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特許7674037クロマチックエマルジョン性状を有する紫外線遮断用化粧料組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-28
(45)【発行日】2025-05-09
(54)【発明の名称】クロマチックエマルジョン性状を有する紫外線遮断用化粧料組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/894 20060101AFI20250430BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20250430BHJP
   A61K 8/40 20060101ALI20250430BHJP
   A61K 8/41 20060101ALI20250430BHJP
   A61K 8/49 20060101ALI20250430BHJP
   A61Q 17/04 20060101ALI20250430BHJP
   A61K 8/37 20060101ALI20250430BHJP
   A61K 8/368 20060101ALI20250430BHJP
【FI】
A61K8/894
A61K8/34
A61K8/40
A61K8/41
A61K8/49
A61Q17/04
A61K8/37
A61K8/368
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2022511082
(86)(22)【出願日】2020-08-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-04
(86)【国際出願番号】 KR2020011100
(87)【国際公開番号】W WO2021034121
(87)【国際公開日】2021-02-25
【審査請求日】2023-08-16
(31)【優先権主張番号】10-2019-0101464
(32)【優先日】2019-08-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】514112488
【氏名又は名称】エルジー・エイチアンドエイチ・カンパニー・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100154922
【弁理士】
【氏名又は名称】崔 允辰
(74)【代理人】
【識別番号】100195796
【弁理士】
【氏名又は名称】塩尻 一尋
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】スン・ジン・ソン
【審査官】井上 恵理
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2019-0062947(KR,A)
【文献】特開2018-009020(JP,A)
【文献】特開2012-211114(JP,A)
【文献】特開2013-184944(JP,A)
【文献】特表2016-523983(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0113798(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
全体組成物100重量部を基準として、有機紫外線遮断剤10~40重量部と、ポリエチレングリコールが付加されたジメチコンとポリプロピレングリコールが架橋されているシリコン系界面活性剤10重量部未満、及び0.1~10重量部の非イオン系界面活性剤と、を含む油相部と、水相部と、を含む紫外線遮断用化粧料組成物であって、
前記非イオン系界面活性剤が、ラウリルPEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコンを含み、
前記紫外線遮断用化粧料組成物は、平均粒径10μm以下の複合シリコーン粒子、疎水化処理無機粉体、及び有機変性合成フッ素マイカを含まず、
前記紫外線遮断用化粧料組成物は、油相部と水相部の屈折率差が0.009以下である紫外線遮断用化粧料組成物。
【請求項2】
前記有機紫外線遮断剤は、エチルヘキシルメトキシンナメート、イソアミルP-メトキシシンナメート、エチルヘキシルサリチレート、オクトクリレン、ポリシリコーン-15、ホモサレート、フェニルベンズイミダゾールスルホン酸、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン、ブチルメトキシジベンゾイルメタン、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイルへキシルベンゾアート、エチルヘキシルトリアゾン、4-メチルベンジリデンカンファー、ベンゾフェノン-3、ジエチルヘキシルブタミドトリアゾンおよびジソジウムフェニルジベンズイミダゾールテトラスルホネートからなる群から選ばれた一つ以上である、請求項1に記載の紫外線遮断用化粧料組成物。
【請求項3】
前記シリコン系界面活性剤が、1~30モルのポリエチレングリコールが付加されたジメチコンと1~30モルのポリプロピレングリコールが架橋されているシリコン系界面活性剤である、請求項1に記載の紫外線遮断用化粧料組成物。
【請求項4】
前記水相部が、ポリオールをさらに含む、請求項1に記載の紫外線遮断用化粧料組成物。
【請求項5】
前記化粧料組成物が、油中水型(W/O)剤形である、請求項1に記載の紫外線遮断用化粧料組成物。
【請求項6】
前記化粧料組成物が、構造色を発現するものである、請求項1に記載の紫外線遮断用化粧料組成物。
【請求項7】
全体組成物100重量部を基準として、有機紫外線遮断剤10~40重量部と、ポリエチレングリコールが付加されたジメチコンとポリプロピレングリコールが架橋されているシリコン系界面活性剤10重量部未満と、0.1~10重量部の非イオン系界面活性剤を混合して、油相部を製造する段階を含み、
前記非イオン系界面活性剤が、ラウリルPEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコンを含む、紫外線遮断用化粧料組成物の製造方法であって、
前記紫外線遮断用化粧料組成物が、平均粒径10μm以下の複合シリコーン粒子、疎水化処理無機粉体、及び有機変性合成フッ素マイカを含まない、方法
【請求項8】
前記製造方法が、前記油相部に水相部を添加して乳化させる段階をさらに含む、請求項7に記載の紫外線遮断用化粧料組成物の製造方法。
【請求項9】
前記シリコン系界面活性剤が、1~30モルのポリエチレングリコールが付加されたジメチコンと1~30モルのポリプロピレングリコールが架橋されているシリコン系界面活性剤である、請求項7に記載の紫外線遮断用化粧料組成物の製造方法。
【請求項10】
前記水相部が、ポリオールをさらに含む、請求項8に記載の紫外線遮断用化粧料組成物の製造方法。
【請求項11】
前記化粧料組成物が、油中水型(W/O)剤形である、請求項7に記載の紫外線遮断用化粧料組成物の製造方法。
【請求項12】
前記化粧料組成物が、構造色を発現するものである、請求項7に記載の紫外線遮断用化粧料組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造色(structural color)が発現する安定したクロマチックエマルジョン性状の紫外線遮断用化粧料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽光から照射される紫外線は、皮膚に紅斑、浮腫、そばかすまたは皮膚がんを起こす主要な原因となっており、これによって、最近、紫外線に起因した様々な皮膚疾患に対する多くの研究が活発に行われている。
【0003】
一般的に、紫外線は、その波長によってUV-A、UV-BおよびUV-Cに分けられ、320~400nmの波長がUV-A、280~320nmの波長がUV-B、また、200~280nmの波長がUV-Cに分類される。UV-Aは、皮膚の真皮まで浸透して皮膚がんを誘発し、シワとメラニン形成を促進することによって皮膚老化および皮膚刺激を誘発することが知られており、UV-Bは、皮膚の表皮まで浸透して紅斑、そばかすまたは浮腫を誘発することが知られている。UV-Cは、オゾン層を通過して地表面に到達せずに消失される。
【0004】
上記のような日光露出に関連した皮膚疾患を予防または改善するために、紫外線遮断製品に対する消費者の関心が増加している。その結果、多様な種類の紫外線遮断指数(SPF)を有する紫外線遮断製品が発売されている状態である。一般的に、紫外線遮断製品は、高いSPF値を示すために、チタニウムジオキサイドまたはジンクオキサイドのような無機紫外線遮断剤、または、エチルヘキシルメトキシンナメート、エチルヘキシルサリチレート、オクトクリレン、エチルヘキシルトリアゾン、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジンまたはジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシルのような有機紫外線遮断剤を含んでいる。
【0005】
しかしながら、紫外線遮断製品に使用される有機紫外線遮断剤の大部分は、屈折率の高い油溶性成分であり、無機紫外線遮断剤は、不透明なパウダー成分であるから、一般的な紫外線遮断製品(日焼け止めクリーム)は、不透明なエマルジョン外観を示す。
【0006】
なお、クロマチックエマルジョン(chromatic emulsion)は、組成物の水相部と油相部の屈折率を調整して、透明ながらも水相部と油相部の光の分散能の差異によって構造色(structural color)を発現するエマルジョンを意味する(J.Am.Chem.Soc.,Chromatic Emulsion、1922,44(1),pp71-74)。従来、クロマチックエマルジョンを用いた化粧品の研究が多数試みられたが、生活紫外線を遮断できる安定したクロマチックエマルジョン性状を有する紫外線遮断用化粧料組成物を製造するための画期的な突破口は現在まで開発されていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者らは、従来の不透明な外観の紫外線遮断用化粧料組成物に比べて透明ながらも構造色(structural color)が発現する安定したクロマチックエマルジョン性状の紫外線遮断用化粧料組成物を開発するために研究した結果、化粧料組成物に有機紫外線遮断剤とともに特定成分を除いたシリコーン系界面活性剤を特定の含有量で添加する場合、剤形安定性に優れながらも、クロマチックエマルジョン性状を示すことを確認し、本発明を完成するに至った。
【0008】
したがって、本発明の目的は、有機紫外線遮断剤、PEG-15/ラウリルジメチコンクロスポリマーを除いたシリコーン系界面活性剤を特定の含有量の範囲で含むことによって、白濁現象を示さず、安定し、かつ、構造色が発現するクロマチックエマルジョン性状を示す化粧料組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための手段として、本発明は、
有機紫外線遮断剤と、シリコーン系界面活性剤と、を含む紫外線遮断用化粧料組成物を提供する。
【0010】
また、本発明は、有機紫外線遮断剤とシリコーン系界面活性剤とを混合する段階を含む紫外線遮断用化粧料組成物の製造方法を提供する。
【0011】
以下、本発明の構成を詳細に説明する。
【0012】
本発明は、
全体組成物の重量を基準として、
有機紫外線遮断剤10~40重量部と、ポリエチレングリコールが付加されたジメチコンとポリプロピレングリコールが架橋されているシリコーン系界面活性剤1~10重量部と、を含む油相部と、水相部と、を含む紫外線遮断用化粧料組成物を提供する。
【0013】
本発明において、前記有機紫外線遮断剤は、エチルヘキシルメトキシンナメート、イソアミルP-メトキシシンナメート、エチルヘキシルサリチレート、オクトクリレン、ポリシリコーン-15、ホモサレート、フェニルベンズイミダゾールスルホン酸、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン、ブチルメトキシジベンゾイルメタン、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイルへキシルベンゾアート、エチルヘキシルトリアゾン、4-メチルベンジリデンカンファー、ベンゾフェノン-3、ジエチルヘキシルブタミドトリアゾンおよびジソジウムフェニルジベンズイミダゾールテトラスルホネートからなる群から選ばれたものであってもよいが、これらに制限されるものではない。前記有機紫外線遮断剤は、従来紫外線遮断のために使用されてきた有機物質を制限なしで全部適用することができる。
【0014】
本発明において、有機紫外線遮断剤は、全体化粧料組成物の重量を基準として10~40重量部で含まれる場合、優れた紫外線遮断効果および使用感を提供することができる。前記組成物が有機紫外線遮断剤を10重量部未満で含むと、十分な紫外線遮断効果を示すことができず、40重量部を超過すると、皮膚刺激または油っぽい使用感のような問題が発生することがある。例えば、前記有機紫外線遮断剤は、全体組成物の重量に対して10~35重量部、10~30重量部、10~25重量部、10~20重量部、15重量部~35重量部、15重量部~30重量部、15重量部~25重量部、15重量部~20重量部、20~35重量部、20~30重量部、25~35重量部、25~30重量部で含まれ得る。
【0015】
本発明において、前記シリコーン系界面活性剤としては、PEG-15/ラウリルジメチコンクロスポリマーを除外することを特徴とし、1~30モルのポリエチレングリコール(PEG)が付加されたジメチコンと1~30モルのポリプロピレングリコール(PPG)が架橋されているシリコーン系界面活性剤でありうる。
【0016】
一具体例において、前記シリコーン系界面活性剤は、PEG-12ジメチコン/PPG-20クロスポリマーであってもよいが、これに制限されるものではない。
【0017】
下記実施例では、シリコーン系界面活性剤としてPEG-15/ラウリルジメチコンクロスポリマーを使用した化粧料組成物(比較例2)が、高温(50℃)の条件では層分離のように剤形安定性が劣ることを確認した。
【0018】
本発明において、前記シリコーン系界面活性剤は、全体組成物の重量部を基準として1~10重量部、例えば1~8重量部、1~6.5重量部、1~5重量部、3~10重量部、3~8重量部、3~5重量部、4~10重量部、4~8重量部、4~6.5重量部、4.5~6.3重量部で含まれ得る。本発明において、シリコーン系界面活性剤の含有量が前記範囲を外れる場合、油相部の屈折率に影響を与えて、剤形の透明度に問題が発生することがある。
【0019】
本発明において、前記化粧料組成物は、非イオン系界面活性剤をさらに含んでもよい。前記非イオン系界面活性剤は、ポリエーテル変性シリコン、ポリグリセリン変性シリコン、グリセリル脂肪酸エステル、ポリグリセリル脂肪酸エステル、ポリエーテル脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステルおよびショ糖脂肪酸エステルからなる群から選ばれたものであってもよい。より具体的には、ラウリルPEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン、ポリグリセリル-6ポリリシノレイン酸、ソルビタンセスキオレエート、ソルビタンイソステアレート、PEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン、PEG-10ジメチコンまたはセチルPEG/PPG-10/1ジメチコンであつてもよいが、これらに制限されるものではない。
【0020】
一具体例において、前記非イオン系界面活性剤は、ポリエーテル変性シリコン、例えばラウリルPEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコンでありうる。
【0021】
本発明において、前記紫外線遮断用化粧料組成物が、ポリエチレングリコールが付加されたジメチコンとポリプロピレングリコールが架橋されているシリコーン系界面活性剤と前記非イオン系界面活性剤を含むと、前記シリコーン系界面活性剤と非イオン系界面活性剤の組み合わせ使用によって相溶性に優れ、透明な剤形を示しながらも、構造色を発現することができる。
【0022】
本発明において、前記非イオン系界面活性剤は、全体組成物の重量部を基準として0.1~10重量部、例えば0.5~5重量部、1~3重量部、0.1~5重量部、0.1~3重量部で含まれ得る。
【0023】
本発明による組成物は、前記有機紫外線遮断剤およびシリコーン系界面活性剤を含む油相部を含む。本発明において、前記油相部は、非イオン系界面活性剤、オイルまたはワックスをさらに含んでもよい。前記オイルおよびワックスは、当該技術分野において化粧品の成分として通常使用されるものを全部適用することができる。例えば、前記オイルとしては、シリコーン系オイル、エステル系オイル、トリグリセリド系オイル、炭化水素系オイルまたは植物性オイルを使用することができ、必要に応じてこれらの成分を一つ以上配合して使用することができる。
【0024】
例えば、前記シリコーン系オイルとしては、シリコーン系流動性オイルまたはオイルに分散しているシリコーン系クロスポリマーなどを使用することができる。例えば、シリコーン系流動性オイルとしては、シクロペンタシロキサン、シクロヘキサシロキサン、シクロヘプタシロキサン、シクロメチコン、シクロフェニルメチコン、シクロテトラシロキサン、シクロトリシロキサン、ジメチコン、カプリルジメチコン、カプリリルトリメチコン、カプリリルメチコン、セテアリルメチコン、ヘキサデシルメチコン、ヘキシルメチコン、ラウリルメチコン、ミリスチルメチコン、フェニルメチコン、ステアリルメチコン、ステアリルジメチコン、トリフルオロプロピルメチコン、セチルジメチコン、ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、メチルトリメチコンまたはフェニルトリメチコンなどを使用することができる。前記シリコーン系オイル成分は、単独または2種類以上のオイルを混用して使用することができる。
【0025】
エステル類オイルとしては、ジカプリリルカーボネート、アスコビルパルミテート、アスコビルリノレート、アスコビルステアレート、ジイソステアリルマレート、ベンジルベンゾアート、ベンジルラウレート、ブチレングリコールジカプリレート/ジカプレート、ブチレングリコールジイソノナノエート、ブチレングリコールラウレート、ブチレングリコールステアレート、ブチルイソステアレート、セテアリールイソノナノエート、セテアリールノナノエート、セチルカプリレート、セチルエチルヘキサノアート、セチルアイソノナノエート、エチルヘキシルカプリレート/カプレート、エチルヘキシルイソノナノエート、エチルヘキシルイソステアレート、エチルヘキシルラウレート、ヘキシルラウレート、オクチルドデシルイソステアレート、イソプロピルイソステアレート、イソステアリルイソノナノエート、イソステアリライソステアレート、イソセチルエチルヘキサノアート、ネオペンチルグリコールジカプレート、ネオペンチルグリコールジエチルヘキサノエート、ネオペンチルグリコールジイソノナノエート、ネオペンチルグリコールジイソステアレート、ペンタエリスリチルステアレート、ペンタエリスリチルテトラエチルヘキサノアート、ジペンタエリスチルヘキサアシッドエステル、ポリグリセリル-2ジイソステアレート、ポリグリセリル-2セスキイソステアレート、ポリグリセリル-2イソステアレート、ポリグリセリル-2テトライソステアレート、ポリグリセリル-2トリイソステアレート、ポリグリセリル-3ジイソステアレート、ポリグリセリル-3イソステアレート、ポリグリセリル-4ジイソステアレート、ポリグリセリル-4イソステアレート、ポリグリセリル-6ジイソステアレート、ポリグリセリル-6セスキイソステアレートまたはトリエチルヘキサノインなどを使用することができる。
【0026】
トリグリセリド系オイルとしては、C8-C12アシッドトリグリセリド、C12-C18アシッドトリグリセリド、カプリリック/カプリク/トリグリセリド、カプリリック/カプリク/ラウリックトリグリセリド、C10-C40イソアルキルアシッドトリグリセリド、C10-C18トリグリセリド、グリセリルトリアセチルヒドロステアレート、ソイビーングリセリド、トリベヘニン、トリカプリン、トリエチルヘキサノイン、トリヘプタノイン、トリイソステアリン、トリパルミチンまたはトリステアリンを使用することができる。
【0027】
炭化水素系オイルとしては、流動パラフィン(リキッドパラフィン、ミネラルオイル)、パラフィン、ワセリン、マイクロクリスタリンワックスまたはスクアレンなどを使用することができる。
【0028】
植物性オイルとしては、アボカドオイル、小麦胚芽オイル、ローズヒップオイル、シアバター、アーモンドオイル、オリーブオイル、マカダミアオイル、アルガンオイル、メドウフォームオイル、ひまわりオイル、ひまし油、椿オイル、とうもろこしオイル、紅花オイル、大豆オイル、菜の花オイル、マカダミアノッツオイル、ホホバオイル、パームオイル、パーム核オイルまたはココナッツオイルを使用することができる。
【0029】
前記ワックスとしては、一般的に化粧料に使用される炭化水素系ワックス、植物性ワックスまたはシリコーンワックスなどのすべてのワックスを使用することができる。例えば、キャンデリラワックス、カルナウバワックス、ライスワックス、ビーズワックス、ラノリン、オゾケライト、セレシンワックス、パラフィンワックス、マイクロ結晶体ワックス、C30-C45アルキルジメチルシリルポリプロピルシルセスキオキサン、エチレン/プロピレンコポリマーまたはポリエチレンワックスを含んでもよいが、これらに制限されるものではない。
【0030】
前記油相部は、その含有量が特に制限されるものではなく、水相部との屈折率差を調節するために、その含有量を調節することができる。
【0031】
一具体例において、前記オイルまたはワックスの含有量は、全体組成物の重量を基準として、10~55重量部、例えば15~50重量部、20~45重量部、25~40重量部、29~36重量部で含まれ得る。本発明において、組成物が前記のような範囲でオイルを含む場合、相対的にべたつきが激しいポリオールの含有量を減少させることができて、優れた使用感を有する化粧料組成物を提供することができる。
【0032】
また、本発明の組成物において、水相部は、精製水を含むことを意味し、前記水相部は、ポリオールをさらに含んでもよい。前記ポリオールは、グリセリン、1,3-ブチレングリコール、ジプロピレングリコールおよびプロピレングリコールからなる群から選ばれたものであってもよいが、水相部の屈折率を高めるために使用される成分であれば、制限なしで使用することができる。
【0033】
一般的に、水相部は、油相部に比べて屈折率が低いので、水相部と油相部の屈折率差を減らすことが容易ではない。本発明による化粧料組成物は、油相部と水相部の屈折率差が0.009以下でありうる。本発明の化粧料組成物は、前記のような低い屈折率差を有することによって、透明ながらも構造色が発現するクロマチックエマルジョン性状を示すことができる。前記油相部と水相部の屈折率差が0.009を超過すると、剤形安定性が低下する問題点が発生することがある。
【0034】
一具体例において、前記油相部と水相部の屈折率差が0.005未満でありうる。
【0035】
本発明において、「クロマチックエマルジョン(chromatic emulsion)」性状とは、色素として顔料および染料を使用せずに、見る角度と光源によって構造色を発現する性状を意味し、「構造色(structural color)」とは、粒子がプリズムのように作用して光が分散、屈折、干渉して現れる色を意味する。
【0036】
本発明の化粧料組成物は、通常の化粧品に使用可能なすべての種類の添加剤をさらに含んでもよい。前記添加剤は、天然添加剤または合成添加剤両方を含んでもよい。
【0037】
前記天然添加剤は、有機農原料、植物および植物由来原料、動物および動物由来原料、ミネラルおよびミネラル由来原料および水などの成分を意味する。一例として、保湿剤、紫外線遮断剤、中和剤、香料、防腐剤、酸化防止剤、増粘剤、粘度調節剤、被膜形成剤および色素からなる群から選ばれた一つ以上の添加剤でありうる。
【0038】
前記天然添加剤は、組成物全体100重量部を基準として、0.01~3重量部、例えば0.05~2重量部、0.1~1重量部で含まれ得る。
【0039】
本発明において、前記天然添加剤は、天然物または自然物から収得したり、天然物または自然物由来の成分を簡単に改質させたり、自然由来の成分のうち合成された成分を含む意味であり、自然由来の成分でなく、人工的な方法で合成された合成成分を排除する意味である。
【0040】
前記天然原料は、一例として、国家で定める有機農基準および親環境認証等級またはこれに準ずることが可能な天然由来等級の化粧品原料を意味するものであってもよい。
【0041】
前記親環境認証基準というのは、合成工程を排除し、親環境的に栽培および加工された成分で構成された組成物であって、代表的な親環境認証としては、フランスエコサート(ecocert)、ヨーロッパのコスモス(Cosmos)、米国のUSDA(US Department of Agreculture)、ドイツのBDIH(Association of German Industries and Trading Firms)および日本のJAS(Japanese Association of Standard)などがあり、最近の親環境製品を好む消費者ニーズに符合して、各国では成分または製品に対して安全性を認証する親環境認証制度を多様に展開している。各国ごとに細部的な数値および範囲など部分的に相異性を示しているが、原料および成分の1次的な構成物に対しては、大きな枠組みでは親環境認証の範疇に対してグローバル統一性を示している。自然に由来する天然成分に対しては、親環境有機農成分の範疇に含まれ、その他の半加工された成分類に対しては、PPAI(Physically Processed Agro Ingredient)およびCPAI(Chemically Processed Agro Ingredient)に区分して、これら規格に符合する原料のみに対してエコサート、コスモスまたはUSDAなどの認証を付与している。
【0042】
本発明において国家で定める有機農および親環境認証原料および成分というのは、国家で定める有機農基準および親環境認証基準に準ずるまたは準ずることが可能な成分のみで構成されて、国家で定める有機農および親環境等級を充足できる化粧料原料および組成物を指す。例えば、中国政府で定める基準または中国で認定される有機農および親環境認証基準に準ずるまたは準ずることが可能な成分のみで構成されたことを意味する。
【0043】
本発明において、前記合成添加剤は、天然由来でなく、化学的に合成過程を経た原料を意味する。
【0044】
本発明による化粧料組成物に含まれる上記した成分それぞれは、好ましくは、中国政府で定める「化粧品安全・技術規範」に規定された最大使用量を超過しない範囲内で本発明の化粧料組成物に含まれ得る。
【0045】
本発明による化粧料組成物は、当該技術分野において通常製造されるいかなる剤形にも製造することができる。例えば、前記化粧料組成物は、柔軟化粧水または栄養化粧水などのような化粧水、スプレータイプの化粧水、フェイシャルローション、ボディローションなどのような乳液、栄養クリーム、水分クリーム、アイクリームなどのようなクリーム、スティック、エッセンス、化粧軟膏、スプレー、ゲル、パック、サンスクリーン、メイクアップベース、液体タイプまたはスプレータイプなどのファンデーション、パウダー、クレンジングローション、クレンジングオイルのようなメイクアップ除去剤、クレンジングフォーム、ソープ、ボディウォッシュなどのような洗浄剤などの剤形を有することができるが、これらに制限されるものではない。
【0046】
一具体例において、前記化粧料組成物の剤形は、油中水型(W/O)剤形でありうる。
【0047】
一具体例において、前記化粧料組成物は、透明または半透明の性状でありうる。
【0048】
本発明の化粧料組成物は、通常の使用方法によって使用することができ、ユーザの皮膚状態または好みによってその使用回数を異ならせることができる。
【0049】
また、本発明は、化粧品製造のための化粧料組成物の用途に関するものであってもよい。本発明の化粧品製造のための化粧料組成物は、上記した化粧料に対する記載をそのまま準用することができる。
【0050】
前記化粧品は、一般化粧品、天然化粧品、低刺激性化粧品または有機農化粧品でありうる。
【0051】
また、本発明の化粧料組成物の製造方法は、有機紫外線遮断剤と、ポリエチレングリコールが付加されたジメチコンとポリプロピレングリコールが架橋されているシリコーン系界面活性剤と、を混合して、油相部を製造する段階を含む。
【0052】
前記製造方法において、全体組成物100重量部を基準として、有機紫外線遮断剤が10~40重量部であり、ポリエチレングリコールが付加されたジメチコンとポリプロピレングリコールが架橋されているシリコーン系界面活性剤が10重量部未満でありうる。
【0053】
また、前記製造方法は、前記油相部に水相部を添加して乳化させる段階をさらに含んでもよい。
【0054】
また、前記製造方法は、前記油相部に非イオン系界面活性剤をさらに含む段階を含んでもよい。
【0055】
前記有機紫外線遮断剤、ポリエチレングリコールが付加されたジメチコンとポリプロピレングリコールが架橋されているシリコーン系界面活性剤、および化粧料組成物は、上に記した化粧料に対する記載をそのまま準用することができる。
【0056】
本発明のメリットおよび特徴、そしてそれらを達成する方法は、詳細に後述されている実験例および製造例を参照すると明確になる。しかしながら、本発明は、以下に開示される実験例および製造例に限定されるものではなく、互いに異なる多様な形態で具現され、単に本発明の開示が完全にし、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者に発明の範疇を完全に知らせるために提供されるものである。
【発明の効果】
【0057】
本発明は、高含有量の有機紫外線遮断剤と、ポリエチレングリコールが付加されたジメチコンとポリプロピレングリコールが架橋されているシリコーン系界面活性剤と、を含む、クロマチックエマルジョン性状の紫外線遮断用化粧料組成物に関し、本発明による化粧料組成物は、高含有量の有機紫外線遮断剤を含有するとしても、安定したクロマチックエマルジョン性状を示すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
図1】本発明による実施例1~3の紫外線遮断用化粧料組成物である。
図2】本発明による比較例1および2の紫外線遮断用化粧料組成物である。
【発明を実施するための形態】
【0059】
以下、本発明を下記実施例によって詳細に説明する。ただし、下記実施例は、本発明を例示するものに過ぎず、本発明の内容が下記実施例に限定されるものではない。
【0060】
<実施例1~3.化粧料組成物の製造>
下記の表1に記載された組成によって実施例1~3の化粧料組成物を製造した。まず、Part Aの各原料を撹拌しつつ、70~90℃に加熱して完全に溶解させた。溶解した溶液を45℃まで冷却させた後、Part AをPart Bに投入して撹拌しつつ混合した。別に撹拌したPart Cをあらかじめ製造したPart AとPart Bの混合物に撹拌しつつ、ゆっくり投入して、均一に混ぜて乳化した。乳化の終了後、30℃まで冷却し、脱泡を経て、化粧料組成物を製造した。
【0061】
【表1】
【0062】
<比較例1および2.化粧料組成物の製造>
下記表2に記載された組成によって実施例1~3と同じ方法で化粧料組成物を製造した。
【0063】
【表2】
【0064】
<実験例1.水相部と油相部の屈折率の測定>
前記実施例1~3および比較例1および2で製造した化粧料組成物の水相部と油相部の屈折率は、25℃で水相部と油相部を積置して、Abbe refractometer(KRUSS Optronic,Germany)装備を利用して測定した(表3)。この際、実施例1の化粧料組成物に対しては、水相部と油相部の屈折率を10回測定して、屈折率差を確認した(表4)。
【0065】
【表3】
【0066】
【表4】
【0067】
油相部と水相部の屈折率差を減らすためには、まず、油相部の屈折率を測定した後、グリセリンと精製水の重量部を調節して屈折率差を減らすことができる。また、実施例1に対して水相部と油相部の屈折率を10回測定した結果(表4)、同じ内容物に対しても最大0.0025の測定誤差が発生することができるという点を確認することができる。
【0068】
<実験例2.硬度、紫外線遮断指数(SPF)およびUVA遮断指数(UVAPF)の測定>
前記実施例1~3および比較例1および2で製造した化粧料組成物の硬度、紫外線遮断指数(SPF(Sun Protection Factor))およびUVA遮断指数(UVAPF(UVA Protection Factor))を測定した。この際、組成物の硬度は、Rheotech社製Fudoh Rheometer RTC-3005Dモデルでアダプター#9を用いて作動速度2cm/minで試料2.5cmの深さまで測定し、SPFとUVAPFは、BASF Sunscreen Simulatorを使用してそれぞれのSPFおよびUVAPF値を評価し、表5に示した。
【0069】
【表5】
【0070】
表5から明らかなように、実施例1~3では、有機紫外線遮断剤の種類および含有量によって多様なSPFおよびUVAPF値が現れることが分かった。
【0071】
<実験例3.剤形安定性の確認>
組成物の剤形安定性は、それぞれ異なる温度条件(0℃、25℃および50℃)で4週間組成物を保管した後、組成物を目視で観察して、層分離の有無を通じて剤形安定性を確認した。
【0072】
[評価基準]
安定:層分離が現れない
分離:層分離が現れる
【0073】
【表6】
【0074】
保管温度による剤形安定性を確認した結果、実施例1~3の化粧料組成物は、0℃~50℃の温度条件で4週間安定性を維持し、比較例2の組成物は、0℃、25℃、50℃の温度条件で全部層分離が現れたことが分かる。
【0075】
<実験例4.透明度および色発現の評価>
前記実施例1~3および比較例1および2で製造した化粧料組成物に対して目視で透明度と色発現強度を判定し、表7、図1および図2に示した。この際、前記化粧料組成物の透明度と構造色発現強度は、組成物を25℃で120分間保管しつつ、男性5人、女性5人のパネルにより目視で判定して評価した。
【0076】
[透明度の評価基準]
◎:非常に透明
○:透明
△:半透明
×:不透明
【0077】
[色発現強度の評価基準]
◎:非常に強い
○:強い
△:弱い
×:なし
【0078】
【表7】
【0079】
表7に示されたように、実施例1~3の化粧料組成物は、透明な剤形を示し、比較例1の化粧料組成物は、半透明な剤形を示した。これは、比較例1において水相部と油相部の屈折率差が0.0095と示されて、実施例1~3より水相部と油相部の屈折率差が大きいためであると判断した。
図1
図2