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7673635半導体装置の製造方法、ダイボンディングフィルム、及びダイシング・ダイボンディング一体型接着シート
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  • -半導体装置の製造方法、ダイボンディングフィルム、及びダイシング・ダイボンディング一体型接着シート 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-28
(45)【発行日】2025-05-09
(54)【発明の名称】半導体装置の製造方法、ダイボンディングフィルム、及びダイシング・ダイボンディング一体型接着シート
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/301 20060101AFI20250430BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20250430BHJP
   C09J 7/35 20180101ALI20250430BHJP
   C09J 163/00 20060101ALI20250430BHJP
   C09J 133/14 20060101ALI20250430BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20250430BHJP
【FI】
H01L21/78 M
H01L21/78 X
H01L21/78 Y
C09J7/38
C09J7/35
C09J163/00
C09J133/14
C09J11/06
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021509063
(86)(22)【出願日】2020-03-13
(86)【国際出願番号】 JP2020011256
(87)【国際公開番号】W WO2020195981
(87)【国際公開日】2020-10-01
【審査請求日】2023-01-16
(31)【優先権主張番号】PCT/JP2019/013409
(32)【優先日】2019-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100169454
【弁理士】
【氏名又は名称】平野 裕之
(72)【発明者】
【氏名】上田 麻未
(72)【発明者】
【氏名】谷口 紘平
【審査官】内田 正和
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-081954(JP,A)
【文献】特開2018-182004(JP,A)
【文献】特開2018-123253(JP,A)
【文献】特開2014-175459(JP,A)
【文献】特開2017-183705(JP,A)
【文献】特開2015-198116(JP,A)
【文献】国際公開第2013/005470(WO,A1)
【文献】特開2017-216273(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/301
C09J 7/38
C09J 7/35
C09J 163/00
C09J 133/14
C09J 11/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
-15℃における破断伸びが5%以下であるダイボンディングフィルムからなる接着剤層と、粘着剤層と、基材フィルムとをこの順に備えるダイシング・ダイボンディング一体型接着シートを準備する工程と、
半導体ウェハを準備し、前記半導体ウェハに対して改質層を形成する工程と、
前記ダイシング・ダイボンディング一体型接着シートの前記接着剤層の面を、半導体ウェハに貼り付ける工程と、
前記基材フィルムをエキスパンドすることによって、前記半導体ウェハ及び前記接着剤層を個片化し、接着剤層付き半導体チップを作製する工程と、
前記接着剤層付き半導体チップを前記粘着剤層からピックアップする工程と、
前記接着剤層付き半導体チップを、前記接着剤層を介して半導体チップ搭載用支持基板に接着する工程と、
を備え、
前記ダイボンディングフィルムが、エポキシ樹脂と、エポキシ樹脂硬化剤と、エポキシ基含有(メタ)アクリル共重合体と、無機フィラーと、硬化促進剤とを含有し、
前記エポキシ樹脂及び前記エポキシ樹脂硬化剤の合計の含有量が、前記エポキシ樹脂、前記エポキシ樹脂硬化剤、及び前記エポキシ基含有(メタ)アクリル共重合体の総量を基準として、10質量%以上30質量%未満であ
前記無機フィラーの含有量が、ダイボンディングフィルム全量を基準として、25質量%以上であり、
前記エポキシ基含有(メタ)アクリル共重合体の含有量が、ダイボンディングフィルム全量を基準として、60質量%以下であり、
前記エポキシ基含有(メタ)アクリル共重合体に対する前記無機フィラーの質量比が、0.30以上0.60以下である、半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記ダイボンディングフィルムは、当該ダイボンディングフィルムを配線基板に熱圧着し、170℃で3時間硬化させた後の前記ダイボンディングフィルムの硬化物において、250℃のダイシェア強度が0.7MPa以上である、請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記ダイボンディングフィルムがシランカップリング剤をさらに含有する、請求項1又は2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記シランカップリング剤が下記一般式(1)で表されるシランカップリング剤である、請求項3に記載の半導体装置の製造方法。
【化1】

[一般式(1)中、Rはアルコキシ基であり、nは1~3の整数である。]
【請求項5】
半導体チップと前記半導体チップを搭載する支持部材とを接着するためのダイボンディングフィルムであって、
-15℃における破断伸びが5%以下であり、
エポキシ樹脂と、エポキシ樹脂硬化剤と、エポキシ基含有(メタ)アクリル共重合体と、無機フィラーと、硬化促進剤とを含有し、
前記エポキシ樹脂及び前記エポキシ樹脂硬化剤の合計の含有量が、前記エポキシ樹脂、前記エポキシ樹脂硬化剤、及び前記エポキシ基含有(メタ)アクリル共重合体の総量を基準として、10質量%以上30質量%未満であ
前記無機フィラーの含有量が、ダイボンディングフィルム全量を基準として、25質量%以上であり、
前記エポキシ基含有(メタ)アクリル共重合体の含有量が、ダイボンディングフィルム全量を基準として、60質量%以下であり、
前記エポキシ基含有(メタ)アクリル共重合体に対する前記無機フィラーの質量比が、0.30以上0.60以下である、ダイボンディングフィルム。
【請求項6】
前記ダイボンディングフィルムは、当該ダイボンディングフィルムを配線基板に熱圧着し、170℃で3時間硬化させた後の前記ダイボンディングフィルムの硬化物において、250℃のダイシェア強度が0.7MPa以上である、請求項に記載のダイボンディングフィルム。
【請求項7】
前記ダイボンディングフィルムがシランカップリング剤をさらに含有する、請求項又はに記載のダイボンディングフィルム。
【請求項8】
前記シランカップリング剤が下記一般式(1)で表されるシランカップリング剤である、請求項に記載のダイボンディングフィルム。
【化2】

[一般式(1)中、Rはアルコキシ基であり、nは1~3の整数である。]
【請求項9】
請求項のいずれか一項に記載のダイボンディングフィルムからなる接着剤層と、
粘着剤層と、
基材フィルムと、
をこの順に備える、ダイシング・ダイボンディング一体型接着シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造方法、ダイボンディングフィルム、及びダイシング・ダイボンディング一体型接着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造方法として、半導体ウェハ裏面貼付け方式が、一般的に用いられている。半導体ウェハ裏面貼付け方式は、半導体ウェハの裏面にダイボンディングフィルムとダイシングテープを貼付け、その後、半導体ウェハ、ダイボンディングフィルム、及びダイシングテープの一部をダイシング工程で切断する方式である。例えば、ダイボンディングフィルムをダイシングテープ上に付設し、これを半導体ウェハに貼り付ける方法が提案されている(例えば、特許文献1~4参照)。
【0003】
ところで、1パッケージあたりの記憶容量を増大させる目的で、近年、パッケージ中のチップの積層枚数は増加している。それに伴い、半導体ウェハの厚みをバックグラインド工程等でより薄くすることが検討されており、例えば、厚みが30μm以下の半導体ウェハが製造されている。半導体ウェハを薄くすると、ダイシング工程において半導体ウェハが割れ易くなるため、製造効率が大幅に低下する場合がある。
【0004】
比較的薄い半導体ウェハを個別化する方法としては、例えば、切断予定ライン上の半導体ウェハ内部にレーザー光を照射して改質層を形成し、その後外周部をエキスパンドすることによって、半導体ウェハを個片化する方法(ステルスダイシング)が知られている(例えば、特許文献5参照)。ステルスダイシングにおいては、半導体ウェハの厚さが比較的薄い場合においてもチッピング等の不良を低減する効果があることから製造効率の向上が期待できる。
【0005】
このようなステルスダイシングで使用されるダイシング・ダイボンディング一体型接着シートとして、エキスパンドにより接着剤層をチップに沿って分断する際に用いる、エキスパンド可能な半導体ウェハ加工用テープが開示されている(例えば、特許文献6参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2002-226796号公報
【文献】特開2002-158276号公報
【文献】特開平02-032181号公報
【文献】国際公開第04/109786号
【文献】特開2003-338467号公報
【文献】特開2011-216508号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、ダイシング・ダイボンディング一体型接着シートにおけるダイボンディングフィルムは、通常、柔軟で伸縮性を有するため、基材フィルムをエキスパンドする際に、ダイボンディングフィルムが分断され難いという問題がある。
【0008】
そこで、本発明は、割断性に優れるダイボンディングフィルム及びこれを用いた半導体装置の製造方法を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
従来、ダイシング・ダイボンディング一体型接着シートの割断性を向上させるためには、ダイシングテープの基材フィルムの熱収縮による応力の増大を調整することが知られていた(例えば、上記特許文献6を参照)。このような状況下において、本発明者らが鋭意検討したところ、ダイボンディングフィルムの破断伸びが割断性に影響することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
本発明の一側面は、半導体装置の製造方法に関する。当該半導体装置の製造方法は、-15℃における破断伸びが5%以下であるダイボンディングフィルムからなる接着剤層と、粘着剤層と、基材フィルムとをこの順に備えるダイシング・ダイボンディング一体型接着シートを準備する工程と、半導体ウェハを準備し、半導体ウェハに対して改質層を形成する工程と、ダイシング・ダイボンディング一体型接着シートの接着剤層の面を、半導体ウェハに貼り付ける工程と、基材フィルムをエキスパンドすることによって、半導体ウェハ及び接着剤層を個片化し、接着剤層付き半導体チップを作製する工程と、接着剤層付き半導体チップを粘着剤層からピックアップする工程と、接着剤層付き半導体チップを、接着剤層を介して半導体チップ搭載用支持基板に接着する工程とを備える。ダイボンディングフィルムは、エポキシ樹脂と、エポキシ樹脂硬化剤と、エポキシ基含有(メタ)アクリル共重合体とを含有し、エポキシ樹脂及びエポキシ樹脂硬化剤の合計の含有量は、エポキシ樹脂、エポキシ樹脂硬化剤、及びエポキシ基含有(メタ)アクリル共重合体の総量を基準として、10質量%以上30質量%未満である。
【0011】
ダイボンディングフィルムは、当該ダイボンディングフィルムを配線基板に熱圧着し、170℃で3時間硬化させた後のダイボンディングフィルムの硬化物において、250℃のダイシェア強度が0.7MPa以上であってよい。
【0012】
ダイボンディングフィルムは、シランカップリング剤をさらに含有していてもよい。
【0013】
シランカップリング剤は、下記一般式(1)で表されるシランカップリング剤であってよい。
【化1】
[一般式(1)中、Rはアルコキシ基であり、nは1~3の整数である。]
【0014】
ダイボンディングフィルムは、無機フィラーをさらに含有していてもよい。無機フィラーの含有量は、ダイボンディングフィルム全量を基準として、25質量%以上であってよい。
【0015】
エポキシ基含有(メタ)アクリル共重合体の含有量は、ダイボンディングフィルム全量を基準として、60質量%以下であってよい。
【0016】
本発明の他の一側面は、半導体チップと半導体チップを搭載する支持部材とを接着するためのダイボンディングフィルムに関する。当該ダイボンディングフィルムは、-15℃における破断伸びが5%以下である。また、当該ダイボンディングフィルムは、エポキシ樹脂と、エポキシ樹脂硬化剤と、エポキシ基含有(メタ)アクリル共重合体とを含有し、エポキシ樹脂及びエポキシ樹脂硬化剤の合計の含有量は、エポキシ樹脂、エポキシ樹脂硬化剤、及びエポキシ基含有(メタ)アクリル共重合体の総量を基準として、10質量%以上30質量%未満である。
【0017】
本発明の他の一側面は、ダイシング・ダイボンディング一体型接着シートに関する。当該ダイシング・ダイボンディング一体型接着シートは、上述のダイボンディングフィルムからなる接着剤層と、粘着剤層と、基材フィルムとをこの順に備える。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、割断性に優れるダイボンディングフィルム及びこれを用いた半導体装置の製造方法が提供される。いくつかの形態に係るダイボンディングフィルムは、ダイシェア強度及び埋込性の点においても優れる。また、本発明によれば、このようなダイボンディングフィルムを用いたダイシング・ダイボンディング一体型接着シートが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、半導体装置の一実施形態を示す模式断面図である。
図2図2は、半導体装置の製造方法の一実施形態を説明するための模式断面図であり、図2(a)、(b)、(c)、(d)、及び(e)は、各工程を示す模式断面図である。
図3図3は、半導体装置の製造方法の一実施形態を説明するための模式断面図であり、図3(f)、(g)、(h)、及び(i)は、各工程を示す模式断面図である。
図4図4は、ダイシング・ダイボンディング一体型接着シートの一実施形態を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を適宜参照しながら、本発明の実施形態について説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。以下の実施形態において、その構成要素(ステップ等も含む)は、特に明示した場合を除き、必須ではない。各図における構成要素の大きさは概念的なものであり、構成要素間の大きさの相対的な関係は各図に示されたものに限定されない。
【0021】
本明細書における数値及びその範囲についても同様であり、本発明を制限するものではない。本明細書において「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。本明細書中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本明細書中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
【0022】
本明細書において、(メタ)アクリレートは、アクリレート又はそれに対応するメタクリレートを意味する。(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリル共重合体等の他の類似表現についても同様である。
【0023】
[半導体装置]
図1は、半導体装置の一実施形態を示す模式断面図である。図1に示す半導体装置100は、半導体チップWaが、接着剤層30a(又は接着剤層30aの硬化物)を介して、半導体チップ搭載用支持基板60に接着されている。半導体チップWaは、ワイヤーボンド70によって半導体チップ搭載用支持基板60と電気的に接続されている。半導体チップWaは、半導体チップ搭載用支持基板60の表面60a上で、樹脂封止材80によって樹脂封止されている。半導体チップ搭載用支持基板60の表面60aと反対側の面に、外部基板(マザーボード)との電気的な接続用として、はんだボール90が形成されていてもよい。
【0024】
半導体チップとしては、例えば、IC、LSI、VLSI等の一般の半導体チップを使用することができる。
【0025】
半導体チップ搭載用支持基板としては、例えば、ダイパットを有するリードフレーム、セラミック基板、有機基板等を基板材質に限定されることなく使用することができる。セラミック基板としては、例えば、アルミナ基板、窒化アルミ基板等が挙げられる。有機基板としては、例えば、ガラスクロスにエポキシ樹脂を含漬させたFR-4基板、ビスマレイミド-トリアジン樹脂を含漬させたBT基板、ポリイミドフィルムを基材として用いたポリイミドフィルム基板などが挙げられる。
【0026】
半導体チップ搭載用支持基板に設けられる配線は、片面配線、両面配線、又は多層配線のいずれかであってもよく、必要に応じて、半導体チップ搭載用支持基板に電気的に接続された貫通孔又は非貫通孔が設けられていてもよい。さらに、配線が半導体装置の外部に配置される場合、保護樹脂層が設けられていてもよい。
【0027】
[半導体装置(半導体パッケージ)の製造方法]
図2及び図3は、半導体装置の製造方法の一実施形態を説明するための模式断面図である。一実施形態の半導体装置の製造方法は、-15℃における破断伸びが5%以下であるダイボンディングフィルムからなる接着剤層と、粘着剤層と、基材フィルムとをこの順に備えるダイシング・ダイボンディング一体型接着シートを準備する工程(ダイシング・ダイボンディング一体型接着シート準備工程)と、半導体ウェハを準備し、半導体ウェハに対して改質層を形成する工程(改質層形成工程)と、ダイシング・ダイボンディング一体型接着シートの接着剤層の面を、半導体ウェハに貼り付ける工程(ウェハラミネート工程)と、基材フィルムをエキスパンドすることによって、半導体ウェハ及び接着剤層を個片化し、接着剤層付き半導体チップを作製する工程(ダイシング工程)と、接着剤層付き半導体チップを粘着剤層からピックアップする工程(ピックアップ工程)と、接着剤層付き半導体チップを、接着剤層を介して支持基板に接着する工程(半導体チップ接着工程)とを備える。
【0028】
<ダイシング・ダイボンディング一体型接着シート準備工程>
図4は、ダイシング・ダイボンディング一体型接着シートの一実施形態を示す模式断面図である。ダイシング・ダイボンディング一体型接着シート1は、接着剤層30と、粘着剤層20と、基材フィルム10とをこの順に備える。
【0029】
(接着剤層)
接着剤層30を構成するダイボンディングフィルムは、熱硬化性であり、半硬化(Bステージ)状態を経て、硬化処理後に完全硬化物(Cステージ)状態となり得る。
【0030】
ダイボンディングフィルムは、-15℃における破断伸びが5%以下である。このようなダイボンディングフィルムを用いることによって、エキスパンドする際に、ダイボンディングフィルムが割断され易くなる傾向にある。ダイボンディングフィルムの-15℃における破断伸びは、4.5%以下、4%以下、又は3.5%以下であってもよい。ダイボンディングフィルムの-15℃における破断伸びは、例えば、0.5%以上であってよい。なお、本明細書において、-15℃における破断伸びは、実施例に記載の方法によって測定される数値を意味する。
【0031】
ダイボンディングフィルムは、エポキシ樹脂(以下、「(A)成分」という場合がある。)と、エポキシ樹脂硬化剤(以下、「(B)成分」という場合がある。)と、エポキシ基含有(メタ)アクリル共重合体(以下、「(C)成分」という場合がある。)とを含有する。ダイボンディングフィルムは、無機フィラー(以下、「(D)成分」という場合がある。)をさらに含有していてもよく、また、シランカップリング剤(以下、「(E)成分」という場合がある。)をさらに含有していてもよい。これらの成分の種類及び含有量を調整することによって、ダイボンディングフィルムの-15℃における破断伸びを調整することができる。
【0032】
(A)成分:エポキシ樹脂
(A)成分は、加熱等によって、分子間で三次元的な結合を形成し硬化する性質を有する成分であり、硬化後に接着作用を示す成分である。(A)成分は、分子内にエポキシ基を有するものであれば、特に制限なく用いることができる。(A)成分は、分子内に2以上のエポキシ基を有していてもよい。
【0033】
(A)成分としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールFノボラック型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、トリアジン骨格含有エポキシ樹脂、フルオレン骨格含有エポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、キシリレン型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、多官能フェノール類、アントラセン等の多環芳香族類のジグリシジルエーテル化合物などが挙げられる。これらは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、(A)成分は、フィルムのタック性、柔軟性等の観点から、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、又はジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂であってもよい。
【0034】
(A)成分のエポキシ当量は、特に制限されないが、90~300g/eq、110~290g/eq、又は130~280g/eqであってよい。(A)成分のエポキシ当量がこのような範囲にあると、ダイボンディングフィルムの破断伸びをより低く調整することができる傾向にある。結果として、最終的に得られるダイボンディングフィルムは、応力がより集中し易くなって、エキスパンドする際に分断し易くなる傾向にある。
【0035】
(A)成分の含有量は、ダイボンディングフィルム全量を基準として、1~30質量%であってよい。(A)成分の含有量が、ダイボンディングフィルム全量を基準として、1質量%以上であると、フィルムの架橋度が大きくなり、バルク強度が向上し、基板からの剥離が起こり難くなる傾向にあり、30質量%以下であると、耐熱履歴性及びフィルムの保存安定性が向上する傾向にある。(A)成分の含有量は、ダイボンディングフィルム全量を基準として、2質量%以上、3質量%以上、又は5質量%以上であってもよく、20質量%以下、15質量%以下、又は10質量%以下であってもよい。
【0036】
(B)成分:エポキシ樹脂硬化剤
(B)成分は、例えば、エポキシ樹脂の硬化剤となり得るフェノール樹脂であってよい。フェノール樹脂は、分子内にフェノール性水酸基を有するものであれば特に制限なく用いることができる。フェノール樹脂としては、例えば、フェノール、クレゾール、レゾルシン、カテコール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、フェニルフェノール、アミノフェノール等のフェノール類及び/又はα-ナフトール、β-ナフトール、ジヒドロキシナフタレン等のナフトール類とホルムアルデヒド等のアルデヒド基を有する化合物とを酸性触媒下で縮合又は共縮合させて得られるノボラック型フェノール樹脂、アリル化ビスフェノールA、アリル化ビスフェノールF、アリル化ナフタレンジオール、フェノールノボラック、フェノール等のフェノール類及び/又はナフトール類とジメトキシパラキシレン又はビス(メトキシメチル)ビフェニルから合成されるフェノールアラルキル樹脂、ナフトールアラルキル樹脂、ビフェニルアラルキル型フェノール樹脂、フェニルアラルキル型フェノール樹脂などが挙げられる。これらは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0037】
フェノール樹脂の水酸基当量は、40~300g/eq、70~290g/eq、又は100~280g/eqであってよい。フェノール樹脂の水酸基当量が40g/eq以上であると、フィルムの貯蔵弾性率がより向上する傾向にあり、300g/eq以下であると、発泡、アウトガス等の発生による不具合を防ぐことが可能となる。
【0038】
(A)成分のエポキシ当量とフェノール樹脂の水酸基当量との比((A)成分のエポキシ当量/フェノール樹脂の水酸基当量)は、硬化性の観点から、0.30/0.70~0.70/0.30、0.35/0.65~0.65/0.35、0.40/0.60~0.60/0.40、又は0.45/0.55~0.55/0.45であってよい。当該当量比が0.30/0.70以上であると、より充分な硬化性が得られる傾向にある。当該当量比が0.70/0.30以下であると、粘度が高くなり過ぎることを防ぐことができ、より充分な流動性を得ることができる。
【0039】
(B)成分の含有量は、ダイボンディングフィルム全量を基準として、1~30質量%であってよい。(B)成分の含有量が、ダイボンディングフィルム全量を基準として、1質量%以上であると、フィルムの架橋度が大きくなり、バルク強度が向上し、基板からの剥離が起こり難くなる傾向にあり、30質量%以下であると、耐熱履歴性及びフィルムの保存安定性が向上する傾向にある。(B)成分の含有量は、ダイボンディングフィルム全量を基準として、2質量%以上、3質量%以上、又は5質量%以上であってもよく、20質量%以下、15質量%以下、又は10質量%以下であってもよい。
【0040】
(A)成分及び(B)成分の合計の含有量は、ダイボンディングフィルム全量を基準として、25質量%以下であってよい。(A)成分及び(B)成分の合計の含有量は、ダイボンディングフィルム全量を基準として、20質量%以下、18質量%以下、又は15質量%以下であってもよい。(A)成分及び(B)成分の合計の含有量は、ダイボンディングフィルム全量を基準として、3質量%以上、5質量%以上、又は7質量%以上であってもよい。
【0041】
(C)成分:エポキシ基含有(メタ)アクリル共重合体
(メタ)アクリル共重合体とは、(メタ)アクリル酸エステルに由来する構成単位を含むポリマーを意味する。エポキシ基含有(メタ)アクリル共重合体は、構成単位として、エポキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステルに由来する構成単位を含むポリマーである。また、(メタ)アクリル共重合体は、(メタ)アクリル酸エステルとアクリルニトリルとの共重合体等のアクリルゴムであってもよい。これらは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0042】
(C)成分の市販品としては、例えば、「SG-70L」、「SG-708-6」、「WS-023 EK30」、「SG-280 EK23」、「HTR-860P-3」、「HTR-860P-3CSP」、「HTR-860P-3CSP-3DB」(いずれもナガセケムテックス株式会社製)が挙げられる。
【0043】
(C)成分のガラス転移温度(Tg)は、-50~50℃又は-30~20℃であってよい。アクリル樹脂のTgが-50℃以上であると、ダイボンディングフィルムのタック性が低くなるため取り扱い性がより向上する傾向にある。アクリル樹脂のTgが50℃以下であると、ダイボンディングフィルムを形成する際の接着剤組成物の流動性をより充分に確保できる傾向にある。ここで、(C)成分のガラス転移温度(Tg)は、DSC(熱示差走査熱量計)(例えば、株式会社リガク製「Thermo Plus 2」)を用いて測定した値を意味する。
【0044】
(C)成分の重量平均分子量(Mw)は、5万~120万、10万~120万、又は30万~90万であってよい。(C)成分の重量平均分子量が5万以上であると、成膜性により優れる傾向にある。(C)成分の重量平均分子量が120万以下であると、ダイボンディングフィルムを形成する際の接着剤組成物の流動性により優れる傾向にある。なお、重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定し、標準ポリスチレンによる検量線を用いて換算した値である。
【0045】
(C)成分の重量平均分子量(Mw)の測定装置、測定条件等は、以下のとおりである。
ポンプ:L-6000(株式会社日立製作所製)
カラム:ゲルパック(Gelpack)GL-R440(日立化成株式会社製)、ゲルパック(Gelpack)GL-R450(日立化成株式会社製)、及びゲルパックGL-R400M(日立化成株式会社製)(各10.7mm(直径)×300mm)をこの順に連結したカラム
溶離液:テトラヒドロフラン(以下、「THF」という。)
サンプル:試料120mgをTHF5mLに溶解させた溶液
流速:1.75mL/分
【0046】
(A)成分及び(B)成分の合計の含有量は、(A)成分、(B)成分、及び(C)成分の総量を基準として、10質量%以上30質量%未満である。(A)成分及び(B)成分の合計の含有量が、(A)成分、(B)成分、及び(C)成分の総量を基準として、30質量%未満であると、ダイボンディングフィルムの破断伸びを低く調整することができる傾向にある。結果として、最終的に得られるダイボンディングフィルムは、応力がより集中し易くなって、エキスパンドする際に分断し易くなる傾向にある。(A)成分及び(B)成分の合計の含有量が、(A)成分、(B)成分、及び(C)成分の総量を基準として、10質量%以上であると、ダイボンディングフィルムを配線基板に熱圧着し、170℃で3時間硬化させた後のダイボンディングフィルムの硬化物において、より高いダイシェア強度を示す傾向にある。(A)成分及び(B)成分の合計の含有量は、(A)成分、(B)成分、及び(C)成分の総量を基準として、28質量%以下、25質量%以下、22質量%以下、又は20質量%以下であってもよく、12質量%以上又は15質量%以上であってもよい。
【0047】
(C)成分の含有量は、(A)成分、(B)成分、及び(C)成分の総量を基準として、70質量%を超え90質量%以下であってよい。(C)成分の含有量が、(A)成分、(B)成分、及び(C)成分の総量を基準として、70質量%を超えると、ダイボンディングフィルムを配線基板に熱圧着し、モールドした際の基板の段差が埋め込み易くなる傾向にある。(C)成分の含有量が、(A)成分、(B)成分、及び(C)成分の総量を基準として、90質量%以下であると、ダイボンディングフィルムの破断伸びを低く調整することができる傾向にある。結果として、最終的に得られるダイボンディングフィルムは、応力がより集中し易くなって、エキスパンドする際に分断し易くなる傾向にある。(C)成分の含有量は、(A)成分、(B)成分、及び(C)成分の総量を基準として、72質量%以上、75質量%以上、78質量%以上、又は80質量%以上であってもよく、88質量%以下又は85質量%以下であってもよい。
【0048】
(C)成分の含有量は、ダイボンディングフィルム全量を基準として、60質量%以下であってよい。(C)成分の含有量が、ダイボンディングフィルム全量を基準として、60質量%以下であると、ダイボンディングフィルムの破断伸びをより低く調整することができる傾向にある。結果として、最終的に得られるダイボンディングフィルムは、応力がより集中し易くなって、エキスパンドする際に分断し易くなる傾向にある。(C)成分の含有量は、ダイボンディングフィルム全量を基準として、58質量%以下であってもよい。(C)成分の含有量は、ダイボンディングフィルム全量を基準として、35質量%以上、40質量%以上、又は45質量%以上であってもよい。
【0049】
(D)成分:無機フィラー
(D)成分としては、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、ホウ酸アルミウィスカ、窒化ホウ素、結晶性シリカ、非晶性シリカ等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらのうち、(D)成分は、シリカであってよい。
【0050】
(D)成分の平均粒径が比較的大きいと、ダイボンディングフィルムの破断伸びをより低く調整することができる傾向にある。結果として、最終的に得られるダイボンディングフィルムは、応力がより集中し易くなって、エキスパンドする際に分断し易くなる傾向にある。(D)成分の平均粒径は、0.1~1.0μmであってよい。(D)成分の平均粒径は、0.2μm以上、0.3μm以上、又は0.4μm以上であってよく、0.9μm以下、0.8μm以下、又は0.7μm以下であってよい。ここで、平均粒径は、BET比表面積から換算することによって求められる値を意味する。
【0051】
(D)成分の形状は、球状であってよい。なお、球状は、真球状を含む概念である。
【0052】
(D)成分は、その表面と溶剤、他の成分等との相溶性、接着強度の観点から表面処理剤によって表面処理されていてよい。表面処理剤としては、例えば、シラン系カップリング剤等が挙げられる。シラン系カップリング剤の官能基としては、例えば、ビニル基、(メタ)アクリロイル基、エポキシ基、メルカプト基、アミノ基、ジアミノ基、アルコキシ基、エトキシ基等が挙げられる。
【0053】
(D)成分の含有量は、ダイボンディングフィルム全量を基準として、25質量%以上であってよい。(D)成分の含有量が、ダイボンディングフィルム全量を基準として、25質量%以上であると、ダイボンディングフィルムの破断伸びをより低く調整することができる傾向にある。結果として、最終的に得られるダイボンディングフィルムは、応力がより集中し易くなって、エキスパンドする際に分断し易くなる傾向にある。(D)成分の含有量は、ダイボンディングフィルム全量を基準として、26質量%以上又は28質量%以上であってもよい。(D)成分の含有量は、ダイボンディングフィルム全量を基準として、50質量%以下、45質量%以下、又は40質量%以下であってもよい。また、ダイボンディングフィルムが、(D)成分を含有する場合、(A)成分、(B)成分、及び(C)成分の合計の含有量は、ダイボンディングフィルム全量を基準として、75質量%以下、74質量%以下、又は72質量%以下であってよく、50質量%以上、55質量%以上、又は60質量%以上であってよい。
【0054】
(C)成分に対する(D)成分の質量比((D)成分の質量/(C)成分の質量)は、0.30以上、0.35以上、0.40以上、0.45以上、又は0.50以上であってよい。(C)成分に対する(D)成分の質量比((D)成分の質量/(C)成分の質量)が0.30以上であると、ダイボンディングフィルムの破断伸びを低く調整することができる傾向にある。結果として、最終的に得られるダイボンディングフィルムは、応力がより集中し易くなって、エキスパンドする際に分断し易くなる傾向にある。(C)成分に対する(D)成分の質量比((D)成分の質量/(C)成分の質量)は、例えば、0.80以下、0.70以下、又は0.60以下であってよい。
【0055】
(E)成分:シランカップリング剤
ダイボンディングフィルムが(E)成分を含有することによって、異種成分間の界面結合をより高めることができる傾向にある。(E)成分は、下記一般式(1)で表されるシランカップリング剤であってよい。
【0056】
【化2】
【0057】
一般式(1)中、Rは、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基であり、nは1~3の整数である。
【0058】
一般式(1)で表されるシランカップリング剤としては、例えば、アニリノプロピルトリメトキシシラン、アニリノプロピルトリエトキシシラン、アニリノエチルトリメトキシシラン、アニリノエチルトリエトキシシラン、アニリノメチルトリメトキシシラン、アニリノメチルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0059】
(E)成分は、一般式(1)で表されるシランカップリング剤以外のシランカップリング剤を含んでいてもよい。このようなシランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β-メトキシエトキシ)シラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、γ-(N,N-ジメチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-(N,N-ジエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-(N,N-ジブチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-(N-メチル)アニリノプロピルトリメトキシシラン、γ-(N-エチル)アニリノプロピルトリメトキシシラン、γ-(N,N-ジメチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-(N,N-ジエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-(N,N-ジブチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-(N-メチル)アニリノプロピルトリエトキシシラン、γ-(N-エチル)アニリノプロピルトリエトキシシラン、γ-(N,N-ジメチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ-(N,N-ジエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ-(N,N-ジブチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ-(N-メチル)アニリノプロピルメチルジメトキシシラン、γ-(N-エチル)アニリノプロピルメチルジメトキシシラン、N-(トリメトキシシリルプロピル)エチレンジアミン、N-(ジメトキシメチルシリルイソプロピル)エチレンジアミン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、γ-クロロプロピルトリメトキシシラン、ヘキサメチルジシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ-ウレイドプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。これらは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0060】
(E)成分の含有量は、ダイボンディングフィルム全量を基準として、0.01~3.0質量%であってよい。(E)成分の含有量がこのような範囲にあると、異種成分間の界面結合をより高めることができる傾向にある。
【0061】
(E)成分の総量に対する一般式(1)で表されるシランカップリング剤の質量比(一般式(1)で表されるシランカップリング剤の質量/(E)成分の総質量)は、0.5以上、0.6以上、0.7以上、0.8以上、又は0.85以上であってよい。
【0062】
ダイボンディングフィルムは、硬化促進剤(以下、「(F)成分」という場合がある。)をさらに含有していてもよい。
【0063】
(F)成分:硬化促進剤
ダイボンディングフィルムが(F)成分を含有することによって、接着性と工程時間の短縮とをより両立することができる傾向にある。(F)成分としては、例えば、イミダゾール類及びその誘導体、有機リン系化合物、第二級アミン類、第三級アミン類、第四級アンモニウム塩等が挙げられる。これらは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、反応性の観点から(F)成分はイミダゾール類及びその誘導体であってよい。
【0064】
イミダゾール類としては、例えば、2-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-メチルイミダゾール等が挙げられる。これらは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0065】
(F)成分の含有量は、ダイボンディングフィルム全量を基準として、0.001~1質量%であってよい。(F)成分の含有量がこのような範囲にあると、接着性と工程時間の短縮とを両立しつつ保存安定性を向上させることができる傾向にある。
【0066】
その他の成分
ダイボンディングフィルムは、その他の成分として、抗酸化剤、レオロジーコントロール剤、レベリング剤等をさらに含有していてもよい。これらの成分の含有量は、ダイボンディングフィルム全量を基準として、0.01~3質量%であってよい。
【0067】
ダイボンディングフィルムは、上述の(A)成分~(C)成分、並びに、必要に応じて、(D)成分~(F)成分及びその他の成分を含有する接着剤組成物をフィルム状に形成することによって作製することができる。このようなダイボンディングフィルムは、接着剤組成物を支持フィルムに塗布することによって形成することができる。接着剤組成物は、溶剤で希釈された接着剤組成物のワニスとして用いてもよい。接着剤組成物のワニスを用いる場合は、接着剤組成物のワニスを支持フィルムに塗布し、溶剤を加熱乾燥して除去することによってダイボンディングフィルムを形成することができる。
【0068】
溶剤は、(D)成分以外の成分を溶解できるものであれば特に制限されない。溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、メシチレン、クメン、p-シメン等の芳香族炭化水素;ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素;メチルシクロヘキサンなどの環状アルカン;テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン等の環状エーテル;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノン等のケトン;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、γ-ブチロラクトン等のエステル;エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等の炭酸エステル;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン等のアミドなどが挙げられる。これらは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらのうち、溶剤は、溶解性及び沸点の観点から、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、又はシクロヘキサノンであってもよい。接着剤組成物のワニス中の固形成分濃度は、接着剤組成物のワニスの全質量を基準として、10~80質量%であってよい。
【0069】
接着剤組成物のワニスは、(A)成分~(C)成分、並びに、必要に応じて、(D)成分~(F)成分、その他の成分、及び溶剤を混合、混練することによって調製することができる。なお、各成分の混合、混練の順序は特に制限されず、適宜設定することができる。混合及び混練は、通常の撹拌機、らいかい機、三本ロール、ボールミル、ビーズミル等の分散機を適宜、組み合わせて行うことができる。接着剤組成物のワニスを調製した後、真空脱気等によってワニス中の気泡を除去してもよい。
【0070】
支持フィルムとしては、特に制限はなく、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド等のフィルムが挙げられる。支持フィルムの厚みは、例えば、10~200μm又は20~170μmであってよい。
【0071】
接着剤組成物のワニスを支持フィルムに塗布する方法としては、公知の方法を用いることができ、例えば、ナイフコート法、ロールコート法、スプレーコート法、グラビアコート法、バーコート法、カーテンコート法等が挙げられる。加熱乾燥の条件は、使用した溶剤が充分に揮発する条件であれば特に制限はないが、例えば、50~200℃で0.1~90分間であってもよい。
【0072】
ダイボンディングフィルムの厚みは、用途に合わせて、適宜調整することができる。ダイボンディングフィルムの厚みは、3~40μm、5~35μm、又は7~30μmであってよい。
【0073】
ダイボンディングフィルムは、当該ダイボンディングフィルムを配線基板に熱圧着し、170℃で3時間硬化させた後のダイボンディングフィルムの硬化物において、250℃のダイシェア強度が0.7MPa以上であってよい。250℃のダイシェア強度が0.7MPa以上であると、基板搬送時にダイボンディングフィルムと基板との間で剥離が発生し、モールド時に半導体ウェハとダイボンディングフィルムとの間に異物が混入することを防ぐことができる。250℃のダイシェア強度は、0.8MPa以上、1.0MPa以上、又は1.2MPa以上であってもよい。250℃のダイシェア強度の上限は、特に制限されてないが、例えば、3MPa以下であってよい。
【0074】
得られたダイボンディングフィルムは、接着剤層30として、そのまま使用することができる。
【0075】
(粘着剤層及び基材フィルム)
粘着剤層20及び基材フィルム10は、基材フィルム10上に粘着剤層20を設けた積層体、すなわち、ダイシングテープを用いることができる。
【0076】
粘着剤層20は、高エネルギー線又は熱によって硬化する(すなわち、粘着力を制御できる)層、高エネルギー線によって硬化する層、又は紫外線によって硬化する層であってよい。粘着剤層を構成する粘着剤は、ダイシングテープ分野で一般的に使用される粘着剤を使用することができる。粘着剤は、高エネルギー線の照射によって、接着剤層30に対する粘着力が低下する粘着剤を適宜選択して用いることができる。
【0077】
基材フィルム10は、ダイシングテープ分野で一般的に使用される基材フィルムを使用することができる。基材フィルム10の基材は、ダイシング工程においてエキスパンドすること可能であれば特に制限されないが、例えば、結晶性ポリプロピレン、非晶性ポリプロピレン、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、低密度直鎖ポリエチレン、ポリブテン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸エステル(ランダム、交互)共重合体、エチレン-ブテン共重合体、エチレン-ヘキセン共重合体、ポリウレタン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリアミド、全芳香族ポリアミド、ポリフェニルスルフイド、アラミド(紙)、ガラス、ガラスクロス、フッ素樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、セルロース系樹脂、シリコーン樹脂などが挙げられる。これらの中でも、基材フィルム10の基材は、ヤング率、応力緩和性、融点等の特性の観点から、ポリプロピレン、ポリエチレン-ポリプロピレンランダム共重合体、ポリエチレン-ポリプロピレンブロック共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、又はエチレン-(メタ)アクリル酸共重合体であってもよい。
【0078】
ダイボンディングフィルムとダイシングテープの粘着剤層とを貼り合わせることによって、接着剤層30と、粘着剤層20と、基材フィルム10とをこの順に備える、ダイシング・ダイボンディング一体型接着シート1を得ることができる。
【0079】
<改質層形成工程>
まず、厚みH1の半導体ウェハW1を用意する。改質層を形成する半導体ウェハW1の厚みH1は、35μmを超えていてよい。続いて、半導体ウェハW1の一方の主面上に保護フィルム2を貼り付ける(図2(a)参照)。保護フィルム2が貼り付けられる面は、半導体ウェハW1の回路面であってよい。保護フィルム2は、半導体ウェハの裏面研削(バックグラインド)に使用されるバックグラインドテープであってよい。続いて、半導体ウェハW1内部にレーザー光を照射して改質層4を形成し(図2(b)参照)、半導体ウェハW1の保護フィルム2が張り付けられた面とは反対側(裏面側)に対してバックグラインディング(裏面研削)及びポリッシング(研磨)を行うことによって、改質層4を有する半導体ウェハW2を作製する(図2(c)参照)。得られる半導体ウェハW2の厚みH2は、35μm以下であってよい。
【0080】
<ウェハラミネート工程>
次いで、ダイシング・ダイボンディング一体型接着シート1の接着剤層30を所定の装置に配置する。続いて、半導体ウェハW2の主面Wsに、接着剤層30を介してダイシング・ダイボンディング一体型接着シート1を貼り付け(図2(d)参照)、半導体ウェハW2の保護フィルム2を剥離する(図2(e)参照)。
【0081】
<ダイシング工程>
次いで、冷却条件下において、基材フィルム10をエキスパンドすることによって、改質層4で半導体ウェハW2を分断させる。これによって、半導体ウェハW2及び接着剤層30を個片化し、接着剤層付き半導体チップが作製される(図3(f)参照)。基材フィルム10をエキスパンドする条件は、0℃以下の冷却条件下であってよい。
【0082】
<紫外線照射工程>
粘着剤層20に対しては、必要に応じて、紫外線を照射してもよい(図3(g)参照)。粘着剤層20における粘着剤が紫外線で硬化するものである場合、当該粘着剤層20が硬化し、粘着剤層20と接着剤層30との間の接着力を低下させることができる。紫外線照射においては、波長200~400nmの紫外線を用いてもよい。紫外線照射条件は、照度:30~240mW/cmで照射量200~500mJとなるように調整してもよい。
【0083】
<ピックアップ工程>
次いで、基材フィルム10をエキスパンドすることによって、ダイシングされた接着剤層付き半導体チップ50を互いに離間させつつ、基材フィルム10側からニードル42で突き上げ、接着剤層付き半導体チップ50を吸引コレット44で吸引して、粘着剤硬化物層20acからピックアップする(図3(h)参照)。なお、接着剤層付き半導体チップ50は、半導体チップWaと接着剤層30aとを有する。半導体チップWaは半導体ウェハW2がダイシングによって分割されたものであり、接着剤層30aは接着剤層30がダイシングによって分割されたものである。粘着剤硬化物層20acは粘着剤層が硬化した粘着剤硬化物層がダイシングによって分割されたものである。粘着剤硬化物層20acは接着剤層付き半導体チップ50をピックアップする際に基材フィルム10上に残存し得る。ピックアップ工程では、必ずしもエキスパンドする必要はないが、エキスパンドすることによってピックアップ性をより向上させることができる。
【0084】
<半導体チップ接着工程>
次いで、接着剤層付き半導体チップ50をピックアップした後、接着剤層付き半導体チップ50を、熱圧着によって、接着剤層30aを介して半導体チップ搭載用支持基板60に接着する(図3(i)参照)。半導体チップ搭載用支持基板60には、複数の接着剤層付き半導体チップ50を接着してもよい。接着剤層30aは、例えば、120~150℃で、0.5~6時間で加熱して硬化させてもよい。
【0085】
図1に示す半導体装置は、上記工程と、半導体チップWaと半導体チップ搭載用支持基板60とをワイヤーボンド70によって電気的に接続する工程と、半導体チップ搭載用支持基板60の表面60a上に、樹脂封止材80を用いて半導体チップWaを樹脂封止する工程とをさらに備える製造方法によって製造することができる。
【0086】
[ダイボンディングフィルム]
一実施形態のダイボンディングフィルムは、半導体チップと前記半導体チップを搭載する支持部材とを接着するためのものである。当該ダイボンディングフィルムは、-15℃における破断伸びが5%以下である。当該ダイボンディングフィルムは、エポキシ樹脂と、エポキシ樹脂硬化剤と、エポキシ基含有(メタ)アクリル共重合体とを含有し、エポキシ樹脂及びエポキシ樹脂硬化剤の合計の含有量は、エポキシ樹脂、エポキシ樹脂硬化剤、及びエポキシ基含有(メタ)アクリル共重合体の総量を基準として、10質量%以上30質量%未満である。ダイボンディングフィルムに含まれる成分、含有量等は、上述の接着剤層で例示した成分、含有量等と同様である。したがって、ここでは、重複する説明を省略する。
【0087】
[ダイシング・ダイボンディング一体型接着シート]
一実施形態のダイシング・ダイボンディング一体型接着シートは、上述のダイボンディングフィルムからなる接着剤層と、粘着剤層と、基材フィルムとをこの順に備える。
【実施例
【0088】
以下、本発明について実施例を挙げてより具体的に説明する。ただし、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0089】
<ダイボンディングフィルムの作製>
以下の手順によって接着剤組成物のワニスを調製した。各成分の種類及び含有量(固形分量)は表1に示すとおりである。まず、(A)エポキシ樹脂、(B)エポキシ樹脂硬化剤、(D)無機フィラー、及び(E)シランカップリング剤を配合し、これにシクロヘキサノンを加えて撹拌した。続いて、(C)エポキシ基含有(メタ)アクリル共重合体及び(F)硬化促進剤を加え、真空脱気することによって、接着剤組成物のワニスを得た。
【0090】
なお、表1中の各成分は以下のとおりである。
【0091】
(A)成分:エポキシ樹脂
(A1)クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製、商品名「YDCN-700-10」、エポキシ当量:210g/eq)
【0092】
(B)成分:エポキシ樹脂硬化剤
(B1)フェノールアラルキル型フェノール樹脂(三井化学株式会社製、商品名「ミレックスXLC-LL」、軟化点:77℃、水酸基当量:176g/eq)
(B2)ビフェニルアラルキル型フェノール樹脂(日本化薬株式会社製、商品名「KAYAHARD GPH-103」、軟化点:99~106℃、水酸基当量:220~240g/eq)
【0093】
(C)成分:エポキシ基含有(メタ)アクリル共重合体
(C1)アクリルゴム(ナガセケムテックス株式会社製、商品名「HTR-860P-3」、重量平均分子量:80万、ガラス転移点:-13℃、ブチルアクリレート:エチルアクリレート:アクリロニトリル:グリシジルメタクリレート=39.4:29.3:30.3:3.0(質量比))
【0094】
(D)成分:無機フィラー
(D1)シリカフィラー(株式会社アドマテックス製、商品名「SC2050」、平均粒径0.5μm、真球状を含む球状シリカ)
(D2)シリカフィラー(株式会社アドマテックス製、商品名「YA050」、平均粒径0.05μm、真球状を含む球状シリカ)
【0095】
(E)成分:シランカップリング剤
(E1)γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製、商品名「A-189」)
(E2)3-(N-フェニル)アミノプロピルトリメトキシシラン(アニリノプロピルトリメトキシシラン)(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製、商品名「Y9669」、一般式(1)において、R=すべてメトキシ基、n=3のシランカップリング剤)
(E3)アニリノメチルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製、商品名「X12-1191」、一般式(1)において、R=すべてメトキシ基、n=1のシランカップリング剤)
【0096】
(F)成分:硬化促進剤
(F1)1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール(四国化成工業株式会社製、商品名「キュアゾール2PZ-CN」)
【0097】
次に、得られた接着剤組成物のワニスを、支持フィルムである厚み38μmの離型処理を施したポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上に塗布した。塗布したワニスを、90℃で5分間及び130℃で5分間加熱乾燥した。このようにして、支持フィルム上に、半硬化(Bステージ)状態にある表1に示す厚みを有する実施例1~3及び比較例1、2のダイボンディングフィルムを得た。
【0098】
<-15℃における破断伸びの測定>
実施例1~3及び比較例1、2のダイボンディングフィルムを、それぞれ幅10mm、長さ100mmに切り出し、短冊状の破断伸び測定用サンプルを作製した。測定用サンプルの支持フィルムを剥離除去した後、テンシロン(株式会社島津製作所製、商品名「UTM-III-500」)に治具間の距離が40mmとなるようにセットした。その後、-15℃まで冷却し、速度50mm/分で引っ張りながらフィルム長さを測定し、フィルムが破断した時点におけるフィルム長さを読み取った。破断した時点におけるフィルム長さ及び初期のフィルム長さ(40mm)から、以下の式に基づき、破断伸びを算出した。結果を表1に示す。
破断伸び(%)=(破断した時点におけるフィルム長さ-初期のフィルム長さ(40mm))/初期のフィルム長さ(40mm)×100
【0099】
<ダイシング・ダイボンディング一体型接着シートの作製>
アイオノマー系樹脂を含む基材フィルム(厚み:100μm、直径:370mm)に紫外線硬化型粘着剤(厚み:10μm)を塗布することによって、粘着剤層と基材フィルムとの積層体であるダイシングテープを作製した。次いで、実施例1~3及び比較例1、2の支持フィルム付きダイボンディングフィルム(厚み:表1、直径:312mm)を用意し、ダイシングテープの紫外線硬化型粘着剤とダイボンディングフィルムとが接するように貼り合わせ、接着剤層(ダイボンディングフィルム)、粘着剤層(紫外線硬化型粘着剤)、及び基材フィルムをこの順に備える実施例1~3及び比較例1、2のダイシング・ダイボンディング一体型接着シートを作製した。
【0100】
<割断性の評価>
厚み50μm、直径300mmの半導体ウェハを用意した。ステルスダイシングレーザーソー(株式会社ディスコ製、装置名「DFL7361」)を用いて、4mm×12mmの半導体チップが得られるように、半導体ウェハに改質層を形成した。次いで、バックグラインド装置(株式会社ディスコ製、装置名「DGP8761」)を用いて、バックグラインドを行い、半導体ウェハの厚みを25μmに調整した。実施例1~3及び比較例1、2のダイシング・ダイボンディング一体型接着シートの支持フィルムを剥離し、厚みを25μmに調整した半導体ウェハに、ダイシング・ダイボンディング一体型接着シートの接着剤層(ダイボンディングフィルム)を、ラミネート装置(株式会社ディスコ製、装置名「DFM2800」)を用いて、70℃でラミネートして貼り付けた。ダイシング・ダイボンディング一体型接着シートが貼り付けられた半導体ウェハを固定し、エキスパンド装置(株式会社ディスコ製、装置名「DDS2300」)を用いて、-15℃にてダイシングテープをエキスパンドし、接着剤層及び半導体ウェハを、4mm×12mmの接着剤層付き半導体チップに個片化した。このとき、エキスパンド速度が100mm/秒、エキスパンド量が8mmとなるように、エキスパンド条件を調整した。個片化した半導体チップを観察し、接着剤層及び半導体ウェハの両方が同時に切断されていたものの割合が全体の90%以上であった場合を割断性良好として「A」と評価し、90%未満であった場合を割断性不良として「B」と評価した。結果を表1に示す。
【0101】
<ダイシェア強度の測定>
割断性に優れていた実施例1~3のダイシング・ダイボンディング一体型接着シートを用いて、ダイボンディングフィルムのダイシェア強度を測定した。ダイシェア強度を測定するための半導体チップは、以下のようにして作製した。厚み400μmの半導体ウェハを用意し、実施例1~3のダイシング・ダイボンディング一体型接着シートのダイボンディングフィルム側を、ステージ温度70℃で半導体ウェハにラミネートし、ダイシングサンプルを作製した。フルオートダイサーDFD-6361(株式会社ディスコ製)を用いて、得られたダイシングサンプルを切断した。切断には、2枚のブレードを用いるステップカット方式で行い、ダイシングブレードZH05-SD2000-N1-70-FF、及びZH05-SD4000-N1-70-EE(いずれも株式会社ディスコ製)を用いた。切断条件は、ブレード回転数:4000rpm、切断速度:50mm/秒、チップサイズ:5mm×5mmとした。切断は、半導体ウェハが200μm程度残るように1段階目の切断を行い、ダイシングテープに20μm程度の切り込みが入るように2段階目の切断を行った。次いで、紫外線硬化型粘着剤からなる粘着剤層に紫外線を照射して、粘着剤層を硬化させた。次に、ピックアップ用コレットを用いて、ピックアップすべき半導体チップをピックアップした。ピックアップでは、中央の1本及び四隅の4本の合計5本のピンを用いて突き上げた。ピックアップ条件は、突き上げ速度を20mm/秒とし、突き上げ高さを450μmに設定した。このようにして、実施例1~3のダイボンディングフィルム付き半導体チップを得た。得られた実施例1~3のダイボンディングフィルム付き半導体チップを温度120℃、圧力0.1MPa、時間1.0秒の条件で、配線基板(ソルダーレジスト付き有機基板、ソルダーレジスト:太陽ホールディングス株式会社、商品名「AUS308」、基板上の凹凸:約6μm)に圧着し、170℃で3時間硬化させてダイボンディングフィルムの硬化物のサンプルを作製し、万能ボンドテスター(ノードソン・アドバンスト・テクノロジー株式会社製)を用いて、測定温度250℃で測定した。結果を表1に示す。
【0102】
<埋込性の評価>
割断性に優れていた実施例1~3のダイシング・ダイボンディング一体型接着シートを用いて、ダイボンディングフィルムの埋込性を評価した。厚み75μmの半導体ウェハを用意し、チップサイズが7.5mm×7.5mmとなるように調整した以外は、ダイシェア強度の測定で用いた半導体チップの作製と同様にして、埋込性を評価するための実施例1~3のダイボンディングフィルム付き半導体チップを作製した。実施例1~3のダイボンディングフィルム付き半導体チップを温度120℃、圧力0.15MPa、時間1.0秒の条件で、配線基板(ソルダーレジスト付き有機基板、ソルダーレジスト:太陽ホールディングス株式会社、商品名「AUS308」、基板上の凹凸:約6μm)に貼り付けたサンプルを作製し、当該サンプルをホットプレート上で、150℃、6時間加熱して硬化させた。その後、モールド用封止材(日立化成株式会社製、商品名「CEL-9700HF」)を用いて、半導体チップを175℃、6.9MPa、120秒の条件で封止し、評価用パッケージを作製した。評価用パッケージの配線基板を超音波顕微鏡で観察し、基板上の凹凸の埋込性を確認した。基板上の凹凸に空隙がなかったものを埋込性良好として「A」と評価し、空隙があったものを埋込性不良として「B」と評価した。結果を表1に示す。
【0103】
【表1】
【0104】
-15℃における破断伸びが5%以下である実施例1~3のダイボンディングフィルムは、-15℃における破断伸びが5%を超える比較例1、2のダイボンディングフィルムに比べて、エキスパンドしたときの割断性に優れていた。また、実施例1~3のダイボンディングフィルムは、ダイシェア強度及び埋込性の点においても優れることが判明した。
【0105】
以上のとおり、本発明のダイボンディングフィルムが、割断性に優れることが確認された。
【符号の説明】
【0106】
1…ダイシング・ダイボンディング一体型接着シート、2…保護フィルム、4…改質層、10…基材フィルム、20…粘着剤層、20ac…粘着剤硬化物層、30、30a…接着剤層、42…ニードル、44…吸引コレット、50…接着剤層付き半導体チップ、70…ワイヤーボンド、60…半導体チップ搭載用支持基板、80…樹脂封止材、90…はんだボール、W1、W2…半導体ウェハ、H1…半導体ウェハW1の厚み、H2…半導体ウェハW2の厚み、100…半導体装置。
図1
図2
図3
図4