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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-28
(45)【発行日】2025-05-09
(54)【発明の名称】運転補助装置
(51)【国際特許分類】
   G05G 1/58 20080401AFI20250430BHJP
   G05G 1/02 20060101ALI20250430BHJP
   B60T 7/02 20060101ALI20250430BHJP
   B60T 7/10 20060101ALI20250430BHJP
【FI】
G05G1/58
G05G1/02 D
B60T7/02 C
B60T7/10 L
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021003547
(22)【出願日】2021-01-13
(65)【公開番号】P2022108511
(43)【公開日】2022-07-26
【審査請求日】2023-11-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100141656
【弁理士】
【氏名又は名称】大田 英司
(74)【代理人】
【識別番号】100182888
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100196357
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 吉章
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 良昭
(72)【発明者】
【氏名】大山 諒
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 剛史
(72)【発明者】
【氏名】青木 正昭
【審査官】増岡 亘
(56)【参考文献】
【文献】特開平8-166831(JP,A)
【文献】特開2008-13060(JP,A)
【文献】特開2010-155488(JP,A)
【文献】米国特許第9403455(US,B2)
【文献】独国特許出願公開第10115964(DE,A1)
【文献】特開2002-373027(JP,A)
【文献】特開2000-148273(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05G 1/58
G05G 1/02
B60T 7/02
B60T 7/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドライバーが手動で前下方向に沿う軸方向に変位させてブレーキペダルを押し込むブレーキ操作が可能なブレーキ操作部を車室内に備え、
前記ブレーキ操作部は、運転席のシートクッションの直前において前記軸方向に延びる基部と、当該ブレーキ操作部の上端部に有してドライバーが把持する把持部と、前記基部の上端から屈曲して上方程車幅方向中央部側へ傾斜して延び前記把持部を支持する傾斜部とを備え、
前記把持部は、該把持部を把持するドライバーの掌で前下方向への押し込み操作が可能にセンターコンソールの車幅方向における、前記シートクッション側の縁辺の直上に配置され、
前記センターコンソールの直上における、前記把持部より後方かつ前記シートクッションの側方の位置であって、前記把持部に対して車幅方向中央部寄りかつ、車幅方向中央部に対してドライバー側寄りの位置に、肘当て部材を設け、
前記肘当て部材の肘当て面が、ドライバーが該肘当て面に肘部を当接させて前記掌で前記把持部を前記押し込み操作するときに脇開きを防止可能に、車幅方向においてドライバー側に向かって設けられ、
前記肘当て面が、車幅方向において前記把持部よりも中央部側に位置する上部から下方程ドライバー側に傾斜して下部が前記把持部と車幅方向において重複するように設けられたことを特徴とする
運転補助装置。
【請求項2】
前記肘当て面は、上方程車両後方に位置するように設けられた
請求項1に記載の運転補助装置。
【請求項3】
前記肘当て部材は、肘当て面の少なくとも一部が車両のセンターコンソールに設けられたアームレストより上方に設けられた
請求項1又は2に記載の運転補助装置。
【請求項4】
前記肘当て部材がセンターコンソールに設けられたカップホルダに取付け可能に形成された
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の運転補助装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、身体障害者用の運転補助装置に関し、運転席に着席した下肢不自由者が車室内に備えたブレーキ操作部を用いて手動でブレーキ操作が可能な運転補助装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、手動でブレーキ操作が可能な操作レバーを備えた車両が知られている(例えば特許文献1を参照)。
特許文献1の車両においては、ドライバーの下肢が不自由な場合においても手動でのブレーキ操作が可能となるため、上記特許文献1の技術をはじめとして種々のブレーキ操作機構が開発されている。
【0003】
上記のようなブレーキ操作を手動で行うためのブレーキ操作機構については、ドライバーがブレーキ操作時に上腕および前腕の両方を使って肩を支点として操作を行うため、微小なブレーキ操作状態を保持するようなシーンにおいては、腕の押込み量を一定に保持することが難しく、繊細なブレーキ操作を行うことができないことが懸念される。
ひいては、例えば、ステアリング操作やアクセル操作、シフト変更操作等についても手動で行う構成において、上述したように手動による繊細なブレーキ操作を行うことが困難である場合には、これらステアリング操作等の操作にも悪影響が及び、身体が不自由なドライバーの手動による自由に運転操作が制限されることも懸念される。
【0004】
一方、健常者等のドライバーが、フットブレーキを用いて足によるブレーキ操作を行う際には、足の踵をフロアに接地し、該踵を支点としてブレーキペダルを踏み込むことで繊細なブレーキ操作を行っている。
【0005】
本件発明者らは、上記課題を解決すべく、手動でのブレーキ操作と、上述したフットブレーキを用いたブレーキ操作との差異に着目し、ドライバーが手動でも繊細なブレーキ操作を容易に可能とする構造を鋭意検討した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2002-120590号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、身体が不自由なドライバーであっても自由に運転操作が可能で、且つ、繊細なブレーキ操作を手動でも容易に可能とする運転補助装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明の運転補助装置は、ドライバーが手動で前下方向に沿う軸方向に変位させてブレーキペダルを押し込むブレーキ操作が可能なブレーキ操作部を車室内に備え、前記ブレーキ操作部は、運転席のシートクッションの直前において前記軸方向に延びる基部と、当該ブレーキ操作部の上端部に有してドライバーが把持する把持部と、前記基部の上端から屈曲して上方程車幅方向中央部側へ傾斜して延び前記把持部を支持する傾斜部とを備え、前記把持部は、該把持部を把持するドライバーの掌で前下方向への押し込み操作が可能にセンターコンソールの車幅方向における、前記シートクッション側の縁辺の直上に配置され、前記センターコンソールの直上における、前記把持部より後方かつ前記シートクッションの側方の位置であって、前記把持部に対して車幅方向中央部寄りかつ、車幅方向中央部に対してドライバー側寄りの位置に、肘当て部材を設け、前記肘当て部材の肘当て面が、ドライバーが該肘当て面に肘部を当接させて前記掌で前記把持部を前記押し込み操作するときに脇開きを防止可能に、車幅方向においてドライバー側に向かって設けられ、前記肘当て面が、車幅方向において前記把持部よりも中央部側に位置する上部から下方程ドライバー側に傾斜して下部が前記把持部と車幅方向において重複するように設けられたことを特徴とする。
【0009】
前記構成によれば、ドライバーの上腕の自重を肘当て部材に預けて、肘当て部材に支持された肘を支点に前腕の角度を調整してブレーキ操作を行うことで、腕全体を動かす必要が無いため、前腕での繊細な制動力のコントロールができる。
【0010】
従って、身体が不自由なドライバーであっても自由に運転操作が可能で、且つ、フットブレーキを用いて行われるような足による繊細なブレーキ操作を手動でも容易に操作することができる。
【0011】
さらに上述したように、前記肘当て部材の肘当て面が車幅方向においてドライバー側に向かって設けられるとともに、該肘当て面が下方程ドライバー側に位置するように傾斜して設けられた構成とすることで、ドライバーの体格に関わらず、ドライバーがブレーキ操作するうえで適切な運転姿勢を保持しながらドライバーの肘部を肘当て面にしっかりと当接させることができる。これにより、強いブレーキ操作を容易に行うことができる。
【0012】
また、肘当て面における、ドライバーの肘が適切に当たるポイントの位置(高さや車幅方向の位置)を、ドライバーの体格に応じて調節せずともドライバーの肘部を肘当て面にしっかりと当接させることができ、調節の煩わしさを省くことができる。
【0013】
この発明の態様として、前記肘当て面は、上方程車両後方に位置するように設けられてもよい。
【0014】
この発明の態様として、前記肘当て部材は、肘当て面の少なくとも一部が車両のセンターコンソールに設けられたアームレストより上方に設けられた構成とすることができる。
【0015】
前記構成によれば、ドライバーがアームレストに前腕を載置する場合のように、センターコンソールの側へ寄りかかることなく適切な運転姿勢を保持しながらブレーキ操作を行うことができる。
【0016】
この発明の態様として、前記肘当て部材がセンターコンソールに設けられたカップホルダに取付け可能に形成された構成とすることができる。
【0017】
前記構成によれば、ドライバーが手動でのブレーキ操作を必要としない場合に前記肘当て部材を車体から取り外すことができる。
【発明の効果】
【0018】
上記構成によれば、身体が不自由なドライバーであっても自由に運転操作が可能で、且つ、繊細なブレーキ操作を手動でも容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本実施形態のブレーキ手動操作装置に備えた操作バーおよび肘当て部材が設置された車室内を運転席側から視た外観図。
図2】本実施形態のブレーキ手動操作装置に備えた操作バーおよび肘当て部材が設置された車室内の平面図。
図3図2のA-A線に沿う要部断面図。
図4】本実施形態のブレーキ手動操作装置に備えた操作バーを運転席側から視た外観図。
図5】本実施形態のブレーキ手動操作装置に備えた肘当て部材を車体に取り付ける様子を運転席側から示した外観図。
図6】本実施形態のブレーキ手動操作装置に備えた肘当て部材の平面図。
図7】本実施形態のブレーキ手動操作装置に備えた肘当て部材の正面図。
図8】ドライバーが肘当て部材に肘を当てた状態で操作バーを用いてブレーキ操作をしている様子をドライバーの体格に応じて示した、肘当て部材の作用説明図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態を詳述する。
図中、矢印Fは車両前方、矢印Uは車両上方、矢印Rは車両右側、矢印Lは車両左側、矢印Xはステアリングホイールの軸方向、矢印Xuはステアリングホイールの軸方向の上側(ドライバー側)、矢印Xdはステアリングホイールの軸方向の下側(ドライバー側と反対側)を夫々示すものとする。
【0021】
図1図4に示すように、本実施形態の車両は、右ハンドル車であって、ブレーキペダルやアクセルペダルの足による踏み込み操作が困難な下肢が不自由なドライバーが運転席8に着席した状態でブレーキ操作を手動で行うことができるブレーキ手動操作装置10と、アクセル操作を手動で行うことができるアクセル手動操作装置30(図2図4参照)とを備えている。
なお、本実施形態のブレーキ手動操作装置10は、本発明の運転補助装置に相当する。
【0022】
ブレーキ手動操作装置10とアクセル手動操作装置30は、ベース車両を改造することで、該ベース車両に組み込まれている。以下において、ブレーキ手動操作装置10とアクセル手動操作装置30について説明するが、それに先立ってベース車両の概略構造について説明する。
【0023】
車両における車室のフロアパネル2(図3参照)の前部の左右各側には、運転席8と助手席3とが搭載されており、運転席8の前方には、図2図4に示すように、運転席8に着席したドライバーにより把持した状態で操作されるステアリングホイール6が設けられている。
【0024】
また、図示省略するが、ステアリングホイール6は、アップシフト用のシフトアップスイッチとダウンシフト用のシフトダウンスイッチとのペアで構成されたパドルシフトスイッチを備えている。
【0025】
当例では、シフトアップスイッチは、右側スポーク部6aの後背面に備えるとともに、シフトダウンスイッチは、左側スポーク部6bの後背面に備えている(図示省略)。
【0026】
図1図4に示すように、車室の前端には、該車室の車幅方向全体に亘ってインストルメントパネル80が設けられている。車室のフロアパネル2の前部の運転席8と助手席3との間には、前後方向に延びるセンターコンソール85が設けられている。インストルメントパネル80とセンターコンソール85は、何れも車室の内装部材の一部を成し、センターコンソール85の前部がインストルメントパネル80の車幅方向中央部に一体に接続されている。
【0027】
図1図3に示すように、センターコンソール85の前後方向に延びる上面には、変速操作用のシフトノブ86やスタートスイッチ87等の各種操作部、カップホルダ88a,88b(図2参照)、およびアームレスト90が前側から後側へこの順に設けられている。
【0028】
なお、図2に示すように、カップホルダ88a,88bは、飲み物容器を載置可能に凹状に形成され、開口を開閉する蓋89を備えている。当例においては、センターコンソール85の上面の前後方向における各種操作部とアームレスト90との間の中間領域において、助手席3に着席する乗員用のカップホルダ88bと、ドライバー用のカップホルダ88aとが左右各側に並設されている。なお、図2には、乗員用のカップホルダ88bに備えた蓋89のみ図示している。
【0029】
また、センターコンソール85の上面における中間領域は、本実施形態のように、カップホルダ88a,88bとして凹状に形成された構成に限らず、例えば、小物類を収納するボックス部として凹状に形成された構成としてもよい。
【0030】
図1図2図4に示すように、インストルメントパネル80における運転席8の前方には、タコメータやスピードメータ等の各種計器類の表示部81がステアリングホイール6越しに目視されるように配設されており、その左側のセンターコンソール85の前部との接続部上方には、空調の吹出し口82が配設されており、さらに下方には、ナビゲーション装置のディスプレイ84が設けられている。
【0031】
なお、車室内の運転席8前方のフロアパネル2上の、運転席8に着席したドライバーの右足が置かれる位置には、アクセルペダル(図示省略)が設けられ、アクセルペダルよりも左側(車幅方向中央側)寄りにはブレーキペダル(図示省略)が設けられている。
【0032】
アクセルペダルは、エンジンのスロットル弁を操作するオルガン式のペダルであるとともに、ブレーキペダルは、ブレーキを操作する吊り下げ式のペダルであり、共にベース車両に備えた一般的なペダルである。
【0033】
以下、ブレーキ手動操作装置10について説明する。
図1図4に示すように、ブレーキ手動操作装置10は、運転席8の前側近傍の、ステアリングホイール6に対して左側、すなわちセンターコンソール85のインストルメントパネル80との接続部分の右壁85a(図3参照)近傍に設置されている。
【0034】
図1図3図4に示すように、ブレーキ手動操作装置10は、上部にブレーキ操作ユニット11を備えるとともに、下部に操作量伝達ユニット12を備えている。さらに、図1図4に示すように、ブレーキ操作ユニット11は、操作バー13と軸支部14とを備えている。
【0035】
操作バー13は、軸方向の直交断面が円形状の金属製パイプ材(所謂丸パイプ)から成り、前下後上状に傾斜した姿勢で配置されている。詳しくは、操作バー13は、ステアリングホイール6に対して左側近傍位置(図2参照)において、運転席8に着席したドライバーが左手で操作可能な高さに上部が位置している。さらに、操作バー13は、図1図3に示すように、運転席8の前側近傍のフロアパネル2に向けて前下方向へ延びている。
【0036】
操作バー13は、該操作バー13の軸方向に沿って前下方向に押し込み操作(すなわちブレーキ操作)されることで、軸支部14に対して前下方向にスライド変位するように下部が該軸支部14に軸支されている。
【0037】
操作バー13は、ニュートラル位置と、ニュートラル位置よりもさらに前下方向へ所定長さだけ押し込んだ最大押込み位置との間において軸方向にスライドする。なお、図1図4に示した操作バー13は、何れもニュートラル位置に配置された状態を示している。
【0038】
操作量伝達ユニット12は、ブレーキ操作ユニット11とブレーキペダル(図示省略)との間に介在し、操作バー13の上記前下方向へのスライド変位による操作力(操作量)をブレーキペダルへ伝達する構成としている。すなわち、ベース車両に備えたブレーキペダルは、手動によるブレーキ操作によって操作バー13が軸方向にスライドする動きに連動する構成としている。
【0039】
これにより、ブレーキ手動操作装置10は、操作バー13を用いた手動によるブレーキ操作時に、操作バー13の前下方向へのスライド量(押し込み量)に応じた踏み込み量でブレーキペダルを回動させてブレーキを作動させることができる。
【0040】
また、操作バー13は、ブレーキペダルと同様にニュートラル位置に付勢されており、操作バー13とブレーキペダルの夫々のニュートラル位置は、互いに対応付けられている。このため、操作バー13のニュートラル位置からの前下方向への押し込みがドライバーによって解除された際には、操作バー13は、ブレーキペダルとともに夫々のニュートラル位置に同時に復元される。
【0041】
本実施形態のブレーキ手動操作装置10に備えた上述した操作バー13は、操作バー本体部15と、操作バー本体部15の上端に設けられた把持部16とで一体に構成されている。
【0042】
操作バー本体部15は、基部15aと、基部15aの上端から屈曲部15bを介して、上方程車幅方向外側へ傾斜して直線状に延びる傾斜部15cとを有して一体に構成されている。
【0043】
基部15aは、車両平面視で前後方向に一致する方向に延びるとともに、軸支部14と同軸を成すように前下後上状に傾斜した姿勢で直線状に延びており、軸方向に沿って同径に形成されている。基部15aの下部は、筒状の軸支部14の後上方に向けて開口する開口を通じて該軸支部14に嵌め込まれた状態で軸支されている。
【0044】
傾斜部15cは、基部15aと同様に前下後上状に傾斜しているが、基部15aよりも急峻な姿勢(立ち上がり姿勢)で前下後上状に傾斜するとともに、上述したように上方程車幅方向中央部側へ傾斜して延びている。
【0045】
これにより、傾斜部15cは、手動操作領域(平面視でセンターコンソール85とフロアパネル2との境界部に相当する位置)(図2参照)において把持部16を下方から支持している。なお、傾斜部15cは、下端が基部15aと略同径に形成されるとともに、上方程先細り形状に形成されている。
【0046】
図1図3図4に示すように、把持部16には、ドライバーが把持部16を把持しながら各種操作を行うための操作ボタンが複数配設されている。
【0047】
具体的には、把持部16の右側面16aには、ブレーキロックスイッチ17およびハザードスイッチ18が配設されている。
【0048】
ブレーキロックスイッチ17は、ブレーキが作動状態において、ブレーキ状態をロック保持することができる。すなわち、ブレーキロックスイッチ17は、ブレーキ操作用の操作バー13を押し下げた状態において押圧することで、該操作バー13を押し下げ状態に保持することができる。ブレーキロックスイッチ17は、再度、押圧することで、ブレーキ状態を解除することができる。
【0049】
本実施形態において、ハザードスイッチ18は、インストルメントパネル80における運転席8の前方に設けられたハザードスイッチ(図示省略)と同様に、ドライバーが押圧することによってハザードランプ(非常点滅灯)を点滅させることができ、車両周辺の人に対して注意を促したり、危険を報知することができる。
なお、ハザードスイッチ18は、再度、押圧することによってハザードランプの点滅を停止させる構成としている。
【0050】
また、図3に示すように、把持部16の前下面16d(反ドライバー側の裏面)には、パドルシフトスイッチ23が設けられている。なお、図示省略するが、パドルシフトスイッチ23は、シフトダウン用のシフトダウンスイッチとシフトアップ用のシフトアップスイッチとがペアで並設されたシーソー式のスイッチである。
【0051】
また、図1図2図4に示すように、本実施形態のアクセル手動操作装置30は、ステアリングホイール6のリム部61に対して径内側近傍に配設されたアクセル操作部材としてのアクセルレバー31を備えている。
【0052】
アクセルレバー31は、ドライバーがステアリングホイール6を把持した手の親指等でニュートラル位置からステアリング軸方向の下方(反ドライバー側)へ押し込み可能に構成されている。さらに、アクセルレバー31は、ニュートラル位置よりも押し込まれた位置からニュートラル位置へ復元可能に該ニュートラル位置(上方)へ付勢されている。
【0053】
これにより、ドライバーは、アクセルレバー31をニュートラル位置と、所定長さ分だけ押し込まれた最大押し込み位置との間において押し込み操作することができ、その押し込み量に応じてエンジンのスロットル弁の開度操作、すなわち、車両の加減速操作を行うことができる。
【0054】
ところで、図1図3に示すように、本実施形態の車両は、車室内における把持部16の車両後方であって、ドライバーが操作バー13を操作可能に把持部16を把持した状態で該ドライバーの左腕の肘部に相当する位置に、該肘部を当接可能な肘当て部材40が設けられている。
【0055】
肘当て部材40は、センターコンソール85のドライバー用のカップホルダ88aに相当する位置(すなわち、センターコンソール85の車幅方向におけるドライバー側寄りの位置)に立設されている。
【0056】
図1図3に示すように、肘当て部材40は、肘当て部材本体41と支柱フレーム42と車体取付け部43とを有して構成されている。
【0057】
図5図7に示すように、車体取付け部43は、支柱フレーム42と一体に形成された芯材(図示省略)と、芯材に外装された外装部材44と、外装部材44の上面に設置されたトリムパネル45とを備えている。
【0058】
芯材は、図示省略するが、車体取付け部43の骨格を成す金属フレーム等で形成されている。本実施形態においては、後述する支柱フレーム42を車体取付け部43に相当する部位まで下方へ延設し、この下方延設部分を車体取付け部43用の芯材としている(図示省略)。
【0059】
外装部材44は、ウレタン等の弾性部材で形成され、芯材の主に外周に装着されている。これにより、車体取付け部43は、凹状のカップホルダ88aの内径よりも若干大径に形成される。但し、車体取付け部43は、カップホルダ88aの深さよりも上下方向の長さが短く形成されている。トリムパネル45(ダミー用の蓋)は、ドライバー用のカップホルダ88aに備えた蓋(図示省略)に対応した大きさを有する板状に形成されている。
【0060】
肘当て部材40を車体に取り付ける際には、ドライバー用のカップホルダ88aの蓋を取り外して該カップホルダ88aを開口させた状態とし、図5中の白抜きの矢印に示すように、該開口部を通じて車体取付け部43を凹状のカップホルダ88aに嵌め込むことで、車体取付け部43は、カップホルダ88aに嵌合保持される。なお、車体取付け部43がカップホルダ88aに嵌合保持された状態において、トリムパネル45は、肘当て部材40を車体に取り付け前における、ドライバー用のカップホルダ88aの蓋に相当する位置に設置された状態となる。
また、肘当て部材40は、車体取付け部43をカップホルダ88aから引き抜くことで車体から取り外すことができ、カップホルダ88aは、飲み物容器を載置可能に凹状の形態に復元される。
【0061】
ドライバー用のカップホルダ88aに車体取付け部43を取り付けた状態において、支柱フレーム42は、図1図3に示すように、ドライバー用のカップホルダ88aに相当する位置から立設される。
【0062】
図7に示すように、支柱フレーム42は、上部を除く全体が上下方向(鉛直方向)に延びるとともに、図1図3図5に示すように、上部が上方程後方へ位置するように傾斜して設けられている。支柱フレーム42は、上端部が肘当て部材本体41の下部に取り付けられており、肘当て部材本体41を直下から支持する構成としている(図7参照)。
【0063】
肘当て部材本体41は、フレーム(図示省略)、クッションパッドと、フレーム及びクッションパッド(図示省略)を覆うトリムカバー47とを備えた板状に形成され、一方の面(右面)が車幅方向におけるドライバー(運転席8)を略臨むように配置されている。
【0064】
フレームは、金属材料又は比較的硬質な樹脂材料からなり、肘当て部材本体41の骨格を形成する。クッションパッドは、例えば軟質ウレタンフォーム等の発泡材からなり、フレームの少なくとも右面(ドライバーを略臨む側の面)を覆ってフレームに組み付けられる。
【0065】
トリムカバー47は、例えば皮革(天然皮革、合成皮革)、布(ニット、織布、不織布)等の表皮材からなり、肘当て部材本体41の右面に配置される右面表皮と、左面に配置される左面表皮と、右面表皮および左面表皮を接続するマチ表皮とを有し、これらの表皮が縫合されて形成されている。
【0066】
肘当て部材本体41は、車幅方向の右面を肘当て面48として形成されている。肘当て面48は、フレームの右面を覆うクッションパッドによって、ドライバーが肘を当接したときに痛くないように柔軟性を確保している。
【0067】
図2図6図7に示すように、肘当て部材本体41は、該肘当て面48が下方程車幅方向においてドライバー(運転席8)側に位置するように傾斜した姿勢で支柱フレーム42によって支持されている。
【0068】
当例においては、肘当て面48は、上方が助手席3側、下方が運転席8側に位置するように車両正面視で鉛直方向に対して約35度の傾斜角度で傾斜している。但し、肘当て面48の傾斜角度は、ドライバーが把持部16を把持した状態で、該ドライバーの左腕の肘部を当接し易い任意の角度に設定することができる。
【0069】
図2に示すように、肘当て部材本体41は、平面視で運転席8の座席部の左側近傍の位置に配置されるとともに、該肘当て部材本体41の下部が車幅方向において把持部16の少なくとも一部と重複するように配置されている。当例においては、肘当て部材本体41は、把持部16に対して若干左側の位置に配置されている。肘当て部材本体41の後背側には、アームレスト90が設置されており、図3に示すように、肘当て部材本体41は、上下方向の下部を除く全体がアームレスト90の上面よりも上方に突出するように高く形成されている。肘当て部材本体41は、上部のみが把持部16と略同じ(上下方向に重複する)高さになるように配置されている(図3参照)。
【0070】
また、図1図3に示すように、肘当て部材本体41は、上方程車両後方に位置するように傾斜しており、車両側面視で各コーナー部が面取り形状に形成された略平行四辺形に形成されている。
【0071】
具体的には、図5図7に示すように、肘当て部材本体41の下辺41dは、車両前後方向に略水平に直線状に形成されるとともに、図5図6に示すように、後辺41rと前辺41fとは、共に上方程車両後方に位置するように傾斜するとともに、互いに平行に直線状に延びている。
【0072】
図1図4に示すように、上述した実施形態のブレーキ手動操作装置10(運転補助装置)は、手動でブレーキ操作可能な操作バー13(ブレーキ操作部)を車室内に備え、該操作バー13は把持部16を備え、図1図3に示すように、該把持部16の車両後方における、ドライバーが把持部16を、操作バー13を操作可能に把持した状態で該ドライバーの肘部を当接可能な位置に、肘当て部材40を設けたことを特徴とする。
【0073】
前記構成によれば、ドライバーの上腕の自重を肘当て部材40における肘当て部材本体41に預けて、肘当て部材本体41に支持された肘を支点に前腕の角度を調整してブレーキ操作を行うことで、左腕全体を動かす必要が無いため、前腕での繊細な制動力のコントロールができる。
従って、身体が不自由なドライバーであってもフットブレーキを用いて行われるような足による繊細なブレーキ操作を手動でも容易に操作することができる。
【0074】
また、前記構成によれば、操作バー13を用いたブレーキ操作時に、身体が不自由なドライバーであっても、姿勢を崩す必要がなく安楽な運転姿勢を維持できるため、例えば、ドライバーがステアリング操作、アクセル操作、シフト変更操作等についても手動で行い易くなり、結果として自由に運転操作を行うことができる。
【0075】
具体的は、図8中の大柄なドライバーDmが肘を肘当て部材本体41に当てた状態で操作バー13を用いてブレーキ操作を行う手順および方法について説明する。まず、ドライバーDmは、ブレーキ操作時には、肘当て部材本体41の肘当て面48に当てた左腕の肘を起点として、操作バー13を前下方向へ押し込む。これにより、ドライバーDmの正面視および側面視何れの側においても脇開きが抑制され、ドライバーDmは、運転姿勢を崩すことなく安楽な運転姿勢のまま前腕を押し込むことができる。
【0076】
さらに、ドライバーDmが左手で操作バー13を前下方向へ前腕を押し込む際には、左腕の肘を肘当て部材本体41に当接した状態のまま肘当て面48に沿ってガイドしながら前腕を前下方向へ押し込むことが好ましい。これにより、肘当て部材本体41によって、ブレーキ操作時の左手の前下方向への操作軌道をアシストすることができ、結果として、ドライバーDmの左手のブレ等無駄な動きを抑制し、操作バー13のロスの少ない操作、コントロールが可能となる。
【0077】
この発明の態様として、図1図3図6図7に示すように、肘当て部材本体41の肘当て面48が車幅方向においてドライバー側に向かって設けられるとともに、該肘当て面48が下方程ドライバー側に位置するように傾斜して設けられたことを特徴とする。
【0078】
前記構成によれば、ドライバーの体格に関わらず、ドライバーがブレーキ操作するうえで適切な運転姿勢を保持しながらドライバーの肘部を肘当て面48にしっかりと当接させることができる。これにより、強いブレーキ操作を容易に行うことができる。
【0079】
また、肘当て面48における、ドライバーの肘が適切に当たるポイントの高さを、ドライバーの体格に応じて調節せずともドライバーの肘部を肘当て面48にしっかりと当接させることができる。
【0080】
具体的には、上述したように、肘当て部材本体41の肘当て面48は、下方程ドライバー側に位置(近接)するように傾斜して設けられたため、図8中実線で示すように、ドライバーDmの体格が相対的に大きい場合、該ドライバーDmの肘部は、下方程ドライバーDm側へ傾斜する肘当て面48における、相対的に上方(後上)の位置に当接される(図8中の肘当てポイントPm参照)。
【0081】
一方、図8中仮想線で示すように、ドライバーDwの体格が相対的に小さい場合、ドライバーDwの肘部は、下方程ドライバーDw側へ傾斜する肘当て面48における、相対的に下方(前下)の位置に当接される(図8中の肘当てポイントPw参照)。
【0082】
このように、肘当て部材本体41の肘当て面48は、上述したように、下方程ドライバー側に位置するように傾斜して設けられたため、ドライバーの体格に関わらず、ドライバーが肘当て面48における、ブレーキ操作するうえで適切な肘当てポイントPm,Pwで該ドライバーの肘部をしっかりと当接(支持)させることができる。
【0083】
従って、ドライバーは、体格に関わらず、運転姿勢を保持しながら、すなわち左腕を前方に伸ばして把持部16を把持した状態で通常のブレーキ操作を行う姿勢を保持しながら強いブレーキ操作を容易に行うことができる。
【0084】
また、ドライバーは、肘当て面48における、肘当てポイントの位置(肘が当たるポイントの高さおよび車幅方向の位置)を、ドライバーの体格に応じて調節せずとも、肘を適切な肘当てポイントに当接させることができ、肘当てポイントを調節する煩わしさがなく肘当て部材本体41を活用することができる。
【0085】
また、肘当て部材本体41の肘当て面48は、アームレスト90におけるドライバーの腕が載置される上面のように、水平な面ではなく、車幅方向においてドライバー側を臨むように設けられるため、ドライバーが、左手でブレーキ操作時に把持部16を把持した状態で操作バー13を前下方向へ押し込む際に、ドライバーの左腕の肘部を肘当て面48にしっかりと当てることができる。これにより、ドライバーの左腕の肘部が車幅方向における肘当て面48の位置よりも助手席3側に逃げることをしっかりと抑制することができる。すなわち、車両正面視で該ドライバーの左腕の脇角が開くことを抑制し、前腕での繊細なブレーキのコントロールができる。
【0086】
この発明の態様として、図3に示すように、肘当て部材本体41は、肘当て面48の少なくとも一部(肘当て面48における、実質的な肘当て部分が)が車両のセンターコンソール85に設けられたアームレスト90より上方に設けられたことを特徴とする。
【0087】
具体的には、肘当て部材本体41は、肘当て面48の上下方向の少なくとも中間位置より上方部分がアームレスト90の上面よりも上方に設けられている。さらに、図2に示すように、肘当て部材本体41は、アームレスト90よりも車両前側の位置かつ、車幅方向におけるドライバー側寄りの位置に設けられている。
【0088】
前記構成によれば、ドライバーが肘当て部材本体41に肘を預ける際には、アームレスト90に前腕を載置する場合のように、センターコンソール85の側へ寄りかからずとも適切な運転姿勢を保持しながらブレーキ操作を行うことができる。
【0089】
この発明の態様として、図1図2図5に示すように、肘当て部材40がセンターコンソール85に設けられた、ドライバー用のカップホルダ88aに取付け可能に形成されたことを特徴とする。
【0090】
前記構成によれば、凹状のカップホルダ88aに対して肘当て部材40を抜き差しするだけで容易に着脱することができる。このため、例えば、ドライバーが手動でのブレーキ操作を必要としない健常者である場合等においては、肘当て部材40を車体から取り外すことができるため、アームレスト90を活用し易くなる。また、肘当て部材40の車体への取り付けに際してベース車両に対して大掛かりな改良を加えることもない。
【0091】
また、この発明の態様として、図1図3図5図6に示すように、肘当て部材40における肘当て部材本体41は、上方程車両後方に位置するように設けられたものである。
【0092】
このように、肘当て部材本体41は、上方程車両後方に位置するように設けられているため、ドライバーの体格の違いによる肘当てポイントの前後方向および上下方向の違いに関わらず、ドライバーは肘を肘当て面48に確実に当接させることができる。
【0093】
さらに、肘当て部材本体41は、上方程車両後方に位置するように設けられているため、ドライバーは、肘当てポイントに肘を当てた状態から操作バー13を前下方向へ押し込む際における肘部の前下方向への軌道に沿って該肘部をガイドし続けることができる。
【0094】
例えば、図8中実線で示すように、ドライバーDmの体格が相対的に大きい場合、該ドライバーDmの肘部は、肘当て面48における、相対的に後方(後上)の位置に当接される(図8中の肘当てポイントPm参照)。また、図8中仮想線で示すように、ドライバーDwの体格が相対的に小さい場合、ドライバーDwの肘部は、肘当て面48における、相対的に前方(前下)の位置に当接される(図8中の肘当てポイントPw参照)。
【0095】
さらに、肘当て部材本体41は、不用意に大きく形成せず、上方程車両後方に位置するように必要最小限の大きさで設けられているため、センターコンソール85に設けられた肘当て部材40によって、ドライバーがセンターコンソール85に設けられた各種スイッチ群や変速操作用のシフトノブ86やスタートスイッチ87へアクセスするうえで支障を来すことがない。さらに、助手席3と運転席8との間に立設された肘当て部材40によって、助手席3と運転席8との間を仕切ることによる閉塞感を緩和することができる。
【0096】
また、この発明の態様として、図2図4に示すように、把持部16は、操作バー13の上端に備え、肘当て部材本体41は、車幅方向における、操作バー13の上端に備えた把持部16の位置よりも車両後方かつ車両左側(車幅方向における反ドライバー側)の位置に設けられている。さらに、操作バー本体部15(ブレーキ操作本体部)の上部には、車両上方程左側(車幅方向において、肘当て部材本体41へ近接する側)へ傾斜する傾斜部15cが設けられている。
【0097】
前記構成によれば、操作バー本体部15の上部に設けた傾斜部15cは、肘当て部材本体41に当接された左腕の肘部から左手まで車両前方かつ車幅方向内側へ延びる左腕の前腕の平面視における向きと車両平面視で一致させることができる。
【0098】
このような傾斜部15cを操作バー13の上部に備えることで、ドライバーが左腕の肘部を肘当て面48にしっかりと当接させた状態とし、左手で把持部16(操作バー13)を前下方向へ押し込む際に、把持部16を押す力(特に、車幅方向内方向への力)を、傾斜部15cによってしっかりと受け止めることができる。
【0099】
従って、ドライバーが肘当て面48を肘支点として把持部16を押し込む力を、操作バー本体部15に効率よく伝えることができ、結果として操作バー13のスムーズな押し込み操作が可能となる。
【0100】
この発明は、上述の実施例の構成のみに限定されるものではなく様々な実施形態で形成することができる。
【符号の説明】
【0101】
10…ブレーキ手動操作装置(運転補助装置)
13…操作バー(ブレーキ操作部)
16…把持部
40…肘当て部材
48…肘当て部材の肘当て面
85…センターコンソール
88a…ドライバー用のカップホルダ(カップホルダ)
90…アームレスト
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8