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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-30
(45)【発行日】2025-05-12
(54)【発明の名称】ウラシル誘導体を含有する医薬組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/513 20060101AFI20250501BHJP
   A61P 31/14 20060101ALI20250501BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20250501BHJP
   C07D 401/14 20060101ALI20250501BHJP
【FI】
A61K31/513
A61P31/14
A61P43/00
C07D401/14
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2025509007
(86)(22)【出願日】2024-10-04
(86)【国際出願番号】 JP2024035560
【審査請求日】2025-02-17
(31)【優先権主張番号】P 2023173420
(32)【優先日】2023-10-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2024096866
(32)【優先日】2024-06-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和5年度、国立研究開発法人日本医療研究開発機構、「新興・再興感染症に対する革新的医薬品等開発推進研究事業」「次世代COVID-19低分子経口治療薬の開発」委託研究開発、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001926
【氏名又は名称】塩野義製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100156144
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 康
(74)【代理人】
【識別番号】100221578
【弁理士】
【氏名又は名称】林 康次郎
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 淳
(72)【発明者】
【氏名】芝山 啓允
(72)【発明者】
【氏名】上原 彰太
(72)【発明者】
【氏名】宇納 佑斗
(72)【発明者】
【氏名】平井 啓一朗
【審査官】愛清 哲
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2022/138987(WO,A1)
【文献】国際公開第2022/138988(WO,A1)
【文献】特表2023-519035(JP,A)
【文献】特表2022-534186(JP,A)
【文献】国際公開第2023/195529(WO,A1)
【文献】国際公開第2023/195530(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-31/80
A61P 31/00-31/22
A61P 43/00
C07D 401/14
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I-1):
【化1】

で示される化合物またはその製薬上許容される塩、を含有する医薬組成物。
【請求項2】
3CLプロテアーゼ阻害剤である、請求項1記載の医薬組成物。
【請求項3】
SARS-CoV-2のウイルス増殖を阻害するために用いられる、請求項1または2記載の医薬組成物。
【請求項4】
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療剤および/または予防剤である、請求項1または2記載の医薬組成物。
【請求項5】
SARS-CoV-2による感染症の重症化抑制のために用いられる、請求項1または2記載の医薬組成物。
【請求項6】
SARS-CoV-2による感染症の症状が発現してから、または、SARS-CoV-2陽性判定から、72時間以内に投与を開始するように用いられる、請求項1または2記載の医薬組成物。
【請求項7】
SARS-CoV-2による感染症の症状が発現してから、または、SARS-CoV-2陽性判定から、24時間以内に投与を開始するように用いられる、請求項1または2記載の医薬組成物。
【請求項8】
SARS-CoV-2のウイルス伝播を抑制するために用いられる、請求項1または2記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コロナウイルス3CLプロテアーゼ阻害活性を示す化合物を含有する医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ニドウイルス目コロナウイルス科オルトコロナウイルス亜科に属するコロナウイルスは、約30キロベースのゲノムサイズを有し、既知のRNAウイルスでは最大級の一本鎖+鎖RNAウイルスである。コロナウイルスはアルファコロナウイルス属、ベータコロナウイルス属、ガンマコロナウイルス属およびデルタコロナウイルス属の4つに分類され、ヒトに感染するコロナウイルスとして、アルファコロナウイルス属の2種類(HCoV-229E、HCoV-NL63)およびベータコロナウイルス属の5種類(HCoV-HKU1、HCoV-OC43、SARS-CoV、MERS-CoV、SARS-CoV-2)の計7種類が知られている。この内、4種類(HCoV-229E、HCoV-NL63、HCoV-HKU1、HCoV-OC43)は風邪の病原体であるが、残りの3種類は重症肺炎を引き起こす重症急性呼吸器症候群(SARS)コロナウイルス(SARS-CoV)、中東呼吸器症候群(MERS)コロナウイルス(MERS-CoV)および新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)である。
【0003】
2019年12月に発生した新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は急速に国際社会に蔓延し、2020年3月11日にWHOよりパンデミックが表明された。SARS-CoV-2の主な感染経路として飛沫感染、接触感染およびエアロゾル感染が報告されており、SARS-CoV-2は3時間程度エアロゾルと共に空気中を漂い続け、感染力を維持することが確認されている(非特許文献1)。潜伏期間は2~14日程度であり、発熱(87.9%)、空咳(67.7%)、倦怠感(38.1%)、痰(33.4%)等の風邪様症状が典型的である(非特許文献2)。重症例では、急性呼吸窮迫症候群や急性肺障害、間質性肺炎等による呼吸器不全が起こる。また、腎不全や肝不全などの多臓器不全も報告されている。
【0004】
本邦においては、既存薬のドラッグリポジショニングから、抗ウイルス薬であるレムデシビル、抗炎症薬であるデキサメタゾン、リウマチ薬であるバリシチニブがCOVID-19に対する治療薬として承認され、2022年1月に抗IL-6受容体抗体であるトシリズマブが追加承認されている。また、2021年7月に、抗体カクテル療法であるロナプリーブ(カシリビマブ/イムデビマブ)が特例承認され、2021年9月にソトロビマブが特例承認され、2021年12月にモルヌピラビルが特例承認された。これらの薬剤についての有効性や安全性については、十分なエビデンスが得られていない。したがって、COVID-19に対する治療薬の創製は急務である。
【0005】
コロナウイルスは、細胞に感染すると、2つのポリタンパク質を合成する。この2つのポリタンパク質中には、ウイルスゲノムを作る複製複合体、2つのプロテアーゼが含まれている。プロテアーゼは、ウイルスから合成されたポリタンパク質を切断し、それぞれのタンパク質を機能させるために不可欠な働きをする。2つのプロテアーゼのうち、ポリタンパク質の切断のほとんどを担うのが、3CLプロテアーゼ(メインプロテアーゼ)である(非特許文献3)。
3CLプロテアーゼを標的とした、COVID-19治療薬としては、2021年6月、Pfizer社によるPF-00835231のプロドラッグであるLufotrelvir(PF-07304814)のPhase1b試験の完了がClinicalTrials.govに掲載された(NCT04535167)。また、2021年3月、Pfizer社は新型コロナウイルス感染症に対する治療薬PF-07321332のPhase1試験を開始すると発表した。PF-00835231、LufotrelvirおよびPF-07321332の構造式は以下に示す通りで、本発明に使用する化合物とは化学構造が異なる(非特許文献4、8および9、ならびに特許文献1および2)。
PF-00835231:
【化1】

Lufotrelvir(PF-07304814):
【化2】

PF-07321332:
【化3】

2021年12月、PAXLOVID(TM)は米国で緊急使用許可が承認され、2022年2月10日にパキロビッド(登録商標)パックが日本で特例承認された。
【0006】
また、3CLプロテアーゼを標的とした、COVID-19治療薬としては、2021年8月、Pardes Biosciences社によるPBI-0451のPhase1試験の開始がClinicalTrials.govに掲載された(NCT05011812)。PBI-0451の構造式は以下に示す通りで、本発明に使用する化合物とは化学構造が異なる(非特許文献12)。
【化4】
【0007】
さらに、3CLプロテアーゼを標的とした、COVID-19治療薬として、2022年11月22日にゾコーバ(登録商標)が日本で緊急承認され、2024年3月5日に通常承認された(非特許文献17および18)。
ゾコーバの有効成分はエンシトレルビル フマル酸であり、構造式は以下に示す通り、本発明に使用する化合物とは化学構造が異なる(特許文献10~13)。
【化5】
【0008】
一方、3CLプロテアーゼを標的としたCOVID-19治療薬に対する耐性変異については、十分なエビデンスが得られていない。
【0009】
3CLプロテアーゼ阻害活性を有する化合物が非特許文献4~7および13~16に開示されているが、いずれの文献においても本発明に使用する化合物は記載も示唆もされていない。また、3CLプロテアーゼ阻害活性を有する化合物が特許文献14および15に開示されているが、いずれの文献においても本発明に係る化合物を含む医薬組成物は記載も示唆もされていない。
Ρ2Xおよび/またはΡ2X2/3受容体阻害作用を有する化合物が特許文献3~9に開示されているが、いずれの文献においても、3CLプロテアーゼ阻害活性および抗ウイルス効果については記載も示唆もされていない。
HIV-1逆転写酵素阻害作用を有する化合物が非特許文献11に記載されているが、3CLプロテアーゼ阻害活性および抗コロナウイルス効果については記載も示唆もされていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】国際公開第2021/205298号
【文献】国際公開第2021/250648号
【文献】国際公開第2012/020742号
【文献】国際公開第2013/118855号
【文献】中国特許出願公開第113620888号明細書
【文献】中国特許出願公開第113666914号明細書
【文献】中国特許出願公開第113735838号明細書
【文献】中国特許出願公開第113773300号明細書
【文献】中国特許出願公開第113801097号明細書
【文献】国際公開第2022/138987号
【文献】国際公開第2022/138988号
【文献】国際公開第2023/054292号
【文献】国際公開第2023/054732号
【文献】国際公開第2023/195529号
【文献】国際公開第2023/195530号
【非特許文献】
【0011】
【文献】The NEW ENGLAND JOURNAL of MEDICINE(2020年)、382巻、1564~1567頁
【文献】“Report of the WHO-China Joint Mission on Coronavirus Disease 2019 (COVID-19)”、[online]、2020年2月28日、WHO、[2023年3月16日検索]、インターネット<URL:https://www.who.int/docs/default-source/coronaviruse/who-china-joint-mission-on-covid-19-final-report.pdf>
【文献】Science(2003年)、300巻、1763~1767頁
【文献】“A comparative analysis of SARS-CoV-2 antivirals characterizes 3CLpro inhibitor PF-00835231 as a potential new treatment for COVID-19”、Journal of Virology、2021 Mar 10;95(7)、e01819-20
【文献】Cell Research(2020年)、30巻、678~692頁
【文献】Science(2020年)、368巻、409~412頁
【文献】ACS Central Science(2021年)、7巻、3号、467~475頁
【文献】261st Am Chem Soc (ACS) Natl Meet ・ 2021-04-05 / 2021-04-16 ・ Virtual, N/A ・ Abst 243
【文献】Science(2021年)、374巻、1586~1593頁
【文献】"Pfizer’s Novel COVID-19 Oral Antiviral Treatment Candidate Reduced Risk Of Hospitalization Or Death By 89% In Interim Analysis Of Phase 2/3 EPIC-HR Study"、[online]、2021年11月5日、 Pfizer Press Release、[2023年3月16日検索]、インターネット<URL:https://www.pfizer.com/news/press-release/press-release-detail/pfizers-novel-covid-19-oral-antiviral-treatment-candidate>
【文献】Synthetic Communications(2006年)、36巻、19号、2913~2920頁
【文献】"Discovery and Development of PBI-0451"、[online]、2022年3月24日、35th International Conference on Antiviral Research (ICAR)、[2023年3月16日検索]、インターネット<URL:https://ir.pardesbio.com/static-files/fc7c4f8c-e0bd-4b97-8c9c-eff09bafd4db>
【文献】Molecules(2020年)、25巻、3193頁
【文献】Molecules(2020年)、25巻、3920頁
【文献】European Journal of Medicinal Chemistry(2020年)、206巻、112711頁
【文献】Journal of the American Chemical Society(2022年)、144巻、2905~2920頁
【文献】塩野義製薬株式会社プレスリリース(2022年11月22日)
【文献】塩野義製薬株式会社プレスリリース(2024年3月5日)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、コロナウイルス3CLプロテアーゼ阻害活性を有する化合物を含有する医薬組成物を提供することにある。好ましくは、本発明は、抗ウイルス作用、特にコロナウイルスの増殖阻害作用を有する化合物を含有する医薬を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、以下に関する。
(1)式(I-1):
【化6】

で示される化合物またはその製薬上許容される塩、を含有する医薬組成物。
(2)3CLプロテアーゼ阻害剤である、上記項目(1)記載の医薬組成物。
(3)SARS-CoV-2のウイルス増殖を阻害するために用いられる、上記項目(1)または(2)記載の医薬組成物。
(4)新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療剤および/または予防剤である、上記項目(1)~(3)のいずれかに記載の医薬組成物。
(5)SARS-CoV-2による感染症の重症化抑制のために用いられる、上記項目(1)~(4)のいずれかに記載の医薬組成物。
(6)SARS-CoV-2による感染症の症状が発現してから、または、SARS-CoV-2陽性判定から、72時間以内に投与を開始するように用いられる、上記項目(1)~(4)のいずれかに記載の医薬組成物。
(7)SARS-CoV-2による感染症の症状が発現してから、または、SARS-CoV-2陽性判定から、24時間以内に投与を開始するように用いられる、上記項目(1)~(4)のいずれかに記載の医薬組成物。
(8)SARS-CoV-2による感染症の症状が発現してから、または、SARS-CoV-2陽性判定から、120時間以内に投与を開始するように用いられる、上記項目(1)~(4)のいずれかに記載の医薬組成物。
(9)SARS-CoV-2による感染症の症状が発現してから、または、SARS-CoV-2陽性判定から、48時間以内に投与を開始するように用いられる、上記項目(1)~(4)のいずれかに記載の医薬組成物。
(10)SARS-CoV-2のウイルス伝播を抑制するために用いられる、上記項目(1)~(4)のいずれかに記載の医薬組成物。
(11)SARS-CoV-2による感染症の症状が、軽症または中等症Iの症状である、上記項目(1)~(4)のいずれかに記載の医薬組成物。
【0014】
(12)SARS-CoV-2のウイルス増殖阻害方法であって、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療および/または予防を必要とする個体に、式(I-1):
【化7】

で示される化合物またはその製薬上許容される塩、を投与することを含む、
SARS-CoV-2のウイルス増殖阻害方法。
(13)新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療および/または予防方法であって、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療および/または予防を必要とする個体に、式(I-1):
【化8】

で示される化合物またはその製薬上許容される塩、を投与することを含む、
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療および/または予防方法。
(14)SARS-CoV-2による感染症の重症化抑制方法であって、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療および/または予防を必要とする個体に、式(I-1):
【化9】

で示される化合物またはその製薬上許容される塩、を投与することを含む、
SARS-CoV-2による感染症の重症化抑制方法。
(15)新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療方法であって、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療を必要とする個体に、式(I-1):
【化10】

で示される化合物またはその製薬上許容される塩、をSARS-CoV-2による感染症の症状が発現してから、または、SARS-CoV-2陽性判定から、72時間以内に投与することを含む、
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療方法。
(16)新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療方法であって、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療を必要とする個体に、式(I-1):
【化11】

で示される化合物またはその製薬上許容される塩、をSARS-CoV-2による感染症の症状が発現してから、または、SARS-CoV-2陽性判定から、24時間以内に投与することを含む、
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療方法。
(17)新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療方法であって、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療を必要とする個体に、式(I-1):
【化12】

で示される化合物またはその製薬上許容される塩、をSARS-CoV-2による感染症の症状が発現してから、または、SARS-CoV-2陽性判定から、120時間以内に投与することを含む、
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療方法。
(18)新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療方法であって、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療を必要とする個体に、式(I-1):
【化13】

で示される化合物またはその製薬上許容される塩、をSARS-CoV-2による感染症の症状が発現してから、または、SARS-CoV-2陽性判定から、48時間以内に投与することを含む、
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療方法。
(19)SARS-CoV-2のウイルス伝播を抑制する方法であって、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療を必要とする個体に、式(I-1):
【化14】

で示される化合物またはその製薬上許容される塩、を投与することを含む、
SARS-CoV-2のウイルス伝播を抑制する方法。
(20)新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療方法であって、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療を必要とする個体の症状が軽症または中等症Iの症状である、式(I-1):
【化15】

で示される化合物またはその製薬上許容される塩、を投与することを特徴とする、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療方法。
【0015】
(21)SARS-CoV-2のウイルス増殖阻害のための、式(I-1):
【化16】

で示される化合物またはその製薬上許容される塩の使用。
(22)新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療および/または予防用医薬を製造するための、式(I-1):
【化17】

で示される化合物またはその製薬上許容される塩の使用。
(23)SARS-CoV-2による感染症の重症化抑制のための、式(I-1):
【化18】

で示される化合物またはその製薬上許容される塩の使用。
(23’)新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の重症化抑制用医薬を製造するための、式(I-1):
【化19】

で示される化合物またはその製薬上許容される塩の使用。
(24)SARS-CoV-2による感染症の症状が発現してから、または、SARS-CoV-2陽性判定から、72時間以内に投与するための、式(I-1):
【化20】

で示される化合物またはその製薬上許容される塩の使用。
(24’)新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療用医薬を製造するための、式(I-1):
【化21】

で示される化合物またはその製薬上許容される塩の使用であって、該医薬が、SARS-CoV-2による感染症の症状が発現してから、または、SARS-CoV-2陽性判定から、72時間以内に投与される、使用。
(25)SARS-CoV-2による感染症の症状が発現してから、または、SARS-CoV-2陽性判定から、24時間以内に投与するための、式(I-1):
【化22】

で示される化合物またはその製薬上許容される塩の使用。
(25’)新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療用医薬を製造するための、式(I-1):
【化23】

で示される化合物またはその製薬上許容される塩の使用であって、該医薬が、SARS-CoV-2による感染症の症状が発現してから、または、SARS-CoV-2陽性判定から、24時間以内に投与される、使用。
(26)SARS-CoV-2による感染症の症状が発現してから、または、SARS-CoV-2陽性判定から、120時間以内に投与するための、式(I-1):
【化24】

で示される化合物またはその製薬上許容される塩の使用。
(26’)新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療用医薬を製造するための、式(I-1):
【化25】

で示される化合物またはその製薬上許容される塩の使用であって、該医薬が、SARS-CoV-2による感染症の症状が発現してから、または、SARS-CoV-2陽性判定から、120時間以内に投与される、使用。
(27)SARS-CoV-2による感染症の症状が発現してから、または、SARS-CoV-2陽性判定から、48時間以内に投与するための、式(I-1):
【化26】

で示される化合物またはその製薬上許容される塩の使用。
(27’)新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療用医薬を製造するための、式(I-1):
【化27】

で示される化合物またはその製薬上許容される塩の使用であって、該医薬が、SARS-CoV-2による感染症の症状が発現してから、または、SARS-CoV-2陽性判定から、48時間以内に投与される、使用。
(28)SARS-CoV-2のウイルス伝播を抑制するための、式(I-1):
【化28】

で示される化合物またはその製薬上許容される塩の使用。
(28’)新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の伝播抑制用医薬を製造するための、式(I-1):
【化29】

で示される化合物またはその製薬上許容される塩の使用。
(29)新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療用医薬を製造するための、式(I-1):
【化30】

で示される化合物またはその製薬上許容される塩の使用であって、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療を必要とする個体の症状が軽症または中等症Iの症状である使用。
(29’)新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療用医薬を製造するための、式(I-1):
【化31】

で示される化合物またはその製薬上許容される塩の使用であって、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療を必要とする個体の症状が軽症または中等症Iの症状である使用。
【0016】
また、本発明は、以下に関する。
(101)新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の予防用医薬であって、SARS-CoV-2の暴露後の発症抑制のために用いられる、以下の式(I-1):
【化32】

で示される化合物またはその製薬上許容される塩、を含有する医薬組成物。
(102)新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の予防方法であって、SARS-CoV-2の暴露後の発症抑制を必要とする個体に、式(I-1):
【化33】

で示される化合物またはその製薬上許容される塩、を投与することを含む、
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の予防方法。
(103)SARS-CoV-2の暴露後の発症抑制のための、式(I-1):
【化34】

で示される化合物またはその製薬上許容される塩の使用。
(104)SARS-CoV-2の暴露後の発症抑制用医薬を製造するための、式(I-1):
【化35】

で示される化合物またはその製薬上許容される塩の使用。
【0017】
さらに、本発明は、以下に関する。
(201)新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の予防用医薬であって、SARS-CoV-2の暴露前予防のために用いられる、以下の式(I-1):
【化36】

で示される化合物またはその製薬上許容される塩、を含有する医薬組成物。
(202)新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の予防方法であって、SARS-CoV-2の暴露前予防を必要とする個体に、式(I-1):
【化37】

で示される化合物またはその製薬上許容される塩、を投与することを含む、
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の予防方法。
(203)SARS-CoV-2の暴露前予防のための、式(I-1):
【化38】

で示される化合物またはその製薬上許容される塩の使用。
(204)SARS-CoV-2の暴露前予防用医薬を製造するための、式(I-1):
【化39】

で示される化合物またはその製薬上許容される塩の使用。
【0018】
また、一つの実施態様として、本発明は以下を含む。
(301)
式(II):
【化40】

(式中、
Xは、単結合または-CH-であり;
は、置換もしくは非置換の芳香族炭素環式基であり;
3cは、置換もしくは非置換の芳香族炭素環式基、置換もしくは非置換の非芳香族炭素環式基、置換もしくは非置換の芳香族複素環式基、置換もしくは非置換の非芳香族複素環式基、ハロゲン、置換もしくは非置換のアルキルまたは置換もしくは非置換のアミノであり;
は、置換もしくは非置換の芳香族複素環式基または置換もしくは非置換の非芳香族複素環式基であり;
mは、0または1であり;
5aはそれぞれ独立して、水素原子または置換もしくは非置換のアルキルであり;
5bはそれぞれ独立して、水素原子または置換もしくは非置換のアルキルである)で示される化合物(ただし、以下の化合物:
【化41】

を除く)、またはその製薬上許容される塩。
(302)Xが単結合であり;
がハロゲンで置換されたフェニルであり;
3cが置換基群aから選択される1~3の置換基で置換された非芳香族複素環式基もしくは非置換非芳香族複素環式基(置換基群a:ハロゲン、ヒドロキシ、C1-C3アルキル、C1-3アルキルオキシ、ハロC1-3アルキル、ハロC1-3アルキルオキシ、非置換5-6員芳香族複素環式基およびハロゲンで置換された5-6員芳香族複素環式基)または置換基群bから選択される1~3の置換基で置換されたアルキルもしくは非置換アルキル(置換基群b:ハロゲン、ヒドロキシ、C1-3アルキルオキシおよびハロC1-3アルキルオキシ)であり;
がハロゲンで置換されたピリジルであり;
mが0である、上記項目(301)記載の化合物、またはその製薬上許容される塩。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る化合物は、コロナウイルス3CLプロテアーゼに対する阻害活性を有し、本発明に係る化合物を含有する医薬組成物は、コロナウイルス感染症の治療剤および/または予防剤として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】hCoV-19/Japan/TY7-501/2021感染マウス(1.00×10 TCID50/マウスを経鼻接種)について、媒体および式(I-1)で示される化合物を一日二回で感染1日後から2日間経口投与した際の、感染3日後の肺ホモジネート液中ウイルス力価を示す。縦軸は肺ホモジネート液中ウイルス力価、横軸は各投与群を示す。
図2-1】hCoV-19/Japan/TY41-702/2022感染ハムスター(1.00×10TCID50/ハムスターを経鼻接種)について、媒体および式(I-1)で示される化合物を一日二回で感染1日後から2-3日間経口投与した際の、感染3-4日後の肺ホモジネート液中ウイルス力価を示す。縦軸は肺ホモジネート液中ウイルス力価、横軸は各投与群および感染後からの日数を示す。
図2-2】hCoV-19/Japan/TY41-702/2022感染ハムスター(1.00×10TCID50/ハムスターを経鼻接種)について、媒体および式(I-1)で示される化合物を一日二回で感染1日後から2-3日間経口投与した際の、感染3-4日後の鼻甲介ホモジネート液中ウイルス力価を示す。縦軸は鼻甲介ホモジネート液中ウイルス力価、横軸は各投与群および感染後からの日数を示す。
図3】hCoV-19/Japan/TY41-702/2022感染ハムスター(1.00×10TCID50/ハムスターを経鼻接種)について、媒体および式(I-1)で示される化合物を一日二回で感染1日後から5日間経口投与した際の、感染7日後の肺重量/体重を示す。縦軸は肺重量/体重、横軸は各投与群を示す。
図4】hCoV-19/Japan/TY41-702/2022感染ハムスター(1.00×10TCID50/ハムスターを経鼻接種)について、媒体および式(I-1)で示される化合物を一日二回で感染1日後から5日間経口投与した際の、感染10日後までの体重変動を示す。縦軸は感染当日の体重を100%とした場合の体重変動(%)、横軸は感染後からの日数を示す。
図5】hCoV-19/Japan/TY41-702/2022感染ハムスター(1.00×10TCID50/ハムスターを経鼻接種)について、媒体および式(I-1)で示される化合物を感染3日前あるいは1日前に単回皮下投与した際の、感染7日後までの体重変動を示す。縦軸は感染当日の体重を100%とした場合の体重変動(%)、横軸は感染後からの日数を示す。
図6-1】hCoV-19/Japan/TY41-702/2022感染ハムスター(1.00×10TCID50/ハムスターを経鼻接種)について、媒体および式(I-1)で示される化合物を感染1日前に単回皮下投与した際の、感染1-2日後の肺ホモジネート液中ウイルス力価を示す。縦軸は肺ホモジネート液中ウイルス力価、横軸は各投与群および感染後からの日数を示す。
図6-2】hCoV-19/Japan/TY41-702/2022感染ハムスター(1.00×10TCID50/ハムスターを経鼻接種)について、媒体および式(I-1)で示される化合物を感染1日前に単回皮下投与した際の、感染1-2日後の鼻甲介ホモジネート液中ウイルス力価を示す。縦軸は鼻甲介ホモジネート液中ウイルス力価、横軸は各投与群および感染後からの日数を示す。
図7】式(I-1)で示される化合物の無水物結晶の粉末X線回折パターンを示す。横軸は2θ(°)、縦軸はIntensity(強度)を表す。
図8図7の粉末X線回折パターンのピークリストを示す。表中、Positionは2θ(°)、Intensityは強度を示す。
図9】式(I-1)で示される化合物の無水物結晶の結晶構造(非対称単位中の構造)を示す。
図10】式(I-1)で示される化合物の無水物結晶の示差走査熱量測定(DSC)結果を示す。横軸は温度(℃)を、縦軸は熱量(W/g)を表す。
図11】式(I-1)で示される化合物の無水物結晶の示差熱-熱重量同時測定(TG/DTA)結果を示す。縦軸は熱量(μV)又は重量変化(%)を示し、横軸は温度(℃)を示す。図中のCelは、セルシウス度(℃)を意味する。
図12】式(I-1)で示される化合物の無水物結晶のラマンスペクトルを示す。横軸はラマンシフト(cm-1)を表し、縦軸はピーク強度を表す。
図13】上部に式(I-1)で示される化合物の無水物結晶のHPLC測定結果を示す。下部にHPLCのピークテーブルを示す。
図14】hCoV-19/Japan/TY41-702/2022感染ハムスター(1.00×10TCID50/ハムスターを経鼻接種)について、媒体および式(I-1)で示される化合物を一日二回で感染2日後から1-5日間経口投与した際の、感染3-7日後の鼻腔洗浄液(NALF)中ウイルス力価を示す。縦軸はNALF中ウイルス力価、横軸は感染後からの日数を示す。
図15】hCoV-19/Japan/TY41-702/2022感染ハムスター(1.00×10TCID50/ハムスターを経鼻接種)について、媒体および式(I-1)で示される化合物を一日二回で感染3日後から1-5日間経口投与した際の、感染4-8日後の鼻腔洗浄液(NALF)中ウイルス力価を示す。縦軸はNALF中ウイルス力価、横軸は感染後からの日数を示す。
図16】hCoV-19/Japan/TY11-927/2021感染ハムスター(1.00×10TCID50/ハムスターを経鼻接種、Index)に化合物を投与し、非感染ハムスター(Contact)を感染1日後から2日後の夜間12時間にかけて同居させたときの同居開始4日後の非感染ハムスター(Contact)の肺ホモジネート液および鼻腔洗浄液(NALF)中ウイルス力価を示す。感染ハムスター(Index)は媒体および式(I-1)で示される化合物を一日二回で感染8時間後から経口投与した。縦軸は肺ホモジネート液およびNALF中ウイルス力価、横軸は各投与群を示す。
図17】hCoV-19/Japan/TY11-927/2021感染ハムスター(1.00×10TCID50/ハムスターを経鼻接種、Index)と、化合物を投与した非感染ハムスター(Contact)を感染1日後から2日後の夜間12時間にかけて同居させたときの同居開始4日後の非感染ハムスター(Contact)の肺ホモジネート液および鼻腔洗浄液(NALF)中ウイルス力価を示す。非感染ハムスター(Contact)は媒体および式(I-1)で示される化合物を同居開始12時間前に皮下投与した。縦軸は肺ホモジネート液およびNALF中ウイルス力価、横軸は各投与群を示す。
図18】hCoV-19/Japan/TY11-927/2021感染加齢ハムスター(1.00×10TCID50/ハムスターを経鼻接種、11カ月齢ハムスター)について、媒体および式(I-1)で示される化合物を感染1日後から一日二回5日間経口投与した際の、感染10日後までの生存率を示す。縦軸は生存率(%)、横軸は感染後からの日数を示す。
図19】hCoV-19/Japan/TY11-927/2021感染加齢ハムスター(1.00×10TCID50/ハムスターを経鼻接種、11カ月齢ハムスター)について、媒体および式(I-1)で示される化合物を感染1日後から一日二回5日間経口投与した際の、感染10日後までの体重変動を示す。縦軸は感染当日の体重を100%とした場合の体重変動(%)、横軸は感染後からの日数を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に本明細書において用いられる各用語の意味を説明する。各用語は特に断りのない限り、単独で用いられる場合も、または他の用語と組み合わせて用いられる場合も、同一の意味で用いられる。
「からなる」という用語は、構成要件のみを有することを意味する。
「含む」および「包含する」という用語は、構成要件に限定されず、記載されていない要素を排除しないことを意味する。
以下、本発明について実施形態を示しながら説明する。本明細書の全体にわたり、単数形の表現は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。従って、単数形の冠詞(例えば、英語の場合は「a」、「an」、「the」など)は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。
また、本明細書において使用される用語は、特に言及しない限り、当上記分野で通常用いられる意味で用いられることが理解されるべきである。したがって、他に定義されない限り、本明細書中で使用される全ての専門用語および科学技術用語は、本発明の属する分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。矛盾する場合、本明細書(定義を含めて)が優先する。
【0022】
本明細書の式(II)で示される化合物において、R、R、R3c、R5aおよびR5bで使用される各用語の定義は、国際公開第2023/195529号を援用することができ、その開示を参照により本明細書に組み込む。また、各用語において使用される置換基の定義についても同様に、国際公開第2023/195529号を援用することができ、その開示を参照により本明細書に組み込む。
【0023】
式(I-1)または式(II)で示される化合物は、特定の異性体に限定するものではなく、全ての可能な異性体(例えば、ケト-エノール異性体、イミン-エナミン異性体、ジアステレオ異性体、光学異性体、回転異性体等)、ラセミ体またはそれらの混合物を含む。
【0024】
式(I-1)または式(II)で示される化合物の一つ以上の水素、炭素および/または他の原子は、それぞれ水素、炭素および/または他の原子の同位体で置換され得る。そのような同位体の例としては、それぞれH、H、11C、13C、14C、15N、18O、17O、31P、32P、35S、18F、123Iおよび36Clのように、水素、炭素、窒素、酸素、リン、硫黄、フッ素、ヨウ素および塩素が包含される。式(I-1)または式(II)で示される化合物は、そのような同位体で置換された化合物(例えば、重水素変換体等)も包含する。該同位体で置換された化合物は、医薬品としても有用である。式(I-1)または式(II)で示される化合物は、該同位体に含まれる放射性同位体で置換されたすべての放射性標識体を包含する。また該「放射性標識体」を製造するための「放射性標識化方法」も本発明に包含され、該「放射性標識体」は、代謝薬物動態研究、結合アッセイにおける研究および/または診断のツールとして有用である。
【0025】
式(I-1)で示される化合物の重水素変換体としては、以下の構造が挙げられる。
【化42】

【化43】

【化44】

【化45】
【0026】
式(I-1)または式(II)で示される化合物の放射性標識体は、当該技術分野で周知の方法で調製できる。例えば、式(I-1)または式(II)で示されるトリチウム標識化合物は、トリチウムを用いた触媒的脱ハロゲン化反応によって、式(I-1)または式(II)で示される特定の化合物にトリチウムを導入することで調製できる。この方法は、適切な触媒、例えばPd/Cの存在下、塩基の存在下または非存在下で、式(I-1)または式(II)で示される化合物が適切にハロゲン置換された前駆体とトリチウムガスとを反応させることを包含する。トリチウム標識化合物を調製するための他の適切な方法は、“Isotopes in the Physical and Biomedical Sciences,Vol.1,Labeled Compounds (Part A),Chapter 6 (1987年)”を参照することができる。14C-標識化合物は、14C炭素を有する原料を用いることによって調製できる。
【0027】
本発明の式(I-1)または式(II)で示される化合物は、プロドラッグを形成する場合があり、本発明はそのような各種のプロドラッグも包含する。プロドラッグは、化学的又は代謝的に分解できる基を有する本発明化合物の誘導体であり、加溶媒分解により又は生理学的条件下でインビボにおいて薬学的に活性な本発明化合物となる化合物である。プロドラッグは、生体内における生理条件下で酵素的に酸化、還元、加水分解等を受けて式(I-1)または式(II)で示される化合物に変換される化合物、胃酸等により加水分解されて式(I-1)または式(II)で示される化合物に変換される化合物等を包含する。適当なプロドラッグ誘導体を選択する方法及び製造する方法は、例えば“Design of Prodrugs, Elsevier, Amsterdam, 1985”に記載されている。プロドラッグは、それ自身が活性を有する場合がある。
【0028】
本明細書中で用いる「式(I-1)または式(II)で示される化合物」は、塩、共結晶、又はそれらの溶媒和物を形成する場合がある。
本明細書中で用いる「式(I-1)または式(II)で示される化合物、その製薬上許容される塩、又はそれらの溶媒和物」には、そのような各種の塩、共結晶、及びそれらの溶媒和物も包含する。
【0029】
本明細書中で用いる「塩」とは、例えば「式(I-1)または式(II)で示される化合物」とカウンター分子が同一結晶格子内に規則正しく配列することを意味し、任意の数のカウンター分子を含んでいても良い。結晶格子中で化合物とカウンター分子との間でプロトン移動することにより、イオン結合を介するものをいう。
【0030】
本明細書中で用いる「共結晶」とは、カウンター分子(co-former分子)が同一結晶格子内に規則的に配列することを意味し、任意の数のカウンター分子(co-former分子)を含んでいても良い。また、共結晶とは、化合物とカウンター分子(co-former分子)との分子間相互作用が、水素結合、ファンデルワールス力などの、非共有結合性かつ非イオン性の化学的相互作用を介するものをいう。
【0031】
一般的に、塩は化合物とカウンター分子との間でプロトン移動が生じるとされているが、場合によっては、プロトン移動が完全ではない場合があることも知られている。該状態は、真の塩(true salt)ではないため、共結晶と呼ばれることもある。プロトン移動は、温度によって連続的に変わる場合があることも知られている。
従って、本明細書中で用いる「式(I-1)または式(II)で示される化合物の製薬上許容される塩」は、共結晶を包含し、式(I-1)または式(II)で示される化合物の製薬上許容される塩又は共結晶を指す。
【0032】
本明細書における一態様は、式(I-1)または式(II)で示される化合物と、フッ化水素酸、塩酸、臭化水素酸、オルトリン酸、ヨウ化水素酸、硝酸、リン酸、ホウ酸、硫酸メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、トリフルオロメチルベンゼンスルホン酸、クロロベンゼンスルホン酸、メトキシベンゼンスルホン酸、酢酸、プロピオン酸、乳酸、クエン酸、フマル酸、マロン酸、リンゴ酸、コハク酸、サリチル酸、マレイン酸、グリセロリン酸、酒石酸、安息香酸、グルタミン酸、アスパラギン酸、2-ナフタレンスルホン酸、ヘキサン酸、アセチルサリチル酸等との製薬上許容される塩又は共結晶である。
【0033】
塩形成及び共結晶形成の研究は、その化学構造を変更することなく、薬剤の物理化学的特徴及び得られる生物学的特徴を変更する手段を提供する。塩形成及び共結晶形成は、薬剤の特性に劇的な影響を及ぼし得る。適切な、塩又は共結晶の選択においては、吸湿性、安定性、溶解性及び加工特性も重要な観点である。塩又は共結晶の溶解性は、薬剤として使用するためのその適性に影響を及ぼし得る。水性溶解性が低い場合、in vivo投与における溶解速度は吸収過程に律速され、低いバイオアベイラビリティーをもたらし得る。また、水溶性が低いことにより、注射による投与が困難となり得るため、適切な投与経路の選択に制限が生じ得る。
【0034】
「式(I-1)または式(II)で示される化合物」は、水との溶媒和物(すなわち、水和物)又は一般的な有機溶媒との溶媒和物を形成することができる。「式(I-1)または式(II)で示される化合物の製薬上許容される塩」は、水との溶媒和物(すなわち、水和物)又は一般的な有機溶媒との溶媒和物を形成することができる。
【0035】
本明細書中で用いる「溶媒和物」とは、例えば「式(I-1)または式(II)で示される化合物」に対し、任意の数の溶媒分子と規則正しく配列しているものをいう。
溶媒分子としては、例えば、酢酸エチル、水、エタノール、アセトン、1,1-ジエトキシプロパン、1,1-ジメトキシメタン、2,2-ジメトキシプロパン、イソオクタン、イソプロピルエーテル、メチルイソプロピルケトン、メチルテトラヒドロフラン、石油エーテル、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、酢酸、アニソール、1-ブタノール、2-ブタノール、酢酸n-ブチル、t-ブチルメチルエーテル、クメン、ジメチルスルホキシド、ジエチルエーテル、ギ酸エチル、ギ酸、ヘプタン、酢酸イソブチル、酢酸イソプロピル、酢酸メチル、3-メチル-1-ブタノール、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、2-メチル-1-プロパノール、ペンタン、1-ペンタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、酢酸プロピル、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、クロロベンゼン、クロロホルム、シクロヘキサン、1,2-ジクロロエテン、ジクロロメタン、1,2-ジメトキシエタン、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、1,4-ジオキサン、2-エトキシエタノール、エチレングリコール、ホルムアミド、ヘキサン、メタノール、2-メトキシエタノール、メチルブチルケトン、メチルシクロヘキサン、N-メチルピロリドン、ニトロメタン、ピリジン、スルホラン、テトラリン、トルエン、1,1,2-トリクロロエテン、キシレン及びt-ブタノールが挙げられる。
好ましくは、酢酸エチル、水、エタノール、アセトン、1,1-ジエトキシプロパン、1,1-ジメトキシメタン、2,2-ジメトキシプロパン、イソオクタン、イソプロピルエーテル、メチルイソプロピルケトン、メチルテトラヒドロフラン、石油エーテル、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、酢酸、アニソール、1-ブタノール、2-ブタノール、酢酸n-ブチル、t-ブチルメチルエーテル、クメン、ジメチルスルホキシド、ジエチルエーテル、ギ酸エチル、ギ酸、ヘプタン、酢酸イソブチル、酢酸イソプロピル、酢酸メチル、3-メチル-1-ブタノール、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、2-メチル-1-プロパノール、ペンタン、1-ペンタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、酢酸プロピル及びテトラヒドロフランが挙げられる。
より好ましくは、酢酸エチル、水、エタノール、アセトン、1,1-ジエトキシプロパン、1,1-ジメトキシメタン、2,2-ジメトキシプロパン、イソオクタン、イソプロピルエーテル、メチルイソプロピルケトン、メチルテトラヒドロフラン、石油エーテル、トリクロロ酢酸及びトリフルオロ酢酸などが挙げられる。
また、「式(I-1)または式(II)で示される化合物」を、大気中に放置することにより、水分を吸収し、吸着水が付着する場合や、水和物を形成する場合がある。
【0036】
なお、本明細書中で用いる「結晶」とは、構成する原子、イオン、分子などが三次元的に規則正しく配列した固体を意味し、そのような規則正しい内部構造を持たない非晶質固体とは区別される。本明細書中で用いる結晶は、単結晶、双晶、多結晶などであってもよい。
さらに、「結晶」には、組成が同一でありながら結晶中の配列が異なる「結晶多形」が存在することがあり、それらを含めて「結晶形態」という。
「式(I-1)または式(II)で示される化合物、その製薬上許容される塩、又はそれらの溶媒和物」は、それらの結晶多形を包含する。
本発明に係る化合物の結晶は重水素変換体であってもよい。本明細書中で用いる結晶は同位元素(例、H、H、14C、35S、125I等)で標識されていてもよい。
結晶形態及び/又は結晶化度は、例えば、X線回折、ラマン分光、赤外吸収スペクトル、固体NMRなどの分光法によって確認することができる。また、結晶の物理的特性は、示差走査熱量測定、水分吸脱着測定、溶解特性などの多くの技術によって確認することができる。
【0037】
本明細書における一態様は、式(I-1)で示される化合物の無水物結晶である。
本明細書中で用いる「無水物」は、「無溶媒和物」、「非溶媒和物」、「無水和物」及び「非水和物」と同義である。
式(I-1)で示される化合物の無水物結晶は、結晶水の理論含量は0重量%ある。ただし、水分量及び/又は溶媒量の分析においては、結晶表面に付着した付着水及び/又は付着溶媒の影響を受けて、結晶水の理論含量よりも高い値をとることがある。
【0038】
本明細書における一態様は、粉末X線回折パターン(CuKα線、λ=1.5418Å)において、回折角度(2θ):6.5°±0.2°、15.6°±0.2°、17.4°±0.2°、19.9°±0.2°及び20.3°±0.2°に特徴的なピークを有する、式(I-1)で示される化合物の無水物結晶である。
【0039】
本明細書における一態様は、CuKα線(λ=1.5418Å)、298K(25℃)で単結晶回折実験を実施した場合、
以下の結晶学的データ:
空間群: Pbca
a=14.67ű0.05Å
b=11.83ű0.05Å
c=27.10ű0.05Å
α=90°
β=90°
γ=90°
により特徴付けられる、式(I-1)で示される化合物の無水物結晶である。
【0040】
本明細書における一態様は、示差走査熱量測定(DSC)において、融点が261.3℃±2℃である、式(I-1)で示される化合物の無水物結晶である。
本明細書における一態様は、示差熱-熱重量同時測定(TG/DTA)において、融点が265.6℃±2℃である、式(I-1)で示される化合物の無水物結晶である。
【0041】
本明細書における一態様は、ラマンスペクトルにおいて、415.2cm-1±2cm-1、502.7cm-1±2cm-1、1431.4cm-1±2cm-1、1714.8cm-1±2cm-1及び3065.4cm-1±2cm-1に特徴的なピークを有する、式(I-1)で示される化合物の無水物結晶である。
【0042】
(粉末X線回折(XRPD))
粉末X線回折(XRPD)は、固体の結晶形態および結晶性を測定するための最も感度の良い分析法の1つである。X線が結晶に照射されると、結晶格子面で反射し、互いに干渉しあい、構造の周期に対応した秩序だった回折線を示す。一方、非晶質固体については、通常、その構造の中に秩序だった繰返し周期をもたないため、回折現象は起こらず、特徴のないブロードなXRPDパターン(ハローパターンとも呼ばれる)を示す。
【0043】
式(I-1)または式(II)で示される化合物の結晶形態は、粉末X線回折パターンおよび特徴的な回折ピークにより識別可能である。式(I-1)または式(II)で示される化合物の結晶形態は、特徴的な回折ピークの存在によって他の結晶形態と区別することができる。
本明細書中で用いる特徴的な回折ピークは、観測された回折パターンから選択されるピークである。特徴的な回折ピークは、好ましくは回折パターンにおける約10本、より好ましくは約5本、さらに好ましくは約3本から選択される。
複数の結晶を区別する上では、ピークの強度よりも、当該結晶で確認され、他の結晶では確認されないピークが、その結晶を特定する上で好ましい特徴的なピークとなる。そういった特徴的なピークであれば、一つまたは二つのピークでも、当該結晶を特徴付けることができる。測定して得られたチャートを比較し、これらの特徴的なピークが一致すれば、粉末X線回折パターンが実質的に一致するといえる。
【0044】
一般に、粉末X線回折における回折角度(2θ)は±0.2°の範囲内で誤差が生じ得るため、粉末X線回折の回折角度の値は±0.2°程度の範囲内の数値も含むものとして理解される必要がある。したがって、粉末X線回折におけるピークの回折角度が完全に一致する結晶だけでなく、ピークの回折角度が±0.2°程度の誤差で一致する結晶も本発明に含まれる。
【0045】
以下の表および図において表示されるピークの強度は、一般に、多くの因子、例えばX線ビームに対する結晶の選択配向の効果、粗大粒子の影響、分析される物質の純度またはサンプルの結晶化度によって変動し得ることが知られている。また、ピーク位置についても、サンプル高の変動に基づいてシフトし得る。さらに、異なる波長を使用して測定するとブラッグ式(nλ=2dsinθ)に従って異なるシフトが得られるが、このような別の波長の使用により得られる別のXRPDパターンも、本発明の範囲に含まれる。
【0046】
(単結晶構造解析)
結晶を特定する方法の一つで、当該結晶における結晶学的パラメーター、さらに、原子座標(各原子の空間的な位置関係を示す値)および3次元構造モデルを得ることができる。桜井敏雄著「X線構造解析の手引き」裳華房発行(1983年)、Stout & Jensen著 X-Ray Structure Determination: A Practical Guide, Macmillan Co., New York (1968)などを参照。本発明のような複合体、塩、光学異性体、互変異性体、幾何異性体の結晶の構造を同定する際には、単結晶構造解析が有用である。
【0047】
(ラマン分光法)
ラマンスペクトルは分子または複合体系の振動の特徴を示す。その起源は分子と光線を含む光の粒子である光子との間の非弾性的な衝突にある。分子と光子の衝突はエネルギーの交換をもたらし、その結果エネルギーが変化し、これにより光子の波長が変化する。即ち、ラマンスペクトルは、対象分子に光子が入射されたときに発せられる、極めて波長の狭いスペクトル線であるため、光源としてはレーザー等が用いられる。各ラマン線の波長は入射光からの波数シフトにより表示され、これはラマン線と入射光の波長の逆数の間の差である。ラマンスペクトルは分子の振動状態を測定するものであり、これはその分子構造により決定される。
一般に、ラマンスペクトルピーク(cm-1)は±2cm-1の範囲内で誤差が生じ得るから、上記のラマンスペクトルピークの値は±2cm-1程度の範囲内の数値も含むものとして理解される必要がある。したがって、ラマンスペクトルにおけるラマンスペクトルピークが完全に一致する結晶だけでなく、ラマンスペクトルピークが±2cm-1程度の誤差で一致する結晶も本発明に含まれる。
【0048】
(示差走査熱量測定法(DSC))
DSCは、熱分析の主要な測定方法の一つで、原子・分子の集合体としての物質の熱的性質を測定する方法である。
DSCにより、医薬活性成分の温度または時間に係る熱量の変化を測定し、得られたデータを温度または時間に対してプロットすることにより示差走査熱量曲線が得られる。示差走査熱量曲線より、医薬活性成分が融解する際のオンセット温度、融解に伴う吸熱ピーク曲線の最大値およびエンタルピーに関する情報を得ることができる。
DSCについて、観察される温度は、温度変化速度ならびに用いる試料調製技法および特定の装置に依存し得ることが知られている。したがって、DSCにおける「融点」とは試料の調製技法の影響を受けにくいオンセット温度のことを指す。示差走査熱量曲線から得られるオンセット温度における誤差範囲はおよそ±2℃である。結晶の同一性の認定においては、融点のみならず全体的なパターンが重要であり、測定条件や測定機器によって多少は変化し得る。
【0049】
(示差熱-熱重量同時測定法(TG/DTA))
TG/DTAは、熱分析の主要な測定方法の一つで、原子・分子の集合体としての物質の重量および熱的性質を測定する方法である。
TG/DTAは、医薬活性成分の温度または時間に係る重量および熱量の変化を測定する方法であり、得られたデータを温度または時間に対してプロットすることにより、TG(熱重量)およびDTA(示差熱)曲線が得られる。TG/DTA曲線より、医薬活性成分の分解、脱水、酸化、還元、昇華、蒸発に関する重量および熱量変化の情報を得ることができる。
TG/DTAについて、観察される温度、重量変化は、温度変化速度ならびに用いる試料調製技法および特定の装置に依存し得ることが知られている。したがって、TG/DTAにおける「融点」とは試料の調製技法の影響を受けにくいオンセット温度のことを指す。結晶の同一性の認定においては、融点のみならず全体的なパターンが重要であり、測定条件や測定機器によって多少は変化し得る。
【0050】
本発明に係る化合物は、コロナウイルス3CLプロテアーゼ阻害活性を有するため、コロナウイルス3CLプロテアーゼが関与する疾患の治療剤および/または予防剤として有用である。
本発明において「治療剤および/または予防剤」という場合、症状改善剤を包含する。
本発明において、「予防」という場合、SARS-CoV-2の暴露後の発症を抑制することを包含する。
本発明において「予防」という場合、SARS-CoV-2の暴露後であって、発症抑制を必要とする個体に本発明医薬組成物を投与することにより、SARS-CoV-2によって引き起こされる症状の発症を抑制することを包含する。
本発明において、「予防」という場合、SARS-CoV-2の暴露前予防を包含する。
本発明において「予防」という場合、SARS-CoV-2の暴露前であって、発症抑制を必要とする個体に本発明医薬組成物を投与することにより、SARS-CoV-2によって引き起こされる症状の発症を抑制することを包含する。
本発明について「予防」という場合、SARS-CoV-2の暴露後の発症および重症化を抑制することを包含する。
【0051】
コロナウイルス3CLプロテアーゼが関与する疾患としては、ウイルス感染症が挙げられ、好ましくはコロナウイルス感染症が挙げられる。
一つの態様として、コロナウイルスとしては、ヒトに感染するコロナウイルスが挙げられる。ヒトに感染するコロナウイルスとしては、HCoV-229E、HCoV-NL63、HCoV-HKU1、HCoV-OC43、SARS-CoV、MERS-CoV、および/またはSARS-CoV-2が挙げられる。
一つの態様として、コロナウイルスとしては、アルファコロナウイルスおよび/またはベータコロナウイルス、より好ましくはベータコロナウイルス、さらに好ましくはサルベコウイルスが挙げられる。
一つの態様として、アルファコロナウイルスとしては、HCoV-229EおよびHCoV-NL63が挙げられる。特に好ましくは、HCoV-229Eが挙げられる。
一つの態様として、ベータコロナウイルスとしては、HCoV-HKU1、HCoV-OC43、SARS-CoV、MERS-CoV、および/またはSARS-CoV-2が挙げられる。好ましくはHCoV-OC43またはSARS-CoV-2、特に好ましくはSARS-CoV-2が挙げられる。
一つの態様として、ベータコロナウイルスとしては、ベータコロナウイルスA系統(β-coronavirus lineage A)、ベータコロナウイルスB系統(β-coronavirus lineage B)、およびベータコロナウイルスC系統(β-coronavirus lineage C)が挙げられる。より好ましくは、ベータコロナウイルスA系統(β-coronavirus lineage A)、およびベータコロナウイルスB系統(β-coronavirus lineage B)、特に好ましくはベータコロナウイルスB系統(β-coronavirus lineage B)が挙げられる。
ベータコロナウイルスA系統(β-coronavirus lineage A)としては、例えばHCoV-HKU1およびHCoV-OC43、好ましくは、HCoV-OC43が挙げられる。ベータコロナウイルスB系統(β-coronavirus lineage B)としては、例えばSARS-CoVおよびSARS-CoV-2、好ましくはSARS-CoV-2が挙げられる。ベータコロナウイルスC系統(β-coronavirus lineage C)としては、好ましくはMERS-CoVが挙げられる。
一つの態様として、コロナウイルスとしては、HCoV-229E、HCoV-OC43、および/またはSARS-CoV-2、特に好ましくはSARS-CoV-2が挙げられる。
なお、ウイルスは増殖や感染を繰り返す中で変異することが一般的に知られている。上記コロナウイルスには、本発明に係る化合物が、コロナウイルス3CLプロテアーゼ阻害活性を発揮することができる株である限り、当該分野で公知の変異株のみならず、今後出現する変異株も含まれる。SARS-CoV-2の公知の変異株としては、例えば、本明細書の実施例で使用した変異株が挙げられる。
コロナウイルス感染症としては、HCoV-229E、HCoV-NL63、HCoV-OC43、HCoV-HKU1、SARS-CoV、MERS-CoV、および/またはSARS-CoV-2による感染症が挙げられる。好ましくは、HCoV-229E、HCoV-OC43、および/またはSARS-CoV-2による感染症、特に好ましくは、SARS-CoV-2による感染症が挙げられる。
コロナウイルス感染症としては、特に好ましくは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が挙げられる。
【0052】
新型コロナウイルス感染者の重症度分類は、例えば以下に例示される。(参考:新型コロナウイルス感染症COVID-19診療の手引き第10.0版(厚生労働省))
(軽症)
酸素飽和度が96%以上である。臨床状態は、呼吸器症状はない、または咳のみで呼吸困難はなく、いずれの場合であっても肺炎所見を認めない。
(中等症I)
酸素飽和度が96%未満~93%超である。呼吸困難があり、肺炎所見がある。
(中等症II)
酸素飽和度が93%未満である。呼吸不全があり、酸素投与が必要である。
(重症)
ICUに入室している、または、人工呼吸器が必要である。
上記の分類は日本における重症度分類の定義であり、例えば、中国や米国NIHの重症度分類を援用することが可能である。
また、無症候のSARS-CoV-2感染者とは、無症状病原体保有者を意味する。例えば、COVID-19症状の14症状または12症状が認められていない者が挙げられる。
(COVID-19の14症状:けん怠感 (疲労感)、筋肉痛又は体の痛み、頭痛、悪寒/発汗、熱っぽさ又は発熱、味覚異常、嗅覚異常、鼻水又は鼻づまり、喉の痛み、咳、息切れ(呼吸困難)、吐き気、嘔吐、下痢)
【0053】
本明細書中、COVID-19の12症状とは、(けん怠感 (疲労感)、筋肉痛又は体の痛み、頭痛、悪寒/発汗、熱っぽさ又は発熱、鼻水又は鼻づまり、喉の痛み、咳、息切れ (呼吸困難)、吐き気、嘔吐、下痢)が挙げられる。
【0054】
本明細書中、重症化抑制とは、無症候のSARS-CoV-2感染者が、軽症、中等症I、中等症IIまたは重症に分類される重症度に引き上げられることを抑制することを含む。
本明細書中、重症化抑制とは、無症候のSARS-CoV-2感染者または軽症のSARS-CoV-2感染者が、中等症I、中等症IIまたは重症に分類される重症度に引き上げられることを抑制することを含む。
本明細書中、重症化抑制とは、無症候のSARS-CoV-2感染者、軽症のSARS-CoV-2感染者または中等症IのSARS-CoV-2感染者が、中等症IIまたは重症に分類される重症度に引き上げられることを抑制することを含む。
本明細書中、重症化抑制とは、無症候のSARS-CoV-2感染者、軽症のSARS-CoV-2感染者、中等症IのSARS-CoV-2感染者または中等症IIのSARS-CoV-2感染者が、重症に分類される重症度に引き上げられることを含む。
本明細書中、重症化抑制とは、本剤のウイルス増殖抑制効果を介して、SARS-CoV-2感染者の入院や死亡リスクが減少することを含む。
本明細書中、重症化抑制とは、本剤のウイルス増殖抑制効果を介して、SARS-CoV-2感染者の肺での炎症を軽減することを含む。
本明細書中、重症化抑制とは、本剤のウイルス増殖抑制効果を介して、SARS-CoV-2のウイルス感染によって引き起こされる肺炎を抑制することを含む。
本明細書中、重症化抑制とは、本剤のウイルス増殖抑制効果を介して、SARS-CoV-2のウイルス感染によって引き起こされる宿主の過剰な免疫反応を抑制することを含む。
【0055】
一つの実施態様として、本発明の医薬組成物は、SARS-CoV-2感染者のうち、重症化リスク因子を少なくとも一つ有する感染者に投与することが挙げられる。重症化に関連する基礎疾患などについては、米国CDCまとめを参照することができる(https://www.cdc.gov/coronavirus/2019-ncov/hcp/clinical-care/underlyingconditions.html)。
【0056】
一つの実施態様として、本発明の医薬組成物は、SARS-CoV-2感染者のうち、次に示す重症化リスク因子を少なくとも一つ有する感染者に投与することが挙げられる。
重症化リスク因子:悪性腫瘍、代謝疾患、心血管疾患、呼吸器疾患、肝疾患、腎疾患、精神神経疾患、運動不足、妊娠、喫煙、小児、遺伝性疾患、免疫不全
【0057】
一つの実施態様として、本発明の医薬組成物は、重症化リスク因子を少なくとも一つ有する感染者に投与され、COVID-19症状の重症化を抑制するために用いられる。
【0058】
一つの実施態様として、本発明の医薬組成物は、SARS-CoV-2による肺炎を有する患者に用いられる。
【0059】
本明細書において、「予防」とは、SARS-CoV-2の暴露後の発症抑制を含む。
例えば、新型コロナウイルス感染症を発症している患者の同居家族または共同生活者に対し、本発明の医薬組成物を投与することができる。
例えば、新型コロナウイルス感染症患者に接触後、すみやかに(例:72時間以内)接触者に対し、本発明の医薬組成物を投与することができる。
例えば、無症候のSARS-CoV-2感染者に本発明の医薬組成物を投与し、発症を抑制することができる。
また、「予防」とは、SARS-CoV-2の暴露前予防を含む。
例えば、COVID-19流行期等、SARS-CoV-2の感染リスクがある場合において、医療従事者、高齢者、重症化リスク因子を有する人に対し、本発明の医薬組成物を投与することができる。
【0060】
(式(I-1)で示される化合物の製造法)
式(I-1)で示される化合物は、例えば、下記に示す一般的合成法によって製造することができる。抽出、精製等は、通常の有機化学の実験で行う処理を行えばよい。当該分野において公知の手法を参考にしながら合成することができる。抽出、精製等は、通常の有機化学の実験で行う処理を行えばよい。
式(I-1)で示される化合物は、当該分野において公知の手法を参考にしながら製造することができる。例えば、WO2012/020742、WO2013/118855、WO2023/195529およびWO2023/195530等を参考にして製造することができる。
(式(II)で示される化合物の製造法)
式(II)で示される化合物は、例えば、WO2023/195529を参考にして製造することができる。
【0061】
本発明に係る化合物(例:式(I-1)で示される化合物、式(I-2)で示される化合物および式(II)で示される化合物)は、コロナウイルス3CLプロテアーゼ阻害活性を有するため、ウイルス感染症の治療剤および/または予防剤として有用である。
さらに本発明に係る化合物は、医薬としての有用性を備えており、好ましくは、下記のいずれか、または複数の優れた特徴を有している。
a)CYP酵素(例えば、CYP1A2、CYP2C9、CYP2C19、CYP2D6、CYP3A4等)に対する阻害作用が弱い。
b)高いバイオアベイラビリティー、適度なクリアランス等良好な薬物動態を示す。
c)代謝安定性が高い。
d)CYP酵素(例えば、CYP3A4)に対し、本明細書に記載する測定条件の濃度範囲内で不可逆的阻害作用を示さない。
e)変異原性を有さない。
f)心血管系のリスクが低い。
g)高い溶解性を示す。
h)タンパク質非結合率(fu値)が高い。
i)高いコロナウイルス3CLプロテアーゼ選択性を有している。
j)高いコロナウイルス増殖阻害活性を有している。例えば、ヒト血清(HS)またはヒト血清アルブミン(HSA)添加下において、高いコロナウイルス増殖阻害活性を有している。
k)3CLプロテアーゼ阻害剤耐性ウイルスに対しても、高い増殖阻害活性を有する。
コロナウイルス増殖阻害剤としては、例えば後述のCPE抑制効果確認試験(SARS-CoV-2)において、例えばEC50が10μM以下、好ましくは1μM以下、より好ましくは100nM以下である態様が挙げられる。
【0062】
本発明の医薬組成物は、経口的、非経口的のいずれの方法でも投与することができる。非経口投与の方法としては、経皮、皮下、静脈内、動脈内、筋肉内、腹腔内、経粘膜、吸入、経鼻、点眼、点耳、膣内投与等が挙げられる。
【0063】
経口投与の場合は常法に従って、内用固形製剤(例えば、錠剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤、丸剤、フィルム剤等)、内用液剤(例えば、懸濁剤、乳剤、エリキシル剤、シロップ剤、リモナーデ剤、酒精剤、芳香水剤、エキス剤、煎剤、チンキ剤等)等の通常用いられるいずれの剤型に調製して投与すればよい。錠剤は、糖衣錠、フィルムコーティング錠、腸溶性コーティング錠、徐放錠、トローチ錠、舌下錠、バッカル錠、チュアブル錠または口腔内崩壊錠であってもよく、散剤および顆粒剤はドライシロップであってもよく、カプセル剤は、ソフトカプセル剤、マイクロカプセル剤または徐放性カプセル剤であってもよい。
【0064】
非経口投与の場合は、注射剤、点滴剤、外用剤(例えば、点眼剤、点鼻剤、点耳剤、エアゾール剤、吸入剤、ローション剤、注入剤、塗布剤、含嗽剤、浣腸剤、軟膏剤、硬膏剤、ゼリー剤、クリーム剤、貼付剤、パップ剤、外用散剤、坐剤等)等の通常用いられるいずれの剤型でも好適に投与することができる。注射剤は、O/W、W/O、O/W/O、W/O/W型等のエマルジョンであってもよい。
【0065】
本発明に係る化合物の有効量にその剤型に適した賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤等の各種医薬用添加剤を必要に応じて混合し、医薬組成物とすることができる。さらに、該医薬組成物は、本発明に係る化合物の有効量、剤型および/または各種医薬用添加剤を適宜変更することにより、小児用、高齢者用、重症患者用または手術用の医薬組成物とすることもできる。例えば、小児用医薬組成物は、新生児(出生後4週未満)、乳児(出生後4週~1歳未満)幼児(1歳以上7歳未満)、小児(7歳以上15歳未満)もしくは15歳~18歳の患者に投与されうる。例えば、高齢者用医薬組成物は、65歳以上の患者に投与されうる。
【0066】
本発明の医薬組成物の投与量は、患者の年齢、体重、疾病の種類や程度、投与経路等を考慮した上で設定することが望ましいが、経口投与する場合、本発明に係る化合物として、通常0.01~100mg/kg/日であり、好ましくは0.05~50mg/kg/日の範囲内である。非経口投与の場合には投与経路により大きく異なるが、本発明に係る化合物として、通常0.005~200mg/kg/日であり、好ましくは0.01~100mg/kg/日の範囲内である。これを1日1回~数回に分けて投与すれば良い。
【0067】
本発明に係る化合物は、該化合物の作用の増強または該化合物の投与量の低減等を目的として、例えば、他の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療薬(該治療薬としては、承認を受けた薬剤、および開発中または今後開発される薬剤を含む)(以下、併用薬剤と称する)と組み合わせて用いてもよい。この際、本発明に係る化合物と併用薬剤の投与時期は限定されず、これらを投与対象に対し、同時に投与してもよいし、時間差をおいて投与してもよい。さらに、本発明に係る化合物と併用薬剤とは、それぞれの活性成分を含む2種類以上の製剤として投与されてもよいし、それらの活性成分を含む単一の製剤として投与されてもよい。
【0068】
併用薬剤の投与量は、臨床上用いられている用量を基準として適宜選択することができる。また、本発明に係る化合物と併用薬剤の配合比は、投与対象、投与ルート、対象疾患、症状、組み合わせ等により適宜選択することができる。例えば、投与対象がヒトである場合、本発明に係る化合物1重量部に対し、併用薬剤を0.01~100重量部用いればよい。
【実施例
【0069】
以下に実施例および参考例、ならびに試験例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらにより限定されるものではない。
【0070】
また、本明細書中で用いる略語は以下の意味を表す。
FBS:ウシ胎児血清
mM:mmol/L
nM:nmol/L
μM:μmol/L
【0071】
(化合物の同定方法)
各実施例で得られたNMR分析は400MHzで行い、DMSO-d、CDClを用いて測定した。また、NMRデータを示す場合は、測定した全てのピークを記載していない場合が存在する。
明細書中にRTとあるのは、LC/MS:液体クロマトグラフィー/質量分析でのリテンションタイムを表し、以下の条件で測定した。
(測定条件A)
カラム:ACQUITY UPLC(登録商標)BEH C18 (1.7μm i.d.2.1x50mm) (Waters)
流速:0.8mL/分
UV検出波長:254nm
移動相:[A]は0.1%ギ酸含有水溶液、[B]は0.1%ギ酸含有アセトニトリル溶液
グラジエント:3.5分間で5%-100%溶媒[B]のリニアグラジエントを行った後、0.5分間、100%溶媒[B]を維持した。
【0072】
粉末X線回折実験(XRPD)
日本薬局方の一般試験法に記載された粉末X線回折測定法に従い、実施例で得られた、固体形態(結晶)の粉末X線回折測定を行った。測定条件を以下に示す。
測定条件1:
粉末X線回折装置:リガク社製SmartLab
測定法:反射法
使用波長:CuKα線(λ=1.5418Å)
管電流:200mA
管電圧:45kV
試料プレート:アルミニウム
X線の入射角:2.5°
サンプリング幅:0.02°
検出器:HyPix-3000(2次元検出モード)
【0073】
単結晶構造解析の測定と解析方法
実施例で得られた結晶の単結晶構造解析を行った。測定条件及び解析方法を以下に示す。
(装置)
リガク社製 XtaLAB P200 MM007
(測定条件)
測定温度:25℃
温度コントローラ:リガク社製 試料吹付低温装置
使用波長:CuKα線(λ=1.5418Å)
ソフト:CrysAlisPro 1.171.39.46e (Rigaku Oxford Diffraction, 2018)
(データ処理)
ソフト:CrysAlisPro 1.171.39.46e (Rigaku Oxford Diffraction, 2018)
データはローレンツ及び偏光補正、吸収補正を行った。
(結晶構造解析)
直接法プログラムShelXT(Sheldrick, G.M.,2015)を用いて位相決定を行い、精密化はShelXL(Sheldrick, G.M.,2015)を用いて、full-matrix最小二乗法を実施した。非水素原子の温度因子はすべて異方性で精密化を行った。水素原子は、特に記載のない限りShelXLのデフォルトパラメータを用いて計算により導入し、riding atomとして取り扱った。また、水素原子は、等方性パラメーターで精密化を行った。
以下の構造図の作図には、PLATON(Spek,1991)/ORTEP(Johnson,1976)を使用した(30% PROBABILITY level)。
【0074】
ラマンスペクトルの測定
実施例で得られた結晶のラマンスペクトルの測定とベースライン補正を行った測定条件を以下に示す。
測定条件1
測定方法:顕微レーザーラマン分光法
レーザー波長:671nm
積算回数:1回
露光時間:1秒
【0075】
示差走査熱量測定(DSC)
実施例で得られた結晶のDSCの測定を行った。アルミニウムパンに試料を量り、簡易密封して測定した。測定条件を以下に示す。なお、示差走査熱量(DSC)による測定は±2℃の範囲内で誤差が生じうる。
装置:Discovery DSC/TA Instrument
測定温度範囲:-10℃-270℃
昇温速度:10℃/分
雰囲気:N 50mL/分
【0076】
示差熱-熱重量同時測定(TG/DTA)
実施例で得られた、固体形態(結晶)の示差熱-熱重量同時測定(TG/DTA)を行った。実施例で得られた試料を量り、アルミニウムパンにつめ、開放系にて測定した。測定条件は以下のとおりである。
装置:日立ハイテクノロジーズ TG/DTA STA7200RV
測定温度範囲:室温-350℃
昇温速度:10℃/分
【0077】
HPLC測定
機器:Agilent 1290 Infinity VL
カラム:Waters Acquity UPLC BEH C18、 1.7μm、2.1×100mm
カラム温度:40℃付近の一定温度
UV検出波長:300nm
移動相:[A]は0.1%ギ酸含有水溶液、[B]は0.1%ギ酸含有アセトニトリル溶液
グラジエント:1分間、20%溶媒[B]を維持し、32分間で20%-80%溶媒[B]のリニアグラジエントを行った後、7分間、20%溶媒[B]を維持した。
流量:0.4mL/分
注入量:3μL
【実施例1】
【0078】
化合物(I-1)の合成
【化46】

工程1 化合物3の合成
2.64mol/L n-ブチルリチウムのヘキサン溶液(31mL、82.4mmol)とテトラヒドロフラン(20mL)の混合溶液に、化合物1(12g、68.7mmol)のテトラヒドロフラン(70mL)溶液を-78℃で15分かけて滴下した。-78℃で1時間攪拌した。1.9mol/L 塩化亜鉛の2-メチルテトラヒドロフラン溶液(43mL、82.4mmol)を5分かけて滴下した。室温で2時間撹拌した。化合物2(9.1mL、75.6mmol)およびテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(4.0g、3.44mmol)を加え、80℃で1.5時間撹拌した。反応液を常温に冷却し、水(80mL)と2mol/L塩酸(40mL)を加えて酢酸エチルで抽出した。有機層を減圧濃縮し、得られた残渣にイソプロパノール(40mL)を加えた。沈殿物を濾取してイソプロパノールで洗浄した。風乾して化合物3(14.8g、49mmol)を得た。
H-NMR(CDCl)δ:3.95(s,3H)、4.05(s,3H)、7.18-7.23(m,2H)、7.35(d,J=6.8Hz,1H)
LC/MS(ESI):m/z=303、RT=2.70min、LC/MS測定条件A
【0079】
工程2 化合物4の合成
化合物3(14.8g、48.8mmol)に酢酸(40mL)と濃塩酸(41mL)を加え、110℃で5時間撹拌した。反応液を室温まで冷却した後に水(80ml)を加えた。沈殿物を濾取して水で洗浄した。風乾して化合物4(11.6g、42.2mmol)を得た。
H-NMR(DMSO-d)δ:7.31(ddd,J=8.8,4.9,2.1Hz,1H)、7.45(t,J=8.8Hz,1H)、7.53(dd,J=7.3,2.1Hz,1H)、11.57(s,1H)、12.24(brs,1H)
LC/MS(ESI):m/z=275、RT=1.81min、LC/MS測定条件A
【0080】
工程3 化合物5の合成
化合物4(1.00g、3.64mmol)、5-クロロピリジン-3-ボロン酸(1.14g、7.27mmol)、酢酸銅(II)(0.99g、5.45mmol)、アセトニトリル(10mL)、トリエチルアミン(5.04mL、36.4mmol)およびピリジン(7.34mL、91.0mmol)を混合し、溶液を常温で終夜撹拌した。反応液に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(5mL)を加えて、酢酸エチルで抽出した。有機層を水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過した。ろ液を濃縮し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム:メタノール=100:0~90:10)で精製し、溶媒を減圧留去した。得られた残渣を減圧乾燥し、化合物5(1.15g、2.97mmol、収率82%)を得た。
H-NMR(DMSO-d)δ:7.35-7.37(1H,m),7.49(1H,t,J=9.0Hz),7.54-7.56(1H,m),8.07(1H,t,J=2.1Hz),8.54(1H,d,J=2.0Hz),8.70(1H,d,J=2.3Hz).
LC/MS(ESI):m/z=386、RT=1.98min、LC/MS測定条件A
【0081】
工程4 化合物6の合成
化合物5(520mg、1.345mmol)、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(0.705mL、4.04mmol)、DMF(5.2mL)を混合した溶液に、2-ブロモアセトニトリル(269μL、4.04mmol)を加え、常温で終夜撹拌した。氷冷下で反応液に2mol/L塩酸(2mL)を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過した。ろ液を濃縮し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム:メタノール=100:0~99:1)で精製し、溶媒を減圧留去した。得られた残渣を減圧乾燥し、化合物6(291mg、0.684mmol、収率51%)を得た。
H-NMR(CDCl)δ:5.13(2H,s),7.23-7.24(2H,m),7.42(1H,d,J=7.3Hz),7.67(1H,t,J=2.1Hz),8.45(1H,d, J=2.3Hz),8.67(1H,d,J=2.3Hz).
LC/MS(ESI):m/z=425、RT=2.17min、LC/MS測定条件A
【0082】
工程5 化合物(I-1)の合成
化合物6(25.0mg、0.059mmol)、6,6-ジフルオロ-2-アザスピロ[3.3]ヘプタン トリフルオロ酢酸塩(17.4mg、0.070mmol)、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(20.5μL、0.117mmol)、DMF(0.5mL)を混合し、溶液を60℃で2時間撹拌した。反応液に水(2mL)を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過した。ろ液を濃縮し、酢酸エチル(0.05mL)、ヘキサン(0.125mL)およびジイソプロピルエーテル(0.125mL)を加えた。得られた沈殿物をろ取し、ジイソプロピルエーテルで洗浄した。得られた固体を減圧乾燥し、化合物(I-1)の無水物結晶(22.0mg、0.042mmol、収率72%)を得た。
H-NMR(CDCl)δ:2.75(4H,t,J=12.0Hz),4.02(4H,s),4.74(2H,s),7.16-7.18(2H,m),7.32-7.35(1H,m),7.65(1H,t,J=2.1Hz),8.43(1H,d,J=2.3Hz),8.61(1H,d,J=2.3Hz).
LC/MS(ESI):m/z=522、RT=2.27min、LC/MS測定条件A
【0083】
(式(I-1)で示される化合物の無水物結晶の粉砕)
実施例1で得られた、式(I-1)で示される化合物の無水物結晶について、1000μMメッシュで篩過した後、以下条件で粉砕を行った。
装置:A-Oジェットミル(株式会社セイシン企業)
供給方法:フィーダー
供給速度:20g/時間
粉砕圧:0.30MPa
供給圧:0.40MPa
【0084】
(式(I-1)で示される化合物の無水物結晶の粉末X線回折実験)
粉砕後の式(I-1)で示される化合物の無水物結晶について、上記記載の測定条件で粉末X線回折実験を行った。当該粉末X線回折パターンを図7に、粉末X線回折パターンのピークリストを図8に示す。以下、粉末X線回折パターンのピークリストの表中、Positionは2θ(°)、Intensityは強度を示す。
粉末X線回折パターンにおいて、回折角度(2θ):6.5°±0.2°、10.1°±0.2°、13.0°±0.2°、14.1°±0.2°、15.3°±0.2°、15.6°±0.2°、16.2°±0.2°、17.4°±0.2°、18.9°±0.2°、19.9°±0.2°、20.3°±0.2°、21.7°±0.2°、23.0°±0.2°、23.8°±0.2°、25.8°±0.2°、28.8°±0.2°及び30.6°±0.2°にピークが認められた。
式(I-1)で示される化合物の無水物結晶は、粉末X線回折パターンにおいて、回折角度(2θ): 6.5°±0.2°、15.6°±0.2°、17.4°±0.2°、19.9°±0.2°及び20.3°±0.2°に特徴的なピークを示した。
【0085】
(式(I-1)で示される化合物の無水物結晶の単結晶構造解析)
<単結晶の調製方法>
式(I-1)で示される化合物の結晶1mgに、400μLのメタノールを添加し、50℃に加熱して溶解させた。当該溶液を、1.5 mLのHPLCバイアルに分注して、HPLCバイアルの蓋をし、蓋にシリンジ針を刺して、室温にて静置した。溶媒蒸発法により単結晶を調製した。
<単結晶構造解析>
上記記載の方法で、単結晶回折実験及び解析を行った。なお、Cl1とCl7C、H5CAとH6CAはディスオーダーの関係にあるため、Cl1:Cl7C=0.75:0.25、H5CA:H6CA=0.25:0.75の占有率で解析した。
【0086】
当該単結晶構造解析の結果を以下に示す。R(I>2.00s(I))は0.0555であり、最終の差フーリエから電子密度の欠如も誤置もないことを確認した。
【0087】
結晶学的データを表1に示す。
【表1】

ここで、Vは単位格子体積、Zは単位格子中の分子数を意味する。
【0088】
非水素原子の原子分率座標x、y、z(Å×10)及び等価等方性温度因子U(eq)(Equivalent Isotropic Displacement Parameters、Å×10)を表2に示す。ここで、U(eq)は、直行化Uijテンソルの軌跡の3分の1として定義する。
なお、表2における非水素原子の番号は、それぞれ図9に記載された番号に対応している。
【表2】
【0089】
次に、水素原子の原子座標x、y、z(Å×10)及び等方性温度因子U(eq)(Isotropic Displacement Parameters、Å×10)を表3に示す。
【表3】
【0090】
当該結晶構造の非対称単位中の構造を図9に示す。
なお、図9に記載された非水素原子のラベル番号は、表2における非水素原子の番号に対応している。
【0091】
当該結晶構造は、非対称単位中に、式(I-1)で示される化合物1分子のみが存在していたため、式(I-1)で示される化合物の無水物結晶であると同定した。
【0092】
当該結晶構造から、Mercury(The Cambridge Crystallographic Data Centre, Ver.4.0.0)を用いて計算を行った粉末X線回折パターン(λ=1.5418Å)は、上記の粉末X線回折パターン(図7)と概ね一致していることを確認した。
【0093】
(式(I-1)で示される化合物の無水物結晶の示差走査熱量測定)
粉砕後の式(I-1)で示される化合物の無水物結晶を、アルミニウムパンに約2mg量り、上記記載の方法で測定を行った。その結果を図10に示す。オンセット温度が約261.3℃の吸熱ピークを示した。
【0094】
(式(I-1)で示される化合物の無水物結晶の示差熱-熱重量同時測定)
粉砕後の式(I-1)で示される化合物の無水物結晶について、上記記載の方法で測定を行った。その結果を図11に示す。オンセット温度が約265.6℃の吸熱ピークを示した。また、重量減少は確認されなかった。
【0095】
(式(I-1)で示される化合物の無水物結晶のラマンスペクトル測定)
粉砕後の式(I-1)で示される化合物の無水物結晶について、上記記載の測定条件1でラマンスペクトル測定を行った。その結果を図12に示す。また、主なラマンピークを以下に示す。
【表4】
式(I-1)で示される化合物の無水物結晶は、ラマンスペクトルにおいて、415.2cm-1±2cm-1、502.7cm-1±2cm-1、1431.4cm-1±2cm-1、1714.8cm-1±2cm-1、及び3065.4cm-1±2cm-1に特徴的なピークを示した。
【0096】
(式(I-1)で示される化合物の無水物結晶のHPLC測定)
粉砕後の式(I-1)で示される化合物の無水物結晶について、上記記載の方法で測定を行った。その結果を図13に示す(約96.5pa%)。
【実施例2】
【0097】
化合物(I-2)の合成
【化47】
【0098】
工程1 化合物8の合成
化合物7(2.6 g、14.2mmol)、DMF(13mL)およびメチルアルコール-O18(1.18mL、29.1mmol)を混合し、氷冷下で水素化ナトリウム(1.42g、35.4mmol)をゆっくり加えた。反応溶液を常温に昇温し、2時間撹拌した。反応溶液を氷浴中で冷却し、水(26mL)および酢酸エチル(26mL)を加えクエンチし、酢酸エチルで抽出した。有機層を減圧濃縮し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=10:0~9:1)で精製し、溶媒を減圧留去し、化合物8(1.57g、8.79mmol、収率62%)を得た。
LC/MS(ESI):m/z=179、RT=1.57min、LC/MS測定条件A
H-NMR(CDCl)δ:3.97(s,3H)、4.00(s,3H)、6.41(s,1H)
【0099】
工程2 化合物10の合成
化合物9(0.5g、3.43mmol)、重水(17.1mL、945mmol)および5mol/L DCl(0.69mL、3.43mol)を混合し180℃でマイクロウェーブを用いて30分加熱した。同様の操作を10回繰り返し、全ての反応溶液を混合し、酢酸エチル50mL、1mol/L水酸化ナトリウム溶液(51.5mL)を加え、酢酸エチルで抽出したのち、水、飽和食塩水で洗浄した。有機層を減圧濃縮し、化合物10(5.02g、34mmol、収率99%)を得た。
H-NMR(CDCl)δ:3.59(brs,2H)、6.87~6.95(m,1H)
【0100】
工程3 化合物11の合成
化合物10(5g、33.9mmol)および水(11.5mL)を混合し、氷冷下で臭化水素(11.5mL、102mmol)を加えた。その後NaNO(2.384g、34.6mmol)を水(7.5mL)に溶かしゆっくりと加えた。反応溶液を30℃に加熱し、CuBr(6.32g、44.0mmol)を臭化水素(13.42mL、119mmol)に溶かして加え、内温30~40℃で加えた。30分撹拌したのち反応溶液にヘキサン200mL、5mol/L水酸化ナトリウム水溶液(67.8mL、339mmol)を加えた。反応溶液をセライトでろ過し、ろ液をヘキサンで抽出した。有機層を水及び飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過した。有機層を減圧濃縮し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=10:0~9:1)で精製し、溶媒を減圧留去し、化合物11(4.35g、15.1mmol、73.5wt%)を得た。化合物11は沸点が低いため、溶媒を完全に留去せずに次の反応に用いた。
H-NMR(CDCl)δ:7.00-7.07(m,2H)
【0101】
工程4 化合物12の合成
2.76mol/L n-ブチルリチウムのヘキサン溶液(1.8mL、5.04mmol)とテトラヒドロフラン(2.6mL)の混合溶液に、化合物8(0.75g、4.2mmol)のテトラヒドロフラン(70mL)溶液を-78℃で5分かけてゆっくり滴下した。反応溶液を-78℃で1時間攪拌した。反応溶液に、1.9mol/L 塩化亜鉛の2-メチルテトラヒドロフラン溶液(2.6mL、82.4mmol)を滴下した。室温で反応溶液を2時間撹拌した。反応溶液に、化合物11(1.2g、4.2mmol)およびテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(243mg、0.21mmol)を加え、90℃で1.5時間撹拌した。反応溶液を常温に冷却し、水(7.5mL)を加えて酢酸エチルで抽出した。有機層を水及び飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過した。有機層を減圧濃縮し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=10:0~9:1)で精製し、溶媒を減圧留去し、化合物12(374mg、1.2mmol、収率29%)を得た。
H-NMR(CDCl)δ:3.95(s,3H)、4.05(s,3H)、7.20(d、J=9.0Hz,2H)
LC/MS(ESI):m/z=309、RT=2.51min、LC/MS測定条件A
【0102】
工程5 化合物13の合成
化合物12(374mg、1.2mmol)、アセトニトリル(7.5mL)、NaI(181mg、1.2mmol)およびTMSCl(464μL)を混合し、反応溶液を40℃で加熱した。原料がほぼ消失するまで約30分ごとにNaI(181mg、1.2mmol)およびTMSCl(464μL)を加えた。反応終了後に水(15mL)を反応溶液に加えると固体が析出した。反応溶液を一部濃縮した後、固体をろ取した。冷やしたアセトニトリルで固体を洗浄し、化合物13(246mg、0.88mmol)を得た。
H-NMR(DMSO-d)δ:7.43(d,J=9.5Hz,2H)、7.53(dd,J=7.3,2.1Hz,1H)、11.53(s,1H)、12.23(br s,1H)
LC/MS(ESI):m/z=281、RT=1.44min、LC/MS測定条件A
【0103】
工程6 化合物14の合成
化合物13(250mg、0.89mmol)、5-クロロピリジン-3-ボロン酸(280mg、1.78mmol)、酢酸銅(II)(242mg、1.33mmol)、アセトニトリル(7.5mL)、トリエチルアミン(1.23mL、8.89mmol)およびピリジン(1.8mL、22.2mmol)を混合し、溶液を常温で終夜撹拌した。反応溶液に2mol/L塩酸(44.5mL)を加えて、酢酸エチルで抽出した。有機層を水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過した。ろ液を濃縮し、得られた残渣を精製せずに次の工程へと進んだ。
【0104】
工程7 化合物15の合成
化合物14(330mg、0.84mmol)、DIPEA(440μL、2.52mmol)、DMF(3.3mL)を混合した溶液に、2-ブロモアセトニトリル(168μL、2.52mmol)を加えた。得られた溶液を常温で終夜撹拌した。反応溶液に水(14mL)を加えて酢酸エチルで抽出した。有機層を水及び飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過した。ろ液を濃縮し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=10:0~2:3)で精製し、溶媒を減圧留去し、化合物15(307mg、0.71mmol、収率85%)を得た。
H-NMR(CDCl)δ:5.13(s,2H),7.21-7.25(m,1H)、7.67(1H,t,J=2.3Hz),8.45(d,J=2.1Hz,1H),8.66(d、J=2.1Hz,1H).
LC/MS(ESI):m/z=431、RT=2.13min、LC/MS測定条件A
【0105】
工程8 化合物(I-2)の合成
化合物15(48.8mg、0.113mmol)、6,6-ジフルオロ-2-アザスピロ[3.3]ヘプタン トリフルオロ塩酸塩(33.5mg、0.136mmol)、DMF(0.5mL)およびN,N-ジイソプロピルエチルアミン(59.2μL、0.339mmol)を混合し、60℃で2時間撹拌した。反応溶液に水(2mL)を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過した。ろ液を減圧濃縮し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=10:0~3:7)で精製し、溶媒を減圧留去し、ジイソプロピルエーテルを加えた。得られた沈殿物をろ取し、ジイソプロピルエーテルで洗浄した。得られた固体を減圧乾燥し、化合物(I-2)(34.3mg、0.065mmol、収率57%)を得た。
H-NMR(DMSO-d)δ:2.83(t,J=12.5Hz,4H),4.07(s,4H)、4.86(s,2H),7.44(d,J=9.4Hz,1H)、8.01(t,J=2.2Hz,1H)、8.50(d,J=2.0Hz,1H)、8.73(d,J=2.0Hz,1H).
LC/MS(ESI):m/z=528、RT=2.19min、LC/MS測定条件A
【0106】
(参考例1)
化合物(II-1)の合成
【化48】

工程1 化合物(II-1)の合成
化合物16(150mg、0.376mmol、合成法は国際公開第2023/195529号参照)、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(0.197mL、1.13mmol)、DMF(1.2mL)を混合した溶液に、臭化プロパルギル(90μL、1.13mmol)を加え、80℃で4時間攪拌した。6,6-ジフルオロ-2-アザスピロ[3.3]ヘプタン トリフルオロ塩酸塩(186mg、0.753mmol)、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(0.197mL、1.13mmol)を加え、溶液を80℃で3時間撹拌した。反応液に0.1mol/L塩酸水溶液(10mL)を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過した。ろ液を濃縮し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=9:1~3:7)で精製し、溶媒を減圧留去し、化合物(II-1)(57mg、0.109mmol、収率29%)を得た。
H-NMR(CDCl)δ:2.73-2.79(4H,m),3.45(1H,s),4.06(4H,s),4.57(2H,s),7.18-7.21(2H,m),7.36-7.43(2H,m),7.97(1H,t,J=2.0Hz),8.44(1H,d,J=2.0Hz),8.66(1H,d,J=2.4Hz).
LC/MS(ESI):m/z=521、RT=2.37min、LC/MS測定条件A
【0107】
(参考例2)
参考例1および国際公開第2023/195529号と同様にして、以下の化合物を合成することができる。
【化49】

【化50】
【0108】
以下に、本発明に係る化合物の生物試験例を記載する。
本発明に係る化合物は、コロナウイルス3CLプロテアーゼ阻害作用を有し、コロナウイルス3CLプロテアーゼを阻害する。
具体的には、以下に記載する評価方法において、IC50は50μM以下が好ましく、より好ましくは、1μM以下、さらにより好ましくは100nM以下である。EC50は10μM以下が好ましく、より好ましくは、1μM以下、さらにより好ましくは100nM以下である。
【0109】
試験例1:human TMPRSS2、ACE2発現HEK293T細胞(HEK293T/ACE2-TMPRSS2細胞)を用いたCytopathic effect(CPE)抑制効果確認試験
<操作手順>
・被験試料の希釈、分注
予め被験試料をDMSOで適度な濃度に希釈し、2~5倍段階希釈系列を作製後、384ウェルプレートに分注する。
・細胞およびSARS-CoV-2の希釈、分注
HEK293T/ACE2-TMPRSS2細胞(GCP-SL222、5×10cells/well)とSARS-CoV-2(200-600TCID50/well)を培地(MEM、2%FBS、ペニシリン-ストレプトマイシン)で混合し、被験試料が入ったウェルに分注した後、COインキュベーターで3日間培養する。
・CellTiter-Glo(登録商標)2.0の分注および発光シグナルの測定
3日間培養したプレートを室温に戻した後、CellTiter-Glo(登録商標)2.0を各ウェルに分注し、プレートミキサーで混和する。一定時間置いた後、プレートリーダーで発光シグナル(Lum)を測定する。
<各測定項目値の算出>
・50% SARS-CoV-2感染細胞死阻害濃度(EC50)算出
xを化合物濃度の対数値、yを%Efficacyとしたとき、以下のLogistic回帰式で阻害曲線を近似し、y=50(%)を代入したときのxの値をEC50として算出する。

y = min + (max - min)/{1 + (X50/x) ^Hill}

%Efficacy = {(Sample - virus control) / (cell control - virus control)} * 100%
cell control: the average of Lum of cell control wells
virus control: the average of Lum of virus control wells

min:y軸下限値、max:y軸上限値、X50:変曲点のx座標、Hill:minとmaxの中間点でのカーブの傾き
【0110】
本発明に係る化合物を本質的に上記のとおり試験した。EC50値を以下に示す。
(結果)
化合物I-1:1.66nM
化合物I-2:2.36nM
【0111】
試験例2-1:SARS-CoV-2 3CLプロテアーゼに対する阻害活性試験
<材料>
・市販のRecombinant SARS-CoV-2 3CL Protease
・市販の基質ペプチド
Dabcyl-Lys-Thr-Ser-Ala-Val-Leu-Gln-Ser-Gly-Phe-Arg-Lys-Met-Glu(Edans)-NH(配列番号:1)
・Internal Standardペプチド
Dabcyl-Lys-Thr-Ser-Ala-Val-Leu(1315N)-Gln(配列番号:2)
Dabcyl-Lys-Thr-Ser-Ala-Val-Leu(1315N)-Glnは、文献(Atherton, E.; Sheppard, R. C.、“In Solid Phase Peptide Synthesis, A Practical Approach”、IRL Press at Oxford University Pres、1989.およびBioorg. Med. Chem.、5巻、9号、1997年、1883-1891頁、等)を参考に合成できる。以下に一例を示す。
Rinkアミド樹脂を用いて、Fmoc固相合成によって、H-Lys-Thr-Ser-Ala-Val-Leu(1315N)-Glu(resin)-OαOtBu(Lys側鎖はBoc保護、Thr側鎖はtert-ブチル基で保護、Ser側鎖はtert-ブチル基で保護、GluのC末端OHはtert-ブチル基で保護されており、Glu側鎖のカルボン酸を樹脂に縮合)を合成する。N末端Dabcyl基の修飾は4-ジメチルアミノアゾベンゼン-4’-カルボン酸(Dabcyl-OH)をEDC/HOBTを用いて樹脂上で縮合する。最終脱保護、および樹脂からの切り出しはTFA/EDT=95:5で処理することで行う。その後、逆相HPLCによって精製する。
・RapidFire Cartridge C4 typeA
<操作手順>
・アッセイバッファーの調製
本試験では、20mM Tris-HCl、1mM EDTA、10mM DTT、0.01% BSAからなるアッセイバッファーを使用する。
・被験試料の希釈、分注
予め被験試料をDMSOで適度な濃度に希釈し、2~5倍段階希釈系列を作製後、384ウェルプレートに分注する。
・酵素と基質の添加、酵素反応
準備した化合物プレートに、8μMの基質、及び6nMまたは0.6nMの酵素溶液を添加し、室温で3~5時間インキュベーションを行う。その後、反応停止液(0.067μM Internal Standard、0.1% ギ酸、10または25% アセトニトリル)を加え酵素反応を停止させる。
・反応産物の測定
反応完了したプレートはRapidFire System 360及び質量分析器(Agilent、6550 iFunnel Q-TOF)、またはRapid Fire System 365及び質量分析器(Agilent、 6495C Triple Quadrupole)を用いて測定する。測定時の移動相としてA溶液(75% イソプロパノール、15% アセトニトリル、5mM ギ酸アンモニウム)とB溶液(0.01% トリフルオロ酢酸、0.09% ギ酸)を用いる。
質量分析器によって検出された反応産物は、RapidFire Integratorまたは同等の解析が可能なプログラムを用いて算出しProduct area値とする。また、同時に検出されたInternal Standardも算出しInternal Standard area値とする。
<各測定項目値の算出>
・P/ISの算出
前項目で得られたarea値を下記の式によって計算し、P/ISを算出する。
P/IS= Product area値/ Internal Standard area値
・50% SARS-CoV-2 3CLプロテアーゼ阻害濃度(IC50)算出
xを化合物濃度の対数値、yを%Inhibitionとしたとき、以下のLogistic回帰式で阻害曲線を近似し、y=50(%)を代入したときのxの値をIC50として算出する。

y = min + (max - min)/{1 + (X50/x) ^Hill}

%Inhibition = {1-(Sample - Control(-)) / Control(+)-Control(-))} * 100

Control(-):the average of P/IS of enzyme inhibited condition wells
Control(+):the average of P/IS of DMSO control wells
min:y軸下限値、max:y軸上限値、X50:変曲点のx座標、Hill:minとmaxの中間点でのカーブの傾き
【0112】
本発明化合物を本質的に上記のとおり試験した。IC50値を以下に示す。
(結果)
化合物I-1:0.00036μM
化合物I-2:0.00033μM
化合物II-1:0.00068μM
【0113】
試験例2-2:SARS-CoV-2 3CLプロテアーゼに対する阻害活性試験
<材料>
・市販のRecombinant SARS-CoV-2 3CL Protease
・SARS-CoV-2 3CL Protease P132H
・市販の基質ペプチド
Dabcyl-Lys-Thr-Ser-Ala-Val-Leu-Gln-Ser-Gly-Phe-Arg-Lys-Met-Glu(Edans)-NH(配列番号:1)
・Internal Standardペプチド
Dabcyl-Lys-Thr-Ser-Ala-Val-Leu(1315N)-Gln(配列番号:2)
Dabcyl-Lys-Thr-Ser-Ala-Val-Leu(1315N)-Glnは、文献(Atherton, E.; Sheppard, R. C.、“In Solid Phase Peptide Synthesis, A Practical Approach”、IRL Press at Oxford University Pres、1989.およびBioorg. Med. Chem.、5巻、9号、1997年、1883-1891頁、等)を参考に合成できる。以下に一例を示す。
Rinkアミド樹脂を用いて、Fmoc固相合成によって、H-Lys-Thr-Ser-Ala-Val-Leu(1315N)-Glu(resin)-OαOtBu(Lys側鎖はBoc保護、Thr側鎖はtert-ブチル基で保護、Ser側鎖はtert-ブチル基で保護、GluのC末端OHはtert-ブチル基で保護されており、Glu側鎖のカルボン酸を樹脂に縮合)を合成する。N末端Dabcyl基の修飾は4-ジメチルアミノアゾベンゼン-4’-カルボン酸(Dabcyl-OH)をEDC/HOBTを用いて樹脂上で縮合する。最終脱保護、および樹脂からの切り出しはTFA/EDT=95:5で処理することで行う。その後、逆相HPLCによって精製する。
・RapidFire Cartridge C4 typeA
<操作手順>
・アッセイバッファーの調製
本試験では、20mM Tris-HCl、1mM EDTA、10mM DTT、0.01% BSAからなるアッセイバッファーを使用する。
・被験試料の希釈、分注
予め被験試料をDMSOで適度な濃度に希釈し、3倍段階希釈系列を作製後、384ウェルプレートに分注する。
・酵素と基質の添加、酵素反応
準備した化合物プレートに、最終濃度4μMの基質、0.3nMの酵素を添加し、室温で4時間インキュベーションを行う。その後、反応停止液(7.2nM Internal Standard、0.1% ギ酸、10% アセトニトリル)を加え酵素反応を停止させる。
・反応産物の測定
反応完了したプレートはRapid Fire System 365及び質量分析器(Agilent、 6495C Triple Quadrupole)を用いて測定する。測定時の移動相としてA溶液(75% イソプロパノール、15% アセトニトリル、5mM ギ酸アンモニウム)とB溶液(0.01% トリフルオロ酢酸、0.09% ギ酸)を用いる。
質量分析器によって検出された反応産物は、RapidFire Integratorを用いて算出しProduct area値とする。また、同時に検出されたInternal Standardも算出しInternal Standard area値とする。
<各測定項目値の算出>
・P/ISの算出
前項目で得られたarea値を下記の式によって計算し、P/ISを算出する。
P/IS= Product area値/ Internal Standard area値
・50% SARS-CoV-2 3CLプロテアーゼ阻害濃度(IC50)算出
xを化合物濃度の対数値、yを%Inhibitionとしたとき、以下のLogistic回帰式で阻害曲線を近似し、y=50(%)を代入したときのxの値をIC50として算出する。

y = min + (max - min)/{1 + (X50/x) ^Hill}

%Inhibition = {1-(Sample - Control(-)) / Control(+)-Control(-))} * 100

Control(-):the average of P/IS ratio in the wells without SARS-CoV-2 3CL protease and test substance
Control(+):the average of P/IS ratio in the wells with SARS-CoV-2 3CL protease and without test substance

min:y軸下限値、max:y軸上限値、X50:変曲点のx座標、Hill:minとmaxの中間点でのカーブの傾き
【0114】
本発明に係る化合物を本質的に上記のとおり試験した。結果を以下に示す。
【表5】
【0115】
試験例3:human TMPRSS2発現Vero E6細胞(Vero E6/TMPRSS2細胞)を用いたCytopathic effect(CPE)抑制効果確認試験
<操作手順>
・被験試料の希釈、分注
予め被験試料をDMSOで適度な濃度に希釈し、3倍段階希釈系列を作製後、96ウェルプレートに分注する。
・細胞およびSARS-CoV-2の希釈、分注
VeroE6/TMPRSS2細胞(JCRB1819、1.5×10cells/well)とSARS-CoV-2 hCoV-19/Japan/TY/WK-521/2020(Ancestral)、hCoV-19/Japan/QHN001/2020(Alpha)、hCoV-19/Japan/TY8-612/2021(Beta)、hCoV-19/Japan/TY7-501/2021(Gamma)、hCoV-19/Japan/TY11-927/2021(Delta)、hCoV-19/Japan/TY38-871/2021(Omicron BA.1.1)、hCoV-19/Japan/TY40-385/2022(Omicron BA.2)、hCoV-19/Japan/TY41-721/2022(Omicron BA.2.12.1)、hCoV-19/Japan/TY41-716/2022(Omicron BA.2.75)、hCoV-19/Japan/TY41-703/2022(Omicron BA.4.1)、hCoV-19/Japan/TY41-763/2022(Omicron BA.4.6)、hCoV-19/Japan/TY41-702/2022(Omicron BE.1/BA.5-like)、hCoV-19/Japan/TY41-704/2022(Omicron BA.5.2.1)、hCoV-19/Japan/TY41-820/2022(Omicron BF.7)、hCoV-19/Japan/TY41-828/2022(Omicron BF.7.4.1)、hCoV-19/Japan/TY41-796/2022(Omicron BQ.1.1)、hCoV-19/Japan/TY41-832/2022(Omicron CH.1.1.11)、hCoV-19/Japan/TY41-795/2022(Omicron XBB.1)、hCoV-19/Japan/23-018/2022(Omicron XBB.1.5)、hCoV-19/Japan/TY-41951/2023(Omicron XBB.1.9.1)、hCoV-19/Japan/TY41-984/2023(Omicron XBB.1.16)、hCoV-19/Japan/TY41-831/2022(Omicron XBF)、hCoV-19/Japan/TY41-686/2022(Omicron XE)(30-3000TCID50/well)を培地(MEM、2%FBS、ペニシリン-ストレプトマイシン)で混合し、被験試料が入ったウェルに分注した後、COインキュベーターで3日間あるいは4日間培養する。
・CellTiter-Glo(登録商標)2.0の分注および発光シグナルの測定
3日間培養したプレートを室温に戻した後、CellTiter-Glo(登録商標)2.0を各ウェルに分注し、プレートミキサーで混和する。一定時間置いた後、プレートリーダーで発光シグナル(Lum)を測定する。
【0116】
<各測定項目値の算出>
・50% SARS-CoV-2感染細胞死阻害濃度(EC50)算出
xを化合物濃度の対数値、yを%Efficacyとしたとき、以下のLogistic回帰式で阻害曲線を近似し、y=50(%)を代入したときのxの値をEC50として算出する。

y = min + (max - min)/{1 + (X50/x) ^Hill}

%Efficacy = {(Sample - virus control) / (cell control - virus control)} * 100%
cell control: the average of Lum of cell control wells
virus control: the average of Lum of virus control wells

min:y軸下限値、max:y軸上限値、X50:変曲点のx座標、Hill:minとmaxの中間点でのカーブの傾き
【0117】
本発明に係る化合物を本質的に上記のとおり試験した。結果を以下に示す。
【表6】
【0118】
試験例5:HCoV-OC43に対する抗ウイルス効果
<操作手順>
・被験試料の希釈、分注
予め被験試料をDMSOで適度な濃度に希釈し、3倍段階希釈系列を作製後、96ウェルプレートに分注し維持培地(MEM、2%FBS、ペニシリン-ストレプトマイシン)で希釈する。
・細胞およびHCoV-OC43の希釈、分注
継代培地(DMEM、10%FBS、ペニシリン-ストレプトマイシン)に懸濁させたMRC-5細胞(2×10cells/well)を感染前日に96wellプレートに播種し、翌日、維持培地(MEM、2%FBS、ペニシリン-ストレプトマイシン)に懸濁させたHCoV-OC43(300TCID50/well)を1時間で感染させる。その後、ウイルス液を除去し、被験試薬が入った維持培地を添加し、COインキュベーターで72時間培養する。また被験試薬の細胞毒性を調べるために、ウイルス非存在下にて同様の操作を実施する。
・CellTiter-Glo(登録商標)2.0の分注および発光シグナルの測定
72時間培養したプレートを室温に戻した後、CellTiter-Glo(登録商標)2.0を各ウェルに分注し、プレートミキサーで混和する。一定時間置いた後、プレートリーダーで発光シグナル(Lum)を測定する。
【0119】
<各測定項目値の算出>
・50% HCoV-OC43感染細胞死阻害濃度(EC50)算出
xを化合物濃度の対数値、yを%Efficacyとしたとき、以下のLogistic回帰式で阻害曲線を近似し、y=50(%)を代入したときのxの値をEC50として算出する。

y = min + (max - min)/{1 + (X50/x) ^Hill}

%Efficacy = {(Sample - virus control) / (cell control - virus control)} * 100%
cell control: the average of Lum of cell control wells
virus control: the average of Lum of virus control wells

min:y軸下限値、max:y軸上限値、X50:変曲点のx座標、Hill:minとmaxの中間点でのカーブの傾き

・50%細胞毒性濃度の算出
xを化合物濃度の対数値、yを%Cytotoxicityとしたとき、以下のLogistic回帰式で阻害曲線を近似し、y=50(%)を代入したときのxの値をCC50として算出する。

y = min + (max - min)/{1 + (X50/x) ^Hill}

%Cytotoxicity = {(Sample - medium control) / (cell control - medium control)} * 100%
cell control: the average of Lum of cell control wells
medium control: the average of Lum of medium control wells

min:y軸下限値、max:y軸上限値、X50:変曲点のx座標、Hill:minとmaxの中間点でのカーブの傾き
【0120】
本発明に係る化合物を本質的に上記のとおり試験した。結果を以下に示す。
化合物I-1:EC50 92.0±21.0nM、CC50>100μM
【0121】
試験例6:HCoV-229Eに対する抗ウイルス効果
<操作手順>
・被験試料の希釈、分注
予め被験試料をDMSOで適度な濃度に希釈し、3倍段階希釈系列を作製後、96ウェルプレートに分注し維持培地(MEM、2%FBS、ペニシリン-ストレプトマイシン)で希釈する。
・細胞およびHCoV-229Eの希釈、分注
継代培地(DMEM、10%FBS、ペニシリン-ストレプトマイシン)に懸濁させたMRC-5細胞(2×10cells/well)を感染前日に96wellプレートに播種し、翌日、維持培地(MEM、2%FBS、ペニシリン-ストレプトマイシン)に懸濁させたHCoV-229E(1000TCID50/well)を1時間で感染させる。その後、ウイルス液を除去し、被験試薬が入った維持培地を添加し、COインキュベーターで72時間培養する。
・CellTiter-Glo(登録商標)2.0の分注および発光シグナルの測定
72時間培養したプレートを室温に戻した後、CellTiter-Glo(登録商標)2.0を各ウェルに分注し、プレートミキサーで混和する。一定時間置いた後、プレートリーダーで発光シグナル(Lum)を測定する。
【0122】
<各測定項目値の算出>
・50% HCoV-229E感染細胞死阻害濃度(EC50)算出
xを化合物濃度の対数値、yを%Efficacyとしたとき、以下のLogistic回帰式で阻害曲線を近似し、y=50(%)を代入したときのxの値をEC50として算出する。

y = min + (max - min)/{1 + (X50/x) ^Hill}

%Efficacy = {(Sample - virus control) / (cell control - virus control)} * 100%
cell control: the average of Lum of cell control wells
virus control: the average of Lum of virus control wells

min:y軸下限値、max:y軸上限値、X50:変曲点のx座標、Hill:minとmaxの中間点でのカーブの傾き
【0123】
本発明に係る化合物を本質的に上記のとおり試験した。結果を以下に示す。
化合物I-1:EC50 3570±510nM
【0124】
試験例7:抗SARS-CoV-2活性に対するヒト血清、マウス血清及びハムスター血清の影響
<操作手順>
・被験試料の希釈、分注
予め被験試料をDMSOで適度な濃度に希釈し、3倍段階希釈系列を作製後、96ウェルプレートに分注する。
・血清添加培地の添加
最終濃度0、12.5、25、50%ヒト血清もしくはマウス血清もしくはハムスター血清となるよう培地(MEM、2%FBS、ペニシリン-ストレプトマイシン)で調製し、被験試料が入ったウェルに分注し、室温で1時間インキュベートする。
・細胞およびSARS-CoV-2の希釈、分注
VeroE6/TMPRSS2細胞(JCRB1819、1.5×10cells/well)を感染前日に96wellプレートに播種し、翌日、維持培地(MEM、2%FBS、ペニシリン-ストレプトマイシン)に懸濁させたSARS-CoV-2 hCoV-19/Japan/TY7-501/2021(1000TCID50/well)を1時間で感染させる。その後、ウイルス液を除去し、被験試薬およびヒト血清、マウス血清あるいはハムスター血清添加培地を添加し、COインキュベーターで1日培養する。
・ウイルス量の定量
1日培養したプレートの上清を除去し、Trizol LSと維持培地を3:1で混和した細胞溶解液を添加し、Direct-zol-96 RNA Kit(ZYMO RESEARCH)を用いてRNAを抽出する。抽出後のRNA溶液をリアルタイムPCR(Applied BioSystems QuantStudio5)にて定量する。プローブ、プライマーは以下のものを使用する。
【表7】
【0125】
<各測定項目値の算出>
・90% SARS-CoV-2ウイルス複製阻害濃度(EC90)算出
xを化合物濃度の対数値、yをウイルスのコピー数(Log10 copies/mL)とした濃度依存性曲線においてウイルスコントロールからの1 log10 reductionに相当する値をその前後の2濃度のコピー数から二点法で算出する。すなわち、
X = the lowest concentration at the mean reduction of viral RNA copy number from that of virus control is less than z
x = the highest concentration at the mean reduction of viral RNA copy number from that of virus control is z or more.
Y = the mean of logarithmic reduction of viral RNA copy number from that of virus control at X
y = the mean of logarithmic reduction of viral RNA copy number from that of virus control at x
EC90 values were calculated by the following formula.
EC90 = 10[log(x) + (log(X) - log(x)) × (y - z)/(y - Y)]
z = log10(10/100)

・Protein-Adjusted EC90(PA-EC90)の算出
各血清濃度でのEC90を算出後、線形回帰によって血清100%条件でのPA-EC90値を計算した。
【0126】
本発明に係る化合物を本質的に上記のとおり試験した。結果を以下に示す。
化合物I-1:
ヒト血清PA-EC90 7.90nM
マウス血清PA-EC90 19.8nM
ハムスター血清PA-EC90 8.17nM
【0127】
試験例8:human airway epithelial cells細胞を用いたウイルス増殖抑制効果確認試験
<操作手順>
・被験試料の希釈、分注
予め被験試料をDMSOで適度な濃度に希釈し、3倍段階希釈系列を作製後、MucilAirTM培養液で200倍希釈し、24ウェルプレートに分注した。
・SARS-CoV-2感染
Transwellに播種してあるMucilAirTM(Nasal cavity、約5.0×10cells/well)にSARS-CoV-2 hCoV-19/Japan/TY41-702/2022(Omicron BE.1/BA.5-like)(5000TCID50/well)を感染させ、COインキュベーターで2時間培養した。その後MucilAirTM培養液で洗浄し、transwellを被験試料が入ったウェルに乗せ、COインキュベーターで培養した。感染2日後に、transwellにMucilAirTM培養液を添加し、その上清を回収した。
・上清中ウイルス力価の測定
回収した上清を培地(MEM、2%FBS、ペニシリン-ストレプトマイシン)にて10倍希釈系列を作製後、VeroE6/TMPRSS2細胞(JCRB1819、1.5×10cells/well)と混合し、96ウェルプレートに播種した。COインキュベーターで4日間培養後、Cytopathic effect(CPE)を観察し、上清中に含まれるウイルス力価を算出した。
【0128】
<各測定項目値の算出>
・90% SARS-CoV-2ウイルス産生阻害濃度(EC90)算出
xを化合物濃度の対数値、yをウイルス力価(Log10 TCID50/mL)とした濃度依存性曲線においてウイルスコントロールからの1 log10 reductionに相当する値をその前後の2濃度のウイルス力価から二点法で算出する。
【数1】
【0129】
本発明に係る化合物を本質的に上記のとおり試験した。結果を以下に示す。
【表8】
【0130】
試験例9:化合物I-1の遅延投与によるSARS-CoV-2感染マウスの肺ホモジネート液中ウイルス力価増殖抑制試験
<材料と方法>
・化合物
本発明に係る化合物I-1を、N,N-ジメチルアセトアミド(DMA)および0.5w/v% ポリ(1-ビニルピロリドン-co-酢酸ビニル)(PVPVA)含有ポリエチレングリコール400(PEG400)(DMA:0.5w/v%PVPVA含有PEG400=1:9)を用いて、被験試料とした。投与容量は、5mL/kgとした。
・ウイルス
国立感染症研究所にて分離されたSARS-CoV-2 hCoV-19/Japan/TY7-501/2021株を用いた。
・マウス肺感染、投薬、肺回収
特定病原体不在の5週齢の雌性BALB/cマウス(CLEA Japan,Inc.)を本研究において使用した。ウイルス接種の際、Saline中に0.03mg/mLの塩酸メデトミジン、0.4mg/mLのミダゾラム、0.5mg/mLの酒石酸ブトルファノールを含む100μLの麻酔液の筋内投与によってマウスを麻酔した。マウスに、麻酔下で、50μLのhCoV-19/Japan/TY7-501/2021(1.00×10TCID50)を経鼻接種した。ウイルス感染1日後を開始点として、マウス(n=5/群)に、化合物I-1を0.1、0.3、1、3、10mg/kgの用量で1日2回経口投与した。対照マウスには、DMA/0.5w/v%PVPVA in PEG400を1日2回経口投与した。化合物投与は投与開始から2日間とした。感染3日後にマウス肺を回収し、2mLのPBSを添加、ホモジナイズし、遠心後の上清を回収した。
・肺ホモジネート液中ウイルス力価の測定
肺ホモジネート液を培地(MEM、2%FBS、ペニシリン-ストレプトマイシン)にて10倍希釈系列を作製後、VeroE6/TMPRSS2細胞(JCRB1819、1.5×10cells/well)と混合し、96ウェルプレートに播種した。COインキュベーターで4日間培養後、Cytopathic effect(CPE)を観察し、肺ホモジネート液中に含まれるウイルス力価を算出した。
【0131】
本発明に係る化合物を本質的に上記のとおり試験した。結果を以下に示す。
感染3日後の肺ホモジネート液中ウイルス力価はDMA/0.5w/v%PVPVA in PEG400投与群では6.45-log10TCID50/mLを示し、化合物I-1 0.1、0.3、1、3、10mg/kg投与群ではそれぞれ6.27、5.39、3.97、2.51、2.47-log10TCID50/mLを示した。化合物I-1投与群では肺ホモジネート液中ウイルス力価がDMA/0.5w/v%PVPVA in PEG400投与群に比べて低値を示したことから、感染から投与までの期間が空いても肺ホモジネート液中ウイルス力価を低減する効果があることが示唆された(図1)。
【0132】
試験例10:化合物I-1の遅延投与によるSARS-CoV-2感染ハムスターの肺及び鼻甲介ホモジネート液中ウイルス力価増殖抑制試験及び肺重量増加抑制試験
<材料と方法>
・化合物
本発明に係る化合物I-1を、N,N-ジメチルアセトアミド(DMA)および0.5w/v% ポリ(1-ビニルピロリドン-co-酢酸ビニル)(PVPVA)含有ポリエチレングリコール400(PEG400)(DMA:0.5w/v%PVPVA含有PEG400=1:9)を用いて、被験試料とした。投与容量は、2.5mL/kgとした。
・ウイルス
国立感染症研究所にて分離されたSARS-CoV-2 hCoV-19/Japan/TY41-702/2022株(Omicron BE.1/BA.5-like)を用いた。
・ハムスター肺感染、投薬、肺、鼻甲介回収
特定病原体不在の6週齢の雄性シリアンハムスター(Japan SLC,Inc.)を本研究において使用した。ウイルス接種の際、0.07mg/mLの塩酸メデトミジン、6.98mg/mLのアルファキサロン、1.16mg/mLの酒石酸ブトルファノールを含む麻酔液を3mL/kgで皮下投与によってハムスターを麻酔し、100μLのhCoV-19/Japan/TY41-702/2022(1.00×10TCID50)を経鼻接種した。感染ハムスターには、ウイルス接種1日後を開始点として、化合物I-1を0.1、1、10mg/kgの用量で1日2回経口投与した。対照の感染ハムスター及び非感染ハムスターには、DMA/0.5w/v%PVPVA in PEG400を1日2回経口投与した。化合物投与は投与開始から5日間とした。感染3、4日後に感染ハムスター肺及び鼻甲介を回収し、それぞれ5mL若しくは1mLのPBSを添加、ホモジナイズし、遠心後の上清を回収した。また、感染7日後の感染及び非感染ハムスターの肺を回収し、肺重量を測定した。
・肺及び鼻甲介ホモジネート液中ウイルス力価の測定
肺及び鼻甲介ホモジネート液を培地(MEM、2%FBS、ペニシリン-ストレプトマイシン)にて10倍希釈系列を作製後、予め96ウェルプレートに培養したVeroE6/TMPRSS2細胞(JCRB1819、1.5×10cells/well)に播種した。COインキュベーターで4日間培養後、Cytopathic effect(CPE)を観察し、肺若しくは鼻甲介ホモジネート液中に含まれるウイルス力価を算出した。
【0133】
本発明に係る化合物を本質的に上記のとおり試験した。結果を以下に示す。
肺ホモジネート液中ウイルス力価は、感染3日後のDMA/0.5w/v%PVPVA in PEG400投与群では5.4-log10TCID50/mLを示し、化合物I-1を0.1、1、10mg/kg投与群ではそれぞれ5.5、3.5、2.5-log10TCID50/mLを示した。感染4日後はDMA/0.5w/v%PVPVA in PEG400投与群では5.6-log10TCID50/mLを示し、化合物I-1を0.1、1、10mg/kg投与群ではそれぞれ4.6、2.4、1.9-log10TCID50/mLを示した。
鼻甲介ホモジネート液中ウイルス力価は、感染3日後はDMA/0.5w/v%PVPVA in PEG400投与群では5.0-log10TCID50/mLを示し、化合物I-1を0.1、1、10mg/kg投与群ではそれぞれ4.8、3.2、2.7-log10TCID50/mLを示した。感染4日後はDMA/0.5w/v%PVPVA in PEG400投与群では3.8-log10TCID50/mLを示し、化合物I-1を0.1、1、10mg/kg投与群ではそれぞれ4.0、2.2、1.8-log10TCID50/mLを示した。
化合物I-1投与群では肺及び鼻甲介ホモジネート液中ウイルス力価がDMA/0.5w/v%PVPVA in PEG400投与群に比べて投与量依存的に低値を示したことから、感染から投与までの期間が空いても肺及び鼻甲介ホモジネート液中ウイルス力価を低減する効果があることが示唆された(図2-1、図2-2)。
また、感染7日後の肺重量/体重は、非感染ハムスターでは5.26mg/g、感染ハムスターのDMA/0.5w/v%PVPVA in PEG400投与群では8.96mg/g、化合物I-1を0.1、1、10mg/kg投与群ではそれぞれ8.24、5.75、5.57mg/gを示した。
化合物I-1投与群では肺重量/体重がDMA/0.5w/v%PVPVA in PEG400投与群に比べて投与量依存的に低値を示したことから、化合物I-1の投与により、SARS-CoV-2感染によって引き起こされる肺重量増加抑制効果があることが示唆された(図3)。
【0134】
試験例11:化合物I-1の投与によるSARS-CoV-2感染ハムスターの体重減少抑制試験
<材料と方法>
・化合物
本発明に係る化合物I-1を、N,N-ジメチルアセトアミド(DMA)および0.5w/v% ポリ(1-ビニルピロリドン-co-酢酸ビニル)(PVPVA)含有ポリエチレングリコール400(PEG400)(DMA:0.5w/v%PVPVA含有PEG400=1:9)を用いて、被験試料とした。投与容量は、2.5mL/kgとした。
・ウイルス
国立感染症研究所にて分離されたSARS-CoV-2 hCoV-19/Japan/TY41-702/2022株(Omicron BE.1/BA.5-like)を用いた。
・ハムスター肺感染、投薬、体重測定
特定病原体不在の6週齢の雄性シリアンハムスター(Japan SLC,Inc.)を本研究において使用した。ウイルス接種の際、0.07mg/mLの塩酸メデトミジン、6.98mg/mLのアルファキサロン、1.16mg/mLの酒石酸ブトルファノールを含む麻酔液を3mL/kgで皮下投与によってハムスターを麻酔し、100μLのhCoV-19/Japan/TY41-702/2022(1.00×10TCID50)を経鼻接種した。感染ハムスターには、ウイルス接種1日後を開始点として、化合物I-1を0.1、1、10mg/kgの用量で1日2回経口投与した。対照の感染ハムスター及び非感染ハムスターには、DMA/0.5w/v%PVPVA in PEG400を1日2回経口投与した。化合物投与は投与開始から5日間とした。体重を1日1回モニタリングした。
【0135】
本発明に係る化合物を本質的に上記のとおり試験した。結果を以下に示す。
非感染ハムスターは体重増加が認められたが、感染ハムスターでは感染3日後から体重が減少し、感染6日後に体重が最も低値となった。このとき化合物I-1 1、10mg/kg投与群では観察した感染10日後まで全例が生存し、体重減少が抑制された(図4)。
以上の結果から、化合物I-1投与により体重減少抑制効果があることが示唆された。
【0136】
試験例12:化合物I-1の予防投与によるSARS-CoV-2感染ハムスターの体重減少抑制、肺及び鼻甲介ホモジネート液中ウイルス増殖抑制試験
<材料と方法>
・化合物
化合物I-1を、0.5%メチルセルロース(0.5%MC)溶液を用いて被験試料とした。投与容量は、10mL/kgとした。
・ウイルス
国立感染症研究所にて分離されたSARS-CoV-2 hCoV-19/Japan/TY41-702/2022株(Omicron BE.1/BA.5-like)を用いた。
・ハムスター肺感染、投薬、体重測定
特定病原体不在の6週齢の雄性シリアンハムスター(Japan SLC,Inc.)を本研究において使用した。ウイルス接種の際、0.07mg/mLの塩酸メデトミジン、6.98mg/mLのアルファキサロン、1.16mg/mLの酒石酸ブトルファノールを含む麻酔液を3mL/kgで皮下投与によってハムスターを麻酔し、100μLのhCoV-19/Japan/TY41-702/2022(1.00×10TCID50)を経鼻接種した。体重減少抑制試験ではウイルス感染1日前あるいは3日前に化合物I-1を3、10mg/kgで1回皮下投与した。肺及び鼻甲介ホモジネート液中ウイルス増殖抑制試験ではウイルス感染1日前に化合物I-1を10、30mg/kgで1回皮下投与した。対象ハムスターには0.5%MCをウイルス感染1日前に1回皮下投与した。体重は1日1回モニタリングした。感染1、2日後に感染ハムスター肺及び鼻甲介を回収し、それぞれ5mL若しくは1mLのPBSを添加、ホモジナイズし、遠心後の上清を回収した。
・肺及び鼻甲介ホモジネート液中ウイルス力価の測定
肺及び鼻甲介ホモジネート液を培地(MEM、2%FBS、ペニシリン-ストレプトマイシン)にて10倍希釈系列を作製後、予め96ウェルプレートに培養したVeroE6/TMPRSS2細胞(JCRB1819、1.5×10cells/well)に播種した。COインキュベーターで4日間培養後、Cytopathic effect(CPE)を観察し、肺若しくは鼻甲介ホモジネート液中に含まれるウイルス力価を算出した。
【0137】
本発明に係る化合物を本質的に上記のとおり試験した。結果を以下に示す。
感染ハムスターでは感染3日後から体重が減少し、感染6日後に体重が最も低値となった。このとき化合物I-1を感染1日前での3、10mg/kg投与群、感染3日前での10mg/kg投与群では観察した感染7日後まで全例が生存し、体重減少が抑制された(図5)。
肺ホモジネート液中ウイルス力価は、感染1日後において、0.5%MC投与群では5.59-log10TCID50/mLを示し、化合物I-1 10、30mg/kg投与群ではそれぞれ3.34、1.84-log10TCID50/mLを示した。感染2日後において、0.5%MC投与群では6.18-log10TCID50/mLを示し、化合物I-1 10、30mg/kg投与群ではそれぞれ5.29、3.55-log10TCID50/mLを示した(図6-1)。
鼻甲介ホモジネート液中ウイルス力価は、感染1日後において、0.5%MC投与群では5.71-log10TCID50/mLを示し、化合物I-1 10、30mg/kg投与群ではそれぞれ4.80、3.36-log10TCID50/mLを示した。感染2日後において、0.5%MC投与群では5.80-log10TCID50/mLを示し、化合物I-1 10、30mg/kg投与群ではそれぞれ5.38、5.01-log10TCID50/mLを示した(図6-2)。
なお、感染直前の血漿中濃度を測定したところ、感染1日前での3、10mg/kg投与群、感染3日前での3、10mg/kg投与群で、それぞれ6.1、12.5、5.9、3.0ng/mLであった。
以上の結果から、化合物I-1の予防的投与によりウイルス感染時の血漿中濃度がおよそ6ng/mL以上で体重減少抑制効果が示され、およそ12ng/mL以上で肺および鼻甲介ホモジナイズ中ウイルス増殖抑制効果あることが示された。
【0138】
上記試験結果は、化合物I-1の予防的な皮下投与においてウイルス感染による病態進行およびウイルス増殖が抑制されたことを示しており、化合物I-1のSARS-CoV-2による感染症の予防薬としての有用性を支持する。
【0139】
試験例13:化合物I-1の遅延投与によるSARS-CoV-2感染ハムスターの鼻腔洗浄液中ウイルス力価クリアランス試験
<材料と方法>
・化合物
本発明に係る化合物I-1を、N,N-ジメチルアセトアミド(DMA)および0.5w/v% ポリ(1-ビニルピロリドン-co-酢酸ビニル)含有ポリエチレングリコール400(PEG400)(PVPVA)(DMA:0.5w/v%PVPVA含有PEG400=1:9)を用いて、被験試料とした。投与容量は、2.5mL/kgとした。
・ウイルス
国立感染症研究所にて分離されたSARS-CoV-2 hCoV-19/Japan/TY41-702/2022株(Omicron BE.1/BA.5-like)を用いた。
・ハムスター経鼻感染、投薬、鼻腔洗浄液回収
特定病原体不在の6週齢の雄性シリアンハムスター(Japan SLC,Inc.)を本研究において使用した。ウイルス接種の際、0.07mg/mLの塩酸メデトミジン、6.98mg/mLのアルファキサロン、1.16mg/mLの酒石酸ブトルファノールを含む麻酔液を3mL/kgで皮下投与によってハムスターを麻酔し、100μLのhCoV-19/Japan/TY41-702/2022(1.00×10TCID50)を経鼻接種した。感染ハムスターには、ウイルス接種2日あるいは3日後を開始点として、化合物I-1を1、10mg/kgの用量で1日2回経口投与した。対照の感染ハムスターには、DMA/0.5w/v%PVPVA in PEG400を1日2回経口投与した。化合物投与は投与開始から5日間とした。感染2-6日後に感染ハムスターをイソフルラン麻酔下においてDPBS400μLにて鼻腔洗浄液を回収し、遠心後の上清を回収した。各群n=4で実施した。
・鼻腔洗浄液中ウイルス力価の測定
鼻腔洗浄液の上清を培地(MEM、2%FBS、ペニシリン-ストレプトマイシン)にて10倍希釈系列を作製後、予め96ウェルプレートに培養したVeroE6/TMPRSS2細胞(JCRB1819、1.5×10cells/well)に播種した。COインキュベーターで4日間培養後、Cytopathic effect(CPE)を観察し、鼻腔洗浄液中に含まれるウイルス力価を算出した。
【0140】
本発明化合物を本質的に上記のとおり試験した。結果を以下に示す。
鼻腔洗浄液中ウイルス力価は、ウイルス接種2日後から化合物を投薬した群において、DMA/0.5w/v%PVPVA in PEG400投与群、化合物I-1 1、10mg/kg投与群の投与開始時点(感染2日後、投与開始1日目)では、それぞれ4.80、4.90、4.88-log10TCID50/mL、感染3日後(投与開始2日目)では、それぞれ3.75、3.63、3.68-log10TCID50/mL、感染5日後(投与開始4日目)では、それぞれ2.96、<1.80、<1.80-log10TCID50/mLを示した(図14)。ウイルス接種3日後から化合物を投薬した群において、DMA/0.5w/v%PVPVA in PEG400投与群、化合物I-1 1、10mg/kg投与群の投与開始時点(感染3日後、投与開始1日目)では、それぞれ3.40、2.93、3.13-log10TCID50/mL、感染4日後(投与開始1日後)では、それぞれ2.97、1.84、2.13-log10TCID50/mL、感染6日後(投与開始4日後)では、それぞれ2.43、<1.80、<1.80-log10TCID50/mLを示した(図15)。
化合物I-1 1、10mg/kg投与群では投与開始が感染2日後あるいは3日後のいずれにおいても、鼻腔洗浄液中ウイルス力価がDMA/0.5w/v%PVPVA in PEG400投与群に比べて低値を示したことから、感染から投与までの期間が空いても生体内においてウイルスを低減する効果があることが示された。
【0141】
試験例14:化合物I-1の遅延投与によるSARS-CoV-2感染動物から非感染動物へのウイルス伝播抑制試験
<材料と方法>
・化合物
本発明に係る化合物I-1を、N,N-ジメチルアセトアミド(DMA)および0.5w/v% ポリ(1-ビニルピロリドン-co-酢酸ビニル)(PVPVA)含有ポリエチレングリコール400(PEG400)(DMA:0.5w/v%PVPVA含有PEG400=1:9)を用いて、被験試料とした。投与容量は、2.5mL/kgとした。
・ウイルス
国立感染症研究所にて分離されたSARS-CoV-2 hCoV-19/Japan/TY11-927/2021を用いた。
・ハムスター経鼻感染、投薬、同居、鼻腔洗浄液及び肺回収
特定病原体不在の6週齢の雄性シリアンハムスター(Japan SLC,Inc.)を本研究において使用した。ウイルス接種の際、0.07mg/mLの塩酸メデトミジン、6.98mg/mLのアルファキサロン、1.16mg/mLの酒石酸ブトルファノールを含む麻酔液を3mL/kgで皮下投与によってハムスターを麻酔し、100μLのhCoV-19/Japan/TY11-927/2021(1.00×10TCID50)を経鼻接種した。感染ハムスター(Index)にウイルス接種8時間後を開始点として、化合物I-1を0.1、1、10mg/kgの用量で1日2回経口投与した。対照の感染ハムスター(Index)には、DMA/0.5w/v%PVPVA in PEG400を1日2回経口投与した。化合物投与は投与開始から合計3回とした。感染1日後から2日後の夜間12時間にかけて、感染ハムスター(Index)1匹とウイルスを接種しない非感染ハムスター1匹(Contact)を、同一ケージ内において、直接接触できないように別のステンレスケージに入れて2cm離した状態で同居させた。同居終了後は個別飼育した。同居開始4日後(同居解除3日後)の非感染ハムスター(Cotact)から鼻腔洗浄液及び肺を回収した。鼻腔洗浄液は、イソフルラン麻酔下においてDPBS400μLにて回収し、遠心後の上清を回収した。肺は5mLのDPBSを添加、ホモジナイズし、遠心後の上清を回収した。各群n=6で実施した。
・鼻腔洗浄液及び肺ホモジナイズ上清中ウイルス力価の測定
鼻腔洗浄液若しくは肺ホモジネート上清を培地(MEM、2%FBS、ペニシリン-ストレプトマイシン)にて10倍希釈系列を作製後、予め96ウェルプレートに培養したVeroE6/TMPRSS2細胞(JCRB1819、1.5×10cells/well)へ接種した。COインキュベーターで4日間培養後、Cytopathic effect(CPE)を観察し、鼻腔洗浄液若しくは肺ホモジネート上清中に含まれるウイルス力価を算出した。
【0142】
本発明化合物を本質的に上記のとおり試験した。結果を以下に示す。
感染ハムスター(Index)との同居開始4日後(同居解除3日後)の非感染ハムスター(Contact)の鼻腔洗浄液あるいは肺ホモジナイズ上清中ウイルス力価が検出限界(1.8-log10TCID50/mL)以上となった個体は、DMA/0.5w/v%PVPVA in PEG400投与群では6/6例、化合物I-1 0.1mg/kg投与群では6/6例、化合物I-1 1mg/kg投与群では0/6例、化合物I-1 10mg/kg投与群では0/6例、となり、用量依存的な伝播抑制効果を示した(図16)。これらの結果から、化合物I-1を感染ハムスター(Index)に感染後に投与することにより、非感染ハムスター(Contact)へのウイルス伝播を抑制する効果があることが示された。
【0143】
試験例15:化合物I-1の非感染動物への予防的投与によるSARS-CoV-2感染動物からのウイルス伝播予防試験
<材料と方法>
・化合物
化合物I-1を、0.5%メチルセルロース(0.5%MC)溶液を用いて被験試料とした。投与容量は、5mL/kgとした。
・ウイルス
国立感染症研究所にて分離されたSARS-CoV-2 hCoV-19/Japan/TY11-927/2021(Delta)を用いた。
・ハムスター経鼻感染、投薬、同居、鼻腔洗浄液及び肺回収
特定病原体不在の6週齢の雄性シリアンハムスター(Japan SLC,Inc.)を本研究において使用した。ウイルス接種の際、0.07mg/mLの塩酸メデトミジン、6.98mg/mLのアルファキサロン、1.16mg/mLの酒石酸ブトルファノールを含む麻酔液を3mL/kgで皮下投与によってハムスターを麻酔し、100μLのhCoV-19/Japan/TY11-927/2021(1.00×10TCID50)を経鼻接種した。非感染ハムスター(Contact)に化合物I-1を3、10、30、90mg/kgの用量で同居12時間前に単回皮下投与した。対照の非感染ハムスター(Contact)には、0.5%MCを単回皮下投与した。感染ハムスター(Index)への感染1日後から2日後の夜間12時間にかけて、感染ハムスター(Index)1匹と化合物を投与した非感染ハムスター1匹(Contact)を、同一ケージ内において、直接接触できないように別のステンレスケージに入れて2cm離した状態で同居させた。同居終了後は個別飼育した。同居開始4日後(同居解除3日後)の非感染ハムスター(contact)から鼻腔洗浄液及び肺を回収した。鼻腔洗浄液は、イソフルラン麻酔下においてDPBS400μLにて回収し、遠心後の上清を回収した。肺は3mLのDPBSを添加、ホモジナイズし、遠心後の上清を回収し、DPBSで2倍希釈した。各群n=6で実施した。
・鼻腔洗浄液及び肺ホモジナイズ上清中ウイルス力価の測定
鼻腔洗浄液若しくは肺ホモジネート上清を培地(MEM、2%FBS、ペニシリン-ストレプトマイシン)にて10倍希釈系列を作製後、予め96ウェルプレートに培養したVeroE6/TMPRSS2細胞(JCRB1819、1.50×10cells/well)へ接種した。COインキュベーターで4日間培養後、Cytopathic effect(CPE)を観察し、鼻腔洗浄液若しくは肺ホモジネート上清中に含まれるウイルス力価を算出した。
【0144】
本発明化合物を本質的に上記のとおり試験した。結果を以下に示す。
感染ハムスター(Index)との同居開始4日後(同居解除3日後)の化合物を投与した非感染ハムスター(Contact)の鼻腔洗浄液あるいは肺ホモジナイズ上清中ウイルス力価が検出限界(1.8-log10TCID50/mL)以上となった個体は、0.5%MC投与群では6例/6例、化合物I-1 3mg/kg投与群では5/6例、化合物I-1 10mg/kg投与群では6/6例、化合物I-1 30mg/kg投与群では3/6例、化合物I-1 90mg/kg投与群では0/6例となり、用量依存的な感染予防効果を示した(図17)。これらの結果から、化合物I-1を予防的に投与することにより、感染ハムスター(Index)からのウイルス伝播を予防する効果があることが示唆された。
【0145】
試験例16:化合物I-1の遅延投与によるSARS-CoV-2感染加齢ハムスターの致死、体重減少抑制試験
<材料と方法>
・化合物
本発明に係る化合物I-1を、N,N-ジメチルアセトアミド(DMA)および0.5w/v% ポリ(1-ビニルピロリドン-co-酢酸ビニル)(PVPVA)含有ポリエチレングリコール400(PEG400)(DMA:0.5w/v%PVPVA含有PEG400=1:9)を用いて、被験試料とした。投与容量は、1.25mL/kgとした。
・ウイルス
国立感染症研究所にて分離されたSARS-CoV-2 hCoV-19/Japan/TY11-927/2021を用いた。
・ハムスター経鼻感染、投薬、同居、鼻腔洗浄液及び肺回収
特定病原体不在の11カ月齢(加齢)の雄性シリアンハムスター(Japan SLC,Inc.)を本研究において使用した。ウイルス接種の際、0.07mg/mLの塩酸メデトミジン、6.98mg/mLのアルファキサロン、1.16mg/mLの酒石酸ブトルファノールを含む麻酔液を3mL/kgで皮下投与によってハムスターを麻酔し、100μLのhCoV-19/Japan/TY11-927/2021(1.00×10TCID50)を経鼻接種した。ウイルス接種1日後を開始点として、化合物I-1を0.1、1、10mg/kgの用量で1日2回経口投与した。対照の感染ハムスターには、DMA/0.5w/v%PVPVA in PEG400を1日2回経口投与した。化合物投与は投与開始から5日間とした。体重を1日1回モニタリングし、生存率の評価においては、感染直前の体重を基準として80%未満となった場合には死亡と見做した。各群n=6で実施した。
【0146】
本発明化合物を本質的に上記のとおり試験した。結果を以下に示す。
感染ハムスターのDMA/0.5w/v%PVPVA in PEG400投与群では感染8日後に2匹が致死となり、生存率は66.7%を示した。このとき化合物I-1 1、10mg/kg投与群では観察した感染10日後まで全例が生存し、体重減少が抑制された(図18および図19)。
以上の結果から、加齢ハムスターにおいても、化合物I-1投与により致死および体重減少抑制効果があることが示唆された。
【0147】
げっ歯類においても加齢することにより、ヒトと同様、SARS-CoV-2の受容体として知られているACE2受容体の発現量が増加することが知られており(参考文献:Scientific Reports (2020)10:22401およびMolecular Therapy Methods & Clinical Development, Vol. 18, P1-6, 2020)、また感染源から身体を防御し、それらを排除する正常な免疫応答が低下するため、ウイルス感染により重症化しやすいことが想定される。上記に示す通り、加齢ハムスターを用いたSARS-CoV-2感染モデルにおいて、化合物I-1の投与により、体重減少抑制効果および致死抑制効果が認められた。加齢ハムスターを用いた非臨床試験は、基礎疾患を有するハイリスク患者が重症化に至る過程を模した非臨床評価系の一つとして位置づけられるため、重症化リスクの高い患者に対する治療オプションとして、化合物I-1の有用性を支持する。
また、上記試験結果は、化合物I-1投与群においてウイルス感染による重症化が抑制されたことを示唆しており、化合物I-1のSARS-CoV-2に対する抗ウイルス効果のみならず、SARS-CoV-2による感染症の重症化抑制用医薬としての有用性を支持する。
【0148】
試験例17:in vitro併用効果確認試験
<操作手順>
・被験試料
化合物I-1と併用する被験試料としてエンシトレルビル フマル酸、ニルマトレルビル、レムデシビル、EIDD-1931、ソトロビマブ、チキサゲビマブ/シルガビマブを用いた。
・被験試料の希釈、分注
各被験試料をDMSOあるいはDPBSおよび培地(MEM、2%FBS、ペニシリン-ストレプトマイシン)で適度な濃度に希釈し、段階希釈系列を96ウェルプレートに作製した。
・細胞およびSARS-CoV-2の希釈、分注
A549/ACE2-TMPRSS2細胞(Invivogen、a549-hace2tpsa、1.5×10cells/well)とSARS-CoV-2 hCoV-19/Japan/TY11-927/2021(100TCID50/well)を培地(MEM、2%FBS、ペニシリン-ストレプトマイシン)で混合し、被験試料が入ったウェルに分注した後、COインキュベーターで2日間培養した。
・CellTiter-Glo(登録商標)2.0の分注および発光シグナルの測定
3日間培養したプレートを室温に戻した後、CellTiter-Glo(登録商標)2.0を各ウェルに分注し、プレートミキサーで混和した。一定時間置いた後、プレートリーダーで発光シグナル(Lum)を測定した。
【0149】
<併用効果の解析>
MacSynergyIIによりSynegy volume及びAntagonism volumeを算出した。これらの数値は既報の論文(Antiviral Research,1990,Volume 14,p.181-206)等を参考に算出できる。
・併用効果の判定
併用効果は、MacSynergyIIの99%信頼度でのSynegy volume及びAntagonism volumeについて以下に示す基準で判定した。
synergy volume ≦ 25: additive
25 < synergy volume ≦ 50: minor synergy
50 < synergy volume ≦ 100: moderate synergy
100 < synergy volume: strong synergy
-25 ≦ antagonism volume: additive
-50 ≦ antagonism volume < -25: minor antagonism
-100 ≦ antagonism volume < -50: moderate antagonism
antagonism volume < -100: strong antagonism
【0150】
本質的に上記のとおり試験した。結果を以下の表に示す。
【0151】
【表9】
【0152】
以上の結果から、化合物I-1とRNA依存性RNAポリメラーゼ阻害剤(EIDD-1931、およびレムデシビル)、3CLプロテアーゼ阻害剤(エンシトレルビル、ニルマトレルビル)、抗SARS-CoV-2モノクローナル抗体(ソトロビマブ、チキサゲビマブ/シルガビマブ)の組み合わせにより、拮抗的な効果を示すことなく、相加から相乗的なSARS-CoV-2増殖抑制効果を示した。
【0153】
以下に示す製剤例は例示にすぎないものであり、発明の範囲を何ら限定することを意図するものではない。
本発明に係る化合物は、任意の従来の経路により、特に、経腸、例えば、経口で、例えば、錠剤またはカプセル剤の形態で、または非経口で、例えば注射液剤または懸濁剤の形態で、局所で、例えば、ローション剤、ゲル剤、軟膏剤またはクリーム剤の形態で、または経鼻形態または座剤形態で医薬組成物として投与することができる。少なくとも1種の薬学的に許容される担体または希釈剤と一緒にして、遊離形態または薬学的に許容される塩の形態の本発明の化合物を含む医薬組成物は、従来の方法で、混合、造粒またはコーティング法によって製造することができる。例えば、経口用組成物としては、賦形剤、崩壊剤、結合剤、滑沢剤等および有効成分等を含有する錠剤、顆粒剤、カプセル剤とすることができる。また、注射用組成物としては、溶液剤または懸濁剤とすることができ、滅菌されていてもよく、また、保存剤、安定化剤、緩衝化剤等を含有してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0154】
本発明に係る化合物は、コロナウイルス3CLプロテアーゼに対する阻害活性を有し、本発明に係る化合物を含有する医薬組成物は、コロナウイルス感染症の治療剤および/または予防剤として有用である。
【要約】
本発明は、コロナウイルス増殖阻害活性を示す化合物を含有する医薬組成物を提供する。
式(I-1):

で示される化合物またはその製薬上許容される塩、を含有する医薬組成物。
図1
図2-1】
図2-2】
図3
図4
図5
図6-1】
図6-2】
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
【配列表】
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