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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-28
(45)【発行日】2025-05-09
(54)【発明の名称】アビラテロン酢酸エステル含有製剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/58 20060101AFI20250430BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20250430BHJP
   A61K 9/36 20060101ALI20250430BHJP
   A61K 47/20 20060101ALI20250430BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20250430BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20250430BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20250430BHJP
   A61K 47/58 20170101ALI20250430BHJP
   A61P 5/28 20060101ALI20250430BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20250430BHJP
【FI】
A61K31/58
A61K9/20
A61K9/36
A61K47/20
A61K47/26
A61K47/36
A61K47/38
A61K47/58
A61P5/28
A61P35/00
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020134684
(22)【出願日】2020-08-07
(65)【公開番号】P2021024865
(43)【公開日】2021-02-22
【審査請求日】2023-07-03
(31)【優先権主張番号】62/883,960
(32)【優先日】2019-08-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】000209049
【氏名又は名称】沢井製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】弁理士法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】東山 陽一
(72)【発明者】
【氏名】田中 昭太
【審査官】星 浩臣
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第103446069(CN,A)
【文献】国際公開第2019/208725(WO,A1)
【文献】特開2011-063611(JP,A)
【文献】特開2011-157348(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第106913539(CN,A)
【文献】特開昭53-115811(JP,A)
【文献】“デンプングリコール酸ナトリウムの熱分解特性”,衛生化学,1998年,44 巻 3 号,p.204-213,DOI:10.1248/jhs1956.44.204
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/58
A61K 9/20
A61K 9/36
A61K 47/20
A61K 47/26
A61K 47/36
A61K 47/38
A61K 47/58
A61P 5/28
A61P 35/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒子径(D 50 )が2.2μm以上のマイクロメートルサイズのアビラテロン酢酸エステルと、乳糖水和物と、結晶セルロースと、ポリビニルピロリドンと、ラウリル硫酸ナトリウムと、デンプングリコール酸ナトリウムと、を含む粒子を含む、アビラテロン酢酸エステル含有製剤であって、
前記アビラテロン酢酸エステル含有製剤全重量に対して50重量%以上のアビラテロン酢酸エステルと、前記アビラテロン酢酸エステル含有製剤全重量に対して2重量%以上のデンプングリコール酸ナトリウムと、を含むアビラテロン酢酸エステル含有製剤。
【請求項2】
前記粒子の外部に軽質無水ケイ酸を含む請求項1に記載のアビラテロン酢酸エステル含有製剤。
【請求項3】
前記製剤全重量に対して、デンプングリコール酸ナトリウムを5重量%以上含む請求項1に記載のアビラテロン酢酸エステル含有製剤。
【請求項4】
クロスカルメロースナトリウムをさらに含み、
デンプングリコール酸ナトリウム:クロスカルメロースナトリウムの重量比が1:1.35~1:3.6の範囲である請求項1乃至3の何れか一に記載のアビラテロン酢酸エステル含有製剤。
【請求項5】
前記アビラテロン酢酸エステル含有製剤全重量に対して5重量%以上のラウリル硫酸ナトリウムを含む請求項1乃至3の何れか一に記載のアビラテロン酢酸エステル含有製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アビラテロン酢酸エステル含有製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
アビラテロン((3β)-17-(ピリジン-3-イル)アンドロスタ-5,16-ジエン-3-オール)は、17α-hydroxylase/C17,20-lyase(CYP17)を不可逆的かつ選択的に阻害し、精巣、副腎および前立腺腫瘍組織におけるアンドロゲンの合成を阻害する。アビラテロンのプロドラッグであるアビラテロン酢酸エステル(17-(Pyridin-3-yl)androsta-5,16-dien-3β-yl acetate)は、去勢抵抗性前立腺癌および内分泌療法未治療のハイリスクの予後因子を有する前立腺癌の治療薬として用いられている。
【0003】
アビラテロン酢酸エステルは難水溶性の薬剤であるため、経口での吸収速度が遅いことが知られている。アビラテロン酢酸エステルの溶解速度を上昇させるために、粒径を小さくすることにより表面積を増加させる方法が提案されている(特許文献1)。
【0004】
また、特許文献2には、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)を用いた湿式粉砕法によりアビラテロン酢酸エステルを分散させる方法が提案されている。
【0005】
アビラテロン酢酸エステルの溶出率を向上させる別の方法として、例えば、崩壊剤の添加量を増やすことが考えられるが、崩壊剤の添加量が増すと、アビラテロン酢酸エステル含有製剤の大きさ(重量)が大きくなり、患者にとって服用しにくいという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特表2016-514707号公報
【文献】国際公報第2019/208725号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、速やかな崩壊性と、優れた溶出性を備えたアビラテロン酢酸エステル含有製剤を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施形態によると、アビラテロン酢酸エステルと、製剤全重量に対して2重量%以上のデンプングリコール酸ナトリウムと、を含むアビラテロン酢酸エステル含有製剤が提供される。
【0009】
前記製剤全重量に対して、デンプングリコール酸ナトリウムを5重量%以上含んでもよい。
【0010】
クロスカルメロースナトリウムをさらに含んでもよい。
【0011】
製剤全重量に対して、アビラテロン酢酸エステルを50重量%以上含んでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施例1及び比較例1~3のアビラテロン酢酸エステル含有製剤の溶出性の評価結果を示す図である。
図2】実施例1のアビラテロン酢酸エステル含有製剤及びプラセボ錠の崩壊性の評価結果を示す図である。
図3】比較例1のアビラテロン酢酸エステル含有製剤及びプラセボ錠の崩壊性の評価結果を示す図である。
図4】比較例2のアビラテロン酢酸エステル含有製剤及びプラセボ錠の崩壊性の評価結果を示す図である。
図5】比較例3のアビラテロン酢酸エステル含有製剤及びプラセボ錠の崩壊性の評価結果を示す図である。
図6】実施例2~6及び比較例4のアビラテロン酢酸エステル含有製剤の溶出性の評価結果を示す図である。
図7】実施例3~6のアビラテロン酢酸エステル含有製剤の溶出性の評価結果を示す図である。
図8】実施例5及び7のアビラテロン酢酸エステル含有製剤の溶出性の評価結果を示す図である。
図9】実施例8~10のアビラテロン酢酸エステル含有製剤の溶出性の評価結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明に係るアビラテロン酢酸エステル含有製剤について説明する。なお、本発明のアビラテロン酢酸エステル含有製剤は、以下に示す実施の形態及び実施例の記載内容に限定して解釈されるものではない。なお、本実施の形態及び後述する実施例で参照する図面において、同一部分又は同様な機能を有する部分には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0014】
本発明者らが検討した結果、アビラテロン酢酸エステルと特定の崩壊剤の組合せが、アビラテロン酢酸エステルの溶出率を著しく向上させることが明らかとなった。このため、本願出願時に日本国内で市販されているアビラテロン酢酸エステル含有製剤よりも崩壊剤の添加量を大幅に低減し、アビラテロン酢酸エステル含有製剤の大きさ(重量)を小さくすることが可能であることが明らかとなった。
【0015】
[アビラテロン酢酸エステル含有製剤]
本発明の一実施形態に係るアビラテロン酢酸エステル含有製剤は、製剤全重量に対して2重量%以上のデンプングリコール酸ナトリウムを含む。または、製剤全重量に対して、デンプングリコール酸ナトリウムを5重量%以上含んでもよい。一実施形態において、アビラテロン酢酸エステル含有製剤は、250mgのアビラテロン酢酸エステルを1錠あたりに含むが、これに限定されず、医薬的な効果が得られる範囲で任意に変更可能である。一実施形態において、アビラテロン酢酸エステル含有製剤は、アビラテロン酢酸エステルを含む素錠の表面にコーティング層を有するフィルムコーティング錠であってもよい。本発明の一実施形態に係るアビラテロン酢酸エステル含有製剤は、アビラテロン酢酸エステル含有粒子と、粒子の外部に医薬的に許容される1つ以上の添加剤を含む。
【0016】
一実施形態において、アビラテロン酢酸エステル含有製剤は、製剤全重量に対して50重量%以上、好ましくは、60重量%以上のアビラテロン酢酸エステルを含有する。このため、本発明に係るアビラテロン酢酸エステル含有製剤は、従来の製剤に比して、服用性が大幅に向上する。
【0017】
[アビラテロン酢酸エステル含有粒子]
本発明の一実施形態に係るアビラテロン酢酸エステル含有粒子は、アビラテロン酢酸エステルと、デンプングリコール酸ナトリウムと、賦形剤と、結合剤と、界面活性剤と、滑沢剤と、を含む。一実施形態において、クロスカルメロースナトリウムをさらに含むことが好ましい。また、一実施形態において、アビラテロン酢酸エステルと、デンプングリコール酸ナトリウムと、クロスカルメロースナトリウムと、賦形剤と、結合剤と、界面活性剤と、滑沢剤と、からなるアビラテロン酢酸エステル含有粒子であってもよい。
【0018】
アビラテロン酢酸エステル含有粒子が含む賦形剤としては、グルコース、乳糖、スクロース、マルトース、トレハロース、デキストリン、シクロデキストリン、マンニトール、エリスリトール、イソマルト、ラクチトール、マルチトール、ソルビトール、キシリトール、イノシトール、トウモロコシデンプン、結晶セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロース、軽質無水ケイ酸・結晶セルロース、無水リン酸カルシウム、軽質無水ケイ酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、乳酸カルシウム、軽質無水ケイ酸、含水二酸化ケイ素、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、無水ケイ酸、等から選択される1つ以上の賦形剤を例示することができるが、これらに限定されるものではない。一実施形態において、乳糖水和物、結晶セルロース、軽質無水ケイ酸を好適に用いることができる。
【0019】
アビラテロン酢酸エステル含有粒子が含む結合剤としては、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルセルロース、軽質無水ケイ酸含有ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロース、ポリビニルアルコール等から選択される1つ以上の結合剤を例示することができるが、これらに限定されるものではない。一実施形態において、ポリビニルピロリドンを好適に用いることができる。
【0020】
アビラテロン酢酸エステル含有粒子が含む界面活性剤としては、ポリオキシエチレン硬化ひまし油40、ポリオキシエチレン硬化ひまし油50、ポリオキシエチレン硬化ひまし油60、ポリソルベート80、ポリソルベート65、ポリソルベート40、ポリソルベート20、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、モノステアリン酸ポリエチレングリコール、ラウロマクロゴールBL-9、ラウロマクロゴールBL-25、ポロキサマー188、ポロキサマー407、ポリオキシエチレンヒドロキシステアレート、ラウリル硫酸ナトリウム、デオキシコール酸ナトリウムから選択される1つ以上の界面活性剤を例示することができるが、これらに限定されるものではない。一実施形態において、ラウリル硫酸ナトリウムを好適に用いることができる。
【0021】
アビラテロン酢酸エステル含有粒子が含む滑沢剤としては、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、タルク、マクロゴール、ショ糖脂肪酸エステル等を例示することができるが、これらに限定されるものではない。一実施形態において、ステアリン酸マグネシウムを好適に用いることができる。
【0022】
[医薬的に許容される添加剤]
アビラテロン酢酸エステル含有粒子の外部に含むことができる医薬的に許容される添加剤としては、賦形剤、滑沢剤、着色剤、等を例示することができる。これらの添加剤の1つ以上を、アビラテロン酢酸エステル含有粒子とともに打錠することにより、本発明に係るアビラテロン酢酸エステル含有製剤を構成することができる。
【0023】
賦形剤としては、上述した賦形剤から1つ以上を選択することができる。一実施形態において、ヒプロメロースを好適に用いることができる。
【0024】
滑沢剤としては、上述した滑沢剤から1つ以上を選択することができる。一実施形態において、タルク、マクロゴールを好適に用いることができる。
【0025】
着色剤としては、食用黄色5号色素、食用赤色2号色素、食用青色2号色素、食用レーキ色素、黄色三二酸化鉄、酸化チタン等の可食着色剤を例示することができるが、これらに限定されるものではない。
【0026】
一実施形態において、アビラテロン酢酸エステル含有製剤全重量に対して、デンプングリコール酸ナトリウムを2重量%以上含むことができる。アビラテロン酢酸エステル含有製剤全重量に対して、デンプングリコール酸ナトリウムを5重量%以上含むことが好ましい。
【0027】
一実施形態において、アビラテロン酢酸エステル含有製剤全重量に対して、クロスカルメロースナトリウムを1重量%以上20重量%以下含むことができる。
【0028】
一実施形態において、アビラテロン酢酸エステル含有製剤全重量に対して、賦形剤を1重量%以上80重量%以下含むことができる。
【0029】
一実施形態において、アビラテロン酢酸エステル含有製剤全重量に対して、結合剤を0.1重量%以上20重量%以下含むことができる。
【0030】
一実施形態において、アビラテロン酢酸エステル含有製剤全重量に対して、界面活性剤を1重量%以上20重量%以下含むことができる。また、界面活性剤としてラウリル硫酸ナトリウムを選択した場合、製剤全重量に対して5重量%以上含有することが好ましい。
【0031】
一実施形態において、アビラテロン酢酸エステル含有製剤全重量に対して、崩壊剤を1重量%以上40重量%以下含むことができる。
【0032】
一実施形態において、アビラテロン酢酸エステル含有製剤全重量に対して、滑沢剤を0.1重量%以上5重量%以下含むことができる。
【0033】
一実施形態において、アビラテロン酢酸エステル含有製剤全重量に対して、着色剤を0.01重量%以上5重量%以下含むことができる。
【0034】
一実施形態において、本発明に係るアビラテロン酢酸エステル粒子は、マイクロメートルスケールの粒子であってもよい。特許文献1及び特許文献2においては、アビラテロン酢酸エステルの溶解速度を上昇させるために、アビラテロン酢酸エステルの粒子径をナノメートルサイズとしていたが、本発明に係るアビラテロン酢酸エステル含有製剤では、マイクロメートルサイズのアビラテロン酢酸エステルにおいても、アビラテロン酢酸エステルの溶出性を向上させることが可能である。マイクロメートルサイズのアビラテロン酢酸エステルは、ナノメートルサイズのアビラテロン酢酸エステルと比較して、製造時のハンドリング性を向上させることができる。
【0035】
[アビラテロン酢酸エステル含有製剤の製造方法]
一実施形態において、本発明に係るアビラテロン酢酸エステル含有製剤は、公知の製造方法により製造することができる。一実施形態において、アビラテロン酢酸エステルと、デンプングリコール酸ナトリウムと、賦形剤と、結合剤と、界面活性剤とを造粒液を用いた湿式造粒法により造粒する。造粒液としては、例えば、精製水を用いることができるが、結合剤を精製水に溶解した造粒液を用いて造粒してもよい。得られた造粒物を整粒して、本発明に係るアビラテロン酢酸エステル含有粒子を得ることができる。得られたアビラテロン酢酸エステル含有粒子と滑沢剤等の医薬的に許容される1つ以上の添加剤とを混合した後、打錠して錠剤としてもよい。また、得られた錠剤にフィルムコーティングを施し、フィルムコーティング錠を製造してもよい。一実施形態において、湿式造粒法として、例えば、撹拌造粒法により造粒物を得てもよい。
【実施例
【0036】
アビラテロン酢酸エステルと崩壊剤の組合せについて検討した。
【0037】
[実施例1]
実施例1においては、デンプングリコール酸ナトリウム(DEF Pharma、Primojel(登録商標))を崩壊剤として選択した。アビラテロン酢酸エステル、乳糖水和物(DEF Pharma、Pharmatose(登録商標)200M)、デンプングリコール酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン(第一工業製薬株式会社、アイフタクトK30PH)、ラウリル硫酸ナトリウム(花王株式会社、エマールOS)を混合し、造粒溶媒として精製水を使用して、乳鉢を用いて造粒した。造粒物を乾燥機で乾燥後、篩を用いて整粒した。整粒末と、結晶セルロース(旭化成株式会社、CEOLUS(登録商標)PH-102)、軽質無水ケイ酸(フロイント産業株式会社、アドソリダー101)及びステアリン酸マグネシウム(太平化学産業株式会社)を混合し、打錠機で打錠した。錠剤中の各添加剤の含有量を表1に示す。
【0038】
[比較例1]
比較例1においては、クロスカルメロースナトリウム(FMC Health and Nutrition、Ac-Di-Sol(登録商標))を崩壊剤として選択したこと以外は、実施例1と同様の製造方法により、錠剤を得た。錠剤中の各添加剤の含有量を表1に示す。
【0039】
[比較例2]
比較例2においては、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(信越化学工業株式会社、L-HPC(登録商標)LH-21)を崩壊剤として選択したこと以外は、実施例1と同様の製造方法により、錠剤を得た。錠剤中の各添加剤の含有量を表1に示す。
【0040】
[比較例3]
比較例3においては、クロスポビドン(BASFジャパン、Kollidon(登録商標)CL-F)を崩壊剤として選択したこと以外は、実施例1と同様の製造方法により、錠剤を得た。錠剤中の各添加剤の含有量を表1に示す。
【0041】
【表1】
【0042】
[溶出性の評価]
実施例1及び比較例1~3のアビラテロン酢酸エステル含有製剤について、第十七改正日本薬局方の溶出試験法、パドル法に準じて、溶出性を評価した。試験液として、0.5%ポリソルベート80を含有する溶出試験第一液(pH1.2)用いた。パドルの回転速度は、50rpmとした。
【0043】
実施例1及び比較例1~3のアビラテロン酢酸エステル含有製剤の溶出性の評価結果を図1に示す。図1の結果からデンプングリコール酸ナトリウムを含む実施例1のアビラテロン酢酸エステル含有製剤は、優れた溶出性を示すことが明らかとなった。
【0044】
[崩壊性の評価]
実施例1及び比較例1~3のアビラテロン酢酸エステル含有製剤について、第十七改正日本薬局方の崩壊試験法に準じて、崩壊性を評価した。崩壊試験液として、0.5%ポリソルベート80を含有する崩壊試験第1液(pH1.2)を900mL用いた。また、実施例1及び比較例1~3のアビラテロン酢酸エステル含有製剤について、アビラテロン酢酸エステルを全て乳糖水和物に置き換えた(乳糖水和物の総量284.0g)プラセボ錠を製造し、同様に崩壊性を評価した。
【0045】
図2に実施例1のアビラテロン酢酸エステル含有製剤及びプラセボ錠の評価結果を示す。図3に比較例1のアビラテロン酢酸エステル含有製剤及びプラセボ錠の評価結果を示す。図4に比較例2のアビラテロン酢酸エステル含有製剤及びプラセボ錠の評価結果を示す。図5に比較例3のアビラテロン酢酸エステル含有製剤及びプラセボ錠の評価結果を示す。図2図5の結果から、実施例1のアビラテロン酢酸エステル含有製剤は崩壊試験開始10分後には完全に崩壊したが、比較例1~3のアビラテロン酢酸エステル含有製剤は崩壊試験開始10分後の時点で完全には崩壊していなかった。したがって、デンプングリコール酸ナトリウムは、アビラテロン酢酸エステル含有製剤に対して、特異的に速やかな崩壊性を付与することが明らかとなった。
【0046】
[デンプングリコール酸ナトリウムの含有量の検討]
実施例1のアビラテロン酢酸エステル含有製剤について、デンプングリコール酸ナトリウムと乳糖水和物の含有量を変更した素錠を用いて、実施例2~6及び比較例4のアビラテロン酢酸エステル含有フィルムコーティング錠を製造した。具体的には、試験例1で説明した製造方法により、実施例2~6及び比較例4の素錠を製造し、ヒプロメロース(信越化学工業株式会社、TC-5(登録商標)M)、マクロゴール6000、酸化チタン(東邦チタニウム株式会社、NA-61)、タルク(富士タルク株式会社)、三二酸化鉄、黄色三二酸化鉄を溶媒に溶解もしくは分散させたフィルムコーティング液を調整し、実施例2~7の素錠にコーティングした。錠剤中の各添加剤の含有量を表2に示す。
【0047】
【表2】
【0048】
[溶出性の評価]
上述した溶出試験法に基づき、実施例2~6及び比較例4のアビラテロン酢酸エステル含有フィルムコーティング錠の溶出性を評価した。評価結果を図6に示す。デンプングリコール酸ナトリウムを2重量%以上含む実施例2~6のアビラテロン酢酸エステル含有フィルムコーティング錠は、デンプングリコール酸ナトリウムを1.2重量%含む比較例4のアビラテロン酢酸エステル含有フィルムコーティング錠よりも速やかな溶出性が得られることが明らかとなった。また、実施例2~4のアビラテロン酢酸エステル含有フィルムコーティング錠の結果より、デンプングリコール酸ナトリウムを5重量%以上含むことにより、優れた溶出性が得られることが明らかとなった。
【0049】
[保存時の溶出性の検討]
実施例3~6のアビラテロン酢酸エステル含有フィルムコーティング錠を60℃、60%RHで2週間保存した。上述した実施例3~6のアビラテロン酢酸エステル含有フィルムコーティング錠の溶出性の評価方法と同様の方法により、保存後の実施例3~6のアビラテロン酢酸エステル含有フィルムコーティング錠の溶出性を評価した。
【0050】
溶出性の評価結果を図7に示す。また、図6に示した製造直後(Initial)の実施例3~6のアビラテロン酢酸エステル含有フィルムコーティング錠の溶出性の評価結果を再掲する。図7の結果より、何れの実施例においても、保存後のアビラテロン酢酸エステル含有フィルムコーティング錠におけるアビラテロン酢酸エステルの溶出遅延が生じることが明らかとなった。
【0051】
[実施例7]
実施例7においては、クロスカルメロースナトリウム(DuPont Nutrition & Biosciences、Ac-Di-Sol(登録商標))をさらに添加し、乳糖、結晶セルロースの含有量を表3に示したように変更したこと以外は、実施例5と同様の製造方法により、錠剤を得た。錠剤中の各添加剤の含有量を表3に示す。
【0052】
【表3】
【0053】
実施例5及び7のアビラテロン酢酸エステル含有フィルムコーティング錠を40℃、75%RHで3ヶ月間保存した。上述した実施例5のアビラテロン酢酸エステル含有フィルムコーティング錠の溶出性の評価方法と同様の方法により、製造直後の実施例7のアビラテロン酢酸エステル含有フィルムコーティング錠、保存後の実施例5及び7のアビラテロン酢酸エステル含有フィルムコーティング錠の溶出性を評価した。
【0054】
溶出性の評価結果を図8に示す。また、図6に示した製造直後の実施例5のアビラテロン酢酸エステル含有フィルムコーティング錠の溶出性の評価結果を再掲する。図8の結果より、デンプングリコール酸ナトリウムとクロスカルメロースナトリウムを併用した実施例7のアビラテロン酢酸エステル含有フィルムコーティング錠おいては、保存後のアビラテロン酢酸エステルの溶出遅延が改善されることが明らかとなった。
【0055】
なお、デンプングリコール酸ナトリウムとクロスカルメロースナトリウムの含有比を変更したアビラテロン酢酸エステル含有フィルムコーティング錠について溶出率を評価したが、デンプングリコール酸ナトリウム:クロスカルメロースナトリウムの重量比が、1:1.35~1:3.6の範囲では、溶出遅延の改善効果に顕著な差異は認められなかった。
【0056】
[ラウリル硫酸ナトリウムの含有量の検討]
実施例8として、アビラテロン酢酸エステル、乳糖水和物(DEF Pharma、Pharmatose(登録商標)200M)、デンプングリコール酸ナトリウム(DEF Pharma、Primojel(登録商標))、クロスカルメロースナトリウム(DuPont Nutrition & Biosciences、Ac-Di-Sol(登録商標))、ポリビニルピロリドン(第一工業製薬株式会社、アイフタクトK30PH)、ラウリル硫酸ナトリウム(花王株式会社、エマールOS)を混合し、造粒溶媒として精製水を使用して、乳鉢を用いて造粒した。造粒物を乾燥機で乾燥後、篩を用いて整粒した。整粒末と、結晶セルロース(旭化成株式会社、CEOLUS(登録商標)PH-102)、軽質無水ケイ酸(フロイント産業株式会社、アドソリダー101)及びステアリン酸マグネシウム(太平化学産業株式会社)を混合し、打錠機で打錠した。錠剤中の各添加剤の含有量を表4に示す。また、ラウリル硫酸ナトリウム及び乳糖水和物の含有量を表4のように変更して、実施例8と同様の製造方法により、実施例9及び10のアビラテロン酢酸エステル含有製剤を製造した。
【0057】
【表4】
【0058】
[溶出性の評価]
実施例8~10のアビラテロン酢酸エステル含有製剤について、第十七改正日本薬局方の溶出試験法、パドル法に準じて、溶出性を評価した。試験液として、溶出試験第一液(pH1.2)を200ml用いた。パドルの回転速度は、150rpmとした。
【0059】
実施例8~10のアビラテロン酢酸エステル含有製剤の溶出性の評価結果を図9に示す。図9の結果から、アビラテロン酢酸エステル含有製剤においては、ラウリル硫酸ナトリウムの含有量に依存して、溶出性が向上することが明らかとなった。実施例9の結果より、製剤全重量に対して5重量%以上のラウリル硫酸ナトリウムを含有することにより、溶出性が向上することが明らかとなった。
【0060】
なお、各実施例及び比較例に用いたアビラテロン酢酸エステルの粒子径を、Mastersizer3000(Malvern社製)を用いて測定した。実施例1~6及び比較例1~4に用いたアビラテロン酢酸エステルの粒子径は、D50=2.2μmであり、D90=5.5μmであった。また、実施例7に用いたアビラテロン酢酸エステルの粒子径は、D50=3.9μmであり、D90=8.3μmであった。実施例8~10に用いたアビラテロン酢酸エステルの粒子径は、D50=3.5μmであり、D90=8.0μmであった。特許文献1及び特許文献2においては、アビラテロン酢酸エステルの溶解速度を上昇させるために、アビラテロン酢酸エステルの粒子径をナノメートルサイズとしていたが、本発明に係るアビラテロン酢酸エステル含有製剤では、マイクロメートルサイズのアビラテロン酢酸エステルにおいても、アビラテロン酢酸エステルの溶出性を向上可能であることが示された。
【0061】
また、上記の実施例から明らかなように、本発明に係るアビラテロン酢酸エステル含有製剤は、製剤全重量に対して60重量%以上のアビラテロン酢酸エステルを含有することができる。このため、製剤が小型化され、服用性を向上することができる。本発明に係るアビラテロン酢酸エステル含有製剤においては、アビラテロン酢酸エステルの溶出性と服用性を同時に向上させることができることが明らかとなった。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9