(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-28
(45)【発行日】2025-05-09
(54)【発明の名称】半導体光出射器および光出力装置
(51)【国際特許分類】
H01S 5/0225 20210101AFI20250430BHJP
H01S 5/026 20060101ALI20250430BHJP
H01S 5/02315 20210101ALI20250430BHJP
H01S 5/0239 20210101ALI20250430BHJP
H01S 5/22 20060101ALI20250430BHJP
H01S 5/343 20060101ALI20250430BHJP
【FI】
H01S5/0225
H01S5/026 650
H01S5/02315
H01S5/0239
H01S5/22
H01S5/343
(21)【出願番号】P 2021102011
(22)【出願日】2021-06-18
【審査請求日】2024-02-26
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成28年度国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「高出力・高ビーム品質動作を可能とする新型面発光レーザの研究開発」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願)
(73)【特許権者】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士フイルムビジネスイノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】早川 純一朗
(72)【発明者】
【氏名】村上 朱実
(72)【発明者】
【氏名】逆井 一宏
(72)【発明者】
【氏名】浜田 勉
【審査官】百瀬 正之
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2021/014568(WO,A1)
【文献】特開2020-141095(JP,A)
【文献】特開2020-136655(JP,A)
【文献】国際公開第2020/044396(WO,A1)
【文献】特開2009-117662(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0176463(US,A1)
【文献】特開2002-158391(JP,A)
【文献】特開2013-110138(JP,A)
【文献】特開2007-250899(JP,A)
【文献】特開2003-152259(JP,A)
【文献】特開2010-147197(JP,A)
【文献】特開2014-110257(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 5/00-5/50
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上に実装され、さらに、延伸された方向に伝播する光を増幅する光増幅部を備え、光を前記基板に対して斜め方向に出射する光出射部を備える半導体積層構造体と、
前記基板が配置される基台と、
前記基板を前記基台に対して予め設定された角度で保持する保持部材と、
前記保持部材と前記基板の間もしくは前記保持部材の前記基板側において、前記基板に対して平行に配置され、前記基板の温度を調整する温調部と、
前記基板に対して保持され、前記半導体積層構造体から出射された光束を整形する整形光学系と、
を備えた半導体光出射器。
【請求項2】
前記半導体積層構造体における前記基板に対する光の出射角度をθ1、
前記保持部材における前記基板の保持面と前記基台に対する取付面との角度をθ2とした場合、
θ1+θ2は、0
°または180°である
請求項
1に記載の半導体光出射器。
【請求項3】
前記半導体積層構造体と前記基板とは、前記基板に形成された電極パッドを介して電気的に接続されている
請求項1
または2に記載の半導体光出射器。
【請求項4】
前記温調部は、前記半導体積層構造体と前記基板との間に配置されている
請求項1から
3のいずれか1項に記載の半導体光出射器。
【請求項5】
前記温調部は、前記基板における前記半導体積層構造体の保持面とは反対側の面に配置されている
請求項1から
3のいずれか1項に記載の半導体光出射器。
【請求項6】
前記基板は、前記半導体積層構造体の配置領域にサーマルビア部を備え、
前記サーマルビア部は、複数のサーマルビアからなるサーマルビアグループを複数備え、かつ、前記サーマルビアグループ毎に前記サーマルビアグループ内の複数のサーマルビアがベタ配線により接続されている
請求項
5に記載の半導体光出射器。
【請求項7】
隣接する前記サーマルビアグループ間の間隔は、前記サーマルビアグループ内の隣接するサーマルビアの間隔よりも広い
請求項
6に記載の半導体光出射器。
【請求項8】
前記サーマルビアグループ内での、前記
半導体積層構造体の長手方向において隣接するサーマルビアの間隔は均等である
請求項
7に記載の半導体光出射器。
【請求項9】
前記基板は、前記半導体積層構造体を制御するドライバ回路と、前記基板の温度を測定する温度測定部とを備え、
前記温度測定部は、前記基板上において、前記ドライバ回路と前記半導体積層構造体との間に配置されている
請求項
5から
8のいずれか1項に記載の半導体光出射器。
【請求項10】
基板と、
前記基板上に実装され、光を前記基板に対して斜め方向に出射する光出射部を備える半導体積層構造体と、
前記基板が配置される基台と、
前記基板を前記基台に対して予め設定された角度で保持する保持部材と、
前記基台に保持され、前記半導体積層構造体から出射される光の照射位置を示すための位置表示光を出射する位置表示光出射部と、
前記基板に対して保持され、前記半導体積層構造体から出射された光束を整形する整形光学系と、を備え、
前記半導体積層構造体における前記基板に対する光の出射角度をθ1、
前記保持部材における前記基板の保持面と前記基台に対する取付面との角度をθ2とした場合、
θ1+θ2は、前記位置表示光出射部の出射光に対して、0°である
光出力装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体光出射器および光出力装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、分布ブラッグ反射鏡導波路を用いた半導体積層構造体に関連して、レーザ光を出射する光源部と、基板上に形成されるとともに、光源部から基板の基板面に沿い予め定めた方向に延伸して形成された活性領域を備え、光源部から予め定めた方向に伝播する伝播光を増幅し、増幅した伝播光を基板面に対して斜め方向に出射光として出射する光増幅部と、を有する半導体積層構造体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような半導体積層構造体が実装された基板においては、光が基板に対して斜め方向に出射する。そのため、この基板を製品筐体の基台に取り付けると、光が基台に対して斜め方向に出射されることになるため、半導体積層構造体を製品に搭載する際に、設計上使用し難いという問題がある。
【0005】
また、半導体積層構造体が実装された基板において温度むらが生じると、半導体積層構造体から出射される光の周波数や出射角度が変化してしまうため、基板の温度が均一になるように温度調整することが望まれる。
【0006】
本発明の目的は、基板に対して光が斜めに出射する半導体積層構造体であっても、半導体積層構造体を実装した基板の温度調整が可能な半導体光出射器を提供することである。
【0007】
また、半導体積層構造体から出射される光の照射位置を示すための位置表示光を出射可能な光出力装置において、基板に対して光が斜めに出射する半導体積層構造体であっても、実装された場合の位置表示機能の低下を抑制することが可能な光出力装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1態様の半導体光出射器は、基板と、光を基板に対して斜め方向に出射する光出射部を備える半導体積層構造体と、基板が配置される基台と、基板を基台に対して予め設定された角度で保持する保持部材と、基板に対して平行に配置され、基板の温度を調整する温調部と、基板に対して保持され、半導体積層構造体から出射された光束を整形する整形光学系と、を備えた半導体光出射器である。
【0009】
本発明の第2態様の半導体光出射器は、基板と、光を基板に対して斜め方向に出射する光出射部を備える半導体積層構造体と、基板が配置される基台と、基板を基台に対して予め設定された角度で保持する保持部材と、保持部材と基板の間もしくは保持部材の基板側において、基板に対して平行に配置され、基板の温度を調整する温調部と、を備えた半導体光出射器である。
【0010】
本発明の第3態様の半導体光出射器は、第1態様または第2態様の半導体光出射器において、半導体積層構造体は、延伸された方向に伝播する光を増幅する光増幅部を備える半導体光出射器である。
【0011】
本発明の第4態様の半導体光出射器は、第1態様から第3態様のいずれか1つの態様の半導体光出射器において、半導体積層構造体における基板に対する光の出射角度をθ1、保持部材における基板の保持面と基台に対する取付面との角度をθ2とした場合、θ1+θ2は、0°、90°、または180°である半導体光出射器である。
【0012】
本発明の第5態様の半導体光出射器は、第1態様から第4態様のいずれか1つの態様の半導体光出射器において、半導体積層構造体と基板とは、基板に形成された電極パッドを介して電気的に接続されている半導体光出射器である。
【0013】
本発明の第6態様の半導体光出射器は、第1態様から第5態様のいずれか1つの態様の半導体光出射器において、温調部は、半導体積層構造体と基板との間に配置されている半導体光出射器である。
【0014】
本発明の第7態様の半導体光出射器は、第1態様から第5態様のいずれか1つの態様の半導体光出射器において、温調部は、基板における半導体積層構造体の保持面とは反対側の面に配置されている半導体光出射器である。
【0015】
本発明の第8態様の半導体光出射器は、第7態様の半導体光出射器において、基板は、半導体積層構造体の配置領域にサーマルビア部を備え、サーマルビア部は、複数のサーマルビアからなるサーマルビアグループを複数備え、かつ、サーマルビアグループ毎にサーマルビアグループ内の複数のサーマルビアがベタ配線により接続されている半導体光出射器である。
【0016】
本発明の第9態様の半導体光出射器は、第8態様の半導体光出射器において、隣接するサーマルビアグループ間の間隔は、サーマルビアグループ内の隣接するサーマルビアの間隔よりも広い半導体光出射器である。
【0017】
本発明の第10態様の半導体光出射器は、第9態様の半導体光出射器において、サーマルビアグループ内での、長手方向において隣接するサーマルビアの間隔は均等である半導体光出射器である。
【0018】
本発明の第11態様の半導体光出射器は、第7態様から第10態様のいずれか1つの態様の半導体光出射器において、基板は、半導体積層構造体を制御するドライバ回路と、基板の温度を測定する温度測定部とを備え、温度測定部は、基板上において、ドライバ回路と半導体積層構造体との間に配置されている半導体光出射器である。
【0019】
本発明の第12態様の光出力装置は、基板と、光を基板に対して斜め方向に出射する光出射部を備える半導体積層構造体と、基板が配置される基台と、基板を基台に対して予め設定された角度で保持する保持部材と、基台に保持され、半導体積層構造体から出射される光の照射位置を示すための位置表示光を出射する位置表示光出射部と、を備え、半導体積層構造体における基板に対する光の出射角度をθ1、保持部材における基板の保持面と基台に対する取付面との角度をθ2とした場合、θ1+θ2は、位置表示光出射部の出射光に対して、0°である光出力装置である。
【発明の効果】
【0020】
本発明の第1態様の半導体光出射器によれば、基板に対して光が斜めに出射する半導体積層構造体であっても、半導体積層構造体を実装した基板の温度調整が可能となる。
【0021】
本発明の第2態様の半導体光出射器によれば、基板に対して光が斜めに出射する半導体積層構造体であっても、半導体積層構造体を実装した基板の温度調整が可能となる。
【0022】
本発明の第3態様の半導体光出射器によれば、発光部で生じた光を増幅して出射することが可能となる。
【0023】
本発明の第4態様の半導体光出射器によれば、基台の接地面に対して垂直方向または水平方向に光を出射することが可能となるため、装置に実装し易くすることができる。
【0024】
本発明の第5態様の半導体光出射器によれば、保持部材を設けることにより、基板に対して光が斜めに出射する半導体積層構造体であっても基板に水平に実装できるため、例えばダイボンディングやワイヤボンディング等により、基板に対して半導体積層構造体を容易に実装することが可能となる。
【0025】
本発明の第6態様の半導体光出射器によれば、基板を介さずに半導体積層構造体を温調部により温度調整できるため、基板を介して温度調整する場合と比較して、半導体積層構造体の温度調整が容易となる。
【0026】
本発明の第7態様の半導体光出射器によれば、温調部を基板における半導体積層構造体の保持面とは反対側の面に配置しているため、半導体積層構造体を基板に直接実装することができるため、温調部を介して半導体積層構造体を基板に実装する場合と比較して、半導体積層構造体の実装が容易となる。
【0027】
本発明の第8態様の半導体光出射器によれば、サーマルビアにベタ配線を接続して温調部との接触面積を大きくすることにより高い放熱性を持たすことができ、かつ、サーマルビアグループ毎にベタ配線を接続し、サーマルビアグループ間にはベタ配線を設けないことにより、基板における寄生容量を抑えて、高周波特性を維持することが可能となる。
【0028】
本発明の第9態様の半導体光出射器によれば、隣接するサーマルビアグループ間の間隔を、サーマルビアグループ内の隣接するサーマルビアの間隔よりも広くして、電流のリターン経路を広く確保することにより、電磁ノイズを低減することが可能となる。
【0029】
本発明の第10態様の半導体光出射器によれば、サーマルビアグループ内での、長手方向において隣接するサーマルビアの間隔を均等にすることにより、サーマルビアグループ内での温度ムラを抑制することができる。
【0030】
本発明の第11態様の半導体光出射器によれば、基板上で主な熱源となるドライバ回路と半導体積層構造体との間に温度測定部を配置しているため、基板の端部に温度測定部を配置した場合と比較して、基板の温度を正確に測定することができる。
【0031】
本発明の第12態様の光出力装置によれば、半導体積層構造体から出射される光の照射位置を示すための位置表示光を出射可能な光出力装置において、基板に対して光が斜めに出射する半導体積層構造体であっても、実装された場合の位置表示機能の低下を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】第1の実施の形態における半導体光出射器の概略構成図である。
【
図2】第1の実施の形態における半導体積層構造体の平面図である。
【
図3】
図2に示すA-A’線に沿った断面図である。
【
図4】第1の実施の形態におけるプリント基板の平面図である。
【
図5】第1の実施の形態における半導体積層構造体のドライバ回路の等価回路図である。
【
図6】ドライバ回路のリターン経路において流れる電流の状態を示す図であって、
図6(a)は一つの大きなサーマルビアグループを形成した状態を示す図、
図6(b)は複数のサーマルビアグループを形成した状態を示す図である。
【
図7】サーマルビアグループの熱分布特性を示す図であって、
図7(a)はサーマルビアグループ内において複数のサーマルビアを行列状に配置した状態を示す図、
図7(b)はサーマルビアグループ内において複数のサーマルビアを千鳥状に配置した状態を示す図である。
【
図8】第1の実施の形態における半導体光出射器の変形例であり、保持部材の形状を変更した例を示す概略構成図である。
【
図9】第1の実施の形態における半導体光出射器の変形例であり、保持部材の形状を
図8とは別の形状に変更した例を示す概略構成図である。
【
図10】第1の実施の形態における半導体光出射器の変形例であり、温調部の配置位置を変更した例を示す概略構成図である。
【
図11】第1の実施の形態における別の形態の半導体積層構造体の平面図である。
【
図13】第1の実施の形態におけるさらに別の形態の半導体積層構造体の平面図である。
【
図15】第1の実施の形態におけるさらに別の形態の半導体積層構造体の平面図である。
【
図17】第2の実施の形態における光出力装置の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。
【0034】
[第1の実施の形態]
図1を参照して本実施の形態に係る半導体光出射器10について説明する。
図1は半導体光出射器10の概略構成図である。
【0035】
図1に示すように、半導体光出射器10は、プリント基板11と、光をプリント基板11に対して斜め方向に出射する光出射部を備える半導体積層構造体20と、プリント基板11が配置される基台12と、プリント基板11を基台12に対して予め設定された角度で保持する保持部材13と、プリント基板11に対して平行に配置され、プリント基板11の温度を調整する温調部14と、プリント基板11に対して保持され、半導体積層構造体20から出射された光束を整形する整形光学系15と、を備えている。
【0036】
半導体積層構造体20は、光をプリント基板11に対して斜め方向に出射する光出射部を備える半導体積層構造体であればどのような素子を用いてもよい。本実施の形態では、半導体積層構造体20は、一例として、DBR(Distributed Bragg Reflector)導波路を用いた面出射型の半導体積層構造体を用いる。
【0037】
図2は半導体積層構造体20の平面図、
図3は
図2に示すA-A’線に沿った断面図である。
図2および
図3に示すように、半導体積層構造体20は、発光部50と、発光部50から延伸され、延伸された方向に伝播する光を増幅する光増幅部52と、を備えている。
【0038】
発光部50は、種光Lsを発生する部位であり、本実施の形態ではVCSEL(Vertical Cavity Suface Emitting Laser)として構成されている。
図3に示すように、発光部50から発生した種光Lsは、光増幅部52に向けて伝播する。
【0039】
光増幅部52は、発光部50で発生した光である種光Lsを増幅し、出射する機能を有する。本実施の形態に係る光増幅部52は、一例としてGaAs系の分布ブラッグ反射鏡導波路(以下、「DBR導波路」)を用いた面出射型の光増幅部とされている。
【0040】
半導体積層構造体20は、ベース層30上に形成された、下部DBR32、活性領域34、非導電領域60、上部DBR36、絶縁部54、第1P電極41、および第2P電極42と、ベース層30の裏面に形成されたN電極40とを含んで構成されている。
【0041】
本実施の形態では、ベース層30をn型のGaAs基板とし、N電極40はベース層30の裏面に設けられている。一方、本実施の形態に係る下部DBR32はn型であり、上部DBR36は全体としてp型である。
【0042】
下部DBR32は、以下で説明する上部DBR36と対になって、発光部50においては光を発生させる光源を構成し、光増幅部52においては光を増幅して出射する共振器を構成している。
【0043】
下部DBR32は、半導体積層構造体20の発振波長をλ、媒質(半導体層)の屈折率をnとした場合に、膜厚がそれぞれ0.25λ/nとされかつ屈折率の互いに異なる2つの半導体層を交互に繰り返し積層して構成される多層膜反射鏡である。具体的な一例として、下部DBR32は、Al0.90Ga0.1Asによるn型の低屈折率層と、Al0.2Ga0.8Asによるn型の高屈折率層と、を交互に繰り返し積層することにより構成されている。
【0044】
本実施の形態に係る活性領域34は、例えば、下部スペーサ層、量子井戸活性領域、及び上部スペーサ層を含んで構成されてもよい(図示省略)。本実施の形態に係る量子井戸活性領域は、例えば、4層のAl0.3Ga0.7Asからなる障壁層と、その間に設けられた3層のGaAsからなる量子井戸層と、で構成されてもよい。なお、下部スペーサ層、上部スペーサ層は、各々量子井戸活性領域と下部DBR32との間、量子井戸活性領域と上部DBR36との間に配置されることにより、共振器の長さを調整する機能とともに、キャリアを閉じ込めるためのクラッド層としての機能も有している。
【0045】
活性領域34上に設けられた非導電領域60および導電領域58はp型の酸化狭窄層、つまり電流狭窄層である。すなわち、非導電領域60が酸化領域、導電領域58が非酸化領域に対応している。導電領域58と非道電領域60との界面が酸化フロント56を形成している。
【0046】
本実施の形態では、下部DBR32を構成する多層膜のうちの1層を酸化させて非導電領域60(酸化領域)が形成され、この1層の非導電領域60以外の領域が酸化されていない導電領域58(非酸化領域)となっている。第1P電極41および第2P電極42からN電極40に向かって流れる電流は、導電領域58によって絞られる。
【0047】
なお、本実施の形態では、非導電領域60(酸化領域)を下部DBR32の1層に形成する形態を例示して説明するが、これに限られず下部DBR32の複数層に形成する形態としてもよいし、上部DBR36に形成する形態としてもよい。
【0048】
上部DBR36は、p-DBR66、位相制御層64、およびi-DBR68を含んで構成されている。p-DBR66はp型であるが、i-DBR68は不純物を含まない。位相制御層64は、p-DBR66とi-DBR68との間に形成され、種光Lsの波長と、光増幅部52における垂直共振波長との関係を調整する層である。本実施の形態では、位相制御層64は、例えばシリコン酸化膜(SiO2)、シリコン窒化膜(SiON)、あるいはGaAs等を用いて形成する。
【0049】
絶縁部54は、発光部50と光増幅部52とを電気的に絶縁する層であり、本実施の形態では、一例としてイオン注入によって形成されている。
【0050】
第1P電極41は発光部50のP電極であり、第2P電極42は光増幅部52のP電極である。
【0051】
半導体積層構造体20を駆動する際には、駆動用電源の正極を第1P電極41および第2P電極42に印加し、負極をN電極40に印加し、第1P電極41および第2P電極42からN電極40に駆動電流を流す。しかしながら、ベース層30、下部DBR32、上部DBR36の極性はこれに限られず、これらの極性を逆に、すなわち、ベース層30をp型のGaAs基板とし、下部DBR32をp型、上部DBR36をn型としもよい。
【0052】
ここで、本実施の形態に係る半導体積層構造体20についてより詳細に説明する。
図3に示すように、発光部50におけるDBRの両側に設けられた第1P電極41およびN電極40により活性領域34へ電流を注入すると種光Lsが発生し、発光部50において発生した種光Lsは紙面左側から右側に向かう伝播方向に伝播する。この際、伝播光は、主として下部DBR32、活性領域34、導電領域58、上部DBR36を、所定の分布をもって伝播する。従って、「DBR導波路」は、これらの部分を含んで構成されている。
【0053】
DBR導波路を用いた半導体積層構造体20は、半導体基板であるベース層30上に設けられた一対のDBRと、一対のDBRの間にある活性領域および共振器スペーサ層から構成されている。DBRに挟まれた領域は光導波路として機能し、このDBR導波路内へ入力された光は斜め方向に多重反射しながらスローライト伝播する。
【0054】
このとき、光増幅部52におけるDBRの両側に設けられた第2P電極42およびN電極40により活性領域34へ電流を注入すると、垂直共振波長より短い波長の光が増幅され、ベース層30の面に対して交差する方向であってかつ伝播光のDBR導波路の伝播方向前方に傾いた方向(斜め前方方向)へ増幅ビームが出力される。
図3では、この出力された光を「出力光Lf」として示している。 つまり、第2P電極42およびN電極40が設けられた光増幅部52の領域は、光導波路と光増幅部としての機能を併せ持つ。また、光増幅部52の表面の光出射領域は、本実施の形態における光出射部52aとして機能する。
【0055】
図4は半導体積層構造体20等を実装したプリント基板11の平面図である。なお、ここでは、便宜上、プリント基板11において、半導体積層構造体20が実装される面を表面、表面の裏側の面を裏面と呼称する。
【0056】
プリント基板11は、表面層、中間層、および裏面層の多層構造となっている。中間層は、ドライバ回路におけるノイズを低減するためベタグランド層となっている。この、中間層(ベタグランド層)は、表面に実装された半導体積層構造体20に流れる電流のリターン径路となる。
【0057】
図4に示すように、プリント基板11の表面には、半導体積層構造体20、半導体積層構造体20を制御するドライバIC(Integrated Circuit)70、プリント基板11の温度を測定するサーミスタ71、半導体積層構造体20のドライバ回路の一部を構成するコンデンサ72等が実装されている。本実施の形態では、一例として、ドライバ回路において、
図4中の右側から左側に向けて電流Iが流れるものとする。
【0058】
半導体積層構造体20とプリント基板11とは、プリント基板11に形成された電極パッド11aを介してダイボンディングにより電気的に接続されている。なお、半導体積層構造体20とプリント基板11との接続は、ダイボンディングに限らず、ワイヤボンディング等、どのような接続態様としてもよい。
【0059】
サーミスタ71は、プリント基板11上において、ドライバIC70と半導体積層構造体20との間に配置されている。サーミスタ71は、後述の温調部14における温度制御に用いられる。
【0060】
また、プリント基板11は、半導体積層構造体20の配置領域にサーマルビア部73を備えている。サーマルビア部73は、複数のサーマルビア75からなるサーマルビアグループ74を複数備え、かつ、サーマルビアグループ74毎にサーマルビアグループ74内の複数のサーマルビア75がベタ配線76により接続されている。
【0061】
サーマルビア75は、プリント基板11を貫通する放熱孔であり、プリント基板11の表面に実装された半導体積層構造体20で発生した熱を、プリント基板11の裏面側に伝導させるためのものである。
【0062】
ベタ配線76は、プリント基板11の裏面においてサーマルビア75から伝導してきた熱を放熱するための金属層である。
【0063】
図5は半導体積層構造体20のドライバ回路の等価回路図である。
図5に示すように、ドライバ回路においては、電源80に対して半導体積層構造体20およびドライバIC70が直列に接続されるとともに、半導体積層構造体20およびドライバIC70に対してコンデンサ72が並列に接続されている。
【0064】
半導体積層構造体20の放熱のためには、プリント基板11を貫通するサーマルビア75を多数設けることが好ましいが、サーマルビア75を設けすぎると、中間層(ベタグランド層)におけるリターン経路が阻害され電磁ノイズが発生する。
【0065】
また、サーマルビア75は、スタブとなるため、ドライバ回路においてインダクタンス成分(以後、L成分と記載)が発生する。また、ベタ配線76は、中間層(ベタグランド層)と積層することによりコンデンサとして機能するため、ドライバ回路においてキャパシタンス成分(以後、C成分と記載)が発生する。
【0066】
これらのL成分およびC成分は、
図5中で点線で示すように、ドライバ回路における寄生回路となり、半導体積層構造体20に流れる電流を振動させてしまう。半導体積層構造体20に流れる電流の振動は、L成分およびC成分共に、大きくなると増大する。半導体積層構造体20に流れる電流が振動すると、半導体積層構造体20の駆動特性が劣化する。
【0067】
このような問題を解消するため、本実施の形態においてサーマルビア部73は、半導体積層構造体20の配置領域において複数のサーマルビアグループ74に分かれて形成されている。
【0068】
ここで、ドライバ回路のリターン経路の特性について説明する。
図6はドライバ回路のリターン経路において流れる電流の状態を示す図であって、
図6(a)は一つの大きなサーマルビアグループ174を形成した状態を示す図、
図6(b)は複数のサーマルビアグループ74を形成した状態を示す図である。
【0069】
図6(a)に示す比較例のように、半導体積層構造体20の配置領域において一つの大きなサーマルビアグループ174を形成すると、中間層(ベタグランド層)におけるリターン経路において、電流Iはサーマルビアグループ174を大きく迂回しなければならないため、電流Iの流れが阻害されて、電磁ノイズが発生する。また、サーマルビアグループ174内の複数のサーマルビア175に接続されている放熱用のベタ配線176の面積も大きくなるため、寄生回路にけるC成分が大きくなり、半導体積層構造体20の駆動特性が劣化する。
【0070】
これに対して、
図6(b)に示す本実施の形態のように、半導体積層構造体20の配置領域において複数のサーマルビアグループ74を形成することにより、複数のサーマルビアグループ74間を電流Iが通過することができるため、良好なリターン経路を確保し、電磁ノイズの発生を抑えることができる。また、サーマルビアグループ74内の複数のサーマルビア75に接続されている放熱用のベタ配線76の面積も、複数のサーマルビアグループ74を形成した方が、一つの大きなサーマルビアグループ174を形成する場合と比較して小さくできるため、寄生回路にけるC成分が小さくなり、半導体積層構造体20の駆動特性の劣化を抑えることができる。
【0071】
なお、複数のサーマルビアグループ74間の間隔を広くするほどリターン径路の確保が容易になるが、代わりに、半導体積層構造体20の配置領域に形成されるサーマルビア75の数が減って放熱特性が悪化する。そのため、複数のサーマルビアグループ74間の間隔については、リターン径路の特性と、放熱特性とを考慮して、適宜設計すればよい。
【0072】
次に、サーマルビアグループの熱分布特性について説明する。
図7はサーマルビアグループの熱分布特性を示す図であって、
図7(a)はサーマルビアグループ274内において複数のサーマルビア275を図中縦方向および横方向ともに等間隔で行列状に配置した状態を示す図、
図7(b)はサーマルビアグループ74内において複数のサーマルビア75を千鳥状に配置した状態を示す図である。
【0073】
図7(a)に示す比較例のように、サーマルビアグループ274内において複数のサーマルビア275を図中縦方向および横方向ともに等間隔で行列状に配置すると、サーマルビアグループ274内においてサーマルビア275が形成された部分の温度は低くなり、サーマルビア275が形成されていない部分の温度は高くなる。そのため、サーマルビアグループ274内において温度むらが生じることになる。
【0074】
これに対して、
図7(b)に示す本実施の形態のように、サーマルビアグループ74内において複数のサーマルビア75を千鳥状に配置することにより、サーマルビア75の配置が分散されるため、サーマルビアグループ74内における温度むらを抑えることができる。また、サーマルビアグループ74内におけるサーマルビア75の配置密度も、サーマルビア75を千鳥状に配置した方が、サーマルビア275を行列状に配置する場合と比較して高くできるため、サーマルビアグループ74内における温度むらを抑えるのに有利となる。
【0075】
温調部14は、例えば、ペルチェ素子等の温度調整素子により構成されている。温調部14は、サーミスタ71が計測したプリント基板11の温度に基づいて、プリント基板11の温度が予め設定された温度になるように不図示の制御部により制御される。
【0076】
温調部14は、保持部材13とプリント基板11の間、もしくは保持部材13のプリント基板11側に配置されていることが好ましい。本実施形態においては、一例として、温調部14が、プリント基板11における半導体積層構造体20の保持面とは反対側の面であって、保持部材13とプリント基板11の間に配置されている。
【0077】
整形光学系15は、一例として、半導体積層構造体20の光増幅部52の延伸方向を長手方向とした場合に長手方向と直交する短手方向において正のパワーを有するシリンドリカルレンズである。整形光学系15は、支柱16を介してプリント基板11に保持されている。
【0078】
図1に示すように、本実施の形態の半導体光出射器10は、半導体積層構造体20におけるプリント基板11に対する光の出射角度をθ1、保持部材13におけるプリント基板11の保持面と基台12に対する取付面との角度をθ2とした場合、θ1+θ2が90°になるように構成されている。
【0079】
本実施の形態においては、基台12と保持部材13とを別体で構成している。このようにすることで、θ1が変わっても、それに併せてθ2を変えることで、容易にθ1+θ2で欲しい角度、すなわち本実施の形態においては90°に設定することができる。ただし、基台12と保持部材13とを一体で構成してもよい。
【0080】
本実施の形態では、一例として、半導体積層構造体20におけるプリント基板11に対する光の出射角度θ1は45°であり、保持部材13におけるプリント基板11の保持面と基台12に対する取付面との角度θ2も45°である。
【0081】
このような構成とすることにより、プリント基板11に対して光が斜めに出射する半導体積層構造体20であっても、光を基台12に対して垂直方向に出射されるため、半導体光出射器10を製品に搭載にする際に、設計が容易になる。
【0082】
また、温調部14がプリント基板11に対して平行に配置されているため、温調部14がプリント基板11に対して斜めに配置されている場合と比較して、プリント基板11の全体にわたって均一に温度調整を行うことが可能となる。
【0083】
なお、本実施の形態に係る半導体光出射器10の変形例として、
図8に示す半導体光出射器10Aのように、θ1+θ2が0°になるように構成してもよい。この場合、一例として、半導体積層構造体20におけるプリント基板11に対する光の出射角度θ1は45°であり、保持部材13Aにおけるプリント基板11の保持面と基台12に対する取付面との角度θ2は-45°である。
【0084】
また、
図9に示す半導体光出射器10Bのように、θ1+θ2が180°になるように構成してもよい。この場合、一例として、半導体積層構造体20におけるプリント基板11に対する光の出射角度θ1は45°であり、保持部材13Bにおけるプリント基板11の保持面と基台12に対する取付面との角度θ2は135°である。
【0085】
また、
図10に示す半導体光出射器10Cのように、半導体積層構造体20とプリント基板11との間に配置してもよい。
【0086】
また、本実施の形態において、半導体積層構造体20は、光増幅部52で長手方向に伝搬して増幅された光を光出射部52aから出射させたが、光出射部52aから出射される光は増幅された光でなくてもよい。
【0087】
また、本実施の形態において、半導体積層構造体20は、発光部50から発生した種光Lsを光増幅部52で増幅する例を示したが、種光Lsがなく、光増幅部に対して直接電流を印加することにより光増幅部の半導体の層自体が発光する光を増幅してもよい。
【0088】
また、本実施の形態において、半導体積層構造体20は、
図3のように種光の発生部を同一チップに集積したものではなく、
図11および
図12に示す半導体積層構造体120のように、外部から種光を導入する構成としてもよい。
【0089】
図11は半導体積層構造体120の平面図、
図12は
図11に示すA-A’線に沿った断面図である。半導体積層構造体120は、光結合部150と、光結合部150から延伸され、延伸された方向に伝播する光を増幅する光増幅部152と、を備えている。
【0090】
光結合部150は、図示を省略する外部光源から光ファイバ170を介して入力光を伝播させ、光ファイバ170の出力端を半導体光増幅器120の光源部として機能する光結合部150に結合させて入力光を光増幅部52に導入している。外部光源としては例えば面型発光レーザ(VCSEL)を用いる。光ファイバ170は、光の結合効率の観点から、レンズドファイバを用いてもよい。
【0091】
光増幅部152は、光結合部150において導入された種光Lsを増幅し、出射する機能を有する。光増幅部152の表面の光出射領域は、光出射部152aとして機能する。
【0092】
半導体積層構造体120は、ベース層130上に形成された、下部DBR132、活性領域134、非導電領域160、上部DBR136、P電極141と、ベース層130の裏面に形成されたN電極140とを含んで構成されている。
図3に示す半導体積層構造体20とは異なり、上部DBR136は位相制御層およびi-DBRを含まない。
【0093】
活性領域134上に設けられた非導電領域160および導電領域158は、p型の酸化狭窄層、つまり電流狭窄層である。すなわち、非導電領域160が酸化領域、導電領域158が非酸化領域に対応している。導電領域158と非道電領域160との界面が酸化フロント156を形成している。
【0094】
半導体積層構造体120は、半導体積層構造体20と同様に、垂直共振波長より短い波長の光が増幅される。種光の波長、光出力は可変で、増幅器の最適構造、種光条件などの探索に有利である。また、半導体積層構造体120は、半導体積層構造体20よりも簡素な構造であるため、一般的なVCSEL工程と同じプロセスで作製可能である。
【0095】
また、本実施の形態において、半導体積層構造体20は、
図13および
図14に示す半導体積層構造体220、または、
図15および
図16に示す半導体積層構造体320のように、回折格子を利用する構成に適用してもよい。
【0096】
図13は半導体積層構造体220の平面図、
図14は
図13に示すA-A’線に沿った断面図である。半導体積層構造体220は、延伸された方向に伝播する光を増幅する光増幅部252を備えている。
【0097】
光増幅部252は、一般的なVCSELと同様に内部で発生させた種光Lsを増幅し、出射する機能を有する。光増幅部252の表面の光出射領域は、光出射部252aとして機能する。
【0098】
半導体積層構造体220は、ベース層230上に形成された、下部DBR232、活性領域234、非導電領域260、上部DBR236、P電極241、回折格子270と、ベース層230の裏面に形成されたN電極240とを含んで構成されている。
【0099】
活性領域234上に設けられた非導電領域260および導電領域258は、p型の酸化狭窄層、つまり電流狭窄層である。すなわち、非導電領域260が酸化領域、導電領域258が非酸化領域に対応している。導電領域258と非道電領域260との界面が酸化フロント256を形成している。
【0100】
半導体積層構造体220は、半導体積層構造体20と同様に、垂直共振波長より短い波長の光が増幅される。また、半導体積層構造体220においては、光出射部252aに形成された回折格子270の構成により決定されるスローライトモードの光が出力される。半導体積層構造体220では、種光は必須ではなく、一般的なVCSELと同様に発光させ、回折格子270の構成により増幅する波長が決定される。
【0101】
図15は半導体積層構造体320の平面図、
図16は
図15に示すA-A’線に沿った断面図である。半導体積層構造体320は、発光部350と、発光部350から延伸され、延伸された方向に伝播する光を増幅する光増幅部352と、を備えている。
【0102】
発光部350は、種光Lsを発生する部位であり、回折格子370を備えたVCSELとして構成されている。
図16に示すように、発光部350から発生した種光Lsは、光増幅部352に向けて伝播する。
【0103】
光増幅部252は、発光部350で発生した光である種光Lsを増幅し、出射する機能を有する。光増幅部352の表面の光出射領域は、光出射部352aとして機能する。
【0104】
半導体積層構造体320は、ベース層330上に形成された、下部DBR332、活性領域334、非導電領域360、上部DBR336、第1P電極341、第2P電極342、イオン注入部354、および回折格子370と、ベース層330の裏面に形成されたN電極340とを含んで構成されている。
【0105】
活性領域334上に設けられた非導電領域360および導電領域358は、p型の酸化狭窄層、つまり電流狭窄層である。すなわち、非導電領域360が酸化領域、導電領域358が非酸化領域に対応している。導電領域358と非道電領域360との界面が酸化フロント356を形成している。
【0106】
半導体積層構造体320は、半導体積層構造体20と同様に、垂直共振波長より短い波長の光が増幅される。また、半導体積層構造体320においては、発光部350に形成された回折格子370の構成により決定される波長の光が出力される。
【0107】
[第2の実施の形態]
次に
図11を参照して、本実施の形態に係る光出力装置について説明する。
図11は光出力装置の一例としての光加工装置100の概略構成図である。光加工装置100は、加工対象物110に対して加工光を照射し、加工対象物110対する加工処理を行う装置である。なお、第1実施形態の半導体光出射器10と同じ構成要素には同じ参照番号を付し、同じ構成要素についての説明を省略する。
【0108】
図11に示すように、光加工装置100は、プリント基板11と、プリント基板11に取り付けた際に、プリント基板11に対して光を斜め方向に出射する半導体積層構造体20と、プリント基板11が配置される基台12と、プリント基板11を基台12に対して予め設定された角度で保持する保持部材13と、プリント基板11に対して平行に配置され、プリント基板11の温度を調整する温調部14と、プリント基板11に対して保持され、半導体積層構造体20から出射された光束を整形する整形光学系と、基台12に保持され、半導体積層構造体20から出射される光の照射位置を示すための位置表示光を出射する位置表示光出射部90と、を備えている。
【0109】
整形光学系は、一例として、半導体積層構造体20の光増幅部52の延伸方向を長手方向とした場合に長手方向と直交する短手方向において正のパワーを有するシリンドリカルレンズ15aと、シリンドリカルレンズ15aから出射した光を集光する集光レンズ15bとを備えている。シリンドリカルレンズ15aは支柱16aを介してプリント基板11に保持されており、集光レンズ15bは支柱16bを介してプリント基板11に保持されている。
【0110】
位置表示光出射部90は、加工対象物110に対して、加工光(半導体積層構造体20から出射される光)の照射位置を示すためのものであり、例えばレーザ光源等により構成される。
【0111】
本実施の形態の光加工装置100は、半導体積層構造体20におけるプリント基板11に対する光の出射角度をθ1、保持部材13におけるプリント基板11の保持面と基台12に対する取付面との角度をθ2とした場合、θ1+θ2が位置表示光出射部90の出射光ALに対して0°になるように構成されている。
【0112】
本実施の形態では、一例として、半導体積層構造体20におけるプリント基板11に対する光の出射角度θ1は45°であり、保持部材13におけるプリント基板11の保持面と基台12に対する取付面との角度θ2も45°である。また、位置表示光出射部90において出射光ALは、基台12の保持面に対して垂直方向に出射される。
【0113】
このような構成とすることにより、プリント基板11に対して光が斜めに出射する半導体積層構造体20であっても、位置表示光出射部90の出射光ALと平行に加工光を出射することが可能となるため、出射光ALと加工光が平行でない場合と比較して、加工光の照射位置の表示精度を向上させることができる。
【0114】
また、出射光ALと加工光が平行でない場合と比較して、加工対象物110において出射光ALが示す加工位置に対して加工光を集光させやすくなるため、加工部を小さくでき、加工精度を向上させることができる。
【0115】
なお、本実施の形態では、基台12を1つの部材で構成して、さらに基台12の同じ面に位置表示光出射部90と保持部材13とを取り付けている。このような態様とすることで、基板の光出射部から出た光と位置表示光出射部90から出た光の光軸がより平行に設定される。しかしながら、基台12を複数の部材により構成してもよい。その場合、形状の異なる物同士を組み合わせもよいが、複数の平板で構成する方が好ましい。基台を複数の平板で構成する場合は、例えば2枚の平板を積層し、位置表示光出射部と保持部材を別々の平板に取り付けることもできる。
【0116】
以上、本発明の種々の典型的な実施形態を説明してきたが、本発明はそれらの実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することができる。
【符号の説明】
【0117】
10,10A,10B,10C 半導体光出射器
11 プリント基板
11a 電極パッド
12 基台
13,13A,13B 保持部材
14 温調部
15 整形光学系
15a シリンドリカルレンズ
15b 集光レンズ
16,16a,16b 支柱
20 半導体積層構造体
71 サーミスタ
72 コンデンサ
73 サーマルビア部
74 サーマルビアグループ
75 サーマルビア
76 ベタ配線
80 電源
90 位置表示光出射部
100 光加工装置
110 加工対象物