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特許7673524熱電変換シート、および熱電変換シートの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-28
(45)【発行日】2025-05-09
(54)【発明の名称】熱電変換シート、および熱電変換シートの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H10N 15/20 20230101AFI20250430BHJP
   H10N 15/00 20230101ALI20250430BHJP
【FI】
H10N15/20
H10N15/00
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021108932
(22)【出願日】2021-06-30
(65)【公開番号】P2023006367
(43)【公開日】2023-01-18
【審査請求日】2024-05-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】菊池 雅博
(72)【発明者】
【氏名】小澤 知之
【審査官】柴山 将隆
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/090638(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/218613(WO,A1)
【文献】特開2008-130718(JP,A)
【文献】特開2004-104041(JP,A)
【文献】特開2020-009794(JP,A)
【文献】特開2012-109367(JP,A)
【文献】特開2014-072256(JP,A)
【文献】特開2006-086510(JP,A)
【文献】国際公開第2021/085039(WO,A1)
【文献】国際公開第2008/111587(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10N 15/20
H10N 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向に磁化し、かつ前記第1方向と直交する第2方向に延びる第1磁性配線と、
前記第1方向の反対方向に磁化し、かつ前記第2方向に延びる第2磁性配線と、
前記第1磁性配線を支持する第1シートと、
前記第2磁性配線を支持する第2シートと、を備え、
前記第1磁性配線と前記第2磁性配線とは、前記第1シートと前記第2シートとの間に位置し、かつ、前記第1方向に並び、
前記第1磁性配線における前記第2方向の先端が、前記第2磁性配線における前記第2方向の先端に電気的に接続され、
前記第1磁性配線の前記第1シートに対する密着性は、前記第1磁性配線の前記第2シートに対する密着性よりも高く、
前記第2磁性配線の前記第2シートに対する密着性は、前記第2磁性配線の前記第1シートに対する密着性よりも高く、
前記第1磁性配線における前記第2方向の先端から前記第2磁性配線における前記第2方向の先端に向けて延びる第1接続部を前記第1シートにさらに備え、
前記第1磁性配線における前記第2方向の先端が、前記第1接続部を介して、前記第2磁性配線における前記第2方向の先端に電気的に接続され、
前記第2磁性配線における前記第2方向の先端から前記第1接続部に向けて延びる第2接続部を前記第2シートにさらに備え、
前記第1接続部が、前記第2接続部に接続され、
前記第1接続部における前記第2方向の長さは、前記第1磁性配線における前記第1方向の長さよりも大きく、
前記第1接続部が前記第2接続部に重ねられることによって、前記第1磁性配線が前記第2磁性配線に電気的に接続され、
前記第1接続部の厚さは、前記第1磁性配線の厚さよりも薄い、
熱電変換シート。
【請求項2】
第1方向に磁化し、かつ前記第1方向と直交する第2方向に延びる第1磁性配線と、
前記第1方向の反対方向に磁化し、かつ前記第2方向に延びる第2磁性配線と、
前記第1磁性配線を支持する第1シートと、
前記第2磁性配線を支持する第2シートと、を備え、
前記第1磁性配線と前記第2磁性配線とは、前記第1シートと前記第2シートとの間に位置し、かつ、前記第1方向に並び、
前記第1磁性配線における前記第2方向の先端が、前記第2磁性配線における前記第2方向の先端に電気的に接続され、
前記第1磁性配線の前記第1シートに対する密着性は、前記第1磁性配線の前記第2シートに対する密着性よりも高く、
前記第2磁性配線の前記第2シートに対する密着性は、前記第2磁性配線の前記第1シートに対する密着性よりも高く、
前記第1磁性配線における前記第2方向の先端から前記第2磁性配線における前記第2方向の先端に向けて延びる第1接続部を前記第1シートにさらに備え、
前記第1磁性配線における前記第2方向の先端が、前記第1接続部を介して、前記第2磁性配線における前記第2方向の先端に電気的に接続され、
前記第2磁性配線における前記第2方向の先端から前記第1接続部に向けて延びる第2接続部を前記第2シートにさらに備え、
前記第1接続部は、前記第1磁性配線における前記第2方向の先端から離間し、
前記第2接続部は、前記第2磁性配線における前記第2方向の先端から離間し、
前記第1接続部は、前記第2磁性配線における前記第2方向の先端に前記第2接続部を接続し、
前記第2接続部は、前記第1磁性配線における前記第2方向の先端に前記第1接続部を接続する、
熱電変換シート。
【請求項3】
前記第2磁性配線の形状は、前記第2方向に延びる回転軸に対して前記第1磁性配線の形状と回転対称である、
請求項1または2に記載の熱電変換シート。
【請求項4】
第1方向に磁化し、かつ前記第1方向と直交する第2方向に延びる第1磁性配線を第1面に形成することと、
磁化方向が前記第1方向と平行になるように磁化し、かつ前記第2方向に延びる第2磁性配線を第2面に形成することと、
前記第1磁性配線の磁化方向が前記第2磁性配線の磁化方向と反対になるように前記第1面に前記第2面を向かい合わせて、前記第1面と前記第2面との間に、前記第1磁性配線と前記第2磁性配線とを前記第1方向に並べ、かつ、前記第1磁性配線における前記第2方向の先端に、前記第2磁性配線における前記第2方向の先端を電気的に接続することと、を含み、
前記第1磁性配線を形成することは、前記第1面を備えたシートに前記第1磁性配線を形成することであり、
前記第2磁性配線を形成することは、前記第2面を備えた前記シートに前記第1磁性配線を形成することであり、
前記第1面と前記第2面とを向かい合わせることは、前記シートのなかで前記第1面を備えた第1部分から、前記シートのなかで前記第2面を備えた第2部分を切り離し、前記第1部分の前記第1面に前記第2部分の前記第2面を向かい合わせることである、
熱電変換シートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、熱電変換シート、および熱電変換シートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
熱電変換シートは、磁性体材料による異常ネルンスト、またはスピンゼーベック効果を利用する。熱電変換シートは、温度勾配の生じる方向と、磁性体材料の磁化方向との外積方向に電圧を生じる。例えば、磁化方向がY方向である磁性体を備えた熱電変換素子は、Y方向と直交するZ方向に温度勾配を与えられ、これによって、Y方向とZ方向とに直交するX方向に電圧を生じる。X方向の距離が大きいほど高い電圧が得られる熱電変換シートには、出力電圧を高めることを目的として、ロールの周方向をX方向にする技術が提案されている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-130070号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ロールの周方向に電圧を生じさせるシート構成は、出力電圧を高めることを可能にする一方、熱電変換シートの構造をロール状に制限してしまう。そのため、熱電変換シートには、ロール状以外の構造であっても出力電圧の向上が可能な新たな構成が切望されている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための熱電変換シートは、第1方向に磁化し、かつ前記第1方向と直交する第2方向に延びる第1磁性配線と、前記第1方向の反対方向に磁化し、かつ前記第2方向に延びる第2磁性配線と、前記第1磁性配線を支持する第1シートと、前記第2磁性配線を支持する第2シートと、を備える。前記第1磁性配線と前記第2磁性配線とは、前記第1シートと前記第2シートとの間に位置し、かつ、前記第1方向に並ぶ。前記第1磁性配線における前記第2方向の先端が、前記第2磁性配線における前記第2方向の先端に電気的に接続され、前記第1磁性配線の前記第1シートに対する密着性は、前記第1磁性配線の前記第2シートに対する密着性よりも高く、前記第2磁性配線の前記第2シートに対する密着性は、前記第2磁性配線の前記第1シートに対する密着性よりも高い。
【0006】
上記熱電変換シートによれば、相互に平行な2つの磁性配線が第1シートと第2シートとの間に配置される。2つの磁性配線のなかの1つの磁性配線は、同極性直列回路が構成されるように、他の磁性配線に接続されている。これにより、2つの磁性配線分の体積を有した1つの磁性層と比べて、熱電変換シートにおける体積当たりの出力電圧が高まる。結果として、熱電変換シートの構造がロール状であろうと平面状であろうと、熱電変換シートの出力電圧は高まる。
【0007】
そのうえ、各磁性配線がそれぞれ別のシートに高い密着性を有し、かつ、それぞれ別のシートに低い密着性を有する。これにより、各磁性配線をそれぞれ別のシートに形成する製造方法を採用することが可能となる。すなわち、第1磁性配線が形成された面と、第2磁性配線が形成された面とが向かい合うように、第1シートに第2シートを重ねる製造方法を採用することが可能となる。この製造方法であれば、相互に平行な2つの磁性配線に相反する磁化方向を与えることも容易である。
【0008】
上記課題を解決するための熱電変換シートの製造方法は、第1方向に磁化し、かつ前記第1方向と直交する第2方向に延びる第1磁性配線を第1面に形成することと、磁化方向が前記第1方向と平行になるように磁化し、かつ前記第2方向に延びる第2磁性配線を第2面に形成することと、前記第1磁性配線の磁化方向が第2磁性配線の磁化方向と反対になるように前記第1面に前記第2面を向かい合わせて、前記第1面と前記第2面との間に、前記第1磁性配線と前記第2磁性配線とを前記第1方向に並べ、かつ、前記第1磁性配線における前記第2方向の先端に、前記第2磁性配線における前記第2方向の先端を電気的に接続することと、を含む。
【0009】
上記製造方法によれば、相互に平行な2つの磁性配線が第1面と第2面との間に配置される。2つの磁性配線のなかの1つの磁性配線は、同極性直列回路が構成されるように、他の磁性配線に接続されている。これにより、2つの磁性配線分の体積を有した1つの磁性層と比べて、熱電変換シートにおける体積当たりの出力電圧が高まる。結果として、熱電変換シートの構造がロール状であろうと平面状であろうと、熱電変換シートの出力電圧は高まる。
【0010】
そのうえ、第1磁性配線が形成される第1面が、第2磁性配線が形成される第2面とは異なる。そのため、第1磁性配線を形成するための磁化処理が第2磁性配線に及ぶことを抑え、また第2磁性配線を形成するための磁化処理が第1磁性配線に及ぶことを抑えることも可能となる。あるいは、第1磁性配線を形成するための磁化処理と、第2磁性配線を形成するための磁化処理との共通化を図り、第1面に対する第2面の回転によって、第1磁性配線の磁化方向と、第2磁性配線の磁化方向とを相反させることも可能となる。結果として、相互に平行な2つの磁性配線に相反する磁化方向を与えることも容易である。
【0011】
上記熱電変換シートにおいて、前記第1磁性配線における前記第2方向の先端から前記第2磁性配線における前記第2方向の先端に向けて延びる第1接続部を前記第1シートにさらに備え、前記第1磁性配線における前記第2方向の先端が、前記第1接続部を介して、前記第2磁性配線における前記第2方向の先端に電気的に接続されてもよい。
【0012】
上記構成によれば、第1磁性配線の第1接続部が第2磁性配線の先端に向けて延びるため、第1磁性配線に第2磁性配線を接続することも容易である。
上記熱電変換シートにおいて、前記第2磁性配線における前記第2方向の先端から前記第1接続部に向けて延びる第2接続部を前記第2シートにさらに備え、前記第1接続部が、前記第2接続部に接続され、前記第1接続部における前記第2方向の長さは、前記第1磁性配線における前記第1方向の長さよりも大きくてもよい。
【0013】
上記構成によれば、第1磁性配線から第2磁性配線の先端に向けて延びる第1接続部が、第2磁性配線から第1接続部に向けて延びる第2接続部に接続される。この際、第1接続部における第2方向の長さが、第1磁性配線における第1方向の長さよりも大きい。そのため、第1磁性配線が第2磁性配線に向けて単に折り曲げられた構成と比べて、第1磁性配線が第2磁性配線に電気的に接続されやすい。
【0014】
上記熱電変換シートは、前記第1接続部が前記第2接続部に重ねられることによって、前記第1磁性配線が前記第2磁性配線に電気的に接続され、前記第1接続部の厚さは、前記第1磁性配線の厚さよりも薄くてもよい。
【0015】
上記構成によれば、第1接続部の厚さが第1磁性配線の厚さよりも薄いため、第1接続部が第2接続部に重ねられる構成において、第1面と第2面との間隔が第1磁性配線の厚さよりも広がることが抑えられる。そのため、第1面と第2面との温度差が第1磁性配線に伝わりやすい。
【0016】
上記熱電変換シートにおいて、前記第2磁性配線における前記第2方向の先端から前記第1接続部に向けて延びる第2接続部を前記第2シートにさらに備え、前記第1接続部は、前記第1磁性配線における前記第2方向の先端から離間し、前記第2接続部は、前記第2磁性配線における前記第2方向の先端から離間し、前記第1接続部は、前記第2磁性配線における前記第2方向の先端に前記第2接続部を接続し、前記第2接続部は、前記第1磁性配線における前記第2方向の先端に前記第1接続部を接続する。
【0017】
上記構成によれば、第1接続部が第1磁性配線とは異なる部材であり、また第2接続部が第2磁性配線とは異なる部材である。これにより、第1磁性配線に第2磁性配線を電気的に接続することに特化した材料、あるいは構造を、第1接続部に適用できる。また、第1磁性配線に第2磁性配線を電気的に接続することに特化した材料、あるいは構造を、第2接続部に適用できる。結果として、第1磁性配線に第2磁性配線を電気的に接続することの信頼性が高まる。
【0018】
上記熱電変換シートにおいて、前記第2磁性配線の形状は、前記第2方向に延びる回転軸に対して前記第1磁性配線の形状と回転対称であってもよい。
上記構成によれば、第2磁性配線の形状が第1磁性配線の形状と回転対称であるため、第1磁性配線による熱電変換特性と第2磁性配線による熱電変換特性との均一化も図られる。
【0019】
上記製造方法において、前記第1磁性配線を形成することは、前記第1面を備えた第1シートに前記第1磁性配線を形成することであり、前記第2磁性配線を形成することは、前記第2面を備えた第2シートに前記第1磁性配線を形成することであり、前記第1面と前記第2面とを向かい合わせることは、前記第1シートの前記第1面に前記第2シートの前記第2面を向かい合わせることであってもよい。
【0020】
上記製造方法によれば、第1磁性配線を形成するための磁化処理を施すシートが、第2磁性配線を形成するための磁化処理を施すシートとは異なる。そのため、第1磁性配線を形成するための磁化処理が第2磁性配線に及ぶことを抑え、また第2磁性配線を形成するための磁化処理が第1磁性配線に及ぶことを抑える効果の実効性が高まる。
【0021】
上記製造方法において、前記第1磁性配線を形成することは、前記第1面を備えたシートに前記第1磁性配線を形成することであり、前記第2磁性配線を形成することは、前記第2面を備えた前記シートに前記第1磁性配線を形成することであり、前記第1面と前記第2面とを向かい合わせることは、前記シートのなかで前記第1面を備えた第1部分と、前記シートのなかで前記第2面を備えた第2部分とを切り離し、前記第1部分の前記第1面に前記第2部分の前記第2面を向かい合わせることであってもよい。
【0022】
上記製造方法によれば、第1磁性配線と第2磁性配線とを1つのシートに形成するため、第1磁性配線と第2磁性配線とをそれぞれ別のシートに形成する製造方法と比べて、熱電変換シートの製造に要求される部材の点数を少なくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】熱電変換シートの層構成を示す分解斜視図である。
図2】磁性配線の配置を外部負荷と共に示す平面図である。
図3図2のIII-III線から見た断面図である。
図4】磁性配線を形成する工程を示す平面図である。
図5】第1磁性配線に第2磁性配線を接続する工程を示す平面図である。
図6】接続部の構造を示す平面図である。
図7】接続部の構造を示す平面図である。
図8】接続部の構造を示す平面図である。
図9】第1磁性配線に第2磁性配線を接続する構成を示す断面図である。
図10】第1磁性配線に第2磁性配線を接続する構成を示す断面図である。
図11】第1磁性配線に第2磁性配線を接続する構成を示す断面図である。
図12】熱電変換シートの層構成を示す断面図である。
図13】熱電変換シートの層構成を示す断面図である。
図14】熱電変換シートの製造方法を説明するための平面図である。
図15】第1磁性配線と第2磁性配線との配置例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
熱電変換シート、および熱電変換シートの製造方法の一実施形態を以下に説明する。
[シート構成]
図1が示すように、熱電変換シートは、第1シート11、第1熱電変換部12、第2シート21、および第2熱電変換部22を備える。
【0025】
各シート11,21は、それぞれ第1磁性配線12Lと第2磁性配線22Lとに対して電気的に絶縁されている。各シート11,21は、それぞれ1つの層から構成されてもよいし、複数の層から構成されてもよい。各シート11,21を構成する材料は、それぞれ有機化合物でもよいし、無機化合物でもよいし、有機無機複合材料でもよい。第1シート11を構成する材料は、第2シート21を構成する材料と同一であってもよいし、第2シート21を構成する材料とは異なってもよい。
【0026】
なお、各シート11,21に高い熱伝導率を要求される場合、また熱電変換シートのなかで部材の共通化を要求される場合、第1シート11を構成する材料は、第2シート21を構成する材料と同一であることが好ましい。また、熱電変換シートに可撓性を要求される場合、各シート11,21を構成する材料は、それぞれ有機化合物であることが好ましい。
【0027】
各シート11,21を構成する有機化合物の一例は、例えば、ポリイミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、アクリル樹脂からなる群から選択される少なくとも一種の樹脂である。各シート11,21を構成する無機化合物の一例は、酸化珪素、窒化珪素、酸窒化珪素、酸化マグネシウムからなる群から選択される少なくとも一種である。各シート11,21を構成する無機有機複合材料の一例は、セルロース繊維を含有する酸化珪素である。
【0028】
なお、熱電変換シートに耐熱性を要求される場合、各シート11,21は、それぞれポリイミド層を含むことが好ましい。熱電変換シートに機械的な耐久性を要求される場合、各シート11,21は、それぞれポリカーボネート層を含むことが好ましい。
【0029】
各シート11,21の面方向における大きさは、熱電変換シートに要求される寸法に合わせて適宜選択される。各シート11,21の厚さは、熱電変換シートに可撓性を要求され、また各シート11,21に高い熱伝導率を要求される場合、25μm以上250μm以下であることが好ましい。
【0030】
第1シート11の面方向における大きさは、第2シート21の面方向における大きさと同一であってもよいし、第2シート21の面方向における大きさとは異なってもよい。第1シート11の厚さは、第2シート21の厚さと同一であってもよいし、第2シート21の厚さとは異なってもよい。
【0031】
なお、第1シート11における熱伝導率の均一性が第2シート21における熱伝導率の均一性と等しいことを要求される場合、第1シート11の寸法は、第2シート21の寸法と等しいことが好ましい。また、熱電変換シートのなかで部材の共通化を要求される場合、第1シート11の寸法は、第2シート21の寸法と等しいことが好ましい。
【0032】
[配線構成]
第1シート11は、第2シート21と向かい合う第1面11aを備える。第2シート21は、第1シート11と向かい合う第2面21aを備える。熱電変換シートは、第1面11aと第2面21aとの間に、第1熱電変換部12、および第2熱電変換部22とを備える。
【0033】
第1熱電変換部12は、第1面11aに接合されている。第1シート11は、第1熱電変換部12を支持する。第1熱電変換部12は、第1磁性配線12L、および第1先端接続部12E2を備える。第1熱電変換部12は、第1基端接続部12E1をさらに備える。
【0034】
第2熱電変換部22は、第2面21aに接合されている。第2シート21は、第2熱電変換部22を支持する。第2熱電変換部22は、第1磁性配線12L、および第1基端接続部12E1を備える。第2熱電変換部22は、第1先端接続部12E2をさらに備える。
【0035】
第1磁性配線12Lは、第1熱電変換部12のなかで一つの方向に延びる線状部分である。第2磁性配線22Lは、第2熱電変換部22のなかで一つの方向に延びる線状部分である。
【0036】
各磁性配線12L,22Lの延びる方向は、第2方向Dyである。各磁性配線12L,22Lは、第1シート11と第2シート21との間に位置する、相互に平行な複数本の直線上に位置する。各磁性配線12L,22Lの並ぶ方向は、第2方向Dyと交差する方向である。
【0037】
各磁性配線12L,22Lは、それぞれ1つの層から構成されてもよいし、複数の層から構成されてもよい。各磁性配線12L,22Lを構成する材料は、異常ネルンスト効果を発現する。あるいは、各磁性配線12L,22Lを構成する材料は、スピンゼーベック効果を発現する。第1磁性配線12Lの磁化方向は、第1方向Dxである。第1方向Dxは、第1面11aのなかで第2方向Dyと直交する方向である。第2磁性配線22Lの磁化方向は、第1方向Dxとは反対方向である。
【0038】
第1方向Dx、および第2方向Dyに直交する方向は、第3方向Dzである。第2シート21は、第1シート11の第3方向Dzに位置する。熱電変換シートは、電圧の出力に際し、第3方向Dzに熱勾配を加えられる。
【0039】
熱電変換シートが異常ネルンスト効果を用いる場合、各磁性配線12L,22Lは、各磁性配線12L,22Lの配線抵抗を低めるため、磁性材料よりも低い抵抗を有した金属層をさらに備えてもよい。熱電変換シートがスピンゼーベック効果を用いる場合、各磁性配線12L,22Lは、磁性材料からなる層と、磁性材料からスピン流が流れる金属層とを備える。
【0040】
異常ネルンスト効果を発現する磁性材料は、強磁性材料でもよいし、フェリ磁性材料でもよいし、反強磁性材料でもよい。異常ネルンスト効果を発現する磁性材料の一例は、マンガンゲルマニウム合金、マンガン錫合金、コバルトマンガンガリウム合金、コバルトマンガンゲルマニウム合金、鉄アルミニウム合金、鉄ガリウム合金からなる群から選択される少なくとも1つである。
【0041】
スピンゼーベック効果を発現する磁性材料は、強磁性材料でもよいし、フェリ磁性材料でもよいし、反強磁性材料でもよい。スピンゼーベック効果を発現する磁性材料は、金属でもよいし、半導体でもよいし、絶縁体でもよい。スピンゼーベック効果を発現する磁性材料の一例は、ニッケル鉄、ニッケル銅、コバルト銅、イットリウム鉄、イットリウム鉄ガーネット、イットリウムガリウム鉄ガーネットからなる群から選択される少なくとも1つである。
【0042】
各磁性配線12L,22Lを構成する層は、単一の材料から構成されてもよいし、複数の材料から構成されてもよい。各磁性配線12L,22Lを構成する層が複数の材料から構成される場合、各磁性配線12L,22Lを構成する層は、磁性材料から構成される粒子、および粒子間を結着するバインダー樹脂から構成されてもよい。バインダー樹脂の一例は、ポリエチレン、ポリエステル、アクリル樹脂からなる群から選択される少なくとも1つの樹脂である。
【0043】
各磁性配線12L,22Lの並ぶ方向の一例は、第1方向Dxである。第1方向Dxは、各磁性配線12L,22Lの磁化方向と平行な方向である。各磁性配線12L,22Lの並ぶ方向は、第1面11aに沿った方向のなかで、第1方向Dx、および第2方向Dyに交差する方向であってもよい。
【0044】
第1磁性配線12Lの第2方向Dyにおける長さは、第2磁性配線22Lの第2方向Dyにおける長さと等しくてもよいし、異なってもよい。各面11a,21aが矩形面状である場合、全ての磁性配線12L,22Lの占有面積が各面11a,21aで最大となるように、第1磁性配線12Lの第2方向Dyの長さは、第2磁性配線22Lの第2方向Dyの長さと等しいことが好ましい。他方、各面11a,21aが不定形状である場合、全ての磁性配線12L,22Lの占有面積が各面11a,21aで最大となるように、第1磁性配線12Lの第2方向Dyの長さは、第2磁性配線22Lの第2方向Dyの長さと異なることが好ましい。
【0045】
第1磁性配線12Lにおける第2方向Dyの先端は、第2磁性配線22Lにおける第2方向Dyの先端に対し、第1方向Dxに位置してもよいし、第1方向Dxから外れていてもよい。第1磁性配線12Lにおける第2方向Dyの基端は、第2磁性配線22Lにおける第2方向Dyの基端に対し、第1方向Dxの反対方向に位置してもよいし、第1方向Dxの反対方向から離れてもよい。例えば、各面11a,21aが矩形面状である場合、磁性配線12L,22Lの占有面積が各面11a,21aで最大となるように、第1磁性配線12Lの先端は、第2磁性配線22Lの先端に対し、第1方向Dxに位置することが好ましい。また、第1磁性配線12Lにおける第2方向Dyの基端は、第2磁性配線22Lにおける第2方向Dyの基端に対し、第1方向Dxの反対方向に位置することが好ましい。
【0046】
第1磁性配線12Lの本数は、第2磁性配線22Lの本数と等しい。1枚の熱電変換シートのなかの第1磁性配線12Lの本数は、熱電変換シートに要求される出力電圧の高さに応じて適宜選択される。1枚の熱電変換シートのなかの各磁性配線12L,22Lの本数は、1本でもよいし、2本以上でもよい。熱電変換シートの出力電圧を高めることが要求される場合、1枚の熱電変換シートのなかの第1磁性配線12Lの本数は、多いことが好ましい。
【0047】
[接続部構成]
第1基端接続部12E1は、導電性を有する。第1基端接続部12E1は、第1磁性配線12Lの第2方向Dyにおける基端に接続されている。第1基端接続部12E1は、第1磁性配線12Lと同じく、第1面11aに支持されている。
【0048】
第1基端接続部12E1は、第1磁性配線12Lと一体として第1磁性配線12Lの基端から延びてもよいし、第1磁性配線12Lとは別体として第1磁性配線12Lの基端に接合されてもよい。第1基端接続部12E1を構成する材料は、第1磁性配線12Lを構成する材料と同じでもよいし、第1磁性配線12Lを構成する材料とは異なる導電性材料でもよい。
【0049】
第1先端接続部12E2は、第1接続部の一例である。第1先端接続部12E2は、導電性を有する。第1先端接続部12E2は、第1磁性配線12Lの第2方向Dyにおける先端に接続されている。第1先端接続部12E2は、第1磁性配線12Lと同じく、第1面11aに支持されている。
【0050】
第1先端接続部12E2は、第1磁性配線12Lと一体として第1磁性配線12Lの先端から延びてもよいし、第1磁性配線12Lとは別体として第1磁性配線12Lの先端に接合されてもよい。第1先端接続部12E2を構成する材料は、第1磁性配線12Lを構成する材料と同じでもよいし、第1磁性配線12Lを構成する材料とは異なる導電性材料でもよい。
【0051】
第1熱電変換部12の製造を容易にすることが要求される場合、各接続部12E1,12E2は、第1磁性配線12Lと一体であり、かつ各接続部12E1,12E2を構成する材料は、第1磁性配線12Lを構成する材料と同じであることが好ましい。各接続部12E1,12E2の導電性を高めることが要求される場合、各接続部12E1,12E2は、第1磁性配線12Lと別体であることが好ましい。そして、各接続部12E1,12E2を構成する材料は、第1磁性配線12Lを構成する材料とは異なる金属材料であることが好ましい。
【0052】
第2基端接続部22E1は、導電性を有する。第2基端接続部22E1は、第2磁性配線22Lの第2方向Dyにおける基端に接続されている。第2先端接続部22E2は、第2磁性配線22Lと同じく、第2面21aに支持されている。
【0053】
第2基端接続部22E1は、第2磁性配線22Lと一体として第2磁性配線22Lの基端から延びてもよいし、第2磁性配線22Lとは別体として第2磁性配線22Lの基端に接合されてもよい。第2基端接続部22E1を構成する材料は、第2磁性配線22Lを構成する材料と同じでもよいし、第2磁性配線22Lを構成する材料とは異なる導電性材料でもよい。
【0054】
第2先端接続部22E2は、第2接続部の一例である。第2先端接続部22E2は、導電性を有する。第2先端接続部22E2は、第2磁性配線22Lの第2方向Dyにおける先端に接続されている。第2先端接続部22E2は、第2磁性配線22Lと同じく、第2面21aに支持されている。
【0055】
第2先端接続部22E2は、第2磁性配線22Lと一体として第2磁性配線22Lの先端から延びてもよいし、第2磁性配線22Lとは別体として第2磁性配線22Lの先端に接合されてもよい。第2先端接続部22E2を構成する材料は、第2磁性配線22Lを構成する材料と同じでもよいし、第2磁性配線22Lを構成する材料とは異なる導電性材料でもよい。
【0056】
第2熱電変換部22の製造を容易にすることが要求される場合、各接続部22E1,22E2は、第2磁性配線22Lと一体であり、かつ各接続部22E1,22E2を構成する材料は、第2磁性配線22Lを構成する材料と同じであることが好ましい。各接続部22E1,22E2の導電性を高めることが要求される場合、各接続部22E1,22E2は、第2磁性配線22Lと別体であることが好ましい。そして、各接続部22E1,22E2を構成する材料は、第2磁性配線22Lを構成する材料とは異なる金属材料であることが好ましい。
【0057】
各接続部12E1,12E2の個数は、第1磁性配線12Lの本数と等しい。各接続部22E1,22E2の個数は、第2磁性配線22Lの本数と等しい。1枚の熱電変換シートのなかの各接続部12E1,12E2,22E1,22E2の個数は、熱電変換シートに要求される出力電圧の高さ、および出力数に応じて適宜選択される。熱電変換シートの出力電圧を高めることが要求される場合、各磁性配線12L,22Lと同じく、1枚の熱電変換シートのなかの各接続部12E1,12E2,22E1,22E2の個数は、多いことが好ましい。
【0058】
[電気的接続構成]
図2は、各磁性配線12L,22Lの平面図と共に、各熱電変換部12,22の磁化方向を矢印で示す。なお、各熱電変換部12,22の区別を容易にする便宜上、第1熱電変換部12を白抜きで示し、第2熱電変換部22にドットを付して示す。
【0059】
図2が示すように、第1磁性配線12Lの磁化方向は、第1方向Dxである。第2磁性配線22Lの磁化方向は、第1方向Dxとは反対方向である。熱電変換シートは、磁化方向が交互に反転するように配列された、複数の磁性配線12L,22Lを備える。
【0060】
第1基端接続部12E1は、当該第1基端接続部12E1に隣接する第2磁性配線22Lの基端に向けて延びる。第1先端接続部12E2は、当該第1先端接続部12E2に隣接する第2磁性配線22Lの先端に向けて延びる。第1基端接続部12E1が第1磁性配線12Lから延びる方向は、第1先端接続部12E2が第1磁性配線12Lから延びる方向とは反対方向である。
【0061】
第2基端接続部22E1は、当該第2基端接続部22E1に隣接する第1磁性配線12Lの基端に向けて延びる。第2先端接続部22E2は、当該第2先端接続部22E2に隣接する第1磁性配線12Lの先端に向けて延びる。第2基端接続部22E1が第2磁性配線22Lから延びる方向は、第2先端接続部22E2が第2磁性配線22Lから延びる方向とは反対方向である。
【0062】
各接続部12E1,12E2の延びる方向は、例えば、磁性配線12L,22Lの並ぶ方向であってもよいし、第1方向Dxに沿った方向でもよい。各接続部22E1,22E2の延びる方向は、例えば、磁性配線12L,22Lの並ぶ方向であってもよいし、第1方向Dxに沿った方向でもよい。熱電変換シートの製造を容易にすることが要求される場合、第1熱電変換部12の形状は、第2方向Dyに沿う回転軸を中心として、第2熱電変換部22の形状と回転対称であることが好ましい。
【0063】
第1先端接続部12E2の少なくとも1つは、当該第1先端接続部12E2の延びる方向に位置する第2先端接続部22E2のなかで、当該第1先端接続部12E2に最も近い1つの第2先端接続部22E2に接合されている。これにより、第1磁性配線12Lの先端が、第2磁性配線22Lの先端に電気的に接続される。先端同士を電気的に接続された第1磁性配線12Lと第2磁性配線22Lとは、同極性直列回路を構成する。同極性直列回路は、回路を構成する各構成要素の電圧が同じ極性となるように、各構成要素が直列に接続された回路である。第1先端接続部12E2と第2先端接続部22E2との接合は、第1先端接続部12E2と第2先端接続部22E2との面接触でもよいし、導電性接合材料を介した接合でもよい。
【0064】
第1基端接続部12E1の少なくとも1つは、当該第1基端接続部12E1の延びる方向に位置する第2基端接続部22E1のなかで、当該第1基端接続部12E1に最も近い1つの第2基端接続部22E1に接合されてもよい。これにより、第1磁性配線12Lの基端が、第2磁性配線22Lの基端に電気的に接続される。基端同士を電気的に接続された第1磁性配線12Lと第2磁性配線22Lとは、同極性直列回路を構成する。第1基端接続部12E1と第2基端接続部22E1との接合は、第1基端接続部12E1と第2基端接続部22E1との面接触でもよいし、導電性接合材料を介した接合でもよい。
【0065】
各接続部12E1,12E2における第2方向Dyの長さは、第1磁性配線12Lにおける第1方向Dxの長さよりも大きい。各接続部22E1,22E2における第2方向Dyの長さは、第2磁性配線22Lにおける第1方向Dxの長さよりも大きい。各接続部12E1,12E2,22E1,22E2における第2方向Dyの長さが大きいほど、接続部同士の接合の信頼性が高まる。
【0066】
第1熱電変換部12、および第2熱電変換部22は、1つの同極性直列回路を備えてもよいし、複数の同極性直列回路を備えてもよい。同極性直列回路の両端部は、外部負荷31に接続されている。
【0067】
なお、図2は、第1熱電変換部12、および第2熱電変換部22は、1つの同極性直列回路を備える例を示す。全ての接続部12E1,12E2,22E1,22E2のなかで、最も第1方向Dxに位置する第1基端接続部12E1は、同極性直列回路の1つの端部である。全ての接続部12E1,12E2,22E1,22E2のなかで、最も第1方向Dxとは反対方向に位置する第2基端接続部22E1は、同極性直列回路の他の端部である。
【0068】
外部負荷31に接続される接続部12E1,12E2,22E1,22E2の個数は、熱電変換シートの出力数、および出力電圧の高さに応じて適宜変更されてもよい。出力数は、1つの熱電変換シートにおける出力系統の数である。熱電変換シートの出力数が2系統である場合、熱電変換シートは2系統から電圧を出力する。この際、外部負荷31に接続される接続部12E1,12E2,22E1,22E2の個数は、少なくとも3つである。
【0069】
例えば、図2において、全ての接続部12E1,12E2,22E1,22E2のなかで、最も第1方向Dxに位置する第1基端接続部12E1と、2番目に第1方向Dxに位置する第1基端接続部12E1とが、外部負荷31に接続されてもよい。そして、全ての接続部12E1,12E2,22E1,22E2のなかで、最も第1方向Dxの反対方向に位置する第2基端接続部22E1が、外部負荷31に接続されてもよい。
【0070】
これにより、1つの熱電変換シートは、各磁性配線12L,22Lが3本ずつである1つの同極性直列回路を備え、かつ各磁性配線12L,22Lが2本ずつである他の同極性直列回路も備える。そして、熱電変換シートは、2つの同極性直列回路を備え、2つの電圧を出力する1つの抵抗分圧回路としても機能する。
【0071】
あるいは、1つの熱電変換シートは、各磁性配線12L,22Lが1本ずつである1つの同極性直列回路を備え、かつ各磁性配線12L,22Lが2本ずつである他の同極性直列回路も備える。そして、熱電変換シートは、2つの同極性直列回路を備え、2つの電圧を出力する1つの抵抗分圧回路としても機能する。
【0072】
[積層構成]
上述したように、第1磁性配線12Lは、第1シート11の第1面11aに形成される。第1磁性配線12Lは、第2シート21の第2面21aに接触してもよいし、他の層を介して、第2シート21の第2面21aから離間してもよい。他の層の一例は、第1面11aと第2面21aとの間に充填され、かつ温度勾配を形成するための樹脂層である。
【0073】
上述したように、第2磁性配線22Lは、第2シート21の第2面21aに形成される。第2磁性配線22Lは、第1シート11の第1面11aに接触してもよいし、他の層を介して、第1シート11の第1面11aから離間してもよい。他の層の一例は、第1面11aと第2面21aとの間に充填され、かつ温度勾配を形成するための樹脂層である。
【0074】
第1磁性配線12Lの第1シート11に対する密着性は、第1磁性配線12Lの第2シート21に対する密着性よりも高い。第2磁性配線22Lの第2シート21に対する密着性は、第2磁性配線22Lの第1シート11に対する密着性よりも高い。第1磁性配線12Lが第1面11aから剥がれにくいほど、第1磁性配線12Lの第1シート11に対する密着性は高い。第1磁性配線12Lが第2面21aから離れやすいほど、第1磁性配線12Lの第2シート21に対する密着性は低い。第2磁性配線22Lが第2面21aから剥がれにくいほど、第2磁性配線22Lの第2シート21に対する密着性は高い。第2磁性配線22Lが第1面11aから離れやすいほど、第2磁性配線22Lの第1シート11に対する密着性は低い。
【0075】
第1磁性配線12Lの各シート11,21に対する密着性の相違は、第1磁性配線12Lと第1面11aとの接合構成、第1磁性配線12Lと第2面21aとの距離、第1面11aと第2面21aとの間を埋める樹脂層の性状によって、調整可能である。例えば、第1磁性配線12Lと第1面11aとの接合強度が高まる第1面11aを採用することによって、第1磁性配線12Lの第1シート11に対する密着性が上がる。例えば、第1磁性配線12Lと第2面21aとの間隔を空けることによって、第1磁性配線12Lの第2シート21に対する密着性が下がる。例えば、第1磁性配線12Lと樹脂層との接合が弱まる樹脂層に採用することによって、第1磁性配線12Lの第2シート21に対する密着性が下がる。
【0076】
第2磁性配線22Lの各シート11,21に対する密着性の相違も同様に、第2磁性配線22Lと第2面21aとの接合構成、第2磁性配線22Lと第2面21aとの距離、第1面11aと第2面21aとの間を埋める他の層の性状によって、調整可能である。
【0077】
図3が示すように、第1磁性配線12L、および各接続部12E1,12E2は、第1面11aに接合されている。第2磁性配線22L、および各接続部22E1,22E2は、第2面21aに接合されている。
【0078】
第1面11aと第2面21aとの間の第3方向Dzにおける厚さは、各磁性配線12L,22Lの第3方向Dzにおける厚さと等しくてもよいし、各磁性配線12L,22Lの第3方向Dzにおける厚さよりも厚くてもよい。図3は、第1面11aと第2面21aとの間の第3方向Dzにおける厚さが、各磁性配線12L,22Lの第3方向Dzにおける厚さよりも若干厚い例を示す。
【0079】
各接続部12E1,12E2,22E1,22E2は、当該接続部の接続先と重なるように、第1面11aと第2面21aとの間に位置する。各接続部12E1,12E2,22E1,22E2は、当該接続部の接続先と重なることによって、電気的に接続されている。
【0080】
各接続部12E1,12E2,22E1,22E2の第3方向Dzにおける厚さは、相互に等しくてもよいし、相互に異なってもよい。第1面11aと第2面21aとの第3方向Dzにおける温度差の均一化が要求される場合、各接続部12E1,12E2,22E1,22E2の第3方向Dzにおける厚さは、各磁性配線12L,22Lよりも薄いことが好ましい。各接続部12E1,12E2,22E1,22E2の第3方向Dzにおける厚さは、一定でもよいし、一定でなくてもよい。
【0081】
例えば、図3において、各接続部12E1,12E2,22E1,22E2が、当該接続部の接続元となる磁性配線12L,22Lから、当該接続部の接続先に向けて徐々に厚さを薄める。第1基端接続部12E1は、第1基端接続部12E1のなかの最も厚い部分に、第2基端接続部22E1のなかの最も薄い部分を重ねるように、第2基端接続部22E1に重ねられる。また、第1先端接続部12E2は、第1先端接続部12E2のなかの最も厚い部分に、第2先端接続部22E2のなかの最も薄い部分を重ねるように、第2先端接続部22E2に重ねられる。
【0082】
これにより、各接続部12E1,22E1の総厚は、各磁性配線12L,22Lの厚さに近づく。各接続部12E2,22E2の総厚もまた、各磁性配線12L,22Lの厚さに近づく。そして、各磁性配線12L,22Lに加えられる温度差の均一化が図られる。
【0083】
[製造方法]
図4が示すように、熱電変換シートの製造方法は、1つのシートS1に、第1熱電変換部12、および第2熱電変換部22を形成する工程を含む。シートS1は、1つの切断予定線S1Lを備える。第1熱電変換部12、および第2熱電変換部22を形成する工程は、各磁性配線12L,22Lを磁化する工程、およびシートS1を切断予定線S1Lで切断する工程を含む。
【0084】
第1熱電変換部12を形成する工程は、シートS1が備える1つの側面S1aに、第1磁性配線12L、第1基端接続部12E1、および第1先端接続部12E2を形成する。第2熱電変換部22を形成する工程は、シートS1が備える1つの側面S1aに、第2磁性配線22L、第2基端接続部22E1、および第2先端接続部22E2を形成する。第1熱電変換部12が形成される範囲である第1部分は、第2熱電変換部22が形成される範囲である第2部分から、1つの切断予定線S1Lによって区切られている。
【0085】
第1熱電変換部12が形成される範囲のなかで、第1磁性配線12Lは、第1方向Dxに並ぶ。第1方向Dxにおいて相互に隣り合う第1磁性配線12Lの間には、第2磁性配線22Lが存在せず、第2磁性配線22Lが配置され得る大きさだけ、第1方向Dxに隙間を空けられている。シートS1において相互に隣り合う第1磁性配線12Lの間隔は、熱電変換シートにおいて相互に隣り合う第1磁性配線12Lの間隔と等しい。
【0086】
第2熱電変換部22が形成される範囲のなかで、第2磁性配線22Lは、第1方向Dxに並ぶ。第1方向Dxにおいて相互に隣り合う第2磁性配線22Lの間は、第1磁性配線12Lが存在せず、第1磁性配線12Lが配置され得る大きさだけ、第1方向Dxに隙間を空けられている。シートS1において相互に隣り合う第2磁性配線22Lの間隔は、熱電変換シートにおいて相互に隣り合う第2磁性配線22Lの間隔と等しい。
【0087】
各磁性配線12L,22Lを形成する方法は、シートS1を基材とした気相成膜法でもよいし、シートS1を基材とした液相成膜法でもよい。気相成膜法の一例は、蒸着法、あるいはスパッタ法である。液相成膜法の一例は、磁性材料をバインダー樹脂に分散させたインクを用いる印刷法である。印刷法の一例は、平版印刷法、凸版印刷法、凹版印刷法、スクリーン印刷法、インクジェット法である。熱電変換シートの生産性向上が要求される場合、シートS1をロール体としたロールツーロール形式を用いることが好ましい。
【0088】
シートS1において、第1磁性配線12Lは、磁化方向が第1方向Dxとなるように磁化される。シートS1において、第1磁性配線12Lの基端から第1基端接続部12E1が延びる方向は、例えば、第1方向Dxである。シートS1において、第2磁性配線22Lの基端から第2基端接続部22E1が延びる方向も、例えば、第1方向Dxである。
【0089】
シートS1において、第2磁性配線22Lは、磁化方向が第1方向Dxとなるように磁化される。シートS1において、第1磁性配線12Lの先端から第1先端接続部12E2が延びる方向は、第1方向Dxとは反対方向である。シートS1において、第2磁性配線22Lの先端から第2先端接続部22E2が延びる方向も、第1方向Dxの反対方向である。
【0090】
すなわち、側面S1aに形成された全ての磁性配線12L,22Lは、磁化方向が第1方向Dxとなるように磁化される。こうした磁化工程によれば、シートS1に形成された全ての磁性配線12L,22Lの磁化方向について共通化が図られるため、磁化工程に要求される負荷が軽減される。なお、各接続部12E1,12E2,22E1,22E2は、磁性配線12L,22Lと共に磁化されてもよいし、磁化されなくてもよい。磁化工程に要求される負荷の軽減がさらに要求される場合、接続部12E1,12E2,22E1,22E2は、磁性配線12L,22Lと共に磁化されることが好ましい。
【0091】
図5が示すように、シートS1は、切断予定線S1Lで切断される。シートS1が切断予定線S1Lで切断されることによって、第1シート11、および第2シート21が形成される。
【0092】
第1シート11は、相互に隣り合う第1磁性配線12Lの間に1本の第2磁性配線22Lが位置するように、第2シート21に重ねられる。また、第1シート11は、第1基端接続部12E1が第2基端接続部22E1に重なり、かつ第1先端接続部12E2が第2先端接続部22E2に重なるように、第2シート21に重ねられる。この際、第1磁性配線12Lの基端から第1基端接続部12E1の延びる方向は、第2磁性配線22Lの基端から第2基端接続部22E1の延びる方向とは反対となる。また、第1磁性配線12Lの先端から第1先端接続部12E2の延びる方向は、第2磁性配線22Lの先端から第2先端接続部22E2の延びる方向とは反対となる。これにより、第1面11aと第2面21aとの間に、同極性直列回路を構成するように、第1磁性配線12Lが第2磁性配線22Lに電気的に接続される。
【0093】
第1シート11に第2シート21を重ねるとき、第1先端接続部12E2と第2先端接続部22E2との間に導電性材料を介在させてもよい。第1シート11に第2シート21を重ねるとき、第1磁性配線12Lと第2面21aとの間、および第2磁性配線22Lと第1面11aとの間に樹脂層を介在させてもよい。第1面11aは、粘着剤、接着剤、あるいは、熱可塑性樹脂を介して、第2面21aに接合されてもよい。
【0094】
上記実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
(1)第1シート11と第2シート21との間において、第1磁性配線12Lと第2磁性配線22Lとが同極性直列回路を構成するように、第1磁性配線12Lが第2磁性配線22Lに接続されている。これにより、熱電変換シートにおける体積当たりの出力電圧が高まる。結果として、熱電変換シートの構造がロール状であろうと平面状であろうと、熱電変換シートの出力電圧は高まる。
【0095】
(2)各磁性配線12L,22Lがそれぞれ別のシート11,21に高い密着性を有し、かつ、それぞれ別のシート11,21に低い密着性を有する。これにより、各磁性配線12L,22Lをそれぞれ別のシートに形成する製造方法を採用することが可能となる。結果として、相互に平行な2つの磁性配線12L,22Lに相反する磁化方向を与えることも容易である。
【0096】
(3)第1磁性配線12Lが形成される第1面11aが、第2磁性配線22Lが形成される第2面21aとは異なる。これにより、各磁性配線12L,磁性配線22Lを形成するための磁化処理の共通化を図りながらも、第1面11aに対する第2面21aの回転によって、第1磁性配線12Lの磁化方向と、第2磁性配線22Lの磁化方向とを、相反させることも可能となる。結果として、相互に平行な磁性配線12L,22Lに相反する磁化方向を与えることも容易である。
【0097】
(4)第1先端接続部12E2は、第1磁性配線12Lの先端から第2磁性配線22Lの先端に向けて延びる。これにより、第1磁性配線12Lに第2磁性配線22Lを接続することも容易である。同様に、第1基端接続部12E1は、第1磁性配線12Lの基端から第2磁性配線22Lの基端に向けて延びる。これにより、第1磁性配線12Lに第2磁性配線22Lを接続することも容易である。
【0098】
(5)第2先端接続部22E2は、第2磁性配線22Lの先端から第1磁性配線12Lの先端に向けて延びる。これにより、第2磁性配線22Lに第1磁性配線12Lを接続することも容易である。同様に、第2基端接続部22E1は、第2磁性配線22Lの基端から第1磁性配線12Lの基端に向けて延びる。これにより、第1磁性配線12Lに第2磁性配線22Lを接続することも容易である。
【0099】
(6)各接続部12E1,12E2,22E1,22E2の第2方向Dyにおける長さが、磁性配線12L,22Lの第1方向Dxにおける長さよりも大きくてもよい。この場合、第1磁性配線12Lが第2磁性配線22Lに向けて単に折り曲げられた構成と比べて、第1磁性配線12Lが第2磁性配線22Lに電気的に接続されやすい。そして、接続部間における電気的な接続の信頼性も高まる。
【0100】
(7)各接続部12E1,12E2,22E1,22E2の厚さが、磁性配線12L,22Lの厚さよりも薄くてもよい。この場合、接続部同士を重ねる構成において、第1面11aと第2面21aとの間隔が磁性配線12L,22Lの厚さよりも広がることが抑えられる。そのため、第1面11aと第2面21aとの温度差が磁性配線12L,22Lに伝わりやすい。
【0101】
[変更例]
上記実施形態は、以下のように変更して実施することもできる。
[接続部平面形状]
図6が示すように、各接続部12E1,12E2,22E1,22E2の形状は、円盤状であってもよい。この際、接合部間における電気的な接続の信頼性を高めることが要求される場合、上述したように、各接続部12E1,12E2,22E1,22E2の直径は、磁性配線12L,22Lの第1方向Dxにおける長さよりも大きいことが好ましい。
【0102】
図7が示すように、各接続部12E1,12E2,22E1,22E2は、2つの接続部要素から構成されてもよい。すなわち、各接続部12E1,12E2,22E1,22E2は、第2方向Dyに並ぶ2つ以上の構造体から構成されてもよい。この際、図7の二点鎖線が示すように、第1磁性配線12Lに接続された接続要素、および接続要素間に重なるように、第2磁性配線22Lに接続された接続要素が配置されてもよい。これにより、第2方向Dyにおいて、第1磁性配線12Lに対する第2磁性配線22Lのずれを許容し、かつ接合部間における電気的な接続の信頼性を得ることも可能となる。
【0103】
図8が示すように、各接続部12E1,12E2は、第1磁性配線12Lから離間してもよい。また、各接続部22E1,22E2は、第2磁性配線22Lから離間してもよい。この際、図8の二点鎖線が示すように、第1磁性配線12L、および第1先端接続部12E2と重なるように、第2先端接続部22E2が配置される。また、第2磁性配線22L、および第2先端接続部22E2と重なるように、第1先端接続部12E2が配置される。こうした構成であっても、第1磁性配線12Lと第2磁性配線22Lとを電気的に接続することは可能である。
【0104】
[接続部断面形状]
図9が示すように、各接続部12E1,12E2の厚さは、第1磁性配線12Lの厚さと等しくてもよい。また、各接続部22E1,22E2の厚さは、第2磁性配線22Lの厚さと等しくてもよい。この構成によれば、各接続部12E1,12E2を第1磁性配線12Lよりも薄くするための処理が不要となる。また、各接続部22E1,22E2を第2磁性配線22Lよりも薄くするための処理が不要となる。
【0105】
これにより、熱電変換シートの製造工程が簡素化される。なお、各接続部12E1,12E2を構成する材料が、第1磁性配線12Lを構成する材料と等しい場合、第1熱電変換部12の製造工程がさらに簡素化される。また、各接続部22E1,22E2を構成する材料が、第2磁性配線22Lを構成する材料と等しい場合、第2熱電変換部22の製造工程がさらに簡素化される。
【0106】
図10が示すように、各接続部12E1,12E2は、第1磁性配線12Lの厚さと等しい部分と、第1磁性配線12Lよりも薄い部分とを備えてもよい。また、各接続部22E1,22E2は、第2磁性配線22Lの厚さと等しい部分と、第2磁性配線22Lよりも薄い部分とを備えてもよい。そして、各接続部12E1,12E2のなかで相対的に厚い部分と、各接続部22E1,22E2のなかで相対的に薄い部分とが重ねられる。また、各接続部12E1,12E2のなかで相対的に薄い部分と、各接続部22E1,22E2のなかで相対的に厚い部分とが重ねられる。
【0107】
この構成によれば、接続部同士の接触する面積が広げられ、かつ接続部同士が接合される際の位置が特定されやすい。結果として、接合部間における電気的な接続の信頼性をさらに高めることも可能となる。
【0108】
図11が示すように、各接続部12E1,12E2の厚さは、第1磁性配線12Lの厚さの半分となる一定値でもよい。各接続部22E1,22E2の厚さは、第2磁性配線22Lの厚さの半分となる一定値でもよい。これによれば、相互に接合された2つの接合部の厚さと、各磁性配線12L,22Lの厚さとが等しくなる。そして、第1面11aと第2面21aとの間の距離が、最小値である、各磁性配線12L,22Lの厚さと等しい。結果として、第1面11aと第2面21aとの間の温度差が、各磁性配線12L,22Lに効果的に伝わる。
【0109】
[シート]
図12が示すように、第1シート11は、基材と、第1面11aを構成する第1中間層15とを備えてもよい。第1中間層15は、複数の第1磁性配線12Lと基材との間に位置する1つの層である。
【0110】
第1中間層15は、基材よりも高い熱伝導率を有し、これにより、1つ第1磁性配線12Lと他の第1磁性配線12Lとの間の温度差を抑えてもよい。第1中間層15は、第1磁性配線12Lに対して高い密着性を有してもよい。すなわち、第1中間層15に対する第1磁性配線12Lの密着性が、基材に対する第1磁性配線12Lの密着性よりも高くてもよい。第1中間層15は、第1磁性配線12Lに磁化を促してもよい。例えば、第1中間層15は、第1磁性配線12Lを構成する材料に、磁化に適した配向を促してもよい。こうした第1中間層15を備える構成であれば、第1シート11に要求される各種の機能を、第1シート11が満たすことも容易である。
【0111】
また、第2シート21は、基材と、第2面21aを構成する第2中間層25とを備えてもよい。第2中間層25は、複数の第2磁性配線22Lと基材との間に位置する1つの層である。
【0112】
第2中間層25は、基材よりも高い熱伝導率を有し、これにより、1つ第2磁性配線22Lと他の第2磁性配線22Lとの間の温度差を抑えてもよい。第2中間層25は、第2磁性配線22Lに対して高い密着性を有してもよい。すなわち、第2中間層25に対する第2磁性配線22Lの密着性が、基材に対する第2磁性配線22Lの密着性よりも高くてもよい。第2中間層25は、第2磁性配線22Lに磁化を促してもよい。例えば、第2中間層25は、第2磁性配線22Lを構成する材料に、磁化に適した配向を促してもよい。こうした第2中間層25を備える構成であれば、第2シート21に要求される各種の機能を、第2シート21が満たすことも容易である。
【0113】
図13が示すように、第1中間層15は、各第1磁性配線12Lに1つずつであってもよい。また、第2中間層25は、各第2磁性配線22Lに1つずつであってもよい。
[製造方法]
図14が示すように、第1熱電変換部12を形成する工程において、第1熱電変換部12は、1つの第1シート11に形成されてもよい。また、第2熱電変換部22を形成する工程において、第2熱電変換部22は、1つの第2シート21に形成されてもよい。すなわち、第1熱電変換部12を形成するためのシートは、第2熱電変換部22を形成するためのシートと別部材であってもよい。これによれば、第1磁性配線12Lの磁化方向を第1方向Dxとする磁化処理と、第2磁性配線22Lの磁化方向を第1方向Dxとは反対方向とする磁化処理とを、別々の磁化処理とすることが容易である。
【0114】
この際、図14の矢印が示すように、第1基端接続部12E1に第2基端接続部22E1を重ねるように、第1シート11に第2シート21を課される。こうした製造方法であっても、上記構成を備えた熱電変換シートを製造できる。
【0115】
図15が示すように、1つの熱電変換シートは、マトリックス状に配置された複数の同極性直列回路を備えてもよい。第1面11aの面方向に沿って2次元に配列された同極性直列回路は、熱電変換シートの厚さ方向に加え、第1面11aの面内方向における熱流を検出できる。これにより、第1方向Dx、第2方向Dy、および第3方向Dzにおける熱流を検出することも可能となる。
【0116】
[付記]
上記実施形態、および変更例から導き出される技術的思想を以下に付記する。
[付記1]
第1方向に磁化し、かつ前記第1方向と直交する第2方向に延びる第1磁性配線と、
前記第1方向の反対方向に磁化し、かつ前記第2方向に延びる第2磁性配線と、
前記第1磁性配線と接合する第1シートと、
前記第2磁性配線と接合する第2シートと、を備え、
前記第1磁性配線は、前記第1シートと前記第2シートとの間に位置し、かつ前記第2シートから離間し、
前記第2磁性配線は、前記第1シートと前記第2シートとの間に位置し、かつ前記第1シートから離間し、
前記第1磁性配線と前記第2磁性配線とは、前記第1方向に並び、
前記第1磁性配線と前記第2磁性配線とは、前記第1磁性配線における前記第2方向の先端が、前記第2磁性配線における前記第2方向の基端に接続されている、熱電変換シート。
【0117】
[付記2]
第1方向に磁化し、かつ前記第1方向と直交する第2方向に延びる第1磁性配線を第1面に形成することと、
磁化方向が前記第1方向と平行になるように磁化し、かつ前記第2方向に延びる第2磁性配線を第2面に形成することと、
前記第1磁性配線の磁化方向が前記第2磁性配線の磁化方向と反対になるように前記第1面に前記第2面を向かい合わせて、前記第1面と前記第2面との間に、前記第1磁性配線と前記第2磁性配線とを前記第1方向に並べ、かつ、前記第1磁性配線を前記第2面から離間させ、かつ前記第2磁性配線を前記第1面から離間させると共に、前記第1磁性配線における前記第2方向の先端に、前記第2磁性配線における前記第2方向の先端を電気的に接続することと、を含む、熱電変換シートの製造方法。
【0118】
上記付記1、2に記載の構成によれば、相互に平行な2つの磁性配線が第1シートと第2シートとの間に配置される。2つの磁性配線のなかの1つの磁性配線は、同極性直列回路が構成されるように、他の磁性配線に接続されている。これにより、2つの磁性配線分の体積を有した1つの磁性層と比べて、熱電変換シートにおける体積当たりの出力電圧が高まる。結果として、熱電変換シートの構造がロール状であろうと平面状であろうと、熱電変換シートの出力電圧は高まる。
【0119】
そのうえ、各磁性配線がそれぞれ別のシートに接合し、かつ、それぞれ別のシートから離間する。これにより、各磁性配線をそれぞれ別のシートに形成する製造方法を採用することが可能となる。すなわち、第1磁性配線が形成された面と、第2磁性配線が形成された面とが向かい合うように、第1シートに第2シートを重ねる製造方法を採用することが可能となる。この製造方法であれば、相互に平行な2つの磁性配線に相反する磁化方向を与えることも容易である。
【符号の説明】
【0120】
Dx…第1方向
Dy…第2方向
Dz…第3方向
11…第1シート
11a…第1面
12…第1磁性配線
12E1…第1基端接続部
12E2…第2先端接続部
21…第2シート
21a…第2面
22…第2磁性配線
22E1…第1基端接続部
22E2…第2先端接続部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15