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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-28
(45)【発行日】2025-05-09
(54)【発明の名称】エネルギー回収装置
(51)【国際特許分類】
   B01D 61/06 20060101AFI20250430BHJP
   B01D 61/02 20060101ALI20250430BHJP
   B01D 61/10 20060101ALI20250430BHJP
   B01D 61/12 20060101ALI20250430BHJP
【FI】
B01D61/06
B01D61/02 500
B01D61/10
B01D61/12
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2023055415
(22)【出願日】2023-03-30
(65)【公開番号】P2024142982
(43)【公開日】2024-10-11
【審査請求日】2024-07-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000151058
【氏名又は名称】株式会社電業社機械製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100120396
【弁理士】
【氏名又は名称】杉浦 秀幸
(72)【発明者】
【氏名】深澤 正幸
(72)【発明者】
【氏名】工藤 昇太
(72)【発明者】
【氏名】筒井 良行
(72)【発明者】
【氏名】谷川 吉輝
【審査官】相田 元
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-110736(JP,A)
【文献】特開2013-136011(JP,A)
【文献】特開2013-086043(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2021/0171382(US,A1)
【文献】特開2020-089850(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0298062(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/22
B01D 61/00-71/82
C02F 1/44
F04B 23/00-23/14
F04B 53/00-53/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高圧海水を逆浸透膜で淡水と濃縮海水とに分離し前記淡水を淡水管に排出すると共に高圧の前記濃縮海水を濃縮水管に排出する膜分離装置に接続されるエネルギー回収装置であって、
海水を供給する給水ポンプと、
前記海水を加圧して前記膜分離装置へ前記高圧海水を供給する高圧ポンプと、
一端が前記給水ポンプに連通し、前記濃縮水管との連通と遮断とを行うと共に前記濃縮海水の排水路との連通と遮断とを行う流路切換機構を介してそれぞれ他端が前記濃縮水管と前記排水路とに接続された複数のシリンダ装置と、
複数の前記シリンダ装置の一端に接続され、前記海水を複数の前記シリンダ装置に交互に供給すると共に、複数の前記シリンダ装置から高圧で交互に押し出される前記海水を前記膜分離装置に送る流路方向規制機構と、
前記流路切換機構を制御して前記濃縮水管及び前記排水路に対する複数の前記シリンダ装置の接続を切り換え、高圧の前記濃縮海水を前記シリンダ装置に供給して内部の前記海水を高圧で押し出す圧送工程と、前記圧送工程後に前記給水ポンプからの前記海水を前記シリンダ装置に供給して内部の前記濃縮海水を排出しながら前記海水を充填させる充填工程と行う制御機能を有した制御部とを備え、
前記シリンダ装置が、前記濃縮水管と前記排水路とに他端が接続され他端側から前記濃縮海水が導入されると共に一端が前記給水ポンプに連通し一端側から前記海水が導入されるシリンダと、
前記シリンダ内で往復移動するピストンとを備え、
前記ピストンが、前記シリンダの端部側に向いたピストン端面を有し、
前記シリンダが、内部の端部に設けられ往復移動する前記ピストンが端部に達した際に当接するディスタンスリングを備え、
前記ディスタンスリングが、前記ピストン端面に対向する面に形成された圧力バランス溝と、
内周面と前記圧力バランス溝とを接続して形成された圧力バランス流路孔とを有していることを特徴とするエネルギー回収装置。
【請求項2】
請求項1に記載のエネルギー回収装置において、
前記圧力バランス溝が、前記ディスタンスリングの軸線を中心にリング状に形成されていることを特徴とするエネルギー回収装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のエネルギー回収装置において、
前記圧力バランス流路孔が、前記ディスタンスリングの外周面にも接続され、
前記ディスタンスリングが、前記圧力バランス流路孔に接続され外周面に形成された圧力バランス凹部を有していることを特徴とするエネルギー回収装置。
【請求項4】
請求項3に記載のエネルギー回収装置において、
前記圧力バランス凹部が、周方向に延在したリング状に形成されていることを特徴とするエネルギー回収装置。
【請求項5】
請求項1又は2に記載のエネルギー回収装置において、
前記圧力バランス流路孔が、前記ディスタンスリングの内周面から外周面へ貫通していると共に、周方向に間隔を空けて前記ディスタンスリングの軸線を中心にした放射線状に複数形成されていることを特徴とするエネルギー回収装置。
【請求項6】
請求項1又は2に記載のエネルギー回収装置において、
前記シリンダが、装置停止時に内部の海水を外部に排出可能なドレン抜き流路孔と、
装置停止時に内部の空気を外部に排出可能な空気抜き流路孔とを有し、
前記圧力バランス流路孔が、前記ドレン抜き流路孔及び前記空気抜き流路孔にも接続されていることを特徴とするエネルギー回収装置。
【請求項7】
請求項1又は2に記載のエネルギー回収装置において、
前記ディスタンスリングが、樹脂で形成されていることを特徴とするエネルギー回収装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海水の淡水化等に用いられる逆浸透膜法による水処理システムのエネルギー回収装置に関する。
【背景技術】
【0002】
海水から淡水を造水する方法の一つとして、逆浸透法が知られている。この逆浸透法は、海水に海水の浸透圧(約2.5MPa)以上の高い圧力を浸透圧の作用する方向と逆方向に加えて半透膜(逆浸透膜)でろ過し、塩類と淡水とを分離するものである。この逆浸透法において、淡水が分離されて塩類が濃縮された海水(濃縮海水)は、高い圧力エネルギーを保持したまま逆浸透膜モジュールから流出する。この流出する濃縮海水の有する高い圧力エネルギーを有効に利用するため、種々のエネルギー回収装置が実用化されている。
【0003】
従来、例えば特許文献1には、逆浸透法による海水淡水化システムにおける従来のエネルギー回収装置の一例が提案されている。この特許文献1では、一対のシリンダ装置のそれぞれの一端が、4つの逆止弁で構成された流路方向規制装置を介して取水ポンプおよび増圧ポンプに連通されている。また、シリンダ装置の他端は切替弁である流路切換装置の流出入ポートに連通される。また、流路切換装置の流入ポートは逆浸透膜モジュールの高圧な濃縮海水の流出口に連通される。さらに、流路切換装置の一端に流出ポートが設けられている。
【0004】
このエネルギー回収装置では、取水ポンプから送水される海水を高圧ポンプで加圧して逆浸透膜モジュールに供給すると共に、逆浸透膜モジュールから排出される高圧の濃縮海水をシリンダ装置に供給して高圧で海水を押し出すピストンを駆動し、シリンダ装置からも増圧ポンプを介して高圧海水を逆浸透膜モジュールに送っている。この逆浸透膜モジュールから排出される高圧の濃縮海水をシリンダ装置に供給して高圧で海水を押し出す(吐出する)ピストンを駆動する操作を圧送工程と称している。
また、圧送工程終了後、取水ポンプから流路方向規制装置を介してシリンダ装置に海水を供給し、圧送工程と逆方向にピストンを駆動することで濃縮海水を排出しながら海水を充填する操作を充填工程と称している。
このようにこのエネルギー回収装置では、シリンダ装置のピストンがシリンダの端部に達した際に流路切換装置によって逆浸透膜モジュールからの高圧濃縮海水を一対のシリンダ装置に交互に供給すると共に取水ポンプから一対のシリンダ装置に交互に海水を充填するように制御を行っている。
【0005】
これによって、2つのシリンダ装置で海水の圧送工程と充填工程とを繰り返し行って連続ろ過が可能となる。このように、逆浸透膜モジュールから排出される濃縮海水の高圧エネルギーを利用して2つのシリンダ装置から増圧ポンプに高圧海水を供給することで、それだけ増圧ポンプの消費エネルギーが削減され、圧送工程におけるエネルギーが回収できる。
このようなエネルギー回収装置では、シリンダ内の端部に、移動してきたピストンが当接する位置決め用のストッパーとして、ディスタンスリングが固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2013-86043号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記従来の技術において、以下の課題が残されている。
すなわち、上記従来の技術では、同じシリンダ装置において、切替弁が圧送工程の吐出開始位置(エネルギー回収工程開始位置:濃縮海水の圧力を充填済みの海水へ伝播を開始させる位置)に切り替わると、シリンダ端のフランジ及びディスタンスリング内側の圧力は高圧(5~8MPa)となるが、ピストンを隔てたシリンダ内の圧力は低圧である。さらに、ピストンが逆止弁側に向けて動作すると、ピストン外周とシリンダ内周との間の空間において圧力が伝播し、シリンダ内の圧力も高圧になる。このとき、ピストンがディスタンスリングに接触する際に接触面間の隙間で流速が上がり、接触面間の圧力が下がることにより、ピストンがディスタンスリングに吸着し、切替弁が吐出開始位置に切り替わってもスムーズに動作(逆止弁側に向けて移動)しないことがあった。
【0008】
本発明は、上記従来の問題に鑑みてなされたもので、ピストンがディスタンスリングに吸着することを抑制し、スムーズに動作させることができるエネルギー回収装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、前記課題を解決するために以下の構成を採用した。すなわち、第1の発明に係るエネルギー回収装置は、高圧海水を逆浸透膜で淡水と濃縮海水とに分離し前記淡水を淡水管に排出すると共に高圧の前記濃縮海水を濃縮水管に排出する膜分離装置に接続されるエネルギー回収装置であって、海水を供給する給水ポンプと、前記海水を加圧して前記膜分離装置へ前記高圧海水を供給する高圧ポンプと、一端が前記給水ポンプに連通し、前記濃縮水管との連通と遮断とを行うと共に前記濃縮海水の排水路との連通と遮断とを行う流路切換機構を介してそれぞれ他端が前記濃縮水管と前記排水路とに接続された複数のシリンダ装置と、複数の前記シリンダ装置の一端に接続され、前記海水を複数の前記シリンダ装置に交互に供給すると共に、複数の前記シリンダ装置から高圧で交互に押し出される前記海水を前記膜分離装置に送る流路方向規制機構と、前記流路切換機構を制御して前記濃縮水管及び前記排水路に対する複数の前記シリンダ装置の接続を切り換え、高圧の前記濃縮海水を前記シリンダ装置に供給して内部の前記海水を高圧で押し出す圧送工程と、前記圧送工程後に前記給水ポンプからの前記海水を前記シリンダ装置に供給して内部の前記濃縮海水を排出しながら前記海水を充填させる充填工程と行う制御機能を有した制御部とを備え、前記シリンダ装置が、前記濃縮水管と前記排水路とに他端が接続され他端側から前記濃縮海水が導入されると共に一端が前記給水ポンプに連通し一端側から前記海水が導入されるシリンダと、前記シリンダ内で往復移動するピストンとを備え、前記ピストンが、前記シリンダの端部側に向いたピストン端面を有し、前記シリンダが、内部の端部に設けられ往復移動する前記ピストンが端部に達した際に当接するディスタンスリングを備え、前記ディスタンスリングが、前記ピストン端面に対向する面に形成された圧力バランス溝と、内周面と前記圧力バランス溝とを接続して形成された圧力バランス流路孔とを有していることを特徴とする。
【0010】
このエネルギー回収装置では、ディスタンスリングが、ピストン端面に対向する面に形成された圧力バランス溝と、内周面と圧力バランス溝とを接続して形成された圧力バランス流路孔とを有しているので、ピストン端面が当接した際の受圧面積を増大させることで、圧力伝播し易くなり、ピストン端面がディスタンスリングから離脱し易くなる。すなわち、圧力バランス溝により受圧面積を増やすと共に、圧力バランス溝と圧力バランス流路孔とを介して圧力をディスタンスリングの内周面から対向面(ピストン端面との接触面)まで伝播させ、高圧側と低圧側との圧力差を瞬時にバランスさせることができる。
圧力バランス溝と圧力バランス流路孔とは、ディスタンスリングとピストン端面との互いの接触面間とは別の流路を形成するため、ディスタンスリングとピストン端面との互いの接触面間の隙間の流速の上昇が緩和される。これにより、接触面間の圧力低下によるディスタンスリングとピストン端面との吸着を抑制して、ピストン端面をスムーズにディスタンスリングから離脱させることが可能になる。
【0011】
第2の発明に係るエネルギー回収装置は、第1の発明において、前記圧力バランス溝が、前記ディスタンスリングの軸線を中心にリング状に形成されていることを特徴とする。
すなわち、このエネルギー回収装置では、圧力バランス溝が、ディスタンスリングの軸線を中心にリング状に形成されているので、円環状の圧力バランス溝により周方向にわたって受圧面積を増やすことができる。
【0012】
第3の発明に係るエネルギー回収装置は、第1又は第2の発明において、前記圧力バランス流路孔が、前記ディスタンスリングの外周面にも接続され、前記ディスタンスリングが、前記圧力バランス流路孔に接続され外周面に形成された圧力バランス凹部を有していることを特徴とする。
すなわち、このエネルギー回収装置では、ディスタンスリングが、圧力バランス流路孔に接続され外周面に形成された圧力バランス凹部を有しているので、圧力バランス凹部とシリンダの内周面との間に形成された圧力バランス用の空間を介してディスタンスリングの外周面側にも圧力を伝播させることができる。
【0013】
第4の発明に係るエネルギー回収装置は、第3の発明において、前記圧力バランス凹部が、周方向に延在したリング状に形成されていることを特徴とする。
すなわち、このエネルギー回収装置では、圧力バランス凹部が、周方向に延在したリング状に形成されているので、周方向にわたってディスタンスリングの外周面に圧力を伝播させることができる。
【0014】
第5の発明に係るエネルギー回収装置は、第1又は第2の発明において、前記圧力バランス流路孔が、前記ディスタンスリングの内周面から外周面へ貫通していると共に、周方向に間隔を空けて前記ディスタンスリングの軸線を中心にした放射線状に複数形成されていることを特徴とする。
すなわち、このエネルギー回収装置では、圧力バランス流路孔が、ディスタンスリングの内周面から外周面へ貫通していると共に、周方向に間隔を空けてディスタンスリングの軸線を中心にした放射線状に複数形成されているので、周方向の複数箇所から圧力バランス流路孔を介してディスタンスリングの内周面と外周面とに圧力をさらに伝播させることができる。
【0015】
第6の発明に係るエネルギー回収装置は、第1又は第2の発明において、前記シリンダが、装置停止時に内部の海水を外部に排出可能なドレン抜き流路孔と、装置停止時に内部の空気を外部に排出可能な空気抜き流路孔とを有し、前記圧力バランス流路孔が、前記ドレン抜き流路孔及び前記空気抜き流路孔にも接続されていることを特徴とする。
すなわち、このエネルギー回収装置では、圧力バランス流路孔が、ドレン抜き流路孔及び空気抜き流路孔にも接続されているので、装置停止時に圧力バランス流路孔を介しても海水や空気を外部に排出させることができる。
【0016】
第7の発明に係るエネルギー回収装置は、第1又は第2の発明において、前記ディスタンスリングが、樹脂で形成されていることを特徴とする。
すなわち、このエネルギー回収装置では、ディスタンスリングが、樹脂で形成されているので、金属製に比べて低コストであると共に、圧力バランス流路孔等の加工が容易である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、以下の効果を奏する。
すなわち、本発明によるエネルギー回収装置によれば、ディスタンスリングが、ピストン端面に対向する面に形成された圧力バランス溝と、内周面と圧力バランス溝とを接続して形成された圧力バランス流路孔とを有しているので、ディスタンスリングとピストン端面との吸着を抑制して、ピストン端面をスムーズにディスタンスリングから離脱させることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明に係るエネルギー回収装置の一実施形態において、シリンダ装置の切替弁側の端部を示す断面図である。
図2】本実施形態において、シリンダ装置の逆止弁側の端部を示す断面図である。
図3】本実施形態において、エネルギー回収装置を示す模式図である。
図4】本実施形態において、ディスタンスリングを示すピストン側の対向面図(a)及びA-A線断面図(b)である。
図5】本実施形態において、シリンダ内栓フランジを示す切替弁側の正面図(a)及びB-B線断面図(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明におけるエネルギー回収装置の一実施形態を、図1から図5に基づいて説明する。
【0020】
本実施形態におけるエネルギー回収装置1は、図3に示すように、高圧海水を逆浸透膜で淡水と濃縮海水とに分離し淡水を淡水管3に排出すると共に高圧の濃縮海水を濃縮水管4に排出する膜分離装置5に接続されるエネルギー回収装置である。
【0021】
このエネルギー回収装置1は、海水を供給する給水ポンプP1と、海水を加圧して膜分離装置5へ高圧海水を供給する高圧ポンプP2と、一端が給水ポンプP1に連通し、濃縮水管4との連通と遮断とを行うと共に濃縮海水の排水路19との連通と遮断とを行う流路切換機構6A,6Bを介してそれぞれ他端が濃縮水管4と排水路19とに接続された複数のシリンダ装置7A,7Bと、複数のシリンダ装置7A,7Bの一端に接続され、海水を複数のシリンダ装置7A,7Bに交互に供給すると共に、複数のシリンダ装置7A,7Bから高圧で交互に押し出される海水を膜分離装置5に戻す流路方向規制機構11と、流路切換機構6A,6Bを制御して濃縮水管4及び排水路19に対する複数のシリンダ装置7A,7Bの接続を切り換え、高圧の濃縮海水をシリンダ装置7A,7Bに供給して内部の海水を高圧で押し出す圧送工程と、圧送工程後に給水ポンプP1からの海水をシリンダ装置7A,7Bに供給して内部の濃縮海水を排出しながら海水を充填させる充填工程と行う制御機能を有した制御部Cとを備えている。
【0022】
上記シリンダ装置7A,7Bは、濃縮水管4と排水路19とに他端が接続され他端側から濃縮海水が導入されると共に一端が給水ポンプP1に連通し一端側から海水が導入されるシリンダ8と、シリンダ8内で往復移動するピストン9とを備えている。
【0023】
上記ピストン9は、図1に示すように、シリンダ8の端部側に向いたピストン端面9aを有している。
上記シリンダ8は、図1及び図2に示すように、内部の端部に設けられ往復移動するピストン9が端部に達した際に当接するディスタンスリング10を備えている。
上記ディスタンスリング10は、図1図2及び図3に示すように、ピストン端面9aに対向する面に形成された圧力バランス溝10aと、内周面と圧力バランス溝10aとを接続して形成された圧力バランス流路孔10bとを有している。
【0024】
上記圧力バランス溝10aは、ディスタンスリング10の軸線を中心にリング状に形成されている。
上記圧力バランス流路孔10bは、ディスタンスリング10の外周面にも接続され、ディスタンスリング10が、圧力バランス流路孔10bに接続され外周面に形成された圧力バランス凹部10cを有している。
【0025】
上記圧力バランス凹部10cは、周方向に延在したリング状に形成されている。
上記圧力バランス流路孔10bは、ディスタンスリング10の内周面から外周面へ貫通していると共に、周方向に間隔を空けてディスタンスリング10の軸線を中心にした放射線状に複数形成されている。
すなわち、上記圧力バランス流路孔10bは、ディスタンスリング10のうち、内周面と、外周面と、ピストン端面9aに対向する面とに開口している。
【0026】
上記シリンダ8は、端部にディスタンスリング10の外面に当接したシリンダ内栓フランジ17を備えている。
上記シリンダ内栓フランジ17は、図1図2及び図5に示すように、装置停止時に内部の海水を外部に排出可能なドレン抜き流路孔17aと、装置停止時に内部の空気を外部に排出可能な空気抜き流路孔17bとを有している。
上記ドレン抜き流路孔17aは、シリンダ内栓フランジ17の下部に形成され、空気抜き流路孔17bは、シリンダ内栓フランジ17の上部に形成されている。
上記圧力バランス流路孔10bは、ドレン抜き流路孔17a及び空気抜き流路孔17bにも接続されている。
【0027】
また、上記ディスタンスリング10は、ピストン端面9aに対向する面に開口して形成された通水孔10dを有している。
上記通水孔10dは、上下に一対形成されており、圧力バランス流路孔10bの途中と、ドレン抜き流路孔17a又は空気抜き流路孔17bとに接続されている。
すなわち、圧力バランス流路孔10bは、通水孔10dを介して、ドレン抜き流路孔17a又は空気抜き流路孔17bにも接続されている。
なお、上記ディスタンスリング10は、例えばナイロン樹脂等の樹脂で形成されている。
【0028】
上記ディスタンスリング10及びシリンダ内栓フランジ17は、シリンダ8の両端部にそれぞれ設けられている。
ディスタンスリング10には、複数のボルト用孔10eが形成されていると共に、シリンダ内栓フランジ17には、各ボルト用孔10eに対応した複数の雌ねじ孔17cが形成されている。
すなわち、ディスタンスリング10は、ボルトB1をボルト用孔10eに挿通させると共に、雌ねじ孔17cに螺着させて、シリンダ内栓フランジ17に固定されている。
シリンダ内栓フランジ17には、複数の固定用孔17dが外周部に形成されており、固定用孔17dに挿通されたボルトB2により、シリンダ8の端部に固定されている。
【0029】
上記シリンダ8の他端または他端近傍の周面には、濃縮水管4と排水路19とに接続され濃縮海水の導入及び排出が行われる濃縮海水導入口8aが設けられている。
また、濃縮海水導入口8aは、接続管13eの一端に接続され、接続管13eの他端が流出入ポート13cに接続されている。すなわち、シリンダ8は、濃縮海水導入口8a及び接続管13eを介して流出入ポート13cに接続されている。
【0030】
また、上記流路方向規制機構11は、各シリンダ装置7A,7Bから押し出された海水を高圧ポンプP2の吸込側に供給するように設定されている逆止弁機構である。すなわち、流路方向規制機構11は、各シリンダ装置7A,7Bから押し出された海水を高圧ポンプP2の吸込側に接続された連結管11eに送るように設定されている。
【0031】
シリンダ装置7A,7Bは、濃縮水管4との連通と遮断とを行うと共に濃縮海水の排水管19との連通と遮断とを行う第1流路切換機構6Aを介して一端が濃縮水管4と排水管19とに接続された第1シリンダ装置7Aと、濃縮水管4との連通と遮断とを行うと共に排水管19との連通と遮断とを行う第2流路切換機構6Bを介して一端が濃縮水管4と排水管19とに接続された第2シリンダ装置7Bとを備えている。
【0032】
すなわち、制御部Cは、第1流路切換機構6A及び第2流路切換機構6Bを制御して濃縮水管4及び排水管19に対する第1シリンダ装置7Aと第2シリンダ装置7Bとの接続を切り換え、高圧の濃縮海水を第1シリンダ装置7Aと第2シリンダ装置7Bとに交互に流し込む制御機能と濃縮海水を第1シリンダ装置7A及び第2シリンダ装置7Bから交互に排出する制御機能とを有している。
【0033】
また、海水の供給管2aには、給水ポンプP1が接続されており、給水ポンプP1によって供給管2aから流路方向規制機構11に海水が送られる。
上記流路方向規制機構11は、海水を第1シリンダ装置7Aと第2シリンダ装置7Bとに交互に供給すると共に、第1シリンダ装置7Aと第2シリンダ装置7Bとから高圧で交互に押し出される海水を連結管11eを介して膜分離装置5に戻すように設定されている。
【0034】
上記濃縮水管4は、途中で分岐されて第1流路切換機構6Aと第2流路切換機構6Bとに接続されている。
上記第1流路切換機構6A及び第2流路切換機構6Bは、第1シリンダ装置7A又は第2シリンダ装置7Bへの濃縮海水の供給とその停止及び第1シリンダ装置7A又は第2シリンダ装置7Bからの濃縮海水の排出とその停止との切り換えを行う切替弁機構である切換用シリンダ装置13と、切換用シリンダ装置13を駆動する駆動装置14とを備えている。
【0035】
上記切換用シリンダ装置13は、第1シリンダ装置7A又は第2シリンダ装置7Bの一端と排水管19と濃縮水管4とに接続された切換用シリンダ20と、切換用シリンダ20内で往復移動し第1シリンダ装置7A又は第2シリンダ装置7Bの一端と排水管19及び濃縮水管4との連通及び遮断が可能な排水側ピストン20aと、切換用シリンダ20内で排水側ピストン20aと一体で往復移動する供給側ピストン20bと、一端に排水側ピストン20aが設けられていると共に中間部に供給側ピストン20bが設けられ他端が切換用シリンダ20の他端から外部に突出して駆動装置14に接続された切換用ピストンロッド22とを備えている。
【0036】
上記切換用シリンダ20は、濃縮海水の排水管19に接続され一端側に設けられた流出ポート13aと、濃縮水管4に接続され中間部に設けられた流入ポート13bと、第1シリンダ装置7A又は第2シリンダ装置7Bに接続され流出ポート13aと流入ポート13bとの間に設けられた流出入ポート13cとを有している。
【0037】
制御部Cは、例えば各シリンダ装置7A,7Bのシリンダ8の他端近傍を含む複数箇所にそれぞれ設けられピストン9の位置、特にピストン9がシリンダ8の他端近傍に達したことを検出可能な位置に位置検出器(図示略)を備え、これら位置検出器の検出信号に基づいて第1流路切換機構6A及び第2流路切換機構6Bを制御する機能を有している。
なお、位置検出器は、シリンダ8の上記以外の箇所にも設置しても構わない。
【0038】
上記第1流路切換機構6A及び上記第2流路切換機構6Bは、切換用シリンダ装置13を駆動する上記駆動装置14を備えている。
上記駆動装置14は、例えば油圧ポンプに接続された油圧ピストン,電動アクチュエータなどを用いて構成されている。
上記制御部Cは、前記検出信号に基づいて油圧サーボ弁またはサーボモータ(図示略)を制御して駆動装置14を操作する機能を有している。
【0039】
第1シリンダ装置7Aおよび第2シリンダ装置7Bのそれぞれの他端は、一対の逆止弁11aで構成された流路方向規制機構11を介して給水ポンプP1に連通されている。
第1シリンダ装置7Aの一端は、第1流路切換機構6Aにおける切換用シリンダ装置13の流出入ポート13cに連通され、第2シリンダ装置7Bの一端は、第2流路切換機構6Bにおける切換用シリンダ装置13の流出入ポート13cに連通されている。
【0040】
また、切換用シリンダ装置13の流入ポート13bは、濃縮水管4に連通されている。さらに、切換用シリンダ装置13の一端には、排水管19に接続された流出ポート13aが設けられている。切換用シリンダ20内に配設された排水側ピストン20a及び供給側ピストン20bは切換用ピストンロッド22に連結されている。また、切換用ピストンロッド22の一端は、駆動装置14に連結されて駆動装置14に連動して切換用シリンダ20内を往復動する。
【0041】
上記流路方向規制機構11は、供給管2aに接続された一対の分岐管11cを有し、これらの分岐管11cの途中に、対応する第1シリンダ装置7A及び第2シリンダ装置7Bの一端がシリンダ接続管11dを介して接続されている。分岐管11cにおいて、シリンダ接続管11dの接続部分の両側には、それぞれ一対の逆止弁11aが設けられている。また、一対の分岐管11cの他端は、連結管11eに接続されている。
【0042】
次に、本実施形態のエネルギー回収装置1の動作について、図面を参照して説明する。
まず、図3に示すように、圧送工程にある第1シリンダ装置7Aのピストン9が矢印Y1の方向に移動すると、シリンダ8内の海水が分岐管11c側に押し出される。分岐管11cに押し出された海水は、連結管11eを介して高圧ポンプP2に供給される。
一方、充填工程にある第2シリンダ装置7Bのピストン9が矢印Y2の方向に移動すると、シリンダ8内の濃縮海水が濃縮海水導入口8a及び流出入ポート13cを介して排水管19に排出される。
【0043】
第1シリンダ装置7Aのピストン9が流路方向規制機構11側(逆止弁側)にある所定の位置検出器の位置に到達すると、その位置検出器から検出信号が制御部Cに送信され、この検出信号を制御部Cが受信すると、制御部Cが第2流路切換機構6Bの駆動装置14を制御して流路の切り換えを行う。
このとき、第2流路切換機構6Bにおける切換用シリンダ装置13の流入ポート13bと流出入ポート13cとが連通されて高圧の濃縮海水が膜分離装置5から第2シリンダ装置7Bに供給されると共に、流出入ポート13cと流出ポート13aとの連通が遮断されて、第2シリンダ装置7Bの圧送工程が開始される。
このように流路の切り換えが行われ、第1シリンダ装置7Aと第2シリンダ装置7Bとで交互に圧送工程と充填工程とが繰り返し行われる。
【0044】
上記第1及び第2シリンダ装置7A,7Bにおいて、切替弁機構である第1及び第2流路切換機構6A,6Bが吐出開始位置(エネルギー回収工程開始位置:濃縮海水の圧力を充填済みの海水へ伝播を開始させる位置)に切り替わると、シリンダ8端部にあるシリンダ内栓フランジ17及びディスタンスリング10内側の圧力は高圧となる。
このとき、圧力バランス溝10aと圧力バランス流路孔10bとを介して圧力をディスタンスリング10の内周面から対向面(ピストン端面9aとの接触面)まで伝播させ、高圧側と低圧側との圧力差を瞬時にバランスさせることができる。
したがって、接触面間の圧力が下がることにより、ピストン9がディスタンスリング10に吸着し難くなり、スムーズにピストン9が逆止弁機構である流路方向規制機構11側に向けて移動することができる。
【0045】
すなわち、圧力バランス溝10aと圧力バランス流路孔10bとは、ディスタンスリング10とピストン端面9aとの互いの接触面間とは別の流路を形成するため、ディスタンスリング10とピストン端面9aとの互いの接触面間の隙間の流速の上昇が緩和される。
これにより、接触面間の圧力低下によるディスタンスリング10とピストン端面9aとの吸着を抑制して、ピストン端面9aをスムーズにディスタンスリング10から離脱させることが可能になる。
【0046】
このように本実施形態のエネルギー回収装置1では、ディスタンスリング10が、ピストン端面9aに対向する面に形成された圧力バランス溝10aと、内周面と圧力バランス溝10aとを接続して形成された圧力バランス流路孔10bとを有しているので、ピストン端面9aが当接した際の受圧面積を増大させることで、圧力伝播し易くなり、ピストン端面9aがディスタンスリング10から離脱し易くなる。
すなわち、圧力バランス溝10aにより受圧面積を増やすと共に、圧力バランス溝10aと圧力バランス流路孔10bとを介して圧力をディスタンスリング10の内周面から対向面(ピストン端面9aとの接触面)まで伝播させ、高圧側と低圧側との圧力差を瞬時にバランスさせることができる。
【0047】
また、圧力バランス溝10aが、ディスタンスリング10の軸線を中心にリング状に形成されているので、円環状の圧力バランス溝10aにより周方向にわたって受圧面積を増やすことができる。
また、ディスタンスリング10が、圧力バランス流路孔10bに接続され外周面に形成された圧力バランス凹部10cを有しているので、圧力バランス凹部10cとシリンダ8の内周面との間に形成された圧力バランス用の空間を介してディスタンスリング10の外周面側にも圧力を伝播させることができる。
【0048】
また、圧力バランス凹部10cが、周方向に延在したリング状に形成されているので、周方向にわたってディスタンスリング10の外周面に圧力を伝播させることができる。
さらに、圧力バランス流路孔10bが、ディスタンスリング10の内周面から外周面へ貫通していると共に、周方向に間隔を空けてディスタンスリング10の軸線を中心にした放射線状に複数形成されているので、周方向の複数箇所から圧力バランス流路孔10bを介してディスタンスリング10の内周面と外周面とに圧力をさらに伝播させることができる。
【0049】
また、圧力バランス流路孔10bが、ドレン抜き流路孔17a及び空気抜き流路孔17bにも接続されているので、装置停止時に圧力バランス流路孔10bを介しても海水や空気を外部に排出させることができる。
なお、ディスタンスリング10が、樹脂で形成されているので、金属製に比べて低コストであると共に、圧力バランス流路孔10b等の加工が容易である。
【0050】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0051】
1…エネルギー回収装置、2a…供給管、3…淡水管、4…濃縮水管、5…膜分離装置、6A…第1流路切換機構、6B…第2流路切換機構、7A…第1シリンダ装置、7B…第2シリンダ装置、8…シリンダ、8a…濃縮海水導入口、9…ピストン、9a…ピストン端面、10…ディスタンスリング、10a…圧力バランス溝、10b…圧力バランス流路孔、10c…圧力バランス凹部、11…流路方向規制機構、17a…ドレン抜き流路孔、17b…空気抜き流路孔、19…濃縮海水の排水路、P1…給水ポンプ、P2…高圧ポンプ、C…制御部
図1
図2
図3
図4
図5