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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-28
(45)【発行日】2025-05-09
(54)【発明の名称】ロボットのサブアーム機構
(51)【国際特許分類】
   B25J 9/06 20060101AFI20250430BHJP
【FI】
B25J9/06 B
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022077531
(22)【出願日】2022-05-10
(65)【公開番号】P2023166768
(43)【公開日】2023-11-22
【審査請求日】2024-07-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】山本 悦生
(72)【発明者】
【氏名】西野 秀幸
(72)【発明者】
【氏名】稲田 誠生
(72)【発明者】
【氏名】在原 拓務
【審査官】杉山 悟史
(56)【参考文献】
【文献】特開昭60-025673(JP,A)
【文献】特開2009-262304(JP,A)
【文献】特開2019-037214(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00 ~ 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数軸のアーム(4~9)を備えその手先部(9)にエンドエフェクタ(10)を装着して作業を行うロボット本体(1)に取付けられ、前記エンドエフェクタの補助的な動作を行うサブ作業ツール(12)を備えるロボットのサブアーム機構(11、31、41)であって、
基端部が前記ロボット本体のうち中間のアーム(6)に支持され、前記サブ作業ツールを保持して、前記ロボット本体の姿勢変化に応じて前記手先部に追従するように移動させる移動アーム機構(13)と、
前記移動アーム機構により移動される前記サブ作業ツールの一定の姿勢を維持する姿勢維持機構(14、32、42)とを備え
前記移動アーム機構は、前記ロボット本体のうち中間のアーム(6)に基端部が取付けられ、前記手先部側に延びる支持アーム(15)と、前記支持アームの先端部に基端部が回動可能に結合され、先端部に前記サブ作業ツールが取付けられる揺動アーム(16)とを備えると共に、それらアームの結合部(19)が前記手先部の近傍に配置されており、
前記姿勢維持機構は、第1の平行リンク機構(17)と第2の平行リンク機構(18)とを備え、前記第1の平行リンク機構の基端リンク(17a)が前記ロボット本体のうち基端側のアーム(4)に取付けられ、前記第1の平行リンク機構の前記基端リンクに対向する先端リンク(17b)が前記第2の平行リンク機構の基端リンク(18a)に連結され、前記第2の平行リンク機構の前記基端リンクに対向する先端リンク(18b)が前記揺動アームに連結されている
ロボットのサブアーム機構。
【請求項2】
前記ロボット本体は、6軸型アームを備え、前記第1の平行リンク機構の前記基端リンクは、そのうち1軸アーム(4)に取付けられ、前記支持アームの基端部は、そのうち3軸アーム(6)に取付けられている請求項1に記載のロボットのサブアーム機構。
【請求項3】
前記移動アーム機構及び前記姿勢維持機構は、2組が前記ロボット本体の両側部に対称的に設けられ、前記サブ作業ツールは、前記2つの揺動アームに両持ち状態に取付けられている請求項1に記載のロボットのサブアーム機構。
【請求項4】
前記第1の平行リンク機構及び第2の平行リンク機構のいずれか一方又は双方には、前記対向する基端リンクと先端リンクとの中間部同士を接続する冗長な中間リンクバー(33、34)が、長さの調整が可能に設けられている請求項1に記載のロボットのサブアーム機構。
【請求項5】
前記第1の平行リンク機構又は第2の平行リンク機構の関節部の少なくともいずれかに、姿勢検出用のエンコーダ(43、44)が設けられている請求項1に記載のロボットのサブアーム機構。
【請求項6】
前記サブ作業ツールには、前記ロボット本体とは独立して動作可能なアクチュエータが設けられている請求項1記載のロボットのサブアーム機構。
【請求項7】
前記サブ作業ツールは、前記ロボット本体のエンドエフェクタにより動作される可動部(12a)を有して構成されている請求項1記載のロボットのサブアーム機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボット本体に取付けられ、エンドエフェクタの補助的な動作を行うサブ作業ツールを備えるロボットのサブアーム機構に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、例えば果実等の農作物の収穫を自動で行うための収穫用ロボットが開発されてきている。この種の収穫用ロボットは、自動走行台車上に、例えば6軸多関節型のロボット本体を備え、ロボット本体のアームの先端部に、エンドエフェクタとして、果実の果柄を切断する切断刃機構を備えた収穫用のハンドを取付けて構成される(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この場合、収穫用ロボットにより、果実を傷付けたり落下させたりすることなく収穫するためには、収穫用ハンドによる果柄の切断作業だけでなく、果実の下方に、落下した果実を受けるための収穫かごのような補助的なツールを配置しながら収穫作業を行うことが望ましい。つまり、収穫用ハンドを用いた主たる作業に併せて、別のツールを用いた補助的な作業を協調させながら行う必要がある。このような協働作業は、例えば2つのアームを備える双腕ロボットを採用することにより実現することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-37214号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、双腕ロボットを用いて協働作業を行うものでは、ほぼ2台分のロボット本体が必要となるので、十分なコスト高を招いてしまうと共に、全体が大型化して設置スペースも大きくなってしまう。また、2つのアームをお互いに干渉しないように動作させる必要があるので、制御が複雑となったり、アームの可動域に制限が発生したりする不具合がある。
【0006】
尚、一つのロボット本体のアームの手先に、2組のエンドエフェクタを取付けて作業を行わせることも考えられるが、それでは、アーム先端の重量が大きくなり、慣性モーメントも大きくなって高速動作が困難となるといった問題が生ずる。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、主たるエンドエフェクタと補助的なツールとの協働による作業を行うことを可能とするものであって、比較的簡単且つ安価な構成で実現することができるロボットのサブアーム機構を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載のロボットのサブアーム機構(11、31、41)は、複数軸のアーム(4~9)を備えその手先部(9)にエンドエフェクタ(10)を装着して作業を行うロボット本体(1)に取付けられ、前記エンドエフェクタの補助的な動作を行うサブ作業ツール(12)を備えるものであって、基端部が前記ロボット本体のうち中間のアームに支持され、前記サブ作業ツールを保持して、前記ロボット本体の姿勢変化に応じて前記手先部に追従するように移動させる移動アーム機構(13)と、前記移動アーム機構により移動される前記サブ作業ツールの一定の姿勢を維持する姿勢維持機構(14、32、42)とを備えている。
【0008】
上記構成においては、サブ作業ツールを、姿勢維持機構によりその姿勢を維持させながら、移動アーム機構により、ロボット本体の手先部の移動に追従させて移動させることができる。支持アームが取付けられた中間のアームよりも先のアームの動作は、サブ作業ツールに関係なく可能となり、エンドエフェクタの独自の動作は自由に行うことができる。これにより、サブ作業ツールを、アームの先端部のエンドエフェクタに対し、常に一定位置を保ちながら、ロボットの作業を行うことができる。
【0009】
この場合、双腕アームとすることなく、ロボット本体の姿勢変化によって、サブ作業ツールを、エンドエフェクタに追従させながら移動させることができるので、簡単な構成で安価に済ませることができる。また、サブアーム機構を、ロボット本体のうち剛性の高い部分で支持できるので、アーム先端の重量を大きくせずとも済ませることができる。サブアームを動作させるための独自の駆動源も必要なくなり、アームの制御も容易となる。この結果、主たるエンドエフェクタと補助的なツールとの協働による作業を行うことを可能とするものであって、比較的簡単且つ安価な構成で実現することができる
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1の実施形態を示すものであり、ロボット本体にサブアーム機構を装着した様子を示す斜視図
図2】エンドエフェクタを上昇移動させた状態の斜視図
図3】エンドエフェクタを下降移動させた状態の斜視図
図4】ショルダ部を右方向に回動させた状態の斜視図
図5】ショルダ部を左方向に回動させた状態の斜視図
図6】ロボット本体の先端側部分を示す上面図
図7】エンドエフェクタを上段に移動させた状態の側面図
図8】ロボット本体の標準的な姿勢を示す側面図
図9】エンドエフェクタを中段下部に移動させた状態の側面図
図10】エンドエフェクタを下段に移動させた状態の側面図
図11】エンドエフェクタ部分の後方からの斜視図
図12】エンドエフェクタの本体部を回動させた様子を示す斜視図
図13】第2の実施形態を示すもので、ロボット本体にサブアーム機構を装着した様子を示す斜視図
図14】第3の実施形態を示すもので、ロボット本体にサブアーム機構を装着した様子を示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を具体化したいくつかの実施形態について、図面を参照しながら説明する。これら各実施形態は、例えば果実の収穫作業を行う、6軸型の垂直多関節型ロボットに適用したものである。尚、以下に述べる各実施形態において、先行する実施形態で説明した内容と同等の部分については、同一の参照符号を付し、新たな図示や重複する説明を省略することとする。
【0012】
(1)第1の実施形態
図1図12を参照して、第1の実施形態について述べる。図1等は、ロボット本体1に、本実施形態に係るサブアーム機構11を取付けた様子を示している。まず、前記ロボット本体1について述べる。このロボット本体1は、ベース3上に、周知構成の6軸のアームを備えて構成され、前記ベース3は、図示しない自動走行台車上に搭載されている。尚、図1及び図8は、ロボット本体1の標準的な姿勢を示しており、ロボット本体1の前後左右をいう場合、この姿勢を基準として、後述するエンドエフェクタの向いている側を前方として説明する。従って、図7図10は、右側面図とされる。
【0013】
前記ロボット本体1の各軸のアームは、次のように、関節部を介して順次回動可能に連結されている。即ち、前記ベース3上には、1軸アームとしてのショルダ部4が、垂直方向に延びる回動軸J1を中心に回動可能に連結されている。前記ショルダ部4の上端部には、図1などで上方に延びる2軸アームとしての下アーム5の下端部が、水平方向に延びる回動軸J2を中心に上下方向に旋回可能に連結されている。前記下アーム5の先端部には、3軸アームとしての中間アーム6の基端部が、水平方向に延びる回動軸J3を中心に上下方向に旋回可能に連結されている。
【0014】
前記中間アーム6の先端部には、該中間アーム6と同軸方向に延びて、4軸アームとしての上アーム7が、回動軸J4を中心に同軸回転可能に連結されている。前記上アーム7の先端部には、5軸アームとしてのリスト部8が、回動軸J5を中心に上下方向に街道可能に連結されている。前記リスト部8の先端には、手先部即ち6軸アームとしてのフランジ部9が、回動軸J6を中心に同軸回転可能に連結されている。前記フランジ9の先端面には、エンドエフェクタ10が取付けられている。
【0015】
詳しい説明は省略するが、前記エンドエフェクタ10は、例えば収穫用ハンドからなり、ベース部材に、果実の果柄を把持する把持機構や果柄を切断する切断刃機構、それらの駆動源となるモータ等を備えて構成されている。更に本実施形態では、エンドエフェクタ10には、図11図12に示すように、エンドエフェクタ10の根元部に位置して、左方に延びるようにして、作動部材21が設けられている。この作動部材21は、前記ロボット本体1のフランジ部9ひいてはエンドエフェクタ10の回動軸J6周りの回動により、後述するサブ作業ツールを傾動変位動作させるようになっている。
【0016】
尚、図示はしないが、ロボット本体1の内部には、各軸を駆動するためのサーボモータが組込まれており、それら各軸サーボモータは、エンコーダによる回転位置の検出がなされながら、ロボットコントローラによって通電制御される。また、これも図示しないが、ロボット本体1には、収穫物を撮影するカメラが設けられ、その撮影画像から果実の果柄の位置が自動で検出される。前記ロボットコントローラ及びエンドエフェクタ10並びに自動走行台車は、コンピュータを主体とした制御装置により駆動制御され、自動で果実の収穫作業を実行するように構成されている。
【0017】
さて、上記したロボット本体1に対し、エンドエフェクタ10の補助的な動作を行うサブ作業ツール12を備えるサブアーム機構11が取付けられる。本実施形態では、前記サブ作業ツール12として、例えば収穫かごが設けられる。この収穫かごからなるサブ作業ツール12は、前記エンドエフェクタ10との協調した作業つまり協働により、エンドエフェクタ10によって果柄が切断された果実を、その下方において受けるものである。以下、サブアーム機構11の詳細な構造について述べる。
【0018】
本実施形態に係るサブアーム機構11は、大きく分けて、前記サブ作業ツール12を、前記ロボット本体1の姿勢変化によって、手先部であるフランジ部9つまりエンドエフェクタ10に追従して移動させる移動アーム機構13と、サブ作業ツール12の一定の姿勢を維持させる姿勢維持機構14とを含んでいる。前記移動アーム機構13は、支持アーム15と、揺動アーム16とを備えて構成される。また、前記姿勢維持機構14は、第1の平行リンク機構17と、第2の平行リンク機構18とを備えて構成される。
【0019】
このとき、移動アーム機構13及び姿勢維持機構14を構成している、支持アーム15、揺動アーム16、第1の平行リンク機構17、第2の平行リンク機構18は、2組が前記ロボット本体1の左右両側部に対称的に設けられ、前記サブ作業ツール12は、2つの揺動アーム16にいわゆる両持ち状態に支持されるようになっている。以下、それら移動アーム機構13及び姿勢維持機構14について詳述する。
【0020】
前記移動アーム機構13を構成する支持アーム15は、薄板レバー状をなし、その基端側即ち図で後端側が、ロボット本体1のうち中間に位置する3軸アームである中間アーム6の基端部の側面に固定的に取付けられている。この支持アーム15の先端側は、中間アーム6及び上アーム7の延びる方向と同方向、つまり図1等で前後方向に延びている。この支持アーム15の先端部と、前記揺動アーム16の基端部とが結合部19において回動可能に結合されている。
【0021】
この揺動アーム16も、薄板レバー状をなし、先端側が図1で下方に延びている。このとき、支持アーム15と揺動アーム16とを回動可能に結合する結合部19は、ロボット本体1の上アーム7とリスト部8との間の関節部の回転軸J5を水平にした場合に、当該回動軸J5と一致或いはほぼ一致する位置に設けられている。つまり、結合部19は、常に、ロボット本体1の手先部であるリスト部8の側方に配置されている。
【0022】
前記揺動アーム16の前部の下端部に、前記サブ作業ツール12が取付けられている。図11図12に示すように、このサブ作業ツール12は、例えば上面が開口した薄型の矩形容器状をなし収穫物を受けるための本体部12aを有している。本体部12aの底部の前半部部分は、後方に緩やかに下降傾斜する斜面状に構成されている。前記本体部12aの後壁部の中央部には、軸部材12b(図11参照)が後方に水平に突出するように設けられている。更に、本体部12aの右側壁部には、収穫物を排出するための出口部12cが設けられている。
【0023】
これに対し、前記2つの揺動アーム16の前部には、それらの間に左右に掛け渡されるようにして、取付板22が設けられている。前記軸部材12bが取付板22に回動可能に支持され、サブ作業ツール12の本体部12aは、前後方向に延びる軸周りに回動可能に設けられている。図1図5等にも示すように、サブ作業ツール12は、前記ロボット本体1のエンドエフェクタ10の真下に位置し、上下方向に所定の隙間を開けて配置されるようになっている。通常の作業時などでは、サブ作業ツール12は、取付板22に対し本体部12aを水平状として収穫物を受ける通常位置に位置されている。本体部12aの回動の動作については後述する。
【0024】
一方、前記姿勢維持機構14は、次のように構成されている。即ち、図1図5図7図10に示すように、前記第1の平行リンク機構17は、4本のリンクを平行四辺形となるように順に回転可能な接合部によって連結した構成を備えている。この場合、長辺と短辺とを有するやや細長い形状をなし、短辺の一方となる基端リンク17aが、水平になるようにして、前記ロボット本体1のうち基端側の1軸アームであるショルダ部4の側面の下辺部に固定的に取付けられている。第1の平行リンク機構17は、ロボット本体1の側面を上方に延び、前記基端リンク17aに対向する水平な先端リンク17bが、ロボット本体1の下アーム5の上部の後方に配置されている。
【0025】
前記第2の平行リンク機構18は、やはり4本のリンクを長辺と短辺とを有する平行四辺形となるように順に回転可能な接合部によって連結した構成を備え、短辺の一方となる基端リンク18aが、上下方向に延び、前記第1の平行リンク機構17の先端リンク17bに対し十文字をなすように重ねて配置され、固定的に連結されている。そして、第2の平行リンク機構18は、前方に延び、前記基端リンク18aに対向する先端リンク18bが、上下方向に延びた状態で、前記揺動アーム16の下部後端部に連結されている。
【0026】
上記構成のサブアーム機構11においては、図1等に示すように、サブアーム機構11に支持されたサブ作業ツール12は、エンドエフェクタ10の下方に位置された状態とされ、その状態で、ロボット本体1による作業、例えば果実の収穫作業が自動で行われる。このとき、サブ作業ツール12を、姿勢維持機構14によりその姿勢つまり水平状に上を向けた一定の姿勢を維持させながら、移動アーム機構13により、ロボット本体1の手先部つまりフランジ部9の移動に追従して移動させることができる。この場合、ロボット本体1においては、主としてショルダ部4及び下アーム5の移動つまり姿勢の変動により、手先部を上下や前後に移動させることができる。
【0027】
具体的には、今、ロボット本体1を、図1及び図8の標準的な姿勢から、ショルダ部4を回転軸J2周りに回動させると共に、下アーム5を回動軸J3周りに回動させ、手先部つまりエンドエフェクタ10を上昇させた状態に姿勢変化させる。すると、図2に示すように、移動アーム機構13においては、リスト部8等の上昇に伴って結合部19の位置も上昇する。これにより、揺動アーム16が支持アーム15に対する折曲がり角度を小さくするように揺動され、サブ作業ツール12がエンドエフェクタ10に追従して上昇されるようになる。
【0028】
これと共に、姿勢維持機構14においては、第1の平行リンク機構17の先端側即ち先端リンク17bが下アーム5の後方に移動すると共に、第2のリンク機構18の先端側即ち先端リンク18bが上昇した形態となり、揺動アーム16の下向きの姿勢、ひいてはサブ作業ツール12の一定の姿勢が維持される。図7は、図2の状態から、ロボット本体1を動作させてエンドエフェクタ10を更に上段に移動させた状態を示し、やはり、サブ作業ツール12は、その水平状態の姿勢が変わることなく、エンドエフェクタ10との相対的な位置を保つように移動される。
【0029】
また、ロボット本体1を、図1及び図8の標準的な姿勢から、やはりショルダ部4を回転軸J2周りに回動させると共に、下アーム5を回動軸J3周りに回動させ、手先部つまりエンドエフェクタ10を下降させた状態に姿勢変化させると、図3、更には図9或いは図10に示すように、移動アーム機構13においては、フランジ部9等の下降に伴って結合部19の位置も下降する。これにより、揺動アーム16が支持アーム15に対する折曲がり角度を広げるように揺動し、サブ作業ツール12をエンドエフェクタ10に追従して下降させる。
【0030】
これと共に、姿勢維持機構14においては、第1の平行リンク機構17の先端側即ち先端リンク17bが前方に移動すると共に、第2のリンク機構18の先端側即ち先端リンク18bが下降した形態となる。これにより、ロボット本体1の手先部に対する揺動アーム16の下向きの姿勢、ひいてはサブ作業ツール12の水平な姿勢及び下方に離間した位置が維持される。このように、サブ作業ツール12をロボット本体1の手先部の動作に追従して移動させることができるのである。
【0031】
尚、図4は、ロボット本体1において、標準的な位置からショルダ部4を、回動軸J1を中心に右方向つまり上から見て時計回り方向に回動させた状態を示している。図5は、ロボット本体1において、標準的な位置からショルダ部4を、回動軸J1を中心に左方向つまり上から見て時計回り方向に回動させた状態を示している。このように、ショルダ部4を動作させた場合でも、サブアーム機構11はロボット本体1に追従して移動し、サブ作業ツール12の水平な姿勢、及び、ロボット本体1に対する下方に離間した相対位置が維持される。
【0032】
更に、上記構成においては、図6に示すように、支持アーム15が取付けられた中間アーム6よりも先の、上アーム7、リスト部8、フランジ部9のそれぞれの動作は、サブ作業ツール12に関係なく可能となる。即ち、中間アーム6に対する上アーム7の回動軸J4を中心とした矢印A方向の同軸回転動作、上アーム7に対するリスト部8の回動軸J5を中心とした矢印B方向の旋回動作、リスト部8に対するフランジ部9ひいてはエンドエフェクタ10の回動軸J6を中心とした矢印C方向の同軸回転動作は、サブアーム機構11やサブ作業ツール12に干渉したり影響したりすることなく、自在に行うことが可能である。エンドエフェクタ10の独自の動作も自由に行うことができる。
【0033】
そして、上記したように、前記サブ作業ツール12は、図11等に示す本体部12aを水平状とした通常位置と、図12に示す、本体部12aを正面から見て右側を下方に傾けて収穫物を出口部12cから排出させる回収位置との間で、位置変動つまり傾動が可能に設けられている。従って本実施形態では、本体部12a全体が可動部となる。また、図示しないばね等の付勢手段により、本体部12aは常に通常位置に付勢されている。
【0034】
前記本体部12aの後壁部には、該本体部12aを回動させるためのレバー20が上方に延びて設けられている。一方、前記エンドエフェクタ10の根元部には、前記レバー20を回動させるための作動部材21が左方に延出するように設けられている。これにて、エンドエフェクタ10の通常の作業時には、作動部材21がレバー20から離れていて干渉することはなく、本体部12aは通常位置に位置され収穫物を受けることができる。
【0035】
これに対し、収穫物を例えば採集コンテナに集める回収作業時には、サブ作業ツール12を採集コンテナの上方に移動させ、その状態で、ロボット本体1のフランジ部9ひいてはエンドエフェクタ10を回動軸J6回りに反時計回り方向に回転させることにより、作動部材21がレバー20を回動させ、本体部12aを回収位置に傾動させるようになっている。従って本実施形態では、可動部としての本体部12aがロボット本体のエンドエフェクタ10により動作される。
【0036】
このように本実施形態のサブアーム機構11によれば、次のような作用、効果を得ることができる。即ち、本実施形態のサブアーム機構11は、サブ作業ツール12をロボット本体1の手先部の移動に応じて移動させる移動アーム機構13と、サブ作業ツール12の姿勢を維持させる姿勢維持機構14とを含んで構成したので、サブ作業ツール12を、ロボット本体1の先端のエンドエフェクタ10に対し、常に一定位置を保ちながら動作させることができる。このとき、ロボット本体1の上アーム7以降のアームの動作は、サブ作業ツール12に関係なく可能となり、エンドエフェクタ10の独自の動作を自由に行うことができる。
【0037】
この場合、ロボット本体1の動作によって、サブ作業ツール12を、エンドエフェクタ10に追従させながら移動させることができるので、双腕アームといった複雑で大形となる構成を必要とせず、簡単な構成で小形、安価に済ませることができる。また、サブアーム機構11を、ロボット本体1のうち剛性の比較的高い部分で支持できるので、ロボット本体1のアーム先端の重量が大きくならずに済ませることができる。更に、サブ作業ツール12を動作させるための独自の駆動源が必要なくなり、制御も容易となる。
【0038】
この結果、本実施形態によれば、主たるエンドエフェクタ10と補助的なサブ作業ツール12との協働による作業を行うことを可能とするサブアーム機構11にあって、比較的簡単且つ安価な構成で実現することができるという優れた効果を得ることができる。特に本実施形態では、ロボット本体1を、6軸型アームを備えた構成としたので、全体として自由度の高い作業を行いながら、サブ作業ツール12による補助的な作業を容易に行わせることができる。
【0039】
また本実施形態では、2組の移動アーム機構13及び姿勢維持機構14を、ロボット本体1の両側部に対称的に設け、サブ作業ツール12を、2つの揺動アーム16に両持ち状態に支持させる構成とした。これにより、サブアーム機構11の剛性を高めることができ、サブ作業ツール12の安定した動作を可能とすることができる。更に本実施形態では、サブ作業ツール12における可動部としての本体部12aの傾動の動作を、ロボット本体1側で行うことができ、より多様な作業を実施することを可能としながら、別途の駆動源を設けずに済ませることができる。
【0040】
(2)第2の実施形態
図13は、第2の実施形態を示すものであり、上記第1の実施形態と異なるところは、サブアーム機構31の構成にある。即ち、このサブアーム機構31は、移動アーム機構13と姿勢維持機構32とを備えて構成されている。前記姿勢維持機構32は、やはり、第1の平行リンク機構17と、第2の平行リンク機構18とを含んでいる。このとき、第1の平行リンク機構17には、対向する基端リンク17aと先端リンク17bとの中間部同士を接続する冗長な中間リンクバー33が、長さの調整が可能に設けられている。
【0041】
この場合、図示はしないが、中間リンクバー33の途中部に、ターンバックルのようなねじ構造が設けられることにより、長さの調整が可能とされる。同様に、第2の平行リンク機構18にも、対向する基端リンク18aと先端リンク18bとの中間部同士を接続する冗長な中間リンクバー34が、ターンバックルのようなねじ構造により、長さの調整が可能に設けられている。
【0042】
このような第2の実施形態によれば、中間リンクバー33、34を設けたことにより、第1の平行リンク機構17及び第2の平行リンク機構18、ひいてはサブアーム機構31全体の剛性を高めることができる。このとき、中間リンクバー33、34は、長さの調節が可能とされていることにより、平行リンク機構17、18の各関節部のがたを矯正することが可能となる。尚、この例では、第1の平行リンク機構17及び第2の平行リンク機構18の双方に、中間リンクバー33、34を設けるように構成したが、第1の平行リンク機構17及び第2の平行リンク機構18のいずれか一方に、中間リンクバーを設ける構成としても良い。
【0043】
(3)第3の実施形態、その他の実施形態
図14は、第3の実施形態を示すものであり、サブアーム機構41の姿勢維持機構42の構成が、上記第1の実施形態等と異なっている。即ち、姿勢維持機構42は、やはり、第1の平行リンク機構17と、第2の平行リンク機構18とを含んでいる。そのうち、第1の平行リンク機構17の基端リンク17aの前端部と長辺リンクの下端部とが接続される関節部に、姿勢検出用のエンコーダ43が設けられている。更に、第2の平行リンク機構18の先端リンク18bの下端部と長辺リンクの前端部とが接続される関節部に、姿勢検出用のエンコーダ44が設けられている。
【0044】
これらエンコーダ43、44は、例えばロータリーエンコーダからなり、取付けられている関節部の角度の変動を検出するように構成されている。この構成によれば、平行リンク機構17、18の関節部の角度をエンコーダ43、44により検出することに基づいて、ロボット本体2のアーム4~9の位置、姿勢に対する、異常の有無の検出を行うことが可能となる。例えばロボット本体1の姿勢と平行リンク機構17、18の関節部の角度との対応関係に異常が検出された場合に、どちらかに異常が発生したと判断してロボット本体1を安全に停止させることができる。
【0045】
尚、上記した第1の実施形態においては、ロボット本体1側のエンドエフェクタ10に設けられた作動部材21によって、サブ作業ツール12のレバー20を動作させて本体部12aを傾動させる構成とした。これに代えて、サブ作業ツールに、ロボット本体1とは独立して動作可能なアクチュエータ、例えばモータ、エア駆動部を、ソレノイド等を設けて、サブ作業ツール自体で必要な動作を行わせる構成としても良い。これにより、サブ作業ツールの独自の動作が可能となって、より多様な作業を実施することが可能となる。
【0046】
また、上記各実施形態では、果実等を収穫する作業を行うロボットを具体例として説明したが、農業の分野以外にも、薬液処理を行うロボットや、医療分野で手術を行うロボットに適用したり、工業分野で塗装、半田付け等を行うロボットに適用したりするなど、広い用途に適用できる。より具体的には、例えば、手術ロボットの補助をサブ作業ツールで行なったり、サブ作業ツールでワークを保持した状態で、エンドエフェクタによりそのワークに対する加工や組立てなどの作業を行なったり、サブ作業ツールで塗装対象物の非接触のマスキングを行いながら塗装作業を行う等、様々な作業が可能となる。この場合、エンドエフェクタとして、ハンドなど各種のツールを用いることができる。
【0047】
その他、ロボット本体の構成としては、6軸の垂直多関節型ロボットに限ることなく、その他4軸の水平多関節型等のロボット等にも適用できる。さらには、揺動アーム機構や姿勢維持機構の具体的構成などについても様々な変更が可能であることは勿論である。本開示は実施例に準拠して記述されたが、本開示は当該実施例や構造に限定されるものではないと理解される。本開示は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、さらには、それらに一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範疇や思想範囲に入るものである。
【符号の説明】
【0048】
図面中、1はロボット本体、3はベース、4はショルダ部(基端側のアーム)、6は中間アーム(中間のアーム)、8はリスト部、9はフランジ部(手先部)、10はエンドエフェクタ、11、31、41はサブアーム機構、12はサブ作業ツール、12aは本体部(可動部)、13は移動アーム機構、14、32、42は姿勢維持機構、15は支持アーム、16は揺動アーム、17は第1の平行リンク、18は第2の平行リンク、19は結合部、20はレバー、21は作動部材、33、34は中間リンクバー、43、44はエンコーダ、J1~J6は回動軸を示す。
図1
図2
図3
図4
図5
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図7
図8
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図12
図13
図14