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  • 特許-液晶表示素子用シール剤 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-25
(45)【発行日】2025-05-08
(54)【発明の名称】液晶表示素子用シール剤
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/1339 20060101AFI20250428BHJP
   C09K 3/10 20060101ALI20250428BHJP
【FI】
G02F1/1339 505
C09K3/10 B
C09K3/10 E
C09K3/10 L
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2023565442
(86)(22)【出願日】2023-08-24
(86)【国際出願番号】 JP2023030461
(87)【国際公開番号】W WO2024043302
(87)【国際公開日】2024-02-29
【審査請求日】2024-03-13
(31)【優先権主張番号】P 2022134265
(32)【優先日】2022-08-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】大浦 剛
【審査官】岩村 貴
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-206997(JP,A)
【文献】特開2007-219039(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0232726(US,A1)
【文献】特開2018-022055(JP,A)
【文献】国際公開第2018/124023(WO,A1)
【文献】特開2022-092916(JP,A)
【文献】国際公開第2004/027502(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/1339
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化性樹脂と熱ラジカル重合開始剤と有機フィラーと無機フィラーとを含有し、光硬化性及び熱硬化性を有する液晶表示素子用シール剤であって、
前記硬化性樹脂は、エポキシ化合物及び(メタ)アクリル化合物を含み、
前記エポキシ化合物と前記有機フィラーとの合計の含有量が、前記硬化性樹脂全体の含有量の1/3以上であり、
前記有機フィラーの含有量が前記無機フィラーの含有量の1.5倍以上であり、
未硬化の前記液晶表示素子用シール剤に対して、高圧水銀ランプにて波長300から500nm、照度100mW/cm の紫外線を30秒照射する光硬化工程を行った際、未硬化の前記液晶表示素子用シール剤に対する該光硬化工程後の前記液晶表示素子用シール剤の25℃における収縮率が3.5%以下であり、
前記光硬化工程後、前記液晶表示素子用シール剤を昇温速度10℃/minで130℃まで昇温し、更に、130℃で60分間加熱する熱硬化工程を行った際、未硬化の前記液晶表示素子用シール剤に対する該熱硬化工程中の前記液晶表示素子用シール剤の最大膨張率が1.5%以上4%未満であり、かつ、
前記光硬化工程後に前記熱硬化工程を行った際、前記熱硬化工程中において前記液晶表示素子用シール剤が最大膨張率を示した時点から前記熱硬化工程終了までの期間における前記液晶表示素子用シール剤の収縮率が0.1%以上であり、
前記光硬化工程後に前記熱硬化工程を行った際、前記熱硬化工程後の硬化物のガラス転移温度が80℃以上110℃以下であることを特徴とする液晶表示素子用シール剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示素子用シール剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶表示セル等の液晶表示素子の製造方法としては、タクトタイム短縮、使用液晶量の最適化といった観点から、特許文献1、特許文献2に開示されているような、硬化性樹脂組成物をシール剤として用いた滴下工法と呼ばれる方式が用いられている。
滴下工法では、まず、2枚の電極付き基板の一方にシール剤を塗布し、枠状のシールパターンを形成する。次いで、シール剤が未硬化の状態で液晶の微小滴を基板のシール枠内に滴下し、真空下で他方の基板を重ね合わせ、光照射や加熱によりシール剤を硬化させ、液晶表示素子を作製する。現在この滴下工法が液晶表示素子の製造方法の主流となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2001-133794号公報
【文献】国際公開第02/092718号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
通常、液晶表示素子は、マザーガラス上で複数のセルを一括に形成した後、それぞれを分断することにより製造されている。近年、マザーガラスの大型化が進んでおり、1枚のマザーガラスにシール剤が高密度に塗布されている。その結果、基板に反りが生じ、接着性に優れるシール剤を用いた場合でも該シール剤が生じた反りに追従できず、基板に剥がれが生じやすくなっている。特に、光硬化工程と該光硬化工程後の熱硬化工程にてシール剤を硬化させる場合、光硬化工程後の基板間に生じる歪みによる応力や、熱硬化工程におけるセルの加熱炉内への輸送や加熱炉内の振動等により、基板に剥がれが生じることがあった。また、液晶表示素子には高温高湿環境下での駆動等における高度な信頼性も要求されており、シール剤もこれに対応して高温高湿環境下でも接着性に優れ、外部環境の変化に対し歪みや欠陥が少ない性能を有するものが求められていた。
本発明は、接着性に優れ、大型のマザーガラスに高密度に塗布した場合でも基板の剥がれを抑制することができる液晶表示素子用シール剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示1は、硬化性樹脂と有機フィラーとを含有し、光硬化性及び熱硬化性を有する液晶表示素子用シール剤であって、未硬化の上記液晶表示素子用シール剤に対して、高圧水銀ランプにて波長300から500nm、照度100mW/cmの紫外線を30秒照射する光硬化工程を行った際、未硬化の上記液晶表示素子用シール剤に対する該光硬化工程後の上記液晶表示素子用シール剤の25℃における収縮率が3.5%以下であり、上記光硬化工程後、上記液晶表示素子用シール剤を昇温速度10℃/minで130℃まで昇温し、更に、130℃で60分間加熱する熱硬化工程を行った際、未硬化の上記液晶表示素子用シール剤に対する該熱硬化工程中の上記液晶表示素子用シール剤の最大膨張率が1.5%以上4%未満であり、かつ、上記光硬化工程後に上記熱硬化工程を行った際、上記熱硬化工程中において上記液晶表示素子用シール剤が最大膨張率を示した時点から上記熱硬化工程終了までの期間における上記液晶表示素子用シール剤の収縮率が0.1%以上である液晶表示素子用シール剤である。
本開示2は、上記硬化性樹脂は、エポキシ化合物及び(メタ)アクリル化合物を含む本開示1の液晶表示素子用シール剤である。
本開示3は、上記エポキシ化合物と上記有機フィラーとの合計の含有量が、上記硬化性樹脂全体の含有量の1/3以上である本開示2の液晶表示素子用シール剤である。
本開示4は、更に、無機フィラーを含有し、上記有機フィラーの含有量が上記無機フィラーの含有量以上である本開示1、2又は3の液晶表示素子用シール剤である。
本開示5は、更に、熱ラジカル重合開始剤を含有する本開示1、2、3又は4の液晶表示素子用シール剤である。
本開示6は、上記光硬化工程後に上記熱硬化工程を行った際、上記熱硬化工程後の硬化物のガラス転移温度が80℃以上110℃以下である本開示1、2、3、4又は5の液晶表示素子用シール剤である。
以下に本発明を詳述する。
【0006】
本発明者は、光硬化工程におけるシール剤の収縮率、該光硬化工程後の熱硬化工程中のシール剤の最大膨張率、及び、熱硬化工程におけるシール剤の収縮率が基板に対する追従性に大きく影響するものと考えた。そこで、本発明者は、これらの値を特定の範囲に調整することにより、接着性に優れ、大型のマザーガラスに高密度に塗布した場合でも基板の剥がれを抑制することができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0007】
本発明の液晶表示素子用シール剤は、光硬化性及び熱硬化性を有する。
本発明の液晶表示素子用シール剤は、未硬化の上記液晶表示素子用シール剤に対して、高圧水銀ランプにて波長300から500nm、照度100mW/cmの紫外線を30秒照射する光硬化工程を行った際、未硬化の上記液晶表示素子用シール剤に対する該光硬化工程後の上記液晶表示素子用シール剤の25℃における収縮率(以下、「光硬化工程における収縮率」ともいう)が3.5%以下であり、上記光硬化工程後、上記液晶表示素子用シール剤を昇温速度10℃/minで130℃まで昇温し、更に、130℃で60分間加熱する熱硬化工程を行った際、未硬化の上記液晶表示素子用シール剤に対する該熱硬化工程中の上記液晶表示素子用シール剤の最大膨張率(以下、「熱硬化工程中の最大膨張率」ともいう)が1.5%以上4%未満であり、かつ、上記光硬化工程後に上記熱硬化工程を行った際、上記熱硬化工程中において上記液晶表示素子用シール剤が最大膨張率を示した時点から上記熱硬化工程終了までの期間における上記液晶表示素子用シール剤の収縮率(以下、「熱硬化工程における収縮率」ともいう)が0.1%以上である。上記光硬化工程における収縮率が3.5%以下であり、上記熱硬化工程中の最大膨張率が1.5%以上4%未満であり、かつ、上記熱硬化工程における収縮率が0.1%以上であることにより、本発明の液晶表示素子用シール剤は、接着性に優れ、大型のマザーガラスに高密度に塗布した場合でも基板の剥がれを抑制することができるものとなる。
上記光硬化工程における収縮率の好ましい上限は2.7%、より好ましい上限は2.2%である。また、上記光硬化工程における収縮率は低いほど好ましいが、実質的な下限は1.0%である。
上記熱硬化工程中の最大膨張率の好ましい下限は2.0%、より好ましい下限は3.0%である。
上記熱硬化工程における収縮率の好ましい下限は0.5%である。また、上記熱硬化工程における収縮率の好ましい上限は2.5%、より好ましい上限は1.5%である。
上記光硬化工程における収縮率、上記熱硬化工程中の最大膨張率、及び、上記熱硬化工程における収縮率は、JIS K 6941に準拠して、樹脂硬化収縮物測定装置を用いて測定することができる。上記樹脂硬化収縮物測定装置としては、Custron(アクロエッジ社製)を用いることができる。
図1に、液晶表示素子用シール剤における各工程と収縮率又は膨張率との関係の例を表したグラフを示す。図1では、光照射工程開始から収縮が進み、光硬化工程後に体積減少率が1.8%上昇している、即ち、光硬化工程における収縮率が1.8%となっていることが分かる。また、熱硬化工程が開始すると膨張が進み、体積減少率が-3.1%まで低下している、即ち、熱硬化工程中の最大膨張率が3.1%となっていることが分かる。その後、収縮が進み、最大膨張率を示した時点から熱硬化工程終了までの期間において、体積減少率が1.2%上昇している、即ち、熱硬化工程における収縮率が1.2%となっていることが分かる。
【0008】
本発明の液晶表示素子用シール剤は、上記光硬化工程後に上記熱硬化工程を行った際、上記熱硬化工程後の硬化物のガラス転移温度の好ましい下限が80℃、好ましい上限が110℃である。上記硬化物のガラス転移温度が80℃以上であることにより、本発明の液晶表示素子用シール剤を用いて得られる液晶表示素子が信頼性により優れるものとなる。上記硬化物のガラス転移温度が110℃以下であることにより、本発明の液晶表示素子用シール剤は、接着性により優れるものとなる。上記硬化物のガラス転移温度のより好ましい下限は90℃、より好ましい上限は100℃である。
なお、上記硬化物のガラス転移温度は、動的粘弾性測定装置を用いて、-80~200℃、10Hzにおいて動的粘弾性を測定した際の、損失正接(tanδ)の極大値の温度として得ることができる。
【0009】
上記硬化性樹脂は、エポキシ化合物及び(メタ)アクリル化合物を含むことが好ましい。上記エポキシ化合物及び上記(メタ)アクリル化合物を、後述する光ラジカル重合開始剤や熱ラジカル重合開始剤や熱硬化剤と組み合わせて用いることで、得られる液晶表示素子用シール剤を光硬化性及び熱硬化性に優れるものとすることができる。
なお、本明細書において、上記「(メタ)アクリル」とは、アクリル又はメタクリルを意味する。
【0010】
上記エポキシ化合物としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、ビスフェノールE型エポキシ化合物、ビスフェノールS型エポキシ化合物、2,2’-ジアリルビスフェノールA型エポキシ化合物、水添ビスフェノール型エポキシ化合物、プロピレンオキシド付加ビスフェノールA型エポキシ化合物、レゾルシノール型エポキシ化合物、ビフェニル型エポキシ化合物、スルフィド型エポキシ化合物、ジフェニルエーテル型エポキシ化合物、ジシクロペンタジエン型エポキシ化合物、ナフタレン型エポキシ化合物、フェノールノボラック型エポキシ化合物、オルトクレゾールノボラック型エポキシ化合物、ジシクロペンタジエンノボラック型エポキシ化合物、ビフェニルノボラック型エポキシ化合物、ナフタレンフェノールノボラック型エポキシ化合物、グリシジルアミン型エポキシ化合物、アルキルポリオール型エポキシ化合物、ゴム変性型エポキシ化合物、グリシジルエステル化合物等が挙げられる。
【0011】
上記ビスフェノールA型エポキシ化合物のうち市販されているものとしては、例えば、jER828EL、jER1004(いずれも三菱ケミカル社製)、EPICLON EXA-850CRP(DIC社製)等が挙げられる。
上記ビスフェノールF型エポキシ化合物のうち市販されているものとしては、例えば、jER806、jER4004(いずれも三菱ケミカル社製)、EPICLON EXA-830CRP(DIC社製)等が挙げられる。
上記ビスフェノールE型エポキシ化合物のうち市販されているものとしては、例えば、エポミックR710(三井化学社製)等が挙げられる。
上記ビスフェノールS型エポキシ化合物のうち市販されているものとしては、例えば、EPICLON EXA-1514(DIC社製)等が挙げられる。
上記2,2’-ジアリルビスフェノールA型エポキシ化合物のうち市販されているものとしては、例えば、RE-810NM(日本化薬社製)等が挙げられる。
上記水添ビスフェノール型エポキシ化合物のうち市販されているものとしては、例えば、EPICLON EXA-7015(DIC社製)等が挙げられる。
上記プロピレンオキシド付加ビスフェノールA型エポキシ化合物のうち市販されているものとしては、例えば、EP-4000S(ADEKA社製)等が挙げられる。
上記レゾルシノール型エポキシ化合物のうち市販されているものとしては、例えば、EX-201(ナガセケムテックス社製)等が挙げられる。
上記ビフェニル型エポキシ化合物のうち市販されているものとしては、例えば、jER YX-4000H(三菱ケミカル社製)等が挙げられる。
上記スルフィド型エポキシ化合物のうち市販されているものとしては、例えば、YSLV-50TE(日鉄ケミカル&マテリアル社製)等が挙げられる。
上記ジフェニルエーテル型エポキシ化合物のうち市販されているものとしては、例えば、YSLV-80DE(日鉄ケミカル&マテリアル社製)等が挙げられる。
上記ジシクロペンタジエン型エポキシ化合物のうち市販されているものとしては、例えば、EP-4088S(ADEKA社製)等が挙げられる。
上記ナフタレン型エポキシ化合物のうち市販されているものとしては、例えば、EPICLON HP-4032、EPICLON EXA-4700(いずれもDIC社製)等が挙げられる。
上記フェノールノボラック型エポキシ化合物のうち市販されているものとしては、例えば、EPICLON N-770(DIC社製)等が挙げられる。
上記オルトクレゾールノボラック型エポキシ化合物のうち市販されているものとしては、例えば、EPICLON N-670-EXP-S(DIC社製)等が挙げられる。
上記ジシクロペンタジエンノボラック型エポキシ化合物のうち市販されているものとしては、例えば、EPICLON HP-7200(DIC社製)等が挙げられる。
上記ビフェニルノボラック型エポキシ化合物のうち市販されているものとしては、例えば、NC-3000P(日本化薬社製)等が挙げられる。
上記ナフタレンフェノールノボラック型エポキシ化合物のうち市販されているものとしては、例えば、ESN-165S(日鉄ケミカル&マテリアル社製)等が挙げられる。
上記グリシジルアミン型エポキシ化合物のうち市販されているものとしては、例えば、jER630(三菱ケミカル社製)、EPICLON430(DIC社製)、TETRAD-X(三菱ガス化学社製)等が挙げられる。
上記アルキルポリオール型エポキシ化合物のうち市販されているものとしては、例えば、ZX-1542(日鉄ケミカル&マテリアル社製)、EPICLON726(DIC社製)、エポライト80MFA(共栄社化学社製)、デナコールEX-611(ナガセケムテックス社製)等が挙げられる。
上記ゴム変性型エポキシ化合物のうち市販されているものとしては、例えば、YR-450、YR-207(いずれも日鉄ケミカル&マテリアル社製)、エポリードPB(ダイセル社製)等が挙げられる。
上記グリシジルエステル化合物のうち市販されているものとしては、例えば、デナコールEX-147(ナガセケムテックス社製)等が挙げられる。
上記エポキシ化合物のうちその他に市販されているものとしては、例えば、YDC-1312、YSLV-80XY、YSLV-90CR(いずれも日鉄ケミカル&マテリアル社製)、XAC4151(旭化成社製)、jER1031、jER1032(いずれも三菱ケミカル社製)、EXA-7120(DIC社製)、TEPIC(日産化学社製)等が挙げられる。
【0012】
上記エポキシ化合物としては、部分(メタ)アクリル変性エポキシ化合物も好適に用いられる。
なお、本明細書において上記部分(メタ)アクリル変性エポキシ化合物とは、2つ以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物の一部分のエポキシ基を(メタ)アクリル酸と反応させることによって得ることができる、1分子中にエポキシ基と(メタ)アクリロイル基とをそれぞれ1つ以上有する化合物を意味する。即ち、上記部分(メタ)アクリル変性エポキシ化合物は、(メタ)アクリロイル基を有するものであるが、上記エポキシ化合物として扱う。
なお、本明細書において、上記「(メタ)アクリロイル」とは、アクリロイル又はメタクリロイルを意味する。
【0013】
上記部分(メタ)アクリル変性エポキシ化合物のうち市販されているものとしては、例えば、UVACURE1561、KRM8287(いずれもダイセル・オルネクス社製)等が挙げられる。
【0014】
上記(メタ)アクリル化合物としては、例えば、(メタ)アクリル酸エステル化合物、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート等が挙げられる。なかでも、エポキシ(メタ)アクリレートが好ましい。また、上記(メタ)アクリル化合物は、反応性の観点から1分子中に(メタ)アクリロイル基を2個以上有するものが好ましい。
なお、本明細書において、上記「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート又はメタクリレートを意味し、上記「エポキシ(メタ)アクリレート」とは、エポキシ化合物中の全てのエポキシ基を(メタ)アクリル酸と反応させた化合物のことを表す。
【0015】
上記(メタ)アクリル酸エステル化合物のうち単官能のものとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ビシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、2-エトキシエチル(メタ)アクリレート、2-ブトキシエチル(メタ)アクリレート、2-フェノキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、2,2,2-トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3-テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、1H,1H,5H-オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、イミド(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイロキシエチルこはく酸、2-(メタ)アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2-(メタ)アクリロイロキシエチル2-ヒドロキシプロピルフタレート、2-(メタ)アクリロイロキシエチルホスフェート、グリシジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0016】
また、上記(メタ)アクリル酸エステル化合物のうち2官能のものとしては、例えば、1,3-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、2-n-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド付加ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド付加ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド付加ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、ジメチロールジシクロペンタジエニルジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性イソシアヌル酸ジ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-(メタ)アクリロイロキシプロピル(メタ)アクリレート、カーボネートジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエーテルジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエステルジオールジ(メタ)アクリレート、ポリカプロラクトンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリブタジエンジオールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0017】
また、上記(メタ)アクリル酸エステル化合物のうち3官能以上のものとしては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド付加トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド付加トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド付加イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド付加グリセリントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリス(メタ)アクリロイルオキシエチルフォスフェート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0018】
上記エポキシ(メタ)アクリレートとしては、例えば、エポキシ化合物と(メタ)アクリル酸とを、常法に従って塩基性触媒の存在下で反応させることにより得られるもの等が挙げられる。
【0019】
上記エポキシ(メタ)アクリレートを合成するための原料となるエポキシ化合物としては、本発明の液晶表示素子用シール剤の含有する硬化性樹脂として上述したエポキシ化合物と同様のものを用いることができる。
【0020】
上記エポキシ(メタ)アクリレートのうち市販されているものとしては、例えば、ダイセル・オルネクス社製のエポキシ(メタ)アクリレート、新中村化学工業社製のエポキシ(メタ)アクリレート、共栄社化学社製のエポキシ(メタ)アクリレート、ナガセケムテックス社製のエポキシ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
上記ダイセル・オルネクス社製のエポキシ(メタ)アクリレートとしては、例えば、EBECRYL860、EBECRYL3200、EBECRYL3201、EBECRYL3412、EBECRYL3600、EBECRYL3700、EBECRYL3701、EBECRYL3702、EBECRYL3703、EBECRYL3708、EBECRYL3800、EBECRYL6040、EBECRYL KRM7985、EBECRYL RDX63182等が挙げられる。
上記新中村化学工業社製のエポキシ(メタ)アクリレートとしては、例えば、EA-1010、EA-1020、EA-5323、EA-5520、EA-CHD、EMA-1020等が挙げられる。
上記共栄社化学社製のエポキシ(メタ)アクリレートとしては、例えば、エポキシエステルM-600A、エポキシエステル40EM、エポキシエステル70PA、エポキシエステル200PA、エポキシエステル80MFA、エポキシエステル3002M、エポキシエステル3002A、エポキシエステル1600A、エポキシエステル3000M、エポキシエステル3000A、エポキシエステル200EA、エポキシエステル400EA等が挙げられる。
上記ナガセケムテックス社製のエポキシ(メタ)アクリレートとしては、例えば、デナコールアクリレートDA-141、デナコールアクリレートDA-314、デナコールアクリレートDA-911等が挙げられる。
【0021】
上記ウレタン(メタ)アクリレートは、例えば、イソシアネート化合物に対して水酸基を有する(メタ)アクリル酸誘導体を、触媒量のスズ系化合物存在下で反応させることによって得ることができる。
【0022】
上記ウレタン(メタ)アクリレートの原料となるイソシアネート化合物としては、例えば、イソホロンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート(MDI)、水添MDI、ポリメリックMDI、1,5-ナフタレンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、水添XDI、リジンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、トリス(イソシアネートフェニル)チオフォスフェート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、1,6,11-ウンデカントリイソシアネート等が挙げられる。
【0023】
また、上記ウレタン(メタ)アクリレートの原料となるイソシアネート化合物としては、ポリオールと過剰のイソシアネート化合物との反応により得られる鎖延長されたイソシアネート化合物も使用することができる。
上記ポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ソルビトール、トリメチロールプロパン、カーボネートジオール、ポリエーテルジオール、ポリエステルジオール、ポリカプロラクトンジオール等が挙げられる。
【0024】
上記水酸基を有する(メタ)アクリル酸誘導体としては、例えば、ヒドロキシアルキルモノ(メタ)アクリレート、二価のアルコールのモノ(メタ)アクリレート、三価のアルコールのモノ(メタ)アクリレート又はジ(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
上記ヒドロキシアルキルモノ(メタ)アクリレートとしては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
上記二価のアルコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、ポリエチレングリコール等が挙げられる。
上記三価のアルコールとしては、例えば、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセリン等が挙げられる。
上記エポキシ(メタ)アクリレートとしては、例えば、ビスフェノールA型エポキシアクリレート等が挙げられる。
【0025】
上記ウレタン(メタ)アクリレートのうち市販されているものとしては、例えば、東亞合成社製のウレタン(メタ)アクリレート、ダイセル・オルネクス社製のウレタン(メタ)アクリレート、根上工業社製のウレタン(メタ)アクリレート、新中村化学工業社製のウレタン(メタ)アクリレート、共栄社化学社製のウレタン(メタ)アクリレート等が挙げられる。
上記東亞合成社製のウレタン(メタ)アクリレートとしては、例えば、M-1100、M-1200、M-1210、M-1600等が挙げられる。
上記ダイセル・オルネクス社製のウレタン(メタ)アクリレートとしては、例えば、EBECRYL210、EBECRYL220、EBECRYL230、EBECRYL270、EBECRYL1290、EBECRYL2220、EBECRYL4827、EBECRYL4842、EBECRYL4858、EBECRYL5129、EBECRYL6700、EBECRYL8402、EBECRYL8803、EBECRYL8804、EBECRYL8807、EBECRYL9260等が挙げられる。
上記根上工業社製のウレタン(メタ)アクリレートとしては、例えば、アートレジンUN-330、アートレジンSH-500B、アートレジンUN-1200TPK、アートレジンUN-1255、アートレジンUN-3320HB、アートレジンUN-7100、アートレジンUN-9000A、アートレジンUN-9000H等が挙げられる。
上記新中村化学工業社製のウレタン(メタ)アクリレートとしては、例えば、U-2HA、U-2PHA、U-3HA、U-4HA、U-6H、U-6HA、U-6LPA、U-10H、U-15HA、U-108、U-108A、U-122A、U-122P、U-324A、U-340A、U-340P、U-1084A、U-2061BA、UA-340P、UA-4000、UA-4100、UA-4200、UA-4400、UA-5201P、UA-7100、UA-7200、UA-W2A等が挙げられる。
上記共栄社化学社製のウレタン(メタ)アクリレートとしては、例えば、AH-600、AI-600、AT-600、UA-101I、UA-101T、UA-306H、UA-306I、UA-306T等が挙げられる。
【0026】
上記硬化性樹脂中のエポキシ基と(メタ)アクリロイル基との合計中における(メタ)アクリロイル基の比率は、30モル%以上95モル%以下であることが好ましい。上記(メタ)アクリロイル基の比率がこの範囲であることにより、得られる液晶表示素子用シール剤が接着性及び低液晶汚染性により優れるものとなる。
【0027】
上記硬化性樹脂は、液晶汚染をより抑制する観点から、-OH基、-NH-基、-NH基等の水素結合性のユニットを有するものが好ましい。
【0028】
本発明の液晶表示素子用シール剤100質量部中における上記硬化性樹脂全体の含有量の好ましい下限は50質量部、好ましい上限は90質量部である。上記硬化性樹脂全体の含有量がこの範囲であることにより、得られる液晶表示素子用シール剤が硬化性や接着性により優れるものとなる。上記硬化性樹脂全体の含有量のより好ましい下限は60質量部、より好ましい上限は80質量部である。
【0029】
本発明の液晶表示素子用シール剤は、有機フィラーを含有する。
上記有機フィラーとしては、例えば、ポリエステル微粒子、ポリウレタン微粒子、ビニル重合体微粒子、(メタ)アクリル重合体微粒子等が挙げられる。また、上記有機フィラーは、コアシェル構造を有していてもよい。
【0030】
上記有機フィラーの平均粒子径の好ましい下限は0.1μm、好ましい上限は0.8μmである。上記有機フィラーの平均粒子径がこの範囲であることにより、塗布性等を維持しつつ、上記光硬化工程における収縮率、上記熱硬化工程中の最大膨張率、及び、上記熱硬化工程における収縮率を上述した範囲に調整することがより容易となる。上記有機フィラーの平均粒子径のより好ましい上限は0.5μmである。
なお、上記有機フィラーの平均粒子径は、例えば、粒度分布測定装置を用いて、上記有機フィラーを溶媒(水、有機溶媒等)に分散させて測定することができる。上記粒度分布測定装置としては、例えば、NICOMP 380ZLS(PARTICLE SIZING SYSTEMS社製)等が挙げられる。
【0031】
本発明の液晶表示素子用シール剤100質量部中における上記有機フィラーの含有量の好ましい下限は1質量部、好ましい上限は40質量部である。上記有機フィラーの含有量がこの範囲であることにより、塗布性等を維持しつつ、上記光硬化工程における収縮率、上記熱硬化工程中の最大膨張率、及び、上記熱硬化工程における収縮率を上述した範囲に調整することがより容易となる。上記有機フィラーの含有量のより好ましい下限は10質量部、より好ましい上限は30質量部である。
また、本発明の液晶表示素子用シール剤は、上記エポキシ化合物と上記有機フィラーとの合計の含有量が、上記硬化性樹脂全体の含有量の1/3以上であることが好ましい。上記エポキシ化合物と上記有機フィラーとの合計の含有量が、上記硬化性樹脂全体の含有量の1/3以上であることにより、上記光硬化工程における収縮率、上記熱硬化工程中の最大膨張率、及び、上記熱硬化工程における収縮率を上述した範囲に調整することがより容易となる。上記エポキシ化合物と上記有機フィラーとの合計の含有量が、上記硬化性樹脂全体の含有量の1/2以上であることがより好ましい。
更に、本発明の液晶表示素子用シール剤が後述する無機フィラーを含有する場合、上記有機フィラーの含有量は、上記無機フィラーの含有量以上であることが好ましい。上記有機フィラーの含有量が上記無機フィラーの含有量以上であることにより、上記光硬化工程における収縮率、上記熱硬化工程中の最大膨張率、及び、上記熱硬化工程における収縮率を上述した範囲に調整することがより容易となる。上記有機フィラーの含有量は、上記無機フィラーの含有量の1.5倍以上であることがより好ましい。
【0032】
本発明の液晶表示素子用シール剤は、粘度の向上、応力分散効果による接着性の改善、線膨張率の改善等を目的として、上記有機フィラーに加えて無機フィラーを含有することが好ましい。
【0033】
上記無機フィラーとしては、例えば、シリカ、タルク、ガラスビーズ、石綿、石膏、珪藻土、スメクタイト、ベントナイト、モンモリロナイト、セリサイト、活性白土、アルミナ、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化マグネシウム、酸化錫、酸化チタン、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、窒化珪素、硫酸バリウム、珪酸カルシウム等が挙げられる。
【0034】
本発明の液晶表示素子用シール剤100質量部中における上記無機フィラーの含有量の好ましい下限は1質量部、好ましい上限は30質量部である。上記無機フィラーの含有量がこの範囲であることにより、塗布性等を維持しつつ、接着性の改善等の効果により優れるものとなる。上記無機フィラーの含有量のより好ましい下限は5質量部、より好ましい上限は15質量部である。
【0035】
本発明の液晶表示素子用シール剤は、光ラジカル重合開始剤を含有することが好ましい。
上記光ラジカル重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン化合物、アセトフェノン化合物、アシルフォスフィンオキサイド化合物、チタノセン化合物、オキシムエステル化合物、ベンゾインエーテル化合物、チオキサントン化合物等が挙げられる。
上記光ラジカル重合開始剤としては、具体的には例えば、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-1-ブタノン、2-(ジメチルアミノ)-2-((4-メチルフェニル)メチル)-1-(4-(4-モルホリニル)フェニル)-1-ブタノン、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン、1-(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、1-(4-(フェニルチオ)フェニル)-1,2-オクタンジオン2-(O-ベンゾイルオキシム)、2-(アセトキシイミノ)-1-(4-(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニルチオ)フェニル)プロパン-1-オン、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,4-ジメチルチオキサンテン-9-オン等が挙げられる。
【0036】
上記光ラジカル重合開始剤の含有量は、上記硬化性樹脂100質量部に対して、好ましい下限が0.01質量部、好ましい上限が10質量部である。上記光ラジカル重合開始剤の含有量がこの範囲であることにより、得られる液晶表示素子用シール剤が保存安定性及び光硬化性により優れるものとなる。上記光ラジカル重合開始剤の含有量のより好ましい下限は0.1質量部、より好ましい上限は5質量部である。
【0037】
本発明の液晶表示素子用シール剤は、熱ラジカル重合開始剤を含有することが好ましい。上記熱ラジカル重合開始剤を用いることにより、上記熱硬化工程中の最大膨張率、及び、上記熱硬化工程における収縮率を上述した範囲に調整することがより容易となる。
【0038】
上記熱ラジカル重合開始剤としては、例えば、アゾ化合物、有機過酸化物等からなるものが挙げられる。なかでも、アゾ化合物が好ましい。
【0039】
上記アゾ化合物としては、例えば、アゾ基を介してポリアルキレンオキサイドやポリジメチルシロキサン等のユニットが複数結合した構造を有するものが挙げられる。
上記アゾ基を介してポリアルキレンオキサイド等のユニットが複数結合した構造を有するアゾ化合物としては、ポリエチレンオキサイド構造を有するものが好ましい。
上記アゾ化合物としては、具体的には例えば、4,4’-アゾビス(4-シアノ吉草酸)、4,4’-アゾビス(4-シアノペンタン酸)とポリアルキレングリコールとの重縮合物、4,4’-アゾビス(4-シアノペンタン酸)と末端アミノ基を有するポリジメチルシロキサンとの重縮合物等が挙げられる。
上記アゾ化合物のうち市販されているものとしては、例えば、VPE-0201、VPE-0401、VPE-0601、VPS-0501、VPS-1001、V-65、V-501(いずれも富士フイルム和光純薬社製)等が挙げられる。
【0040】
上記有機過酸化物としては、例えば、ケトンパーオキサイド、パーオキシケタール、ハイドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、パーオキシエステル、ジアシルパーオキサイド、パーオキシジカーボネート等が挙げられる。
【0041】
上記熱ラジカル重合開始剤の含有量は、上記硬化性樹脂100質量部に対して、好ましい下限が0.01質量部、好ましい上限が10質量部である。上記熱ラジカル重合開始剤の含有量がこの範囲であることにより、上記熱硬化工程中の最大膨張率、及び、上記熱硬化工程における収縮率を上述した範囲に調整することがより容易となる。上記熱ラジカル重合開始剤の含有量のより好ましい下限は0.1質量部、より好ましい上限は5質量部である。
【0042】
本発明の液晶表示素子用シール剤は、熱硬化剤を含有することが好ましい。
上記熱硬化剤としては、例えば、有機酸ヒドラジド、イミダゾール誘導体、アミン化合物、多価フェノール系化合物、酸無水物等が挙げられる。なかでも、有機酸ヒドラジドが好適に用いられる。
【0043】
上記有機酸ヒドラジドとしては、例えば、セバシン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド等が挙げられる。
上記有機酸ヒドラジドのうち市販されているものとしては、例えば、大塚化学社製の有機酸ヒドラジド、味の素ファインテクノ社製の有機酸ヒドラジド等が挙げられる。
上記大塚化学社製の有機酸ヒドラジドとしては、例えば、SDH、ADH等が挙げられる。
上記味の素ファインテクノ社製の有機酸ヒドラジドとしては、例えば、アミキュアVDH、アミキュアVDH-J、アミキュアUDH、アミキュアUDH-J等が挙げられる。
【0044】
上記熱硬化剤の含有量は、上記硬化性樹脂100質量部に対して、好ましい下限が1質量部、好ましい上限が50質量部である。上記熱硬化剤の含有量がこの範囲であることにより、得られる液晶表示素子用シール剤が保存安定性や塗布性を維持しつつ、熱硬化性により優れるものとなる。上記熱硬化剤の含有量のより好ましい上限は30質量部である。
【0045】
本発明の液晶表示素子用シール剤は、シランカップリング剤を含有することが好ましい。上記シランカップリング剤は、主に液晶表示素子用シール剤と基板等とを良好に接着するための接着助剤としての役割を有する。
上記シランカップリング剤としては、例えば、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等が好適に用いられる。
【0046】
本発明の液晶表示素子用シール剤100質量部中における上記シランカップリング剤の含有量の好ましい下限は0.1質量部、好ましい上限は10質量部である。上記シランカップリング剤の含有量がこの範囲であることにより、得られる液晶表示素子用シール剤が液晶汚染の発生を抑制しつつ、接着性を向上させる効果により優れるものとなる。上記シランカップリング剤の含有量のより好ましい下限は0.3質量部、より好ましい上限は5質量部である。
【0047】
本発明の液晶表示素子用シール剤は、更に、必要に応じて、応力緩和剤、反応性希釈剤、硬化促進剤、消泡剤、レベリング剤、重合禁止剤等の添加剤を含有してもよい。
【0048】
本発明の液晶表示素子用シール剤を製造する方法としては、例えば、混合機を用いて、硬化性樹脂と、有機フィラーと、光ラジカル重合開始剤等の他の成分とを混合する方法等が挙げられる。
上記混合機としては、例えば、ホモディスパー、ホモミキサー、万能ミキサー、プラネタリーミキサー、ニーダー、3本ロール等が挙げられる。
【0049】
また、本発明の液晶表示素子用シール剤に導電性微粒子を配合することにより、上下導通材料を製造することができる。
上記導電性微粒子としては、金属ボール、樹脂微粒子の表面に導電金属層を形成したもの等を用いることができる。なかでも、樹脂微粒子の表面に導電金属層を形成したものは、樹脂微粒子の優れた弾性により、透明基板等を損傷することなく導電接続が可能であることから好適である。
【0050】
本発明の液晶表示素子用シール剤を用いて液晶表示素子を製造する方法としては、液晶滴下工法が好適に用いられ、具体的には例えば、以下の各工程を有する方法等が挙げられる。
まず、ITO薄膜等の電極を有する2枚の透明基板の一方に、本発明の液晶表示素子用シール剤をスクリーン印刷、ディスペンサー塗布等により塗布して枠状のシールパターンを形成する工程を行う。次いで、液晶の微小滴をシールパターンの枠内全面に滴下塗布し、真空下で他方の透明基板を重ね合わせる工程を行う。その後、シールパターン部分に紫外線等の光を照射してシール剤を仮硬化させる工程(光硬化工程)、及び、仮硬化させたシール剤を加熱して本硬化させる工程(熱硬化工程)を行う方法により、液晶表示素子を得ることができる。
【0051】
本発明の液晶表示素子用シール剤は、大型のマザーガラスに高密度に塗布した場合でも基板の剥がれを抑制することができるため、特に、所謂第8世代以降の2200mm×2400mmや2160mm×2460mm以上の大きさのマザーガラスに塗布する場合に好適に用いることができる。
【発明の効果】
【0052】
本発明によれば、接着性に優れ、大型のマザーガラスに高密度に塗布した場合でも基板の剥がれを抑制することができる液晶表示素子用シール剤を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
図1】液晶表示素子用シール剤における各工程と収縮率又は膨張率との関係の例を表したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0054】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されない。
【0055】
(実施例1~8、10~13、15、21、23、参考例9、14、16~20、22、24、25、比較例1~5)
表1~3に記載された配合比に従い、各材料を、遊星式撹拌装置にて撹拌した後、セラミック3本ロールにて均一に混合して実施例1~8、10~13、15、21、23、参考例9、14、16~20、22、24、25、比較例1~5の液晶表示素子用シール剤を得た。遊星式撹拌装置としては、あわとり練太郎(シンキー社製)を用いた。
【0056】
(光硬化工程における収縮率、熱硬化工程中の最大膨張率、及び、熱硬化工程における収縮率)
得られた液晶表示素子用シール剤について、JIS K 6941に準拠して、樹脂硬化収縮物測定装置を用いて、上記光硬化工程における収縮率、上記熱硬化工程中の最大膨張率、及び、上記熱硬化工程における収縮率を測定した。上記樹脂硬化収縮物測定装置としては、Custron(アクロエッジ社製)を用いた。結果を表1~3に示した。
【0057】
(ガラス転移温度)
得られた各液晶表示素子用シール剤について、高圧水銀ランプを用いて340nm以下の光をカットするカットフィルター、照度100mW/cmの紫外線を30秒照射する光硬化工程を行った後、130℃で60分間加熱する熱硬化工程を行うことにより硬化物を得た。熱硬化工程後の硬化物について、動的粘弾性測定装置を用いて、試験片幅5mm、厚み0.35mm、掴み幅25mm、昇温速度10℃/分、温度範囲-80℃~200℃、周波数10Hzの条件で動的粘弾性を測定し、損失正接(tanδ)の極大値の温度をガラス転移温度として求めた。上記動的粘弾性測定装置としては、DVA-200(IT計測制御社製)を用いた。結果を表1~3に示した。
【0058】
<評価>
実施例、参考例、及び比較例で得られた各液晶表示素子用シール剤について以下の評価を行った。結果を表1~3に示した。
【0059】
(接着性(圧縮せん断接着強さ))
長さ45mm、幅25mm、厚さ0.7mmの2枚のITO基板の一方に、得られた液晶表示素子用シール剤を接着時の直径が3mmとなるように点打ちした。シール剤を点打ちしたITO基板にもう一方のITO基板を長手方向に10mmだけずらすようにして、シール剤を介して重ね合わせた。その後、高圧水銀ランプを用いて340nm以下をカットできるカットフィルターを介し、照度100mW/cmの紫外線を30秒照射した後、130℃で60分間加熱することによりシール剤を硬化させ、試験片を得た。得られた試験片について、オートグラフAGX(島津製作所社製)を用いて、JIS K 6852に準拠した方法により、25℃における圧縮せん断接着強さを測定した。
【0060】
【表1】
【0061】
【表2】
【0062】
【表3】
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明によれば、接着性に優れ、大型のマザーガラスに高密度に塗布した場合でも基板の剥がれを抑制することができる液晶表示素子用シール剤を提供することができる。
図1