(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-28
(45)【発行日】2025-05-09
(54)【発明の名称】容器の製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 44/00 20060101AFI20250430BHJP
B29C 45/00 20060101ALI20250430BHJP
【FI】
B29C44/00 D
B29C45/00
(21)【出願番号】P 2021024872
(22)【出願日】2021-02-19
【審査請求日】2024-01-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100169063
【氏名又は名称】鈴木 洋平
(72)【発明者】
【氏名】原田 拓治
(72)【発明者】
【氏名】軸丸 貴支
(72)【発明者】
【氏名】前川 政貴
【審査官】家城 雅美
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2010/147084(WO,A1)
【文献】特開2004-051961(JP,A)
【文献】特開2017-094538(JP,A)
【文献】特開2020-040690(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 44/00
B29C 45/00
B65D 1/00-1/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A1)樹脂材料と、超臨界状態の二酸化炭素とを含む溶融樹脂組成物を調製する工程と、
(B1)前記溶融樹脂組成物を金型のキャビティ内に射出する工程と、
(C1)前記(B1)工程後、15~80MPaの圧力条件で前記キャビティを保圧するとともに冷却する工程と、
(D1)厚さ0.6mm以下の薄肉部を有する容器を前記金型から回収する工程と、
を含み、
前記溶融樹脂組成物における前記樹脂材料の質量を100質量部としたとき、前記超臨界状態の二酸化炭素の量が2~3質量部である、容器の製造方法。
【請求項2】
(A2)樹脂材料と、超臨界状態の窒素とを含む溶融樹脂組成物を調製する工程と、
(B2)前記溶融樹脂組成物を金型のキャビティ内に射出する工程と、
(C2)前記(B2)工程後、5~50MPaの圧力条件で前記キャビティを保圧するとともに冷却する工程と、
(D2)厚さ0.6mm以下の薄肉部を有する容器を前記金型から回収する工程と、
を含み、
前記溶融樹脂組成物における前記樹脂材料の質量を100質量部としたとき、前記超臨界状態の窒素の量が0.5~1.5質量部である、容器の製造方法。
【請求項3】
前記容器が、厚さ0.3~0.6mmの底部と、厚さ0.25~0.40mmの側壁部とを有する、請求項1又は2に記載の容器の製造方法。
【請求項4】
前記キャビティにおける最大流動長が60mm以上である、請求項1~3のいずれか一項に記載の容器の製造方法。
【請求項5】
前記樹脂材料は、温度230℃及び荷重2.16kgの条件で測定されるメルトフローレートが15g/10分
以上の熱可塑性樹脂である、請求項1~4のいずれか一項に記載の容器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は容器及びその製造方法に関し、より詳細には超臨界流体成形によって製造される薄肉容器及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、マイクロプラスチックの地球環境への影響が注目されるようになり、脱プラスチック運動やプラスチック製品の使用を控える風潮が高まっている。食品や日用品の用途における使い捨てのプラスチック容器については、ユーザーから少しでも石油由来のプラスチック使用量を少なくできないかという要望が強くなってきている。
【0003】
プラスチック使用量を削減する手段の一つとして発泡成形が挙げられる。発泡成形は化学発泡成形と物理発泡成形に大別できる。化学発泡成形では発泡剤が使用される。一方、物理発泡成形では超臨界状態の流体が使用され、この方法は超臨界流体成形と称される。化学発泡成形は発泡剤の環境への悪誘響の懸念、金型の汚染等の課題がある。超臨界流体成形は、従来、自動車部品成形や事務用機器類などの比較的大型の工業製品に適用されてきた。近年、超臨界流体の生成技術及び樹脂組成物への混練技術の向上に伴ってハイサイクルな射出成形に超臨界流体成形を適用することが検討されている。特許文献1~3は超臨界流体成形によって製造される食品用容器を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許6085729号公報
【文献】特許6430684号公報
【文献】特開2020-040690号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らは、超臨界流体成形の適用範囲を広げるべく、バターやマーガリン、クリームチーズなどを収容する薄肉容器を超臨界流体成形で製造することを試みた。その結果、超臨界流体成形によって樹脂材料の使用量を削減できる一方、キャビティの流動末端にまで樹脂材料が至らない現象(以下、「ショートショット」という。)が生じる課題があることを本発明者らは見出した。
【0006】
本開示は、上記課題を解決すべくなされたものであり、プラスチック使用量を削減することが可能であり且つ従来の製造方法ではショートショットが生じやすい薄肉容器を高い歩留まりで製造するのに有用な容器の製造方法を提供する。また、本開示は、プラスチック使用量が削減されており、バターやマーガリンなどの乳製品を収容する薄肉容器などに適用可能な容器を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一側面は超臨界流体を使用して薄肉容器を製造する方法に関する。本開示の第一の態様に係る製造方法は、超臨界状態の二酸化炭素を使用するものである。すなわち、この製造方法は、(A1)樹脂材料と、超臨界状態の二酸化炭素とを含む溶融樹脂組成物を調製する工程と、(B1)溶融樹脂組成物を金型のキャビティ内に射出する工程と、(C1)上記(B1)工程後、15~80MPaの圧力条件でキャビティを保圧するとともに冷却する工程と、(D1)厚さ0.6mm以下の薄肉部を有する容器を金型から回収する工程とを含み、溶融樹脂組成物における樹脂材料の質量を100質量部としたとき、超臨界状態の二酸化炭素の量が2~3質量部である。
【0008】
上記製造方法によれば、溶融樹脂組成物における二酸化炭素の量が上記範囲であり且つ(C1)工程における保圧条件が上記範囲であることで、軽量化された薄肉容器を高い歩留まりで得ることができる。本発明者らの検討によると、例えば、溶融樹脂組成物における二酸化炭素の量が2質量部未満であると、ショートショットが生じやすい。また、(C1)工程における保圧条件が80MPaを超えると、後膨れが顕著に生じやすい。後膨れは、金型から成形体を取り出した後、成形体が局所的に膨れる現象を意味し、成形後の硬化収縮時に残留応力により歪みが集中する箇所に発生しやすいと推察される。
【0009】
超臨界状態の二酸化炭素の代わりに、超臨界状態の窒素を使用してもよい。すなわち、本開示の第二の態様に係る製造方法は、(A2)樹脂材料と、超臨界状態の窒素とを含む溶融樹脂組成物を調製する工程と、(B2)溶融樹脂組成物を金型のキャビティ内に射出する工程と、(C2)上記(B2)工程後、5~50MPaの圧力条件でキャビティを保圧するとともに冷却する工程と、(D2)厚さ0.6mm以下の薄肉部を有する容器を金型から回収する工程とを含み、溶融樹脂組成物における樹脂材料の質量を100質量部としたとき、超臨界状態の窒素の量が0.5~1.5質量部である。
【0010】
上記製造方法によれば、溶融樹脂組成物における窒素の量が上記範囲であり且つ(C2)工程における保圧条件が上記範囲であることで、軽量化された薄肉容器を高い歩留まりで得ることができる。
【0011】
本開示の一側面は超臨界流体成形による成形体である容器に関する。この容器は、厚さ0.3~0.6mmの底部と、厚さ0.25~0.40mmの側壁部とを備える。この容器は、プラスチック使用量が削減されており、バターやマーガリンなどの乳製品を収容する薄肉容器に適用可能である。この容器はパフェアイス、プリン、かき氷、ヨーグルトなどのデザートを収容する薄肉容器にも適用可能である。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、プラスチック使用量を削減することが可能であり且つ従来の製造方法ではショートショットが生じやすい薄肉容器を高い歩留まりで製造するのに有用な容器の製造方法が提供される。また、本開示によれば、プラスチック使用量が削減されており、バターやマーガリンなどの乳製品を収容する薄肉容器などに適用可能な容器が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は本開示の一実施形態に係る容器を示す斜視図である。
【
図2】
図2は
図1に示す容器の底部及び側壁部の断面図である。
【
図3】
図3(a)は比較例1に係る容器を示す写真であり、
図3(b)は実施例1に係る容器を示す写真である。
【
図4】
図4は比較例3に係る容器を示す写真である。
【
図5】
図5(a)は比較例4に係る容器を示す写真であり、
図5(b)は比較例5に係る容器を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本開示の実施形態について詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0015】
<容器の製造方法>
本実施形態に係る容器の製造方法は以下の工程を含む。
(A)樹脂材料と、超臨界流体とを含む溶融樹脂組成物を調製する工程。
(B)溶融樹脂組成物を金型のキャビティ内に射出する工程。
(C)上記(B)工程後、キャビティを保圧するとともに冷却する工程。
(D)厚さ0.6mm以下の薄肉部を有する容器を金型から回収する工程。
(A)工程から(D)工程の一連の工程は、例えば、MuCell射出成形機(「MuCell」はTrexel.Co.Ltdの登録商標)を使用して実施できる(特許文献1,2参照)。
【0016】
[(A)工程]
まず、樹脂材料と、超臨界流体とを含む溶融樹脂組成物を調製する。樹脂材料として、熱可塑性樹脂が挙げられ、その具体例はポリプロピレン樹脂及びポリエチレン樹脂である。熱可塑性樹脂のメルトフローレートは、好ましくは15g/10分以上であり、より好ましくは20~40g/10分であり、更に好ましくは25~36g/10分である。この値が15g/10分以上であることで、ショートショットの発生を抑制できる傾向にあり、他方、40g/10分以下であることで、落下耐性に優れる容器を製造できる傾向にある。なお、ここでいうメルトフローレート(MFR)は、JIS K7210-1:2014に記載の方法に準拠し、温度230℃及び荷重2.16kgの条件で測定された値を意味する。
【0017】
本発明者らの検討によると、二酸化炭素を使用する場合、樹脂材料100質量部に対して2~3質量部の超臨界状態の二酸化炭素を添加して溶融樹脂組成物を調製する。二酸化炭素の量が2質量部以上であることで、成形ショット毎の充填圧のばらつきを小さくできるとともに、二酸化炭素の添加による溶融樹脂組成物の粘度低下により、ショートショットの発生を抑制することができる。これに加え、超臨界状態の二酸化炭素に起因する発泡を促すことで成形体の内部に空隙を形成することができる。他方、二酸化炭素の量が3質量部以下であることで、(C)工程における保圧圧力を比較的低く設定することができ、後膨れを抑制できる傾向にある。
【0018】
窒素を使用する場合、樹脂材料100質量部に対して0.5~1.5質量部の超臨界状態の二酸化炭素を添加して溶融樹脂組成物を調製する。窒素の量が0.5質量部以上であることで、成形ショット毎の充填圧のばらつきを小さくできるとともに、窒素の添加による溶融樹脂組成物の粘度低下により、ショートショットの発生を抑制することができる。これに加え、超臨界状態の窒素に起因する発泡を促すことで成形体の内部に空隙を形成することができる。他方、窒素の量が1.5質量部以下であることで、(C)工程における保圧の圧力を比較的低く設定することができ、後膨れを抑制できる傾向にある。
【0019】
溶融樹脂組成物の温度(スクリューシリンダ温度)は、樹脂材料の融点又はMFRに応じて設定すればよい。ポリプロピレン樹脂を使用する場合、この温度は210~230℃程度であることが好ましい。ポリエチレン樹脂を使用する場合、この温度は220~240℃程度であることが好ましい。この温度が下限値以上であることで、キャビティ内において樹脂が流動しやすく、他方、上限値以下であることで、樹脂の焦げ付きを抑制できる傾向にある。
【0020】
溶融樹脂組成物は、樹脂材料及び超臨界流体以外の成分を含んでもよい。すなわち、溶融樹脂組成物は、必要に応じて、例えば、フィラー、着色剤、スリップ剤、帯電防止剤などを更に含んでもよい。
【0021】
[(B)工程]
(A)工程で調製した溶融樹脂組成物を金型のゲートを通じてキャビティ内に射出する。射出速度は、好ましくは60mm/秒以上であり、より好ましくは200mm/秒以上であり、更に好ましくは250mm/秒以上である。射出速度が60mm/秒以上であることで、流動末端まで樹脂を到達させやすく、ショートショットの発生を抑制できる傾向にある。射出速度の上限値は、例えば、350mm/秒である。
【0022】
キャビティのゲートから、最も遠い流動末端までの距離(以下、「最大流動長」という。)が60mm以上であっても、流動末端にまで溶融樹脂組成物が至ることが好ましい。最大流動長は、例えば、70mm以上又は80mm以上であってもよい。最大流動長の上限値は、例えば、120mmである。
【0023】
[(C)工程]
上記(B)工程後、キャビティを保圧するとともに冷却する。本発明者らの検討によると、超臨界流体として二酸化炭素を使用した場合、15~80MPaの圧力条件で保圧する。この圧力が15MPa以上であることで、ショートショットの発生を抑制することができ、他方、80MPa以下であることで、後膨れの発生を抑制することができる傾向にある。この値は、好ましくは15~50MPaであり、より好ましくは15~30MPaである。超臨界流体として窒素を使用した場合、5~50MPaの圧力条件で保圧する。この圧力が5MPa以上であることで、ショートショットの発生を抑制することができ、他方、50MPa以下であることで、後膨れの発生を抑制することができる傾向にある。この値は、好ましくは15~50MPaであり、より好ましくは30~50MPaである。保圧時間は、超臨界流体の種類に関わらず、例えば、0.1~1.0秒とすればよい。
【0024】
薄肉容器を作製する観点から、キャビティ内の圧力を低下させるための「コアバック」と称される工程を実施しないことが好ましい。コアバックは、キャビティに充填された溶融樹脂組成物が固化し終わる前に、金型の可動部を移動させてキャビティの容積を拡大させる工程である(特許文献1参照)。
【0025】
[(D)工程]
金型内の成形体(薄肉容器)の温度が30~60℃程度に下がった時点で、成形体を金型から回収する。本実施形態においては、(C)工程で保圧を実施するとともに、上述のように「コアバック」を実施しないため、本実施形態に係る容器体には目視で確認できるような大きな空隙があまり形成されない。本実施形態に係る容器は、空隙による軽量化よりも、薄肉化による軽量化を主に目指したものであると言うことができる。
【0026】
<容器>
図1に示す容器10は、上記工程を経て製造されたものである。容器10は、平面視において、四隅が丸みを帯びている略長方形の形状を有している。容器10は、底部1と、一対の側壁部2aと、一対の側壁部2bと、四隅に設けられたフランジ3とを備える。平面視において、側壁部2aは容器10の短辺をなし、他方、側壁部2bは容器10の長辺をなしている。フランジ3は、容器10と嵌合する蓋(不図示)のガイドの役割を果たす。
【0027】
図2に示すように、底部1の中央部1aが金型のゲート位置に相当する箇所である。底部1には足5が形成されている。容器10が足5を備えることで、落下耐性を高めることができる。すなわち、容器10が、例えば、テーブルから落下しても、足5があることにより、底部1が床に直接衝突することを回避することができ、底部1及びその近傍が破壊されることを抑制できる。
【0028】
底部1の厚さは、0.3~0.6mmであり、0.4~0.5mmであってもよい。この厚さが0.3mm以上であることで、後膨れを抑制できる傾向にあるとともに落下耐性を確保することができる。他方、この厚さが0.6mm以下であることで、軽量化が図られる。側壁部2a,2bの厚さは、0.25~0.4mmであり、0.3~0.35mmであってもよい。この厚さが0.25mm以上であることで、落下耐性を確保することができる。他方、この厚さが0.4mm以下であることで、軽量化が図られる。
【0029】
容器10は、バターやマーガリン、クリームチーズなどを収容する薄肉容器に適用できる。従来の射出成形で薄肉容器を成形するには、ショートショット防止のために流動性の高い(MFRの値が大きい)樹脂を選定する必要があった。しかし、流動性の高い樹脂材料は分子量が比較的小さく、強度が低い傾向にあるため、優れた落下耐性の薄肉容器を製造しにくかった。これに対し、本実施形態においては、MFRの値が比較的小さい樹脂材料であっても、超臨界流体と併用することで、溶融樹脂組成部の流動性を高めることができる。これにより、優れたショートショットの抑制と優れた落下耐性を両立することができる。容器10は、優れた落下耐性を有することから、比較的大容量(例えば、内容積:280cc以上)であってもよい。
【0030】
以上、本開示の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態においては、上記実施形態においては、超臨界流体として二酸化炭素又は窒素を使用する場合を例示したが、これらのガスに代えて、例えば、アルゴン又はヘリウムを使用してもよい。
【実施例】
【0031】
以下、本開示について実施例及び比較例に基づいて説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0032】
(比較例1)
以下の材料を使用し、通常の射出成形(速度制御)によって
図1に示す構成の容器を1個取りにて作製した(
図3(a)参照)。
[樹脂材料]
・ポリプロピレン(株式会社プライムポリマー製、J667TG(型番)、MFR:36g/10分)
[成形条件]
・スクリューシリンダー温度(5ゾーン):210~240℃
・射出速度:250mm/秒
・充填圧力:220MPa
・保圧圧力:80MPa
・保圧時間:0.5秒
・キャビティにおける最大流動長:99mm
[容器の構成]
・底部の厚さ:0.385mm(狙い値:0.350mm)
・側壁部(短辺)の厚さ:0.346mm(狙い値:0.350mm)
・側壁部(長辺)の厚さ:0.359mm(狙い値:0.350mm)
・フランジの厚さ:0.355mm(狙い値:0.350mm)
・質量:10.02g
【0033】
(実施例1)
樹脂材料100質量部に対して3.0質量部の超臨界状態の二酸化炭素を添加して溶融樹脂組成物を調製した。この溶融樹脂組成物を使用するとともに、充填圧力を190MPaとしたことの他は、比較例1と同様にして容器を作製した(
図3(b)参照)。なお、本実施例及び以下の実施例及び比較例ではMuCell射出成形機(「MuCell」はTrexel.Co.Ltdの登録商標)を使用した。
[容器の構成]
・底部の厚さ:0.380mm(狙い値:0.350mm)
・側壁部(短辺)の厚さ:0.334mm(狙い値:0.350mm)
・側壁部(長辺)の厚さ:0.350mm(狙い値:0.350mm)
・フランジの厚さ:0.345mm(狙い値:0.350mm)
・質量:9.64g
上記のとおり、実施例1に係る容器の質量は9.64gであり、比較例1を基準として3.8%の減量率が達成された。
【0034】
(比較例2)
ポリプロピレン(J667TG(型番)、MFR:36g/10分)の代わりに以下のポリプロピレンを使用するとともに、充填圧力を230MPaとしたことの他は比較例1と同様にして容器を作製した。
・ポリプロピレン(サンアロマー株式会社製、PM970A(型番)、MFR:30g/10分)
[容器の構成]
・底部の厚さ:0.395mm(狙い値:0.350mm)
・側壁部(短辺)の厚さ:0.348mm(狙い値:0.350mm)
・側壁部(長辺)の厚さ:0.363mm(狙い値:0.350mm)
・フランジの厚さ:0.363mm(狙い値:0.350mm)
・質量:10.07g
【0035】
(実施例2)
樹脂材料100質量部に対して3.0質量部の超臨界状態の二酸化炭素を添加して溶融樹脂組成物を調製した。この溶融樹脂組成物を使用するとともに、充填圧力を200MPaとしたことの他は比較例2と同様にして容器を作製した。
[容器の構成]
・底部の厚さ:0.384mm(狙い値:0.350mm)
・側壁部(短辺)の厚さ:0.338mm(狙い値:0.350mm)
・側壁部(長辺)の厚さ:0.352mm(狙い値:0.350mm)
・フランジの厚さ:0.350mm(狙い値:0.350mm)
・質量:9.62g
上記のとおり、実施例2に係る容器の質量は9.62gであり、比較例2を基準として4.4%の減量率が達成された。
【0036】
(比較例3)
ポリプロピレン(J667TG(型番)、MFR:36g/10分)の代わりに、以下のポリプロピレンを使用するとともに、速度制御の代わりに圧力制御で射出成形を行ったことの他は、比較例1と同様にして容器を作製した。
・ポリプロピレン(サンアロマー株式会社製、PM870A(型番)、MFR:17g/10分)
充填圧力を245MPa以上としたものの、ショートショットが生じた(
図4参照)。
【0037】
(実施例3)
樹脂材料100質量部に対して3.0質量部の超臨界状態の二酸化炭素を添加して溶融樹脂組成物を調製した。この溶融樹脂組成物を使用するとともに、速度制御で射出成形を行い且つ充填圧力を230MPaとしたことの他は、比較例3と同様にして容器を作製した。
[容器の構成]
・底部の厚さ:0.381mm(狙い値:0.350mm)
・側壁部(短辺)の厚さ:0.345mm(狙い値:0.350mm)
・側壁部(長辺)の厚さ:0.359mm(狙い値:0.350mm)
・フランジの厚さ:0.350mm(狙い値:0.350mm)
・質量:9.79g
上記のとおり、実施例3に係る容器の質量は9.79gであり、比較例3の設計値(10g)を基準として2.1%の減量率が達成された。
【0038】
(比較例4)
ポリプロピレン(J667TG(型番)、MFR:36g/10分)の代わりに、以下のポリプロピレンを使用するとともに、速度制御の代わりに圧力制御で射出成形を行ったことの他は、比較例1と同様にして容器を作製した。
・ポリプロピレン(株式会社プライムポリマー製、J715M(型番)、MFR:9g/10分)
充填圧力245MPa以上としたものの、ショートショットが生じた(
図5(a)参照)。
【0039】
(比較例5)
樹脂材料100質量部に対して3.0質量部の超臨界状態の二酸化炭素を添加して溶融樹脂組成物を調製した。この溶融樹脂組成物を使用したことの他は、比較例4と同様にして容器を作製した(
図5(b)参照)。充填圧力245MPa以上としたものの、フランジ(
図5(b)において丸で囲った部分)にわずかにショートショットが認められた。
【0040】
(比較例6)
ポリプロピレン(J667TG(型番)、MFR:36g/10分)の代わりに以下のポリプロピレンを使用するとともに、充填圧力を177MPaとしたことの他は比較例1と同様にして容器を作製した。
・ポリプロピレン(サンアロマー社製、CMA70V(型番)、MFR:48g/10分)
[容器の構成]
・底部の厚さ:0.391mm(狙い値:0.350mm)
・側壁部(短辺)の厚さ:0.350mm(狙い値:0.350mm)
・側壁部(長辺)の厚さ:0.345mm(狙い値:0.350mm)
・フランジの厚さ:0.352mm(狙い値:0.350mm)
・質量:9.74g
【0041】
[後膨れの有無]
金型から取り出した後、比較例1,2,5,6及び実施例1~3に係る容器を目視に観察することにより、後膨れの発生の有無を確認した。実施例1~3及び比較例5に係る容器はいずれも、底部に後膨れが認められた。
【0042】
[落下耐性の評価]
比較例1,2,6及び実施例1~3に係る容器に300gのマーガリンをそれぞれ詰めた。別途準備した蓋(市販品)を容器に嵌めた。これにより、試験用の試料を得た。高さ80cmの位置から、三回連続して床に落下させた。なお、一回目は底面が、二回目は側壁部(長辺)が、そして、三回目は側壁部(短辺)が床に衝突するように、試料を落下させた。その結果、比較例1,2及び実施例1~3に係る容器はいずれも、割れたりマーガリンが漏れたりすることはなかった。他方、比較例6に係る容器は割れが生じた。
【0043】
表1に比較例1~6及び実施例1~3における成形条件などを示す。
【表1】
【0044】
(実施例1A)
二酸化炭素量を3.0質量部とする代わりに、2.5質量部としたことの他は、実施例1と同様にして容器を作製した。ショートショットが生じることはなく、容器を作製することができた。実施例1では後膨れが生じていたのに対し、実施例1Aでは後膨れは認められなかった。
【0045】
(比較例1A)
二酸化炭素量を3.0質量部とする代わりに、1.5質量部としたことの他は、実施例1と同様にして容器を作製した。ショートショットが生じた。なお、比較例1Aでは後膨れは認められなかった。
【0046】
(実施例1B)
保圧圧力を80MPaとする代わりに、30MPaとしたことの他は、実施例1と同様にして容器を作製した。ショートショットが生じることはなく、容器を作製することができた。また、実施例1よりも狙い値(0.35mm)に底部の厚さを近づけることができた。これに加え、実施例1Bでは後膨れは認められなかった。
【0047】
(実施例1C)
保圧圧力を80MPaとする代わりに、30MPaとしたことの他は、実施例1Aと同様にして容器を作製した。ショートショットが生じることはなく、容器を作製することができた。また、実施例1Aよりも狙い値(0.35mm)に底部の厚さを近づけることができた。これに加え、実施例1Cでは後膨れは認められなかった。
【0048】
表2に実施例1A~1C及び比較例1Aにおける成形条件などを示す。
【表2】
【0049】
上記実施例によれば、ショートショットが生じることなく、落下耐性に優れる薄肉容器を製造することができた。また、上記実施例によれば、容器の薄肉化と発泡のシナジー効果により、従来の容器と比較して、プラスチック使用量を大幅に削減することができた。具体的には、全体の厚さが約0.35mmである上記実施例の容器は約10gであったのに対し、全体の厚さが0.6mmであること以外は上記実施例の容器と同様のサイズの従来のポリプロピレン容器は約14gである。つまり、上記実施例によれば、従来品と比較して30%程度の減量率を達成し得ることが示された。
【0050】
また、上記実施例によれば、超臨界流体の添加量を調整すること、並びに、保圧圧力を調整することにより、後膨れが認められない薄肉容器を製造できることが示された。樹脂材料の選定や射出条件の調整によっても後膨れを防止できると推察される。
【符号の説明】
【0051】
1…底部、1a…中央部、2a…側壁部(短辺)、2b…側壁部(長辺)、3…フランジ、5…足、10…容器。