(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-30
(45)【発行日】2025-05-12
(54)【発明の名称】複数試料分析方法
(51)【国際特許分類】
G01N 30/86 20060101AFI20250501BHJP
G01N 30/46 20060101ALI20250501BHJP
【FI】
G01N30/86 B
G01N30/86 G
G01N30/46 Z
(21)【出願番号】P 2021165425
(22)【出願日】2021-10-07
【審査請求日】2024-07-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110003993
【氏名又は名称】弁理士法人野口新生特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100205981
【氏名又は名称】野口 大輔
(72)【発明者】
【氏名】西尾 顕
(72)【発明者】
【氏名】藤田 雄一郎
【審査官】黒田 浩一
(56)【参考文献】
【文献】特開昭60-104238(JP,A)
【文献】国際公開第2017/119086(WO,A1)
【文献】特開2020-056595(JP,A)
【文献】国際公開第2015/005361(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 30/00-30/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの試料について、前記少なくとも1つの試料に含まれる複数の成分を互いに分離することが可能な条件でフォトダイオードアレイを用いた第1のクロマトグラフィ分析を実行することにより前記少なくとも1つの試料の3次元クロマトグラムを取得し、前記少なくとも1つの試料の3次元クロマトグラムから前記少なくとも1つの試料に含まれる前記複数の成分のそれぞれのスペクトルデータを抽出する第1分析ステップと、
前記少なくとも1つの試料と主成分が同一である他の試料について、前記第1のクロマトグラフィ分析よりも短時間に3次元クロマトグラムが得られる条件でフォトダイオードアレイを用いた第2のクロマトグラフィ分析を実行することによって前記他の試料の3次元クロマトグラムを取得する第2分析ステップと、
前記第2分析ステップで取得した前記他の試料の3次元クロマトグラムに対して、前記第1分析ステップで抽出した前記スペクトルデータに基づいたピーク分離処理を適用することにより、前記他の試料に含まれる複数の成分のピークが互いに分離された前記他の試料についてのピーク分離データを取得するピーク分離ステップと、を備えている複数試料分析方法。
【請求項2】
前記第1のクロマトグラフィ分析において使用する第1の分析カラムと前記第2のクロマトグラフィ分析において使用する第2の分析カラムは、内径、全長、及び/又は充填剤が互いに異なる、請求項1に記載の複数試料分析方法。
【請求項3】
前記第2のクロマトグラフィ分析における移動相流量は前記第1のクロマトグラフィ分析における移動相流量よりも大きい、請求項1又は2に記載の複数試料分析方法。
【請求項4】
主成分が互いに共通する2以上の試料が存在する場合において、
前記2以上の試料のうちの1つの試料について前記第1分析ステップを実行して前記1つの試料に含まれる複数の成分のそれぞれのスペクトルデータを抽出し、
前記2以上の試料のうちの残りの試料に対して前記第2分析ステップを実行して前記残りの試料のそれぞれについての3次元クロマトグラムを取得し、取得した前記残りの試料のそれぞれについての3次元クロマトグラムに対して前記ピーク分離ステップを実行して前記残りの試料のそれぞれについてのピーク分離データを取得する、請求項1から3のいずれか一項に記載の複数試料分析方法。
【請求項5】
前記第1のクロマトグラフィ分析及び前記第2のクロマトグラフィ分析は液体クロマトグラフィ分析である、請求項1から4のいずれか一項に記載の複数試料分析方法。
【請求項6】
前記ピーク分離処理では、モデル関数の当てはめにより各成分のピークを推定するアルゴリズム、又は、前記モデル関数を用いないで行列分解によって数学的に各成分のピークを推定するアルゴリズムを使用する、請求項1から5のいずれか一項に記載の複数試料分析方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主成分が互いに共通な複数の試料について含有成分のピークが互いに分離した状態のクロマトグラムデータを取得する複数試料分析方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
製薬業界などでは、主成分が共通の多数の試料のそれぞれに含まれる不純物の濃度を定量しなければならない場合がある。試料に含まれる複数の成分をそれぞれ定量するための方法として液体クロマトグラフィ分析が一般的である(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
液体クロマトグラフィ分析を用いて試料に含まれる複数の成分のそれぞれを定量するためには、複数の成分のピークを互いに分離する必要がある。互いの性質が類似した複数の成分が試料に混在している場合、それらの成分ピークを完全に分離するためには、分析カラム内に充填される充填剤を調整したり、分析カラムの全長を長くしたり、分析カラムの内径を細くして移動相の流量を極端に小さくしたりするなど、分析条件の調整が必要である。そして、そのような分析条件で分析を行なう結果、試料中の全成分が分析カラムから溶出するまでに要する時間が長くなり、1つの試料の分析が完了するまでに長時間を要することになる。しかし、分析すべき試料の数が膨大であると、それらの試料のすべてについてそのような長時間の分析を実施することは、費用的、時間的、人的コストが膨大になり現実的でない。
【0005】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、主成分が共通する複数の試料の分析を効率的に実行することができる複数試料分析方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る複数試料分析方法は、少なくとも1つの試料について、前記少なくとも1つの試料に含まれる複数の成分を互いに分離することが可能な条件でフォトダイオードアレイを用いた第1のクロマトグラフィ分析を実行することにより前記少なくとも1つの試料の3次元クロマトグラムを取得し、前記少なくとも1つの試料の3次元クロマトグラムから前記少なくとも1つの試料に含まれる前記複数の成分のそれぞれのスペクトルデータを抽出する第1分析ステップと、前記少なくとも1つの試料と主成分が同一である他の試料について、前記第1のクロマトグラフィ分析よりも短時間に3次元クロマトグラムが得られる条件でフォトダイオードアレイを用いた第2のクロマトグラフィ分析を実行することによって前記他の試料の3次元クロマトグラムを取得する第2分析ステップと、前記第2分析ステップで取得した前記他の試料の3次元クロマトグラムに対して、前記第1分析ステップで抽出した前記スペクトルデータに基づいたピーク分離処理を適用することにより、前記他の試料に含まれる複数の成分のピークが互いに分離された前記他の試料についてのピーク分離データを取得するピーク分離ステップと、を備えている。
【0007】
すなわち、本発明では、互いの主成分が共通する複数の試料のうちの一部の試料については、高い分離度が得られる長時間の第1のクロマトグラフィ分析を実施して複数の成分についてのスペクトルデータを取得し、他の残りの試料については、第1のクロマトグラフィ分析よりも分離度は低いものの高速で3次元クロマトグラムが得られる第2のクロマトグラフィ分析を実施し、第2のクロマトグラフィ分析で得られた比較的分離度の低い3次元クロマトグラムに対して、第1のクロマトグラフィ分析を実施して得られたスペクトルデータに基づくピーク分離処理を適用することにより、他の残りの試料についてのピーク分離データを取得する。
【発明の効果】
【0008】
上述のとおり、本発明に係る複数試料分析方法によれば、互いの主成分が共通する複数の試料のうち、一部の試料についてのみ、高い分離度が得られる長時間の第1のクロマトグラフィ分析を実施し、他の試料については、第1のクロマトグラフィ分析よりも分離度は低いものの高速で3次元クロマトグラムが得られる第2のクロマトグラフィ分析を実施する。これにより、主成分が共通する複数の試料のすべてについて長時間を要する第1のクロマトグラフィ分析を実施しなくても、すべての試料についての高精度なピーク分離データを取得することができる。したがって、主成分が共通する複数の試料の分析を効率的に実行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】液体クロマトグラフィ分析装置の構成例を示す概略構成図である。
【
図2】複数試料分析方法の一実施例を概略的に示す概念図である。
【
図3】同実施例の手順の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る複数試料分析方法の一実施例について図面を参照しながら説明する。
【0011】
まず、複数試料分析方法の実施に用いる液体クロマトグラフィ分析装置の構成例について、
図1を用いて説明する。
【0012】
液体クロマトグラフィ分析装置は、送液ポンプ2、インジェクタ4、分析カラム6、PDA検出器8、オーブン10及び演算処理装置12を備えている。送液ポンプ2は、移動相を送液する。送液ポンプ2の下流には、上流から順に、インジェクタ4、分析カラム6及びPDA検出器8が接続されている。インジェクタ4は、送液ポンプ2によって送液される移動相中に試料を注入するためのものである。分析カラム6は、インジェクタ4によって移動相中に注入された試料中の成分を互いに分離するためのものである。分析カラム6はオーブン10の内部に収容されており、分析条件に応じた温度に制御される。PDA検出器8は、分析カラム6からの溶出液の吸光度の時間変化を波長帯域ごとに測定するものである。すなわち、PDA検出器8では、各測定波長帯域での吸光度の時間変化を表すクロマトグラム情報、及び分析中の各時間でのスペクトルを表すスペクトル情報を含む分析データが取得される。
【0013】
演算処理装置12は、CPU(中央演算装置)及びデータ記憶装置等を備えたコンピュータ装置によって実現される。演算処理装置12にはPDA検出器8から出力される分析データが入力される。演算処理装置12は、PDA検出器8から出力された分析データを用いて種々の解析処理を実行する機能を有する。演算処理装置12による解析処理機能としては、試料についてのクロマトグラム情報及びスペクトル情報を併せ持つ3次元クロマトグラムを作成する機能、作成した3次元クロマトグラムに基づいて分析カラム6で互いに分離された成分のそれぞれのスペクトルデータを抽出する機能、さらには、抽出したスペクトルデータを用いて3次元クロマトグラムに対するピーク分離処理を実行する機能、がある。すなわち、演算処理装置12は、一度解析処理を実施して3次元クロマトグラムから抽出したスペクトルデータをデータベースに蓄積し、データベースに蓄積されたスペクトルデータを、別の3次元クロマトグラムについてのピーク分離処理に利用する機能を有する。
【0014】
次に、複数試料分析方法の概念について
図2を用いて説明する。
【0015】
分析すべき複数の試料1~nがあるとする。これらの試料1~nは主成分が互いに共通しているものである。分析は、試料1~nに含まれる複数成分のそれぞれの濃度を定量することを目的とし、
図1に示した構成をもつ液体クロマトグラフィ装置により実施する。
【0016】
試料1については、主成分ピークとその近傍成分のピークとの高いピーク分離度が得られるような高分離度条件を探索し、その高分離度条件で分析を実施する(第1のクロマトグラフィ分析)。分析条件には、分析カラム6の内径、長さ、分析カラム6の充填剤の種類、オーブン10の設定温度、送液ポンプ2によって送液する移動相の組成、送液ポンプ2による送液流量、インジェクタ4による注入条件などの要素が含まれる。それらの要素を、少なくとも試料1の主成分のピークと主成分の近くに現れる他の成分のピークがそれぞれ単離するように、好ましくは、試料1に含まれるすべての成分が単離するように、決定する。
【0017】
上記第1のクロマトグラフィ分析により、試料1に含まれる複数の成分のピークが互いに分離された3次元クロマトグラムが得られるとともに、その3次元クロマトグラムから第1のクロマトグラフィ分析において単離された成分のそれぞれのスペクトルデータが得られる。
【0018】
ここで、一般論として、第1のクロマトグラフィ分析のように試料中の複数成分のピークを完全分離するように最適化された条件での分析は、すべての成分を分析カラム6から溶出させるまでに比較的長い時間を要する。そのため、複数の試料1~nのすべてについてこのような高分離度分析を実施すると、すべての試料1~nについての分析結果を得るまでには莫大な時間を要することになる。
【0019】
そこで、試料1以外の試料2~nのそれぞれについては、第1のクロマトグラフィ分析よりも短時間ですべての成分が分析カラム6から溶出するような条件で分析を実施する(第2のクロマトグラフィ分析)。第2のクロマトグラフィ分析においては、第1のクロマトグラフィ分析とは異なる分析カラムを使用することができる。すなわち、第1のクロマトグラフィ分析で使用する第1の分析カラムと第2のクロマトグラフィ分析で使用する第2の分析カラムとは、内径、長さ及び/又は充填剤の種類が互いに異なっていてよい。
【0020】
第2のクロマトグラフィ分析で得られる3次元クロマトグラムでは、第1のクロマトグラフィ分析に比べて各ピークの間の間隔が短くなって分離度が低くなり、複数の成分のピーク同士が重なることもあり得る。その場合、第2のクロマトグラフィ分析によって得られた各分析データは、そのままでは試料2~nに含まれる成分の定量に使用することができない不完全なものである。
【0021】
第2のクロマトグラフィ分析で得られた分析データの不完全性を解消するため、各分析データに対してピーク分離処理を適用する。ピーク分離処理とは、クロマトグラム上で互いに重なっている複数成分のピークのそれぞれの形状及び大きさを推定する処理である。ピーク分離処理では、EMG(Exponential Modified Gaussian)関数等のモデル関数(ピークモデル)を実際のクロマトグラムの波形に当てはめることによって各成分のそれぞれのクロマトグラムを推定するアルゴリズム(例えば、国際公開第2016/035167号参照)のほかに、モデル関数を用いずに元の3次元クロマトグラムデータにNMF(Non-negative Matrix factorization)などの行列分解を適用して各成分のクロマトグラムを数学的に推定するアルゴリズム、PCA(principal component analysis)などの主成分分析アルゴリズムを用いることができる。
【0022】
上述のピーク分離処理では、試料に含まれる含まれる成分に関する情報がまったくない状態であっても、3次元クロマトグラムデータ上で互いに重なっているピークの数、形状及び大きさを推定することが可能である。ただし、互いのピークが重なっている成分のうち少なくとも1つの成分のスペクトルデータが存在していれば、そのスペクトルデータをピーク分離処理の基礎情報として使用することによって互いに重なっているピークの数、形状及び大きさの推定精度を向上させることができる。
【0023】
この実施例では、第2のクロマトグラフィ分析で取得された各分析データに適用するピーク分離処理において、第1のクロマトグラフィ分析の分析データから抽出されたスペクトルデータの少なくとも一部を使用する。試料1~nは互いに主成分が共通しているため、第1のクロマトグラフィ分析の分析データから抽出された主成分についてのスペクトルデータをピーク分離処理に使用することができ、それによって、試料2~nの分析データに対するピーク分離処理で得られる推定結果の精度が向上する。なお、試料1~nのそれぞれの含有成分が互いにすべて同一である場合には、第1のクロマトグラフィ分析で単離されたすべての成分のスペクトルデータをピーク分離処理に用いることで、試料2~nについての高精度なピーク分離データを取得することができる。
【0024】
この実施例の複数試料分析方法の手順の一例について、
図3のフローチャートを用いて説明する。
【0025】
分析すべき多数の試料のうち、一部の試料(1以上の試料であればよい)について、少なくとも主成分ピークと他の成分ピークとが完全に分離されるような高分離度分析(第1のクロマトグラフィ分析)を実施する(ステップ101)。演算処理装置12を用いて第1のクロマトグラフィ分析で得られた分析データを解析することにより、高分離度分析で単離した各成分についてのスペクトルデータを抽出する(ステップ102)。一部の試料については、第1のクロマトグラフィ分析により、各成分の定量のために必要なピーク分離データが得られる。
【0026】
次に、第1のクロマトグラフィ分析が行われた一部の試料を除く残りの試料について、第1のクロマトグラフィ分析よりも各ピーク間の分離度が低くなるものの第1のクロマトグラフィ分析よりも短時間で分析データを取得することができるような低分離度分析(第2のクロマトグラフィ分析)を実施する(ステップ103)。これにより、残りの試料についての3次元クロマトグラムが得られる(ステップ104)。
【0027】
第2のクロマトグラフィ分析で得られた3次元クロマトグラムに対して、ステップ102で抽出したスペクトルデータに基づくピーク分離処理を適用する(ステップ105)。このピーク分離処理により、当初は不完全な状態であった分析データにおいて互いに重なっている複数のピークが高い推定精度で分離され、試料中に含まれる各成分の定量に使用可能なピーク分離データとなる。すなわち、ステップ105のピーク分離処理を実施することで、すべての試料について長時間に及ぶ高分離度分析を実施した場合と同等の分析結果を取得することができる。
【0028】
上記のとおり、この実施例では、膨大な数の分析すべき試料が存在する場合でも、それらの試料のうち少なくとも1試料についてのみ、主成分と他の成分を単離させるように設定された分析条件で、長時間(及び場合によっては高コスト)をかけて第1のクロマトグラフィ分析を実施するものの、残りの試料については短時間(及び場合によっては低コスト)で第2のクロマトグラフィ分析を実施するだけで、すべての試料について長時間に及ぶ高分離度分析を実施した場合と同等の分析結果を取得することができるので、すべての試料についてのピーク分離データを取得するまでに要する時間が大幅に削減される。
【0029】
以上において説明した実施例は、本発明に係る複数試料分析方法の実施形態を例示したに過ぎない。本発明に係る複数試料分析方法の実施形態は以下に示すとおりである。
【0030】
本発明に係る複数試料分析方法の一実施形態では、少なくとも1つの試料について、前記少なくとも1つの試料に含まれる複数の成分を互いに分離することが可能な条件でフォトダイオードアレイを用いた第1のクロマトグラフィ分析を実行することにより前記少なくとも1つの試料の3次元クロマトグラムを取得し、前記少なくとも1つの試料の3次元クロマトグラムから前記少なくとも1つの試料に含まれる前記複数の成分のそれぞれのスペクトルデータを抽出する第1分析ステップと、前記少なくとも1つの試料と主成分が同一である他の試料について、前記第1のクロマトグラフィ分析よりも短時間に3次元クロマトグラムが得られる条件でフォトダイオードアレイを用いた第2のクロマトグラフィ分析を実行することによって前記他の試料の3次元クロマトグラムを取得する第2分析ステップと、前記第2分析ステップで取得した前記他の試料の3次元クロマトグラムに対して、前記第1分析ステップで抽出した前記スペクトルデータに基づいたピーク分離処理を適用することにより、前記他の試料に含まれる複数の成分のピークが互いに分離された前記他の試料についてのピーク分離データを取得するピーク分離ステップと、を備えている。
【0031】
上記一実施形態の第1態様では、前記第1のクロマトグラフィ分析において使用する第1の分析カラムと前記第2のクロマトグラフィ分析において使用する第2の分析カラムは、内径、全長、及び/又は充填剤が互いに異なる。例えば、第1のクロマトグラフィ分析では、高いピーク分離度を得るために比較的高価な分析カラムを第1の分析カラムとして使用し、第2のクロマトグラフィ分析では、第1の分析カラムよりも安価な分析カラムを使用することができる。これにより、複数試料のすべてについて分析するために必要なコストを低減することができる。
【0032】
上記一実施形態の第2態様では、前記第2のクロマトグラフィ分析における移動相流量は前記第1のクロマトグラフィ分析における移動相流量よりも大きい。この第2態様は上記第1態様と組み合わせることができる。
【0033】
上記一実施形態の第3態様では、主成分が互いに共通する2以上の試料が存在する場合において、前記2以上の試料のうちの1つの試料について前記第1分析ステップを実行して前記1つの試料に含まれる複数の成分のそれぞれのスペクトルデータを抽出し、前記2以上の試料のうちの残りの試料に対して前記第2分析ステップを実行して前記残りの試料のそれぞれについての3次元クロマトグラムを取得し、取得した前記残りの試料のそれぞれについての3次元クロマトグラムに対して前記ピーク分離ステップを実行して前記残りの試料のそれぞれについてのピーク分離データを取得する。このような態様により、分析に長時間を要する第1のクロマトグラフィ分析が1つの試料についてのみ実施し、他の残りの試料については、比較的短時間で完了する第2のクロマトグラフィ分析を実施するので、すべての試料の分析が完了するまでに要する時間を大幅に短縮することができる。この第3態様は、上記第1態様及び/又は第2態様と組み合わせることができる。
【0034】
上記一実施形態の第4態様では、前記第1のクロマトグラフィ分析及び前記第2のクロマトグラフィ分析は液体クロマトグラフィ分析である。なお、本発明における「クロマトグラフィ分析」には、液体クロマトグラフィ分析だけでなくガスクロマトグラフィ分析も含めることができる。この第4態様は、上記第1態様、第2態様及び/又は第3態様と組み合わせることができる。
【0035】
上記一実施形態の第5態様では、前記ピーク分離処理において、モデル関数の当てはめにより各成分のピークを推定するアルゴリズム、又は、前記モデル関数を用いないで行列分解によって数学的に各成分のピークを推定するアルゴリズムを使用する。この第5態様は、上記第1態様、第2態様、第3態様、及び/又は第4態様と組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0036】
2 送液ポンプ
4 インジェクタ
6 分離カラム
8 PDA検出器
10 オーブン
12 演算処理装置