは比較的高いガラス転移温度(例えば、≧50℃)を有し、中央Bブロックは、比較的低いガラス転移温度(例えば、≦0℃)を有し、親水性反応性成分又は疎水性反応性成分は、中央Bブロックよりも、末端Aブロックに対してより高い親和性を有し、重合すると、比較的高いガラス転移温度(例えば、≧50℃)を有するポリマーを産生し、もう一方の反応性成分は、末端Aブロックよりも、中央Bブロックに対してより高い親和性を有し、重合すると、比較的低いガラス転移温度(例えば、≦0℃)を有するポリマーを産生する。このような硬化性組成物は、例えば、強化された剛性3Dプリント生成物、構造用接着剤及び衝撃耐性フィルムの製造に有用であると期待される。
【0079】
本発明の別の態様では、ブロックコポリマーは一般構造A-B-Aのトリブロックコポリマーであり、式中、末端Aブロックは比較的低いガラス転移温度(例えば、≦0℃)を有し、中央Bブロックは比較的高いガラス転移温度(例えば、≧50℃)を有し、親水性反応性成分又は疎水性反応性成分は、中央Bブロックよりも、末端Aブロックに対してより高い親和性を有し、重合すると、比較的低いガラス転移温度(例えば、≦0℃)を有するポリマーを産生し、もう一方の反応性成分は末端Aブロックよりも、中央Bブロックに対してより高い親和性を有し、重合すると、比較的高いガラス転移温度(例えば、≧50℃)を有するポリマーを産生する。このような硬化性組成物は、例えば、強化されたエラストマー3Dプリント生成物又は包装用接着剤の製造に有用であると期待される。
【0080】
本発明のさらに別の実施形態では、硬化組成物は、1以上の親水性モノマーによって構成される反応性成分を用いる結果として、疎水性の相又は領域を含み、親水性の相又は領域は水を吸収及び保持することができ、それによって犠牲材料として作用する。
【0081】
その他の態様によると、本発明の硬化性組成物の硬化によって達成されるミクロ相分離構造は、硬化組成物の破壊を増大させることができ、それによって、より耐引裂性の高い材料を提供する。
【0082】
さらに他の実施形態では、硬化性組成物の構成部分は、硬化組成物中に、セラミック、例えば硬化性組成物と混合されているセラミック分散体のためのキャリアとして機能する、親水性相を提供するように選択されてもよい。
【0083】
硬化組成物はまた、硬化組成物の特性を変えるために、硬化後にさらなる処理が実施されてもよい。例えば、硬化組成物が疎水性相と疎水性相の両方を含有する場合、硬化組成物から構成されるコーティングが基材表面上に形成され、その後、エッチング工程が実施され、それによって、親水性相の少なくとも一部が、疎水性相を残して選択的に除去され得る。したがってエッチングは、コーティングの表面組織及び表面感触を変えることができ、それによって、より好ましい又は望ましい触覚の特性を有する「ソフトタッチ」なコーティングを作成すると考えられる。
【0084】
本発明の例示的態様
本発明の様々な非限定的な態様が次の通り要約され得る。
【0085】
態様1:硬化性組成物であって、25℃で秩序ミクロ相分離状態で存在し、
a)少なくとも第1のブロック及び第2のブロックから構成されるブロックコポリマーであって、第1のブロック及び第2のブロックが異なるモノマー組成を有するブロックコポリマー、
b)ブロックコポリマーの第2のブロックよりも、ブロックコポリマーの第1のブロックに対してより高い親和性を有する第1の反応性成分、
c)ブロックコポリマーの第1のブロックよりも、ブロックコポリマーの第2のブロックに対してより高い親和性を有する第2の反応性成分、
から構成される、から本質的になる、又はからなり、第1の反応性成分及び第2の反応性成分が、ブロックコポリマーの非存在下では25℃で互いに完全には相溶性ではない、硬化性組成物。
【0086】
態様2:第1の反応性成分が、1以上の親水性モノマーから構成され、第2の反応性成分が1以上の疎水性モノマーから構成される、態様1の硬化性組成物。
【0087】
態様3:第1の反応性成分が、親水性エポキシド、親水性オキセタン、親水性ビニル化合物、親水性アクリルアミド及び親水性(メタ)アクリレート官能性化合物からなる群から選択される少なくとも1つの親水性モノマーから構成される、から本質的になる又はからなる、態様1又は2の硬化性組成物。
【0088】
態様4:第1の反応性成分が、親水性(メタ)アクリレート官能性化合物からなる群から選択される少なくとも1つの親水性モノマーから構成される、から本質的になる又はからなる、態様1~3のいずれかの硬化性組成物。
【0089】
態様5:第1の反応性成分が、アセトキシエチル(メタ)アクリレート、2-カルボキシエチル(メタ)アクリレート、ホスフェート(メタ)アクリレートモノマー、モノ-(2-(メタ)アクロイルオキシエチル)サクシネート、ラクトン(メタ)アクリレート、ラクタム(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン、N-ビニルホルムアミド、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート及びジアセトン(メタ)アクリルアミドからなる群から選択される少なくとも1つの親水性モノマーから構成される、から本質的になる又はからなる、態様1~4のいずれかの硬化性組成物。
【0090】
態様6:少なくとも1つの親水性モノマーが、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート又はアルコキシル化ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートと、ジカルボン酸又はカルボン酸無水物との反応生成物であるハーフエステルを含む、から本質的になる又はからなる、態様4の硬化性組成物。
【0091】
態様7:ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートが、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート及びヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートからなる群から選択される、態様6の硬化性組成物。
【0092】
態様8:ジカルボン酸又はカルボン酸無水物が、コハク酸、無水コハク酸、マロン酸、メチルコハク酸及びメチルコハク酸無水物からなる群から選択される、態様6又は7の硬化性組成物。
【0093】
態様9:少なくとも1つの親水性モノマーが、ヒドロキシエチルアクリレートとコハク酸との反応生成物であるハーフエステルを含む、から本質的になる又はからなる、態様6の硬化性組成物。
【0094】
態様10:第2の反応性成分が、少なくとも1つの、C4-C24脂肪族モノ-アルコールの(メタ)アクリレートエステルを含む、から本質的になる又はからなる、態様1~9のいずれかの硬化性組成物。
【0095】
態様11:第2の反応性成分が、少なくとも1つのC4-C24アルキルアクリレートを含む、から本質的になる又はからなる、態様1~10のいずれかの硬化性組成物。
【0096】
態様12:第2の反応性成分が、芳香族(メタ)アクリレート、脂環式(メタ)アクリレート、ビニル芳香族化合物、ビニル脂環式化合物、C6-C24オレフィン及びC6-C24アルキル基を含む(メタ)アクリルアミドからなる群から選択される少なくとも1つの疎水性反応性化合物を含む、から本質的になる又はからなる、態様1~10のいずれかの硬化性組成物。
【0097】
態様13:ブロックコポリマーが、ジブロックコポリマー又はトリブロックコポリマーの少なくとも1つを含む、から本質的になる又はからなる、態様1~12のいずれかの硬化性組成物。
【0098】
態様14:ブロックコポリマーが、少なくとも25℃のガラス転移温度を有する少なくとも1つのブロック及び25℃未満のガラス転移温度を有する少なくとも1つのブロックを含む、態様1~13のいずれかの硬化性組成物。
【0099】
態様15:ブロックコポリマーが、少なくとも50℃のガラス転移温度を有する少なくとも1つのブロック及び-25℃未満のガラス転移温度を有する少なくとも1つのブロックを含む、態様1~14のいずれかの硬化性組成物。
【0100】
態様16:ブロックコポリマーが、a)少なくとも1つのポリ(n-ブチルアクリレート)ブロック及び少なくとも1つのポリ(メチルメタクリレート)ブロックによって構成されるブロックコポリマー、b)少なくとも1つのポリスチレンブロック及び少なくとも1つのポリブタジエンブロックによって構成されるブロックコポリマー、並びにc)少なくとも1つのポリスチレンブロック及び少なくとも1つのポリイソプレンブロックによって構成されるブロックコポリマーからなる群から選択されるブロックコポリマーである、態様1~15のいずれかの硬化性組成物。
【0101】
態様17:少なくとも1つのブロックコポリマーが、3,000~200,000ダルトンの数平均分子量を有する、態様1~16のいずれかの硬化性組成物。
【0102】
態様18:硬化性組成物が、硬化性組成物の総重量を基準として、1~40重量%のブロックコポリマーにより構成される、態様1~17のいずれかの硬化性組成物。
【0103】
態様19:少なくとも1種の光開始剤をさらに含む、態様1~18のいずれかの硬化性組成物。
【0104】
態様20:無機ナノ粒子をさらに含む、態様1~19のいずれかの硬化性組成物。
【0105】
態様21:無機ナノ粒子が、第1の反応性成分又は第2の反応性成分の1つ又は両方に分散する、態様20の硬化性組成物。
【0106】
態様22:無機ナノ粒子が、シリカナノ粒子、アルミナナノ粒子、酸化鉄ナノ粒子、ニオビアナノ粒子、チタニアナノ粒子、混合酸化物ナノ粒子、合金ナノ粒子、ジルコニアナノ粒子、金属ナノ粒子、粘土ナノ粒子及びこれらの組合せからなる群から選択される、態様20又は21の硬化性組成物。
【0107】
態様23:第1の反応性成分及び第2の反応性成分の総重量を基準として、10~90重量%の第1の反応性成分及び90~10重量%の第2の反応性成分を含む、態様1~22のいずれかの硬化性組成物。
【0108】
態様24:態様1~23のいずれかの硬化性組成物を硬化させることを含む、方法。
【0109】
態様25:態様1~23のいずれかの硬化性組成物を硬化させることにより得られる、硬化組成物。
【0110】
態様26:インク、成形用樹脂、3Dプリント樹脂、コーティング材又は接着剤としての、態様1~23のいずれかの硬化性組成物の使用。
【0111】
態様27:硬化組成物であって、重合した形態の第1の反応性成分から構成される1以上のポリマー領域の第1のセット、重合した形態の第2の反応性成分から構成される1以上のポリマー領域の第2のセット、並びにポリマー領域の第1のセットと結合する少なくとも1つのブロック及びポリマー領域の第2のセットと結合する少なくとも1つのブロック、から構成されるブロックコポリマーを含み、第1の反応性成分及び第2の反応性成分が、ブロックコポリマーの非存在下では、25℃で互いに完全には相溶性ではない、硬化組成物。
【0112】
態様28:態様1~23のいずれか1つの硬化性組成物の硬化の結果として得られる3D物品。
【0113】
態様29:3Dプリント物品である、請求項28の3D物品。
【0114】
本明細書の中では、実施形態について明確で簡潔な明細書を書くことが可能となるような方法で説明したが、実施形態は、本発明から逸脱することなく、様々に組み合わせられ又は切り離され得ると、意図され、理解されるだろう。例えば、本明細書で記載されるすべての好ましい特徴は、本明細書で記載される本発明の全態様に適用可能である、と理解されるであろう。
【0115】
いくつかの実施形態において、本明細書における本発明は、硬化性組成物又は硬化性組成物を使用している工程の基本的及び新規の特徴に実質的に影響を及ぼさない、任意の要素又は工程段階を除外するとして解釈され得る。さらに、いくつかの実施形態において、本発明は、本明細書で明記されない任意の要素又は工程段階を除外するとして解釈され得る。
【0116】
本発明は、特定の実施形態を参照して本明細書にて図示され記載されるが、本発明は、示される詳細に限定されることを意図しない。むしろ、特許請求の範囲及びそれに相当するものの趣旨及び範囲内で、本発明を逸脱することなく、詳細において様々な変更がなされてもよい。
【実施例】
【0117】
図1~
図3は、本発明の特定の例示的な非限定な態様を示している。2つの代表的な反応性成分、6つのオキシエチレン反復単位を含有するポリエチレングリコールモノアクリレート(「PEA6」と略記する)及び4-tert-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート(「Tbchma」と略記する)を示す。PEA6は親水性モノマーであると考えられ、一方でTbchmaは疎水性モノマーに分類される。これらのモノマーの構造は、
図1の2列目に示される。等しい重量のPEA6及びTbchmaを周囲温度で試験管の中に入れた。
図1の4列目の最上部の写真に示すように、モノマーは、攪拌/混合した直後に明確な相分離を呈した(モノマーを混合し相が分離するのを許容してから、しばらく時間をおいてから撮影した左の写真では、2つの液相間のメニスカスは、識別するのが困難ではあるが、認識できる)。力強く混合物を攪拌した直後に撮影した右の写真は、2つの液相の一時的な「乳化」の結果として、いくぶん濁った混合物を示す。
【0118】
図1の下の行は、ブロックコポリマーがPEA6及びTbchmaと混合されるときに観察される結果を示す。この場合、ブロックコポリマーは、ポリメチルメタクリレート(「PMMA」)のブロック及びポリブチルアクリレート(「PBA」)のブロックを含有し、「NS-1」として設計される、d-ブロックである。ブロックコポリマーの概略的な構造が
図1の2列目に示されている。ブロックコポリマー構造は簡略化され、エステル官能基は示されず、各ブロックの反復単位の数は必ずしも、実際に使用されるNS-1ブロックコポリマーにおける反復単位の数に対応しない。ポリマー主鎖のペンダント型基を有するように示されるブロックはPBAブロックを表し、一方で、もう一方のブロックはPMMAブロックである。NS-1ブロックコポリマーの存在下では、PEA6及びTbchmaは相溶化され、
図1の一番下の4列目の写真に示すように、混合に際して、単一の均一な液相が観察される。
【0119】
図1の3列目は、2つの異なる混合物において、分子レベルで起こっていると考えられることを図示する描写を提供する。ブロックコポリマーなしでは、PEA6が豊富な上相及びTbchmaが豊富な下相が形成される。ブロックコポリマーの存在下(3列目一番下のパネルに示される)では、Tbchma分子はブロックコポリマーのPBAブロックに優先して結合する傾向があり、一方でPEA6分子はブロックコポリマーのPMMAブロックに優先して結合する傾向がある。ブロックコポリマーの存在はしたがって、異なるモノマーの相分離の防止を巨視的規模で補助する。
【0120】
図3は、Tbchmaが豊富な領域及びPEA6が豊富な領域に関して、考えられるブロックコポリマーの異なる配置を示す。
図3の1行目では、ジブロックコポリマーの分子(不規則な曲線として概略図の形態で示す)が示され、ジブロックコポリマーの1つのブロックは、Tbchmaが豊富な領域への親和性を有し、もう一方のブロックは、PEA6が豊富な領域への親和性を有する。
図3の2行目では、トリブロック(A-B-A)コポリマーの分子が示され、中央ブロックは、PEA6が豊富な領域への親和性を有し、一方、2つの末端ブロックはTbchmaが豊富な領域への親和性を有し、それによって中央Bブロックは、PEA6が豊富な領域中に伸びる「内側ループ」を形成する。
図3の3行目では、トリブロックコポリマー(B-A-B)が用いられ、それによって中央AブロックがTbchmaが豊富な領域へのより高い親和性を有し、末端BブロックがPEA6が豊富な領域へのより高い親和性を有する結果として、Tbchmaが豊富な領域に伸びる「外側ループ」が形成される。
【0121】
図2は、
図1の一番下の行で示される本発明に従う実施形態に関して、さらなる情報を有する。特に、
図2の3列目は、好適なブロックコポリマーの存在下でTbcmaモノマー及びPEA6モノマーが混合されるときに、マイクロスケール(200nm~500nm)で起こる、領域形成の考えられる三次元形態を、概略的に示す。
図2は、一方のモノマーのマトリックス中で、別のモノマーの1つにより形成された相互接続された格子を示す。本出願の他の部分で説明されるように、第1及び第2の反応性成分の相対量、第1及び第2の反応性成分で使用するために選択されたモノマーの種類、選択されたブロックコポリマーの種類、並びにその他の要因などの変更によって達成される特定のモルフォロジーなど、その他のモルフォロジーも可能である。