(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-28
(45)【発行日】2025-05-09
(54)【発明の名称】金属箔
(51)【国際特許分類】
H01M 4/02 20060101AFI20250430BHJP
H01M 4/24 20060101ALI20250430BHJP
H01M 4/06 20060101ALI20250430BHJP
H01M 4/66 20060101ALI20250430BHJP
C25D 1/04 20060101ALI20250430BHJP
C25D 1/00 20060101ALI20250430BHJP
C25D 7/06 20060101ALI20250430BHJP
C22C 18/00 20060101ALN20250430BHJP
C22C 9/00 20060101ALN20250430BHJP
C22F 1/00 20060101ALN20250430BHJP
C22F 1/16 20060101ALN20250430BHJP
C22F 1/08 20060101ALN20250430BHJP
【FI】
H01M4/02 Z
H01M4/24 H
H01M4/06 T
H01M4/66 A
C25D1/04 311
C25D1/00 311
C25D7/06 A
C22C18/00
C22C9/00
C22F1/00 622
C22F1/00 630Z
C22F1/00 661C
C22F1/00 604
C22F1/00 605
C22F1/00 613
C22F1/16 B
C22F1/08 A
C22F1/00 627
(21)【出願番号】P 2024552011
(86)(22)【出願日】2024-05-13
(86)【国際出願番号】 JP2024017609
【審査請求日】2024-09-12
(31)【優先権主張番号】P 2023108794
(32)【優先日】2023-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006183
【氏名又は名称】三井金属鉱業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】馬郡 大輔
(72)【発明者】
【氏名】來間 拓也
(72)【発明者】
【氏名】井上 秀利
(72)【発明者】
【氏名】松藤 昌嗣
(72)【発明者】
【氏名】宮迫 雄馬
【審査官】渡部 朋也
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-152352(JP,A)
【文献】特開2003-013192(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00-4/62
H01M 4/64-4/84
C25D 1/04
C25D 1/00
C25D 7/06
C22C 18/00
C22C 9/00
C22F 1/00
C22F 1/16
C22F 1/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の面及びそれと反対側に位置する第2の面とを有し、且つ、金属材料からなるコア部と、
前記コア部の少なくとも一面に位置し、且つ、亜鉛を母材とするクラッド部とを有する金属箔であって、
前記金属箔の両面をそれぞれX線回折測定したときに、いずれの面においても、亜鉛の(101)面に由来するピークのピーク強度S
(101)に対する、亜鉛の(002)面に由来するピークのピーク強度S
(002)の強度比が、1.01以上であ
り、
前記クラッド部の厚みが5μm以上300μm以下である、金属箔。
【請求項2】
二次電池用電極材料として使用するための、
第1の面及びそれと反対側に位置する第2の面とを有し、且つ、金属材料からなるコア部と、
前記コア部の少なくとも一面に位置し、且つ、亜鉛を母材とするクラッド部とを有する金属箔であって、
前記金属箔の両面をそれぞれX線回折測定したときに、いずれの面においても、亜鉛の(101)面に由来するピークのピーク強度S
(101)
に対する、亜鉛の(002)面に由来するピークのピーク強度S
(002)
の強度比が、1.01以上である、金属箔。
【請求項3】
二次電池用電極材料として使用するための、
第1の面及びそれと反対側に位置する第2の面とを有し、且つ、金属材料からなるコア部と、
前記コア部の少なくとも一面に位置し、且つ、亜鉛を母材とするクラッド部とを有する金属箔であって、
前記金属箔の両面をそれぞれX線回折測定したときに、いずれの面においても、亜鉛の(101)面に由来するピークのピーク強度S
(101)
に対する、亜鉛の(002)面に由来するピークのピーク強度S
(002)
の強度比が、1.01以上であり、
前記クラッド部の厚みが5μm以上300μm以下である、金属箔。
【請求項4】
金属箔を縦190mm、横90mmに裁断し、温度80℃、相対湿度50%、96時間の条件で保存したときに、保存後における寸法の変化が、縦方向0.5mm以下、横方向0.5mm以下であり、反りが5mm以下である、請求項1
ないし3のいずれか一項に記載の金属箔。
【請求項5】
前記コア部の両面に前記クラッド部が形成されている、請求項1
ないし3のいずれか一項に記載の金属箔。
【請求項6】
前記コア部と前記クラッド部が分離不能に結合している、請求項1
ないし3のいずれか一項に記載の金属箔。
【請求項7】
前記コア部が、銅箔又は亜鉛箔である、請求項1
ないし3のいずれか一項に記載の金属箔。
【請求項8】
前記コア部の厚みが5μm以上300μm以下である、請求項1
ないし3のいずれか一項に記載の金属箔。
【請求項9】
第1の面及びそれと反対側に位置する第2の面とを有し、且つ、金属材料からなるコア部と、
前記コア部の少なくとも一面に位置し、且つ、亜鉛を母材とするクラッド部とを有する金属箔であって、
前記金属箔の両面をそれぞれX線回折測定したときに、いずれの面においても、亜鉛の(101)面に由来するピークのピーク強度S
(101)
に対する、亜鉛の(002)面に由来するピークのピーク強度S
(002)
の強度比が、1.01以上である、金属箔を備えた、二次電池用電極材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は金属材料からなるコア部と亜鉛を母材とするクラッド部とを有する金属箔に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、亜鉛を含有する金属箔は電池の負極活物質等に用いられている。例えば、本出願人は先に、ビスマスを含み、残部亜鉛及び不可避不純物からなり、亜鉛の結晶粒の平均サイズが0.2μm以上8μm以下である亜鉛箔及びこれを用いた一次電池用負極活物質を提案した(特許文献1参照)。この亜鉛箔は、該亜鉛箔を電池の負極活物質として用いた場合に、電池の長期保存中のガス発生量が従来の圧延亜鉛箔を用いた場合よりも抑制されるという利点を有する。
【0003】
近年、空気・亜鉛二次電池及びマンガン・亜鉛二次電池などの、負極活物質として亜鉛を用いた二次電池が注目を集めている。これらの二次電池は、亜鉛の経済性と安全性を生かし、大容量の次世代蓄電池としてモバイル機器やドローンなどへの利用が期待されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【0005】
二次電池の負極活物質として亜鉛箔を用いた場合、長時間保存する際の形状安定性が求められる。
しかしながら、発明者が検討したところ、従来の亜鉛箔は、長時間保存する際に反りや伸び等が生じる場合があり、形状安定性について改善の余地があることが判った。
【0006】
本発明の課題は、前述した従来技術が有する課題を解消し得る技術を提供することにある。
【0007】
本発明者は鋭意検討した結果、金属材料からなるコア部に、亜鉛を母材とするクラッド部を組み合わせ、両面において亜鉛の特定の結晶配向性を有する金属箔により、上記課題を解決できることを見出した。
本発明は上記知見に基づくものであり、第1の面及びそれと反対側に位置する第2の面とを有し、且つ、金属材料からなるコア部と、
前記コア部の少なくとも一面に位置し、且つ、亜鉛を母材とするクラッド部とを有する金属箔であって、
前記金属箔の両面をそれぞれX線回折測定したときに、いずれの面においても、亜鉛の(101)面に由来するピークのピーク強度S(101)に対する、亜鉛の(002)面に由来するピークのピーク強度S(002)の強度比(以下、「S(002)/S(101)」ともいう。)が、1.01以上である、金属箔を提供するものである。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、亜鉛の結晶粒のサイズを求めるときに用いられるソフトウエアのキャプチャ像である。
【
図2】
図2は、電解液の循環速度を算出するために用いられる電極間面積を表す模式図である。
【
図3】
図3は、金属箔の寸法を説明する模式図である。(1)が金属箔の斜視図であり、(2)が金属箔を側方からみた図である。
【
図4】
図4は、実施例1~4の金属箔のX線回折測定結果である。
【
図5】
図5は、比較例1~3の金属箔のX線回折測定結果である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の好ましい実施形態について説明する。
本実施形態の金属箔は、コア部と、該コア部の少なくとも一方の面に位置するクラッド部とを有する。本実施形態において、金属箔は電解亜鉛めっきにより得られるものである。コア部は亜鉛イオンを含む電解液を用いた電解めっきにおいて電解液中にカソードとして配置される基材に相当し、クラッド部は、基材上に析出する亜鉛を母材とする電解層に相当する。以下、コア部及びクラッド部のそれぞれについて更に説明する。
【0010】
本実施形態において、コア部は第1の面及びそれと反対側に位置する第2の面とを有する。第1の面と第2の面とは互いに平行であることが好ましい。本実施形態のコア部は、金属箔と同様に、箔の形態をしている。この箔は、第1の面と第2の面とに直交する方向に厚み方向を有する。このように、本実施形態のコア部の、第1の面及びそれと反対側に位置する第2の面とを有する形状としては、薄く広がりをもった平坦な形状が挙げられる。コア部の形状は、フィルム状、シート状又は層状と呼ばれることがある。本実施形態の金属箔における厚み方向の中心位置はコア部に位置していてもよく、クラッド部に位置していてもよい。
【0011】
コア部は、金属材料からなる。金属材料は、金属を母材とするものである。基材としての長時間保存時の寸法や形状の安定性、入手容易性等の点から、コア部を構成する母材金属としては、銅、亜鉛、アルミニウム等が挙げられ、クラッド部の形成しやすさやクラッド部との密着性、不働態化防止の点から、銅及び亜鉛から選ばれる少なくとも一種が特に好ましい。このことから、コア部が銅箔及び亜鉛箔から選ばれる少なくとも一種であることが特に好ましい。
【0012】
金属を母材とするとは、金属が80質量%以上の含有率を占めることをいう。コア部における金属の含有量は90質量%以上であってよく、95質量%以上であってよく、99質量%以上であってよく、99.5質量%以上であってもよい。特に当該金属が銅及び亜鉛から選ばれる少なくとも一種である場合に上記下限以上の含有量であることが好ましい。従って、コア部を構成する母材金属が銅である場合、コア部における銅の含有量は90質量%以上であってよく、95質量%以上であってよく、99質量%以上であってよく、99.5質量%以上であってもよい。またコア部を構成する母材金属が亜鉛である場合、コア部を構成する亜鉛の含有量は90質量%以上であってよく、95質量%以上であってよく、99質量%以上であってよく、99.5質量%以上であってもよい。
【0013】
本実施形態の金属箔は、両面が、X線回折測定したときに亜鉛に由来する所定のピーク強度比を有するものである。すなわち、金属箔は、両面とも表面に亜鉛が存在する。そのため、金属箔のコア部が亜鉛以外の金属を母材とする場合は、コア部の両面に、亜鉛を母材とするクラッド部が形成される。一方、金属箔のコア部が亜鉛を母材とする場合、コア部自体の表面に亜鉛が存在するため、コア部の表面の一方の面が上述したピーク強度比を満たす場合、コア部の表面には、一方の面のみにクラッド部が形成されていてもよいし、両面にクラッド部が形成されていてもよい。
【0014】
コア部が銅箔である金属箔は、長時間保存後の形状安定性に加えて、製造コストを低減できる点でも好ましい。銅箔としては、電解銅箔及び圧延銅箔のいずれであってもよい。コア部が銅箔である場合、銅箔の両面に亜鉛を母材とするクラッド部が形成される。銅箔の両面に形成される当該クラッド部は、いずれも、亜鉛の(101)面に由来するピークのピーク強度S(101)に対する、亜鉛の(002)面に由来するピークのピーク強度S(002)の強度比S(002)/S(101)が1.01以上である。なお、本明細書において、電解箔の「電極面」とは電解箔(例えば電解銅箔)作製時に陰極と接していた側の面を指す。また、本明細書において、電解箔の「析出面」とは電解箔作製時に電解金属(例えば電解銅)が析出されていく側の面、すなわち陰極と接していない側の面を指す。
【0015】
コア部が銅箔の場合、銅、添加元素及び不可避不純物からなるか、或いは、銅及び不可避不純物からなることが好ましい。
【0016】
コア部が銅箔である場合における添加元素としては、スズ、亜鉛、アルミニウム、鉄、ニッケル、マンガン、ベリリウム、タンスグテン、チタン、ボロン、セリウム、ランタン、プラセオジム、ネオジムからなる群より選択される少なくとも一種が挙げられる。
【0017】
コア部が銅箔の場合における不可避不純物としては硫黄、リン、酸素が挙げられる。上述した不可避不純物の量は、コア部中に、質量基準にて、それぞれ単独で、好ましくは100ppm以下であり、更に好ましくは10ppm以下である。なお、上記で挙げた各種の添加元素の含有量が、これら不可避的不純物の好ましい上限と同様の上限以下の量であってもよい。すなわち前述した、スズ、亜鉛、アルミニウム、鉄、ニッケル、マンガン、ベリリウム、タンスグテン、チタン、ボロン、セリウム、ランタン、プラセオジム、及びネオジムからなる群より選択される金属それぞれについても、コア部中に、質量基準にて、それぞれ単独で、100ppm以下であってもよく、10ppm以下であってもよい。
本明細書に記載の各添加元素や不可避不純物の量は、いずれもそれぞれ独立して使用できる。例えば前記のスズからネオジムまでの14元素の各量についても単独で或いは任意の組み合わせで使用することが可能である。
【0018】
コア部が亜鉛箔である場合、二次電池としての適性に特に優れるため好ましい。亜鉛箔としては、電解亜鉛箔及び圧延亜鉛箔のいずれであってもよい。亜鉛箔が電解亜鉛箔である場合、電解亜鉛箔の電極面及び析出面のうち、少なくとも電極面にクラッド部が形成されていることで金属箔の両面をそれぞれX線回折測定したときに、いずれの面においても、S(002)/S(101)が1.01以上である、金属箔が容易に得られるため好ましい。
また、コア部が圧延亜鉛箔である場合、コア部の両面に、クラッド部が形成されていることが、金属箔の両面をそれぞれX線回折測定したときに、いずれの面においても、S(002)/S(101)が1.01以上である、金属箔が容易に得られるため好ましい。
【0019】
コア部が亜鉛箔の場合、亜鉛、添加元素及び不可避不純物からなるか、或いは、亜鉛及び不可避不純物からなることが好ましい。
【0020】
コア部が亜鉛箔の場合における添加元素としてはビスマス、インジウム、マグネシウム、カルシウム、ガリウム、スズ、バリウム、ストロンチウム、銀及びマンガンからなる群より選択される少なくとも一種が挙げられる。
【0021】
コア部が亜鉛箔の場合における不可避不純物としては鉄、銅、鉛、カドミウム、ニッケル、クロム、ナトリウム、カリウムが挙げられる。コア部が亜鉛箔の場合上述した不可避不純物の量は、コア部中に、それぞれ単独で、好ましくは100ppm以下であり、更に好ましくは10ppm以下である。なお、上記で挙げた各種の添加元素の含有量が、これら不可避的不純物の好ましい上限と同様の上限以下の量であってもよい。すなわち前述した、ビスマス、インジウム、マグネシウム、カルシウム、ガリウム、スズ、バリウム、ストロンチウム、銀及びマンガンからなる群より選択される金属それぞれについても、コア部中に、質量基準にて、それぞれ単独で、100ppm以下であってもよく、10ppm以下であってもよい。
【0022】
コア部における銅、亜鉛、上記で挙げた各添加元素及び各不可避不純物の含有割合は、亜鉛箔からコア部をサンプリングしてICP発光分光分析法に供することによって測定される。硝酸、塩酸等の酸性溶液に試料を溶解させた後、ICP発光分光分析法で亜鉛以外の含有金属の濃度を測定し、全金属の溶液濃度を1として各種金属元素の含有割合を質量として換算する。コア部のサンプリング方法としては、後述する走査型電子顕微鏡における観察により、コア部の位置を確認した上で、コア部の一方の面のみにクラッド部が位置している場合には、コア部側表面をカッター、やすり等で削り取り、サンプリングすればよい。また、コア部の両面にクラッド部が位置している場合にはカッター、やすり等を用いてクラッド部を削除してコア部からなる試料を得ることができる。
【0023】
形状及び寸法の安定性を優れたものとする観点から、コア部の厚みWrは5μm以上であることが好ましく、10μm以上であることがより好ましく、15μm以上であることが更に好ましい。また、コア部の厚みWrは、柔軟性の点から300μm以下であることが好ましく、200μm以下であることがより好ましく、150μm以下であることが更に好ましい。これらの点から、範囲としては、コア部の厚みWrは、5μm以上300μm以下であることが好ましく、10μm以上200μm以下であることがより好ましく、15μm以上150μm以下であることが更に好ましい。
【0024】
上記コア部が銅箔である場合、コア部における銅の結晶粒の平均サイズは5μm以上であることは亜鉛箔の伸び性を優れたものとする観点、及び繰り返しの柔軟性の向上の点で好ましく、10μm以上であることがより好ましく、100μm以下であることが更に好ましい。また、上記クラッド部における亜鉛の結晶粒の平均サイズは、ガス発生量を低減する利点を一層顕著なものとする観点からの点で80μm以下であることが好ましく、60μm以下であることがより好ましく、40μm以下であることが更に好ましい。
【0025】
上記コア部が亜鉛箔である場合、コア部における亜鉛の結晶粒の平均サイズは24μm以上であることは亜鉛箔の伸び性を優れたものとする観点、及び繰り返しの柔軟性の向上の点で好ましく、35μm以上であることがより好ましく、100μm以下であることが更に好ましい。また、上記クラッド部における亜鉛の結晶粒の平均サイズは、ガス発生量を低減する利点を一層顕著なものとする観点からの点で100μm未満であることが好ましく、50μm以下であることがより好ましく、10μm以下であることが更に好ましい。
【0026】
なお、コア部はビスマスを含有していても、含有していなくてもよい。コア部が実質的にビスマスを含有していないとは、コア部のビスマス含量が90質量ppm以下であることを意味することが好ましい。
【0027】
クラッド部は、コア部の少なくとも一方の面に位置する。クラッド部はコア部の両面のうち、一方の面のみに形成されていてもよく、両方の面に形成されていてもよいが、クラッド部がコア部の両面に形成されていることが、長時間保存した際の形状安定性に優れるために好ましい。本実施形態においてクラッド部は、コア部と積層されている層である。また本実施形態において、クラッド部は、コア部と直接接触するように形成されている。コア部におけるクラッド部が位置している面上において、クラッド部はコア部の当該面の全体を被覆していてもよく、一部を被覆していてもよい。
【0028】
クラッド部は、亜鉛を母材とする。「亜鉛を母材とする」の意味は、コア部と同様である。クラッド部における亜鉛の含有量は90質量%以上であってよく、95質量%以上であってよく、99質量%以上であってよく、99.5質量%以上であってもよい。
【0029】
クラッド部は、ビスマスを含有していてもよく、ビスマスを含有していなくてもよい。例えばクラッド部の組成としては、亜鉛、ビスマス、ビスマス以外の添加元素及び不可避不純物からなるものであってもよく、亜鉛、ビスマス及び不可避不純物からなるものであってもよく、亜鉛、ビスマス以外の添加元素及び不可避不純物からなるものであってもよく、亜鉛及び不可避不純物からなるものであってもよい。クラッド部は合金であっても合金でなくてもよい。
【0030】
クラッド部がビスマス以外の添加元素を含有する場合、水素過電圧が亜鉛よりも高いか又は酸化還元電位が亜鉛よりも貴であるものを用いることが有利である。そのような金属元素としては、インジウム、マグネシウム、カルシウム、ガリウム、スズ、バリウム、ストロンチウム、銀及びマンガンからなる群より選択される少なくとも一種が挙げられる。上述した添加元素の量は、クラッド部中に、インジウム、マグネシウム、カルシウム、ガリウム、スズ、バリウム、ストロンチウム、銀及びマンガンの合計の割合で、質量基準にて、好ましくは10000ppm以下であり、更に好ましくは8000ppm以下である。また、インジウム、マグネシウム、カルシウム、ガリウム、スズ、バリウム、ストロンチウム、銀及びマンガンから選択される添加元素を含有する場合は、質量基準にて、合計で好ましくは10ppm以上が挙げられる。
【0031】
クラッド部における不可避不純物としては鉄、銅、アルミニウム、鉛、カドミウム、ニッケル、クロム、ナトリウム、カリウムが挙げられる。上述した不可避不純物は、クラッド部中に、鉄、銅、アルミニウム、鉛、カドミウム、ニッケル、クロム、ナトリウム、カリウムの合計の割合で、質量基準にて、好ましくは100ppm以下、更に好ましくは10ppm以下である。また、マグネシウムやカルシウムが不可避不純物である場合も存在する。この場合、鉄、銅、アルミニウム、鉛、カドミウム、ニッケル、クロム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウムが合計で好ましくは100ppm以下、更に好ましくは10ppm以下である。
【0032】
クラッド部はビスマスを含んでいる場合、電池の保存中のガス発生が効果的に抑制される。クラッド部がビスマスを含有する場合、その含有割合は、クラッド部におけるビスマスの含有割合が質量基準で100ppm以上であることが好ましく、300ppm以上であることがより好ましく、400ppm以上であることが更に好ましい。また、クラッド部におけるビスマスの含有割合は質量基準で10000ppm以下であることで、クラッド部内の均一分散性の利点があるため好ましく、3000ppm以下であることがより好ましく、1200ppm以下であることが更に好ましい。一方、本実施形態の金属箔の形状安定性をより向上させる観点では、クラッド部は実質的にビスマスを含有しないことが好ましい。実質的にビスマスを含有しないとは、クラッド部におけるビスマスの含有割合が90ppm以下であることが好ましい。
クラッド部がビスマスを含む場合、経時の変形量が大きくなりやすいが、本発明では、そのような場合であっても、経時の変形量を低減できるため、ビスマス含量に起因したガス量低減の効果を得ながら、経時の変形量を低減する点で好ましい。
また、クラッド部がビスマスを含まない場合、経時の変形量を一層低減できる点から好ましい。
【0033】
クラッド部における亜鉛、上記で挙げた各添加元素、及び上記で挙げた各不可避不純物の含有割合は、亜鉛箔からクラッド部をサンプリングしてICP発光分光分析法に供することによって測定される。試料をICP発光分光分析法に供する方法はコア部と同様である。クラッド部のサンプリング方法としては、後述する走査型電子顕微鏡における観察により、クラッド部の位置を確認した上で、亜鉛箔のクラッド部が露出している表面をカッター、やすり等で削ぎ取り、サンプリングすればよい。
【0034】
上記クラッド部における亜鉛の結晶粒の平均サイズは2μm以上であることは亜鉛箔を密な状態に保持するため好ましく、20μm以上であることがより好ましく、50μm以下であることが更に好ましい。また、上記クラッド部における亜鉛の結晶粒の平均サイズは、ガス発生量を低減する利点を一層顕著なものとする観点からの点で100μm未満であることが好ましく、80μm以下であることがより好ましく50μm以下であることが更に好ましいクラッド部にこのようなサイズの結晶粒を生じさせるためには、電解法によってクラッド部を製造することが好適である。
クラッド部がコア部の両面に形成されている場合には、一方のクラッド部において上記平均サイズが満たされればよい。
【0035】
亜鉛の結晶粒の平均サイズは次の方法で測定される。測定には、電子線後方散乱回折(以下「EBSD」ともいう。)評価装置(OIM Data Collection Ver.7.2.0、株式会社TSLソリューションズ製)を搭載したFE亜鉛箔における厚み方向の中心銃型の走査型電子顕微鏡(SUPRA 55VP、カールツァイス株式会社製)及び付属のEBSD解析装置を用いる。ウルトラミクロトームを用いて断面が切り出されたサンプルを調製し、このサンプルについて、EBSD法に準じて、サンプル全体の厚みを測定し得る断面視における結晶粒サイズのデータを得る。具体的には、コア部の結晶粒については、亜鉛箔全体の断面(厚み方向に沿う断面)のうちコア部において「コア部の厚み×コア部の厚み方向に垂直な方向に200μm」の視野にて結晶粒を観察し、結晶粒の平均サイズを求める。クラッド部の結晶粒については、亜鉛箔全体の断面のうちクラッド部において「クラッド部の厚み×クラッド部の厚み方向に垂直な方向に200μm」の視野にて結晶粒を観察し、結晶粒の平均サイズを求める。
【0036】
EBSDの測定データのバックグラウンド処理は、前記EBSD評価装置の「Image Proccessing」内の「Background Subtraction」、「Normalize Intensity Histgram」、「Dynamic Background Subtraction」のチェックを外した状態の「Binning」が4x4(160x120)の条件にて実施する。「Gain」、「Exposure」は「Camera」内の像が
図1に示すとおり電子回折において菊池パターンが観察されない状態且つ30±1fpsになるように適宜条件を変更してもよい。この条件下で「Image Proccessing Function」内の「Ave」の値が10の条件下で、「Capture Bkd」にてバックグラウンドの情報を取得する。
【0037】
結晶粒サイズを測定するときのWD値は15±1mmとし、「Image Proccessing」内の「Background Subtraction」、「Normalize Intensity Histgram」、「Dynamic Background Subtraction」のチェックを入れた状態で、観察箇所上で前記EBSD評価装置の「Capture Pattern」内の「Phase」から「Zn」を選択し、「Solutions」の「Fit」の値が1.5以内、「CI」の値が0.1より高い条件下にて、WD値を調整する。
【0038】
結晶粒サイズは「Scan」内の「Capture SEM」にて取り出したサンプル断面の写真を「Start Scan」にて測定する。
この測定データを、EBSD解析プログラム(OIM Analysis Ver.7.3.1、株式会社TSLソリューションズ製)の分析メニューの「Grain Size Quick Chart」より「All data」を使用して、結晶粒サイズ(平均)(Grain Size(Average))を求める。この結晶粒サイズ(平均)を、本発明における亜鉛の結晶粒の平均サイズとする。
【0039】
本測定においては、方位差15°以上を結晶粒界とみなす。ただし、亜鉛の結晶構造は六方最密充填構造であるために双晶粒界を考慮して、ある粒界での方位差を回転軸と回転角で表し、回転軸が下記の(1)で表され、回転角が94.8±1°及び57±1°の場合と、回転軸が下記の(2)で表され、回転角が34.8±1°及び64.3±1°の場合は、結晶粒界とみなさない。観察時の走査型電子顕微鏡の条件は加速電圧:20kV、アパーチャー径:60μm、High Current mode、試料角度:70°とする。観察倍率、測定領域及びステップサイズは、結晶粒の大きさに応じて、適宜、条件を変更してもよい。
【0040】
【0041】
なお、上記は亜鉛の結晶粒の平均サイズの求め方の説明であるが、銅の結晶粒の平均サイズを測定する場合は、上記の測定法の説明において、観察箇所上で前記EBSD評価装置の「Capture Pattern」内の「Phase」から「Zn」を選択する代わりに、「Cu」を選択すればよい。
【0042】
クラッド部は長時間保存時の形状安定性の観点から、厚みWdが5μm以上であることが好ましく、20μm以上であることがより好ましく、40μm以上が更に好ましい。クラッド部は厚みWdが300μm未満であることが薄型の電池を製造する点で好ましく、250μm以下であることがより好ましく、150μm以下が更に好ましい。これらの点からクラッド部の厚みWdは、5μm以上300μm未満であることが好ましく、20μm以上250μm以下であることがより好ましく、40μm以上150μm以下であることが更に好ましい。
クラッド部の厚みは、コア部の両面それぞれにクラッド部が配置された場合は、両面側それぞれの厚みの平均値とする。
クラッド部が両面の場合は、各々のクラッド部の厚みが上記範囲となっているのが好ましい。なお、クラッド部が両面の場合、各クラッド部の厚みは同等でも異なっていてもよいが、金属箔の反りを抑制する観点から、両面のクラッド部の厚みは同等であること好ましい。両面のクラッド部の厚みの差は、50μm以下が好ましく、20μm以下がより好ましい。
コア部及びクラッド部の厚みは、金属箔の厚さ方向に沿う断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、コア部とクラッド部との界面を検出し、コア部及びクラッド部の厚みをそれぞれ計測することにより求めることがきる。
但し、金属箔の製造時には、原材料としてのコア部の厚みを用い、これを製造後の金属箔の厚みの値から引くことでも、クラッド部の厚さを求めることができる。
【0043】
コア部の厚みをWr、クラッド部の厚みをWdとしたときに、Wd/Wrは4以下であることが製造容易性の点で好ましい。特にWd/Wrは、0.99以下であることが長時間保存時の形状安定性効果が一層優れる点で好ましく、0.8以下であることがより好ましく、0.7以下であることが特に好ましい。Wd/Wrは一様にクラッド部を形成させる観点からWd/Wrが0.1以上であることが好ましく、0.2以上であることがより好ましく、0.3以上であることが特に好ましい。これらの点から、Wd/Wrが0.1以上4.0以下であることが好ましく、0.1以上0.99以下であることがより好ましく、0.2以上0.8以下であることが更に好ましく、0.3以上0.7以下であることが特に好ましい。
【0044】
本発明の金属箔は、金属箔の両面をそれぞれX線回折測定したときに、亜鉛の(002)面に由来するピークが観察される。更に具体的には、金属箔は、金属箔の両面をそれぞれX線回折測定したときに、いずれの面においても、S(002)/S(101)が1.01以上である。このように、金属材料からなるコア部を有しつつ、その両面において同様の亜鉛の配向性を有することで、本発明の金属箔は、長時間保存後の形状安定性が良好なものとなる。また、金属箔の両面それぞれにおけるS(002)/S(101)が1.01以上であることは、デンドライトの発生の防止の点でも好ましい。
また、S(002)/S(101)を測定容易な構成として、金属箔は、その両面において、亜鉛を母材とする面が最外層面であることが好ましい。
【0045】
金属箔は、金属箔の両面をそれぞれX線回折測定したときに、S(002)/S(101)が1.01以上であることがより好ましく、1.10以上が更に一層好ましい。金属箔におけるS(002)/S(101)の値は(特にS(101)の強度が小さい場合は)際限なく大きくなる可能性があるため、上限は限定されない。本明細書でいうピーク強度比率は、ピーク高さ比率である。
【0046】
亜鉛の(002)面は、六方晶型結晶に由来する。金属箔の両面それぞれにおけるS(002)/S(101)が上記下限以上である金属箔は、金属材料からなる基材上に、電解亜鉛めっき法を用いて亜鉛を母材とする電解層を形成するとともに、その際に後述する好適な製造方法を採用することで得ることができる。
【0047】
本発明の金属箔は、金属箔の両面をそれぞれX線回折測定したときに、亜鉛の(101)面に由来するピークが観察されても観察されなくてもよい。亜鉛の(101)面は、六方晶型結晶に由来する。
【0048】
金属箔の各面における、亜鉛の(002)面に由来するピークは、通常、2θ=36.30±0.3°の範囲に観察される。また、金属箔の各面における、亜鉛の(101)面に由来するピークは、通常、2θ=43.24±0.3°の範囲に観察される。ここで、X線回折測定におけるX線源としては、Cu-kα線を用いる。
【0049】
X線源としてCu-kα線を用いたX線回折測定において、2θ=15~120°の範囲内で、金属箔の各面において、亜鉛の(002)面に由来するピークが最大強度のピークであることが好ましい。
X線源としてCu-kα線を用いたX線回折測定において、2θ=15~120°の範囲内で、金属箔の各面において、亜鉛の(002)面に由来するピーク及び亜鉛の(101)面に由来するピーク以外のピーク(以下、「他のピーク」ともいう。)は観察されてもよいが、観察されないことが均一な結晶配列がなされている点で好ましい。他のピークが観察される場合、そのピーク強度は、亜鉛の(002)面に由来するピークに対するピーク強度比が0.99以下であることが好ましく、0.9以下であることがより好ましい。
【0050】
本発明の金属箔は、長時間保存後の形状安定性に優れたものである。具体的には、金属箔を縦190mm、横90mmに裁断し、気密に密閉できる容器にアルゴンと共に封入し、温度80℃、相対湿度50%、96時間の条件で保存したときに、保存後の寸法から保存前の寸法を引いて得られる変形量が、縦方向で0.5mm以下であることが好ましく、0.3mm以下であることがより好ましく、0.1mm以下であることがより好ましい。
また、金属箔は、前記の条件で保存したときに、保存後の寸法から保存前の寸法を引いて得られる変形量が、横方向で0.5mm以下であることが好ましく、0.3mm以下であることがより好ましく、0.1mm以下であることがより好ましい。更に、金属箔は、高さ方向の変形量である反りが、5mm以下であることが好ましく、4mm以下であることがより好ましく、3mm以下であることがより好ましい。
なお、縦方向及び横方向は例えば、
図3の(1)に示す通り、金属箔の平面と平行で、互いに直交する方向である。保存後の縦方向の寸法は、
図3の(1)に示すサンプルにおける縦方向Wの最大長さである(保存前に、サンプルにおける縦方向Wの寸法が横方向Vに沿って均一である場合には、保存によって縦方向Wに最も伸びた部分の長さである)。保存後の横方向の寸法も、横方向Vの最大長さである(保存前に、サンプルにおける横方向Vの寸法が縦方向Wに沿って均一である場合には、保存によって横方向Vに最も伸びた部分の長さである)。
また、反りは、
図3(2)に示すように、平坦面上に静置させたときの高さHの変形量である。なお当該変形量は、平坦面に対して最も高くなった点の高さと、保存前の高さとの差となる。
【0051】
上記の金属箔の各パラメータは、後述する実施例に示す通り、本発明の金属箔の両面を電解めっき法により亜鉛を母材とする電解層にて形成し、その際に後述する好適な製造方法を採用すること、特に、当該好適な製造方法において、コア部とクラッド部で適切な厚みを採択することや電解濃度や電流密度、電解液への浸漬時間を調整することによって得ることができる。
【0052】
コア部はクラッド部と分離不能に結合していることが好ましい。コア部はクラッド部と分離不能に結合していることは、金属箔の厚み方向に沿う断面を走査型電子顕微鏡で観察したときにコア部とクラッド部との界面をまたぐ形状の結晶粒が一つ以上観察されることを指す。このような形状は、コア部における結晶粒の方位面を揃えるようにしてクラッド部における結晶粒が粒成長したことに起因して生じるものである。詳述すると、本実施形態の金属箔の厚み方向に沿う断面において、コア部とクラッド部との界面には、複数の小さな孔部からなる孔部列が観察され、この孔部列により界面の位置を特定できる。走査型電子顕微鏡像が反射電子像である場合、当該顕微鏡像において、結晶粒の方位面の違いを反映して、一つ一つの亜鉛の結晶粒の色の濃淡が異なる。この濃淡の違いより、亜鉛の結晶粒の形状を特定できる。コア部とクラッド部の界面をまたいで連続する形状の結晶粒が一以上観察される場合、コア部とクラッド部とが分離不能に結合していると判断でき、二つ以上観察されることが好ましい。なおコア部とクラッド部との界面は、EDS分析(エネルギー分散型分光法)により、母材となる金属元素や添加元素の存在位置を確認することによっても確認できる。
コア部とクラッド部とを分離不能に結合させるためには、金属箔を後述する好適な製造方法にて製造すればよい。
【0053】
金属箔は、二次電池等の電池において不働態化等を低減する観点からは、アルミニウムを非含有であってもよい。例えば金属箔は、アルミニウムについてはその含有割合が金属箔の質量基準で1%以下であってもよく、0.1%以下であってもよく、0.05%以下であってもよい。
【0054】
環境負荷を軽減させる観点から金属箔は鉛を非含有であることが望ましい。鉛についてはその含有割合が金属箔の質量基準で200ppm以下であることが好ましく、100ppm以下であることが更に好ましく、50ppm以下であることが一層好ましい。また金属箔は、カドミウムを非含有であるか、又は不可避不純物として含有していてもよい。金属箔においてカドミウムの割合は極力低いことが望ましい。特にカドミウムの含有割合は質量基準で10ppm以下であることが望ましい。
【0055】
金属箔に含まれるアルミニウム、鉛及びカドミウムの含有割合は、ICP発光分光分析法によって測定される。ICP発光分光分析法による測定には、上記と同様の方法を採用できる。
【0056】
本発明の金属箔は、その厚みが好ましくは15μm以上900μm以下、更に好ましくは25μm以上500μm以下、一層好ましくは30μm以上300μm以下という薄型のものである。金属箔の厚みは上述した方法によって測定される。このような薄型の金属箔は、二次電池の負極材料、特にバイポーラ電池等の積層型二次電池に好適なものである。特に、本発明の金属箔は、長時間保存時の形状安定性に優れているため、二次電池、特に積層型二次電池に好適なものとなる。
【0057】
次に、本発明の亜鉛箔の好適な製造方法について説明する。
本製造方法は、金属材料からなる第1の面及びそれと反対側に位置する第2の面とを有する基材をカソードとし、当該基材を、亜鉛イオンを含む10~90℃の電解液に1~10分間浸漬させる工程と、当該浸漬工程の後に、基材の少なくとも一面に、亜鉛イオンを含む電解液を用いて電解めっきを行い、亜鉛を母材とする電解層を形成する工程とを有する。
【0058】
ただし、前記基材における少なくとも一面が、X線回折測定したときに、S(002)/S(101)が1.01未満である場合には、少なくとも当該面において電解めっき法にて、亜鉛を母材とする電解層を形成する。
基材の説明としては、上述したコア部の説明を使用できる。
【0059】
亜鉛イオンを含む電解液としては、硫酸亜鉛水溶液、硝酸亜鉛水溶液、塩化亜鉛水溶液等が挙げられる。電解液に含まれる亜鉛の濃度は、30g/L以上100g/L以下であることが好ましく、35g/L以上90g/L以下であることがより好ましい。
【0060】
また、クラッド部にビスマスを含有させる場合には、電解液が亜鉛イオンに加えてビスマスイオンを含んでいてもよい。ビスマスイオン源としては、硝酸ビスマス等が挙げられる。電解液に含まれるビスマスイオンを用いる場合、その濃度は、電解液中の亜鉛とビスマスとの合計質量に対して、ビスマスの質量の割合が10ppm以上10000ppm以下であることがガス発生抑制の点で好ましく、15ppm以上8000ppm以下であることが更に好ましく、20ppm以上7000ppm以下であることが一層好ましく、30ppm以上6500ppm以下であることが更に一層好ましい。電解液がビスマスを含まない場合には、電解液中の亜鉛の質量に対して、ビスマスの質量の割合が10ppm未満であることが好ましく、6ppm以下であることが好ましく、3ppm以下であることが更に好ましい。
【0061】
電解液は、更に、他の化合物を含んでいてもよい。他の化合物としては、例えば電解液のpHを調整する目的で硫酸を添加することができる。電解液のpHとしては電解を行う時点において、2以下が挙げられる。
【0062】
本製造方法では、電解液を用いて電解めっきを行うに先立ち、カソードである前記基材を10~90℃の前記電解液に1~10分間浸漬させる。その後の電解めっきにより析出した析出面のS(002)/S(101)が1.01以上である金属箔が得やすいものとなる。この観点から、電解液の温度は、10~80℃であることがより好ましく、15~35℃であることが更に好ましい。電解めっき前の浸漬時間は3~8分間であることがより好ましい。発明者は、当該予備浸漬が、電極(コア部)の表面を鳴らす作用を有し、これによって、前記の析出面のS(002)/S(101)が1.01以上である金属箔が得やすいものと考えている。
【0063】
電解法においては、亜鉛源を含む電解液にアノード及びカソードを浸漬させ、カソードを前記基材として、その表面に亜鉛を母材とする電解層を析出させる。結晶粒の平均サイズが小さいクラッド部を容易に得ることができる点から好ましい。電解に使用するアノードとしては、公知の寸法安定化電極(DSE)を用いることが好ましい。DSEとしては、例えば酸化イリジウムをコートしたチタン電極、酸化ルテニウムをコートしたチタン電極などが好適に用いられる。
形状安定性の良好な金属箔を首尾よく得る観点から、電解を行っている間、電解液を循環させることが有利である。電解液を循環させるためには、例えば電解装置として、閉じた流路と、該流路中に配置された電解槽と、該流路中に配置されたポンプとを備えたものを用い、ポンプを駆動させて電解液を一方向に向けて電解槽中を流通させればよい。電解に使用するアノード及びカソードは、電解槽内に、両者を対向させた状態で浸漬させればよい。アノード及びカソードは、それらの対向面(カソードで言えば電着面)が、電解液の流通方向と平行になるように電解槽中に配置されることが好ましい。
【0064】
電解液を循環させつつ電解を行うときには、電解液の流速、すなわち循環速度を調整することが、所望の効果を奏する亜鉛箔を首尾よく得る観点から有利である。詳細には、電解液の循環速度を0.001L/(min・mm
2)以上1L/(min・mm
2)以下に設定することが好ましく、0.002L/(min・mm
2)以上0.6L/(min・mm
2)以下に設定することが更に好ましく、0.003L/(min・mm
2)以上0.4L/(min・mm
2)以下に設定することが一層好ましく、0.005L/(min・mm
2)以上0.04L/(min・mm
2)以下に設定することが更に一層好ましい。循環速度は、電解液の流量(L/min)を、電極間面積(mm
2)で除すことで算出される。電極間面積は、
図2に示すとおり、電極間距離(mm)と、電着電極幅(mm)との積で表される。
図2においては、紙面と直交する方向に向けて電解液を流通させることが好ましい。また
図2においては、紙面と直交する方向に沿って板状の電極が延在している。
【0065】
電解を行うときの電流密度は、得られる亜鉛箔における亜鉛の結晶粒の大きさに影響を及ぼす要因の一つである。詳細には、電流密度を通常の亜鉛電解の条件よりも大きくすることで、微細な結晶を多数生成させることができ、それによって結晶粒の平均サイズが小さい亜鉛箔を容易に得ることができる。この観点から、電流密度を1000A/m2以上10000A/m2以下に設定することが好ましく、1000A/m2以上6000A/m2以下に設定することが更に好ましく、1000A/m2以上4000A/m2以下に設定することが一層好ましい。
【0066】
電解液は非加熱状態又は加熱状態で電解に供することができる。電解液を加熱した状態で電解を行う場合には、電解液の温度を好ましくは10℃以上90℃以下に設定する。電解液の温度は、より好ましくは20℃以上90℃以下であり、更に好ましくは30℃以上80℃以下であり、より更に好ましくは30℃以上70℃以下である。亜鉛箔の厚みが、目的とする値となるまで行う。
【0067】
上記電解めっきは一度の工程であることが好ましい。例えば、電解めっきで基材の両面にクラッド部として亜鉛を母材とする電解層を形成する場合には、基材の両面を電解液に接触させた状態で電解めっきをおこなうことにより、当該両面に一度に亜鉛を母材とする電解層を形成することが好ましい。
【0068】
以上のようにして得られた本発明の金属箔は二次電池の電池用負極活物質材料として好適に用いられる。二次電池としては例えばニッケル・亜鉛電池、空気・亜鉛電池及びマンガン・亜鉛電池が挙げられる。更に、金属箔自体が導電性を有することから、該金属箔は集電体としても機能する。これによって、集電体を用いることなく、金属箔そのものを負極として用いることも可能である。なお、一次電池の電池用負極活物質材料として用いることもできる。
本発明の金属箔を備えた電池は後述する実施例の評価結果に示す通り、高温で長時間保存しても、形状安定性が良好な電極材料として利用できる。これにより、二次電池に好適に用いることができる。
【0069】
本発明は上記知見に基づくものであり、以下の〔1〕~〔8〕を提供するものである。
〔1〕 第1の面及びそれと反対側に位置する第2の面とを有し、且つ、金属材料からなるコア部と、
前記コア部の少なくとも一面に位置し、且つ、亜鉛を母材とするクラッド部とを有する金属箔であって、
前記金属箔の両面をそれぞれX線回折測定したときに、いずれの面においても、亜鉛の(101)面に由来するピークのピーク強度S(101)に対する、亜鉛の(002)面に由来するピークのピーク強度S(002)の強度比が、1.01以上である、金属箔。
〔2〕 金属箔を縦190mm、横90mmに裁断し、密閉できる容器にアルゴンと共に封入し、温度80℃、相対湿度50%、96時間の条件で保存したときに、保存後における寸法の変化が、縦方向0.5mm以下、横方向0.5mm以下、反りが5mm以下である、〔1〕に記載の金属箔。
〔3〕 前記コア部の両面に前記クラッド部が形成されている、〔1〕又は〔2〕に記載の金属箔。
〔4〕 前記コア部と前記クラッド部が分離不能に結合している、〔1〕又~〔3〕の何れか1項記載の金属箔。
〔5〕 前記コア部が、銅箔又は亜鉛箔である、〔1〕~〔4〕の何れか1項に記載の金属箔。
〔6〕 前記コア部が、電解銅箔、圧延銅箔、電解亜鉛箔又は圧延亜鉛箔である、〔1〕~〔5〕の何れか1項に記載の金属箔。
〔7〕 前記コア部の厚みが5μm以上300μm以下である、〔1〕~〔5〕の何れか1項に記載の金属箔。
〔8〕 前記クラッド部の厚みが5μm以上300μm以下である、〔1〕~〔6〕の何れか1項に記載の金属箔。
〔9〕 前記コア部において、母材とする金属が銅であるか又は前記コア部が圧延亜鉛箔であって前記コア部の両面に前記クラッド部が形成されているか、或いは、
前記コア部が電解亜鉛箔であって、その少なくとも電極面に、前記クラッド部が形成されている、〔1〕~〔8〕の何れか1項に記載の金属箔。
〔10〕 クラッド部がビスマスを実質的に非含有である、〔1〕~〔9〕の何れか1項に記載の金属箔。
〔11〕 〔1〕又は〔2〕に記載の金属箔を備えた、二次電池用電極材料。
【実施例】
【0070】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。しかしながら本発明の範囲は、かかる実施例に制限されない。特に断らない限り、「%」は「質量%」を意味する。
【0071】
〔実施例1〕
(1)基材の用意
基材として、表1に示す厚みを有する電解銅箔(純度99.9%、三井金属鉱業製)を用意した。
(2)電解液の調製
亜鉛化合物として酸化亜鉛を用いた。これを硫酸ととともに水に溶解して電解液を調製した。電解液における亜鉛の濃度は50g/Lとした。硫酸の濃度は硫酸イオンの総量をH2SO4として換算した値として200g/Lとした。電解液に硝酸ビスマスを添加した。硝酸ビスマスの濃度は、亜鉛とビスマスとの合計質量に対するビスマスの割合が、700質量ppmとなるように調整した。カソードとして上記電解銅箔を用いた。20℃の電解液に5分間、カソードを浸漬させた。
【0072】
(3)亜鉛の還元析出
アノードとして、酸化イリジウムをコートしたチタン電極からなるDSEを用いた。
電解液を30℃に加熱した状態下にアノードとカソードとの間に電流を流した。電流密度は2000A/m2とした。電解液は、循環速度を0.021L/(min・mm2)に設定して循環させた。電解銅箔の両面を電解液に浸漬させて電解を行い、電解銅箔の両面に電解厚みが表1に記載の値である電解亜鉛層を形成し、電解亜鉛層と電解銅箔が一体の銅亜鉛複合箔を得た。本複合箔において、電解銅箔がコア部に該当し、電解亜鉛層がクラッド部に該当する。得られた複合箔は、イオン交換水で洗浄し、熱風で乾燥させた。
【0073】
〔実施例2〕
実施例1の(2)及び(3)の工程において、硝酸ビスマスを用いなかった。これらの点以外は実施例1と同様として銅亜鉛複合箔を得た。
【0074】
〔実施例3〕
実施例1の(1)の工程において、基材を電解銅箔から表1に示す厚さの圧延亜鉛箔に変更した(純度99.99%、三井住友金属鉱山伸銅製)。この点以外は実施例1と同様として圧延亜鉛箔と電解亜鉛層が一体の複合箔である亜鉛箔を得た。
【0075】
〔実施例4〕
(1)基材としての電解亜鉛箔の製造
亜鉛化合物として酸化亜鉛を用いた。これを硫酸ととともに水に溶解して電解液を調製した。電解液における亜鉛の濃度は50g/Lとした。硫酸の濃度は硫酸イオンの総量をH2SO4として換算した値として200g/Lとした。カソードとしてアルミニウム板を用いた。30℃の電解液に5分間、カソードを浸漬させた。
アノードとして、酸化イリジウムをコートしたチタン電極からなるDSEを用いた。
電解液を30℃に加熱した状態下にアノードとカソードとの間に電流を流した。電流密度は2000A/m2とした。電解液は、循環速度を0.021L/(min・mm2)に設定して循環させた。
この状態にて電解を行い、アルミニウム板の片面に電解亜鉛層を形成させた。電解後、カソードのアルミニウム板から電解亜鉛層をはぎ取り、亜鉛箔を得た。得られた亜鉛箔は、イオン交換水で洗浄し、熱風で乾燥させた。
(2)クラッド部の製造
(2-1)亜鉛化合物として酸化亜鉛を用いた。これを硫酸ととともに水に溶解して電解液を調製した。電解液における亜鉛の濃度は50g/Lとした。硫酸の濃度は硫酸イオンの総量をH2SO4として換算した値として200g/Lとした。
(2-2)実施例2において、カソードとして(1)で得られた電解亜鉛箔を、析出面をマスキングして用いた。また、電解液として、(2-1)で得た電解液を用いた。電解亜鉛箔のマスキングされていない電極面((1)の工程におけるアルミニウム板側の面)を電解液に浸漬させて浸漬工程及び電解めっきを行った。それらの点以外は、実施例2と同様にして、電解亜鉛箔の電極面に電解厚みが表1に記載の値である電解亜鉛層を形成した。これにより、電解亜鉛層と電解亜鉛箔が一体の複合箔である亜鉛箔を得た。
【0076】
〔比較例1〕
本例は、特許文献1の実施例と同様の電解亜鉛箔を製造した例である。
亜鉛化合物として酸化亜鉛を用いた。これを硫酸ととともに水に溶解して電解液を調製した。電解液における亜鉛の濃度は50g/Lとした。硫酸の濃度は硫酸イオンの総量をH2SO4として換算した値として200g/Lとした。電解液に硝酸ビスマスを添加した。硝酸ビスマスの濃度は、亜鉛とビスマスとの合計質量に対するビスマスの割合が、700質量ppmとなるように調整した。カソードとしてアルミニウム板を用いた。30℃の電解液に5分間、カソードを浸漬させた。
アノードとして、酸化イリジウムをコートしたチタン電極からなるDSEを用いた。
電解液を30℃に加熱した状態下にアノードとカソードとの間に電流を流した。電流密度は2000A/m2とした。電解液は、循環速度を0.021L/(min・mm2)に設定して循環させた。
この状態にて電解を行い、アルミニウム板の片面に電解亜鉛層を形成させた。電解後、カソードのアルミニウム板から電解亜鉛層をはぎ取り、亜鉛箔を得た。得られた亜鉛箔は、イオン交換水で洗浄し、熱風で乾燥させた。
【0077】
〔比較例2〕
実施例1の(2)及び(3)の工程において、カソードとした電解銅箔の片面をマスキングして、片面のみに電解亜鉛層を析出させた。その点以外は実施例1と同様にして、電解銅箔の片面に電解亜鉛層が形成された電解亜鉛層と電解銅箔一体の銅亜鉛複合箔を得た。
【0078】
〔比較例3〕
実施例3の(2)及び(3)の工程において、カソードとした圧延亜鉛箔の片面をマスキングして、片面のみに電解亜鉛層を析出させた。その点以外は実施例3と同様にして、圧延亜鉛箔の片面に電解亜鉛層が形成された電解亜鉛層と圧延亜鉛層一体の複合箔である亜鉛箔を得た。
【0079】
各実施例及び比較例で得られた金属箔について、以下の測定・評価を行った。結果を表1に示す。
これらの金属箔におけるクラッド部中のビスマス量も併せて表1に示す。クラッド部中のビスマス含量は、各実施例・比較例で得られた金属箔をICP発光分光分析法で測定した値である。具体的には以下のようにして求めた。
実施例1及び比較例2では、金属箔を硝酸水溶液で溶解させ、溶液中のBi質量、Zn質量を求め、「Bi質量/(Zn質量+Bi質量)」を計算した。
実施例3並びに比較例3では、金属箔を硝酸水溶液で溶解させて溶液中のBi含量を測定した。またクラッド部形成時における電解めっき後の電解液の亜鉛質量をICP発光分光分析法で測定した。当該質量を、電解めっき前の電解液中の亜鉛質量から引いた値を、クラッド部の亜鉛質量とした。これらから「Bi質量/(クラッド部のZn質量+Bi質量)」を計算した。
比較例1の金属箔では、金属箔を硝酸水溶液で溶解させ、溶液中のBi質量、Zn質量を求め、「Bi質量/(Zn質量+Bi質量)」を計算した。ただし、比較例1の金属箔はクラッド部が設けられておらずコア部のみからなるため、表1にはコア部中のビスマス量を記載した。
【0080】
〔XRD測定条件〕
X線回折装置(Bruker社製、D8ADVANCE)を用いた。測定条件は以下のとおりである。実施例1~4で得られた金属箔の両面のXRD測定の結果を表1及び
図4に、比較例1~3で得られた金属箔の両面のXRD測定の結果を表1及び
図5にそれぞれ示す。金属箔のXRD測定の対象面は、表1に記載したとおりである(コア部について、電解箔である場合は電解面又は析出面、圧延箔である場合は圧延面を記載。また、クラッド部の有無を記載。)。
・線源:Cu-kα線
・管電圧:40kV
・管電流:40mA
・スキャン速度:10.5deg/min
・ステップ:0.015deg
・スキャン範囲:2θ=15度~120度
【0081】
〔評価(経時後の変形量)〕
実施例及び比較例で得られた各金属箔を縦190mm、横90mmに裁断し、平坦面の上に載せて、縦、横、高さの寸法を測定した。その後、金属箔を、内部の気体をアルゴンガスで置換した密閉容器に入れて気密状態で密封し、温度80℃、相対湿度50%、96時間の条件で保存し、再度各寸法を測定した。寸法の測定は金尺を用いて行った。経時後の寸法から経時前の寸法を引いて変形量(mm)を求めた。結果を表1に示す。
【0082】
【0083】
表1に示す通り、各実施例では、経時後の変形量が抑制されている。これに対し、電解亜鉛箔の電極面のS(002)/S(101)が1.01未満の比較例1では、経時の寸法伸びが大きかった。また電解層を有していない面のS(002)/S(101)が1.01未満である比較例2、3の金属箔では、長時間保存後反りが大きかった。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明によれば、長時間保存したときの形状安定性に優れた亜鉛含有金属箔が提供される。
【要約】
第1の面及びそれと反対側に位置する第2の面とを有し、且つ、金属材料からなるコア部と、前記コア部の少なくとも一面に位置し、且つ、亜鉛を母材とするクラッド部とを有する金属箔であって、前記金属箔の両面をそれぞれX線回折測定したときに、いずれの面においても、亜鉛の(101)面に由来するピークのピーク強度S(101)に対する、亜鉛の(002)面に由来するピークのピーク強度S(002)の強度比が、1.01以上である。