(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-28
(45)【発行日】2025-05-09
(54)【発明の名称】有鱗目動物忌避剤
(51)【国際特許分類】
A01N 59/00 20060101AFI20250430BHJP
A01N 59/06 20060101ALI20250430BHJP
A01P 17/00 20060101ALI20250430BHJP
A01N 25/06 20060101ALI20250430BHJP
A01N 61/00 20060101ALI20250430BHJP
【FI】
A01N59/00 Z
A01N59/06
A01P17/00
A01N25/06
A01N61/00 D
A01N59/00 B
(21)【出願番号】P 2021562736
(86)(22)【出願日】2020-12-04
(86)【国際出願番号】 JP2020045157
(87)【国際公開番号】W WO2021112206
(87)【国際公開日】2021-06-10
【審査請求日】2023-10-05
(31)【優先権主張番号】P 2019221168
(32)【優先日】2019-12-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000100539
【氏名又は名称】アース製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 秀和
(72)【発明者】
【氏名】松尾 安希
【審査官】水島 英一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-155703(JP,A)
【文献】特開昭62-164602(JP,A)
【文献】特開平07-233001(JP,A)
【文献】特表2011-511749(JP,A)
【文献】特表2011-510938(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01N,A01P
JSTPlus(JDreamIII)
JMEDPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原液と噴射剤からなるエアゾール組成物が耐圧容器に充填されてなるエアゾール剤の形態を有し、
前記原液が、有効成分として無機粉体と、ヒドロキシ基又はケトン基を有する溶剤及びシリコーン粉体のうちの少なくとも一方
と、非極性溶剤を含有
し、
前記無機粉体は、シリカ、炭酸カルシウム及びタルクからなる群から選択される少なくとも1つであって、平均粒子径が1~20μmであり、
前記原液が前記ヒドロキシ基又はケトン基を有する溶剤を含有する場合、前記ヒドロキシ基又はケトン基を有する溶剤と前記非極性溶剤の含有比が、質量比で、ヒドロキシ基又はケトン基を有する溶剤/非極性溶剤=0.04~1.1であり、
前記原液がシリコーン粉体を含有する場合、前記無機粉体と前記シリコーン粉体の含有比が、質量比で、無機粉体/シリコーン粉体=2~75である
有鱗目動物忌避剤。
【請求項2】
前記ヒドロキシ基又はケトン基を有する溶剤が、炭素数2~4のアルコール及びアセトンからなる群から選択される少なくとも1つである、請求項1に記載の有鱗目動物忌避剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は有鱗目動物忌避剤に関し、さらに詳しくは、エアゾール剤の形態で使用される有鱗目動物忌避剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ヤモリは昆虫や蜘蛛、蚊等の小さな害虫を捕食するため益虫とされているが、屋内への侵入や糞被害が問題となっている。ヤモリは気温が30℃前後の地域に多く生息し、南極大陸を除く全大陸に分布しており、日本においても本州、四国、九州、周辺島嶼に生息していることが確認されている。ヤモリは夜行性であり、夜に街灯や民家の光に集まっている虫を狙って現れるので、壁や窓に張り付いているところを発見することができる。
【0003】
従来、ヤモリに対しては忌避により追い払うことが行われており、例えば、ヤモリやそれに類する動物の嫌がる臭いを発散させる忌避剤を撒くことがなされる。このような忌避剤として、例えば、特定一般式で表されるグリコールエーテル類を有効成分とする爬虫類用忌避剤(特許文献1)や、リモネンを主体とする動物忌避・消臭剤(特許文献2)が提案されている。特許文献1には前記特定一般式で表されるグリコールエーテル類がヘビやトカゲ等の爬虫類に対して忌避効力を有することが記載され、特許文献2にはリモネンがヘビやヤモリに忌避作用を示すことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】日本国特開昭61-289002号公報
【文献】日本国特開昭62-164602号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1、2のような忌避剤を用いると、散布直後の忌避効果は得られるが、経時的に臭いが薄まるため、効果の持続性が低いという問題があった。
また、ヤモリやトカゲ等の有鱗目動物は壁や窓などの高所や垂直面にも張り付くことから、そのような場所に対して、有効成分を簡便に処理することが難しいという問題があった。
本発明は、有鱗目動物に対して優れた忌避効果を持続的に発揮し、使用初期から使用終期にかけて効果のバラつきなく、簡便に使用することができる有鱗目動物忌避剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは上記課題について鋭意研究を重ねた結果、無機粉体を有効成分としたエアゾール剤であって、前記無機粉体と共に、ヒドロキシ基又はケトン基を有する溶剤及びシリコーン粉体のうちの少なくとも一方を含有させることにより上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち本発明は、以下の(1)~(3)を特徴とする。
(1)原液と噴射剤からなるエアゾール組成物が耐圧容器に充填されてなるエアゾール剤の形態を有し、前記原液が、有効成分として無機粉体と、ヒドロキシ基又はケトン基を有する溶剤及びシリコーン粉体のうちの少なくとも一方を含有する有鱗目動物忌避剤。
(2)前記ヒドロキシ基又はケトン基を有する溶剤が、炭素数2~4のアルコール及びアセトンからなる群から選択される少なくとも1つである、前記(1)に記載の有鱗目動物忌避剤。
(3)前記無機粉体と前記シリコーン粉体の含有比が、質量比で、無機粉体/シリコーン粉体=2~75である、前記(1)又は(2)に記載の有鱗目動物忌避剤。
【発明の効果】
【0008】
本発明の有鱗目動物忌避剤によれば、エアゾール剤の形態を有するので処理したい場所に簡便に処理することができる。また、有鱗目動物に対して忌避効果を発揮する無機粉体の、エアゾール組成物中における分散性に優れ、またケーキングも抑制されるので、忌避剤の使用初期から使用終期まで一定した噴射をすることができ、有鱗目動物に対して優れた忌避効果を持続的に得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の有鱗目動物忌避剤について説明する。
なお、本明細書において、「質量」は「重量」と同義である。
【0010】
本発明で忌避の対象とする有鱗目動物は爬虫類に属する群であり、トカゲ類やヘビ類を含む。具体的には、ヤモリ、トカゲ、カナヘビ、イグアナ、カメレオン等のトカゲ亜目、アオダイショウ、マムシ等のヘビ亜目、ミミズトカゲ等のミミズトカゲ亜目等を含む。
【0011】
本発明の有鱗目動物忌避剤は、原液と噴射剤からなるエアゾール組成物が耐圧容器に充填されてなるエアゾール剤の形態を有し、前記原液が、有効成分として無機粉体と、ヒドロキシ基又はケトン基を有する溶剤及びシリコーン粉体のうちの少なくとも一方を含有する。以下、各成分について説明する。
【0012】
(原液)
原液は、上記したように少なくとも無機粉体と、ヒドロキシ基又はケトン基を有する溶剤及びシリコーン粉体のうちの少なくとも一方を含有する。
【0013】
本発明において、無機粉体は有鱗目動物を忌避する有効成分である。例えば有鱗目動物がヤモリである場合、ヤモリの足はその表面が非常に細い毛で覆われており、この分子間力により垂直や逆さまの壁でも登ることができるが、無機粉体はヤモリの足の表面の細い毛の隙間に入り込み、ヤモリが壁に張り付く際の分子間力を減少させ、物理的にヤモリを忌避することができる。
【0014】
無機粉体としては、例えば、シリカ(二酸化ケイ素)、アルミナ、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、タルク、マイカ、パーライト、ケイ酸、ケイ酸塩(ケイ酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム等)、カオリン等が挙げられ、これらからなる群から選択される少なくとも1つを用いることができる。中でも、壁等の処理対象への付着性の観点から、シリカ、炭酸カルシウム及びタルクからなる群から選択される少なくとも1つを用いることが好ましい。
【0015】
無機粉体の平均粒子径は、エアゾール剤の噴口等への目詰まりを抑制できる範囲であれば特に限定されないが、例えば、0.1~100μmの範囲であることが好ましく、0.1~50μmがより好ましく、1~20μmがさらに好ましい。前記範囲であると、処理対象の表面に均一に付着させることができ、また、処理対象の表面を汚すことがない。無機粉体の平均粒子径は、例えば、コールターカウンター法やレーザー回折散乱法による粒度分布測定により測定することができる。
【0016】
無機粉体は、原液中、0.75~20質量%(w/w%)の範囲で含有することが好ましい。原液中、無機粉体が0.75質量%以上であると、原液を撹拌した時に無機粉体の拡散が容易に確認できるので、エアゾール剤の製造にあたって耐圧容器へ充填する際に原液の均一性の確認が容易である。また、無機粉体の含有量が多くなりすぎると原液の撹拌性が低下し、安定製造がし難くなるので、20質量%以下が好ましい。無機粉体の含有量は、原液中、1質量%以上がより好ましく、1.5質量%以上がさらに好ましく、また、15質量%以下がより好ましく、7質量%以下がさらに好ましい。
【0017】
なお、エアゾール組成物中の無機粉体の含有量は、0.25~10質量%の範囲が好ましく、0.28~7.5質量%がより好ましく、0.3~3.5質量%がさらに好ましい。無機粉体のエアゾール組成物中の含有量が0.25質量%以上であると、処理対象の表面に満遍なく無機粉体を付着させることができるので、有鱗目動物の忌避効果を十分に得ることができる。またエアゾール組成物中での無機粉体の再分散性が悪いとエアゾール剤を使用し始めたときに無機粉体が多く噴射され、それを繰り返すうちに使用終期には無機粉体の噴射量が少なくなり、使用初期のような効果が得られなくなることがある。無機粉体のエアゾール組成物中の含有量が10質量%以下であると、エアゾール剤中で無機粉体を再分散させやすいので、噴射量が安定し、使用初期と使用終期とで効果に差が出ることがない。
【0018】
原液には、前記無機粉体のエアゾール組成物中での分散安定性を保つために、ヒドロキシ基又はケトン基を有する溶剤及びシリコーン粉体のうちの少なくとも一方を含有する。
【0019】
ヒドロキシ基又はケトン基を有する溶剤は、無機粉体との親和性が高く、また無機粉体の一部を溶解させることもできる。よって、無機粉体のエアゾール組成物中における分散性を向上させ、ケーキングを抑制することができる。また、シリコーン粉体も同様に、無機粉体に親和するので、無機粉体のエアゾール組成物中における分散性を向上させ、ケーキングを抑制できる。
【0020】
ヒドロキシ基又はケトン基を有する溶剤としては、例えば、エタノール、ブタノール等の第一級アルコール、イソプロピルアルコール等の第二級アルコール、アセトン、エチルメチルケトン等のケトン類、酢酸などのカルボン酸、酢酸エチル等のエステル類が挙げられる。中でも、エアゾール組成物中での無機粉体の安定しやすさの観点から、炭素数2~4のアルコール及びアセトンからなる群から選択される少なくとも1つを用いることが好ましく、エタノール、イソプロピルアルコール及びアセトンからなる群から選択されることがより好ましい。
【0021】
ヒドロキシ基又はケトン基を有する溶剤は、原液中、7.5~65質量%含有することが好ましい。原液中、ヒドロキシ基又はケトン基を有する溶剤が7.5質量%以上であると、無機粉体の表面に満遍なく親和し、また無機粉体を溶解させることができるので、原液中での無機粉体の分散性が向上し、また再分散性も向上させることができる。また、前記溶剤の含有量が65質量%以下であると、原液のケーキングを抑制できる。ヒドロキシ基又はケトン基を有する溶剤の含有量は、8.5質量%以上がより好ましく、10質量%以上がさらに好ましく、また60質量%以下がより好ましく、55質量%以下がさらに好ましい。
【0022】
また、エアゾール組成物中のヒドロキシ基又はケトン基を有する溶剤の含有量は、3~30質量%の範囲が好ましく、4~30質量%がより好ましく、4.5~30質量%がさらに好ましい。前記ヒドロキシ基又はケトン基を有する溶剤のエアゾール組成物中の含有量が3質量%以上であると、噴射剤を充填してもヒドロキシ基又はケトン基を有する溶剤が製剤中で分離しないので、無機粉体の分散性が向上し、また再分散性も向上させることができ、30質量%以下であると、エアゾール組成物のケーキングを抑制できる。
【0023】
シリコーン粉体は、ケイ酸基とシリル基を有する化合物の粉体であることが好ましく、シロキサン結合を有する粉体であることがより好ましい。シリコーン粉体としては、例えば、トリメチルシロキシケイ酸、ポリメチルシルセスキオキサン等が挙げられる。中でも、原液中の溶剤への溶解性の観点から、トリメチルシロキシケイ酸が好ましい。
【0024】
シリコーン粉体の平均粒子径は、特に限定されないが、溶剤への溶解性の観点から、0.1~1000μmの範囲であることが好ましく、0.5~500μmがより好ましく、1~100μmがさらに好ましい。前記範囲であると、無機粉体の表面に親和することにより分散性及び再分散性を向上させることができるとともに、エアゾール剤の噴口等への目詰まりも抑制できる。シリコーン粉体の平均粒子径は、例えば、コールターカウンター法やレーザー回折散乱法による粒度分布測定により測定することができる。
【0025】
シリコーン粉体は、原液中、0.05~1.1質量%含有することが好ましい。原液中、シリコーン粉体が、0.05質量%以上であると、無機粉体の表面に満遍なく親和するので、原液中での無機粉体の分散性が向上し、また再分散性も向上させることができる。また、シリコーン粉体の含有量が1.1質量%以下であると、原液のケーキングを抑制できる。シリコーン粉体の含有量は、0.06質量%以上がより好ましく、0.08質量%以上がさらに好ましく、また1.05質量%以下がより好ましく、1質量%以下がさらに好ましい。
【0026】
また、エアゾール組成物中のシリコーン粉体の含有量は、0.03~0.5質量%の範囲が好ましく、0.035~0.49質量%がより好ましく、0.04~0.48質量%がさらに好ましい。前記シリコーン粉体のエアゾール組成物中の含有量が0.03質量%以上であると、無機粉体の表面に満遍なく親和するので、無機粉体の分散性が向上し、また再分散性も向上させることができ、0.5質量%以下であると、エアゾール組成物中のケーキングを抑制できる。
【0027】
なお、シリコーン粉体は、無機粉体に対し、質量比で、無機粉体/シリコーン粉体=2~75となるように含有することが好ましく、無機粉体とシリコーン粉体の前記含有比は3~75がより好ましく、3.5~75がさらに好ましい。無機粉体/シリコーン粉体(質量比)が前記範囲であると、エアゾール組成物における無機粉体の分散性が向上し、またケーキングもなく再分散性も向上させることができる。
【0028】
本発明において、原液には非極性溶剤を含有することが好ましい。非極性溶剤は無機粉体とヒドロキシ基又はケトン基を有する溶剤及びシリコーン粉体のうちの少なくとも一方を混合溶解するための溶媒として用いることができ、ヒドロキシ基又はケトン基を有する溶剤を含有する場合は、非極性溶剤を含有することで、極性成分同士の親和性が向上する。
【0029】
非極性溶剤としては、例えば、ノルマルヘキサン、ノルマルペンタン、ノルマルパラフィン、イソパラフィン、ナフテン、オレフィン等の脂肪族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン等の芳香族炭化水素等が挙げられる。
【0030】
非極性溶剤の市販品例としては、例えば、エクソンモービル社の「アイソパーL」(イソパラフィン)、「アイソパーM」(イソパラフィン)、「エクソールD80」(ナフテン)、「エクソールD110」(ナフテン)、三光化学工業株式会社の「ネオチオゾール」(ノルマルパラフィン)等が挙げられる。
【0031】
非極性溶剤は、原液中、30~99.2質量%の範囲で含有することが好ましく、35~95質量%がより好ましく、40~90質量%がさらに好ましい。原液中の非極性溶剤の含有量が前記範囲であると、無機粉体とヒドロキシ基又はケトン基を有する溶剤及びシリコーン粉体のうちの少なくとも一方による本発明の効果を損なうことなく、また、原液中に無機粉体を均一に溶解させることができる。
【0032】
また、エアゾール組成物中の非極性溶剤の含有量は、15~50質量%の範囲が好ましく、17.5~47.5質量%がより好ましく、20~45質量%がさらに好ましい。前記非極性溶剤のエアゾール組成物中の含有量が前記範囲であると、本発明の効果を損なうことがない。
【0033】
なお、ヒドロキシ基又はケトン基を有する溶剤を含有する場合、非極性溶剤は、ヒドロキシ基又はケトン基を有する溶剤に対し、質量比で、ヒドロキシ基又はケトン基を有する溶剤/非極性溶剤=0.01~1.2となるように含有することが好ましく、ヒドロキシ基又はケトン基を有する溶剤と非極性溶剤の前記含有比は0.02~1.15がより好ましく、0.04~1.1がさらに好ましい。ヒドロキシ基又はケトン基を有する溶剤/非極性溶剤(質量比)が前記範囲であると、エアゾール組成物における無機粉体の分散性が向上し、またケーキングもなく再分散性も向上させることができる。
【0034】
原液には、本発明の効果を損なわない範囲で、その他の成分を含有させることができる。その他の成分としては、例えば、芳香成分、消臭成分、防腐剤、その他の溶剤、pH調整剤、紫外線吸収剤、界面活性剤、溶解助剤等が挙げられる。
【0035】
芳香成分としては、例えば、ハッカ油、オレンジ油、ウイキョウ油、ケイヒ油、チョウジ油、テレビン油、ユーカリ油、ヒバ油、ジャスミン油、ネロリ油、ペパーミント油、ベルガモット油、ブチグレン油、レモン油、レモングラス油、シナモン油、シトロネラ油、ゼラニウム油、シトラール、l-メントール、酢酸シトロネリル、シンナミックアルデヒド、テルピネオール、ノニルアルコール、cis-ジャスモン、リモネン、リナロール、1,8-シネオール、ゲラニオール、α-ピネン、p-メンタン-3,8-ジオール、オイゲノール、酢酸メンチル、チモール、安息香酸ベンジル、サリチル酸ベンジル、アニス油、ラベンダー油、ローズ油、ローズマリー油、グレープフルーツ油、カンフェン、p-シメン、シトロネロール、ネロール、ベンジルアルコール、n-ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、クマリン、シネオール等が挙げられる。これらは、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0036】
消臭成分としては、例えば、緑茶エキス、柿タンニン、ラウリル酸メタクリレート、安息香酸メチル、フェニル酢酸メチル、ゲラニルクロトレート、ミリスチン酸アセトフェノン、酢酸ベンジル、プロピオン酸ベンジル、銀等の臭気成分を吸着する成分や、上記した芳香成分のような臭気成分をマスキングする成分等が挙げられる。これらは、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0037】
防腐剤としては、例えば、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸ブチル等のパラオキシ安息香酸エステル、フェノキシエタノール、メチルイソチアゾリノン等のイソチアゾリン類等が挙げられる。これらは、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0038】
その他の溶剤としては、例えば、水道水、イオン交換水、蒸留水等の水、ジエチルエーテル等のエーテル類等が挙げられる。これらは、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0039】
pH調整剤としては、例えば、クエン酸、クエン酸塩、リン酸塩、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素アンモニウム等が挙げられる。これらは、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0040】
紫外線吸収剤としては、例えば、パラアミノ安息香酸、パラアミノ安息香酸モノグリセリンエステル、サリチル酸オクチル、サリチル酸フェニル、パラメトキシケイ皮酸イソプロピル、パラメトキシケイ皮酸オクチル等が挙げられる。これらは、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0041】
界面活性剤としては、通常使用されているものであればよく、特に限定がない。その例としては、非イオン系活性界面活性剤、陰イオン系界面活性剤、陽イオン系界面活性剤、両性界面活性剤、ショ糖脂肪酸エステル系界面活性剤等の各種界面活性剤が挙げられる。これらは、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0042】
溶解助剤としては、例えば、ミリスチン酸イソプロピル等の脂肪酸エステル等が挙げられる。これらは、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0043】
原液は、無機粉体、ヒドロキシ基又はケトン基を有する溶剤及びシリコーン粉体のうちの少なくとも一方、及び任意の成分を混合することにより得られる。
原液の粘度は、エアゾール用の耐圧容器への充填性の観点から、20℃において1000mPa・s以下であることが好ましく、0.25~750mPa・sがより好ましく、0.5~500mPa・sがさらに好ましい。
【0044】
本発明において、エアゾール組成物中の原液の含有量は、10~95質量%とすることが好ましい。原液の含有量が少なすぎると処理対象に対して原液が付着し難くなり、処理対象表面への無機粉体の付着量が少なくなるので本発明の効果が得られ難くなり、また原液の含有量が多くなりすぎるとエアゾール組成物の噴射ムラが発生する可能性があるので、前記範囲が好ましい。原液の含有量は、エアゾール組成物中、下限は15質量%以上であることがより好ましく、20質量%以上がさらに好ましく、また、上限は90質量%以下であることがより好ましく、85質量%以下がさらに好ましい。
【0045】
(噴射剤)
噴射剤は、上記原液を噴射するための媒体であり、原液とともに耐圧容器に加圧充填される。
噴射剤としては、例えば、プロパン、プロピレン、n-ブタン、イソブタン等の液化石油ガス(LPG)やジメチルエーテル(DME)等の液化ガス、炭酸ガス、窒素ガス、圧縮空気等の圧縮ガス、HFC-152a、HFC-134a、HFO-1234yf、HFO-1234ze等のハロゲン化炭素ガス等の1種又は2種以上を用いることができる。使用する噴射剤は、原液との相溶性やエアゾールバルブ等の容器部材に合わせて適宜選択すればよい。
【0046】
エアゾール組成物中の噴射剤の含有量は、エアゾール組成物中に5~90質量%とすることが好ましい。エアゾール組成物中の噴射剤の含有量が5質量%以上であると、原液を噴霧粒子として噴射することができるため無機粉体をムラなく噴射でき、十分な忌避効果を得ることができる。また、噴射剤が90質量%以下であると、忌避に十分な量の無機粉体を噴射できる。噴射剤の含有量は、エアゾール組成物中、下限は10質量%以上であることがより好ましく、15質量%以上がさらに好ましく、また、上限は85質量%以下がより好ましく、80質量%以下がさらに好ましい。
【0047】
なお、エアゾール組成物中の原液と噴射剤の体積比は、原液:噴射剤で10:90~90:10であることが好ましく、15:85~85:15がより好ましく、20:80~80:20がさらに好ましい。このような体積比とすることで、無機粉体を含んだ溶液を効率よく拡散噴射でき、かつ、容易に処理面に付着させることが出来るので簡便に広範囲にエアゾール組成物を処理することができる。
なお、原液と噴射剤の体積比は、それぞれの質量を比重で割ることにより求めることができる。
【0048】
本発明の有鱗目動物忌避剤は、上記した原液と噴射剤がエアゾール用の耐圧容器に充填され、該耐圧容器がエアゾールバルブによりその開口を閉止されることにより構成される。エアゾール剤は、エアゾールバルブに取り付けられた噴射部材(以下、噴射ボタンともいう。)が使用者に操作されることにより、耐圧容器内のエアゾール組成物(原液と噴射剤)がエアゾールバルブを通って耐圧容器の外へ押し出され、その際に原液は噴射剤によって粒子状とされて噴射される。
【0049】
(エアゾールバルブ)
エアゾールバルブは、噴射部材が使用者に操作されることにより耐圧容器内と外部との連通および遮断を切り替えるための開閉部材と、開閉部材が取り付けられるハウジングと、ハウジングを耐圧容器の所定の位置に保持するためのマウント部材を備える。また、開閉部材は、噴射部材と連動して上下に摺動するステムを含む。ステムの摺動によりエアゾール組成物の連通(噴射状態)および遮断(非噴射状態)が切り替えられる。ハウジングには、耐圧容器からエアゾール組成物を取り込むためのハウジング孔が形成されている。ステムには、ハウジング内に取り込まれたエアゾール組成物を噴射部材に送るためのステム孔が形成されている。ハウジング孔からステム孔までの経路は、エアゾール組成物が通過する内部通路を構成する。
【0050】
(ステム孔)
ステムのステム孔の形状は、円形であってもよいし、多角形でもよい。ステム孔が円形である場合、ステム孔の大きさは、直径0.1~2.0mmであることが好ましく、直径0.2~1.7mmがより好ましく、直径0.3~1.5mmがさらに好ましい。ステム孔の形状が多角形である場合、ステム孔の大きさは円形の場合と同等となる大きさであればよい。
ステムのアンダータップ孔は、その大きさが直径0.2~3.0mmであることが好ましく、直径0.3~2.5mmがより好ましく、直径0.5~2.0mmがさらに好ましい。アンダータップ孔の形状は円形でも多角形であってもよく、多角形の場合は、アンダータップ孔の大きさは円形の場合と同等となる大きさであればよい。
ステムにはベーパータップ孔があっても無くてもよいが、ベーパータップ孔を有する場合は、その大きさは、直径0.1~1.2mmであることが好ましく、直径0.2~1.1mmがより好ましく、直径0.3~1.0mmがさらに好ましい。ベーパータップ孔の形状は円形でも多角形であってもよく、多角形の場合は、ベーパータップ孔の大きさは円形の場合と同等となる大きさであればよい。
なお、ステム孔及びベーパータップ孔は1個でもよいし、複数個有していてもよい。ステム孔及びベーパータップ孔の大きさは、それらが複数ある場合は、その合計の大きさである。
【0051】
(噴射部材)
噴射部材(噴射ボタン)は、エアゾールバルブを介して耐圧容器に取り付けられる部材である。噴射ボタンには、エアゾールバルブのステム孔を介して耐圧容器から取り込まれるエアゾール組成物が通過する操作部内通路とエアゾール組成物が噴射される噴口が形成されている。
【0052】
噴射ボタンの噴口の形状は、円形であってもよいし、多角形でもよい。噴口が円形である場合、その内径(噴口孔径)は、噴射量や噴射時間の設計に応じて適宜調整すればよいが、例えば、直径0.1~3.0mmであることが好ましく、直径0.2~2.7mmがより好ましく、直径0.3~2.5mmがさらに好ましい。噴口の形状が多角形である場合、噴口の大きさは円形の場合と同等となる大きさであればよい。また、これらと等しい面積を有する複数の噴口を有していても問題ない。
【0053】
(エアゾール内圧)
エアゾール剤の内圧は、25℃における内圧で、0.1~0.7MPaであることが好ましく、0.15~0.6MPaであることがより好ましく、0.2~0.6MPaがさらに好ましい。内圧が強すぎるとエアゾール製剤が破裂する可能性があり、また内圧が弱すぎるとエアゾール組成物を吐出させる勢いが弱くなり、処理対象にエアゾール組成物を十分に付着できない場合があるので、前記範囲であることが好ましい。
なお、内圧は、エアゾール剤の温度を、恒温室等で保管して25℃に設定し、圧力計(例えば、WGA-710C計装用コンディショナ(株式会社共和電業製)に取り付けたPGM-E小型圧力センサ(株式会社共和電業製))により測定できる。
【0054】
(噴射圧)
エアゾール剤の噴射圧は、噴口から5cm離れた位置における測定で、5~600gfであることが好ましく、8~500gfがより好ましい。噴射圧が強すぎると、無機粉体が処理対象に付着せず落下や飛散してしまうおそれがあるので忌避効果が十分に得られず、また噴射圧が弱すぎると処理対象に噴射が届かずに無機粉体が付着せず十分な忌避効果が得られないため、前記範囲であることが好ましい。
なお、前記噴射圧は、エアゾール剤の噴口から鉛直方向に5cmの距離を置いたところにデジタルフォースゲージ(例えば、株式会社イマダ製、型番:DS2-2N)に装着した直径6cmの円状の平板を設置し、25℃の室温条件下で、前記平板の中心に向かってエアゾール組成物を噴射した際の最大値を噴射荷重とし、複数回測定した噴射荷重の平均を算出することにより測定できる。
【0055】
(噴射量)
エアゾール剤の噴射量は、0.5~11g/秒となるようにするのが好ましく、0.7~9g/秒がより好ましく、1~7g/秒がさらに好ましい。噴射量が0.5g/秒以上であると、無機粉体の拡散性が低いので、忌避に十分な量を処理対象に付着させやすく、処理対象である床や壁等が垂直面であっても十分に付着させることができる。また、11g/秒を超えると無機粉体の拡散性が強くなり使用者が噴射されたエアゾール組成物を吸入する恐れがあるので、噴射量は11g/秒以下とするのが好ましい。
【0056】
噴射量を調整する方法としては、例えば、噴射ボタンの噴口の大きさを調整する方法、エアゾール剤の噴射圧を調整する方法、エアゾールバルブのステム孔径を調整する方法、噴射剤の圧力を調整する方法、及びこれらの組み合せ等が挙げられる。
【0057】
(噴射パターン)
本発明の有鱗目動物忌避剤は、処理対象である床や壁等から50cmの距離から1m/sのスピードで1秒間噴射した際に、処理対象におけるエアゾール組成物の付着面積が100~1000cm2であることが好ましい。処理対象におけるエアゾール内容物の付着面積が100cm2以上であると、処理対象の広範囲にわたって容易に処理することができ、また、1000cm2以下であると、処理が必要な範囲だけに適切に処理することができる。処理対象におけるエアゾール内容物の付着面積は、150cm2以上がより好ましく、200cm2以上がさらに好ましく、また750cm2以下がより好ましく、500cm2以下がさらに好ましい。
【0058】
本発明の有鱗目動物忌避剤は、処理対象である床や壁等に対して、エアゾール組成物の付着量が0.0125~0.75mg/cm2となるように噴射することが好ましい。処理対象におけるエアゾール組成物の付着量が0.0125mg/cm2以上であると、忌避効果を発揮できる量の無機粉体を処理対象に付着させることができ、また、0.75mg/cm2以下であると、処理対象に噴霧粒子が過剰に付着することなく、外観を損なうおそれがない。処理対象におけるエアゾール組成物の付着量は、0.025mg/cm2以上がより好ましく、0.05mg/cm2以上がさらに好ましく、また0.625mg/cm2以下がより好ましく、0.5mg/cm2以下がさらに好ましい。
【0059】
本発明の有鱗目動物忌避剤は、処理対象である床や壁等に対して、無機粉体の付着量が0.0005~0.03mg/cm2であることが好ましい。処理対象における無機粉体の付着量が0.0005mg/cm2以上であると、有鱗目動物の十分な忌避効果を得ることができ、また、0.03mg/cm2以下であると、処理対象に噴霧粒子が過剰に付着することなく、外観を損なうおそれがない。処理対象における無機粉体の付着量は、0.001mg/cm2以上がより好ましく、0.002mg/cm2以上がさらに好ましく、また0.025mg/cm2以下がより好ましく、0.02mg/cm2以下がさらに好ましい。
【0060】
また、本発明の有鱗目動物忌避剤はエアゾール剤であるため、壁や天井等の手の届き難い場所にも処理しやすい。このような場所に処理できるため、トカゲ亜目に対する忌避剤として好適に用いることができ、中でも特にヤモリの忌避に有効である。
【実施例】
【0061】
以下、実施例及び比較例により本発明を更に説明するが、本発明は下記例に何ら制限されるものではない。
【0062】
<試験例1>
(実施例1~13、18~24、比較例1~8)
表1又は表2に示す配合処方に従い、各成分を混合して原液を調製した。
得られた原液を、エアゾール用ガラス試験瓶(容量100mL)に14.9g充填し、セットの瓶バルブを取り付けてエアゾール用ガラス試験瓶を閉止した。続いて、噴射剤としてLPG(20℃における圧力:0.34MPa)を16.8g加圧充填し、検体を得た。原液と噴射剤の体積比は、原液:噴射剤=40:60であった。
【0063】
(実施例14~17)
表1に示す配合処方に従い、各成分を混合して原液を調製した。
得られた原液を、エアゾール用ガラス試験瓶(容量100mL)に20.1g充填し、セットの瓶バルブを取り付けてエアゾール用ガラス試験瓶を閉止した。続いて、噴射剤としてLPG(20℃における圧力:0.34MPa)を14g加圧充填し、検体を得た。原液と噴射剤の体積比は、原液:噴射剤=50:50であった。
【0064】
なお、使用した原料成分は以下のとおりである。
・二酸化ケイ素A:Oriental Silicas Corporation社製「トクシールNP」、平均粒子径10.3μm
・二酸化ケイ素B:AGCエスアイテック株式会社製「サンスフェアH-31」、平均粒子径3μm
・タルク:日本タルク株式会社製「MICRO ACEP-3」、平均粒子径5μm
・炭酸カルシウム:竹原化学工業株式会社製「SL-1000」、平均粒子径3μm
・トリメチルシロキシケイ酸A:旭化成ワッカーシリコーン株式会社製「BELSIL TMS 803」
・トリメチルシロキシケイ酸B:ダウ・東レ株式会社製「MQ-1600」
・トリメチルシロキシケイ酸/ポリプロピルシルセスキオキサン:ダウ・東レ株式会社製「MQ-1640」
・メチルプロピレングリコールアセテート:日本乳化剤株式会社製「MFG-AC」
・モノオレイン酸デカグリセリル:日光ケミカルズ株式会社製「NIKKOL DECAGLYN 1-OV」
・アルキルアラルキル変性シリコーン:旭化成ワッカーシリコーン株式会社製「ReleaseAgentTN」
・イソプロピルアルコール
・エタノール
・アセトン
・ヘキサン
・トルエン
・イソパラフィン:エクソンモービル社製「アイソパーL」
・ナフテン:エクソンモービル社製「エクソールD80」
【0065】
1.沈降速度の評価
検体を上下にひっくり返し5回振とうして無機粉体を分散させ、水平な台に設置した後、無機粉体が沈降して生じる透明な液層が液層全体の1/3になるまでの時間を沈降時間として測定し、以下の評価基準により評価した。
〔評価基準〕
優良「A」:沈降時間が60秒以上
良好「B」:沈降時間が16秒以上60秒未満
可「C」: 沈降時間が12秒以上16秒未満
不可「D」:沈降時間が12秒未満
【0066】
2.ケーキングの評価
検体を上下にひっくり返し5回振とうして無機粉体を分散させ、水平な台に設置し、25℃環境下で1日放置した後、検体を90度傾けて横倒しにして無機粉体の状態を確認し、以下の評価基準により評価した。
〔評価基準〕
優良「A」:ケーキングはない。
良好「B」:ケーキングが生じているが試験瓶を傾ければ流動性がある。
不可「C」:ケーキングが生じており、試験瓶を傾けても流動性がない。
【0067】
試験結果を表1及び表2に示す。
【0068】
【0069】
【0070】
表1及び表2の結果より、有効成分である無機粉体とともにシリコーン粉体を含有することにより、無機粉体の分散性が向上し、また再分散性にも優れることが分かった。
【0071】
<試験例2>
(実施例25~37、比較例9~13)
表3又は表4に示す配合処方に従い、各成分を混合して原液を調製した。
得られた原液を、エアゾール用ガラス試験瓶(容量100mL)に14.9g充填し、セットの瓶バルブを取り付けてエアゾール用ガラス試験瓶を閉止した。続いて、噴射剤としてLPG(20℃における圧力:0.34MPa)を16.8g加圧充填し、検体を得た。原液と噴射剤の体積比は、原液:噴射剤=40:60であった。
【0072】
(実施例38~42、比較例14)
表4に示す配合処方に従い、各成分を混合して原液を調製した。
得られた原液を、エアゾール用ガラス試験瓶(容量100mL)に20.1g充填し、セットの瓶バルブを取り付けてエアゾール用ガラス試験瓶を閉止した。続いて、噴射剤としてLPG(20℃における圧力:0.34MPa)を14g加圧充填し、検体を得た。原液と噴射剤の体積比は、原液:噴射剤=50:50であった。
【0073】
1.沈降速度とケーキングの評価
試験例1と同様に、沈降速度とケーキングの評価を行った。結果を表3及び表4に示す。
【0074】
【0075】
【0076】
表3及び表4の結果より、有効成分である無機粉体とともにヒドロキシ基又はケトン基を有する溶剤を含有することにより、無機粉体の分散性が向上し、また再分散性にも優れることが分かった。
【0077】
<試験例3>
(実施例43~44、比較例15)
表5に示す配合処方に従い、各成分を混合して原液を調製した。
得られた原液を、エアゾール用ガラス試験瓶(容量100mL)に14.9g充填し、セットの瓶バルブを取り付けてエアゾール用ガラス試験瓶を閉止した。続いて、噴射剤としてLPG(20℃における圧力:0.34MPa)を16.8g加圧充填し、検体を得た。原液と噴射剤の体積比は、原液:噴射剤=40:60であった。
なお、実施例43と比較例15はそれぞれ、実施例26と比較例9と同一処方である。
【0078】
1.沈降速度とケーキングの評価
試験例1と同様に、沈降速度とケーキングの評価を行った。結果を5に示す。
【0079】
2.ヤモリの忌避試験
ヤモリの出現が確認できた建物の凹凸の少ない滑らかな壁面に対し、少なくとも2m2の範囲に、各検体を50cmの距離から1m/sのスピードで処理した(処理区)。処理区における無機粉体の付着量は0.0075mg/cm2とした。比較として、同じ建物の壁面の2m2の範囲を無処理区とした。
1日後に処理区と無処理区に出現しているヤモリの数を数え、30分後に再度ヤモリの数を数えた。ヤモリの数の平均を求め、下記式(1)に基づき、ヤモリの忌避率を計算した。結果を表5に示す。
忌避率(%)={1-処理区のヤモリ数/(処理区のヤモリ数+無処理区のヤモリ数)}×100 ・・・(1)
【0080】
【0081】
表5の結果より、ヒドロキシ基又はケトン基を有する溶剤及びシリコーン粉体のうちの少なくとも一方を含有することによりエアゾール組成物の分散性と再分散性が向上し、また、有鱗目動物の忌避についてはシリコーン粉体がやや劣るものの、いずれにおいても80%以上の忌避率であった。
さらに、実施例43については、処理してから3週間後においても、約90%の忌避率であったことから、有鱗目動物に対して優れた忌避効果を持続的に発揮することが分かった。
また、実施例43と実施例44は、エアゾール組成物の分散性および再分散性に優れていることから、使用初期だけでなく、使用終期にかけても効果のバラつきなく、簡便に使用することができると予測される。
【0082】
<試験例4>
(実施例45~46、比較例16)
表6に示す配合処方に従い、各成分を混合して原液を調製した。
得られた原液を、エアゾール用ブリキ缶(缶容量792mL)に149g充填し、バルブを取り付けてエアゾール用ブリキ缶を閉止した。続いて、噴射剤としてLPG(20℃における圧力:0.34MPa)を168g加圧充填し、噴射ボタンを取り付けて、検体を得た。原液と噴射剤の体積比は、原液:噴射剤=40:60であった。バルブと噴射ボタンについては、25℃条件で30秒間噴射した場合の単位当たりの噴射量が約1.8g/秒となるように選定した。
なお、実施例45~46および比較例16は、製剤の処方としてはそれぞれ実施例43~44および比較例15と同一処方である。
【0083】
1.ヤモリの侵入落下試験
ヤモリは体長が8cm以上のAsian house gecko(Hemidactylus platyurus)を使用した。
検体の使用初期品として、原液と噴射剤を充填した直後の未使用状態の検体を用いた。
検体の使用終期品として、使用初期品を25℃条件下で上下に激しく5回振とうし、すぐさま静置状態で30秒間連続噴射し、噴射後に25℃に戻すという操作を5回繰り返した後の検体を用いた。
幅1.0m、高さ2.0mの透明なガラス板の上半分(1.0m×1.0mの範囲)に、各検体を上下に激しく5回振とうした後に50cmの距離から満遍なく3秒間噴射して処理し、風乾後に試験区とした。
ガラス板を、試験区が上に位置するように立てて設置し、ヤモリをガラス板の検体を処理していない下半分に放った。ヤモリが試験区へ侵入した際に落下の有無を確認した。結果を表6に示す。
【0084】
【0085】
表6の結果より、実施例45と実施例46は、使用初期だけでなく、使用終期にかけてもヤモリが試験区へ侵入できないことが確認できた。このことから、本発明の有鱗目動物忌避剤は、使用初期から使用終期にかけて効果のバラツキがなく使用できることがわかった。
【0086】
本発明を詳細にまた特定の実施態様を参照して説明したが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは当業者にとって明らかである。本出願は、2019年12月6日出願の日本特許出願(特願2019-221168)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。