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特許7674278抗ニューヨーク食道扁平上皮がん1(NY-ESO-1)抗原結合タンパク質およびその使用方法
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  • 特許-抗ニューヨーク食道扁平上皮がん1(NY-ESO-1)抗原結合タンパク質およびその使用方法 図1A
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-28
(45)【発行日】2025-05-09
(54)【発明の名称】抗ニューヨーク食道扁平上皮がん1(NY-ESO-1)抗原結合タンパク質およびその使用方法
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/30 20060101AFI20250430BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20250430BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20250430BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20250430BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20250430BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20250430BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20250430BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20250430BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20250430BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20250430BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20250430BHJP
   A61K 35/12 20150101ALI20250430BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20250430BHJP
   A61P 35/04 20060101ALI20250430BHJP
【FI】
C07K16/30 ZNA
C07K19/00
A61K39/395 N
C12N15/13
C12N15/62 Z
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
A61P35/00
A61K35/12
A61P35/02
A61P35/04
【請求項の数】 49
(21)【出願番号】P 2021578186
(86)(22)【出願日】2020-07-02
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-02
(86)【国際出願番号】 US2020040642
(87)【国際公開番号】W WO2021003357
(87)【国際公開日】2021-01-07
【審査請求日】2023-06-30
(31)【優先権主張番号】62/870,232
(32)【優先日】2019-07-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/021,826
(32)【優先日】2020-05-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/020,177
(32)【優先日】2020-05-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】597160510
【氏名又は名称】リジェネロン・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】REGENERON PHARMACEUTICALS, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】ブレイ, ケビン エー.
(72)【発明者】
【氏名】デルフィーノ, フランク
(72)【発明者】
【氏名】ディリロ, デイビッド
(72)【発明者】
【氏名】フランクリン, マシュー シー.
(72)【発明者】
【氏名】カーシュナー, ジェシカ
(72)【発明者】
【氏名】マクドナルド, ダグラス
【審査官】坂井田 京
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2010/106431(WO,A1)
【文献】特表2018-525973(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
C07K 1/00-19/00
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
HLA-A2提示ニューヨーク食道扁平上皮がん1ペプチド(NY-ESO-1ペプチド)複合体に特異的に結合する、抗体またはその抗原結合断片であって、
前記抗体またはその抗原結合断片が、配列番号4の重鎖相補性決定領域(HCDR)1、配列番号6のHCDR2、配列番号8のHCDR3、配列番号12の軽鎖相補性決定領域(LCDR)1、配列番号14のLCDR2および配列番号16のLCDR3を含む、抗体またはその抗原結合断片。
【請求項2】
HLA-A2提示NY-ESO-1 157~165ペプチド複合体に特異的に結合する、請求項1に記載の抗体またはその抗原結合断片であって、前記抗体またはその抗原結合断片が、X線結晶解析によって4.0Å以上の分解能で決定されるときに、前記NY-ESO-1 157~165ペプチドのアミノ酸M160、W161、およびQ164と相互作用する、抗体またはその抗原結合断片。
【請求項3】
HLA-A2提示NY-ESO-1 157~165ペプチド複合体に特異的に結合するが、BCL9L 1351~1359(配列番号273)、GRID1 7~15(配列番号274)、ZDHHC1 376~384(配列番号276)、ITCH 807~815(配列番号277)、およびURB1 1853~1861(配列番号280)からなる群から選択される1つ以上のオフターゲットペプチドに特異的に結合しない、請求項1または2に記載の抗体またはその抗原結合断片であって、i)前記1つ以上のオフターゲットペプチドでパルスされた細胞に結合する前記抗体またはその抗原結合断片の、ii)非パルス細胞に対する比が、9未満である、抗体またはその抗原結合断片。
【請求項4】
配列番号2のアミノ酸配列を含むHCVRを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項5】
配列番号10のアミノ酸配列を含むLCVRを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項6】
配列番号2/配列番号10のアミノ酸配列を含むHCVR/LCVR対を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項7】
配列番号18のアミノ酸配列を含む重鎖を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項8】
配列番号20のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項9】
配列番号18のアミノ酸配列を含む重鎖と、配列番号20のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項10】
前記抗体またはその抗原結合断片が、表面プラズモン共鳴アッセイにおいて25℃で測定されるときに、単量体HLA-A2:NY-ESO-1 157~165ペプチド複合体に1nM未満の結合解離平衡定数(K)で結合する、請求項1~9のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項11】
全長抗体、Fab、Fab’、(Fab’)2、Fv、単鎖Fv(scFv)、またはT体構築物である、請求項1~10のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項12】
scFvである、請求項11に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一項に記載の抗原結合断片を含む、キメラ抗原受容体(CAR)。
【請求項14】
前記CARが、HCVR、LCVR、ヒンジ領域、膜貫通ドメイン、共刺激ドメイン、およびシグナル伝達ドメインを含む、請求項13に記載のCAR。
【請求項15】
前記共刺激ドメインが4-1BB共刺激ドメインである、請求項14に記載のCAR。
【請求項16】
前記共刺激ドメインがCD28共刺激ドメインである、請求項14に記載のCAR。
【請求項17】
前記抗原結合断片がscFvである、請求項13~16のいずれか一項記載のCAR。
【請求項18】
検出可能な部分を含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の抗体もしくはその抗原結合断片、または請求項13~17のいずれか一項に記載のCAR。
【請求項19】
請求項1~12のいずれか一項に記載のHLA-A2:NY-ESO-1に結合する抗体もしくはその抗原結合断片、または請求項13~17のいずれか一項に記載のCARと、薬学的に許容される担体または希釈剤と、を含む、医薬組成物。
【請求項20】
a)請求項1~12および18のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合断片のHCVRをコードするポリヌクレオチド配列、およ
b)請求項1~12および18のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合断片のLCVRをコードするポリヌクレオチド配列
を含む、ポリヌクレオチド分子。
【請求項21】
請求項1~12および18のいずれか一項に記載の抗体もしくはその抗原結合断片のHCVRをコードするポリヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド分子、および
請求項1~12および18のいずれか一項に記載の抗体もしくはその抗原結合断片のLCVRをコードするポリヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド分子
を含む、組み合わせ物。
【請求項22】
請求項20に記載のポリヌクレオチド分子または請求項21に記載の組み合わせ物を含む、ベクター。
【請求項23】
請求項1~12および18のいずれか一項に記載の抗体もしくはその抗原結合断片のHCVRをコードするポリヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド分子を含むベクター、および
請求項1~12および18のいずれか一項に記載の抗体もしくはその抗原結合断片のLCVRをコードするポリヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド分子を含むベクター
を含む、組み合わせ物。
【請求項24】
請求項20に記載のポリヌクレオチド分子、請求項21もしくは23に記載の組み合わせ物、または請求項2に記載のベクターを発現する、細胞。
【請求項25】
NY-ESO-1関連疾患または障害を有する対象を治療するための方法における使用のための、請求項1~12および18のいずれか一項に記載の抗体もしくはその抗原結合断片、または請求項13~17のいずれか一項に記載のCARを含む組成物、あるいは請求項19に記載の医薬組成物、あるいは請求項2に記載の細胞を含む組成物。
【請求項26】
前記NY-ESO-1関連疾患または障害が、NY-ESO-1関連がんである、請求項2に記載の組成物、あるいは医薬組成物。
【請求項27】
前記NY-ESO-1関連がんが、脂肪肉腫、神経芽腫、骨髄腫、転移性黒色腫、滑膜肉腫、膀胱がん、食道がん、肝細胞がん、頭頸部がん、非小細胞肺がん、卵巣がん、前立腺がん、乳がん、星状細胞腫瘍、多形性膠芽腫、未分化星状細胞腫、脳腫瘍、卵管がん、卵巣上皮がん、原発性腹腔がん、進行性固形腫瘍、軟組織肉腫、黒色腫、肉腫、骨髄異形成症候群、急性骨髄性白血病、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、ホジキン病、多発性骨髄腫、滑膜肉腫、転移性固形腫瘍、食道がん、横紋筋肉腫、進行性粘液様円形細胞脂肪肉腫、転移性黒色腫、または再発性非小細胞肺がんからなる群より選択される、請求項2に記載の組成物、あるいは医薬組成物。
【請求項28】
第2の治療剤と組み合わせて使用するためのものである、請求項2~2のいずれか一項に記載の組成物、あるいは医薬組成物。
【請求項29】
前記第2の治療剤が、PD-1阻害剤、CTLA-4阻害剤、腫瘍特異的抗原に対する抗体、ウイルス感染細胞抗原に対する抗体、PD-L1阻害剤、CD20阻害剤、CD20およびCD3に対する二重特異性抗体、栄養補充剤、VEGFアンタゴニスト、化学療法剤、細胞傷害剤、手術、放射線、NSAID、コルチコステロイド、ならびに前記疾患または障害に関連する少なくとも1つの症状を改善するために有用な任意の他の、前記抗体もしくはその抗原結合断片または前記CARを含む組成物、あるいは前記医薬組成物、あるいは前記細胞を含む前記組成物からなる群より選択される、請求項2に記載の組成物、あるいは医薬組成物。
【請求項30】
皮下、静脈内、皮内、腹腔内、経口、筋肉内、または頭蓋内投与のためのものである、請求項2~2のいずれか一項に記載の組成物、あるいは医薬組成物。
【請求項31】
前記対象の体重の0.1mg/kg~100mg/kgの用量での投与のためのものである、請求項230のいずれか一項に記載の組成物、あるいは医薬組成物。
【請求項32】
キメラ抗原受容体(CAR)をコードする核酸分子であって、前記CARが、HLA-A2提示ニューヨーク食道扁平上皮がん1ペプチド(NY-ESO-1ペプチド)に特異的に結合する細胞外結合ドメイン、膜貫通ドメイン、および細胞内シグナル伝達ドメインを含み、
前記細胞外結合ドメインが、配列番号4の重鎖相補性決定領域(HCDR)1、配列番号6のHCDR2、配列番号8のHCDR3、配列番号12の軽鎖相補性決定領域(LCDR)1、配列番号14のLCDR2および配列番号16のLCDR3を含む抗体またはその抗原結合断片である、核酸分子。
【請求項33】
前記抗体またはその抗原結合断片が配列番号2のアミノ酸配列を含むHCVRを含む、請求項3に記載の核酸分子。
【請求項34】
前記抗体またはその抗原結合断片が配列番号10のアミノ酸配列を含むLCVRを含む、請求項3または3に記載の核酸分子。
【請求項35】
前記抗体またはその抗原結合断片が配列番号2/配列番号10のアミノ酸配列を含むHCVR/LCVR対を含む、請求項3~3のいずれか一項に記載の核酸分子。
【請求項36】
前記抗体またはその抗原結合断片が配列番号18のアミノ酸配列を含む重鎖を含む、請求項3~3のいずれか一項に記載の核酸分子。
【請求項37】
前記抗体またはその抗原結合断片が配列番号20のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む、請求項3~3のいずれか一項に記載の核酸分子。
【請求項38】
前記抗体またはその抗原結合断片が配列番号18のアミノ酸配列を含む重鎖と、配列番号20のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む、請求項3~3のいずれか一項に記載の核酸分子。
【請求項39】
前記抗原結合断片がscFvである、請求項3~3のいずれか一項記載の核酸分子。
【請求項40】
請求項3~3のいずれか一項に記載の核酸分子を含む、ベクター。
【請求項41】
請求項3~3のいずれか一項に記載の核酸分子または請求項40に記載のベクターを含む、単離された免疫エフェクター細胞。
【請求項42】
T体である、請求項41に記載の単離された免疫エフェクター細胞。
【請求項43】
NY-ESO-1関連疾患または障害を有する対象を治療するための、請求項41または4に記載の免疫エフェクター細胞の集団を含む組成物。
【請求項44】
前記NY-ESO-1関連疾患または障害が、NY-ESO-1関連がんである、請求項4に記載の組成物。
【請求項45】
前記NY-ESO-1関連がんが、脂肪肉腫、神経芽腫、骨髄腫、転移性黒色腫、滑膜肉腫、膀胱がん、食道がん、肝細胞がん、頭頸部がん、非小細胞肺がん、卵巣がん、前立腺がん、乳がん、星状細胞腫瘍、多形性膠芽腫、未分化星状細胞腫、脳腫瘍、卵管がん、卵巣上皮がん、原発性腹腔がん、進行性固形腫瘍、軟組織肉腫、黒色腫、肉腫、骨髄異形成症候群、急性骨髄性白血病、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、ホジキン病、多発性骨髄腫、滑膜肉腫、転移性固形腫瘍、食道がん、横紋筋肉腫、進行性粘液様円形細胞脂肪肉腫、転移性黒色腫、または再発性非小細胞肺がんからなる群より選択される、請求項4に記載の組成物。
【請求項46】
前記抗体もしくはその抗原結合断片または前記CARを含む前記組成物、あるいは前記医薬組成物、あるいは前記細胞を含む前記組成物が、第2の治療剤と組み合わせて使用するためのものである、請求項4~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項47】
前記第2の治療剤が、PD-1阻害剤、CTLA-4阻害剤、腫瘍特異的抗原に対する抗体、ウイルス感染細胞抗原に対する抗体、PD-L1阻害剤、CD20阻害剤、CD20およびCD3に対する二重特異性抗体、栄養補充剤、VEGFアンタゴニスト、化学療法剤、細胞傷害剤、手術、放射線、NSAID、コルチコステロイド、ならびに前記疾患または障害に関連する少なくとも1つの症状を改善するために有用な任意の他の、前記抗体もしくはその抗原結合断片または前記CARを含む組成物、あるいは前記医薬組成物、あるいは前記細胞を含む前記組成物からなる群より選択される、請求項4に記載の組成物。
【請求項48】
皮下、静脈内、皮内、腹腔内、経口、筋肉内、または頭蓋内投与のためのものである、請求項4~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項49】
前記対象の体重の0.1mg/kg~100mg/kgの用量での投与のためのものである、請求項4~4のいずれか一項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2019年7月3日に出願された米国仮特許出願第62/870,232号、2020年5月5日に出願された米国仮特許出願第63/020,177号、および2020年5月8日に出願された米国仮特許出願第63/021,826号の優先権を主張する。前述の各々の全内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
配列表
本出願は、ASCII形式で電子的に提出されている配列表を含み、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。2020年7月2日に作成された当該ASCIIコピーは、118003_10520_SL.txtという名称であり、サイズは245,227バイトである。
【0003】
本開示は、HLA提示ニューヨーク食道扁平上皮がん1(NY-ESO-1)ペプチドに特異的に結合する抗原結合タンパク質、ならびにそれらの結合タンパク質を使用する治療方法および診断方法に関する。
【背景技術】
【0004】
ニューヨーク食道扁平上皮がん1(NY-ESO-1)は、がん-精巣抗原(CTA)であり、CTAG1Bとも称される。CTAG1B遺伝子によってコードされるNY-ESO-1の発現は、生殖細胞に限定される。しかし、NY-ESO-1は、しばしば種々の腫瘍型によって異常に再発現される。CTAG1B遺伝子の主なタンパク質産物は、180アミノ酸長の18KDaタンパク質であり、グリシンリッチN末端領域および極めて疎水性のC末端領域を有する。しかし、NY-ESO-1の機能は依然として不明確なままである。
【0005】
がん患者におけるNY-ESO-1に対する自発的なCD8およびCD4T細胞応答が観察され、分析されている(Jager,E.et al.(1998)J Exp Med 187:265-270、Jager,E.et al.(2000)J Exp Med 191:628-630)。特に、NY-ESO-1ペプチド157~165、157~167、および155~163は、腫瘍反応性CD8T細胞株においてHLA-A2によって制限され、ペプチド56~62は、HLA-A31 CD8T細胞によって認識されることが認められた(Jager et al.(1998)J.Exp Med 187:265-270、Wang,R.F.et al.(1998)J.Immunol 161:3598-3606)。CD4 T細胞応答においてHLA-DR4によって制限されるいくつかのエピトープも実証されており、ペプチド157~170に対する応答は、白人の大部分に認められる対立遺伝子であるHLA-DP4によって制限された(Jager et al.(2000)J Exp Med 191:625-630、Zang et al.(2001)Proc Natl Acd Sci USA 98:3964-3969)。
【0006】
NY-ESO-1が自発的な体液性および細胞性免疫応答を誘発する能力は、その制限された発現パターンとともに、それをがん療法のための優れた候補標的にしている。NY-ESO-1抗原は、がんワクチン候補として評価されているが、完全な体液性および細胞性免疫応答はほとんど得られていない。実際、治療標的としてのNY-ESO-1の使用は、HLA提示抗原を標的とする抗原結合タンパク質を設計する際の困難性、ならびに治療効果の低下および/または有害効果の増加(例えば、腫瘍細胞殺傷活性を減少させ、かつ/または対象における副作用を引き起こす非特異的細胞傷害性)をもたらし得る非特異的結合を防止するように、オフターゲット結合を回避する必要性のため、挑戦的である。
したがって、NY-ESO-1を高い特異性で標的にして、NY-ESO-1関連がんを治療する新規治療戦略について、当該技術分野で必要性が満たされていない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【文献】Jager,E.et al.(1998)J Exp Med 187:265-270
【文献】Jager,E.et al.(2000)J Exp Med 191:628-630
【文献】Wang,R.F.et al.(1998)J.Immunol 161:3598-3606
【文献】Zang et al.(2001)Proc Natl Acd Sci USA 98:3964-3969
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示は、HLA提示ニューヨーク食道扁平上皮がん1(NY-ESO-1)ペプチドの立体構造エピトープに特異的に結合する抗原結合タンパク質を提供する。本開示の抗原結合タンパク質は、HLA提示NY-ESO-1に高い特異度で結合し、2つ、3つ、4つ、5つ、またはそれ以上のアミノ酸によって異なるHLA提示ペプチドに結合しない。本開示の抗原結合タンパク質は、NY-ESO-1を発現するがん細胞などの、NY-ESO-1ペプチド提示細胞(すなわち、それらの表面に、MHC分子、例えば、HLA-A2に結合したNY-ESO-1ペプチドを提示する細胞)の特異的な標的化を可能にし、いくつかの実施形態において、例えば、かかる細胞のT細胞媒介性殺傷を刺激するために、T細胞活性化を刺激する。さらに、検出可能な部分に融合される場合、本開示の抗原結合タンパク質は、NY-ESO-1ペプチド提示細胞の数および分布の変化に対して高い感度でNY-ESO-1陽性疾患または障害の診断および予後診断を可能にし、循環するNY-ESO-1レベルよりも疾患進行の関連性の高い尺度である。
【0009】
本開示の抗原結合タンパク質は、全長(例えば、IgG1またはIgG4抗体)抗体などの抗体であり得るか、または抗体の抗原結合部分(例えば、Fab、F(ab’)、またはscFv断片)のみを含み得、例えば、残留エフェクター機能を排除するために、機能性に影響を及ぼすように改変され得る(Reddy et al.,2000,J.Immunol.164:1925-1933)。いくつかの実施形態において、本開示の抗原結合タンパク質は、抗体、またはその抗原結合断片であり得る。特定の実施形態において、抗原結合タンパク質は、二重特異的であり得る。
【0010】
第1の態様において、本開示は、HLA提示ニューヨーク食道扁平上皮がん1(NY-ESO-1)ペプチドの立体構造エピトープ、例えば、NY-ESO-1のアミノ酸残基157~165を含むHLA提示ペプチドなどに、特異的に結合する組換え抗原結合タンパク質を提供する。特定の実施形態において、抗原結合タンパク質は、抗体である。いくつかの実施形態において、抗体は、完全にヒトのものである。
【0011】
例示的な抗HLA-A2:NY-ESO-1抗原結合タンパク質は、本明細書において表1および2に列挙される。表1は、例示的な抗HLA-A2:NY-ESO-1抗体の重鎖可変領域(HCVR)、軽鎖可変領域(LCVR)、重鎖相補性決定領域(HCDR1、HCDR2、およびHCDR3)、および軽鎖相補性決定領域(LCDR1、LCDR2、およびLCDR3)のアミノ酸配列識別子を示す。表2は、例示的な抗HLA-A2:NY-ESO-1抗体のHCVR、LCVR、HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、およびLCDR3の核酸配列識別子を示す。
【0012】
本開示は、表1に列挙されるHCVRアミノ酸配列のうちのいずれかから選択されるアミノ酸配列、またはそれと少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、少なくとも99.9%、もしくは100%の配列同一性を有するその実質的に類似の配列を含むHCVRを含む抗原結合タンパク質を提供する。いくつかの実施形態において、100%未満の配列同一性を有する抗原結合タンパク質は、表1のHCVRからのCDR配列を含む。例えば、かかる抗原結合タンパク質は、それらのCDR配列を含むことができるが、表1のHCVRと比較してフレームワーク領域において差異を有する。
【0013】
本開示はまた、表1に列挙されるLCVRアミノ酸配列のうちのいずれかから選択されるアミノ酸配列、またはそれと少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、少なくとも99.9%、もしくは100%の配列同一性を有するその実質的に類似の配列を含むLCVRを含む抗原結合タンパク質を提供する。いくつかの実施形態において、100%未満の配列同一性を有する抗原結合タンパク質は、表1のLCVRからのCDR配列を含む。例えば、かかる抗原結合タンパク質は、それらのCDR配列を含むことができるが、表1のLCVRと比較してフレームワーク領域において差異を有する。
【0014】
本開示はまた、表1に列挙されるLCVRアミノ酸配列のうちのいずれかと対になる表1に列挙されるHCVRアミノ酸配列のうちのいずれかを含む、HCVRのアミノ酸配列およびLCVRのアミノ酸配列の対(HCVR/LCVR)を含む抗原結合タンパク質を提供する。特定の実施形態により、本開示は、表1に列挙される例示的な抗HLA-A2:NY-ESO-1抗原結合タンパク質のうちのいずれか内に含まれるHCVR/LCVRアミノ酸配列対を含む抗原結合タンパク質を提供する。特定の実施形態において、HCVR/LCVRアミノ酸配列対は、配列番号2/10、22/30、42/50、62/70、82/90、102/110、122/130、142/150、162/170、180/186、196/203、211/219、および230/238からなる群から選択される。特定の実施形態において、HCVR/LCVRアミノ酸配列対は、配列番号2/10(例えば、mAb24955N)、22/30(例えば、mAb24956N)、42/50(例えば、mAb24958N)、および62/70(例えば、mAb24959N)のうちの1つから選択される。
【0015】
特定の実施形態において、本開示は、HCVRおよびLCVRを含む抗HLA-A2:NY-ESO-1抗原結合タンパク質を提供し、当該HCVRは、5つ以下のアミノ酸置換を有する表1に列挙されるアミノ酸配列を含み、当該LCVRは、5つ以下のアミノ酸置換を有する表1に列挙されるアミノ酸配列を含む。例えば、本開示は、HCVRおよびLCVRを含む抗HLA-A2:NY-ESO-1抗原結合タンパク質を提供し、当該HCVRは、5つ以下のアミノ酸置換を有する配列番号2のアミノ酸配列を含み、当該LCVRは、5つ以下のアミノ酸置換を有する配列番号10のアミノ酸配列を含む。別の例示的な実施形態において、本開示は、HCVRおよびLCVRを含む抗HLA-A2:NY-ESO-1抗原結合タンパク質を提供し、当該HCVRは、少なくとも1つのアミノ酸置換を有する配列番号2のアミノ酸配列を含み、当該LCVRは、少なくとも1つのアミノ酸置換を有する配列番号10のアミノ酸配列を含む。
【0016】
本開示はまた、表1に列挙されるHCDR1アミノ酸配列のうちのいずれかから選択されるアミノ酸配列、または少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に類似の配列を含む重鎖CDR1(HCDR1)を含む抗原結合タンパク質を提供する。
【0017】
本開示はまた、表1に列挙されるHCDR2アミノ酸配列のうちのいずれかから選択されるアミノ酸配列、または少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に類似の配列を含む重鎖CDR2(HCDR2)を含む抗原結合タンパク質を提供する。
【0018】
本開示はまた、表1に列挙されるHCDR3アミノ酸配列のうちのいずれかから選択されるアミノ酸配列、または少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に類似の配列を含む重鎖CDR3(HCDR3)を含む抗原結合タンパク質を提供する。
【0019】
本開示はまた、表1に列挙されるLCDR1アミノ酸配列のうちのいずれかから選択されるアミノ酸配列、または少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に類似の配列を含む軽鎖CDR1(LCDR1)を含む抗原結合タンパク質を提供する。
【0020】
本開示はまた、表1に列挙されるLCDR2アミノ酸配列のうちのいずれかから選択されるアミノ酸配列、または少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に類似の配列を含む軽鎖CDR2(LCDR2)を含む抗原結合タンパク質を提供する。
【0021】
本開示はまた、表1に列挙されるLCDR3アミノ酸配列のうちのいずれかから選択されるアミノ酸配列、または少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に類似の配列を含む軽鎖CDR3(LCDR3)を含む抗原結合タンパク質を提供する。
【0022】
本開示はまた、表1に列挙されるLCDR3アミノ酸配列のうちのいずれかと対になる表1に列挙されるHCDR3アミノ酸配列のうちのいずれかを含む、HCDR3のアミノ酸配列およびLCDR3のアミノ酸配列の対(HCDR3/LCDR3)を含む抗原結合タンパク質を提供する。特定の実施形態により、本開示は、表1に列挙される例示的な抗HLA-A2:NY-ESO-1抗原結合タンパク質のうちのいずれか内に含まれるHCDR3/LCDR3アミノ酸配列対を含む抗原結合タンパク質を提供する。特定の実施形態において、HCDR3/LCDR3アミノ酸配列対は、配列番号8/16(例えば、mAb24955N)、28/36(例えば、mAb24956N)、48/56(例えば、mAb25958N)、および68/76(例えば、mAb24959N)からなる群から選択される。
【0023】
本開示はまた、HCVRおよびLCVRを含む抗原結合タンパク質を提供し、当該HCVRは、表1に列挙されるアミノ酸配列とは1つのアミノ酸で異なるアミノ酸配列を含むHCDR1と、表1に列挙されるアミノ酸配列とは1つのアミノ酸で異なるアミノ酸配列を含むHCDR2と、表1に列挙されるアミノ酸配列とは1つのアミノ酸で異なるアミノ酸配列を含むHCDR3と、を含む。特定の実施形態において、本開示は、HCVRおよびLCVRを含む抗原結合タンパク質を提供し、当該LCVRは、表1に列挙されるアミノ酸配列とは1つのアミノ酸で異なるアミノ酸配列を含むLCDR1と、表1に列挙されるアミノ酸配列とは1つのアミノ酸で異なるアミノ酸配列を含むLCDR2と、表1に列挙されるアミノ酸配列とは1つのアミノ酸で異なるアミノ酸配列を含むLCDR3と、を含む。例えば、本開示は、HCVRおよびLCVRを含む抗HLA-A2:NY-ESO-1抗原結合タンパク質を提供し、当該HCVRは、配列番号4のアミノ酸配列または配列番号4とは1つのアミノ酸で異なるアミノ酸配列を含むHCDR1と、配列番号6のアミノ酸配列または配列番号6とは1つのアミノ酸で異なるアミノ酸配列を含むHCDR2と、配列番号8のアミノ酸配列または配列番号8とは1つのアミノ酸で異なるアミノ酸配列を含むHCDR3と、を含む。別の例示的な実施形態において、本開示は、HCVRおよびLCVRを含む抗原結合タンパク質を提供し、当該LCVRは、配列番号12のアミノ酸配列または配列番号12とは1つのアミノ酸で異なるアミノ酸配列を含むLCDR1と、配列番号14のアミノ酸配列または配列番号14とは1つのアミノ酸で異なるアミノ酸配列を含むLCDR2と、配列番号16のアミノ酸配列または配列番号16とは1つのアミノ酸で異なるアミノ酸配列を含むLCDR3と、を含む。
【0024】
本開示はまた、表1に列挙される例示的な抗原結合タンパク質のうちのいずれか内に含まれる6つのCDRのセット(すなわち、HCDR1-HCDR2-HCDR3-LCDR1-LCDR2-LCDR3)を含む抗原結合タンパク質を提供する。特定の実施形態において、HCDR1-HCDR2-HCDR3-LCDR1-LCDR2-LCDR3アミノ酸配列セットは、配列番号4-6-8-12-14-16(例えば、mAb24955N)、24-26-28-32-34-36(例えば、mAb24956N)、44-46-48-52-54-56(例えば、mAb24958N)、および64-66-68-72-74-76(例えば、mAb24959N)からなる群から選択される。
【0025】
関連する実施形態において、本開示は、表1に列挙される例示的な抗原結合タンパク質のうちのいずれかによって定義されるHCVR/LCVRアミノ酸配列対内に含まれる6つのCDRのセット(すなわち、HCDR1-HCDR2-HCDR3-LCDR1-LCDR2-LCDR3)を含む抗原結合タンパク質を提供する。例えば、本開示は、配列番号2/10(例えば、mAb24955N)、22/30(例えば、mAb24956N)、42/50(例えば、mAb24958N)、および62/70(例えば、mAb24959N)からなる群から選択されるHCVR/LCVRアミノ酸配列対内に含まれるHCDR1-HCDR2-HCDR3-LCDR1-LCDR2-LCDR3アミノ酸配列セットを含む抗原結合タンパク質を含む。
【0026】
HCVRおよびLCVRアミノ酸配列内のCDRを特定するための方法および技法は当該技術分野において周知であり、本明細書に開示される明示されたHCVRおよび/またはLCVRアミノ酸配列内のCDRを特定するために使用することができる。CDRの境界を特定するために使用することができる例示的な規則には、例えば、Kabat定義、Chothia定義、およびAbM定義が含まれる。概説すると、Kabat定義は、配列多様性に基づき、Chothia定義は、構造ループ領域の位置に基づき、AbM定義は、KabatとChothiaとのアプローチ間の折衷である。例えば、Kabat,”Sequences of Proteins of Immunological Interest,”National Institutes of Health,Bethesda,Md.(1991)、Al-Lazikani et al.,J.Mol.Biol.273:927-948(1997)、およびMartin et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA86:9268-9272(1989)を参照されたい。公開データベースも抗原結合タンパク質内のCDR配列を特定するために利用可能である。
【0027】
本開示は、修飾グリコシル化パターンを有する抗HLA-A2:NY-ESO-1抗原結合パターンを含む。いくつかの実施形態において、望ましくないグリコシル化部位を除去する修飾が有用であり得、すなわち、オリゴ糖鎖に存在するフコース部分を欠いている抗体は、例えば、抗体依存性細胞傷害性(ADCC)機能を増加させる(Shield et al.(2002)JBC 277:26733を参照)。他の用途において、ガラクトシル化の修飾は、補体依存性細胞傷害作用(CDC)を改変するために行うことができる。
【0028】
特定の実施形態において、本開示の抗原結合タンパク質は、表1に列挙されるLCVRアミノ酸配列のうちのいずれかと対となる表1に列挙されるHCVRアミノ酸配列のうちのいずれかを含む、HCVRのアミノ酸配列およびLCVRのアミノ酸配列の対(HCVR/LCVR)を含むモノクローナル抗体である。特定の実施形態において、モノクローナル抗体は、IgA、IgD、IgE、IgG、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgM、およびそのバリアントからなる群から選択されるアイソタイプのFcドメインを含む。
【0029】
本開示は、表3に列挙されるHCアミノ酸配列のうちのいずれかから選択されるアミノ酸配列、またはそれと少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に類似の配列を含む重鎖を含む、抗原結合タンパク質、またはその抗原結合断片を提供する。いくつかの実施形態において、100%未満の配列同一性を有する抗原結合タンパク質は、表3のHCからのCDR配列を含む。例えば、かかる抗原結合タンパク質は、それらのCDR配列を含むことができるが、表3のHCと比較してフレームワーク領域において差異を有する。
【0030】
本開示はまた、表3に列挙されるLCアミノ酸配列のうちのいずれかから選択されるアミノ酸配列、またはそれと少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に類似の配列を含む軽鎖を含む、抗原結合タンパク質、またはその抗原結合断片を提供する。いくつかの実施形態において、100%未満の配列同一性を有する抗原結合タンパク質は、表3のLCからのCDR配列を含む。例えば、かかる抗原結合タンパク質は、それらのCDR配列を含むことができるが、表3のLCと比較してフレームワーク領域において差異を有する。
【0031】
本開示はまた、表3に列挙されるLCアミノ酸配列のうちのいずれかと対になる表3に列挙されるHCアミノ酸配列のうちのいずれかを含む、HCのアミノ酸配列およびLCのアミノ酸配列の対(HC/LC)を含む、抗原結合タンパク質、またはその抗原結合断片を提供する。特定の実施形態により、本開示は、表3に列挙される例示的な抗NY-ESO-1抗体のうちのいずれか内に含まれるHC/LCアミノ酸配列対を含む抗体、またはその抗原結合断片を提供する。特定の実施形態において、HC/LCアミノ酸配列対は、配列番号18/20、38/40、58/60、および78/80からなる群から選択される。特定の実施形態において、HC/LCアミノ酸配列対は、配列番号18/20、38/40、58/60、および78/80からなる群から選択される。
【0032】
一態様において、本開示は、HLA-ペプチド複合体に結合する抗原結合タンパク質またはその抗原結合断片を提供し、抗原結合タンパク質またはその抗原結合断片は、HLA-ペプチド複合体に含まれるペプチドのアミノ酸残基の少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、もしくは少なくとも90%に接触する。特定の実施形態において、抗原結合タンパク質またはその抗原結合断片は、HLA-ペプチド複合体に含まれるペプチドのアミノ酸残基のすべてを「覆う」か、またはそれらすべてに接触する。特定の実施形態において、抗原結合タンパク質またはその抗原結合断片は、HLA-ペプチド複合体に高い親和性および特異性で結合し、抗原結合タンパク質またはその抗原結合断片は、提示ペプチドの全長に接触する。「接触」は、本明細書で使用される場合、直接的または水媒介性の水素結合、電荷-電荷相互作用、または疎水性/ファンデルワールス相互作用を含む。一実施形態において、抗原結合タンパク質またはその抗原結合断片は、HLA-A2-NY-ESO-1 157~165ペプチド複合体に結合し、抗原結合タンパク質は、ペプチド157~165(配列番号269)の9つのアミノ酸残基のうちの少なくとも3つに結合し、かつ抗原結合タンパク質がHLA-A2ペプチド結合溝におけるペプチドで大まかに中心化されるようにHLA-A2に結合して、それによって、HLA-A2ペプチド複合体を「覆う」(物理的に遮断する)。別の実施形態において、抗原結合タンパク質またはその抗原結合断片は、HLA-A2-NY-ESO-1 157~165ペプチド複合体に結合し、抗原結合タンパク質は、ペプチド157~165(配列番号270または291)の9つのアミノ酸残基のうちの少なくとも3つに結合し、かつ抗原結合タンパク質がHLA-A2ペプチド結合溝におけるペプチドで大まかに中心化されるようにHLA-A2に結合して、それによって、HLA-A2ペプチド複合体を「覆う」(物理的に遮断する)。特定の実施形態において、抗原結合タンパク質またはその抗原結合断片は、HCVRのCDRおよびLCVRのCDRを含み、HCVRおよびLCVRの各々は、表1に列挙されるHCVRおよびLCVR配列から選択されるアミノ酸配列を有する。一実施形態において、抗原結合タンパク質は、完全にヒトのものである。特定の実施形態において、完全にヒトの抗原結合タンパク質は、ファージディスプレイ法および技術を使用して得られない。いくつかの実施形態において、抗原結合タンパク質は、IGKV1-39サブタイプの軽鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態において、抗原結合タンパク質は、IGKJ1サブタイプの軽鎖可変領域を含む。
【0033】
特定の実施形態において、本開示は、HLA-A2:NY-ESO-1 157~165ペプチド複合体に結合する抗原結合タンパク質またはその抗原結合断片を提供し、抗原結合タンパク質は、配列番号269の1つ以上のアミノ酸に結合する。一実施形態において、抗原結合タンパク質は、配列番号269の少なくとも3つのアミノ酸に結合する。
【0034】
特定の実施形態において、本開示は、HLA-A2:NY-ESO-1 157~165ペプチド複合体に結合する抗原結合タンパク質またはその抗原結合断片を提供し、抗原結合タンパク質は、配列番号270または291の1つ以上のアミノ酸に結合する。一実施形態において、抗原結合タンパク質は、配列番号270または291の少なくとも3つのアミノ酸に結合する。一実施形態において、抗原結合タンパク質は、配列番号270のM160、W161、およびQ164からなる群から選択される1つ以上のアミノ酸に結合する。
【0035】
特定の実施形態において、本開示は、HLA提示ニューヨーク食道扁平上皮がん1(NY-ESO-1)ペプチドの立体構造エピトープに特異的に結合する抗原結合タンパク質を提供し、立体構造エピトープは、配列番号269の1つ以上のアミノ酸を含む。
【0036】
特定の実施形態において、本開示は、HLA提示ニューヨーク食道扁平上皮がん1(NY-ESO-1)ペプチドの立体構造エピトープに特異的に結合する抗原結合タンパク質を提供し、立体構造エピトープは、配列番号270または291の1つ以上のアミノ酸を含む。特定の実施形態において、立体構造エピトープは、配列番号270または291のM160、W161、およびQ164からなる群から選択される1つ以上のアミノ酸を含む。
【0037】
本開示はまた、HLA-A2:NY-ESO-1との特異的結合について、HCVRのCDRおよびLCVRのCDRを含む抗原結合タンパク質と競合する抗原結合タンパク質を提供し、HCVRおよびLCVRの各々は、表1に列挙されるHCVRおよびLCVR配列から選択されるアミノ酸配列を有する。
【0038】
本開示はまた、HLA-A2:NY-ESO-1との結合について、HCVRのCDRおよびLCVRのCDRを含む参照抗原結合タンパク質と交差競合する抗原結合タンパク質を提供し、HCVRおよびLCVRの各々は、表1に列挙されるHCVRおよびLCVR配列から選択されるアミノ酸配列を有する。
【0039】
本開示はまた、HCVRのCDRおよびLCVRのCDRを含む参照抗原結合タンパク質と同じエピトープに結合する抗原結合タンパク質を提供し、HCVRおよびLCVRの各々は、表1に列挙されるHCVRおよびLCVR配列から選択されるアミノ酸配列を有する。特定の実施形態において、本開示は、HCVRのCDRおよびLCVRのCDRを含む参照抗原結合タンパク質と同じエピトープに結合する抗原結合タンパク質を提供し、HCVRは、配列番号2、22、42、および62からなる群から選択され、LCVRは、配列番号10、30、50、および、70からなる群から選択される。
【0040】
一実施形態において、本開示は、HLA-A2提示ニューヨーク食道扁平上皮がん1(NY-ESO-1)ペプチドの立体構造エピトープに特異的に結合する組換え抗原結合タンパク質を提供し、抗原結合タンパク質は、(a)表面プラズモン共鳴アッセイにおいて25℃で測定されるときに、単量体HLA-A2:NY-ESO-1 157~165ペプチド複合体(C165またはV165)に約1nM未満の結合解離平衡定数(K)で結合する特性、(b)フローサイトメトリーアッセイによって決定されるときに、HLA-A2:NY-ESO-1 157~165ペプチド複合体発現細胞に約10nM未満のEC50で結合し、予測されるオフターゲットペプチドを発現する細胞に結合しない特性、および(c)エピトープが、配列番号269、270、または291の1つ以上のアミノ酸を含む特性からなる群から選択される特性を有する。本明細書の他の箇所に開示されるように、「オフターゲットペプチド」は、標的ペプチド(例えば、NY-ESO-1 157~165ペプチド(配列番号269および/または配列番号270もしくは291))とは2つ、3つ、4つ、5つ、またはそれ以上のアミノ酸で異なるペプチドを指す。
【0041】
第2の態様において、本開示は、抗HLA-A2:NY-ESO-1抗原結合タンパク質をコードする核酸分子を提供する。例えば、本開示は、表1に列挙されるHCVRアミノ酸配列のうちのいずれかをコードする核酸分子を提供し、特定の実施形態において、核酸分子は、表2に列挙されるHCVR核酸配列のうちのいずれかから選択されるポリヌクレオチド配列、またはそれと少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に類似の配列を含む。
【0042】
本開示はまた、表1に列挙されるLCVRアミノ酸配列のうちのいずれかをコードする核酸分子を提供し、特定の実施形態において、核酸分子は、表2に列挙されるLCVR核酸配列のうちのいずれかから選択されるポリヌクレオチド配列、またはそれと少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に類似の配列を含む。
【0043】
本開示はまた、表1に列挙されるHCDR1アミノ酸配列のうちのいずれかをコードする核酸分子を提供し、特定の実施形態において、核酸分子は、表2に列挙されるHCDR1核酸配列のうちのいずれかから選択されるポリヌクレオチド配列、またはそれと少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に類似の配列を含む。
【0044】
本開示はまた、表1に列挙されるHCDR2アミノ酸配列のうちのいずれかをコードする核酸分子を提供し、特定の実施形態において、核酸分子は、表2に列挙されるHCDR2核酸配列のうちのいずれかから選択されるポリヌクレオチド配列、またはそれと少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に類似の配列を含む。
【0045】
本開示はまた、表1に列挙されるHCDR3アミノ酸配列のうちのいずれかをコードする核酸分子を提供し、特定の実施形態において、核酸分子は、表2に列挙されるHCDR3核酸配列のうちのいずれかから選択されるポリヌクレオチド配列、またはそれと少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に類似の配列を含む。
【0046】
本開示はまた、表1に列挙されるLCDR1アミノ酸配列のうちのいずれかをコードする核酸分子を提供し、特定の実施形態において、核酸分子は、表2に列挙されるLCDR1核酸配列のうちのいずれかから選択されるポリヌクレオチド配列、またはそれと少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に類似の配列を含む。
【0047】
本開示はまた、表1に列挙されるLCDR2アミノ酸配列のうちのいずれかをコードする核酸分子を提供し、特定の実施形態において、核酸分子は、表2に列挙されるLCDR2核酸配列のうちのいずれかから選択されるポリヌクレオチド配列、またはそれと少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に類似の配列を含む。
【0048】
本開示はまた、表1に列挙されるLCDR3アミノ酸配列のうちのいずれかをコードする核酸分子を提供し、特定の実施形態において、核酸分子は、表2に列挙されるLCDR3核酸配列のうちのいずれかから選択されるポリヌクレオチド配列、またはそれと少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に類似の配列を含む。
【0049】
本開示はまた、HCVRをコードする核酸分子を提供し、HCVRは、3つのCDRのセット(すなわち、HCDR1-HCDR2-HCDR3)を含み、HCDR1-HCDR2-HCDR3アミノ酸配列セットは、表1に列挙される例示的な抗HLA-A2:NY-ESO-1抗原結合タンパク質のうちのいずれかによって定義されるとおりである。
【0050】
本開示はまた、LCVRをコードする核酸分子を提供し、LCVRは、3つのCDRのセット(すなわち、LCDR1-LCDR2-LCDR3)を含み、LCDR1-LCDR2-LCDR3アミノ酸配列セットは、表1に列挙される例示的な抗HLA-A2:NY-ESO-1抗原結合タンパク質のうちのいずれかによって定義されるとおりである。
【0051】
本開示はまた、HCVRおよびLCVRの両方をコードする核酸分子を提供し、HCVRは、表1に列挙されるHCVRアミノ酸配列のうちのいずれかのアミノ酸配列を含み、LCVRは、表1に列挙されるLCVRアミノ酸配列のうちのいずれかのアミノ酸配列を含む。特定の実施形態において、核酸分子は、表2に列挙されるHCVR核酸配列のうちのいずれかから選択されるポリヌクレオチド配列、またはそれと少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に類似の配列と、表2に列挙されるLCVR核酸配列のうちのいずれかから選択されるポリヌクレオチド配列、またはそれと少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に類似の配列と、を含む。本開示のこの態様による特定の実施形態において、核酸分子は、HCVRおよびLCVRをコードし、HCVRおよびLCVRの両方は、表1に列挙される同じ抗HLA-A2:NY-ESO-1抗原結合タンパク質に由来する。
【0052】
本開示は、表3に列挙される重鎖アミノ酸配列のうちのいずれかをコードする核酸分子を提供する。本開示はまた、表3に列挙される軽鎖アミノ酸配列のうちのいずれかをコードする核酸分子を提供する。
【0053】
本開示はまた、重鎖(HC)および軽鎖(LC)の両方をコードする核酸分子を提供し、HCは、表3に列挙されるHCアミノ酸配列のうちのいずれかのアミノ酸配列を含み、LCは、表3に列挙されるLCアミノ酸配列のうちのいずれかのアミノ酸配列を含む。
【0054】
関連する態様において、本開示は、抗HLA-A2:NY-ESO-1抗原結合タンパク質の重鎖および/または軽鎖可変領域を含むポリペプチドを発現することができる組換え発現ベクターを提供する。例えば、本開示は、上記核酸分子、すなわち、表1に示されるHCVR、LCVR、および/またはCDR配列のうちのいずれかをコードする核酸分子のうちのいずれかを含む、組換え発現ベクターを含む。本開示はまた、抗HLA-A2:NY-ESO-1抗原結合タンパク質の重鎖および/または軽鎖を含むポリペプチドを発現することができる組換え発現ベクターを提供する。例えば、本開示は、上記核酸分子、すなわち、表2に示される重鎖または軽鎖配列のうちのいずれかをコードする核酸分子のうちのいずれかを含む組換え発現ベクターを含む。本開示の範囲には、かかるベクターが導入されている宿主細胞、ならびに抗原結合タンパク質の産生を可能にする条件下で宿主細胞を培養することによって抗原結合タンパク質を産生し、そのように産生された抗原結合タンパク質を回収する方法も含まれる。
【0055】
第3の態様において、本開示は、HLA-A2提示NY-ESO-1ペプチド(例えば、NY-ESO-1のアミノ酸残基157~165を含むペプチド)の立体構造エピトープに特異的に結合する治療有効量の組換え抗原結合タンパク質と、薬学的に許容される担体と、を含む医薬組成物を提供する。関連する態様において、本開示は、抗HLA-A2:NY-ESO-1抗原結合タンパク質と、第2の治療剤との組み合わせである組成物を特徴とする。一実施形態において、第2の治療剤は、抗HLA-A2:NY-ESO-1抗原結合タンパク質と有利に組み合わされる任意の薬剤である。抗HLA-A2:NY-ESO-1抗原結合タンパク質と有利に組み合わせられ得る例示的な薬剤には、限定されないが、免疫細胞活性化を調節する他の薬剤が含まれる。本開示の抗HLA-A2:NY-ESO-1抗原結合タンパク質と組み合わせて使用することができる追加療法は、本明細書の他の場所に開示される。
【0056】
第4の態様において、本開示は、NY-ESO-1陽性がんなどのNY-ESO-1関連疾患または障害を有する対象を治療する方法を提供する。本方法は、治療有効量の本開示の抗HLA-A2:NY-ESO-1抗原結合タンパク質または本開示の医薬組成物を、それを必要とする対象に投与することを含む。治療される障害は、本明細書で提供される抗原結合タンパク質および組成物によって改善、寛解、阻害、または防止される任意の疾患または状態である。特定の実施形態において、本開示の抗原結合タンパク質(または医薬組成物)は、第2の治療剤と組み合わせて、それを必要とする対象に投与される。第2の治療剤は、T細胞共抑制物質に対する抗体、腫瘍細胞抗原に対する抗体、T細胞受容体に対する抗体、細胞傷害剤、抗がん剤、抗炎症剤(例えば、コルチコステロイド)、化学療法剤、手術、放射線療法、免疫抑制剤、および当該技術分野において既知の任意の他の薬物または療法からなる群から選択され得る。特定の実施形態において、第2の治療剤は、本開示の抗原結合タンパク質に関連する任意の可能性のある副作用を、かかる副作用が生じる場合に、相殺または低減するのに役立つ薬剤であり得る。
【0057】
特定の実施形態において、本開示は、NY-ESO-1関連がんの増殖を抑制するための方法を提供する。例えば、本開示は、対象における原発性腫瘍または転移性腫瘍による腫瘍増殖を抑制する方法を提供する。特定の実施形態において、本開示は、NY-ESO-1関連がんを有する対象の生存(例えば、無増悪生存または全生存)を高める方法を提供する。がんの例には、脂肪肉腫、神経芽腫、骨髄腫、転移性黒色腫、滑膜肉腫、膀胱がん、食道がん、肝細胞がん、頭頸部がん、非小細胞肺がん、卵巣がん、前立腺がん、乳がん、星状細胞腫瘍、多形性膠芽腫、未分化星状細胞腫、脳腫瘍、卵管がん、卵巣上皮がん、原発性腹腔がん、進行性固形腫瘍、軟組織肉腫、黒色腫、肉腫、骨髄異形成症候群、急性骨髄性白血病、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、ホジキン病、多発性骨髄腫、滑膜肉腫、転移性固形腫瘍、食道がん、横紋筋肉腫、進行性粘液様円形細胞脂肪肉腫、転移性黒色腫、または再発性非小細胞肺がんが含まれるが、これらに限定されない。
【0058】
特定の実施形態において、本開示は、確立された腫瘍の増殖を阻害または抑制するための方法を提供する。本方法は、治療有効量の本開示の抗原結合タンパク質を含む医薬組成物を、それを必要とする対象に投与することを含む。特定の実施形態において、抗原結合タンパク質は、第2の治療剤と組み合わせて投与される。
【0059】
抗原結合タンパク質、例えば、抗体、またはその抗原結合断片は、皮下、静脈内、皮内、腹腔内、経口、筋肉内、または頭蓋内によって投与され得る。抗原結合タンパク質、例えば、抗体またはその抗原結合断片は、対象の体重の約0.1mg/kg~約100mg/kgの用量で投与され得る。
【0060】
第5の態様において、本開示は、キメラ抗原受容体(CAR)をコードする単離された核酸分子、またはかかるCARを発現する細胞(例えば、CARを表面で発現する細胞)を提供する。CARは、HLA提示ニューヨーク食道扁平上皮がん1(NY-ESO-1)ペプチドの立体構造エピトープ、例えば、NY-ESO-1のアミノ酸残基157~165に特異的に結合する細胞外結合ドメイン、膜貫通ドメイン、および細胞内シグナル伝達ドメインを含み得る。一実施形態において、細胞外結合ドメインは、抗HLA-A2:NY-ESO-1抗原結合タンパク質またはその抗原結合断片である。本開示の例示的な抗HLA-A2:NY-ESO-1抗原結合タンパク質は、本明細書に記載の抗原結合タンパク質のうちのいずれかである。
【0061】
例えば、特定の実施形態において、本開示のCARにおける使用のために好適である抗原結合タンパク質は、表1に列挙される重鎖可変領域(HCVR)配列のうちのいずれか1つに含まれる3つの重鎖相補性決定領域(CDR)(HCDR1、HCDR2、およびHCDR3)と、表1に列挙される軽鎖可変領域(LCVR)配列のうちのいずれか1つに含まれる3つの軽鎖CDR(LCDR1、LCDR2、およびLCDR3)と、を含む。
【0062】
他の実施形態において、本開示のCARにおける使用のために好適である抗原結合タンパク質は、表1に列挙されるHCVR配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するHCVR、および/または表1に列挙されるLCVR配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するLCVRを含む。
【0063】
いくつかの実施形態において、本開示のCARにおける使用のために好適である抗原結合タンパク質は、(a)表1に列挙されるHCVR配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するHCVRと、(b)表1に列挙されるLCVR配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するLCVRと、を含む。
【0064】
一実施形態において、本開示のCARにおける使用のために好適である抗原結合タンパク質は、(a)配列番号4、24、44、64、84、104、124、144、164、213、および232からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するHCDR1ドメインと、(b)配列番号6、26、46、66、86、106、126、146、166、182、199、215、および234からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するHCDR2ドメインと、(c)配列番号8、28、48、68、88、108、128、148、168、184、201、217、および236からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するHCDR3ドメインと、(d)配列番号12、32、52、72、92、112、132、152、172、188、221、および240からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するLCDR1ドメインと、(e)配列番号14、34、54、74、94、114、134、154、174、および242からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するLCDR2ドメインと、(f)配列番号16、36、56、76、96、116、136、156、190、205、224、および244からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するLCDR3ドメインと、を含む。
【0065】
さらなる実施形態において、本開示のCARにおける使用のために好適である抗原結合タンパク質は、配列番号2/10、22/30、42/50、62/70、82/90、102/110、122/130、142/150、162/170、180/186、196/203、211/219、および230/238からなる群から選択されるHCVR/LCVRアミノ酸配列対を含む。
【0066】
いくつかの実施形態において、本開示のCARにおける使用のための抗原結合タンパク質は、scFvである。
【0067】
他の態様において、本開示は、単離されたCAR核酸分子を含むベクター、およびかかるベクターを含む免疫エフェクター細胞を提供する。
【0068】
本開示のさらなる他の態様において、NY-ESO-1陽性がん、例えば、脂肪肉腫、神経芽腫、骨髄腫、転移性黒色腫、滑膜肉腫、膀胱がん、食道がん、肝細胞がん、頭頸部がん、非小細胞肺がん、卵巣がん、前立腺がん、乳がん、星状細胞腫瘍、多形性膠芽腫、未分化星状細胞腫、脳腫瘍、卵管がん、卵巣上皮がん、原発性腹腔がん、進行性固形腫瘍、軟組織肉腫、黒色腫、肉腫、骨髄異形成症候群、急性骨髄性白血病、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、ホジキン病、多発性骨髄腫、滑膜肉腫、転移性固形腫瘍、食道がん、横紋筋肉腫、進行性粘液様円形細胞脂肪肉腫、転移性黒色腫、または再発性非小細胞肺がん、などのNY-ESO-1関連疾患または障害を有する対象を治療するための方法が提供される。本方法は、対象に、本開示のCARを含む免疫エフェクター細胞の集団を投与することを含む。
【0069】
いくつかの態様において、本開示は、例えば、対象または対象から得られる試料において、NY-ESO-1陽性細胞を検出するための方法を提供する。本方法は、検出可能な部分を含む本開示の抗原結合タンパク質を、対象から得られる細胞試料などの細胞に接触させるか、または対象に投与することと、検出可能な部分の存在を検出することと、を含む。
【0070】
他の実施形態は、後述の詳細な説明のレビューから明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0071】
図1A】3つの異なるCAR構築物の図を示し、プロモーターおよびベクター要素を含む。
図1B】非結合対照BB/z CAR(対照CAR T)、抗HLA-A2/NY-ESO-1157~165BB/z CAR、または抗HLA-A2/NY-ESO-1157~16528/z CARのいずれかを発現するT細胞によって、0~21日間にわたって処置したマウスにおける腫瘍体積を示す。左パネル:平均腫瘍体積、右パネル:個別マウスの腫瘍体積。
図1C】非結合対照BB/z CAR(対照CAR T)、抗HLA-A2/NY-ESO-1157~165BB/z CAR、または抗HLA-A2/NY-ESO-1157~16528/z CARのいずれかを発現するT細胞によって、0~38日間にわたって処置したマウスにおける腫瘍体積を示す。左パネル:平均腫瘍体積、右パネル:個別マウスの腫瘍体積。
【発明を実施するための形態】
【0072】
本方法を説明する前に、本開示は、記載される特定の方法および実験条件に限定されないと理解されるべきであり、それはかかる方法および条件が変化し得るためである。本明細書で使用される用語は、特定の実施形態のみを説明する目的のためのものであり、限定することは意図されていないことも理解されるべきであり、それは本開示の範囲は添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるためである。
【0073】
別途定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本開示が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書に記載されるものと類似または等価の任意の方法および材料を本開示の実施または試験に使用することができるが、好ましい方法および材料がここで説明される。本明細書で言及されるすべての刊行物は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0074】
「NY-ESO-1」、「NY-ESO-1」、「ニューヨーク食道扁平上皮がん1」、および「CTAG1B」という用語は、多数のがんタイプにおいて再発現され、CTAG1B遺伝子によってコードされる、周知のがん-精巣抗原(CTA)を指す。
【0075】
全長NY-ESO-1のアミノ酸配列は、GenBankにおいて登録番号NP_001318.1(配列番号271)として提供される。「NY-ESO-1」という用語は、組換えNY-ESO-1またはその断片を含む。本用語はまた、例えば、ヒスチジンタグ、マウスもしくはヒトFc、またはROR1などのシグナル配列に結合したNY-ESO-1またはその断片も包含する。特定の実施形態において、本用語は、HLA-A2との関連でHLA-A2に連結されているか、またはHLA-A2によって提示されるような、NY-ESO-1またはその断片を含む。
【0076】
特定の実施形態において、NY-ESO-1ペプチドは、配列番号271のアミノ酸157~165(SLLMWITQC(配列番号269))を含み、本明細書では、「NY-ESO-1_157~165Cペプチド」または「NY-ESO-1(157~165)ペプチド」と称される(「NY-ESO-1(157~165)ペプチド」は、165位にCまたはVを有するものとしてさらに明確化される場合を除く)。他の実施形態において、NY-ESO-1ペプチドは、残基165のシステインがバリンで置換されている配列番号271のアミノ酸残基157~165(SLMMWITQV(配列番号270))を含み、本明細書では、「NY-ESO-1_157~165Vペプチド」もしくは「NY-ESO-1(157~165Vペプチド)」と称されるか、またはさもなければ、「C165V」もしくは「V165」で示される。簡単に説明すると、「NY-ESO-1_157~165ペプチド」、「NY-ESO-1(157~165)」、および「NY-ESO-1のアミノ酸残基157~165を含むペプチド」という用語は、特定されない限り、NY-ESO-1_157~165CペプチドおよびNY-ESO-1_157~165Vペプチドの両方を包含すると理解される。
【0077】
「HLA」という用語は、ヒト白血球抗原(HLA)系または複合体を指し、ヒトにおける主要組織適合性複合体(MHC)タンパク質をコードする遺伝子複合体である。これらの細胞表面タンパク質は、ヒトにおける免疫系の調節に関与する。MHCクラスI(A、B、およびC)に対応するHLAは、細胞内からペプチドを提示する。
【0078】
「HLA-A」という用語は、ヒト白血球抗原(HLA)の群を指し、HLA-A遺伝子座によってコードされる。HLA-Aは、3つの主要なタイプのヒトMHCクラスI細胞表面受容体のうちの1つである。受容体はヘテロ二量体であり、重α鎖およびより小さいβ鎖からなる。α鎖は、バリアントHLA-A遺伝子によってコードされ、β鎖(β2-マイクログロブリン)は、インバリアントβ2マイクログロブリン分子である。
【0079】
「HLA-A2」という用語は、HLA-A遺伝子座における特定のクラスI主要組織適合複合体(MHC)対立遺伝子群の1つであり、α鎖は、HLA-A*02遺伝子によってコードされ、β鎖は、β2-マイクログロブリンまたはB2M遺伝子座によってコードされる。
【0080】
本明細書で使用される「抗原結合タンパク質」、「結合タンパク質」、または「結合分子」という用語は、HLA-A2提示ニューヨーク食道扁平上皮がん1ペプチド(NY-ESO-1ペプチド)の立体構造エピトープ、例えば、アミノ酸残基157~165を含むHLA-A2提示ペプチドなどの、関心対象の分子に特異的に結合する少なくとも1つの抗原結合部位を含む分子を含む。結合タンパク質は、抗体であり得、全長抗体、または抗体の抗原結合断片、またはキメラ抗原受容体(CAR)、または任意の他のポリペプチド、例えば、受容体抗体(Rab)タンパク質などが挙げられる。
【0081】
「HLA-A2:NY-ESO-1抗原結合タンパク質」または「HLA-A2:NY-ESO-1抗原結合タンパク質」などの用語は、HLA-A2によるNY-ESO-1のペプチド断片、例えば、アミノ酸残基157~165の提示によって立体構造エピトープに特異的に結合する抗体またはその抗原結合部分などの抗原結合タンパク質を指す。特定の実施形態において、立体構造エピトープは、HLA-A2提示NY-ESO-1ペプチドによって細胞の表面に生成される。本明細書で使用される場合、「HLA-A2:NY-ESO-1 157~165ペプチド複合体」などの用語は、HLA-A2とNY-ESO-1ポリペプチドとの間の複合体を指し、HLA-A2は、NY-ESO-1のアミノ酸残基157~165を提示する。この文脈において、NY-ESO-1は、全長NY-ESO-1ポリペプチドであることができるか、またはアミノ酸157~165(配列番号271に関連する)がNY-ESO-1ポリペプチド内に存在し、HLA-A2によって提示される限り、切断型であることができる。疑義を避けるために、「NY-ESO-1 157~165ペプチド」という用語は、NY-ESO-1の157~165(配列番号271に関連する)と同じように短いか、または最大で全長NY-ESO-1タンパク質(例えば、配列番号271の配列)を含むペプチドを包含する。
【0082】
「エピトープ」という用語は、パラトープとして知られる抗原結合タンパク質の可変領域における特異的抗原結合部位と相互作用する抗原決定基を指す。単一抗原は、2つ以上のエピトープを有し得る。したがって、異なる抗原結合タンパク質は、抗原で異なる領域に結合し得、異なる生物学的効果を有し得る。「エピトープ」という用語はまた、B細胞および/またはT細胞が応答する抗原上の部位も指す。また、抗原結合タンパク質によって結合される抗原の領域も指す。エピトープは、構造的または機能的として定義され得る。機能的エピトープは概して、構造的エピトープのサブセットであり、相互作用の親和性に直接寄与するこれらの残基を有する。エピトープはまた、「立体構造」であり得、すなわち、非線形アミノ酸からなり得る。特定の実施形態において、エピトープは、アミノ酸、糖側鎖、ホスホリル基、またはスルホニル基などの分子を化学的に活性な表面で分類分けする決定基を含み得、特定の実施形態において、特定の三次元構造特徴および/または特定の電荷特徴を有し得る。いくつかの実施形態において、本開示の抗原結合タンパク質は、HLA-A2:NY-ESO-1ペプチド複合体の立体構造エピトープと相互作用する。いくつかの実施形態において、この立体構造エピトープは、配列番号271のM160、W161、およびQ164に対応する1つ以上のアミノ酸(例えば、1、2、または3つのアミノ酸)を含む。M160、W161、またはQ164のうちの1つ以上に対応するアミノ酸を決定するために、配列アラインメントを本明細書に記載されるように行うことができる。いくつかの実施形態において、本開示の抗原結合タンパク質は、X線結晶解析によって4.0Å以上の分解能で決定されるときに、配列番号271のアミノ酸157~165に対応するアミノ酸を含むHLA-A2:NY-ESO-1ペプチド複合体に特異的に結合する。疑義を避けるため、4.0Å以上の分解能は、3.9Å以上、3.8Å以上、3.7Å以上、3.6Å以上、3.5Å以上、3.4Å以上、3.3Å以上、3.2Å以上、3.1Å以上、3.0Å以上、2.9Å以上、2.8Å以上、2.7Å以上、2.6Å以上、2.5Å以上、2.4Å以上、2.3Å以上、2.2Å以上、2.1Å以上、2.0Å以上、1.9Å以上、1.8Å以上、1.7Å以上、1.6Å以上、1.5Å以上、1.4Å以上、1.3Å以上、1.2Å以上、1.1Å以上、1.0Å以上、0.9Å以上、0.8Å以上、0.7Å以上、0.6Å以上、または0.5Å以上の分解能を包含する。
【0083】
いくつかの実施形態において、結合タンパク質は、全長抗体またはその抗原結合断片などの抗体またはその抗原結合断片である。
【0084】
「抗体」という用語は、本明細書で使用する場合、ジスルフィド結合によって相互結合された4つのポリペプチド鎖である、2つの重(H)鎖および2つの軽(L)鎖からなる免疫グロブリン、ならびにそれらの多量体(例えば、IgM)またはそれらの抗原結合断片を指すことが意図される。各重鎖は、重鎖可変領域(「HCVR」または「V」)および重鎖定常領域(ドメインC1、C2、およびC3からなる)からなる。各軽鎖は、軽鎖可変領域(「LCVR」または「V」)および軽鎖定常領域(C)からなる。VおよびV領域は、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変領域にさらに細分することができ、フレームワーク領域(FR)と呼ばれる、より保存される領域によって点在される。各VおよびVLは、3つのCDRおよび4つのFRからなり、アミノ末端からカルボキシ末端に向けて、FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4の順序で配置される。特定の実施形態において、抗体(またはその抗原結合断片)のFRは、ヒト生殖系配列と同一であり得るか、または天然にもしくは人工的に改変され得る。アミノ酸コンセンサス配列は、2つ以上のCDRの並列分析に基づいて定義され得る。
【0085】
1つ以上のCDR残基の置換、または1つ以上のCDRの省略も可能である。抗体などの抗原結合タンパク質は、結合のために1つまたは2つのCDRを省き得ることが科学文献で報告されている。Padlanら(1995 FASEB J.9:133-139)は、抗体とその抗原との間の接触領域を、公開されている結晶構造に基づいて分析し、CDR残基の約5分の1~3分の1のみが実際に抗原に接触することを結論付けた。Padlanはまた、1つまたは2つのCDRが抗原と接触するアミノ酸を有しない多くの抗体を見出した(Vajdos et al.2002 J Mol Biol 320:415-428も参照する)。
【0086】
抗原に接触しないCDR残基は、分子モデリングおよび/または経験によって、Chothia CDRの外側にあるKabat CDRの領域から、過去の試験に基づいて特定することができる(例えば、CDRH2中の残基H60~H65は、しばしば必要とされない)。CDRまたはその残基が省略される場合、通常、別のヒト抗体配列またはかかる配列のコンセンサスにおいて対応する位置を占めるアミノ酸で置換される。CDR内の置換のための位置および置換するアミノ酸も、経験的に選択することができる。経験的置換は、保存的置換または非保存的置換であることができる。
【0087】
本明細書に開示される抗HLA-A2:NY-ESO-1抗原結合タンパク質、例えば、完全にヒトの抗HLA-A2:NY-ESO-1モノクローナル抗体、もしくはその抗原結合断片、またはCARは、対応する生殖系配列と比較して、重鎖および軽鎖可変ドメインのフレームワークおよび/またはCDR領域内に1つ以上のアミノ酸の置換、挿入、および/または欠失を含み得る。かかる変異は、本明細書に開示されるアミノ酸配列を、例えば公開の抗体配列データベースから入手可能な生殖系配列と比較することによって容易に確認することができる。本開示は、本明細書に開示されるアミノ酸配列のうちのいずれかに由来する抗原結合タンパク質、例えば、抗体、もしくはその抗原結合断片、またはCARを含み、1つ以上のフレームワークおよび/またはCDR領域内の1つ以上のアミノ酸は、抗原結合タンパク質が由来する生殖系配列の対応する残基に、または別のヒト生殖系配列の対応する残基に、または対応する生殖系残基の保存的アミノ酸置換に変異される(かかる配列変化は、本明細書ではまとめて、「生殖系変異」と称される)。当業者は、本明細書に開示される重鎖および軽鎖可変領域配列から出発して、1つ以上の個々の生殖系変異またはそれらの組み合わせを含む多数の抗原結合タンパク質、例えば、抗体、もしくはその抗原結合断片、またはCARを容易に産生することができる。特定の実施形態において、Vおよび/またはVドメイン内のフレームワークおよび/またはCDR残基はすべて、抗原結合タンパク質、例えば、抗体が由来した元の生殖系配列に見出される残基に戻り変異される。他の実施形態において、特定の残基のみが元の生殖系配列に戻り変異され、例えば、変異した残基のみがFR1の最初の8つのアミノ酸内、もしくはFR4の最後の8つのアミノ酸内に見出されるか、または変異した残基のみがCDR1、CDR2、もしくはCDR3内に見出される。他の実施形態において、フレームワークおよび/またはCDR残基のうちの1つ以上が、異なる生殖系配列(すなわち、抗体が本来由来した生殖系配列とは異なる生殖系配列)の対応する残基に変異される。さらに、本開示の抗原結合タンパク質、例えば、抗体、もしくはその抗原結合断片、またはCARは、フレームワークおよび/またはCDR領域内に2つ以上の生殖系変異の任意の組み合わせを含み得、例えば、特定の個々の残基は、特定の生殖系配列の対応する残基に変異され、一方、元の生殖系配列と異なる特定の他の残基は、維持されるか、または異なる生殖系配列の対応する残基に変異される。得られると、1つ以上の生殖系変異を含む抗原結合タンパク質、例えば、抗体および抗原結合断片は、結合特異性の改善、結合親和性の増加、拮抗的または作用的な生物学的特性の改善もしくは増強(場合によって)、免疫原性の低減などの1つ以上の所望の特性について容易に試験することができる。この一般的な手段で得られる抗原結合タンパク質、例えば抗体、もしくはその抗原結合断片、またはCARは、本開示内に包含される。
【0088】
本開示はまた、1つ以上の保存的置換を有する本明細書に開示されるHCVR、LCVR、および/またはCDRのアミノ酸配列のうちのいずれかのバリアントを含む、抗原結合タンパク質、例えば、完全にヒトの抗HLA-A2:NY-ESO-1モノクローナル抗体、もしくはその抗原結合断片、またはCARを含む。例えば、本開示は、本明細書に開示されるHCVR、LCVR、および/またはCDRアミノ酸配列のうちのいずれかと比べて、例えば10個以下、8個以下、6個以下、4個以下などの保存的アミノ酸置換を有するHCVR、LCVR、および/またはCDRアミノ酸配列を有するHLA-A2:NY-ESO-1抗原結合タンパク質を含む。
【0089】
「ヒト抗体」という用語は、本明細書で使用される場合、ヒト生殖系免疫グロブリン配列に由来する可変および定常領域を有する抗体を含むことが意図される。本開示のヒトモノクローナル抗体(mAb)は、例えば、CDR、特にCDR3における、ヒト生殖系免疫グロブリン配列によってコードされないアミノ酸残基(例えば、インビトロでのランダムもしくは部位特異的変異誘発によって、またはインビボでの体細胞変異によって導入される変異)を含み得る。しかしながら、本明細書で使用される場合、「ヒト抗体」という用語は、別の哺乳動物種(例えば、マウス)の生殖系に由来するCDR配列がヒトFR配列上に移植されているmAbを含むことを意図するものではない。本用語は、非ヒト哺乳動物において、または非ヒト哺乳動物の細胞において組換え生成される抗体を含む。本用語は、ヒト対象から単離される、またはヒト対象において生成される抗体を含むことは意図されない。
【0090】
「組換え」という用語は、本明細書で使用される場合、例えばDNAスプライシングおよび遺伝子導入発現を含む組換えDNA技術として当該技術分野で既知の技術または方法によって作製、発現、単離、または取得される本開示の抗原結合タンパク質、例えば、抗体またはその抗原結合断片を指す。本用語は、非ヒト哺乳動物(トランスジェニック非ヒト哺乳動物、例えば、トランスジェニックマウスを含む)、もしくは細胞(例えば、CHO細胞)発現系において発現されるか、または組換えコンビナトリアルヒト抗体ライブラリーから単離される抗原結合タンパク質、例えば抗体を指す。
【0091】
本明細書で使用される場合、「キメラ抗原受容体」または「CAR」という用語は、本明細書において互換的に使用され、抗原(例えば、HLA-A2提示NY-ESO-1ペプチドの立体構造エピトープ、例えば、NY-ESO-1のアミノ酸残基157~165を含むペプチド)に結合することができる細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、および少なくとも1つの細胞内シグナル伝達ドメインを含む組換え融合タンパク質を指す。
【0092】
本明細書で使用される「免疫エフェクター細胞」は、1つ以上のエフェクター機能(例えば、細胞傷害性細胞殺傷活性、サイトカインの分泌、ADCCおよび/またはCDCの誘導)を有する免疫系の任意の細胞を指す。一実施形態において、本明細書に記載のCARで使用される免疫エフェクター細胞は、Tリンパ球、特に細胞傷害性T細胞(CTL、CD8+T細胞)およびヘルパーT細胞(HTL、CD4+T細胞)である。T細胞の他の集団も、本明細書において有用であり、例えば、ナイーブT細胞およびメモリーT細胞である。当業者によって理解されるように、他の細胞もまた、本明細書に記載されるCARを有する免疫エフェクター細胞として使用され得る。特に、免疫エフェクター細胞には、NK細胞、NKT細胞、好中球、およびマクロファージも含まれる。免疫エフェクター細胞にはまた、エフェクター細胞の前駆細胞(progenitor)も含まれ、かかる前駆細胞(progenitor cell)は、インビボまたはインビトロで免疫エフェクター細胞に分化するように誘導することができる。したがって、この点において、免疫エフェクター細胞には、臍帯血、骨髄、または動員末梢血に由来するCD34+細胞集団内に含有される造血幹細胞(HSC)などの免疫エフェクター細胞の前駆細胞が含まれ、これらは、対象における投与で成熟免疫エフェクター細胞に分化するか、または成熟免疫エフェクター細胞に分化するようにインビトロで誘導することができる。
【0093】
本明細書に開示される場合、「オフターゲットペプチド」という用語は、標的ペプチド(例えば、NY-ESO-1_157~165ペプチド)と2つ、3つ、4つ、5つ、またはそれ以上のアミノ酸で異なるペプチドを指す。特定の実施形態において、本用語は、標的ペプチドよりもアミノ酸が3つ以上少ないことによって異なるペプチドを含む。例えば、9-merペプチドでは、2、3、または4つのアミノ酸が標的ペプチドと同一でない場合、それは「オフターゲット」ペプチドとみなされる。特定の実施形態において、アミノ酸同一性は、「類似度」(DoS)の用語で表される。9-merペプチド内の6つのアミノ酸が同一である場合、DoSは6である。特定の実施形態において、DoS≦6を有するペプチドは、「オフターゲット」ペプチドとみなされる。「オフターゲット」ペプチドという用語はまた、配列相同性に基づいて標的ペプチドと類似であり、HLA-A2に結合することが予測され、必須の正常組織において発現されるタンパク質に含まれるペプチドを指す。
【0094】
「に特異的と結合する」または「と特異的に結合する」などの用語は、抗原結合タンパク質、例えば、抗体、もしくはその抗原結合断片、またはCARが、生理学的条件下で比較的安定である抗原と複合体を形成することを意味する。特異的結合は、少なくとも約1×10-8M以下の平衡解離定数を特徴とし得る(例えば、より小さいKは、より強い結合を示す)。2つの分子が特異的に結合するか決定するための方法は、当技術分野で周知であり、例えば、平衡透析、表面プラズモン共鳴などが含まれる。本明細書に記載されるように、HLA-A2提示ニューヨーク食道扁平上皮がん腫1(NY-ESO-1)ペプチド、例えば、NY-ESO-1のアミノ酸残基157~165を含むペプチドの立体構造エピトープに特異的に結合する抗原結合タンパク質、例えば、抗体は、表面プラズモン共鳴、例えば、BIACORE(商標)によって特定されている。
【0095】
「高親和性」抗原結合タンパク質、例えば抗体、という用語は、HLA-A2提示NY-ESO-1ペプチドの立体構造エピトープ、例えば、NY-ESO-1のアミノ酸残基157~165を含むペプチドに対して、表面プラズモン共鳴、例えば、BIACORE(商標)または溶液親和性ELISAによって測定されるときに、少なくとも10-8M、好ましくは10-9M、より好ましくは10-10M、さらにより好ましくは10-11M、さらにより好ましくは10-12MのKとして表される結合親和性を有する、これらの抗原結合タンパク質、例えば、mAbを指す。
【0096】
「スローオフレート」という用語によって、「Koff」または「kd」は、表面プラズモン共鳴、例えば、BIACORE(商標)によって決定されるときに、1×10-3-1以下、好ましくは1×10-4-1以下の速度定数でHLA-A2:NY-ESO-1から解離する抗原結合タンパク質を意味する。
【0097】
抗原結合タンパク質(例えば、抗体)の「抗原結合部分」、抗原結合タンパク質(例えば、抗体)の「抗原結合断片」などの用語は、本明細書で使用される場合、抗原に特異的に結合して複合体を形成する、天然に存在して酵素処理で得ることができるか、合成か、または遺伝子操作されたポリペプチドもしくは糖タンパク質を含む。抗体の「抗原結合断片」、または「抗体断片」という用語は、本明細書で使用される場合、HLA-A2提示NY-ESO-1ペプチドの立体構造エピトープ、例えば、HLA-A2に結合したNY-ESO-1のアミノ酸残基157~165を含むペプチドに結合する能力を保持する、抗体の1つ以上の断片を指す。
【0098】
特定の実施形態において、本開示の抗原結合タンパク質、例えば、抗体もしくは抗体断片、またはCARは、リガンド、検出可能部分、あるいは細胞毒、第2の抗HLA-A2:NY-ESO-1抗原結合タンパク質、腫瘍特異的抗原に対する抗体、抗がん剤、またはNY-ESO-1陽性がんなどのNY-ESO-1関連疾患もしくは障害を含む疾患もしくは状態を治療するために有用である任意の他の治療用部分などの治療用部分(「免疫複合体」)などの部分とコンジュゲートされ得る。
【0099】
「単離された抗原結合タンパク質」、例えば、単離された抗体は、本明細書で使用される場合、異なる抗原特異性を有する他の抗原結合タンパク質、例えば、抗体(Ab)を実質的に含まない抗原結合タンパク質、例えば抗体を指す(例えば、HLA-A2:NY-ESO-1に特異的に結合する単離された抗体、またはその断片は、HLA-A2提示NY-ESO-1ペプチドの立体構造エピトープ以外の抗原に特異的に結合する抗原結合タンパク質、例えば、抗体を実質的に含まない。
【0100】
「表面プラズモン共鳴」という用語は、本明細書で使用される場合、例えば、BIACORE(商標)システム(Pharmacia Biosensor AB,Uppsala,Sweden and Piscataway,N.J.)を使用して、バイオセンサーマトリクス内のタンパク質濃度における変化の検出によってリアルタイムの生体分子相互作用の分析を可能にする光学現象を指す。
【0101】
「K」という用語は、本明細書で使用される場合、特定の抗原結合タンパク質-抗原相互作用の平衡解離定数を指すことが意図される。
【0102】
本明細書で使用される場合、「交差競合する」という用語は、抗原結合タンパク質、例えば、抗体またはその抗原結合断片が抗原に結合し、別の抗原結合タンパク質、例えば、抗体またはその抗原結合断片の結合を阻害または遮断することを意味する。本用語はまた、2つの抗原結合タンパク質、例えば、抗体間の両方の適応における競合、すなわち、結合して第2の抗原結合タンパク質、例えば、抗体の結合を遮断する第1の抗原結合タンパク質、例えば、抗体、またはその逆を含む。特定の実施形態において、第1の抗原結合タンパク質、例えば、抗体、および第2の抗原結合タンパク質、例えば、抗体は、同じエピトープに結合し得る。あるいは、第1および第2の抗原結合タンパク質、例えば、抗体は、異なるが、例えば、重複しているエピトープに結合し得、それによって一方の結合が、例えば、立体障害を介して第2の結合を阻害または遮断する。抗原結合タンパク質、例えば、抗体間の交差競合は、当該技術分野で既知の方法によって、例えば、リアルタイム無標識バイオレイヤー干渉法アッセイによって測定され得る。2つの抗原結合タンパク質、例えば、抗体間の交差競合は、自己-自己結合によるバックグラウンドシグナルよりも低い第2の抗原結合タンパク質、例えば、抗体の結合として表され得る(第1および第2の抗原結合タンパク質、例えば、抗体は、同じ抗原結合タンパク質、例えば、抗体である)。2つの抗原結合タンパク質、例えば、抗体間の交差競合は、例えば、ベースライン自己-自己バックグランド結合よりも低い第2の抗原結合タンパク質、例えば、抗体の結合%として表され得る(第1および第2の抗原結合タンパク質、例えば、抗体は、同じ抗原結合タンパク質、例えば、抗体である)。
【0103】
「実質的な同一性」または「実質的に同一な」という用語は、核酸またはその断片を指す場合、別の核酸(またはその相補鎖)を用いて適切なヌクレオチド挿入または欠失と最適に整列した場合、以下に考察される配列同一性の周知のアルゴリズムによって測定されるとき、ヌクレオチド塩基の少なくとも約90%、より好ましくは少なくとも約95%、96%、97%、98%、または99%のヌクレオチド配列同一性があることを示す。参照核酸分子と実質的な同一性を有する核酸分子は、特定の場合では、参照核酸分子によってコードされるポリペプチドと同じまたは実質的に類似のアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードすることができる。
【0104】
配列同一性は、アルゴリズム、例えば、大域的アラインメントについてNeedleman Wunschアルゴリズム(Needleman and Wunsch 1970,J.Mol.Biol.48:443-453)、または局所的アラインメントについてSmith Watermanアルゴリズム(Smith and Waterman 1981,J.Mol.Biol.147:195-197)を使用して計算することができる。別の好ましいアルゴリズムは、2002年にNature BiotechnologyでDufresneら(vol.20,pp.1269-71)によって報告され、ソフトウェアGenePAST(GQ Life Sciences,Inc.Boston,MA)で使用されている。
【0105】
ポリペプチドに適用される場合、「実質的な類似性」または「実質的に類似した」という用語は、2つのペプチド配列が、初期設定のギャップウェイト付けを使用したプログラムGAPまたはBESTFITなどによって最適に整列されるとき、少なくとも90%の配列同一性、さらにより好ましくは少なくとも95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を共有することを意味する。好ましくは、同一ではない残基位置は、保存的アミノ酸置換によって異なる。「保存的アミノ酸置換」は、アミノ酸残基が、類似の化学的特性(例えば、電荷または疎水性)を備えた側鎖(R基)を有する別のアミノ酸残基によって置換されるものである。概して、保存的アミノ酸置換は、タンパク質の機能的特性を実質的に変化させない。2つ以上のアミノ酸配列が保存的置換によって互いに異なる場合、類似性の割合または程度は、置換の保存的性質を補正するために上向きに調整され得る。この調整を行うための手段は、当業者に周知である。例えば、参照により本明細書に組み込まれるPearson(1994)Methods Mol.Biol.24:307-331を参照されたい。類似の化学的特性を備えた側鎖を有するアミノ酸基の例としては、1)脂肪族側鎖:グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、およびイソロイシン、2)脂肪族-ヒドロキシル側鎖:セリンおよびトレオニン、3)アミド含有側鎖:アスパラギンおよびグルタミン、4)芳香族側鎖:フェニルアラニン、チロシン、およびトリプトファン、5)塩基性側鎖:リジン、アルギニン、およびヒスチジン、6)酸性側鎖:アスパラギン酸およびグルタミン酸、ならびに7)含硫側鎖:システインおよびメチオニンが挙げられる。好ましい保存的アミノ酸置換基は、バリン-ロイシン-イソロイシン、フェニルアラニン-チロシン、リジン-アルギニン、アラニン-バリン、グルタミン酸-アスパラギン酸、およびアスパラギン-グルタミンである。あるいは、保存的な置換は、本明細書に参照により組み込まれるGonnetら(1992)Science 256:1443-45で開示されているPAM250対数尤度マトリックスにおいて正の値を有する任意の変化である。「適度に保存的な」置換とは、PAM250対数尤度マトリックスにおいて負以外の値を有する任意の変化である。
【0106】
ポリペプチドにおける配列類似性は、典型的には、配列分析ソフトウェアを使用して測定される。タンパク質解析ソフトウェアは、保存的アミノ酸置換を含む種々の置換、欠失、および他の改変に割り当てられた類似の測定値を使用して類似配列と一致させる。例えば、GCGソフトウェアでは、初期設定パラメータを使用して、異なる種の生物に由来する相同的ポリペプチド、または野生型タンパク質とその変異タンパク質との間の相同的ポリペプチドなどの、密接に関連するポリペプチド間の配列相同性または配列同一性を決定することができる、GAPおよびBESTFITなどのプログラムが含まれる。例えば、GCGバージョン6.1を参照されたい。ポリペプチド配列はまた、GCGバージョン6.1におけるプログラムである、初期設定または推奨パラメータを用いたFASTAを使用して比較することもできる。FASTA(例えば、FASTA2およびFASTA3)は、問い合わせ配列と検索配列との間の最善な重複の領域の整列およびパーセント配列同一性を提供する(Pearson(2000)上記)。配列はまた、BLOSUM62マトリックスで、ギャップ開始ペナルティ12およびギャップ伸長ペナルティ2を用いてアフィンギャップ検索を使用した、スミス-ウォーターマン相同性検索アルゴリズムを使用して比較することもできる。本開示の配列を、異なる生物由来の多数の配列を含むデータベースと比較する場合の別の好ましいアルゴリズムは、初期設定パラメータを使用するコンピュータプログラムBLAST、特にBLASTPまたはTBLASTNである。例えば、各々が参照により本明細書に組み込まれる、Altschul et al.(1990)J.Mol.Biol.215:403-410およびAltschul et al.(1997)Nucleic Acids Res.25:3389-3402を参照されたい。
【0107】
「治療有効量」という語句は、投与されて所望の効果を生じる量を意味する。正確な量は、治療の目的に依存し、既知の技法を使用して当業者によって確認可能であろう(例えば、Lloyd(1999)The Art,Science and Technology of Pharmaceutical Compoundingを参照されたい)。
【0108】
本明細書で使用される場合、「対象」という用語は、NY-ESO-1関連がん(例えば、NY-ESO-1陽性がん)など、NY-ESO-1関連疾患または障害などの疾患または障害の改善、予防、および/または治療を必要とする動物、好ましくは哺乳動物を指す。本用語は、NY-ESO-1関連がんまたは転移性NY-ESO-1関連がんなどのNY-ESO-1関連疾患または障害を有するか、または有するリスクがあるヒト対象を含む。
【0109】
本明細書で使用される場合、「抗がん剤」は、がんを治療または改善または阻害するために有用である任意の薬剤を意味し、細胞毒、ならびに代謝拮抗剤、アルキル化剤、アントラサイクリン、抗生物質、有糸分裂阻害剤、プロカルバジン、ヒドロキシ尿素、アスパラギナーゼ、コルチコステロイド、シクロホスファミド、ミトタン(O,P’-(DDD))、生物製剤(例えば、抗体およびインターフェロン)、および放射性薬剤などの薬剤が含まれるが、これらに限定されない。本明細書で使用される場合、「細胞毒または細胞傷害剤」は、化学療法剤も指し、細胞に有害である任意の薬剤を意味する。例としては、Taxol(登録商標)(パクリタキセル)、テモゾラミド、サイトカラシンB、グラミシジンD、臭化エチジウム、エメチン、シスプラチン、マイトマイシン、エトポシド、テノポシド、ビンクリスチン、ビンビアスチン、コイチシン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ジヒドロキシアントラシンジオン、ミトキサントロン、ミトラマイシン、アクチノマイシンD、1-デヒドロテストステロン、グルココルチコイド、プロカイン、テトラカイン、リドカイン、プロプラノロール、およびピューロマイシン、ならびにそれらの類似体または相同体が挙げられる。
【0110】
本明細書で使用される場合、「抗ウイルス剤」という用語は、宿主対象におけるウイルス感染を治療、予防、または改善するために使用される任意の薬物または療法を指す。「抗ウイルス剤」という用語には、ジドブジン、ラミブジン、アバカビル、リバビリン、ロピナビル、エファビレンツ、コビシスタット、テノフォビル、リルピビリン、鎮痛剤、およびコルチコステロイドが含まれるが、これらに限定されない。
【0111】
以下のうちのいずれか1つを含む免疫原を使用して、HLA-A2提示NY-ESO-1ペプチドの立体構造エピトープ、例えば、HLA-A2に連結したNY-ESO-1のアミノ酸残基157~165を含むペプチドに対する抗原結合タンパク質、例えば、抗体を生成することができる。特定の実施形態において、本開示の抗原結合タンパク質、例えば、抗体は、HLA-A2などのHLAタンパク質に結合した、全長天然NY-ESO-1タンパク質(GenBank登録番号NP_001318.1を参照されたい)(配列番号271)または組換えNY-ESO-1ペプチド(例えば、GenBank登録番号NP_001318.1(配列番号271)のアミノ酸残基157~165(SLLMWITQC、配列番号269)を含むペプチド、もしくはまたGenBank登録のC165V置換(SLMMWITQV、配列番号270)を有するその配列によって免疫したマウスから得ることができる。
【0112】
あるいは、NY-ESO-1タンパク質またはその断片は、標準的な生化学的技法を使用して産生され得、HLA-A2との関連で修飾され、免疫原として使用され得る。
【0113】
いくつかの実施形態において、免疫原は、E.coli、またはチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞などの任意の他の真核細胞もしくは哺乳動物細胞において発現される組換えNY-ESO-1ポリペプチドであり得る(HLAによって提示される組換えNY-ESO-1であり得る)。
【0114】
特定の実施形態において、HLA-A2提示NY-ESO-1ペプチドの立体構造エピトープに特異的に結合する抗原結合タンパク質は、上記ポリペプチド、またはその断片を使用して調製され得る。いくつかの実施形態において、HLA-A2提示NY-ESO-1ペプチドは、本明細書に記載される領域のN末端もしくはC末端のいずれかまたは両方から、指定領域を超えて約5~約20個のアミノ酸残基によって+伸長することができる。特定の実施形態において、上記領域またはその断片の任意の組み合わせは、HLA-A2:NY-ESO-1特異的抗原結合タンパク質、例えば、抗体の調製において使用され得る。
【0115】
ペプチドは、タグ化のため、またはKLHなどの担体分子とのコンジュゲーションの目的のため、特定の残基の付加または置換を含むように改変され得る。例えば、システインが、ペプチドのN末端もしくはC末端のいずれかに付加され得るか、またはリンカー配列が、免疫のために、例えばKLHへのコンジュゲーションのためのペプチドを調製するために付加され得る。
【0116】
結合活性を測定するための非限定的な例示的なインビトロアッセイが、本明細書の実施例で説明される。実施例3では、ヒト抗HLA-A2:NY-ESO-1特異的抗原結合タンパク質、例えば、抗体の結合親和性および反応速度定数を、表面プラズモン共鳴によって決定し、測定をBiacore 4000またはT200装置で実施した。実施例4は、NY-ESO-1の断片を過剰発現する細胞への抗体の結合を説明する。
【0117】
HLA-A2:NY-ESO-1に特異的な抗原結合タンパク質、例えば抗体は、追加の標識もしくは部分を含み得ないか、またはそれらはN末端もしくはC末端の標識もしくは部分を含み得る。一実施形態において、標識または部分は、ビオチンである。結合アッセイにおいて、標識の位置(存在する場合)は、ペプチドが結合する表面に関連してペプチドの適応を決定し得る。例えば、表面がアビジンでコーティングされる場合、N末端ビオチンを含むペプチドは、ペプチドのC末端部分が表面に対して遠位になるように適応される。一実施形態において、標識は、放射性核種、蛍光色素、またはMRI検出可能な標識であり得る。特定の実施形態において、かかる標識された抗原結合タンパク質は、イメージングアッセイを含む診断アッセイに使用され得る。
【0118】
抗原結合タンパク質
本開示は、抗体、またはその抗原結合断片、およびCAR(例えば、本開示のCARをコードする核酸分子)(以下に記載)を含む抗原結合タンパク質を提供する。特に指示がない限り、本明細書で使用される「抗体」という用語は、2つの免疫グロブリン重鎖および2つの免疫グロブリン軽鎖(すなわち、「完全抗体分子」)を含む抗体分子、ならびにその抗原結合断片を包含するものと理解されるべきである。抗体の「抗原結合部分」、抗体の「抗原結合断片」などの用語は、本明細書で使用される場合、抗原に特異的に結合して複合体を形成する、天然に存在して酵素処理で得ることができるか、合成か、または遺伝子操作されたポリペプチドもしくは糖タンパク質を含む。本明細書で使用される場合、抗体の「抗原結合断片」、または「抗体断片」という用語は、HLA-A2提示NY-ESO-1ペプチドの立体構造エピトープに特異的に結合する能力を保持する抗体の1つ以上の断片を指す。抗体断片などの抗原結合タンパク質は、Fab断片、F(ab’)断片、Fv断片、dAb断片、CDRを含む断片、または単離されたCDRを含み得る。抗体の抗原結合断片などの抗原結合タンパク質は、例えば、タンパク質消化技法または抗体可変ドメインおよび(任意選択的に)定常ドメインをコードするDNAの操作および発現を含む組換え遺伝子操作技法などの任意の好適な標準的技法を使用して、例えば、完全抗体分子から誘導され得る。かかるDNAは既知であり、かつ/または例えば市販の供給源、DNAライブラリー(例えばファージ-抗体ライブラリーを含む)から容易に入手可能であるか、または合成することができる。DNAは、例えば、1つ以上の可変ドメインおよび/もしくは定常ドメインを好適な立体配置に配置するか、またはコドンを導入し、システイン残基を作製し、アミノ酸を修飾、付加、もしくは欠失などするために、化学的に、または分子生物学技法を使用することによって配列決定および操作され得る。
【0119】
抗体の抗原結合断片の非限定的な例には、(i)Fab断片、(ii)F(ab’)2断片、(iii)Fd断片、(iv)Fv断片、(v)単鎖Fv(scFv)分子、(vi)dAb断片、および(vii)抗体の超可変領域(例えば、CDR3ペプチドなどの単離された相補性決定領域(CDR))または拘束FR3-CDR3-FR4ペプチドを模倣するアミノ酸残基からなる最小認識単位が含まれる。ドメイン特異的抗体、単一ドメイン抗体、ドメイン欠失抗体、キメラ抗体、CDR移植抗体、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、ミニボディ、ナノボディ(例えば、一価ナノボディ、二価ナノボディなど)、小型モジュール型免疫医薬品(SMIP)、およびサメ可変IgNARドメインなどの他の操作された分子も、本明細書で使用する「抗原結合断片」という表現に包含される。
【0120】
抗原結合タンパク質(例えば、抗体)の抗原結合断片は、典型的には、少なくとも1つの可変ドメインを含む。可変ドメインは、任意の大きさまたはアミノ酸組成であり得、概して、1つ以上のフレームワーク配列に隣接しているかまたは1つ以上のフレームワーク配列とともにインフレームである少なくとも1つのCDRを含む。Vドメインと結合したVドメインを有する抗体結合タンパク質において、VドメインおよびVドメインは、任意の好適な配置で互いに対して位置され得る。例えば、可変領域は二量体であり得、V-V、V-VL、またはVL-V二量体を含み得る。あるいは、抗体の抗原結合断片は、単量体のVドメインまたはVドメインを含み得る。
【0121】
特定の実施形態において、抗体の抗原結合断片は、少なくとも1つの定常ドメインに共有結合された少なくとも1つの可変ドメインを含み得る。本開示の抗原結合タンパク質の抗原結合断片内に見出され得る可変ドメインおよび定常ドメインの非限定的な例示的な立体構造には、(i)V-C1、(ii)V-C2、(iii)V-C3、(iv)V-C1-C2、(v)V-C1-C2-C3、(vi)V-C2-C3、(vii)V-C、(viii)V-C1、(ix)V-C2、(x)V-C3、(xi)V-C1-C2、(xii)V-C1-C2-C3、(xiii)V-C2-C3、および(xiv)V-Cが含まれる。上に列挙した例示的な立体配置のうちのいずれかを含む、可変ドメインおよび定常ドメインの任意の立体配置において、可変ドメインおよび定常ドメインは、互いに直接連結され得るか、または完全なもしくは部分的なヒンジ領域もしくはリンカー領域によって連結され得る。ヒンジ領域は、単一のポリペプチド分子において隣接する可変ドメインおよび/または定常ドメイン間のフレキシブルまたは半フレキシブルな結合をもたらす少なくとも2つの(例えば、5、10、15、20、40、60またはそれより以上の)アミノ酸からなり得る。そのうえ、本開示の抗体の抗原結合断片は、互いとの、および/または1つ以上の単量体VドメインもしくはVドメイン(例えば、ジスルフィド結合による)との非共有結合において、上に列挙した可変ドメインおよび定常ドメイン立体配置のうちのいずれかのホモ二量体またはヘテロ二量体(または他の多量体)を含み得る。
【0122】
完全抗体分子と同様に、抗原結合タンパク質、例えば、抗体の抗原結合断片は、単一特異的または多重特異的(例えば、二重特異的)であり得る。抗体の多重特異的抗原結合断片は、典型的には、少なくとも2つの異なる可変ドメインを含み、各可変ドメインは、別個の抗原に、または同じ抗原で異なるエピトープに、特異的に結合することができる。本明細書に開示される例示的な二重特異性抗体形式を含む任意の多重特異性抗体形式は、当該技術分野で利用可能な通例の技法を使用して、本開示の抗体の抗原結合断片との関連で使用するために適応され得る。
【0123】
抗原結合タンパク質の調製
トランスジェニックマウスにおいてヒト抗体などの抗原結合タンパク質を生成するための方法は、当該技術分野で知られている。任意のかかる既知の方法を、本開示の文脈において使用して、HLA-A2提示ニューヨーク食道扁平上皮がん1ペプチド(NY-ESO-1ペプチド)の立体構造エピトープに特異的に結合するヒト抗体を作製することができる。
【0124】
抗原結合タンパク質、例えば、モノクローナル抗体、を生成するためにVELOCIMMUNE(登録商標)技術(例えば、US6,596,541、Regeneron Pharmaceuticals,VELOCIMMUNE(登録商標))または任意の他の既知の方法を使用して、HLA-A2提示NY-ESO-1ペプチドの立体構造エピトープに対する高親和性抗原結合タンパク質、例えば、キメラ抗体が、ヒト可変領域およびマウス定常領域を有して最初に単離される。VELOCIMMUNE(登録商標)技術は、ゲノムが内在性マウス定常領域遺伝子座に操作可能に連結されたヒト重鎖および軽鎖可変領域を含むゲノムを有するトランスジェニックマウスの生成を含み、これによって、マウスは、抗原刺激に応答するヒト可変領域およびマウス定常領域を含む抗原結合タンパク質、例えば、抗体を産生する。抗体の重鎖および軽鎖の可変領域をコードするDNAを単離し、ヒト重鎖およびヒト軽鎖定常領域をコードするDNAに操作可能に連結する。次に、完全ヒト抗体を発現することができる細胞においてDNAを発現させる。
【0125】
概して、VELOCIMMUNE(登録商標)マウスに関心対象の抗原を負荷し、リンパ細胞(B細胞など)を抗原結合タンパク質、例えば抗体、を発現するマウスから回収する。リンパ細胞を骨髄腫細胞株と融合させて不死化ハイブリドーマ細胞株を調製し得、関心対象の抗原に特異的な抗体を産生するハイブリドーマ細胞株を特定するためにかかるハイブリドーマ細胞株をスクリーニングおよび選択する。重鎖および軽鎖の可変領域をコードするDNAを単離し得、重鎖および軽鎖の望ましいアイソタイプ定常領域に連結し得る。かかる抗原結合タンパク質は、CHO細胞などの細胞において産生され得る。あるいは、抗原特異的抗原結合タンパク質、例えばキメラ抗体、または軽鎖および重鎖の可変ドメインをコードするDNAは、抗原特異的リンパ球から直接単離され得る。
【0126】
最初に、高親和性抗原結合タンパク質、例えばキメラ抗体を、ヒト可変領域およびマウス定常領域を有して単離する。以下の実験セクションのように、抗原結合タンパク質を特徴付けして、親和性、選択性、エピトープなどを含む所望の特徴について選択する。マウス定常領域を所望のヒト定常領域と置き換えて、本開示の抗原結合タンパク質、例えば、完全ヒト抗体、例えば、野生型もしくは改変したIgG1またはIgG4を生成する。選択された定常領域は特定の使用に応じて変化し得るが、高親和性抗原結合および標的特異性の特徴は、可変領域に存在する。
【0127】
生物学的等価物
本開示の抗HLA-A2:NY-ESO-1抗原結合タンパク質は、記載される抗原結合タンパク質、例えば、抗体のものとは異なるが、HLA-A2提示NY-ESO-1ペプチドの立体構造エピトープに結合する能力を保持するアミノ酸配列を有するタンパク質を包含する。かかるバリアント抗原結合タンパク質は、親配列と比較したとき、アミノ酸の1つ以上の付加、欠失、または置換を含むが、記載の抗原結合タンパク質と実質的に同等である生物学的活性を示す。同様に、本開示の抗体結合タンパク質コードDNA配列は、開示される配列と比較したとき、ヌクレオチドの1つ以上の付加、欠失、または置換を含むが、本開示の抗原結合タンパク質と本質的に生物学的に等価である抗原結合タンパク質をコードする配列を包含する。
【0128】
2つの抗原結合タンパク質または抗体は、例えば、それらが類似の実験条件下で単回用量または複数回用量のいずれかで同じモル用量で投与される場合に、吸収の速度および程度が有意差を示さない医薬的等価物または医薬的代替物である場合、生物学的等価物とみなされる。いくつかの抗原結合タンパク質または抗体は、それらがそれらの吸収の程度で同等だがそれらの吸収速度で同等ではなく、それでも、吸収速度におけるかかる差が意図的であり、表示に反映され、有効な身体薬剤濃度の達成に、例えば長期使用で必須ではなく、試験した特定の医薬品について医学的に有意でないとみなされるために、生物学的に等価とみなされ得る場合、等価物または医薬的代替物とみなされる。
【0129】
一実施形態において、2つの抗原結合タンパク質(または抗体)は、それらの安全性、純度、または有効性において臨床的に意味のある差がない場合、生物学的に等価である。
【0130】
一実施形態において、2つの抗原結合タンパク質(例えば、抗体)は、患者が参照生成物と生物学的生成物との間で1回以上切り替えられることが、かかる切り替えなしで継続される療法と比較して、免疫原性の臨床的に有意な変化または有効性の低下を含む有害作用のリスクにおける予測される上昇なしで行われ得る場合、生物学的に等価である。
【0131】
一実施形態において、2つの抗原結合タンパク質(または抗体)は、これらが両方とも、使用条件(複数可)についての共通の作用機序(複数可)によって、かかる機序が既知である程度まで作用する場合、生物学的に等価である。
【0132】
生物学的等価性は、インビボおよび/またはインビトロの方法によって実証され得る。生物学的等価性測定法には、例えば、(a)抗原結合タンパク質またはその代謝産物の濃度が血液、血漿、血清、または他の生物学的流体中で時間の関数として測定される、ヒトまたは他の哺乳動物におけるインビボでの試験と、(b)ヒトインビボ生物学的利用能データと相関した、このデータを合理的に予測しているインビトロ試験と、(c)抗原結合タンパク質(またはその標的)の適切な急性薬理学的効果が時間の関数として測定されるヒトまたは他の哺乳動物におけるインビボ試験と、(d)抗原結合タンパク質の安全性、効能、または生物学的利用能もしくは生物学的等価性を確立する、十分に管理された臨床試験と、が含まれる。
【0133】
本開示の抗原結合タンパク質(または抗体)の生物学的に等価なバリアントは、例えば、残基もしくは配列の種々の置換を生じること、または生物学的活性に必要とされない末端もしくは内部の残基もしくは配列を欠失することによって構築され得る。例えば、生物学的活性にとって必須ではないシステイン残基は、再生の際の不必要または不正確な分子内ジスルフィド架橋の形成を防止するために、欠失または他のアミノ酸で置換することができる。他の文脈において、生物学的に等価な抗原結合タンパク質は、抗原結合タンパク質のグリコシル化特性を改変するアミノ酸変化、例えばグリコシル化を排除または除去する変異を含む、抗原結合タンパク質のバリアントを含み得る。
【0134】
Fcバリアントを含む抗HLA-A2:NY-ESO-1抗原結合タンパク質
本開示の特定の実施形態により、抗原結合タンパク質のFcRn受容体との結合を、例えば、中性pHと比較して酸性pHで、増強または減少させる1つ以上の変異を含むFcドメインを含む、抗HLA-A2:NY-ESO-1抗原結合タンパク質、例えば抗体、が提供される。例えば、本開示は、FcドメインのC2またはC3領域に変異を含む抗HLA-A2:NY-ESO-1抗原結合タンパク質を含み、変異は、酸性環境(例えば、pHが約5.5~約6.0の範囲であるエンドソーム内)において、FcドメインのFcRnに対する親和性を増加させる。かかる変異は、動物に投与されるときに、抗原結合タンパク質の血清半減期の増加をもたらし得る。かかるFc改変の非限定的な例には、例えば、250位(例えば、EまたはQ)、250位および428位(例えば、LまたはF)、252位(例えば、L/Y/F/WまたはT)、254位(例えば、SまたはT)、および256位(例えば、S/R/Q/E/DまたはT)での改変、または428位および/もしくは433位(例えば、H/L/R/S/P/QまたはK)および/もしくは434位(例えば、A、W、H、F、またはY[N434A、N434W、N434H、N434F、またはN434Y])での改変、または250位および/もしくは428位での改変、または307位もしくは308位(例えば、308F、V308F)、および434位での改変が含まれる。一実施形態において、改変は、428L(例えば、M428L)および434S(例えば、N434S)の改変と、428L、259I(例えば、V259I)、および308F(例えば、V308F)の改変と、433K(例えば、H433K)および434(例えば、434Y)の改変と、252、254、および256(例えば、252Y、254T、および256E)の改変と、250Qおよび428Lの改変(例えば、T250QおよびM428L)と、307および/または308の改変(例えば、308Fまたは308P)と、を含む。さらに別の実施形態において、改変は、265A(例えば、D265A)および/または297A(例えば、N297A)改変を含む。
【0135】
例えば、本開示は、250Qおよび248L(例えば、T250QおよびM248L)、252Y、254T、および256E(例えば、M252Y、S254T、およびT256E)、428Lおよび434S(例えば、M428LおよびN434S)、257Iおよび311I(例えば、P257IおよびQ311I)、257Iおよび434H(例えば、P257IおよびN434H)、376Vおよび434H(例えば、D376VおよびN434H)、307A、380A、および434A(例えば、T307A、E380A、およびN434A)、ならびに433Kおよび434F(例えば、H433KおよびN434F)からなる群から選択される変異の1つ以上の対または群を含むFcドメインを含む抗HLA-A2:NY-ESO-1抗原結合タンパク質を含む。一実施形態において、本開示は、二量体安定化を促進するために、IgG4のヒンジ領域にS108P変異を含むFcドメインを含む抗HLA-A2:NY-ESO-1抗原結合タンパク質を含む。前述のFcドメイン変異、および本明細書に開示される抗原結合タンパク質可変ドメイン内の他の変異のすべての可能な組み合わせが、本開示の範囲内で企図される。
【0136】
本開示はまた、キメラ重鎖定常(C)領域を含む抗HLA-A2:NY-ESO-1抗原結合タンパク質を含み、キメラC領域は、2つ以上の免疫グロブリンアイソタイプのC領域に由来するセグメントを含む。例えば、本開示の抗原結合タンパク質は、ヒトIgG1分子、ヒトIgG2分子、またはヒトIgG4分子に由来するC3ドメインの一部または全部と組み合わされた、ヒトIgG1分子、ヒトIgG2分子、またはヒトIgG4分子に由来するC2ドメインの一部または全部を含む、キメラC領域を含み得る。特定の実施形態により、本開示の抗原結合タンパク質は、キメラヒンジ領域を有するキメラC領域を含む。例えば、キメラヒンジは、ヒトIgG1、ヒトIgG2、またはヒトIgG4ヒンジ領域に由来する「下部ヒンジ」配列(EU番号付けによる228~236位のアミノ酸残基)と組み合わされた、ヒトIgG1、ヒトIgG2、またはヒトIgG4ヒンジ領域に由来する「上部ヒンジ」アミノ酸配列(EU番号付けによる216~227位のアミノ酸残基)を含み得る。特定の実施形態により、キメラヒンジ領域は、ヒトIgG1またはヒトIgG4上部ヒンジに由来するアミノ酸残基と、ヒトIgG2下部ヒンジに由来するアミノ酸残基と、を含む。本明細書に記載されるようなキメラC領域を含む抗原結合タンパク質は、特定の実施形態において、抗原結合タンパク質の治療特性または薬物動態学的特性に悪影響を与えることなく、改善されたFcエフェクター機能を示し得る。(例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許公開第2014/0243504号を参照されたい)。
【0137】
抗原結合タンパク質の生物学的特徴
一般に、本開示の抗原結合タンパク質は、HLA-A2提示ニューヨーク食道扁平上皮がん腫1(NY-ESO-1)ペプチドの立体構造エピトープに結合することによって機能する。
【0138】
本開示は、HLA-A2との関連でNY-ESO-1ペプチドに高い特異性で結合する抗HLA-A2:NY-ESO-1抗原結合タンパク質を含む。抗HLA-A2:NY-ESO-1抗原結合タンパク質は、HLA-A2が存在しないと、NY-ESO-1ペプチドに結合しない。さらに、抗HLA-A2:NY-ESO-1抗原結合タンパク質は、HLA-A2との関連でオフターゲットペプチドに結合しない。
【0139】
本開示は、単量体HLA-A2:NY-ESO-1(157~165)ペプチド(NY-ESO-1 157~165ペプチドは、C165またはV165のいずれかを含み得、すなわち、本開示の抗原結合タンパク質は、いずれかの形態に対して特異的であり得るか、またはどの形態に関しても非特異的であり得る)に、高親和性で結合する抗HLA-A2:NY-ESO-1抗原結合タンパク質を含む。例えば、本開示は、表面プラズモン共鳴によって、例えば、本明細書の実施例3に定義されるアッセイ形式を使用して測定されるときに、約1nM未満のKで(例えば、25℃または37℃で)単量体HLA-A2:157~165ペプチド(任意選択的に、C165V置換を有する)に結合する抗原結合タンパク質を含む。特定の実施形態において、抗原結合タンパク質は、単量体HLA-A2:NY-ESO-1_157~165ペプチドに、表面プラズモン共鳴によって、例えば、本明細書の実施例3に定義されるアッセイ形式、または実質的に同様のアッセイを使用して測定されるときに、約1nM未満、約0.5nM未満、約0.1nM未満、約0.05nM未満、または約0.04nM未満のKで結合する。
【0140】
本開示はまた、本明細書の実施例4および5に定義されるようにフローサイトメトリーアッセイによって、または実質的に同様のアッセイによって決定されるときに、HLA-A2:NY-ESO-1:157~165ペプチド複合体(NY-ESO-1 157~165ペプチドはC165またはV165のいずれかを含み得、すなわち、本開示の抗原結合タンパク質は、いずれかの形態に特異的であり得るか、またはどの形態に関しても非特異的であり得る)を発現する細胞に、約10nM未満のEC50で結合し、かつ予測されるオフターゲットペプチドを発現する細胞に結合しない抗原結合タンパク質を含む。特定の実施形態において、抗原結合タンパク質は、HLA-A2:NY-ESO-1_157~165ペプチドを発現する細胞に、本明細書の実施例4および5に定義されるようにフローサイトメトリーアッセイによって、または実質的に同様のアッセイによって、例えば、本明細書の実施例4および5におけるアッセイ形式、または実質的に同様のアッセイを使用して決定されるときに、約10nM未満、約5nM未満、約2nM未満、約1nM未満、または約0.5nM未満のEC50で結合し、かつ予測されるオフターゲットペプチドを発現する細胞に結合しない。
【0141】
特定の実施形態において、本開示の抗原結合タンパク質は、腫瘍の増殖を阻害するか、またはそれを必要とする対象に予防的に投与されたときにがんの進行を遅延させるのに有用であり、対象の生存を増加させ得る。例えば、本開示の抗原結合タンパク質の投与は、原発性腫瘍の縮小をもたらし得、転移または二次腫瘍の発生を防止し得る。特定の実施形態において、本開示の抗原結合タンパク質は、それを必要とする対象に治療的に投与されるときに腫瘍の増殖を阻害するのに有用であり、対象の生存を増加させ得る。例えば、治療有効量の本開示の抗原結合タンパク質の対象への投与は、対象において確立された腫瘍の縮小および消失をもたらし得る。
【0142】
一実施形態において、本開示は、HLA-A2提示NY-ESO-1ペプチドの立体構造エピトープに結合する、単離された組換え抗原結合タンパク質を提供し、抗原結合タンパク質は、(i)配列番号2、22、42、62、82、102、122、142、162、180、196、211、および230からなる群から選択されるアミノ酸配列、または少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に類似の配列を有するHCVRを含む特徴と、(ii)配列番号10、30、50、70、90、110、130、150、170、186、203、219、および238からなる群から選択されるアミノ酸配列、または少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に類似の配列を有するLCVRを含む特徴と、(iii)配列番号8、28、48、68、88、108、128、148、168、184、201、217、および236からなる群から選択されるアミノ酸配列、または少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に類似の配列を有するHCDR3ドメイン、ならびに配列番号16、36、56、76、96、116、136、156、190、205、224、および244からなる群から選択されるアミノ酸配列、または少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に類似の配列を有するLCDR3ドメインを含む特徴と、(iv)配列番号4、24、44、64、84、104、124、144、164、213、および232からなる群から選択されるアミノ酸配列、または少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に類似の配列を有するHCDR1ドメイン、配列番号6、26、46、66、86、106、126、146、166、215、および234からなる群から選択されるアミノ酸配列、または少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に類似の配列を有するHCDR2ドメイン、配列番号12、32、52、72、92、112、132、152、172、188、221、および240からなる群から選択されるアミノ酸配列、または少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に類似の配列を有するLCDR1ドメイン、ならびに配列番号14、34、54、74、94、114、134、154、174、および242からなる群から選択されるアミノ酸配列、または少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%配列同一性を有するその実質的に類似の配列を有するLCDR2ドメインを含む特徴と、(v)表面プラズモン共鳴アッセイにおいて25℃で測定されるときに、単量体HLA-A2:NY-ESO-1 157~165(C165またはV165)ペプチド複合体に約1nM未満の結合解離平衡定数(KD)で結合する特徴と、(vi)表面プラズモン共鳴アッセイにおいて25℃で測定されるときに、単量体HLA-A2:NY-ESO-1 157~165(C165またはV165)ペプチド複合体に約1nM未満の結合解離平衡定数(KD)で結合する特徴と、(vii)HLA-A2:NY-ESO-1 157~165(C165またはV165)ペプチド複合体発現細胞に約10nM未満のEC50で結合する特徴と、(viii)配列番号271と2つ、3つ、4つ、5つ、またはそれ以上のアミノ酸によって異なるHLA-A2提示オフターゲットペプチドに結合しない特徴と、のうちの1つ以上を示す。
【0143】
本開示の抗原結合タンパク質は、上記生物学的特徴のうちの1つ以上、またはそれらの任意の組み合わせを有し得る。本開示の抗原結合タンパク質の他の生物学的特徴は、本明細書の実際の実施例を含む本開示のレビューから当業者には明らかであろう。
【0144】
エピトープマッピングおよび関連技術
本開示は、HLA-A2提示NY-ESO-1ペプチドの1つ以上のドメイン内に見出される1つ以上のアミノ酸と相互作用する抗HLA-A2:NY-ESO-1抗原結合タンパク質を含む。エピトープは、NY-ESO-1分子(例えば、立体構造エピトープ)の上記ドメインのうちのいずれかまたは両方内に位置する複数の非連続アミノ酸(またはアミノ酸配列)からなり得る。
【0145】
当業者に既知の様々な技法を使用して、抗原結合タンパク質が、ポリペプチドまたはタンパク質内の「1つ以上のアミノ酸と相互作用する」か決定することができる。例示的な技法には、例えば、Antibodies,Harlow and Lane(Cold Spring Harbor Press,Cold Spring Harbor,NY)に記載されるものなどの定型的なクロスブロッキングアッセイが含まれる。他の方法には、アラニンスキャニング変異解析、ペプチドブロット解析(Reineke(2004)Methods Mol.Biol.248:443-63)、ペプチド切断解析結晶学的試験、およびNMR解析が含まれる。さらに、エピトープ切除、エピトープ抽出、および抗原の化学修飾などの方法を用いることができる(Tomer(2000)Prot.Sci.9:487-496を参照)。抗原結合タンパク質が相互作用するポリペプチド内のアミノ酸を特定するために使用することができる別の方法は、質量分析によって検出される水素/重水素交換である。一般的にいえば、水素/重水素交換法は、関心対象のタンパク質を重水素標識した後、抗原結合タンパク質を重水素標識タンパク質に結合させることを含む。次に、タンパク質/抗原結合タンパク質複合体は水に移され、抗原結合タンパク質複合体によって保護されるアミノ酸内の交換可能なプロトンは、界面の一部ではないアミノ酸内の交換可能なプロトンよりも遅い速度で重水素から水素へのバック交換を受ける。結果として、タンパク質/抗原結合タンパク質界面の一部を形成するアミノ酸は、重水素を保持し得、したがって界面に含まれないアミノ酸と比較して比較的高い質量を示す。抗原結合タンパク質の解離後、標的タンパク質をプロテアーゼ切断および質量分析に供し、それによって、抗原結合タンパク質が相互作用する特異的アミノ酸に対応する重水素標識残基が明らかにされる。例えば、Ehring(1999)Analytical Biochemistry 267:252-259、Engen and Smith(2001)Anal.Chem.73:256A-265Aを参照されたい。
【0146】
「エピトープ」という用語は、B細胞および/またはT細胞が応答する抗原上の部位を指す。B細胞エピトープは、タンパク質の三次フォールディングによって並置された連続するアミノ酸または不連続のアミノ酸の両方から形成され得る。連続するアミノ酸から形成されるエピトープは、典型的には、変性溶媒への曝露時に保持され、一方、三次フォールディングによって形成されるエピトープは、典型的には、変性溶媒による処理で失われる。エピトープは、典型的には、固有の空間立体配置内に、少なくとも3つ、より一般的には、少なくとも5つ、または8~10個のアミノ酸を含む。
【0147】
抗原構造ベース抗体プロファイリング(ASAP)としても知られる修飾支援プロファイリング(MAP)は、化学的または酵素的に修飾された抗原表面に対する各抗体の結合プロファイルの類似性に従って、同じ抗原に対して指向される多数のモノクローナル抗原結合タンパク質、例えば、抗体(mAb)を分類する方法である(参照によりその全体が本明細書に具体的に組み込まれるUS2004/0101920を参照されたい)。各カテゴリーは、別のカテゴリーによって表されるエピトープと明らかに異なるか、または部分的に重複する独自のエピトープのいずれかを反映し得る。この技術は、遺伝的に同一の抗原結合タンパク質の迅速なフィルタリングを可能し、それによって特徴付けが遺伝的に異なる抗原結合タンパク質に焦点を当てることができる。ハイブリドーマスクリーニングに適用される場合、MAPは、所望の特徴を有する抗原結合タンパク質を産生する希少なハイブリドーマクローンの特定を容易にし得る。MAPを使用して、本開示の抗原結合タンパク質を、異なるエピトープに結合する抗原結合タンパク質の群に分類し得る。
【0148】
本開示は、本明細書において表1に記載の具体的な例示的な抗原結合タンパク質のうちのいずれかと同じエピトープか、もしくはエピトープの一部に結合する抗HLA-A2:NY-ESO-1抗原結合タンパク質、または表1に記載の例示的な抗原結合タンパク質のうちのいずれかのCDR配列を有する抗原結合タンパク質を含む。同様に、本開示はまた、HLA-A2:NY-ESO-1もしくはその断片への結合について、表1に記載の具体的な例示的な抗原結合タンパク質のうちのいずれかと、または表1に記載の例示的な抗原結合タンパク質のうちのいずれかのCDR配列を有する抗原結合タンパク質と、競合する抗HLA-A2:NY-ESO-1抗原結合タンパク質を含む。
【0149】
抗原結合タンパク質が参照抗HLA-A2:NY-ESO-1抗原結合タンパク質と同じエピトープに結合するか、または参照抗HLA-A2:NY-ESO-1抗原結合タンパク質と結合について競合するかは、当技術分野で既知の定型的な方法を使用して容易に決定することができる。例えば、試験抗原結合タンパク質が、本開示の参照抗HLA-A2:NY-ESO-1抗原結合タンパク質と同じエピトープに結合するか決定するために、参照抗原結合タンパク質を、HLA-A2:NY-ESO-1タンパク質またはペプチドに飽和条件下で結合させる。次に、HLA-A2:NY-ESO-1分子に結合する試験抗原結合タンパク質の能力を評価する。試験抗原結合タンパク質が、参照抗HLA-A2:NY-ESO-1抗原結合タンパク質の飽和結合後にHLA-A2:NY-ESO-1に結合することができる場合、試験抗原結合タンパク質は、参照抗HLA-A2:NY-ESO-1抗原結合タンパク質と異なるエピトープに結合すると結論付けることできる。他方、試験抗原結合タンパク質が、参照抗HLA-A2:NY-ESO-1抗原結合タンパク質との飽和結合後にHLA-A2:NY-ESO-1に結合することができない場合、試験抗原結合タンパク質は、本開示の参照抗HLA-A2:NY-ESO-1抗原結合タンパク質によって結合されるエピトープと同じエピトープに結合し得る。
【0150】
抗原結合タンパク質が参照抗HLA-A2:NY-ESO-1抗原結合タンパク質と結合について競合するか決定するために、上記結合方法論が2つの適応で行われる。第1の適応では、参照抗原結合タンパク質をHLA-A2:NY-ESO-1タンパク質に飽和条件下で結合させ、続いて、試験抗原結合タンパク質のHLA-A2:NY-ESO-1分子との結合を評価する。第2の適応では、試験抗原結合タンパク質を飽和条件下でHLA-A2:NY-ESO-1分子に結合させ、続いて、参照抗原結合タンパク質のHLA-A2:NY-ESO-1分子との結合を評価する。両適応において、第1の(飽和)抗原結合分子のみがHLA-A2:NY-ESO-1分子に結合することができる場合、試験抗原結合タンパク質および参照抗原結合タンパク質は、HLA-A2:NY-ESO-1との結合について競合すると結論付けられる。当業者によって認識されるように、参照抗原結合タンパク質との結合について競合する抗原結合タンパク質は、必ずしも参照抗原結合タンパク質と同一のエピトープに結合し得ないが、重複または隣接しているエピトープに結合することによって、参照抗原結合タンパク質の結合を立体的に遮断し得る。
【0151】
2つの抗原結合タンパク質は、各々が抗原との他の結合を競合的に阻害(遮断)する場合、同じかまたは重複するエピトープに結合する。すなわち、一方の抗原結合タンパク質の1倍、5倍、10倍、20倍、または100倍過剰が、競合結合アッセイで測定されるときに、少なくとも50%、しかし好ましくは75%、90%、またはさらに99%他方の結合を阻害する(例えば、Junghans et al.,Cancer Res.1990:50:1495-1502を参照されたい)。あるいは、一方の抗原結合タンパク質の結合を低減または排除する、抗原における本質的にすべてのアミノ酸変異が、他方の結合を低減または排除する場合、2つの抗原結合タンパク質は同じエピトープを有する。一方の抗原結合タンパク質の結合を低減または排除するアミノ酸変異が他方の結合を低減または排除する場合、2つの抗原結合タンパク質は重複エピトープを有する。
【0152】
次に、試験抗原結合タンパク質の結合の観察された欠如が、実際に、参照抗原結合タンパク質と同じエピトープへの結合によるものであるか、それとも立体遮断(または別の現象)が、観察された結合の欠如の原因であるのかを確認するために、さらなる通例の実験(例えば、ペプチド変異および結合分析)を実行することができる。この種の実験は、ELISA、RIA、表面プラズモン共鳴、フローサイトメトリー、または当該技術分野で利用可能な任意の他の定量的もしくは定性的な抗原結合タンパク質結合アッセイを使用して行うことができる。
【0153】
免疫コンジュゲート
本開示は、がんを治療するための細胞毒または化学療法剤などの治療用部分にコンジュゲートされた抗HLA-A2:NY-ESO-1抗原結合タンパク質(「免疫コンジュゲート」)を包含する。本明細書で使用される場合、「免疫コンジュゲート」という用語は、細胞毒、放射性剤、サイトカイン、インターフェロン、検出可能な部分などの標的もしくはレポーター部分、酵素、毒素、ペプチドもしくはタンパク質、または治療剤に、化学的または生物学的に連結されている抗原結合タンパク質を指す。抗原結合タンパク質は、細胞毒、放射性剤、サイトカイン、インターフェロン、標的もしくはレポーター部分、酵素、毒素、ペプチド、または治療剤に、抗原結合タンパク質がその標的に結合することができる限り、分子に沿った任意の位置で結合され得る。免疫コンジュゲートの例には、抗原結合タンパク質-薬物コンジュゲートおよび抗原結合タンパク質-毒素融合タンパク質が含まれる。一実施形態において、薬剤は、NY-ESO-1またはHLA-A2:NY-ESO-1に対する第2の異なる抗体であり得る。特定の実施形態において、抗原結合タンパク質は、腫瘍細胞に特異的な薬剤にコンジュゲートされ得る。抗HLA-A2:NY-ESO-1抗原結合タンパク質にコンジュゲートされ得る治療用部分のタイプは、治療されるべき状態および達成されるべき所望の治療効果を考慮する。免疫コンジュゲートを形成するために好適な薬剤の例は、当該技術分野で知られており、例えば、PCT公開第05/103081号を参照されたい。
【0154】
キメラ抗原受容体(CAR)
キメラ抗原受容体(CAR)は、T細胞特異性を、がん細胞の表面に発現される抗体認識抗原にリダイレクトし、一方、T細胞受容体(TCR)は、細胞内腫瘍抗原を含むように標的の範囲を拡大する。B細胞分化抗原CD19に特異的なT細胞にリダイレクトされるCARは、B細胞悪性腫瘍の治療において劇的な効能を示しており、一方、TCRリダイレクトT細胞は、固形がんに罹患している患者において利益を示している。Staussらは、がんの治療に使用するために、例えば、抗原特異的エフェクター機能を増強し、操作されたT細胞の毒性を制限するように、治療用CARおよびTCRを改変する戦略を記載する(Current Opinion in Pharmacology 2015,24:113-118)。
【0155】
本開示の一態様は、NY-ESO-1のアミノ酸残基157~165を含むペプチドなどの、HLA-A2によって腫瘍細胞の表面に提示されるNY-ESO-1ペプチドに特異的であるキメラ抗原受容体(CAR)を含む。本開示の一実施形態において、本明細書に記載のCARは、細胞外標的特異的結合ドメイン、膜貫通ドメイン、細胞内シグナル伝達ドメイン(CD3ゼータまたはFcRガンマに由来するシグナル伝達ドメインなど)、および/または限定されないがCD28、CD137、CD134、またはCD278などの共刺激分子に由来する1つ以上の共刺激シグナル伝達ドメインを含む。一実施形態において、CARは、細胞外結合ドメインと膜貫通ドメインとの間に、CD8アルファヒンジまたはCD28ヒンジなどのヒンジまたはスペーサー領域を含む。本開示の別の実施形態において、本明細書に記載のCARは、細胞外標的特異的結合ドメイン、およびT細胞受容体定常ドメインを含む(「T体構築物」)。いくつかの実施形態において、ヒンジ/膜貫通ドメインは、配列番号296のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、ヒンジ領域は、配列番号305のCD28配列を含む。いくつかの実施形態において、膜貫通ドメインは、配列番号304のCD28配列を含む。いくつかの実施形態において、4-1BB共刺激ドメインは、配列番号297のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、CD28共刺激ドメインは、配列番号299のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、CD3ゼータシグナル伝達ドメインは、配列番号298のアミノ酸配列を含む。
【0156】
本明細書に記載のCARのうちのいずれかで使用するために、細胞外標的特異的結合ドメインは、本開示の抗原結合タンパク質のFab、Fab’、(Fab’)2、Fv、または単鎖Fv(scFv)を含み得ることを理解されたい。
【0157】
本明細書で使用される場合、CARの結合ドメインまたは細胞外ドメインは、CARに、関心対象の標的抗原に結合する能力を提供する。結合ドメインは、生物学的分子(例えば、細胞表面受容体もしくは腫瘍タンパク質、またはそれらの構成要素)を特異的に認識して結合する能力を有する任意のタンパク質、ポリペプチド、オリゴペプチド、またはペプチドであることができる。結合ドメインは、関心対象の生物学的分子に対する、天然に存在するか、合成的か、半合成的か、または組換えによって産生された任意の結合パートナーを含む。例えば、本明細書にさらに記載されるように、結合ドメインは、抗体軽鎖および重鎖可変領域であり得るか、または軽鎖および重鎖可変領域は、単鎖でいずれかの適応(例えば、VL-VHまたはVH-VL)で一緒に連結され得る。特定の標的と特異的に結合する本開示の結合ドメインを特定するために様々なアッセイが知られており、ウェスタンブロット、ELISA、フローサイトメトリー、または表面プラズモン共鳴分析(例えば、BIACORE分析を使用する)が含まれ、それらは本明細書に記載されている。標的は、腫瘍殺傷をもたらすエフェクター免疫応答を引き起こすことが望ましい、臨床的な関心対象の任意の抗原であり得る。一実施形態において、キメラ抗原受容体の結合ドメインの標的抗原は、腫瘍細胞の表面におけるHLA-A2提示NY-ESO-1ペプチドの立体構造エピトープ、例えばNY-ESO-1のアミノ酸残基157~165を含むペプチドなどである。
【0158】
例示的な結合ドメインには、抗原結合タンパク質が含まれ、例えば、scFvなどの抗体の抗原結合断片、scTCR、受容体の細胞外ドメイン、細胞表面分子/受容体のリガンドまたはその受容体結合ドメイン、および腫瘍結合タンパク質が挙げられる。特定の実施形態において、本開示のCARに含まれる抗原結合ドメインは、可変領域(Fv)、CDR、Fab、scFv、VH、VL、ドメイン抗体バリアント(dAb)、ラクダ科抗体(VHH)、フィブロネクチン3ドメインバリアント、アンキリンリピートバリアント、および他のタンパク質骨格に由来する他の抗原特異的結合ドメインであることができる。
【0159】
一実施形態において、CARの結合ドメインは、抗HLA-A2:NY-ESO-1単鎖抗体(scFv)であり、マウス、ヒト、またはヒト化scFvであり得る。単鎖抗体は、所望の標的に特異的なハイブリドーマのV領域遺伝子からクローニングされ得る。可変領域重鎖(VH)および可変領域軽鎖(VL)をクローニングするために使用することができる技法は、例えば、Orlandi et al.,PNAS,1989;86:3833-3837に記載されている。したがって、特定の実施形態において、結合ドメインは、抗体由来結合ドメインを含むが、非抗体由来結合ドメインであり得る。抗体由来結合ドメインは、抗体の断片、または抗体の1つ以上の断片の遺伝子操作産物であり得、いずれの断片も抗原との結合に関与する。
【0160】
特定の実施形態において、本開示のCARは、分子の適切なスペーシングおよび立体構造のために付加される様々なドメイン間のリンカーを含み得る。例えば、いくつかの実施形態において、1~10アミノ酸長であり得る結合ドメインVHとVL領域との間にリンカーが存在し得る。他の実施形態において、キメラ抗原受容体のドメインのいずれかの間のリンカーは、1~20、または20アミノ酸長であり得る。これに関して、リンカーは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20アミノ酸長であり得る。さらなる実施形態において、リンカーは、21、22、23、24、25、26、27、28、29、または30アミノ酸長であり得る。本明細書に記載される数を含む範囲も、本明細書に含まれ、例えば、リンカー10~30アミノ酸長などが挙げられる。
【0161】
特定の実施形態において、本明細書に記載のCARにおける使用に好適なリンカーは、フレキシブルリンカーである。好適なリンカーは、容易に選択することができ、1アミノ酸(例えば、Gly)~20アミノ酸、2アミノ酸~15アミノ酸、3アミノ酸~12アミノ酸などの異なる長さの好適ないずれかであることができ、4アミノ酸~10アミノ酸、5アミノ酸~9アミノ酸、6アミノ酸~8アミノ酸、または7アミノ酸~8アミノ酸を含み、1、2、3、4、5、6、または7アミノ酸であり得る。
【0162】
例示的なフレキシブルリンカーには、グリシンポリマー(G)n、グリシン-セリンポリマー(G)nS(nは少なくとも1つ(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、またはそれ以上)の整数である)、グリシン-アラニンポリマー、アラニン-セリンポリマー、および当該技術分野で既知の他のフレキシブルリンカーが含まれる。加えて、リンカーは、上記配列の複数の単位、例えば、((G)nS)m)を含み得、式中、nは、少なくとも1つ(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、またはそれ以上)の整数であり、mは、少なくとも1つ(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、またはそれ以上)の整数である。いくつかの実施形態において、nは4であり、リンカーは、配列GGGGS(配列番号295)を含む。いくつかの実施形態において、nは4であり、mは3であり、リンカーは配列GGGGSGGGGSGGGGS(配列番号303)を含む。グリシンおよびグリシン-セリンポリマーは、比較的構造化されておらず、したがって、本明細書に記載のCARなどの融合タンパク質のドメイン間の中立的テザーとして機能することができる。グリシンは、アラニンよりも有意に多くのパイ-プサイ空間にアクセスし、より長い側鎖を有する残基よりもはるかに制限されていない(Scheraga,Rev.Computational Chem.11173-142(1992)を参照されたい)。当業者は、CARの設計がすべてまたは部分的にフレキシブルであるリンカーを含むことができ、それによってリンカーがフレキシブルリンカー、ならびに所望のCAR構造を提供するより低いフレキシブル構造を付与する1つ以上の部分を含むことができることを認識するであろう。
【0163】
CARの結合ドメインに続いて、「スペーサー」、または「ヒンジ」が続き得、これは、抗原結合ドメインをエフェクター細胞表面から離して、適切な細胞/細胞接触、抗原結合、および活性化を可能にする領域を指す(Patel et al.,Gene Therapy,1999;6:412-419)。CARにおけるヒンジ領域は、一般に、膜貫通(TM)ドメインと結合ドメインとの間にある。特定の実施形態において、ヒンジ領域は、免疫グロブリンヒンジ領域であり、野生型免疫グロブリンヒンジ領域または変異した野生型免疫グロブリンヒンジ領域であり得る。本明細書に記載されるCARにおいて使用される他の例示的なヒンジ領域には、CD8アルファ、CD4、CD28、およびCD7などの1型膜タンパク質の細胞外領域に由来するヒンジ領域が含まれ、これらの分子に由来する野生型ヒンジ領域であり得るか、または変異され得る。一実施形態において、ヒンジ領域は、CD8アルファヒンジを含む。
【0164】
「膜貫通」領域またはドメインは、細胞外結合部分を免疫エフェクター細胞の形質膜に固定し、結合ドメインの標的抗原への結合を促進するCARの一部である。膜貫通ドメインは、CD3ゼータ膜貫通ドメインであり得るが、用いられ得る他の膜貫通ドメインには、CD8アルファ、CD4、CD28、CD45、CD9、CD16、CD22、CD33、CD64、CD80、CD86、CD134、CD137、およびCD154から得られるものが含まれる。一実施形態において、膜貫通ドメインは、CD137の膜貫通ドメインである。特定の実施形態において、膜貫通ドメインは合成ドメインであり、その場合、それはロイシンおよびバリンなどの主として疎水性の残基を含む。
【0165】
「細胞内シグナル伝達ドメイン」は、標的抗原との有効なCAR結合のメッセージを免疫エフェクター細胞の内部に伝達することに関与して、エフェクター細胞機能、例えば、活性化、サイトカイン産生、増殖、およびCAR結合標的細胞への細胞傷害性因子の放出を含む細胞傷害性活性を誘発するか、または細胞外CARドメインへの抗原結合で誘発された他の細胞応答を誘発する、キメラ抗原受容体タンパク質の部分を指す。「エフェクター機能」という用語は、細胞の特化した機能を指す。T細胞のエフェクター機能は、例えば、細胞溶解活性、またはサイトカインの分泌を含む援助もしくは活性であり得る。したがって、「細胞内シグナル伝達ドメイン」という用語は、エフェクター機能シグナルを伝達し、細胞に指示して特化した機能を実行するタンパク質の部分を指す。通常、細胞内シグナル伝達ドメイン全体を用いることができるが、多くの場合、ドメイン全体を使用する必要はない。細胞内シグナル伝達ドメインの切断部分が使用される範囲内で、かかる切断部分は、エフェクター機能シグナルを伝達する限り、ドメイン全体の代わりに使用され得る。細胞内シグナル伝達ドメインという用語は、エフェクター機能シグナルを伝達するのに十分な細胞内シグナル伝達ドメインの任意の切断部分を含むことが意味される。細胞内シグナル伝達ドメイン(intracellular signaling domain)は、「シグナル伝達ドメイン(signal transduction domain)」としても知られており、典型的には、ヒトCD3またはFcRy鎖の一部に由来する。
【0166】
T細胞受容体のみを介して生成されるシグナルは、T細胞の完全な活性化には不十分であり、二次的または共刺激シグナルも必要とされることが知られている。したがって、T細胞活性化は、T細胞受容体を介した抗原依存性一次活性化を開始するもの(一次細胞質シグナル配列)と、二次または共刺激シグナルを提供するために抗原非依存性手段で作用するもの(二次細胞質シグナル配列)と、の2つの異なるクラスの細胞質シグナル配列によって媒介されると言うことができる。一次細胞質シグナル伝達配列は、T細胞受容体複合体の一次活性化を、阻害的な方法または阻害的な方法のいずれかで制御する。共刺激手段で作用する一次細胞質シグナル伝達配列は、免疫受容体チロシン系活性化モチーフまたはITAMとして知られているシグナル伝達モチーフを含み得る。
【0167】
本開示で特に使用されるITAMを含む一次細胞質シグナル伝達配列の例には、TCRゼータ、FcRガンマ、FcRベータ、CD3ガンマ、CD3デルタ、CD3イプシロン、CD5、CD22、CD79a、CD79b、およびCD66dに由来するものが含まれる。特定の実施形態において、本明細書に記載の抗HLA-A2:NY-ESO-1 CARの細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3ゼータまたはFcRガンマに由来する。
【0168】
本明細書で使用される場合、「共刺激シグナル伝達ドメイン」または「共刺激ドメイン」という用語は、共刺激分子の細胞内ドメインを含むCARの部分を指す。共刺激分子は、抗原への結合時にTリンパ球の効率的な活性化および機能に必要な第2のシグナルを提供する、抗原受容体またはFc受容体以外の細胞表面分子である。かかる共刺激分子の例には、CD27、CD28、4-1BB(CD137)、OX40(CD134)、CD30、CD40、PD-1、ICOS(CD278)、LFA-1、CD2、CD7、LIGHT、NKD2C、B7-H2、およびCD83に特異的に結合するリガンドが含まれる。したがって、本開示は、CD3ゼータ、CD28、および4-1BBに由来する例示的な共刺激ドメインを提供するが、他の共刺激ドメインが、本明細書に記載されるCARとともに使用されることが企図される。1つ以上の共刺激シグナル伝達ドメインの包含は、CAR受容体を発現するT細胞の有効性および増殖を増強し得る。細胞内シグナル伝達ドメインおよび共刺激シグナル伝達ドメインは、膜貫通ドメインのカルボキシル末端に任意の順序で直列に連結され得る。
【0169】
CD3またはFcRガンマに由来するシグナル伝達ドメインを含むように操作されたscFvベースのCARは、T細胞活性化およびエフェクター機能のために強力なシグナルを送達することが示されているが、それらは、併用の共刺激シグナルの不存在下でT細胞生存および増殖を促進するシグナルを誘発するのに十分ではない。結合ドメイン、ヒンジ、膜貫通、および1つ以上の共刺激シグナル伝達ドメイン(例えば、CD28、CD137、CD134、およびCD278に由来する細胞内共刺激ドメイン)とともに、CD3ゼータまたはFcRガンマに由来するシグナル伝達ドメインを含む他のCARは、インビトロ、動物モデル、およびがん患者における抗腫瘍活性、ならびにCAR発現T細胞の増加したサイトカイン分泌、溶解活性、生存、および増殖の増加をより効率的に指示し得る(Milone et al.,Molecular Therapy,2009;17:1453-1464、Zhong et al.,Molecular Therapy,2010;18:413-420、Carpenito et al.,PNAS,2009;106:3360-3365)。
【0170】
一実施形態において、本開示のHLA-A2:NY-ESO-1 CARは、(a)結合ドメインとして抗HLA-A2:NY-ESO-1scFv(例えば、表1に記載のHLA-A2:NY-ESO-1抗体のうちのいずれか1つ以上からの結合領域(例えば、CDRまたは可変ドメイン)を有するscFv)と、(b)ヒトCD8アルファに由来するヒンジ領域と、(c)ヒトCD8アルファ膜貫通ドメインと、(d)ヒトT細胞受容体CD3ゼータ鎖(CD3)細胞内シグナル伝達ドメインと、任意選択的に、CD28、CD137、CD134、およびCD278に由来する1つ以上の共刺激シグナル伝達ドメインと、を含む。一実施形態において、異なるタンパク質ドメインは、アミノ末端からカルボキシル末端に向けて、結合ドメイン、ヒンジ領域、および膜貫通ドメインの順序で配置される。細胞内シグナル伝達ドメインおよび任意選択的な共刺激シグナル伝達ドメインは、任意の順序で膜貫通カルボキシ末端に直列で連結され、単鎖キメラポリペプチドを形成する。一実施形態において、HLA-A2:NY-ESO-1 CARをコードする核酸構築物は、異なるコード配列、例えば、(5’から3’に)ヒト抗HLA-A2:NY-ESO-1 scFv、ヒトCD8アルファ-ヒンジ、ヒトCD8アルファ膜貫通ドメイン、CD137共刺激ドメイン、およびCD3ゼータ細胞内シグナル伝達ドメインのコード配列を含む核酸分子を含むキメラ核酸分子である。別の実施形態において、HLA-A2:NY-ESO-1 CARをコードする核酸構築物は、異なるコード配列、例えば、(5’から3’に)ヒト抗HLA-A2:NY-ESO-1 scFv、ヒトCD8アルファ-ヒンジ、ヒトCD8アルファ膜貫通ドメイン、CD137共刺激ドメイン、およびCD3ゼータ共刺激ドメインのコード配列を含む核酸分子を含むキメラ核酸分子である。特定の実施形態において、HLA-A2:NY-ESO-1 CARをコードする核酸構築物は、異なるコード配列、例えば、(5’から3’に)ヒト抗HLA-A2:NY-ESO-1 scFv、ヒトCD8アルファヒンジ、ヒトCD8アルファ膜貫通ドメイン、CD137共刺激ドメイン、およびCD3ゼータ共刺激ドメインのコード配列を含む核酸分子を含むキメラ核酸分子であり、抗HLA-A2:NY-ESO-1 scFvは、配列番号2、22、42、62、82、102、122、142、162、180、196、211、230、および250からなる群から選択されるVを含むか、または抗HLA-A2:NY-ESO-1 scFvは、配列番号10、30、50、70、90、110、130、150、170、186、203、219、238、および258からなる群から選択されるVを含むか、または抗HLA-A2:NY-ESO-1 scFvは、配列番号2/10、22/30、42/50、62/70、82/90、102/110、122/130、142/150、162/170、180/186、196/203、211/219、230/238、および250/258からなる群から選択されるV/V対を含む。いくつかの実施形態において、本開示は、表2の配列からなる群から選択されるHLA-A2:NY-ESO-1 CARをコードする核酸分子を含む。
【0171】
特定の実施形態において、本明細書に記載のCARをコードするポリヌクレオチドは、ベクターに挿入される。本明細書で使用される「ベクター」という用語は、タンパク質をコードするポリヌクレオチドが、そのタンパク質の発現および/またはポリヌクレオチドのクローニングをもたらすように、共有結合によって挿入され得るビヒクルを指す。かかるベクターは、「発現ベクター」と称され得る。単離されたポリヌクレオチドは、当該技術分野で既知の任意の好適な方法を使用してベクターに挿入され得、例えば、限定されないが、ベクターは、適切な制限酵素を使用して消化され得、次いで、マッチング制限末端を有する単離されたポリヌクレオチドと連結され得る。発現ベクターは、細胞内で転写することができる遺伝子産物の少なくとも一部をコードする異種または改変核酸配列を組み込んで発現する能力を有する。ほとんどの場合、RNA分子は次いでタンパク質に翻訳される。発現ベクターは、特定の宿主生物において操作可能に連結されたコード配列の転写、および場合によって翻訳に必要な核酸配列を指す、様々な制御配列を含むことができる。転写および翻訳を統御する制御配列に加えて、ベクターおよび発現ベクターは、他の機能も果たし、以下で考察される核酸配列を含み得る。発現ベクターは、追加の要素を含み得、例えば、発現ベクターは、2つの複製系を有し得、したがって、それが2つの生物内、例えば、発現のためのヒト細胞内ならびにクローニングおよび増幅のための原核宿主内で維持されることを可能にする。
【0172】
発現ベクターは、そのそれぞれの宿主細胞における効率的な遺伝子転写および翻訳のために、CMV、PGK、およびEF1アルファプロモーターなどのプロモーター配列、リボソーム認識および結合TATAボックス、ならびに3’UTR AAUAAA転写終結配列などの必要な5’上流および3’下流調節エレメントを有し得る。他の好適なプロモーターには、シミアンウイルス40(SV40)早期プロモーター、マウス乳腺腫瘍ウイルス(MMTV)プロモーター、HIV LTRプロモーター、MoMuLVプロモーター、トリ白血病ウイルスプロモーター、EBV前早期プロモーター、およびラウス肉腫ウイルスプロモーターの構成的プロモーターが含まれる。ヒト遺伝子プロモーターも使用され得、アクチンプロモーター、ミオシンプロモーター、ヘモグロビンプロモーター、およびクレアチンキナーゼプロモーターが含まれるが、これらに限定されない。特定の実施形態において、誘導性プロモーターはまた、キメラ抗原受容体を発現するベクターの一部として企図される。これは、関心対象のポリヌクレオチド配列の発現をオンにするか、または発現をオフにすることができる分子スイッチを提供する。誘導性プロモーターの例には、メタロチオニンプロモーター、グルココルチコイドプロモーター、プロゲステロンプロモーター、またはテトラサイクリンプロモーターが含まれるが、これらに限定されない。
【0173】
発現ベクターは、発現されるCARに組み込まれる6×ヒスチジン(配列番号292)、c-Myc、およびFLAGタグなどの追加の配列を有し得る。したがって、発現ベクターは、発現ベクターに担持される関心対象の核酸の効率的な転写を促進または増強することができる、エンハンサー配列、プロモーター領域、および/またはターミネーター配列として時に機能することができる、5’および3’非翻訳調節配列を含むように操作され得る。発現ベクターはまた、特定の細胞型、細胞位置、または組織型における複製および/または発現機能性(例えば、転写および翻訳)のために操作され得る。発現ベクターは、宿主または受容細胞におけるベクターの維持のために選択可能マーカーを含み得る。
【0174】
ベクターの例は、プラスミド、自律複製配列、および転移因子である。さらなる例示的なベクターには、限定されないが、プラスミド、ファージミド、コスミド、酵母人工染色体(YAC)、細菌人工染色体(BAC)、またはP1由来人工染色体(PAC)などの人工染色体、ラムダファージまたはM13ファージなどのバクテリオファージ、および動物ウイルスが含まれる。ベクターとして有用な動物ウイルスのカテゴリーの例には、限定されないが、レトロウイルス(レンチウイルスを含む)、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス(例えば、単純ヘルペスウイルス)、ポックスウイルス、バキュロウイルス、パピローマウイルス、およびパポバウイルス(例えば、SV40)が含まれる。発現ベクターの例は、哺乳動物細胞における発現のためのLenti-X(商標)バイシストロニック発現系(Neo)ベクター(Clontrch)、pClneoベクター(Promega)、哺乳動物細胞におけるレンチウイルス媒介遺伝子移入および発現のためのpLenti4/V5-DEST.TM.、pLenti6/V5-DEST.TM.、およびpLenti6.2N5-GW/lacZ(Invitrogen)である。本明細書に開示されるCARのコード配列は、哺乳動物細胞におけるキメラタンパク質の発現のためのかかる発現ベクターに連結することができる。
【0175】
特定の実施形態において、本開示のCARをコードする核酸は、ウイルスベクターにおいて提供される。ウイルスベクターは、レトロウイルス、レンチウイルス、または泡沫状ウイルスに由来するものであることができる。本明細書で使用される場合、用語「ウイルスベクター」は、ウイルス起源の少なくとも1つの要素を含み、ウイルスベクター粒子にパッケージングされる能力を有する核酸ベクター構築物を指す。ウイルスベクターは、非必須ウイルス遺伝子の代わりに、本明細書に記載される様々なキメラタンパク質のコード配列を含むことができる。ベクターおよび/または粒子は、インビトロまたはインビボのいずれかで細胞にDNA、RNA、または他の核酸を移入する目的のために利用することができる。多数の形態のウイルスベクターが当該技術分野で知られている。
【0176】
特定の実施形態において、本明細書に記載のCARのコード配列を含むウイルスベクターは、レトロウイルスベクターまたはレンチウイルスベクターである。「レトロウイルスベクター」という用語は、主にレトロウイルスに由来する構造的および機能的遺伝子要素を含むベクターを指す。「レンチウイルスベクター」という用語は、主にレンチウイルスに由来するLTRの外側に構造的および機能的遺伝子要素を含むベクターを指す。
【0177】
本明細書における使用のためのレトロウイルスベクターは、任意の既知のレトロウイルス(例えば、モロニーマウス肉腫ウイルス(MoMSV)、ハーベイマウス肉腫ウイルス(HaMuSV)、マウス乳がんウイルス(MuMTV)、テナガザル白血病ウイルス(GaLV)、ネコ白血病ウイルス(FLV)、スプーマウイルス、Friend、マウス幹細胞ウイルス(MSCV)、およびラウス肉腫ウイルス(RSV)などのc型レトロウイルス)に由来し得る。本開示の「レトロウイルス」にはまた、ヒトT細胞白血病ウイルス、HTLV-1およびHTLV-2、ならびにヒト免疫不全ウイルス、HIV-1、HIV-2、サル免疫不全ウイルス(SIV)、ネコ免疫不全ウイルス(FIV)、ウマ免疫不全ウイルス(EIV)、および他のクラスのレトロウイルスなどのレトロウイルス科のレンチウイルスも含まれる。
【0178】
本明細書で使用するためのレンチウイルスベクターは、徐々に発症する疾患を引き起こすレトロウイルスのグループ(または属)であるレンチウイルスに由来するベクターを指す。このグループに含まれるウイルスには、HIV(HIV1型およびHIV2型を含むヒト免疫不全ウイルス)、ビスナ・マエディ、ヤギ関節炎-脳炎ウイルス、ウマ伝染性貧血ウイルス、ネコ免疫不全ウイルス(FIV)、ウシ免疫不全ウイルス(BIV)、およびサル免疫不全ウイルス(SIV)が含まれる。組換えレンチウイルスの調製は、DullらおよびZuffereyら(Dull et al.,J.Virol.,1998;72:8463-8471およびZufferey et al.,J.Virol.1998;72:9873-9880)による方法を使用して達成することができる。
【0179】
本開示における使用のためのレトロウイルスベクター(すなわち、レンチウイルスおよび非レンチウイルスの両方)は、本明細書に記載の指示および適応で所望のDNA配列を組み合わせることによって、標準的なクローニング技法を使用して生成することができる(Current Protocols in Molecular Biology,Ausubel,F.M.et al.(eds.)Greene Publishing Associates,(1989),Sections 9.10-9.14および他の標準的な検査室マニュアル、Eglitis,et al.(1985)Science 230:1395-1398、Danos and Mulligan(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:6460-6464、Wilson et al.(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.USA85:3014-3018、Armentano et al.(1990)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:6141-6145、Huber et al.(1991)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88:8039-8043、Ferry et al.(1991)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88:8377-8381、Chowdhury et al.(1991)Science 254:1802-1805、van Beusechem et al.(1992)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:7640-7644、Kay et al.(1992)Human Gene Therapy 3:641-647、Dai et al.(1992)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:10892-10895、Hwu et al.(1993)J.Immunol 150:4104-4115、米国特許第4,868,116号、米国特許第4,980,286号、PCT出願第89/07136号、PCT出願第89/02468号、PCT出願第89/05345号、およびPCT出願第92/07573号)。
【0180】
ベクターを生成する際に使用するためのレトロウイルス(すなわち、レンチウイルスおよび非レンチウイルスの両方)配列を得るために好適な供給源には、例えば、Type Culture Collection(ATCC)、Rockville,Mdを含む市販の供給源から入手可能なゲノムRNAおよびcDNAが含まれる。配列はまた、化学的に合成することもできる。
【0181】
HLA-A2:NY-ESO-1 CARの発現では、ベクターを宿主細胞に導入して、宿主細胞内でポリペプチドの発現を可能にし得る。発現ベクターは、発現を制御するための様々な要素を含み得、限定されないが、プロモーター配列、転写開始配列、エンハンサー配列、選択可能マーカー、およびシグナル配列が含まれる。これらの要素は、上記のように、当業者によって適切に選択され得る。例えば、プロモーター配列は、ベクターにおけるポリヌクレオチドの転写を促進するために選択され得る。好適なプロモーター配列には、限定されないが、T7プロモーター、T3プロモーター、SP6プロモーター、ベータアクチンプロモーター、EF1aプロモーター、CMVプロモーター、およびSV40プロモーターが含まれる。エンハンサー配列は、ポリヌクレオチドの転写を増強するために選択され得る。選択可能マーカーは、ベクターが挿入された宿主細胞を、挿入されていないものから選択することを可能にし得、例えば、選択可能マーカーは、抗生物質耐性を付与する遺伝子であり得る。シグナル配列は、発現されたポリペプチドが、宿主細胞の外側に輸送されることを可能するために選択され得る。
【0182】
ポリヌクレオチドのクローニングでは、ベクターが宿主細胞(単離された宿主細胞)に導入されて、ベクター自体の複製を可能にし、それによって、そこに含まれるポリヌクレオチドのコピーを増幅し得る。クローニングベクターは、一般に、限定されないが、複製起点、プロモーター配列、転写開始配列、エンハンサー配列、および選択可能マーカーを含む、配列成分を含み得る。これらの要素は、当業者によって適切に選択され得る。例えば、複製起点は、宿主細胞におけるベクターの自律的複製を促進するように選択され得る。
【0183】
特定の実施形態において、本開示は、本明細書に提供されるベクターを含む単離された宿主細胞を提供する。ベクターを含む宿主細胞は、ベクターに含まれるポリヌクレオチドの発現またはクローニングにおいて有用であり得る。好適な宿主細胞には、限定されないが、原核細胞、真菌細胞、酵母細胞、または哺乳動物細胞などの高等真核細胞が含まれ得る。この目的のために好適な原核細胞には、限定されないが、グラム陰性またはグラム陽性生物、例えば、Escherichia、例えば、E.coli、Enterobacter、Erwinia、Klebsiella、Proteus、Salmonella、例えばSalmonella typhimurium、Serratia、例えばSerratia marcescans、およびShigella、ならびにB.subtilisおよびB.licheniformisなどのBacilli、P.aeruginosaなどのPseudomonas、およびStreptomycesが含まれる。
【0184】
本開示のCARは、当該技術分野で知られているトランスフェクションおよび/または形質導入技法を使用して宿主細胞に導入される。本明細書で使用される場合、「トランスフェクション」および「形質導入」という用語は、外因性核酸配列が宿主細胞に導入されるプロセスを指す。核酸は、宿主細胞DNAに組み込まれ得るか、または染色体外で維持され得る。核酸は、一時的に維持され得るか、または、安定的な導入であり得る。トランスフェクションは、当該技術分野で既知の様々な手段によって達成され得、リン酸カルシウム-DNA共沈殿、DEAE-デキストラン媒介トランスフェクション、ポリブレン媒介トランスフェクション、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、リポソーム融合、リポフェクション、プロトプラスト融合、レトロウイルス感染、および遺伝子銃が含まれるが、これらに限定されない。形質導入は、トランスフェクションよりもむしろウイルス感染の手段によって、ウイルスベクターまたはレトロウイルスベクターを使用した遺伝子の送達を指す。特定の実施形態において、レトロウイルスベクターは、細胞と接触する前に、ベクターをビリオンにパッケージングすることによって形質導入される。例えば、レトロウイルスベクターによって担持される抗HLA-A2:NY-ESO-1 CARをコードする核酸は、感染およびプロウイルス組み込みを通じて細胞に形質導入することができる。
【0185】
本明細書で使用される場合、「遺伝子操作された」または「遺伝子改変された」という用語は、細胞内の全遺伝子材料へのDNAまたはRNAの形態での余分な遺伝子材料の付加を指す。「遺伝子改変細胞」、「改変細胞」、および「再指示細胞」という用語は、互換的に使用される。
【0186】
特に、本開示のCARは、免疫エフェクター細胞に導入されて発現され、それによってそれらの特異性を、関心対象の標的抗原、例えば、HLA-A2提示NY-ESO-1ペプチド、例えば、アミノ酸残基157~165に対してリダイレクトする。
【0187】
本開示は、本明細書に記載のCARを発現する免疫エフェクター細胞を作製するための方法を提供する。一実施形態において、本方法は、NY-ESO-1関連疾患または障害を有する対象などの対象から単離された免疫エフェクター細胞をトランスフェクトまたは形質導入することを含み、それによって、免疫エフェクター細胞は本明細書に記載の1つ以上のCARを発現する。特定の実施形態において、免疫エフェクター細胞は、個体から単離され、さらにインビトロでの操作を伴わずに遺伝子改変される。次いで、かかる細胞は、同じ個体(自己療法用として)に、または別の個体(同種異系療法用として)に、直接再投与することができる。さらなる実施形態において、免疫エフェクター細胞は、最初にインビトロで増殖するように活性化および刺激され、その後にCARを発現するように遺伝子改変される。この点に関して、免疫エフェクター細胞は、遺伝子改変される(すなわち、本明細書に記載のCARを発現するように形質導入またはトランスフェクションされる)前または後に培養され得る。
【0188】
本明細書に記載の免疫エフェクター細胞のインビトロでの操作または遺伝子改変の前に、細胞源は対象から得ることができる。特に、本明細書に記載のCARで使用するための免疫エフェクター細胞は、T細胞を含む。かかる組換えT細胞は、本明細書において「T体」と称される。
【0189】
本開示の一実施形態において、T体は、細胞外標的特異的結合ドメイン、膜貫通ドメイン、細胞内シグナル伝達ドメイン(CD3ゼータまたはFcRガンマに由来するシグナル伝達ドメインなど)、および/または1つ以上の共刺激分子に由来する共刺激シグナル伝達ドメイン(CD28、CD137、CD134、またはCD278などであるがこれらに限定されない)を含む、本開示のCARを含む。本開示の別の実施形態において、T体は、細胞外標的特異的結合ドメイン、膜貫通ドメイン、細胞外結合ドメインと膜貫通ドメインとの間のヒンジまたはスペーサー領域、細胞内シグナル伝達ドメイン(CD3ゼータまたはFcRガンマに由来するシグナル伝達ドメインなど)、および/または共刺激分子に由来する1つ以上の共刺激シグナル伝達ドメインを含む本開示のCARを含む。本開示のさらに別の実施形態において、T体は、細胞外標的特異的結合ドメインおよびT細胞受容体定常ドメインを含むT体構築物CARを含む。本明細書に記載のCARのいずれかを含むT体における使用のために好適な細胞外標的特異的結合ドメインは、本開示の抗原結合タンパク質のFab、Fab’、(Fab’)2、Fv、または単鎖Fv(scFv)を含み得る。
【0190】
T細胞は、多数の供給源から得ることができ、末梢血単核細胞、骨髄、リンパ節組織、臍帯血、胸腺流出物(thymus issue)、感染部位からの組織、腹水、胸水、脾臓組織、および腫瘍が含まれる。特定の実施形態において、T細胞は、FICOLL分離などの当業者に知られている任意の数の技法を使用して、対象から収集される血液の単位から得ることができる。一実施形態において、個体の循環血液からの細胞は、アフェレーシスによって得られる。アフェレーシス生成物は、典型的には、T細胞を含むリンパ球、単球、顆粒球、B細胞、他の有核白血球、赤血球、および血小板を含有する。一実施形態において、アフェレーシスによって収集された細胞は、洗浄して血漿画分を除去し、その後の処理のために細胞を適切な緩衝液または培地中に配置し得る。本開示の一実施形態において、細胞はPBSで洗浄される。代替の実施形態において、洗浄溶液は、カルシウムを欠き、かつマグネシウムを欠き得るか、またはすべてではないが多くの二価カチオンを欠き得る。当業者によって理解されるように、洗浄ステップは、半自動フロースルー遠心分離機を使用するなど、当業者に既知の方法によって達成され得る。洗浄後、細胞は、緩衝液の有無にかかわらず、様々な生体適合性緩衝液または他の生理食塩溶液に再懸濁され得る。特定の実施形態において、アフェレーシス試料の望ましくない成分は、細胞を直接再懸濁した培地中で除去され得る。
【0191】
特定の実施形態において、T細胞は、赤血球を溶解し、単球を枯渇させることによって、例えば、PERCOLL(商標)勾配を通した遠心分離によって、末梢血単核細胞(PBMC)から単離される。CD28+、CD4+、CD8+、CD45RA+、およびCD45RO+T細胞などのT細胞の特定の亜集団は、陽性または陰性選択技法によってさらに単離することができる。例えば、陰性選択によるT細胞集団の豊富化は、陰性選択された細胞に固有の表面マーカーに対する抗体の組み合わせによって達成することができる。フローサイトメトリーを介した細胞選別および/または選択であり、陰性選択された細胞に存在する細胞表面マーカーに対するモノクローナル抗体のカクテルを使用する。例えば、陰性選択によってCD4+細胞を豊富化するために、モノクローナル抗体カクテルは、典型的には、CD14、CD20、CD11b、CD16、HLA-DR、およびCD8に対する抗体を含む。フローサイトメトリーおよび細胞選別もまた、本開示で使用する関心対象の細胞集団を単離するために使用され得る。
【0192】
PBMCは、本明細書に記載される方法を使用して、CARによる遺伝子改変のために直接使用され得る。特定の実施形態において、PBMCの単離後、Tリンパ球はさらに単離され、特定の実施形態において、細胞傷害性およびヘルパーTリンパ球の両方を、遺伝子改変および/または増殖の前もしくは後のいずれかで、ナイーブ、メモリー、およびエフェクターT細胞亜集団に選別することができる。CD8+細胞は、標準的な方法を使用することによって得ることができる。いくつかの実施形態において、CD8+細胞は、これらのタイプのCD8+細胞の各々と会合する細胞表面抗原を特定することによって、ナイーブ細胞、セントラルメモリー細胞、およびエフェクター細胞にさらに選別される。実施形態において、メモリーT細胞は、CD8+末梢血リンパ球のCD62L+およびCD62Lサブセットの両方に存在する。PBMCは、抗CD8および抗CD62L抗体で染色した後、CD62L-CD8+およびCD62L+CD8+画分に選別する。いくつかの実施形態において、セントラルメモリーTCMの表現型マーカーの発現は、CD45RO、CD62L、CCR7、CD28、CD3、およびCD127を含み、グランザイムBについて陰性である。いくつかの実施形態において、セントラルメモリーT細胞は、CD45RO+、CD62L+、CD8+T細胞である。いくつかの実施形態において、エフェクターT細胞は、CD62L、CCR7、CD28、およびCD127について陰性であり、およびグランザイムBおよびパーフォリンについて陽性である。いくつかの実施形態において、ナイーブCD8+Tリンパ球は、CD62L、CCR7、CD28、CD3、CD127、およびCD45RAを含むナイーブT細胞の表現型マーカーの発現によって特徴付けられる。
【0193】
特定の実施形態において、CD4+T細胞は、亜集団にさらに選別される。例えば、CD4+Tヘルパー細胞は、細胞表面抗原を有する細胞集団を特定することによって、ナイーブ細胞、セントラルメモリー細胞、およびエフェクター細胞に選別することができる。CD4+リンパ球は、標準の方法によって得ることができる。いくつかの実施形態において、ナイーブCD4+Tリンパ球は、CD45RO-、CD45RA+、CD62L+CD4+T細胞である。いくつかの実施形態において、セントラルメモリーCD4+細胞は、CD62L陽性およびCD45RO陽性である。いくつかの実施形態において、エフェクターCD4+細胞は、CD62LおよびCD45RO陰性である。
【0194】
T細胞などの免疫エフェクター細胞は、既知の方法を使用した単離後に遺伝子改変することができるか、または免疫エフェクター細胞は、遺伝子改変される前にインビトロで活性化および増殖(または前駆細胞の場合に分化)することができる。別の実施形態において、T細胞などの免疫エフェクター細胞は、本明細書に記載のキメラ抗原受容体で遺伝子改変され(例えば、CARをコードする核酸を含むウイルスベクターで形質導入される)、次いで、インビトロで活性化されて増殖される。T細胞を活性化および増殖するための方法は、当該技術分野で知られており、例えば、米国特許第6,905,874号、米国特許第6,867,041号、米国特許第6,797,514号、WO2012/079000号、US2016/0175358に記載されている。一般的に、かかる方法は、PBMCまたは単離されたT細胞を、IL-2などの適切なサイトカインを添加した培養培地中で、一般的にビーズまたは他の表面に結合した抗CD3および抗CD28抗体などの刺激剤および共刺激剤と接触させることを含む。同じビーズに結合した抗CD3および抗CD28抗体は、「代理」抗原提示細胞(APC)として機能する。他の実施形態において、T細胞は、米国特許第6,040,177号、米国特許第5,827,642号、およびWO2012/129514に記載されている方法などの方法を使用して、フィーダー細胞ならびに適切な抗体およびサイトカインとともに増殖するように活性化および刺激され得る。
【0195】
本開示は、NY-ESO-1関連疾患または障害、例えば、がんの治療のために改変免疫エフェクター細胞の集団を提供し、改変免疫エフェクター細胞は、本明細書に開示されるHLA-A2:NY-ESO-1 CARを含む。
【0196】
本明細書に記載されるように調製されるCAR発現免疫エフェクター細胞は、本開示に基づいて当業者には明らかであろう既知の技法またはその変形に従って、養子免疫療法のための方法および組成物において利用することができる。例えば、Gruenbergらによる米国特許出願公開第2003/0170238号を参照し、またRosenbergによる米国特許第4,690,915号も参照されたい。
【0197】
いくつかの実施形態において、細胞は、最初にそれらをその培地から採取し、次いで細胞を、治療有効量で、投与に適した培地および容器システム(「薬学的に許容される」担体)中で洗浄および濃縮することによって製剤化される。好適な注入媒体は、任意の等張媒体製剤、典型的には生理食塩水、Normosol R(Abbott)、またはPlasma-Lyte A(Baxter)であり得るが、水中の5%デキストロースまたは乳酸リンゲル液も利用することができる。注入媒体は、ヒト血清アルブミンを補充することができる。
【0198】
組成物中の治療有効細胞数は、少なくとも細胞2個(例えば、少なくとも1個のCD8+セントラルメモリーT細胞および少なくとも1個のCD4+ヘルパーT細胞サブセット)であるか、または典型的には、細胞10個超で最大10であり、細胞10または10個を含み、細胞1010個超であることができる。細胞数は、組成物が意図される最終的な使用、およびそこに含まれる細胞型に依存する。
【0199】
細胞は、療法を受ける患者に対して自己または異種であり得る。所望される場合、治療はまた、免疫応答の誘導を増強するために、本明細書に記載されるマイトジェン(例えば、PHA)もしくはリンホカイン、サイトカイン、および/またはケモカイン(例えば、IFN-γ、IL-2、IL-12、TNF-α、IL-18、およびTNF-β、GM-CSF、IL-4、IL-13、Flt3-L、RANTES、MIP1αなど)の投与を含み得る。
【0200】
本開示のCAR発現免疫エフェクター細胞集団は、単独で、あるいは希釈剤および/またはIL-2もしくは他のサイトカインまたは細胞集団などの他の成分と組み合わせた医薬組成物として投与され得る。簡単に説明すると、本開示の医薬組成物は、本明細書に記載のT細胞などのCAR発現免疫エフェクター細胞集団を、1つ以上の薬学的または生理学的に許容される担体、希釈剤、もしくは賦形剤と組み合わせて含み得る。かかる組成物は、中性緩衝化生理食塩水、リン酸緩衝化生理食塩水などの緩衝液、グルコース、マンノース、スクロースもしくはデキストラン、マンニトールなどの炭水化物、タンパク質、ポリペプチドまたはグリシンなどのアミノ酸、抗酸化剤、EDTAまたはグルタチオンなどのキレート剤、アジュバント(例えば、水酸化アルミニウム)、および保存剤を含み得る。本開示の組成物は、好ましくは、静脈内投与のために製剤化される。
【0201】
本明細書に記載の方法、または当該技術分野で既知の他の方法を使用して、本明細書に記載のCAR発現T細胞を投与することによって対象で誘導される抗腫瘍免疫応答は、感染細胞を殺傷することができる細胞傷害性T細胞、制御性T細胞、およびヘルパーT細胞応答によって媒介される細胞免疫応答を含み得る。B細胞を活性化し、したがって抗体産生をもたらすことができるヘルパーT細胞によって主に媒介される体液性免疫応答も誘導され得る。様々な技法が本開示の組成物によって誘導される免疫応答のタイプを分析するために使用され得、それらは当該技術分野において、例えば、Current Protocols in Immunology,Edited by:John E.Coligan,Ada M.Kruisbeek,David H.Margulies,Ethan M.Shevach,Warren Strober(2001)John Wiley&Sons,NY,N.Y.で十分に説明されている。
【0202】
したがって、本開示は、NY-ESO-1関連疾患または障害、例えば、NY-ESO-1陽性がんを有すると診断されたか、もしくは有することが疑われるか、またはそれらを発症するリスクがある個体を治療するための方法を提供し、本方法は、個体に、治療有効量の本明細書に記載のCAR発現免疫エフェクター細胞を投与することを含む。
【0203】
一実施形態において、本開示は、NY-ESO-1陽性がんを有すると診断された対象を治療する方法を提供し、本方法は、NY-ESO-1陽性がんを有すると診断された対象から免疫エフェクター細胞を取り出すことと、本開示のキメラ抗原受容体をコードする核酸を含むベクターを用いて当該免疫エフェクター細胞を遺伝子改変することと、それによって改変免疫エフェクター細胞集団を産生することと、改変免疫エフェクター細胞集団を同じ対象に投与することと、を含む。一実施形態において、免疫エフェクター細胞は、T細胞を含む。
【0204】
本明細書に記載の細胞組成物を投与する方法は、生体外遺伝子改変免疫エフェクター細胞の再導入をもたらすのに有効である任意の方法を含み、それらの細胞は、対象において本開示のCARを直接発現するか、または対象への導入時に成熟免疫エフェクター細胞に分化する免疫エフェクター細胞の遺伝子改変前駆細胞の再導入でCARを発現するか、のいずれかである。1つの方法は、本開示による核酸構築物で末梢血T細胞を生体外で形質導入し、形質導入された細胞を対象に戻すことを含む。
【0205】
治療的投与および製剤
本開示は、本開示の抗HLA-A2:NY-ESO-1抗原結合タンパク質、例えば、抗体、もしくはその抗原結合断片、またはCARを含む、治療用組成物を提供する。本開示による治療用組成物は、好適な担体と、賦形剤と、改善された移送、送達、耐性などをもたらすために製剤に組み込まれる他の薬剤と、ともに投与される。多くの適切な製剤は、すべての製薬化学者に知られている処方集であるRemington’s Pharmaceutical Sciences,Mack Publishing Company,Easton,PAに見出すことができる。これらの製剤には、例えば、粉末、ペースト、軟膏、ゼリー、ワックス、油、脂質、脂質(カチオン性またはアニオン性)含有ベシクル(LIPOFECTIN(商標)など)、DNAコンジュゲート、無水吸収ペースト、水中油および油中水エマルション、エマルションカーボワックス(種々の分子量のポリエチレングリコール)、半固体ゲル、ならびにカーボワックス含有半固体混合物が含まれる。Powell et al.”Compendium of excipients for parenteral formulations”PDA(1998)J Pharm Sci Technol 52:238-311も参照されたい。
【0206】
抗原結合タンパク質、例えば、抗体またはその抗原結合タンパク質の用量は、投与される対象の年齢および大きさ、標的疾患、状態、投与経路などに応じて変化し得る。本開示の抗原結合タンパク質が、成人患者における疾患もしくは障害を治療するため、またはかかる疾患を予防するために使用される場合、本開示の抗原結合タンパク質、例えば、抗体、またはその抗原結合断片を、通常、約0.1~約60mg/kg体重、より好ましくは約5~約60、約20~約50、約10~約50、約1~約10、または約0.8~約11mg/kg体重の単回用量で投与することが有利である。状態の重症度に応じて、治療の頻度および期間を調整することができる。特定の実施形態において、本開示の抗原結合タンパク質、例えば、抗体、またはその抗原結合断片は、少なくとも約0.1mg~約800mg、約1~約500mg、約5~約300mg、または約10~約200mg、~約100mg、もしくは~約50mgの初回用量として投与することができる。特定の実施形態において、初回用量の後に、初期用量とほぼ同じか、またはそれより少ない量であることができる、第2または複数回の後続用量の抗原結合タンパク質、例えば、抗体、またはその抗原結合断片の投与が続き得、後続用量は、少なくとも1日~3日、少なくとも1週間、少なくとも2週間、少なくとも3週間、少なくとも4週間、少なくとも5週間、少なくとも6週間、少なくとも7週間、少なくとも8週間、少なくとも9週間、少なくとも10週間、少なくとも12週間、または少なくとも14週間離される。
【0207】
種々の送達系が知られており、本開示の医薬組成物を投与するために使用することができ、例えば、リポソーム、微粒子、マイクロカプセルにおける封入、変異ウイルスを発現することのできる組換え細胞、受容体媒介性エンドサイトーシスが挙げられる(例えば、Wu et al.,1987,J.Biol.Chem.262:4429-4432を参照されたい)。導入方法には、皮内、経皮、筋肉内、腹腔内、静脈内、皮下、鼻腔内、硬膜外、および経口の経路が含まれるが、これらに限定されない。組成物は、例えば、注入もしくはボーラス注射、上皮もしくは粘膜皮膚内層(例えば、口腔粘膜、直腸および腸粘膜など)を介した吸収による任意の好都合な経路によって投与することができ、他の生物学的活性薬剤と一緒に投与することができる。投与は全身または局所であり得る。医薬組成物はまた、ベシクル、特にリポソームで送達することができる(例えば、Langer(1990)Science 249:1527-1533を参照されたい)。
【0208】
本開示の抗原結合タンパク質、例えば抗体、またはその抗原結合断片を送達するナノ粒子の使用も本明細書において企図される。抗原結合タンパク質コンジュゲート化ナノ粒子は、治療適用および診断適用のための両方に使用され得る。抗原結合タンパク質コンジュゲート化ナノ粒子ならびに調製方法および使用方法は、Arruebo,M.ら2009(“Antibody-conjugated nanoparticles for biomedical applications”in J.Nanomat.Volume 2009,Article ID439389,24pages,doi:10.1155/2009/439389)を参照されたく、参照により本明細書に組み込まれる。ナノ粒子は、腫瘍細胞または自己免疫組織細胞またはウイルス感染細胞を標的とするために開発され、医薬組成物に含有される抗原結合タンパク質にコンジュゲートされ得る。薬物送達のためのナノ粒子もまた、例えば、米国特許第8,257,740号、または米国特許第8,246,995号に記載されており、各々はその全体が本明細書に組み込まれる。
【0209】
特定の状況において、医薬組成物は、徐放システムで送達することができる。一実施形態において、ポンプが使用され得る。別の実施形態において、高分子材料を使用することができる。さらに別の実施形態において、徐放システムを組成物の標的の近傍に配置することができ、そのため全身用量の一部のみを必要とする。
【0210】
注射可能な調製物には、静脈内、皮下、皮内、頭蓋内、腹腔内、および筋肉内注射、点滴注入などのための投与形態が含まれ得る。これらの注射可能な調製物は、公然と知られている方法によって調製され得る。例えば、注射可能な調製物は、例えば、注射用に従来使用される滅菌水性媒体または油性媒体中に上記抗原結合タンパク質またはその塩を溶解、懸濁、または乳化させることによって調製され得る。注射のための水性媒体として、例えば、生理食塩水、グルコース含有等張溶液、および他の補助剤などがあり、これらは、アルコール(例えば、エタノール)、ポリアルコール(例えば、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール)、非イオン性界面活性剤(例えば、ポリソルベート80、HCO-50(水素化ヒマシ油のポリオキシエチレン(50mol)付加物))などの適切な可溶化剤と組み合わせて使用され得る。油性媒体として、例えば、ゴマ油、ダイズ油などが使用され、ベンジル安息香酸、ベンジルアルコールなどの可溶化剤と組み合わせて使用され得る。このように調製される注射液は、好ましくは適切なアンプルに充填される。
【0211】
本開示の医薬組成物は、標準的な針および注射器を用いて皮下にまたは静脈内に送達することができる。加えて、皮下送達に関して、ペン送達デバイスは、本開示の医薬組成物を送達する適用を容易に有する。かかるペン送達デバイスは、再利用できるか、または使い捨てることができる。再利用可能なペン送達デバイスは、一般的に、医薬組成物を含有する交換可能なカートリッジを利用する。カートリッジ内の医薬組成物がすべて投与されて、カートリッジが空になると、空のカートリッジは容易に廃棄して、医薬組成物を含有する新しいカートリッジに交換することができる。次に、ペン送達デバイスは、再利用することができる。使い捨てのペン送達デバイスでは、交換可能なカートリッジはない。むしろ、使い捨てペン送達デバイスは、デバイス内のリサーバの中に保持される医薬組成物が事前に充填される。リサーバの医薬組成物が空になると、デバイス全体が廃棄される。
【0212】
数多くの再利用可能なペン送達デバイスおよび自動注入送達デバイスは、本開示の医薬組成物の皮下送達における適用を有する。例としては、ごくわずかな名として、AUTOPEN(商標)(Owen Mumford,Inc.,Woodstock,UK)、DISETRONIC(商標)ペン(Disetronic Medical Systems,Burghdorf,Switzerland)、HUMALOG MIX 75/25(商標)ペン、HUMALOG(商標)ペン、HUMALIN 70/30(商標)ペン(Eli Lilly and Co.,Indianapolis,IN)、NOVOPEN(商標)I、II、およびIII(Novo Nordisk,Copenhagen,Denmark)、NOVOPEN JUNIOR(商標)(Novo Nordisk,Copenhagen,Denmark)、BD(商標)ペン(Becton Dickinson,Franklin Lakes,NJ)、OPTIPEN(商標)、OPTIPEN PRO(商標)、OPTIPEN STARLET(商標)、およびOPTICLIK(商標)(Sanofi-Aventis,Frankfurt,Germany)が挙げられるが、もちろんこれらには限定されない。本開示の医薬組成物の皮下送達における適用を有する使い捨てペン送達デバイスの例には、SOLOSTAR(商標)ペン(Sanofi-Aventis)、FLEXPEN(商標)(Novo Nordisk)、およびKWIKPEN(商標)(Eli Lilly)、SURECLICK(商標)自動注射器(Amgen,Thousand Oaks,CA)、PENLET(商標)(Haselmeier,Stuttgart,Germany)、EPIPEN(Dey,L.P.)、およびHUMIRA(商標)ペン(Abbott Labs,Abbott Park IL)が含まれるが、これらに限定されない。
【0213】
有利には、上記に記載される経口または非経口での使用のための医薬組成物は、有効成分の用量に適合する好適な単位用量の投薬形態に調製される。かかる単位用量の投与形態には、例えば、錠剤、ピル、カプセル、注射(アンプル)、坐薬などが含まれる。含有される抗原結合タンパク質の量は概して、単位用量の投与形態あたり約5~約500mgであり、特に注射の形態では、抗原結合タンパク質は、約5~約100mgで、他の投与形態では約10~約250mgで含有されることが好ましい。
【0214】
抗原結合タンパク質の治療的使用
本開示の抗体は、NY-ESO-1に関連するか、もしくは媒介される任意の疾患または障害の治療、予防、および/または改善のために、とりわけ有用である。例えば、本開示は、NY-ESO-1関連がん(例えば、NY-ESO-1陽性がん)などのNY-ESO-1関連疾患または障害を治療するための方法(腫瘍成長阻害)であって、かかる治療を必要とする患者に本明細書に記載の抗HLA-A2:NY-ESO-1抗原結合タンパク質(または抗HLA-A2:NY-ESO-1抗原結合タンパク質を含む医薬組成物)を投与することによって治療する方法、およびNY-ESO-1関連がんの治療(腫瘍成長阻害)における使用のための抗HLA-A2:NY-ESO-1抗原結合タンパク質(または抗HLA-A2:NY-ESO-1抗原結合タンパク質を含む医薬組成物)を提供する。本開示の抗原結合タンパク質は、NY-ESO-1関連がんなどの疾患もしくは障害もしくは状態の治療、予防、および/または緩和のために、ならびに/あるいはかかる疾患、障害、もしくは状態に関連する少なくとも1つの症状の緩和するために、有用である。本明細書に記載の治療方法の文脈において、抗HLA-A2:NY-ESO-1抗原結合タンパク質は、単剤療法として(すなわち、唯一の治療剤として)、または1つ以上の追加の治療剤(本明細書の他の場所に記載される例)と組み合わせて投与され得る。
【0215】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載される抗体は、原発性または再発性がんに罹患する対象を治療するために有用であり、限定されないが、NY-ESO-1関連がん、例えば、脂肪肉腫、神経芽腫、骨髄腫、転移性黒色腫、滑膜肉腫、膀胱がん、食道がん、肝細胞がん、頭頸部がん、非小細胞肺がん、卵巣がん、前立腺がん、乳がん、星状細胞腫瘍、多形性膠芽腫、未分化星状細胞腫、脳腫瘍、卵管がん、卵巣上皮がん、原発性腹腔がん、進行性固形腫瘍、軟組織肉腫、黒色腫、肉腫、骨髄異形成症候群、急性骨髄性白血病、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、ホジキン病、多発性骨髄腫、滑膜肉腫、転移性固形腫瘍、食道がん、横紋筋肉腫、進行性粘液様円形細胞脂肪肉腫、転移性黒色腫、または再発性非小細胞肺がんが含まれる。
【0216】
抗原結合タンパク質を使用して、NY-ESO-1関連がんの初期または後期症状を治療し得る。一実施形態において、本開示の抗体またはその断片を使用して、進行性または転移性がんを治療し得る。抗原結合タンパク質は、腫瘍増殖を低減するか、または阻害するか、または縮小するのに有用である。特定の実施形態において、本開示の抗原結合タンパク質による治療は、対象における腫瘍の40%超の退縮、50%超の退縮、60%超の退縮、70%超の退縮、80%超の退縮、または90%超の退縮をもたらす。特定の実施形態において、抗原結合タンパク質を使用して、腫瘍の再発を防止し得る。特定の実施形態において、抗原結合タンパク質は、NY-ESO-1関連がんを有する対象における無増悪生存期間または全生存期間を延長するのに有用である。いくつかの実施形態において、本抗体は、NY-ESO-1関連がんに罹患している患者における長期生存を維持しながら、化学療法または放射線療法に起因する毒性を低減するのに有用である。
【0217】
本開示の1つ以上の抗体は、疾患または障害の症状または状態のうちの1つ以上の重症度を緩和するか、または予防するか、または軽減するために投与され得る。
【0218】
本開示の1つ以上の抗体を、NY-ESO-1関連がんなど、NY-ESO-1関連疾患または障害などの疾患または障害を発症するリスクがある患者に予防的に使用することもまた、本明細書で企図される。
【0219】
本開示のさらなる実施形態において、本抗体は、NY-ESO-1関連がんなどのNY-ESO-1関連疾患または障害に罹患している患者を治療するための医薬組成物の調製のために使用される。本開示の別の実施形態において、本抗体は、NY-ESO-1関連がんを治療するのに有用な、当業者に既知の任意の他の薬剤または任意の他の療法との補助療法として使用される。
【0220】
併用療法および製剤
併用療法は、本開示のCAR(例えば、本開示のCARを含む免疫エフェクター細胞)などの本開示の抗HLA-A2:NY-ESO-1抗原結合タンパク質または本開示の医薬組成物と、本開示の抗原結合タンパク質と有利に組み合わせられ得る任意の追加の治療剤と、を含み得る。本開示の抗原結合タンパク質は、NY-ESO-1陽性がん、例えば、脂肪肉腫、神経芽腫、骨髄腫、転移性黒色腫、滑膜肉腫、膀胱がん、食道がん、肝細胞がん、頭頸部がん、非小細胞肺がん、卵巣がん、前立腺がん、乳がん、星状細胞腫瘍、多形性膠芽腫、未分化星状細胞腫、脳腫瘍、卵管がん、卵巣上皮がん、原発性腹腔がん、進行性固形腫瘍、軟組織肉腫、黒色腫、肉腫、骨髄異形成症候群、急性骨髄性白血病、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、ホジキン病、多発性骨髄腫、滑膜肉腫、転移性固形腫瘍、食道がん、横紋筋肉腫、進行性粘液様円形細胞脂肪肉腫、転移性黒色腫、または再発性非小細胞肺がんなどのNY-ESO-1関連疾患または障害を治療もしくは阻害するために使用される1つ以上の抗がん剤または療法と相乗的に組み合わされ得る。
【0221】
本明細書では、本開示の抗HLA-A2:NY-ESO-1抗原結合タンパク質を、免疫刺激療法および/または免疫支持療法と組み合わせて使用して、腫瘍増殖を阻害し、かつ/またはがん患者の生存を高めることが企図される。免疫刺激療法は、抑制された免疫細胞で「ブレーキを外す」か、または「アクセルを踏む」かのいずれかによって免疫細胞活性を増強して免疫応答を活性化する、直接免疫刺激療法を含む。例には、他のチェックポイント受容体、ワクチン接種、およびアジュバントを標的とすることが含まれる。免疫支持モダリティは、免疫原性細胞死、炎症を促進することによって腫瘍の抗原性を増加させ得るか、または抗腫瘍免疫応答を促進する他の間接的な効果を有し得る。例には、放射線、化学療法、抗血管新生剤、および手術が含まれる。
【0222】
様々な実施形態において、本開示の1つ以上の抗原結合タンパク質は、PD-1阻害剤(例えば、ニボルマブ、ペンブロリズマブ、ピディリズマブ、BGB-A317、またはREGN2810などの抗PD-1抗体)、PD-L1阻害剤(例えば、アベルマブ、アテゾリズマブ、デュルバルマブ、MDX-1105、またはREGN3504などの抗PD-L1抗体)、CTLA-4阻害剤(例えば、イピリムマブ)、TIM3阻害剤、BTLA阻害剤、TIGIT阻害剤、CD47阻害剤、GITR阻害剤、別のT細胞共阻害剤またはリガンドのアンタゴニスト(例えば、CD-28、2B4、LY108、LAIR1、ICOS、CD160、またはVISTAに対する抗体)、インドールアミン-2,3,ジオキシゲナーゼ(IDO)阻害剤、血管内皮増殖因子(VEGF)アンタゴニスト(例えば、US7,087,411に示されるアフリベルセプトもしくは他のVEGF阻害融合タンパク質などの「VEGF-Trap」、または抗VEGF抗体もしくはその抗原結合断片(例えば、ベバシズマブ、もしくはラニビズマブ)、またはVEGF受容体の小分子キナーゼ阻害剤(例えば、スニチニブ、ソラフェニブ、もしくはパゾパニブ))、Ang2阻害剤(例えば、ネスバクマブ)、形質転換成長因子ベータ(TGFβ)阻害剤、上皮成長因子受容体(EGFR)阻害剤(例えば、エルロチニブ、セツキシマブ)、CD20阻害剤(例えば、リツキシマブなどの抗CD20抗体)、腫瘍特異的抗原に対する抗体(例えば、CA9、CA125、黒色腫関連抗原3(MAGE3)、がん胎児抗原(CEA)、ビメンチン、腫瘍-M2-PK、前立腺特異抗原(PSA)、ムチン-1、MART-1、およびCA19-9)、ワクチン(例えば、Bacillus Calmette-Guerin、がんワクチン)、抗原提示を増加させるアジュバント(例えば、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子)、二重特異性抗体(例えば、CD3×CD20二重特異性抗体、またはPSMA×CD3二重特異性抗体)、サイトトキシン、化学療法剤(例えば、ダカルバジン、テモゾロミド、シクロホスファミド、ドセタキセル、ドキソルビシン、ダウノルビシン、シスプラチン、カルボプラチン、ゲムシタビン、メトトレキサート、ミトキサントロン、オキサリプラチン、パクリタキセル、およびビンクリスチン)、シクロホスファミド、放射線療法、手術、IL-6R阻害剤(例えば、サリルマブ)、IL-4R阻害剤(例えば、デュピルマブ)、IL-10阻害剤、サイトカインであるIL-2、IL-7、IL-21、およびIL-15など、抗体-薬物コンジュゲート(ADC)(例えば、抗CD19-DM4 ADC、および抗DS6-DM4 ADC)、抗炎症剤(例えば、コルチコステロイド、非ステロイド性抗炎症剤)、抗酸化剤などの栄養補助食品、またはがんを治療する任意の他の療法と組み合わせて使用され得る。特定の実施形態において、本開示の抗HLA-A2:NY-ESO-1抗原結合タンパク質は、抗腫瘍応答を増強するために、樹状細胞ワクチン、腫瘍溶解性ウイルス、腫瘍細胞ワクチンなどを含むがんワクチンと組み合わせて使用され得る。本開示の抗HLA-A2:NY-ESO-1抗原結合タンパク質と併用できるがんワクチンの例には、黒色腫および膀胱がんに対するMAGE3ワクチン、乳がんに対するMUC1ワクチン、脳腫瘍(多形性膠芽腫を含む)に対するEGFRv3(例えば、リンドペピムト)、またはALVAC-CEA(CEA+がんに対する)が含まれる。
【0223】
特定の実施形態において、本開示の抗HLA-A2:NY-ESO-1抗原結合タンパク質は、長期持続性の抗腫瘍応答を生じ、かつ/またはがんを有する患者の生存を高める方法において、放射線療法と組み合わせて投与され得る。いくつかの実施形態において、本開示の抗HLA-A2:NY-ESO-1抗原結合タンパク質は、がん患者に放射線療法を投与する前に、同時に、または後に投与され得る。例えば、放射線療法は、腫瘍病変に1回以上の用量で投与され得、その後に本開示の抗HLA-A2:NY-ESO-1抗原結合タンパク質の1回以上の用量の投与が続く。いくつかの実施形態において、放射線療法は、患者の腫瘍の局所免疫原性を増強(作用性放射線)し、かつ/または腫瘍細胞を死滅(切除性放射線)させるために、腫瘍病変に局所投与され得、その後に本開示の抗HLA-A2:NY-ESO-1抗原結合タンパク質の全身投与が続く。例えば、頭蓋内放射線は、本開示の抗HLA-A2:NY-ESO-1抗原結合タンパク質の全身投与と組み合わせて、脳がん(例えば、多形膠芽腫)を有する患者に投与され得る。特定の実施形態において、本開示の抗HLA-A2:NY-ESO-1抗原結合タンパク質は、放射線療法および化学療法剤(例えば、テモゾロミド)またはVEGFアンタゴニスト(例えば、アフリベルセプト)と組み合わせて投与され得る。
【0224】
追加の治療活性剤/成分は、本開示の抗HLA-A2:NY-ESO-1抗原結合タンパク質の投与の前に、同時に、または後に投与され得る。本開示の目的のために、かかる投与レジメンは、第2の治療活性成分と「組み合わせた」抗HLA-A2:NY-ESO-1抗原結合タンパク質の投与とみなされる。
【0225】
追加の治療活性成分は、本開示の抗HLA-A2:NY-ESO-1抗原結合タンパク質の投与前に対象に投与され得る。例えば、第1の成分が、第2の成分の投与の1週間前、72時間前、60時間前、48時間前、36時間前、24時間前、12時間前、6時間前、5時間前、4時間前、3時間前、2時間前、1時間前、30分前、15分前、10分前、5分前、または1分未満前に投与される場合、第1の成分は、第2の成分の「前」に投与されるとみなされ得る。他の実施形態において、追加の治療活性成分は、本開示の抗HLA-A2:NY-ESO-1抗原結合タンパク質の投与後に対象に投与され得る。例えば、第1の成分が、第2の成分の投与の1分後、5分後、10分後、15分後、30分後、1時間後、2時間後、3時間後、4時間後、5時間後、6時間後、12時間後、24時間後、36時間後、48時間後、60時間後、72時間後、または1週間後に投与される場合、第1の成分は、第2の成分の投与後に「後」投与されるとみなされ得る。さらに他の実施形態において、追加の治療活性成分が、対象に、本開示の抗HLA-A2:NY-ESO-1抗原結合タンパク質の投与と同時に投与され得る。「同時」投与は、本開示の目的のために、例えば、抗HLA-A2:NY-ESO-1抗原結合タンパク質および追加の治療活性成分を、対象に、単一投与形態(例えば、共製剤化)で、または対象に互いに約30分以内に投与される別個の投与形態で投与することを含む。別個の投与形態で投与される場合、各投与形態は、同じ経路を介して投与され得(例えば、抗HLA-A2:NY-ESO-1抗原結合タンパク質および追加の治療活性成分の両方は、静脈内、皮下などによって投与され得る)、あるいは、各投与形態は、異なる経路を介して投与され得る(例えば、抗HLA-A2:NY-ESO-1抗原結合タンパク質は、静脈内によって投与され得、追加の治療活性成分は、皮下によって投与され得る)。いずれにせよ、成分を単一投与形態で、同じ経路によって別個の投与形態で、または異なる経路によって別個の投与形態で投与することは、本開示の目的において、すべて、「同時投与」とみなされる。本開示の目的のために、追加の治療活性成分の「前」、「同時」、または「後」(これらの用語は、上記で定義されるとおり)の抗HLA-A2:NY-ESO-1抗原結合タンパク質の投与は、追加の治療活性成分と「組み合わせた」抗HLA-A2:NY-ESO-1抗原結合タンパク質の投与とみなされる。
【0226】
本開示は、本開示の抗HLA-A2:NY-ESO-1抗原結合タンパク質が、本明細書の他の箇所に記載される追加の治療活性成分のうちの1つ以上と、様々な投与組み合わせを使用して、共製剤化される医薬組成物を含む。
【0227】
投与レジメン
本開示の特定の実施形態により、複数回用量の抗HLA-A2:NY-ESO-1抗原結合タンパク質(または抗HLA-A2:NY-ESO-1抗原結合タンパク質と本明細書で言及される追加の治療活性薬剤のうちのいずれかとの組み合わせを含む医薬組成物)が、定義された時間経過にわたって対象に投与され得る。本開示のこの態様による方法は、複数回用量の本開示の抗HLA-A2:NY-ESO-1抗原結合タンパク質を、対象に連続的に投与することを含む。本明細書で使用する場合、「連続的に投与すること」は、抗HLA-A2:NY-ESO-1抗原結合タンパク質の各用量が、対象に、異なる時点、例えば、所定の間隔(例えば、数時間、数日間、数週間、または数か月間)で離された異なる日に投与されることを意味する。本開示は、対象に、単回の一次用量の抗HLA-A2:NY-ESO-1抗原結合タンパク質と、それに続く1回以上の二次用量の抗HLA-A2:NY-ESO-1抗原結合タンパク質と、次いで任意選択的に、それに続く1回以上の三次用量の抗HLA-A2:NY-ESO-1抗原結合タンパク質を、連続的に投与することを含む方法を含む。抗HLA-A2:NY-ESO-1抗原結合タンパク質は、対象の体重の0.1mg/kg~100mg/kgの用量で投与され得る。
【0228】
「一次用量」、「二次用量」、および「三次用量」という用語は、本開示の抗HLA-A2:NY-ESO-1抗原結合タンパク質の投与の時系列を指す。したがって、「一次用量」とは、治療レジメンの開始時に投与される用量(「ベースライン用量」とも呼ばれる)であり、「二次用量」とは、一次用量後に投与される用量であり、「三次用量」とは、二次用量後に投与される用量である。一次、二次、および三次用量はすべて、同じ量の抗HLA-A2:NY-ESO-1抗原結合タンパク質を含有し得るが、概して、投与頻度に関して互いに異なり得る。しかしながら、特定の実施形態において、一次、二次、および/または三次用量に含有される抗HLA-A2:NY-ESO-1抗原結合タンパク質の量は、治療の経過期間中、互いに異なる(例えば、適宜増減で調整される)。特定の実施形態において、2回以上(例えば、2回、3回、4回、または5回)の用量が治療レジメンの開始時に「負荷用量(loading dose)」として投与され、その後に、より低い頻度に基づいて投与される後続用量(例えば、「維持用量」)が続く。
【0229】
特定の実施形態において、一次、二次、および/または三次用量に含有される抗HLA-A2:NY-ESO-1抗原結合タンパク質の量は、最適以下または治療量以下であり得る。本明細書で使用される場合、「治療量以下」または「最適以下」という用語は、治療効果を生じるには低すぎるレベルで、またはがんなどの疾患を治療するのに必要なレベル未満で、投与される抗体用量を指す。
【0230】
本開示の特定の例示的な実施形態において、各二次および/または三次用量は、直前の用量の1~26(例えば、1、1と1/2、2、2と1/2、3、3と1/2、4、4と1/2、5、5と1/2、6、6と1/2、7、7と1/2、8、8と1/2、9、9と1/2、10、10と1/2、11、11と1/2、12、12と1/2、13、13と1/2、14、14と1/2、15、15と1/2、16、16と1/2、17、17と1/2、18、18と1/2、19、19と1/2、20、20と1/2、21、21と1/2、22、22と1/2、23、23と1/2、24、24と1/2、25、25と1/2、26、26と1/2、またはそれ以上)週後に投与される。「直前の用量」という語句は、本明細書で使用される場合、連続する複数回投与において、介入用量を伴わずに連続する直ぐ次の用量の投与前に患者へ投与される抗HLA-A2:NY-ESO-1抗原結合タンパク質の用量を意味する。
【0231】
本開示のこの態様による方法は、抗HLA-A2:NY-ESO-1抗原結合タンパク質の二次用量および/または三次用量の任意の回数を患者へ投与することを含み得る。例えば、特定の実施形態において、単回の二次用量のみが患者に投与される。他の実施形態において、2回以上(例えば、2回、3回、4回、5回、6回、7回、8回またはそれ以上)の二次用量が患者に投与される。同様に、特定の実施形態において、単回の三次用量のみが患者に投与される。他の実施形態において、2回以上(例えば、2回、3回、4回、5回、6回、7回、8回またはそれ以上)の三次用量が患者に投与される。
【0232】
複数回の二次用量を含む実施形態において、各二次用量は他の二次用量と同じ頻度で投与され得る。例えば、各二次用量は、直前の用量の1~2週後または1~2ヶ月後に患者に投与され得る。同様に、複数の三次用量を含む実施形態において、各三次用量は他の三次用量と同じ頻度で投与され得る。例えば、各三次用量は、直前の用量の2~12週間後に患者に投与され得る。特定の実施形態において、二次および/または三次用量が患者に投与される頻度は、治療レジメンの経過にわたって変動させることができる。投与頻度はまた、臨床検査後の個々の患者の必要性に応じて、医師によって治療経過の間に調整され得る。
【0233】
抗原結合タンパク質の診断使用
本開示の抗HLA-A2:NY-ESO-1抗原結合タンパク質を使用して、例えば、診断目的のために、試料中のNY-ESO-1を検出および/または測定し得る。いくつかの実施形態は、NY-ESO-1陽性がんなどの、NY-ESO-1関連疾患または障害などの疾患または障害を検出するアッセイにおける、本開示の1つ以上の抗原結合タンパク質の使用を企図する。NY-ESO-1における例示的な診断アッセイは、例えば、対象(例えば、患者)から得られる試料を、本開示の抗HLA-A2:NY-ESO-1抗原結合タンパク質と接触させることを含み得、抗HLA-A2:NY-ESO-1抗原結合タンパク質は、検出可能な標識またはレポーター分子で標識されるか、または対象試料からNY-ESO-1を選択的に単離する捕捉リガンドとして使用される。あるいは、非標識抗HLA-A2:NY-ESO-1抗原結合タンパク質は、それ自体が検出可能に標識される第2の抗原結合タンパク質、例えば抗体、と組み合わせて診断適用において使用することができる。検出可能な標識またはレポーター分子は、H、14C、32P、35S、もしくは125Iなどの放射性同位元素、フルオレセインイソチオシアナートもしくはローダミンなどの蛍光もしくは化学発光部分、またはアルカリホスファターゼ、β-ガラクトシダーゼ、セイヨウワサビペルオキシダーゼ、もしくはルシフェラーゼなどの酵素であることができる。試料中のNY-ESO-1を検出または測定するために使用することができる具体的な例示的アッセイには、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、および蛍光活性化細胞選別(FACS)が含まれる。
【0234】
本開示によるNY-ESO-1診断アッセイにおいて使用することができる試料には、患者から正常な状態または病理学的状態下で得ることができ、検出可能な量のNY-ESO-1タンパク質またはその断片を含有する、任意の組織または体液試料が含まれる。一般に、健常な患者(例えば、NY-ESO-1関連疾患または障害、例えばNY-ESO-1陽性がんに罹患していない患者)から得られる特定の試料中のNY-ESO-1レベルが、NY-ESO-1のベースラインレベルまたは標準レベルを最初に確立するために測定される。次いで、このNY-ESO-1ベースラインレベルを、がん関連状態またはかかる状態に関連する症状を有することが疑われる個体から得られる試料で測定されるNY-ESO-1のレベルと比較することができる。
【0235】
NY-ESO-1に特異的な抗原結合タンパク質は、追加の標識もしくは部分を含み得ないか、またはそれらはN末端またはC末端の標識もしくは部分を含み得る。一実施形態において、標識または部分は、ビオチンである。結合アッセイにおいて、標識の位置(存在する場合)は、ペプチドが結合する表面に関連してペプチドの適応を決定し得る。例えば、表面がアビジンでコーティングされる場合、N末端ビオチンを含むペプチドは、ペプチドのC末端部分が表面に対して遠位になるように適応される。
【0236】
本開示の態様は、患者におけるNY-ESO-1陽性がんの予後を予測するためのマーカーとしての、開示される抗原結合タンパク質の使用に関する。本開示の抗原結合タンパク質を診断アッセイに使用して、患者におけるがんの予後を評価し、生存を予測し得る。
【実施例
【0237】
以下の実施例は、本発明の方法および組成物をどのように作製および使用するかに関する完全な開示および説明を当業者に提供するために示されており、本発明者らが本発明とみなすことの範囲を限定することを企図するものではない。使用される数値(例えば、量、温度など)に関して正確性を確保することに努めているが、いくつかの実験上の誤差および偏差が考慮されるべきである。別段に示されない限り、割合は重量による割合であり、分子量は平均分子量であり、温度は摂氏度であり、室温は約25℃であり、圧力は大気圧またはそれに近い。
【0238】
実施例1.HLA-A2:NY-ESO-1_157~165に対するヒト抗体の生成
HLA-A2:NY-ESO-1に対するヒト抗体は、バリン(V)で置換された165位のシステイン(C)を有するアミノ酸157~165(SLLMWITQV、「NY-ESO-1_V」)、配列番号291)を含むGenBank登録NP_001318.1(配列番号271)のHLA-A2結合NY-ESO-1ペプチド断片を使用して生成した。免疫原は、例えば、米国特許第8,502,018号に記載されるように、免疫応答を刺激するアジュバントとともに、VELOCIMMUNE(登録商標)マウス(すなわち、ヒト免疫グロブリン重鎖およびカッパ軽鎖可変領域をコードするDNAを含む操作されたマウス)に直接投与された。抗体免疫応答を、HLA-A2:NY-ESO-1特異的イムノアッセイによってモニタリングした。所望の免疫応答が達成されたとき、脾細胞を採取し、マウス骨髄腫細胞と融合させて、それらの生存能力を維持し、ハイブリドーマ細胞株を形成した。ハイブリドーマ細胞株をスクリーニングおよび選択して、HLA-A2:NY-ESO-1特異的抗体を産生する細胞株を特定した。この技法および上記免疫源を使用して、いくつかの抗NY-ESO-1キメラ抗体(すなわち、ヒト可変ドメインおよびマウス定常ドメインを有する抗体)を得た。
【0239】
抗HLA-A2:NY-ESO-1抗体はまた、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許第7,582,298号に記載されるように、骨髄腫細胞への融合を伴わずに抗原陽性B細胞(免疫したマウスのいずれかから)から直接単離した。この方法を使用して、いくつかの抗HLA-A2:NY-ESO-1抗体(すなわち、ヒト可変ドメインおよびマウス定常ドメインを有する抗体)を得た。
【0240】
前述の方法に従って生成された例示的な抗体は、mAb24955N、mAb24956N、mAb24958N、mAb24959N、mAb28042P、mAb28035P、mAb28037P2、mAb28075P、mAb28105P、mAb28113P、mAb28128P、mAb29814P、mAb24955N、およびmAb29822P2と名付けられた。
【0241】
この実施例の方法に従って生成された例示的な抗体の生物学的特性を、以下に示す実施例において詳細に記載する。
【0242】
実施例2.重鎖および軽鎖可変領域のアミノ酸配列および核酸配列
表1は、本開示の選択された抗HLA-A2:NY-ESO-1抗体の重鎖および軽鎖可変領域ならびにCDR、重鎖および軽鎖のアミノ酸配列識別子を示す。対応する核酸配列識別子を表2に示す。
【表1-1】
【表1-2】
【表2-1】
【表2-2】
【0243】
抗体は、本明細書において、典型的には、以下の命名法に従って当てはめられる。Fc接頭辞(例えば、「mAb」など)、続いて数値識別子(例えば、表1に示すように、「17670」、「17930」など)、続いて「P」、「N」、または「N2」接尾辞。したがって、この命名法に従い、抗体は、本明細書では、例えば、「mAb17670P」、「mAb17930N」、「mAb17368N2」などと称され得る。当業者には理解されるように、特定のFcアイソタイプを有する抗体は、異なるFcアイソタイプを有する抗体に変換することができる(例えば、マウスIgG1 Fcを有する抗体は、ヒトIgG4を有する抗体に変換することができるなど)が、いずれにせよ、表1に示される数値識別子によって指定される可変ドメイン(CDRを含む)は、同じままであり、抗原への結合特性は、Fcドメインの性質に関係なく、同一または実質的に類似すると予測される。
【0244】
特定の実施形態において、マウスIgG1 Fcを有する選択された抗体は、ヒトIgG4 Fcを有する抗体に変換した。特定の実施形態において、抗体は、米国特許公開第2010/0331527号(その全体が本明細書に組み込まれる)に開示されているように、2つ以上のアミノ酸変化を有するヒトIgG4 Fcを含む。一実施形態において、IgG4 Fcドメインは、ヒンジ領域内にセリンからプロリンへの変異(S108P)を含み、二量体安定化を促進する。
【0245】
表3は、本開示の選択された抗体の重鎖および軽鎖配列のアミノ酸配列識別子を示す。
【表3-1】
【表3-2】
【0246】
実施例3.ヒトモノクローナル抗HLA-A2:NY-ESO-1単一特異性抗体の表面プラズモン共鳴による結合親和性および速度定数
ヒト抗HLA-A2:NY-ESO-1抗体の結合親和性および速度定数を、リアルタイム表面プラズモン共鳴(SPR;GE Healthcare Life ScienceによるBiacore 4000、またはSierra SensorsによるMASS-1)によって25℃および37℃で決定した。この実施例で試験した抗HLA-A2:NY-ESO-1抗体は、HLA-A2:NY-ESO-1に対する二価の単一特異性結合剤だった(エフェクター機能が低減した(例えば、米国特許第9,359,437号に記載されるように)定常領域(例えば、hIgG4定常領域)、hIgG2a定常領域、mIgG2a定常領域、またはmIgG1定常領域を有して発現された)。参照抗体1、2、および3は、Stewart-Jones et al.,Proc Natl Acad Sci USA 106(14):5784-5788(2009)および国際特許公開第2010/106431号に記載される抗体から生成した。Ref Ab1は、ヒトIgG1 Fcおよびヒトラムダ軽鎖を有するこれらの出版物に記載の3M4E5抗体に由来するVHおよびVLドメインを含み、Ref Ab2は、ヒトIgG1 Fcおよびヒトラムダ軽鎖を有する出版物に由来する3M4E5 VHドメインおよびT1 Fab VLドメインを含み、Ref Ab3は、エフェクター機能Fcが低減した(米国特許第9,359,437号に記載するように)ヒトIgG4およびヒトラムダVLドメインを有する出版物に由来する3M4E5 VHドメインおよびT1 Fab VLドメインを含む。抗体は、モノクローナル抗ヒトFc抗体(Jackson Immunoresearch)とのアミン結合によって誘導体化したCM5 Biacoreセンサー表面(GE Healthcare Life Sciences)、またはポリクローナル抗マウスFc抗体(GE Life Sciences)とのアミン結合によって誘導体化した高容量アミンセンサー表面(Sierra Sensors)に捕捉した。様々な濃度の単量体HLA-A2:NY-ESO-1(156~165)(配列番号270または291、165位のV)ペプチド複合体、2906(配列番号272)を、抗HLA-A2:NY-ESO-1抗体捕捉した表面にわたって、50μL/分(MASS-1)または30μL/分(Biacore 4000)の流速で注入した。抗体-試薬会合を4~5分間モニタリングし、解離を10分間モニタリングした。すべての結合試験は、HBS-ET緩衝液(0.01M HEPES、pH7.4、0.15M NaCl、3mM EDTA、0.05体積/体積%界面活性剤P20)中で行った。
【0247】
動的会合(ka)速度定数および動的解離(kd)速度定数は、Scrubber 2.0c曲線フィッティングソフトウェアを使用してリアルタイムセンサーグラムを1:1結合モデルにフィッティングすることによって決定した。結合解離平衡定数(KD)および解離半減期(t1/2)を、動的速度定数から
(M)=(kd/ka)、およびt1/2(分)=((ln(2)))/(60×kd))として計算した。
【0248】
単一特異性抗HLA-A2:NY-ESO-1抗体の単量体HLA-A2:NY-ESO-1ペプチド複合体に対する結合動態パラメータを以下に表4に示す。
【表4-1】
【表4-2】
【表5-1】
【表5-2】
【0249】
データは、試験した抗HLA-A2:NY-ESO-1抗体の大部分が可溶性HLA-A2:NY-ESO-1ペプチド複合体に選択的に結合し、いくつかはナノモルまたは準ナノモル親和性を示し、多くは参照抗体よりも複合体に対する親和性が高かったことを示す。
【0250】
実施例4.NY-ESO-1 157~165ペプチドでパルスしたT2細胞に対する抗HLA-A2:NY-ESO-1抗体のFACS結合
NY-ESO-1:157~165抗体の相対的結合を、NY-ESO-1_157~165(C165)ペプチド(配列番号269)でパルスしたT2(174CEM.T2)細胞におけるフローサイトメトリーによって評価した。パルスするために、T2細胞(174CEM.T2)を、細胞1×10個/mlの密度でAIM V培地(Gibco、カタログ番号31035-025)に再懸濁した。細胞を、10μg/mlのhB2M(EMD Milliporeカタログ番号475828)および100μg/mlの指定ペプチドを添加することによってパルスした。次いで、T2細胞を37℃で一晩インキュベートし、染色緩衝液で洗浄し、次いで、染色した。
【0251】
細胞を染色するために、細胞解離緩衝液(Millipore、カタログ番号S-004-C)を使用して細胞をフラスコから採取して計数した。細胞を、96ウェルV底プレートにウェル当たり細胞200,000個の密度で、染色緩衝液(カルシウムおよびマグネシウム無添加PBS(Corning、参照番号21-031-CV)+2%FBS(Seradigm、ロット番号238B15)中に播種し、一次抗体の3倍希釈系列(1.7pM~100nM)によって4℃で30分間染色した。一次抗体インキュベーション後、細胞を染色緩衝液中で1回洗浄し、APCコンジュゲート化二次抗体(Jackson ImmunoResearch、カタログ番号109-136-170)によって4℃で30分間染色した。次いで、細胞を洗浄し、BD Cytofix(BD、カタログ番号554655)の50%溶液を使用して固定した。試料をintellicyt iQueフローサイトメーターで分析して、平均蛍光強度(MFI)を計算した。MFI値は、12ポイントの反応曲線にわたって4パラメータロジスティック方程式を使用してGraphpad Prismにプロットし、EC50値を計算した。各用量反応曲線における二次抗体単独(すなわち、一次抗体なし)も、3倍希釈系列の連続として分析に含まれ、最低用量として表される。Ref Ab2およびRef Ab3を、上記のように、対照として使用した。EC50値(M)を表6に示す。
【表6-1】
【表6-2】
【0252】
実施例5.予測されるオフターゲットペプチドでパルスしたT2細胞に対する抗HLA-A2:NY-ESO-1抗体のFACS結合
NY-ESO-1:157~165抗体の結合特異性を、NY-ESO-1(157~165)ペプチド(C165;配列番号269)または予測されるオフターゲットペプチドでパルスしたT2(174CEM.T2)細胞におけるフローサイトメトリーによって評価した(表7)。パルスするために、T2細胞(174CEM.T2)を、細胞1×10個/mlの密度でAIM V培地(Gibco、カタログ番号31035-025)に再懸濁した。細胞を、10μg/mlのhB2M(EMD Milliporeカタログ番号475828)および100μg/mlの指定ペプチドを添加することによってパルスした。次いで、T2細胞を37℃で一晩インキュベートし、染色緩衝液で洗浄し、実施例4における上記プロトコルに従って10μg/mlの濃度で指定抗体によって染色した。MFI値を計算し、パルスされたT2細胞対非パルス細胞の比率として表した。これらのアッセイの結果を表8に示す。パルスされた細胞株からのHLA-A2表面染色の増加を、抗HLA-A2抗体を使用した非パルス細胞株と比較することによって、有効なペプチド負荷を決定した。1.4倍以上のいずれかの増加は、ペプチドで負荷されるとみなされた。1つのペプチド(ITCH(807~815))について負荷が確認できなかったが、上記の2つの比較対照であるNY-ESO-1mAb Ref Ab1およびRef Ab2は、このペプチドでパルスした細胞に結合し、いくらかの量のペプチドが細胞に負荷されたことを示した。
【表7-1】
【表7-2】
【表8-1】
【表8-2】
【表8-3】
【0253】
表8に示されるように、試験した多くの抗体は、特に複数のオフターゲットペプチドに有意な結合を有した2つの比較対照抗体と比べて、予測されるオフターゲットのいずれかでパルスしたT2細胞に有意な結合を有しないと特定された。非特異的結合は、治療有効性の低下および/または副作用の増加(例えば、腫瘍細胞殺傷活性を低下させ、かつ/または対象において副作用を引き起こす非特異的細胞傷害性)をもたらし得る。したがって、最小限のオフターゲット結合を有する抗原結合タンパク質(例えば、抗体)の特定は、本明細書に記載のMAGE-A4を標的とする治療剤の開発において有益であり得る。
【0254】
アラニンスキャニングを行って、NY-ESO-1(157~165)ペプチドにおけるどの残基が細胞結合に重要か決定した。T2細胞にアラニンスキャニングペプチド(表7)でパルスし、上記のようにNY-ESO-1(157~165)抗体で染色した。非パルス細胞に対する倍率変化を表9に示す。HLA.A2表面染色(上記)によって決定されるとき、NY-ESO-1:157~165,C165V,S157AおよびNY-ESO-1:157~165,C165V,I162Aを除くすべてのペプチドが効果的に負荷した。以下の残基は、試験した抗NY-ESO-1 mAbの結合において重要だった(結合の90%以上の低減として定義):ロイシン158、トリプトファン161、スレオニン163、およびグルタミン164。スレオニン163およびグルタミン164は、上記のように、比較対照モノクローナル抗体Ref Ab3の結合において必ずしも必要ではなかった。メチオニン160は、mAb24956N、mAb24958N、およびmAb28105Pの結合において特に重要だった。
【表9-1】
【表9-2】
【表9-3】
【0255】
実施例6.キメラ抗原受容体での使用のための抗HLA-A2:NY-ESO-1抗体のscFvへの再構成化
4つのNY-ESO-1(157~165)抗体(mAb24955N、mAb24956N、mAb24958N、およびmAb24959N)を、CD8αヒンジおよび膜貫通ドメイン、4-1BB共刺激ドメイン、ならびにCD3ζ刺激ドメインを使用した、VL-VHまたはVH-VL単鎖可変断片キメラ抗原受容体(CAR)に再構成した。NY-ESO-1:157~165 CARをレンチウイルス発現ベクター(Lenti-X(商標)バイシストロニック発現システム(Neo)、Clontech カタログ番号632181)にクローニングし、レンチウイルス粒子を、製造業者のプロトコルに従ってLenti-X Packaging Single-Shot(VSV-G)システム(Clontech カタログ番号631276)を介して生成した。次いで、ジャーカット/NFATLuc cl.3C7細胞(NFAT-ルシフェラーゼレポーターを発現する細胞)を、製造業者のプロトコルに従ってRetroNectin Precoated Dish(Clontech、カタログ番号T110a)を使用して、8つの異なるCARによって形質導入した。500μg/mlのG418(Gibco、カタログ番号11811-098)中で少なくとも2週間選択した後、以下のCAR-T細胞株を生成した:ジャーカット/NFATLuc cl 3C7/NY-ESO CAR-T 24955N VH-VL、ジャーカット/NFATLuc cl 3C7/NY-ESO CAR-T 24955N VL-VH、ジャーカット/NFATLuc cl 3C7/NY-ESO CAR-T 24956N VH-VL、ジャーカット/NFATLuc cl 3C7/NY-ESO CAR-T 24956N VL-VH、ジャーカット/NFATLuc cl 3C7/NY-ESO CAR-T 24958N VH-VL、ジャーカット/NFATLuc cl 3C7/NY-ESO CAR-T 24958N VL-VH、ジャーカット/NFATLuc cl 3C7/NY-ESO CAR-T 24959N VH-VL、およびジャーカット/NFATLuc cl 3C7/NY-ESO CAR-T 24959N VL-VH。次いで、CAR-T細胞株の活性を、CAR-T/APC(抗原提示細胞)バイオアッセイで評価した。バイオアッセイを行うために、50,000個のCAR-T細胞を、50mlのアッセイ培地(10%FBSおよび1%P/S/Gを添加したRPMI培地)中のThermo-Nunc96ウェルホワイトプレート(Thermo Scientific、カタログ番号136101)で添加し、続いて50mlのアッセイ培地中のAPC(細胞200,000~274個)の3倍希釈系列を添加した。APCは、3T3/HLA.A2/hB2M/NY-ESO-1:157~165WT(ヒトHLA.A2(登録番号P01892)を発現するように操作されたNIH3T3細胞、ヒトB2M(登録番号NP_004039.1)、およびNY-ESO-1:157~165ペプチドを含むユビキチンペプチドカセット)と、3T3/HLA.A2/hB2M/HPV16E7 11~19(HPV16E7:11~19ペプチドを含むユビキチンペプチドカセット(上記のように、Levy F,et al.(1996)Proc.Nat.Acad.Sci.USA93(10):4907-4912、Valmori D,et l.(1999)J Exp Med.189(6):895-906)を有する)と、IM9(HLA.A2陽性、NY-ESO-1:157~165陽性)と、HEK293(HLA.A2陽性およびNY-ESO-1:157~165陰性)と、を利用した。細胞混合物を37℃、5%CO、加湿インキュベーターで5時間インキュベートした。NFAT-ルシフェラーゼ活性は、Promega One-Glo(カタログ番号E6130)およびPerkin Elmer Envisionプレートリーダーを使用して測定した。相対的ルシフェラーゼ単位(RLU)は、8ポイント反応曲線にわたって4パラメータロジスティック方程式を使用してGraphPad PrismにプロットしてEC50値を計算した。各用量反応曲線におけるゼロAPC条件も、3倍希釈系列の連続として分析に含まれ、最低用量として表される。最大倍率活性化は、曲線上の最大RLUの最小に対する比を得ることによって決定した。8つすべてのNY-ESO-1 CAR細胞株が、3T3/HLA.A2/hB2M/NY-ESO-1:157~165WT細胞の存在下で活性化した。 表10に示されるように、3つのNY-ESO-1 CAR細胞株が、IM9細胞(ジャーカット/NFATLuc cl 3C7/NY-ESO CAR-T 24955N VH-VL、ジャーカット/NFATLuc cl 3C7/NY-ESO CAR-T 24955N VL-VH、およびジャーカット/NFATLuc cl 3C7/NY-ESO CAR-T 24956N VL-VH)の存在下で活性化した。
【表10】
【0256】
実施例7.HLA2:NY-ESO-1_157~165ペプチドに結合するFabの構造解析
抗体とHLA-ペプチド複合体との間の特異的相互作用をよりよく理解するために、X線結晶構造を、がん精巣抗原1(CTAG1B;NY-ESO-1)からの残基157~165を含むペプチドを提示するHLA-A2/hB2Mに結合した抗体mAb28105PのFab断片について決定した。このペプチドは、その天然システインからの残基165をバリンで置換することによって改変された。HLA提示NY-ESO-1(C165V)ペプチドの9個すべての残基がこの構造の電子密度マップで明らかに目視され、ペプチドを囲むHLAおよびFabの残基も良好に解像された。この構造は、3.3Åの分解能で精密化されたが、より新しい結晶学的精密化技法(変形可能な弾性ネットワーク、または「ゼリーボディ」精密化)は、過剰適合を防止し、得られたモデルの精度を確保するのに役立った。
【0257】
mAb28105P Fabは、TCRが結合するのと同様な手段で、HLA-ペプチド複合体の上部に結合した。このFabは、結合したペプチドで中心化され、結合したペプチドのC末端側の半分に接触するHCDR3、およびプチドのN末端側の半分に接触する軽鎖CDRを有した。ペプチド残基M160およびW161は、Fab結合界面の中心にあり、以下に記載されるように、重鎖および軽鎖CDR残基の両方と接触した。他の公表されている溝内ペプチド抗体複合体構造(例えば、PDBコード1W72および4WUU)は、抗体がHLA提示ペプチド全体を覆うことはないが、部分的にのみペプチドを覆う抗体は特異性が乏しく、結合親和性の損失をほとんど伴わずに接触されていないペプチドの部分における広範な変化に耐容することを示す。
【0258】
構造は、mAb28105P Fab重鎖は、HLA結合NY-ESO-1ペプチドにおける残基160、161、および164と接触しているが、一方、Fab軽鎖は、残基160および161と接触していることを示した。ペプチド残基157、158、159、162、および165はすべて、HLA分子に向いていた。残基163は、Fab軽鎖によって溶媒から完全に遮断されたが、抗体残基と直接接触しなかった。結合したペプチドを配列番号291に示すように、配列番号271の残基位置に従って番号付けした。
【表23】
【0259】
すべてのFab接触は、HLA結合ペプチドの側鎖でなされ、その骨格ではなかった。
【0260】
MAb28105P Fabによってなされたペプチド接触は、LCDR1およびLCDR2からのわずかな寄与を伴いながら、HCDR3に集中された。特に、Fab重鎖残基100、101、104、105、および111(配列番号162)、ならびに軽鎖残基32および49(配列番号170)は、結合したペプチドと相互作用し、一方、Fab重鎖残基100、101、107、および109(配列番号162)、ならびに軽鎖残基92(配列番号170)は、HLAと相互作用した。上記で使用される場合、「と相互作用した」という用語は、直接的または水媒介性の水素結合、電荷-電荷相互作用、または疎水性/ファンデルワールス相互作用を含むことができる。
【0261】
NY-ESO-1_157~165抗体のうちの4つ(mAb24955N、mAb24956N、mAb24958N、およびmAb24959N)は、いずれも軽鎖配列において非常に類似していたが、重鎖配列は、HCDR2およびHCDR3において分岐した。7つのペプチド結合残基は概して保存され、3つの残基は、4つすべての抗体において同一であり、4つの配列のうち3つにおいてさらに3つが同一であり、抗体間の共通の結合様式を示唆した。
【0262】
実施例8.キメラ抗原受容体シグナル伝達ドメインの分析
-V適応における抗HLA-A2/NY-ESO-1157~165scFvと、1)ヒトCD8(huCD8)ヒンジ/膜貫通ドメイン、4-1BB共刺激ドメイン、およびCD3ゼータシグナル伝達ドメイン(BB/z CAR)(全長CAR配列:配列番号301)、または2)huCD28ヒンジ/膜貫通/共刺激ドメイン、およびCD3zシグナル伝達ドメイン(28/z CAR)(全長CAR配列:配列番号302)のいずれかと、を含むキメラ抗原受容体を、抗HLA-A2/NY-ESO-1157~165抗体であるmAb28105PのVおよびV配列(V:配列番号294、V:配列番号293)を使用して構築した。非結合対照として、BB/z CARを、無関連scFvと、huCD8ヒンジ/膜貫通ドメイン、4-1BB共刺激ドメイン、およびCD3zシグナル伝達ドメインと、を使用して設計した。これらのCARを、EF1aプロモーターおよびCAR形質導入細胞を追跡するためのP2A:eGFP配列(配列番号300)を有するpLVXレンチウイルスベクターにクローニングし、VSV偽型レンチウイルスを産生した。構築物設計について図1A、および構築物の概要について表11を参照されたい。
【0263】
CD3+T細胞を正常ドナーのヒト末梢血単核細胞(PBMC)から単離し、CD3/CD28マイクロビーズ+100U/ml組換えヒトIL-2で刺激し、レンチウイルスによってMOI=5で形質導入した。形質導入された細胞をCD3/CD28マイクロビーズ+100U/ml組換えヒトIL-2で19日間増殖させてから、インビボ実験での使用まで凍結保存した。
【0264】
抗HLA-A2/NY-ESO-1157~165標的化キメラ抗原受容体(CAR)T細胞のインビボの有効性を決定するために、異種腫瘍試験を行った。0日目に、免疫不全NOD.Cg-PrkdcSCIDIl2rg(商標)1WJl/SzJ(NSG)マウスに、5×10個のHLA-A2NY-ESO-1A375ヒト黒色腫腫瘍細胞を皮下注射した。腫瘍を確立した後3日目に、異なるドナー2名から、非結合対照BB/z CAR(対照CAR T)、抗HLA-A2/NY-ESO-1157~165BB/z CAR、または抗HLA-A2/NY-ESO-1157~16528/z CAR(CARで形質導入されたそれらの細胞のマーカーであるGFPを発現する細胞の頻度によって決定される)のいずれかを発現する20×10個のT細胞をマウス(n=5/群)に静脈内注射した。腫瘍増殖は、腫瘍体積を測定することによって、21日間にわたって評価した。
【0265】
外部キャリパーによって腫瘍体積を決定するために、最大縦径(mmでの長さ)および最大横径(mmでの幅)を決定した。キャリパー測定に基づいた腫瘍体積を、式:容積(mm)=(長さ×幅)/2によって計算した。
【表11】
【0266】
まとめると、結果は、抗HLA-A2/NY-ESO-1157~16528/z CAR T細胞が、抗HLA-A2/NY-ESO-1157~165BB/z CAR T細胞と比較して優れたインビボ抗腫瘍活性および抗腫瘍動態を示したが、両方のタイプのCARが、非結合対照と比較して抗腫瘍活性を示したことを実証する。A375腫瘍は、対照CAR T細胞を受けたマウスにおいて漸進的に増殖した。抗HLA-A2/NY-ESO-1157~165BB/z CAR T細胞を受けたマウスは、いくらかの腫瘍制御を示し、対照CAR T処置マウスと比較して、21日目(p<0.04)、28日目(p<0.0001)、および38日目(p<0.0001)に、腫瘍増殖の低減を有した(統計は、二元配置分散分析によって分析された)。抗HLA-A2/NY-ESO-1157~16528/z CAR T処置はまた、16日目(p=0.03)、19日目(p=0.0002)、21日目(p<0.0001)、28日目(p<0.0001)、および38日目(p<0.0001)に、確立されたA375腫瘍増殖の抑制をもたらした(統計は、二元配置分散分析によって分析された)。抗HLA-A2/NY-ESO-1157~16528/z CARと抗HLA-A2/NY-ESO-1157~165BB/z CARとの増強された有効性は、腫瘍サイズとして、21日目(p=0.002)、28日目(p<0.0001)、および38日目(p<0.0001)に確証され、二元配置分散分析によって統計的に有意である(両日ともp<0.0001)。図1Bおよび図1C、ならびに表12~22を参照されたい。
【表12】
【表13-1】
【表13-2】
【表14】
【表15】
【表16-1】
【表16-2】
【表17】
【表18】
【表19-1】
【表19-2】
【表20】
【表21】
【表22】
【0267】
本発明は、本明細書に記載される特定の実施形態によって範囲が限定されるべきではない。実際、本明細書に記載されたものに加えて本発明の様々な修正は、前述の記載および添付の図から当業者には明らかであろう。そのような変更は、添付の特許請求の範囲内に含まれることが意図されている。
本発明は、例えば、以下の項目を提供する。
(項目1)
HLA-A2:ニューヨーク食道扁平上皮がん1ペプチド(NY-ESO-1ペプチド)複合体に、配列番号271のM160、W161、およびQ164からなる群から選択されるアミノ酸に対応する少なくとも1つのアミノ酸で特異的に結合する、抗原結合タンパク質。
(項目2)
単離された前記抗原結合タンパク質が、HLA-A2提示NY-ESO-1ポリペプチドの立体構造エピトープに特異的に結合する、項目1に記載の抗原結合タンパク質。
(項目3)
前記少なくとも1つのアミノ酸が、少なくとも2つのアミノ酸である、項目1または2に記載の抗原結合タンパク質。
(項目4)
前記少なくとも1つのアミノ酸が、3つのアミノ酸である、項目3に記載の抗原結合タンパク質。
(項目5)
HLA-A2:NY-ESO-1 157~165ペプチド複合体に特異的に結合する抗原結合タンパク質であって、単離された前記抗原結合タンパク質が、X線結晶解析によって4.0Å以上の分解能で決定されるときに、前記NY-ESO-1 157~165ペプチドのアミノ酸M160、W161、およびQ164と相互作用する、抗原結合タンパク質。
(項目6)
前記分解能が、3.5Å以上である、項目5に記載の抗原結合タンパク質。
(項目7)
前記分解能が、3.3Å以上である、項目6に記載の抗原結合タンパク質。
(項目8)
HLA-A2:NY-ESO-1 157~165ペプチド複合体に特異的に結合するが、BCL9L 1351~1359(配列番号273)、GRID1 7~15(配列番号274)、ZDHHC1 376~384(配列番号276)、ITCH 807~815(配列番号277)、およびURB1 1853~1861(配列番号280)からなる群から選択される1つ以上のオフターゲットペプチドに特異的に結合しない抗原結合タンパク質であって、i)前記1つ以上のオフターゲットペプチドでパルスされた細胞に結合する前記抗原結合タンパク質の、ii)非パルス細胞に対する比が、約9未満である、抗原結合タンパク質。
(項目9)
前記比が、約8未満である、項目8に記載の抗原結合タンパク質。
(項目10)
前記比が、約7未満である、項目9に記載の抗原結合タンパク質。
(項目11)
前記比が、約6未満である、項目10に記載の抗原結合タンパク質。
(項目12)
前記比が、約5未満である、項目11に記載の抗原結合タンパク質。
(項目13)
前記比が、約4未満である、項目12に記載の抗原結合タンパク質。
(項目14)
前記比が、約3未満である、項目13に記載の抗原結合タンパク質。
(項目15)
前記比が、約2未満である、項目14に記載の抗原結合タンパク質。
(項目16)
前記抗原結合タンパク質が、表面プラズモン共鳴アッセイにおいて25℃で測定されるときに、単量体HLA-A2:NY-ESO-1 157~165ペプチド複合体に約1nM未満の結合解離平衡定数(K )で結合する、項目1~15のいずれか一項に記載の抗原結合タンパク質。
(項目17)
前記NY-ESO-1ペプチドが、SLLMWITQC(配列番号269)またはSLLMWITQV(配列番号291)のアミノ酸配列を含む、項目1~16のいずれか一項に記載の抗原結合タンパク質。
(項目18)
前記抗原結合タンパク質が、全長抗体、Fab、Fab’、(Fab’)2、Fv、単鎖Fv(scFv)、T体構築物、またはキメラ抗原受容体(CAR)である、項目1~17のいずれか一項に記載の抗原結合タンパク質。
(項目19)
前記抗原結合タンパク質が、CARである、項目19に記載の抗原結合タンパク質。
(項目20)
前記CARが、重鎖可変領域(LCVR)、軽鎖可変領域(LCVR)、ヒンジ領域、膜貫通ドメイン、共刺激ドメイン、およびシグナル伝達ドメインを含む、項目19に記載のCAR。
(項目21)
前記共刺激ドメインが、4-1BB共刺激ドメインである、項目20に記載のCAR。
(項目22)
前記共刺激ドメインが、CD28共刺激ドメインである、項目20に記載のCAR。
(項目23)
前記抗原結合タンパク質が、ヒトモノクローナル抗体またはその抗原結合断片である、項目1~22のいずれか一項に記載の抗原結合タンパク質。
(項目24)
表1に列挙される重鎖可変領域(HCVR)配列のうちのいずれか1つに含まれる3つの重鎖相補性決定領域(CDR)(HCDR1、HCDR2、およびHCDR3)と、表1に列挙される軽鎖可変領域(LCVR)配列のうちのいずれか1つに含まれる3つの軽鎖CDR(LCDR1、LCDR2、およびLCDR3)と、を含む、項目1~23のいずれか一項に記載の抗原結合タンパク質。
(項目25)
前記HCVR配列が、配列番号2、22、42、142、および250からなる群から選択される、項目24に記載の抗原結合タンパク質。
(項目26)
前記LCVR配列が、配列番号10、30、50、150、および260からなる群から選択される、項目24に記載の抗原結合タンパク質。
(項目27)
前記HCVR/LCVR配列が、配列番号2/10、22/30、42/50、62/70、82/90、102/110、122/130、142/150、162/170、180/186、196/203、211/219、230/238、および250/258からなる群から選択される、項目24に記載の抗原結合タンパク質。
(項目28)
前記HCVR/LCVR配列が、配列番号2/10、22/30、42/50、142/150、および250/258からなる群から選択される、項目24に記載の抗原結合タンパク質。
(項目29)
表1に列挙されるHCVR配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するHCVRを含む、項目1~25のいずれか一項に記載の抗原結合タンパク質。
(項目30)
前記HCVR配列が、配列番号2、22、42、142、および250からなる群から選択される、項目29に記載の抗原結合タンパク質。
(項目31)
表1に列挙されるLCVR配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するLCVRを含む、項目1~30のいずれか一項に記載の抗原結合タンパク質。
(項目32)
前記LCVR配列が、配列番号10、30、50、150、および260からなる群から選択される、項目31に記載の抗原結合タンパク質。
(項目33)
(a)表1に列挙されるHCVR配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するHCVRと、(b)表1に列挙されるLCVR配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するLCVRと、を含む、項目1~32のいずれか一項に記載の抗原結合タンパク質。
(項目34)
前記HCVR/LCVR配列が、配列番号2/10、22/30、42/50、62/70、82/90、102/110、122/130、142/150、162/170、180/186、196/203、211/219、230/238、および250/258からなる群から選択される、項目33に記載の抗原結合タンパク質。
(項目35)
前記HCVR/LCVR配列が、配列番号2/10、22/30、42/50、142/150、および250/258からなる群から選択される、項目34に記載の抗原結合タンパク質。
(項目36)
(a)配列番号4、24、44、64、84、104、124、144、164、213、232、および252からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するHCDR1ドメインと、
(b)配列番号6、26、46、66、86、106、126、146、166、182、199、215、234、および254からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するHCDR2ドメインと、
(c)配列番号8、28、48、68、88、108、128、148、168、184、201、217、236、および256からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するHCDR3ドメインと、
(d)配列番号12、32、52、72、92、112、132、152、172、188、221、240、および260からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するLCDR1ドメインと、
(e)配列番号14、34、54、74、94、114、134、154、174、242、および262からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するLCDR2ドメインと、
(f)配列番号16、36、56、76、96、116、136、156、190、205、224、244、および264からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するLCDR3ドメインと、を含む、項目1~35のいずれか一項に記載の抗原結合タンパク質。
(項目37)
前記抗原結合タンパク質が、表1に列挙されるHCVR配列に対して少なくとも80%の配列同一性を含むHCVRを含む、項目1~28および36のいずれか一項に記載の抗原結合タンパク質。
(項目38)
前記抗原結合タンパク質が、表1に列挙されるHCVR配列に対して少なくとも90%の配列同一性を含むHCVRを含む、項目37に記載の抗原結合タンパク質。
(項目39)
前記単離された抗原結合タンパク質が、表1に列挙されるHCVR配列に対して少なくとも95%の配列同一性を含むHCVRを含む、項目38に記載の抗原結合タンパク質。
(項目40)
前記抗原結合タンパク質が、表1に列挙されるLCVR配列に対して少なくとも80%の配列同一性を含むLCVRを含む、項目1~28および36~39のいずれか一項に記載の抗原結合タンパク質。
(項目41)
前記単離された抗原結合タンパク質が、表1に列挙されるLCVR配列に対して少なくとも90%の配列同一性を含むLCVRを含む、項目40に記載の抗原結合タンパク質。
(項目42)
前記抗原結合タンパク質が、表1に列挙されるLCVR配列に対して少なくとも95%の配列同一性を含むLCVRを含む、項目38に記載の抗原結合タンパク質。
(項目43)
結合について、項目1~42のいずれか一項に記載の抗原結合タンパク質と競合する、抗原結合タンパク質。
(項目44)
項目1~42のいずれか一項に記載の抗原結合タンパク質と同じエピトープに結合する、抗原結合タンパク質。
(項目45)
検出可能な部分を含む、項目1~44のいずれか一項に記載の抗原結合タンパク質。
(項目46)
項目1~45のいずれか一項に記載のHLA-A2:NY-ESO-1に結合する抗原結合タンパク質と、薬学的に許容される担体または希釈剤と、を含む、医薬組成物。
(項目47)
項目1~45のいずれか一項に記載の抗原結合タンパク質のHCVRをコードするポリヌクレオチド配列を含む、単離されたポリヌクレオチド分子。
(項目48)
項目1~45のいずれか一項に記載の抗原結合タンパク質のLCVRをコードするポリヌクレオチド配列を含む、単離されたポリヌクレオチド分子。
(項目49)
項目47または48に記載のポリヌクレオチド分子を含む、ベクター。
(項目50)
項目47もしくは48に記載のポリヌクレオチド分子、または項目49に記載のベクターを発現する、細胞。
(項目51)
NY-ESO-1関連疾患または障害を有する対象を治療する方法であって、前記対象に、治療有効量の項目1~45のいずれか一項に記載の抗原結合タンパク質、または項目46に記載の医薬組成物、または項目50に記載の細胞を投与することを含み、それによって前記対象を治療する、方法。
(項目52)
前記NY-ESO-1関連疾患または障害が、NY-ESO-1関連がんである、項目51に記載の方法。
(項目53)
前記NY-ESO関連がんが、脂肪肉腫、神経芽腫、骨髄腫、転移性黒色腫、滑膜肉腫、膀胱がん、食道がん、肝細胞がん、頭頸部がん、非小細胞肺がん、卵巣がん、前立腺がん、乳がん、星状細胞腫瘍、多形性膠芽腫、未分化星状細胞腫、脳腫瘍、卵管がん、卵巣上皮がん、原発性腹腔がん、進行性固形腫瘍、軟組織肉腫、黒色腫、肉腫、骨髄異形成症候群、急性骨髄性白血病、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、ホジキン病、多発性骨髄腫、滑膜肉腫、転移性固形腫瘍、食道がん、横紋筋肉腫、進行性粘液様円形細胞脂肪肉腫、転移性黒色腫、または再発性非小細胞肺がんからなる群から選択される、項目52に記載の方法。
(項目54)
前記抗原結合タンパク質が、前記対象に、第2の治療剤と組み合わせて投与される、項目51~53のいずれか一項に記載の方法。
(項目55)
前記第2の治療剤が、PD-1阻害剤、CTLA-4阻害剤、腫瘍特異的抗原に対する抗体、ウイルス感染細胞抗原に対する抗体、PD-L1阻害剤、CD20阻害剤、CD20およびCD3に対する二重特異性抗体、抗酸化剤などの栄養補充剤、VEGFアンタゴニスト、化学療法剤、細胞傷害剤、手術、放射線、NSAID、コルチコステロイド、ならびに前記疾患または障害に関連する少なくとも1つの症状を改善するために有用な任意の他の療法からなる群から選択される、項目54に記載の方法。
(項目56)
前記抗原結合タンパク質が、皮下、静脈内、皮内、腹腔内、経口、筋肉内、または頭蓋内で投与される、項目51~55のいずれか一項に記載の方法。
(項目57)
前記抗原結合タンパク質が、前記対象の体重の約0.1mg/kg~約100mg/kgの用量で投与される、項目51~56のいずれか一項に記載の方法。
(項目58)
キメラ抗原受容体(CAR)をコードする単離された核酸分子であって、前記CARが、HLA-A2提示ニューヨーク食道扁平上皮がん1ペプチド(NY-ESO-1ペプチド)の立体構造エピトープに特異的に結合する細胞外結合ドメイン、膜貫通ドメイン、および細胞内シグナル伝達ドメインを含む、単離された核酸分子。
(項目59)
前記細胞外結合ドメインが、抗HLA-A2:NY-ESO-1抗原結合タンパク質である、項目58に記載の単離された核酸分子。
(項目60)
前記抗原結合タンパク質が、表1に列挙される重鎖可変領域(HCVR)配列のうちのいずれか1つに含まれる3つの重鎖相補性決定領域(CDR)(HCDR1、HCDR2、およびHCDR3)と、表1に列挙される軽鎖可変領域(LCVR)配列のうちのいずれか1つに含まれる3つの軽鎖CDR(LCDR1、LCDR2、およびLCDR3)と、を含む、項目59に記載の単離された核酸分子。
(項目61)
前記抗原結合タンパク質が、表1に列挙されるHCVR配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するHCVRを含む、項目58~60のいずれか一項に記載の単離された核酸分子。
(項目62)
前記抗原結合タンパク質が、表1に列挙されるLCVR配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するLCVRを含む、項目58~61のいずれか一項に記載の単離された核酸分子。
(項目63)
前記抗原結合タンパク質が、(a)表1に列挙されるHCVR配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するHCVRと、(b)表1に列挙されるLCVR配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するLCVRと、を含む、項目58~62のいずれか一項に記載の単離された核酸分子。
(項目64)
前記抗原結合タンパク質が、
(a)配列番号4、24、44、64、84、104、124、144、164、213、232、および252からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するHCDR1ドメインと、
(b)配列番号6、26、46、66、86、106、126、146、166、182、199、215、234、および254からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するHCDR2ドメインと、
(c)配列番号8、28、48、68、88、108、128、148、168、184、201、217、236、および256からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するHCDR3ドメインと、
(d)配列番号12、32、52、72、92、112、132、152、172、188、221、240、および260からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するLCDR1ドメインと、
(e)配列番号14、34、54、74、94、114、134、154、174、242、および262からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するLCDR2ドメインと、
(f)配列番号16、36、56、76、96、116、136、156、190、205、224、244、および264からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するLCDR3ドメインと、を含む、項目58~63のいずれか一項に記載の単離された核酸分子。
(項目65)
前記抗原結合タンパク質が、配列番号2/10、22/30、42/50、62/70、82/90、102/110、122/130、142/150、162/170、180/186、196/203、211/219、230/238、および250/258からなる群から選択されるHCVR/LCVRアミノ酸配列対を含む、項目58~64のいずれか一項に記載の単離された核酸分子。
(項目66)
前記抗原結合タンパク質が、配列番号2/10、22/30、42/50、142/150、および250/258からなる群から選択されるHCVR/LCVRアミノ酸配列対を含む、項目58~65のいずれか一項に記載の単離された核酸分子。
(項目67)
表2に列挙される配列のうちのいずれか1つを含む、項目58~66のいずれか一項に記載の単離された核酸分子。
(項目68)
前記抗原結合タンパク質が、scFvである、項目58~67のいずれか一項に記載の単離された核酸分子。
(項目69)
項目58~68のいずれか一項に記載の単離された核酸分子を含む、ベクター。
(項目70)
項目58~68のいずれか一項に記載の単離された核酸分子または項目69に記載のベクターを含む、単離された免疫エフェクター細胞。
(項目71)
T体である、項目70に記載の単離された免疫エフェクター細胞。
(項目72)
前記細胞が、前記CARを発現する、項目70または71に記載の単離された免疫エフェクター細胞。
(項目73)
NY-ESO-1関連疾患または障害を有する対象を治療する方法であって、前記対象に、項目70~72のいずれか一項に記載の免疫エフェクター細胞を投与することを含む、方法。
(項目74)
前記NY-ESO-1関連疾患または障害が、NY-ESO-1関連がんである、項目73に記載の方法。
(項目75)
前記抗原結合タンパク質が、前記対象に、第2の治療剤と組み合わせて投与される、項目73または74に記載の方法。
図1A
図1B
図1C
【配列表】
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