(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-28
(45)【発行日】2025-05-09
(54)【発明の名称】ワイヤレスイヤホン
(51)【国際特許分類】
H04R 1/10 20060101AFI20250430BHJP
H04R 1/40 20060101ALI20250430BHJP
H04R 3/00 20060101ALI20250430BHJP
G10K 11/178 20060101ALI20250430BHJP
H04R 1/06 20060101ALI20250430BHJP
【FI】
H04R1/10 101A
H04R1/40 320A
H04R3/00 320
G10K11/178 100
H04R1/06 310
H04R1/10 104E
(21)【出願番号】P 2022547395
(86)(22)【出願日】2021-05-19
(86)【国際出願番号】 JP2021018929
(87)【国際公開番号】W WO2022054340
(87)【国際公開日】2022-03-17
【審査請求日】2024-04-12
(31)【優先権主張番号】P 2020151488
(32)【優先日】2020-09-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000128566
【氏名又は名称】株式会社オーディオテクニカ
(74)【代理人】
【識別番号】100141173
【氏名又は名称】西村 啓一
(72)【発明者】
【氏名】田久保 陽介
【審査官】冨澤 直樹
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2019/0189144(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0245129(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0050474(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第105025418(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0231253(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0115839(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0110120(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2020/0100018(US,A1)
【文献】特表2012-524917(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0184191(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 1/10
H04R 1/40
H04R 3/00
G10K 11/178
H04R 1/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者の耳に装着されるワイヤレスイヤホンであって、
ドライバユニットと、
第1マイクロホンと、
第2マイクロホンと、
前記ドライバユニットと、前記第1マイクロホンと、前記第2マイクロホンと、を収容するハウジングと、
を有してなり、
前記ハウジングは、
前記第1マイクロホンを収容する第1収容部と、
前記第2マイクロホンを収容する第2収容部と、
前記第1収容部と前記第2収容部それぞれと接続する本体部と、
を備え、
前記第1収容部は、前記本体部から突設して、
前記耳の対輪に対向する対向面と、
前記第1マイクロホンの収音用の第1収音部と、
を備え、
前記第2収容部は、前記第1収容部の突設方向とは異なる方向に、前記本体部から突設し、
前記第1収音部は、前記対向面に配置されて、
前記第1収容部の外縁の一部は、前記ワイヤレスイヤホンの装着状態において、前記対輪に接触する、
ことを特徴とするワイヤレスイヤホン。
【請求項2】
前記ドライバユニットを収容するドライバ収容部、
を有してなり、
前記ドライバ収容部は、前記本体部から突設し、
前記第1収容部は、前記ドライバ収容部の突設方向とは異なる方向に、前記本体部から突設し、
前記第2収容部は、前記ドライバ収容部の
前記突設方向とは異なる方向で、かつ、前記第1収容部の
前記突設方向とは反対側方向に、前記本体部から突設する、
請求項1記載のワイヤレスイヤホン。
【請求項3】
前記第2収容部は、前記ワイヤレスイヤホンの装着状態において、使用者の口側に突設する、
請求項1記載のワイヤレスイヤホン。
【請求項4】
前記第1収容部は、前記ワイヤレスイヤホンの装着状態において、前記第2収容部とは反対側に突設する、
請求項1記載のワイヤレスイヤホン。
【請求項5】
前記第1収容部の内部空間は、前記本体部の内部空間を介して、前記第2収容部の内部空間に連通する、
請求項2記載のワイヤレスイヤホン。
【請求項6】
前記第2収容部は、前記第2マイクロホンの収音用の第2収音部を備え、
前記第2収音部は、前記第2収容部における、前記ワイヤレスイヤホンの装着状態において、使用者の口側に配置される、
請求項1記載のワイヤレスイヤホン。
【請求項7】
前記第1マイクロホンは、前記第2マイクロホンと共に、ビームフォーミング機能を実現する、
請求項1記載のワイヤレスイヤホン。
【請求項8】
前記ドライバユニットは、前記第1マイクロホンが収音する外部騒音をキャンセルするキャンセル音を出力する、
請求項1記載のワイヤレスイヤホン。
【請求項9】
前記第1マイクロホンは、
第1収音孔が配置される第1収音面、
を備え、
前記第2マイクロホンは、
第2収音孔が配置される第2収音面、
を備え、
前記第1収音面が向けられる方向は、前記第2収音面が向けられる方向と異なる、
請求項1記載のワイヤレスイヤホン。
【請求項10】
前記第1マイクロホンを実装する第1回路基板、
を有してなり、
前記第1マイクロホンは、
第1収音孔が配置される第1収音面、
を備え、
前記第1収容部は、
前記第1収容部の外部と内部とを連通させる第1収音部、
を備え、
前記第1回路基板は、前記第1マイクロホンと前記第1収音部との間に配置され、
前記第1マイクロホンは、前記第1回路基板に、前記第1収音面を前記第1回路基板に向けて実装される、
請求項1記載のワイヤレスイヤホン。
【請求項11】
前記第2マイクロホンを実装する第3回路基板、
を有してなり、
前記第2マイクロホンは、
第2収音孔が配置される第2収音面、
を備え、
前記第2収容部は、
前記第2収容部の外部と内部とを連通させる第2収音部、
を備え、
前記第3回路基板は、前記第2マイクロホンと前記第2収音部との間に配置され、
前記第2マイクロホンは、前記第3回路基板に、前記第2収音面を前記第3回路基板に向けて実装される、
請求項10記載のワイヤレスイヤホン。
【請求項12】
前記第1収音面が向けられる方向は、前記第2収音面が向けられる方向と異なる、
請求項11記載のワイヤレスイヤホン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤレスイヤホンに関する。
【背景技術】
【0002】
イヤホンの形式の1つとして、音源と接続するためのコードを備えないワイヤレス型のイヤホン(以下「ワイヤレスイヤホン」という。)がある。ワイヤレスイヤホンは、左右一対の放音ユニットを有してなる。ワイヤレスイヤホンは、例えば、ブルートゥース(登録商標)などの無線通信回線を介して、携帯型楽音再生機などの音源からの音声信号を受信する。ワイヤレスイヤホンには、左右の放音ユニットがケーブルで連結されたワイヤレスイヤホンと、左右の放音ユニットが完全に独立した(左右の放音ユニットがケーブルで連結されていない)、いわゆる完全ワイヤレスイヤホンと、がある。
【0003】
ワイヤレスイヤホンの中には、ハンズフリー通話機能を備えるワイヤレスイヤホンがある。
【0004】
ハンズフリー通話機能は、例えば、ワイヤレスイヤホンがスマートフォンに無線通信回線を介して接続されているとき、ワイヤレスイヤホンの使用者(以下「使用者」という。)がスマートフォンで通話をする際に、スマートフォンを手で持つことなく通話できる機能である。これにより、使用者は、スマートフォンをポケットやカバンから取り出さなくても、例えば、ワイヤレスイヤホンのボタン操作で応答できる。そのため、使用者は、両手が塞がることなく、家事や作業をしながら通話を楽しめる。
【0005】
ハンズフリー通話機能を備えるワイヤレスイヤホンは、ハウジングと、マイクロホンと、ドライバユニットと、を備える。
【0006】
ハウジングは、マイクロホンとドライバユニットとを収容する。
【0007】
マイクロホンは、音源(例えば、ハンズフリーで通話をする者(以下「送話者」という))からの音波を収音する。
【0008】
ドライバユニットは、マイクロホンが収音した音波に応じた電気信号(音声信号)を生成する。ドライバユニットが生成した音声信号は、無線通信回線を介して、スマートフォンに入力される。これにより、送話者は、ワイヤレスイヤホンを用いて、ハンズフリーで通話できる。
【0009】
ハンズフリーでの通話には、高い通話品質が求められる。高い通話品質は、ハウジングの外部の騒音(以下「外部騒音」という。)を含むことなく、送話者の音声のみを通話の相手方に届けることで実現される。高い通話品質を実現する技術の1つに、複数のマイクロホンを利用し、ビームフォーミングを応用した技術(以下「ビームフォーミング技術」という。)がある。
【0010】
ビームフォーミング技術は、特定の方向の音のみ分離と収音とをすることで不要な音の混入を避けて、必要な目的となる音(以下「目的音」という。)を得る技術である。ビームフォーミング技術には、複数(例えば、2つ)のビームフォーミング用のマイクロホンが用いられる。ビームフォーミング技術は、各マイクロホンに収音される音声により、送話者の送話音声や外部騒音がどの方向から届いているかを判定し、各マイクロホンに到達する音声の時間差を利用して、音声の信号処理によって指向性を形成し、特定の音を増幅または減衰させる。これにより、送話者の音声と、外部騒音と、のうち、不要な音である外部騒音を減衰させて、送話者の音声(以下「送話音声」という。)が増幅されて、通話の相手方に伝わる。そのため、クリアな音声通話が可能になる。その結果、ビームフォーミング技術を搭載したワイヤレスイヤホンは、ハンズフリーでの通話において、高い通話品質を備える(例えば、非特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0011】
【文献】「Soundcore Life P2」、[online]、Anker、[令和2年8月26日検索]、インターネット<https://www.ankerjapan.com/item/A3919.html>
【文献】「AirPods」、[online]、Apple、[令和2年8月26日検索]、インターネット<https://www.apple.com/jp/airpods-2nd-generation/>
【0012】
非特許文献1,2に開示されたワイヤレスイヤホン(完全ワイヤレスイヤホン)は、ハウジングと、ビームフォーミング用の2つのマイクロホン(第1マイクロホン,第2マイクロホン)と、ドライバユニットと、を有してなる。ハウジングは、本体部と、本体部から突設された突設部と、を備える。ドライバユニットは、本体部に収容される。第1マイクロホンは、本体部に収容される。第2マイクロホンは、突設部の先端側(本体部に対して反対側)に収容される。
【0013】
ここで、ビームフォーミング技術を利用して、特定の指向性が形成されるためには、マイクロホン同士の間の距離は、一定の距離を必要とする。第1マイクロホンに対して第2マイクロホンの位置を離して配置するためには、非特許文献1,2に開示されたワイヤレスイヤホンのように、突設部の長さを長くしなければならない。
【0014】
そのため、非特許文献1,2に開示されたワイヤレスイヤホンは、使用者の耳に装着された状態(以下「装着状態」という。)では、突設部の先端側が使用者の耳からはみ出てしまう。突設部が使用者の耳からはみ出ると、その重量により、装着感が悪化する。また、突設部の先端側が使用者の耳からはみ出た形状は、ワイヤレスイヤホンの意匠性を損なう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、高い通話品質を実現すると共に、装着性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明に係るワイヤレスイヤホンは、ドライバユニットと、第1マイクロホンと、第2マイクロホンと、ドライバユニットと第1マイクロホンと第2マイクロホンとを収容するハウジングと、を有してなり、ハウジングは、第1マイクロホンを収容する第1収容部と、第2マイクロホンを収容する第2収容部と、第1収容部と第2収容部それぞれと接続する本体部と、を備え、第1収容部は、本体部から突設し、第2収容部は、第1収容部の突設方向とは異なる方向に、本体部から突設することを特徴とする
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、高い通話品質を実現すると共に、装着性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明に係るワイヤレスイヤホンの実施の形態を示す正面図である。
【
図3】
図2のワイヤレスイヤホンの一部分解斜視図である。
【
図4】
図1のワイヤレスイヤホンの一部分解斜視図である。
【
図5】
図1のワイヤレスイヤホンが使用者に装着された状態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明に係るワイヤレスイヤホンは、以下の実施の形態と図面とにより説明される。
【0020】
●ワイヤレスイヤホン●
●ワイヤレスイヤホンの構成
図1は、本発明に係るワイヤレスイヤホンの実施の形態を示す正面図である。
図2は、
図1のワイヤレスイヤホンの背面図である。
【0021】
以下の説明において、ワイヤレスイヤホン1に対する前方は、ワイヤレスイヤホン1が、ワイヤレスイヤホン1の使用者(以下「使用者」という。)の耳に装着された状態(以下「装着状態」という。)における使用者の頭部側の方向(
図1の紙面奥側(
図2の紙面手前側)の方向)である。ワイヤレスイヤホン1に対する後方は、装着状態における使用者の頭部側の方向と反対側の方向(
図1の紙面手前側(
図2の紙面奥側)の方向)である。
【0022】
ワイヤレスイヤホン1は、使用者の耳に装着されて、スマートフォンやタブレット機器などの携帯機器などの音源(不図示)からの音声信号に応じた音波を出力すると共に、使用者の音声(音波)に応じた音声信号を同携帯機器へ出力する。ワイヤレスイヤホン1は、例えば、ブルートゥース(登録商標)などの無線通信回線を介して、携帯機器との間の音声信号の入出力(送受信)をする。
【0023】
ワイヤレスイヤホン1は、右放音ユニットRUと左放音ユニット(不図示)とを有してなる。ワイヤレスイヤホン1は、右放音ユニットRUと左放音ユニットとがケーブルなどにより連結されずに完全に独立した、いわゆる完全ワイヤレスイヤホンである。
【0024】
右放音ユニットRUの構成は、左放音ユニットの構成と共通する。そのため、以下の説明は、右放音ユニットRUの構成を例に説明され、左放音ユニットの構成の説明は、省略される。
【0025】
図3は、
図2のワイヤレスイヤホンの一部分解斜視図である。
図4は、
図1のワイヤレスイヤホンの一部分解斜視図である。
【0026】
【0027】
右放音ユニットRUは、使用者の右耳に装着されて、携帯機器からの音声信号に応じた音波を出力すると共に、使用者の音声(音波)に応じた音声信号を同携帯機器へ出力する。右放音ユニットRUは、ハウジング10と、音導管20と、イヤピース30と、端子群40と、ドライバユニット50と、バッテリ60と、回路基板70と、第1マイクロホン80と、第2マイクロホン90と、を有してなる。
【0028】
ハウジング10は、音導管20と、ドライバユニット50と、バッテリ60と、回路基板70と、第1マイクロホン80と、第2マイクロホン90と、を収容する。ハウジング10は、例えば、ABS(Acrylonitrile-Butadiene-Styrene)樹脂などの合成樹脂製である。ハウジング10は、バッテリ収容部11と、ドライバ収容部12と、第1収容部13と、第2収容部14と、外部連通孔15hと、を備える。
【0029】
バッテリ収容部11は、バッテリ60を収容する。バッテリ収容部11は、本発明における本体部の例である。
【0030】
ドライバ収容部12は、ドライバユニット50を収容する。ドライバ収容部12は、バッテリ収容部11の前方に配置され、バッテリ収容部11から前方に突設される。ドライバ収容部12の内部の空間(以下「内部空間」という。)は、バッテリ収容部11の内部空間に連通する。
【0031】
第1収容部13は、第1マイクロホン80を収容する。第1収容部13は、バッテリ収容部11の後方側に配置され、バッテリ収容部11から上方(
図1における紙面上方)に突設される。すなわち、第1収容部13がバッテリ収容部11から突設する方向は、ドライバ収容部12がバッテリ収容部11から突設する方向と異なる。第1収容部13の内部空間は、バッテリ収容部11の内部空間に連通する。第1収容部13は、第1収音部131を備える。第1収容部13は、第1収音部が配置される面を備える。この面は、本発明における対向面である。この面の全部または一部は、ワイヤレスイヤホン1の使用時に、使用者の耳の対輪に対向する。
【0032】
第1収音部131は、第1収容部13の外部と内部(内部空間)とを連通させる。第1収音部131は、メッシュ状である。第1収音部131は、第1収容部13におけるドライバ収容部12とは反対側(バッテリ60の後方側)に配置されると共に、第1マイクロホン80の収音面に対向して配置される。すなわち、第1収音部131は、第1マイクロホン80の収音用のメッシュ状の孔である。
【0033】
第2収容部14は、第2マイクロホン90を収容する。第2収容部14は、バッテリ収容部11の後方側に配置され、バッテリ収容部11から下方(
図1における紙面下方)に突設される。すなわち、第2収容部14がバッテリ収容部11から突設する方向は、ドライバ収容部12がバッテリ収容部11から突設する方向と、第1収容部13がバッテリ収容部11から突設する方向それぞれと異なる。第2収容部14は、略円筒状である。第2収容部14の内部空間は、バッテリ収容部11の内部空間に連通する。第2収容部14は、第2収音部141を備える。
【0034】
第2収音部141は、第2収容部14の外部と内部(内部空間)とを連通させる。第2収音部141は、メッシュ状である。第2収音部141は、第2マイクロホン90に対向して配置される。第2収音部141は、装着状態において、第1収音部131よりも使用者の口側に配置される。すなわち、第2収音部141は、第2マイクロホン90の収音用のメッシュ状の孔である。
【0035】
第1収容部13の内部空間は、バッテリ収容部11の内部空間を介して、第2収容部14の内部空間に連通する。すなわち、ドライバ収容部12の内部空間と、バッテリ収容部11の内部空間と、第1収容部13の内部空間と、第2収容部14の内部空間とは、連通する。
【0036】
外部連通孔15hは、ハウジング10の内部空間と、ハウジング10の外部の空間(以下「外部空間」という。)と、を連通させる。外部連通孔15hは、右放音ユニットRUが使用者の右耳RE(
図5参照)に装着されるとき(使用者の耳介に装着されるとき)に生じるハウジング10の内部空間の圧力の上昇を抑え、ドライバユニット50の損傷(例えば、ドライバユニット50が備える振動板(不図示)の損傷)を防止する。外部連通孔15hは、バッテリ収容部11と第1収容部13との境界近傍に配置される。
【0037】
音導管20は、ワイヤレスイヤホン1の使用時にドライバユニット50からの音波を使用者の外耳道に導く。音導管20は、略円筒状である。音導管20は、ドライバユニット50の前方に配置される。音導管20は、放音部21を備える。
【0038】
放音部21は、音導管20の先端(前方の端)を覆い、音導管20の外部と内部とを連通させる。放音部21は、メッシュ状である。放音部21は、ドライバユニット50の放音面に対向して配置される。
【0039】
イヤピース30は、装着状態において使用者の外耳道の内壁と密着する。イヤピース30は、音導管20の外周に取り付けられる。イヤピース30は、例えば、シリコンゴムなどの弾性材製である。イヤピース30は、前端側が断面視U字状に折り返された略二重筒状である。
【0040】
端子群40は、バッテリ60に充電される電力を、充電器(不図示)から受電するための端子や、バッテリ60の電力残量を示す信号を充電器側に送信するための端子などの集合である。端子群40は、第2収容部14からその一部が露出して、第2収容部14に配置される。
【0041】
ドライバユニット50は、携帯機器などの音源(不図示)からの音声信号に応じた音波を出力する。また、ドライバユニット50は、後述されるNC回路からのキャンセル信号に応じた音波(キャンセル音)を出力する。すなわち、ドライバユニット50は、音声信号に応じた音波と、キャンセル信号に応じた音波と、を出力する。ドライバユニット50は、例えば、ダイナミック型の電気音響変換器である。ドライバユニット50は、ドライバ収容部12の内部空間に配置される(ドライバ収容部12に収容される)。
【0042】
バッテリ60は、回路基板70に取り付けられた各種電子回路を駆動するための電力を、各種電子回路に供給する。バッテリ60は、例えば、ボタン型の小型電池である。バッテリ60は、バッテリ収容部11の内部空間に配置される(バッテリ収容部11に収容される)。すなわち、バッテリ60は、ドライバユニット50の後方に配置される。
【0043】
回路基板70は、ノイズキャンセル回路(以下「NC回路」という。)(不図示)などの電子回路や、第1マイクロホン80、第2マイクロホン90、端子群40を構成する各端子などが取り付けられる(実装される)基板である。回路基板70は、ハウジング10の内部空間に配置される。回路基板70は、例えば、PCB(Printed Circuit Board)である。回路基板70は、信号線SLを介して、ドライバユニット50に接続される。回路基板70は、第1回路基板71と、第2回路基板72と、第3回路基板73と、を備える。
【0044】
第1回路基板71は、NC回路などの電子回路や第1マイクロホン80を実装する。第1回路基板71は、バッテリ収容部11と第1収容部13とに跨って配置される(バッテリ収容部11と第1収容部13とに収容される)。
【0045】
NC回路は、第1マイクロホン80が収音したハウジング10の外部騒音に応じたノイズ信号に基づくキャンセル信号を生成する。NC回路が生成したキャンセル信号は、ドライバユニット50に入力される。
【0046】
第2回路基板72は、端子群40を実装する。第2回路基板72は、第1コネクタガイドCGを介して第1回路基板71に接続される。第2回路基板72は、第2収容部14の内部空間に配置される(第2収容部14に収容される)。
【0047】
第3回路基板73は、第2マイクロホン90を実装する。第3回路基板73は、第2コネクタガイド(不図示)を介して第1回路基板71に接続される。第3回路基板73は、第2収容部14の内部空間に配置される(第2収容部14に収容される)。
【0048】
第1マイクロホン80は、ノイズキャンセル機能と、第2マイクロホン90と連携して行うビームフォーミング機能と、を実現する。第1マイクロホン80は、例えば、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)マイクロホンである。第1マイクロホン80は、第1収容部13の内部空間に配置される(第1収容部13に収容される)。すなわち、第1マイクロホン80は、ドライバユニット50よりも上方に配置される。また、第1マイクロホン80は、装着状態において、第2マイクロホン90よりも使用者(送話者)の口から離れた位置に配置される。第1マイクロホン80は、第1収容部13の内部空間において、回路基板70(第1回路基板71)の前面(前方側の面)に、収音面を第1回路基板71に向けて実装される。第1マイクロホン80は、収音面に収音孔(不図示)が配置され、第1回路基板71のスルーホール(不図示)と、第1収音部131と、を介してハウジング10の外部騒音と、送話者の送話音声と、を収音する。
【0049】
第1マイクロホン80がノイズキャンセル機能を実現する際には、第1マイクロホン80は、ハウジング10の外部騒音を、第1収音部131を介して収音して、外部騒音に応じたノイズ信号を生成する。第1マイクロホン80は、信号線(不図示)を介して、回路基板70に実装されたNC回路に接続される。
【0050】
また、第1マイクロホン80が第2マイクロホン90と連携してビームフォーミング機能を実現する際には、第1マイクロホン80は、ハンズフリー通話をしている送話者の送話音声や外部騒音を収音する。前述のとおり、第1マイクロホン80は、第2マイクロホン90よりも使用者(送話者)の口から離れた位置に配置される。そのため、送話者の音声が第1マイクロホン80に到達する時間よりも、第2マイクロホン90に到達する時間の方が短い。これにより、右放音ユニットRUに対する音源の方向が特定される。第2マイクロホン90は、ハンズフリー通話用のマイクロホンとして機能する。第1マイクロホン80は、ビームフォーミング補正用のマイクロホンとして機能する。これにより、第1マイクロホン80が収音する送話音声や外部騒音は、減衰される。
【0051】
第2マイクロホン90は、第1マイクロホン80と連携してビームフォーミング機能を実現する。第2マイクロホン90は、ハンズフリー通話をしている送話者の送話音声を収音する。第2マイクロホン90は、例えば、MEMSマイクロホンである。
【0052】
第2マイクロホン90は、第2収容部14の内部空間に配置される(第2収容部14に収容される)。すなわち、第2マイクロホン90は、ドライバユニット50よりも下方に配置される。第2マイクロホン90は、装着状態において、第1マイクロホン80よりも使用者(送話者)の口の近くに配置される。
【0053】
第2マイクロホン90は、第2収容部14の内部空間において、回路基板70(第3回路基板73)に、収音面を第3回路基板73に向けて実装される。第2マイクロホン90は、収音面に収音孔(不図示)が配置され、第3回路基板73のスルーホール(不図示)と、第2収音部141と、を介して、送話者の送話音声を収音する。
【0054】
前述のとおり、第2マイクロホン90は、第1マイクロホン80よりも使用者(送話者)の口に近い位置に配置される。また、送話者の音声が第1マイクロホン80に到達する時間よりも、第2マイクロホン90に到達する時間の方が短い。これにより、前述のとおり、第2マイクロホン90がハンズフリー通話用のマイクロホンとして機能する。その結果、第2マイクロホン90が収音する送話音声は、増幅される。
【0055】
ビームフォーミング機能を実現する第1マイクロホン80と第2マイクロホン90とにより、送話者の音声と、外部騒音と、のうち、外部騒音が含まれず、送話者の音声が通話の相手方に伝わる。そのため、クリアな音声通話が可能になる。その結果、ワイヤレスイヤホン1では、ハンズフリーでの通話において、高い通話品質が実現される。
【0056】
このように、ワイヤレスイヤホン1は、「ビームフォーミング機能」と、「ノイズキャンセル機能」と、「ハンズフリー通話機能」と、を備える。
【0057】
図5は、ワイヤレスイヤホン1の装着状態を示す模式図である。
同図は、右放音ユニットRUが使用者の右耳REに装着された状態を示す。
【0058】
右放音ユニットRUは、ワイヤレスイヤホン1の使用時に、使用者の右耳REに装着される。このとき、イヤピース(
図2参照)と音導管(
図3参照)の一部とは、耳甲介腔に配置される。バッテリ収容部11から上方に突設される第1収容部13の一部(外縁の一部)は、対輪ANに接触する(対輪ANに引っ掛かる)。
【0059】
また、第1収容部13の一部が対輪ANに接触しているとき(対輪ANに引っ掛かっているとき)、第1収容部13のうち、第1マイクロホン80(
図5では不図示)が配置されている部分は、対輪ANに接触しない(対輪ANに引っ掛からない)。
【0060】
●まとめ
以上説明した実施の形態によれば、ハウジング10は、バッテリ収容部11から上方に突設される第1収容部13を備える。そのため、ワイヤレスイヤホン1の装着状態において、第1収容部13の一部は、対輪ANに接触する(対輪ANに引っ掛かる)。その結果、ワイヤレスイヤホン1は、装着状態において、安定した装着感を使用者に与える。
【0061】
また、ワイヤレスイヤホン1の装着状態において、第1収容部13の一部が対輪ANに接触した(対輪ANに引っ掛かった)状態であっても、第1収容部13のうち、第1マイクロホン80が配置されている部分は、対輪ANに接触しない(対輪ANに引っ掛からない)。そのため、第1マイクロホン80は、外部騒音などの収音の影響を受けない。
【0062】
また、以上説明した実施の形態によれば、第1マイクロホン80はバッテリ収容部11から上方に突設される第1収容部13の内部に収容され、第2マイクロホン90は、バッテリ収容部11から下方に突設される第2収容部14の内部に収容される。このため、第1マイクロホン80と第2マイクロホン90との間の距離は、ビームフォーミングに必要な距離(例えば、20mm以上)を確保できる。そのため、ワイヤレスイヤホン1は、ビームフォーミング機能が損なわれることなく、ビームフォーミング機能を実行できる。その結果、ワイヤレスイヤホン1は、ハンズフリー通話の高い通話品質を実現できる。
【0063】
しかも、第1マイクロホン80がバッテリ収容部11から突設された位置に配置されるので、非特許文献1,2に開示されたワイヤレスイヤホン(以下「従来ワイヤレスイヤホン」という。)のように、第2収容部14の長さを必要以上に長くしなくてよい。その結果、ワイヤレスイヤホン1は、従来ワイヤレスイヤホンに比べて、第2収容部(従来ワイヤレスイヤホンの突設部)の長さを短くできる。つまり、ワイヤレスイヤホン1の装着状態において、使用者の耳からはみ出る第2収容部14の突設量は減少する。そのため、ワイヤレスイヤホン1は、安定した装着感を使用者に与える。
【0064】
なお、前述のとおり、ワイヤレスイヤホン1の左放音ユニットの構成は、右放音ユニットRUの構成と共通する。すなわち、左放音ユニットは、ハウジングと、音導管と、イヤピースと、端子群と、ドライバユニットと、バッテリと、回路基板と、第1マイクロホンと、第2マイクロホンと、を有してなる。
【0065】
説明は省略されたが、右放音ユニットと左放音ユニットとは、いわゆる「リレー伝送方式」で構成されていてもよく、いわゆる「左右独立受信方式」で構成されていてもよい。
すなわち、例えば、右放音ユニットと左放音ユニットとが「リレー伝送方式」で構成されている場合は、左放音ユニットは、右放音ユニットからの音声信号を受信して、左放音ユニットのドライバユニットは、その音声信号にも基づく音波を出力する。また、右放音ユニットと左放音ユニットとが「左右独立受信方式」で構成されている場合は、左放音ユニットは、前述の右放音ユニットの構成および動作と同じである。
【0066】
また、説明は省略されたが、右放音ユニットと左放音ユニットとが使用者の耳に装着されている場合、右放音ユニットの第1マイクロホンのみが、送話者の送話音声を収音する。すなわち、左放音ユニットのマイクロホンは、送話者の送話音声を収音しないように制御される。
【0067】
なお、送話者の送話音声を収音する第1マイクロホンは、左放音ユニットの第1マイクロホンでもよい。すなわち、例えば、左放音ユニットの第1マイクロホンのみが、送話者の送話音声を収音して、右放音ユニットのマイクロホンは送話者の送話音声を収音しないように制御される。
【0068】
また、送話者の送話音声を収音する第1マイクロホンの動作は、右放音ユニットのバッテリの電力残量と、左放音ユニットのバッテリの電力残量と、によって、決められてもよい。すなわち、例えば、右放音ユニットのバッテリの電力残量が多いとき、右放音ユニットの第1マイクロホンが送話者の送話音声を収音して、左放音ユニットのマイクロホンは送話者の送話音声を収音しないように制御される。
【符号の説明】
【0069】
1 ワイヤレスイヤホン
10 ハウジング
11 バッテリ収容部
12 ドライバ収容部
13 第1収容部
131 第1収音部
14 第2収容部
141 第2収音部
15h 外部連通孔
20 音導管
21 放音部
30 イヤピース
40 端子群
50 ドライバユニット
60 バッテリ
70 回路基板
71 第1回路基板
72 第2回路基板
73 第3回路基板
80 第1マイクロホン
90 第2マイクロホン
RU 右放音ユニット
CG 第1コネクタガイド
RE 右耳
AN 対輪