(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-28
(45)【発行日】2025-05-09
(54)【発明の名称】要介助者サポートシステム、及び、要介助者サポート方法
(51)【国際特許分類】
H04N 7/18 20060101AFI20250430BHJP
【FI】
H04N7/18 D
(21)【出願番号】P 2021136755
(22)【出願日】2021-08-25
【審査請求日】2023-09-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000001122
【氏名又は名称】株式会社国際電気
(74)【代理人】
【識別番号】110000062
【氏名又は名称】弁理士法人第一国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小野 泰貴
【審査官】西島 篤宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-181344(JP,A)
【文献】特開2006-090006(JP,A)
【文献】特開2006-054591(JP,A)
【文献】特開平11-164034(JP,A)
【文献】特開2006-235865(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
映像から識別標識を読み取る識別標識読み取り装置と、利用者
である要介助者の登録情報が保存された利用者情報データベースと、前記映像を録画する録画装置と、制御装置とを備え、
前記登録情報には、利用者
である要介助者の属性情報と介助を円滑に行う上で役立つ介助関連情報を少なくとも含み、
前記制御装置は、前記識別標識読み取り装置が識別標識を読み取った結果である識別標識情報と前記利用者情報データベースに登録された登録情報を照合し、照合がとれた登録情報を前記録画装置に録画された記録映像と共にモニターに送信する、要介助者サポートシステム。
【請求項2】
前記識別標識は、携帯製品に表示される識別標識である、請求項1に記載の要介助者サポートシステム。
【請求項3】
前記携帯製品に表示される前記識別標識は、スマートフォンに表示されるQRコードである、請求項2に記載の要介助者サポートシステム。
【請求項4】
撮像装置と、前記モニターとをさらに備え、
前記撮像装置は前記識別標識および前記映像を撮影し、
前記モニターは前記照合がとれた登録情報と前記記録映像を映し出す、請求項1~3のいずれか一項に記載の要介助者サポートシステム。
【請求項5】
(1)識別標識読み取り装置が識別標識を読み取って、読み取りタグ情報を得るステップと、
(2)録画装置が映像を録画するステップと、
(3)前記読み取りタグ情報と利用者情報データベースを照合するステップと、
(4)照合がとれた場合、前記録画装置に録画された記録映像と利用者の登録情報を共にモニターに表示し、照合がとれない場合には終了するよう判定するステップと、
(5)前記記録映像と前記利用者の登録情報を共にモニターに表示するステップと、
(6)介助作業の完了指令がされた場合は終了し、完了指令がない場合は、前記記録映像と前記利用者の登録情報のモニターへの表示が維持されるよう判定するステップと、
を有する、要介助者サポート方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、要介助者サポートシステム、及び、そのシステムを使用した要介助者サポート方法に関する。
【背景技術】
【0002】
駅では、障がい者や老人などが、プラットフォーム、改札口、階段、エスカレータ、エレベータなどを移動する際に介助を受けるニーズがあり、ときに安全確保の上で介助が必要なケースもある。
【0003】
また移動時の物理的サポートの他にも、電車の行き先、乗り換え先、出口、または時刻表などの情報が必要な際に、障がい者や老人などは、自分で調べるのは困難で駅員の介助を必要とする場合が想定される。
【0004】
このような介助ニーズを駅員が常にタイムリーに把握して対応できるとは限らないのが現状である。そこで、例えば特許文献1では、駅構内に監視カメラを設置し、カメラの映像で白杖の動きなど利用者の挙動を画像処理して、介助の必要性の有無を判定するシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら特許文献1では、障がい者の白杖を画像検出し、さらに一定時間内の白杖の挙動を画像解析する必要があり、画像処理の精度により、誤検知や誤判定といったエラーが生ずる可能性があった。
【0007】
そこで、本発明では、駅員などの介助者が要介助者の介助ニーズを把握する際のエラーを低減し、介助サービスの質を向上するシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、代表的な本発明の要介助者サポートシステムの一つは、映像から識別標識を読み取る識別標識読み取り装置と、利用者の登録情報が保存された利用者情報データベースと、前記映像を録画する録画装置と、制御装置とを備え、前記制御装置は、前記識別標識読み取り装置が識別標識を読み取った結果である識別標識情報と前記利用者情報データベースに登録された登録情報を照合し、照合がとれた登録情報と前記録画装置に録画された記録映像を送信するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、駅員などの介助者が要介助者の介助ニーズを把握する際のエラーを低減し、介助サービスの質を向上させることができる。
上記した以外の課題、構成および効果は、以下の実施をするための形態における説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本実施形態に係るシステム系統図である。
【
図2】
図2は、データ管理サーバー100の構成を説明した図である。
【
図3】
図3は、本実施形態における要介助者サポート方法をステップで表した図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。なお、この実施形態により本発明が限定されるものではない。また、図面の記載において、同一部分には同一の符号を付して示している。
【0012】
本開示において、本発明に係るシステムを使ったサービスの利用者は特に限定されるものではないが、白杖や車椅子を使う障がい者や老人など、日常的に介助を必要とする者(以下、「要介助者」という。)を想定している。
【0013】
図1は、本実施形態に係るシステム系統図である。駅構内などに設置された撮像装置101は利用者が携帯製品102に表示される識別標識103をかざすとそれを撮影する。撮像装置101とデータ管理サーバー100は有線または無線の通信ネットワークで結ばれており、撮影された映像はデータ管理サーバー100に送信されその後の処理が行われる。データ管理サーバー100と駅の事務室104も有線または無線の通信ネットワークで結ばれており、処理された情報は事務室104に設置された操作端末105とモニター106に送信される。
データ管理サーバー100は、1か所に設置する集中型でもよく、または各駅毎に置かれたサーバーがネットワークでつながっているような分散型であってもよい。
【0014】
携帯製品102は、利用者が外出の際に携帯する製品であれば特に限定されるものではない。また識別標識103は、一般的な標識の読み取りアプリなどで識別標識の映像を簡便かつ確実に読み取れるものであれば特に限定されるものではない。
【0015】
携帯製品102と識別標識103の組み合わせとしては、実用上はスマートフォンの画面上に表示されるQRコードまたはバーコード(以下、まとめて「コード」ということがある。)が典型例である。またカード類にコードを貼付するものでもよい。概念上は杖にコードを貼付するようなケースも想定しうる。以下、識別標識103が携帯製品102に表示されるというときは、画面上表示される場合や物に貼付される場合を含む。
【0016】
撮像装置101は通常複数設置され、駅構内のプラットフォーム、改札口、階段、エスカレータ、エレベータなどの付近に設置された既設の監視カメラを利用することが想定される。また介助ニーズの高い場所付近に既設のカメラがないときには、専用の撮像装置101を新たに設置してもよい。
【0017】
また利用者が撮像装置101の位置を認識し易いように、本システムの設置環境内に案内標識を設け携帯製品102をかざす位置や向きを案内することもできる。新たに専用の撮像装置101を設置する場合は、案内標識の設置に加え、利用者が見つけやすい場所であることを条件とすればよい。
【0018】
利用者と撮像装置101の間の距離は、基本的に撮像装置101が利用者がかざす識別標識103を撮影しアプリなどで読み取れる範囲内であれば特に限定されないが、例えば3m以内が好ましい。この点に留意して、撮像装置101の設置場所や前記案内標識の場所などを決めればよい。利用者の近距離に撮像装置101を設置できない状況がある場合は、例えば読み取り距離が長い(最長50m程度)カラーバーコードといった識別標識103の利用を進めることで対応可能である。
【0019】
次に、撮像装置101からの映像がデータ管理サーバー100に送信された後の処理に関し、
図1と
図2により詳細に説明する。
図2は、データ管理サーバー100の構成を説明した図である。
【0020】
データ管理サーバー100は、HUB201、利用者情報データベース202、識別標識読み取り装置203、録画装置204、制御装置205を備える。
HUB201は、利用者情報データベース202、識別標識読み取り装置203、録画装置204、制御装置205、事務室104を連結する中継装置である。
【0021】
利用者情報データベース202には、利用者本人の属性情報と介助関連情報が登録情報として事前に登録され、当該データベースにおける保存先を示すタグ情報と共に保存されている。属性情報は少なくとも氏名、連絡先が含まれる。連絡先は電話番号、SMS、メールアドレスなどが含まれ、携帯製品102がスマートフォンであれば当該スマートフォンにつながる連絡先であることが好ましい。介助関連情報は、視覚障がい、歩行困難といった障がいに関する情報、白杖や車椅子といった普段使用している福祉用具の種類など、介助を円滑に行う上で役立つ関連情報が含まれる。
また、登録情報は、利用者の申請で随時更新や変更が可能である。
【0022】
識別標識読み取り装置203は、識別標識103をアプリなどで読み取り、URLといった利用者情報データベース202における登録情報の保存先を特定する識別標識情報(以下、「読み取りタグ情報」という。)を得る。読み取りタグ情報は制御装置205において、利用者情報データベース202の各登録情報のタグ情報と照合される。照合のとれた登録情報が制御装置205からHUB201を介して事務室104に送信される。
【0023】
録画装置204は、撮像装置101の撮影する映像を所定時間録画する(以下、録画した映像を「記録映像」という。)。なお、録画装置204は、駅構内やプラットフォームの監視システムにおいて常時録画する録画装置とは別に設けられたものであることが望ましい。なお、録画装置204は利用者の映像の他、撮像装置の位置や撮影方向といった撮影に関連する情報も記録することができる。また、前記所定時間としては、要介助者の映像を含めるために、識別標識読み取り装置203が識別標識103を読み取った時刻(以下、「読み取り時刻」という。)を始点として10秒程度が好ましく、識別標識読み取り装置203が識別標識103を読み取った時刻の前後10秒程度であってもよい。この10秒程度の記録映像は登録情報と共に制御装置205の制御によりHUB201を介して事務室104に送信される。
【0024】
制御装置205は、HUB201を介して、利用者情報データベース202、識別標識読み取り装置203、録画装置204、事務室104を制御するものである。上述した通り、制御装置205は、読み取りタグ情報と、利用者情報データベース202の各登録情報のタグ情報とを照合し、照合のとれた登録情報を事務室104に送信する。また、制御装置205は、記録映像は登録情報と共に事務室104に送信し、事務室104のモニタ106にこれらを表示させる。
【0025】
事務室104では、HUB201から送信されてきた利用者の登録情報や記録映像がモニター106に映し出される。記録映像は利用者への介助が終了するまで繰り返しモニター106に再生表示することもできる。また駅員は操作端末105を通じて、HUB201から送信されてくる情報に対し操作したり、HUB201を介して制御装置205に対し情報発信などの操作を行うことが可能である。例えば利用者への介助が終了した時点で駅員が操作端末105に作業完了の指令を入力し、モニター106での記録映像の再生を終了させるといった操作が可能である。
【0026】
<効果>
本実施形態によれば、QRコードやバーコードといった一般的なアプリなどで簡便かつ確実に読み取りが可能な識別標識103を利用するので、画像処理を行って介助の要否を判定するシステムに比べエラーを低減することができる。また事前に登録された登録情報と利用者のいる現場の利用者が撮影された記録映像を確認した上で介助に向かうことができるので、介助サービスの質が向上する。つまり、駅員等の介助者は、要介助者の見た目、位置、どのような介助が必要かを認識した上で介助に向かうことができるので、必要な介助を迅速に行うことができる。さらに駅構内やプラットフォームの監視システムの撮影装置101を利用できるので、本システムを整備するコストを低減することができる。
【0027】
[サポート方法]
次に、上述した要介助者サポートシステムを使った要介助者へのサポート方法について説明する。
図3は、本実施形態における要介助者サポート方法をステップで表した図である。以下、ステップごとにサポートのフローを説明する。上述の実施形態に係るサポートシステムと同一又は同等の構成要素については同一の符号を付し、その説明を簡略又は省略する。
【0028】
<開始>
まず初めに利用者が携帯製品102に表示されている識別標識103を駅構内などの撮像装置101にかざして介助要請をしてからサポートのフローが開始される。
【0029】
<ステップ1>
S1では、識別標識読み取り装置203が識別標識103をアプリなどで読み取って、読み取りタグ情報を得る。
【0030】
<ステップ2>
S2では、読み取り時刻から所定時間(例えば10秒程度)、録画装置204が撮像装置101が撮影する現場の映像(記録映像)を録画する。
【0031】
<ステップ3>
S3では、読み取りタグ情報を利用者情報データベース202のタグ情報と照合する。
【0032】
<ステップ4>
S4では、読み取りタグ情報が利用者情報データベース202に存在する(照合がとれた)場合S5に進み、存在しない(照合がとれない)場合に終了に進むよう判定する。
【0033】
<ステップ5>
S5では、記録映像と利用者の登録情報を事務室104のモニター106に表示する。
【0034】
<ステップ6>
S6では、駅員などの介助者による介助作業の完了指令の有無が判定される。完了指令がされた場合は一連の動作は終了する。完了指令がない場合は、作業はS5のステップが維持される。また完了指令は、駅員が操作端末105で、ボタンの押下など指令操作を入力することで得られる。この他、例えば所定時間経過後に自動的に動作終了するよう設定することも可能である。
【0035】
[サポート方法の変形例1]
S5で、駅員が記録映像と登録情報をモニター106で確認した段階で、事務室104から、先ず登録利用者のスマートフォンに応答してから介助に向かってもよい。このようなサポート方法を採用することにより、利用者にとっては、介助を待つ間の不安が解消される。利用者には登録の際に、そのようなオプションを提示して、連絡先にスマートフォンにつながる電話番号などの記入を打診すすることが可能である。
【0036】
[サポート方法の変形例2]
本発明に係る介助サービスは、基本的に事前に登録した利用者へのサービス向上が主目的であるが、未登録者であっても介助ニーズのある限り、できる限り登録者に準じたサービスを提供するようにしてもよい。
【0037】
例えば、鉄道会社などのホームページに未登録者用のサイトを設け、電話番号かメールアドレスを入力すると、画面に未登録者専用のQRコードなどが入手できるようにすればよい。その上で、当該コードをスマートフォンでかざすなどすれば、S4で利用者情報データベース202との照合がとれなくてもS5に進み、記録映像のみモニター106で表示し、駅員が電話やメールで応答したり、状況に応じて介助に向かうなどの対応が可能となる。
【0038】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
【0039】
例えば本実施形態では、主に駅構内で駅員が行う介助サービスについて説明したが、駅構内に限らず、病院や公共施設など日常的に外来者による介助ニーズが存在する施設であれば適用可能である。
【符号の説明】
【0040】
100:データ管理サーバー、101:撮像装置、102:携帯製品、
103:識別標識、104:事務室、105:操作端末、
106:モニター、201:HUB、202:利用者情報データベース、
203:識別標識読み取り装置、204:録画装置、205:制御装置