(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-28
(45)【発行日】2025-05-09
(54)【発明の名称】スライド式切換弁および冷凍サイクルシステム
(51)【国際特許分類】
F16K 27/00 20060101AFI20250430BHJP
F16K 51/00 20060101ALI20250430BHJP
F16L 55/24 20060101ALI20250430BHJP
F25B 41/26 20210101ALI20250430BHJP
【FI】
F16K27/00 C
F16K51/00 B
F16L55/24 B
F25B41/26 A
(21)【出願番号】P 2022056340
(22)【出願日】2022-03-30
【審査請求日】2023-12-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000143949
【氏名又は名称】株式会社鷺宮製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】濱田 正吾
(72)【発明者】
【氏名】岡田 聡
(72)【発明者】
【氏名】横田 健久
【審査官】北村 一
(56)【参考文献】
【文献】中国実用新案第210423806(CN,U)
【文献】中国実用新案第211501810(CN,U)
【文献】特開2021-036188(JP,A)
【文献】特開2012-097773(JP,A)
【文献】米国特許第04564045(US,A)
【文献】中国特許出願公開第103836211(CN,A)
【文献】登録実用新案第3193049(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 27/00-27/12
F16K 51/00
F16K 11/00-11/24
F16L 55/24
F25B 41/26;41/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステンレス鋼製の弁ハウジングと、前記弁ハウジング内をスライド移動可能な弁体と、流体を通す配管と、を備えるスライド式切換弁であって、
前記配管は、軸方向一端側に設けられた拡管部と、前記拡管部よりも前記軸方向一端側に設けられ前記拡管部よりも径方向の寸法が小さい縮管部と、前記拡管部および前記縮管部を連結する係止部と、を備え、前記拡管部には、ストレーナが収容され、
前記縮管部が前記弁ハウジングの接続孔に挿入されるとともに、前記係止部が前記接続孔の周縁に当接した状態で前記配管が前記弁ハウジングに接続されており、
前記接続孔は、ガイド面を備え、
前記ガイド面は、前記弁ハウジングの表面および裏面に直交するように前記弁ハウジングの肉厚に沿って延びる平坦な面で構成され、且つ、前記弁ハウジングの前記表面および前記裏面に直交する方向の長さが、前記弁ハウジングの肉厚分の長さと等しく、
前記縮管部を前記接続孔に挿入する際には、前記ガイド面が前記縮管部の外周面に当接して前記縮管部を挿入方向に案内し、
前記接続孔の
前記周縁は、前記弁ハウジングの外周
面に設けられ
、前記周縁に前記係止部が当接していることを特徴とするスライド式切換弁。
【請求項2】
前記弁ハウジングは円筒状であることを特徴とする請求項1に記載のスライド式切換弁。
【請求項3】
前記縮管部は、前記ガイド面に沿って前記接続孔を貫通して設けられることを特徴とする請求項1または2に記載のスライド式切換弁。
【請求項4】
前記配管が、ステンレス鋼で構成されていることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載のスライド式切換弁。
【請求項5】
前記配管と前記弁ハウジングとに亘って少なくとも1か所の溶接部が形成され、前記配管と前記弁ハウジングとは、前記溶接部を覆うとともに前記配管の全周に亘るろう付けによって接合されていることを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載のスライド式切換弁。
【請求項6】
前記拡管部の内径に前記軸方向一端側に突出するリングが挿入され、このリングの突出部分が前記縮管部を構成し、前記拡管部の前記軸方向一端側の端面が
前記係止部を構成することを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載のスライド式切換弁。
【請求項7】
前記ストレーナの内方には、枠状の抜け止め部材が挿入され、
前記ストレーナは、前記抜け止め部材と前記拡管部の内周壁とで挟まれて前記拡管部に固定されていることを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載のスライド式切換弁。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載のスライド式切換弁を備えたことを特徴とする冷凍サイクルシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スライド式切換弁および冷凍サイクルシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の継手管のうち少なくとも一対の継手管を連通するとともに連通対象の継手管が切換え可能な切換弁として四方切換弁等のスライド式切換弁が知られている(例えば、特許文献1参照)。従来のスライド式切換弁は、筒状の主弁ハウジングの周壁に複数の継手管が連結され、内部に設置されたスライド弁体を軸方向にスライド移動させて、継手管同士を切換え可能に連通する。スライド弁体のスライド移動は、主弁ハウジングの内部においてスライド弁体を軸方向に挟む一対の空間に対し、パイロット弁から駆動流体を流通させることで行われる。このスライド式切換弁とパイロット弁とは、駆動流体を流通させるための複数の銅製の細管によって接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来のスライド式切換弁の主弁ハウジングやパイロット弁のハウジングであるソレノイドチューブは、銅合金を用いた切削加工品やプレス加工品であることが一般的であるが、その素材を銅合金からステンレス鋼に切り替えてプレス加工品とした場合、継手等の配管を固定するためのバーリング加工などが必要になるため、加工難易度が高く、加工コストを抑えることが難しいという問題があった。
【0005】
本発明の目的は、バーリング加工などの難易度の高い加工が不要となり、製品コストの低減を図ることが可能なスライド式切換弁および冷凍サイクルシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決し目的を達成するために、本発明のスライド式切換弁は、ステンレス鋼製の弁ハウジングと、前記弁ハウジング内をスライド移動可能な弁体と、流体を通す配管と、を備えるスライド式切換弁であって、前記配管は、軸方向一端側に設けられた拡管部と、前記拡管部よりも前記軸方向一端側に設けられ前記拡管部よりも径方向の寸法が小さい縮管部と、前記拡管部および前記縮管部を連結する係止部と、を備え、前記拡管部には、ストレーナが収容され、前記縮管部が前記弁ハウジングの接続孔に挿入されるとともに、前記係止部が前記接続孔の周縁に当接した状態で前記配管が前記弁ハウジングに接続されており、前記接続孔は、ガイド面を備え、前記ガイド面は、前記弁ハウジングの表面および裏面に直交するように前記弁ハウジングの肉厚に沿って延びる平坦な面で構成され、且つ、前記弁ハウジングの前記表面および前記裏面に直交する方向の長さが、前記弁ハウジングの肉厚分の長さと等しく、前記縮管部を前記接続孔に挿入する際には、前記ガイド面が前記縮管部の外周面に当接して前記縮管部を挿入方向に案内し、前記接続孔の前記周縁は、前記弁ハウジングの外周面に設けられ、前記周縁に前記係止部が当接していることを特徴とする。
【0007】
このような本発明によれば、弁ハウジングの接続孔に配管の縮管部を挿入し、当該接続孔の周縁に係止部を当接した状態で配管を弁ハウジングに接続することができる。すなわち、配管を接続するための加工について、ステンレス鋼製の弁ハウジングには、接続孔を形成するだけでよく、バーリング加工等の加工難易度が高く、加工コストを抑えることが難しい加工を行う必要がない。したがって、バーリング加工などの難易度の高い加工が不要となり、製品コストの低減を図ることが可能なスライド式切換弁を提供することができる。また、接続孔の周縁と係止部とが当接することで、配管を弁ハウジングに位置決めすることができるので、例えば、この状態でろう付け等を行う場合には、当該ろう付けの工程を容易に行うことができる。
【0008】
この際、前記弁ハウジングは円筒状であることが好ましい。このような構成によれば、接続孔の弁ハウジング外周面側の周縁に配管の係止部を当接させながら配管を弁ハウジングに接続することができる。このため、弁ハウジング内で配管を固定するための機構が必要な構成と比較して、配管の接続を簡易に行うことができる。
【0009】
また、前記縮管部は、前記ガイド面に沿って前記接続孔を貫通して設けられることが好ましい。このような構成によれば、ガイド面に沿って配管の縮管部を接続孔に貫通させることができるので、ガイド面が形成されていない構成と比較して、配管を弁ハウジングにスムーズに接続することができる。
【0010】
また、前記配管が、ステンレス鋼で構成されていることが好ましい。このような構成によれば、配管を弁ハウジングと同じ材料であるステンレス鋼で構成したので、例えば、弁ハウジングに接続した配管を、当該弁ハウジングに溶接等で固定しようとした場合、配管に弁ハウジングと異なる材料を用いる構成と比較して、容易に配管を弁ハウジングに固定することができる。
【0011】
また、前記配管と前記弁ハウジングとに亘って少なくとも1か所の溶接部が形成され、前記配管と前記弁ハウジングとは、前記溶接部を覆うとともに前記配管の全周に亘るろう付けによって接合されていることが好ましい。このような構成によれば、配管と弁ハウジングとに亘って少なくとも1か所の溶接部を形成したので、配管を弁ハウジングにいわゆる仮止めした状態で、配管の全周に亘るろう付けによって配管を弁ハウジングに接合することができる。このため、配管をろう付けする際の位置決めが必要なくなるので、ろう付けの工数を削減することができる。
【0012】
また、前記拡管部の内径に前記軸方向一端側に突出するリングが挿入され、このリングの突出部分が前記縮管部を構成し、前記拡管部の前記軸方向一端側の端面が前記係止部を構成してもよい。このような構成によれば、拡管部の内径にリングを挿入することで縮管部を構成するとともに、拡管部の一端側の端面を係止部とすることができるので、配管の軸方向一端側の端部を、例えば、絞り加工等によって縮管部を形成する必要がなくなり、配管の形成の工数を削減することができる。
【0013】
また、前記ストレーナの内方には、枠状の抜け止め部材が挿入され、前記ストレーナは、前記抜け止め部材と前記拡管部の内周壁とで挟まれて前記拡管部に固定されていてもよい。このような構成によれば、ストレーナが変形等した場合にも、抜け止め部材が抜け止めとなって、ストレーナが縮管部を通り抜けて脱落することが防止される。また、拡管部を絞り加工して縮管部を形成する際には、ストレーナが拡管部から抜け落ちない程度で、かつ上述の係止部と接続孔の周縁との当接部分が確保できる程度に絞り量を調整することが望ましいが、本構成のように抜け止め部材を用いる場合には、係止部にストレーナの抜け止めとしての機能を必ずしも持たせなくてもよいので、その分絞り加工を容易にすることができる。
【0014】
本発明に係る冷凍サイクルシステムは、上述のいずれかに記載のスライド式切換弁を備えたことを特徴とする。このような構成によれば、上述のスライド式切換弁を、冷凍サイクルシステムに適用することができるので、配管の接続に際して、バーリング加工などの難易度の高い加工が不要となり、製品コストの低減を図ることが可能な冷凍サイクルシステムを提供することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、バーリング加工などの難易度の高い加工が不要となり、製品コストの低減を図ることが可能なスライド式切換弁および冷凍サイクルシステムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態に係る冷凍サイクルシステムの概略図。
【
図2】前記冷凍サイクルシステムを構成するパイロット弁の断面図。
【
図4】前記パイロット弁に配管を接続する部分の分解断面図。
【
図5】前記パイロット弁に配管を接続する部分の部分拡大断面図。
【
図6】(A)、(B)はそれぞれ配管の先端部の変形例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を
図1~5に基づいて説明する。
図1は本発明の一実施形態に係る冷凍サイクルシステム100を示している。冷凍サイクルシステム100は、四方弁1と、パイロット弁2と、室内熱交換器3と、絞り装置4と、室外熱交換器5と、圧縮機6と、を備えている。
【0018】
四方弁1は、4つの配管の連通状態を切替えることで冷媒の流路を切替える弁装置であり、パイロット弁2とともに本発明におけるスライド式切換弁を構成している。この四方弁1は、弁ハウジング10内に、スライド移動可能なスライド弁体16(弁体)を備えた構造を有している。弁ハウジング10は、両端が閉塞された管状の部材であって、円筒形状の弁本体10Aと、弁本体10Aの両端の開口をそれぞれ閉塞する蓋部材10Bと、を備えている。弁本体10Aと蓋部材10Bは、ステンレス鋼製の金属板等をプレス加工等することで形成されており、各蓋部材10Bは、溶接により弁本体10Aに固定されている。なお、本実施形態では、弁本体10Aの中心軸が弁ハウジング10の軸線Lとなっている。
【0019】
弁本体10Aの周壁、すなわち弁ハウジング10の周壁には、ステンレス鋼等を用いて形成されたD継手管11(配管)、E継手管12(配管)、S継手管13(配管)、C継手管14(配管)、という4つの配管を接続するための接続孔h1、h2、h3、h4が、弁ハウジング10の内外に連通するように貫通形成されている。弁本体10Aの内周面における軸線L方向中間部には、スライド弁体16が摺接する弁座部15が軸線L方向に延びて設けられている。上述のE継手管12、S継手管13、C継手管14、に対応する接続孔h2、h3、h4は、それぞれ、この弁座部15を貫通するように、軸線L方向に一直線に並んで形成されている。上述のD継手管11に対応する接続孔h1は、弁座部15と対向する位置に形成されている。そして、接続孔h2には、導管としてのE継手管12が接続されている。h4には、導管としてのC継手管14が接続されている。接続孔h3には、低圧配管としてのS継手管13が接続されている。弁座部15と対向する接続孔h1には、高圧配管としてのD継手管11が接続されている。
【0020】
スライド弁体16は、弁本体10Aの内部で軸線L方向にスライド移動可能に設けられ、上記の4つの配管11、12、13、14の連通状態を切換える部材である。このスライド弁体16は、弁体16Aと、一対のピストン16Bと、連結板16Cと、ストッパ板16Dを備えている。弁体16Aは、弁座部15に向かって開口する椀状凹部16A1を有し、その椀状凹部16A1の開口端縁が弁座部15に摺接するように形成されている。弁体16Aは、
図1に示す左端位置では、E継手管12とS継手管13とを連通させるとともに、D継手管11とC継手管14とを連通させる。そして、この状態から、
図1における右側に移動して不図示の右端位置に移動すると、C継手管14とS継手管13とを連通させるとともに、D継手管11とE継手管12とを連通させる。
【0021】
一対のピストン16Bは、軸線L方向において弁体16Aを挟むように配置されている。このピストン16Bの配置により、弁ハウジング10の内部は、各ピストンで挟まれた高圧室s1と、
図1において高圧室s1の左側に隣接する第1作動室s2と、
図1において高圧室s1の右側に隣接する第2作動室s3と、に仕切られている。第1作動室s2と第2作動室s3には、
図2に示されるパイロット弁2から駆動流体(流体)が流通するようになっており、この駆動流体を介してピストン16Bが駆動力を受け、パッキン16B1を弁本体10Aの内周面に押圧しながら軸線L方向に往復移動するようになっている。連結板16Cは、金属板で構成され、各ピストン16Bを連結するように当該ピストン16B間に架け渡され、軸線L上に配置されている。この連結板16Cは、中央部に弁体16Aを保持している。また、連結板16Cには、高圧室s1内の高圧冷媒が通過可能な透孔16C1が形成されている。ストッパ板16Dは、各ピストン16Bの蓋部材10B側の面に設置される板部材であり、蓋部材10Bに当接することで、ピストン16Bの軸線L方向への移動を規制するように設けられている。
【0022】
図1に示される冷凍サイクルシステム100において、D継手管11は圧縮機6の吐出口に接続されており、S継手管13は圧縮機6の吸入口に接続されている。また、C継手管14は、室外熱交換器5に接続される導管であり、E継手管12は、室内熱交換器3に接続される導管である。室外熱交換器5と室内熱交換器3は絞り装置4を介して接続されている。このように、C継手管14、室外熱交換器5、絞り装置4、室内熱交換器3、およびE継手管12からなる経路と、S継手管13から圧縮機6およびD継手管11からなる経路と、により冷凍サイクルシステム100が構成される。
【0023】
図2に示すパイロット弁2は、四方弁1ともに、本発明のスライド式切換弁を構成している。このパイロット弁2は、スライド弁体16を移動させるための駆動流体を四方弁1との間で流通させる直動式電磁スライド弁である。このパイロット弁2は、ステンレス鋼製の金属板等をプレス加工して形成された弁ハウジング20と、電磁駆動部30と、弁ハウジング2内で電磁駆動部30によって後述の弁座部材20Bの弁座部20B1上をスライド移動する弁体40と、を備えている。
【0024】
弁ハウジング20は、有底円筒状に形成された弁本体20Aと、後述する取付孔21を介して弁本体20Aに嵌合する弁座部材20Bと、を備えている。弁本体20Aの内部には、中央部に軸線L方向に貫通する貫通孔22Aを備える仕切板22が設置されており、この仕切板22によって、弁本体20Aの内部が、電磁駆動部30側のプランジャ配置室20A1と、電磁駆動部30と反対側の弁室20A2と、に区画されている。弁本体20Aの周壁には、弁室20A2に連通する接続孔h5と、接続孔h5に対向する取付孔21と、が形成されている。
【0025】
接続孔h5は、高圧配管としてのD細管11d(配管)が接続される孔であり、
図4に示すように、ガイド面h50と、周縁h51と、を備えている。ガイド面h50は、弁本体20A(弁ハウジング20)の表面および裏面に直交するように弁本体20Aの肉厚に沿って延びる平坦な面で構成されている。このガイド面h50は、D細管11dの挿入方向(本実施形態では、弁本体20Aの径方向)に沿って延びていることで、その全面が、D細管11dの後述する縮管部11d2の外周面に当接する部分となっている。周縁h51は、弁本体20A(弁ハウジング20)の外周面に設けられ、D細管11dの後述する係止部11d3と当接する部分である。D細管11dを接続孔h5に挿入する際には、ガイド面h50がD細管11dの外周面に当接してD細管11dを挿入方向に案内するとともに、周縁h51が係止部11d3に当接することでD細管11dが弁本体20Aに位置決めされることとなるので、弁本体20Aに配管を固定するためのバーリング加工等をする必要がない。
【0026】
D細管11dは、駆動流体を通す配管であり、ステンレス鋼等を用いて形成され、上述のD継手管11に連通している。取付孔21には、弁座部材20Bが嵌合している。弁座部材20Bは、円柱状に形成されており、その弁室20A2内部側には弁座部20B1が形成されている。弁座部20B1には、軸線L方向と直交する方向に向かって弁室20A2に開口する凹部である、E凹部12e1と、S凹部13s1と、C凹部14c1と、が形成されている。
【0027】
E凹部12e1と、S凹部13s1と、C凹部14c1と、は、
図2に示す断面視で同一面上を、軸線L方向に一直線に並んで形成されている。E凹部12e1には、接続孔h6が連通するように形成されている。S凹部13s1には、不図示の接続孔が連通するように形成されている。この接続孔は、接続孔h6と同様の孔である。C凹部14c1には、接続孔h7が連通するように形成されている。これらの各接続孔h6、h7および不図示の接続孔は、それぞれが弁室20A2の外部側に開口している。
【0028】
弁座部材20Bにおける各接続孔h6、h7および不図示の接続孔、は、
図2に示す断面視で軸線L方向に一直線に並んで形成されている。なお、
図2に示す断面視で一番左側の接続孔h6と一番右側の接続孔h7と、が同一平面上に並び、真ん中の接続孔(不図示)は、
図2における奥側に配置されて、いわゆる段違いに並ぶようになっている。また、
図2における一番左側の接続孔h6には、上述の第1作動室s2に連通する第1作動細管12e2が接続されている。真ん中の接続孔には、上述のS継手管13に連通するS細管13s2が接続されている。一番右側の接続孔h7には、上述の第2作動室s3に連通する第2作動細管14c2が接続されている。
【0029】
電磁駆動部30は、プランジャ配置室20A1に配置されるプランジャ31と、プランジャ31の中心に設けられ上述の貫通孔22Aを通って弁室20A2内に延びる連結軸32と、プランジャ31と連結軸32の反対側に対向するように配置された吸引子33と、プランジャ31と吸引子33の間に配置されたプランジャばね34と、を備えている。また、弁本体20Aの外周に配置されたボビン35に巻線が巻かれた電磁コイル36と、ボビン35と電磁コイル36とを内包するケース37と、を備えている。
【0030】
このような構成により、電磁駆動部30は、非通電時には、プランジャばね34の力によりプランジャ31、および連結軸32が
図2における左側に付勢されて後述する弁体40が
図2における左端位置に移動する。一方、通電時には、吸引子33が励磁されることでプランジャ31と吸引子33との間に吸引力が発生し、プランジャ31、連結軸32、および弁体40が右側に移動する。
【0031】
弁体40は、連結軸32の
図2における左側の先端部に連結されており、弁座部材20B1に向かって開口し、その開口端縁が弁座部材20B1に摺接する椀状凹部40Aを備えている。この椀状凹部40Aは、
図2に示す左端位置では、第1作動細管12e2とS細管13s2を連通させるとともに、D細管11dと第2作動細管14c2とを連通させる。この状態では、D細管11dを通して弁室20A1に流れ込んだ高圧の冷媒が第2作動細管14c2を通って第2作動室s3に流れ込む。一方、S細管13s2を通って椀状凹部40Aに流れ込んだ低圧の冷媒が第1作動細管12e2を通って第1作動室s2に流れ込む。これにより、第1作動室s2と第2作動室s3とで圧力差が発生し、四方弁1のスライド弁体16が
図1に示す左端位置に移動する。
【0032】
そして、この状態から、弁体40が
図2における不図示の右端位置に移動すると、弁体40は、第2作動細管14c2とS細管13s2とを連通させるとともに、D細管11dと第1作動細管12e2とを連通させる。この状態では、D細管11dを通して弁室20A1に流れ込んだ高圧の冷媒が第1作動細管12e2を通って第1作動室s2に流れ込む。一方、S細管13s2を通って椀状凹部40Aに流れ込んだ低圧の冷媒が第2作動細管14c2を通って第2作動室s3に流れ込む。これにより、第1作動室s2と第2作動室s3とで圧力差が発生し、四方弁1のスライド弁体16が不図示の右端位置に移動する。
【0033】
以上の構成により、圧縮機6で圧縮された高圧の冷媒はD継手管11から高圧室s1内に流入し、冷房運転の状態(冷却モード時)では、高圧冷媒は、C継手管14から室外熱交換器5に流入される。また、スライド弁体16の位置を切換えた暖房運転の状態(暖房モード時)では、高圧冷媒はE継手管12から室内熱交換器3に流入される。すなわち、冷房運転時には、圧縮機6から吐出される冷媒はC継手管14→室外熱交換器5→絞り装置4→室内熱交換器3→E継手管12と循環し、室外熱交換器5が凝縮器(コンデンサ)、室内熱交換器3が蒸発器(エバポレータ)として機能し、冷房がなされる。絞り装置4は、室外熱交換器5と室内熱交換器3との間にて冷媒を膨張させて減圧する。また、暖房運転時には冷媒は逆に循環され、室内熱交換器3が凝縮器、室外熱交換器5が蒸発器として機能し、暖房がなされる。
【0034】
次に、
図3に示すD細管11dを例に、本発明にかかる配管の詳細な構造を説明する。なお、D細管11dは単に例示にすぎず、四方弁1に接続される配管であって、冷媒(流体)を通す配管である上述のD継手管11、E継手管12、S継手管13、およびC継手管14のいずれか、または全てにこの配管の構造を適用することができる。
図3に示すように、D細管11dは、軸方向L2の先端側(一端側)に設けられた拡管部11d1と、拡管部11d1よりも先端側に設けられ拡管部11d1よりも径方向の寸法が小さい縮管部11d2と、拡管部11d1および縮管部11d2を連結する係止部11d3と、拡管部11d1内に収容されるストレーナ11d4と、を備えている。
【0035】
拡管部11d1は、ストレーナ11d4を収容する部分であり、D細管11dの先端部を、その径方向の寸法がD細管11dの他の部分の径方向の寸法よりも大きくなるように変形させて形成されている。縮管部11d2は、本実施形態では、拡管部11d1の先端部を絞り加工等することで、その径方向の寸法が拡管部11d1の径方向の寸法よりも小さくなるように形成されている。縮管部11d2の外周面は、上述の接続孔h5のガイド面h50に当接可能になっており、D細管11dを弁ハウジング20に接続する際には、当該外周面がガイド面h50に当接することで、D細管11dが挿入方向に案内されるようになっている。
【0036】
係止部11d3は、拡管部11d1と縮管部11d2との間の段部で構成されている。この係止部11d3は、ストレーナ11d4の抜け止めとして機能するとともに、D細管11dの弁ハウジング20への挿入量を規定するストッパとして機能する。また、係止部11d3は、D細管11dを弁ハウジング20に固定する際に、上述の接続孔h5の周縁h51と当接するように構成されており、後述するろう付けをする際の位置決めを容易にしている。なお、上述の縮管部11d2を形成する際には、この係止部11d3の機能が効果的に発揮できるように、ストレーナ11d4が拡管部11d1から抜け落ちない程度で、かつ係止部11d3と周縁h51との当接部分が確保できる程度に、絞り量を調整すると好適である。
【0037】
D細管11dを弁ハウジング20に接続する際には、
図3、4に示すように、まず縮管部11d2を接続孔h5に挿入するとともに、係止部11d3を接続孔h5の周縁h51に当接させてD細管11dの位置決めを行う。この状態では、上述のガイド面h50に沿って縮管部11d2が接続孔h5を貫通して設けられていることとなる。そして、この状態で、
図5に示すように、D細管11dと弁本体20A(弁ハウジング20)とに亘って少なくとも1か所を溶接し、溶接部wを構成する。この工程は、いわゆる仮止め工程である。次に、この溶接部wを覆うとともにD細管11dの全周に亘るろう付けによって、D細管11dと弁ハウジング20とを接合する。図において、符号bは、ろう付けにより固化したろう材を示している。これにより、D細管11dが弁ハウジング20に接続される。このように、縮管部11d2が弁ハウジング20の接続孔h5に挿入されるとともに、係止部11d3が接続孔h5の周縁h51に当接した状態でD細管11dが弁ハウジング20に接続されるようになっている。
【0038】
以上、本実施形態によれば、弁ハウジング20の接続孔h5にD細管11d(配管)の縮管部11d2を挿入し、当該接続孔h5の周縁h51に係止部11d3を当接した状態でD細管11dを弁ハウジング20に接続することができる。すなわち、配管を接続するための加工について、ステンレス鋼製の弁ハウジング20には、接続孔h5を形成するだけでよく、バーリング加工等の加工難易度が高く、加工コストを抑えることが難しい加工を行う必要がない。したがって、バーリング加工などの難易度の高い加工が不要となり、製品コストの低減を図ることが可能な四方弁1およびパイロット弁2(スライド式切換弁)を提供することができる。また、接続孔h5の周縁h51と係止部11d3とが当接することで、D細管11dを弁ハウジング20に位置決めすることができるので、ろう付けの工程を容易に行うことができる。
【0039】
また、接続孔h5の弁ハウジング20外周面側の周縁h51にD細管11dの係止部11d3を当接させながらD細管11dを弁ハウジング20に接続することができるので、弁ハウジング20内で配管を固定するための機構が必要な構成と比較して、配管の接続を簡易に行うことができる。
【0040】
また、ガイド面h50に沿ってD細管11dの縮管部11d2を接続孔h5に貫通させることができるので、ガイド面h50が形成されていない構成と比較して、配管を弁ハウジング20にスムーズに接続することができる。
【0041】
また、D細管11dを弁ハウジング20と同じ材料であるステンレス鋼で構成したので、例えば、弁ハウジング20に接続したD細管11dを、当該弁ハウジング20に溶接等で固定しようとした場合、D細管11dに弁ハウジング20と異なる材料を用いる構成と比較して、容易にD細管11dを弁ハウジング20に固定することができる。
【0042】
また、D細管11dと弁ハウジング20とに亘って少なくとも1か所の溶接部wを形成したので、D細管11dを弁ハウジング20にいわゆる仮止めした状態で、D細管11dの全周に亘るろう付けによってD細管11dを弁ハウジング20に接合することができる。このように、配管をろう付けする際の位置決めが必要なくなるので、ろう付けの工数を削減することができる。
【0043】
また、上述のとおり、冷凍サイクルシステム100は、本発明に係る四方弁1およびパイロット弁2を備えているので、配管の接続に際して、バーリング加工などの難易度の高い加工が不要となり、製品コストの低減を図ることが可能となる冷凍サイクルシステムを提供することができる。
【0044】
以上、本発明の実施の形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。
図6(A)、(B)はそれぞれD細管11dの先端部の変形例を示す図である。
図6(A)に示すD細管11dは、拡管部11d1内において、ストレーナ11d4の内方にワッシャ、すなわちリング状部材R1(抜け止め部材)を設置した点が、本実施形態と異なっている。このようにすることにより、ストレーナ11d4は、リング状部材R1と拡管部11d1の内周壁とで挟まれて拡管部11d1に固定されることとなるので、ストレーナ11d4が変形等した場合にも、リング状部材R1が抜け止めとなって、当該ストレーナ11d4が縮管部11d2を通り抜けて脱落することが防止される。また、拡管部11d1を絞り加工して縮管部11d2を形成する際には、上述のストレーナ11d4の抜け止めとしての機能を必ずしも持たせなくてもよくなるので、係止部11d3の上述したストッパとしての機能を有する量だけ絞り加工すればよく、その分絞り加工を容易にすることができる。なお、本変形例では、リング状部材R1は、円環状に形成したが、リング状部材R1の形状は、これに限られない。例えば、拡管部11d1が角筒状に形成されているような場合は、その内周形状に沿うようにリング状部材R1を角筒状に形成するなどしてよい。すなわち、リング状部材R1は、ストレーナ11d4の抜け止めとして機能するとともに、拡管部11d1内を閉塞しないよう、枠状に形成されていればよい。
【0045】
図6(B)に示すD細管11dは、拡管部11d1の内周面に当接するリングR2を、拡管部11d1の内径に挿入した点が、本実施形態と異なっている。このリングR2は、圧入、またはスポット溶接等により、拡管部11d1に固定されている。リングR2の先端部は、拡管部11d1の先端部から軸方向L2に突出しており、この突出部分が縮管部11d2を構成している。そして、拡管部11d1の先端側の端面が係止部11d3を構成している。このような構成によれば、拡管部11d1の内径にリングR2を挿入することで縮管部11d2を構成するとともに、拡管部11d1の先端側の端面を係止部11d3とすることができるので、絞り加工等によって縮管部11d2を形成する必要がなくなり、配管の形成の工数を削減することができる。なお、本変形例では、リングR2は、円環状に形成したが、リングR2の形状は、これに限られない。例えば、拡管部11d1が角筒状に形成されているような場合は、その内周形状に沿うようにリングR2を角筒状に形成するなどしてよい。
【0046】
なお、本実施形態および変形例では、スライド式切換弁の一例として、4つの配管の連通状態を切換える四方弁1や、四方弁1のスライド弁体16を移動させるための駆動流体を四方弁1との間で流通させるパイロット弁2を例示し、主にパイロット弁2の配管であるD細管11dの詳細について説明したが、上述のとおり、D細管11dは単に例示にすぎず、上述の通り、D継手管11、E継手管12、S継手管13、およびC継手管14のいずれか、または全てにこの配管の構造を適用することができるので、上述の四方弁1に本発明の配管の構造を適用することはもちろん可能である。また、スライド式切換弁は、これら四方弁1やパイロット弁2に限られない。スライド式切換弁は、弁ハウジングに少なくとも一対の配管が接続されたものであれば、例えば3本の配管のうちの一対の配管を連通させるときの連通対象の配管を、スライド弁体を用いて切換える三方弁であってもよい。または、2本の配管の相互間を、スライド弁体を用いて開閉する二方弁であってもよい。もしくは、連通対象の配管の数をさらに増やして多方弁としてもよい。このように、スライド式切換弁における配管の数や、連通状態の切換え方等については、スライド式切換弁の適用対象等に応じて変更してよい。
【0047】
また、本実施形態では、特に弁本体20A(弁ハウジング20)とD細管11dとの接続について説明したが、例えば、D細管11dとD継手管11との接続部分に、本実施形態の拡管部11d1、縮管部11d2、係止部11d3、および接続孔h5、ガイド面h50、周縁h51を設けてもよい。すなわち、本発明は、配管と配管との接続にも適用することができる。
【符号の説明】
【0048】
h5 接続孔
h51 周縁
L2 軸方向
1 四方弁(スライド式切換弁)
2 パイロット弁(スライド式切換弁)
20 弁ハウジング
11d D細管(配管)
11d1 拡管部
11d2 縮管部
11d3 係止部
11d4 ストレーナ