(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-28
(45)【発行日】2025-05-09
(54)【発明の名称】攪拌接合物体の製造方法
(51)【国際特許分類】
B23K 20/12 20060101AFI20250430BHJP
【FI】
B23K20/12 346
B23K20/12 342
B23K20/12 340
(21)【出願番号】P 2021207000
(22)【出願日】2021-12-21
【審査請求日】2024-04-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】柴田 健司
(72)【発明者】
【氏名】早川 昌汰
【審査官】岩見 勤
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-174507(JP,A)
【文献】特開2012-245541(JP,A)
【文献】特開2000-202645(JP,A)
【文献】特開2004-148350(JP,A)
【文献】米国特許第06168067(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 20/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転可能に構成されているプローブ(15)を備える工具(10)を準備することと、
第1被加工物(30A)と第2被加工物(30B)とを合わせた状態に配置することと、 前記プローブを回転させながら前記第1被加工物および前記第2被加工物に押し付けて摩擦熱を発生させて前記摩擦熱により軟化した前記第1被加工物および前記第2被加工物を前記プローブによって攪拌してこの攪拌した攪拌領域(50)によって前記第1被加工物および前記第2被加工物を接合させることと、
前記プローブによる前記攪拌に伴って前記攪拌領域を構成する材料が前記攪拌領域から押し出されることを抑制部材(20、100)によって抑制することと、を含
み
前記抑制部材(20)は、
前記プローブによる前記攪拌に伴って前記攪拌領域を構成する材料が前記攪拌領域から押し出されることを抑制するために、前記第1被加工物、前記第2被加工物のうち少なくとも一方の被加工物を冷却する冷却用流体を前記一方の被加工物に向けて送り出す冷却器であり、
前記第1被加工物、前記第2被加工物は、それぞれ、板状に形成されており、
前記第1被加工物と前記第2被加工物とを合わせた状態に配置することは、前記第1被加工物を前記第2被加工物に対して厚み方向(Ha)の一方側に配置した状態で前記第1被加工物および前記第2被加工物を前記厚み方向に重ね合わせることであり、
前記プローブを回転させながら前記第1被加工物および前記第2被加工物に押し付けて摩擦熱を発生させて前記摩擦熱により軟化した前記第1被加工物および前記第2被加工物を前記プローブによって攪拌してこの攪拌した前記攪拌領域によって前記第1被加工物および前記第2被加工物を接合させることとは、
前記プローブを回転させながら前記第1被加工物および前記第2被加工物に対して前記厚み方向の前記一方側から押し付けつつ、前記プローブを前記第1被加工物の端部(40a)に沿って移動させて前記摩擦熱により軟化した前記第1被加工物および前記第2被加工物を攪拌して前記攪拌領域を前記端部に沿って形成してこの形成した前記攪拌領域によって前記第1被加工物および前記第2被加工物を接合させることであり、
前記第1被加工物のうち、予め想定される前記プローブの移動軌跡を想定移動軌跡(56)とし、前記第1被加工物のうち前記想定移動軌跡に対して前記端部側に位置する領域を端部側領域(52)とし、前記第1被加工物のうち前記想定移動軌跡に対して前記端部側領域と反対側に位置する反対側領域(53)とした場合に、
前記プローブの移動方向(Yc)に直交し、かつ前記厚み方向に直交する方向を幅方向(Wh)としたとき、前記端部側領域の前記幅方向の寸法(La)は、前記反対側領域の前記幅方向の寸法(Lb)に比べて小さくなっており、
前記端部側領域を構成する材料は、前記反対側領域を構成する材料に比べて、少なくなっており、
前記冷却用流体を前記冷却器から前記少なくとも一方の被加工物に向けて送り出すことは、前記第1被加工物のうち前記端部側領域に向けて前記冷却器からの前記冷却用流体を送り出すことである攪拌接合物体の製造方法。
【請求項2】
回転可能に構成されているプローブ(15)を備える工具(10)を準備することと、
第1被加工物(30A)と第2被加工物(30B)とを合わせた状態に配置することと、 前記プローブを回転させながら前記第1被加工物および前記第2被加工物に押し付けて摩擦熱を発生させて前記摩擦熱により軟化した前記第1被加工物および前記第2被加工物を前記プローブによって攪拌してこの攪拌した攪拌領域(50)によって前記第1被加工物および前記第2被加工物を接合させることと、
前記プローブによる前記攪拌に伴って前記攪拌領域を構成する材料が前記攪拌領域から押し出されることを抑制部材(20、100)によって抑制することと、を含
み、
前記抑制部材(20)は、
前記プローブによる前記攪拌に伴って前記攪拌領域を構成する材料が前記攪拌領域から押し出されることを抑制するために、前記第1被加工物、前記第2被加工物のうち少なくとも一方の被加工物を冷却する冷却用流体を前記一方の被加工物に向けて送り出す冷却器であり、
前記第1被加工物、前記第2被加工物は、それぞれ、板状に形成されており、
前記第1被加工物と前記第2被加工物とを合わせた状態に配置することは、前記第1被加工物の端部(41a)と前記第2被加工物の端部(40b)とを突き合わさるように前記第1被加工物と前記第2被加工物とを配置することであり、
前記プローブを回転させながら前記第1被加工物、前記第2被加工物に押し付けて前記摩擦熱を発生させて前記摩擦熱により軟化した前記第1被加工物および前記第2被加工物を攪拌して前記攪拌領域によって前記第1被加工物および前記第2被加工物を接合させることとは、
前記第1被加工物の前記端部と前記第2被加工物の前記端部とに沿って前記プローブを移動させつつ、前記プローブを回転させながら前記第1被加工物の前記端部と前記第2被加工物の前記端部とに対して、前記第1被加工物、前記第2被加工物のそれぞれの厚み方向(Ha)の一方側から押し付けて前記摩擦熱を発生させて前記摩擦熱により軟化した前記第1被加工物の前記端部と前記第2被加工物の前記端部とを前記プローブにより攪拌して前記攪拌領域によって前記第1被加工物および前記第2被加工物を接合させることであり、
前記プローブの移動方向(Yc)に直交し、かつ前記厚み方向に直交する方向を幅方向(Wh)としたとき、前記第1被加工物の前記幅方向の寸法(Wa)は、前記第2被加工物の前記幅方向の寸法(Wb)に比べて小さくなっており、
前記第1被加工物(30A)を構成する材料は、前記第2被加工物(30B)を構成する材料に比べて少なくなっており、
前記冷却用流体を前記冷却器から前記少なくとも一方の被加工物に向けて送り出すことは、前記冷却用流体を前記第1被加工物に向けて前記冷却器から吹き出すことである攪拌接合物体の製造方法。
【請求項3】
回転可能に構成されているプローブ(15)を備える工具(10)を準備することと、
第1被加工物(30A)と第2被加工物(30B)とを合わせた状態に配置することと、 前記プローブを回転させながら前記第1被加工物および前記第2被加工物に押し付けて摩擦熱を発生させて前記摩擦熱により軟化した前記第1被加工物および前記第2被加工物を前記プローブによって攪拌してこの攪拌した攪拌領域(50)によって前記第1被加工物および前記第2被加工物を接合させることと、
前記プローブによる前記攪拌に伴って前記攪拌領域を構成する材料が前記攪拌領域から押し出されることを抑制部材(20、100)によって抑制することと、を含
み、
前記抑制部材(100)は、
前記プローブによる前記攪拌に伴って前記攪拌領域を構成する材料が前記攪拌領域から押し出されることを抑制するために、前記第1被加工物、前記第2被加工物のうち少なくとも一方の被加工物を押し付ける押し付け部であり、
前記第1被加工物、前記第2被加工物は、それぞれ、板状に形成されており、
前記第1被加工物と前記第2被加工物とを合わせた状態に配置することは、前記第1被加工物を前記第2被加工物に対して厚み方向(Ha)の一方側に配置した状態で前記第1被加工物および前記第2被加工物を前記厚み方向に重ね合わせることであり、
前記プローブを回転させながら前記第1被加工物および前記第2被加工物に押し付けて摩擦熱を発生させて前記摩擦熱により軟化した前記第1被加工物および前記第2被加工物を前記プローブによって攪拌してこの攪拌した前記攪拌領域によって前記第1被加工物および前記第2被加工物を接合させることとは、
前記プローブを回転させながら前記第1被加工物および前記第2被加工物に対して前記厚み方向の前記一方側から押し付けつつ、前記プローブを前記第1被加工物の端部(40a)に沿って移動させて前記摩擦熱により軟化した前記第1被加工物および前記第2被加工物を攪拌して前記攪拌領域を前記端部に沿って形成してこの形成した前記攪拌領域によって前記第1被加工物および前記第2被加工物を接合させることであり、
前記第1被加工物のうち、予め想定される前記プローブの移動軌跡を想定移動軌跡(56)とし、前記第1被加工物のうち前記想定移動軌跡に対して前記端部側に位置する領域を端部側領域(52)とし、前記第1被加工物のうち前記想定移動軌跡に対して前記端部側領域と反対側に位置する反対側領域(53)とした場合に、
前記プローブの移動方向(Yc)に直交し、かつ前記厚み方向に直交する方向を幅方向(Wh)としたとき、前記端部側領域の前記幅方向の寸法(La)は、前記反対側領域の前記幅方向の寸法(Lb)に比べて小さくなっており、
前記端部側領域を構成する材料は、前記反対側領域を構成する材料に比べて、少なくなっており、
前記押し付け部は、前記プローブによる前記攪拌に伴って前記攪拌領域を構成する材料が前記攪拌領域から押し出されることを抑制するために、前記第1被加工物のうち前記端部側領域を押し付ける攪拌接合物体の製造方法。
【請求項4】
回転可能に構成されているプローブ(15)を備える工具(10)を準備することと、
第1被加工物(30A)と第2被加工物(30B)とを合わせた状態に配置することと、 前記プローブを回転させながら前記第1被加工物および前記第2被加工物に押し付けて摩擦熱を発生させて前記摩擦熱により軟化した前記第1被加工物および前記第2被加工物を前記プローブによって攪拌してこの攪拌した攪拌領域(50)によって前記第1被加工物および前記第2被加工物を接合させることと、
前記プローブによる前記攪拌に伴って前記攪拌領域を構成する材料が前記攪拌領域から押し出されることを抑制部材(20、100)によって抑制することと、を含
み、
前記抑制部材(100)は、
前記プローブによる前記攪拌に伴って前記攪拌領域を構成する材料が前記攪拌領域から押し出されることを抑制するために、前記第1被加工物、前記第2被加工物のうち少なくとも一方の被加工物を押し付ける押し付け部であり、
前記第1被加工物、前記第2被加工物は、それぞれ、板状に形成されており、
前記第1被加工物と前記第2被加工物とを合わせた状態に配置することは、前記第1被加工物の端部(41a)と前記第2被加工物の端部(40b)とを突き合わさるように前記第1被加工物と前記第2被加工物とを配置することであり、
前記プローブを回転させながら前記第1被加工物、前記第2被加工物に押し付けて前記摩擦熱を発生させて前記摩擦熱により軟化した前記第1被加工物および前記第2被加工物を攪拌して前記攪拌領域によって前記第1被加工物および前記第2被加工物を接合させることとは、
前記第1被加工物の前記端部と前記第2被加工物の前記端部とに沿って前記プローブを移動させつつ、前記プローブを回転させながら前記第1被加工物の前記端部と前記第2被加工物の前記端部とに対して、前記第1被加工物、前記第2被加工物のそれぞれの厚み方向(Ha)の一方側から押し付けて前記摩擦熱を発生させて前記摩擦熱により軟化した前記第1被加工物の前記端部と前記第2被加工物の前記端部とを前記プローブにより攪拌して前記攪拌領域によって前記第1被加工物および前記第2被加工物を接合させることであり、
前記プローブの移動方向(Yc)に直交し、かつ前記厚み方向に直交する方向を幅方向(Wh)としたとき、前記第1被加工物の前記幅方向の寸法(Wa)は、前記第2被加工物の前記幅方向の寸法(Wb)に比べて小さくなっており、
前記第1被加工物(30A)を構成する材料は、前記第2被加工物(30B)を構成する材料に比べて少なくなっており、
前記押し付け部は、前記プローブによる前記攪拌に伴って前記攪拌領域を構成する材料が前記攪拌領域から押し出されることを抑制するために、前記第1被加工物を押し付ける攪拌接合物体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、攪拌接合物体の製造方法、攪拌接合用工具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、板状の第1被加工物に対してT字状の第2被加工物が立設した状態で第2被加工物のうち第1被加工物に突き合わされた突き合わせ部を第1被加工物に攪拌接合する接合方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この接合方法では、第2被加工物のうち突き合わせ部と第1被加工物に攪拌接合用工具の回転工具を回転させながら押し付けて摩擦熱を発生させてこの摩擦熱により突き合わせ部を第1被加工物に攪拌接合する。この際に、突き合わせ部に攪拌接合用工具のローラを押し付けることにより、摩擦熱に起因して突き合わせ部が変形することを抑えることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者等は、上述の接合方法を参考にして、第1被加工物と第2被加工物とを合わせた状態に配置して、攪拌接合用工具の回転工具を回転させながら第1被加工物および第2被加工物に押し付けて摩擦熱を発生させて攪拌接合することについて検討した。
【0006】
本発明者等の検討によれば、第1被加工物および第2被加工物には、摩擦熱より金属材料が軟化して攪拌された攪拌領域が形成され、この攪拌領域から回転工具によって金属材料が第1被加工物のうち端部側、或いは第2被加工物のうち端部側に押し出される。このため、第1被加工物の端部側、或いは第2被加工物の端部側には、攪拌領域から押し出される金属材料によって変形部が形成されることが分かった。
本発明は上記点に鑑みて、攪拌領域から材料が押し出されること抑えることにより、第1被加工物および第2被加工物が変形することを抑えるようにした攪拌接合物体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、攪拌接合物体の製造方法において、回転可能に構成されているプローブ(15)を備える工具(10)を準備することと、
第1被加工物(30A)と第2被加工物(30B)とを合わせた状態に配置することと、 プローブを回転させながら第1被加工物および第2被加工物に押し付けて摩擦熱を発生させて摩擦熱により軟化した第1被加工物および第2被加工物をプローブによって攪拌してこの攪拌した攪拌領域(50)によって第1被加工物および第2被加工物を接合させることと、
プローブによる攪拌に伴って攪拌領域を構成する材料が攪拌領域から押し出されることを抑制部材(20、100)によって抑制することと、を含み
抑制部材(20)は、
プローブによる攪拌に伴って攪拌領域を構成する材料が攪拌領域から押し出されることを抑制するために、第1被加工物、第2被加工物のうち少なくとも一方の被加工物を冷却する冷却用流体を一方の被加工物に向けて送り出す冷却器であり、
第1被加工物、第2被加工物は、それぞれ、板状に形成されており、
第1被加工物と第2被加工物とを合わせた状態に配置することは、第1被加工物を第2被加工物に対して厚み方向(Ha)の一方側に配置した状態で第1被加工物および第2被加工物を厚み方向に重ね合わせることであり、
プローブを回転させながら第1被加工物および第2被加工物に押し付けて摩擦熱を発生させて摩擦熱により軟化した第1被加工物および第2被加工物をプローブによって攪拌してこの攪拌した攪拌領域によって第1被加工物および第2被加工物を接合させることとは
プローブを回転させながら第1被加工物および第2被加工物に対して厚み方向の一方側から押し付けつつ、プローブを第1被加工物の端部(40a)に沿って移動させて摩擦熱により軟化した第1被加工物および第2被加工物を攪拌して攪拌領域を端部に沿って形成してこの形成した攪拌領域によって第1被加工物および第2被加工物を接合させることであり、
第1被加工物のうち、予め想定されるプローブの移動軌跡を想定移動軌跡(56)とし、第1被加工物のうち想定移動軌跡に対して端部側に位置する領域を端部側領域(52)とし、第1被加工物のうち想定移動軌跡に対して端部側領域と反対側に位置する反対側領域(53)とした場合に、
プローブの移動方向(Yc)に直交し、かつ厚み方向に直交する方向を幅方向(Wh)としたとき、端部側領域の幅方向の寸法(La)は、反対側領域の幅方向の寸法(Lb)に比べて小さくなっており、
端部側領域を構成する材料は、反対側領域を構成する材料に比べて、少なくなっており、
冷却用流体を冷却器から少なくとも一方の被加工物に向けて送り出すことは、第1被加工物のうち端部側領域に向けて冷却器からの冷却用流体を送り出すことである。
【0008】
したがって、プローブによる攪拌に伴って攪拌領域から材料が押し出されることを抑制することができる。このため、第1被加工物および第2被加工物が変形することを抑えるようにした攪拌接合物体の製造方法を提供することができる。
【0012】
なお、各構成要素等に付された括弧付きの参照符号は、その構成要素等と後述する実施形態に記載の具体的な構成要素等との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】第1実施形態における攪拌接合物体の製造方法に用いられる攪拌接合用工具の構成を示す図である。
【
図2】第1実施形態における
図1の攪拌接合用工具のツールおよびプローブのA矢視図である。
【
図3】第1実施形態における攪拌接合物体の製造方法の工程を示すフローチャートである。
【
図4】第1実施形態における攪拌接合物体の製造方法の工程において攪拌接合および冷却の工程の説明を補助するための図であり、厚み方向に重ね合わせた状態で攪拌接合される2つの被加工物の側面図である。
【
図5】第1実施形態における攪拌接合物体の製造方法の工程において攪拌接合および冷却の工程の説明を補助するための図であり、厚み方向に重ね合わせた状態で攪拌接合される2つの被加工物の上面図である。
【
図6】第1実施形態における攪拌接合物体の製造方法の工程において攪拌接合および冷却の工程の説明を補助するための図であり、攪拌接合用工具およびノズルを平行移動させる様子を示す斜視図である。
【
図7】第1実施形態の対比例における攪拌接合物体の製造方法の工程において攪拌接合および冷却の工程の説明を補助するための図であり、厚み方向に重ね合わせた状態で攪拌接合される2つの被加工物の側面図である。
【
図8】第1実施形態の対比例における攪拌接合物体の製造方法の工程において攪拌接合および冷却の工程の説明を補助するための図であり、厚み方向に重ね合わせた状態で攪拌接合される2つの被加工物の上面図である。
【
図9】第2実施形態における攪拌接合物体の製造方法の工程を示すフローチャートである。
【
図10】第2実施形態における攪拌接合物体の製造方法の工程において攪拌接合および冷却の工程の説明を補助するための図であり、互いの端部を突き合わせた状態で攪拌接合される2つの被加工物の側面図である。
【
図11】第2実施形態における攪拌接合物体の製造方法の工程において攪拌接合および冷却の工程の説明を補助するための図であり、互いの端部を突き合わせた状態で攪拌接合される2つの被加工物の上面図である。
【
図12】第2実施形態における攪拌接合物体の製造方法の工程において攪拌接合および冷却の工程の説明を補助するための図であり、2つの被加工物の接合部に沿って攪拌接合用工具およびノズルを平行移動させる様子を示す斜視図である。
【
図13】第2実施形態の対比例における攪拌接合物体の製造方法の工程において攪拌接合および冷却の工程の説明を補助するための図であり、互いの端部を突き合わせた状態で攪拌接合される2つの被加工物の側面図である。
【
図14】第2実施形態の対比例における攪拌接合物体の製造方法の工程において攪拌接合および冷却の工程の説明を補助するための図であり、互いの端部を突き合わせた状態で攪拌接合される2つの被加工物の上面図である。
【
図15】第3実施形態における攪拌接合物体の製造方法に用いられる攪拌接合用工具の構成を示す図である。
【
図16】第3実施形態における攪拌接合物体の製造方法の工程を示すフローチャートである。
【
図17】第3実施形態における攪拌接合物体の製造方法の工程において攪拌接合および押し付け工程の説明を補助するための図であり、厚み方向に重ね合わせた状態で攪拌接合される2つの被加工物の側面図である。
【
図18】第3実施形態における攪拌接合物体の製造方法の工程において攪拌接合および押し付け工程の説明を補助するための図であり、厚み方向に重ね合わせた状態で攪拌接合される2つの被加工物の上面図である。
【
図19】第4実施形態における攪拌接合物体の製造方法の工程を示すフローチャートである。
【
図20】第4実施形態における攪拌接合物体の製造方法の工程において攪拌接合および押し付け工程の説明を補助するための図であり、互いの端部を突き合わせた状態で攪拌接合される2つの被加工物の上面図である。
【
図21】第4実施形態における攪拌接合物体の製造方法の工程において攪拌接合および押し付け工程の説明を補助するための図であり、2つの被加工物の接合部に沿って攪拌接合用工具およびノズルを平行移動させる様子を示す斜視図である。
【
図22】他の実施形態における攪拌接合物体の製造方法の工程において攪拌接合および冷却の工程の説明を補助するための図であり、厚み方向に重ね合わされた状態で攪拌接合される2つの被加工物の上面図である。
【
図23】第2実施形態における攪拌接合物体の製造方法の工程において攪拌接合および冷却の工程の説明を補助するための図であり、厚み方向に重ね合わされた状態で攪拌接合される2つの被加工物の下面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、説明の簡略化を図るべく、図中、同一符号を付してある。
【0015】
(第1実施形態)
第1実施形態の攪拌接合物体の製造方法について
図1~
図8を参照して説明する。
【0016】
まず、本実施形態の攪拌接合物体の製造方法で用いられる攪拌接合用工具1について
図1、
図2等を参照して説明する。
【0017】
本実施形態の攪拌接合用工具1は、
図1を示すように、回転工具10、および冷却器20を備える。回転工具10は、電動モータ11、ホルダ12、ツールホルダ13、ツール14、およびプローブ15を備える。
【0018】
電動モータ11は、矢印Yaの如く回転軸11aを回転させる。ホルダ12は、電動モータ11を支持するモータホルダであり、図示しない送り機構によって支持されている。
【0019】
ホルダ12には、冷却器20のホース25bを支持するためのホースホルダ11bが設けられている。このことにより、ホルダ12は、電動モータ11および冷却器20のホース25bを支持することになる。
【0020】
ツールホルダ13は、筒部13a、および蓋部13bを備える。筒部13aは、軸線方向Ygに貫通する中空部13cを有して回転軸11aの軸線Saを中心とする円筒状に形成されている。軸線方向Ygは、軸線Saが延びる方向である。筒部13aは、軸線Saを中心とする外径寸法が、軸線方向Ygの他方側から軸線方向Ygの一方側に向かうほど小さくなっている。
【0021】
蓋部13bは、筒部13aの中空部13cのうち軸線方向Ygの他方側に配置されている。このことにより、蓋部13bは、筒部13aの中空部13cを軸線方向Ygの他方側から塞ぐことになる。
【0022】
蓋部13bには、軸線方向Ygの他方側に開口する軸穴部13dが設けられている。軸穴部13dには、電動モータ11の回転軸11aが螺合された状態で填め込まれている。このことにより、ツールホルダ13の蓋部13bに電動モータ11の回転軸11aが接続されていることになる。
【0023】
ツール14は、回転軸11aの軸線Saを中心とする円柱状に形成されている。ツール14のうち軸線方向Ygの他方側は、ツールホルダ13の筒部13aの中空部13cのうち軸線方向Ygの一方側に填め込まれている。このことにより、ツール14は、ツールホルダ13によって保持されている。
【0024】
プローブ15は、
図1および
図2に示すように、ツール14のうち軸線方向Ygの一方側の端面から軸線方向Ygの一方側に突起するように形成されている。プローブ15は、回転軸11aの軸線Saを中心とする円柱状に形成されている。このことにより、プローブ15は、ツール14とともに、矢印Ybの如く、軸線Saを中心とする回転自在に構成されていることになる。
【0025】
本実施形態のプローブ15およびツール14を構成する金属材料としては、被加工物30A、30Bよりも硬い材料あれば良く、例えば、ダイス鋼、ハイス鋼、チタン、タングステン等、或いはそれらの合金を用いることができる。
【0026】
本実施形態のプローブ15のうち軸線Saを中心とする外径寸法が、ツール14のうち軸線Saを中心とする外径寸法よりも小さくなっている。プローブ15は、後述するように、被加工物30A、30Bに押し込まれて摩擦熱を発生させて被加工物30A、30Bを構成する金属材料を軟化して攪拌する役割を果たす。
【0027】
冷却器20は、タンク21、ポンプ22、バルブ23、ノズル24、およびホース25a、25bを備える抑制部材である。
【0028】
タンク21は、冷却用気体を圧縮した状態で貯える。本実施形態の冷却用気体としては、空気、窒素ガス、二酸化炭素ガス等の冷却用流体が用いられる。ポンプ22は、タンク21の出口からホース25aを通して排出される冷却用気体を加圧して送出する。ホース25aは、タンク21の出口とポンプ22の入口との間を接続する。ホース25aは、タンク21の出口からの冷却用気体をポンプ22の入口に導く。
【0029】
ノズル24は、ポンプ22からホース25bを通して送出される冷却用気体を吹き出す。ホース25bは、ポンプ22の出口とノズル24の入口とを接続する。ホース25bは、ポンプ22の出口から送出される冷却用気体をノズル24の入口に導く。
【0030】
バルブ23は、ホース25bの中間部に配置されて、ホース25bのうち気体が流れる気体流路の断面積を調整する。このため、バルブ23は、ポンプ22の出口からノズル24に流れる気体流量を調整することになる。
【0031】
この冷却器20では、ポンプ22がタンク21内から冷却用気体を吸い込むと、タンク21内の液体は気化して冷却用気体がホース25aを通してポンプ22の入口に流れる。この冷却用気体はポンプ22によって圧縮されて出口から吐出する。この吐出された冷却用気体はバルブ23およびホース25bを通してノズル24から吹き出される。
【0032】
以上のように構成される回転工具10のツール14、プローブ15、冷却器20のノズル24は、送り機構によって位置が制御される。
【0033】
次に、本実施形態の攪拌接合物体の製造方法について
図3~
図8を参照して説明する。
図3は、攪拌接合物体の製造方法を示すフローチャートである。
図4、
図7は、回転工具10が被加工物30A、30Bを攪拌接合する工程を示す側面図であり、回転工具10のうちツール14、プローブ15以外の図示を省略している。
図5、
図8は、回転工具10が被加工物30A、30Bを攪拌接合する工程を示す上面図であり、回転工具10のうちツール14以外の図示を省略している。
図6は、回転工具10が被加工物30A、30Bを攪拌接合する工程を示す斜視図であり、回転工具10のうちツール14以外の図示を省略している。
【0034】
まず、第1工程であるステップS100において、
図1、
図2に示す攪拌接合用工具1を準備する。
【0035】
次に、第2工程であるステップS110において、
図4に示すように、図示しないテーブル上に、被加工物30Aを被加工物30Bに対して厚み方向Ha一方側に配置した状態で被加工物30A、30Bを厚み方向Haに重ね合わせる。このとき、被加工物30Aの端部40aと被加工物30Bの端部42aとが重なるように被加工物30A、30Bを配置する。
【0036】
被加工物30A、30Bは、それぞれ、金属材料によって板状に形成されている。端部40aは、被加工物30Aのうち幅方向Whの一方側に形成されている。端部42aは、被加工物30Bのうち幅方向Whの一方側に形成されている。被加工物30A、30Bにおいて、幅方向Whは厚み方向Haに直交する方向である。
【0037】
本実施形態では、被加工物30A、30Bのそれぞれの厚み方向Haは、天地方向に一致している。厚み方向Haの一方側は、天地方向の上側に一致している。このため、被加工物30Aは、被加工物30Bに対して天地方向上側に配置されている。
【0038】
ここで、被加工物30A、30Bを構成する金属材料としては、アルミニウム、銅、マグネシウム、チタン、軟鋼、亜鉛、鉛、或いは、これらの合金を用いることができる。さらに、被加工物30A、30Bを構成する材料としては、金属材料以外のプラスチック等の樹脂材料等を用いてもよい。
【0039】
次に、第3工程であるステップS120において、攪拌接合用工具1によって攪拌接合によって被加工物30A、30Bを接合して攪拌接合物体を製造する。
【0040】
具体的には、被加工物30Aのうち幅方向Whの一方側の端部40aと攪拌接合用工具1との間の距離Laの方が、幅方向Whの他方側の端部41aと攪拌接合用工具1との間の距離Lbに比べて小さくなる位置に攪拌接合用工具1を配置する。
【0041】
これに伴い、電動モータ11によってツール14およびプローブ15を矢印Yaの如く回転させながら、ツール14およびプローブ15を被加工物30A、30Bに対して厚み方向Ha一方側から押し付ける。
【0042】
このとき、ツール14およびプローブ15の回転数としては、例えば、1000rpm以上で20000rpm以下の範囲内の回転数に設定される。
【0043】
このため、被加工物30Aおよびプローブ15の間の摩擦熱より被加工物30Aが軟化してプローブ15が被加工物30Aに挿入される。さらに、プローブ15と被加工物30Bとの間に摩擦熱が発生する。このことにより、被加工物30A、30Bおよびプローブ15の間の摩擦熱より被加工物30A、30Bが軟化して攪拌される。
【0044】
このように、攪拌接合用工具1のツール14およびプローブ15を回転させながら、ツール14およびプローブ15を被加工物30A、30Bに押し付けた状態で、攪拌接合用工具1を端部40aに沿って
図5の移動方向Ycに移動させる。本実施形態の移動方向Ycは、幅方向Whに直交し、かつ厚み方向Haに直交する方向である。
【0045】
これに伴い、被加工物30A、30Bには、摩擦熱より金属材料が軟化して攪拌された攪拌領域50が端部40aに沿って移動方向Ycに亘って形成される。その後、攪拌領域50が放熱されて冷却されることにより、被加工物30A、30Bを接合する接合領域51が移動方向Ycに亘って形成される。
【0046】
ここで、以下、説明の便宜上、被加工物30A、30Bのうち、予め想定されるプローブ15の移動軌跡を想定移動軌跡56とする。
【0047】
被加工物30Aのうち、プローブ15の想定移動軌跡56に対して端部40a側に位置する領域を端部側領域52とする。被加工物30Aのうち、プローブ15の想定移動軌跡56に対して端部側領域52と反対側に位置する領域を反対側領域53とする。
【0048】
被加工物30Bのうち、プローブ15の想定移動軌跡56に対して端部42a側に位置する領域を端部側領域72とする。被加工物30Bのうち、プローブ15の想定移動軌跡56に対して端部側領域72と反対側に位置する領域を反対側領域73とする。
【0049】
本実施形態では、被加工物30Aのうち端部側領域52の幅方向Whの寸法は、反対側領域53の幅方向Whの寸法に比べて、小さい。このため、被加工物30Aのうち端部側領域52は、反対側領域53に比べて、金属材料(すなわち、余肉)が少ない。
これにより、端部側領域52は、反対側領域53に比べて、放熱性が低くなる。これに伴い、端部側領域52は、反対側領域53に比べて、最高温度が高くなる。したがって、端部側領域52は、反対側領域53に比べて、変形抵抗が小さくなる。
【0050】
さらに、被加工物30Bのうち端部側領域72の幅方向Whの寸法は、反対側領域73の幅方向Whの寸法に比べて、小さい。このため、被加工物30Bのうち端部側領域72は、反対側領域73に比べて、金属材料が少ない。
これにより、端部側領域72は、反対側領域73に比べて、放熱性が低くなる。これに伴い、端部側領域72は、反対側領域73に比べて、最高温度が高くなる。したがって、端部側領域72は、反対側領域73に比べて、変形抵抗が小さくなる。
【0051】
ここで、後述する冷却用気体によって被加工物30A、30Bを冷却しない場合には、上述の如くツール14およびプローブ15が金属材料を攪拌することに伴って、攪拌領域50から金属材料が被加工物30Aのうち端部40a側に押し出される。攪拌領域50から金属材料が被加工物30Bのうち端部42a側に押し出される。
【0052】
このため、攪拌領域50には、外部に開口する溝(すなわち、クラック)61や内部に形成される空孔61aが設けられる。さらに、被加工物30Aのうち攪拌領域50に対して端部40a側は、攪拌領域50から押し出された金属材料が起因して変形する。このことにより、
図7、
図8に示すように、被加工物30Aのうち攪拌領域50に対して端部40a側には、変形部60が形成される。
【0053】
これに加えて、被加工物30Bのうち攪拌領域50に対して端部42a側は、攪拌領域50から押し出された金属材料が起因して変形する。このことにより、
図7に示すように、被加工物30Bのうち攪拌領域50に対して端部42a側には、変形部60aが形成される。
【0054】
そこで、本実施形態では、冷却器20のノズル24をツール14に対して被加工物30Aの端部40a側で、かつ被加工物30Aに対して厚み方向Ha一方側(すなわち、天地方向上側)に配置する。このとき、冷却器20のノズル24を被加工物30Aの端部側領域52に向けて配置する。
【0055】
ここで、上述の如く、冷却器20のホース25bが攪拌接合用工具1のホースホルダ11bによって支持されている。これに加えて、送り機構によって攪拌接合用工具1を端部40aに沿って移動方向Ycに移動させる際に、ノズル24が攪拌接合用工具1に追従して端部40aに沿って移動する。すなわち、ツール14およびプローブ15とノズル24とが平行に移動される。
【0056】
このため、攪拌接合用工具1によって被加工物30A、30Bに攪拌領域50が形成される際に、被加工物30Aの端部側領域52のうちツール14に対して端部40a側には、ノズル24から冷却用気体が吹き出される。
【0057】
このとき、被加工物30Aの端部側領域52のうち、ノズル24からの冷却用気体が吹き付けられる領域は冷却用気体によって冷却されて冷却領域31が生成される。
【0058】
ここで、上述の如く、ノズル24が攪拌接合用工具1に追従して端部40aに沿って移動する。このため、端部側領域52には、冷却領域31が攪拌領域50に沿って形成される。
【0059】
このとき、冷却領域31は、冷却用気体によって冷却される前の状態に比べて、変形抵抗が大きくなる。さらに、冷却領域31は、攪拌領域50の一部を冷却して、冷却用気体によって冷却される前の状態に比べて、攪拌領域50を小さくすることができる。
【0060】
このとき、被加工物30Bのうち冷却領域31に接触する接触領域32は、冷却領域31によって冷却される。このため、被加工物30Bの接触領域32は、冷却領域31によって冷却される前の状態に比べて、変形抵抗が大きくなる。
【0061】
このようにノズル24からの冷却用気体によって被加工物30A、30Bが冷却される。このことにより、攪拌領域50が小さくなり、被加工物30Aの端部側領域52の冷却領域31の変形抵抗と被加工物30Bの端部側領域72の接触領域32の変形抵抗とがそれぞれ大きくなる。
【0062】
このため、攪拌接合用工具1のツール14、プローブ15が金属材料を攪拌しても、攪拌領域50からの金属材料が被加工物30Aのうち端部40a側に押し出されることが抑えられる。これに加えて、攪拌領域50からの金属材料が被加工物30Bのうち端部42a側に押し出されることが抑えられる。よって、被加工物30A、30Bのうち端部40a、42a側に変形部60、60aが発生することが抑えられる。また、攪拌領域50には、溝61や空孔61aが生じることも抑えられる。
【0063】
以上説明した本実施形態によれば、攪拌接合物体の製造方法は、回転可能に構成されているプローブ15を備える攪拌接合用工具1を準備する準備工程を備える。
【0064】
攪拌接合物体の製造方法は、金属材料によって板状に形成されている被加工物30A、30Bを厚み方向Haに重ね合わせた状態に配置する配置工程を備える。
【0065】
攪拌接合物体の製造方法は、プローブ15を回転させながら被加工物30A、30Bに押し付けて摩擦熱を発生させる攪拌接合工程を備える。攪拌接合工程では、摩擦熱により軟化した被加工物30A、30Bを攪拌してこの攪拌した攪拌領域50を冷却させることにより被加工物30A、30Bを接合する。
【0066】
攪拌接合工程は、攪拌領域50から押し出される金属材料に起因して被加工物30A、30Bが変形することを抑制するための冷却用気体を冷却器20から被加工物30Aに向けて吹き出す工程である。
【0067】
具体的には、攪拌接合工程は、被加工物30Aの端部側領域52のうち、プローブ15に対して端部40a側に冷却器20のノズル24から冷却用気体を吹き出す。このため、被加工物30Aの端部側領域52のうち、プローブ15に対して端部40a側の領域は、冷却器20のノズル24から冷却用気体が吹き付けられて冷却されて冷却領域31が生成される。これに伴い、被加工物30Bのうち冷却領域31に接触する接触領域32を冷却することができる。
【0068】
これにより、冷却領域31、接触領域32は、冷却器20のノズル24からの冷却用気体を吹き出される前の状態に比べて、それぞれの変形抵抗を大きくなる。このため、攪拌接合用工具1のツール14、プローブ15が被加工物30A、30Bの金属材料を攪拌しても、攪拌領域50から金属材料が攪拌領域50から被加工物30A、30Bの端部40a、42a側に押し出されることが抑えられる。
【0069】
よって、被加工物30A、30Bのうち攪拌領域50に対して端部40a、42a側に変形部60、60aが発生することが抑えられる。また、攪拌領域50には、溝61や空孔61aが生じることも抑えられる。
【0070】
以上により、被加工物30A、30Bを冷却することにより、被加工物30A、30Bが変形することを抑えるようにした攪拌接合物体の製造方法を提供することができる。
このように構成される実施形態では、次の(1)(2)の作用効果を得ることができる。
【0071】
(1)攪拌接合用工具1は、回転可能に構成されて、回転させながら、被加工物30A、30Bに押し付けて摩擦熱を発生させてこの発生される摩擦熱により被加工物30A、30Bを攪拌するプローブ15を有する回転工具10を備える。
【0072】
攪拌接合用工具1は、被加工物30A、30Bのうち少なくとも一方の被加工物30Aを冷却する冷却用気体を被加工物30Aに向けて送り出す冷却器20を備える。このため、攪拌領域50から押し出される金属材料に起因して被加工物30A、30Bが変形することを抑制することができる。
【0073】
以上により、上述の攪拌接合物体の製造方法に用いるのに適した攪拌接合用工具を提供することができる。
(2)回転工具10は、プローブ15を回転させる電動モータ11と、電動モータ11を保持するホルダ12とを備える。
【0074】
冷却器20は、冷却用気体を貯えるタンク21と、タンク21から流れ出る冷却用気体を被加工物10Aに向けて送り出すノズル24と、タンク21から流れ出る冷却用流体をノズル24に導くためのホース25a、25bとを備える。
【0075】
ホルダ12は、電動モータ11にホース25bを保持させるホースホルダ11bを備える。以上により、ノズル24およびホース25bを移動させる専用の送り機構を設けることなく、回転工具10の電動モータ11に追従してホースホルダ11b、ノズル24を追従して移動させることができる。
【0076】
このため、被加工物30A、30Bのうち摩擦熱より金属材料が軟化して攪拌された攪拌領域50に沿って冷却領域31が生成される。したがって、回転工具10の移動方向Ycに亘って変形部60が形成されることを抑えることができる。
【0077】
(第2実施形態)
上記第1実施形態では、被加工物30A、30Bを重ね合わされた状態で被加工物30A、30Bを攪拌接合した例について説明した。しかし、本第2実施形態では、被加工物30Aの端部41aと被加工物30Bの端部40bとを突き合わさせた状態で被加工物30A、30Bを攪拌接合した例について説明する。
【0078】
次に、本実施形態の攪拌接合物体の製造方法について
図1、
図2、
図9~
図14を参照して説明する。
図9は、攪拌接合物体の製造方法を示すフローチャートである。
図9において、
図3と同一ステップは、同一工程を示し、その説明を省略する。
【0079】
図10、
図13は、回転工具10が被加工物30A、30Bを攪拌接合する工程を示す側面図であり、回転工具10のうちツール14、プローブ15以外の図示を省略している。
図11、
図14は、回転工具10が被加工物30A、30Bを攪拌接合する工程を示す上面図であり、回転工具10のうちツール14以外の図示を省略している。
図12は、回転工具10が被加工物30A、30Bを攪拌接合する工程を示す斜視図であり、回転工具10のうちツール14以外の図示を省略している。
【0080】
まず、第1工程であるステップS100において、
図1、
図2に示す攪拌接合用工具1を準備する。
【0081】
次に、第2工程であるステップS110Aにおいて、
図10に示すように、図示しないテーブル上において、被加工物30A、30Bを配置して被加工物30Aの端部41aと被加工物30Bの端部40bとを突き合わされた状態にする。被加工物30A、30Bは、それぞれ、金属材料によって板状に形成されている。本実施形態では、被加工物30A、30Bのそれぞれの厚み方向Haは、天地方向に一致している。
【0082】
次に、第3工程であるステップS120Aにおいて、攪拌接合用工具1によって攪拌接合によって被加工物30Aの端部41aと被加工物30Bの端部40bとを接合して攪拌接合物体を製造する。
【0083】
本実施形態では、端部40aは、被加工物30Aのうち幅方向Whの一方側に形成されている。端部41aは、被加工物30Aのうち幅方向Whの他方側に形成されている。
端部40aは、幅方向Whに交差する方向に延びるように形成されている。端部41aは、端部40aに沿って延びるように形成されている。
【0084】
被加工物30Aの幅方向Whの寸法Waは、被加工物30Bの幅方向Whの寸法Wbに比べて小さくなっている。被加工物30Aは、被加工物30Bに比べて金属材料が小さくなっている。
【0085】
このとき、被加工物30Aの端部41aと被加工物30Bの端部40bとに対して厚み方向Haの一方側(すなわち、天地方向上側)に攪拌接合用工具1を配置する。
【0086】
これに伴い、電動モータ11によってツール14およびプローブ15を矢印Yaの如く回転させながら、ツール14およびプローブ15を被加工物30A、30Bに対して厚み方向Haの他方側に押し付ける。
【0087】
このため、被加工物30A、30Bおよびプローブ15の間の摩擦熱より被加工物30A、30Bが軟化してプローブ15が被加工物30A、30Bに挿入される。さらに、プローブ15と被加工物30A、30Bとの間に摩擦熱が発生する。
【0088】
このことにより、被加工物30A、30Bおよびプローブ15の間の摩擦熱より被加工物30Aの端部41aと被加工物30Bの端部40bとが軟化して攪拌される。
【0089】
このように、攪拌接合用工具1のツール14およびプローブ15を回転させながら、ツール14およびプローブ15を被加工物30A、30Bに押し付けた状態で、
図11の移動方向Ycに、攪拌接合用工具1を端部41a、40bに沿って移動させる。移動方向Ycは、幅方向Whに直交する方向である。
【0090】
これに伴い、被加工物30A、30Bには、摩擦熱より金属材料が軟化して攪拌された攪拌領域50が移動方向Ycに亘って形成される。その後、攪拌領域50が放熱されて冷却されることにより、被加工物30A、30Bを接合する接合領域51が移動方向Ycに亘って形成される。
【0091】
ここで、被加工物30Aは、被加工物30Bに比べて、金属材料(すなわち、肉部)が少ない。このため、被加工物30Aは、被加工物30Bに比べて、放熱性が低くなる。これに伴い、被加工物30Aは、被加工物30Bに比べて、最高温度が高くなる。このため、被加工物30Aは、被加工物30Bに比べて、変形抵抗が小さくなる。
【0092】
ここで、後述する冷却用気体によって被加工物30A、30Bを冷却しない場合には、上述の如くツール14およびプローブ15が金属材料を攪拌することに伴って、攪拌領域50から金属材料が被加工物30Aに押し出される。
【0093】
このため、攪拌領域50には、溝61や空孔61aが生じる。これに加えて、被加工物30Aは、攪拌領域50から押し出された金属材料が起因して変形する。このことにより、被加工物30Aには、
図13、
図14に示すように、変形部60が形成される。
【0094】
そこで、本実施形態では、冷却器20のノズル24を被加工物30Aに対して厚み方向Ha一方側(すなわち、上側)で、かつツール14に対して被加工物30Aの端部40a側に配置する。このとき、冷却器20のノズル24を被加工物30Aに向けて配置する。
【0095】
ここで、冷却器20のホース25bが、上述の如く、攪拌接合用工具1のホースホルダ11bによって支持されている。これに加えて、攪拌接合用工具1を、上述の如く、端部41a、40bに沿って移動させる際に、ノズル24を攪拌接合用工具1に追従して端部40aに沿って移動する。
【0096】
このため、攪拌接合用工具1によって被加工物30A、30Bに攪拌領域50が形成される際に、被加工物30Aのうちツール14に対して端部40a側にノズル24からの冷却用気体が吹き出される。
【0097】
このため、被加工物30Aのうちノズル24からの冷却用気体が吹き付けられる領域が冷却されて冷却領域31aが生成される。冷却領域31aは、攪拌領域50に沿って移動方向Ycに亘って形成される。冷却領域31aは、ノズル24から冷却用気体が吹き付けられる前の状態に比べて、変形抵抗が大きくなる。
【0098】
以上説明した本実施形態によれば、攪拌接合物体の製造方法は、回転可能に構成されているプローブ15を備える攪拌接合用工具1を準備する準備工程を備える。
【0099】
攪拌接合物体の製造方法は、金属材料によって板状に形成されている被加工物30Aの端部41aと金属材料によって板状に形成されている被加工物30Bの端部40bとを突き合わせた状態に配置する配置工程を備える。
【0100】
攪拌接合物体の製造方法は、プローブ15を回転させながら被加工物30A、30Bの端部41a、40bに厚み方向Ha一方から押し付けて摩擦熱を発生させて摩擦熱により被加工物30A、30Bの端部41a、40bを攪拌接合する攪拌接合工程を備える。
【0101】
攪拌接合工程は、摩擦熱により軟化した被加工物30A、30Bをプローブ15により攪拌して攪拌領域50から金属材料から押し出されることに起因して被加工物30A、30Bが変形することを抑制する。
【0102】
具体的には、攪拌接合工程は、冷却用気体を冷却器20のノズル24から被加工物30Aのうち、ツール14に対して端部40a側の領域に冷却用気体を吹き出して冷却させる。このことにより、被加工物30Aのうち、ツール14に対して端部40a側に攪拌領域50に沿って冷却領域31aを生成することができる。
【0103】
このため、冷却領域31aの変形抵抗を冷却器20のノズル24からの冷却用気体が吹き付けられる前の状態に比べて、大きくすることができる。以上により、攪拌接合用工具1のツール14、プローブ15が被加工物30A、30Bを構成する金属材料を攪拌しても、攪拌領域50から金属材料が被加工物30Aの端部40aに押し出されることが抑えられる。よって、被加工物30Aに変形部60が発生することが抑えられる。また、攪拌領域50には、溝61や空孔61aが生じることも抑えられる。
【0104】
以上により、被加工物30Aを冷却することにより、被加工物30Aが変形することを抑えるようにした攪拌接合物体の製造方法、およびこれに用いるのに適した攪拌接合用工具を提供することができる。
【0105】
本実施形態では、ホルダ12は、電動モータ11にホース25bを保持させるホースホルダ11bを備える。このため、ノズル24およびホース25bを移動させる専用の送り機構を設けることなく、回転工具10の電動モータ11に追従してホースホルダ11b、ノズル24を追従して移動させることができる。
(第3実施形態)
上記第1実施形態では、被加工物30Aの端部40a側を冷却用気体によって冷却して変形抵抗を大きくすることにより、攪拌領域50からの金属材料が被加工物30Aのうち端部40a側に押し出されることを抑える例について説明した。
【0106】
しかし、被加工物30Aの端部40a側を荷重アーム100のローラ140で押し付けることにより、攪拌領域50からの金属材料が被加工物30Aのうち端部40a側に押し出されることを抑える例について
図15~
図18を参照して説明する。
【0107】
まず、本実施形態の攪拌接合物体の製造方法で用いられる攪拌接合用工具1について
図15を参照して説明する。
【0108】
本実施形態の攪拌接合用工具1は、
図15を示すように、回転工具10と、荷重アーム100とを備える。本実施形態の回転工具10と上記第1実施形態の回転工具10とは同じである。荷重アーム100は、抑制部材として、上記第1実施形態の冷却器20に代えて設けられたものである。
【0109】
荷重アーム100は、押し付け部として、アーム部110、コイルスプリング120、ローラ支持部130、およびローラ140を備える。
【0110】
アーム部110は、軸線方向Sdに延びる柱状に形成されている。アーム部110のうち軸線方向Sdの一方側が攪拌接合用工具1のホルダ12に対してボルト112による締結によって支持されている。ローラ支持部130は、アーム部110のうち軸線方向Sdの他方側においてボルト131、132によって支持されている。
【0111】
本実施形態のローラ支持部130は、アーム部110に対してボルト131の軸線方向に変位が自在になる支持されている。軸線方向は、軸線Szが延びる方向である。軸線Szは、
図15の紙面垂直方向に延びる仮想線である。
【0112】
ローラ140は、軸線Sbを中心とする円柱状に形成されている。ローラ140は、軸線Sbを中心として回転自在になるようにローラ支持部130によって支持されている。本実施形態では、後述するように、ローラ140は、その外周面が被加工物30A、30Bを押し付けられる。
【0113】
コイルスプリング120は、力発生部材として、アーム部110の中空部111内に配置されているバネである。コイルスプリング120のうちの軸線方向Sdの一端側がローラ支持部130に固定されている。
【0114】
コイルスプリング120のうち軸線方向Sdの他端側が調整ボルト121によって支持されている。調整ボルト121は、コイルスプリング120に対して軸線方向Sdの他端側に配置されている。
【0115】
このことより、コイルスプリング120は、調整ボルト121によって軸線方向Sdの一方側に押し付けられて弾性変形した状態で、ローラ支持部130、ローラ140に弾性力を与えることになる。
【0116】
調整ボルト121は、その軸線がコイルスプリング120の軸線に一致するように配置されている。調整ボルト121は、アーム部110に螺合された状態でアーム部110に支持されている。
【0117】
調整ボルト121は、その軸線を中心として回転されることにより、アーム部110に対して軸線方向Sdの変位可能になるように構成されている。本実施形態では、調整ボルト131の軸線方向Sdの位置によって、調整ボルト131がコイルスプリング120に押し付ける力を変化させることができる。
【0118】
したがって、調整ボルト131の締め付け量によって調整ボルト131の軸線方向Sdの位置が変位して、コイルスプリング120がローラ支持部130、ローラ140に与える弾性力を調整することができる。
【0119】
次に、本実施形態の攪拌接合物体の製造方法について
図16、
図17、
図18を参照して説明する。
【0120】
図16は、攪拌接合物体の製造方法を示すフローチャートである。
図17は、回転工具10が被加工物30A、30Bを攪拌接合する工程を示す側面図であり、回転工具10のうちツール14、プローブ15以外の図示を省略している。
図17において、荷重アーム100のうちローラ支持部130、ローラ140以外の図示を省略している。
【0121】
図18は、回転工具10が被加工物30A、30Bを攪拌接合する工程を示す上面図であり、回転工具10のうちツール14以外の図示を省略している。
図18において、荷重アーム100のうちローラ140以外の図示を省略している。
【0122】
図16のうちステップS100は、
図3のうちステップS100と同一ステップであり、
図16のうちステップS110は、
図3のうちステップS110と同一ステップである。
【0123】
まず、第1工程であるステップS100において、上記第1実施形態と同様に、
図1、
図2に示す攪拌接合用工具1を準備する。
【0124】
次に、第2工程であるステップS110において、上記第1実施形態と同様に、
図17に示すように、図示しないテーブル上に、被加工物30Aを被加工物30Bに対して厚み方向Ha一方側に配置した状態で被加工物30A、30Bを厚み方向Haに重ね合わせる。このとき、被加工物30Aの端部40aと被加工物30Bの端部42aとが重なるように被加工物30A、30Bを配置する。
【0125】
次に、第3工程であるステップS120Bにおいて、攪拌接合用工具1によって攪拌接合によって被加工物30A、30Bを接合して攪拌接合物体を製造する。
【0126】
具体的には、被加工物30Aのうち幅方向Whの一方側の端部40aと攪拌接合用工具1との間の距離Laの方が幅方向Whの他方側の端部41aと攪拌接合用工具1との間の距離Lbに比べて小さくなる位置に攪拌接合用工具1を配置する。
【0127】
これに伴い、電動モータ11によってツール14およびプローブ15を矢印Yaの如く回転させながら、ツール14およびプローブ15を被加工物30A、30Bに対して厚み方向Ha一方側から押し付ける。
【0128】
このため、被加工物30Aおよびプローブ15の間の摩擦熱より被加工物30Aが軟化してプローブ15が被加工物30Aに挿入される。さらに、プローブ15と被加工物30Bとの間に摩擦熱が発生する。このことにより、被加工物30A、30Bおよびプローブ15の間の摩擦熱より被加工物30A、30Bが軟化して攪拌される。
【0129】
このように、攪拌接合用工具1のツール14およびプローブ15を回転させながら、ツール14およびプローブ15を被加工物30A、30Bに押し付けた状態で、攪拌接合用工具1を端部40aに沿って
図18の移動方向Ycに移動させる。本実施形態の移動方向Ycは、幅方向Whに直交する方向である。
【0130】
これに伴い、被加工物30A、30Bには、摩擦熱より金属材料が軟化して攪拌された攪拌領域50が端部40aに沿って移動方向Ycに亘って形成される。その後、攪拌領域50が放熱されて冷却されることにより、被加工物30A、30Bを接合する接合領域51が移動方向Ycに亘って形成される。
【0131】
ここで、以下、説明の便宜上、被加工物30A、30Bのうち、予め想定されるプローブ15の移動軌跡を想定移動軌跡56とする。
【0132】
被加工物30Aのうち、プローブ15の想定移動軌跡56に対して端部40a側に位置する領域を端部側領域52とする。被加工物30Aのうち、プローブ15の想定移動軌跡56に対して端部側領域52と反対側に位置する領域を反対側領域53とする。
【0133】
被加工物30Bのうち、プローブ15の想定移動軌跡56に対して端部42a側に位置する領域を端部側領域72とする。被加工物30Bのうち、プローブ15の想定移動軌跡56に対して端部側領域72と反対側に位置する領域を反対側領域73とする。
【0134】
本実施形態では、被加工物30Aのうち端部側領域52の幅方向Whの寸法は、反対側領域53の幅方向Whの寸法に比べて、小さい。このため、被加工物30Aのうち端部側領域52は、反対側領域53に比べて、金属材料(すなわち、余肉)が少ない。
これにより、端部側領域52は、反対側領域53に比べて、放熱性が低くなる。これに伴い、端部側領域52は、反対側領域53に比べて、最高温度が高くなる。したがって、端部側領域52は、反対側領域53に比べて、変形抵抗が小さくなる。
【0135】
さらに、被加工物30Bのうち端部側領域72の幅方向Whの寸法は、反対側領域73の幅方向Whの寸法に比べて、小さい。このため、被加工物30Bのうち端部側領域72は、反対側領域73に比べて、金属材料が少ない。
これにより、端部側領域72は、反対側領域73に比べて、放熱性が低くなる。これに伴い、端部側領域72は、反対側領域73に比べて、最高温度が高くなる。したがって、端部側領域72は、反対側領域73に比べて、変形抵抗が小さくなる。
【0136】
ここで、後述する荷重アーム100によって被加工物30Aを押し付けない場合には、上述の如くツール14およびプローブ15が金属材料を攪拌することに伴って、攪拌領域50から金属材料が被加工物30Aのうち端部40a側に押し出される。攪拌領域50から金属材料が被加工物30Bのうち端部42a側に押し出される。
【0137】
このため、攪拌領域50には、外部に開口する溝(すなわち、クラック)61や内部に形成される空孔61aが設けられる。さらに、被加工物30Aのうち攪拌領域50に対して端部40a側は、攪拌領域50から押し出された金属材料が起因して変形する。このことにより、
図7、
図8に示すように、被加工物30Aのうち攪拌領域50に対して端部40a側には、変形部60が形成される。
【0138】
これに加えて、被加工物30Bのうち攪拌領域50に対して端部42a側は、攪拌領域50から押し出された金属材料が起因して変形する。このことにより、
図7に示すように、被加工物30Bのうち攪拌領域50に対して端部42a側には、変形部60aが形成される。
【0139】
そこで、本実施形態では、荷重アーム100のローラ140を、被加工物30Aにおいてツール14に対して端部40a側のうち厚み方向Ha一方側(すなわち、天地方向上側の角部)に配置する。
【0140】
このとき、ローラ140がアーム部110によって支持された状態でコイルスプリング120の弾性力を端部42a側からローラ140を介して被加工物30Aを攪拌領域50側に与える。このことにより、ローラ140が被加工物30Aをその端部42a側から攪拌領域50側に押し付けることになる。
【0141】
ここで、上述の如く、荷重アーム100が攪拌接合用工具1のホルダ12によって支持されている。これに加えて、送り機構によって攪拌接合用工具1を端部40aに沿って移動方向Ycに移動させる際に、ローラ140が攪拌接合用工具1に追従して回転しながら端部40aに沿って移動する。すなわち、ツール14およびプローブ15とローラ140とが平行に移動される。
【0142】
このため、攪拌接合用工具1によって被加工物30A、30Bに攪拌領域50が形成される際に、被加工物30Aの端部側領域52のうちツール14に対して端部40a側は、ローラ140によって押し付けられる。
【0143】
したがって、攪拌接合用工具1のツール14、プローブ15が金属材料を攪拌しても、攪拌領域50からの金属材料が被加工物30Aのうち端部40a側に押し出されることが抑えられる。
【0144】
これに加えて、攪拌領域50からの金属材料が被加工物30Bのうち端部42a側に押し出されることが抑えられる。
【0145】
よって、被加工物30A、30Bのうち端部40a、42a側に変形部60、60aが発生することが抑えられる。また、攪拌領域50には、溝61や空孔61aが生じることも抑えられる。
【0146】
以上説明した本実施形態によれば、攪拌接合物体の製造方法は、回転可能に構成されているプローブ15を備える攪拌接合用工具1を準備する準備工程を備える。
【0147】
攪拌接合物体の製造方法は、被加工物30Aを被加工物30Bに対して厚み方向Haの一方側に配置した状態で被加工物30A、30Bを厚み方向に重ね合わせる配置工程を備える。
【0148】
攪拌接合物体の製造方法は、プローブ15を回転させながら被加工物30A、30Bに押し付けて摩擦熱を発生させる攪拌接合工程を備える。攪拌接合工程では、摩擦熱により軟化した被加工物30A、30Bを攪拌してこの攪拌した攪拌領域50を冷却させることにより被加工物30A、30Bを接合する。
【0149】
本実施形態の攪拌接合工程では、荷重アーム100がローラ140によって被加工物30Aのうちプローブ15に対して端部40a側を攪拌領域50に向けて押し付ける。このため、プローブ15による攪拌に伴って攪拌領域50を構成する金属材料が攪拌領域50から押し出されることを抑制することができる。
【0150】
さらに、本実施形態では、荷重アーム100がローラ140によって被加工物30Aの端部40a側を被加工物30Bに向けて押し付ける。よって、被加工物30A、30Bのうち攪拌領域50に対して端部40a、42a側に変形部60、60aが発生することが抑えられる。また、攪拌領域50には、溝61や空孔61aが生じることも抑えられる。
【0151】
以上により、被加工物30A、30Bを荷重アーム100がローラ140によって押し付けることにより、被加工物30A、30Bが変形することを抑えるようにした攪拌接合物体の製造方法を提供することができる。
【0152】
(3)攪拌接合用工具1は、上記第1、第2実施形態で説明したプローブ15を有する回転工具10以外に、荷重アーム100を備える。荷重アーム100は、ローラ140によって、プローブ15が被加工物30A、30Bを攪拌した攪拌領域50から金属材料が押し出されることを抑制するために被加工物30A、30Bのうち少なくとも一方の被加工物を押し付ける。
【0153】
以上により、上述の攪拌接合物体の製造方法に用いるのに適した攪拌接合用工具を提供することができる。
【0154】
(4)荷重アーム100は、そのアーム部110が攪拌接合用工具1のホルダ12によって支持されている。これに加えて、送り機構によって攪拌接合用工具1を端部40aに沿って移動方向Ycに移動させる際に、ローラ140が攪拌接合用工具1に追従して回転しながら端部40aに沿って移動する。すなわち、ローラ140とノズル24とが平行に移動される。
【0155】
このため、攪拌接合用工具1によって被加工物30A、30Bに攪拌領域50が形成される際に、ローラ140が被加工物30Aの端部40aを攪拌領域50に沿って押し付けることができる。このため、被加工物30A、30Bが変形することを攪拌領域50に沿って抑制することができる。
【0156】
(5)調整ボルト121は、その軸線を中心として回転されることにより、アーム部110に対して軸線方向Sdの変位可能になるように構成されている。このため、調整ボルト131の軸線方向Sdの位置によって、調整ボルト131がコイルスプリング120に押し付ける力を変化させることができる。
【0157】
したがって、調整ボルト131の軸線方向Sdの位置によって、コイルスプリング120がローラ支持部130、ローラ140を介して被加工物30A、30Bを押しつける弾性力を調整することができる。
(第4実施形態)
上記第3実施形態では、被加工物30A、30Bを重ね合わされた状態で被加工物30A、30Bを攪拌接合した例について説明した。しかし、本第4実施形態では、被加工物30Aの端部41aと被加工物30Bの端部40bとを突き合わさせた状態で被加工物30A、30Bを攪拌接合した例について説明する。
【0158】
次に、本実施形態の攪拌接合物体の製造方法について
図15、
図19~
図21を参照して説明する。
図19は、攪拌接合物体の製造方法を示すフローチャートである。
図19において、
図9と同一ステップは、同一工程を示し、その説明を省略する。
【0159】
図20は、回転工具10が被加工物30A、30Bを攪拌接合する工程を示す側面図であり、回転工具10のうちツール14、プローブ15以外の図示を省略している。
図20において、荷重アーム100のうちローラ支持部130、ローラ140以外の図示を省略している。
【0160】
図21は、回転工具10が被加工物30A、30Bを攪拌接合する工程を示す上面図であり、回転工具10のうちツール14以外の図示を省略している。
図21において、荷重アーム100のうちローラ140以外の図示を省略している。
【0161】
まず、第1工程であるステップS100において、
図15に示す攪拌接合用工具1を準備する。
【0162】
次に、第2工程であるステップS110Aにおいて、
図20に示すように、図示しないテーブル上において、被加工物30A、30Bを配置して被加工物30Aの端部41aと被加工物30Bの端部40bとを突き合わされた状態にする。被加工物30A、30Bは、それぞれ、金属材料によって板状に形成されている。本実施形態では、被加工物30A、30Bのそれぞれの厚み方向Haは、天地方向に一致している。
【0163】
次に、第3工程であるステップS125Aにおいて、攪拌接合用工具1によって攪拌接合によって被加工物30Aの端部41aと被加工物30Bの端部40bとを接合して攪拌接合物体を製造する。
【0164】
本実施形態では、端部40aは、被加工物30Aのうち幅方向Whの一方側に形成されている。端部41aは、被加工物30Aのうち幅方向Whの他方側に形成されている。
端部40aは、幅方向Whに交差する方向に延びるように形成されている。端部41aは、端部40aに沿って延びるように形成されている。
【0165】
被加工物30Aの幅方向Whの寸法Waは、被加工物30Bの幅方向Whの寸法Wbに比べて小さくなっている。被加工物30Aは、被加工物30Bに比べて金属材料が小さくなっている。
【0166】
このとき、被加工物30Aの端部41aと被加工物30Bの端部40bとに対して厚み方向Haの一方側(すなわち、天地方向上側)に攪拌接合用工具1を配置する。
【0167】
これに伴い、電動モータ11によってツール14およびプローブ15を矢印Yaの如く回転させながら、ツール14およびプローブ15を被加工物30A、30Bに対して厚み方向Haの他方側に押し付ける。
【0168】
このため、被加工物30A、30Bおよびプローブ15の間の摩擦熱より被加工物30A、30Bが軟化してプローブ15が被加工物30A、30Bに挿入される。さらに、プローブ15と被加工物30A、30Bとの間に摩擦熱が発生する。
【0169】
このことにより、被加工物30A、30Bおよびプローブ15の間の摩擦熱より被加工物30Aの端部41aと被加工物30Bの端部40bとが軟化して攪拌される。
【0170】
このように、攪拌接合用工具1のツール14およびプローブ15を回転させながら、ツール14およびプローブ15を被加工物30A、30Bに押し付けた状態で、
図21の移動方向Ycに、攪拌接合用工具1を端部41a、40bに沿って移動させる。移動方向Ycは、幅方向Whに直交する方向である。
【0171】
これに伴い、被加工物30A、30Bには、摩擦熱より金属材料が軟化して攪拌された攪拌領域50が移動方向Ycに亘って形成される。その後、攪拌領域50が放熱されて冷却されることにより、被加工物30A、30Bを接合する接合領域51が移動方向Ycに亘って形成される。
【0172】
ここで、被加工物30Aは、被加工物30Bに比べて、金属材料(すなわち、肉部)が少ない。このため、被加工物30Aは、被加工物30Bに比べて、放熱性が低くなる。これに伴い、被加工物30Aは、被加工物30Bに比べて、最高温度が高くなる。このため、被加工物30Aは、被加工物30Bに比べて、変形抵抗が小さくなる。
【0173】
ここで、後述する荷重アーム100のローラ140により被加工物30Aを押し付けない場合には、上述の如くツール14およびプローブ15が金属材料を攪拌することに伴って、攪拌領域50から金属材料が被加工物30Aに押し出される。
【0174】
このため、攪拌領域50には、溝61や空孔61aが生じる。これに加えて、被加工物30Aは、攪拌領域50から押し出された金属材料が起因して変形する。このことにより、被加工物30Aには、
図13、
図14に示すように、変形部60が形成される。
【0175】
そこで、本実施形態では、荷重アーム100のローラ140を被加工物30Aにおいてツール14に対して端部40a側のうち厚み方向Ha一方側(すなわち、天地方向上側の角部)に配置する。
【0176】
このとき、ローラ140がアーム部110によって支持された状態でコイルスプリング120の弾性力をローラ140を介して端部42a側から被加工物30Aを攪拌領域50側に与える。このことにより、ローラ140が被加工物30Aをその端部42a側から攪拌領域50側に押し付けることになる。
【0177】
ここで、上述の如く、荷重アーム100が攪拌接合用工具1のホルダ12によって支持されている。これに加えて、送り機構によって攪拌接合用工具1を端部40aに沿って移動方向Ycに移動させる際に、ローラ140が攪拌接合用工具1に追従して回転しながら端部40aに沿って移動する。すなわち、ツール14およびプローブ15とローラ140とが平行に移動される。
【0178】
このため、攪拌接合用工具1によって被加工物30A、30Bに攪拌領域50が形成される際に、被加工物30Aの端部側領域52のうちツール14に対して端部40a側は、ローラ140によって押し付けられる。
【0179】
したがって、攪拌接合用工具1のツール14、プローブ15が金属材料を攪拌しても、攪拌領域50からの金属材料が被加工物30Aのうち端部40a側に押し出されることが抑えられる。
【0180】
以上説明した本実施形態によれば、攪拌接合物体の製造方法は、回転可能に構成されているプローブ15を備える攪拌接合用工具1を準備する準備工程を備える。
【0181】
攪拌接合物体の製造方法は、被加工物30Aの端部41aと被加工物30Bの端部40bとを突き合わさるように被加工物30A、30Bを配置する配置工程を備える。
【0182】
攪拌接合物体の製造方法では、プローブ15を回転させながら被加工物30Aの端部41aと被加工物30Bの端部40bとに対して、被加工物30A、30Bのそれぞれの厚み方向Haの一方側から押し付けて摩擦熱を発生させる。
【0183】
攪拌接合物体の製造方法では、摩擦熱により軟化した被加工物30Aの端部41aと被加工物30Bの端部40bとをプローブ15により攪拌してこの攪拌した攪拌領域50を冷却して被加工物30A、30Bを接合させる。
【0184】
攪拌接合物体の製造方法では、荷重アーム100のローラ140が被加工物30Aの端部40aを攪拌領域50側に押し付ける。これにより、プローブ15による攪拌に伴って攪拌領域50から金属材料が押し出されることを抑制することができる。
【0185】
よって、被加工物30Aのうち攪拌領域50に対して端部40a側に変形部60が発生することが抑えられる。また、攪拌領域50には、溝61や空孔61aが生じることも抑えられる。
【0186】
以上により、被加工物30Aを荷重アーム100がローラ140によって押し付けることにより、被加工物30Aが変形することを抑えるようにした攪拌接合物体の製造方法を提供することができる。
【0187】
(他の実施形態)
(1)上記第1、第2、第3、第4実施形態では、被加工物30A、30Bとして、金属材料によって板状に形成されている部材を用いた例について説明した。しかし、これに限らず、被加工物30A、30Bとして、金属材料によって板状以外の形状に形成されている部材を用いてもよい。例えば、特許文献1と同様に、第1被加工物に対して立設するように配置される形状の部材を第2被加工物としてもよい。
【0188】
(2)上記第1、第2実施形態では、被加工物30A、30Bといった2つの被加工物30A、30Bを攪拌接合する際に、冷却用気体を被加工物30Aに吹き出した例について説明した。しかし、これに代えて、3つ以上の被加工物を攪拌接合する際に、3つ以上の被加工物のうちいずれかの被加工物に冷却用気体を吹き出していずれかの被加工物が変形することを抑えるようにしてもよい。
【0189】
さらに、上記第3、第4実施形態において3つ以上の被加工物を攪拌接合する際に、3つ以上の被加工物のうちいずれかの被加工物に荷重アーム100がローラ140によって押し付けることにより上記いずれかの被加工物が変形することを抑えるようにしてもよい。
【0190】
(3)上記第1、第2実施形態では、冷却器20のノズル24から冷却用気体を被加工物30Aのうちツール14に対して外周側(すなわち、端部40a側)に吹き出した例について説明した。
【0191】
しかし、
図20、
図21に示す如く、冷却器20のノズル24から冷却用気体を被加工物30Aのうちツール14に対して内周側に吹き出してもよい。
【0192】
図20は、被加工物30A、30Bを上側から視た上面図であり、
図21は、被加工物30A、30Bを下側から視た下面図である。
【0193】
具体的には、被加工物30A、30Bは、上記第1実施形態と同様に、厚み方向に重ね合わされている。被加工物30Bは、被加工物30Aに対して厚み方向の他方側(すなわち、天地方向下側)に配置されている。被加工物30A、30Bは、それぞれ、面方向中央側にて厚み方向に貫通する穴部70、71が形成されている。
【0194】
この場合、電動モータ11によってツール14およびプローブ15を回転させながら、ツール14およびプローブ15を被加工物30A、30Bのうち穴部70、71に対して外周側の領域に押し付ける。
【0195】
これに伴い、攪拌接合用工具1のツール14およびプローブ15を回転させながら、ツール14およびプローブ15を被加工物30Aに押し付けた状態で、
図20の矢印Yeの如く、攪拌接合用工具1を被加工物30Bのうち内周側端部43aに沿って移動させる。
【0196】
これに伴い、被加工物30A、30Bおよびプローブ15の間の摩擦熱より被加工物30A、30Bが軟化して攪拌される。これに伴い、攪拌領域55が形成される。この攪拌領域50が放熱されて被加工物30A、30Bが接合される接合領域51が形成される。
【0197】
ここで、被加工物30Aの外周側端部43bおよび攪拌接合用工具1の間の距離に比べて、被加工物30Aの内周側端部43aおよび攪拌接合用工具1の間の距離の方が小さくなる位置に攪拌接合用工具1のプローブ15を配置する。
【0198】
このとき、被加工物30Aのうち想定移動軌跡56に対して内周側端部43a側に位置する内周側領域80は、被加工物30Aのうち想定移動軌跡56に対して外周側に位置する外周側領域81に比べて、金属材料が少なくなる。このため、内周側領域80は、外周側領域81に比べて、放熱性が低くなる。これに伴い、内周側領域80は、外周側領域81に比べて、最高温度が高くなる。このため、内周側領域80は、外周側領域81に比べて、変形抵抗が小さくなる。
【0199】
ここで、冷却用気体によって被加工物30A、30Bを冷却しない場合には、上述の如く、ツール14およびプローブ15が金属材料を攪拌することに伴って、攪拌領域50から金属材料が被加工物30Aの内周側端部43a側に押し出される。
【0200】
このため、被加工物30Aのうち内周側領域80は、攪拌領域50から押し出された金属材料が起因して変形する。このことにより、被加工物30Aのうち内周側領域80には、図示しない変形部が発生する。さらに、攪拌領域55には、図示しない欠損(すなわち、クラック)が生じる。
【0201】
そこで、上記第1実施形態と同様に、被加工物30Aの内周側領域80のうちツール14に対して内周側端部43a側に冷却器20のノズル24から冷却用気体が吹き付けられ冷却されて図示しない冷却領域が生成される。
【0202】
このとき、上記冷却領域は、ノズル24から冷却用気体が吹き付けられる前の状態に比べて、変形抵抗が大きくなる。このため、上記第1実施形態と実質的に同様に、被加工物30Bのうち上記冷却領域に接触する接触領域は、上記冷却領域によって冷却されるため、被加工物30Bの上記接触領域の変形抵抗が大きくなる。
【0203】
以上により、攪拌接合用工具1のツール14、プローブ15が金属材料を攪拌しても、攪拌領域50から金属材料が被加工物30A、30Bの内周側領域に押し出されることが抑えられる。よって、被加工物30A、30Bに変形部60が発生することが抑えられる。また、攪拌領域には、欠損が生じることも抑えられる。
【0204】
(4)上記第1、第2実施形態では、被加工物30A、30Bを攪拌接合する際に、回転工具10、冷却器20のノズル24のそれぞれの位置を送り機構によって制御した例について説明した。
【0205】
しかし、これに限らず、被加工物30A、30Bを搭載する送り台を採用して、被加工物30A、30Bを攪拌接合する際に、送り台によって被加工物30A、30Bの位置を制御してもよい。
【0206】
或いは、被加工物30A、30Bを攪拌接合する際に、回転工具10および冷却器20のノズル24のそれぞれの位置を送り機構によって制御しつつ、被加工物30A、30Bのそれぞれの位置を送り台によって制御してもよい。
【0207】
また、回転工具10、冷却器20のノズル24のそれぞれの位置の制御するために送り機構に代わるロボットアーム等を用いてもよい。
【0208】
(5)上記第1、第2実施形態では、被加工物30A、30Bを攪拌接合する際に、
被加工物30A、30Bを冷却するための冷却用流体として冷却用気体を用いた例について説明した。
【0209】
しかし、これに代えて、被加工物30A、30Bを攪拌接合する際に、被加工物30A、30Bを冷却するための冷却用流体として冷却用液体を用いてもよい。
【0210】
すなわち、被加工物30A、30Bが変形することを抑制するために被加工物30A、30Bのうち少なくとも一方の被加工物を冷却するための冷却用流体として冷却用液体
を少なくとも一方の被加工物に送り出すことになる。
【0211】
(6)上記第1、第2実施形態では、ノズル24がプローブ15に追従して移動させるために、ホースホルダ11bによって電動モータ11にホース25bを支持させる例について説明した。
【0212】
しかし、これに限らず、冷却器20の位置を回転工具10と独立して制御する送り機構を採用して、この送り機構を制御してノズル24がプローブ15に追従して移動させるようにもよい。
【0213】
(7)上記第1実施形態では、被加工物30Aの端部側領域52にノズル24から冷却用気体を吹き出すようにした例について説明した。これに限らず。被加工物30Aの端部側領域52と反対側領域53との両方にノズル24から冷却用気体が吹き出すようにしてもよい。
【0214】
(8)上記第2実施形態では、被加工物30Aにノズル24から冷却用気体を吹き出すようにした例について説明した。これに限らず。被加工物30A、30Bの両方にノズル24から冷却用気体が吹き出すようにしてもよい。
【0215】
(9)上記第1、第2、第3、第4実施形態では、プローブ15は、回転軸11aの軸線Saを中心とする円柱状に形成され、かつツール14のうち軸線方向Ygの一方側の端面から軸線方向Ygの一方側に突起するように形成されている例について説明した。しかし、これに代えて、プローブ15を(a)(b)のようにしてもよい。
【0216】
(a)プローブ15は、回転軸11aの軸線Saを中心とする角柱状に形成され、ツール14のうち軸線方向Ygの一方側の端面から軸線方向Ygの一方側に突起するように形成されている。
【0217】
(b)プローブ15としては、軸線方向Ygの他方側から軸線方向Ygの一方側に向けて断面積が小さくなる円錐形状に形成されてもよい。この場合、ツール14自体を廃止してもよい。
【0218】
(10)上記第3実施形態では、荷重アーム100のローラ140により被加工物30A、30Bのうち被加工物30Aを押し付ける例について説明した。しかし、これに代えて、荷重アーム100のローラ140により被加工物30A、30Bの両方を押し付けるようにしてもよい。
【0219】
(11)上記第3、第4実施形態では、荷重アーム100が攪拌接合用工具1のホルダ12によって支持されている例について説明した。しかし、荷重アーム100と攪拌接合用工具1とを独立して配置してもよい。この場合、送り機構が荷重アーム100と攪拌接合用工具1とをそれぞれ独立して位置制御するようにしてもよい。
【0220】
また、回転工具10、荷重アーム100のそれぞれの位置の制御するために送り機構に代わるロボットアーム等を用いてもよい。
【0221】
(12)上記第1、第2実施形態では、冷却器20から吹き出される冷却用流体を用いて被加工物30A、30Bが変形することを抑えるようにした例について説明した。上記第3、第4実施形態では、荷重アーム100を用いて被加工物30A、30Bが変形することを抑えるようにした例について説明した。
【0222】
しかし、上記第1、第2実施形態および上記第3、第4実施形態において、冷却器20から吹き出される冷却用流体と荷重アーム100とを用いて被加工物30A、30Bが変形することを抑えるようにしてもよい。
【0223】
上記第3実施形態において、ローラ支持部130、およびローラ140を介して被加工物30A、30Bに力を与える力発生部材をコイルスプリング120とした例について説明した。上記第4実施形態において、ローラ支持部130、およびローラ140を介して被加工物30Aに力を与える力発生部材をコイルスプリング120とした例について説明した。
【0224】
しかし、これに限らず、コイルスプリング120以外の板バネ等の各種のバネを力発生部材として用いてもよい。また、圧縮気体をバネとするガスシリンダを力発生部材としてよい。
【0225】
(13)なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した範囲内において適宜変更が可能である。また、上記各実施形態は、互いに無関係なものではなく、組み合わせが明らかに不可な場合を除き、適宜組み合わせが可能である。
【符号の説明】
【0226】
10 回転工具
11 電動モータ
14 ツール
15 プローブ
20 冷却器
24 ノズル