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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-28
(45)【発行日】2025-05-09
(54)【発明の名称】回路装置、およびフィルタ回路
(51)【国際特許分類】
   H03H 7/09 20060101AFI20250430BHJP
   H01F 17/04 20060101ALI20250430BHJP
   H01F 27/00 20060101ALI20250430BHJP
   H01F 27/06 20060101ALI20250430BHJP
   H01F 27/29 20060101ALI20250430BHJP
   H05K 1/18 20060101ALI20250430BHJP
【FI】
H03H7/09 A
H01F17/04 A
H01F27/00 S
H01F27/06 103
H01F27/29 H
H01F27/29 G
H05K1/18 H
H05K1/18 J
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2024517262
(86)(22)【出願日】2023-04-20
(86)【国際出願番号】 JP2023015779
(87)【国際公開番号】W WO2023210499
(87)【国際公開日】2023-11-02
【審査請求日】2024-07-05
(31)【優先権主張番号】P 2022074555
(32)【優先日】2022-04-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】東條 淳
【審査官】石田 昌敏
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/229939(WO,A1)
【文献】特開平06-061054(JP,A)
【文献】国際公開第2021/044848(WO,A1)
【文献】特開2020-155875(JP,A)
【文献】国際公開第2022/014432(WO,A1)
【文献】特開2015-041959(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0210110(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03H 7/00- 7/13
H01F 17/04
H01F 27/00
H01F 27/06
H01F 27/29
H05K 1/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コイル部品と、
前記コイル部品を実装する基板と、を備え、
前記コイル部品は、
第1コイルと、
前記第1コイルの開口方向から見て、前記第1コイルと開口が重なる第2コイルと、
前記第1コイルの一方の端に接続される第1端子と、
前記第1コイルの他方の端に接続される第2端子と、
前記第2コイルの一方の端に接続される第3端子と、
前記第2コイルの他方の端に接続される第4端子と、を含み、
前記第1端子から前記第2端子に電流が流れたとき前記第1コイルに発生する磁界の向きと、前記第3端子から前記第4端子に電流が流れたとき前記第2コイルに発生する磁界の向きとが同じであり、
前記基板は、
前記第1端子と電気的に接続される第1配線と、
前記第4端子と電気的に接続される第2配線と、
前記第2端子および前記第3端子と電気的に接続される第3配線と、を含み、
前記第3配線は、少なくとも一部が前記第1コイルの開口を含む平面と前記第2コイルの開口を含む平面とで挟まれる空間の外側に配置され、コンデンサとも電気的に接続される、回路装置。
【請求項2】
前記コイル部品は、前記基板に対して垂直な方向から見た形状が矩形であり、
前記第1端子~前記第4端子が前記コイル部品の同じ平面上に設けられており、
前記第1端子から前記第2端子に至る方向と、前記第3端子から前記第4端子に至る方向とがクロスするように各端子が配置されている、請求項1に記載の回路装置。
【請求項3】
前記コンデンサは、前記第3配線に対して直列に接続され、
前記基板は、
前記第3配線と電気的に接続された側と反対側で前記コンデンサと電気的に接続される第4配線をさらに備え、
前記第4配線は接地される、請求項1または請求項2に記載の回路装置。
【請求項4】
前記第1コイルおよび前記第2コイルの開口方向と、前記コンデンサの配置方向とは垂直である、請求項1または請求項2に記載の回路装置。
【請求項5】
前記第3配線は、前記基板に対して垂直な方向から見て、前記第3配線と前記第2端子の接続箇所と、前記第3配線と前記第3端子の接続箇所とを直線でつなぐ部分を含む、請求項1または請求項2に記載の回路装置。
【請求項6】
前記コイル部品は、
ワイヤを巻き付ける胴体部、および当該胴体部の両端に設けられた鍔部を有するボビンと、
前記第1コイルを形成する前記胴体部に巻き付けられる第1ワイヤと、
前記第2コイルを形成する前記胴体部に巻き付けられる第2ワイヤと、を含み、
前記第1端子~前記第4端子は前記鍔部に形成されている、請求項1または請求項2に記載の回路装置。
【請求項7】
前記第1コイルおよび前記第2コイルの開口方向は、前記コイル部品を実装する前記基板の面に対して平行である、請求項6に記載の回路装置。
【請求項8】
前記第1ワイヤと前記第2ワイヤは同じ方向に巻かれている、請求項6に記載の回路装置。
【請求項9】
前記第1ワイヤの巻き回数および前記第2ワイヤの巻き回数が1巻きである、請求項6に記載の回路装置。
【請求項10】
前記コイル部品は、
筐体と、
前記筐体の内部に配置される前記第1コイルと、
前記筐体の第1主面の方向から視て、前記第1コイルの開口と開口が重なるように前記筐体の内部に配置される前記第2コイルと、を備え、
前記第1コイルは、前記筐体の第1側面側から引き出される前記第1端子および第2側面側から引き出される前記第2端子とを有し、
前記第2コイルは、前記筐体の前記第1側面側から引き出される前記第3端子および前記第2側面側から引き出される前記第4端子とを有し、
前記第1端子および前記第3端子は、前記第1側面側に沿って前記筐体の第2主面の方向に延伸し、
前記第2端子および前記第4端子は、前記第2側面側に沿って前記第2主面の方向に延伸している、請求項1または請求項2に記載の回路装置。
【請求項11】
前記第1コイルおよび前記第2コイルの開口を含む面は、前記コイル部品を実装する前記基板の面と対向している、請求項10に記載の回路装置。
【請求項12】
前記第1コイルと前記第1端子および前記第2端子は一体として形成され、前記第2コイルと前記第3端子および前記第4端子は一体として形成される、請求項10に記載の回路装置。
【請求項13】
請求項1または請求項2に記載の前記回路装置と、
前記回路装置の前記第3配線に電気的に接続された前記コンデンサと、を備える、フィルタ回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、コイル部品を実装する回路装置、およびフィルタ回路に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器には、導体を流れる電流のうち不要なノイズ成分を除去するフィルタ回路が用いられている。ノイズ対策に用いるフィルタ回路には、例えばEMI(Electro-Magnetic Interference)除去フィルタなどがあり、キャパシタンス素子であるコンデンサが用いられている。そのため、当該コンデンサの寄生インダクタンスである等価直列インダクタンス(ESL:Equivalent Series Inductance)によりフィルタ回路のノイズ抑制効果が低下することが知られている。
【0003】
コンデンサの等価直列インダクタンスESLを、二つのコイルを磁気結合することで生じる負のインダクタンスで打ち消し、フィルタ回路のノイズ抑制効果を広帯域化する技術が知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2001-160728号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、負のインダクタンスを得るには、磁気結合させる二つのコイルに流れる電流の方向を同じ方向にしなければならない。磁気結合させる二つのコイルを、ボビンにワイヤを巻き付けたコイル部品で実現する場合、一般的なトランスコイルやコモンモードチョークコイル(CMCC)の構造のように同じ方向に巻いた2本のワイヤを、同じ鍔部の端子同士を電気的に接続して中間端子とすると、電流の方向が逆になってしまい、負のインダクタンスが得られない。
【0006】
そのため、中間端子が同じ鍔部に形成された当該コイル部品は、入力端子から中間端子までワイヤをボビンに巻き付けた後、セッティングを変えて中間端子から出力端子までワイヤをボビンに巻き付けて形成しなければならず製造コストが高くなる問題があった。また、巻き数の少ないコイル部品では、ボビンに2本のワイヤを同じ方向に巻き付けるのであれば比較的コイル間隔を一定に保ちやすい。しかし、セッティングを変えて2回に分けてボビンにワイヤを巻き付けるコイル部品では、コイル間隔を一定に保ち難く相互インダクタンスが安定しない問題があった。
【0007】
そこで、本開示の目的は、製造コストが低く、相互インダクタンスが安定しているコイル部品を用いたフィルタ回路を実現できる回路装置、およびフィルタ回路を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一形態に係る回路装置は、コイル部品と、コイル部品を実装する基板と、を備える。コイル部品は、第1コイルと、第1コイルの開口方向から見て、第1コイルと開口が重なる第2コイルと、第1コイルの一方の端に接続される第1端子と、第1コイルの他方の端に接続される第2端子と、第2コイルの一方の端に接続される第3端子と、第2コイルの他方の端に接続される第4端子と、を含む。第1端子から第2端子に電流が流れたとき第1コイルに発生する磁界の向きと、第3端子から第4端子に電流が流れたとき第2コイルに発生する磁界の向きとが同じである。基板は、第1端子と電気的に接続される第1配線と、第4端子と電気的に接続される第2配線と、第2端子および第3端子と電気的に接続される第3配線と、を含む。第3配線は、少なくとも一部が第1コイルの開口を含む平面と第2コイルの開口を含む平面とで挟まれる空間の外側に配置され、コンデンサとも電気的に接続される。
【0009】
本開示の一形態に係るフィルタ回路、上記の回路装置と、回路装置の第3配線に電気的に接続された前記コンデンサと、を備える。
【発明の効果】
【0010】
本開示の一形態によれば、コイル部品の第2端子および第3端子と電気的に接続される第3配線を含み、当該第3配線はコンデンサとも電気的に接続されるので、製造コストが低く、相互インダクタンスが安定しているコイル部品を用いたフィルタ回路を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施の形態1に係る回路装置の平面図である。
図2】実施の形態1に係るコイル部品の斜視図である。
図3】実施の形態1に係るフィルタ回路の回路図である。
図4】変形例1-1に係る回路装置の平面図である。
図5】変形例1-2に係る回路装置の平面図である。
図6】変形例2に係る回路装置の斜視図である。
図7】変形例3に係るコイル部品の斜視図である。
図8】変形例3に係るコイル部品の側面図である。
図9】実施の形態2に係る回路装置の平面図である。
図10】実施の形態2に係るコイル部品の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<実施の形態1>
以下に、実施の形態1に係る回路装置について説明する。図1は、実施の形態1に係る回路装置10の平面図である。当該回路装置10は、例えば、電源ライン8a,8bのノイズ対策に用いられるフィルタ回路であり、コンデンサC1の寄生インダクタンスをキャンセルするために磁気結合した二つのコイルを含むコイル部品1が実装されている。もちろん、回路装置10は、電源ライン8a,8bのノイズ対策に用いられるフィルタ回路に限定されず、他の信号ライン等のノイズ対策に用いられるフィルタ回路などであってもよい。
【0013】
回路装置10に実装されるコイル部品1は、後述するようにボビンに2本のワイヤを同じ方向に巻き付けて形成してある。そのため、コイル部品1は、入力端子から中間端子までの巻き方向と、中間端子から出力端子までの巻き方向とが逆方向となるようにワイヤをボビンに巻き付けて形成する場合に比べて、2本まとめて巻き付けることが可能なので製造コストが低い。また、コイル部品1は、ボビンに2本のワイヤを同じ方向に巻き付けるので比較的コイル間隔を一定に保ちやすく、相互インダクタンスが安定する。なお、コイル部品1は、ボビンにワイヤを巻き付けた巻き線コイルを一例に説明するが、他の構成のコイル部品でもよい。
【0014】
コイル部品1は、ボビンに2本のワイヤを同じ方向に巻き付けるので、第1ワイヤ4の一方の端に接続される端子6a(第1端子)と、第1ワイヤ4の他方の端に接続される端子6b(第2端子)と、第2ワイヤ5の一方の端に接続される端子6c(第3端子)と、第2ワイヤ5の他方の端に接続される端子6d(第4端子)とを有している。つまり、コイル部品1は、端子6a~端子6dの4つの端子を有している。4つの端子(端子6a~端子6d)は、コイル部品1の四隅に設けられている。なお、ボビンに巻き付けられる第1ワイヤ4が第1コイルL1を形成し、ボビンに巻き付けられる第2ワイヤ5が第2コイルL2を形成している。
【0015】
フィルタ回路において、コンデンサの寄生インダクタンスをキャンセルするコイル部品は、機能的に3つの端子(入力端子、中間端子、出力端子)を有していればよい。しかし、一般的な電子部品では、製造しやすさから直方体の形状が採用されることが多く、当該コイル部品においても、形状を直方体とし、機械的強度の観点から他と接続しない端子(NC(Non-Connection)端子)を採用して4つの端子とすることが多い。NC端子を加えて4つの端子のコイル部品を形成しても、機能的には3つの端子しか使用しないため、当該コイル部品を基板60に実装する場合にコイル部品の向きが問題となる。そのため、コイル部品に方向を示すマークを設ける必要があり、特性選別やテーピング時にコイル部品の方向を揃える必要があるなど、製造コストが高くなる要因であった。一方、本実施の形態1に係るコイル部品1は、NC端子を必要としないため、後述するように向きが問題とならない。
【0016】
なお、コイル部品1は、図1に示すように、基板60に対して垂直な方向から見た形状が矩形である。端子6a~端子6dは、コイル部品1の同じ平面上に設けられている。端子6aから端子6bに至る方向と、端子6cから端子6dに至る方向とがクロスするように端子6a~端子6dが配置されている。
【0017】
回路装置10は、基板60の表面に電源ライン8a,8bの配線パターンが形成されており、当該電源ライン8a,8bに対して直列にコイル部品1が実装されている。電源ライン8a(第1配線)には、コイル部品1の端子6aと電気的に接続し、電源ライン8aからコイル部品1に電流を入力するための電極7a(第1電極)が設けられている。電極7aと電気的に接続される端子6aがコイル部品1の入力端子として機能する。一方、電源ライン8b(第2配線)には、コイル部品1の端子6dと電気的に接続し、コイル部品1から電源ライン8bに電流を出力するための電極7d(第4電極)が設けられている。電極7dと電気的に接続される端子6dがコイル部品1の出力端子として機能する。
【0018】
基板60は、複数の絶縁層が積層されて形成され、例えば低温同時焼成セラミックス、ガラスエポキシ樹脂等で形成される。基板60の表面には、電源ライン8a,など配線パターン、コイル部品1、コンデンサC1などの部品を接続するための電極などが形成され、それぞれCuやAg、Al等の電極材料として一般的に採用される金属材料で形成される。例えば基板60がガラスエポキシ樹脂の場合、ガラスエポキシ樹脂上に配線パターンをCuで形成し、配線パターンを含むガラスエポキシ樹脂上にさらに絶縁樹脂を形成する。実装するコイル部品1、コンデンサC1などの部品と配線パターンとを電気的に接続するための電極は、配線パターン上の絶縁樹脂が除去することで形成された部分である。配線パターン上に形成した電極とは、例えばはんだによって配線パターンのCuと部品の端子とが電気的に接続される場所である。
【0019】
さらに、回路装置10は、コンデンサC1がコイル部品1の中間端子として機能する端子6b,6cに対して直列に接続されている。基板60には、端子6bを接続するための電極7b(第2電極)と端子6cを接続するための電極7c(第3電極)とを直線で繋ぐ配線8c(第3配線)が形成されている。図1のように配線8cが端子6bと端子6cとを最短距離で接続することで、端子6bと接続する配線と端子6cと接続する配線とを別途配線で繋ぐ場合に比べて、寄生インダクタンスを低減でき、コイル部品1で発生した負の相互インダクタンスの多くを寄生インダクタンスとの相殺に用いることができる。端子6bと端子6cとを接続する配線距離を変えることにより(図示せず)、寄生インダクタンスを増減させることができるため、回路全体としての負の相互インダクタンスを調整することが可能となる。
【0020】
配線8cには、コンデンサC1と電気的に接続するための電極7e(第5電極)が形成されている。図1に示す回路装置10では、基板60に対して垂直な方向から見た配線8cの形状がT字形状である。具体的に、配線8cは、基板60に対して垂直な方向から見て、配線8cと端子6bの接続箇所(電極7b)と、配線8cと端子6cの接続箇所(電極7c)とを直線でつなぐ部分と、当該直線でつなぐ部分の中央部から延び、コンデンサC1の接続箇所(電極7e)へと至る部分とでT字形状を形成している。つまり、コンデンサC1を接続する配線8cの部分の配線方向は、電極7bと電極7cとを直線でつなぐ配線8cの部分の配線方向に対して垂直となっている。なお、コンデンサC1を接続する配線8cの部分と、電極7bと電極7cとを直線でつなぐ配線8cの部分とを一体として形成しても、別々に形成してもよい。
【0021】
そのため、第1コイルL1および第2コイルL2の開口方向に対してコンデンサC1を接続する配線8cの部分の配線方向が垂直となるので、第1コイルL1および第2コイルL2の開口方向と、コンデンサC1の配置方向(コンデンサC1の電極間を繋ぐ方向)とは垂直となる。第1コイルL1および第2コイルL2の磁界が発生する方向にコンデンサC1が配置されないので、第1コイルL1および第2コイルL2の磁界にコンデンサC1が与える影響を少なくすることができる。なお、コイル部品1は、小型チップ部品であるため、一般的に実装した基板60側からの放熱が支配的となる。そのため、コイル部品1の中間端子として機能する端子6b,6cを跨ぐように設けられる配線8cによりコイル部品1からの放熱性を向上させることができ、コイル部品1自体に流せる電流を多くすることができる。放熱性の観点から、配線8cの幅Bは電極7bまたは電極7cの幅Aの2倍としてもよい。配線8cの幅Bを太くすほど放熱性は向上するが、コイル部品1とコンデンサC1との距離が長くなり、コイル部品1からコンデンサC1までの配線に起因する寄生インダクタンスが増加する。そのため、配線8cの幅Bは、電極7bまたは電極7cの幅Aの1.3倍~4倍程度にすることが好ましい。
【0022】
前述のように配線8cの幅Bを太くすると放熱性は向上するが、コイル部品1とコンデンサC1以外の部品を配置することができなくなり、基板60の設計自由度が減ることになる。コイル部品1に含まれるコイルは一定の電流を流すことができるよう設計されているため、特に発熱が問題となることはないが、基板60に設けた電極7cから配線8cを通って電極7bへ流れる経路が発熱の問題となる。そのため、電極7cと電極7bとの間の区間に放熱対策が行われていればよい。すなわち、図1のようなT字型の配線8cの場合、コンデンサC1と接続する配線8cの部分の長さbが、電極7cと電極7bとの間の距離aより長くすることが好ましい。一方、コンデンサC1と接続する配線8cの部分の長さbは、コイル部品1の長さcより短いこと好ましく、配線8cの幅Bを太くする場合に比べてコンデンサC1の図中左右方向に部品を自由に配置するスペースを確保できる。なお、後述する図4に示す配線8c1、図5に示す配線8c2に対しても同様に適用可能である。
【0023】
コンデンサC1は、配線8cに対して直列に接続されており、配線8cと電気的に接続された側と反対側に配線8d(第4配線)と電気的に接続されている。配線8dには、コンデンサC1と電気的に接続するための電極7fが形成されている。配線8dは、接地電極70を介して接地されている。配線8cと配線8dとの間にコンデンサC1を実装することで、コイル部品1に含まれる2つのコイル(第1コイルL1,第2コイルL2)の間の端子6b,6cと接地電極70(GND)とを電気的に繋いでいる。接地電極70は、接地電位と電気的に接続されている電極で、例えば基板60の内層に配置されている接地電位と電気的に接続している導電ビアからなる。
【0024】
次に、回路装置10に実装するコイル部品1について説明する。図2は、実施の形態1に係るコイル部品1の斜視図である。コイル部品1は、ボビン2と、第1ワイヤ4と、第2ワイヤ5とを含んでいる。ボビン2は、ワイヤを巻き付ける胴体部2aと、当該胴体部2aの両端に設けられた鍔部2b,2cとを有している。ボビン2は、非導電性材料、具体的に、アルミナのような非磁性体、Ni-Zn系フェライトのような磁性体、または樹脂などで構成される。なお、ボビン2を樹脂で構成する場合、たとえば、金属粉、フェライト粉などの磁性粉を含有する樹脂、シリカ粉などの非磁性体粉を含有する樹脂、粉末などのフィラーを含有しない樹脂などで構成される。
【0025】
コイル部品1のサイズが、2.0mm×1.25mmの場合、ボビン2の胴体部2aが1.0mm×1.0mmの角柱である。なお、本開示では、胴体部2aを角柱として説明するが、円柱であっても多角柱であってもよい。コイル部品1では、この胴体部2aに直接、第1ワイヤ4、第2ワイヤ5を巻き付けている。なお、第1ワイヤ4、および第2ワイヤ5は、例えば銅ワイヤである。
【0026】
コイル部品1において相互インダクタンスを安定させるためには、第1コイルL1および第2コイルL2の開口径、第1コイルL1と第2コイルL2とのコイル間隔を一定に保つ必要がある。そのため、胴体部2aに第1ワイヤ4および第2ワイヤ5を同じ方向で同時に巻き付けてコイル部品1を形成している。さらに、図2に示すように、第1ワイヤ4を胴体部2aに1巻きして第1コイルL1を形成し、第2ワイヤ5を胴体部2aに1巻きして第2コイルL2を形成している。厳密には、第1ワイヤ4は端子6aから端子6bにかけて胴体部2aの3面にわたる3/4周を巻いており、第2ワイヤ5は端子6cから端子6dにかけて胴体部2aの5面にわたる5/4周を巻いている。ここで、ワイヤを胴体部2aに1巻きするとは、ワイヤを胴体部2aに巻き付ける回数が1回であることを意味し、ワイヤを胴体部2aに3/4周分や5/4周分巻くことも含まれる。
【0027】
次に、第1ワイヤ4を固定する端子、および第2ワイヤ5を固定する端子について説明する。ボビン2の両側に設けられている鍔部2b、2cには、図2に示すように、第1ワイヤ4の端部と接続する端子6a,6bと、第2ワイヤ5の端部と接続する端子6c,6dとが設けられている。具体的に、鍔部2bには、端子6a,6cが、鍔部2cには、端子6b,6dがそれぞれ設けられている。
【0028】
端子6a~6dには、例えばAgペーストが焼き付けられ、NiめっきやSnめっきが施されている。そのため、端子6a,6bに第1ワイヤ4の端部を、端子6c,6dに第2ワイヤ5の端部をそれぞれ当てて熱圧着、もしくはレーザー溶接してワイヤと端子とをそれぞれ固定してある。もちろん、ワイヤと端子との固定方法はこれに限られず、金属端子を使って圧着したり、かしめたり、はんだ付けしたりする固定方法を採用してもよい。さらに、金属端子を使ってかしめてワイヤと端子とを固定した上でさらにレーザー溶接してもよい。
【0029】
コイル部品1は、コイル部品1の同じ面に設けられた端子6a~端子6dにおいて、鍔部2bに設けられている端子6aの位置と鍔部2cに設けられている端子6dの位置とが同じ辺側である(図1中の上側)。そのため、図2のように胴体部2aに同じ方向で巻き付けた第1ワイヤ4および第2ワイヤ5は、端子6a~端子6dと接続することで、第1コイルL1と第2コイルL2とが図1で示すようにクロスして配置される。
【0030】
第1コイルL1と第2コイルL2とがクロスに配置されて、端子6a,6bのいずれからも第1コイルL1に電流を流すことができ、端子6c,6dのいずれからも第2コイルL2に電流を流すことができるのであれば、コイル部品1の向きによる特性の差異がなくなる。つまり、コイル部品1は、基板60に実装する場合にコイル部品1の向きが問題とならない。そのため、コイル部品1に方向を示すマークを設ける必要がなく、特性選別やテーピング時にコイル部品の方向を揃える必要がないなど、製造コストを低くすることができる。
【0031】
具体的に、コイル部品1の向きを180度回転させた場合(図1のカッコ書きで示す場合)、電源ライン8aにコイル部品1の端子6bが電気的に接続され、電源ライン8bにコイル部品1の端子6cが電気的に接続され、端子6a,6dがコイル部品1の中間端子として機能して配線8cの電極7b,7cに接続される。なお、第1コイルL1と第2コイルL2とがクロスに配置されているので、入力端子となる端子6a,6bと、出力端子となる端子6d,6cは、図1に示すように直線状に並ぶため、入力端子および出力端子を他の装置と接続する場合に使いやすくなる。
【0032】
なお、コイル部品1を基板60に実装した場合、第1コイルL1および第2コイルL2の開口方向は、コイル部品1を実装する基板60の面に対して平行になる。
【0033】
図3は、実施の形態1に係るフィルタ回路100の回路図である。フィルタ回路100は、具体的にEMI除去フィルタ回路であり、3次のT型LCフィルタ回路である。なお、本開示では、フィルタ回路100の構成として3次のT型LCフィルタ回路を用いて説明するが、5次のT型LCフィルタ回路や、より高次のT型LCフィルタ回路に対しても同様の構成を適用することができる。まず、フィルタ回路100は、図3示すように、コイル部品1、およびコンデンサC1を備えている。
【0034】
コンデンサC1は、図3に示すように中間端子となる端子6b,6cと接地電極(GND)との間に直列接続されている。コンデンサC1は、1つでも良いが、車に載せることなどを想定してコンデンサを2つ直列に配して冗長な回路構成としてもよい。
【0035】
なお、コンデンサC1は、BaTiO3(チタン酸バリウム)を主成分とした積層セラミックコンデンサだけでなく、他の材料を主成分とした積層セラミックコンデンサでも、積層セラミックコンデンサでない、例えばアルミ電解コンデンサなどの他の種類のコンデンサでもよい。
【0036】
コイル部品1に接続されるコンデンサC1は、寄生インダクタンス(等価直列インダクタンス(ESL))としてインダクタL3を有している。そのため、フィルタ回路100は、図3に示すように、インダクタL3がコンデンサC1に直列接続された回路構成と等価となる。
【0037】
端子6b,6cには、コンデンサC1の他に第1コイルL1および第2コイルL2が接続されている。第1コイルL1と第2コイルL2とは磁気結合しており、負のインダクタンス成分(相互インダクタンスM)を生じている。この負のインダクタンス成分を用いて、コンデンサC1の寄生インダクタンス(インダクタL3)を打ち消すことができ、コンデンサC1のインダクタンス成分を見かけ上小さくすることができる。なお、図3では、インダクタL3を打ち消すための相互インダクタンスM(-M)がコンデンサC1に対して直列に接続され、第1コイルL1および第2コイルL2の各々に相互インダクタンスM(+M)を加えた等価回路として図示してある。
【0038】
コンデンサC1、第1コイルL1および第2コイルL2で構成されるフィルタ回路100は、第1コイルL1と第2コイルL2との相互インダクタンスMによる負のインダクタンス成分で、コンデンサC1の寄生インダクタンスを打ち消すことにより、高周波帯のノイズ抑制効果を向上させることができる。
【0039】
なお、コイル部品1の端子6bと端子6cとを電気的に接続する配線8cによる寄生インダクタンスは、コンデンサC1やコンデンサC1の寄生インダクタンスであるインダクタL3と直列に発生するため、配線8cの長さを変えて寄生インダクタンスを変化させることで、インダクタL3と相互インダクタンスMが相殺されるように調整することが可能となる。
【0040】
以上のように、実施の形態1に係る回路装置10は、コイル部品1と、コイル部品1を実装する基板60と、を備える。コイル部品1は、第1コイルL1と、第1コイルL1の開口方向から見て、第1コイルL1と開口が重なる第2コイルL2と、第1コイルL1の一方の端に接続される端子6aと、第1コイルL1の他方の端に接続される端子6bと、第2コイルL2の一方の端に接続される端子6cと、第2コイルL2の他方の端に接続される端子6dと、を含む。端子6aから端子6bに電流が流れたとき第1コイルL1に発生する磁界の向きと、端子6cから端子6dに電流が流れたとき第2コイルL2に発生する磁界の向きとが同じである。基板60は、端子6aと電気的に接続される電源ライン8aと、端子6dと電気的に接続される電源ライン8bと、端子6bおよび端子6cと電気的に接続される配線8cと、を含む。配線8cはコンデンサC1とも電気的に接続される。
【0041】
これにより、実施の形態1に係る回路装置10は、コイル部品1の端子6bおよび端子6cと電気的に接続される配線8cを含み、当該配線8cはコンデンサC1とも電気的に接続されるので、製造コストが低く、相互インダクタンスが安定しているコイル部品1を用いたフィルタ回路100を実現できる。
【0042】
また、実施の形態1に係るフィルタ回路100は、上記の回路装置10と、回路装置10の配線8cに電気的に接続されたコンデンサC1と、を備える。これにより、フィルタ回路100は、コンデンサC1の寄生インダクタンスを打ち消し、高周波帯のノイズ抑制効果を向上させることができる。
【0043】
<変形例1>
図1に示す回路装置10では、配線8cの形状がT字形状であると説明したが、これに限られず、コンデンサC1を接続する配線の部分を配線8cの中央部以外に設けてもよい。図4は、変形例1-1に係る回路装置10Aの平面図である。図5は、変形例1-2に係る回路装置10Bの平面図である。なお、図4および図5に示す回路装置10A,10Bにおいて、図1に示す回路装置10と同じ構成については同じ符号を付して詳細な説明を省略する。
【0044】
図4に示す回路装置10Aでは、基板60に対して垂直な方向から見た配線8c1の形状がL字形状である。具体的に、配線8c1は、コンデンサC1を接続する配線の部分が、電極7bと電極7cとを直線でつなぐ配線の部分の電極7c側長辺から延びてL字形状を形成している。コンデンサC1は、配線8c1に対して直列に接続されており、配線8c1と電気的に接続された側と反対側に配線8dと電気的に接続されている。なお、配線8c1は、コンデンサC1を接続する配線の部分が、電極7bと電極7cとを直線でつなぐ配線の部分の電極7b側長辺から延びてL字形状を形成してもよい。
【0045】
図5に示す回路装置10Bでは、基板60に対して垂直な方向から見た配線8c2の形状がI字形状である。具体的に、配線8c2は、コンデンサC1を接続する配線の部分が、電極7bと電極7cとを直線でつなぐ配線の部分の電極7b側短辺から延びてI字形状を形成している。コンデンサC1は、配線8c2に対して直列に接続されており、配線8c2と電気的に接続された側と反対側に配線8dと電気的に接続されている。なお、配線8c2は、コンデンサC1を接続する配線の部分が、電極7bと電極7cとを直線でつなぐ配線の部分の電極7c側短辺から延びてI字形状を形成してもよい。
【0046】
図4および図5で示したように、コンデンサC1を接続する配線の部分を様々な部分に接続することができる。そのため、コンデンサC1を実装する位置を自由に変更することができるので、回路装置を採用するセットメーカの設計の自由度が向上する。
【0047】
<変形例2>
回路装置10は、図1に示したように、電源ライン8a,8b、配線8c,8dを形成した基板60にコイル部品1およびコンデンサC1を実装すると説明したが、これに限られず、電源ライン、配線を設けたインターポーザ基板をコイル部品に取り付けて1つの部品としてもよい。図6は、変形例2に係る回路装置の斜視図である。図6に示す回路装置10Cにおいて、図1に示す回路装置10と同じ構成については同じ符号を付して詳細な説明を省略する。
【0048】
図6に示す回路装置10Cは、コイル部品1の端子6a~6dを設けた面に電源ライン8a,8b、配線8cを形成したインターポーザ基板62を取り付けて1つの部品としてある。インターポーザ基板62には、コイル部品1と接する表面に電源ライン8a,8b、配線8cが形成してあり、裏面に貫通電極(図示せず)によって電源ライン8a,8b、配線8cと電気的に接続された電極が形成されている。
【0049】
具体的に、インターポーザ基板62の裏面には、電源ライン8aと貫通電極によって電気的に接続された電極80a、電源ライン8bと貫通電極によって電気的に接続された電極(図示せず)、および配線8cと貫通電極によって電気的に接続された電極80cが形成されている。電極80aは、回路装置10Cを実装する装置の電源ラインに接続され、電極80cはコンデンサC1と接続される。
【0050】
<変形例3>
前述の実施の形態1では、図2に示すようにコイル部品1は、ボビン2に第1ワイヤ4と第2ワイヤ5とを巻き付けた構成であると説明した。しかし、回路装置10に実装されるコイル部品は、ボビンにワイヤを巻き付けたコイル部品に限定されず、たとえば金属板もしくは金属ワイヤで形成されたコイルを、樹脂でモールドした構成のコイル部品であってもよい。図7は、変形例3に係るコイル部品1Aの斜視図である。図8は、変形例3に係るコイル部品1Aの側面図である。なお、図8(a)はコイル部品1AのX-Z面の側面図で、図8(b)はコイル部品1AのY-Z面の側面図である。
【0051】
コイル部品1Aは、筐体9にコイル部4a(第1コイルL1)とコイル部5a(第2コイルL2)とを含んでいる。コイル部4aは、矩形状の開口を有し、主面90A(第1主面)に対して略平行に、筐体9の内部に配置されている。また、コイル部4aは、金属板を打ち抜き、一部に傾斜をつけることで1.5回転巻いたスパイラル構造となっており、筐体9の側面91(第1側面)から引き出された部分が端子6a(第1端子)を構成し、側面92(第2側面)から引き出された部分が端子6b(第2端子)を構成している。コイル部5aは、矩形状の開口を有し、主面90Aに対して略平行に、筐体9の内部においてコイル部4aの上側に配置されている。また、コイル部5aは、金属板を打ち抜き、一部に傾斜をつけることで1.5回転巻いたスパイラル構造となっており、筐体9の側面91から引き出された部分が端子6c(第3端子)を構成し、側面92から引き出された部分が端子6d(第4端子)を構成している。
【0052】
端子6a~端子6dは、主面90Bまで設けられており、コイル部品1Aの同じ平面上に設けられている。端子6aから端子6bに至る方向と、端子6cから端子6dに至る方向とがクロスするように端子6a~端子6dが配置されている。つまり、主面90Bでの端子6a~端子6dの配置は、千鳥配置となっている。主面90Bに設けた端子6a~端子6dと基板60に設けた電極7a~電極7dとが電気的に接続するようにコイル部品1Aを基板60に実装した場合、コイル部4a,5aの開口方向が基板60に対して垂直となり、コイル部4aの端子6cおよびコイル部5aの端子6dに接続されるコンデンサC1との配置関係も垂直となる。
【0053】
筐体9は、コイル部4aとコイル部5aとの相対位置を固定するものであり、たとえばモールド樹脂で構成されている。具体的に、モールド樹脂は、シリカフィラーを加えたエポキシ樹脂、シリコーン樹脂、液晶ポリマー、あるいは金属磁性体を混入した各種樹脂により構成される。
【0054】
なお、コイル部4aと端子6a,6bとを1枚の金属板もしくは1本の金属ワイヤで形成しても、コイル部4aと端子6a,6bとを別々の金属板もしくは金属ワイヤで形成してもよい。同様に、コイル部5aと端子6c,6dとを1枚の金属板もしくは1本の金属ワイヤで一体として形成しても、コイル部5aと端子6c,6dとを別々の金属板もしくは金属ワイヤで形成してもよい。
【0055】
<実施の形態2>
実施の形態1では、回路装置10に実装されるコイル部品1において第1コイルL1の両端の接続位置と第2コイルL2の両端の接続位置とがクロスする配置の構成について説明したが、これに限らない。実施の形態2では、コイル部品において第1コイルL1の両端の接続位置と第2コイルL2の両端の接続位置とがクロスしない配置の構成について説明する図9は、実施の形態2に係る回路装置10Dの平面図である。なお、図9に示す回路装置10Dにおいて、図1に示す回路装置10と同じ構成要素については同じ符号を付して詳細な説明を繰り返さない。
【0056】
図9に示す回路装置10Dでは、基板60に実装されているコイル部品1Bの構成が異なっている。具体的に、コイル部品1Bは、第1コイルL1を構成する第1配線4Bの一方の端に接続される端子6a(第1端子)と、第1配線4Bの他方の端に接続される端子6c(第2端子)と、第2コイルL2を構成する第2配線5Bの一方の端に接続される端子6b(第3端子)と、第2配線5Bの他方の端に接続される端子6d(第4端子)とを有している。基板60に設けた電極7a、電極7cの側に第1コイルL1の第1配線4Bを接続し、電極7b、電極7dの側に第2コイルL2の第2配線5Bを接続している。そのため、コイル部品1Bは、第1コイルL1の両端の接続位置と第2コイルL2の両端の接続位置とがクロスしない配置となっている。
【0057】
コイル部品1Bは、ボビンに第1ワイヤと第2ワイヤとを巻き付けた構成であっても、金属板もしくは金属ワイヤで形成されたコイルを、樹脂でモールドした構成であってもよい。図10は、実施の形態2に係るコイル部品1Bの斜視図である。なお、図10に示すコイル部品1Bにおいて、図7に示すコイル部品1Aと同じ構成要素については同じ符号を付して詳細な説明を繰り返さない。
【0058】
コイル部品1Bは、筐体9にコイル部4b(第1コイルL1)とコイル部5b(第2コイルL2)とを含んでいる。コイル部4bは、矩形状の開口を有し、主面90A(第1主面)に対して略平行に、筐体9の内部に埋め込まれている。また、コイル部4bは、筐体9の側面91(第1側面)から引き出された一方の部分が端子6aを、他方の部分が端子6cを構成している。なお、コイル部4b、端子6aおよび端子6cは、金属板から打ち抜いて形成され、図9に示す第1配線4Bに対応している。
【0059】
コイル部5bは、矩形状の開口を有し、主面90Aに対して略平行に、筐体9の内部においてコイル部4aの上側に配置されている。また、コイル部5aは、筐体9の側面92から引き出された一方の部分が端子6bを、他方の部分が端子6dを構成している。なお、コイル部5b、端子6bおよび端子6dは、金属板から打ち抜いて形成され、図9に示す第2配線5Bに対応している。
【0060】
端子6a~端子6dは、主面90Bまで設けられている。主面90Bに設けられた端子6a~端子6dが、基板60に設けた電極7a~電極7dと電気的に接続される。コイル部品1Bでは、端子6aから端子6cに至る方向と、端子6dから端子6bに至る方向とがクロスすることなく、端子6a~端子6dが主面90Bに配置されている。そのため、基板60とコイル部品1Bとを組み合わせた回路装置10Dでは、コイル部品1Bの向きに関係なく基板60に実装することができ、負の相互インダクタンスを利用したフィルタ回路を構成することができる。
【0061】
<態様>
(1)本開示の回路装置は、コイル部品と、コイル部品を実装する基板と、を備え、コイル部品は、第1コイルと、第1コイルの開口方向から見て、第1コイルと開口が重なる第2コイルと、第1コイルの一方の端に接続される第1端子と、第1コイルの他方の端に接続される第2端子と、第2コイルの一方の端に接続される第3端子と、前記第2コイルの他方の端に接続される第4端子と、を含み、前記第1端子から前記第2端子に電流が流れたとき前記第1コイルに発生する磁界の向きと、前記第3端子から前記第4端子に電流が流れたとき前記第2コイルに発生する磁界の向きとが同じであり、前記基板は、前記第1端子と電気的に接続される第1配線と、前記第4端子と電気的に接続される第2配線と、前記第2端子および前記第3端子と電気的に接続される第3配線と、を含み、前記第3配線はコンデンサとも電気的に接続される。
【0062】
本開示の回路装置は、コイル部品の第2端子および第3端子と電気的に接続される第3配線を含み、当該第3配線はコンデンサとも電気的に接続されるので、製造コストが低く、相互インダクタンスが安定しているコイル部品を用いたフィルタ回路を実現できる。
【0063】
(2)(1)に記載の回路装置であって、コイル部品は、前記基板に対して垂直な方向から見た形状が矩形であり、前記第1端子~前記第4端子が前記コイル部品の同じ平面上に設けられており、前記第1端子から前記第2端子に至る方向と、前記第3端子から前記第4端子に至る方向とがクロスするように各端子が配置されている。これにより、第1コイルと第2コイルとをクロスに配置できる。
【0064】
(3)(1)または(2)に記載の回路装置であって、コンデンサは、前記第3配線に対して直列に接続され、前記基板は、前記第3配線と電気的に接続された側と反対側で前記コンデンサと電気的に接続される第4配線をさらに備え、前記第4配線は接地される。これにより、フィルタ回路を構成することができる。
【0065】
(4)(1)~(3)のいずれか1項に記載の回路装置であって、第1コイルおよび第2コイルの開口方向と、前記コンデンサの配置方向とは垂直である。これにより、第1コイルおよび第2コイルの磁界にコンデンサC1が与える影響を少なくすることができる。
【0066】
(5)(1)~(4)のいずれか1項に記載の回路装置であって、前記第3配線は、前記基板に対して垂直な方向から見て、前記第3配線と前記第2端子の接続箇所と、前記第3配線と前記第3端子の接続箇所とを直線でつなぐ部分を含む。これにより、相互インダクタンスが安定しているコイル部品を用いたフィルタ回路を実現できる。
【0067】
(6)(1)~(5)のいずれか1項に記載の回路装置であって、コイル部品は、ワイヤを巻き付ける胴体部、および当該胴体部の両端に設けられた鍔部を有するボビンと、前記第1コイルを形成する前記胴体部に巻き付けられる第1ワイヤと、前記第2コイルを形成する前記胴体部に巻き付けられる第2ワイヤと、を含み、前記第1端子~前記第4端子は前記鍔部に形成されている。これにより、巻き線コイルを用いたフィルタ回路を実現できる。
【0068】
(7)(6)に記載の回路装置であって、前記第1コイルおよび前記第2コイルの開口方向は、前記コイル部品を実装する前記基板の面に対して平行である。これにより、第1コイルおよび第2コイルの磁界にコンデンサC1が与える影響を少なくすることができる。
【0069】
(8)(6)または(7)に記載の回路装置であって、第1ワイヤと前記第2ワイヤは同じ方向に巻かれている。これにより、ワイヤの巻き方向で相互インダクタンスを調整することができる。
【0070】
(9)(6)~(8)のいずれか1項に記載の回路装置であって、前記第1ワイヤの巻き回数および前記第2ワイヤの巻き回数が1巻きである。これにより、第1ワイヤおよび第2ワイヤの巻き回数で二つのコイルのインダクタンスを調整することができる。
【0071】
(10)(1)~(5)のいずれか1項に記載の回路装置であって、コイル部品は、筐体と、筐体の内部に配置され、筐体の第1主面と略平行に配置される第1コイルと、第1主面の方向から視て、第1コイルの開口と開口が重なるように筐体の内部に配置される第2コイルと、を備え、第1コイルは、筐体の第1側面側から引き出される第1端子および第2側面側から引き出される第2端子とを有し、第2コイルは、筐体の第1側面側から引き出される第3端子および第2側面側から引き出される第4端子とを有し、第1端子および第3端子は、第1側面側に沿って第2主面の方向に延伸し、第2端子および第4端子は、第2側面側に沿って第2主面の方向に延伸している。
【0072】
(11)(10)に記載の回路装置であって、第1コイルおよび第2コイルの開口方向は、コイル部品を実装する基板の面に対して垂直である。
【0073】
(12)(10)または(11)に記載の回路装置であって、第1コイルと第1端子および第2端子は一体として形成され、第2コイルと第3端子および第4端子は一体として形成される。
【0074】
(13)本開示のフィルタ回路は、(1)~(12)のいずれか1項に記載の回路装置と、回路装置の第3配線に電気的に接続されたコンデンサと、を備える。これにより、本開示のフィルタ回路は、コンデンサの寄生インダクタンスを打ち消し、高周波帯のノイズ抑制効果を向上させることができる。
【0075】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記した説明ではなく、請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0076】
1 コイル部品、2 ボビン、2a 胴体部、2b,2c 鍔部、4 第1ワイヤ、5 第2ワイヤ、6a~6d 端子、7a~7f,80a,80d 電極、8a,8b 電源ライン、8c,8c1,8c2,8d 配線、10,10A~10C 回路装置、60 基板、62 インターポーザ基板、70 接地電極、100 フィルタ回路。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10