(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-28
(45)【発行日】2025-05-09
(54)【発明の名称】印刷物
(51)【国際特許分類】
B41M 1/16 20060101AFI20250430BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20250430BHJP
【FI】
B41M1/16
B32B27/00 E
(21)【出願番号】P 2021133319
(22)【出願日】2021-08-18
【審査請求日】2024-07-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】喜多 美博
【審査官】上田 正樹
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/025775(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/139136(WO,A1)
【文献】特開2015-120326(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0272534(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41M 1/16
B32B 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷物の表面に、少なくとも2種類以上の格子状の層を有し、
前記格子状の層は光が透過可能な格子状の線で形成され、前記線幅は0.05mm以下であり、線厚さは0.01mm以下で形成され、
隣り合う二つの線の間隙の距離が0.05mm以下であることを特徴とする印刷物。
【請求項2】
前記格子状の層は連続または断続した格子状の線で形成されていることを特徴とする請求項1に記載の印刷物。
【請求項3】
前記格子状の層のうち、一方の層を形成する格子状の線と線の隙間部分に、他方の層を形成する格子状の線が配置されていることを特徴とする請求項1または2に記載の印刷物。
【請求項4】
前記格子状の層のうち、一方の層を形成する格子状の線と他方の層を形成する格子状の線が異なる屈折率を有することを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の印刷物。
【請求項5】
前記少なくとも2種類以上の格子状の層を、1層以上積層していることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の印刷物。
【請求項6】
前記格子状の層は既印刷物に直接形成されていることを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の印刷物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は質感や深み透明感の表現を可能とする印刷物に関する。
【背景技術】
【0002】
古く歴史的価値の高い絵画は展示や保管中においても経年による劣化が発生する。近年ではその貴重性からその絵画の保護のため複製画を展示する場合がある。その価値を後世に伝え残すために本物により近い状態の複製品を作成する技術が進んでいる。複製画の作成方法は多種存在している。例えば肉筆画と言われ一枚一枚の絵を画家が手描きで忠実に再現していく複製技法や版画の技法を用いたリトグラフ、オリジナルリトグラフ、エスタンプリトグラフなどの複製技法が用いられてきた。また印刷技術を用いたオフセット印刷やスクリーン印刷による複製技法や、近年では原画をデジタル情報に変換し最新のデジタル印刷方法と融合させた複製技法であるジクレー技法が多く使われている。
【0003】
ジクレー技法の印刷方法としては原画を高性能なカメラやスキャナーを用いて取込みその画像を色相、彩度、明度などの要素を持ったデータに細分化し画像の出力データとして再構築する。このデータをデジタルプリンターにより再び画像として出力する。
【0004】
デジタルプリンターには微細な色の粒子を着弾させることが出来るインクジェットプリンターが多く使用される。インクジェットプリンターでは、インクの粒子が1色から4色構成により色合いを表現している。また近年では従来の4色構成から6色または7色構成で粒子化されたインキの集合体で印刷されるようになり4つの色を繋ぐ中間の色が存在することで人の視覚に極めて近い画像表現ができるようになった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2011-170053号公報
【文献】特開2020-157510号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載された発明においては、原画に極めて忠実な色を再現させるためにテストパターンのカラー画像の色及び表面反射光量それぞれの検知結果が所定の色及び光量になるように色調整及び反射光量の調整を行うことで色彩を原画に近づけている。しかしながら、絵画の中でも人物画において人の肌質感にこだわったものがあり、肌は表面の角質層の下に何層もの異なった細胞構造でできており、各層により光の屈折や反射が異なることで強い光の元では白く、柔らかな光の中では肌色になり、新緑の中では薄っすらと緑の影響を受けた肌の色となる。これらの光の影響を受けて変化する状態が透明感と表現される。
【0007】
絵画においては非常に薄い厚みや小さなドット状態で絵具を何層にも重ねて描くことで人肌の透明感を表現している。特許文献1に記載されたデジタル印刷方式では色を忠実に再現することは可能であるが、
図1で示すように視野角度1から見たA1、A2、A3視野でもC1色が認識され視野角度2から見たA1'、A2'、A3'視野でもC1色が認識され視野角度を変えても同じ色味で認識されるため人物画で表現されるような見る角度や光の量によって色合いや色彩などの質感が変化するような物の質感や人の肌が持つ透明感を表現すことは困難である。
【0008】
また、特許文献2に記載された発明においては、
図2に示す既印刷物に凸凹が付いた保護膜Qを設置し凸凹の3次元形状を視覚や触覚で認識することで表面的な質感を得ることが出来るが、保護膜Qは単一膜で形成されているため、
図2で示すように視野角度1から見たA1、A2、A3視野でも、C1色が認識され、視野角度2から見たA1'、A2'、A3'視野でもC1色が認識され、視野角度を変えても同じ色味で認識されるため人物画で表現されるような見る角度や光の量によって色合いや色彩などの質感が変化するような物の質感や人の肌が持つ透明感を表現することは困難である。
【0009】
本発明は、以上のような問題点を鑑み、見る角度や光の量によって変化する質感や深み透明感を表現できる印刷物を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前述した課題を解決するための、本発明の第1の態様は、
印刷物の表面に、少なくとも2種類以上の格子状の層を有し、
前記格子状の層は光が透過可能な格子状の線で形成され、前記線幅は0.05mm以下であり、線厚さは0.01mm以下で形成され、
隣り合う二つの線の間隙の距離が0.05mm以下であることを特徴とする印刷物である。
【0011】
0.05mm以下の線や間隙、また線部分の厚さが0.01mm以下の厚さは、人の目では識別困難であり平面として認識されるが、実際は線が格子状に存在しており、この格子状を通して既印刷物を色々な方向から見た場合、絵柄の色合いが変化して見えることにより質感として認識される。格子状の層の線と線の間隙が0.05mm以上になると人の目でも格子状の模様が認識されるため、絵柄の上にある格子状の線として捉えられるので好ましくない。また、格子状の層の厚さが0.01mm以上になると線の凸凹が人の目でも認識できるため絵柄の上にある格子状の線として捉えられるので好ましくない。
【0012】
また、本発明の第2の態様は、
前記格子状の層は連続または断続した格子状の線で形成されていてよい。線が点線や連続線で存在することで、色々な方向から絵柄を見た場合、格子状の層を通して見える絵柄の見え方が複雑に変化することにより質感として認識される。
【0013】
また、本発明の第3の態様は、
前記少なくとも2種類以上の格子状の層のうち、一方の層を形成する格子状の線と線の隙間部分に、他方の層を形成する格子状の線が配置されていてよい。一方の層を形成する格子状線の隙間部分に他方の層を形成する格子状線が配置されることでより平面に近い状態となり人の目では平面として捉えられるので好ましい。
【0014】
また、本発明の第4の態様は、
前記少なくとも2種類以上の格子状の層のうち、一方の層を形成する格子状の線と他方の層を形成する格子状の線が異なる屈折率を有してもよい。2種類以上の格子状の線が異なる屈折率を有することにより、視野方向が変わると格子状の線を光が通過する時の光の方向が複雑に変化することにより色の見え方が変化する。色々な方向から絵柄を見た場合絵柄の色合いが変化して見えることにより質感として認識される。
【0015】
また、本発明の第5の態様は、
前記少なくとも2種類以上の格子状の層を、1層以上積層していてもよい。2種類以上の格子状の層を積層することにより、視野角度が変わると格子状の線を光が通過する回数が増減し光の方向がより複雑に変化することにより色の見え方がより複雑に変化する。
【0016】
また、本発明の第6の態様は、
前記格子状の層は既印刷物に直接形成されていてもよい。
【0017】
前記格子状の層は透明で光を透過する材質で形成されていることを特徴とし、外部から強い光が入った場合は格子状の層の中で反射によるハレーションが起こり絵柄は白っぽく認識され絵柄が白味掛かったように見え、柔らかな光の下では絵柄の色が明瞭になる。また周辺の色の影響も加わり、例えば周辺に緑が多い場合が緑色の影響を受け絵柄の色合いが変化するように見える。このような状態を人の肌が持つ透明感として表現され前記格子状の層を通して見え方が変化することで透明感として認識される。
【0018】
前記格子状の層を、既に色表現された印刷物に直接印刷することで元々の色合いを損なうことなく質感や透明感を付与することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る印刷物によれば、印刷物でありながら見る角度や周りの光の量や色合いによって、物の質感や深み透明感を表現できる印刷物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】特許文献1に係る印刷物の見え方の模式図である。
【
図2】特許文献2に係る印刷物の見え方の模式図である。
【
図3】本発明に係る印刷物の実施形態の一例を表す斜視図である。
【
図4】本発明に係る印刷物の見え方の一例を示す模式図である。
【
図5】本発明に係る印刷物の見え方の他の例を示す模式図である。
【
図6】本発明に係る格子状の層を形成する印刷装置の概念図である。
【
図7】本発明に係る格子状の層を形成する印刷工程を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明に係る印刷物の実施形態を図面に基づいて説明する。ここで図面は模式的なものであり平面寸法との関係や各層の厚みの比率等は現実のものとは異なる。また以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための構成を例示するものであって本発明の技術的思想は構成部品の材質、形状、構造等が下記のものに特定されるものではない。
【0022】
本発明の一実施形態の積層の構成を
図3に示す。本実施形態に示す印刷物は既印刷物Pに厚みが0.001mm以上0.01mm以下、線幅が0.01mm以上0.05mm以下の線で形成した格子状の層B1と格子状の層B1の線と線の隙間部分に厚みが0.001mm以上0.01mm以下、線幅が0.01mm以上0.05mm以下の線で形成した格子状の層B2を並べて配置した第1の層と厚みが0.001mm以上0.01mm以下、線幅が0.01mm以上0.05mm以下の線で形成した格子状の層B3と格子状の層B3の線と線の隙間部分に厚みが0.001mm以上0.01mm以下、線幅が0.01mm以上0.05mm以下の線で形成した格子状の層B4を並べて配置した第2の層が積層された状態で形成されている印刷物である。
【0023】
既に絵柄が印刷された印刷物Pに格子状の層B1、B2、B3、B4が形成されており、格子状の層B1、B2、B3、B4の線の部分は透明で光を透過する材質で形成されており、格子状の層B1、B2、B3、B4の線はそれぞれ異なる屈折率を有する材質で形成されている。
【0024】
前記第1の層と第2の層の積層は格子状の線が重なるように積層しても相差に積層されてもよく積層数は二層に限定されたものではない。
【0025】
図4は、第1層のみが形成された印刷物の見え方を説明する図である。例えば視野角度1ではA1とA2は格子状の層の線B1を直進通過して色C2が見える。A3は線B2を直進通過して色C2が見える。視野角度2ではA1'とA2'は線B1を通過する時に角度aで屈折し色C2が見える。A3'は線B2を通過する時に角度bで屈折し色C3が見えるため視野角度2では色C2に色C3が混ざった混色として認識される。
【0026】
図5は、第1層に第2層を積層して形成された印刷物の見え方を説明する図である。視野角度1から見た場合、A1は線B3と線B1を通過して色C2が認識され、A2は線B4と線B1を通過し色C2が認識され、A3はB3とB2を通過して色C2を認識するので視野角度1では色C2が認識される。視野角度2から見た場合A1'は線B3を通過時角度cで通過し線B4に入り角度dで通過し線B1に入いり、角度aで通過して色C2を認識する。A2'は線B4を通過時角度dで通過し線B3に入り角度cで通過し線B2に入り角度bで通過して色C3を認識する。A3'は線B3通過時角度cで通過し線B2に入り角度bで通過し色C3を認識するため視野角度2から見た場合は色C3に色C2が加わった混色となり色C3が強い混色として認識される。
【0027】
このように、本発明の格子状の層を形成した印刷物では、見る角度によって色味が変化したり、周りの光の影響により見え方が変化することで印刷物Pに質感や深み透明感を付与することが出来る。
【0028】
本発明の格子状の層を形成した印刷物は、既印刷物Pに公知の印刷法を用いて印刷することで得られる。印刷方法としてはスクリーン印刷、スクリーンオフセット印刷、グラビア印刷、グラビアオフセット印刷、フレキソ印刷などがあげられる。
【0029】
格子状の層を形成するインキ材料として以下の樹脂材料などを用いる。括弧の数字は各材料の屈折率を示す。例えば、塩化ビニル系樹脂(1.52~1.55)、アクリル系樹脂(1.49~1.53)、ポリウレタン系樹脂(1.5)、ポリエステル系樹脂(1.6)、エポキシ系樹脂(1.55~1.61)、ニトロセルロース系樹脂(1.61)、エチルセルロース系樹脂(1.47)、ポリアミド系樹脂(1.53)、フェノール樹脂(1.58~1.66)、ケトン樹脂(1.74)、マレイン酸樹脂(1.74)や光硬化性樹脂等の汎用樹脂を用いることが可能である。
【0030】
前記樹脂材料に炭化水素系溶剤(石油ナフサ、トルエン、キシレン、テトラリン、テレピン油など)やエステル系溶剤(酢酸n-ブチル、酢酸メトキシブチルなど)やケトン系溶剤(MIBK、ジアセトンアルコール、シクロヘキサノン、イソホロンなど)や多価アルコール誘導体(メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、セロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、ブチルカルビトールなど)などの溶剤を適宜混合して使用する。
【0031】
前期樹脂材料に添加剤として植物油系、界面活性剤、ワックス膨潤体、消泡剤、レベリング剤、スリップ剤、紫外線吸収剤、可塑剤、硬化促進剤等を適宜混合して使用する。
【実施例】
【0032】
以下、本発明を具体的に実施した実施例を説明する。
【0033】
本発明の一実施形態を実現させるための印刷装置の概念図を
図6に示す。本発明を実現させるための印刷装置としてグラビアオフセット印刷装置100を用いた。グラビアオフセット印刷装置100は、山版からなる印刷版101とインキ転写用のブランケット103と印刷版101にインキ105を充填するドクタ106と既印刷物110を備えている。
【0034】
印刷版101は、金属製で大きさが幅100mm×長さ100mmの平版に格子状の層となる部分を印刷パターン溝104としエッチングによって彫刻したものを使用し、格子状の層B1となる線の幅が0.03mmと間隙が0.02mmとした印刷版101aと、格子状の層B2となる線の幅が0.02mmと間隙が0.03mmとした印刷版101bと、格子状の層B3となる線の幅が0.04mmと間隙が0.02mmとした印刷版101cと、格子状の層B4となる線の幅と間隙が0.02mmと間隔が0.04mmとした印刷版101dを用い既に絵柄が印刷された既印刷物110を使用した。
【0035】
ブランケット103は、回転可能なブランケット胴102の表面に固定されており、ブランケット胴102は移動可能な台車(不図示)に支持されており、台車は架台に支持されておりブランケット103は、印刷版101に押え付けながら転動することで印刷版101の凹部のインキ107をブランケット103表面に受理し受理されたインキ108を既印刷物110に押え付けながら転動することでインキ109として転写されることで既印刷物110表面に格子状の層B1、B2、B3、B4を印刷形成する。
【0036】
格子状の層B1となる印刷版101aには塩化ビニル・酢酸ビニル共重合樹脂インキで硬化後の屈折率が1.52になるインキ105aを、格子状の層B2となる印刷版101bにはアクリル樹脂インキで硬化後の屈折率が1.49になるインキ105bを、格子状の層B3となる印刷版101cにはポリエステル樹脂インキで硬化後の屈折率が1.6になるインキ105cを、格子状の層B4となる印刷版101dにはポリウレタン樹脂インキで硬化後の屈折率が1.5になるインキ105dを使用する。
【0037】
既印刷物110は、幅150mm×長さ150mm×厚さ125μmの透明のポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムに既に絵柄を印刷したシート状のものを既印刷物110として使用した。
【0038】
印刷用ブランケット103として、シリコンゴムを主体とする厚み0.9mm、硬度20°、幅200mm、長さ250mmのものを使用し、ブランケット幅102はSUS304製の胴幅220mm×直径300mmのものを使用した。
【0039】
本発明の一実施形態について、
図3に示すような積層構造の印刷物を得る印刷方法を
図7の印刷工程の概要図に照らし説明する。
印刷版101a上にインキ105aを0.5g/cm
2で供給する(
図7(a))。ドクタ106と印刷版101aが接する位置をドクタのゼロ点とし、ゼロ点からドクタ106を印刷版101aの方向に0.5mm近づけた位置でインキ105aを掻き取りながら印刷パターン溝104にインキを充填107する(
図7(b))。
【0040】
印刷版101aとブランケット103が接する位置をブランケット胴102のゼロ点とし、ゼロ点からブランケット胴102を0.5mm印刷版101aに近づけた位置を印刷版101aの充填インキ107aをブランケット103に受理する位置とし、この位置でブランケット胴102を50mm/secで転動させ印刷版101aの充填インキ107aをブランケット103に受理108aする(
図7(c))。
【0041】
既印刷物110とブランケット103が接する位置をブランケット胴102のゼロ点とし、ゼロ点からブランケット胴102を0.5mm既印刷物110に近づけた位置をブランケット103に受理したインキ108aを既印刷物110に転写する位置とし、この位置でブランケット胴102を100mm/secで転動させブランケット103に受理されたインキ108aを既印刷物110に転写109aさせ印刷を完了する(
図7(d))。
【0042】
インキ109aが印刷された既印刷物110を一旦装置から外し、約100℃で30分間加熱しインキ109aを硬化させる。印刷版101aとインキ105aを用いて前記印刷工程を実施すると塩化ビニル樹脂で形成された
図3に示す格子状の層B1が形成される。
【0043】
次に既印刷物110を印刷定盤111に固定し格子状の層B2用の印刷版101bを固定し既印刷物110に形成された格子状の層B1の線と線の隙間部分に印刷版101bの線が印刷されるように印刷位置調整を行い印刷版101bにアクリル樹脂インキ105bを0.5g/cm
2で供給し
図7(a)から
図7(d)の工程を行い既印刷物110に格子状の層B2パターン109bが転写され印刷が完了する。
【0044】
インキ109bが印刷された既印刷物110を一旦装置から外し約100℃で15分間加熱しインキ109bを硬化させる。既印刷物110に
図3で示す塩化ビニル樹脂で形成された格子状の層B1とアクリル樹脂で形成された格子状の層B2が形成された第1の層が出来る。
【0045】
格子状の層B1とB2が印刷された既印刷物110を印刷定盤111に固定し格子状の層B3用の印刷版101cを固定し既印刷物110に形成された格子状の層B1の線と相差する位置に印刷版101cの線が印刷されるように印刷位置調整を行い印刷版101cにポリエステル樹脂インキ105cを0.5g/cm
2で供給し
図7(a)から
図7(d)の工程を行い既印刷物110に格子状の層B3パターン109cが転写され印刷が完了する。
【0046】
インキ109cが印刷された既印刷物110を一旦装置から外し約120℃で30分間加熱しインキ109cを硬化させる。既印刷物110に
図3で示す塩化ビニル樹脂で形成された格子状の層B1とアクリル樹脂で形成された格子状の層B2が形成された第1の層の上にポリエステル樹脂で形成された格子状の層B3が出来る。
【0047】
前記格子状の層B1とB2の第1の層とその上に塩化ビニル樹脂で形成された格子状の層B3が印刷された既印刷物110を印刷定盤111に固定し格子状の層B4用の印刷版101dを固定し既印刷物110に形成された格子状の層B3の線と線の隙間部分に印刷版101dの線が印刷されるように印刷位置調整を行い印刷版101dにポリウレタン樹脂インキ105dを0.5g/cm
2で供給し
図7(a)から
図7(d)の工程を行い既印刷物110に格子状の層B4パターン109dが転写され印刷が完了する。
【0048】
インキ109dが印刷された既印刷物110を一旦装置から外し約80℃で60分間加熱しインキ109dを硬化させる。既印刷物110に
図3で示す塩化ビニル樹脂で形成された格子状の層B1とアクリル樹脂で形成された格子状の層B2が形成された第1の層の上にポリエステル樹脂で形成された格子状の層B3とポリウレタン樹脂で形成された格子状の層B4が形成された第2の層が出来る。以上により
図3に示す本発明の積層構造を持った印刷物が得られる。
【0049】
この結果、本実施形態に係る印刷物を得ることができた。従来の印刷法では得られなかった見る角度や光の量によって色合いや質感が変化し、印刷物でありながら物の質感や深み透明感を表現できる印刷物を得られた。
【符号の説明】
【0050】
A1・・・垂直方向の視野1
A2・・・垂直方向の視野2
A3・・・垂直方向の視野3
A1'・・・斜め方向の視野1
A2'・・・斜め方向の視野2
A3'・・・斜め方向の視野3
B1・・・格子状の層1
B2・・・格子状の層2
B3・・・格子状の層3
B4・・・格子状の層4
C2・・・既印刷物の色1
C3・・・既印刷物の色2
Q・・・保護膜
a・・・屈折角度1
b・・・屈折角度2
c・・・屈折角度3
d・・・屈折角度4
1・・・垂直方向の視野角度
2・・・斜め方向の視野角度
100・・・印刷装置
101a・・・格子状の層B1の印刷版
101b・・・格子状の層B2の印刷版
101c・・・格子状の層B3の印刷版
101d格子状の層B4の印刷版
102・・・ブランケット胴
103・・・ブランケット
104・・・パターン溝
105a・・・格子状の層B1のインキ
105b・・・格子状の層B2のインキ
105c・・・格子状の層B3のインキ
105d・・・格子状の層B4のインキ
106・・・ドクタ
107a・・・格子状の層B1の充填インキ
107b・・・格子状の層B2の充填インキ
107c・・・格子状の層B3の充填インキ
107d・・・格子状の層B4の充填インキ
108a・・・格子状の層B1の受理インキ
108b・・・格子状の層B2の受理インキ
108c・・・格子状の層B3の受理インキ
108d・・・格子状の層B4の受理インキ
109a・・・格子状の層B1の印刷パターン
109b・・・格子状の層B2の印刷パターン
109c・・・格子状の層B3の印刷パターン
109d・・・格子状の層B4の印刷パターン
110・・・既印刷物
111・・・印刷定盤