(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-30
(45)【発行日】2025-05-12
(54)【発明の名称】回転子及び回転電機、並びに回転子及び回転電機の製造方法
(51)【国際特許分類】
H02K 1/276 20220101AFI20250501BHJP
H02K 1/22 20060101ALI20250501BHJP
H02K 15/021 20250101ALI20250501BHJP
【FI】
H02K1/276
H02K1/22 A
H02K15/021
(21)【出願番号】P 2021157725
(22)【出願日】2021-09-28
【審査請求日】2024-05-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002941
【氏名又は名称】弁理士法人ぱるも特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】建部 晶子
(72)【発明者】
【氏名】並河 遼
(72)【発明者】
【氏名】坂上 篤史
【審査官】保田 亨介
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-333762(JP,A)
【文献】特許第7204018(JP,B2)
【文献】特開2011-135728(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K1/00-1/34
15/00-15/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸となる主軸と、
前記主軸の外径側に配置された内径側鉄心と、
前記内径側鉄心の外径側に配置された磁石と、
前記磁石の外径側に配置された外径側鉄心と、
前記内径側鉄心と前記磁石との間に
前記内径側鉄心の外径側の面に対して内径側の面を接して配置され、
又は前記磁石と前記外径側鉄心との間
に前記外径側鉄心の内径側の面に対して外径側の面を接して配置され、
、又はその両方に配置された磁性体と、を備え、
前記内径側鉄心の外径側に配置された前記磁石、前記磁性体、および前記外径側鉄心から構成された構造体が、前記主軸に対して周方向に複数配置され、隣り合う前記構造体の周方向端面の間に第1樹脂部が形成されている回転子。
【請求項2】
回転軸となる主軸と、
前記主軸の外径側に配置された内径側鉄心と、
前記内径側鉄心の外径側に回転子の磁極数の半数で、同じ極性が径方向外側に有して配置された磁石と、
前記磁石の外径側に配置された外径側鉄心と、
前記磁石と前記外径側鉄心の間で前記内径側鉄心の内径側から突出した突出部と、
前記内径側鉄心と前記磁石との間
に前記内径側鉄心の外径側の面に対して内径側の面を接して配置され、
又は前記磁石と前記外径側鉄心との間
に前記外径側鉄心の内径側の面に対して外径側の面を接して配置され、
又はその両方に配置された磁性体と、を備え、
前記内径側鉄心の前記突出部の最外径端面は、前記外径側鉄心の最外径端面と同一半径の円弧を有して、磁極部を形成し、
前記突出部の周方向端面と、前記内径側鉄心の外径側に配置された前記磁石、前記磁性体、および前記外径側鉄心から構成された構造体の周方向端面とは離間した構造であり、
前記突出部の周方向端面と前記構造体の周方向端面との間に第1樹脂部が形成されている回転子。
【請求項3】
前記突出部に磁石を有さない、請求項2に記載の回転子。
【請求項4】
回転軸となる主軸と、
前記主軸の外径側に配置された内径側鉄心と、
前記内径側鉄心の外径側に回転子の磁極数の半数で、同じ極性が径方向外側に有して配置された磁石と、
前記磁石の外径側に配置された外径側鉄心と、
前記磁石と前記外径側鉄心の間で前記内径側鉄心の内径側から突出した突出部と、
前記内径側鉄心と前記磁石との間、又は前記磁石と前記外径側鉄心との間、又はその両方に配置された磁性体と、を備え、
前記内径側鉄心の前記突出部の最外径端面は、前記外径側鉄心の最外径端面と同一半径の円弧を有して、磁極部を形成し、
前記突出部の周方向端面と、前記内径側鉄心の外径側に配置された前記磁石、前記磁性体、および前記外径側鉄心から構成された構造体の周方向端面とは離間した構造であり、
前記突出部の周方向端面と前記構造体の周方向端面との間に第1樹脂部が形成されており、
前記突出部にフラックスバリアを備え
た回転子。
【請求項5】
回転軸となる主軸と、
前記主軸の外径側に配置された内径側鉄心と、
前記内径側鉄心の外径側に配置された磁石と、
前記磁石の外径側に配置された外径側鉄心と、
前記内径側鉄心と前記磁石との間、又は前記磁石と前記外径側鉄心との間、又はその両方に配置された磁性体と、を備え、
前記内径側鉄心の外径側に配置された前記磁石、前記磁性体、および前記外径側鉄心から構成された構造体が、前記主軸に対して周方向に複数配置され、隣り合う前記構造体の周方向端面の間に第1樹脂部が形成されており、
前記磁性体は、1または複数の薄板であ
る回転子。
【請求項6】
回転軸となる主軸と、
前記主軸の外径側に配置された内径側鉄心と、
前記内径側鉄心の外径側に回転子の磁極数の半数で、同じ極性が径方向外側に有して配置された磁石と、
前記磁石の外径側に配置された外径側鉄心と、
前記磁石と前記外径側鉄心の間で前記内径側鉄心の内径側から突出した突出部と、
前記内径側鉄心と前記磁石との間、又は前記磁石と前記外径側鉄心との間、又はその両方に配置された磁性体と、を備え、
前記内径側鉄心の前記突出部の最外径端面は、前記外径側鉄心の最外径端面と同一半径の円弧を有して、磁極部を形成し、
前記突出部の周方向端面と、前記内径側鉄心の外径側に配置された前記磁石、前記磁性体、および前記外径側鉄心から構成された構造体の周方向端面とは離間した構造であり、
前記突出部の周方向端面と前記構造体の周方向端面との間に第1樹脂部が形成されており、
前記磁性体は、1または複数の薄板である回転子。
【請求項7】
回転軸となる主軸と、
前記主軸の外径側に配置された内径側鉄心と、
前記内径側鉄心の外径側に配置された磁石と、
前記磁石の外径側に配置された外径側鉄心と、
前記内径側鉄心と前記磁石との間、又は前記磁石と前記外径側鉄心との間、又はその両方に配置された磁性体と、を備え、
前記内径側鉄心の外径側に配置された前記磁石、前記磁性体、および前記外径側鉄心から構成された構造体が、前記主軸に対して周方向に複数配置され、隣り合う前記構造体の周方向端面の間に第1樹脂部が形成されており、
前記第1樹脂部は、前記構造体の軸方向両端面に樹脂で形成された第2樹脂部および第3樹脂部に連結されてい
る回転子。
【請求項8】
回転軸となる主軸と、
前記主軸の外径側に配置された内径側鉄心と、
前記内径側鉄心の外径側に回転子の磁極数の半数で、同じ極性が径方向外側に有して配置された磁石と、
前記磁石の外径側に配置された外径側鉄心と、
前記磁石と前記外径側鉄心の間で前記内径側鉄心の内径側から突出した突出部と、
前記内径側鉄心と前記磁石との間、又は前記磁石と前記外径側鉄心との間、又はその両方に配置された磁性体と、を備え、
前記内径側鉄心の前記突出部の最外径端面は、前記外径側鉄心の最外径端面と同一半径の円弧を有して、磁極部を形成し、
前記突出部の周方向端面と、前記内径側鉄心の外径側に配置された前記磁石、前記磁性体、および前記外径側鉄心から構成された構造体の周方向端面とは離間した構造であり、
前記突出部の周方向端面と前記構造体の周方向端面との間に第1樹脂部が形成されており、
前記第1樹脂部は、前記構造体の軸方向両端面に樹脂で形成された第2樹脂部および第3樹脂部に連結されている回転子。
【請求項9】
回転軸となる主軸と、
前記主軸の外径側に配置された内径側鉄心と、
前記内径側鉄心の外径側に配置された磁石と、
前記磁石の外径側に配置された外径側鉄心と、
前記内径側鉄心と前記磁石との間、又は前記磁石と前記外径側鉄心との間、又はその両方に配置された磁性体と、を備え、
前記内径側鉄心の外径側に配置された前記磁石、前記磁性体、および前記外径側鉄心から構成された構造体が、前記主軸に対して周方向に複数配置され、隣り合う前記構造体の周方向端面の間に第1樹脂部が形成されており、
前記磁性体は、折り曲げた形状であり、前記磁石を両側から挟んだ構造であ
る回転子。
【請求項10】
回転軸となる主軸と、
前記主軸の外径側に配置された内径側鉄心と、
前記内径側鉄心の外径側に回転子の磁極数の半数で、同じ極性が径方向外側に有して配置された磁石と、
前記磁石の外径側に配置された外径側鉄心と、
前記磁石と前記外径側鉄心の間で前記内径側鉄心の内径側から突出した突出部と、
前記内径側鉄心と前記磁石との間、又は前記磁石と前記外径側鉄心との間、又はその両方に配置された磁性体と、を備え、
前記内径側鉄心の前記突出部の最外径端面は、前記外径側鉄心の最外径端面と同一半径の円弧を有して、磁極部を形成し、
前記突出部の周方向端面と、前記内径側鉄心の外径側に配置された前記磁石、前記磁性体、および前記外径側鉄心から構成された構造体の周方向端面とは離間した構造であり、
前記突出部の周方向端面と前記構造体の周方向端面との間に第1樹脂部が形成されており、
前記磁性体は、折り曲げた形状であり、前記磁石を両側から挟んだ構造である回転子。
【請求項11】
前記突出部にフラックスバリアを備えた請求項2または請求項3に記載の回転子。
【請求項12】
前記磁性体は、1または複数の薄板である請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の回転子。
【請求項13】
前記第1樹脂部は、前記構造体の軸方向両端面に樹脂で形成された第2樹脂部および第3樹脂部に連結されている請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の回転子。
【請求項14】
前記磁性体は、折り曲げた形状であり、前記磁石を両側から挟んだ構造である請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の回転子。
【請求項15】
請求項1から請求項
14のいずれか1項に記載の回転子と、
前記回転子の径方向に対向して配置された固定子と、を備えた回転電機。
【請求項16】
回転子の回転軸となる主軸と、前記主軸の外径側に配置された内径側鉄心と、前記内径側鉄心の外径側に配置される磁石と、前記磁石の外径側に配置される外径側鉄心と、前記内径側鉄心、前記磁石、および前記外径側鉄心との間に配置される磁性体と、を用いて、
成形金型の内部に、前記内径側鉄心の外径側に前記磁石を配置し、さら前記磁石の外径側に前記外径側鉄心を配置して、前記内径側鉄心の外径側に1組の前記磁石と前記外径側鉄心を配置し、順次前記回転子の極数組の前記磁石と前記外径側鉄心を前記内径側鉄心の外径側に配置する回転子部材配置工程と、
前記内径側鉄心と前記磁石との間、又は前記磁石と前記外径側鉄心との間、又はその両方に磁性体を挿入して、前記磁石、前記外径側鉄心、および前記磁性体で構造体を構成すると共に、前記成形金型の内壁面に前記外径側鉄心の外周面を押しつける磁性体挿入工程と、
前記成形金型の樹脂注入孔から樹脂を注入して、隣り合う前記構造体の周方向端面の間、および前記構造体の軸方向両端面に樹脂部を形成する樹脂注入工程と、
を備えた回転子の製造方法。
【請求項17】
請求項
16に記載の回転子の製造方法を用いて製造された回転子を用いて、
前記回転子の外径側にエアギャップを介して固定子を配置する固定子配置工程を、
備えた回転電機の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、回転子及び回転電機、並びに回転子および回転電機の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、環状の鉄心に巻線した電機子から成る固定子と、磁石を鉄心内部に周方向に複数所定の間隔で配置した回転子とで構成されるIPM(Interior Permanent Magnet)構造の回転電機が知られている。IPM構造の回転電機は、残留磁束密度と保磁力が強力な希土類磁石を歩留まりよく使用できる点で優れている。しかし、磁石の内外径に配置された鉄心を繋ぐために、周方向に隣接する磁石の間にブリッジを設ける必要がある。このため、磁石の磁束の一部が隣接する磁石へ漏れ、磁束を有効活用できないという問題があった。
【0003】
この問題に対して、ブリッジを廃止して磁石の径方向内外で鉄心を分離し、磁石同士の空隙部に樹脂を充填し、内径側鉄心に設けた凹部で樹脂部を固定することで、磁束の漏れの低減を図るブリッジレスIPM回転子が提案されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の回転子は、内径側鉄心、外径側鉄心、磁石の寸法のばらつきにより、内径側鉄心、および外径側鉄心と磁石との間に隙間が発生し、磁束が低下するという問題がある。
【0006】
本願は、上記のような課題を解決するための技術を開示するものであり、内径側鉄心、外径側鉄心、および磁石の加工精度に起因する、内径側鉄心、および外径側鉄心と磁石との間に存在する隙間を低減することで磁石の持つ磁束を有効活用することができる回転子および回転電機、さらに回転子および回転電機の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願に開示される回転子は、回転軸となる主軸と、主軸の外径側に配置された内径側鉄心と、内径側鉄心の外径側に配置された磁石と、磁石の外径側に配置された外径側鉄心と、内径側鉄心と磁石との間に内径側鉄心の外径側の面に対して内径側の面を接して配置され、又は磁石と外径側鉄心との間に外径側鉄心の内径側の面に対して外径側の面を接して配置され、又はその両方に配置された磁性体と、を備え、内径側鉄心の外径側に配置された磁石、磁性体、および外径側鉄心から構成された構造体が、主軸に対して周方向に複数配置され、隣り合う構造体の周方向端面の間に第1樹脂部が形成されているものである。
本願に開示される回転子は、回転軸となる主軸と、主軸の外径側に配置された内径側鉄心と、内径側鉄心の外径側に回転子の磁極数の半数で、同じ極性が径方向外側に有して配置された磁石と、磁石の外径側に配置された外径側鉄心と、磁石と外径側鉄心の間で内径側鉄心の内径側から突出した突出部と、内径側鉄心と磁石との間に内径側鉄心の外径側の面に対して内径側の面を接して配置され、又は磁石と外径側鉄心との間に外径側鉄心の内径側の面に対して外径側の面を接して配置され、又はその両方に配置された磁性体と、を備え、内径側鉄心の突出部の最外径端面は、外径側鉄心の最外径端面と同一半径の円弧を有して、磁極部を形成し、突出部の周方向端面と、内径側鉄心の外径側に配置された磁石、磁性体、および外径側鉄心から構成された構造体の周方向端面とは離間した構造であり、突出部の周方向端面と構造体の周方向端面との間に第1樹脂部が形成されているものである。
本願に開示される回転子は、回転軸となる主軸と、主軸の外径側に配置された内径側鉄心と、内径側鉄心の外径側に回転子の磁極数の半数で、同じ極性が径方向外側に有して配置された磁石と、磁石の外径側に配置された外径側鉄心と、磁石と外径側鉄心の間で内径側鉄心の内径側から突出した突出部と、内径側鉄心と磁石との間、又は磁石と外径側鉄心との間、又はその両方に配置された磁性体と、を備え、内径側鉄心の突出部の最外径端面は、外径側鉄心の最外径端面と同一半径の円弧を有して、磁極部を形成し、突出部の周方向端面と、内径側鉄心の外径側に配置された磁石、磁性体、および外径側鉄心から構成された構造体の周方向端面とは離間した構造であり、突出部の周方向端面と構造体の周方向端面との間に第1樹脂部が形成されており、突出部にフラックスバリアを備えたものである。
本願に開示される回転子は、回転軸となる主軸と、主軸の外径側に配置された内径側鉄心と、内径側鉄心の外径側に配置された磁石と、磁石の外径側に配置された外径側鉄心と、内径側鉄心と磁石との間、又は磁石と外径側鉄心との間、又はその両方に配置された磁性体と、を備え、内径側鉄心の外径側に配置された磁石、磁性体、および外径側鉄心から構成された構造体が、主軸に対して周方向に複数配置され、隣り合う構造体の周方向端面の間に第1樹脂部が形成されており、磁性体は、1または複数の薄板であるものである。
本願に開示される回転子は、回転軸となる主軸と、主軸の外径側に配置された内径側鉄心と、内径側鉄心の外径側に回転子の磁極数の半数で、同じ極性が径方向外側に有して配置された磁石と、磁石の外径側に配置された外径側鉄心と、磁石と外径側鉄心の間で内径側鉄心の内径側から突出した突出部と、内径側鉄心と磁石との間、又は磁石と外径側鉄心との間、又はその両方に配置された磁性体と、を備え、内径側鉄心の突出部の最外径端面は、外径側鉄心の最外径端面と同一半径の円弧を有して、磁極部を形成し、突出部の周方向端面と、内径側鉄心の外径側に配置された磁石、磁性体、および外径側鉄心から構成された構造体の周方向端面とは離間した構造であり、突出部の周方向端面と構造体の周方向端面との間に第1樹脂部が形成されており、磁性体は、1または複数の薄板であるものである。
本願に開示される回転子は、回転軸となる主軸と、主軸の外径側に配置された内径側鉄心と、内径側鉄心の外径側に配置された磁石と、磁石の外径側に配置された外径側鉄心と、内径側鉄心と磁石との間、又は磁石と外径側鉄心との間、又はその両方に配置された磁性体と、を備え、内径側鉄心の外径側に配置された磁石、磁性体、および外径側鉄心から構成された構造体が、主軸に対して周方向に複数配置され、隣り合う構造体の周方向端面の間に第1樹脂部が形成されており、第1樹脂部は、構造体の軸方向両端面に樹脂で形成された第2樹脂部および第3樹脂部に連結されているものである。
本願に開示される回転子は、回転軸となる主軸と、主軸の外径側に配置された内径側鉄心と、内径側鉄心の外径側に回転子の磁極数の半数で、同じ極性が径方向外側に有して配置された磁石と、磁石の外径側に配置された外径側鉄心と、磁石と外径側鉄心の間で内径側鉄心の内径側から突出した突出部と、内径側鉄心と磁石との間、又は磁石と外径側鉄心との間、又はその両方に配置された磁性体と、を備え、内径側鉄心の突出部の最外径端面は、外径側鉄心の最外径端面と同一半径の円弧を有して、磁極部を形成し、突出部の周方向端面と、内径側鉄心の外径側に配置された磁石、磁性体、および外径側鉄心から構成された構造体の周方向端面とは離間した構造であり、突出部の周方向端面と構造体の周方向端面との間に第1樹脂部が形成されており、記第1樹脂部は、構造体の軸方向両端面に樹脂で形成された第2樹脂部および第3樹脂部に連結されているものである。
本願に開示される回転子は、回転軸となる主軸と、主軸の外径側に配置された内径側鉄心と、内径側鉄心の外径側に配置された磁石と、磁石の外径側に配置された外径側鉄心と、内径側鉄心と磁石との間、又は磁石と外径側鉄心との間、又はその両方に配置された磁性体と、を備え、内径側鉄心の外径側に配置された磁石、磁性体、および外径側鉄心から構成された構造体が、主軸に対して周方向に複数配置され、隣り合う構造体の周方向端面の間に第1樹脂部が形成されており、磁性体は、折り曲げた形状であり、磁石を両側から挟んだ構造としたものである。
本願に開示される回転子は、回転軸となる主軸と、主軸の外径側に配置された内径側鉄心と、内径側鉄心の外径側に回転子の磁極数の半数で、同じ極性が径方向外側に有して配置された磁石と、磁石の外径側に配置された外径側鉄心と、磁石と外径側鉄心の間で内径側鉄心の内径側から突出した突出部と、内径側鉄心と磁石との間、又は磁石と外径側鉄心との間、又はその両方に配置された磁性体と、を備え、内径側鉄心の突出部の最外径端面は、外径側鉄心の最外径端面と同一半径の円弧を有して、磁極部を形成し、突出部の周方向端面と、内径側鉄心の外径側に配置された磁石、磁性体、および外径側鉄心から構成された構造体の周方向端面とは離間した構造であり、突出部の周方向端面と構造体の周方向端面との間に第1樹脂部が形成されており、記磁性体は、折り曲げた形状であり、磁石を両側から挟んだ構造としたものである。
本願に開示される回転電機は、上記回転子と、回転子の径方向に対向して配置された固定子と、を備えたものである。
本願に開示される回転子の製造方法は、回転子の回転軸となる主軸と、主軸の外径側に配置された内径側鉄心と、内径側鉄心の外径側に配置される磁石と、磁石の外径側に配置される外径側鉄心と、内径側鉄心、磁石、および外径側鉄心との間に配置される磁性体と、を用いて、成形金型の内部に、内径側鉄心の外径側に磁石を配置し、さら磁石の外径側に外径側鉄心を配置して、内径側鉄心の外径側に1組の磁石と外径側鉄心を配置し、順次回転子の極数組の磁石と外径側鉄心を内径側鉄心の外径側に配置する回転子部材配置工程と、内径側鉄心と磁石との間、又は磁石と外径側鉄心との間、又はその両方に磁性体を挿入して、磁石、外径側鉄心、および磁性体で構造体を構成すると共に、成形金型の内壁面に外径側鉄心の外周面を押しつける磁性体挿入工程と、成形金型の樹脂注入孔から樹脂を注入して、隣り合う構造体の周方向端面の間、および構造体の軸方向両端面に樹脂部を形成する樹脂注入工程と、を備えたものである。
本願に開示される回転電機の製造方法は、上記回転子の製造方法を用いて製造された回転子を用いて、回転子の外径側にエアギャップを介して固定子を配置する固定子配置工程を、備えたものである。
【発明の効果】
【0008】
本願に開示される回転子によれば、IPM回転子の磁石周方向の漏れ磁束を低減し、加工精度に起因する内径側鉄心、および外径側鉄心と磁石との間に存在する隙間を低減することで、磁石の磁束を有効活用できる。
本願に開示される回転電機によれば、IPM回転子の磁石周方向の漏れ磁束を低減し、加工精度に起因する内径側鉄心、および外径側鉄心と磁石との間に存在する隙間を低減することで、磁石の磁束を有効活用できる。
本願に開示される回転子の製造方法によれば、IPM回転子の磁石周方向の漏れ磁束を低減し、加工精度に起因する内径側鉄心、および外径側鉄心と磁石との間に存在する隙間を低減することで、磁石の磁束を有効活用できる。
本願に開示される回転電機の製造方法によれば、IPM回転子の磁石周方向の漏れ磁束を低減し、加工精度に起因する内径側鉄心、および外径側鉄心と磁石との間に存在する隙間を低減することで、磁石の磁束を有効活用できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施の形態1による回転電機の平面図である。
【
図5】実施の形態1による回転子の成形金型への配置説明図である。
【
図6】実施の形態1による回転子の成形金型への配置説明用の断面図である。
【
図7】実施の形態1による回転子の成形金型への他の配置例の説明図である。
【
図8】実施の形態1による回転子の磁石、磁性体の挿入例の説明図である。
【
図9】実施の形態1による回転子の製造方法のフローチャートである。
【
図10】実施の形態2による回転子の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施の形態1.
実施の形態1は、回転軸となる主軸の外径側に配置された内径側鉄心と、内径側鉄心の外径側に配置された磁石と、磁石の外径側に配置された外径側鉄心と、内径側鉄心と磁石と外径側鉄心との間に配置された磁性体と、を備え、磁石、磁性体、および外径側鉄心から構成された構造体が、主軸に対して周方向に回転子の極数分配置され、隣り合う構造体の周方向端面の間に樹脂部が形成されているものである。また、この回転子を用いた回転電機に関するものである。また、回転子および回転電機の製造方法に関するものである。
【0011】
以下、実施の形態1に係る回転子、回転電機、および回転子の製造方法、回転電機の製造方法について、回転電機の平面図である
図1、回転子の側面図である
図2、回転子の断面図である
図3、
図4、回転子の成形金型への配置説明図である
図5、回転子の成形金型への配置説明用の断面図である
図6、回転子の成形金型への他の配置例の説明図である
図7、回転子の磁石、磁性体の挿入例の説明図である
図8、および回転子の製造方法のフローチャートである
図9に基づいて説明する。
なお、各図において、同一部分もしくは相当部分は、同一符号で示し、重複する説明は、省略する。
また、以下の説明において、軸(方向)、径(方向)、内径(側、方向)、外径(側、方向)、周(方向)と記載した場合、特に明記しない限り、回転子の回転軸を中心とした円筒座標系における回転軸(方向)、半径(方向)、相対的に径方向中心に向かう(側、方向)、相対的に径方向外側に向かう(側、方向)、回転軸の周(方向)を示すものとする。
【0012】
まず、実施の形態1の回転電機1の全体構造を回転電機1の軸方向端面から見た平面図である
図1に基づいて説明する。
なお、
図1において、先に説明した方向を明確にするため、回転軸中心方向(
図1における上下方向)を径方向(R)、回転軸を中心とした回転方向に沿う方向を周方向(P)と記載している。
【0013】
回転電機1は、固定子2と、回転子4とを備えている。
固定子2は、最外径で一円に繋がる継鉄から径方向にスロット数分突出するティース21と、そのティース21に絶縁層(図示なし)を挟んで巻回された銅線からなる固定子巻線22と備えている。回転子4は、主軸41と一体になっており、回転子4の各構成部材については、
図2~
図4で説明する。
固定子2と回転子4とはエアギャップ3を介して磁束を授受し、固定子巻線22の回転磁界がトルクを発生させ、回転電機1として機能する。
【0014】
次に、回転電機1の回転子4の構成、機能について、
図2~
図4に基づいて説明する。
図2は回転電機1の回転子4を示す側面図である。また、
図3は
図2のA‐A線の断面図であり、
図4は
図2のB‐B線の断面図である。
なお、
図2~
図4において、先に説明した方向を明確にするため軸方向(X)、径方向(R)、および周方向(P)を記載している。軸方向(X)については、
図2、
図4において上下方向である。
図5、
図7で説明する磁性体45を挿入する回転子4の上部端面側を+側、反対側を-側としている。
また、
図5以降においても、方向を明確にするため軸方向(X)、径方向(R)、および周方向(P)を適宜記載する。
【0015】
回転子4は、回転電機1の回転軸と一致する主軸41が中心を貫通しており、主軸41の外径側に内径側鉄心42が配置されている。内径側鉄心42の外径側に磁石43が配置され、磁石43の外径側に外径側鉄心44が配置されている。さらに、内径側鉄心42と磁石43との間、および磁石43と外径側鉄心44との間のいずれか一方、または両方に磁性体45が配置されている。
なお、
図3において、内径側鉄心42、外径側鉄心44と磁石43との間にのみ厚い磁性体45が配置(挿入)されているが、これは図をわかり安くするためである。実際は内径側鉄心42と磁石43との間、磁石43と外径側鉄心44と3との間のいずれか一方または両方に磁性体45が配置されている。
磁性体45は、内径側鉄心42、磁石43、外径側鉄心44の間に加工精度上どうしても生じる隙間をなくするために配置されるものであるため、磁石43、外径側鉄心44に比較すれば薄く、図では表せない。
【0016】
内径側鉄心42の外径側に配置された磁石43、磁性体45、および外径側鉄心44の構造体46が回転中心軸である主軸41に対して周方向に所定の間隔で回転子4の極数分配置されている。
また、回転子4は、磁石43、外径側鉄心44、磁性体45で構成する構造体46の周方向の間隙に樹脂が充填されることで第1樹脂部51が形成されている。
【0017】
主軸41は内径側鉄心42と、通常、例えば溶接などで結合している。
しかし、主軸41と内径側鉄心42とを溶接で結合する工程を省くことができる。この場合、内径側鉄心42の内径を拡げ、主軸41と内径側鉄心42との間に隙間を設けて、第1樹脂部51を成形するときに樹脂で主軸41と内径側鉄心42を結合する。この際、内径側鉄心42の径方向厚みは、磁石43の出す磁束に対して飽和しない磁路を確保できる長さを最小とする。
主軸41と内径側鉄心42との結合を、樹脂で第1樹脂部51を成形するときに行う手順については、
図7で説明する。
【0018】
外径側鉄心44は磁石側内径端面44aで磁石43又は磁石43に接した磁性体45に接している。外径側鉄心44は、
図1に示すように、外径方向に微小な空気層(エアギャップ3)を挟んで、固定子2と磁石43との間の磁路を担う。
【0019】
内径側鉄心42は、
図3では磁石側外径端面42aで磁石43に接している。しかし、内径側鉄心42と磁石43の間に磁性体45が挿入されて場合は、磁石43に接した磁性体45に接している。内径側鉄心42は、周方向に隣接する磁石43との間の磁路を担う。磁石43との周方向の相対位置を決めるために、必要に応じて磁石43の周方向側面に接する当て面として、例えば周方向の突起を内径側鉄心42に設けてもよい。
【0020】
磁性体45は、内径側鉄心42と磁石43との間、または磁石43と外径側鉄心44との間、またはその両方に密着して配置されており、磁石43の磁束を通す。磁性体45は、例えば鉄などを想定しているが、透磁率が空気および樹脂に比較して高い材料であれば、特に材料を限定するものではない。
磁性体45は、内径側鉄心42、外径側鉄心44および磁石43と径方向に密着できる形状とする。例えば、内径側鉄心42、外径側鉄心44および磁石43の接触面が平面の場合は、同様の平面形状を持つ板状の磁性体45とする。
【0021】
樹脂部50は、第1樹脂部51、第2樹脂部52、および第3樹脂部53から構成される。
第1樹脂部51は、構造体46(磁石43、磁性体45、および外径側鉄心44)の各周方向間隙に樹脂が充填されることで形成される。
図4に示すように、第2樹脂部52は、回転子4の軸方向上端面に形成され、第3樹脂部53は、回転子4の軸方向下端面に形成される。
第1樹脂部51、第2樹脂部52、および第3樹脂部53は連結されている。
【0022】
第1樹脂部51によって、磁石43の周方向に短絡する磁束を低減し、磁石43、外径側鉄心44、および磁性体45の周方向の位置決めがされる。
また、第2樹脂部52、および第3樹脂部53によって、磁石43、外径側鉄心44、磁性体45、および第1樹脂部51の軸方向および径方向外側への移動を規制できる。
第1樹脂部51は従来IPM構造のブリッジに相当する構造部材であるが、樹脂は比透磁率が空気と同等であるため周方向に磁束を漏洩させない。
【0023】
次に、回転子4の製造手順について、
図5、
図6に基づいて説明する。具体的には、回転子4の各構成部材を成形金型60に配置し、樹脂部50で一体成形する手順を説明する。
【0024】
図5は、回転子4の成形金型60への配置説明図であり、樹脂部50を成形する前の回転子4の各構成部材を成形金型60に投入した状態を示す平面図である。また、
図6は、回転子の成形金型への配置説明図であり、
図5における平面図をC‐C線で切断し矢印方向から見た断面図の一例である。
【0025】
実施の形態1による回転電機1の回転子4を樹脂一体成形するための成形金型60は、下型61と上型62とを備えている。
下型61は、成形前の回転子部材である主軸41、内径側鉄心42、磁石43、外径側鉄心44、および磁性体45を固定するための金型である。また、下型61は、成形金型60の蓋の底の役割を果たし、下型61と構造体46の下端面との間に第2樹脂部52が形成される。
上型62は、成形金型60を閉じるための蓋の役割を果たし、上型62と構造体46の上端面との間に第3樹脂部53が形成される。
【0026】
下型61の底面61aには、内径側鉄心42の径方向および周方向を位置決めするために位置決めピン66aが内径側鉄心42の外径側に、磁石43及び磁性体45と干渉しない位置に配置されている。さらに、下型61の底面61aには、磁石43の周方向の位置を決めるための位置決めピン66bと、外径側鉄心44の周方向の位置を決めるための位置決めピン66cとが設けられている。
【0027】
位置決めピン66a-66cは、内径側鉄心42、磁石43、および外径側鉄心44の位置決めが成立する限り円筒形状である必要はない。必要に応じてテーパ形状、内径側鉄心42、磁石43、外径側鉄心44の外径に沿う形状、または多角柱形状でもよい。
また、位置決めピン66a-66cの数量に関しても、
図5で示している事例以外で適宜追加、削除してもよい。各々の位置決めピン66a-66cの軸方向高さも、内径側鉄心42、磁石43、外径側鉄心44の外形端面に接触する範囲で自由に設定してよい。
位置決めピン66a-66cの機能を満たすならば、下型61の下型内径端面61cに外径側鉄心44を固定するための突起等で代用してもよい。
【0028】
図6は、図において紙面下方に重力が働いているものとする。
回転子4の主軸41を下型61の底面61aの中央に設けられた嵌め合い部61bに挿入する。下型61に回転子4の各部材を投入する際に、下型61の底面61aにそのまま載せれば、第3樹脂部53が成形できない。このため、スペーサ63で内径側鉄心42、磁石43、磁性体45、外径側鉄心44の軸方向底面61aを第3樹脂部53の軸方向厚み分浮かせて支持する。
第1樹脂部51と第3樹脂部53とを分断しない限り、スペーサ63は多角柱でもピン形状でもよい。また、外径側鉄心44、磁石43、磁性体45、内径側鉄心42の軸方向を決めるためのスペーサ63は、一体となっていてもよいし、それぞれ独立していてもよい。通常、磁性体45の板厚は磁石43と比べて薄いと考えられるため、磁石43と磁性体45の軸方向を決めるためのスペーサ63は、一体とした方が望ましい。また、スペーサ63を成形する樹脂と同一材質とし、成形後に第3樹脂部53の一部になるように形成してもよい。
【0029】
ここで、先に説明した主軸41と内径側鉄心42とを結合するための工程を省く場合、すなわち、第1樹脂部51を成形するときに樹脂で主軸41と内径側鉄心42を結合する場合の手順を
図7に基づいて説明する。
図7は、回転子4の成形金型60への他の配置例の説明図である。
なお、
図5と同じ部分については説明を省略し、差異部分のみ説明する。
図6で説明したように、回転子4の主軸41は下型61の底面61aの中央に設けられた嵌め合い部61bに挿入されている。
図7では、内径側鉄心42の径方向厚みを小さくして内径側鉄心42と主軸41との間に隙間を設けている。内径側鉄心42の径方向および周方向の位置を決めるための位置決めピン66dを内径側鉄心42の内径側に配置している。
位置決めピン66dの形状、数量、高さ等の条件については、先に説明した位置決めピン66a-66cの条件と同じである。
【0030】
成形金型60内に内径側鉄心42、磁石43、外径側鉄心44を配置する際、内径側鉄心42、外径側鉄心44、および磁石43の加工精度に起因して、内径側鉄心42、および外径側鉄心44と磁石43との間に隙間が形成される。この隙間を低減する(望ましくは無くする)ために、内径側鉄心42と磁石43との間、又は磁石43と外径側鉄心44との間、又はその両方に磁性体45を回転子4の軸方向端面上型側から軸方向に沿って配置(挿入)する。
【0031】
磁性体45を配置する前に、内径側鉄心42、および外径側鉄心44と磁石43との間に発生した隙間をあらかじめ測定しておき、その隙間と同じ寸法の板厚を有する磁性体45を準備することで、磁性体45の使用数を減らすることができる。
または、磁性体45として、想定される隙間よりも薄い板厚のものを含め複数種類の板厚のものを準備しておくことで、隙間の測定、および隙間幅の磁性体45を準備する作業が不要となり、磁性体45を配置作業の効率化が図れる。
すなわち、内径側鉄心42、磁石43、および外径側鉄心44を配置した後、内径側鉄心42、外径側鉄心44と磁石43との間の隙間に、隙間が埋まるまで準備した薄い板厚の磁性体45を挿入することで、作業の効率化が図れる。
【0032】
さらに、磁性体45の配置(挿入)の作業効率を向上させる作業手順を
図8に基づいて説明する。
図8は、回転子の磁石、磁性体の挿入例の説明図である。
なお、
図8では、
図3-
図7で説明した磁石43の軸方向長さとほぼ同じ長さである磁性体45と区別するために、磁性体45Aとしている。
図8のように、磁石43の軸方向長さの倍以上となる長さの磁性体45Aを準備する。磁性体45Aを磁石43の両面に密着する形状となるように折り、折った磁性体45Aの間に磁石43を挟む。磁石43を磁性体45Aと共に押して、内径側鉄心42と外径側鉄心44との間に軸方向(X)の+側から-側に挿入する。このように、磁石43と磁性体45Aを一体として挿入することで作業効率の向上が図れる。
【0033】
なお、磁石43と磁性体45Aを一体として、内径側鉄心42と外径側鉄心44との間に挿入した後、内径側鉄心42と磁性体45Aとの間、および磁性体45Aと外径側鉄心44との間に隙間が存在することが想定される。この場合は、予め準備した薄い板厚の磁性体45をこの隙間に配置(挿入)して、隙間を可能な限り低減する。
【0034】
成形金型60内には、任意の位置に樹脂を注入する注入口が設けられており、樹脂を樹脂部50に充填する。
内径側鉄心42と磁石43との間、又は磁石43と外径側鉄心44との間、又はその両方、に密着するように磁性体45を配置することによって、外径側鉄心44の外周側の最外径端面44bは、下型61の下型内径端面61cに接して押し付けられる。
このように、成形金型60に外径側鉄心44を押し付けながら樹脂を充填するため、内径側鉄心42、磁石43、磁性体45、外径側鉄心44が密着し、さらに回転子4の外径も良好な真円度が得られる。
なお、回転子4に充填する樹脂は熱硬化性樹脂を想定しているが、透磁率が鉄心に比して低い材料であれば、特に材料を限定するものではない。例えば、セメント又はガラス質の材料でもよい。
【0035】
また、
図7で説明した主軸41と内径側鉄心42とを結合するための工程を省く場合も、主軸41を成形時に下型61の底面61aの中央に設けられた嵌め合い部61bに挿入するので、成形金型60内で同軸度を確保した状態で一体成形することができる。
【0036】
ここで、以上説明した回転子4の製造方法を
図9のフローチャートに基づいて、まとめて説明する。
なお、ここでは主軸41と内径側鉄心42とは、溶接で結合されている場合を説明する。
図9の回転子4の製造工程は、以下に説明するステップ01(S01)からステップ03(S03)の各工程から成るものである。
【0037】
ステップ01(S01)の回転子部材配置工程では、成形金型60の内部に、内径側鉄心42の外径側に磁石43を配置し、さら磁石43の外径側に外径側鉄心44を配置して、内径側鉄心42の外径側に1組の磁石43と外径側鉄心44を配置し、順次回転子4の極数組の磁石43と外径側鉄心44を内径側鉄心42の外径側に配置する。
【0038】
回転子部材配置工程の具体的な手順を説明する。
成形金型60の下型61の底面61aに内径側鉄心42、磁石43、外径側鉄心44の位置決めをするための位置決めピン66a-66cを配置する。次に、下型61の底面61aに内径側鉄心42、磁石43、外径側鉄心44を浮かせて、第3樹脂部53を形成するためのスペーサ63を設置する。
【0039】
次に、回転子4の主軸41を下型61の底面61aの中央に設けられた嵌め合い部61bに挿入することで、内径側鉄心42を下型61に配置する。
次に、磁石43、外径側鉄心44を下型61に順次配置していく。配置順序としては、内径側鉄心42の外径側に磁石43、外径側鉄心44を1組として順次配置していく。すなわち、磁石43を内径側鉄心42の外径側に設置し、その磁石43の外径側に外径側鉄心44を設置する。
【0040】
次に内径側鉄心42の外径側に配置が完了した1組の磁石43、外径側鉄心44の隣に内径側鉄心42の外径側に磁石43を配置し、その外径側に外径側鉄心44を配置する。
このように、回転子4の極数分の磁石43、外径側鉄心44の組を内径側鉄心42の外径側に順次配置していく。
【0041】
なお、内径側鉄心42の外径側に磁石43、外径側鉄心44配置していく方法としては、回転子4の極数分の磁石43をまず配置し、次に回転子4の極数分の外径側鉄心44を配置する方法もある。
【0042】
ステップ02(S02)の磁性体挿入工程では、内径側鉄心42と磁石43との間、又は磁石43と外径側鉄心44との間、又はその両方に磁性体45を挿入して、磁石43、外径側鉄心44、および磁性体45で構造体46を構成すると共に、成形金型60の内壁面(下型内径端面61c)に外径側鉄心44の最外径端面44bを押しつける。
【0043】
このとき、隙間を減少する(望ましくは隙間をなくす)ために、1枚の磁性体45を挿入する場合と複数枚の磁性体45を挿入する場合がある。
1枚の磁性体45を挿入する場合は、隙間の幅を測定して、隙間幅の厚さを持つ磁性体45を準備して、挿入する。
また、複数枚の磁性体45を挿入する場合は、厚さの薄い磁性体45を複数枚準備して、複数枚の磁性体45を挿入して、隙間を減少させる。
これで、成形金型60の下型61への回転子4の各部材(主軸41、内径側鉄心42、磁石43、外径側鉄心44、磁性体45)の配置が完了する。
【0044】
ステップ03(S03)の樹脂注入工程では、成形金型60の樹脂注入孔から樹脂を注入して、隣り合う構造体46の周方向端面の間、および構造体46の軸方向両端面に樹脂部50を形成する。
【0045】
樹脂注入工程の具体的な手順を説明する。
この工程では、回転子4の各部材の配置が完了した成形金型60に樹脂を注入して、樹脂部50を形成するとともに、回転子4の各部材の一体化を図る。
回転子4の各部材の配置が完了した成形金型60の下型61の上に上型62を設置する。
次に、成形金型60の樹脂注入口から樹脂を注入して、樹脂部50(第1樹脂部51、第2樹脂部52、第3樹脂部53)を形成する。
すなわち、構造体46の間に第1樹脂部51が形成され、構造体46の上端面側に第2樹脂部52が形成され、構造体46の下端面側に第3樹脂部53が形成される。
成形金型60に樹脂が注入され、樹脂部50(第1樹脂部51、第2樹脂部52、第3樹脂部53)が形成されることで、回転子4の各部材が一体化される。
【0046】
以上、その構造を説明した回転子4と、回転子4の径方向に対向して固定子2を配置することで
図1の回転電機1が構成される。
【0047】
図9のフローチャートで説明した回転子の製造方法を用いて製造された回転子4を用いて、回転子4の外径側にエアギャップ3を介して固定子2を配置する固定子配置工程を備えることで、回転電機1が製造できる。
【0048】
実施の形態1による回転子4および回転電機1では、従来のIPM構造でブリッジに相当する箇所が樹脂で充填されているため、周方向の漏れ磁束が低減でき、さらに、内径側鉄心42、磁石43、および外径側鉄心44の加工精度に起因する磁石43と内径側鉄心42、外径側鉄心44との間の隙間を、磁石43の磁束を通す磁性体45で埋めることで、磁石43の持つ磁束を有効活用することができる。
【0049】
さらに、固定子2と回転子4の径方向の隙間であるエアギャップ3も、主軸41および外径側鉄心44を成形金型60で位置決めして成形するため、寸法の安定化を図ることができ、エアギャップ3の縮小、真円度向上を図ることができる。
【0050】
また、実施の形態1による回転子4の説明において、一例として8極の円筒形の回転子4を例示したが、実施の形態1の構成を踏襲する限り、他の極数の回転子であってもよい。また外径側鉄心44の外径曲率が回転子最外径の曲率よりも大きな、所謂花びら型回転子であってもよい。
【0051】
以上説明の通り、実施の形態1の回転電機1の回転子4は、回転軸となる主軸41と、主軸41の外径側に配置された内径側鉄心42と、内径側鉄心42の外径側に配置された磁石43と、磁石43の外径側に配置された外径側鉄心44とを備えているものである。さらに、回転電機1の回転子4は、内径側鉄心42と磁石43との間、又は磁石43と外径側鉄心44との間、又はその両方に密着して配置された、磁石43の磁束を通す磁性体45とを備えている。さらに、回転電機1の回転子4は、内径側鉄心42の外径側に、磁石43、外径側鉄心44、および磁性体45から構成された構造体46が、主軸41に対して周方向に回転子4の極数分配置されている。さらに、回転電機1の回転子4は、隣り合う構造体46の周方向端面の間に第1樹脂部51が形成され、構造体46の軸方向両端面には、第2樹脂部52、第3樹脂部53が形成されている。ここで、第1樹脂部51、第2樹脂部52、第3樹脂部53は、連結して樹脂部50を形成している。
【0052】
また、実施の形態1の回転電機1は、上述の回転子4と径方向に対向して配置された固定子2を備えたものである。
【0053】
また、実施の形態1の回転子4の製造方法は、回転子部材配置工程では、成形金型60の内部に回転子部材(主軸41、内径側鉄心42、磁石43、外径側鉄心44)を配置する回転子部材配置工程と、内径側鉄心42と磁石43との間、又は磁石43と外径側鉄心44との間、又はその両方に磁性体45を挿入して、成形金型60の内壁面に外径側鉄心44の最外径端面44bを押しつける磁性体挿入工程と、成形金型60の樹脂注入孔から樹脂を注入して、隣り合う構造体46の周方向端面の間、および構造体46の軸方向両端面に樹脂部50を形成する樹脂注入工程を備えたものである。
【0054】
実施の形態1による回転子4及び回転電機1、並びに回転子および回転子の製造方法によれば、IPM回転子の磁石43の周方向の漏れ磁束を低減できる。また、内径側鉄心42、外径側鉄心44、および磁石43の加工精度に起因する、内径側鉄心42、外径側鉄心44、磁石との間に存在する隙間を低減する(望ましくは無くす)こととができる。
この結果、磁石43の持つ磁束を有効活用することができ、かつエアギャップ寸法の安定化を図ることが可能な回転子4及び回転電機1、並びに回転子および回転電機の製造方法を得ることができる。
【0055】
実施の形態2.
実施の形態2は、回転子の総磁極の半数を鉄心で置き換え、磁石の厚みを増やしたコンシクエントポール構造としたものである。
【0056】
実施の形態2の回転電機の回転子について、回転子の断面図である
図10に基づいて、実施の形態1との差異を中心に説明する。
実施の形態2の構成図において、実施の形態1と同一あるいは相当部分は、同一の符号を付している。
なお、実施の形態1と区別するため、実施の形態2では、回転電機100、回転子104、内径側鉄心142、磁石143、外径側鉄心144、磁性体145、構造体146、第1樹脂部151としている。
【0057】
実施の形態1では、磁石、外径側鉄心を回転子の磁極数と同数配置して構成していたが、実施の形態2では部品点数を削減し、さらに磁石の加工費を削減できる構造を提供する。
【0058】
図10に示すように、回転子104は総磁極数(8)の半数(4)を鉄心で置き換え、磁石143の厚みを増やしたコンシクエントポール構造をとる。
回転子104はその磁極数の半数の同じ極性を径方向外側に有する磁石143が周方向に配置されている。磁石143の外径端面に外径側鉄心144、又は外径側鉄心144と密着した磁性体145が密着している。磁石143の内径端面に内径側鉄心142、又は内径側鉄心142と密着した磁性体145が密着している。
磁石143、磁性体145、および外径側鉄心144で構造体146を構成している。
なお、
図10では、磁石143の径方向外側をN極としているが、S極としてもよい。
【0059】
内径側鉄心142は、周方向に隣接する2つの構造体146の間に収まるように径方向に突出した突出部147を有しており、内径側鉄心142の突出部147の最外径端面は、外径側鉄心144の最外径端面144bと同一半径の円弧として、磁極部を形成する。
【0060】
内径側鉄心142、突出部147、および構造体146(磁石143、磁性体145、外径側鉄心144)に挟まれた間隙に樹脂が充填されて、第1樹脂部151が形成される。
【0061】
突出部147は、固定子2(図示なし)との磁気回路を形成する磁極部において、磁束の流れを矯正するためのフラックスバリア148を設けてもよい。
【0062】
磁性体145は、1枚で構成することもできるし、複数の薄板で構成することもできる。
また、実施の形態1の
図8で説明したように折った磁性体145の間に磁石143を挟んで、内径側鉄心142と外径側鉄心144との間に挿入してもよい。
【0063】
以上、その構造を説明した回転子104と、回転子104の径方向に対向して固定子(図示なし)を配置することで回転電機100が構成される。
【0064】
実施の形態2における回転子及び回転電機100によれば、実施の形態1における利点を維持しつつ、部品点数を半数近く抑えることができ、磁石143の個数の削減も含めた加工費の抑制が可能である。
【0065】
本願は、様々な例示的な実施の形態及び実施例が記載されているが、1つ、または複数の実施の形態に記載された様々な特徴、態様、及び機能は特定の実施の形態の適用に限られるものではなく、単独で、または様々な組合せで実施の形態に適用可能である。
従って、例示されていない無数の変形例が、本願に開示される技術の範囲内において想定される。例えば、少なくとも1つの構成要素を変形する場合、追加する場合または省略する場合、さらには、少なくとも1つの構成要素を抽出し、他の実施の形態の構成要素と組合せる場合が含まれるものとする。
【符号の説明】
【0066】
1,100 回転電機、2 固定子、3 エアギャップ、4,104 回転子、
21 ティース、22 固定子巻線、41 主軸、42,142 内径側鉄心、
42a 磁石側外径端面、43,143 磁石、44,144 外径側鉄心、
44a 磁石側内径端面、44b 最外径端面、45,45A,145 磁性体、
46,146 構造体、50 樹脂部、51,151 第1樹脂部、52 第2樹脂部、53 第3樹脂部、60 成形金型、61 下型、61a 底面、61b 嵌め合い部、61c 下型内径端面、62 上型、63 スペーサ、
66a,66b,66c,66d 位置決めピン、147 突出部、
148 フラックスバリア。