(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-28
(45)【発行日】2025-05-09
(54)【発明の名称】車載装置、及び起動方法
(51)【国際特許分類】
G06F 11/07 20060101AFI20250430BHJP
G06F 11/14 20060101ALI20250430BHJP
【FI】
G06F11/07 151
G06F11/07 140R
G06F11/07 140J
G06F11/14 638
(21)【出願番号】P 2023532075
(86)(22)【出願日】2022-06-30
(86)【国際出願番号】 JP2022026360
(87)【国際公開番号】W WO2023277159
(87)【国際公開日】2023-01-05
【審査請求日】2023-11-17
(31)【優先権主張番号】P 2021110911
(32)【優先日】2021-07-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】眞鍋 真
(72)【発明者】
【氏名】三宅 正人
(72)【発明者】
【氏名】田内 真紀子
(72)【発明者】
【氏名】梶岡 繁
【審査官】多賀 実
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-197837(JP,A)
【文献】特開2020-201761(JP,A)
【文献】特開2013-025570(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 11/07
G06F 11/14
G06F 11/28-11/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信部(13)を介してクラウド(3)にアクセス可能な車載装置(2)であって、
少なくとも1つの物理的なコア(21~23)を有する第1制御部(11)と、
前記第1制御部により動作し、ハードウェアの制御に関する処理を行うよう構成された第1ユニット(100)と、
前記第1制御部により動作し、サービスの提供に関する処理を行うよう構成された第2ユニット(110)と、
起動要因の発生に応じて、前記第1制御部を起動するよう構成された第2制御部(15)と、を備え、
前記第1制御部は、前記第2制御部により起動されると、前記第1ユニットを、前記第2ユニットよりも先に起動するよう構成されており、
前記第2制御部は、前記第1ユニットの異常と、当該第2制御部の異常とを検出するよう構成されており、
前記第1ユニットは、前記第2ユニットの異常を検出するよう構成されており、
前記第2制御部は、前記第1又は第2ユニットの異常が検出された場合には、前記第1及び第2ユニットを再起動すると共に、当該第2制御部の異常が検出された場合には、前記第1及び第2ユニットと、当該第2制御部とを再起動するよう構成されている
車載装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車載装置において、
前記第1制御部により動作するファームウェア(120)をさらに備え、
前記第1ユニットは、第1OS(101)を有し、
前記第2ユニットは、第2OS(111)を有し、
前記ファームウェアは、前記第1制御部が前記第2制御部により起動されると、前記第1OSを起動した後、前記第2OSを起動するよう構成されている
車載装置。
【請求項3】
請求項1に記載の車載装置において、
前記第1ユニットは、第1OS(101)を有し、
前記第2ユニットは、第2OS(111)を有し、
前記第1OSは、前記第1制御部が前記第2制御部により起動されると、前記第2OSを起動するよう構成されている
車載装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のうちのいずれか1項に記載の車載装置において、
前記起動要因として、前記通信部での前記クラウドからの起動指示の受信が少なくとも設けられている
車載装置。
【請求項5】
請求項1から請求項3のうちのいずれか1項に記載の車載装置において、
前記車載装置の動作モードとして、前記第1及び第2ユニットが動作可能であると共に、前記第2制御部が動作するサービス実行モード(200)と、前記第1及び第2ユニットが停止すると共に、前記第2制御部の少なくとも一部の機能が動作する低電力モード(201)と、前記第1及び第2ユニットと前記第2制御部とが停止する停止モード(202)とが少なくとも設けられており、
前記サービス実行モード中、前記第1及び第2ユニットが、
前記車載装置が搭載された車両の運転停止操作に起因して動作を停止すると、前記動作モードが前記低電力モードに移行し、
前記低電力モード中、前記起動要因の発生に応じて前記第1及び第2ユニットが起動すると、前記動作モードが前記サービス実行モードに移行し、
前記低電力モード中、前記第2制御部は、前記車載装置の電源の電圧が低下すると動作を停止し、前記動作モードが前記停止モードに移行する
車載装置。
【請求項6】
請求項5に記載の車載装置において、
前記停止モード中、前記電源の電圧が予め定められた閾値を上回り、且つ、前記車両の運転開始操作がなされると、前記第2制御部は、動作を開始すると共に、前記第1制御部を起動し、前記サービス実行モードに移行する
車載装置。
【請求項7】
請求項1から請求項3のうちのいずれか1項に記載の車載装置において、
前記第1ユニットは、
前記車載装置が搭載された車両に関する情報、及び/又は、前記車両に搭載されたセンサを介して検出された情報を収集するための処理を少なくとも行い、
前記第2ユニットは、画像認識処理を少なくとも行う
車載装置。
【請求項8】
請求項5に記載の車載装置において、
前記第2制御部は、前記サービス実行モード中、前記車両の運転停止操作に起因して、前記第1制御部に停止を指示し、
前記第1制御部は、前記サービス実行モード中、前記第2制御部により前記停止が指示されると、前記第2ユニットを停止し、その後、前記第1ユニットを停止する
車載装置。
【請求項9】
請求項1から請求項3のうちのいずれか1項に記載の車載装置において、
前記第2ユニットは、コンテナ型仮想化がなされた少なくとも1つのアプリ(115)と、前記少なくとも1つのアプリを動作させるOS(111)と、を有し、
前記少なくとも1つのアプリは、前記OSに設けられたソフトウェアリソース(112~114)を使用して処理を行うよう構成されている
車載装置。
【請求項10】
請求項1から請求項3のうちのいずれか1項に記載の車載装置において、
前記第1ユニットは、少なくとも1つの第1アプリ(102)を有し、
前記第2ユニットは、少なくとも1つの第2アプリ(115)を有し、
前記第2制御部は、複数の前記起動要因のうちのいずれかの発生に応じて前記第1制御部を起動し、
前記第1ユニットは、前記第1制御部により起動されると、発生した前記起動要因に応じた前記第1アプリを起動するよう構成されており、
前記第2ユニットは、前記第1制御部により起動されると、発生した前記起動要因に応じた前記第2アプリを起動するよう構成されている
車載装置。
【請求項11】
請求項1から請求項3のうちのいずれか1項に記載の車載装置において、
前記第2制御部は、複数の前記起動要因のうちのいずれかの発生に応じて前記第1制御部を起動し、
前記第1制御部は、発生した前記起動要因に応じて、前記第1及び第2ユニットをそれぞれ起動する構成されている
車載装置。
【請求項12】
通信部(13)を介してクラウド(3)にアクセス可能な車載装置(2)の起動方法であって、
前記車載装置は、
少なくとも1つの物理的なコア(21~23)を有する第1制御部(11)と、
前記第1制御部により動作し、ハードウェアの制御に関する処理を行うよう構成された第1ユニット(100)と、
前記第1制御部により動作し、サービスの提供に関する処理を行うよう構成された第2ユニット(110)と、
第2制御部(15)と、を備え、
前記第2制御部は、起動要因の発生に応じて、前記第1制御部を起動し、
前記第1制御部は、前記第2制御部により起動されると、前記第1ユニットを起動した後、前記第2ユニットを起動し、
前記第2制御部は、前記第1ユニットの異常と、当該第2制御部の異常とを検出し、
前記第1ユニットは、前記第2ユニットの異常を検出し、
前記第2制御部は、前記第1又は第2ユニットの異常が検出された場合には、前記第1及び第2ユニットを再起動すると共に、当該第2制御部の異常が検出された場合には、前記第1及び第2ユニットと、当該第2制御部とを再起動する
起動方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本国際出願は、2021年7月2日に日本国特許庁に出願された日本国特許出願第2021-110911号に基づく優先権を主張するものであり、日本国特許出願第2021-110911号の全内容を参照により本国際出願に援用する。
【技術分野】
【0002】
本開示は、クラウドにアクセス可能な車載装置と、該車載装置の起動方法とに関する。
【背景技術】
【0003】
特許文献1に記載されているように、リアルタイム性を有するOS(以後、RTOS)と、リアルタイム性を有しない汎用的なOS(以後、GPOS)とが搭載された車載装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【0005】
しかしながら、発明者の詳細な検討の結果、このような車載装置の信頼性を向上させるためには、GPOS及びRTOSを適切に監視する必要があるという課題が見出された。
本開示の1つの局面は、車載装置の信頼性を向上させる技術を提供する。
【0006】
本開示の一態様は、通信部を介してクラウドにアクセス可能な車載装置であって、第1制御部と、第1ユニットと、第2ユニットと、第2制御部と、を備える。第1制御部は、少なくとも1つの物理的なコアを有する。第1ユニットは、第1制御部により動作し、ハードウェアの制御に関する処理を行うよう構成される。第2ユニットは、第1制御部により動作し、サービスの提供に関する処理を行うよう構成される。第2制御部は、起動要因の発生に応じて、第1制御部を起動するよう構成される。第1制御部は、第2制御部により起動されると、第1ユニットを、第2ユニットよりも先に起動するよう構成されている。第2制御部は、第1ユニットの異常と、当該第2制御部の異常とを検出するよう構成されている。第1ユニットは、第2ユニットの異常を検出するよう構成されている。第2制御部は、第1又は第2ユニットの異常が検出された場合には、第1及び第2ユニットを再起動すると共に、当該第2制御部の異常が検出された場合には、第1及び第2ユニットと、当該第2制御部とを再起動するよう構成されている。
【0007】
上記構成によれば、第1及び第2ユニットと第2制御部とにおける異常を、良好に検出できる。そして、第1又は第2ユニットの異常が検出された場合には、第1及び第2ユニットが再起動され、第2制御部の異常が検出された場合には、第1及び第2ユニットと、第2制御部とが再起動される。このため、第1及び第2ユニットの異常と、第2制御部の異常とに対し良好に対処できる。したがって、車載装置の信頼性を向上させることができる。
【0008】
なお、上記車載装置において、第1及び第2制御部により行われる手順を、起動方法として提供しても良い。このような起動方法によれば、同様の効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】モビリティIoTシステムの構成を示すブロック図である。
【
図2】データ収集装置の構成を示すブロック図である。
【
図3】データ収集装置のプログラムの構成を示すブロック図である。
【
図4】データ収集装置の各機能を実現するプログラムのブロック図である。
【
図5】データ収集装置の動作モードの状態遷移図である。
【
図7】第2マイコン監視処理のフローチャートである。
【
図8】第1ユニット監視処理のフローチャートである。
【
図9】低電力モード移行処理のフローチャートである。
【
図10】停止モード移行処理のフローチャートである。
【
図11】データ収集装置を含む複数のECUが車両に搭載される時の接続状態を示すブロック図である。
【
図12】変形例におけるデータ収集装置のプログラムの構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら、本開示の実施形態を説明する。
[1.全体の構成]
本実施形態のモビリティIoTシステム1は、
図1に示すように、広域無線通信網NWを介してクラウド3にアクセス可能な複数のデータ収集装置2と、クラウド3により提供される管理センター3a及びサービス提供サーバ3bとを備える。なお、IoTとは、Internet of Thingsの略である。
【0011】
データ収集装置2は、車両に搭載され、管理センター3aとデータ通信を行う機能を有する。以後、データ収集装置2が搭載された車両を、自車両と記載する。
管理センター3aは、モビリティIoTシステム1を管理する。管理センター3aは、広域無線通信網NWを介して、複数のデータ収集装置2及びサービス提供サーバ3bとの間でデータ通信を行う機能を有する。
【0012】
サービス提供サーバ3bは、例えば、車両の運行を管理するサービスを提供するためのサーバである。なお、モビリティIoTシステム1は、サービス内容が互いに異なる複数のサービス提供サーバを備えてもよい。
【0013】
[2.データ収集装置の構成]
データ収集装置2は、
図2に示すように、第1マイコン11と、車両インターフェース(以後、車両I/F)12と、通信部13と、記憶部14と、第2マイコン15とを備える。
【0014】
第1マイコン11は、物理的なコアである第1~第3コア21~23と、ROM24と、RAM25と、フラッシュメモリ26と、入出力部27と、バス28とを備える。
第1マイコン11の各種機能は、第1~第3コア21~23が非遷移的実体的記録媒体に格納されたプログラムを実行することにより実現される。この例では、ROM24及びRAM25が、プログラムを格納した非遷移的実体的記録媒体に該当する。また、このプログラムの実行により、プログラムに対応する方法が実行される。なお、第1~第3コア21~23により実現される機能の一部又は全部を、少なくとも1つのIC等のハードウェアにより実現しても良い。
【0015】
フラッシュメモリ26は、データ書き換え可能な不揮発性メモリである。
入出力部27は、第1マイコン11の外部と第1~第3コア21~23との間でデータの入出力を行わせるための回路である。
【0016】
バス28は、第1~第3コア21~23、ROM24、RAM25、フラッシュメモリ26、及び入出力部27を、互いにデータ入出力可能に接続する。
車両I/F12は、データ収集装置2と、他の電子制御装置及びセンサ等との間で信号の入出力を行わせるための入出力回路である。車両I/F12は、例えば、電源電圧入力ポート、汎用入出力ポート、CAN通信ポート、イーサネット通信ポート、無線LAN通信ポート、近距離無線通信ポート、GPS通信ポート、及びカメラ通信ポート等を備える。
【0017】
電源電圧入力ポートは、データ収集装置2の電源となる自車両のバッテリに接続されており、電源電圧入力ポートには電源の電圧が入力される。
CAN通信ポートは、CAN通信プロトコルに従ってデータの送受信を行うためのポートである。イーサネット通信ポートは、イーサネット通信プロトコルに基づいてデータの送受信を行うためのポートである。CANは、Controller Area Networkの略である。CAN及びイーサネットは、登録商標である。
【0018】
CAN通信ポート及びイーサネット通信ポートには、自車両に搭載された他の電子制御装置が接続される。これにより、データ収集装置2は、他の電子制御装置との間で通信フレームの送受信を行うことができる。
【0019】
また、無線LAN通信ポートは、無線LANによりデータの送受信を行うためのポートである。近距離無線通信ポートは、例えば、Bluetooth(登録商標)等の近距離無線通信技術によりデータの送受信を行うためのポートである。これらのポートは、通信制御装置が接続可能となっており、データ収集装置2は、ポートに接続された通信制御装置を介して、他の電子制御装置とデータの送受信を行う。
【0020】
また、GPS通信ポートは、GPSを備える装置が接続されるポートであり、データ収集装置2は、GPS通信ポートを介してGPSを制御する。
また、カメラ通信ポートは、自車両に搭載されたカメラが接続されるポートである。カメラは、自車両の周辺、及び/又は、自車両内を撮影するよう構成されており、データ収集装置2は、カメラ通信ポートを介してカメラを制御する。
【0021】
この他にも、車両I/F12における汎用入出力ポートには、例えば、機械学習を行うための装置又はモニタ等といった様々な装置が接続され得る。
通信部13は、通信ポートを介してデータ収集装置2に接続される。通信部13は、例えば、LTE等の通信規格に従った無線通信により広域無線通信網NWにアクセスし、広域無線通信網NWを介してクラウド3とデータ通信を行う。
【0022】
記憶部14は、各種データを記憶するための記憶装置である。
第2マイコン15は、第1マイコン11の起動及び停止を行う。なお、第2マイコン15は、リアルタイム性を有する処理を実行するよう構成されており、第1マイコン11に比べて処理負荷が低くなっている。
【0023】
図11に示すように、自車両には、一つのECU210と、複数のECU220と、複数のECU230と、車外通信装置240と、車内通信網250とが搭載される。ECUは、Electronic Control Unitの略である。
【0024】
ECU210は、複数のECU220を統括することにより、車両全体として連携がとれた制御を実現する。
ECU220は、車両における機能によって区分けしたドメイン毎に設けられ、主として、そのドメイン内に存在する複数のECU230の制御を実行する。各ECU220は、それぞれ個別に設けられた下層ネットワーク(例えば、CAN)を介して配下のECU230と接続される。ECU220は、配下のECU230に対するアクセス権限などを一元的に管理し利用者の認証等を行う機能を有する。ドメインは、例えば、パワートレーン、ボデー、シャシおよびコックピット等である。
【0025】
パワートレーンのドメインに属するECU220に接続されるECU230は、例えば、エンジンを制御するECU230、モータを制御するECU230、および、バッテリを制御するECU230等を含む。
【0026】
ボデーのドメインに属するECU220に接続されるECU230は、例えば、エアコンを制御するECU230、および、ドアを制御するECU230等を含む。
シャシドメインに属するECU220に接続されるECU230は、例えば、ブレーキを制御するECU230、および、ステアリングを制御するECU230等を含む。
【0027】
コックピットのドメインに属するECU220に接続されるECU230は、例えば、メータおよびナビゲーションの表示を制御するECU230、および、車両の乗員によって操作される入力装置を制御するECU230等を含む。
【0028】
車外通信装置240は、広域無線通信網NWを介して、車両外の通信装置(例えば、クラウドサーバ)との間でデータ通信を行う。
車内通信網250は、CAN FDとイーサネットとを備える。CAN FDは、CAN with Flexible Data Rateの略である。CAN FDは、ECU210と各ECU220および車外通信装置240とをバス接続する。イーサネットは、ECU210と各ECU220および車外通信装置240との間を個別に接続する。
【0029】
ECU210は、CPU210a、ROM210bおよびRAM210c等を備えたマイクロコンピュータを中心に構成された電子制御装置である。マイクロコンピュータの各種機能は、CPU210aが非遷移的実体的記録媒体に格納されたプログラムを実行することにより実現される。この例では、ROM210bが、プログラムを格納した非遷移的実体的記録媒体に該当する。また、このプログラムの実行により、プログラムに対応する方法が実行される。なお、CPU210aが実行する機能の一部または全部を、一つあるいは複数のIC等によりハードウェア的に構成してもよい。また、ECU210を構成するマイクロコンピュータの数は1つでも複数でもよい。
【0030】
ECU220、ECU230および車外通信装置240は、いずれも、ECU210と同様に、CPU、ROMおよびRAM等を備えたマイクロコンピュータを中心に構成された電子制御装置である。また、ECU220、ECU230および車外通信装置240を構成するマイクロコンピュータの数は1つでも複数でもよい。ECU220は、1以上のECU230を統括するECUであり、ECU210は、1以上のECU220を統括する、または車外通信装置240を含む車両全体のECU220,230を統括するECUである。
【0031】
データ収集装置2は、ECU210との間でデータ通信可能となるようにECU210に接続される。すなわち、データ収集装置2は、ECU210を介して、ECU210,220,230の情報を受信する。また、データ収集装置2は、車両制御に関する要求を、ECU210へ送信したり、ECU210を介してECU220,230へ送信したりする。
【0032】
[3.プログラムの構成]
データ収集装置2の第1マイコン11は、ROM24に記憶されているプログラムや、RAM25にロードされたプログラムを実行する。これらのプログラムは、第1及び第2ユニット100、110と、ファームウェア120とを備える(
図3参照)。
【0033】
第1ユニット100は、第1コア21により実行され、リアルタイムオペレーティングシステム(以後、RTOS)101と、少なくとも1つの第1アプリ102とを備える。しかし、第1ユニット100は、第1アプリ102を備えなくても良い。なお、アプリとは、アプリケーションの略である。本実施形態では、第1ユニット100は、一例として、複数の第1アプリ102を備える。第1アプリ102は、主にハードウェアの制御に関する処理を行い、第1アプリ102が実行する処理は、リアルタイム性を有している。また、RTOS101は、第1アプリ102による処理のリアルタイム性を確保することができるように、第1アプリ102を動作させる。第1アプリ102は、例えば、データ収集装置2に接続されるカメラ(図示せず)を制御したり、データ収集装置2と接続されるECUと通信を行い、該ECUを介して他の電子制御装置への指示を行ったりする。
【0034】
第2ユニット110は、第2コア22により実行され、汎用オペレーティングシステム(以後、GPOS)111と、少なくとも1つの第2アプリ115とを備える。なお、本実施形態では、第2ユニット110は、一例として、複数の第2アプリ115を備える。第2アプリ115は、主に、ユーザにサービスを提供するための処理を実行する。より詳しくは、第2アプリ115は、クラウド3により提供されるサービスを実現するための処理を行っても良いし、クラウド3と連携することなく提供されるサービスを実現するための処理を行っても良い。また、第2アプリ115が実行する処理は、リアルタイム性を有していない。また、GPOS110は、リアルタイム性を確保することなく第2アプリ115を動作させる基本ソフトウェアである。なお、GPOS111として、例えば、Linux(登録商標)が用いられても良い。
【0035】
また、GPOS111は、デバイスドライバ112、ライブラリ113、及びパッケージ114を備え、これらは、GPOS111におけるソフトウェアリソースを構成する。なお、デバイスドライバ112は、第1マイコン11又はその周辺に設けられたハードウェアリソースを制御するためのプログラムである。また、ライブラリ113及びパッケージ114は、特定の機能を実現するためのプログラムである。
【0036】
また、GPOS111は、コンテナエンジンを備えており、GPOS111にて動作する全部又は一部の第2アプリ115は、コンテナ型仮想化がなされている。そして、コンテナ型仮想化がなされた第2アプリ115は、GPOS111に設けられたデバイスドライバ112、ライブラリ113、及びパッケージ114を使用して処理を行うよう構成されている。
【0037】
無論、第2ユニット110は、コンテナ型仮想化がなされていない第2アプリ115を備えていても良い。そして、このような第2アプリ115もまた、GPOS110に設けられたデバイスドライバ112、ライブラリ113、及びパッケージ114を使用して処理を行うよう構成されていても良い。
【0038】
ファームウェア120は、第3コア23により実行され、第1マイコン11のブート処理や、第1及び第2ユニット100、110の起動及び停止を行う。
また、第1マイコン11のRAM25の一部は、第1~第3コア21~23によりアクセス可能な共有メモリとして構成されている。そして、第1及び第2ユニット100、110と、ファームウェア120とは(換言すれば、第1~第3コア21~23は)、共有メモリ及びバス28を介してデータの送受信を行う。
【0039】
[4.機能について]
データ収集装置2の第1マイコン11は、車両機能とサービス機能とを提供するための処理を行う(
図4参照)。車両機能とは、主に、データ収集装置2、及びデータ収集装置2に接続される電子制御装置の制御に関する機能である。また、データ収集装置2は、クラウド3により提供されるサービスを実現するための処理を行うエッジとしての機能を有している。サービス機能は、エッジとしての機能に相当する。
【0040】
車両機能の一部は、RTOS101により動作する第1アプリ102により実現される。この他にも、車両機能を実現するためのプログラムとして、車両管理部130が設けられている。車両管理部130は、セキュリティ管理部131と、車両権限管理部132と、車両ユーザ管理部133と、車両状態管理部134とを備える。
【0041】
セキュリティ管理部131は、車両のセキュリティに関する機能を提供する。具体的には、例えば、セキュリティ管理部131は、車両データ等の暗号化といった、車両データ等の改ざん防止のための処理を行っても良い。
【0042】
車両権限管理部132は、データ収集装置2を使用するユーザの権限に応じて、車両データ等へのアクセスを制限する。
車両ユーザ管理部133は、データ収集装置2を使用するユーザの追加及び削除を行うと共に、ユーザの権限を設定する。
【0043】
車両状態管理部134は、RTOS101の起動及び停止を行うと共に、データ収集装置2の電源を管理する。
この他にも、車両機能を実現するためのプログラムとして、API140と、標準化処理部141と、車両データ取得部142と、クラウド通信部143と、GPS制御部144と、映像制御部145と、センサ制御部146とが設けられている。
【0044】
API140は、車両機能を実現するためのプログラムを利用する際のインターフェースを提供する。API140は、ユーザに与えられた権限に応じて、プログラムの利用を制限するよう構成されている。
【0045】
標準化処理部141は、車両データ取得部142が取得した車両データを標準的な形式に変換し、変換後の車両データを標準化車両データとしてフラッシュメモリ26に保存する。
【0046】
車両データ取得部142は、車両I/F12を介して、自車両に搭載された電子制御装置から車両データを有する通信フレームを取得する。なお、車両データとは、自車両の状態を示すデータである。具体的は、例えば、車速、操舵角といった走行状態、車種等といった自車両の属性、燃料又は自車両のバッテリの残量等が、車両データに該当し得る。
【0047】
クラウド通信部143は、通信部13を介してクラウド3と通信を行う。
GPS制御部144は、車両I/F12に接続されたGPSを制御し、自車両の現在地等を検出する。
【0048】
映像制御部145は、車両I/F12に接続されたカメラを制御し、自車両の周辺又は車内を撮影すると共に、撮影画像データを取得する。
センサ制御部146は、車両I/F12に接続されたセンサ(例えば、UWB等)を制御し、センサによる検出データを取得する。
【0049】
なお、セキュリティ管理部131、車両状態管理部134、車両データ取得部142、映像制御部145、及びセンサ制御部146は、RTOS101により動作し、第1ユニット100に含まれる。また、車両権限管理部132、車両ユーザ管理部133、クラウド通信部143、及びGPS制御部144は、GPOS111により動作し、これらの部位は、第2ユニット110に含まれる。一方、API140及び標準化処理部141は、RTOS101とGPOS111とにより動作し、第1及び第2ユニット100、110に含まれる。
【0050】
一方、サービス機能の一部は、GPOS111により動作する第2アプリ115により実現される。具体的には、例えば、第2アプリ115は、車両I/F12を介して接続されたカメラ等のセンサを用いて不審者を検出しても良いし、車両I/F12を介して接続された衝突センサ等を用いて、自車両の事故を検出しても良い。この他にも、車両機能を実現するためのプログラムとして、サービス管理部150、API160、及び車両データ提供部161を備える。また、サービス管理部150は、セキュリティ管理部151、プロセス管理部152、サービス権限管理部153、サービスユーザ管理部154、及びエッジ状態管理部155を備える。
【0051】
セキュリティ管理部151は、データ収集装置2がクラウド3にアクセスする際のセキュリティを確保するための処理を行う。具体的には、セキュリティ管理部151は、例えば、クラウド3に送信するデータの暗号化、クラウド3から受信した暗号化されたデータの復号、クラウド3及びデータ収集装置2への不正アクセスを防止するための処理等を行う。
【0052】
プロセス管理部152は、GPOS111で動作するプロセスを管理するプログラムであり、これらのプロセスへのリソースの割り当て等を行う。
サービス権限管理部153は、ユーザに与えられた権限に応じて、クラウド3により提供されるサービスへのアクセスを制限する。
【0053】
サービスユーザ管理部154、ユーザに与えられた権限に応じて、自車両に搭載された機能へのアクセスを制限する。
エッジ状態管理部155は、GPOS111の起動及び停止を行うと共に、データ収集装置2の電源に関する処理を行う。
【0054】
API160は、サービス機能を実現するためのプログラムを利用する際のインターフェースを提供する。API160は、ユーザに与えられた権限に応じて、プログラムの利用を制限するよう構成されている。
【0055】
車両データ提供部161は、フラッシュメモリ26に保存されている標準化車両データをクラウド3に送信する。クラウド3では、受信した標準化車両データに基づき、仮想空間であるデジタルツインにて自車両の状態が再現される。
【0056】
この他にも、例えば、第2アプリ115、GPOS111に設けられたライブラリ113又はパッケージ114(換言すれば、第2ユニット110)には、画像認識機能が設けられていても良い。そして、例えば、該画像認識機能により、撮影画像データにて取得された撮影画像データを解析し、不審者等の検出が行われても良い。
【0057】
[5.動作モードについて]
データ収集装置2は、動作モードとして、サービス実行モード200と、低電力モード201と、停止モード202と、初期設定モード203と、メンテナンスモード204と、開発モード205とが少なくとも設けられている(
図5参照)。なお、データ収集装置2の動作中は、停止モード202以外の動作モードとなる。
【0058】
サービス実行モード200は、データ収集装置2によるサービスの提供が可能な状態であり、第1マイコン11及び第2マイコン15は動作している。つまり、サービス実行モード200中は、第1及び第2ユニット100、110は動作可能となっている。
【0059】
低電力モード201は、データ収集装置2の一部の機能を停止させることでデータ収集装置2の消費電力を抑制する動作モードである。低電力モード201では、第1マイコン11における第1及び第2ユニット100、110が少なくとも停止する。本実施形態では、一例として、低電力モード201では第1マイコン11が停止する。また、低電力モード201では、第2マイコン15の少なくとも一部の機能は動作している。
【0060】
停止モード202は、データ収集装置2の動作が停止した状態である。無論、停止モードでは、第1マイコン11及び第2マイコン15の動作が停止する。
また、初期設定モード203は、データ収集装置2の初期設定が可能な動作モードであり、メンテナンスモード204は、データ収集装置2のメンテナンスが可能な動作モードである。また、開発モード205は、データ収集装置2の開発時に、例えばデバック等の作業を行うための動作モードである。
【0061】
そして、低電力モード201中、いずれかの起動要因が発生すると、動作モードがサービス実行モード200に移行する。詳細は後述するが、本実施形態では、一例として、自車両の運転開始操作(例えば、パワースイッチ又はキースイッチをONする操作)がなされたこと、及び、クラウド3又は他の電子制御装置からの起動指示を受け付けること等が、起動要因となっている。低電力モード201中においても、バッテリからデータ収集装置2には電力が供給されている。このため、データ収集装置2は、例えば、通信部13を介してクラウド3からの指示を受付可能であり、また、車両I/F12を介して、センサや他の電子制御装置からの入力を受付可能である。
【0062】
また、サービス実行モード200中、自車両の運転停止操作がなされ、運転停止状態が予め定められた待機時間にわたって継続すると、動作モードが低電力モード201に移行する。なお、クラウド3からの指示により、動作モードが低電力モード201に移行してもよい。また、運転停止操作とは、例えば、自車両のパワースイッチ又はキースイッチをOFFする操作を意味する。また、運転停止状態とは、例えば、パワースイッチ又はキースイッチがOFFされた状態を意味する。
【0063】
また、低電力モード201中、自車両の運転停止状態が、予め定められた停止時間(一例として、12時間程度)にわたって継続すると、動作モードが停止モード202に移行する。この他にも、低電力モード201中、停止時間の経過前であっても、電源の電圧が第1閾値を下回ると、動作モードが停止モード202に移行する。また、クラウド3からの指示により、動作モードが停止モード202に移行してもよい。
【0064】
なお、電源の電圧が第1閾値を下回ったことにより、動作モードが低電力モード201から停止モード202に移行した場合には、電源の電圧が第2閾値を上回ると、動作モードが停止モード202から低電力モード201に移行しても良い。なお、第2閾値は、第1閾値と同じ値であっても良いし、第1閾値よりも大きい値であっても良い。
【0065】
また、データ収集装置2には、停止モード202から移行する動作モードを定める設定スイッチが設けられている。そして、停止モード202中、自車両の運転開始操作がなされ、且つ、電源の電圧が第2閾値を上回る場合には、設定スイッチの状態に応じて、動作モードが、サービス実行モード200と、初期設定モード203と、メンテナンスモード204と、開発モード205とのうちのいずれかに移行する。
【0066】
なお、初期設定モード203中、メンテナンスモード204中、及び、開発モード205中においては、データ収集装置2に対し、作業の完了を示す操作がなされると、動作モードが停止モード202に移行する。
【0067】
[6.動作の監視について]
サービス実行モード200中、GPOS111により動作するプロセス管理部152では、第2アプリ115の動作を監視する。そして、例えば暴走等の異常が検出された第2アプリ115は、プロセス管理部152により再起動される。
【0068】
また、上述したように、第1マイコン11の第1コア21で動作する第1ユニット100は、リアルタイム性を有するRTOS101を有しており、第2コア22で動作する第2ユニット110は、リアルタイム性を有さないGPOS111を有している。そして、第2ユニット110は、第1ユニット100に比べて処理負荷が大きく、第1ユニット100は、第2ユニット110に比べて信頼性が高い。また、第2マイコン15は、リアルタイム性を有する処理を実行し、該処理は、第1、第2ユニット100、110の各々で実行される処理よりも負荷が低く、信頼性が高い。
【0069】
そこで、サービス実行モード200中、第1ユニット100(具体的には、例えば、RTOS101又は第1アプリ102)は、第2ユニット110の動作を監視する。また、サービス実行モード200中、第2マイコン15は、第1ユニット100の動作を監視する。また、サービス実行モード200中、第2マイコン15は、例えば、ウォッチドックタイマ等により、当該第2マイコン15の動作を監視する。
【0070】
そして、
図5に示すように、第1ユニット100により第2ユニット110の異常が検出された場合(210)、及び、第2マイコン15により第1ユニット100の異常が検出された場合(211)には、第1及び第2ユニット100、110が再起動される(213)。また、第2マイコン15の異常が検出された場合には、第2マイコン15と、第1及び第2ユニット100、110とが再起動される(214)。
【0071】
[7.起動処理について]
次に、低電力モード中、起動要因の発生に応じて第1及び第2ユニット100、110を起動し、動作モードをサービス実行モードとする起動処理について、
図6のフローチャートを用いて説明する。
【0072】
本実施形態では、一例として、以下の複数の起動要因が設けられている。
(a)車両I/F12にて、自車両の運転開始操作がなされた旨の通知を受け取る。
(b)通信部13にて、クラウド3から起動指示を受け付ける。
【0073】
(c)車両I/F12にて、例えば、CAN、イーサネット、無線LAN、近距離無線通信等を介して、他の電子制御装置から起動指示を受け付ける。
そして、起動要因が生じた場合には、車両I/F12又は通信部13から、第2マイコン15に対し、起動信号が出力される。
【0074】
また、この他にも、例えば、データ収集装置2に接続されたセンサにて所定の事象が検出されたことを、起動要因としても良い。具体的には、例えば、自車両への不審者等の物体の接近を検出する近接センサを第2マイコン15に接続し、該接近を検出した近接センサが第2マイコン15に出力する信号を、起動信号としても良い。また、例えば、自車両への衝突等により生じた振動を検出する振動センサを第2マイコン15に接続し、該振動を検出した振動センサが第2マイコン15に出力する信号を、起動信号としても良い。
【0075】
そして、低電力モード中、第2マイコン15は、起動信号の入力の有無を定期的に監視し、起動信号が入力されると(S300:Yes)、第1マイコン11を起動する(S305)。このとき、第1マイコン11では、第2マイコン15からの指示にてファームウェア120が起動し、ブート処理が開始される。また、このとき、第2マイコン15は、いずれの起動要因が発生したかを起動信号等に基づき判定し、判定結果を第1マイコン11に通知する。
【0076】
そして、ファームウェア120は、第1ユニット100を起動する。具体的には、ファームウェア120は、RTOS110を起動する(S310)。なお、一例として、RTOS110の起動には、およそ700msの時間を要する。その後、RTOS110は、起動要因に応じて第1アプリ102を選択し(S315)、選択した第1アプリ102を起動する(S320)。これにより、起動要因に応じて選択されたハードウェアの制御が開始される。なお、ファームウェア120は、後述する初期化処理(S325)の開始後であって、該初期化処理の完了前に、RTOS110を起動しても良い。また、ファームウェア120は、発生した起動要因に基づきRTOS110を起動するか否かを判定し、特定の起動要因が発生した場合に、RTOS110(換言すれば、第1ユニット100)を起動するようにしても良い。
【0077】
ファームウェア120は、RTOS103の起動後、初期化処理を実行する(S325)。初期化処理では、例えば、GPOS111のカーネルのメインメモリ(換言すれば、RAM25)へのロード等といった、第2ユニット110の初期化が行われる。この他にも、初期化処理では、第2コア22のポートの設定等が行われても良い。
【0078】
初期化処理が完了すると、ファームウェア120は、第2ユニット110を起動する。具体的には、ファームウェア120は、GPOS111を起動する(S330)。なお、一例として、GPOS111の起動には、およそ7sの時間を要する。そして、GPOS111は、起動要因に応じて第2アプリ115を選択し(S335)、選択した第2アプリ115を起動する(S340)。これにより、起動要因に応じて選択されたサービスの提供が開始される。なお、ファームウェア120は、発生した起動要因に基づきGPOS111を起動するか否かを判定し、特定の起動要因が発生した場合に、GPOS111(換言すれば、第2ユニット110)を起動するようにしても良い。
【0079】
そして、動作モードが、低電力モードからサービス実行モードに移行する(S345)。
なお、上述したように、停止モード202中、自車両の運転開始操作がなされ、且つ、電源の電圧が第2閾値を上回る場合には、設定スイッチの状態に応じて、動作モードが、サービス実行モード200等に移行するが、この場合にも、起動処理と同様の処理により第1マイコン11が起動される。
【0080】
具体的には、停止モード202中、電源の電圧が第2閾値を上回る場合には、自車両の運転開始操作がなされると、第2マイコン15に起動信号が入力され、第2マイコン15が起動する。その後、起動処理と同様の処理により、第1マイコン11が起動される。なお、この場合、設定スイッチの状態に応じて、起動するアプリ及びOSが選択されても良い。また、この場合、S345では、設定スイッチの状態に応じて、動作モードが、サービス実行モードと、初期設定モードと、メンテナンスモードと、開発モードとのうちのいずれかに移行する。
【0081】
[8.起動処理の具体例]
上述したように、データ収集装置2では、動作モードがサービス実行モードに移行する際、起動要因に応じて起動するアプリ及びOSが選択され得る。
【0082】
具体的には、例えば、データ収集装置2では、スマートフォン等の携帯端末を用いて自車両の施錠及び開錠を行うデジタルキーサービスが提供され得る。そして、デジタルキーサービスを提供する際、データ収集装置2は、クラウド3と連携することなく、自車両に搭載された装置を制御する。
【0083】
すなわち、低電力モード中、デジタルキーサービスにより携帯端末からデータ収集装置2に対し自車両の施錠指示又は開錠指示がなされると、データ収集装置2は、サービス実行モードに移行し、自車両の施錠又は開錠を行うための処理を実行する。
【0084】
デジタルキーサービスを提供する場合、施錠指示及び開錠指示が起動要因となる。車両I/F12は、携帯端末から施錠指示又は開錠指示を受け付けると、第2マイコン15に起動信号を出力し、起動信号が入力された第2マイコン15は、第1マイコン11を起動する。そして、第1マイコン11のファームウェア120は、RTOS110を起動し、GPOS111は起動しない。また、RTOS110は、第1アプリ102のうち、デジタルキーサービスに関連する第1アプリ102を起動し、他の第1アプリ102は起動しない。
【0085】
無論、デジタルキーサービス以外の他のサービスの提供を開始する指示が、起動要因となる場合も想定される。そして、このような起動要因の発生により動作モードが低電力モードからサービス実行モードに移行した場合において、GPOS111と一部の第2アプリ115とが起動し、RTOS110は起動しないという場合も想定される。
【0086】
[9.第2マイコン監視処理について]
次に、サービス実行モード中、第2マイコン15が、第1ユニット100及び当該第2マイコン15の異常を検出する第2マイコン監視処理について、
図7のフローチャートを用いて説明する。
【0087】
本実施形態では、第2マイコン15の異常は、一例として、第2マイコン15のハードウェアリソースであるウォッチドックタイマにより検出される。無論、第2マイコン15は、ウォッチドックタイマ以外の方法で当該第2マイコン15の異常を検出しても良い。第2マイコン15の異常が検出された場合には(S400:Yes)、第2マイコン15がリセットされ、第2マイコン15が再起動する(S405)。
【0088】
そして、再起動された第2マイコン15は、第1マイコン11(又は、第1及び第2コア21、22)をリセットし、その後、起動処理のS305~S340と同様にして、第1及び第2ユニット100、110を起動する(S410)。なお、この時、ファームウェア120、RTOS101、及びGPOS111は、異常が検出される直前に動作していたOS及びアプリを起動しても良い。
【0089】
一方、ウォッチドックタイマにより異常が検出されない場合には(S400:No)、第2マイコン15は、第1ユニット100の異常が発生したか否かを定期的に判定する(S415)。具体的には、例えば、第1ユニット100から第2マイコン15に対し定期的に通知を行うようにし、該通知が無い場合には、第1ユニット100に異常が生じたとみなされても良い。
【0090】
そして、第1ユニット100の異常が発生した場合には(S415:Yes)、S410と同様にして、第1マイコン11(又は、第1及び第2コア21、22)がリセットされ、その後、第1及び第2ユニット100、110が起動される(S420)。そして、本処理は終了する。
【0091】
[10.第1ユニット監視処理について]
次に、サービス実行モード中、第1ユニット100が、第2ユニット110の異常を検出する第1ユニット監視処理について、
図8のフローチャートを用いて説明する。第1ユニット監視処理は、例えば、RTOS101又は第1アプリ102により、定期的に実行される。
【0092】
S500では、第1ユニット100は、第2ユニット110に異常が発生したか否かを判定する。具体的には、例えば、第2ユニット110から第1ユニット100に対し定期的に通知を行うようにし、該通知が無い場合には、第2ユニット110に異常が生じたとみなされても良い。そして、肯定判定が得られた場合には(S500:Yes)、S505に移行し、否定判定が得られた場合には(S500:No)、本処理を終了する。
【0093】
S505では、第1ユニット100は、第2ユニット110の異常を第2マイコン15に通知する。そして、第2マイコン15は、第1マイコン11(又は、第1及び第2コア21、22)をリセットする。その後、起動処理のS305~S350と同様にして、第1及び第2ユニット100、110が起動され、本処理は終了する。なお、第2ユニット110の異常の状態によっては、第1マイコン11のリセットに替えて、第2ユニット110のソフトウェアリセットが行われても良い。
【0094】
[11.低電力モード移行処理について]
次に、サービス実行モード中、運転停止操作に起因して動作モードを低電力モードに移行させる低電力モード移行処理について、
図9のフローチャートを用いて説明する。なお、低電力モード移行処理は、サービス実行モード中、定期的に実行される。
【0095】
S600では、第2マイコン15は、車両I/F12を介して運転停止操作を検出した後、運転停止状態が待機時間にわたって継続したか否かを判定する。そして、肯定判定が得られた場合には(S600:Yes)、S605に移行し、否定判定が得られた場合には(S600:No)、本処理は終了する。
【0096】
S605では、第2マイコン15は、第1マイコン11に対し停止を指示する。そして、該指示を受け付けた第1マイコン11では、まず、第2ユニット110が停止する(S610)。具体的には、例えば、該指示がなされると、RTOS101は、GPOS111で実行中のプロセスを停止させ、その後、例えばHALTコマンドにより、GPOS111を停止させても良い。
【0097】
そして、GPOS111が停止すると、RTOS101は動作を停止する(S615)。これにより、第1ユニット100が停止し、動作モードが低電力消費モードに移行する(S620)。
【0098】
[12.停止モード移行処理について]
次に、低電力モード中、電源の電圧低下等に起因して動作モードを停止モードに移行させる停止モード移行処理について、
図10のフローチャートを用いて説明する。なお、停止モード移行処理は、低電力モード中、定期的に実行される。
【0099】
S700では、第2マイコン15は、車両I/F12を介して取得した電源の電圧が第1閾値を下回るか否かを判定する。そして、肯定判定が得られた場合には(S700:Yes)、S710に移行し、否定判定が得られた場合には(S700:No)、S705に移行する。
【0100】
S705では、第2マイコン15は、低電力モードが停止時間にわたって継続したか否かを判定する。そして、肯定判定が得られた場合には(S705:Yes)、S710に移行し、否定判定が得られた場合には(S705:No)、本処理を終了する。
【0101】
S710では、第2マイコン15は動作を停止し、動作モードが低電力モードに移行する(S715)。そして、本処理は終了する。
[13.変形例]
変形例のデータ収集装置2では、第1マイコン11は、第1及び第2コア21、22を備え、第3コア23を備えない。また、第1マイコン11を動作させるプログラムとして、第1及び第2ユニット100、110が設けられるが、ファームウェア120は設けけられない(
図12参照)。
【0102】
ファームウェア120により行われていた処理は、第1ユニット100のRTOS101により行われる。つまり、第1マイコン11のブート処理や、第2ユニット110の起動及び停止は、RTOS101により行われる。なお、これらの処理は、第1ユニット100のRTOS101以外のプログラムにより行われても良い。
【0103】
具体的には、起動処理のS305では、第1マイコン11が起動されると、ファームウェア120は起動せず、続くS310にて、第1マイコン11の起動に伴いRTOS101が起動し、ブート処理が開始される。
【0104】
また、起動処理のS325では、RTOS101が初期化処理を実行する。そして、RTOS101は、初期化処理が完了すると、第2ユニット110(具体的には、GPOS111)を起動する(S330)。なお、RTOS101は、発生した起動要因に基づきGPOS111を起動するか否かを判定し、特定の起動要因が発生した場合に、GPOS111(換言すれば、第2ユニット110)を起動するようにしても良い。
【0105】
[14.効果]
上記実施形態によれば、以下の効果を奏する。
(1)上記実施形態によれば、第1ユニット100での処理は、第2ユニット110の処理よりも負荷が低く、信頼性が高い。また、第2マイコン15での処理は、第1ユニット100での処理よりも負荷が低く、信頼性が高い。そして、第2ユニット110の異常は第1ユニット100により検出され、第1ユニット100の異常は第2マイコン15により検出される。また、第2マイコン15の異常は、第2マイコン15自身により検出される。このため、第1及び第2ユニット100、110と第2マイコン15とにおける異常を、良好に検出できる。
【0106】
そして、第1又は第2ユニット100、110の異常が検出された場合には、第1及び第2ユニット100、110が再起動され、第2マイコン15の異常が検出された場合には、第1及び第2ユニット100、110と、第2マイコン15とが再起動される。このため、第1及び第2ユニット100、110の異常と、第2マイコン15の異常とに対し良好に対処できる。したがって、データ収集装置2の信頼性を向上させることができる。
【0107】
(2)また、第1マイコン11が第2マイコン15により起動されると、ファームウェア120は、RTOS101を起動した後、GPOS111を起動する。このため、好適にRTOS101及びGPOS111を起動できる。
【0108】
(3)一方、変形例においては、第1マイコン11にはファームウェア120が設けられておらず、第1マイコン11が第2マイコン15により起動されると、RTOS101が起動され、RTOS101がGPOS111を起動する。このような構成を有する場合であっても、好適にRTOS101及びGPOS111を起動できる。
【0109】
(4)また、データ収集装置2の起動要因の1つとして、クラウド3からの起動指示が設けられている。このため、データ収集装置2の利便性が向上する。
(5)また、低電力モード中、起動要因が発生すると、第1マイコン11では、ハードウェアの制御に関する処理を行う第1ユニット100が起動され、その後、サービスの提要に関する処理を行う第2ユニット110が起動される。このため、データ収集装置2の起動時には、データ収集装置2でのサービスの提供に必要なデータの収集を早期に開始できる。したがって、データ収集装置2の起動後、より早期に収集されたデータに基づくサービスを提供できる。
【0110】
(6)また、データ収集装置2の動作モードとして、サービス実行モード200と、低電力モード201と、停止モード202とが設けられている。そして、起動要因の発生、又は自車両の運転停止操作等に応じて、動作モードが変化する。このため、データ収集装置2の起動及び停止を好適に行うことができる。
【0111】
(7)また、停止モード202中、運転開始操作がなされると、低電力モード201を経由することなく、動作モードがサービス実行モード200に移行する。このため、サービスの提供を迅速に開始できる。
【0112】
(8)また、第1ユニット100では、自車両に関する情報、及び/又は、自車両に搭載されたセンサを介して検出された情報を収集するための処理が少なくとも行われる。また、第2ユニット110は、画像認識処理が少なくとも行われる。このため、第1、第2ユニット100、110の各々に対し、好適に処理を割り当てることができる。
【0113】
(9)サービス実行モード中、運転停止操作に応じて動作モードを低電力モードに移行する際には、第1マイコン11では、まず、第2ユニット110が動作を停止し、その後、第1ユニット100が動作を停止する。具体的には、第2ユニット110の停止時には、RTOS101は、GPOS111で実行中のプロセスを停止させた後、GPOS111を停止させる。このため、第2ユニット110がロードされているメインメモリに不要なデータが残るのを抑制できる。また、第2ユニット110の停止により、第2ユニット110でのストレージ(例えば、フラッシュメモリ26、記憶部14等)へのアクセスが中断されるのを抑制でき、これにより、ストレージの破壊が抑制される。
【0114】
(10)また、第2ユニット110では、コンテナ型仮想化がなされた第2アプリ115は、GPOS111のソフトウェアリソースを使用して処理を行う。このため、該第2アプリ115のデータサイズを抑制できると共に、該第2アプリ115を動作させる際の第2コア22の負荷を低減できる。また、該第2アプリ115にて品質が検証されたソフトウェアリソースを用いることができるため、信頼性が向上する。
【0115】
(11)また、低電力モードであるデータ収集装置2の起動時には、起動要因に応じて起動される第1及び第2アプリ102、115が選択される。このため、不要なアプリの起動を回避でき、起動要因の発生に応じて必要なサービスの提供を迅速に開始できる。
【0116】
(12)さらに、低電力モードであるデータ収集装置2の起動時には、起動要因に応じて起動するユニットが選択される。このため、不要なユニットの起動を回避でき、起動要因の発生に応じて必要なサービスの提供を迅速に開始できる。
【0117】
[15.他の実施形態]
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は上述の実施形態に限定されることなく、種々変形して実施することができる。
【0118】
(1)上記実施形態では、データ収集装置2の第1マイコン11は、第1~第3コア21~23を備える。しかし、第1マイコン11における物理的なコアの数は、3つに限らず適宜定められ得る。具体的には、例えば、ファームウェア120を動作させるコアを設けると共に、仮想マシン環境を構築し、1つ又は3つ以上のコアにより、RTOS101とGPOS111とを動作させても良い。また、例えば、仮想マシン環境を構築し、2つ以下又は3つ以上のコアにより、ファームウェア120と、RTOS101と、GPOS111とを動作させても良い。このような構成を有する場合であっても、上記実施形態と同様にして、第1及び第2ユニット100、110の起動及び停止を行うことができる。
【0119】
(2)上記実施形態における1つの構成要素が有する複数の機能を、複数の構成要素によって実現したり、1つの構成要素が有する1つの機能を、複数の構成要素によって実現したりしてもよい。また、複数の構成要素が有する複数の機能を、1つの構成要素によって実現したり、複数の構成要素によって実現される1つの機能を、1つの構成要素によって実現したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加又は置換してもよい。
【0120】
(3)上述したデータ収集装置2の他、データ収集装置2の第1マイコン11及び第2マイコン15としてコンピュータを機能させるためのプログラム、このプログラムを記録した半導体メモリ等の非遷移的実体的記録媒体、このプログラムにより実現される方法など、種々の形態で本開示を実現することもできる。また、例えば、データ収集装置2により実現される方法、第1マイコン11及び/又は第2マイコン15により実現される方法、データ収集装置2の起動方法など、種々の形態で本開示を実現することもできる。
【0121】
[16.文言の対応関係]
データ収集装置2が車載装置の一例に相当し、データ収集装置2の第1マイコン11が制御部の一例に相当し、第2マイコン15が第2制御部の一例に相当する。