(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-28
(45)【発行日】2025-05-09
(54)【発明の名称】光センサ
(51)【国際特許分類】
G01J 1/02 20060101AFI20250430BHJP
H10N 10/851 20230101ALI20250430BHJP
H10N 10/857 20230101ALI20250430BHJP
H10N 10/13 20230101ALI20250430BHJP
【FI】
G01J1/02 R
H10N10/851
H10N10/857
H10N10/13
(21)【出願番号】P 2023506734
(86)(22)【出願日】2021-11-16
(86)【国際出願番号】 JP2021042037
(87)【国際公開番号】W WO2022195957
(87)【国際公開日】2022-09-22
【審査請求日】2024-05-10
(31)【優先権主張番号】P 2021044964
(32)【優先日】2021-03-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136098
【氏名又は名称】北野 修平
(74)【代理人】
【識別番号】100137246
【氏名又は名称】田中 勝也
(74)【代理人】
【識別番号】100158861
【氏名又は名称】南部 史
(74)【代理人】
【識別番号】100194674
【氏名又は名称】青木 覚史
(72)【発明者】
【氏名】岳山 恭平
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 光太郎
(72)【発明者】
【氏名】足立 真寛
【審査官】▲高▼場 正光
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第01083609(EP,A1)
【文献】特開平02-237178(JP,A)
【文献】国際公開第2021/002221(WO,A1)
【文献】特表2018-537848(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0271772(US,A1)
【文献】特開2009-210289(JP,A)
【文献】特許第2884679(JP,B2)
【文献】米国特許出願公開第2011/0155202(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01J 1/00 - G01J 1/60
G01J 5/00 - G01J 5/90
H10N 10/00 - H10N 10/857
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光センサであって、
支持体と、
第1の導電型を有するSiGeから構成され、熱エネルギーを電気エネルギーに変換するように構成された細長形状の複数の第1材料層と、第1の導電型と異なる第2の導電型を有するSiGeから構成され、熱エネルギーを電気エネルギーに変換するように構成された細長形状の複数の第2材料層と、金属を含む第3材料層と、を含み、前記支持体の一方の主面上に配置される熱電変換材料部と、
前記支持体の他方の主面上に配置されるヒートシンクと、
前記支持体の厚さ方向に見て、前記第1材料層の長手方向に温度差を形成するように配置され、受けた光を熱エネルギーに変換するように構成された光吸収膜と、
第1電極と、前記第1電極と隔離して配置される第2電極と、を備え、
それぞれの前記第1材料層は、
前記支持体の一方の主面と接触して配置され、
第1の端部を含む第1領域と、長手方向において第1の端部の反対側に位置する第2の端部を含む第2領域と、を含み、
それぞれの前記第2材料層は、
第3の端部を含む第3領域と、長手方向において第3の端部の反対側に位置する第4の端部を含む第4領域と、を含み、
前記第1領域と前記第3領域とが電気的に接続され、前記第2領域と前記第4領域とが電気的に接続されることで、前記複数の第1材料層と前記複数の第2材料層は交互に直列に接続され、
前記第3材料層は、前記第1領域と前記第3領域との間において前記第1領域および前記第3領域と接触して配置され、前記第2領域と前記第4領域との間において前記第2領域および前記第4領域と接触して配置され、
直列に接続される先頭の前記第1材料層に設けられる前記第1領域は前記第1電極と電気的に接続され、直列に接続される最後尾の前記第2材料層に設けられる前記第3領域は前記第2電極と電気的に接続され、
前記第3材料層は、前記金属を10at%以上含む酸化膜を含む、光センサ。
【請求項2】
前記金属は、遷移金属であり、
前記SiGeは、ナノ結晶構造およびアモルファス構造のうちの少なくともいずれかを有する、
請求項1に記載の光センサ。
【請求項3】
前記SiGeは、多結晶体である、請求項1または請求項2に記載の光センサ。
【請求項4】
前記金属の融点は、1455℃以上である、請求項1または請求項2に記載の光センサ。
【請求項5】
前記金属は、Ni、W、Mo、Ti、Au、Pd、Ge、Hf、Al、およびそれらの組み合わせからなる合金のうちのいずれかである、請求項1または請求項2に記載の光センサ。
【請求項6】
前記金属は、Ni、W、Mo、Ti、およびそれらの組み合わせからなる合金のうちのいずれかである、請求項1または請求項2に記載の光センサ。
【請求項7】
前記第3材料層の厚さは、3nm以上200nm以下である、請求項1または請求項2に記載の光センサ。
【請求項8】
前記第1の導電型はn型であり、前記第2の導電型はp型である、請求項1または請求項2に記載の光センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光センサに関するものである。本出願は、2021年3月18日出願の日本出願第2021-044964号に基づく優先権を主張し、前記日本出願に記載された全ての記載内容を援用するものである。
【背景技術】
【0002】
熱電対をなす2種類の材料が直列に交互に接合され、熱電対と異なる材料からなるワイヤボンディング用のパッド電極が熱電対材料に重なるように接続されるサーモパイルが知られている(たとえば特許文献1参照)。特許文献1によると、熱電対材料とワイヤボンディング用のパット電極との間に、熱電対材料とワイヤボンディング用のパット電極の材料とは異なる導電材料からなる中間層を介在させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【0004】
本開示に従った光センサは、支持体と、第1の導電型を有するSiGeから構成され、熱エネルギーを電気エネルギーに変換するように構成された細長形状の複数の第1材料層と、第1の導電型と異なる第2の導電型を有するSiGeから構成され、熱エネルギーを電気エネルギーに変換するように構成された細長形状の複数の第2材料層と、金属を含む第3材料層と、を含み、支持体の一方の主面上に配置される熱電変換材料部と、支持体の他方の主面上に配置されるヒートシンクと、支持体の厚さ方向に見て、第1材料層の長手方向に温度差を形成するよう配置され、受けた光を熱エネルギーに変換するように構成された光吸収膜と、第1電極と、第1電極と隔離して配置される第2電極と、を備える。それぞれの第1材料層は、支持体の一方の主面と接触して配置され、第1の端部を含む第1領域と、長手方向において第1の端部の反対側に位置する第2の端部を含む第2領域と、を含む。それぞれの第2材料層は、第3の端部を含む第3領域と、長手方向において第3の端部の反対側に位置する第4の端部を含む第4領域と、を含む。第1領域と第3領域とが電気的に接続され、第2領域と第4領域とが電気的に接続されることで、複数の第1材料層と複数の第2材料層は交互に直列に接続される。第3材料層は、第1領域と第3領域との間において第1領域および第3領域と接触して配置され、第2領域と第4領域との間において第2領域および第4領域と接触して配置される。直列に接続される先頭の第1材料層に設けられる第1領域は第1電極と電気的に接続され、直列に接続される最後尾の第2材料層に設けられる第3領域は第2電極と電気的に接続される。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【
図1】
図1は、実施の形態1における光センサの外観の概略平面図である。
【
図2】
図2は、実施の形態1における光センサの外観の概略平面図である。
【
図3】
図3は、
図1および
図2の線分III-IIIに沿う断面を示す概略断面図である。
【
図4】
図4は、実施の形態1における光センサの一部を示す概略断面図である。
【
図5】
図5は、
図4に示す光センサの一部を拡大して示す概略断面図である。
【
図6】
図6は、
図5に示す光センサの断面の一部のEDXを示す図である。
【
図7】
図7は、
図6におけるEDXにおいて計測された元素と距離との関係を示すグラフである。
【
図8】
図8は、第1材料層と第2材料層とが電気的に接続される部分における接触抵抗率と第3材料層の厚さとの関係を示すグラフである。
【
図9】
図9は、光センサの感度D
*と第3材料層の厚さとの関係を示すグラフである。
【
図10】
図10は、第1材料層と第2材料層とが電気的に接続される部分における接触抵抗率と第3材料層に含まれる各種金属との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0006】
[本開示が解決しようとする課題]
サーモパイル型の赤外線センサのような光センサにおいては、センサの感度の向上の観点からノイズの低減が求められる。特許文献1に開示の技術では、このような要望に応じることは困難である。
【0007】
そこで、ノイズを低減することができる光センサを提供することを目的の1つとする。
[本開示の効果]
【0008】
上記光センサによれば、ノイズを低減することができる。
【0009】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。本開示に係る光センサは、支持体と、第1の導電型を有するSiGeから構成され、熱エネルギーを電気エネルギーに変換するように構成された細長形状(帯状)の複数の第1材料層と、第1の導電型と異なる第2の導電型を有するSiGeから構成され、熱エネルギーを電気エネルギーに変換するように構成された細長形状(帯状)の複数の第2材料層と、金属を含む第3材料層と、を含み、支持体の一方の主面上に配置される熱電変換材料部と、支持体の他方の主面上に配置されるヒートシンクと、支持体の厚さ方向に見て、第1材料層の長手方向に温度差を形成するよう配置され、受けた光を熱エネルギーに変換するように構成された光吸収膜と、第1電極と、第1電極と隔離して配置される第2電極と、を備える。それぞれの第1材料層は、支持体の一方の主面と接触して配置され、第1の端部を含む第1領域と、長手方向において第1の端部の反対側に位置する第2の端部を含む第2領域と、を含む。それぞれの第2材料層は、第3の端部を含む第3領域と、長手方向において第3の端部の反対側に位置する第4の端部を含む第4領域と、を含む。第1領域と第3領域とが電気的に接続され、第2領域と第4領域とが電気的に接続されることで、複数の第1材料層と複数の第2材料層は交互に直列に接続される。第3材料層は、第1領域と第3領域との間において第1領域および第3領域と接触して配置され、第2領域と第4領域との間において第2領域および第4領域と接触して配置される。直列に接続される先頭の第1材料層に設けられる第1領域は第1電極と電気的に接続され、直列に接続される最後尾の第2材料層に設けられる第3領域は第2電極と電気的に接続される。
【0010】
赤外線センサのような、温度差(熱エネルギー)を電気エネルギーに変換する熱電変換材料を用いたサーモパイル型の光センサについては、光エネルギーを熱エネルギーに変換する光吸収膜のような受光部と、温度差を電気エネルギーに変換する熱電変換材料部(サーモパイル)とを備える場合がある。熱電変換材料部においては、p型熱電変換材料部とn型熱電変換材料部とを接続して形成される熱電対が用いられる。複数のp型熱電変換材料部と複数のn型熱電変換材料部とを交互に直列で接続することにより、出力を増加させている。光センサにおける抵抗については、以下の数1に示す式によって表される。
【0011】
【0012】
Rは抵抗、Rpはp型熱電変換材料部の一対辺りの抵抗、Rnはn型熱電変換材料部の一対辺りの抵抗、Nは対の数、ρcは接触抵抗、すなわち、p型熱電変換材料部とn型熱電変換材料部とが電気的に接続される部分の抵抗を示す。この式からも把握できるように、接触抵抗ρcを低減することができれば、光センサにおける抵抗の低減を図ることができる。また、光センサにおけるノイズについては、以下の数2に示す式によって表される。
【0013】
【0014】
Vnはジョンソンノイズ(V)、kはボルツマン定数(J/K)、Tは温度(K)、Rは抵抗(Ω)、Δfは帯域幅(Hz=1/s)を示す。この式からも把握できるように、ジョンソンノイズは抵抗に依存しており、抵抗を低減することができれば、光センサにおけるノイズの低減を図ることができる。
【0015】
本発明者らは、熱電変換材料である第1材料層と第2材料層とが接触する部分における抵抗を減らすべく鋭意検討した。そして、第1材料層を形成後、第2材料層を形成する場合において、第1材料層の表層に形成される自然酸化膜がキャリア輸送を阻害し、抵抗を増大させていることを見出した。そこで本発明者らはこの酸化膜における抵抗の増大を抑制して導電性を向上させればよい観点に着目し、本開示の構成を想到するに至った。
【0016】
本開示の光センサは、金属を含む第3材料層をさらに備える。第3材料層は、第1領域と第3領域との間において第1領域および第3領域と接触して配置され、第2領域と第4領域との間において第2領域および第4領域と接触して配置される。そうすると、第1材料層と第2材料層とが電気的に接続される部分の抵抗を低減することができる。したがって、光センサのノイズの低減を図ることができる。
【0017】
上記光センサにおいて、金属は、遷移金属であってもよい。SiGeは、ナノ結晶構造およびアモルファス構造のうちの少なくともいずれかを有してもよい。このような金属、第1材料層および第2材料層を構成するSiGeを用いることにより、より確実に光センサのノイズの低減を図ることができる。
【0018】
上記光センサにおいて、SiGeは、多結晶体であってもよい。このような多結晶体であるSiGeについても、本開示の光センサにおいて、好適に利用される。なお、本開示の多結晶体の結晶化率については、99%以上である。
【0019】
上記光センサにおいて、金属の融点は、1455℃以上であってもよい。このような金属は、熱的に安定であり、光センサに含まれる材質として好適である。
【0020】
上記光センサにおいて、金属は、Ni(ニッケル)、W(タングステン)、Mo(モリブデン)、Ti(チタン)、Au(金)、Pd(パラジウム)、Ge(ゲルマニウム)、Hf(ハフニウム)、Al(アルミニウム)、およびそれらの組み合わせからなる合金のうちのいずれかであってもよい。金属としてこのような元素を用いることにより、第1材料層と第2材料層とが電気的に接続される部分の抵抗をより確実に低下させることができる。したがって、より確実にノイズの低減を図ることができる。
【0021】
上記光センサにおいて、金属は、Ni、W、Mo、Ti、およびそれらの組み合わせからなる合金のうちのいずれかであってもよい。このようにすることにより、よりノイズの低減を図ることができる。
【0022】
上記光センサにおいて、第3材料層は、金属を10at%以上含む酸化膜を含んでもよい。このようにすることにより、より確実に第1材料層と第2材料層とが電気的に接続される部分の抵抗を低減することができる。したがって、光センサのノイズの低減を図ることができる。
【0023】
上記光センサにおいて、第3材料層の厚さは、3nm以上200nm以下であってもよい。このようにすることにより、第1材料層と第2材料層とが電気的に接続される部分の抵抗の低下を図りながら、熱電変換材料部における起電力の低下を抑制することができる。
【0024】
[本開示の実施形態の詳細]
次に、本開示の光センサの一実施形態を、図面を参照しつつ説明する。以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照符号を付しその説明は繰り返さない。
【0025】
(実施の形態1)
本開示の実施の形態1に係る光センサについて説明する。
図1および
図2は、実施の形態1における光センサの外観の概略平面図である。理解の容易の観点から、
図1では、後述する赤外線吸収膜および絶縁膜の図示を省略している。
図1において、赤外線吸収膜が配置される際の外縁は、破線で示されている。
図3は、
図1および
図2の線分III-IIIに沿う断面を示す概略断面図である。
図4は、実施の形態1における光センサの一部を示す概略断面図である。
図4は、後述する第1領域、第2領域、第3領域および第4領域を含む部分を拡大して示す概略断面図である。
図5は、
図4に示す光センサの一部を拡大して示す概略断面図である。
【0026】
図1、
図2、
図3、
図4および
図5を参照して、光センサ11aは、たとえば赤外線センサである。光センサ11aは、支持体13と、支持体13の一方の主面13b上に配置される熱電変換材料部12と、ヒートシンク14と、光吸収膜としての赤外線吸収膜23と、第1電極24と、第2電極25と、を備える。熱電変換材料部12は、第1材料層21a,21b,21c,21dを含む複数の第1材料層21と、第2材料層22a,22b,22c,22dを含む複数の第2材料層22と、を含む。光センサ11aは、第1電極24と第2電極25との間に生ずる電位差を検出することにより、光センサ11aに照射される赤外線を検出する。光センサ11a全体を板状とすると、その厚さ方向は、Z方向によって表される。
【0027】
支持体13は、薄膜状であって、厚さ方向(Z方向)に見て長方形の形状を有する。支持体13は、複数の第1材料層21および複数の第2材料層22を含む熱電変換材料部12と、赤外線吸収膜23と、第1電極24と、第2電極25とを支持する。支持体13は、たとえばSiO2/SiN/SiO2膜から形成されている。すなわち、支持体13は、SiO2とSiNとSiO2とを積層させた構成である。
【0028】
ヒートシンク14全体の外縁である外縁14cと支持体13の外縁13cとは、Z方向に連なって延びている。ヒートシンク14は、光センサ11aの厚さ方向に離れて配置される一方の面14aと、他方の面14bとを含む。ヒートシンク14は、支持体13の他方の主面13a上に配置される。具体的には、ヒートシンク14は、ヒートシンク14の一方の面14aと支持体13の他方の主面13aとが当接するように配置される。ヒートシンク14の他方の面14bは、露出している。本実施形態においては、ヒートシンク14の形状は、矩形ループ状である。ヒートシンク14は、
図3に示す断面において、2つの台形状の形状によって表れる。ヒートシンク14は、支持体13と比較して十分に厚い。たとえばヒートシンク14の厚さは、支持体13の厚さの10倍以上である。ヒートシンク14は、本実施形態においては、いわゆる基板である。ヒートシンク14は、たとえばSiから構成されている。
【0029】
光センサ11aには、厚さ方向に凹む凹部16が形成される。面14b側から見て凹部16に対応する領域において、支持体13、具体的には、支持体13の他方の主面13aが露出する。凹部16を取り囲むヒートシンク14の内周面14dは、面14b側に位置する開口側が広いいわゆるテーパ状である。凹部16は、たとえば平板状の基板を異方性ウェットエッチングすることにより形成される。このような凹部16を形成することにより、赤外線吸収膜23からヒートシンク14への熱の逃げを抑制できる。よって、後述する第1材料層21および第2材料層22の長手方向の温度差をより大きくすることができる。
【0030】
図1において、ヒートシンク14と支持体13との境界であるヒートシンク14の内縁16a,16b,16c,16dは、
図1において破線で示される。
図1に示すように、本実施形態においては、ヒートシンク14の内縁16a,16b,16c,16dは、支持体13の厚さ方向に見て、正方形の形状を有する。
【0031】
第1材料層21は、第1の導電型であるn型を有するSiGeから構成される。すなわち、第1材料層21は、n型熱電変換材料から構成されており、Si(シリコン)およびGeを構成元素とした化合物半導体から構成される。
【0032】
第1材料層21は、細長形状の形状を有する。第1材料層21は、第1の端部28cを含む第1領域28aと、長手方向において第1の端部28cの反対側に位置する第2の端部28dを含む第2領域28bと、を含む。第1領域28aと第2領域28bを結ぶ線の延びる方向が、細長形状の第1材料層21の長手方向となる。第1材料層21は、第1領域28aと第2領域28bとの間の温度差を電気エネルギーに変換する。第1材料層21は、支持体13の一方の主面13b上に配置される。第1材料層21は、支持体13の一方の主面13bと接触して配置される。第1材料層21は、支持体13の厚さ方向に見て、第1領域28aがヒートシンク14の内縁16a,16b,16c,16dに近い側に位置し、第2領域28bが赤外線吸収膜23の外縁23a,23b,23c,23dに近い側に位置するよう配置される。
【0033】
第2材料層22は、第1の導電型とは異なる導電型であるp型を有するSiGeから構成される。すなわち、第2材料層22は、p型熱電変換材料から構成されており、SiおよびGeを構成元素とした化合物半導体から構成される。
【0034】
第2材料層22は、細長形状の形状を有する。第2材料層22は、第3の端部29cを含む第3領域29aと、長手方向において第3の端部29cの反対側に位置する第4の端部29dを含む第4領域29bを含む。第3領域29aと第4領域29bを結ぶ線の延びる方向が、細長形状の第2材料層22の長手方向となる。第2材料層22は、第3領域29aと第4領域29bとの間の温度差を電気エネルギーに変換する。本実施形態においては、第2材料層22は、支持体13と接触して配置される後述する絶縁膜26の一部の上および第1材料層21の一部の上に配置される。第2材料層22は、支持体13の厚さ方向に見て、第3領域29aがヒートシンク14の内縁16a,16b,16c,16dに近い側に位置し、第4領域29bが赤外線吸収膜23の外縁23a,23b,23c,23dに近い側に位置するよう配置される。
【0035】
複数の第1材料層21および複数の第2材料層22は、支持体13上において、
図1中の二点鎖線の長方形の形状で示す領域15内に収まるように配置される。熱電変換材料部12は、複数の第1材料層21および複数の第2材料層22により、温度差(熱エネルギー)を電気エネルギーに変換する。なお、熱電変換材料部12は、絶縁膜26を含む。絶縁膜26の材質としては、たとえばSiO
2が選択される。複数の第1材料層21および複数の第2材料層22の配置については、後に詳述する。
【0036】
赤外線吸収膜23は、支持体13の一方の主面13b上、第1材料層21の一部上、第2材料層22の一部上および絶縁膜26の一部上に配置される。赤外線吸収膜23は、第1材料層21の長手方向、すなわち、第1領域28aと第2領域28bとの間において温度差を形成するよう配置される。具体的には、赤外線吸収膜23は、第1材料層21の第1領域28aおよび第2材料層22の第3領域29aを露出し、第1材料層21の第2領域28bおよび第2材料層22の第4領域29bを覆うように配置される。本実施形態においては、赤外線吸収膜23は、第2材料層22の長手方向、すなわち、第3領域29aと第4領域29bとの間において温度差を形成するよう配置される。赤外線吸収膜23は、支持体13の厚さ方向に見て、ヒートシンク14の内縁16a,16b,16c,16dに取り囲まれた領域に配置される。本実施形態においては、支持体13の厚さ方向に見て、外縁23a,23b,23c,23dを有する赤外線吸収膜23は、正方形の形状を有する。赤外線吸収膜23は、支持体13の厚さ方向に見て、赤外線吸収膜23の外縁23a,23b,23c,23dによって形成される正方形の形状の中心と、ヒートシンク14の内縁16a,16b,16c,16dによって形成される正方形の形状の中心とが重なるよう配置される。赤外線吸収膜23は、赤外線を熱に変換する。赤外線吸収膜23の材質としては、たとえばカーボン(C)が選択される。
【0037】
次に、熱電変換材料部12および赤外線吸収膜23の配置について説明する。絶縁膜26は、具体的には、第1材料層21が配置されている部分においては第1材料層21上に配置され、第1材料層21が配置されていない部分においては支持体13の一方の主面13b上に配置される。絶縁膜26は、第1材料層21の第1領域28aおよび第2領域28bを覆わないように配置される。第2材料層22は、支持体13の一方の主面13bの一部の上、絶縁膜26の一部の上および第1材料層21の一部の上に配置される。第2材料層22は、第1材料層21の第1領域28aと第2材料層22の第3領域29aとが第3材料層31aを介して電気的に接続し、第1材料層21の第2領域28bと第2材料層22の第4領域29bとが第3材料層31bを介して電気的に接続するように配置される。本実施形態においては、第3領域29aは、第1領域28a上に配置され、第4領域29bは、第2領域28b上に配置される。
【0038】
赤外線吸収膜23は、支持体13の一方の主面13bの一部の上、絶縁膜26の一部の上および第2材料層22の一部の上に配置される。赤外線吸収膜23は、第1材料層21の第1領域28aおよび第2材料層22の第3領域29aを露出するように配置される。
赤外線吸収膜23は、第1材料層21の第2領域28bおよび第2材料層22の第4領域29bを覆うように配置される。すなわち、第2領域28bと第4領域29bとが接続される各接続部は、支持体13の厚さ方向に見て赤外線吸収膜23と重なっている。第1材料層21の第1領域28aおよび第2材料層22の第3領域29aは、赤外線吸収膜23によって覆われていない。すなわち、第1材料層21および第2材料層22はそれぞれ、第1材料層21および第2材料層22のそれぞれの長手方向に温度差を形成するよう赤外線吸収膜23と熱的に接続される。赤外線吸収膜23の熱が第1材料層21の第2領域28bおよび第2材料層22の第4領域29bに伝達されるように配置される。このようにして、第1材料層21および第2材料層22の長手方向に温度差が形成される。このようにすることにより、赤外線吸収膜23とヒートシンク14により形成される温度差を効率的に利用した光センサ11aを得ることができる。
【0039】
次に、複数の第1材料層21および複数の第2材料層22の配置について説明する。複数の第1材料層21は、それぞれ間隔をあけて配置される。第1材料層21a,21b,21c,21dを除き、複数の第1材料層21は、X方向またはY方向が長手方向となるように配置される。第1材料層21a,21b,21c,21dを除き、複数の第1材料層21は、正方形の形状の領域15の各辺側から向かい合う辺側に向けて延びるように(当該方向に長手方向が沿うように)配置される。第1電極24に接続される第1領域28aおよび第2電極25に接続される第3領域29aを除き、第1材料層21と第2材料層22とは交互に電気的に接続される。具体的には、第1材料層21の第1領域28aと第1材料層21の一方で隣り合う第2材料層22の第3領域29aとが第3材料層31aを介して電気的に接続される。第1材料層21の第2領域28bと第1材料層21の他方で隣り合う第2材料層22の第4領域29bとが第3材料層31bを介して電気的に接続される。複数の第1材料層21および複数の第2材料層22は、第1電極24および第2電極25に接続される第1領域28aおよび第3領域29aを除き、第2領域28b、第4領域29b同士および第1領域28a、第3領域29a同士が電気的に接続される。すなわち、第1材料層21と第2材料層22とは対となって、隣り合う第1材料層21および第2材料層22とが端部を含む領域で交互に直列で電気的に接続されている。
【0040】
光センサ11aに光が照射された時に発生する温度勾配の向きに対して、第1材料層21の一方に位置する第1の端部28cを含む第1領域28aに発生する電圧の極性と第2材料層22の一方に位置する第3の端部29cを含む第3領域29aに発生する電圧の極性とが逆となる。ここで、常に交互に複数の第1材料層21および複数の第2材料層22が接続されている。交互に直列に接続された第1材料層21および複数の第2材料層22のうち、先頭に配置される第1材料層21は、第1領域28aで第1電極24と電気的に接続される。交互に直列に接続された第1材料層21および第2材料層22のうち、最後尾に配置される第2材料層22は、第3領域29aで第2電極25と電気的に接続される。第1電極24および第2電極25は、支持体13の一方の主面13b上において、領域15外に配置される。第1電極24と第2電極25とは、離れて配置される。第1電極24および第2電極25はそれぞれ、たとえばパッド電極である。第1電極24および第2電極25の材質としては、たとえば金(Au)、チタン(Ti)、白金(Pt)等が採用される。
【0041】
ここで、熱電変換材料部12は、金属を含む第3材料層31aを含む。第3材料層31aは、第1領域28aと第3領域29aとの間において第1領域28aおよび第3領域29aと接触して配置される。本実施形態においては、第3材料層31aは、Z方向において、第1領域28aと第3領域29aとの間に配置される。また、熱電変換材料部12は、金属を含む第3材料層31bを含む。第3材料層31bは、第2領域28bと第4領域29bとの間において第2領域28bおよび第4領域29bと接触するように配置される。本実施形態においては、第3材料層31bは、Z方向において、第2領域28bと第4領域29bとの間に配置される。第3材料層31a,31bに含まれる金属は、本実施形態においては、Niである。また、第3材料層は31a,31b、Niを10at%以上含む酸化膜を含む。本実施形態においては、第3材料層31a,31bは、Niを10at%以上含む酸化膜を含む。
【0042】
第3材料層31aの厚さT
1は、3nm以上200nm以下である(
図5参照)。
第3材料層31aの厚さT
1については、厚さ方向であるZ方向において、第3材料層31aの一方の面32aと他方の面33aとの長さである厚さT
1で示される。第3材料層31aの一方の面32aは、厚さ方向において第2材料層22側に位置する第1材料層21の厚さ方向の一方の面34aと接触する。第3材料層31aの他方の面33aは、厚さ方向において第1材料層21側に位置する第2材料層22の厚さ方向の一方の面35aと接触する。なお、第3材料層31bの厚さも、第3材料層31aの厚さと同等であるため、その説明を省略する。
【0043】
次に、実施の形態1における光センサ11aの製造方法について、簡単に説明する。まず、平板状の基板を準備し、厚さ方向の一方の主面上に支持体13を形成する。この時、基板と支持体13の他方の主面13aは当接している。次に、支持体13の一方の主面13b上に第1材料層21を形成する。具体的な第1材料層21の形成については、以下の通りである。まず支持体13の一方の主面13b上にリフトオフ用レジストを層状に塗布する。次に、リフトオフ用レジストの上にポジ型レジストを層状に塗布する。その後、ポジ型レジストにフォトリソグラフィを施して露光し、現像液により溶解させる。次に、半導体材料を蒸着させてパターンを形成し、レジストを支持体13上から除去する(リフトオフ)。このようにして、上記した第1材料層21を形成する。
【0044】
第1材料層21を形成後、濃度が10質量%のバッファードフッ酸(BHF(Buffered Hydrogen Fluoride))溶液に1分間浸漬し、その後水洗処理を施す。水洗処理後には、第1材料層21上に厚さが10nm~20nm程度の自然酸化膜が形成される。次に、中間金属層であるNiのパターン形成を行った後にNiを成膜し、中間金属層を形成する。次に、SiO2から構成される絶縁膜26を形成し、第2材料層22のパターンを形成した後、蒸着を行うことにより第2材料層22を形成する。第2材料層22の形成等、各層の形成については第1材料層21の形成と同様の手順であるため、それらの説明を省略する。
【0045】
第1材料層21と中間金属層と第2材料層22とを形成した後、550℃程度の加熱による活性化処理を行う。BHF浸漬後、水洗処理を施した第1材料層21上に形成された厚さが10nm~20nm程度の自然酸化膜内に中間金属層中の金属であるNiが拡散する。このようにして、Niを含む第3材料層31a,31bを形成する。すなわち、このようにして、第1領域28aと第3領域29aとの間において第1領域28aおよび第3領域29aと接触して配置される第3材料層31aと、第2領域28bと第4領域29bとの間において第2領域28bおよび第4領域29bと接触して配置される第3材料層31bとが形成される。
【0046】
その後、厚さ方向において支持体13とは反対側に位置する基板の他方の主面から基板の中央の領域に凹部16を形成する。この場合、基板の他方の主面から支持体13の他方の主面13aに至るまで凹む凹部16を形成する。このようにして、基板から構成されるヒートシンク14を形成し、上記光センサ11aを得る。ここで、中間金属層は、第1領域28aと第1電極24との間に設けられていてもよい。
【0047】
次に、光センサ11aの動作について説明する。光、たとえば赤外線が光センサ11aに照射されると、赤外線吸収膜23によって光エネルギーが熱エネルギーに変換される。この場合、赤外線吸収膜23は、ヒートシンク14の内縁16a,16b,16c,16dに取り囲まれた領域内に形成されており、赤外線吸収膜23が配置されている部分が高温側となる。一方、内縁16a,16b,16c,16dの外側においてはヒートシンク14が配置されているため、温度は上昇しない。ここで、一つの第1材料層21に着目すると、第1材料層21の第2領域28bが高温となり、第1材料層21の第1領域28aが低温となる。すなわち、一つの第1材料層21の長手方向において、両端部を含む領域間に温度差が形成される。この温度差により、電位差が形成される。第2材料層22の長手方向についても同様に細長形状の形状を有する。よって、両端部を含む領域間において温度差が形成される。この温度差により、電位差が形成される。複数の第1材料層21および複数の第2材料層22は交互に極性が逆になるよう直列で接続されているため、第1電極24および第2電極25によって出力される電位差が、複数の第1材料層21および複数の第2材料層22の温度差によって生じた電位差の合計となる。この第1電極24と第2電極25との間の電位差によって流れる電流を検知することにより、光センサ11aは光を、この場合、赤外線を検知する。
【0048】
ここで、上記光センサ11aは、上記構成の第3材料層31a,31bを含む。よって、光センサ11aにおける抵抗を低減することができる。したがって、光センサ11aのノイズの低減を図ることができる。
【0049】
図6は、
図5に示す光センサ11aの断面の一部のEDXを示す図である。
図6において、左側の領域36aは、元素Niの濃度を示し、右側の領域36bにおいては、元素O(酸素)の濃度を示している。
図7は、
図6におけるEDXにおいて計測された元素と距離との関係を示すグラフである。
図7において、横軸は元素の濃度(at%)を示し、縦軸は距離(nm)を示す。距離は、Z方向における主面13bからの距離である。なお、計測については、以下のように行った。装置としては、JEM-2100F(日本電子株式会社製)を用い、加速電圧を200kVとした。そして、電子プローブ径を0.2nmとし、EDXマッピング条件として、画素数を256pixel×256pixelとし、Dwell timeを0.5ms/pixelとし、積算回数を15回とした。
【0050】
図6および
図7を参照して、Siの濃度は、距離が長くなるにつれて濃度が減少し、150nmを境に急減している。一方、Geの濃度は、距離が長くなるにつれて濃度が増加し、150nmを境に急増している。ここで、Niの濃度は、120nmから180nmの距離において、10at%以上となっている。また、Oの濃度についても、120nmから180nmの距離において、増加し、ピークを迎えている。
図6および
図7を参照すると、第1材料層21の一方の面34a上に金属を含む第3材料層31aが配置されていることが把握できる。本実施形態における第3材料層31aの厚さT
1は、60nmである。
【0051】
第3材料層31a,31bを含まない光センサの第1材料層と第2材料層との接触抵抗と比較して、このような本開示の光センサ11aの第1材料層21と第2材料層22とが電気的に接続される部分における抵抗の減少率は99%となっている。また、第3材料層31a,31bを含まない光センサの抵抗と比較して、このような本開示の光センサ11aの抵抗の減少率は、38%となっている。さらに、第3材料層31a,31bを含まない光センサのジョンソンノイズと比較して、このような本開示の光センサ11aのジョンソンノイズの減少率は、22%となっている。
【0052】
図8は、第1材料層21と第2材料層22とが電気的に接続される部分における抵抗と第3材料層31a,31bの厚さとの関係を示すグラフである。
図8において、横軸は第3材料層31a,31bの厚さ(nm)を示し、縦軸は第1材料層21と第2材料層22とが電気的に接続される部分における接触抵抗率(mΩcm
2)を示す。
図9は、光センサの感度D
*と第3材料層31a,31bの厚さとの関係を示すグラフである。
図9において、横軸は第3材料層31a,31bの厚さ(nm)を示し、縦軸は感度D
*(cm・Hz
0.5/W)を示す。
【0053】
図8および
図9を参照して、第3材料層31a,31bの厚さT
1については、3nm以上200nm以下とすることにより、第1材料層21と第2材料層22とが電気的に接続される部分の抵抗の低下を図りながら、熱電変換材料部12における起電力の低下を抑制することができる。第3材料層31a,31bの厚さT
1については、20nm以上120nm以下とすることにより、酸化膜への金属の拡散を十分にすることができ、より上記抵抗を好適な値とすることができる。したがって、より感度を向上させることができる。第3材料層31a,31bの厚さT
1については、40nm以上80nm以下とすることにより、さらに酸化膜への金属の拡散を十分にすることができ、さらに上記抵抗を好適な値とすることができる。したがって、さらに感度を向上させることができる。
【0054】
なお、上記の実施の形態においては、第3材料層31a,31bに含まれる金属をNiとすることとしたが、これに限らず、第3材料層31a,31bに含まれる金属を遷移金属とすることにしてもよい。また、SiGeは、ナノ結晶構造およびアモルファス構造のうちの少なくともいずれかを有してもよい。このような金属、第1材料層21および第2材料層22を構成するSiGeを用いることにより、より確実に光センサ11aのノイズの低減を図ることができる。なお、第1材料層21および第2材料層22の構成材料であるSiGeについては、たとえばアモルファス構造のSiGeを、たとえば500℃程度の温度で熱処理し、その一部でナノ結晶構造を作製してもよい。また、SiGeは、ナノ結晶構造またはアモルファス構造を有してもよい。ここで、ナノ結晶構造とはSiGeの中にナノサイズの結晶粒(ナノ結晶)を部分的に有する構造である。ナノ結晶の内部では、原子が規則的に整列している。また、SiGeは、多結晶体であってもよい。このような多結晶体であるSiGeについても、本開示の光センサにおいて、好適に利用される。なお、本開示の多結晶体の結晶化率については、99%以上である。なお、結晶化率の測定については、以下のように行った。装置として、HORIBA LabRam HR-PLを用いた。測定条件としては、レーザー波長を532nmとし、レーザーパワーを2.5mWとした。解析条件としては、400cm-1付近のピークを分析した。解析に際しては、ガウス関数と疑似フォークト関数をフィッティングした。ガウス関数G(x)については、以下の数3に示す式によって表される。
【0055】
【0056】
また、疑似フォークト関数F(x)については、以下の数4に示す式によって表される。
【0057】
【0058】
ガウス関数G(x):変数Ag、Wg、xgにおいて、x0の初期値を400cm-1とした。疑似フォークト関数F(x):変数Af、Wf、xf、mにおいて、x0の初期値を380cm-1とし、gを0.5とした。各パラメータを最小二乗法で最適化し、疑似フォークト関数とガウス関数を積分し、面積を求めた。結晶化率については、ガウス関数を用いて導出された面積がアモルファスに対応し、疑似フォークト関数を用いて導出された面積が結晶に対応するとして、結晶化率=疑似フォークト関数を用いて導出された面積/(疑似フォークト関数を用いて導出された面積+ガウス関数を用いて導出された面積)、によって算出した。
【0059】
また、第3材料層31a,31bに含まれる金属の融点は、1455℃以上であってもよい。このような金属は、熱的に安定であり、光センサ11aに含まれる材質として好適である。
【0060】
図10は、第1材料層21と第2材料層22とが電気的に接続される部分における接触抵抗率と第3材料層に含まれる各種金属との関係を示すグラフである。
図10において、横軸は各種金属を示し、縦軸は第1材料層21と第2材料層22とが電気的に接続される部分における接触抵抗率(mΩcm
2)を示す。
【0061】
図10を参照して、第3材料層を含まない場合においては、上記接触抵抗率は400(mΩcm
2)である。これに対し、金属をNiとした第3材料層を含む場合においては、上記接触抵抗率は0.6(mΩcm
2)である。金属をWとした第3材料層を含む場合においては、上記接触抵抗率は1.0(mΩcm
2)である。金属をMoとした第3材料層を含む場合においては、上記接触抵抗率は1.5(mΩcm
2)である。金属をTiとした第3材料層を含む場合においては、上記接触抵抗率は2.0(mΩcm
2)である。金属をAuとした第3材料層を含む場合においては、上記接触抵抗率は24(mΩcm
2)である。金属をPdとした第3材料層を含む場合においては、上記接触抵抗率は55(mΩcm
2)である。金属をGeとした第3材料層を含む場合においては、上記接触抵抗率は60(mΩcm
2)である。金属をHfとした第3材料層を含む場合においては、上記接触抵抗率は70(mΩcm
2)である。金属をAlとした第3材料層を含む場合においては、上記接触抵抗率は200(mΩcm
2)である。
【0062】
第3材料層31a,31bに含まれる金属として、Ni、W、Mo、Ti、Au、Pd、Ge、Hf、Al、およびそれらの組み合わせからなる合金のうちのいずれかを選択することが好適である。このような元素は、第1材料層21と第2材料層22とが電気的に接続される部分における抵抗をより確実に低下させることができる。したがって、より確実にノイズの低減を図ることができる。
【0063】
また、第3材料層31a,31bに含まれる金属として、Ni、W、Mo、Ti、およびそれらの組み合わせからなる合金のうちのいずれかを採用することにより、よりノイズの低減を図ることができる。
【0064】
(他の実施の形態)
なお、上記の実施の形態においては、第1の導電型をn型として第1材料層にn型熱電変換材料を採用し、第1の導電型と異なる導電型をp型として第2材料層にp型熱電変換材料を採用することとしたが、これに限らず、第1の導電型をp型として第1材料層にp型熱電変換材料を採用し、第1の導電型と異なる導電型をn型として第2材料層にn型熱電変換材料を採用することにしてもよい。
【0065】
また、上記した水洗処理後に第1材料層21上に形成される酸化膜については、エネルギーフィルタリングの効果を考慮すると、0.1nmから10nm程度ある方が、ゼーベック係数が高くなる観点から好適である。
【0066】
なお、上記の実施の形態においては、ヒートシンクは矩形ループ状であることとしたが、これに限らない。たとえば、支持体の厚さ方向に見て格子状にヒートシンクが形成され、格子状のヒートシンクのいわゆる窓に相当する領域に、矩形状の複数の支持体がそれぞれ配置される構成としてもよい。具体的にはたとえば、肉の薄い部分である矩形状の支持体がそれぞれ間隔をあけて複数配置され、その支持体の間の領域においてヒートシンクが配置される構成を採用してもよい。このようにすることによっても、ノイズの低減を図ることができる。このような構成は、たとえば光センサが、アレイセンサとして用いられる場合に利用される。
【0067】
また、上記の実施の形態においては、第1領域上に第3領域が配置され、第2領域上に第4領域が配置されることとしたが、これに限らず、第1領域と第3領域および第2領域と第4領域とはそれぞれ、支持体の厚さ方向に見て隣り合って配置される構成としてもよい。すなわち、支持体の厚さ方向に見て、隣り合って配置される第1領域と第3領域との間において、第1領域および第3領域のそれぞれと接触するように第3材料層が配置され、隣り合って配置される第2領域と第4領域との間において、第2領域および第4領域のそれぞれと接触するように第3材料層が配置される構成を採用してもよい。このようにすることによっても、ノイズの低減を図ることができる。
【0068】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、どのような面からも制限的なものではないと理解されるべきである。本開示の範囲は上記した説明ではなく、請求の範囲によって規定され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0069】
11a 光センサ、12 熱電変換材料部、13 支持体
13a,13b 主面
13c,14c,23a,23b,23c,23d 外縁
14 ヒートシンク
14a,14b,32a,33a,34a,35a 面
14d 内周面
15,36a,36b 領域
16 凹部
16a,16b,16c,16d 内縁
21,21a,21b,21c,21d 第1材料層
22,22a,22b,22c,22d 第2材料層
23 赤外線吸収膜(光吸収膜)、24 第1電極、25 第2電極、26 絶縁膜、28a 第1領域、28b 第2領域、28c 第1の端部、28d 第2の端部、29a 第3領域、29b 第4領域、29c 第3の端部、29d 第4の端部
31a,31b 第3材料層
T1 厚さ、D* 感度
X,Y,Z 方向