(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-28
(45)【発行日】2025-05-09
(54)【発明の名称】電力ケーブル、導体、ケーブル接続構造およびケーブル終端接続構造
(51)【国際特許分類】
H01B 7/30 20060101AFI20250430BHJP
【FI】
H01B7/30
(21)【出願番号】P 2025511634
(86)(22)【出願日】2024-10-10
(86)【国際出願番号】 JP2024036260
【審査請求日】2025-02-21
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145872
【氏名又は名称】福岡 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100187643
【氏名又は名称】白鳥 昌宏
(72)【発明者】
【氏名】西村 崇
(72)【発明者】
【氏名】眞尾 晶二
(72)【発明者】
【氏名】南野 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】藤井 則孝
【審査官】遠藤 尊志
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-76537(JP,A)
【文献】中国実用新案第213844776(CN,U)
【文献】特開2017-183184(JP,A)
【文献】特開2014-39394(JP,A)
【文献】特開昭53-118789(JP,A)
【文献】特開2021-194609(JP,A)
【文献】国際公開第2005/24851(WO,A1)
【文献】実開昭56-115809(JP,U)
【文献】特開2019-207758(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 7/30
H01B 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅または銅合金を含む銅素線と、アルミニウムまたはアルミニウム合金を含むアルミニウム素線と、を含む導体を備え、
前記導体の最外周における前記銅素線および前記アルミニウム素線の総本数に対する、前記導体の前記最外周における前記銅素線の本数の割合は、20%以上であり、
前記導体の前記最外周は、少なくとも1本の前記アルミニウム素線を有し、
前記銅素線の少なくとも一部と、前記アルミニウム素線の少なくとも一部とは、互いに接している
電力ケーブル。
【請求項2】
前記銅素線および前記アルミニウム素線は、前記導体の少なくとも一部において、交互に配置されている
請求項1に記載の電力ケーブル。
【請求項3】
前記導体は、前記銅素線および前記アルミニウム素線のうち少なくともいずれかを含む複数の素線層を有し、
前記銅素線および前記アルミニウム素線は、それぞれ、前記複数の素線層のうち少なくとも2つの素線層に設けられている
請求項1または請求項2に記載の電力ケーブル。
【請求項4】
銅または銅合金を含む銅素線と、アルミニウムまたはアルミニウム合金を含むアルミニウム素線と、を含む導体を備え、
前記導体は、前記銅素線および前記アルミニウム素線を含む複数のセグメントを備え、
前記複数のセグメントのそれぞれは、前記導体の最外周を構成する円弧領域を有し、
前記複数のセグメントのそれぞれの前記円弧領域における前記銅素線および前記アルミニウム素線の総本数に対する、前記円弧領域における前記銅素線の本数の割合は、20%以上であり、
前記複数のセグメントのそれぞれの前記円弧領域は、少なくとも1本の前記アルミニウム素線を有
し、
前記銅素線の少なくとも一部と、前記アルミニウム素線の少なくとも一部とは、互いに接している
電力ケーブル。
【請求項5】
銅または銅合金を含む銅素線と、アルミニウムまたはアルミニウム合金を含むアルミニウム素線と、を含む導体を備え、
前記導体は、前記銅素線および前記アルミニウム素線を含む複数のセグメントを備え、
前記複数のセグメントのそれぞれは、
前記銅素線のみを含む銅素線層と、
前記アルミニウム素線のみを含むアルミニウム素線層と、
を有し、
前記銅素線層および前記アルミニウム素線層は、前記複数のセグメントのそれぞれの径方向に交互に配置され
、
前記銅素線の少なくとも一部と、前記アルミニウム素線の少なくとも一部とは、互いに接している
電力ケーブル。
【請求項6】
銅または銅合金を含む銅素線と、アルミニウムまたはアルミニウム合金を含むアルミニウム素線と、を含む導体を備え、
前記銅素線は、複数設けられ、
前記アルミニウム素線は、複数設けられ、
前記複数の銅素線および前記複数のアルミニウム素線は、まだら状に配置され
、
前記銅素線の少なくとも一部と、前記アルミニウム素線の少なくとも一部とは、互いに接している
電力ケーブル。
【請求項7】
銅または銅合金を含む銅素線と、アルミニウムまたはアルミニウム合金を含むアルミニウム素線と、を含む導体を備え、
前記導体は、前記銅素線および前記アルミニウム素線を含む複数のセグメントを備え、
前記複数のセグメントのそれぞれは、
前記アルミニウム素線のみを含み前記銅素線を含まないアルミニウム素線層と、
前記銅素線と前記アルミニウム素線とを含む複合素線層と、
を有し、
前記アルミニウム素線層および前記複合素線層は、前記複数のセグメントのそれぞれの径方向に交互に配置され
、
前記銅素線の少なくとも一部と、前記アルミニウム素線の少なくとも一部とは、互いに接している
電力ケーブル。
【請求項8】
銅または銅合金を含む銅素線と、アルミニウムまたはアルミニウム合金を含むアルミニウム素線と、を含む導体を備え、
前記導体は、前記銅素線と前記アルミニウム素線とを含む複数の複合素線層を有し、
前記複数の複合素線層のそれぞれにおいて、1本の前記銅素線と、2本以上連続して設けられた前記アルミニウム素線とが、当該複数の複合素線層のそれぞれの周方向に交互に配置され
、
前記銅素線の少なくとも一部と、前記アルミニウム素線の少なくとも一部とは、互いに接している
電力ケーブル。
【請求項9】
前記銅素線は、複数設けられ、
前記アルミニウム素線は、複数設けられ、
前記複数の銅素線は、互いに接しないように、まだら状に配置されている
請求項
7または請求項
8に記載の電力ケーブル。
【請求項10】
銅または銅合金を含む銅素線と、アルミニウムまたはアルミニウム合金を含むアルミニウム素線と、を含む導体を備え、
前記導体は、前記銅素線および前記アルミニウム素線を含む複数のセグメントを備え、
前記複数のセグメントのそれぞれが他のセグメントに接する位置において、前記アルミニウム素線のみが配置され
、
前記銅素線の少なくとも一部と、前記アルミニウム素線の少なくとも一部とは、互いに接している
電力ケーブル。
【請求項11】
前記アルミニウム素線は、アルミニウムの自然酸化膜を外周に有する
請求項1
、請求項2、請求項4から請求項8、請求項10のいずれか1項に記載の電力ケーブル。
【請求項12】
前記導体と他の導体との接続部では、前記アルミニウム素線の前記自然酸化膜が前記銅素線によって破られ、
前記導体と他の導体との非接続部では、前記アルミニウム素線の前記自然酸化膜が破られていない
請求項
11に記載の電力ケーブル。
【請求項13】
請求項1
、請求項2、請求項4から請求項8、請求項10のいずれか1項に記載の電力ケーブルに用いられる
導体。
【請求項14】
請求項13に記載の導体を第1導体
として有する第1電力ケーブルと、
第2導体を有する第2電力ケーブルと、
前記第1導体および前記第2導体を接続する筒状のスリーブと、
を備
える
ケーブル接続構造。
【請求項15】
請求項13に記載の導体を有する電力ケーブルと、
前記電力ケーブルの前記導体の先端を囲む筒所のスリーブと、
前記スリーブが取り付けられた前記電力ケーブルが挿入された碍管と、
を有
する
ケーブル終端接続構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電力ケーブル、導体、ケーブル接続構造およびケーブル終端接続構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、銅素線をアルミニウム素線に置き換えた導体が採用される場合がある(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【0004】
本開示の一態様によれば、銅または銅合金を含む銅素線と、アルミニウムまたはアルミニウム合金を含むアルミニウム素線と、を含む導体を備え、前記銅素線の少なくとも一部と、前記アルミニウム素線の少なくとも一部とは、互いに接している電力ケーブルが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【
図1A】
図1Aは、本開示の第1実施形態に係る電力ケーブルの第1例の軸方向に直交する概略断面図である。
【
図1B】
図1Bは、本開示の第1実施形態に係る電力ケーブルの第2例の軸方向に直交する概略断面図である。
【
図2】
図2は、本開示の第1実施形態に係るケーブル接続構造を示す導体の軸方向に沿った概略断面図である。
【
図3】
図3は、本開示の第1実施形態の変形例1に係るケーブル接続構造を示す導体の軸方向に沿った概略断面図である。
【
図4】
図4は、本開示の第1実施形態の変形例2に係るケーブル終端接続構造を示す導体の軸方向に沿った概略断面図である。
【
図5A】
図5Aは、本開示の第2実施形態に係る電力ケーブルが有する導体の軸方向に直交する概略断面図である。
【
図6A】
図6Aは、本開示の第3実施形態に係る電力ケーブルが有する導体の軸方向に直交する概略断面図である。
【
図7】
図7は、本開示の第4実施形態に係る電力ケーブルが有する導体の軸方向に直交する概略断面図である。
【
図8】
図8は、本開示の第5実施形態に係る電力ケーブルが有する導体の軸方向に直交する概略断面図である。
【
図9】
図9は、本開示の第6実施形態に係る電力ケーブルが有する導体の軸方向に直交する概略断面図である。
【
図10】
図10は、本開示の第7実施形態に係る電力ケーブルが有する導体の軸方向に直交する概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
[本開示が解決しようとする課題]
本開示の目的は、アルミニウム素線を含む電力ケーブルの各種特性を向上させることである。
【0007】
[本開示の効果]
本開示によれば、アルミニウム素線を含む電力ケーブルの各種特性を向上させることができる。
【0008】
[本開示の実施形態の説明]
<発明者等の得た知見>
まず、発明者等の得た知見について説明する。
【0009】
電力ケーブルでは、導体が従来の銅素線を含む場合だけでなく、上述のように、導体がアルミニウム素線を含む場合もある。
【0010】
しかしながら、導体が銅素線のみを含む場合と、導体がアルミニウム素線のみを含む場合とでは、それぞれ、以下のような課題が生じていた。
【0011】
(銅素線のみを含む導体)
銅素線のみを含む導体では、銅素線の外周に絶縁性の酸化膜が形成されないため、一対の導体の先端をスリーブにより所定の圧力で圧縮することで、電力ケーブルを容易かつ安定的に接続することができる。
【0012】
しかしながら、絶縁被膜を有しない裸素線としての銅素線のみを含む導体では、断面積が大きくなるにつれて、交流における表皮効果が生じ、交流抵抗が増加する。このため、送電効率が低下してしまう。
【0013】
そのため、銅素線のみを含む導体では、絶縁紙を介在させた状態で複数のセグメントに分割した分割導体を採用したり、個々の銅素線の外周を絶縁被膜で覆った素線絶縁導体を採用したりすることで、表皮効果を抑制していた。しかしながら、これらの場合、加工費または接続施工費などのコストが増加する傾向にあった。
【0014】
(アルミニウム素線のみを含む導体)
アルミニウム素線の抵抗率は、銅素線の抵抗率よりも高い。このため、アルミニウム素線のみを含む導体の抵抗を銅素線のみを含む導体の抵抗と同等にするには、導体のサイズ(断面積)を大きくする必要があった。
【0015】
アルミニウム素線の張力特性(引張強度)は、銅素線の張力特性よりも劣る。このため、アルミニウム素線のみを含む導体の機械的強度が、銅素線のみを含む導体の機械的強度よりも低くなる傾向にあった。
【0016】
一方で、アルミニウム素線のみを含む導体では、個々のアルミニウム素線の外周に絶縁性の酸化膜(自然酸化膜)が形成される。このため、アルミニウム素線のみを含む導体では、上述の素線絶縁導体の効果と同様の効果により、表皮効果を抑制することができる。
【0017】
しかしながら、アルミニウム素線のみを含む導体では、アルミニウム素線の外周における酸化膜の存在に起因して、電力ケーブルを接続することが困難となっていた。
【0018】
例えば、アルミニウム素線のみを含む導体をスリーブにより強く圧縮しなければ、酸化膜を破ることができず、接続抵抗を低くすることができなかった。このようにスリーブを強く圧縮する場合では、スリーブ内のアルミニウム素線が断線し易くなっていた
【0019】
これに対し、過度にスリーブを圧縮せずに所望の接続抵抗を得るためには、スリーブの圧縮長を長くする必要があった。例えば、アルミニウム素線のみを含む架空送電線の場合(断面積2020mm2)では、スリーブの圧縮長が300~400mmも必要となっていた。当該スリーブの圧縮長は、地中に布設する電力ケーブルの接続構造としては、長すぎであった。したがって、ケーブル接続構造に、通常のスリーブ圧縮方式を採用することが困難となっていた。
【0020】
このため、これまでは、一対の導体間で個々のアルミニウム素線を溶接する方法が採用されてきた。しかしながら、溶接作業には特殊技能が要求されていた。このため、溶接に係る作業時間が長くなったり、コストが高くなっていたりしていた。
【0021】
その他のアルミニウム素線の接続方法として、爆着などによりケーブル接続時に各アルミニウム素線の酸化膜を除去する方法などが検討されているが、アルミニウム素線を含む導体を接続する工程が複雑または困難であったり、接続抵抗が不安定となったりする可能性があった。
【0022】
(発明者等による検討)
そこで、発明者等は、鋭意検討した結果、銅素線およびアルミニウム素線の両方を含むよう導体を構成し、銅素線とアルミニウム素線との配置を最適化することで、上述の課題を解決し、電力ケーブルの各種特性を向上させた構成を見出した。
【0023】
本開示は、本開示者等が見出した上記知見に基づくものである。
【0024】
<本開示の実施態様>
次に、本開示の実施態様を列記して説明する。
【0025】
[1]本開示の一態様に係る電力ケーブルは、
銅または銅合金を含む銅素線と、アルミニウムまたはアルミニウム合金を含むアルミニウム素線と、を含む導体を備え、
前記銅素線の少なくとも一部と、前記アルミニウム素線の少なくとも一部とは、互いに接している。
この構成によれば、アルミニウム素線を含む電力ケーブルの各種特性を向上させることができる。
【0026】
[2]上記[1]に記載の電力ケーブルにおいて、
前記銅素線および前記アルミニウム素線は、前記導体の少なくとも一部において、交互に配置されている。
この構成によれば、導体が裸素線としての銅素線を含んでいても、表皮効果を抑制することができる。
【0027】
[3]上記[1]または[2]に記載の電力ケーブルにおいて、
前記導体は、前記銅素線および前記アルミニウム素線のうち少なくともいずれかを含む複数の素線層を有し、
前記銅素線および前記アルミニウム素線は、それぞれ、前記複数の素線層のうち少なくとも2つの素線層に設けられている。
この構成によれば、導体に求められる抵抗および機械的強度を得ることができる。電力ケーブルを軽量化させることができ、電力ケーブルの製造コストを低減することができる。
【0028】
[4]上記[1]から[3]のいずれか1つに記載の電力ケーブルにおいて、
前記導体の最外周における前記銅素線および前記アルミニウム素線の総本数に対する、前記導体の前記最外周における前記銅素線の本数の割合は、20%以上である。
この構成によれば、導体の最外周の銅素線により、内側のアルミニウム素線におけるアルミニウムの酸化膜を破ることができる。
【0029】
[5]上記[4]に記載の電力ケーブルにおいて、
前記導体の前記最外周は、少なくとも1本の前記アルミニウム素線を有する。
この構成によれば、導体の最外周において、少なくとも1本のアルミニウム素線により、銅素線間の直接接触を抑制することができる。
【0030】
[6]上記[1]から[3]のいずれか1つに記載の電力ケーブルにおいて、
前記導体は、前記銅素線および前記アルミニウム素線を含む複数のセグメントを備え、
前記複数のセグメントのそれぞれは、前記導体の最外周を構成する円弧領域を有し、
前記複数のセグメントのそれぞれの前記円弧領域における前記銅素線および前記アルミニウム素線の総本数に対する、前記円弧領域における前記銅素線の本数の割合は、20%以上である。
この構成によれば、セグメントの最外周の銅素線により、内側のアルミニウム素線におけるアルミニウムの酸化膜を破ることができる。
【0031】
[7]上記[6]に記載の電力ケーブルにおいて、
前記複数のセグメントのそれぞれの前記円弧領域は、少なくとも1本の前記アルミニウム素線を有する。
この構成によれば、セグメントの最外周において、少なくとも1本のアルミニウム素線により、銅素線間の直接接触を抑制することができる。
【0032】
[8]上記[1]から[4]のいずれか1つに記載の電力ケーブルにおいて、
前記導体は、
前記銅素線のみを含む銅素線層と、
前記アルミニウム素線のみを含むアルミニウム素線層と、
を有し、
前記銅素線層および前記アルミニウム素線層は、前記導体の径方向に交互に配置されている。
この構成によれば、交流では、素線層間で交差する渦電流を低減することができる。一方で、この構成は、直流においても適している。
【0033】
[9]上記[1]から[3]、[6]のいずれか1つに記載の電力ケーブルにおいて、
前記導体は、前記銅素線および前記アルミニウム素線を含む複数のセグメントを備え、
前記複数のセグメントのそれぞれは、
前記銅素線のみを含む銅素線層と、
前記アルミニウム素線のみを含むアルミニウム素線層と、
を有し、
前記銅素線層および前記アルミニウム素線層は、前記複数のセグメントのそれぞれの径方向に交互に配置されている。
この構成によれば、交流では、素線層間で交差する渦電流を低減することができる。一方で、この構成は、直流においても適している。
【0034】
[10]上記[1]から[7]のいずれか1つに記載の電力ケーブルにおいて、
前記銅素線は、複数設けられ、
前記アルミニウム素線は、複数設けられ、
前記複数の銅素線および前記複数のアルミニウム素線は、まだら状に配置されている。
この構成によれば、表皮効果を安定的に抑制することができる。
【0035】
[11]上記[1]から[3]、[6]、[7]のいずれか1つに記載の電力ケーブルにおいて、
前記導体は、前記銅素線および前記アルミニウム素線を含む複数のセグメントを備え、
前記複数のセグメントのそれぞれは、
前記アルミニウム素線のみを含み前記銅素線を含まないアルミニウム素線層と、
前記銅素線と前記アルミニウム素線とを含む複合素線層と、
を有し、
前記アルミニウム素線層および前記複合素線層は、前記複数のセグメントのそれぞれの径方向に交互に配置されている。
この構成によれば、表皮効果を安定的に抑制することができる。
【0036】
[12]上記[1]から[3]、[6]、[7]のいずれか1つに記載の電力ケーブルにおいて、
前記導体は、前記銅素線と前記アルミニウム素線とを含む複数の複合素線層を有し、
前記複数の複合素線層のそれぞれにおいて、1本の前記銅素線と、2本以上連続して設けられた前記アルミニウム素線とが、当該複数の複合素線層のそれぞれの周方向に交互に配置されている。
この構成によれば、表皮効果を安定的に抑制することができるとともに、アルミニウム素線の本数を増やすことができる。
【0037】
[13]上記[11]または[12]に記載の電力ケーブルにおいて、
前記銅素線は、複数設けられ、
前記アルミニウム素線は、複数設けられ、
前記複数の銅素線は、互いに接しないように、まだら状に配置されている。
この構成によれば、表皮効果を安定的に抑制することができる。
【0038】
[14]上記[1]から[3]、[6]、[7]、[11]から[13]のいずれか1つに記載の電力ケーブルにおいて、
前記導体は、前記銅素線および前記アルミニウム素線を含む複数のセグメントを備え、
前記複数のセグメントのそれぞれが他のセグメントに接する位置において、前記アルミニウム素線のみが配置されている。
この構成によれば、複数のセグメントの間に絶縁紙を設けなくても、複数のセグメントを互いに絶縁させることができる。
【0039】
[15]上記[1]から[14]のいずれか1つに記載の電力ケーブルにおいて、
前記アルミニウム素線は、アルミニウムの自然酸化膜を外周に有する。
この構成によれば、アルミニウム素線の酸化膜を形成するために特段の加工を不要とすることができる。
【0040】
[16]上記[15]に記載の電力ケーブルにおいて、
前記導体と他の導体との接続部では、前記アルミニウム素線の前記自然酸化膜が前記銅素線によって破られ、
前記導体と他の導体との非接続部では、前記アルミニウム素線の前記自然酸化膜が破られていない。
この構成によれば、電力ケーブルの安定的な接続と、交流における表皮効果の抑制とを両立することが可能となる。
【0041】
[17]本開示の他の態様に係る導体は、
上記[1]から[16]のいずれか1つに記載の電力ケーブルに用いられる。
この構成によれば、アルミニウム素線を含む電力ケーブルの各種特性を向上させることができる。
【0042】
[18]本開示の他の態様に係るケーブル接続構造は、
第1導体を有する第1電力ケーブルと、
第2導体を有する第2電力ケーブルと、
前記第1導体および前記第2導体を接続する筒状のスリーブと、
を備え、
少なくとも前記第1導体は、銅または銅合金を含む銅素線と、アルミニウムまたはアルミニウム合金を含むアルミニウム素線と、を含み、
前記第1導体内において、前記銅素線の少なくとも一部と、前記アルミニウム素線の少なくとも一部とは、互いに接している。
この構成によれば、アルミニウム素線を含む電力ケーブルの各種特性を向上させることができる。
【0043】
[19]本開示の更に他の態様に係るケーブル終端接続構造は、
導体を有する電力ケーブルと、
前記電力ケーブルの前記導体の先端を囲む筒所のスリーブと、
前記スリーブが取り付けられた前記電力ケーブルが挿入された碍管と、
を有し、
前記導体は、銅または銅合金を含む銅素線と、アルミニウムまたはアルミニウム合金を含むアルミニウム素線と、を含み、
前記銅素線の少なくとも一部と、前記アルミニウム素線の少なくとも一部とは、互いに接している。
この構成によれば、アルミニウム素線を含む電力ケーブルの各種特性を向上させることができる。
【0044】
[本開示の実施形態の詳細]
次に、本開示の一実施形態を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本開示はこれらの例示に限定されるものではなく、請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0045】
<本開示の第1実施形態>
(1)電力ケーブルおよび導体
本開示の第1実施形態に係る電力ケーブル100および導体110について、
図1Aまたは
図1Bを参照して説明する。
【0046】
なお、本開示の導体110の軸方向に直交する各断面図において、後述の銅素線112aには、斜線ハッチングが付与され、アルミニウム素線112bには、ハッチングが付与されていない。
【0047】
以下において、電力ケーブル100の「軸方向」とは、電力ケーブル100の中心軸に沿った方向のことをいう。電力ケーブル100の「径方向」とは、電力ケーブル100の中心軸から外周に向かう方向のことをいう。電力ケーブル100の「周方向」とは、電力ケーブル100の外周に沿った方向のことをいう。導体110、セグメント111、導体素線112、スリーブ200についても、電力ケーブル100の上記用語と同様の用語を用いることがある。
【0048】
図1Aまたは
図1Bに示すように、電力ケーブル100は、高電圧の送電ケーブルである固体絶縁ケーブルとして構成されている。
【0049】
電力ケーブル100は、交流用であっても、直流用であってもよい。なお、後述の第2から第7実施形態も、第1実施形態と同様に、電力ケーブル100は、交流用であっても、直流用であってもよい。
【0050】
図1Aに示す第1例としての電力ケーブル100は、例えば、導体110、内部半導電層120、絶縁層130、外部半導電層140、吸水層(不図示)、金属遮蔽層150、およびシース160を、導体110の中心軸から電力ケーブル100の外周に向けてこの順で有している。金属遮蔽層150は、例えば、金属被、又は、銅ワイヤ若しくは銅テープの巻付層などである。
【0051】
図1Bに示す第2例としての電力ケーブル100は、例えば、水中ケーブル(海中ケーブル、海底ケーブルなど)として構成され、導体110、内部半導電層120、絶縁層130、外部半導電層140、吸水層(不図示)、金属遮蔽層150、および外周構造170を、導体110の中心軸から電力ケーブル100の外周に向けてこの順で有している。水中ケーブルでの外周構造170は、例えば、導体110に近い領域から外周側に向けて、防食層、座床ヤーン層、鉄線外装(鎧装)、およびヤーン層を有している。なお、水中ケーブルでの金属遮蔽層150は、例えば、金属被である。
【0052】
なお、以下において、説明簡略化のため、金属遮蔽層150よりも外側は、シース160であるものとして説明する場合がある。
【0053】
(導体)
導体110は、例えば、複数の導体素線112を含んでいる。複数の導体素線112のそれぞれは、円形の断面を有している。これにより、導体素線112を容易に製造することができる。
【0054】
導体110は、例えば、複数の素線層114を有している。複数の素線層114は、例えば、導体110の径方向に積層されている。複数の素線層114は、例えば、導体110の中心軸のまわりに同心円状に配置されている。導体110の中心を除くそれぞれの素線層114において、複数の導体素線112は、例えば、内側の素線層114の外周を覆うように配置され、当該内側の素線層114の外周に沿って、螺旋状に撚り合わせて設けられている。
【0055】
ここでは、導体110は、例えば、同心円状に5つの素線層114を有している。以下、5つの素線層114の名称を、導体110の中心軸から外周に向けて、第1素線層114a、第2素線層114b、第3素線層114c、第4素線層114d、第5素線層114eとする。第1素線層114a、第2素線層114b、第3素線層114c、第4素線層114d、第5素線層114eは、それぞれ、1本、6本、12本、18本および24本の導体素線112を含んでいる。
【0056】
本実施形態では、導体110は、例えば、銅素線112aと、アルミニウム素線112bと、の両方を含んでいる。このように導体110がアルミニウム素線112bを含むことにより、電力ケーブル100を軽量化させることができ、電力ケーブル100の製造コストを低減することができる。
【0057】
銅素線112aは、例えば、銅または銅合金を含んでいる。銅素線112aは、例えば、軟銅素線である。また、銅素線112aは、いわゆる裸素線であり、絶縁被膜を外周に有していない。
【0058】
アルミニウム素線112bは、例えば、アルミニウムまたはアルミニウム合金を含んでいる。アルミニウム素線112bは、例えば、アルミニウムの自然酸化膜を外周に有している。言い換えれば、アルミニウム素線112bは、アルマイト加工されていない。これにより、アルミニウム素線112bの酸化膜を形成するために特段の加工を不要とすることができる。
【0059】
アルミニウム素線112bにおけるアルミニウムの自然酸化膜の厚さは、アルマイト加工による酸化膜の厚さよりも薄い。具体的には、アルミニウム素線112bにおけるアルミニウムの自然酸化膜の厚さは、例えば、0.1nm以上100nm以下である。以下の本開示において、特に断りが無ければ、アルミニウム素線112bの単に「酸化膜」と記載した用語は、自然酸化膜を意味する。
【0060】
本実施形態では、例えば、銅素線112aの少なくとも一部と、アルミニウム素線112bの少なくとも一部とが、互いに接している。これにより、後述のケーブル接続構造20(導体110と他の導体110との接続部)において、スリーブ200が圧縮されることで、アルミニウム素線112bよりも硬い銅素線112aにより、アルミニウム素線112bの酸化膜の少なくとも一部を破ることができる。これにより、簡易的な圧縮であっても、一対の導体110間での導通を確保することができる。
【0061】
一方で、ケーブル接続構造20以外の部分(導体110と他の導体110との非接続部)では、銅素線112aによってアルミニウム素線112bが圧縮されない。このため、アルミニウム素線112bの酸化膜は破られることなく、酸化膜の絶縁性が維持される。
【0062】
本実施形態では、銅素線112aおよびアルミニウム素線112bは、例えば、導体110の少なくとも一部において、交互に配置されている。これにより、導体110の少なくとも一部において、アルミニウム素線112bの酸化膜を利用して、表皮効果を抑制することができる。
【0063】
本実施形態では、銅素線112aおよびアルミニウム素線112bは、それぞれ、複数の素線層114のうち少なくとも2つの素線層114に設けられている。銅素線112aが少なくとも2つの素線層114に設けられていることにより、導体110に求められる抵抗および機械的強度を得ることができる。アルミニウム素線112bが少なくとも2つの素線層114に設けられていることにより、電力ケーブル100を軽量化させることができ、電力ケーブル100の製造コストを低減することができる。
【0064】
本実施形態では、導体110の最外周における銅素線112aおよびアルミニウム素線112bの総本数に対する、導体110の最外周における銅素線112aの本数の割合は、例えば、20%以上である。これにより、後述のスリーブ200と、導体110の最外周の銅素線112aとの導通を容易に確保することができる。さらに、導体110の最外周の銅素線112aにより、内側のアルミニウム素線112bにおけるアルミニウムの酸化膜を破ることができる。
【0065】
本実施形態では、導体110は、例えば、素線層114として、銅素線112aのみを含む銅素線層と、アルミニウム素線112bのみを含むアルミニウム素線層と、を有している。銅素線層およびアルミニウム素線層は、導体110の径方向に交互に配置されている。
【0066】
具体的には、第1素線層114a、第2素線層114b、第3素線層114c、第4素線層114d、第5素線層114eは、それぞれ、銅素線層、アルミニウム素線層、銅素線層、アルミニウム素線層、銅素線層である。
【0067】
上述のような配置により、素線層114間で交差する渦電流を低減することができる。その結果、表皮効果を抑制することが可能となる。
【0068】
本実施形態では、最も外側の素線層114は、例えば、上述のように、銅素線層である。すなわち、最外周の第5素線層114eにおける銅素線112aの本数の割合は、100%である。このように酸化膜が生じない銅素線層を最も外側の素線層114とすることで、後述のスリーブ200および最も外側の銅素線層の間の導通と、最も外側の銅素線層および内側のアルミニウム素線層の間の導通を安定的に確保することができる。
【0069】
ただし、導体110の最外周は、少なくとも1本のアルミニウム素線112bを有していてもよい。これにより、導体110の最外周において、少なくとも1本のアルミニウム素線112bにより、銅素線112a間の直接接触を抑制することができる。その結果、交流における表皮効果を安定的に抑制することができる。
【0070】
本実施形態では、隣り合う素線層114間に、水の伝播を抑制する、いわゆる水伝播抑制層が設けられていてもよい。水伝播抑制層は、例えば、走水防止テープにより構成される。これにより、導体110の軸方向に沿った水の伝播を抑制することができる。
【0071】
しかしながら、水伝播抑制層としての走水防止テープが絶縁性であるため、走水防止テープを挟んで隣り合う素線層は互いに絶縁される。
【0072】
これに対し、本実施形態では、導体110と他の導体110との接続部では、隣り合う素線層114間における水伝播抑制層が除去されている。このように導体110と他の導体110との接続部に水伝播抑制層を設けないことで、ケーブル接続構造20において、銅素線層を隣り合うアルミニウム素線層に押し付け、アルミニウム素線層中のアルミニウム素線112bの酸化膜を破ることができる。これにより、隣り合う素線層114間の導通を確保することができる。
【0073】
(IEC60287 1-1に規定された係数ks)
本実施形態では、上述のように、ケーブル接続構造20以外の部分では、アルミニウム素線112bの酸化膜の絶縁性が維持されることで、裸素線としての銅素線のみを含む導体と比較して、表皮効果を抑制することができる。
【0074】
ここで、表皮効果の傾向を示す指標として、国際電気標準会議IEC60287 1-1(Edition2.0)では、係数ksが規定されている。係数ksは、日本電線工業規格JCS0501に規定された分割導体係数KS1に相当するものである。
【0075】
係数ksは、IEC60287 1-1(Edition2.0 2014-11)に準拠して、以下のようにして求められる。
【0076】
最高動作温度(maximum operating temperature)における導体の単位長さ当たりの交流抵抗は、パイプタイプケーブルを除き、以下の式(1)で与えられる。
R=R’(1+ys+yp) ・・・(1)
【0077】
ここで、Rは、最高動作温度での導体の交流抵抗であり、単位はΩ/mである。R’は、最高動作温度での導体の直流抵抗であり、単位はΩ/mである。ysは、表皮効果係数(skin effect factor)である。ypは、近接効果係数(proximity effect factor)である。
【0078】
最高動作温度における導体の単位長さ当たりの直流抵抗は、以下の式(2)で与えられる。
R’=R0{1+α20(θ-20)} ・・・(2)
【0079】
ここで、R0は、20℃での導体の直流抵抗であり、単位はΩ/mである。α20は、20℃での定質量温度係数(constant mass temperature)である。θは、最高動作温度(℃)である。
【0080】
表皮効果係数ysは、以下の式(3)で与えられる。
【0081】
【0082】
ここで、xsは、係数ksを用いて、以下の式(4)で与えられる。
【0083】
【0084】
fは、周波数(Hz)である。なお、式(3)は、近似式だが、xsが2.8を超えない限りで正確であるため、実際の多くの場合に適用される。
【0085】
近接効果係数ypは、以下の式(5)で与えられる。
【0086】
【0087】
ここで、xpは、係数kpを用いて、以下の式(6)で与えられる。
【0088】
【0089】
dcは、導体の直径(mm)である。Sは、導体の中心軸間の距離(mm)である。なお、式(5)は、近似式だが、xpが2.8を超えない限りで正確であるため、実際の多くの場合に適用される。
【0090】
以上の式(1)~(6)に基づいて、係数ksが求められる。
【0091】
ここで、国際電気標準会議IEC60287 1-1(Edition2.0 2014-11修正版)の表2には、全ての素線が裸素線としての銅素線からなる導体(以下「全裸銅素線導体」ともいう)における係数ksは0.62であると記載されている。また、表2には、全ての素線が酸化膜を有するアルミニウム素線からなる導体(以下「全アルミニウム素線導体」ともいう)における係数ksは0.25であると記載されている。
【0092】
これに対し、本実施形態では、導体110が裸素線としての銅素線112aとアルミニウム素線112bとを含みつつ、銅素線112aおよびアルミニウム素線112bが上述のように配置されていることで、表皮効果が抑制されている。
【0093】
これにより、本実施形態において、上記IEC60287 1-1(Edition2.0 2014-11)に準拠して求められる導体110の係数ksは、例えば、全裸銅素線導体の係数ksよりも小さくなっている。なお、本実施形態の導体110における係数ksは、例えば、全アルミニウム素線導体の係数ksよりも大きいか、或いは、全アルミニウム素線導体の係数ksに限りなく近くなる。
【0094】
すなわち、本実施形態の導体110の係数ksは、例えば、0.25以上0.62未満である。これにより、導体110が銅素線112aを含んでいても、全素線絶縁導体(全アルミニウム素線導体)の交流抵抗に近い低い交流抵抗を実現することができる。
【0095】
(2)連結電力ケーブルおよびケーブル接続構造
本開示の一実施形態に係る連結電力ケーブル10およびケーブル接続構造(ケーブル接続部)20の概略構成について、
図2を参照して説明する。
【0096】
なお、
図2および後述の
図3において、電力ケーブル100のうち導体110以外の部分は、段剥ぎされた側面が示されている。また、
図2および後述の
図3のそれぞれの下側は省略されている。
【0097】
図2に示すように、本実施形態の連結電力ケーブル10は、例えば、複数の電力ケーブル100と、少なくとも1つケーブル接続構造20と、を有している。
【0098】
(ケーブル接続構造)
図2に示すように、ケーブル接続構造20は、例えば、一対の電力ケーブル100を接続するよう構成され、いわゆる工場ジョイントとして構成されている。具体的には、ケーブル接続構造20は、例えば、第1電力ケーブル100aと、第2電力ケーブル100bと、スリーブ200と、内部半導電層220と、絶縁層230と、外部半導電層240と、吸水テープ層242と、金属管(保護管)250と、防食層(接続部シース)260と、を有している。
【0099】
(電力ケーブル)
第1電力ケーブル100aおよび第2電力ケーブル100bは、それぞれ、第1導体110aおよび第2導体110bを有している。第1導体110aおよび第2導体110bのそれぞれは、上述のように、銅素線112aおよびアルミニウム素線112bの両方を含んでいる。
【0100】
(スリーブ(導体接続管))
スリーブ200は、例えば、一対の電力ケーブル100の導体110同士を接続した接続点(接続部、接続箇所)を囲むように設けられている。なお、筒状のスリーブ200は、中空部内の一対の導体110の間に隔壁(不図示)を有していてもよい。
【0101】
スリーブ200は、例えば、中空部(符号不図示)を有する筒状の金属管として構成されている。スリーブ200の中空部内には、接続点を含む一対の導体110の露出部が挿入されている。
【0102】
スリーブ200を構成する金属としては、例えば、銅(純銅)、銅合金、アルミニウム、またはアルミニウム合金が挙げられる。なお、スリーブ200がアルミニウムまたはアルミニウム合金からなる場合には、断面積あたりの電気抵抗が純銅と同等になるように、スリーブ200の厚さを厚くすることが好ましい。
【0103】
スリーブ200は、例えば、導体110の径方向に圧縮されている。スリーブ200は、例えば、スリーブ200の中心軸に対して中心対称の断面形状を有するように圧縮されている。圧縮後のスリーブ200の軸方向に直交する断面の形状は、例えば、多角形(六角形)、または円形である。なお、スリーブ200は、スリーブ200の径方向に局所的に凹んだインデントを有しない。このようにスリーブ200が圧縮されることにより、一対の導体110が接続されている。
【0104】
本実施形態では、スリーブ200は、例えば、銅素線112aがアルミニウム素線112bの酸化膜の少なくとも一部を破るように、圧縮されている。これにより、ケーブル接続構造20における必要な導電度を確保することができる。
【0105】
ここで、全ての素線が酸化膜を有するアルミニウム素線からなる全アルミニウム素線導体において、アルミニウムの酸化膜を破るためには、100MPa程度の圧力(応力)でスリーブを圧縮する必要がある。この場合、スリーブを圧縮したときに、アルミニウム素線が大きく変形し、アルミニウム素線が断線するおそれがある。
【0106】
これに対し、本実施形態では、上述のように、銅素線112aがアルミニウム素線112bの周りに配置されている。銅のヤング率は130GPaであり、アルミニウムのヤング率は70GPaである。このため、銅はアルミニウムよりも変形しにくい。これにより、100MPa未満の圧力でスリーブ200を圧縮した場合であっても、銅素線112aによりアルミニウム素線112bの酸化膜の少なくとも一部を破ることができる。また、良好な接触をえるためには80MPa以上の圧力が望ましい。さらには、アルミニウム素線112bの変形を抑制することができ、アルミニウム素線112bの断線を防ぐことができる。その結果、一対の導体110間での導通を安定的に確保することができる。
【0107】
本実施形態では、第1導体110aおよび第2導体110bのそれぞれ(すなわち片側)におけるスリーブ200の軸方向の長さ(スリーブ200の圧縮長)は、特に限定されないが、例えば、50mm以上200mm以下であってもよい。
【0108】
(スリーブよりも外側の構成)
スリーブ200の外周を覆うように、内部半導電層220、絶縁層230、外部半導電層240、外部半導電層240、吸水テープ層242、金属管250および防食層260が、スリーブ200に近い領域から外側に向けてこの順で設けられている。これらは、工場ジョイントの一般的な構成として、例えば、特開2023-065809号公報に記載のように構成することができる。
【0109】
(3)本実施形態のまとめ
本実施形態によれば、以下に示す1つ又は複数の効果を奏する。
【0110】
(a)本実施形態では、導体110は、銅素線112aと、アルミニウム素線112bと、の両方を含んでいる。これにより、導体110のサイズを過度に大きくすることなく、導体110の抵抗を、銅素線のみを含む導体の抵抗と同等にすることができる。さらには、導体110がアルミニウム素線112bを含むことに起因した、導体110の機械的強度の低下を抑制することができる。
【0111】
(b)本実施形態では、銅素線112aの少なくとも一部と、アルミニウム素線112bの少なくとも一部とが、互いに接している。これにより、ケーブル接続構造20において、スリーブ200が圧縮されることで、アルミニウム素線112bよりも硬い銅素線112aにより、アルミニウム素線112bの酸化膜の少なくとも一部を破ることができる。これにより、簡易的なスリーブ200の圧縮であっても、一対の導体110間での導通を確保することができる。このように、本実施形態によれば、導体110がアルミニウム素線112bを含む電力ケーブル100を容易かつ安定的に接続することが可能となる。
【0112】
(c)本実施形態では、スリーブ200が低圧力で圧縮されていても、一対の導体110間での導通を容易に確保することができる。これにより、スリーブ200の強い圧縮に起因したスリーブ200内のアルミニウム素線112bの断線を抑制することができる。その結果、ケーブル接続構造20の機械的強度を確保することができ、導体110の引張張力の低下を抑制することが可能となる。例えば、深海布設などのように導体110の接続部に大きな張力が印加される場合への本実施形態の適用が可能となる。
【0113】
(d)本実施形態では、スリーブ200の軸方向の長さを過度に長くしなくても、アルミニウム素線112bを含む一対の導体110間での導通を安定的に確保することができる。これにより、ケーブル接続構造20全体としての長さが長くなることを抑制することができる。その結果、スリーブ200の軸方向の長さを過度に長くしなくても、上述の導体110の引張張力の低下を抑制しつつ、ケーブル接続構造20の接続抵抗を低減することが可能となる。
【0114】
(e)本実施形態では、一対の導体110間での個々のアルミニウム素線112bの溶接を不要とすることができる。これにより、溶接に求められる特殊技能を不要とすることができる。また、溶接方法と比較して、作業時間を短縮することができ、作業にかかるコストを削減することができる。
【0115】
(f)本実施形態では、銅素線112aおよびアルミニウム素線112bは、導体110の少なくとも一部において、交互に配置されている。これにより、裸素線としての銅素線112aが複数のアルミニウム素線112bに挟まれた部分において、アルミニウム素線112bの酸化膜を利用して、裸素線としての銅素線112aを閉じ込めることができる。その結果、導体110が裸素線としての銅素線112aを含んでいても、導体110の少なくとも一部において、表皮効果を抑制することができる。
【0116】
(g)本実施形態では、銅素線112aおよびアルミニウム素線112bが、導体110の少なくとも一部において、交互に配置されていることで、圧縮されたスリーブ200内で、銅素線112aがアルミニウム素線112bの酸化膜の少なくとも一部を破った導通箇所を増やすことができる。これにより、一対の導体110の接続部における電気抵抗を低減することができる。その結果、一対の導体110の接続部における異常発熱を抑制することが可能となる。
【0117】
(h)本実施形態では、導体110と他の導体110との接続部では、アルミニウム素線112bの自然酸化膜が銅素線112aによって破られている。一方で、導体110と他の導体110との非接続部では、アルミニウム素線112bの自然酸化膜が破られていない。すなわち、導体110と他の導体110との非接続部では、アルミニウム素線112bの自然酸化膜を選択的に維持し、表皮効果の抑制に利用している。このような構成により、電力ケーブル100の安定的な接続と、交流における表皮効果の抑制とを両立することが可能となる。
【0118】
(i)本実施形態では、導体110は、素線層114として、銅素線112aのみを含む銅素線層と、アルミニウム素線112bのみを含むアルミニウム素線層と、を有している。銅素線層およびアルミニウム素線層は、導体110の径方向に交互に配置されている。
【0119】
上述のような配置により、これにより、銅素線層が一対のアルミニウム素線層に挟まれた部分において、アルミニウム素線112bの酸化膜を利用して、銅素線層を閉じ込めることができる。これにより、素線層114間で交差する渦電流を低減することができる。その結果、導体110が裸素線としての銅素線112aを含んでいても、表皮効果を抑制することが可能となる。
【0120】
上述のような配置により、ケーブル接続構造20において、スリーブ200が径方向に圧縮されることで、銅素線層をアルミニウム素線層に確実に押し付けることができる。これにより、銅素線層における銅素線112aにより、アルミニウム素線層におけるアルミニウム素線112bの酸化膜の少なくとも一部を破ることができる。その結果、スリーブ200の径方向(すなわち圧縮方向)の導通を安定的に確保することが可能となる。
【0121】
上述のような配置により、同一の素線層114に、同一の組成を有する導体素線112が連続的に配置される。これにより、導体110を容易に製造することが可能となる。
【0122】
(j)本実施形態では、銅素線層の周方向において、酸化膜を有しない銅素線112aが連続して配置されている。すなわち、同一の銅素線層においては、銅素線112aが互いに導通している。この観点では、本実施形態の電力ケーブル100は、後述する他の実施形態よりも直流に適しているともいえる。
【0123】
(4)第1実施形態の変形例
上述の実施形態は、必要に応じて、以下に示す変形例のように変更することができる。以下、上述の実施形態と異なる要素についてのみ説明し、上述の実施形態で説明した要素と実質的に同一の要素には、同一の符号を付してその説明を省略する。後述の第2から第7実施形態においても、第1実施形態の変形例と同様に説明を省略する。
【0124】
以下の変形例1および2では、ケーブル接続構造が、上述の実施形態と異なっている。
【0125】
<変形例1>
図3に示すように、変形例1のケーブル接続構造20は、例えば、第1電力ケーブル100aと、第2電力ケーブル100bと、スリーブ200と、スリーブカバー290と、絶縁ユニット(ゴム接続筒、ゴムユニット、絶縁筒)300と、保護管(金属管)400と、充填材480と、を有している。
【0126】
変形例1の第1電力ケーブル100aおよび第2電力ケーブル100bは、それぞれ、上述の第1実施形態のそれらと同様に構成されている。
【0127】
スリーブ200は、上述の第1実施形態と同様に、銅素線112aがアルミニウム素線112bの酸化膜の少なくとも一部を破るように圧縮されている。スリーブ200の外周を囲むように、筒状のスリーブカバー290が設けられていてもよい。
【0128】
絶縁ユニット300は、例えば、絶縁性の筒状部材として構成され、スリーブ200の外周(スリーブカバー290の外周)と一対の電力ケーブル100のそれぞれの一部外周とを覆うように設けられている。
【0129】
絶縁ユニット300は、例えば、いわゆる常温収縮型として構成されている。すなわち、絶縁ユニット300は、一体としてモールドされた弾性材料(ゴム)を有し、常温で弾性的に収縮して電力ケーブル100の接続部分に密着するようになっている。
【0130】
絶縁ユニット300は、例えば、内部半導電層320と、絶縁層340と、ストレスコーン部360と、外部半導電層380と、を有している。
【0131】
金属製の保護管400は、絶縁ユニット300の外周と一対の電力ケーブル100のそれぞれの一部外周とを覆うように設けられ、これらを保護するよう構成されている。
【0132】
充填材480は、保護管400内において、絶縁ユニット300および保護管400の間に充填されている。充填材480としては、例えば、いわゆる防水混和物が挙げられる。
【0133】
(変形例1まとめ)
変形例1によれば、絶縁ユニット300を用いたケーブル接続構造20であっても、上述の第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0134】
<変形例2>
図4に示すように、変形例2のケーブル終端接続構造22は、例えば、電力ケーブル100を終端接続するよう構成されている。具体的には、ケーブル終端接続構造22は、例えば、電力ケーブル100と、スリーブ200と、金属条214と、絶縁ユニット300と、碍管500と、を有している。
【0135】
変形例2の電力ケーブル100は、上述の第1実施形態の電力ケーブル100と同様に構成されている。
【0136】
スリーブ200は、例えば、筒状部216と、棒状部218と、を有している。筒状部216は、電力ケーブル100の導体110の露出部が挿入され、銅素線112aがアルミニウム素線112bの酸化膜の少なくとも一部を破るように圧縮されている。棒状部218は、筒状部216の反対側に設けられている。
【0137】
絶縁ユニット300は、例えば、絶縁層340と、半導電層350と、を有している。半導電層350は、いわゆるストレスコーンを形成している。
【0138】
碍管500は、例えば、スリーブ200および絶縁ユニット300が取り付けられた電力ケーブル100が挿入されるよう筒状に構成されている。碍管500は、鉛直方向に沿って立設されている。碍管500の鉛直上端には、電力ケーブル100の先端に取り付けられたスリーブ200の棒状部218が固定されている。一方で、碍管500の鉛直下端の開口は、封止されている。この状態で、碍管500内には、絶縁油などの絶縁媒体520が充填されている。
【0139】
(変形例2まとめ)
変形例2によれば、ケーブル終端接続構造22であっても、上述の第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0140】
<本開示の第2実施形態>
次に、
図5Aおよび
図5Bを参照し、本開示の第2実施形態について説明する。
【0141】
なお、
図5A、後述の
図6A、
図7~
図10において、一部の導体素線112を省略している。各図において、記載されていないセグメント111は、記載済みのセグメント111と同様に構成されている。
【0142】
図5Aに示すように、本実施形態の導体110は、いわゆる分割導体として構成されている。導体110は、例えば、複数のセグメント111と、絶縁紙116と、を有している。
【0143】
複数のセグメント111は、導体110の中心軸の周りに設けられている。複数のセグメント111は、例えば、導体110の中心軸の周りに回転対称に配置されている。本実施形態では、セグメント111の数は、例えば、4つである。4つのセグメント111は、導体110の中心軸の周りに4回の回転対称に配置されている。
【0144】
セグメント111は、例えば、撚り合わせられた複数の導体素線112を含んでいる。セグメント111は、
図5Bの状態から
図5Aのような断面扇形に圧縮成形されている。セグメント111の圧縮成形時の圧力は、上述のケーブル接続構造20におけるスリーブ200を圧縮する圧力よりも低い。このため、導体110と他の導体110との非接続部では、セグメント111内のアルミニウム素線112bの自然酸化膜が破られていない。
【0145】
セグメント111は、例えば、複数の素線層114を有している。複数の素線層114は、例えば、セグメント111の径方向に積層されている。セグメント111の中心を除くそれぞれの素線層114において、複数の導体素線112は、例えば、内側の素線層114の外周を覆うように配置され、当該内側の素線層114の外周に沿って、螺旋状に撚り合わせて設けられている。
【0146】
複数のセグメント111のそれぞれは、導体110の最外周を構成する円弧領域(符号不図示)を有している。言い換えれば、円弧領域は、最外周の素線層114において、他のセグメント111に接していない領域に相当する。
【0147】
本実施形態では、セグメント111は、銅素線112aおよびアルミニウム素線112bの両方を含んでいる。セグメント111内において、銅素線112aの少なくとも一部と、アルミニウム素線112bの少なくとも一部とが、互いに接している。銅素線112aおよびアルミニウム素線112bは、セグメント111の少なくとも一部において、交互に配置されている。
【0148】
本実施形態では、それぞれのセグメント111において、銅素線112aおよびアルミニウム素線112bは、それぞれ、複数の素線層114のうち少なくとも2つの素線層114に設けられている。
【0149】
本実施形態では、複数のセグメント111のそれぞれの円弧領域における銅素線112aおよびアルミニウム素線112bの総本数に対する、円弧領域における銅素線112aの本数の割合は、例えば、20%以上である。これにより、スリーブ200と、セグメント111の最外周の銅素線112aとの導通を容易に確保することができる。さらに、セグメント111の最外周の銅素線112aにより、内側のアルミニウム素線112bにおけるアルミニウムの酸化膜を破ることができる。
【0150】
本実施形態では、セグメント111は、例えば、素線層114として、銅素線112aのみを含む銅素線層と、アルミニウム素線112bのみを含むアルミニウム素線層と、を有している。銅素線層およびアルミニウム素線層は、セグメント111の径方向に交互に配置されている。
【0151】
具体的には、セグメント111内において、例えば、第1素線層114a、第2素線層114b、第3素線層114c、第4素線層114d、第5素線層114eは、それぞれ、銅素線層、アルミニウム素線層、銅素線層、アルミニウム素線層、銅素線層である。すなわち、最外周の第5素線層114eにおける銅素線112aの本数の割合は、100%である。
【0152】
ただし、複数のセグメント111のそれぞれの円弧領域は、少なくとも1本のアルミニウム素線112bを有していてもよい。これにより、セグメント111の最外周において、少なくとも1本のアルミニウム素線112bにより、銅素線112a間の直接接触を抑制することができる。
【0153】
絶縁紙116は、例えば、隣り合うセグメント111の間に挟み込まれている。これにより、隣り合うセグメント111は、絶縁紙116により絶縁されている。その結果、導体110の実効表面積を大きくし、表皮効果を抑制することができる。
【0154】
導体110の断面積は、特に限定されるものではないが、例えば、1000mm2以上であり、或いは2500mm2以上である。
【0155】
(第2実施形態のまとめ)
本実施形態によれば、分割導体としての導体110のセグメント111内の少なくとも一部において、銅素線112aおよびアルミニウム素線112bを交互に配置することで、分割導体としての導体110が裸素線としての銅素線112aを含んだ状態で、導体110の断面積を大きくしたとしても、表皮効果を抑制することができる。その結果、電力ケーブル100の容量を大きくしつつ、電力ケーブル100の交流抵抗を低減することが可能となる。
【0156】
<本開示の第3実施形態>
図6Aに示すように、本実施形態の導体110は、第2実施形態と同様に、分割導体として構成され、複数のセグメント111と、絶縁紙116と、を有している。ただし、本実施形態の導体110内の配置が、第2実施形態の配置と異なっている。
【0157】
セグメント111は、
図6Bの状態から6Aのような断面扇形に圧縮成形されている。セグメント111の数は、例えば、5つである。
【0158】
本実施形態では、複数のセグメント111のそれぞれの円弧領域における銅素線112aおよびアルミニウム素線112bの総本数に対する、円弧領域における銅素線112aの本数の割合は、例えば、20%以上である。
【0159】
一方で、本実施形態では、複数のセグメント111のそれぞれの円弧領域における銅素線112aおよびアルミニウム素線112bの総本数に対する、円弧領域における銅素線112aの本数の割合は、例えば、98%以下であり、或いは80%以下であり、或いは70%以下であってもよい。これにより、導体110の最外周において、アルミニウム素線112bにより、銅素線112aが連続する本数を減らすことができ、銅素線112a間の直接接触を抑制することができる。その結果、導体110の最外周における銅素線112a間の直接接触に起因した交流抵抗の上昇を抑制することができる。
【0160】
本実施形態では、セグメント111内において、複数の銅素線112aは、互いに接しないように、まだら状に配置されている。それぞれの銅素線112aは、複数のアルミニウム素線112bによって囲まれている。
【0161】
本実施形態では、セグメント111を構成する素線層114は、例えば、少なくとも2種類に分類される。具体的には、セグメント111は、例えば、アルミニウム素線層と、複合素線層と、を有している。アルミニウム素線層は、例えば、銅素線112aを含まず、アルミニウム素線112bのみにより構成されている。一方で、複合素線層は、銅素線112aとアルミニウム素線112bとを含んでいる。複合素線層では、例えば、素線層114の周方向に隣り合うアルミニウム素線112bの間に少なくとも1本の銅素線112aが介在している。本実施形態の複合素線層では、例えば、アルミニウム素線112bと銅素線112aとが素線層114の周方向に交互に配置されている。アルミニウム素線層と複合素線層とは、セグメント111の径方向に交互に配置されている。なお、第2素線層114bがアルミニウム素線層である場合は、第1素線層114aは、1本の銅素線112aからなる銅素線層層であってもよい。
【0162】
具体的には、セグメント111内において、例えば、第1素線層114a、第2素線層114b、第3素線層114c、第4素線層114d、第5素線層114eは、それぞれ、銅素線層、アルミニウム素線層、複合素線層、アルミニウム素線層、複合素線層である。
【0163】
本実施形態では、上述の配置により、複数の銅素線112aは、互いに接しないように、まだら状に配置されている。
【0164】
(第3実施形態のまとめ)
(a)本実施形態によれば、分割導体としての導体110のセグメント111内において、複数の銅素線112aを、互いに接しないように、まだら状に配置することで、複数のアルミニウム素線112bに囲まれた各々の銅素線112aにおいて、アルミニウム素線112bの酸化膜を利用して、裸素線としての銅素線112aを閉じ込めることができる。これにより、分割導体としての導体110が裸素線としての銅素線112aを含んだ状態で、導体110の断面積を大きくしたとしても、表皮効果を安定的に抑制することができる。その結果、電力ケーブル100の容量を大きくしつつ、電力ケーブル100の交流抵抗を安定的に低減することが可能となる。
【0165】
(b)本実施形態では、分割導体としての導体110のセグメント111内において、それぞれの銅素線112aを、複数のアルミニウム素線112bによって囲むことで、圧縮されたスリーブ200内で、銅素線112aの外周全体により、複数のアルミニウム素線112bの酸化膜の少なくとも一部を破ることができる。これにより、アルミニウム素線112bの数を増やしつつ、一対の導体110の接続部における電気抵抗を低減することができる。
【0166】
<本開示の第4実施形態>
図7に示すように、本実施形態の導体110は、第3実施形態と同様に、分割導体として構成され、複数のセグメント111と、絶縁紙116と、を有している。ただし、本実施形態の導体110内の配置が、第3実施形態の配置と異なっている。
【0167】
本実施形態では、複数の銅素線112aおよび複数のアルミニウム素線112bは、まだら状に配置されている。
【0168】
具体的には、セグメント111は、例えば、銅素線112aとアルミニウム素線112bとを含む複数の複合素線層を有している。複数の複合素線層は、セグメント111の径方向に積層されている。複数の複合素線層のそれぞれにおいて、1本の銅素線112aと、1本のアルミニウム素線112bとが、当該複数の複合素線層のそれぞれの周方向に交互に配置されている。
【0169】
本実施形態では、複数のセグメント111のそれぞれの円弧領域における銅素線112aおよびアルミニウム素線112bの総本数に対する、円弧領域における銅素線112aの本数の割合は、例えば、40%以上60%以下である。
【0170】
(第4実施形態のまとめ)
(a)本実施形態によれば、複数の銅素線112aおよび複数のアルミニウム素線112bがまだら状に配置されている。複数の銅素線112aの間には、酸化膜を有するアルミニウム素線112bが介在している。複数の銅素線112aが互いに直接接触していない。これにより、交流における表皮効果を安定的に抑制することができる。
【0171】
(b)本実施形態によれば、複数の銅素線112aおよび複数のアルミニウム素線112bが導体110内に均等に分布している。言い換えれば、同一の組成を有する導体素線112が局所的に集中していない。これにより、導体110の機械的強度を均等に分布させることができる。その結果、導体110に加わる応力が局所的に集中することを抑制することができる。
【0172】
<本開示の第5実施形態>
図8に示すように、本実施形態の導体110は、第4実施形態と同様に、分割導体として構成され、複数のセグメント111と、絶縁紙116と、を有している。ただし、本実施形態の導体110内の配置が、第4実施形態の配置と異なっている。
【0173】
本実施形態では、セグメント111は、例えば、銅素線112aとアルミニウム素線112bとを含む複数の複合素線層を有している。複数の複合素線層は、セグメント111の径方向に積層されている。複数の複合素線層のそれぞれにおいて、1本の銅素線112aと、2本以上連続して設けられたアルミニウム素線112bとが、当該複数の複合素線層のそれぞれの周方向に交互に配置されている。本実施形態では、複数の複合素線層のそれぞれにおいて、アルミニウム素線112bが2本連続して設けられている。なお、セグメント111の中心に位置する第1素線層114aは、銅素線112aまたはアルミニウム素線112bのいずれかである。
【0174】
本実施形態では、複数のセグメント111のそれぞれの円弧領域における銅素線112aおよびアルミニウム素線112bの総本数に対する、円弧領域における銅素線112aの本数の割合は、例えば、30%以上40%以下である。
【0175】
(第5実施形態のまとめ)
(a)本実施形態によれば、複数の複合素線層のそれぞれにおいて、複数の銅素線112aの間には、酸化膜を有するアルミニウム素線112bが2本以上介在している。これにより、交流における表皮効果を安定的に抑制することができる。
【0176】
(b)本実施形態によれば、導体110内のアルミニウム素線112bの本数を増やすことができる。これにより、電力ケーブル100を軽量化させることができ、電力ケーブル100の製造コストを低減することができる。
【0177】
<本開示の第6実施形態>
図9に示すように、本実施形態の導体110は、第4および第5実施形態と同様に、分割導体として構成され、複数のセグメント111と、絶縁紙116と、を有している。ただし、本実施形態の導体110内の配置が、第4および第5実施形態の配置と異なっている。
【0178】
本実施形態では、複数の複合素線層のそれぞれにおいて、1本の銅素線112aと、3本以上連続して設けられたアルミニウム素線112bとが、当該複数の複合素線層のそれぞれの周方向に交互に配置されている。本実施形態では、複数の複合素線層のそれぞれにおいて、アルミニウム素線112bが4本連続して設けられている。
【0179】
なお、各素線層114の一部における一対の銅素線112aの間に介在するアルミニウム素線の本数が、最外周の第5素線層114eにおけるそれよりも少なくなっていてもよい。
【0180】
本実施形態では、複数のセグメント111のそれぞれの円弧領域における銅素線112aおよびアルミニウム素線112bの総本数に対する、円弧領域における銅素線112aの本数の割合は、例えば、20%以上30%以下である。
【0181】
本実施形態では、上述の配置により、複数の銅素線112aは、互いに接しないように、まだら状に配置されていてもよい。
【0182】
(第6実施形態のまとめ)
(a)本実施形態によれば、第5実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0183】
(b)本実施形態によれば、導体110内のアルミニウム素線112bの本数を第5実施形態におけるそれよりも増やすことができる。これにより、電力ケーブル100をさらに軽量化させることができ、電力ケーブル100の製造コストをさらに低減することができる。
【0184】
<本開示の第7実施形態>
図10に示すように、本実施形態の導体110は、第3から第6実施形態と同様に、分割導体として構成され、複数のセグメント111を有している。ただし、本実施形態の導体110内の配置が、第3から第6実施形態の配置と異なっている。さらに、本実施形態の導体110は、絶縁紙116を有していない。
【0185】
本実施形態では、複数のセグメント111のそれぞれが他のセグメント111に接する位置において、アルミニウム素線112bのみが配置されている。これにより、複数のセグメント111の間に絶縁紙116が設けられていない。
【0186】
具体的には、セグメント111は、例えば、銅素線112aとアルミニウム素線112bとを含む複合素線層を最外周の第5素線層114eとして有している。最外周の第5素線層114eが他のセグメント111に接する位置では、アルミニウム素線112bのみが連続的に配置されている。
【0187】
一方で、最外周の第5素線層114eが他のセグメント111に接しない位置では、銅素線112aとアルミニウム素線112bとの配置は、特に限定されない。本実施形態では、最外周の第5素線層114eが他のセグメント111に接しない位置では、例えば、アルミニウム素線112bと銅素線112aとが第5素線層114eの周方向に交互に配置されている。
【0188】
本実施形態においても、複数のセグメント111のそれぞれの円弧領域における銅素線112aおよびアルミニウム素線112bの総本数に対する、円弧領域における銅素線112aの本数の割合は、例えば、20%以上である。本実施形態の第5素線層114eの例では、円弧領域における銅素線112aの本数の割合は、例えば、40%以上60%以下であってもよい。
【0189】
最外周の第5素線層114eよりも内側の素線層114は、特に限定されない。本実施形態では、例えば、第1素線層114a、第2素線層114b、第3素線層114c、第4素線層114dは、それぞれ、アルミニウム素線層、銅素線層、アルミニウム素線層、銅素線層である。
【0190】
(第7実施形態のまとめ)
本実施形態によれば、複数のセグメント111のそれぞれが他のセグメント111に接する位置において、アルミニウム素線112bのみが配置されていることで、複数のセグメント111の間に絶縁紙116を設けなくても、複数のセグメント111を互いに絶縁させることができる。その結果、導体110の構成を簡略化させることが可能となる。
【0191】
(全実施形態のまとめ)
以上のように、電力ケーブル100に求められる各種特性に応じて、上述した第1から第7実施形態のいずれかを選択するか、或いは、第1から第7実施形態のうち少なくとも2つを組み合わせることが可能である。
【0192】
<本開示の他の実施形態>
以上、本開示の実施形態について具体的に説明したが、本開示は上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0193】
上述の第1実施形態および変形例1では、ケーブル接続構造20における第1導体110aおよび第2導体110bのそれぞれが、銅素線112aおよびアルミニウム素線112bの両方を含んでいる場合について説明したが、本開示はこの場合に限られない。少なくとも第1導体110aが、銅素線112aおよびアルミニウム素線112bの両方を含んでいればよい。この場合、第2導体110bは、銅素線112aのみを含んでいてもよい。
【0194】
上述の第1実施形態および変形例1では、連結電力ケーブル10が有する1つのケーブル接続構造20について説明したが、連結電力ケーブル10は複数のケーブル接続構造20を有していてもよい。
【0195】
上述の実施形態では、コンパウンドの適用について言及しなかったが、本開示におけるコンパウンドの適用は限定されない。例えば、スリーブ200の内周面と導体110の外周面との間には、金属粒子を含むコンパウンドが設けられていてもよい。これにより、電気抵抗を安定的に低減することができる。一方で、スリーブ200の内周面と導体110の外周面との間には、コンパウンドが無くてもよい。これにより、連結電力ケーブル10が高温となったとしても、コンパウンド中の樹脂成分または油成分などが気化するおそれがない。
【0196】
上述の第2から第7実施形態では、ケーブル接続構造について説明しなかったが、第2から第7実施形態の電力ケーブル100を、第1実施形態と同様のケーブル接続構造20、変形例1と同様のケーブル接続構造20、または変形例2と同様のケーブル終端接続構造22に適用することができる。
【0197】
上述の第2から第7実施形態では、導体110が複数のセグメント111を有する分割導体である場合について説明したが、断面が円形である円形導体として構成された導体110に、上述の第2から第7実施形態を適用してもよい。
【0198】
上述した全ての実施形態において、導体素線112の総本数、セグメント111の数、各素線層114中の導体素線112の本数、素線層114の数を適宜変更してもよい。
【符号の説明】
【0199】
10 連結電力ケーブル
20 ケーブル接続構造
22 ケーブル終端接続構造
100 電力ケーブル
100a 第1電力ケーブル
100b 第2電力ケーブル
110 導体
110a 第1導体
110b 第2導体
111 セグメント
112 導体素線
112a 銅素線
112b アルミニウム素線
114 素線層
114a 第1素線層
114b 第2素線層
114c 第3素線層
114d 第4素線層
114e 第5素線層
116 絶縁紙
120 内部半導電層
130 絶縁層
140 外部半導電層
150 金属遮蔽層
160 シース
170 外周構造
200 スリーブ
214 金属条
216 筒状部
218 棒状部
220 内部半導電層
230 絶縁層
240 外部半導電層
242 吸水テープ層
250 金属管
260 防食層
290 スリーブカバー
300 絶縁ユニット
320 内部半導電層
340 絶縁層
350 半導電層
360 ストレスコーン部
380 外部半導電層
400 保護管
480 充填材
500 碍管
520 絶縁媒体
【要約】
電力ケーブルは、銅または銅合金を含む銅素線と、アルミニウムまたはアルミニウム合金を含むアルミニウム素線と、を含む導体を備え、銅素線の少なくとも一部と、アルミニウム素線の少なくとも一部とは、互いに接している。