(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-28
(45)【発行日】2025-05-09
(54)【発明の名称】活性エネルギー線硬化性組成物及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C08F 299/00 20060101AFI20250430BHJP
C09D 133/04 20060101ALI20250430BHJP
C09J 133/04 20060101ALI20250430BHJP
【FI】
C08F299/00
C09D133/04
C09J133/04
(21)【出願番号】P 2020216829
(22)【出願日】2020-12-25
【審査請求日】2023-12-12
(31)【優先権主張番号】P 2019237240
(32)【優先日】2019-12-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003034
【氏名又は名称】東亞合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091502
【氏名又は名称】井出 正威
(72)【発明者】
【氏名】望月 克信
(72)【発明者】
【氏名】荒野 明男
【審査官】横山 法緒
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-132760(JP,A)
【文献】特開2014-115538(JP,A)
【文献】特開2011-219759(JP,A)
【文献】特開2011-132288(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 299/00
C08F 290/00-290/14
C08F 6/00-246/00
C09D 133/04
C09J 133/04
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス転移温度(Tg)が-30~-90℃の不飽和二重結合含有オリゴマー(a2)(以下、「不飽和オリゴマー(a2)」という)で変性された(メタ)アクリレート系重合体(A)(以下、「成分(A)」という)を含む活性エネルギー線硬化性組成物
であって、
前記成分(A)が、反応性基を有しない(メタ)アクリレート系単量体(a1-1)に由来する構成単位と、反応性基を有する(メタ)アクリレート系単量体(a1-2)に由来する構成単位とを含む共重合体(a1)(以下、「共重合体(a1)」という)に、前記反応性基に反応する基と、エチレン性不飽和基とを有する不飽和オリゴマー(a2)を、前記反応性基を介して反応させた反応物であり、
前記成分(A)のアクリル当量が、1,400g/eq以下であり、
前記共重合体(a1)を構成する反応性基を有しない(メタ)アクリレート系単量体(a1-1)はアルキル(メタ)アクリレートを少なくとも含む、活性エネルギー線硬化性組成物。
【請求項2】
前記共重合体(a1)を構成する反応性基を有する(メタ)アクリレート系単量体(a1-2)が、エポキシ基、カルボキシル基、ヒドロキシル基及びイソシアネート基からなる群より選ばれた反応性基を有する(メタ)アクリレート系単量体である請求項
1に記載の活性エネルギー線硬化性組成物。
【請求項3】
前記成分(A)の重量平均分子量(Mw)が、3,000~50,000である、請求項
1又は2に記載の活性エネルギー線硬化性組成物。
【請求項4】
前記成分(A)において、前記不飽和オリゴマー(a2)が、開環カプロラクトン構造を含むオリゴマーである、請求項1~
3のいずれか1項に記載の活性エネルギー線硬化性組成物。
【請求項5】
さらに、成分(A)以外のエチレン性不飽和基を有する化合物(B)(以下、「成分(B)」という)を含む、請求項1~
4のいずれか1項に記載の活性エネルギー線硬化性組成物。
【請求項6】
さらに、光重合開始剤(C)(以下、「成分(C)」という)を含み、前記成分(A)の合計100重量部に対して、前記成分(B)を含む場合は、前記成分(A)及び前記成分(B)の合計100重量部に対して、前記成分(C)を1~20重量部含む、請求項1~
5のいずれか1項に記載の活性エネルギー線硬化性組成物。
【請求項7】
さらに、有機溶媒(D)(以下、「成分(D)」という)を含み、前記成分(A)の合計100重量部に対して、前記成分(B)を含む場合は、前記成分(A)及び成分(B)の合計100重量部に対して、前記成分(D)を150重量部以下含む、請求項1~
6のいずれか1項に記載の活性エネルギー線硬化性組成物。
【請求項8】
反応性基を有しない(メタ)アクリレート系単量体
(a1-1)に由来する構成単
位と、反応性基を有する(メタ)アクリレート系単量体(a1-2)に由来する構成単位と
を含む共重合体(a1)
(以下、「共重合体(a1)」という)に、前記
反応性基に反応する基と、エチレン性不飽和基とを有するガラス転移温度(Tg)が-30~-90℃の不飽和二重結合含有オリゴマー(a2)(以下、「不飽和オリゴマー(a2)
」という)を反応させて、前記共重合体(a1)に、前記反応性基を介して、前記不飽和オリゴマー(a2)を付加させ
た(メタ)アクリレート系重合体(A)(以下、「成分(A)」という)を得る工程を備える
活性エネルギー線硬化性組成物の製造方法において、
前記成分(A)のアクリル当量が、1,400g/eq以下であり、
前記共重合体(a1)を構成する反応性基を有しない(メタ)アクリレート系単量体(a1-1)はアルキル(メタ)アクリレートを少なくとも含む、
ことを特徴とする活性エネルギー線硬化性組成物の製造方法。
【請求項9】
前記共重合体(a1)を構成する反応性基を有する(メタ)アクリレート系単量体(a1-2)が、エポキシ基、カルボキシル基、ヒドロキシル基及びイソシアネート基からなる群より選ばれた反応性基を有する(メタ)アクリレート系単量体である請求項
8に記載の活性エネルギー線硬化性組成物の製造方法。
【請求項10】
請求項1~
7のいずれか1項に記載の活性エネルギー線硬化性組成物からなる、コーティング剤用活性エネルギー線硬化性組成物。
【請求項11】
請求項1~
7のいずれか1項に記載の活性エネルギー線硬化性組成物からなる、接着剤用活性エネルギー線硬化性組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた耐候性、耐熱性及び力学物性を兼ね備えた活性エネルギー線硬化性組成物であって、接着剤、コーティング材の他、インキ、フィルム等の原料として好適に使用できるものに関する。
【背景技術】
【0002】
活性エネルギー線硬化性組成物は、紫外線、可視光線及び電子線等の活性エネルギー線をごく短時間照射することで硬化可能であり、生産性が高いことから、インキ、コーティング材、接着剤等に幅広く用いられている。
【0003】
例えば、加飾フィルム用のトップコート剤の場合、硬化物の伸び率、強度が求められ、かつ屋外で使用される場合には、高い耐候性が求められる。
【0004】
上記トップコート剤として、特開2011-132288号では、側鎖に(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリル樹脂とウレタン(メタ)アクリレートとを含む組成物が提案されているが、伸び率を発現させるために、一定量以上のウレタンアクリレートを含有しているため、耐候性が不十分であるという問題があった。
【0005】
一方、偏光子保護フィルム等の光学フィルム形成用活性エネルギー線硬化型組成物として、特開2014-115538号では、側鎖にアクリロイル基を有し、アクリロイル基と主鎖が一定以上離れている(メタ)アクリレート系重合体を含む活性エネルギー線硬化型組成物が提案されている。しかし、この重合体の硬化物は、伸び率等の力学物性に優れているが、アクリル当量が2400g/eqよりも大きいため、耐候性が不十分であるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2011-132288号公報
【文献】特開2014-115538号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、力学物性、耐候性及び耐熱性に優れた硬化物を与える活性エネルギー線硬化性組成物を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、ガラス転移温度(以下、「Tg」という)が-30~-90℃の不飽和二重結合含有オリゴマーで、(メタ)アクリレート系重合体を変性してなる重合体を含む活性エネルギー線硬化性組成物が、前記課題を解決でき、接着剤、コーティング材、インキ、フィルム等の原料として好適に使用できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、本発明は、Tgが-30~-90℃の不飽和二重結合含有オリゴマー(a2)(以下、「不飽和オリゴマー(a2)」ともいう)で変性された(メタ)アクリレート系重合体(A)(以下、「成分(A)」ともいう)を含む活性エネルギー線硬化性組成物に関する。
本発明の好ましい実施形態によれば、前記成分(A)としては、反応性基を有しない(メタ)アクリレート系単量体に由来する構成単位(a1-1)と、反応性基を有する(メタ)アクリレート系単量体(a1-2)に由来する構成単位とを含む共重合体(a1)(以下、「共重合体(a1)」という)に、前記反応性基を介して、前記反応基に反応する基と、エチレン性不飽和基とを有する不飽和オリゴマー(a2)との反応物が好ましい。
さらに、前記成分(A)としては、前記共重合体(a1)を構成する反応性基を有する(メタ)アクリレート系単量体(a1-2)が、エポキシ基、カルボキシル基、ヒドロキシル基及びイソシアネート基からなる群より選ばれた反応性基を有する(メタ)アクリレート系単量体が好ましい。
本発明の他の好ましい実施形態によれば、前記成分(A)の重量平均分子量(Mw)は、3,000~50,000である。
本発明の他の好ましい実施形態によれば、前記成分(A)のアクリル当量は、2,500g/eq以下である。
本発明の他の好ましい実施形態によれば、前記成分(A)の不飽和オリゴマー(a2)は、構成単位として開環カプロラクトン構造を含む。
本発明の他の好ましい実施形態によれば、前記組成物は、さらに、成分(A)以外のエチレン性不飽和を有する化合物(B)(以下、「成分(B)」ともいう)を含む。
本発明の他の好ましい実施形態によれば、さらに、光重合開始剤(C)(以下、「成分(C)」ともいう)を含み、前記成分(A)の合計100重量部に対して、前記成分(B)を含む場合は、前記成分(A)及び前記成分(B)の合計100重量部に対して、前記成分(C)を1~20重量部含む。
本発明の他の好ましい実施形態によれば、前記組成物は、さらに、有機溶媒(D)(以下、「成分(D)」という)を含み、前記成分(A)の合計100重量部に対して、前記成分(B)を含む場合は、前記成分(A)及び前記成分(B)の合計100重量部に対して、前記成分(D)を150重量部以下含む。
【0010】
さらに、本発明は、反応性基を有しない(メタ)アクリレート系単量体(a1-1)に由来する構成単位と、反応性基を有する(メタ)アクリレート系単量体(a1-2)に由来する構成単位とからなる共重合体(a1)に、前記不飽和オリゴマー(a2)を反応させて、前記共重合体(a1)に、前記反応性基を介して、前記不飽和オリゴマー(a2)を付加させる工程を備える活性エネルギー線硬化性組成物の製造方法にも関する。
本発明の好ましい実施形態によれば、前記共重合体(a1)を構成する反応性基を有する(メタ)アクリレート系単量体(a1-2)は、エポキシ基、カルボキシル基、ヒドロキシル基及びイソシアネート基からなる群より選ばれた反応性基を有する(メタ)アクリレート系単量体である。
【0011】
又、本発明としては、上記本発明の活性エネルギー線硬化性組成物からなる、コーティング剤用活性エネルギー線硬化性組成物が好ましい。
又、本発明としては、上記本発明の活性エネルギー線硬化性組成物からなる、接着剤用活性エネルギー線硬化性組成物が好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物は、Tgが-30~-90℃の不飽和二重結合含有オリゴマー(不飽和オリゴマー(a2))で変性された(メタ)アクリレート系重合体(成分(A))を有効成分として含有するので、その硬化物は、力学物性、耐候性及び耐熱性に優れ、接着剤、コーティング材、インキ、フィルム等の原料として好適に使用できる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、特定の重合体、すなわち、Tgが-30~-90℃の不飽和二重結合含有オリゴマー(不飽和オリゴマー(a2))で変性された(メタ)アクリレート系重合体(A)(成分(A))を必須成分として含有する活性エネルギー線硬化性組成物に関する。
以下、成分(A)、活性エネルギー線硬化性組成物、及び使用方法について、詳しく説明する。
尚、本発明において、「(メタ)アクリレート系重合体」とは、構成単位の主成分として(メタ)アクリレートを含有する重合体を意味し、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート及び/又はメタクリレートを意味し、「(メタ)アクリル」とは、アクリル及び/又はメタクリルを意味し、「(メタ)アクリロイル」とは、アクリロイル及び/又はメタクリロイルを意味する。
【0014】
1.成分(A)
成分(A)は、不飽和オリゴマー(a2)で変性された(メタ)アクリレート系重合体である。
前記した通り、(メタ)アクリレート重合体とは、構成単位の主成分として(メタ)アクリレートを含有する重合体を意味し、全構成単量体単位中に、(メタ)アクリレートを80~100重量%含む重合体を意味する。
【0015】
成分(A)の代表例としては、(メタ)アクリレート系重合体の末端又は側鎖に、不飽和オリゴマー(a2)を結合させた化合物が挙げられる。
成分(A)としては、反応性基を有しない(メタ)アクリレート系単量体(a1-1)(以下、「単量体(a1-1)」という)に由来する構成単位と、反応性基を有する(メタ)アクリレート系単量体(a1-2)(以下、「単量体(a1-2)」という)に由来する構成単位とからなる共重合体(a1)に、前記反応基に反応する基と、不飽和オリゴマー(a2)との反応物が好ましい。
即ち、成分(A)としては、共重合体(a1)を幹ポリマーとし、当該幹ポリマーの反応性基と、不飽和オリゴマー(a2)の反応性基と反応させることにより得られた、エチレン性不飽和基を側鎖として結合させた重合体が好ましい。
尚、単量体(a1-1)及び単量体(a1-2)における「反応性基」とは、(メタ)アクリロイル基以外の官能基を意味する。
以下、共重合体(a1)、不飽和オリゴマー(a2)、成分(A)の製造方法、及び成分(A)の物性について説明する。
【0016】
(1)共重合体(a1)
成分(A)の原料共重合体である共重合体(a1)は、単量体(a1-1)に由来する構成単位と、単量体(a1-2)に由来する構成単位とからなる共重合体である。
以下、単量体(a1-1)及び単量体(a1-2)について説明する。
【0017】
(1-1)単量体(a1-1)
単量体(a1-1)は、反応性基を有しない(メタ)アクリレート系単量体(a1-1)である。
単量体(a1-1)の具体例としては、上記反応性基を備えない(メタ)アクリレート系単量体であれば特に限定されないが、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、i-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、及びステアリル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート;
イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、及びジシクロペンテニル(メタ)アクリレート等の脂環式(メタ)アクリレート;
N-(メタ)アクリロイルモルホリン;
(メタ)アクリルアミド、N-メチロールアクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド及びN,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等のアクリルアミド類;並びに
アクリロニトリル及びメタクロニトリル(メタ)アクリロニトリル等が挙げられる。
【0018】
(1-2)単量体(a1-2)
単量体(a1-2)は、反応性基を有する(メタ)アクリレート系単量体である。
単量体(a1-2)としては、エポキシ基、カルボキシル基、ヒドロキシル基及びイソシアネート基からなる群より選ばれた反応性基を有する(メタ)アクリレート系単量体が好ましい。
【0019】
反応性基としてエポキシ基を有する単量体(a1-2)としては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート及び4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0020】
反応性基としてヒドロキシル基有する単量体(a1-2)としては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、及び2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートのε-カプロラクトン付加物等が挙げられる。
【0021】
反応性基としてイソシアネート基有する単量体(a1-2)としては、例えば、(メタ)アクリロキシエチルイソシアネートが挙げられ、具体的な製品としては、「カレンズMOI」、「カレンズAOI」(何れも商品名、昭和電工(株)製)が挙げられる。
【0022】
反応性基としてカルボキシル基有する単量体(a1-2)としては、例えば、(メタ)アクリル酸、フタル酸モノヒドロキシエチルアクリレート、ω-カルボキシ-ポリカプロラクトン(n ≒ 2)モノアクリレート、(メタ)アクリロイルオキシエチルサクシネート、(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタレート、(メタ)アクリロイルオキシエチルフタレート、(メタ)アクリロイルオキシエチル-2-ヒドロキシエチルフタレート、β―カルボキシエチルアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレートの無水フタル酸付加物、ペンタエリスリトールトリアクリレートの無水コハク酸付加物、ジペンタエリスリトールトリアクリレートの無水コハク酸付加物、ジペンタエリスリトールトリアクリレートの無水フタル酸付加物等が挙げられる。
【0023】
(1-3)共系重合体(a1)の重合方法
不飽和オリゴマー(a2)で変性する前の共重合体(a1)の製造方法としては、特に制限はないが、懸濁重合、乳化重合、溶液重合、及び塊状重合等の公知の方法を用いることができる。
これらの中でも、重合体の製造が容易、かつ乳化剤等の不純物を含まない点で、塊状重合、溶液重合が好ましい。
【0024】
(1-3-1)溶液重合
溶液重合法としては、使用する原料モノマーを有機溶媒に溶解し、熱重合開始剤を添加し、加熱攪拌する方法が挙げられる。溶液重合法でラジカル重合により合成する場合は、使用する原料モノマーを有機溶媒に溶解し、熱ラジカル重合開始剤を添加し、加熱攪拌することにより得られる。又、必要に応じて、重合体の分子量を調節するために連鎖移動剤を使用することができる。
【0025】
溶液重合法に用いられる有機溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン及びメチルイソブチルケトン等のケトン類;酢酸エチル及び酢酸ブチル等のエステル類;プロピレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル類;トルエン及びキシレン等の芳香族炭化水素類;並びにヘキサン、ヘプタン及びミネラルスピリット等の脂肪族炭化水素類等が挙げられる。
【0026】
熱重合開始剤としては、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスイソバレロニトリル、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル及びアゾビスシアノバレリックアシッド等のアゾ系開始剤;t-ブチルパーオキシピバレート、t-ヘキシルパーオキシピバレート、ジラウロイルパーオキシド、ジ(2-エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジt-ブチルパーオキシド及びジクミルパーオキシド等の有機過酸化物;並びに過酸化水素-鉄(II)塩、ペルオキソ二硫酸塩-亜硫酸水素ナトリウム、クメンヒドロペルオキシド-鉄(II)塩等が挙げられる。
熱重合開始剤の使用割合は、目標とする分子量に応じて適宜設定すれば良い。熱ラジカル重合開始剤の使用割合は、使用する全モノマーの合計100重量部に対して、0.1~10重量部が好ましい。
【0027】
(1-3-2)塊状重合
塊状重合法としては、特開昭57-502171号公報、特開昭59-6207号公報、特開昭60-215007号公報等に開示された公知の方法が挙げられる。
例えば、加圧可能な反応機を溶媒で満たし、加圧下で所定温度に設定した後、各単量体、及び必要に応じて重合溶媒とからなる単量体混合物を一定の供給速度で反応器へ供給し、単量体混合物の供給量に見合う量の重合液を抜き出す方法が挙げられる。
又、単量体混合物には、必要に応じて重合開始剤を配合することもできる。その配合する場合の配合量としては、単量体混合物100重量部に対して0.001~2重量部であることが好ましい。
圧力は、反応温度と使用する単量体混合物及び溶媒の沸点に依存するもので、反応に影響を及ぼさないが、所定の反応温度を維持できる圧力であればよい。
単量体混合物の滞留時間は、1~60分であることが好ましい。滞留時間が1分に満たない場合は単量体が十分に反応しない恐れがあり、滞留時間が60分を越える場合は、生産性が悪くなってしまうことがある。好ましい滞留時間は2~40分である。
【0028】
共重合体(a1)を得るために用いる重合開始剤の例としては、所定の反応温度でラジカルを発生する開始剤であれば何でもよい。具体的には、ジ-t-ブチルパーオキシド、ジ-t-ヘキシルパーオキシド、t-ヘキシルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、クメンハイドロパーオキシド、t-ブチルハイドロパーオキシド等の有機過酸化物、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、アゾビスシクロヘキサカルボニトリル、アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2'-アゾビス(2-アミジノプロパン)ジヒドロクロリド、4,4'-アゾビス(4-シアノバレリックアシッド)等のアゾ系化合物が挙げられる。
重合開始剤はこれらの内の1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0029】
重合開始剤の使用量は、重合開始剤及び単量体の種類、所望する分子量、重合条件等により適宜調整することができるが、一般的には、使用する単量体100重量部に対して0.001~10重量部である。
【0030】
共重合体(a1)の製造に有機溶媒を用いる場合、有機炭化水素系化合物が適当であり、テトラヒドロフラン及びジオキサン等の環状エーテル類、ベンゼン、トルエン及びキシレン等の芳香族炭化水素化合物、酢酸エチル及び酢酸ブチル等のエステル類、アセトン、メチルエチルケトン及びシクロヘキサノン等のケトン類等、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類が例示され、これらの1種又は2種以上を用いることができる。(メタ)アクリレート共重合体をよく溶解しない有機溶媒では、反応器の壁にスケールが成長しやすく洗浄工程等で生産上の問題がおきやすい。
【0031】
有機溶媒の使用量は、全ビニル単量体100重量部に対して、80重量部以下とすることが好ましい。80重量部以下とすることにより、短時間で高い転化率が得られる。より好ましくは、1~50重量部である。又、オルト酢酸トリメチル、オルト蟻酸トリメチル等の脱水剤を添加することもできる。
共重合体(a1)の製造には、公知の連鎖移動剤を使用してもよい。
【0032】
反応器から抜き出された反応液は、そのまま次の工程に進むか、あるいは蒸留等により未反応単量体、有機溶媒、及び低分子量オリゴマー等の揮発性成分を留去することによって重合体を単離することができる。反応液から留去した未反応単量体、溶剤、及び低分子量オリゴマー等の揮発性成分の一部を原料タンクに戻すか又は直接反応器に戻し、再度重合反応に利用することもできる。
このように未反応単量体及び溶剤をリサイクルする方法は経済性の面から好ましい方法である。リサイクルする場合には、反応器内で望ましい単量体比と望ましい溶剤量を維持するように新たに供給する単量体混合物の混合比を決定する必要がある。
【0033】
(1-3-3)共重合体(a1)の物性
共重合体(a1)の重量平均分子量(以下、「Mw」ともいう)は、通常1,500~50,000であり、1,500~4,0000が好ましく、さらに好ましくは、2,000~30,000、さらにより好ましくは、2,500~25,000、特に好ましくは3,000~15,000である。Mwが50,000以下であることにより、得られる成分(A)は比較的高濃度でも低粘度化できるため、塗工性が良くなり、又、他の硬化性樹脂と混合した場合、相溶性が良くなる。Mwが1,500以上であることにより、得られた成分(A)の硬化物は、耐候性、引張物性が優れたものとなる。
尚、本発明におけるMwとは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下、GPCという)によって測定された分子量をポリスチレン換算した値を意味する。
【0034】
共重合体(a1)のTg(ガラス転移温度)については、特に制限はないが、通常-40℃以上90℃以下であり、0℃以上90℃以下であることが好ましい。0℃以上であることにより、硬化物の強度が優れたものとなり、90℃以下であることにより、硬化物の柔軟性に優れたものとなる。さらに好ましくは、30~80℃である。
尚、共重合体(a1)のTgは、これを構成する単量体の種類及び共重合比を適宜選択することにより調整することができる。
【0035】
尚、本発明において、Tgとは、TA Instrument製(Q-100)等の示差走査熱量計を用いて得られた熱流束曲線のベースラインと変曲点での接線の交点から決定したものを意味する。熱流束曲線は窒素雰囲気下で試料約10mgを-100℃まで冷却し、5分間保持した後、10℃/分で300℃まで昇温し、引き続き-100℃まで冷却し、5分間保持した後、10℃/分で350℃まで昇温する条件で得られる。
【0036】
特開2014-115538号公報に開示されているような通常の溶液重合法の場合、重合温度が比較的低温であるため、共重合反応性比の影響を受け、官能基の個数が重合体分子ごとに偏りを持つことになる。一方、高温重合の場合、共重合反応性比の影響が低くなり、かつ連続重合した場合、一定の重合体が生成し続けるため、分子ごとの官能基の個数の偏りは極めて小さくなる。
又、通常の溶液重合と高温重合を比較すると、同じ分子量の重合体を合成する場合、高温重合の方が、重合開始剤の使用量が少なくなり、開始剤残渣の量も少なくなるため、耐候性が良くなる。特に、電子線硬化の場合、硬化反応において光開始剤等の重合触媒を使用しないため、重合体に含まれる開始剤残渣の量は、耐候性の影響に顕著に表われる。
したがって、本発明で使用する共重合体(a1)は、一般的に、末端二重結合濃度が0.5meq/g以下のものが好ましく、0.4meq/g以下のものがより好ましい。末端二重結合濃度が0.5meq/g以下である場合、硬化速度の低下を抑制することができる。又、本発明において、共重合体(a1)として高温連続重合で得られたものを用いる場合、共重合体(a1)の末端二重結合濃度は、0.02meq/g以上0.5meq/g以下が好ましい。0.02meq/g以上であることにより、硬化時の急速な硬化が抑制され、残留応力が残りにくくなるため力学物性が良くなる。
【0037】
(2)不飽和オリゴマー(a2)
不飽和オリゴマー(a2)は、Tgが-30~-90℃の不飽和二重結合含有オリゴマーである。
ここで、不飽和二重結合としては、エチレン性不飽和基であることが好ましく、具体例としては、(メタ)アクリロイル基、及びビニル基等が挙げられ、そのうち、(メタ)アクリロイル基がより好ましく、アクリロイル基が特に好ましい。
尚、本発明においてオリゴマーとは、分子量250以上2,000以下の化合物を意味する。
上記のとおり、成分(A)は、上記重合方法等により得られた共重合体(a1)における反応性基を、不飽和オリゴマー(a2)の反応性基と反応させることにより得られる。より具体的には、上記反応性基を有する共重合体(a1)に、上記反応性基を介して、不飽和オリゴマー(a2)を化学的に結合させて付加することにより得られる。
【0038】
共重合体(a1)が反応性基としてエポキシ重合体又はヒドロキシル基を有する共重合体の場合、不飽和オリゴマー(a2)としては、上記反応性基と反応する官能基としてカルボキシル基又はイソシアネート基を有する化合物が使用できる。
【0039】
カルボキシル基を有する不飽和オリゴマー(a2)としては、例えば、(メタ)アクリル酸のε-カプロラクトン付加物等が挙げられる。
アクリル酸のε-カプロラクトン付加物は市販されており、アロニックスM-5300〔東亞合成(株)製商品名、Tg=-78℃、ポリカプロラクトン鎖長≒2〕等が挙げられる。
【0040】
イソシアネート基を有する不飽和オリゴマー(a2)としては、片末端がイソシアネート基であるウレタン(メタ)アクリレート等が挙げられる。
片末端がイソシアネート基であるウレタンアクリレートは、ジオールとジイソシアネートを反応させて両末端にイソシアネート基を有する化合物を製造し、これと水酸基含有アクリレートを反応させた化合物が挙げられる。この場合、ジイソシアネートとしては、イソホロンジイソシアネート及びヘキサメチレンジイソアネート等が挙げられ、ジオールとしては、ポリテトラメチレングリコール等が挙げられる。水酸基含有アクリレートとしては、2-ヒドロキシエチルアクリレート等が挙げられる。
当該化合物の製造方法としては、例えば、ジオクチルスズ等のスズ系触媒存在下、有機溶媒中でジイソシアネート類とジオール類を反応させて両末端にイソシアネート基を有するウレタンオリゴマーを得た後、重合禁止剤存在下、水酸基含有(メタ)アクリレート類を反応させる方法等が挙げられる。
【0041】
共重合体(a1)が反応性基としてイソシアネート基又はカルボキシル基を有する共重合体の場合、不飽和オリゴマー(a2)としては、上記反応性基と反応する官能基として、ヒドロキシル基を有する化合物が使用できる。
ヒドロキシル基を有する不飽和オリゴマー(a2)としては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートのε-カプロラクトン付加物等のヒドロキアルキル(メタ)アクリレートのε-カプロラクトン付加物、(メタ)アクリル酸のポリプロピレングリコール付加物、(メタ)アクリル酸のポリエチレングリコール付加物、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチルのポリ(3-ヒドロキシブチレート)付加物、及び(メタ)アクリル酸のポリテトラメチレングリコール付加物等が挙げられる。
2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートのε-カプロラクトン付加物は市販されており、プラクセルFA2D〔2-ヒドロキシエチルアクリレートのε-カプロラクトン付加物、ダイセル(株)製商品名、以下同様。分子量344、Tg=-78℃〕、FA5(2-ヒドロキシエチルアクリレートのε-カプロラクトン付加物。分子量689)、FM2D(2-ヒドロキシエチルメタクリレートのε-カプロラクトン付加物、分子量358)、FM3(2-ヒドロキシエチルメタクリレートのε-カプロラクトン付加物、分子量473)、FM5(2-ヒドロキシエチルメタクリレートのε-カプロラクトン付加物、分子量701)等が挙げられる。
アクリル酸のポリプロピレングリコール付加物としては、Tg=-75℃の化合物が例示され、アクリル酸のポリエチレングリコール付加物としては、Tg=-41℃の化合物が例示され、アクリル酸2-ヒドロキシエチルのポリ(3-ヒドロキシブチレート)付加物としては、Tg=-40℃の化合物が例示され、及びアクリル酸のポリテトラメチレングリコール付加物としては、Tg=-84℃の化合物が例示される。
【0042】
不飽和オリゴマー(a2)としては、開環カプロラクトン構造を含む化合物が好ましい。当該化合物を使用して得られる成分(A)を含む組成物は、その硬化物が伸び率に優れたものとなる点で好ましい。
当該化合物の具体例としては、前記で挙げた化合物が例示される。
カルボキシル基を有する不飽和オリゴマー(a2)としては、例えば、(メタ)アクリル酸のε-カプロラクトン付加物等が挙げられる。
ヒドロキシル基を有する不飽和オリゴマー(a2)としては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートのε-カプロラクトン付加物等のヒドロキアルキル(メタ)アクリレートのε-カプロラクトン付加物等が挙げられる。
【0043】
(3)成分(A)の製造方法
成分(A)は、共重合体(a1)の反応性基と、不飽和オリゴマー(a2)における前記反応性基と反応性を有する基を反応させることより製造することが好ましい。尚、この反応を、以下、「変性反応」ということもある。
すなわち、共重合体(a1)に不飽和オリゴマー(a2)を付加する反応としては、反応性基としてエポキシ基又はヒドロキシル基を有する共重合体(a1)に、カルボキシル基を有する不飽和オリゴマー(a2)を反応させる方法、及び、反応性基としてイソシアネート基又はカルボキシル基を有する共重合体(a1)に、ヒドロキシル基を有する不飽和オリゴマー(a2)を反応させる方法が挙げられる。
【0044】
共重合体(a1)と不飽和オリゴマー(a2)の反応割合としては、製造する成分(A)の種類等に応じて適宜設定すれば良い。
共重合体(a1)が有する反応性基の1モルに対して、不飽和オリゴマー(a2)が有する反応性基が、0.5~1.5モルが好ましく、より好ましくは0.8~1.2モル、さらに好ましくは0.9~1.1モルである。
【0045】
エポキシ基を有する共重合体(a1)に、カルボキシル基を有する不飽和オリゴマー(a2)を反応させて付加する方法としては、エポキシ基を有する共重合体(a1)、カルボキシル基を有する不飽和オリゴマー(a2)、触媒、及び有機溶媒を混合した状態で、60~120℃に加熱し、5~30時間程度加熱する方法が挙げられる。
【0046】
エポキシ基を有する共重合体(a1)とカルボキシル基を有する不飽和オリゴマー(a2)の反応割合としては、エポキシ基を有する共重合体(a1)のエポキシ基1モルに対して、カルボキシル基を有する不飽和オリゴマー(a2)のカルボキシル基が0.5~1.5モルが好ましく、より好ましくは0.8~1.2、さらに好ましくは0.9~1.1である。
【0047】
触媒としては、テトラブチルアンモニウムブロミド、テトラブチルアンモニウムクロリド、テトラメチルアンモニウムブロミド、テトラメチルアンモニウムクロリド、トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン、1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]-7-ウンデセン、1,4-ジアザビシクロ[2,2,2]オクタンが挙げられる。これらのうちで、硬化物の耐熱性試験後の着色が少ないという点で、トリフェニルホスフィンを使用することが好ましい。
【0048】
触媒の添加量は、エポキシ基を有する共重合体(a1)及びカルボンキシル基を有する不飽和オリゴマー(a2)の合計量に対して、0.5~5重量%程度が好ましい。
【0049】
有機溶媒としては、酢酸エチル、酢酸ブチル、アセトン、メチルエチルケトン等が挙げられる。尚、エポキシ基を有する共重合体(a1)が液状である場合には、溶剤無添加で変性反応を行うこともできる。
【0050】
ヒドロキシル基を有する共重合体(a1)に、カルボキシル基を有する不飽和オリゴマー(a2)を反応させる方法としては、一般的な脱水エステル化の方法が挙げられる。ヒドロキシル基を有する共重合体(a1)、カルボキシル基を有する不飽和オリゴマー(a2)、触媒、及び有機溶媒を混合した状態で、100~120℃で加熱し、有機溶媒及び生成する水を共沸脱水することにより反応を進行させる方法が挙げられる。
【0051】
触媒としては、p-トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸及び硫酸が挙げられ、触媒の使用量としては、反応させる水酸基のモル数に対して、0.05~5mol%用いられる。
【0052】
有機溶媒としては、脱水エステル化反応で生成する水との溶解度が低く、水を共沸させて留去しながら反応を進行できる有機溶媒を使用することが好ましい。好ましい有機溶媒としては、例えば、トルエン、ベンゼン及びキシレン等の芳香族炭化水素、ヘキサン、シクロヘキサン及びヘプタン等の脂肪族炭化水素、並びにメチルエチルケトン及びシクロヘキサノン等のケトンが挙げられる。有機溶媒の割合は、反応液全量に対して30~70重量%が好ましい。
【0053】
反応後、水又はアルカリ水溶液により酸を除去することが一般的である。
【0054】
イソシアネート基を有する共重合体(a1)に、ヒドロキシル基を有する不飽和オリゴマー(a2)を反応させて付加する方法としては、イソシアネート基を有する共重合体(a1)及びヒドロキシル基を有する不飽和オリゴマー(a2)を混合した後、必要に応じて、ジブチルスズジラウレート等の硬化触媒を添加し、60~100℃に加熱する方法等が挙げられる。
【0055】
カルボキシル基を有する共重合体(a1)に、ヒドロキシル基を有する不飽和オリゴマー(a2)を反応させて付加する方法としては、カルボキシル基を有する共重合体(a1)とヒドロキシル基を有する不飽和オリゴマー(a2)を混合後、硫酸、メタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、スルホン化ポリスチレン、及びNafion-H等の触媒を加え、場合によって、トルエン等の有機溶媒の存在下80~120℃に加熱し、エステル化反応を進行させるとともに生成する水を留去する方法等が挙げられる。
さらに、反応後に残留した触媒は、水洗、アルカリ中和、イオン交換樹脂、触媒除去用ケミカルフィルター、及びろ過等の方法を一つ又は二つ以上組み合わせることにより除去できる。
【0056】
又、上記何れの変性反応の場合も、ゲル化を抑制する目的、又は、変性物の貯蔵安定性を向上させる目的で、重合禁止剤を添加することが好ましい。
重合禁止剤としては、メトキシフェノール、ハイドロキノン、ジブチルヒドロキシトルエン等が挙げられる。硬化物の着色抑制の観点から、ジブチルヒドロキシトルエンを用いることが特に好ましい。
【0057】
(4)成分(A)の物性((メタ)アクリル当量及び分子量)
成分(A)の(メタ)アクリル当量は、2,500g/eq以下が好ましい。成分(A)の(メタ)アクリル当量のより好ましい範囲を順に記載すると、150g/eq以上2,500g/eq以下であり、300g/eq以上2000g/eq以下であり、400g/eq以上1,400g/eq以下、700g/eq以上1,000g/eq以下である。
(メタ)アクリル当量が150g/eq以上であることにより、硬化物の伸び率、柔軟性を確保することができ、2,500g/eq以下であることにより、硬化物の強度及び耐候性を確保することができ、又、硬化速度を良好に維持できる。
【0058】
本発明において、(メタ)アクリル当量(g/eq)は、(メタ)アクリロイル基1当量(eq)あたりの重量(g)を表し、数値が大きくなるほど(メタ)アクリロイル基の濃度は低くなり、数値が小さくなるほど(メタ)アクリロイル基の濃度は高くなる。
【0059】
アクリル当量は以下の式で求められる。以下の式中、成分(A)の(メタ)アクリロイル基のモル数は、上記変性反応で共重合体(a1)に付加した(メタ)アクリルロイル基のモル数であり、上記変性反応後に混在する未反応の不飽和オリゴマー(a2)に由来する(メタ)アクリロイル基は除外される。
【0060】
【0061】
成分(A)の分子量は、Mwで、3,000~50,000が好ましい。
Mwが3,000以上であることにより、硬化物が耐候性、引張物性が優れたものとなり、50,000以下であることにより、比較的高濃度でも低粘度化できるため、塗工性に優れ、又、他の硬化性化合物と混合した場合、相溶性に優れたものとなる。
成分(A)のMwとしては、さらに好ましい範囲を順に記載すると、3,000~40,000であり、3,000~30,000であり、4,000~20,000である。
【0062】
2.活性エネルギー線硬化性組成物
本発明は、成分(A)を含む活性エネルギー線硬化性組成物に関する。
組成物の製造方法としては、成分(A)、及びに必要に応じて後記するその他の成分を撹拌及び混合する方法が挙げられる。
【0063】
組成物の粘度としては、使用する用途及び目的等に応じて適宜設定すれば良い。好ましい粘度としては、100~20,000mPa・sであり、より好ましくは200~8,000mPa・sである。
本発明において粘度とは、E型粘度計(コーンプレート型粘度計)により25℃で測定した値を意味する。
【0064】
本発明の組成物は、前記成分(A)を必須とするものであるが、必要に応じてその他の種々の成分を配合することができる。
好ましいその他の成分としては、成分(B)(成分(A)以外のエチレン性不飽和基を有する化合物(B))、成分(C)(光ラジカル重合開始剤)、及び成分(D)(有機溶媒(D))が挙げられる。
以下、成分(B)~(D)、及びこれ以外のその他の成分についてについて説明する。
尚、以下において、成分(A)及び成分(B)を「硬化性成分」という。
【0065】
(1)成分(B)
本発明の組成物は、組成物全体の粘度を低下させる目的や、その他の物性を調整する目的で、必要に応じて、成分(B)である上記成分(A)以外のエチレン性不飽和化合物を含有してもよい。
【0066】
成分(B)の具体例としては、単量体(a1-1)、単量体(a1-2)、単量体(a1-1)及び(a1-2)以外の(メタ)アクリレート〔以下、「その他(メタ)アクリレート」という〕及びN-ビニル-2-ピロリドン等が挙げられる。
【0067】
その他(メタ)アクリレートとしては、1個の(メタ)アクリロイル基を有する化合物〔以下、「単官能(メタ)アクリレート」という〕や2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物〔以下、「多官能(メタ)アクリレート」という〕等が挙げられる。
【0068】
単官能(メタ)アクリレートの具体例としては、トリメチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、1-アダマンチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、2-エトキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、о-フェニルフェノールEO変性(n=1~4)(メタ)アクリレート、p-クミルフェノールEO変性(n=1~4)(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、о-フェニルフェニル(メタ)アクリレート、p-クミルフェニル(メタ)アクリレート、N-(メタ)アクリロイルモルホリン、N-ビニルホルムアミド、N-(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタルイミド、N-(メタ)アクリロイルオキシエチルテトラヒドロフタルイミド等が挙げられる。
【0069】
多官能(メタ)アクリレートの具体例としては、ポリエステル骨格を有するウレタンアクリレート等のウレタン(メタ)アクリレート及びポリカーボネート骨格を有するウレタンアクリレート等のウレタン(メタ)アクリレート;
ビスフェノールA EO変性(n=1~2)ジ(メタ)アクリレート、及びビスフェノールAジ(メタ)アクリレート等のビスフェノール骨格を有するジ(メタ)アクリレート;
エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(n=5~14)ジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(n=5~14)ジ(メタ)アクリレート、1,3-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリブチレングリコール(n=3~16)ジ(メタ)アクリレート、及びポリ(1-メチルブチレングリコール)(n=5~20)ジ(メタ)アクリレート等の(ポリ)アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート
1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート等の脂肪族ジオールのジ(メタ)アクリレート;
ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート;
トリシクロデカンジメチロールジ(メタ)アクリレート等の脂環式骨格を有するジ(メタ)アクリレート;
イソシアヌル酸EO変性ジアクリレート、及びε-カプロラクトン変性トリス((メタ)アクロキシエチル)イソシアヌレート等のイソシアヌレート骨格を有する(メタ)アクリレート
グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールのトリ又はテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンのトリ又はテトラ(メタ)アクリレート、ジグリセリンのトリ又はテトラ(メタ)アクリレート及びジペンタエリスリトールのトリ、テトラ、ペンタ又はヘキサ(メタ)アクリレート等のポリオールポリ(メタ)アクリレート;並びに
グリセリンアルキレンオキサイド付加物のトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールアルキレンオキサイド付加物のトリ又はテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンアルキレンオキサイド付加物のトリ又はテトラ(メタ)アクリレート、ジグリセリンアルキレンオキサイド付加物のトリ又はテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールアルキレンオキサイド付加物のトリ、テトラ、ペンタ又はヘキサ(メタ)アクリレート等のポリオールアルキレンオキサイド付加物のポリ(メタ)アクリレート等等が挙げられる。
尚、上記においてEO変性とは、エチレンオキサイド変性を意味し、nはアルキレンオキサイド単位の繰返し数を意味する。
多官能(メタ)アクリレートとしては、これら化合物の中でも、ウレタン(メタ)アクリレート及びイソシアレート骨格を有する(メタ)アクリレートが好ましい。
【0070】
成分(B)としては、前記した化合物の1種のみを使用しても、2種以上を併用しても良い。
【0071】
成分(B)の配合量は、目的に応じて適宜設定すれば良く、得られる硬化物の柔軟性を低下させない量であれば良いが、成分(A)及び成分(B)の合計100重量%中に、成分(B)を1~50重量%含むことが好ましく、より好ましくは、1~35重量%であり、さらに好ましくは、1~25重量%である。
【0072】
(2)成分(C)
本発明の組成物は、活性エネルギー線として紫外線及び可視光線を用いる場合、成分(C)(光重合開始剤)を含有してもよい。
尚、活性エネルギー線として電子線を使用する場合は、必ずしも成分(C)を配合する必要はないが、硬化性改良のため必要に応じて成分(C)を少量配合することもできる。
【0073】
成分(C)としては、ベンジルジメチルケタール、ベンジル、ベンゾイン、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、オリゴ[2-ヒドロキシ-2-メチル-1-[4-1-(メチルビニル)フェニル]プロパノン、2-ヒドロキシ-1-[4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]-フェニル]-2-メチルプロパン-1-オン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)]フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)ブタン-1-オン、2-ジメチルアミノ-2-(4-メチルベンジル)-1-(4-モルフォリン-4-イル-フェニル)-ブタン-1-オン、アデカオプトマーN-1414((株)ADEKA製)、フェニルグリオキシリックアシッドメチルエステル、エチルアントラキノン、フェナントレンキノン等の芳香族ケトン化合物;
ベンゾフェノン、2-メチルベンゾフェノン、3-メチルベンゾフェノン、4-メチルベンゾフェノン、2,4,6-トリメチルベンゾフェノン、4-フェニルベンゾフェノン、4-(メチルフェニルチオ)フェニルフェニルメタン、メチル-2-ベンゾフェノン、1-[4-(4-ベンゾイルフェニルスルファニル)フェニル]-2-メチル-2-(4-メチルフェニルスルフォニル)プロパン-1-オン、4,4’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、N,N’-テトラメチル-4,4’-ジアミノベンゾフェノン、N,N’-テトラエチル-4,4’-ジアミノベンゾフェノン及び4-メトキシ-4’-ジメチルアミノベンゾフェノン等のベンゾフェノン系化合物;
ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、エチル-(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィネート及びビス(2,6-ジメトキシベンゾ
イル)-2,4,4-トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド等のアシルホスフィンオキサイド化合物;
チオキサントン、2-クロロチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、1-クロロ-4-プロピルチオキサントン、3-[3,4-ジメチル-9-オキソ-9H-チオキサントン-2-イル]オキシ]-2-ヒドロキシプロピル-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロライド及びフロロチオキサントン等のチオキサントン系化合物;
アクリドン、10-ブチル-2-クロロアクリドン等のアクリドン系化合物;
1,2-オクタンジオン1-[4-(フェニルチオ)-2-(O-ベンゾイルオキシム)]及びエタノン1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-1-(O-アセチルオキシム)等のオキシムエステル類;
2-(o-クロロフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体、2-(o-クロロフェニル)-4,5-ジ(m-メトキシフェニル)イミダゾール二量体、2-(o-フルオロフェニル)-4,5-フェニルイミダゾール二量体、2-(o-メトキシフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体、2-(p-メトキシフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体、2,4-ジ(p-メトキシフェニル)-5-フェニルイミダゾール二量体及び2-(2,4-ジメトキシフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体等の2,4,5-トリアリールイミダゾール二量体;並びに
9-フェニルアクリジン及び1,7-ビス(9,9’-アクリジニル)ヘプタン等のアクリジン誘導体等が挙げられる。
【0074】
これらの化合物は、1種又は2種以上を併用することもできる。
【0075】
成分(C)の配合割合としては、成分(A)100重量部に対して、前記成分(B)を含む場合には、成分(A)及び成分(B)の合計量100重量部に対して、1~20重量部が好ましく、より好ましくは1~10重量部であり、さらに好ましくは1~5重量部である。
成分(C)の配合割合を1重量部以上とすることにより、適量な紫外線又は可視光線量で組成物を硬化させることができ、生産性を向上させることができ、一方20重量部以下とすることで、硬化物の耐候性や透明性に優れたものとすることができる。
【0076】
(3)成分(D)
本発明の組成物は、基材への塗工性を改善する等の目的で、成分(D)である有機溶媒を含有することができる。
有機溶媒は、同じ化合物であっても、反応系で使用される場合は、「有機溶媒」と表記され、塗料等の組成物で使用される場合は、「有機溶剤」と表記されるものであり、本発明ではこれらをまとめて「有機溶媒」と表記する。
【0077】
成分(D)の具体例としては、n-ヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン及びシクロヘキサン等の炭化水素系溶媒;
メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、イソブチルアルコール、2-メトキシエタノール、2-エトキシエタノール、2-(メトキシメトキシ)エタノール、2-イソプロポキシエタノール、2-ブトキシエタノール、2-イソペンチルオキシエタノール、2-ヘキシルオキシエタノール、2-フェノキシエタノール、2-ベンジルオキシエタノール、フルフリルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、1-メトキシ-2-プロパノール、1-エトキシ-2-プロパノール及びプロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール系溶媒;
テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ビス(2-メトキシエチル)エーテル、ビス(2-エトキシエチル)エーテル及びビス(2-ブトキシエチル)エーテル等のエーテル系溶媒;
アセトン、メチルエチルケトン、メチル-n-プロピルケトン、ジエチルケトン、ブチルメチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルペンチルケトン、ジ-n-プロピルケトン、ジイソブチルケトン、ホロン、イソホロン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン及びメチルシクロヘキサノン等のケトン系溶媒;
酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、メチルグリコールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、酢酸セロソルブ等のエステル系溶媒;
N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N-メチル-2-ピロリドン、γ-ブチロラクトン等の非プロトン性極性溶媒が挙げられる。
【0078】
成分(D)としては、前記した化合物の1種又は2種以上用いることができる。
成分(D)は、成分(A)を希釈するために別途添加しても良く、又、成分(A)の製造で使用する有機溶剤を分離することなくそのまま使用しても良い。
【0079】
成分(D)の配合割合は、組成物の粘度や使用目的等を考慮し、適宜設定すれば良いが、好ましくは成分(A)の合計100重量部に対して、前記成分(B)を含む場合は、成分(A)及び成分(B)の合計100重量部に対して、成分(D)を150重量部以下が好ましく、100重量部以下がより好ましく、67重量部以下がさらにより好ましく、25~67重量部が特に好ましい。
【0080】
(4)前記以外のその他の成分
前記以外のその他の成分としては、目的に応じて種々の成分を配合することができる。
本発明の組成物をコーティング剤として使用する場合においては、例えば、重合禁止剤又は/及び酸化防止剤、耐光性向上剤、無機粒子、表面改質剤、顔料、染料、及び粘着性付与剤等が挙げられる。
以下、その他の成分のうち、重合禁止剤又は/及び酸化防止剤、並びに耐光性向上剤について説明する。
【0081】
<重合禁止剤又は/及び酸化防止剤>
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物は、保存安定性を向上させるために、重合禁止剤又は/及び酸化防止剤を含有することができる。
重合禁止剤は、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール、並びに種々のフェノール系酸化防止剤が好ましいが、イオウ系二次酸化防止剤、リン系二次酸化防止剤等であってもよい。
これら重合禁止剤又は/及び酸化防止剤の総配合量は、成分(A)100重量部に対して、成分(B)を含む場合には、成分(A)及び成分(B)の合計量100重量部に対して、0.001~3重量部であることが好ましく、より好ましくは0.01~0.5重量部である。
【0082】
<耐光性向上剤>
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物は、紫外線吸収剤や光安定剤等の耐光性向上剤を含有してもよい。
紫外線吸収剤としては、2-(2’-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-t-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’-t-ブチル-5’-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール化合物;
2,4-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-6-(2-ヒドロキシ-4-イソ-オクチルオキシフェニル)-s-トリアジン等のトリアジン化合物;
2,4-ジヒドロキシ-ベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシ-ベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシ-4’-メチルベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2、4、4’-トリヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’-テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4,4’-テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,3’,4,4’-テトラヒドロキシベンゾフェノン、又は2、2’-ジヒドロキシ-4,4’-ジメトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン化合物等を挙げることができる。
光安定性剤としては、N,N’-ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)-N,N’-ジホルミルヘキサメチレンジアミン、ビス(1,2,6,6-)ペンタメチル-4-ピペリジル)-2-(3,5-ジターシャリーブチル-4-ヒドロキシベンジル)-2-n-ブチルマロネート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジニル)セバケート、等の低分子量ヒンダードアミン化合物;N,N’-ビス(2,
2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)-N,N’-ジホルミルヘキサメチレンジアミン、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジニル)セバケート等の高分子量ヒンダードアミン化合物等のヒンダードアミン系光安定剤を挙げることができる。
耐光性向上剤の配合量は、成分(A)100重量部に対して、成分(B)を含む場合には、成分(A)及び成分(B)の合計量100重量部に対して、0~5重量部であることが好ましく、より好ましくは0~1重量部である。
【0083】
3.使用方法
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物は、目的に応じて種々の使用方法を採用することができる。
例えば、本発明の組成物をコーティング剤として使用する場合は、基材に組成物を塗工し、有機溶媒を含む場合は、加熱により組成物中の有機溶媒を蒸発させた後、活性エネルギー線を照射して硬化させる方法が挙げられる。
又、本発明の組成物を接着剤として使用する場合、基材に組成物を塗工し、有機溶媒を含む場合は、加熱により組成物中の有機溶媒を蒸発させた後、別の基材と貼り合せた後、さらに活性エネルギー線を照射して硬化させる方法が挙げられる
【0084】
本発明の組成物が適用できる基材としては、種々の材料に適用でき、無機材料、プラスチック、及び紙等が挙げられる。
無機材料としては、ガラス、金属、モルタル、コンクリート及び石材等が挙げられる
金属としては、鋼板、アルミ及びクロム等の金属、酸化亜鉛(ZnO)及び酸化インジ
ウムスズ(ITO)等の金属酸化物等が挙げられる。
プラスチックの具体例としては、ポリエチレン及びポリプロピレン等のポリオレフィン、ABS樹脂、ポリビニルアルコール、トリアセチルセルロース及びジアセチルセルロース等のセルロースアセテート樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート(以下、「PET樹脂」という)、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエーテルサルホン、ノルボルネン等の環状オレフィンをモノマーとする環状ポリオレフィン樹脂、ポリ塩化ビニル、エポキシ樹脂及びポリウレタン樹脂等が挙げられる。プラスチックとしては熱可塑性プラスチックが好ましく、その具体例としては、PET樹脂、アクリル樹脂、ABS樹脂、ポリカーボネート、ポリプロピレン及びポリエチレン等が例示でき、PET樹脂が好ましい。
基材としては、これら材料の中でも、金属及びプラスチックが好ましい。
基材の形状は特に限定されず、シート状、フィルム状、及び板状等の何れであってもよい。
【0085】
組成物の塗工方法としては、目的に応じて適宜選択すれば良く、従来公知のバーコート、アプリケーター、ドクターブレード、ナイフコーター、コンマコーター、リバースロールコーター、ダイコーター、リップコーター、グラビアコーター及びマイクログラビアコーター等で塗工する方法が挙げられる。
【0086】
基材に対する組成物硬化膜の膜厚は、目的に応じて適宜設定すればよい。硬化膜の厚さとしては、使用する基材や製造した硬化膜を有する基材の用途に応じて選択すればよいが、1~100μmであることが好ましく、2~40μmであることがより好ましい。
【0087】
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物を硬化させるのに用いる活性エネルギー線としては、電子線、紫外線及び可視光線等が挙げられる。
これらのうち、紫外線は、比較的簡便な装置で硬化でき、短時間、低エネルギー照射で硬化できる点で好ましい。
電子線は、必ずしも成分(C)(光重合開始剤)を添加する必要がなく、硬化物の耐熱性、耐候性が優れる点で好ましい。
紫外線照射装置としては、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、紫外線(UV)無電極ランプ、及び発光ダイオード(LED)等が挙げられる。
【0088】
活性エネルギー線照射における、線量、照射量、照射強度等の照射条件については、使用する組成物、基材及び目的等に応じて適宜選定すればよい。
紫外線を使用する場合の一例として高圧水銀ランプを使用する場合を挙げると、UV-A領域の照射エネルギーで100~8,000mJ/cm2が好ましく、200~3,000mJ/cm2がより好ましい。
電子線を使用する場合は、加速電圧が50~300kVであり、吸収線量が10~1,000kGyとなるよう照射することが好ましい。
【0089】
本発明の組成物は、種々の用途に使用することができる。
その具体例としては、コーティング剤、接着剤、インキ、及びフィルム等が挙げられ、コーティング剤として好ましく使することができる。
コーティング剤の具体的用途としては、各種塗料、加飾フィルム及びトップコート剤等が挙げられる。
コーティング剤のより具体的な用途としては、ハードコート用途が挙げられる。この場合の基材としては、偏光子保護フィルム及び反射防止フィルムに用いられるプラスチックフィルム、並びに、家電製品及び自動車内外装部品に用いられる樹脂成型品等が挙げられる。
コーティング剤の他の用途としては、金属基材のコーティング剤として好ましく使用することができ、PDP(プラズマディスプレイパネル)用電極保護材、電動自転車用基板回路保護材及びリチウムイオン電池等に用いる電極保護コーティング剤、及び自動車内外装部材のコーティング剤に使用できる。
【実施例】
【0090】
以下に、実施例及び比較例を挙げ、本発明をより具体的に説明する。尚、下記において「部」とは、重量部を意味する。
又、製造例及び実施例における分子量、Tg、酸価、固形分、粘度、及び末端二重結合濃度は、下記の方法に従い測定した。
【0091】
<分子量測定>
ゲル浸透クロマトグラフ装置(型式名「HLC-8320」、東ソー(株)製)を用いて、下記の条件よりポリスチレン換算によるMw(重量平均分子量)及び数平均分子量(以下、「Mn」という)を得た。
○測定条件
カラム:東ソー(株)製TSKgel SuperMultiporeHZ-M×4本
カラム温度:40℃
溶離液:テトラヒドロフラン
検出器:RI
【0092】
<Tgの測定>
共重合体(a1)のTgは示差走査熱量計(DSC)にて以下の条件で測定した。
○測定条件
DSC:TA Instrument製(Q-100)
昇温温度:10℃/分
測定雰囲気:窒素
【0093】
<酸価の測定>
JIS K0070、酸価測定に準じて実施した。すなわち、サンプルを滴定量が約10mLになるように秤量し、テトラヒドロフラン約50mLに希釈した後、滴定液として0.1NのKOH/エタノール溶液により、自動滴定装置COM-1600ST(平沼産業(株)製)を用いて滴定を実施した。
【0094】
<固形分>
150℃、1時間、通風乾燥機で乾燥することにより、重量減少から固形分を求めた。尚、固形分は、塗工しやすい粘度(1,000~4,000mPa・s)となるように調節しているため、固形分が高いということは、有機溶媒使用量が少ない点で優れていることが分かる。
【0095】
<固形分60%の25℃における粘度>
各サンプルについて、有機溶剤(酢酸ブチル又はトルエン)で希釈、又は、エバポレータで有機溶媒を留去することにより、固形分を60%に調整した。これらのサンプルについて、TVE-20H型粘度計(円錐/平板方式、東機産業社(株)製)を用いて、下記の条件下でE型粘度を測定した。
○測定条件
コーン形状:角度1°34′、半径24mm(10000mPa・s未満)
角度3°、半径7.7mm(10000mPa・s以上)
温度:25℃±0.5℃
【0096】
<末端二重結合濃度>
1H-NMRの測定により、5.5ppm付近にある二重結合に結合した水素に由来するシグナルの積分値、及び3.0~4.5ppmにあるエステル基に隣接した炭素に結合した水素に由来するシグナルの積分値の比、並びに重合体のモノマー組成比から、重合体の質量当たりの二重結合濃度を算出した。
【0097】
1.製造例
(1)製造例1
オイルジャケットを備えた容量1000mLの加圧式攪拌槽型反応器の温度を263℃に保った。次いで、反応器の圧力を一定に保ちながら、メチルメタクリレート(以下、「MMA」という)を70部、エチルアクリレート(以下、「EA」という)を10部、グリシジルメタクリレート(以下、「GMA」という)を20部、有機溶媒として、メチルエチルケトン(以下、「MEK」という)を12部、オルト酢酸トリメチル(日宝化学製、商品名「MOA」、以下、「MOA」という)を3部、重合開始剤としてジ-t-ヘキシルパーオキサイド(日油製、商品名「パーヘキシルD」、以下、「DTHP」という)を1部からなる単量体混合物を、一定の供給速度(48g/分、滞留時間:12分)で原料タンクから反応器に連続供給を開始し、単量体混合物の供給量に相当する反応液を出口から連続的に抜き出した。
反応開始直後に、一旦反応温度が低下した後、重合熱による温度上昇が認められたが、オイルジャケットの温度を制御することにより、反応温度を187~189℃に保持した。
【0098】
単量体混合物の供給開始から温度が安定した時点を、反応液の採取開始点とし、これから37分間反応を継続した結果、1.78kgの単量体混合液を供給し、1.78kgの反応液を回収した。その後反応液を薄膜蒸発器に導入して、未反応モノマー等の揮発成分を分離してエポキシ基を有する(メタ)アクリレート重合体(以下、「共重合体a1-1」という)を1.08kg得た。
共重合体a1-1のMw、Tg、及び末端二重結合濃度を表1に示す。
【0099】
次いで、共重合体a1-1(100部)、重合禁止剤としてジブチルヒドロキシトルエン(以下、「BHT」という)(0.15部)、アロニックスM-5300(東亞合成(株)製商品名)45.7部(共重合体a1-1のエポキシ基の1.1当量の酸価に相当)及び有機溶媒として酢酸ブチル(62.7部)を1Lフラスコに投入し、5%酸素窒素混合ガスをバブリングさせながら、液温を95℃に昇温し、共重合体a1-1を溶解させた。
均一に溶解させた後、反応触媒としてトリフェニルホスフィン(以下、「TPP」という)(0.73部)を添加し、内温95℃を保ちながら12時間攪拌した。さらにTPP(0.73部)を添加し、12時間反応させた。その後、酸価測定を行い、4.5mgKOH/gであることを確認し、反応を終了した。
その結果、共重合体a1-1のM-5300付加物(アクリレート変性体)である重合体A-1を得た。
【0100】
重合体A-1の固形分、酸価、Mn、Mw、アクリル当量(g/eq)、及び固形分60%の25℃における粘度を表1に示す。
【0101】
(2)製造例2~13、及び16
表1に示す変更をした以外は、製造例1と同様な操作により、重合体A-2~13、及び16を得た。
【0102】
重合体A-2~13、及び16の固形分、酸価、Mn、Mw、アクリル当量(g/eq)、固形分60%の25℃における粘度を表1に示す。
【0103】
(3)比較製造例1及び2
表1に示す変更をした以外は、製造例1と同様な操作により、重合体A’-1及び2を得た。
【0104】
重合体A’-1及び2の固形分、酸価、Mn、Mw、アクリル当量(g/eq)、固形分60%の25℃における粘度を表1に示す。
【0105】
(4)製造例14
表1に示す変更をした以外は、製造例1と同様な操作により、共重合体a1-14を得た。
重合体a1-14のMw、Tg、及び末端二重結合濃度を表1に示す。
【0106】
次いで、共重合体a1-14(100部)、重合禁止剤としてジブチルヒドロキシトルエン(以下、「BHT」という)(0.16部)、ダイセル社製プラクセルFA-2D(商品名、66.6部、重合体A-14のイソシアネート基の1.0当量の水酸基価に相当)、触媒としてジブチルスズジラウレート(0.16部)、酢酸ブチル(71.0部)を1Lフラスコに投入し、5%酸素窒素混合ガスをバブリングさせながら、液温を80℃に昇温し、重合体a1-14を溶解させた。引き続き、80℃を保ちながら6時間攪拌し、ATR法赤外分光光度計(Perkin Elmer社製Spectrum100)を用いて、2200cm-1のイソシアネートによる吸収が消失していることを確認し、反応を終了した。
その結果、共重合体a1-14のFA-2D付加物(アクリレート変性体)である重合体A-14を得た。
【0107】
重合体A-14の固形分、Mn、Mw、アクリル当量(g/eq)、固形分60%の25℃における粘度を表1に示す。
【0108】
(5)製造例15
表1に示す変更をした以外は、製造例1と同様な操作により、(メタ)アクリル系重合体a1-15を得た。
共重合体a1-15のMw、Tg、及び末端二重結合濃度を表1に示す。
【0109】
次いで、撹拌機、温度計、水分離器を備えた反応器に、共重合体a1-15(100部)、プラクセルFA-2D(66.5部)、溶媒としてトルエン(71部)、触媒としてp-トルエンスルホン酸(以下、「PTS」という)(1.6部)、重合禁止剤としてBHT(0.16部)を仕込み、80kPaで、6時間還流させ、水(3.7部)を留出させ、脱水エステル化反応を実施した。
その後、反応液に水(50部)を加え攪拌した後に静置し、下層(水層)を分離除去した。次いで、10%水酸化ナトリウム水溶液(50部)を上層(有機層)に加え、攪拌、静置した後に、下層(水層)を除去した。上層(有機層)にBHT(0.16部)を添加、溶解させた後、硫酸ナトリウムを加え脱水を行い、上澄みを取り出し、共重合体a1-15のFA-2D付加物(アクリレート変性体)である重合体A-15を得た。
【0110】
重合体A-15の固形分、酸価、Mn、Mw、アクリル当量(g/eq)、固形分60%の25℃における粘度を表1に示す。
【0111】
(6)製造例17
表1に示す変更をした以外は、製造例1と同様な操作により、共系重合体a1-17を得た。
共重合体a1-17のMw、Tg、及び末端二重結合濃度を表1に示す。
さらに、表1に示す変更をした以外は、製造例15と同様な方法で変性反応を行い、共重合体a1-17のM-5300付加物付加物(アクリレート変性体)である重合体A-17を得た。
【0112】
重合体A-17の固形分、酸価、Mn、Mw、アクリル当量(g/eq)、固形分60%の25℃における粘度を表1に示す。
【0113】
【0114】
表1における略号は、下記を意味する。尚、下記においては、前記で既に定義したものについても、重複して記載しているものもある。
・MMA:メチルメタクリレート
・BA:ブチルアクリレート
・EA:エチルアクリレート
・GMA:グリシジルメタクリレート
・AA:アクリル酸
・HEMA:2-ヒドロキシエチルメタクリレート
・MOI:2-イソシアネートエチルメタクリレート〔カレンズMOI(商品名)、昭和電工(株)製〕
・MEK:メチルエチルケトン
・MOA:オルト酢酸トリメチル〔MOA(商品名)、日宝化学(株)製〕
・DTHP:ジ-t-ヘキシルパーオキサイド〔パーヘキシルD(商品名)、日油(株)製〕
・M5300:アクリル酸のε-カプロラクトン付加物〔アロニックスM-5300(商品名)、東亞合成(株)製、カプロラクトンの平均重合度:2、数平均分子量:300、Tg:-78℃、酸価:186mgKOH/g〕
・FA-2D:2-ヒドロキシエチルアクリレートのε-カプロラクトン付加物〔プラクセルFA2D(商品名)、ダイセル(株)製、カプロラクトンの平均重合度:2、数平均分子量:344、Tg:-78℃、水酸基価:163mgKOH/g〕
・TPP:トリフェニルホスフィン
・DBTDL:ジブチルスズジラウレート
・PTS:p-トルエンスルホン酸
・BHT:ジブチルヒドロキシトルエン
【0115】
2.実施例
(1)実施例1~22、比較例1~3(紫外線硬化性組成物)
表2に示す原料を表2に示す量比により撹拌・混合して活性エネルギー線硬化性組成物を調製し、下記に従い評価した。 それらの結果を表2に示す。
【0116】
<引張物性の評価>
基剤フィルムとしてルミラーT-60(商品名、東レ(株)製PETフィルム、膜厚;100μm)を用意し、その両端にテープを貼り、当該基材フィルムの表面にバーコータ#0を用いて、乾燥後の膜厚が60~80μmになるように前記実施例及び比較例で得られた活性エネルギー線硬化性組成物を塗布した。次いで、通風乾燥機で、90℃、10分乾燥させ、組成物の乾燥塗膜を有する塗工フィルムを得た。
次いで、アイグラフィックス(株)製高圧水銀ランプを用いて、空気雰囲気下、集光式で、UVA照度が500mW/cm2、1回あたりの照射量が800mJ/cm2になるように調節し、塗工フィルムをコンベアで当該光照射下を2回通過させた。
次いで、硬化膜を有するフィルムを1cm幅の短冊状に切り出したのち、硬化膜を基材フィルムから剥離した。
引張試験機(オートグラフAGS-J、(株)島津製作所製)を用いて、この硬化膜の引張速度5mm/分の条件下での破断伸び率(%)及び破断強度(単位:MPa)を測定した。破断強度は5MPa以上が好ましく、破断伸びは2%以上が好ましい。
【0117】
<耐熱性の評価>
基剤フィルムとしてコスモシャインA-4300(商品名、東洋紡(株)製易接着PETフィルム、膜厚;50μm)を用意し、その両端にテープを貼り、当該基材フィルムの表面にバーコータ#0を用いて、乾燥後の膜厚が50~60μmになるように前記実施例及び比較例で得られた活性エネルギー線硬化性組成物を塗布した。次いで、通風乾燥機で、90℃、10分乾燥させ、組成物の乾燥塗膜を有する塗工フィルムを得た。
次いで、アイグラフィックス(株)製高圧水銀ランプを用いて、空気雰囲気下、集光式で、UVA照度が500mW/cm2、1回あたりの照射量が800mJ/cm2になるように調節し、塗工フィルムをコンベアで当該光照射下を2回通過させた。
得られた硬化膜を有するフィルムを、90℃の通風乾燥機で300時間加熱し、加熱前後の色差、ヘイズを測定した。
【0118】
(色差の測定)
日本電色工業(株)製分光色彩計SE-2000(商品名)を用いて、黄色度(YI)を測定した (YIは下式の通り)。ΔYIは3以下が好ましい。
YI = 100(1.28X-1.06Z)/Y (X,Y,Zは色座標系)
ΔYI = YI-YI0 (YI0は加熱試験前のYIを示す)
【0119】
(ヘイズの測定)
日本電色工業(株)製NDH2000(商品名)を用いて測定を行い、加熱前後のヘイズの差(Δヘイズ)を評価した。Δヘイズは2.5以下が好ましい。
【0120】
<耐候性の評価>
基材フィルムとしてゼオノア(商品名、日本ゼオン(株)製、50μm)を用意し、その両端にテープを貼り、当該基材フィルムの表面にバーコータ#0を用いて、乾燥後の膜厚が50~60μmになるように前記実施例及び比較例で得られた活性エネルギー線硬化性組成物を塗布した。次いで、通風乾燥機で、90℃、10分乾燥させ、組成物の乾燥塗膜を有する塗工フィルムを得た。
次いで、アイグラフィックス(株)製高圧水銀ランプを用いて、空気雰囲気下、集光式で、UVA照度が500mW/cm2、1回あたりの照射量が800mJ/cm2になるように調節し、塗工フィルムをコンベアで当該光照射下を2回通過させた。
得られた硬化膜を有するフィルムをメタルウェザーメーター(ダイプラ・ウィンテス社製「DAIPLA METAL WEATHER KU-R5NCI-A」(商品名))に入れ、促進耐候試験を行った。条件は照射63℃、70%RH、照度80mW/cm2とし、2時間に1回2分間のシャワーで、300時間試験を実施した。
試験前後の色差、ヘイズにより評価した。色差及びヘイズの測定は上記と同様に行った。
【0121】
【0122】
表2における略号は、下記を意味する。
・M-215:イソシアヌル酸EO変性ジアクリレート〔アロニックスM-215(商品名)、東亞合成(株)製〕
・M-327:ε-カプロラクトン変性トリス(アクロキシエチル)イソシアヌレート〔アロニックスM-(商品名)、東亞合成(株)製〕
・M-1200:無黄変型ポリエステル骨格ウレタンアクリレート(Mw=4,500)
〔アロニックスM-1200(商品名)、東亞合成(株)製〕
・Om184:1-ヒドロキシシクロヘキシルーフェニルケトン〔IGM RESINS B.V.社製、商品名Omnirad184〕
【0123】
表2の結果から、以下のことがわかる。(メタ)アクリレート系重合体をTgが-30~-90℃の不飽和二重結合含有オリゴマーで変性した本発明の重合体(成分(A))を含有する実施例1~22の組成物では、引張物性、耐熱性及び耐候性の何れにも優れる硬化フィルムが得られた。これに対し、(メタ)アクリレート系重合体をアクリル酸で変性した比較例1及び2の組成物から得られた硬化フィルムは、伸び率が低く、耐熱性に劣り、破損し易かった。又、本発明の重合体(A)の代わりに従来のウレタンアクリレートを使用した比較例3の組成物から得られた硬化フィルムは、耐熱性及び耐候性が不十分であった。
又、実施例12及び19と実施例2との対比から、アクリル当量が高いほど伸び率は向上するが、耐候性及び耐熱性が劣るため、アクリル当量は2500g/eq以下が好ましく、2000g/eq以下がより好ましいことがわかる。又、本発明によれば、破断強度2.5以上で伸び率2%以上のコーティングが得られ、好ましい態様では、破断強度15以上で伸び率4.5%以上、より好ましい態様では、破断強度20以上で伸び率4.5~15%で、耐候性及び耐熱性に優れたコーティングが得られることが判る。
【0124】
(2)実施例23(電子線硬化性組成物)
平滑なガラス板上の両端にテープを貼り、表2に示す組成物を、バーコータ#0を用いて、乾燥後の膜厚が60~80μmになるように塗布し、通風乾燥機で、90℃、10分乾燥させた。
次いで、(株)NHVコーポレーション製の電子線照射装置により、加速電圧150kV、線量150kGy(ビーム電流及び搬送速度で調節)、酸素濃度300ppm以下の条件下で電子線照射を行い、硬化物を得た。
硬化物をガラス板から剥離して、実施例1~22の塗工フィルムと同様に、引張物性、耐熱性及び耐候性の評価を実施した。結果を表2に示す。表2の結果から、本発明の組成物は光開始剤を含まない場合(実施例23)でも、成分(D)(光重合開始剤)を含む場合(実施例1)と同等の結果が得られることがわかった。
【0125】
(3)実施例24~27、比較例4(コーティング剤)
(評価サンプルの作成)
基剤フィルムとしてコスモシャインA-4300(商品名、東洋紡製易接着PETフィルム、膜厚;50μm)を用意し、当該基材フィルム表面に、バーコータ#10を用いて、乾燥後の膜厚が4~5μmになるように表3の配合の活性エネルギー線硬化性組成物を塗布した。次いで、通風乾燥機で、90℃、10分乾燥させ、組成物の乾燥塗膜を有する塗工フィルムを得た。
次いで、アイグラフィックス(株)製高圧水銀ランプを用いて、空気雰囲気下、集光式で、UVA照度が500mW/cm2、1回あたりの照射量が800mJ/cm2になるように調節し、塗工フィルムをコンベアで当該光照射下を1回通過させた。
得られた硬化膜を有するフィルムを使用し、下記の方法に随い、鉛筆硬度、マンドレル試験を実施した。
それらの結果を表3に示す。
【0126】
(鉛筆硬度)
硬化膜表面に、750g荷重で鉛筆を用いて引っ掻き、傷のつかない最も硬い鉛筆の硬さを鉛筆硬度とした
(マンドレル試験)
JIS K5600-5-1に示された方法にて、試験を実施した。
(カール性試験)
得られた硬化膜を有するフィルムを10×10cm四方に切断し水平な台に置き、四隅の浮きの高さの平均値からカール性を評価した。
【0127】
【0128】
鉛筆硬度については、実施例24~26は、実施例27より優れており、マンドレル試験では、実施例24、25、27>実施例26>比較例4の順に優れており、カール性では、実施例24、27>実施例25>実施例26>比較例4の順に優れている結果となった。
【産業上の利用可能性】
【0129】
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物は、高度な力学物性、耐候性及び耐熱性を備えた硬化物が要求される分野で好適に使用することができ、接着剤、コーティング材の他、インキ、及びフィルム等の分野で利用できる。