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特許7673815受信制御装置、受光装置、通信装置、受信制御方法、およびプログラム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-28
(45)【発行日】2025-05-09
(54)【発明の名称】受信制御装置、受光装置、通信装置、受信制御方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04B 10/69 20130101AFI20250430BHJP
   H04B 10/112 20130101ALI20250430BHJP
【FI】
H04B10/69 110
H04B10/112
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2023548004
(86)(22)【出願日】2021-09-15
(86)【国際出願番号】 JP2021033944
(87)【国際公開番号】W WO2023042304
(87)【国際公開日】2023-03-23
【審査請求日】2024-01-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100178216
【弁理士】
【氏名又は名称】浜野 絢子
(74)【代理人】
【識別番号】100149618
【弁理士】
【氏名又は名称】北嶋 啓至
(72)【発明者】
【氏名】高田 紘也
(72)【発明者】
【氏名】水本 尚志
(72)【発明者】
【氏名】奥村 藤男
【審査官】麻生 哲朗
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-258736(JP,A)
【文献】国際公開第2008/114314(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/188756(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 10/69
H04B 10/112
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の受光素子の各々に接続されたスイッチと、複数の前記受光素子が分配されたグループごとに配置された選択スイッチと、前記グループごとの前記選択スイッチの出力先を切り替える切替スイッチとを含むスイッチング回路と、前記スイッチング回路の出力に接続された複数の増幅器によって構成される増幅回路と、を有する第1処理回路と、
前記第1処理回路の出力に接続されるセレクタと、
前記セレクタの後段に配置され、前記セレクタを介して割り当てられた信号をデコードする少なくとも一つの第2処理回路と、
複数の前記受光素子からの信号を複数の前記増幅器のうちいずれかに振り分けるように前記スイッチング回路を制御し、前記増幅回路で増幅された前記信号をいずれかの前記第2処理回路に割り当てるように前記セレクタを制御する制御回路と、を備える受信制御装置。
【請求項2】
複数の前記スイッチの出力端は、
前記グループごとに統合され、
複数の前記選択スイッチの入力端は、
前記グループごとに統合された複数の前記スイッチの出力端のいずれかに接続され、
複数の前記選択スイッチの出力端は、
複数の前記切替スイッチのうち少なくともいずれかの第1端に接続され、
複数の前記切替スイッチの第2端は、
複数の前記増幅器のうちいずれかの入力端に接続され、
前記制御回路は、
前記スイッチング回路に含まれる、前記スイッチ、前記選択スイッチ、および前記切替スイッチの開閉状態を制御することによって、複数の前記受光素子と複数の前記増幅器との間の接続状態を制御する請求項1に記載の受信制御装置。
【請求項3】
前記制御回路は、
前記スイッチング回路に含まれる前記スイッチ、前記選択スイッチ、および前記切替スイッチの開閉状態を制御することによって、通信対象のスキャンに用いられる前記増幅器と接続される前記受光素子を順次切り替えて、前記通信対象から送光された空間光信号をスキャンする請求項2に記載の受信制御装置。
【請求項4】
前記制御回路は、
少なくとも一つの前記通信対象との通信に用いられる前記受光素子と前記増幅器の間の経路上の前記スイッチ、前記選択スイッチ、および前記切替スイッチを閉状態にすることによって、前記通信対象との通信を確立させる請求項3に記載の受信制御装置。
【請求項5】
前記制御回路は、
通信が確立された少なくとも一つの前記通信対象との通信に用いられる前記受光素子と前記増幅器の間の経路上の前記スイッチ、前記選択スイッチ、および前記切替スイッチを閉状態で維持しながら、通信に用いられていない前記増幅器と接続される前記受光素子を順次切り替えるように前記スイッチング回路を制御することによって、通信中の前記通信対象とは異なる通信対象から送光された空間光信号をスキャンする請求項4に記載の受信制御装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の受信制御装置と、
複数の受光素子によって構成される受光素子アレイと、
前記受光素子アレイを構成する少なくともいずれかの前記受光素子に向けて、空間光信号を集光する集光器と、を備える受光装置。
【請求項7】
前記受光素子アレイを構成する複数の前記受光素子は、単一の通信対象から送光された空間光信号が受光される受光範囲内に収まる数の前記受光素子によって構成されるグループのいずれかに割り当てられる請求項6に記載の受光装置。
【請求項8】
請求項6または7に記載の受光装置と、
空間光信号を送光する送光装置と、
前記受光装置によって受光された空間光信号に基づく信号を取得し、取得した前記信号に応じた処理を実行し、実行した前記処理に応じた空間光信号を前記送光装置に送光させる制御装置と、を備える通信装置。
【請求項9】
制御回路が、
複数の受光素子の各々に接続されたスイッチによって構成される第1スイッチ回路と、前記第1スイッチ回路に含まれる複数の前記スイッチのうちいくつかが統合されたグループごとの出力先を切り替える第2スイッチ回路とを含むスイッチング回路と、前記スイッチング回路の出力に接続された複数の増幅器を含む増幅回路と、を有する第1処理回路を制御することで、前記スイッチング回路の出力に接続された複数の増幅器のうちいずれかに複数の前記受光素子からの信号を割り当て、
複数の前記増幅器の出力に接続されるセレクタを制御することで、前記増幅回路で増幅された前記信号を、前記第1処理回路から出力された前記信号をデコードする複数の第2処理回路のうちいずれかに割り当てる受信制御方法。
【請求項10】
複数の受光素子の各々に接続されたスイッチによって構成される第1スイッチ回路と、前記第1スイッチ回路に含まれる複数の前記スイッチのうちいくつかが統合されたグループごとの出力先を切り替える第2スイッチ回路とを含むスイッチング回路と、前記スイッチング回路の出力に接続された複数の増幅器を含む増幅回路と、を有する第1処理回路を制御することで、前記スイッチング回路の出力に接続された複数の増幅器のうちいずれかに複数の前記受光素子からの信号を割り当てる処理と、
複数の前記増幅器の出力に接続されるセレクタを制御することで、前記増幅回路で増幅された前記信号を、前記第1処理回路から出力された前記信号をデコードする複数の第2処理回路のうちいずれかに割り当てる処理と、をコンピュータに実行させるプログラ
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、空間を伝搬する光信号の受信を制御する受信制御装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
光空間通信においては、光ファイバなどの媒体を用いずに、空間を伝播する光信号(以下、空間光信号とも呼ぶ)を送受信し合う。空間を広がって伝搬する空間光信号を受信するためには、できる限り大口径のレンズを用いることが好ましい。光空間通信においては、高速通信を行うために、静電容量の小さな受光素子が採用される。そのような受光素子は、受光部の面積が小さい。レンズの焦点距離には限界があるため、多様な方向から到来する空間光信号を、大口径のレンズを用いて、面積の小さい受光部に導光することは難しい。
【0003】
特許文献1には、光ファイバ等の媒体を介して、光信号を受光する光信号装置について開示されている。特許文献1の装置は、入力信号光を受けるための受光素子を持つ画素のアレイを備える。特許文献1の装置は、該アレイ内の画素の出力を選択し、選択された画素出力を加算して出力する。また、特許文献1の装置は、複数の画素出力を増幅する増幅器を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2008/114314号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の装置では、一つの増幅器に多くの画素が接続される。そのため、特許文献1の装置では、同じ増幅器に接続された受光素子が通信に使用されていると、その増幅器に接続された他の受光素子で光信号を受信できなかった。また、特許文献1の装置では、一つの増幅器に接続される回路が膨大になり、光信号の受信速度が低下する。すなわち、特許文献1の装置では、安定した通信速度で、継続的な光空間通信を実現することができなかった。
【0006】
本開示の目的は、安定した通信速度で、継続的な光空間通信を実現できる受信制御装置等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様の受信制御装置は、複数の受光素子の各々に接続されたスイッチと、複数の受光素子が分配されたグループごとに配置された選択スイッチと、グループごとの選択スイッチの出力先を切り替える切替スイッチとを含むスイッチング回路と、スイッチング回路の出力に接続された複数の増幅器によって構成される増幅回路と、を有する第1処理回路と、第1処理回路の出力に接続されるセレクタと、セレクタの後段に配置され、セレクタを介して割り当てられた信号をデコードする少なくとも一つの第2処理回路と、複数の受光素子からの信号を複数の増幅器のうちいずれかに割り当てるようにスイッチング回路を制御し、増幅回路で増幅された信号をいずれかの第2処理回路に振り分けるようにセレクタを制御する制御回路と、を備える。
【0008】
本開示の一態様の受信制御方法においては、制御回路が、複数の受光素子の各々に接続されたスイッチによって構成される第1スイッチ回路と、第1スイッチ回路に含まれる複数のスイッチのうちいくつかが統合されたグループごとの出力先を切り替える第2スイッチ回路とを含むスイッチング回路と、スイッチング回路の出力に接続された複数の増幅器を含む増幅回路と、を有する第1処理回路を制御することで、スイッチング回路の出力に接続された複数の増幅器のうちいずれかに複数の受光素子からの信号を割り当て、複数の増幅器の出力に接続されるセレクタを制御することで、増幅回路で増幅された信号を、第1処理回路から出力された信号をデコードする複数の第2処理回路のうちいずれかに割り当てる。
【0009】
本開示の一態様のプログラムは、複数の受光素子の各々に接続されたスイッチによって構成される第1スイッチ回路と、第1スイッチ回路に含まれる複数のスイッチのうちいくつかが統合されたグループごとの出力先を切り替える第2スイッチ回路とを含むスイッチング回路と、スイッチング回路の出力に接続された複数の増幅器を含む増幅回路と、を有する第1処理回路を制御することで、スイッチング回路の出力に接続された複数の増幅器のうちいずれかに複数の受光素子からの信号を割り当てる処理と、複数の増幅器の出力に接続されるセレクタを制御することで、増幅回路で増幅された信号を、第1処理回路から出力された信号をデコードする複数の第2処理回路のうちいずれかに割り当てる処理と、をコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、安定した通信速度で、継続的な光空間通信を実現できる受信制御装置等を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1の実施形態に係る受光装置の構成の一例を示す概念図である。
図2】第1の実施形態に係る受光装置のボールレンズによる集光の一例について説明するための概念図である。
図3】第1の実施形態に係る受光装置が備える受光器の構成の一例を示す概念図である。
図4】第1の実施形態に係る受光装置が備える受光素子アレイを構成する受光素子による光信号の受光の一例を示す概念図である。
図5】第1の実施形態に係る受光装置による空間光信号の受光の一例を示す概念図である。
図6】第1の実施形態に係る受光装置による空間光信号の受光の別の一例を示す概念図である。
図7】第1の実施形態に係る受光装置が備える受信制御装置の構成の一例を示すブロック図である。
図8】第1の実施形態に係る受光装置が備える受信制御装置に含まれる第1処理回路の構成の一例を示す概念図である。
図9】第1の実施形態に係る受光装置における空間光信号の受光制御の一例について説明するための概念図である。
図10】第1の実施形態に係る受光装置における空間光信号の受光制御の一例について説明するための概念図である。
図11】第1の実施形態に係る受光装置における空間光信号の受光制御の一例について説明するための概念図である。
図12】第1の実施形態に係る受光装置における空間光信号の受光制御の一例について説明するための概念図である。
図13】第1の実施形態に係る受光装置における空間光信号の受光制御の一例について説明するための概念図である。
図14】第1の実施形態に係る受光装置における空間光信号の受光制御の一例について説明するための概念図である。
図15】第1の実施形態の変形例1に係る受光装置が備える受光器の構成の一例を示す概念図である。
図16】第1の実施形態の変形例2に係る受光装置が備える受光器の構成の一例を示す概念図である。
図17】関連技術における空間光信号の受光制御の一例について説明するための概念図である。
図18】第2の実施形態に係る通信装置の構成の一例を示すブロック図である。
図19】第2の実施形態に係る通信装置が備える送光装置の構成の一例を示す概念図である。
図20】第2の実施形態に係る通信装置の構成の一例を示す概念図である。
図21】第2の実施形態に係る適用例1について説明するための概念図である。
図22】第3の実施形態に係る受信制御装置の構成の一例について説明するための概念図である。
図23】各実施形態に係る制御や処理を実行するハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明を実施するための形態について図面を用いて説明する。ただし、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい限定がされているが、発明の範囲を以下に限定するものではない。なお、以下の実施形態の説明に用いる全図においては、特に理由がない限り、同様箇所には同一符号を付す。また、以下の実施形態において、同様の構成・動作に関しては繰り返しの説明を省略する場合がある。
【0013】
以下の実施形態の説明に用いる全図において、図面中の矢印の向きは、一例を示すものであり、光や信号の向きを限定するものではない。また、図面中の光の軌跡を示す線は、概念的なものであり、実際の光の進行方向や状態を正確に表すものではない。例えば、図面においては、空気と物質との界面における屈折や反射、回折、拡散などによる光の進行方向や状態の変化を省略したり、光束を一本の線で表現したりすることもある。
【0014】
(第1の実施形態)
まず、第1の実施形態に係る受光装置について図面を参照しながら説明する。本実施形態の受光装置は、光ファイバなどの媒体を用いずに、空間を伝播する光信号(以下、空間光信号とも呼ぶ)を送受信し合う光空間通信に用いられる。本実施形態の受光装置は、空間を伝搬する光を受光する用途であれば、光空間通信以外の用途に用いられてもよい。本実施形態においては、特に断りがない限り、空間光信号は、十分に離れた位置から到来するために平行光とみなす。
【0015】
(構成)
図1は、本実施形態の受光装置10の構成の一例を示す概念図である。受光装置10は、ボールレンズ11、受光素子アレイ13、および受信制御装置14を備える。ボールレンズ11と受光素子アレイ13は、受光器100を構成する。図1は、受光器100を上方向から見た平面図である。受光素子アレイ13は、円弧状に並べられた複数の受光素子131によって構成される。ボールレンズ11と受光素子アレイ13は、支持体(図示しない)によって、互いの位置関係が固定される。本実施形態においては、ボールレンズ11と受光素子アレイ13を固定する支持体を省略する。
【0016】
ボールレンズ11は、球形のレンズである。ボールレンズ11は、外部から到来した空間光信号を集光する光学素子である。ボールレンズ11は、どの角度から見ても球形である。ボールレンズ11は、入射される空間光信号を集光する。ボールレンズ11によって集光された空間光信号に由来する光(光信号とも呼ぶ)は、集光領域に向けて集光される。ボールレンズ11は、球形であるため、任意の方向から到来する空間光信号を集光する。すなわち、ボールレンズ11は、任意の方向から到来する空間光信号に対して、同様の集光性能を示す。
【0017】
図2は、ボールレンズ11によって集光される光の軌跡の一例を示す概念図である。
図2の例では、平行光を出射する光源110から出射された光が、ボールレンズ11に向けて、照射される。ボールレンズ11に照射された光は、ボールレンズ11の内部に進入する際に屈折される。ボールレンズ11の内部を進行した光は、ボールレンズ11の外部に出射する際に、再度屈折される。ボールレンズ11によって屈折される光の大部分は、集光領域において集光される。ボールレンズ11の周辺から入射した光は、ボールレンズ11から出射される際に、集光領域から外れた方向に向けて出射される。
【0018】
例えば、ボールレンズ11は、ガラスや結晶、樹脂などの材料で構成できる。可視領域の空間光信号を受光する場合、ボールレンズ11には、可視領域の光を透過/屈折する材料を適用できる。可視領域の光を透過/屈折する材料は、例えば、ガラスや結晶、樹脂などである。例えば、ボールレンズ11には、クラウンガラスやフリントガラスなどの光学ガラスを適用できる。例えば、ボールレンズ11には、BK(Boron Kron)などのクラウンガラスを適用できる。例えば、ボールレンズ11には、LaSF(Lanthanum Schwerflint)などのフリントガラスを適用できる。例えば、ボールレンズ11には、石英ガラスを適用できる。例えば、ボールレンズ11には、サファイア等の結晶を適用できる。例えば、ボールレンズ11には、アクリル等の透明樹脂を適用できる。空間光信号が近赤外領域の光(以下、近赤外線とも呼ぶ)である場合、ボールレンズ11には、近赤外線を透過する材料が用いられる。例えば、1.5マイクロメートル(μm)程度の近赤外領域の空間光信号を受光する場合、ボールレンズ11には、ガラスや結晶、樹脂などに加えて、シリコンなどの材料を適用できる。空間光信号が赤外領域の光(以下、赤外線とも呼ぶ)である場合、ボールレンズ11には、赤外線を透過する材料が用いられる。例えば、空間光信号が赤外線である場合、ボールレンズ11には、シリコンやゲルマニウム、カルコゲナイド系の材料を適用できる。空間光信号の波長領域の光を透過/屈折できれば、ボールレンズ11の材質には限定を加えない。ボールレンズ11の材質は、求められる屈折率や用途に応じて、適宜選択されればよい。
【0019】
図3は、ボールレンズ11と受光素子アレイ13によって構成される受光器100の斜視図である。図3は、入射面側の斜め上方の視座から、受光器100を見下ろした斜視図である。受光素子アレイ13は、ボールレンズ11の中心に対して円弧状の形状を有する。受光素子アレイ13は、円弧状の長辺と、直線状の短辺とを有する。長辺と短辺は、直交する。受光素子アレイ13を構成する複数の受光素子131は、それらの受光部をボールレンズ11の中心に向けて配置される。
【0020】
図4は、受光器100の一部分の断面図である。受光器100は、ボールレンズ11と受光素子アレイ13によって構成される。図4には、円弧状の基板130に受光素子131が配置される例の断面を示す。図4には、ボールレンズ11によって集光される光の軌跡を示す。ボールレンズ11によって、受光素子アレイ13が配置された集光領域に、光信号が集光される。集光された光信号は、受光素子アレイ13を構成するいずれかの受光素子131によって受光される。受光素子131の受光部132から外れた光信号は、受光素子131によって受光されない。
【0021】
受光素子アレイ13は、ボールレンズ11の周方向に沿って、円弧状に並べられた複数の受光素子131を含む。受光素子アレイ13を構成する受光素子131の数には限定を加えない。受光素子アレイ13は、ボールレンズ11の後段に配置される。複数の受光素子131は、受光対象の空間光信号に由来する光信号を受光する受光部132を含む。複数の受光素子131の各々は、受光部132がボールレンズ11の出射面と対面するように配置される。複数の受光素子131の各々の受光部132は、ボールレンズ11の集光領域の位置に配置される。ボールレンズ11によって集光された光信号は、受光素子131の受光部132で受光される。複数の受光素子131の各々の受光面には、受光部132が位置しない領域(不感領域とも呼ぶ)が含まれる。
【0022】
図5は、受光装置10が、一方向から到来した空間光信号を受信する一例を示す概念図である。図6は、受光装置10が、二方向から到来した空間光信号を受信する一例を示す概念図である。ボールレンズ11が球体であるため、受光装置10は、受光素子アレイ13によって受光可能な範囲であれば、任意の方向から到来する空間光信号を均等に受信できる。例えば、受光素子アレイ13の円弧状の長辺が水平面に対して平行に設定される場合、受光装置10は、同じくらいの高さから水平方向に到来する空間光信号を受光しやすい。例えば、受光素子アレイ13の円弧状の長辺が水平面に対して垂直に設定される場合、受光装置10は、任意の高さから到来する空間光信号を同様に受光しやすい。受光素子アレイ13の円弧状の長辺の向きは、受光対象の空間光信号の到来方向に合わせて、調整されればよい。
【0023】
複数の受光素子131は、いくつかの受光素子131ごとにグループ化される。例えば、複数の受光素子131は、互いに隣接する四つの受光素子131ごとにグループ化される。複数の受光素子131の各々によって受光された光信号は、グループごとに振り分けられて、受信制御装置14に含まれる複数の増幅器(後述する)のいずれかに分配される。複数の受光素子131の各々によって受光された光信号は、増幅器で増幅されてから、個別に処理される。
【0024】
受光素子131は、受光対象の空間光信号の波長領域の光を受光する。例えば、受光素子131は、可視領域の光に感度を有する。例えば、受光素子131は、赤外領域の光に感度を有する。受光素子131は、例えば1.5μm(マイクロメートル)帯の波長の光に感度を有する。受光素子131が受光する光の波長帯は、送信装置(図示しない)から送信される空間光信号の波長に合わせて、任意に設定できる。受光素子131が受光する光の波長帯は、例えば0.8μm帯や、1.55μm帯、2.2μm帯に設定されてもよい。また、受光素子131が受光する光の波長帯は、例えば0.8~1.0μm帯であってもよい。波長帯が短い方が、大気中の水分による吸収が小さいので、降雨時における光空間通信には有利である。また、受光素子131は、強烈な太陽光で飽和してしまうと、空間光信号に由来する光信号を読み取ることができない。そのため、受光素子131よりも前段に、空間光信号の波長帯の光を選択的に通過させる色フィルタが設置されてもよい。
【0025】
例えば、受光素子131は、フォトダイオードやフォトトランジスタなどの素子によって実現できる。例えば、受光素子131は、アバランシェフォトダイオードによって実現される。アバランシェフォトダイオードによって実現された受光素子131は、高速通信に対応できる。なお、受光素子131は、光信号を電気信号に変換できさえすれば、フォトダイオードやフォトトランジスタ、アバランシェフォトダイオード以外の素子によって実現されてもよい。通信速度を向上させるために、受光素子131の受光部132は、できるだけ小さい方が好ましい。例えば、受光素子131の受光部132は、一辺が5mm(ミリメートル)程度の正方形の受光面を有する。例えば、受光素子131の受光部132は、直径0.1~0.3mm程度の円形の受光面を有する。受光素子131の受光部132の大きさや形状は、空間光信号の波長帯や通信速度などに応じて選定されればよい。
【0026】
受光素子131は、受光された光信号を電気信号に変換する。受光素子131は、変換後の電気信号を、受信制御装置14に出力する。図1には、受光素子アレイ13と受信制御装置14の間に一本の線(経路)しか図示していないが、受光素子アレイ13と受信制御装置14の間が一本の経路で接続されていることを示すわけではない。例えば、受光素子アレイ13と受信制御装置14は、複数の経路で接続される。例えば、受光素子アレイ13を構成する受光素子131の各々が、受信制御装置14と個別に接続されてもよい。例えば、受光素子アレイ13を構成する受光素子131のいくつかをまとめたグループを構成し、グループが受信制御装置14と接続されてもよい。
【0027】
受信制御装置14は、複数の受光素子131の各々から出力された信号を取得する。受信制御装置14は、複数の増幅器を含む。受信制御装置14は、複数の受光素子131からの信号を、複数の増幅器のいずれかに分配するスイッチング回路を有する。受信制御装置14は、複数の受光素子131から出力された信号を、複数の増幅器のいずれかに分配する。新規の光信号を分配する場合、受信制御装置14は、複数の増幅器のうち空いている増幅器に信号を分配する。受信制御装置14は、複数の受光素子131の各々からの信号を、いずれかの増幅器で増幅する。受信制御装置14は、増幅された信号をデコードする。受信制御装置14は、デコードされた通信対象からの信号を解析する。例えば、受信制御装置14は、グループ化された複数の受光素子131ごとの信号をまとめて解析する。複数の受光素子131ごとの信号をまとめて解析する場合は、単一の通信対象と通信するシングルチャンネルの受光装置10を実現できる。例えば、受信制御装置14は、複数の受光素子131ごとに、個別に信号を解析する。複数の受光素子131ごとに個別に信号を解析する場合、複数の通信対象と同時に通信するマルチチャンネルの受光装置10を実現できる。受信制御装置14によってデコードされた信号は、任意の用途に使用される。受信制御装置14によってデコードされた信号の使用については、特に限定を加えない。
【0028】
〔受信制御装置〕
次に、受光装置10が備える受信制御装置14の詳細構成の一例について図面を参照しながら説明する。図7は、受信制御装置14の構成の一例を示すブロック図である。受信制御装置14は、第1処理回路15、制御回路17、セレクタ18、および複数の第2処理回路19-1~Nを有する(Nは自然数)。図7の例では、受光素子アレイ13を構成する受光素子131の数をM個とする(Mは自然数)。なお、図7は、受信制御装置14の構成の一例であって、受信制御装置14の構成を限定するものではない。
【0029】
第1処理回路15は、複数の受光素子131-1~Mに接続される。第1処理回路15は、複数の受光素子131-1~Mに含まれるいくつかの受光素子131をまとめたグループごとに、信号を増幅する。
【0030】
図8は、第1処理回路15の構成の一例を示す概念図である。第1処理回路15は、スイッチング回路150と増幅回路153を有する。図8には、受光素子アレイ13を構成する複数の受光素子131-1~Mが、複数の受光素子群PG(Photodiode Group)のうちいずれかに分配される例を示す。図8には、四つずつの受光素子131を含むPGが、五つの受光素子群PG(PG1、PG2、PG3、PG4、PG5)に分配される例を示す。
【0031】
スイッチング回路150は、第1スイッチ回路151と第2スイッチ回路152を含む。第1スイッチ回路151は、複数のスイッチSW(Switch)と複数の選択スイッチSS(Selection Switch)を含む。複数のスイッチSWの各々は、複数の受光素子131-1~Mのいずれかに対応付けられる。複数のスイッチSWは、複数の受光素子群PGのいずれかに対応付けられたいずれかのスイッチ群SG(Switch Group)に分配される。図8においては、紙面の都合上、左端のスイッチSWのみに「SW」という符号を付しているが、スイッチ群SGに含まれる全てのスイッチSWは同様の構成である。図8には、第1スイッチ回路151が、選択スイッチSS1、選択スイッチSS2、選択スイッチSS3、選択スイッチSS4、および選択スイッチSS5を含む例を示す。
【0032】
図8の例では、複数の選択スイッチSSの各々は、四つずつの受光素子131を含むスイッチ群SGのいずれかに対応付けられる。図8の例の場合、複数の受光素子131-1~Mのうちいくつかがグループ化された受光素子群PGの各々に対応付けて、複数の選択スイッチSSが配置される。複数の選択スイッチSSの各々の入力端は、いずれかのスイッチ群SGの出力端に接続される。そのため、複数の選択スイッチSSの各々は、いずれかの受光素子群PGに対応付けられる。複数の選択スイッチSSは、受光素子群PGの選択制御に用いられる。
【0033】
図8の例では、五つの受光素子群PG(PG1、PG2、PG3、PG4、PG5)の各々に対応付けて、五つのスイッチ群SG(SG1、SG2、SG3、SG4、SG5)の各々が配置される。受光素子群PG1には、スイッチ群SG1が対応付けられる。スイッチ群SG1に含まれる複数のスイッチSWの各々の入力端は、受光素子群PG1に含まれるいずれかの受光素子131と接続される。スイッチ群SG1に含まれる複数のスイッチSWの各々の出力端は、選択スイッチSS1の入力端に接続される。受光素子群PG2には、スイッチ群SG2が対応付けられる。スイッチ群SG2に含まれる複数のスイッチSWの各々の入力端は、受光素子群PG2に含まれるいずれかの受光素子131と接続される。スイッチ群SG2に含まれる複数のスイッチSWの各々の出力端は、選択スイッチSS2の入力端に接続される。受光素子群PG3には、スイッチ群SG3が対応付けられる。スイッチ群SG3に含まれる複数のスイッチSWの各々の入力端は、受光素子群PG3に含まれるいずれかの受光素子131と接続される。スイッチ群SG3に含まれる複数のスイッチSWの各々の出力端は、選択スイッチSS3の入力端に接続される。受光素子群PG4には、スイッチ群SG4が対応付けられる。スイッチ群SG4に含まれる複数のスイッチSWの各々の入力端は、受光素子群PG4に含まれるいずれかの受光素子131と接続される。スイッチ群SG4に含まれる複数のスイッチSWの各々の出力端は、選択スイッチSS4の入力端に接続される。受光素子群PG5には、スイッチ群SG5が対応付けられる。スイッチ群SG5に含まれる複数のスイッチSWの各々の入力端は、受光素子群PG5に含まれるいずれかの受光素子131と接続される。スイッチ群SG5に含まれる複数のスイッチSWの各々の出力端は、選択スイッチSS5の入力端に接続される。
【0034】
第1スイッチ回路151に含まれる複数のスイッチ群SGの各々の出力端は、複数の選択スイッチSSのうちいずれかの入力端に接続される。複数のスイッチ群SGの各々に含まれる複数のスイッチSWは、制御回路17の制御に応じて、開閉される。また、複数のスイッチ群SGの各々に接続された選択スイッチSSも、制御回路17の制御に応じて、開閉される。スイッチSWおよび選択スイッチSSが閉じた状態の経路に接続された受光素子131によって受光された光信号に含まれる信号が、第2スイッチ回路に向けて出力される。
【0035】
第2スイッチ回路152は、複数の切替スイッチCS(Changeover Switch)を含む。第2スイッチ回路152に含まれる複数の切替スイッチCSは、制御回路17によって開閉制御される。複数の切替スイッチCSの開閉状態に応じて、第1スイッチ回路151に含まれる複数の選択スイッチSSからの出力が、増幅回路153を構成する複数の増幅器AMP(Amplifier)のいずれかに分配される。その結果、いずれかの受光素子群PGと増幅器AMPとの間の接続が確立される。図8には、第2スイッチ回路152が、複数の切替スイッチCS(CS1、CS2、CS3、CS4、CS5、CS6、CS7、・・・)を含む例を示す。切替スイッチCSは、第1端と第2端を有する。複数の切替スイッチCSの第1端は、第1スイッチ回路151に含まれる複数の選択スイッチSSのうち少なくともいずれかの出力端に接続される。複数の切替スイッチCSの第2端は、増幅回路153に含まれる複数の増幅器AMPのうちいずれかに接続される。図8の例では、1つの増幅器AMPに4つの受光素子群PGが割り当てられた例を示す。例えば、1つの増幅器AMPに4つの受光素子群PGが割り当てられるように構成されてもよい。例えば、1つの増幅器AMPに割り当てられる受光素子群の数は、任意に設定できる。
【0036】
図8の例において、選択スイッチSS1の出力端は、切替スイッチCS1の第1端に接続される。選択スイッチSS2の出力端は、切替スイッチCS2と切替スイッチCS3の第1端に接続される。選択スイッチSS3の出力端は、切替スイッチCS3と切替スイッチCS4の第1端に接続される。選択スイッチSS4の出力端は、の切替スイッチCS5と切替スイッチCS6の第1端に接続される。選択スイッチSS5の出力端は、切替スイッチCS6と切替スイッチCS7の第1端に接続される。
【0037】
第2スイッチ回路152に含まれる複数の切替スイッチCSの各々の第2端は、増幅回路153に含まれる複数の増幅器AMPの入力端に接続される。複数のスイッチSW、複数の選択スイッチSS、および複数の切替スイッチCSの開閉状態を組み合わせることによって、受光素子アレイ13に含まれる受光素子131を、増幅回路153に含まれる増幅器AMPに接続できる。切替スイッチCSは、受光素子アレイ13に含まれる受光素子群PGごとの信号を、増幅回路153に含まれるいずれかの増幅器AMPに分配するために用いられる。
【0038】
増幅回路153は、複数の増幅器AMPを含む。図8の例では、増幅回路153は、複数の増幅器AMP(AMP1、AMP2、AMP3、・・・)を含む。複数の増幅器AMPの各々の入力端は、第2スイッチ回路152に含まれる複数の切替スイッチCSのうちいずれかの第2端に接続される。各々の増幅器AMPは、第2スイッチ回路152を経由して入力された信号を取得する。各々の増幅器AMPは、取得された信号を増幅する。増幅器AMPによる信号の増幅率には、特に限定を加えない。
【0039】
複数の増幅器AMPの各々の出力端は、セレクタ18に接続される。各々の増幅器によって増幅された信号は、セレクタ18に出力される。スイッチング回路150に含まれる複数のスイッチの開閉状態を組み合わせることで、受光素子アレイ13に含まれる複数の受光素子131の全てからの信号が、各々の増幅器AMPに入力されうる。各々の増幅器AMPには、制御回路17によって閉ざされたスイッチの組み合わせに応じて、複数の受光素子131のうちいずれかからの信号が入力される。
【0040】
図8の例の場合、増幅器AMP1の入力端は、切替スイッチCS1およぶ切替スイッチCS2の第2端に接続される。増幅器AMP2の入力端は、切替スイッチCS4およぶ切替スイッチCS5の第2端に接続される。増幅器AMP3の入力端は、切替スイッチCS7の第2端に接続される。増幅器AMP1、増幅器AMP2、および増幅器AMP3の出力端は、セレクタ18に接続される。
【0041】
例えば、第1処理回路15は、ハイパスフィルタ(図示しない)を含んでもよい。例えば、ハイパスフィルタは、受光素子アレイ13と第1処理回路15の間に配置される。ハイパスフィルタは、受光素子131からの信号を取得する。ハイパスフィルタは、取得した信号のうち、空間光信号の波長帯に相当する高周波成分の信号を選択的に通過させる。ハイパスフィルタは、太陽光などの環境光に由来する信号をカットする。例えば、ハイパスフィルタの代わりに、空間光信号の波長帯の信号を選択的に通過させるバンドパスフィルタを構成してもよい。受光素子131は、強烈な太陽光で飽和してしまうと、光信号は読み取り不能となる。そのため、受光素子アレイ13の前段に、空間光信号の波長帯の光を選択的に通過させる色フィルタを設置してもよい。
【0042】
例えば、第1処理回路15は、出力モニタ(図示しない)を含む。出力モニタは、増幅回路153に含まれる複数の増幅器AMPの各々の出力値をモニタする。出力モニタは、増幅器AMPによって増幅された信号のうち、所定の出力値を超える信号をセレクタ18に出力する。セレクタ18に出力された信号のうち受信対象の信号は、制御回路17の制御に応じて、複数の第2処理回路19-1~Nのいずれかに割り当てられる。受信対象の信号は、通信対象の通信装置(図示しない)からの空間光信号である。空間光信号の受光に用いられない受光素子131からの信号は、第2処理回路19に出力されない。
【0043】
例えば、第1処理回路15は、出力モニタ(図示しない)として積分器(図示しない)を含んでもよい。積分器は、ハイパスフィルタから出力された信号を取得する。積分器は、取得された信号を積分する。積分器は、積分された信号を制御回路17に出力する。積分器は、受光素子131が受光する空間光信号の強度を測定するために配置される。ビーム径が絞られていない状態で受光される空間光信号は、ビーム径が絞られている場合と比べて強度が微弱であるため、増幅器のみで増幅された信号の電圧測定は困難である。積分器を用いれば、例えば、数ミリ秒~数十ミリ秒の期間の信号を積分することによって、電圧測定できるレベルまで信号の電圧を大きくすることができる。
【0044】
制御回路17は、第1処理回路15のスイッチング回路150に含まれる複数のスイッチSWおよび複数の選択スイッチSSの開閉状態を制御する。その結果、光信号の受光に用いられる受光素子131と、その受光素子131からの信号の増幅に用いられる増幅器AMPとが接続される。制御回路17は、増幅回路153に含まれる複数の増幅器AMPのうち、スキャンや通信に用いられていない増幅器AMPに、受光素子131からの信号を割り当てる。制御回路17によるスイッチング回路150の制御例の詳細については、後述する。制御回路17は、受光素子131からの信号を、複数の第2処理回路19-1~Nのいずれかに割り当てるように、セレクタ18を制御する。例えば、制御回路17は、使用中ではない第2処理回路19に、新規のスキャンや通信を割り当てる。
【0045】
例えば、制御回路17は、第1処理回路15から出力された信号を取得する。言い換えると、制御回路17は、複数の受光素子131-1~Mの各々が受光した光信号に由来する信号を取得する。制御回路17は、第1処理回路15から光信号を取得してもよいし、第2処理回路19から光信号を取得してもよい。制御回路17は、光信号の出力値のみを取得してもよい。例えば、制御回路17は、互いに隣接し合う複数の受光素子131からの信号の読み取り値を比較する。制御回路17は、比較結果に応じて、信号強度が最大の受光素子131を選択する。制御回路17は、選択された受光素子131に、いずれかの増幅器AMPを割り当てる。制御回路17は、選択された受光素子131と、選択された増幅器AMPとの間に配置された複数のスイッチのうち、少なくともいずれかのスイッチを閉状態に制御することで、受光素子131と増幅器AMPの間の接続を確立させる。受光素子131と増幅器AMPの間を接続させることで、受光素子131とセレクタとの接続も確立される。
【0046】
例えば、通信対象の位置が予め特定されている場合、制御回路17は、空間光信号の到来方向を推定せず、受光素子131-1~Mから出力された信号を、予め設定されたいずれかの第2処理回路19に出力する。例えば、通信対象の位置が予め特定されていない場合、制御回路17は、受光素子131-1~Mから出力された信号の出力先の第2処理回路19を選択する。例えば、通信対象のスキャン中において、制御回路17は、受光素子アレイ13に含まれる複数の受光素子131によって受光された光信号の受光強度を、順番に計測する。例えば、制御回路17は、光信号の受光強度が最大の受光素子131を、その光信号の受光に割り当てる受光素子131として選択する。制御回路17が受光素子131を選択することによって、空間光信号の到来方向を推定できる。制御回路17が受光素子131を選択することは、空間光信号の送信元の通信装置を特定することに相当する。また、制御回路17によって選択された受光素子131からの信号を複数の第2処理回路のいずれかに割り当てることは、特定された通信対象と、その通信対象からの空間光信号を受光する受光素子131とを対応付けることに相当する。制御回路17は、複数の受光素子131-1~Mによって受光された光信号に基づいて、その光信号(空間光信号)の送信元の通信装置を特定できる。例えば、制御回路は、受光された光信号の強度に応じて、通信対象との通信に用いられる第2処理回路19を割り当てて、その通信対象との通信を確立させる。
【0047】
例えば、64個の受光素子131を8素子ずつ、8個の増幅器AMPの各々に割り当てた際に、1つの増幅器AMPあたり15度の角度を担当することを想定する。15度の角度は、50メートル先では13.2メートルの幅になり、100メートル先では26.3メートルの幅になる。この程度の幅になると、異なる通信対象から送光された空間光信号に由来する信号が、1つの増幅器AMPに入力される可能性がある。異なる通信対象から送光された空間光信号に由来する信号が、1つの増幅器AMPに入力すると、それらの通信対象からの空間光信号の混信が発生する。同一方向からの混信を回避するためには、2~3個分の受光素子131の間隔を空ける必要がある。すなわち、3~4個の受光素子131ごとに、増幅器AMPを一つ配置すれば、混信を避けることができる。一般的な手法で、3~4個の受光素子ごとに増幅器AMPを一つずつ配置すると、16~21個の増幅器AMPが必要になる。また、通信対象の方向を正確に検知するためには、最低でも4つの受光素子131を含む受光素子群PGを構成する必要がある。一般的な手法では、4つの受光素子131を含む受光素子群PGで構成する場合、64個の受光素子を16個ずつのグループに分割することで、16個のアンプ回路が必要となる。
【0048】
本実施形態では、複数のスイッチSWを受光素子群PGに対応付けて、複数の選択スイッチSSと複数の切替スイッチCSの開閉状態を組み合わせて、複数の増幅器AMPに信号を割り振る。そのため、本実施形態によれば、適切な数の受光素子でグループを構成させながら、増幅器の数を減らすことができるため、通信対象の方向を正確に検知できる。例えば、受光素子群PGを構成する受光素子131の数は、受光装置10の視座から見て、通信装置が位置しうる角度以下に設定されることが好ましい。このように設定されれば、複数の通信対象から送光された空間光信号が混信することを避けることができる。すなわち、受光素子アレイ13を構成する複数の受光素子131は、単一の通信対象から送光された空間光信号が受光される受光範囲内に収まる数の受光素子131によって構成される受光素子群PG(グループ)のいずれかに割り当てられる。本実施形態では、受光素子アレイ13を構成する複数の受光素子131は、四つの受光素子131ごとにグループ分けされる。
【0049】
セレクタ18は、第1処理回路15に接続される。セレクタ18は、第1処理回路15の増幅回路153に含まれる複数の増幅器AMPに接続される。セレクタ18には、第1処理回路15に含まれる増幅回路153で増幅された信号が入力される。セレクタ18は、制御回路17の制御に応じて、入力された信号のうち受信対象の信号を、複数の第2処理回路19-1~Nのうちいずれかに出力する。受信対象ではない信号は、セレクタ18から出力されない。
【0050】
複数の第2処理回路19-1~Nには、制御回路17によって割り当てられた、複数の受光素子131-1~Nのいずれかからの信号が入力される。複数の第2処理回路19-1~Nの各々は、入力された信号をデコードする。複数の第2処理回路19-1~Nの各々は、デコードされた信号に何らかの信号処理を加えるように構成してもよいし、外部の信号処理装置等(図示しない)に出力するように構成したりしてもよい。
【0051】
制御回路17によって選択された受光素子131に由来する信号をセレクタ18で選択することにより、1つの通信対象に対して1つの第2処理回路19が割り当てられる。すなわち、制御回路17は、複数の受光素子131-1~Mが受光する、複数の通信対象からの空間光信号に由来する信号を、複数の第2処理回路19-1~Nのいずれかに割り当てる。これにより、通信対象との光空間通信が確立される。その結果、受光装置10は、通信対象からの空間光信号に由来する信号を、いずれかの第2処理回路19に設定されるチャネルで読み取ることが可能になる。本実施形態の手法によれば、複数の通信対象からの空間光信号を、複数のチャネルにおいて同時に読み取ることができる。例えば、複数の通信対象と同時に通信するために、複数の通信対象からの空間光信号を単一のチャネルにおいて時分割で読み取ってもよい。複数の通信対象からの空間光信号に含まれる信号を複数のチャネルに割り振った方が、単一のチャネルを用いる場合と比べて、伝送速度を高速化できる。
【0052】
例えば、粗い精度の1次スキャンで空間光信号の到来方向を特定し、特定された方向に関して細かい精度の2次スキャンを行って、通信対象の正確な位置を特定するように構成してもよい。通信対象との間で通信可能な状況になれば、通信対象との信号のやりとりによって、その通信対象の正確な位置を確定できる。通信対象の位置が予め特定されている場合は、その通信対象の位置を特定する処理を省略できる。
【0053】
〔受信制御〕
次に、受信制御装置14における空間光信号の受信制御について、いくつかの例をあげて説明する。以下においては、通信対象のスキャンにおける受信制御と、通信が確立された通信対象との通信における受信制御とについて、想定しうる例をあげる。なお、以下にあげる受信制御は、一例であって、本実施形態の受信制御を限定するものではない。また、以下にあげる受信制御は、本実施形態の受信制御の全てを網羅するものではない。本実施形態の受信制御には、以下の例以外の手法も含みうる。
【0054】
〔制御例1〕
図9は、受信制御装置14における空間光信号の受信制御の一例(制御例1)について説明するための概念図である。図9の例は、通信対象をスキャンするモード(スキャンモードとも呼ぶ)に関する。
【0055】
図9の例では、受光素子群PG2と増幅器AMP1が接続される。制御回路17は、スイッチ群SG2の左から二つ目のスイッチSW、選択スイッチSS2、および切替スイッチCS2を、閉状態にする。その結果、受光素子群PG2と増幅器AMP1が接続される。図9には、スキャン中の受光素子131と、そのスキャンに用いられている増幅器AMP1とを、ハッチングで明示する。スキャン中の受光素子131と、そのスキャンに用いられている増幅器AMP1との間の経路は、スキャン中の信号が伝播する経路として、太線で明示する。
【0056】
スキャンモードにおいて、制御回路17は、受光素子アレイ13に含まれる受光素子131を順番にアクティブにし、通信対象との通信に割り当てられる受光素子131を選択する。例えば、制御回路17は、受信された光信号の強度が最大の受光素子131を選択する。例えば、制御回路17は、受信された光信号の強度が最大の受光素子131を含む受光素子群PGを、通信対象との通信に割り当ててもよい。本制御例によれば、通信対象をスキャンするスキャンモードを設定できる。
【0057】
〔制御例2〕
図10は、受信制御装置14における空間光信号の受信制御の一例(制御例2)について説明するための概念図である。本制御例は、制御例1において通信対象(第1通信対象)との通信が確立された後、別の通信対象のスキャンを継続する例である。図10の例では、通信対象との通信を行う通信モードと、通信対象をスキャンするスキャンモードとが並行して行われる。
【0058】
図10の例では、受光素子群PG2と増幅器AMP1が接続される。制御回路17は、スイッチ群SG2の左から三つ目のスイッチSW、選択スイッチSS2、および切替スイッチCS2を、閉状態にする。その結果、受光素子群PG2と増幅器AMP1が接続される。図10には、通信中の受光素子131と、その通信に用いられている増幅器AMP1とを、ハッチングで明示する。通信中の受光素子131と、その通信に用いられている増幅器AMP1との間の経路は、第1通信対象との通信中の信号が伝播する経路として、太線で明示する。
【0059】
また、図10の例では、受光素子群PG5と増幅器AMP3が接続される。制御回路17は、スイッチ群SG5の左から二つ目のスイッチSW、選択スイッチSS5、および切替スイッチCS7を、閉状態にする。その結果、受光素子群PG5と増幅器AMP3が接続される。図10には、スキャン中の受光素子131と、そのスキャンに用いられている増幅器AMP3とを、ハッチングで明示する。スキャン中の受光素子131と、そのスキャンに用いられている増幅器AMP3との間の経路は、スキャン中の信号が伝播する経路として、太線で明示する。
【0060】
図10の例では、通信モードとスキャンモードが並行して設定される。通信モードにおいて、制御回路17は、通信が確立された受光素子131と増幅器AMPの間の接続を固定する。通信に用いられていない受光素子群PGに関して、制御回路17は、受光素子アレイ13に含まれる受光素子131を順番にアクティブにし、通信対象との通信に割り当てられる受光素子131を選択する。例えば、制御回路17は、受信された光信号の強度が最大の受光素子131を選択する。例えば、制御回路17は、受信された光信号の強度が最大の受光素子131を含む受光素子群PGを、通信対象との通信に割り当ててもよい。
【0061】
図11は、図10のスキャンを継続させた状態を示す。図11の例は、受光素子群PG3、受光素子群PG4、受光素子群PG5のスキャンを経て、受光素子群PG1のスキャンを完了させた状態を示す。本制御例によれば、通信中の受光素子群PGを飛ばして、その受光素子群PG以外の受光素子群PGに関して、スキャンモードを設定できる。
【0062】
〔制御例3〕
図12は、受信制御装置14における空間光信号の受信制御の一例(制御例3)について説明するための概念図である。本制御例は、制御例2によって二つ目の通信対象(第2通信対象)との通信が確立された後の状態を示す。図12の例では、二つの通信対象(第1通信対象、第2通信対象)との通信が並行して行われる。
【0063】
図12の例では、受光素子群PG2と増幅器AMP1が接続される。制御回路17は、スイッチ群SG2の左から三つ目のスイッチSW、選択スイッチSS2、および切替スイッチCS2を、閉状態にする。その結果、受光素子群PG2と増幅器AMP1が接続される。図12には、受光素子群PG2に含まれる通信中の受光素子131と、その通信に用いられている増幅器AMP1とを、ハッチングで明示する。受光素子群PG2に含まれる通信中の受光素子131と、その通信に用いられている増幅器AMP1との間の経路は、第1通信対象との通信中の信号が伝播する経路として、太線で明示する。
【0064】
また、図12の例では、受光素子群PG5と増幅器AMP3が接続される。制御回路17は、スイッチ群SG5の左から二つ目のスイッチSWと、選択スイッチSS5、および切替スイッチCS7を、閉状態にする。その結果、受光素子群PG5と増幅器AMP3が接続される。図12には、通信中の受光素子群PG5に含まれる受光素子131と、その通信に用いられている増幅器AMP3とを、ハッチングで明示する。受光素子群PG5に含まれる通信中の受光素子131と、その通信に用いられている増幅器AMP3との間の経路は、第2通信対象との通信中の信号が伝播する経路として、太線で明示する。
【0065】
図12の例では、二つの通信モードが並行して設定される。通信モードにおいて、制御回路17は、通信が確立された受光素子131と増幅器AMPの間の接続を固定する。本制御例によれば、二つの通信対象との通信を確立できる。
【0066】
〔制御例4〕
図13は、受信制御装置14における空間光信号の受信制御の一例(制御例4)について説明するための概念図である。本制御例は、制御例3の後、新たなるスキャンによって、新たな通信対象(第3通信対象)との通信が確立された例である。図13の例では、三つの通信対象(第1通信対象、第2通信対象、第3通信対象)との通信が並行して行われる。
【0067】
図13の例では、受光素子群PG2と増幅器AMP1が接続される。制御回路17は、スイッチ群SG2の左から三つ目のスイッチSW、選択スイッチSS2、および切替スイッチCS2を、閉状態にする。その結果、受光素子群PG2と増幅器AMP1が接続される。図13には、受光素子群PG2に含まれる通信中の受光素子131と、その通信に用いられている増幅器AMP1とを、ハッチングで明示する。受光素子群PG2に含まれる通信中の受光素子131と、その通信に用いられている増幅器AMP1との間の経路は、第1通信対象との通信中の信号が伝播する経路として、太線で明示する。
【0068】
また、図13の例では、受光素子群PG5と増幅器AMP3が接続される。制御回路17は、スイッチ群SG5の左から二つ目のスイッチSW、選択スイッチSS5、および切替スイッチCS7を、閉状態にする。その結果、受光素子群PG5と増幅器AMP3が接続される。図13には、通信中の受光素子群PG5に含まれる受光素子131と、その通信に用いられている増幅器AMP3とを、ハッチングで明示する。受光素子群PG5に含まれる通信中の受光素子131と、その通信に用いられている増幅器AMP3との間の経路は、第2通信対象との通信中の信号が伝播する経路として、太線で明示する。
【0069】
さらに、図13の例では、受光素子群PG4と増幅器AMP2が接続される。制御回路17は、スイッチ群SG4の左から一つ目のスイッチSW、選択スイッチSS4、および切替スイッチCS5を、閉状態にする。その結果、受光素子群PG4と増幅器AMP2が接続される。図13には、受光素子群PG4に含まれる通信中の受光素子131と、その通信に用いられている増幅器AMP2とを、ハッチングで明示する。受光素子群PG4に含まれる通信中の受光素子131と、その通信に用いられている増幅器AMP2との間の経路は、第3通信対象との通信中の信号が伝播する経路として、太線で明示する。
【0070】
図13の例では、三つの通信モードが並行して設定される。通信モードにおいて、制御回路17は、通信が確立された受光素子131と増幅器AMPの間の接続を固定する。本制御例によれば、三つの通信対象との通信を確立できる。通信対象との通信は、四つ以上設定されてもよい。スキャンモードと通信モードを並行して行う場合は、少なくとも一つの増幅器AMPを未使用状態として、スキャンが行われるように設定されればよい。
【0071】
〔制御例5〕
図14は、受信制御装置14における空間光信号の受信制御の一例(制御例5)について説明するための概念図である。本制御例は、制御例4の後、二つの通信対象(第1通信対象、第2通信対象)との通信が終了し、一つの通信対象(第3通信対象)との通信を継続させながら、新たなるスキャンが開始された例である。図14の例では、一つの通信対象(第3通信対象)との通信と、新たな通信対象のスキャンとが並行して行われる。
【0072】
図14の例では、受光素子群PG4と増幅器AMP2が接続される。制御回路17は、スイッチ群SG4の左から一つ目のスイッチSW、選択スイッチSS4、および切替スイッチCS5を、閉状態にする。その結果、受光素子群PG4と増幅器AMP2が接続される。図14には、通信中の受光素子群PG4に含まれる受光素子131と、その通信に用いられている増幅器AMP2とを、ハッチングで明示する。受光素子群PG4に含まれる通信中の受光素子131と、その通信に用いられている増幅器AMP2との間の経路は、第3通信対象との通信中の信号が伝播する経路として、太線で明示する。
【0073】
また、図14の例では、受光素子群PG3と増幅器AMP1が接続される。制御回路17は、スイッチ群SG3の左から二つ目のスイッチSW、選択スイッチSS3、切替スイッチCS2、および切替スイッチCS3を、閉状態にする。その結果、受光素子群PG3と増幅器AMP1が接続される。図14には、受光素子群PG3のスキャン中の受光素子131と、そのスキャンに用いられている増幅器AMP1とを、ハッチングで明示する。受光素子群PG3のスキャン中の受光素子131と、そのスキャンに用いられている増幅器AMP1との間の経路は、スキャン中の信号が伝播する経路として、太線で明示する。
【0074】
図14の例では、通信モードとスキャンモードが並行して設定される。通信モードにおいて、制御回路17は、通信が確立された受光素子131と増幅器AMPの間の接続を固定する。通信に用いられていない受光素子群PGに関して、制御回路17は、受光素子アレイ13に含まれる受光素子131を順番にアクティブにし、通信対象との通信に割り当てられる受光素子131を選択する。制御回路17は、通信中の受光素子131を含む受光素子群PGを飛ばして、その受光素子群PG以外の受光素子群PGに関して、スキャンモードを設定する。本制御例によれば、通信が確立されている通信対象との通信を継続させながら、通信に用いられていた受光素子131や増幅器AMPをスキャンに転用させることができる。
【0075】
〔変形例1〕
次に、本実施形態に係る変形例1について図面を参照しながら説明する。図15は、本変形例の受光器10-1の構成の一例を示す概念図である。図15は、入射面側の斜め上方の視座から、受光器10-1を見た斜視図である。本変形例の受光器10-1は、ボールレンズ11と受光素子アレイ13-1によって構成される。
【0076】
受光素子アレイ13-1は、複数の受光素子アレイ13を短辺方向に重ねた構造を有する。受光素子アレイ13-1に含まれる受光素子の各々は、ボールレンズ11の集光領域に配置される。すなわち、受光素子アレイ13-1は、ボールレンズ11の集光領域に合わせた曲面上に、アレイ状に配置された複数の受光素子によって構成される。図15には、3個の受光素子アレイ13を重ねて、受光素子アレイ13-1を構成する例を示すが、受光素子アレイ13-1を構成する受光素子アレイ13の数には特に限定を加えない。
【0077】
本変形例の受光器10-1は、空間光信号の到来方向が受光素子アレイ13-1の短辺方向に多少ずれても、ボールレンズ11に到来する空間光信号を同様に受光できる。言い換えると、本変形例によれば、受光素子アレイ13-1の円弧が形成する面内において、空間光信号の到来方向が垂直方向に変動しても、受光素子アレイ13-1に含まれる複数の受光素子アレイ13のいずれかによって、その空間光信号に由来する信号光を受光できる。
【0078】
空間光信号の到来方向が同一面内に限定されない場合、ボールレンズ11に対して三次元的な方向から到来する空間光信号を受光できないと、所望の通信対象と通信できない状況が発生しうる。本変形例によれば、複数の受光素子がアレイ状に配置された受光素子アレイ13-1を用いることによって、単一の受光素子アレイ13を用いる場合と比べて、空間光信号の受光範囲を拡大できる。
【0079】
〔変形例2〕
次に、本実施形態に係る変形例2について図面を参照しながら説明する。図16は、本変形例の受光器10-2の構成の一例を示す概念図である。図16は、入射面側の斜め上方の視座から、受光器10-2を見た斜視図である。本変形例の受光器10-2は、ボールレンズ11と受光素子アレイ13-2によって構成される。
【0080】
受光素子アレイ13-2は、複数の受光素子アレイ13を環状に連ねた構造を有する。受光素子アレイ13-2に含まれる受光素子の各々は、ボールレンズ11の集光領域に配置される。すなわち、受光素子アレイ13-2は、ボールレンズ11の集光領域に合わせた円周上に、環状に配置された複数の受光素子によって構成される。受光素子アレイ13-2を構成する受光素子の数には限定を加えない。受光素子アレイ13-2は、ボールレンズ11の後段に配置される。複数の受光素子は、受光対象の空間光信号に由来する光信号を受光する受光部(図示しない)を含む。複数の受光素子の各々は、ボールレンズ11の出射面と受光部が対面するように、配置される。複数の受光素子の各々は、ボールレンズ11の集光領域に受光部が位置するように配置される。ボールレンズ11によって集光された光信号は、集光領域に位置する受光素子の受光部で受光される。
【0081】
空間光信号の到来方向が一方向に限定されない場合、ボールレンズ11に対して多様な方向から到来する空間光信号を受光できないと、所望の通信対象と通信できない状況が発生する可能性がある。本変形例によれば、複数の受光素子が環状に配置された受光素子アレイ13-2を用いることによって、360度の方向から到来する空間光信号を受光できる。
【0082】
〔比較例〕
次に、本実施形態の比較例(関連技術)の受光制御について図面を参照しながら説明する。比較例は、本実施形態で解決する課題を含む。比較例は、複数の受光素子に対して増幅器を共有化した場合に起こりうる課題について説明するための例である。図17は、比較例の受光制御について説明するための概念図である。比較例の受光制御については、受光素子アレイ135、処理回路155、およびセレクタ185を含む受光装置を一例にあげて説明する。
【0083】
受光素子アレイ135は、複数の受光素子を含む。受光素子アレイ135に含まれる複数の受光素子は、複数の受光素子群PG(受光素子群PG101、受光素子群PG102、・・・)のいずれかに割り振られる。
【0084】
処理回路155は、複数のスイッチを含むスイッチ群156と、複数の増幅器AMPを含む増幅回路とを含む。処理回路155に含まれる複数のスイッチの各々は、受光素子アレイ135に含まれる複数の受光素子のうちいずれか一つに接続される。処理回路に155に含まれる複数のスイッチは、複数のスイッチ群SG(スイッチ群SG101、スイッチ群SG102、・・・)のいずれかに割り振られる。
【0085】
増幅回路153に含まれる複数の増幅器AMPの各々(増幅器AMP101、増幅器AMP102)は、スイッチ群156とセレクタ185の間に配置される。増幅器AMP101は、スイッチ群SG101に含まれる複数のスイッチの出力端に接続される。増幅器AMP102は、スイッチ群SG102に含まれる複数のスイッチの出力端に接続される。複数の増幅器AMPの各々(増幅器AMP101、増幅器AMP102)の出力端は、セレクタ185に接続される。
【0086】
図17の例の場合、スイッチ群156に含まれるスイッチ群SG101の左から6番目のスイッチが閉状態に設定される。その結果、受光素子アレイ135の受光素子群PG101の左から6番目の受光素子と、増幅器AMP101とが接続される。受光素子群PG101の通信中の受光素子と、その通信に用いられている増幅器AMP101との間の経路は、スキャン中の信号が伝播する経路として、太線で明示する。比較例の場合、通信中の受光素子を含む受光素子群PG101と増幅器AMP101は、スキャンに用いることができない。そのため、通信中の受光素子を含まない受光素子群PG102と増幅器AMP102が、別の通信対象のスキャンに用いられる。比較例では、スイッチ群が階層化されておらず、受光素子群PGに対応する増幅器AMPが固定されるため、通信モードやスキャンモードを柔軟に切り替えることができない。
【0087】
例えば、64個の受光素子を8素子ずつ、8個の増幅器AMPの各々に割り当てた際に、1つの増幅器AMPあたり15度の角度を担当することを想定する。15度の角度は、50メートル先では13.2メートルの幅になり、100メートル先では26.3メートルの幅になる。この程度の幅になると、1つの増幅器AMPの受光範囲に、異なる二つの通信対象が入り込む可能性がある。1つの増幅器AMPの受光範囲に、異なる二つの通信対象が入り込むと、それらの通信対象からの空間光信号が混信する。同一方向からの混信を回避するためには、2~3個分の受光素子の間隔を空ける必要がある。すなわち、3~4個の受光素子ごとに、増幅器AMPを一つ配置すれば、混信を避けることができる。しかし、3~4個の受光素子ごとに増幅器AMPを一つずつ配置すると、16~21個の増幅器AMPが必要になる。また、通信対象の方向を正確に検知するためには、最低でも4つの受光素子を含むグループを構成する必要がある。しかし、4つの受光素子を含むグループで構成する場合、64個の受光素子を16個ずつのグループに分割することで、16個のアンプ回路が必要となる。
【0088】
比較例のように、複数の受光素子に対して増幅器AMPを共有化すれば、回路数を減らすことができる。しかし、並列化された受光素子のいずれかが使用中になると、その受光素子を含む受光素子群に対応付けられた増幅器AMPを、別のスキャンや通信に割り当てることができない。そのため、多くの受光素子が使用できなくなる。光空間通信においては、複数の通信対象との通信やスキャンが並行して行われるため、比較例1の構成の場合、継続的な光空間通信を実現することは難しい。それに対し、本実施形態の手法では、適切な数の受光素子でグループを構成させつつ、増幅器の数を適正化できるため、通信対象の方向を正確に検知できる。
【0089】
以上のように、本実施形態の受光装置は、受光素子アレイ、集光器(ボールレンズ)、および受信制御装置を備える。受光素子アレイは、複数の受光素子によって構成される。集光器は、受光素子アレイを構成する少なくともいずれかの受光素子に向けて、空間光信号を集光する。受信制御装置は、第1処理回路、制御回路、セレクタ、少なくとも一つの第2処理回路を備える。第1処理回路は、スイッチング回路および増幅回路を有する。スイッチング回路は、複数のスイッチSW、複数の選択スイッチSS、複数の切替スイッチCSを含む。複数のスイッチSWの各々は、複数の受光素子の各々に接続される。選択スイッチSSは、複数の受光素子が分配されたグループ(受光素子群PG)ごとに配置される。切替スイッチCSは、グループごとの選択スイッチSSの出力先を切り替える。増幅回路は、スイッチング回路の出力に接続された複数の増幅器AMPによって構成される。セレクタは、第1処理回路の出力に接続される。第2処理回路は、セレクタの後段に配置される。第2処理回路は、セレクタを介して割り当てられた信号をデコードする。制御回路は、複数の受光素子からの信号を複数の増幅器AMPのうちいずれかに振り分けるようにスイッチング回路を制御する。制御回路は、増幅回路で増幅された信号をいずれかの第2処理回路に割り当てるようにセレクタを制御する。
【0090】
本実施形態の通信制御装置によれば、適切な数の受光素子でグループを構成させながら、増幅器の数を適正化できるため、安定した通信速度で、継続的な光空間通信を実現できる。本実施形態においては、ボールレンズによって集光された光信号を、受光素子アレイによって受光される例について説明した。本実施形態の手法は、ボールレンズのみならず、任意の集光器によって集光された光信号の受光にも適用できる。
【0091】
本実施形態に一態様において、複数のスイッチの出力端は、グループごとに統合される。複数の選択スイッチの入力端は、グループごとに統合された複数のスイッチの出力端のいずれかに接続される。複数の選択スイッチの出力端は、複数の切替スイッチのうち少なくともいずれかの第1端に接続される。複数の切替スイッチの第2端は、複数の増幅器のうちいずれかの入力端に接続される。制御回路は、スイッチング回路に含まれる、スイッチ、選択スイッチ、および切替スイッチの開閉状態を制御することによって、複数の受光素子と複数の増幅器との間の接続状態を制御する。本態様によれば、スイッチング回路に含まれる複数のスイッチの開閉状態を制御することによって、複数の受光素子と複数の増幅器との間の接続状態を柔軟に制御できる。
【0092】
本実施形態の一態様において、制御回路は、スイッチング回路に含まれるスイッチ、選択スイッチ、および切替スイッチの開閉状態を制御することによって、通信対象のスキャンに用いられる増幅器と接続される受光素子を順次切り替える。制御回路は、通信対象のスキャンに用いられる増幅器と接続される受光素子を順次切り替えることで、通信対象から送光された空間光信号をスキャンする。本態様によれば、スイッチング回路に含まれる複数のスイッチの開閉状態を制御することによって、通信対象から送光された空間光信号をスキャンできる。
【0093】
本実施形態の一態様において、制御回路は、少なくとも一つの通信対象との通信に用いられる受光素子と増幅器の間の経路上のスイッチ、選択スイッチ、および切替スイッチを閉状態にすることによって、通信対象との通信を確立させる。本態様によれば、少なくとも一つの通信対象との通信に用いられる受光素子と増幅器の間の経路を確立することによって、少なくとも一つの通信対象との通信を確立できる。
【0094】
本実施形態の一態様において、制御回路は、通信が確立された少なくとも一つの通信対象との通信に用いられる受光素子と増幅器の間の経路上のスイッチ、選択スイッチ、および切替スイッチを閉状態で維持する。制御回路は、通信に用いられていない増幅器と接続される受光素子を順次切り替えるようにスイッチング回路を制御することによって、通信中の通信対象とは異なる通信対象から送光された空間光信号をスキャンする。本態様によれば、通信対象との通信を継続させながら、他の通信対象のスキャンを行うことができる。
【0095】
本実施形態の一態様において、受光素子アレイを構成する複数の受光素子は、単一の通信対象から送光された空間光信号が受光される受光範囲内に収まる数の受光素子によって構成されるグループのいずれかに割り当てられる。本態様によれば、通信対象ごとに適切な数の受光素子でグループ分けしながら、最低限度の数の増幅器を構成できる。
【0096】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態に係る通信装置について図面を参照しながら説明する。本実施形態の通信装置は、第1の実施形態の受光装置と、空間光信号を送光する送光装置とを組み合わせた構成を有する。以下においては、位相変調型の空間光変調器を含む送光装置を備える通信装置の例について説明する。なお、本実施形態の通信装置は、位相変調型の空間光変調器ではない送光機能を含む送光装置を備えてもよい。
【0097】
(構成)
図18は、本実施形態の通信装置2の構成の一例を示す概念図である。通信装置2は、受光装置200、制御装置250、および送光装置270を備える。受光装置200および送光装置270は、外部の通信対象と空間光信号を送受信し合う。そのため、通信装置2には、空間光信号を送受信するための開口や窓が形成される。
【0098】
受光装置200は、第1の実施形態の受光装置である。受光装置200は、通信対象(図示しない)から送信された空間光信号を受光する。受光装置200は、受光した空間光信号を電気信号に変換する。受光装置200は、変換後の電気信号を制御装置250に出力する。
【0099】
制御装置250は、受光装置200から出力された信号を取得する。制御装置250は、取得した信号に応じた処理を実行する。制御装置250が実行する処理については、特に限定を加えない。制御装置250は、実行した処理に応じた光信号を送信するための制御信号を、送光装置270に出力する。
【0100】
送光装置270は、制御装置250から制御信号を取得する。送光装置270は、制御信号に応じた空間光信号を投射する。送光装置270から投射された空間光信号は、通信対象(図示しない)によって受光される。例えば、送光装置270は、位相変調型の空間光変調器を備える。
【0101】
〔送信装置〕
図19は、送光装置270の構成の一例を示す概念図である。送光装置270は、光源271、空間光変調器273、曲面ミラー275、および制御部277を有する。光源271、空間光変調器273、および曲面ミラー275は、送信部を構成する。図19は、送光装置270の内部構成を横方向から見た側面図である。図19は、概念的なものであり、各構成要素間の位置関係や、光の進行方向などを正確に表したものではない。
【0102】
光源271は、制御部277の制御に応じて、所定の波長帯のレーザ光を出射する。光源271から出射されるレーザ光の波長は、特に限定されず、用途に応じて選定されればよい。例えば、光源271は、可視や赤外の波長帯のレーザ光を出射する。例えば、800~900ナノメートル(nm)の近赤外線であれば、レーザクラスを上げられるので、他の波長帯よりも1桁くらい感度を向上できる。例えば、1.55マイクロメートル(μm)の波長帯の赤外線ならば、高出力のレーザ光源を用いることができる。1.55μmの波長帯の赤外線のレーザ光源としては、アルミニウムガリウムヒ素リン(AlGaAsP)系レーザ光源や、インジウムガリウムヒ素(InGaAs)系レーザ光源などを用いることができる。レーザ光の波長が長い方が、回折角を大きくでき、高いエネルギーに設定できる。光源271は、空間光変調器273の変調部2730の大きさに合わせて、レーザ光を拡大するレンズを含む。光源271は、レンズによって拡大される光202を出射する。光源271から出射された光202は、空間光変調器273の変調部2730に向けて進行する。
【0103】
空間光変調器273は、光202が照射される変調部2730を有する。空間光変調器273の変調部2730には、光源271から出射された光202が照射される。空間光変調器273の変調部2730には、制御部277の制御に応じて、投射光205によって表示される画像に応じたパターン(位相画像とも呼ぶ)が設定される。空間光変調器273の変調部2730に入射した光202は、空間光変調器273の変調部2730に設定されたパターンに応じて変調される。空間光変調器273の変調部2730で変調された変調光203は、曲面ミラー275の反射面2750に向けて進行する。
【0104】
例えば、空間光変調器273は、強誘電性液晶やホモジーニアス液晶、垂直配向液晶などを用いた空間光変調器によって実現される。例えば、空間光変調器273は、LCOS(Liquid Crystal on Silicon)によって実現できる。また、空間光変調器273は、MEMS(Micro Electro Mechanical System)によって実現されてもよい。位相変調型の空間光変調器273では、投射光205を投射する箇所を順次切り替えるように動作させることによって、エネルギーを像の部分に集中することができる。そのため、位相変調型の空間光変調器273を用いる場合、光源271の出力が同じであれば、その他の方式と比べて画像を明るく表示させることができる。
【0105】
空間光変調器273の変調部2730は、複数の領域に分割される(タイリングとも呼ぶ)。例えば、変調部2730は、所望のアスペクト比の四角形の領域(タイルとも呼ぶ)に分割される。変調部2730に設定された複数のタイルの各々には、位相画像が割り当てられる。複数のタイルの各々は、複数の画素によって構成される。複数のタイルの各々には、投射される画像に対応する位相画像が設定される。複数のタイルの各々に設定される位相画像は、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0106】
変調部2730に割り当てられた複数のタイルの各々には、位相画像がタイリングされる。例えば、複数のタイルの各々には、予め生成された位相画像が設定される。複数のタイルに位相画像が設定された状態で、変調部2730に光202が照射されると、各タイルの位相画像に対応する画像を形成する変調光203が出射される。変調部2730に設定されるタイルが多いほど、鮮明な画像を表示させることができるが、各タイルの画素数が低下すると解像度が低下する。そのため、変調部2730に設定されるタイルの大きさや数は、用途に応じて設定される。
【0107】
曲面ミラー275は、曲面状の反射面2750を有する反射鏡である。曲面ミラー275の反射面2750は、投射光205の投射角に応じた曲率を有する。曲面ミラー275の反射面2750は、曲面であればよい。図31の例の場合、曲面ミラー275の反射面2750は、円柱の側面の形状を有する。例えば、曲面ミラー275の反射面2750は、球面でもよい。例えば、曲面ミラー275の反射面2750は、自由曲面であってもよい。例えば、曲面ミラー275の反射面2750は、単一の曲面ではなく、複数の曲面を組み合わせた形状であってもよい。例えば、曲面ミラー275の反射面2750は、曲面と平面を組み合わせた形状であってもよい。
【0108】
曲面ミラー275は、空間光変調器273の変調部2730に反射面2750を向けて、変調光203の光路上に配置される。曲面ミラー275の反射面2750には、空間光変調器273の変調部2730で変調された変調光203が照射される。曲面ミラー275の反射面2750で反射された光(投射光205)は、反射面2750の曲率に応じた拡大率で拡大されて、投射される。図31の例の場合、投射光205は、曲面ミラー275の反射面2750における変調光203の照射範囲の曲率に応じて、水平方向(図31の紙面に対して垂直な方向)に沿って拡大される。曲面ミラー275は、省略されてもよい。曲面ミラー275が省略される場合、空間光変調器273の変調部2730で変調された変調光203を、そのまま投射光205として投射すればよい。
【0109】
例えば、空間光変調器273と曲面ミラー275の間に、遮蔽器(図示しない)が配置されてもよい。言い換えると、空間光変調器273の変調部2730によって変調された変調光203の光路上に、遮蔽器が配置されてもよい。遮蔽器は、変調光203に含まれる不要な光成分を遮蔽し、投射光205の表示領域の外縁を規定する枠体である。例えば、遮蔽器は、所望の画像を形成する光を通過させる部分にスリット状の開口が形成されたアパーチャである。遮蔽器は、所望の画像を形成する光を通過させ、不要な光成分を遮蔽する。例えば、遮蔽器は、変調光203に含まれる0次光やゴースト像を遮蔽する。遮蔽器の詳細については、説明を省略する。
【0110】
制御部277は、光源271および空間光変調器273を制御する。例えば、制御部277は、プロセッサとメモリを含むマイクロコンピュータによって実現される。制御部277は、空間光変調器273の変調部2730に設定されたタイリングのアスペクト比に合わせて、投射される画像に対応する位相画像を変調部2730に設定する。例えば、制御部277は、画像表示や通信、測距など、用途に応じた画像に対応する位相画像を変調部2730に設定する。投射される画像の位相画像は、記憶部(図示しない)に予め記憶させておけばよい。投射される画像の形状や大きさには、特に限定を加えない。
【0111】
制御部277は、空間光変調器273の変調部2730に照射される光202の位相と、変調部2730で反射される変調光203の位相との差分を決定づけるパラメータが変化するように空間光変調器273を駆動する。空間光変調器273の変調部2730に照射される光202の位相と、変調部2730で反射される変調光203の位相との差分を決定づけるパラメータは、例えば、屈折率や光路長などの光学的特性に関するパラメータである。例えば、制御部277は、空間光変調器273の変調部2730に印可する電圧を変化させることによって、変調部2730の屈折率を調節する。位相変調型の空間光変調器273の変調部2730に照射された光202の位相分布は、変調部2730の光学的特性に応じて変調される。なお、制御部277による空間光変調器273の駆動方法は、空間光変調器273の変調方式に応じて決定される。
【0112】
制御部277は、表示される画像に対応する位相画像が変調部2730に設定された状態で、光源271を駆動させる。その結果、空間光変調器273の変調部2730に位相画像が設定されたタイミングに合わせて、光源271から出射された光202が空間光変調器273の変調部2730に照射される。空間光変調器273の変調部2730に照射された光202は、空間光変調器273の変調部2730において変調される。空間光変調器273の変調部2730において変調された変調光203は、曲面ミラー275の反射面2750に向けて出射される。
【0113】
例えば、送光装置270に含まれる曲面ミラー275の反射面2750の曲率と、空間光変調器273と曲面ミラー275の距離とを調整し、投射光205の投射角を180度に設定する。そのように構成された送光装置270を二つ用いれば、投射光205の投射角を360度に設定できる。また、送光装置270の内部で変調光203の一部を平面鏡等で折り返し、投射光205を2方向に投射するように構成すれば、投射光205の投射角を360度に設定できる。例えば、360度の向きに投射光を投射するように構成された送光装置270と、第1の実施形態の変形例2の受光器10-2(図16)とを組み合わせた構成とする。このような構成とすれば、360度の向きに空間光信号を送信し、360度の方向から到来する空間光信号を受光する通信装置を実現できる。
【0114】
〔適用例1〕
次に、本実施形態の通信装置2の適用例1について図面を参照しながら説明する。図20は、本適用例の通信装置2-1について説明するための概念図である。本適用例では、電柱や街灯などの柱の上部に、複数の通信装置2-1が配置された通信ネットワークを構成する。
【0115】
図20は、通信装置2-1の構成の一例を示す概念図である。通信装置2-1は、受光装置200-1、送信装置27-1、および制御装置(図示しない)を備える。図20では、受光回路や制御装置は省略する。通信装置2-1は、円筒状の外形を有する。受光装置200-1は、ボールレンズ21-1、受光ユニット23-1、基板24、支持部材28、およびカラーフィルタ29を含む。ボールレンズ21-1は、上下に配置された一対の支持部材28によって挟持される。ボールレンズ21-1の上下は、空間光信号の送受光に用いられないため、支持部材28で挟持されやすいように、平面状に形成されてもよい。受光ユニット23-1は、受信対象の空間光信号を受信できるように、ボールレンズ21-1の集光領域に合わせて、環状に配置される。受光ユニット23-1は、基板24に形成される。受光ユニット23-1は、導線280によって、制御装置(図示しない)や送信装置27-1に接続される。円筒状の受光装置200-1の側面には、カラーフィルタ29が配置される。カラーフィルタ29は、不要な光を除去し、通信に用いられる空間光信号を選択的に透過する。円筒状の受光装置200-1の上下面には、一対の支持部材28が配置される。一対の支持部材28は、ボールレンズ21-1の上下を挟持する。ボールレンズ21-1の出射側には、環状に形成された受光ユニット23-1が配置される。カラーフィルタ29を介してボールレンズ21-1に入射した空間光信号は、ボールレンズ21-1によって、受光ユニット23-1に集光される。制御装置(図示しない)は、受光ユニット23-1によって受光された光信号に応じて、送信装置27-1から空間光信号を送信させる。例えば、送信装置27-1は、図19の構成によって実現できる。例えば、送信装置27-1は、360度の方位に向けて空間光信号を送光できるように、複数の光源や、空間光変調器、曲面ミラー、反射鏡を組み合わせた構成としてもよい。図20の例では、送信装置27-1には、360度の方向に向けて空間光信号を投光可能に形成された、スリットが形成される。
【0116】
図21は、電柱の上部に配置された複数の通信装置2-1が、通信ネットワークを構成する例である。複数の通信装置2-1は、互いに空間光信号を送受光し合う。電柱や街灯などの柱の上部には障害物が少ない。そのため、電柱や街灯などの柱の上部は、通信装置2-1を設置するのに適している。また、柱の上部の同じ高さに通信装置2-1を設置すれば、空間光信号の到来方向が水平方向に限定されるので、受光装置200-1を構成する受光ユニット23-1の受光面積を小さくし、装置を簡略化できる。通信をやり取りする通信装置2-1のペアは、少なくとも一方の通信装置2-1が、他方の通信装置2-1から送信された空間光信号を受光するように配置される。通信装置2-1のペアは、空間光信号を互いに送受信するように配置されてもよい。複数の通信装置2-1で空間光信号の通信ネットワークが構成される場合、中間に位置する通信装置2-1は、他の通信装置2-1から送信された空間光信号を、別の通信装置2-1に中継するように配置されればよい。
【0117】
本適用例によれば、異なる柱に設置された複数の通信装置2-1の間で、空間光信号を用いた通信が可能になる。例えば、異なる柱に設置された通信装置2-1の間における通信に応じて、自動車や家屋などに設置された無線装置や基地局と通信装置2-1との間で、無線通信による通信を行うように構成してもよい。例えば、柱に設置された通信ケーブル等を介して、通信装置2-1がインターネットに接続されるように構成してもよい。
【0118】
以上のように、本実施形態の通信装置は、受光装置、送光装置、および制御装置を備える。送光装置は、空間光信号を送光する。制御装置は、受光装置によって受光された空間光信号に基づく信号を取得する。制御装置は、取得した信号に応じた処理を実行する。制御装置は、実行した処理に応じた空間光信号を送光装置に送光させる。受光装置は、受光素子アレイ、集光器(ボールレンズ)、および受信制御装置を備える。受光素子アレイは、複数の受光素子によって構成される。集光器は、受光素子アレイを構成する少なくともいずれかの受光素子に向けて、空間光信号を集光する。受信制御装置は、第1処理回路、制御回路、セレクタ、少なくとも一つの第2処理回路を備える。第1処理回路は、スイッチング回路および増幅回路を有する。スイッチング回路は、複数のスイッチSW、複数の選択スイッチSS、複数の切替スイッチCSを含む。複数のスイッチSWの各々は、複数の受光素子の各々に接続される。選択スイッチSSは、複数の受光素子が分配されたグループ(受光素子群PG)ごとに配置される。切替スイッチCSは、グループごとの選択スイッチSSの出力先を切り替える。増幅回路は、スイッチング回路の出力に接続された複数の増幅器AMPによって構成される。セレクタは、第1処理回路の出力に接続される。第2処理回路は、セレクタの後段に配置される。第2処理回路は、セレクタを介して割り当てられた信号をデコードする。制御回路は、複数の受光素子からの信号を複数の増幅器AMPのうちいずれかに振り分けるようにスイッチング回路を制御する。制御回路は、増幅回路で増幅された信号をいずれかの第2処理回路に割り当てるようにセレクタを制御する。
【0119】
本実施形態の通信制御装置によれば、適切な数の受光素子でグループを構成させながら、増幅器の数を適正化できるため、安定した通信速度で、継続的な光空間通信を実現できる。
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態の通信制御装置について図面を参照しながら説明する。本実施形態の通信制御装置は、第1の実施形態の通信制御装置を簡略化した構成である。図22は、本実施形態の通信制御装置34の構成の一例を示す概念図である。通信制御装置34は、第1処理回路35、制御回路37、セレクタ38、少なくとも一つの第2処理回路39を備える。図22には、通信制御装置34に接続される受光素子アレイ33を合わせて図示する。受光素子アレイは、複数の受光素子331を含む。
【0120】
第1処理回路35は、スイッチング回路350および増幅回路353を有する。スイッチング回路350は、複数のスイッチSW、複数の選択スイッチSS、複数の切替スイッチCSを含む。複数のスイッチSWの各々は、複数の受光素子131の各々に接続される。選択スイッチSSは、複数の受光素子131が分配されたグループ(受光素子群PG)ごとに配置される。切替スイッチCSは、グループごとの選択スイッチSSの出力先を切り替える。増幅回路353は、スイッチング回路350の出力に接続された複数の増幅器AMPによって構成される。セレクタ38は、第1処理回路35の出力に接続される。第2処理回路39は、セレクタ38の後段に配置される。第2処理回路39は、セレクタ38を介して割り当てられた信号をデコードする。制御回路37は、複数の受光素子131からの信号を複数の増幅器AMPのうちいずれかに振り分けるようにスイッチング回路350を制御する。制御回路37は、増幅回路353で増幅された信号をいずれかの第2処理回路39に割り当てるようにセレクタ38を制御する。
【0121】
以上のように、本実施形態の通信制御装置によれば、適切な数の受光素子でグループを構成させながら、増幅器の数を適正化できるため、安定した通信速度で、継続的な光空間通信を実現できる。
【0122】
(ハードウェア)
ここで、本開示の各実施形態に係る制御や処理を実行するハードウェア構成について、図23の情報処理装置90を一例として挙げて説明する。なお、図23の情報処理装置90は、各実施形態の制御や処理を実行するための構成例であって、本開示の範囲を限定するものではない。
【0123】
図23のように、情報処理装置90は、プロセッサ91、主記憶装置92、補助記憶装置93、入出力インターフェース95、および通信インターフェース96を備える。図23においては、インターフェースをI/F(Interface)と略記する。プロセッサ91、主記憶装置92、補助記憶装置93、入出力インターフェース95、および通信インターフェース96は、バス98を介して、互いにデータ通信可能に接続される。また、プロセッサ91、主記憶装置92、補助記憶装置93、および入出力インターフェース95は、通信インターフェース96を介して、インターネットやイントラネットなどのネットワークに接続される。
【0124】
プロセッサ91は、補助記憶装置93等に格納されたプログラムを、主記憶装置92に展開する。プロセッサ91は、主記憶装置92に展開されたプログラムを実行する。本実施形態においては、情報処理装置90にインストールされたソフトウェアプログラムを用いる構成とすればよい。プロセッサ91は、本実施形態に係る制御や処理を実行する。
【0125】
主記憶装置92は、プログラムが展開される領域を有する。主記憶装置92には、プロセッサ91によって、補助記憶装置93等に格納されたプログラムが展開される。主記憶装置92は、例えばDRAM(Dynamic Random Access Memory)などの揮発性メモリによって実現される。また、主記憶装置92として、MRAM(Magnetoresistive Random Access Memory)などの不揮発性メモリが構成/追加されてもよい。
【0126】
補助記憶装置93は、プログラムなどの種々のデータを記憶する。補助記憶装置93は、ハードディスクやフラッシュメモリなどのローカルディスクによって実現される。なお、種々のデータを主記憶装置92に記憶させる構成とし、補助記憶装置93を省略することも可能である。
【0127】
入出力インターフェース95は、規格や仕様に基づいて、情報処理装置90と周辺機器とを接続するためのインターフェースである。通信インターフェース96は、規格や仕様に基づいて、インターネットやイントラネットなどのネットワークを通じて、外部のシステムや装置に接続するためのインターフェースである。入出力インターフェース95および通信インターフェース96は、外部機器と接続するインターフェースとして共通化してもよい。
【0128】
情報処理装置90には、必要に応じて、キーボードやマウス、タッチパネルなどの入力機器が接続されてもよい。それらの入力機器は、情報や設定の入力に使用される。なお、タッチパネルを入力機器として用いる場合は、表示機器の表示画面が入力機器のインターフェースを兼ねる構成としてもよい。プロセッサ91と入力機器との間のデータ通信は、入出力インターフェース95に仲介させればよい。
【0129】
また、情報処理装置90には、情報を表示するための表示機器を備え付けてもよい。表示機器を備え付ける場合、情報処理装置90には、表示機器の表示を制御するための表示制御装置(図示しない)が備えられていることが好ましい。表示機器は、入出力インターフェース95を介して情報処理装置90に接続すればよい。
【0130】
また、情報処理装置90には、ドライブ装置が備え付けられてもよい。ドライブ装置は、プロセッサ91と記録媒体(プログラム記録媒体)との間で、記録媒体からのデータやプログラムの読み込み、情報処理装置90の処理結果の記録媒体への書き込みなどを仲介する。ドライブ装置は、入出力インターフェース95を介して情報処理装置90に接続すればよい。
【0131】
以上が、本発明の各実施形態に係る制御や処理を可能とするためのハードウェア構成の一例である。なお、図23のハードウェア構成は、各実施形態に係る制御や処理を実行するためのハードウェア構成の一例であって、本発明の範囲を限定するものではない。また、各実施形態に係る制御や処理をコンピュータに実行させるプログラムも本発明の範囲に含まれる。さらに、各実施形態に係るプログラムを記録したプログラム記録媒体も本発明の範囲に含まれる。記録媒体は、例えば、CD(Compact Disc)やDVD(Digital Versatile Disc)などの光学記録媒体で実現できる。記録媒体は、USB(Universal Serial Bus)メモリやSD(Secure Digital)カードなどの半導体記録媒体によって実現されてもよい。また、記録媒体は、フレキシブルディスクなどの磁気記録媒体、その他の記録媒体によって実現されてもよい。プロセッサが実行するプログラムが記録媒体に記録されている場合、その記録媒体はプログラム記録媒体に相当する。
【0132】
各実施形態の構成要素は、任意に組み合わせてもよい。また、各実施形態の構成要素は、ソフトウェアによって実現されてもよいし、回路によって実現されてもよい。
【0133】
以上、実施形態を参照して本発明を説明してきたが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【符号の説明】
【0134】
2 通信装置
10 受光装置
11 ボールレンズ
13 受光素子アレイ
14 受信制御装置
15 第1処理回路
17 制御回路
18 セレクタ
19 第2処理回路
100 受光器
130 基板
131 受光素子
150 スイッチング回路
151 第1スイッチ回路
152 第2スイッチ回路
153 増幅回路
200 受光装置
250 制御装置
270 送光装置
271 光源
273 空間光変調器
275 曲面ミラー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23