(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-28
(45)【発行日】2025-05-09
(54)【発明の名称】積層体、包装袋及び包装体
(51)【国際特許分類】
B32B 27/00 20060101AFI20250430BHJP
B32B 27/32 20060101ALI20250430BHJP
B65D 30/02 20060101ALI20250430BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20250430BHJP
【FI】
B32B27/00 H
B32B27/00 B
B32B27/32 E
B65D30/02
B65D65/40 D
(21)【出願番号】P 2024573384
(86)(22)【出願日】2024-07-19
(86)【国際出願番号】 JP2024025959
【審査請求日】2024-12-12
(31)【優先権主張番号】P 2023117517
(32)【優先日】2023-07-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100169063
【氏名又は名称】鈴木 洋平
(72)【発明者】
【氏名】荻原 悠
【審査官】岩本 昌大
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-20391(JP,A)
【文献】特開2023-40683(JP,A)
【文献】特開2014-141302(JP,A)
【文献】特開2020-78908(JP,A)
【文献】国際公開第2020/080131(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
B65D 30/02,65/40,81/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材層と、
中間層と、
シーラント層と、
をこの順序で備える積層構造を有する積層体であって、
以下の工程を経て測定される最大開口高さH1、H2が以下の条件を満たし、
4mm≦H1
6mm≦H2
前記最大開口高さH1、H2が、
(1a)幅90mm及び長さ140mmの大きさの前記積層体を試験片として2枚準備する工程と、
(1b)前記2枚の試験片を前記シーラント層同士が対面するように重ね合わせて3辺をシール幅5mmでシールして袋を形成する工程と、
(1c)前記袋の上端から70gの水を注入した後、前記上端をシール幅5mmでシールして試験体を得る工程と、
(1d)温度128℃、時間15分間、圧力0.3MPaの条件で前記試験体を加熱する工程と、
(1e)前記(1d)工程後、前記袋の前記上端から20mmの第1の位置において前記袋の一方の側部からもう一方の側部にかけて切断し、前記水を排出した後、当該袋を水平な台の上に置いた状態で前記第1の位置における最大開口高さH1を測定する工程と、
(1f)前記(1e)工程後、前記第1の位置から50mmの第2の位置において前記袋の一方の側部からもう一方の側部にかけて切断し、当該袋を水平な台の上に置いた状態で前記第2の位置における最大開口高さH2を測定する工程と、
を経て測定され、
128℃で15分間加熱した後のループステフネス値が、80mN以上220mN以下であ
り、
128℃で15分間加熱したとき、下記式(1)で求められるMD熱収縮率が1.0%以上3.0%以下であり、下記式(2)で求められるTD熱収縮率が1.0%以上3.0%以下である、積層体。
MD熱収縮率(%)=(加熱前のMD長さ-加熱後のMD長さ)/加熱前のMD長さ×100 …(1)
TD熱収縮率(%)=(加熱前のTD長さ-加熱後のTD長さ)/加熱前のTD長さ×100 …(2)
【請求項2】
128℃で15分間加熱したとき、前記シーラント層がMDにおいて熱膨張しTDにおいて熱収縮する、請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
前記基材層を128℃で15分間加熱し、下記式(1)で求められるMDの熱収縮率をS1
MDとし、下記式(2)で求められるTDの熱収縮率をS1
TDとしたとき、S1
MDとS1
TDとの差(S1
MD―S1
TD)が0%超5%以下である、請求項1に記載の積層体。
MD熱収縮率(%)=(加熱前のMD長さ-加熱後のMD長さ)/加熱前のMD長さ×100 …(1)
TD熱収縮率(%)=(加熱前のTD長さ-加熱後のTD長さ)/加熱前のTD長さ×100 …(2)
【請求項4】
前記中間層が、第2基材層を有し、
前記第2基材層を128℃で15分間加熱し、下記式(1)で求められるMDの熱収縮率をS2
MDとし、下記式(2)で求められるTDの熱収縮率をS2
TDとしたとき、S2
MDとS2
TDとの差(S2
MD―S2
TD)が0%超5%以下である、請求項1に記載の積層体。
MD熱収縮率(%)=(加熱前のMD長さ-加熱後のMD長さ)/加熱前のMD長さ×100 …(1)
TD熱収縮率(%)=(加熱前のTD長さ-加熱後のTD長さ)/加熱前のTD長さ×100 …(2)
【請求項5】
前記最大開口高さH1、H2が以下の条件を満たす、請求項1に記載の積層体。
4mm≦H1≦7mm
6mm≦H2≦9mm
【請求項6】
前記基材層、前記中間層及び前記シーラント層がポリプロピレン系樹脂を含み、
当該積層体におけるポリプロピレン系樹脂の合計質量の割合が、90質量%以上である、請求項1に記載の積層体。
【請求項7】
請求項1~
6のいずれか一項に記載の積層体を用いて形成された、包装袋。
【請求項8】
120℃以上の加熱処理を施す用途に用いられる、請求項
7に記載の包装袋。
【請求項9】
包装袋と、
前記包装袋内に収容された内容物と、
を備え、
前記包装袋が、積層体を用いて形成され、
前記積層体が、基材層と、中間層と、シーラント層と、をこの順序で備える積層構造を有し、
以下の工程を経て測定される最大開口高さH1、H2が以下の条件を満たし、
4mm≦H1
6mm≦H2
前記最大開口高さH1、H2が、
(2a)前記包装袋の上端から20mmを第1の位置とし、前記包装袋の高さ方向の中央を第2の位置とし、前記第1の位置において前記包装袋の一方の側部からもう一方の側部にかけて切断し、前記内容物を排出した後、当該包装袋を水平な台の上に置いた状態で前記第1の位置における最大開口高さH1を測定する工程と、
(2b)前記(2a)工程後、前記第2の位置において前記包装袋の一方の側部からもう一方の側部にかけて切断し、当該包装袋を水平な台の上に置いた状態で前記第2の位置における最大開口高さH2を測定する工程と、
を経て測定され、
前記積層体を128℃で15分間加熱した後のループステフネス値が、80mN以上220mN以下であ
り、
前記積層体を128℃で15分間加熱したとき、下記式(1)で求められるMD熱収縮率が1.0%以上3.0%以下であり、下記式(2)で求められるTD熱収縮率が1.0%以上3.0%以下である、包装体。
MD熱収縮率(%)=(加熱前のMD長さ-加熱後のMD長さ)/加熱前のMD長さ×100 …(1)
TD熱収縮率(%)=(加熱前のTD長さ-加熱後のTD長さ)/加熱前のTD長さ×100 …(2)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、積層体、包装袋及び包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
積層体は、主に、ボイル処理、レトルト処理等の加熱殺菌を含む食品、医薬品等の包装材料として広く用いられている。積層体として、耐熱性及び強靭性に優れた二軸延伸PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムと、シーラント層としてポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィンフィルムとを備える積層体が知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、包装材料には収容された内容物が排出しやすいことが求められる。従来の積層体は排出性の点で改善の余地がある。
【0005】
また、包装材料には、開口時のハンドリング性に優れることが求められる。
【0006】
本開示の一側面は、排出性に優れ、開口時のハンドリング性に優れる包装袋及び包装体を提供する。本開示の他の一側面は、このような包装袋及び包装体の製造に有用な積層体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本開示は、以下の積層体、包装袋及び包装体を提供する。
[1] 基材層と、
中間層と、
シーラント層と、
をこの順序で備える積層構造を有する積層体であって、
以下の工程を経て測定される最大開口高さH1、H2が以下の条件を満たし、
4mm≦H1
6mm≦H2
上記最大開口高さH1、H2が、
(1a)幅90mm及び長さ140mmの大きさの上記積層体を試験片として2枚準備する工程と、
(1b)上記2枚の試験片を上記シーラント層同士が対面するように重ね合わせて3辺をシール幅5mmでシールして袋を形成する工程と、
(1c)上記袋の上端から70gの水を注入した後、上記上端をシール幅5mmでシールして試験体を得る工程と、
(1d)温度128℃、時間15分間、圧力0.3MPaの条件で上記試験体を加熱する工程と、
(1e)上記(1d)工程後、上記袋の上記上端から20mmの第1の位置において上記袋の一方の側部からもう一方の側部にかけて切断し、上記水を排出した後、当該袋を水平な台の上に置いた状態で上記第1の位置における最大開口高さH1を測定する工程と、
(1f)上記(1e)工程後、上記第1の位置から50mmの第2の位置において上記袋の一方の側部からもう一方の側部にかけて切断し、当該袋を水平な台の上に置いた状態で上記第2の位置における最大開口高さH2を測定する工程と、
を経て測定され、
128℃で15分間加熱した後のループステフネス値が、80mN以上220mN以下である、積層体。
[2] 128℃で15分間加熱したとき、下記式(1)で求められるMD熱収縮率が1.0%以上3.0%以下であり、下記式(2)で求められるTD熱収縮率が1.0%以上3.0%以下である、[1]に記載の積層体。
MD熱収縮率(%)=(加熱前のMD長さ-加熱後のMD長さ)/加熱前のMD長さ×100 …(1)
TD熱収縮率(%)=(加熱前のTD長さ-加熱後のTD長さ)/加熱前のTD長さ×100 …(2)
[3] 128℃で15分間加熱したとき、上記シーラント層がMDにおいて熱膨張しTDにおいて熱収縮する、[1]又は[2]に記載の積層体。
[4] 上記基材層を128℃で15分間加熱し、下記式(1)で求められるMDの熱収縮率をS1MDとし、下記(2)で求められるTDの熱収縮率をS1TDとしたとき、S1MDとS1TDとの差(S1MD―S1TD)が0%超5%以下である、[1]~[3]のいずれかに記載の積層体。
MD熱収縮率(%)=(加熱前のMD長さ-加熱後のMD長さ)/加熱前のMD長さ×100 …(1)
TD熱収縮率(%)=(加熱前のTD長さ-加熱後のTD長さ)/加熱前のTD長さ×100 …(2)
[5]上記中間層が、第2基材層を有し、上記第2基材層を128℃で15分間加熱し、下記式(1)で求められるMDの熱収縮率をS2MDとし、下記式(2)で求められるTDの熱収縮率をS2TDとしたとき、S2MDとS2TDとの差(S2MD―S2TD)が0%超5%以下である、[1]~[4]のいずれかに記載の積層体。
MD熱収縮率(%)=(加熱前のMD長さ-加熱後のMD長さ)/加熱前のMD長さ×100 …(1)
TD熱収縮率(%)=(加熱前のTD長さ-加熱後のTD長さ)/加熱前のTD長さ×100 …(2)
[6] 上記最大開口高さH1、H2が以下の条件を満たす、[1]~[5]のいずれかに記載の積層体。
4mm≦H1≦7mm
6mm≦H2≦9mm
[7] 上記基材層、上記中間層及び上記シーラント層がポリプロピレン系樹脂を含み、当該積層体におけるポリプロピレン系樹脂の合計質量の割合が、90質量%以上である、[1]~[6]のいずれかに記載の積層体。
[8] [1]~[7]のいずれかに記載の積層体を用いて形成された、包装袋。
[9] 120℃以上の加熱処理を施す用途に用いられる、[1]~[8]のいずれかに記載の包装袋。
[10] 包装袋と、
上記包装袋内に収容された内容物と、
を備え、
上記包装袋が、積層体を用いて形成され、
上記積層体が、基材層と、中間層と、シーラント層と、をこの順序で備える積層構造を有し、
以下の工程を経て測定される最大開口高さH1、H2が以下の条件を満たし、
4mm≦H1
6mm≦H2
上記最大開口高さH1、H2が、
(2a)上記包装袋の上端から20mmを第1の位置とし、前記包装袋の高さ方向の中央を第2の位置とし、第1の位置において上記包装袋の一方の側部からもう一方の側部にかけて切断し、上記内容物を排出した後、当該包装袋を水平な台の上に置いた状態で上記第1の位置における最大開口高さH1を測定する工程と、
(2b)上記(2a)工程後、上記第2の位置において上記包装袋の一方の側部からもう一方の側部にかけて切断し、当該包装袋を水平な台の上に置いた状態で上記第2の位置における最大開口高さH2を測定する工程と、
を経て測定され、
上記積層体を128℃で15分間加熱した後のループステフネス値が、80mN以上220mN以下である、包装体。
【発明の効果】
【0008】
本開示の一側面によれば、排出性に優れ、開口時のハンドリング性に優れる包装袋及び包装体が提供される。本開示の他の一側面によれば、このような包装袋及び包装体の製造に有用な積層体が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る積層体を示す模式断面図である。
【
図4】
図4は、加熱時の熱収縮率の測定方法を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示における実施形態について説明する。なお、同一の構成要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。また、図面中の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0011】
<積層体>
以下、一実施形態に係る積層体について説明する。
図1は、本実施形態に係る積層体を示す模式断面図である。積層体1は、第1基材層10と、第1接着層20と、中間層30と、第2接着層40と、シーラント層50と、をこの順序で備える積層構造を有する。以下の工程(1a)~工程(1f)を経て測定される最大開口高さH1、H2は、以下の条件を満たす。最大開口高さH1、H2が以下の条件を満たすことで、積層体1を用いて得られる包装袋は、開口部を鉛直方向下部にして内容物を排出する際に開口部が閉じ難くなる。そのため、積層体1のシーラント層(最内層)の表面に内容物の排出を促す凹凸などを追加の加工等で設けずとも、包装袋は、排出性に優れたものとなる。
4mm≦H1
6mm≦H2
【0012】
(1a)幅90mm及び長さ140mmの大きさの積層体を試験片として2枚準備する工程
(1b)2枚の試験片をシーラント層同士が対面するように重ね合わせて3辺をシール幅5mmでシールして袋を形成する工程
(1c)袋の上端から70gの水を注入した後、上端をシール幅5mmでシールして試験体を得る工程
(1d)温度128℃、時間15分間、圧力0.3MPaの条件で試験体を加熱する工程
(1e)(1d)工程後、袋の上端から20mmの第1の位置において袋の一方の側部からもう一方の側部にかけて切断し、水を排出した後、当該袋を水平な台の上に置いた状態で第1の位置における最大開口高さH1を測定する工程
(1f)(1e)工程後、第1の位置から50mmの第2の位置において袋の一方の側部からもう一方の側部にかけて切断し、当該袋を水平な台の上に置いた状態で第2の位置における最大開口高さH2を測定する工程
【0013】
最大開口高さH1、H2は、シーラント層同士の内縁間の最大の間隔である。
【0014】
最大開口高さH1は、排出性に一層優れることから、4.3mm以上であることが好ましく、5.0mm以上であることがより好ましい。最大開口高さH1は、7.0mm以下であってよい。最大開口高さH1は、4mm以上7.0mm以下、4.3mm以上7.0mm以下、又は5.0mm以上7.0mm以下であってよい。
【0015】
最大開口高さH2は、包装袋の本体部の全体に空気が入りやすく、本体部の四角に位置する内容物の身離れ性が一層優れることから、6.3mm以上であることが好ましく、7.0mm以上であることがより好ましい。最大開口高さH2は、9.0mm以下であってもよい。最大開口高さH2は、6.0mm以上9.0mm以下、6.3mm以上9.0mm以下、又は7.0mm以上9.0mm以下であってよい。
【0016】
最大開口高さH1、H2は、例えば、第1基材層及び第2基材層の熱収縮率を調整することで、変更することができる。
【0017】
積層体1を128℃で15分間加熱したとき、下記式(1)で求められるMDの熱収縮率は、得られる包装袋が十分開口し、排出性に一層優れることから、1.0%以上であることが好ましく、1.8%以上であることがより好ましい。積層体1を128℃で15分間加熱したとき、下記式(1)で求められるMDの熱収縮率は、外観不良及び搬送不良を抑制する観点から、3.0%以下であることが好ましい。積層体1を128℃で15分間加熱したとき、下記式(1)で求められるMDの熱収縮率は、1.0%以上3.0%以下、又は1.8%以上3.0%以下であってよい。
【0018】
積層体1を128℃で15分間加熱したとき、下記式(2)で求められるTDの熱収縮率は、得られる包装袋が十分開口し、排出性に一層優れることから、1.0%以上であることが好ましく、1.8%以上であることがより好ましい。積層体1を128℃で15分間加熱したとき、下記式(2)で求められるTDの熱収縮率は、製袋時の収縮による外観不良と搬送不良を抑制する観点から、3.0%以下であることが好ましい。積層体1を128℃で15分間加熱したとき、下記式(2)で求められるTDの熱収縮率は、1.0%以上3.0%以下、又は1.8%以上3.0%以下であってよい。
【0019】
MD熱収縮率(%)=(加熱前のMD長さ-加熱後のMD長さ)/加熱前のMD長さ×100 …(1)
TD熱収縮率(%)=(加熱前のTD長さ-加熱後のTD長さ)/加熱前のTD長さ×100 …(2)
【0020】
MDは、基材層及びシーラント層の流れ方向(machine direction)であり、TDは、その垂直方向(transverse direction)である。フィルムは、例えば、位相差測定装置(商品名:KOBRA、王子計測機器(株)製)を用いて配向角を測定し、配向角からMD及びTDを見分けることができる。例えば、フィルムが逐次二軸延伸ポリプロピレンフィルムである場合、分子鎖が配向している方向がTDであると考えらえる。
【0021】
積層体1を128℃で15分間加熱した後のループステフネス値は、80mN以上であることが好ましく、90mN以上であることがより好ましく、220mN以下であることが好ましく、170mN以下であることがより好ましく、150mN以下であることが更に好ましく、130mN以下であることが更に好ましく、105mN以下であることが特に好ましい。ループステフネス値がこの範囲にあると、包装袋の開口時のハンドリング性に優れる。ループステフネス値が80mN以上であると、包装袋の両側部を両手でつまみ包装袋の中央部に向かって押すことで内容物を排出する際に、包装袋がよれにくい(ねじれにくい)ため開口しやすく、開口した形状を維持しやすい。そのため、包装袋は排出性に一層優れる傾向がある。ループステフネス値が150mN以下であると、包装袋の両側部を両手でつまみ包装袋の中央部に向かって押しやすくなる。そのため、包装袋は安定して開口し易くなり、排出性に一層優れる傾向がある。また、軽い力で包装袋を開口し易くなり、開口した形状を維持しやすい。積層体1を128℃で15分間加熱した後のループステフネス値は、80mN以上220mN以下、80mN以上170mN以下、80mN以上150mN以下、80mN以上130mN以下、80mN以上105mN以下、90mN以上220mN以下、90mN以上170mN以下、90mN以上150mN以下、90mN以上130mN以下、又は90mN以上105mN以下であってよい。ループステフネス値は、後述する実施例の方法により測定できる。
【0022】
ループステフネス値はフィルムの剛性を示す物性である。ループステフネス値は加熱後の熱収縮によっても多少増加するが、積層体の膜厚や各層の結晶化度及びヤング率により調整することができる。膜厚は大きいほど、ループステフネス値は大きくなる傾向にある。結晶化度は高いほど、ループステフネス値は大きくなる傾向にある。ヤング率は高いほど、ループステフネス値は大きくなる傾向にある。反対に、膜厚は小さいほど、ループステフネス値は小さくなる傾向にある。結晶化度は低いほど、ループステフネス値は小さくなる傾向にある。ヤング率は低いほど、ループステフネス値は小さくなる傾向にある。
【0023】
積層体1におけるポリプロピレン系樹脂の合計質量の割合は、積層体1が単一素材からなる(モノマテリアルの)包装材料となり、リサイクル適性に優れることから、積層体1の全量を基準として、90質量%以上であることが好ましい。積層体1におけるポリプロピレン系樹脂の含有量は、積層体1の全量を基準として92.5質量%以上であってよく、95質量%以上であってよい。
【0024】
以下、積層体1の各層について詳述する。
【0025】
[第1基材層10]
第1基材層10は、積層体1における最外層として機能するプラスチック部材である。第1基材層10の厚さは、特に限定されない。用途に応じ、当該厚さを6~200μmとすることができるが、環境負荷低減のための材料削減の観点、及び、優れた耐熱性、耐衝撃性と優れたガスバリア性とを得る観点から、9~50μmであってよく、12~38μmであってもよく、18~30μmであってもよく、15~30μmであってもよい。
【0026】
第1基材層10は、積層体1のリサイクル適正等の観点から、例えばポリオレフィンフィルムである。第1基材層10は、ポリプロピレンフィルムを含んでいてよく、ポリプロピレンフィルムからなるものであってよい。ポリプロピレンフィルムは、ポリプロピレンを、不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸の酸無水物、不飽和カルボン酸のエステル等を用いてグラフト変性して得られる酸変性ポリプロピレンフィルム等であってもよい。また、ポリプロピレンとしては、ホモポリプロピレン樹脂(PP)、プロピレン-エチレンランダム共重合体、プロピレン-エチレンブロック共重合体、プロピレン-αオレフィン共重合体などのポリプロピレン系樹脂等を使用することができる。
【0027】
第1基材層10を構成するポリプロピレンフィルムには、難燃剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、酸化防止剤、光安定剤、粘着付与剤及び静電防止剤等の各種添加材が添加されてよい。
【0028】
第1基材層10を構成するポリプロピレンフィルムは、延伸フィルムであってよく、無延伸フィルムであってよい。ポリプロピレンフィルムは、排出性に一層優れることから、延伸ポリプロピレンフィルムであることが好ましい。
【0029】
第1基材層を128℃で15分間加熱したとき、上記式(1)で求められるMDの熱収縮率は、排出性に一層優れることから、2.0%以上であることが好ましく、3.0%以上であることがより好ましく、4.0%以上であることが更に好ましい。包装袋開口時のハンドリング性の観点から、上記MDの熱収縮率は、5.0%以下であってよい。
【0030】
第1基材層を128℃で15分間加熱したとき、上記式(2)で求められるTDの熱収縮率は、排出性に一層優れることから、0%超であることが好ましく、1.0%以上であることがより好ましく、2.0%以上であることが更に好ましい。包装袋開口時のハンドリング性の観点から、上記TDの熱収縮率は、3.0%以下であってよい。
【0031】
第1基材層を128℃で15分間加熱し、上記式(1)で求められるMDの熱収縮率をS1MDとし、上記式(2)で求められるTDの熱収縮率をS1TDとしたとき、S1MDとS1TDとの差(S1MD―S1TD)は、開口高さが高くなりやすく排出性に一層優れる傾向にある観点から、0%超であることが好ましく、1%以上であることがより好ましく、1.5%以上であることが更に好ましく、包装袋の梱包不良を引き起こす包装袋の歪みを抑える観点から、5%以下であることが好ましく、4%以下であることがより好ましく、3%以下であることが更に好ましい。S1MDとS1TDとの差(S1MD―S1TD)は、0%超5%以下、0%超4%以下、0%超3%以下、1%以上5%以下、1%以上4%以下、1%以上3%以下、1.5%以上5%以下、1.5%以上4%以下、又は1.5%以上3%以下であってよい。
【0032】
第1基材層を128℃で15分間加熱し、上記式(1)で求められるMDの熱収縮率をS1MDとし、第2基材層を128℃で15分間加熱したとき上記式(1)で求められるMDの熱収縮率をS2MDとしたとき、S1MDとS2MDとの差(S1MD―S2MD)は、開口高さが高くなりやすく排出性に一層優れる傾向にある観点から0%超であることが好ましく、0.25%以上であることがより好ましく、0.5%以上であることが更に好ましく、基材収縮差によるガスバリア層の亀裂の発生を抑える観点から、2.5%以下であることが好ましく、2.0%以下であることがより好ましく、1.0%以下であることが更に好ましい。
【0033】
第1基材層を128℃で15分間加熱し、上記式(2)で求められるTDの熱収縮率をS1TDとし、第2基材層を128℃で15分間加熱したとき上記式(2)で求められるTDの熱収縮率をS2TDとしたとき、S1TDとS2TDとの差(S1TD―S2TD)は、開口高さが高くなりやすく排出性に一層優れる傾向にある観点から0%超であることが好ましく、0.3%以上であることがより好ましく、0.4%以上であることが更に好ましく、基材収縮差によるガスバリア層の亀裂の発生を抑える観点から、2.0%以下であることが好ましく、1.5%以下であることがより好ましく、1.0%以下であることが更に好ましい。
【0034】
第1基材層10には、その積層面に、コロナ処理、プラズマ処理、フレーム処理などの各種前処理を施したり、易接着層などのコート層を設けたりしても構わない。
【0035】
[第1接着層20及び第2接着層40]
第1接着層20は、第1基材層10と中間層30とを接着する層状部材である。第2接着層40は、中間層30とシーラント層50とを接着する層状部材である。第1接着層20及び第2接着層40に含まれる接着剤の材料としては、例えば、ポリエステル-イソシアネート系樹脂、ウレタン樹脂、ポリエーテル系樹脂などを用いることができる。包装袋をレトルト用途に使用するには、レトルト耐性のある2液硬化型のウレタン系接着剤を好ましく用いることができる。なお、環境配慮の点からは、接着剤は3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン(GPTMS)を含まなくてもよい。第1接着層20及び第2接着層40は、塩素を含まなくてもよい。この場合、第1接着層20及び第2接着層40は、リサイクル後の再生樹脂等の着色、及び加熱処理による臭いの発生を抑制できる。第1接着層20及び第2接着層40は、環境配慮の観点から、バイオマス材料で形成されていてもよく、溶剤を含まなくてもよい。
【0036】
ウレタン系接着剤は、ポリオールとポリイソシアネートを含有する。ウレタン系接着剤を用いる場合、第1接着層20及び第2接着層40は、これらが硬化して得られるポリウレタンを含んでいてよく、ウレタン系接着剤の未硬化物を含んでいてもよい。
【0037】
ポリオールは、一分子中に2つ以上の水酸基を有する。ポリイソシアネートは、一分子中に2つ以上のイソシアネート基を有する。ポリオール及びポリイソシアネートは、それぞれ、主剤及び硬化剤として反応してポリウレタンを生成してよい。
【0038】
ポリオールは、ポリエステルポリオール及びポリエーテルポリオールからなる群より選ばれる少なくとも一つを含有してよい。
【0039】
ポリイソシアネートは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。ポリイソシアネートとしては、例えば、脂肪族ポリイソシアネート化合物、脂環式ポリイソシアネート化合物及び芳香族ポリイソシアネート化合物が挙げられる。
【0040】
第1接着層20の厚さは、例えば、0.5μm以上10μm以下である。第1接着層20の厚さが0.5μm以上である場合、第1基材層10と中間層30との剥離を良好に抑制できる。第1接着層20の厚さが10μm以下である場合、積層体1を容易にモノマテリアル化できる。第1接着層20の厚さは、1μm以上でもよいし、2μm以上でもよいし、8μm以下でもよいし、6μm以下でもよいし、5μm以下でもよい。
【0041】
第2接着層40の厚さは、例えば、0.5μm以上10μm以下である。第2接着層40の厚さが0.5μm以上である場合、中間層30とシーラント層50との剥離を良好に抑制できる。第2接着層40の厚さが10μm以下である場合、積層体1を容易にモノマテリアル化できる。第1接着層20の厚さは、1μm以上でもよいし、2μm以上でもよいし、8μm以下でもよいし、6μm以下でもよいし、5μm以下でもよい。
【0042】
[中間層30]
図1に示されるように、中間層30は、第2基材層31と、ガスバリア層32とを有する。ガスバリア層32は、水蒸気、酸素などの気体(ガス)に対するガスバリア性を示す。ガスバリア層32は、第2基材層31側から、アンカーコート層32aと、蒸着層32bと、バリアコート層32cと、をこの順に有する。
【0043】
中間層の厚さは、第1基材層10と同様であってよい。
【0044】
(第2基材層31)
第2基材層31の厚さは、第1基材層10と同様であってよい。第2基材層31は、積層体1のリサイクル適正等の観点から、例えばポリオレフィンフィルムである。第2基材層31は、ポリプロピレンフィルムを含んでいてよく、ポリプロピレンフィルムからなるものであってよい。ポリプロピレンフィルムは、第1基材層10と同様のものを用いることができる。ポリプロピレンフィルムには、第1基材層10と同様の各種添加材が添加されてよい。第2基材層31がアンチブロッキング剤を含む場合、蒸着層32bが設けられる側の表面の平滑性を向上するためにアンチブロッキング剤の添加を抑えてもよい。第2基材層31には、第1基材層10と同様の各種前処理を施したり、コート層を設けたりしても構わない。
【0045】
第2基材層を128℃で15分間加熱したとき、上記式(1)で求められるMDの熱収縮率は、排出性に一層優れることから、1.0%以上であることが好ましく、2.0%以上であることがより好ましく、3.0%以上であることが更に好ましい。上記MDの熱収縮率は、包装袋開口時のハンドリング性の観点から、5.0%以下であってよい。
【0046】
第2基材層を128℃で15分間加熱したとき、上記式(2)で求められるTDの熱収縮率は、排出性に一層優れることから、0%超であることが好ましく、1.0%以上であることがより好ましく、2.0%以上であることが更に好ましい。上記TDの熱収縮率は、包装袋開口時のハンドリング性の観点から、3.0%以下であってよい。
【0047】
第2基材層を128℃で15分間加熱し、上記式(1)で求められるMDの熱収縮率をS2MDとし、上記式(2)で求められるTDの熱収縮率をS2TDとしたとき、S2MDとS2TDとの差(S2MD―S2TD)は、開口高さが高くなりやすく排出性に一層優れる傾向にある観点から、0%超であることが好ましく、1%以上であることがより好ましく、1.5%以上であることが更に好ましく、包装袋の梱包不良を引き起こす包装袋の歪みを抑える観点から、5%以下であることが好ましく、4%以下であることがより好ましく、3%以下であることが更に好ましい。S2MDとS2TDとの差(S2MD―S2TD)は、0%超5%以下、0%超4%以下、0%超3%以下、1%以上5%以下、1%以上4%以下、1%以上3%以下、1.5%以上5%以下、1.5%以上4%以下、又は1.5%以上3%以下であってよい。
【0048】
(アンカーコート層32a)
アンカーコート層32aは、第2基材層31上における蒸着層32bの密着性能向上を発揮できる層として機能し、第2基材層31の直上に設けられる。このため、アンカーコート層32aは、第2基材層31と蒸着層32bとの間に位置する。アンカーコート層32aが設けられることによって、中間層30において蒸着層32bが設けられる表面の平滑性を向上できる。なお、平滑性が向上することで蒸着層32bを欠陥なく均一に成膜し易くなり、高いバリア性を発現し易い。アンカーコート層32aは、例えばアンカーコート剤を用いて形成することができる。
【0049】
アンカーコート剤としては、ウレタン樹脂が好ましい。ウレタン樹脂としては、例えば、ポリエステル系ポリウレタン樹脂、ポリエーテル系ポリウレタン樹脂及びアクリル系ポリウレタン樹脂が挙げられる。アンカーコート剤としては、耐熱性及び層間接着強度の観点から、ポリエステル系ポリウレタン樹脂及びアクリル系ウレタン樹脂が好ましい。特にボイル・レトルト処理を行う包装材においては、アンカーコート剤としては、アクリル系ポリウレタン樹脂がより好ましい。
【0050】
アンカーコート層32aの厚さは特に限定されないが、0.01~5μmの範囲であることが好ましく、0.03~3μmの範囲であることがより好ましく、0.05~2μmの範囲であることが特に好ましい。アンカーコート層32aの厚さが上記下限値以上であると、より十分な層間接着強度が得られる傾向があり、他方、上記上限値以下であると所望のガスバリア性が発現し易い傾向がある。
【0051】
アンカーコート層32aを第2基材層31上に塗工する方法としては、公知の塗工方法が特に制限なく使用可能であり、浸漬法(ディッピング法)、スプレー、コーター、印刷機、刷毛等を用いる方法が挙げられる。また、これらの方法に用いられるコーター及び印刷機の種類並びにそれらの塗工方式としては、ダイレクトグラビア方式、リバースグラビア方式、キスリバースグラビア方式、オフセットグラビア方式等のグラビアコーター、リバースロールコーター、マイクログラビアコーター、チャンバードクター併用コーター、エアナイフコーター、ディップコーター、バーコーター、コンマコーター、ダイコーター等を挙げることができる。
【0052】
アンカーコート層32aの塗布量としては、アンカーコート剤を塗工して乾燥した後の1m2あたりの質量が0.01~5g/m2であることが好ましく、0.03~3g/m2であることがより好ましい。アンカーコート剤を塗工して乾燥した後の1m2あたりの質量が上記下限以上であると、成膜が十分となる傾向があり、他方、上記上限以下であると十分に乾燥し易く溶剤が残留し難い傾向がある。
【0053】
アンカーコート層32aを乾燥させる方法としては、特に限定されないが、自然乾燥による方法や、所定の温度に設定したオーブン中で乾燥させる方法、上記コーター付属の乾燥機、例えばアーチドライヤー、フローティングドライヤー、ドラムドライヤー、赤外線ドライヤー等を用いる方法を挙げることができる。さらに、乾燥の条件としては、乾燥させる方法により適宜選択することができ、例えばオーブン中で乾燥させる方法においては、温度60~100℃にて、1秒間~2分間程度乾燥することが好ましい。
【0054】
アンカーコート層32aとして、上記ポリウレタン樹脂に代えて、ポリビニルアルコール系樹脂を用いることができる。ポリビニルアルコール系樹脂としては、ビニルエステル単位がケン化されてなるビニルアルコール単位を有するものであればよく、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)、エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)が挙げられる。
【0055】
PVAとしては、例えば、酢酸ビニル、ギ酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バレリン酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、バーサティック酸ビニル等のビニルエステルを、単独で重合し、次いでケン化した樹脂が挙げられる。PVAは、共重合変性又は後変性された変性PVAであってもよい。変性PVAは、例えばビニルエステルと、ビニルエステルと共重合可能な不飽和モノマーを共重合させた後にケン化することで得られる。ビニルエステルと共重合可能な不飽和モノマーとしては、例えばエチレン、プロピレン、イソブチレン、α-オクテン、α-ドデセン、α-オクタデセン等のオレフィン;3-ブテン-1-オール、4-ペンチン-1-オール、5-ヘキセン-1-オール等のヒドロキシ基含有α-オレフィン;アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、ウンデシレン酸等の不飽和酸;アクリロニトリル、メタアクリロニトリル等のニトリル;ジアセトンアクリルアミド、アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド;エチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、メタアリルスルホン酸等のオレフィンスルホン酸;アルキルビニルエーテル、ジメチルアリルビニルケトン、N-ビニルピロリドン、塩化ビニル、ビニルエチレンカーボネート、2,2-ジアルキル-4-ビニル-1,3-ジオキンラン、グリセリンモノアリルエーテル、3,4-ジアセトキシ-1-ブテン等のビニル化合物;塩化ビニリデン、1,4-ジアセトキシ-2-ブテン、ビニレンカーボネート等が挙げられる。
【0056】
PVAの重合度は300~3000が好ましい。重合度が300より小さいとバリア性が低下し易く、また3000超であると粘度が高すぎて塗工適性が低下し易い。PVAのケン化度は90モル%以上が好ましく、95モル%以上がより好ましく、99モル%以上がさらに好ましい。また、PVAのケン化度は100モル%以下であっても、99.9モル%以下であってもよい。PVAの重合度及びケン化度は、JIS K 6726(1994)に記載の方法に準拠して測定できる。
【0057】
EVOHは、一般にエチレンと、酢酸ビニル、ギ酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バレリン酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、バーサティック酸ビニル等の酸ビニルエステルとの共重合体をケン化して得られる。
【0058】
EVOHの重合度は300~3000が好ましい。重合度が300より小さいとバリア性が低下し易く、また3000超であると粘度が高すぎて塗工適性が低下し易い。EVOHのビニルエステル成分のケン化度は90モル%以上が好ましく、95モル%以上がより好ましく、99モル%以上がさらに好ましい。また、EVOHのケン化度は100モル%以下であっても、99.9モル%以下であってもよい。EVOHのケン化度は、核磁気共鳴(1H-NMR)測定を行い、ビニルエステル構造に含まれる水素原子のピーク面積と、ビニルアルコール構造に含まれる水素原子のピーク面積とから求められる。
【0059】
EVOHのエチレン単位含有量は10モル%以上であり、15モル%以上がより好ましく、20モル%以上がさらに好ましく、25モル%以上が特に好ましい。また、EVOHのエチレン単位含有量は65モル%以下が好ましく、55モル%以下がより好ましく、50モル%以下がさらに好ましい。エチレン単位含有量が10モル%以上であると、高湿度下におけるガスバリア性あるいは寸法安定性を良好に保つことができる。一方、エチレン単位含有量が65モル%以下であると、ガスバリア性を高めることができる。EVOHのエチレン単位含有量は、NMR法により求めることができる。
【0060】
アンカーコート層32aとしてポリビニルアルコール系樹脂を用いる場合、アンカーコート層32aの形成方法としては、ポリビニルアルコール系樹脂溶液を用いた塗布、多層押出等が挙げられる。
【0061】
(蒸着層32b)
蒸着層32bは、水蒸気、酸素に対するガスバリア性を示す層(ガスバリア層)であり、金属及び無機酸化物の少なくとも一を含む。蒸着層32bは、アンカーコート層32aの直上に設けられる。蒸着層32bは、単層構造でもよいし、積層構造でもよい。このため、蒸着層32bは、金属蒸着層及び無機酸化物層の少なくとも一を含む。蒸着層32bが金属蒸着層を備える場合、金属蒸着層に含まれる金属としては、例えばアルミニウム、ステンレスなどが挙げられる。蒸着層32bが無機酸化物層を備える場合、無機酸化物層に含まれる無機酸化物としては、例えば、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化マグネシウム、酸化錫等が挙げられる。透明性及びバリア性の観点から、無機酸化物としては、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、及び酸化マグネシウムからなる群より選択されてよい。また、無機酸化物層は、加工時に引っ張り延伸性に優れる観点から、酸化ケイ素を用いた層とすることが好ましい。無機酸化物層を用いることにより、積層体1のリサイクル性に影響を与えない範囲のごく薄い層で、高いバリア性を得ることができる。
【0062】
蒸着層32bが酸化ケイ素を用いた無機酸化物層である場合、当該無機酸化物層のO/Si比は、1.7以上であることが望ましい。O/Si比が1.7以上であると金属Siの含有割合が抑制されて良好な透明性が得られ易い。また、O/Si比は2.0以下であることが好ましい。O/Si比が2.0以下であるとSiOの結晶性が高くなって無機酸化物層が硬くなり過ぎることを防ぐことができ、良好な引張り耐性が得られる。これにより、バリアコート層32cを積層する際に無機酸化物層にクラックが発生することを抑制できる。また、包装袋に成形後もボイルやレトルト処理時の熱により第1基材層10が収縮することがあるが、O/Si比が2.0以下であることで無機酸化物層が上記収縮に追従し易く、バリア性の低下を抑制することができる。これらの効果をより十分に得る観点から、無機酸化物層のO/Si比は1.75以上1.9以下であることが好ましく、1.8以上1.85以下であることがより好ましい。
【0063】
蒸着層32bが酸化ケイ素を用いた無機酸化物層である場合、当該無機酸化物層のO/Si比は、X線光電子分光法(XPS)により求めることができる。例えば、測定装置はX線光電子分光分析装置(日本電子株式会社製、商品名:JPS-90MXV)にて、X線源は非単色化MgKα(1253.6eV)を使用し、100W(10kV-10mA)のX線出力で測定することができる。O/Si比を求めるための定量分析には、それぞれO1sで2.28、Si2pで0.9の相対感度因子を用いることができる。
【0064】
蒸着層32bの厚さは、例えば、5nm以上80nm以下である。蒸着層32bの厚さが5nm以上であると、十分な水蒸気バリア性を得ることができる。また、蒸着層32bの厚さが80nm以下であると、薄膜の内部応力による変形によりクラックが発生することを抑制し、水蒸気バリア性の低下を抑制することができる。なお、蒸着層32bの厚さが80nmを超えると、材料使用量の増加、及び膜形成時間の長時間化等に起因してコストが増加し易いため、経済的観点からも好ましくない。上記と同様の観点から、蒸着層32bの厚さは、20nm以上40nm以下でもよい。
【0065】
蒸着層32bは、例えば真空成膜で形成することができる。真空成膜では、物理気相成長法あるいは化学気相成長法を用いることができる。物理気相成長法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。化学気相成長法としては、熱CVD法、プラズマCVD法、光CVD法等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0066】
上記真空成膜では、抵抗加熱式真空蒸着法、EB(Electron Beam)加熱式真空蒸着法、誘導加熱式真空蒸着法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、デュアルマグネトロンスパッタリング法、プラズマ化学気相堆積法(PECVD法)等が特に好ましく用いられる。但し、生産性を考慮すれば、現時点では真空蒸着法が最も優れている。真空蒸着法の加熱手段としては電子線加熱方式や抵抗加熱方式、誘導加熱方式のいずれかの方式を用いることが好ましい。
【0067】
(バリアコート層32c)
バリアコート層32cは、ガスバリア性を持った被膜層(ガスバリア性被覆層)であり、蒸着層32b上に設けられる。バリアコート層32cは、例えば、水酸基含有高分子化合物、金属アルコキシド、シランカップリング剤、及び、それらの加水分解物からなる群より選択される少なくとも1種を含有するガスバリア性被覆層形成用組成物(以下、コーティング剤ともいう)を用いて形成された層である。
【0068】
コーティング剤は、レトルト処理等の熱水処理後のガスバリア性をより十分に維持する観点から、少なくともシランカップリング剤又はその加水分解物を含有することが好ましく、水酸基含有高分子化合物、金属アルコキシド及びそれらの加水分解物からなる群より選択される少なくとも1種と、シランカップリング剤又はその加水分解物とを含有することがより好ましく、水酸基含有高分子化合物又はその加水分解物と、金属アルコキシド又はその加水分解物と、シランカップリング剤又はその加水分解物とを含有することが更に好ましい。コーティング剤は、例えば、水溶性高分子である水酸基含有高分子化合物を水系(水或いは水/アルコール混合)溶媒で溶解させた溶液に、金属アルコキシドとシランカップリング剤とを直接、或いは予め加水分解させるなどの処理を行ったものを混合して調製することができる。
【0069】
バリアコート層32cを形成するためのコーティング剤に含まれる各成分について詳細に説明する。コーティング剤に用いられる水酸基含有高分子化合物としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、デンプン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム等が挙げられる。これらの中でもポリビニルアルコール(PVA)をバリアコート層32cのコーティング剤に用いた場合、ガスバリア性が特に優れるので好ましい。
【0070】
バリアコート層32cは、優れたガスバリア性を得る観点から、下記一般式(I)で表わされる金属アルコキシド及びその加水分解物からなる群より選択される少なくとも1種を含む組成物から形成されることが好ましい。
M(OR1)m(R2)n-m …(I)
上記一般式(I)中、R1及びR2はそれぞれ独立に炭素数1~8の1価の有機基であり、メチル基、エチル基等のアルキル基であることが好ましい。MはSi、Ti、Al、Zr等のn価の金属原子を示す。mは1~nの整数である。なお、R1又はR2が複数存在する場合、R1同士又はR2同士は同一でも異なっていてもよい。
【0071】
金属アルコキシドとして具体的には、テトラエトキシシラン〔Si(OC2H5)4〕、トリイソプロポキシアルミニウム〔Al(OC3H7)3〕などが挙げられる。テトラエトキシシラン及びトリイソプロポキシアルミニウムは、加水分解後、水系の溶媒中において比較的安定であるので好ましい。
【0072】
シランカップリング剤としては、下記一般式(II)で表される化合物が挙げられる。
Si(OR11)p(R12)3-pR13 …(II)
上記一般式(II)中、R11はメチル基、エチル基等のアルキル基を示し、R12はアルキル基、アラルキル基、アリール基、アルケニル基、アクリロキシ基で置換されたアルキル基、又は、メタクリロキシ基で置換されたアルキル基等の1価の有機基を示し、R13は1価の有機官能基を示し、pは1~3の整数を示す。なお、R11又はR12が複数存在する場合、R11同士又はR12同士は同一でも異なっていてもよい。R13で示される1価の有機官能基としては、グリシジルオキシ基、エポキシ基、メルカプト基、水酸基、アミノ基、ハロゲン原子で置換されたアルキル基、又は、イソシアネート基を含有する1価の有機官能基が挙げられる。
【0073】
シランカップリング剤として具体的には、ビニルトリメトキシシラン、γ-クロロプロピルメチルジメトキシシラン、γ-クロロプロピルトリメトキシシラン、グリシドオキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン等のシランカップリング剤などが挙げられる。
【0074】
また、シランカップリング剤は、上記一般式(II)で表される化合物が重合した多量体であってもよい。多量体としては三量体が好ましく、より好ましくは1,3,5-トリス(3-トリアルコキシシリルアルキル)イソシアヌレートである。これは、3-イソシアネートアルキルアルコキシシランの縮重合体である。この1,3,5-トリス(3-トリアルコキシシリルアルキル)イソシアヌレートは、イソシア部には化学的反応性はなくなるが、ヌレート部の極性により反応性は確保されることが知られている。一般的には、3-イソシアネートアルキルアルコキシランと同様に接着剤などに添加され、接着性向上剤として知られている。よって1,3,5-トリス(3-トリアルコキシシリルアルキル)イソシアヌレートを、水酸基含有高分子化合物に添加することにより、水素結合によりガスバリア性被覆層の耐水性を向上させることができる。3-イソシアネートアルキルアルコキシランは反応性が高く、液安定性が低いのに対し、1,3,5-トリス(3-トリアルコキシシリルアルキル)イソシアヌレートは、ヌレート部はその極性により水溶性ではないが、水系溶液中に分散しやすく、液粘度を安定に保つことができる。また、耐水性能は3-イソシアネートアルキルアルコキシランと1,3,5-トリス(3-トリアルコキシシリルアルキル)イソシアヌレートとは同等である。
【0075】
1,3,5-トリス(3-トリアルコキシシリルアルキル)イソシアヌレートは、3-イソシアネートプロピルアルコキシシランの熱縮合により製造されるものもあり、原料の3-イソシアネートプロピルアルコキシシランが含まれる場合もあるが、特に問題はない。さらに好ましくは、1,3,5-トリス(3-トリアルコキシシリルプロピル)イソシアヌレートであり、より好ましくは1,3,5-トリス(3-トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレートである。このメトキシ基は加水分解速度が速く、またプロピル基を含むものは比較的安価に入手し得ることから1,3,5-トリス(3-トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレートは実用上有利である。
【0076】
また、コーティング剤には、ガスバリア性を損なわない範囲で、イソシアネート化合物、あるいは、分散剤、安定化剤、粘度調整剤、着色剤などの公知の添加剤を必要に応じて加えることも可能である。
【0077】
バリアコート層32cの厚さは、50~1000nmであることが好ましく、100~500nmであることがより好ましい。バリアコート層32cの厚さが50nm以上であると、より十分なガスバリア性を得ることができる傾向があり、1000nm以下であると、十分な柔軟性を保持できる傾向がある。
【0078】
バリアコート層32cを形成するためのコーティング液は、例えば、ディッピング法、ロールコート法、グラビアコート法、リバースグラビアコート法、エアナイフコート法、コンマコート法、ダイコート法、スクリーン印刷法、スプレーコート法、グラビアオフセット法等により塗布することができる。このコーティング液を塗布してなる塗膜は、例えば、熱風乾燥法、熱ロール乾燥法、高周波照射法、赤外線照射法、UV照射法、またはそれらの組み合わせにより乾燥させることができる。
【0079】
上記塗膜を乾燥させる際の温度は、例えば、温度50~150℃とすることができ、温度70~100℃とすることが好ましい。乾燥時の温度を上記範囲内とすることで、蒸着層32b及びバリアコート層32cにクラックが発生することをより一層抑制でき、優れたバリア性を発現することができる。
【0080】
バリアコート層32cは、ポリビニルアルコール系樹脂及びシラン化合物を含むコーティング剤を用いて形成されてよい。コーティング剤には、必要に応じて酸触媒、アルカリ触媒、光重開始剤等を加えてよい。
【0081】
ポリビニルアルコール系樹脂は上記のとおりである。また、シラン化合物としては、シランカップリング剤、ポリシラザン、シロキサン等が挙げられ、具体的には、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン等が挙げられる。
【0082】
[シーラント層50]
シーラント層50は、積層体1においてヒートシールによる封止性を付与する層である。積層体1のリサイクル適正等の観点から、シーラント層50は、第1基材層10と同様にポリオレフィンフィルムである。本実施形態では、シーラント層50は、単層構造を有し、かつ、ポリプロピレンを主材料とする樹脂層であるが、これに限られない。シーラント層50は、ポリプロピレンフィルムを含んでいてよく、ポリプロピレンフィルムからなるものであってよい。
【0083】
ポリプロピレンフィルムは、ポリプロピレンを、不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸の酸無水物、不飽和カルボン酸のエステル等を用いてグラフト変性して得られる酸変性ポリプロピレンフィルム等であってもよい。また、ポリプロピレンとしては、ホモポリプロピレン樹脂(PP)、プロピレン-エチレンランダム共重合体、プロピレン-エチレンブロック共重合体、プロピレン-αオレフィン共重合体などのポリプロピレン系樹脂等を使用することができる。
【0084】
シーラント層50を構成するポリプロピレンフィルムは、ヒートシールによる封止性を高める観点から、無延伸ポリプロピレンフィルムであることが好ましい。
【0085】
シーラント層50を構成するポリプロピレンフィルムには、難燃剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、酸化防止剤、光安定剤、粘着付与剤、静電防止剤等の各種添加材が添加されてよい。
【0086】
シーラント層50の厚さは、内容物の質量、包装袋の形状などにより定められるが、概ね30~150μmの厚さであってよく、50~80μmの厚さであってよい。
【0087】
シーラント層50は、128℃で15分間加熱したとき、理由は明確ではないが、MDにおいて熱膨張しTDにおいて熱収縮することで、包装袋の開口高さを得られやすい。同様の観点から、シーラント層50を、128℃で15分間加熱したとき、上記式(1)で求められるMDの熱収縮率は、-1.0%以上であることが好ましく、-0.5%以上であることがより好ましく、0%未満であることが好ましい。
【0088】
シーラント層50を128℃で15分間加熱したとき、上記式(2)で求められるTDの熱収縮率は、0%以上であることが好ましく、1.0%以下であることが好ましい。
【0089】
シーラント層50の積層方法としては、上述のポリプロピレンからなるフィルム状のシーラント層を一液硬化型もしくは二液硬化型ウレタン系接着剤等の接着剤で貼りあわせるドライラミネート法、無溶剤接着剤を用いてフィルム状のシーラント層を貼りあわせるノンソルベントラミネート法、上述したポリプロピレンを加熱溶融させ、カーテン状に押し出し、貼りあわせるエクストルージョンラミネート法等、いずれも公知の方法により積層することができる。
【0090】
上記積層方法の中でも、レトルト処理、特に120℃以上の高温熱水処理に対する耐性が高く好ましいのは、ドライラミネート法である。一方、包装袋を85℃以下の温度で処理する用途に用いるのであれば、ラミネート方式は特に制限されない。
【0091】
以上、一実施形態に係る積層体について説明したが、本開示の積層体は、上記実施形態に限られない。例えば、積層体は、印刷層を更に備えていてよい。
【0092】
[印刷層]
印刷層は、例えば、第1基材層10の少なくとも一方の表面上に設けることができる。印刷層は、内容物に関する情報の表示、内容物の識別、隠蔽性の向上、あるいは包装袋の意匠性向上を目的として、積層体1の外側から見える位置に設けられる。印刷方法及び印刷インキは特に制限されず、既知の印刷方法及び印刷インキの中からフィルムへの印刷適性、色調などの意匠性、密着性、食品容器としての安全性などを考慮して適宜選択される。印刷方法としては、例えば、グラビア印刷法、オフセット印刷法、グラビアオフセット印刷法、フレキソ印刷法、インクジェット印刷法などを用いることができる。中でもグラビア印刷法は生産性や絵柄の高精細度の観点から、好ましく用いることができる。
【0093】
印刷層の密着性を高めるため、印刷層を設ける層の表面には、コロナ処理、プラズマ処理、フレーム処理などの各種前処理を施したり、易接着層などのコート層を設けたりしても構わない。
【0094】
また、本開示の積層体は、アンカーコート層32aを備えていなくてもよい。本開示の積層体は、バリアコート層32cを備えていなくてもよい。第2基材層31、アンカーコート層32a、蒸着層32b及びバリアコート層32cの積層順を入れ替えてもよい。また、本開示の積層体は、第1接着層20及び第2接着層40の少なくとも一方を備えていなくてもよい。
【0095】
<包装体>
以下、一実施形態に係る包装体について説明する。
図2は、本実施形態に係る包装体の一例の概略平面図である。包装体200は、包装袋100と、包装袋内に収容された内容物(不図示)と、を備える。
【0096】
包装袋100は、例えば、シーラント層同士が対面するように2枚の積層体1を重ね合わせて四辺をヒートシールすることで成形される。
【0097】
包装袋100は、内容物が収容される本体部101と、本体部101の端部に位置するシール部102と、を有する四方袋である。本体部101の形状は、特に限定されず、例えば所定の方向から見て矩形状を呈する。本体部101の外表面における少なくとも一部には、印刷が施されていてよい。本体部101には、例えば、内容物に加えて窒素等の特定の気体が収容されてもよい。シール部102は、積層体1が備えるシーラント層50の一部と他部とが貼り合わされる部分である。シール部102においては、積層体1が備えるシーラント層50の一部と他部とが互いに密着している。シール部102は、例えば積層体1が備えるシーラント層50の一部と他部とが加熱及び圧縮される(すなわち、ヒートシールされる)ことによって形成されるが、これに限られない。例えば、シール部102は、コールドシール等によって形成されてもよい。
【0098】
包装体200は、以下の工程を経て測定される最大開口高さH1、H2が以下の条件を満たす。最大開口高さH1、H2が以下の条件を満たすことで、包装体200は、開口部を鉛直方向下部にして内容物を排出する際に開口部が閉じ難くなり、排出性に優れたものとなる。
4mm≦H1
6mm≦H2
【0099】
(2a)包装袋の上端から20mmを第1の位置とし、包装袋の高さ方向の中央を第2の位置とし、第1の位置において包装袋の一方の側部からもう一方の側部にかけて切断し、内容物を排出した後、当該包装袋を水平な台の上に置いた状態で第1の位置における最大開口高さH1を測定する工程
(2b)(2a)工程後、第2の位置において包装袋の一方の側部からもう一方の側部にかけて切断し、当該包装袋を水平な台の上に置いた状態で第2の位置における最大開口高さH2を測定する工程
【0100】
第1の位置は、
図2において、上端からの距離L1が20mmとなる仮想線I-Iで示される。第2の位置は、
図2において、上端及び下端からの距離が同じ70mmとなる仮想線II-IIで示される。
図3は、仮想線I-Iにおける端面図である。最大開口高さH1は、
図3に示されるように、シーラント層同士の内縁間の最大の間隔である。最大開口高さH2も同様である。最大開口高さH1、H2の数値範囲は、積層体1の最大開口高さH1、H2と同様であってよい。
【0101】
包装袋100のシール幅Sは、例えば、2~10mmであってよい。包装袋100の幅W1は、例えば、80~150mmであってよい。包装袋100の高さW2は、例えば、120~200mmであってよい。
【0102】
包装体200は、80℃以上、120℃以上又は135℃以下の加熱処理が施されたものであってよい。加熱処理としては、例えば、レトルト処理及びボイル処理が挙げられる。
【0103】
レトルト処理は、一般に食品、医薬品等を保存するために、カビ、酵母、細菌などの微生物を加熱及び加圧処理することで殺菌する方法である。通常は、食品等を包装した包装袋を、105~140℃、0.15~0.30MPaで10~120分の条件で加熱及び加圧処理をする。レトルト装置は、加熱蒸気を利用する蒸気式と加圧加熱水を利用する熱水式があり、内容物となる食品等の殺菌条件に応じて適宜使い分ける。ボイル処理は、食品、医薬品等を保存するため湿熱殺菌する方法である。通常は、内容物にもよるが、食品等を包装した包装袋を、60~100℃、大気圧下で、10~120分の条件で湿熱殺菌処理を行う。ボイル処理は、通常、熱水槽を用いて100℃以下で処理を行う。方法としては、一定温度の熱水槽の中に浸漬し一定時間処理した後に取り出すバッチ式と、熱水槽の中をトンネル式に通して処理する連続式がある。
【0104】
内容物としては、例えば、食品及び医薬品が挙げられる。内容物は、包装袋100が排出性に優れることから、一般に排出が難しい水を含むものであってもよい。水の含有量は、内容物の全量を基準として、例えば、60質量%以上、好ましくは70質量%以上、より好ましくは75質量%以上であってよい。水を含む内容物としては、例えば、スープ、パスタソース等の調理済み食品や、ペットフード、が挙げられる。
【0105】
以上、一実施形態に係る包装体について説明したが、本開示の包装体は、上記実施形態に限られない。例えば、包装袋は、スタンディングパウチ形状の包装袋、二方袋、三方袋、合掌袋又はガゼット袋でもよい。包装袋は、再封止部、及びノッチを備えていなくてもよい。包装袋は、ノットを備えていてもよい。ノッチは、V字状、U字状又はI字状等であってもよい。また、ノッチに代えて傷痕群が形成されていてもよい。
【実施例】
【0106】
以下、本開示の実施例について具体的に説明する。ただし、本開示は以下の実施例に限定されるものではない。
【0107】
<材料の準備>
第1基材層、第2基材層、シーラント層及び接着剤として、以下の材料を準備した。
[第1基材層]
・OPP1A:二軸延伸ポリプロピレンフィルム(厚さ20μm)
・OPP1B:二軸延伸ポリプロピレンフィルム(厚さ20μm)
・OPP1C:二軸延伸ポリプロピレンフィルム(厚さ20μm)
・PET:ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ12μm)
[第2基材層]
・OPP2A:二軸延伸ポリプロピレンフィルム(厚さ20μm)
・OPP2B:二軸延伸ポリプロピレンフィルム(厚さ20μm)
(シーラント層)
・CPP-A:無延伸ポリプロピレンフィルム(厚さ60μm)
・CPP-B:無延伸ポリプロピレンフィルム(厚さ80μm)
・CPP-C:無延伸ポリプロピレンフィルム(厚さ60μm)
・CPP-D:無延伸ポリプロピレンフィルム(厚さ40μm)
・CPP-E:無延伸ポリプロピレンフィルム(厚さ70μm又は80μm)
(接着剤)
・三井化学株式会社製、商品名:主剤A525/硬化剤A52
【0108】
[アンカーコート剤の調製]
アクリルポリオールとトリレンジイソシアネートとを、アクリルポリオールのOH基の数に対してトリレンジイソシアネートのNCO基の数が等量となるように混合し、全固形分(アクリルポリオール及びトリレンジイソシアネートの合計量)が5質量%になるよう酢酸エチルで希釈した。希釈後の混合液に、さらにβ-(3,4エポキシシクロヘキシル)トリメトキシシランを、アクリルポリオール及びトリレンジイソシアネートの合計量100質量部に対して5質量部となるように添加し、これらを混合することでアンカーコート剤を調製した。
【0109】
[バリアコート層用コーティング液の調製]
下記のA液、B液及びC液を、それぞれ65/25/10の質量比で混合することで、バリアコート層用コーティング液を調製した。
A液:テトラエトキシシラン(Si(OC2H5)4)17.9gとメタノール10gに0.1N塩酸72.1gを加えて30分間攪拌して加水分解させた固形分5質量%(SiO2換算)の加水分解溶液。
B液:ポリビニルアルコールの5質量%水/メタノール溶液(水:メタノールの質量比は95:5)。
C液:1,3,5-トリス(3-トリアルコキシシリルプロピル)イソシアヌレートを水/イソプロピルアルコールの混合液(水:イソプロピルアルコールの質量比は1:1)で固形分5質量%に希釈した加水分解溶液。
【0110】
<ガスバリアフィルム(中間層)の製造>
(実施例1~5、比較例1、2、5、6)
表1に示す材料を第2基材層として用いた。第2基材層のコロナ処理面に、上記アンカーコート層形成用組成物をグラビアロールコート法にて塗工し、60℃で乾燥及び硬化させ、塗布量が0.1g/m2であるポリエステル系ポリウレタン樹脂からなるアンカーコート層を形成した。
【0111】
次に、電子線加熱方式による真空蒸着装置により、厚さ30nmの酸化ケイ素からなる透明な無機酸化物層(シリカ蒸着層)を形成した。シリカ蒸着層としては、蒸着材料種を調整し、O/Si比が1.8である蒸着層を形成した。O/Si比は、X線光電子分光分析装置(日本電子株式会社製、商品名:JPS-90MXV)にて、X線源は非単色化MgKα(1253.6eV)を使用し、100W(10kV-10mA)のX線出力で測定した。O/Si比を求めるための定量分析には、それぞれO1sで2.28、Si2pで0.9の相対感度因子を用いて行った。
【0112】
次に、無機酸化物層上に、上記バリアコート層用コーティング液をグラビアロールコート法にて塗工し、オーブン中、張力20N/m、乾燥温度120℃の条件で加熱乾燥させ、厚さ0.3μmのオーバーコート層を形成した。これにより、第2基材層/アンカーコート層/蒸着層/オーバーコート層の積層構造を有するガスバリアフィルムを得た。
【0113】
<積層体の製造>
表1に示す各層の組合せに基づき、各実施例及び比較例の積層体を製造した。積層体の製造方法は以下のとおりである。
【0114】
(実施例1~5、比較例1、2、5、6)
ガスバリアフィルムのオーバーコート層側の表面上に、第1基材層を、接着剤を介してドライラミネート法によってラミネートした。ガスバリアフィルムの第2基材層のもう一方の表面上にシーラント層を同様にラミネートした。これにより、第1基材層/接着剤層/オーバーコート層/蒸着層/アンカーコート層/第2基材層/接着剤層/シーラント層の積層構造を有する積層体を製造した。
【0115】
(比較例3及び4)
AL箔(厚さ:10μm、MD熱収縮率:0%、TD熱収縮率:0%)を準備した。AL箔の一方の表面上に、第1基材層を、接着剤を介してドライラミネート法によってラミネートした。AL箔の第1基材層がラミネートされた表面とは反対側の表面上にシーラント層を同様にラミネートした。これにより、第1基材層/接着剤層/AL箔層/接着剤層/シーラント層の積層構造を有する積層体を製造した。
【0116】
<ループステフネス値>
温度128℃、時間15分間、圧力0.3MPaの条件で各実施例及び比較例の積層体を加熱することでレトルト処理した。加熱後の積層体についてループステフネス値を測定した。測定には、株式会社東洋精機製作所製のループステフネステスタを用いた。加熱後の積層体から、TDが15mmであり、MDが200mmである試験フィルムを用意した。試験フィルムの両端をチャックで固定することでループサイズが85mm×15mmのループを形成した。このループを圧子により圧縮速度3.3mm/分、圧縮時間3秒、圧縮距離20mmの条件で圧縮し、その時の圧子の荷重を測定した。ループステフネス値としては、この試験で測定される荷重の最大値を採用した。なお、圧縮距離とは、圧子とチャックが最も近づいた時の距離を表す。結果を表2に示した。
【0117】
<最大開口高さH1、H2の測定>
以下の工程を経て最大開口高さH1、H2を測定した。最大開口高さH1は3つの積層体について測定した値の平均値を採用した。最大開口高さH2についても同様に3つの積層体について測定した値の平均値を採用した。結果を表2に示した。
【0118】
(1a)幅90mm及び長さ140mmの大きさの積層体を試験片として2枚準備する工程
(1b)2枚の試験片をシーラント層同士が対面するように重ね合わせて3辺をシール幅5mmでシールし、袋を形成する工程
(1c)袋の上端から70gの水を注入した後、上端をシール幅5mmでシールして試験体を得る工程
(1d)温度128℃、時間15分間、圧力0.3MPaの条件で試験体を加熱する工程
(1e)(1d)工程後、袋の上端から20mmの第1の位置において袋の一方の側部からもう一方の側部にかけて切断し、水を排出した後、当該袋を水平な台の上に置いた状態で第1の位置における最大開口高さH1を測定する工程
(1f)(1e)工程後、第1の位置から50mmの第2の位置において袋の一方の側部からもう一方の側部にかけて切断し、当該袋を水平な台の上に置いた状態で第2の位置における最大開口高さH2を測定する工程
【0119】
工程(1b)では、インパルスシーラーを用いた。工程(1c)では、袋に水を注入した後、袋上部を折り曲げながら袋内部の空気を除きその状態で上端部をシールした。工程(1d)では、試験体を主面が水平となるように配置した状態で試験体を加熱した。加熱は、試験体に水を噴霧するシャワー方式で行った。工程(1e)では、水を排出した後に袋の内部をキムワイプで軽くふき取り、水気を除去した。また、最大開口高さH1を測定する前に、袋を水平な台の上に置いた状態で、2~3Kgの力で袋の下端から上端にかけて主面を手のひらで押した。工程(1f)では、最大開口高さH2を測定する前に、袋を水平な台の上に置いた状態で、2~3Kgの力で袋の下端から上端にかけて主面を手のひらで押した。
【0120】
<第1基材層、第2基材層、シーラント層、積層体の収縮率の測定>
各実施例及び比較例の第1基材層、第2基材層、シーラント層及び積層体の熱収縮率を以下の手順に沿って測定した。結果を表1に示した。
【0121】
(1)
図4に示すように、測定対象となる層又は積層体を200mm×200mmに切り出して測定サンプル500とした。
(2)
図4に示すように、測定サンプル500のTDに平行な120mm以上の長さの2本の直線L1及びL2を、100mmの間隔を空けて書き込んだ。
(3)
図4に示すように、測定サンプル500のMDに平行な120mm以上の長さの2本の直線L3及びL4を、100mmの間隔を空けて書き込んだ。
(4)
図4に示すように、直線L1に20mm間隔で7箇所に目盛りN1~N7を書き込んだ。直線L2~L4にも同様に目盛りを書き込んだ。このとき、直線L1の目盛りN1~N7のそれぞれと、直線L2の目盛りN1~N7のそれぞれとを直線で結んだ場合に、当該直線がMDと平行となるように、直線L1,L2の目盛りの位置を合わせた。また、直線L3の目盛りN1~N7のそれぞれと、直線L4の目盛りN1~N7のそれぞれとを直線で結んだ場合に、当該直線がTDと平行となるように、直線L3,L4の目盛りの位置を合わせた。
(5)128℃、15分間、0.3MPaの条件で測定サンプルを加熱した。加熱後、測定サンプルを室温(25℃)で30分間放置した。
(6)直線L1の目盛りN1(L1とN1との交点)と直線L2の目盛りN1(L2とN1との交点)との直線距離をMD長さとして加熱前後で測定し、下記式(1)によりMD熱収縮率を求めた。同様にして目盛りN1~N7のそれぞれの位置でのMD熱収縮率を求め、それらの平均値を測定サンプル500のMD熱収縮率とした。
MD熱収縮率(%)=(加熱前のMD長さ-加熱後のMD長さ)/加熱前のMD長さ×100 …(1)
(7)直線L3の目盛りN1(L3とN1との交点)と直線L4の目盛りN1(L4とN1との交点)との直線距離をTD長さとして加熱前後で測定し、下記式(2)によりTD熱収縮率を求めた。同様にして目盛りN1~N7のそれぞれの位置でのTD熱収縮率を求め、それらの平均値を測定サンプル500のTD熱収縮率とした。
TD熱収縮率(%)=(加熱前のTD長さ-加熱後のTD長さ)/加熱前のTD長さ×100 …(2)
【0122】
<排出性>
幅90mm及び長さ140mmの大きさの積層体を試験片として2枚準備した。2枚の試験片をシーラント層同士が対面するように重ね合わせた。試験片の3辺をインパルスシーラーでシール(シール幅5mm)して包装袋を得た。包装袋の上端からウエットペットフード(約50g)充填した。包装袋の上端をインパルスシーラーでシール(シール幅5mm)した。これにより包装袋と、内容物(ウエットペットフード)とを備える包装体を得た。
【0123】
包装体を温度128℃、時間15分間、圧力0.3MPaの条件で加熱した。加熱は、包装体に水を噴霧するシャワー方式で行った。加熱後の包装袋の上端から20mmの第1の位置において袋の一方の側部からもう一方の側部にかけて切断して開口部を形成した。開口部の最大開口高さを測定した。開口部が鉛直方向下部となる状態で包装袋を30秒間維持することで内容物を排出した。15秒経過時に包装袋の両側部を両手でつまみ包装袋の内側に向かって押した。30秒間で排出された内容物の量を測定した。下記の式に基づき排出率を算出した。
排出率(%)=排出された内容物の量(g)/内容物の充填量(g)×100
【0124】
開口部の最大開口高さと排出率を下記の基準に沿って評価した。結果を表2に示した。
(基準)
A:最大開口高さが25mm超且つ排出率が90%超
B:最大開口高さが20mm以上25mm未満且つ排出率が90%超
C:A及びB評価以外
【0125】
<包装袋開口時のハンドリング性>
幅90mm及び長さ140mmの大きさの積層体を試験片として2枚準備した。2枚の試験片をシーラント層同士が対面するように重ね合わせた。試験片の3辺をインパルスシーラーでシール(シール幅5mm)して包装袋を得た。包装袋の上端からウエットペットフード(約50g)充填した。包装袋の上端をインパルスシーラーでシール(シール幅5mm)した。これにより包装袋と、内容物(ウエットペットフード)とを備える包装体を得た。
包装体を温度128℃、時間15分間、圧力0.3MPaの条件で加熱した。加熱は、包装体に水を噴霧するシャワー方式で行った。加熱後の包装袋の上端から20mmの第1の位置において袋の一方の側部からもう一方の側部にかけて切断して開口部を形成した。包装体の両端のシール部を掴み、シール部同士を近づける方向に押し込んだときの力加減と開口形状の維持しやすさを以下のA~Dの基準で評価することで包装袋開口時のハンドリング性を評価した。評価は、下記の基準に沿って行った。結果を表2に示した。
(基準)
A:軽い力で開口部が開き、開口を維持しやすい
B:開口部が開きやすく、開口を維持しやすい
C:包装袋が硬く開口部が開きにくいが、開口は維持しやすい
D:開口部がよれて(ねじれて)開きにくく、開口を維持しにくい。
【0126】
【0127】
【符号の説明】
【0128】
1…積層体、30…中間層、50…シーラント層、100…包装袋、200…包装体。
【要約】
基材層と、中間層と、シーラント層と、をこの順序で備える積層構造を有する積層体であって、所定の工程を経て測定される最大開口高さH1、H2が以下の条件を満たし、128℃で15分間加熱した後のループステフネス値が、80mN以上220mN以下である、積層体。
4mm≦H1
6mm≦H2