(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-30
(45)【発行日】2025-05-12
(54)【発明の名称】複合材ストリンガアセンブリの形成方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
B29C 70/46 20060101AFI20250501BHJP
B29C 43/12 20060101ALI20250501BHJP
B29C 70/44 20060101ALI20250501BHJP
B64C 1/06 20060101ALI20250501BHJP
B64C 3/18 20060101ALI20250501BHJP
B64C 1/00 20060101ALI20250501BHJP
【FI】
B29C70/46
B29C43/12
B29C70/44
B64C1/06
B64C3/18
B64C1/00 B
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021165829
(22)【出願日】2021-10-08
【審査請求日】2024-09-20
(32)【優先日】2020-10-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500520743
【氏名又は名称】ザ・ボーイング・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】The Boeing Company
(74)【代理人】
【識別番号】100135389
【氏名又は名称】臼井 尚
(74)【代理人】
【識別番号】100086380
【氏名又は名称】吉田 稔
(74)【代理人】
【識別番号】100103078
【氏名又は名称】田中 達也
(74)【代理人】
【識別番号】100130650
【氏名又は名称】鈴木 泰光
(74)【代理人】
【識別番号】100168099
【氏名又は名称】鈴木 伸太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100168044
【氏名又は名称】小淵 景太
(74)【代理人】
【識別番号】100200609
【氏名又は名称】齊藤 智和
(74)【代理人】
【識別番号】100217467
【氏名又は名称】鶴崎 一磨
(72)【発明者】
【氏名】リチャード アレキサンダー プラウゼ
(72)【発明者】
【氏名】リチャード イー.ヘルス
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュー イー.モディン
(72)【発明者】
【氏名】バイロン ジェームス オートリー
(72)【発明者】
【氏名】アイヴァン ギルバート ラミレス
【審査官】大谷 謙仁
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第98/054046(WO,A2)
【文献】米国特許第04126659(US,A)
【文献】国際公開第2004/011169(WO,A2)
【文献】特開2019-001152(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第03398759(EP,A2)
【文献】特開2011-235635(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0277918(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 70/46
B29C 43/12
B29C 70/44
B64C 1/06
B64C 3/18
B64C 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複合材ストリンガアセンブリの作製において複合材チャージを成形するための袋状体であって、
発泡体で構成されているとともにベース面及びハット成形面を含む袋状体コアと、
弾性材料で構成された袋状体膜と、を備え、前記袋状体膜は、前記袋状体コアを囲んでおり、前記袋状体膜の少なくとも一部が前記ベース面及び前記ハット成形面の各々に接触しており、各々に沿っており、及び、各々を圧縮している、袋状体。
【請求項2】
前記袋状体膜は、前記袋状体コアを超えて延びる延出部を有する、請求項1に記載の袋状体。
【請求項3】
さらに、前記袋状体膜の前記延出部に封着された端部材を備え、前記端部材は、前記袋状体コアに流体接続された通し穴を有する、請求項2に記載の袋状体。
【請求項4】
前記通し穴は、大気又は真空源に選択的に接続可能である、請求項3に記載の袋状体。
【請求項5】
前記端部材は、第1コンポーネントと、前記第1コンポーネントに着脱可能に接続されているとともに、前記第1コンポーネントとの間にチャネルを形成する第2コンポーネントと、を含み、
前記袋状体膜の前記延出部は、前記第1コンポーネントを囲んでおり、前記第1コンポーネントに沿っており、及び、前記第1コンポーネントを圧縮しているとともに、前記延出部の一部が前記チャネル内に入り込んで前記第1コンポーネントと前記第2コンポーネントの間で圧縮されている、請求項3に記載の袋状体。
【請求項6】
前記第1コンポーネントと前記第2コンポーネントとは、ねじを用いて着脱可能に接続されており、前記通し穴が前記ねじを貫通する、請求項5に記載の袋状体。
【請求項7】
前記袋状体膜は、前記延出部から離間するように前記袋状体コアを超えて延びる第2延出部を含んでおり、前記袋状体コアは、前記延出部と前記第2延出部との間に位置する、請求項2~6のいずれか1つに記載の袋状体。
【請求項8】
前記第2延出部は、封止されており、気体を透過させない、請求項7に記載の袋状体。
【請求項9】
さらに、前記袋状体膜の前記第2延出部に封着された第2端部材を備え、前記第2端部材は、前記袋状体コアに流体接続された第2端部材通し穴を有する、請求項7に記載の袋状体。
【請求項10】
前記袋状体コアを構成する前記発泡体は、ポリエチレンテレフタレート発泡体を含む、請求項1~9のいずれか1つに記載の袋状体。
【請求項11】
前記袋状体膜を構成する前記弾性材料は、シリコーン、バイトン、及びブチルゴムから成る群より選択される1つ又は複数の材料を含む、請求項1~10のいずれか1つに記載の袋状体。
【請求項12】
前記袋状体膜は、前記袋状体コアに沿って少なくとも約5%伸張されている、請求項1~11のいずれか1つに記載の袋状体。
【請求項13】
袋状体組立てツールを用いて袋状体を組み立てる方法であって、前記袋状体組立てツールは、袋状体組立てキャビティを有しており、当該方法は、
膜内表面を有する袋状体膜を、キャビティ表面を有する前記袋状体組立てキャビティの中に配置することと、
前記袋状体組立てツールの各端部において、前記袋状体膜を前記キャビティ表面に封着することと、
前記キャビティ表面と前記袋状体膜との間における第1圧力を、前記膜内表面における第2圧力に対して低減させ、これにより、前記袋状体膜を伸張させるとともに、前記袋状体膜を前記キャビティ表面に沿わせることと、
前記袋状体膜を前記キャビティ表面に沿わせた状態で、袋状体コアを前記袋状体膜の内方へ挿入することと、
前記第1圧力と前記第2圧力とを等しくし、これにより、前記袋状体膜を収縮させるとともに前記袋状体膜の少なくとも一部を前記袋状体コアに沿わせることと、を含む方法。
【請求項14】
前記第2圧力は、大気圧レベルに維持される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記キャビティ表面の断面形状は、前記袋状体コアの断面形状と一致する、請求項13又は14に記載の方法。
【請求項16】
前記袋状体膜を前記キャビティ表面に封着することは、ウェッジを前記袋状体膜の内方へ挿入することにより、前記袋状体膜を前記キャビティ表面に押し付けることを含み、
前記ウェッジは、ウェッジ通し穴を有しており、
前記袋状体コアを前記袋状体膜の内方へ挿入することは、前記袋状体コアを前記ウェッジ通し穴から押し入れることを含む、請求項13~15のいずれか1つに記載の方法。
【請求項17】
さらに、前記袋状体膜の延出部に端部材を封着することを含み、
前記端部材は、前記袋状体コアに流体接続された通し穴を有しており、
前記延出部は、前記袋状体コアを超えて延びる、請求項13~16のいずれか1つに記載の方法。
【請求項18】
前記端部材は、第1コンポーネント及び第2コンポーネントを含み、
前記延出部に前記端部材を封着することは、
前記第1コンポーネントを前記袋状体膜の前記延出部の内方へ挿入することと、
前記第2コンポーネントを前記第1コンポーネントに取り付け、この際に、前記第1コンポーネントと前記第2コンポーネントの間に形成されるチャネル内に前記袋状体膜の前記延出部の一部が入り込んで、当該部分が前記チャネル内で前記第1コンポーネントと前記第2コンポーネントの間で圧縮されるようにすることと、を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
さらに、前記袋状体膜に第2延出部を封着することを含み、
前記第2延出部は、前記延出部から離間するように前記袋状体コアを超えて延びており、前記袋状体コアは、前記延出部と前記第2延出部との間に位置する、請求項17又は18に記載の方法。
【請求項20】
前記袋状体組立てツールは、前記キャビティ表面から前記袋状体組立てキャビティの内方に突出する内側突出部を有する、請求項13~19のいずれか1つに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、複合材ストリンガアセンブリを形成するための方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
複合材料は、限定するものではないが例えば航空機の製造など、様々な用途において注目が高まっている。具体的には、複合材料は優れた強度重量比を有しており、軽量さが求められる用途に非常に適している。例えば、航空機の胴体及び翼は、複合材シートを用いて作製される場合がある。複合材シートは、アセンブリ全体の剛性をさらに高めるために、複合材ストリンガで強化されている。
【0003】
多くの場合、複合材ストリンガ、胴体セクション、及び翼外板は、別個のコンポーネントとして作製される。別個に作製されたこれらのコンポーネントは、例えばファスナや接着剤を用いて取り付けられる。場合によっては、コンポーネント作製ステップのいくつかは、重複する。例えば、ストリンガ、胴体セクション、及び/又は翼外板は、まとめて共硬化される。このような共硬化処理は、これらのコンポーネントの取付けのためにも用いられる。
【0004】
いずれの場合においても、複合材構造の作製には、高度で複雑な機器が必要とされる。さらに、多くの航空機コンポーネントは大型であり、このことも、作製プロセス及び機器を複雑にする要因となっている。例えば、複合材シート上で複合材ストリンガを成形するためには、支持構造(例えばマンドレル)が必要になる。この支持構造によって、複合材ストリンガの最終形状が規定される。先ず、この支持構造を複合材ストリンガと複合材シートの間に配置し、このシートを両コンポーネントの形状に緊密に沿わせる必要がある。しかも、この支持構造は、後に複合材ストリンガと複合材シートの間に形成されるキャビティから取り外す必要がある。この取り外し処理も、従来の支持構造を用いる場合には困難であり、ストリンガが長尺である場合には特に困難である。
【発明の概要】
【0005】
複合材ストリンガアセンブリを作製するための方法及びシステムが開示されており、より具体的には、そのようなストリンガアセンブリの作製において複合材チャージを成形するための方法及びシステムが開示されている。システムは、袋状体コアと袋状体膜とを有する袋状体を含む。前記袋状体コアは、発泡体で構成されている。前記袋状体膜は、弾性材料で構成されているとともに、前記袋状体コアを囲んでいる。複合材ストリンガアセンブリの作製時において、前記袋状体は、チャージベース部の上に配置される。前記チャージベース部は、例えば胴体や翼外板など、ストリンガベース部を構成する部分になる。次いで、前記袋状体の上にチャージハット部が配置され、前記袋状体に沿わせられる。前記袋状体膜と前記袋状体コアとの組み合わせは、当該作製処理において前記ストリンガアセンブリを硬化させる間、支持構造として機能する。いくつかの実施例において、前記袋状体コアは、前記袋状体を前記ストリンガアセンブリのキャビティから取り外すために、潰れさせることが可能である。
【0006】
いくつかの実施例によれば、複合材ストリンガアセンブリの作製において複合材チャージを成形するための袋状体は、袋状体コアと袋状体膜を有する。前記袋状体コアは、発泡体で構成されているとともに、ベース面及びハット成形面を含む。前記袋状体膜は、弾性材料で構成されている。前記袋状体膜は、前記袋状体コアを囲んでいる。前記袋状体膜の少なくとも一部は、前記ベース面及び前記ハット成形面の各々に接触しており、各々に沿っており、及び、各々を圧縮している。
【0007】
いくつかの実施例によれば、袋状体組立てキャビティを有する袋状体組立てツールを用いて袋状体を組み立てる方法は、膜内表面を有する袋状体膜を、キャビティ表面を有する前記袋状体組立てキャビティの中に配置することを含む。前記方法は、さらに、前記袋状体組立てツールの各端部において、前記袋状体膜を前記キャビティ表面に封着することと、前記キャビティ表面と前記袋状体膜との間における第1圧力を、前記膜内表面における第2圧力に対して低減させ、これにより、前記袋状体膜を伸張させるとともに、前記袋状体膜を前記キャビティ表面に沿わせることと、を含む。前記方法は、さらに、前記袋状体膜を前記キャビティ表面に沿わせた状態で、袋状体コアを前記袋状体膜の内方に挿入することと、前記第1圧力と前記第2圧力とを等しくし、これにより、前記袋状体膜を収縮させるとともに前記袋状体膜の少なくとも一部を前記袋状体コアに沿わせることと、を含む。
【0008】
いくつかの実施例によれば、袋状体を含むストリンガ成形ツールを用いて、複合材チャージから複合材ストリンガアセンブリを作製する方法は、前記ストリンガ成形ツールのツールベース上に配置されたチャージベース部の上に前記袋状体を配置することと、袋状体コア及び袋状体膜を含む前記袋状体の上にチャージハット部を配置することと、前記チャージハット部の上に前記ストリンガ成形ツールの可撓性カバーを配置することと、前記可撓性カバーを前記ツールベースに封着することと、を含む。前記方法は、さらに、前記可撓性カバーと前記ツールベースとの間における第1成形圧を、カバー外表面における第2成形圧及び前記袋状体の内部における第3成形圧よりも低くし、これにより、前記チャージハット部を前記可撓性カバーによって前記袋状体に押し付けることを含む。前記方法は、さらに、前記チャージハット部が前記袋状体に押し付けられた状態で前記チャージベース部及び前記チャージハット部を硬化させ、これにより、前記複合材ストリンガアセンブリを構成するストリンガベース部及びストリンガハット部を形成することと、前記袋状体をストリンガキャビティから取り外すことと、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1A】いくつかの実施例による、チャージベース部とチャージハット部を含んでおり、複合材ストリンガアセンブリの作製に使用される複合材チャージを示す概略図である。
【
図1B】いくつかの実施例による、
図1Aに示す複合材チャージから作製されたものであり、ストリンガベース部とストリンガハット部を含む複合材ストリンガアセンブリを示す概略図である。
【
図2A-2C】いくつかの実施例による、複合材チャージを成形するための袋状体を示す概略断面図である。
【
図3】いくつかの実施例による、袋状体組立てツールを用いて袋状体を組み立てるプロセスを示すフローチャートである。
【
図4A-4C】いくつかの実施例による、袋状体組立てツールの袋状体組立てキャビティ内に袋状体膜を配置する際の袋状体組立てツールを示す概略断面図である。
【
図5】いくつかの実施例による、袋状体組立てツールのキャビティ表面に袋状体膜を封着する際の袋状体組立てツールを示す概略断面図である。
【
図6A-6F】いくつかの実施例による、袋状体膜を伸張させてキャビティ表面に沿った形状にする際の袋状体組立てツールを示す概略断面図である。
【
図7A-7C】いくつかの実施例による、キャビティ表面に沿わせた袋状体膜の内方へ袋状体コアを挿入する際の袋状体組立てツールを示す概略断面図である。
【
図8A-8B】いくつかの実施例による、袋状体膜を袋状体コアに沿った形状にする際の袋状体組立てツールを示す概略断面図である。
【
図9A-9B】いくつかの実施例による、袋状体を袋状体組立てツールから取り外す様子を示す概略断面図である。
【
図10A-10C】いくつかの実施例による、端部材を袋状体の延出部に封着する様子を示す概略断面図である。
【
図11A-11B】いくつかの実施例による、袋状体に異なる端部材を取り付けた2つの例を示す概略断面図である。
【
図12】いくつかの実施例による、ストリンガ成形ツールを用いて複合材チャージから複合材ストリンガアセンブリを作製するプロセスを示すフローチャートである。
【
図13A-13D】いくつかの実施例による、複合材ストリンガの作製のいくつかの段階を示す概略図である。
【
図14】いくつかの実施例による、航空機の製造及び使用方法のプロセスを示すフローチャートである。
【
図15】いくつかの実施例による航空機の例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下の説明において、本開示の概念が十分に理解されるように、多くの具体的な詳細事項を提示している。ただし、本開示の概念は、いくつかの実施例では、このような具体的な詳細事項のいくつか又はすべてを省いて実施される。また、他の実施例では、本開示の概念が不要に曖昧になることを避けるため、既知の処理についての詳細を省いている。また、幾つかの概念は、特定の実施例に関連して説明されているが、これらの実施例が本開示を限定することを意図するものでないことは理解されよう。
<導入>
【0011】
上述したように、複合材ストリンガ、及び、当該複合材ストリンガを含むアセンブリの作製は、困難であるとともに、複雑なツールを必要とし、特に、ハット型ストリンガとストリンガベース部を同時に形成する場合、より具体的には、共硬化する場合には、その傾向が顕著である。以下では、
図1A及び
図1Bを参照して、その複雑さ及び困難さについて説明する。
図1Aは、複合材チャージ(composite charge)180を示す概略図であり、当該複合材チャージを用いて、
図1Bに示す複合材ストリンガアセンブリ190が作製される。複合材チャージ180は、チャージベース部182及びチャージハット部181を含む。
図1Aは、成形された状態の複合材チャージ180を示しているが、チャージベース部182及び/又はチャージハット部181の最初の形状が図示とは異なる場合があることは、当業者には理解されよう。いくつかの実施例において、チャージハット部181は、例えば
図1Aに点線で示すような平坦な構造体として提供される。いくつかの実施例において、チャージベース部182及び/又はチャージハット部181は、後述するストリンガ成形ツールを用いて成形される。簡略化のため、
図1A及び
図1Bには、袋状体を示していない。
【0012】
図1Bは、複合材ストリンガアセンブリ190を示す概略図であり、当該アセンブリは、ストリンガベース部192及びストリンガハット部191を含む。ストリンガハット部191は、ストリンガとも称される。この複合材ストリンガアセンブリ190は、いくつかの実施例において、
図1Aに示す複合材チャージ180から作製される。当業者には理解されるように、ストリンガベース部192は、例えば胴体セクションや翼外板など、他のコンポーネントの一部である場合が多い。ストリンガベース部192は、複合材チャージ180のチャージベース部182から形成される。ストリンガハット部191は、複合材チャージ180のチャージハット部181から形成される。ストリンガベース部192とストリンガハット部191は、これらのコンポーネントが形成される際に、例えば共硬化によって互いに接合されている。
【0013】
図1Bに示すように、ストリンガベース部192とストリンガハット部191によって、ストリンガキャビティ193が画成される。複合材ストリンガアセンブリ190を形成する時は、ストリンガベース部192とストリンガハット部191を、より具体的には、チャージベース部182とチャージハット部181を、内側から(ストリンガキャビティ193内部から)支持する必要がある。この支持は、ストリンガキャビティ193の内部に袋状体を配置することで実現される。袋状体は、ストリンガベース部192とストリンガハット部191の各々に沿った形状である。ただし、この袋状体は、複合材ストリンガアセンブリ190の形成後に、ストリンガキャビティ193から取り外す必要がある。このように、支持、形状適合、及び取外しという特性の組み合わせが、袋状体の設計及び構造を困難にする要因となっている。例えば、従来の袋状体は、すべての処理段階を通じて形状が変わらないので、取り外しが困難である。
【0014】
本明細書に記載の方法及びシステムは、これらの課題に対処するように構成された袋状体を用いる。具体的には、袋状体は、袋状体コア及び袋状体膜を含む。袋状体コアは、発泡体で構成されており、(例えば、取り外し時に袋状体を潰すことによって)袋状体に流体を分散させることが可能である。また、袋状体膜は、弾性材料で構成されている。袋状体膜は、袋状体コアを囲っており、袋状体コアをチャージハット部181及びチャージベース部182から分離している。袋状体膜の少なくとも一部は、袋状体コアの表面に接触しており、当該表面に沿っており、及び、当該表面を圧縮している。換言すると、袋状体膜の当該部分は、袋状体コアに沿って引き伸ばされている。このように引き伸ばされることによって、袋状体膜の形状適合が保証される。さらに、袋状体膜が弾性であることによって、袋状体の組み立てが可能である。具体的には、袋状体コアを袋状体膜の内方へ挿入する際は、袋状体膜は伸張される。袋状体膜は、小さめのエラストマースリーブとも称される。また、袋状体コアは、発泡体マンドレルとも称される。
<袋状体の実施例>
【0015】
袋状体の特徴及び実施例を、
図2A、
図2B、及び
図2Cを参照してさらに説明する。具体的には、
図2Aは、袋状体110の長手方向に垂直な面(YZ平面)で切り取った、袋状体110の断面を示す図である。本開示の便宜上、袋状体110の長手方向は、X軸に沿って延びるものとする。
図2Bは、袋状体110の長手方向を含む面(XZ平面)で切り取った、袋状体110の断面を示す図である。
図2Bは、袋状体110のXZ平面の他の断面図であり、袋状体110の他の端部材(end fitting)の例を示している。
【0016】
図2Aを参照すると、袋状体110は、袋状体コア120と、この袋状体コア120を囲う袋状体膜130と、を含む。
図2Aの断面は、
図1Aに示す複合材チャージ180の断面に対応するとともに、
図1Bに示す複合材ストリンガアセンブリ190の断面に対応する。より具体的には、袋状体膜130の輪郭(例えば、袋状体膜130の膜外表面138の輪郭)は、ストリンガキャビティ193の輪郭と同じである。袋状体110を用いて複合材チャージ180を成形する場合、袋状体膜130が、より具体的には、膜外表面138が複合材チャージ180に接触する。袋状体コア120は、袋状体膜130の形状の維持を助け、よって、複合材チャージ180の形状を規定するように機能する。
【0017】
いくつかの実施例において、袋状体コア120は、連続気泡又は独立気泡の発泡体121から成る。いくつかの実施例において、発泡体121は、例えば、袋状体110の内部が減圧されると、袋状体110の内部を流体連通させる。袋状体110に対する気体の注入、また、除去が可能であるので、袋状体110を複合材ストリンガアセンブリ190から取り出す際に、袋状体110を小さくすることができる。この特徴の詳細は、
図13Dを参照して後述する。袋状体コア120として適切な発泡体の例には、限定するものではないがポリエチレンテレフタレート(PET)フォームがあり、例えば、スウェーデン、ヘルシンボリのDiab Groupから入手可能なDivinycell Pフォームがある。いくつかの実施例において、発泡体121は、袋状体コア120が室温における全大気圧(full atmosphere of pressure)には耐えるが、硬化温度に昇温した状態における真空圧で潰れるようなものが選択される。
【0018】
袋状体コア120は、ベース面122及びハット成形面124を有する。ベース面122は、ストリンガベース部192の形状を規定し、ハット成形面124は、ストリンガハット部191の形状を規定する。いくつかの実施例において、ベース面122は、実質的に平面である。そのような実施例又は他の実施例において、ハット成形面124は、曲面である。袋状体110を用いて形成される場合、ストリンガハット部191の形状は、ハット成形面124の形状によって規定されることは、当業者には理解されよう。よって、本開示の範囲には、様々な形状のハット成形面124が含まれる。いくつかの実施例において、ベース面122及びハット成形面124の輪郭に袋状体膜130の厚みを加えた形状は、ストリンガキャビティ193の輪郭と同じである。
【0019】
袋状体膜130は、弾性材料131から成る。弾性材料131の例には、限定するものではないが、シリコーン、バイトン(viton)、ブチルゴムが含まれる。いくつかの実施例において、袋状体膜130の膜厚は、1ミリメートルから5ミリメートルの間であり、より具体的には、2ミリメートルから4ミリメートルの間であり、例えば、約2.5ミリメートルである。袋状体膜130の少なくとも一部は、袋状体コア120のベース面122とハット成形面124の各々に接触しており、各々に沿っており、及び、各々を圧縮している。いくつかの実施例において、袋状体膜130は、袋状体コア120に沿って少なくとも約1%、少なくとも約2%、少なくとも約5%、及び、少なくとも約10%伸張されており、場合によっては、約20%伸張されている。袋状体膜130を伸張させることによって、しわ又は他の欠陥を生じさせることなく、袋状体膜130を袋状体コア120に沿わせることができる。ただし、このように伸張させることによって、袋状体コア120は圧縮された状態になるので、圧縮が強すぎると、袋状体コア120の形状に影響する可能性がある。したがって、過度な(例えば、50%を超える)伸張は、避けることが望ましい。
【0020】
図2B及び
図2Cを参照すると、いくつかの実施例において、袋状体膜130は、1つ又は2つの延出部(extension)を有しており、例えば、延出部133及び第2延出部134を有している。袋状体膜130の延出部は、袋状体コア120を超えて延びており、袋状体コア120に接触していない。袋状体膜130の他の部分は、袋状体コア120に接触しており、例えば、袋状体コア120に沿っており、袋状体コアを圧縮している。いくつかの実施例において、延出部は、袋状体110に対する流体接続、より具体的には、袋状体110の内部及び袋状体コア120に対する流体接続を確保するために用いられる。特定の実施例では、
図2B及び
図2Cに示す延出部133と、
図2Cに示す第2延出部134が含まれる。そのような実施例又は他の実施例において、延出部は、
図2Bに示す第2延出部134のように、袋状体110の端部を封止するために用いられる。
【0021】
図2B及び
図2Cを参照すると、いくつかの実施例において、袋状体110は、さらに、袋状体膜130の延出部133に封着された端部材140を含む。いくつかの実施例において、端部材140は、袋状体コア120に流体連通する通し穴(pass-through)145を有する。通し穴145は、袋状体110の内部に気体を注入したり、内部から気体を排出したりするために用いられる。例えば、内部から気体を排出することで、
図13Dを参照して後述するように、袋状体膜130のサイズを収縮させ、袋状体コア120を潰れさせることができる。いくつかの実施例において、通し穴145は、外気又は真空源109に選択的に接続可能である。
【0022】
図2C及び
図2Cを参照すると、いくつかの実施例において、端部材140は、第1コンポーネント141及び第2コンポーネント142を含む。第2コンポーネント142は、例えば、ねじ144を用いて、第1コンポーネント141に着脱可能に接続されている。いくつかの特定の実施例では、第2コンポーネント142は、第1コンポーネント141と第2コンポーネント142との間にチャネル143を形成する。袋状体膜130の延出部133は、第1コンポーネント141を囲んでおり、沿っており、及び、圧縮しているとともに、その一部がチャネル143の中まで延び出している。より具体的には、延出部133は、チャネル143において第1コンポーネント141と第2コンポーネント142に挟まれて圧縮されており、これにより、袋状体膜130が端部材140に対して確実に封着される。この詳細については、
図10A、
図10B、及び
図10Cを参照して、後述する。
【0023】
図2B及び
図2Cを参照すると、いくつかの実施例において、第1コンポーネント141と第2コンポーネント142とは、ねじ144を用いて着脱可能に接続されている。このような着脱可能な構成により、第2コンポーネント142を接続する前に、延出部133を第1コンポーネント141に被せることができるので、袋状体110を容易に組み立てることができる。より具体的な実施例では、通し穴145は、ねじ144を貫通する。この特徴により、ねじ144を交換することによって、例えば、通し穴145が設けられたねじと、通し穴145が設けられていないねじとを交換することによって、通し穴145を設けたり、無くしたりすることが可能になる。
【0024】
図2B及び
図2Cを参照すると、いくつかの実施例において、袋状体膜130は、延出部133から離間するように袋状体コア120を超えて延びる第2延出部134を有する。つまり、袋状体コア120は、延出部133と第2延出部134との間に位置する。第2延出部134は、袋状体110における当該一方の端部において流体接続を形成するか、或いは、袋状体110を封止することができる。例えば、
図2Bに示す構成では、第2延出部134は、封止されており、気体を透過させない。より具体的には、この実施例における袋状体110は、袋状体膜130の第2延出部134に封着された第2端部材であって、少なくとも第2延出部134側の端部から袋状体コア120への流体連通を遮断する第2端部材150を含む。
【0025】
図2Cを参照すると、いくつかの実施例において、第2端部材150は、袋状体コア120に流体接続された第2端部材通し穴155を有する。例えば、第2端部材通し穴155は、第2ねじ154を貫通する。第2ねじ154を交換することで、
図2Bに示す袋状体110の構成を、
図2Cに示す袋状体110の構成に切り替えることができる。
【0026】
いくつかの実施例において、第2端部材150の設計は、端部材140の設計と同じである。例えば、第2端部材150は、2つのコンポーネントから成り、そのうちの1つが第2延出部134に封着されている。さらに、これら2つのコンポーネントは、互いに着脱可能に接続されている。また、これら2つのコンポーネントが接続された状態において、第2延出部134の一部は、これら2つのコンポーネントの間に挟まれ、圧縮された状態になる。
<袋状体の組み立て方法の実施例>
【0027】
図3は、いくつかの実施例による、袋状体110を組み立てる方法200のプロセスを示すフローチャートである。上述の記載において、
図2A~
図2Cを参照して袋状体110の様々な実施例を説明した。方法200の様々な処理は、袋状体組立てツール300を用いて実行される。袋状体組立てツール300の主要な特徴については、具体的な処理に関連して説明する。また、後述するように、方法200の様々な段階は、
図4A~
図11に示されている。
【0028】
いくつかの実施例において、方法200では、先ず、袋状体膜130を、袋状体組立てツール300の袋状体組立てキャビティ312の中に配置する(ブロック210)。この処理は、例えば、
図4A、
図4B、及び
図4Cに示されている。この段階では、袋状体膜130は、袋状体組立てキャビティ312の形状に沿っていないので、袋状体膜130を容易に挿入することができる。具体的には、袋状体膜130は、膜内表面137と膜外表面138を有する。この段階では、袋状体膜130は、袋状体コア120に沿って引き伸ばされたり、袋状体コアを覆ったりしていない。袋状体組立てキャビティ312は、キャビティ表面313を有する。袋状体膜130の膜外表面138は、キャビティ表面313の形状に沿っておらず、よって、この処理が可能である。袋状体膜130と袋状体組立てツール300の断面を参照すると、膜外表面138の外周は、キャビティ表面313の外周より短い。
【0029】
いくつかの実施例において、方法200は、次に、袋状体膜130をキャビティ表面313に封着する処理(ブロック220)に進む。なお、袋状体膜130は、袋状体組立てツール300の各端部301において封着される。様々な封着処理が本開示の範囲に含まれる。例えば、
図5は、袋状体膜130に挿入されたウェッジ320を示している。この実施例の封着処理は、ウェッジ320を袋状体膜130の内方へ挿入し、これにより、袋状体膜130をキャビティ表面313に押し付けること(ブロック222)を含む。ウェッジ320は、袋状体膜130の一部を伸張させる。なお、ウェッジ320は、ウェッジ通し穴322を有する。ウェッジ通し穴322の最小断面は、袋状体コア120の断面形状よりも大きい。よって、袋状体コア120をウェッジ通し穴322から袋状体膜130の内部へ挿入することが可能である。
【0030】
いくつかの実施例において、方法200は、次に、キャビティ表面313と袋状体膜130との間における第1圧力を、膜内表面137における第2圧力に対して低減する処理(ブロック230)に進む。この圧力差(第1圧力と第2圧力との差)によって、
図6A~
図6Bに示す様に、袋状体膜130が引き伸ばされて、袋状体膜130がキャビティ表面313に押し付けられる。より具体的には、袋状体膜130は、キャビティ表面313に沿った形状になる。このように袋状体膜130を伸長させることによって、袋状体コア120を袋状体膜130に接触させることなく挿入することが可能になる。この段階では、膜内表面137の断面は、袋状体コア120の断面(点線で示す)よりも大きい。なお、袋状体膜130がキャビティ表面313に封着されていることにより、第1圧力を低減させることができる。いくつかの実施例において、第1圧力を低減させることは、袋状体組立てツール300を真空源に接続することを含む。換言すると、第1圧力は、大気圧レベルより低い。第2圧力は、例えば、袋状体膜130の内部空間が大気に開放されており、大気圧レベルである。
【0031】
図6C及び6Dを参照すると、いくつかの実施例において、袋状体組立てツール300は、キャビティ表面313から袋状体組立てキャビティ312の内方に突出する内側突出部314を有する。内側突出部314が設けられていることにより、袋状体膜130をキャビティ表面313に沿わせるときに、キャビティ表面313と袋状体膜130の間に流体通路315を維持することができる。これらの流体通路315は、袋状体膜130がキャビティ表面313に沿った状態になるときに、例えば
図6Dに示す様に、内側突出部314の周辺に形成される。このような流体通路315によって、袋状体膜130の全体(袋状体の長手方向、つまりX軸に沿った全体)の圧力を第2圧力にすることができ、また、その圧力差によって全体をキャビティ表面313に沿わせることができる。
図6E及び
図6Fを参照すると、いくつかの実施例においては、袋状体組立てツール300は、例えば、キャビティ表面313から凹むように形成された流体通路315を含む。
【0032】
いくつかの実施例において、方法200は、次に、例えば
図7A~
図7Cに示す様に、袋状体コア120を袋状体膜130の内方へ挿入する処理(ブロック240)に進む。この処理は、(例えば、袋状体膜130の両側における圧力差を維持して、この圧力差によって、袋状体膜130をキャビティ表面313に押し付けることによって)袋状体膜130をキャビティ表面313に沿わせた状態で実行される。
図7Bは、膜内表面137の断面が袋状体コア120の断面より大きく、接触なしに挿入可能であることを示している。
【0033】
いくつかの実施例において、袋状体コア120を袋状体膜130に挿入する処理は、例えば
図7Cに示すように、袋状体コア120をウェッジ通し穴322から押し入れること(ブロック242)を含む。上述したように、ウェッジ320は、袋状体膜130をキャビティ表面313に封着するために用いられる。この封着状態は、袋状体コア120を袋状体膜130の内方に挿入する間も維持される。さらに、上述したように、ウェッジ通し穴322の最小断面は、袋状体コア120の断面形状よりも大きいので、袋状体コア120をウェッジ通し穴322から袋状体膜130に挿入することができる。
【0034】
いくつかの実施例において、方法200は、次に、第1圧力と第2圧力を等しくする処理(ブロック250)に進み、これは、例えば、第1圧力と第2圧力の両方を大気圧レベルにすることで実行される。このように等しい圧力にすることで、例えば
図8A及び
図8Bに示す様に、袋状体膜130を収縮させることができ、また、袋状体膜130の一部を袋状体コア120に沿わせることができる。より具体的には、このように等しい圧力にすることで、それまで袋状体膜130を伸張させていた圧力差が解消される。よって、袋状体膜130は、収縮して元の形状に戻る。ただし、いくつかの実施例において、袋状体膜130が袋状体コア120に沿った状態で、袋状体膜130の一部は伸張された状態に維持され、袋状体膜130のうちの少なくとも当該部分は、袋状体コア120に接触する。いくつかの実施例において、伸長の度合いは、袋状体コア120に沿って少なくとも約1%、少なくとも約2%、少なくとも約5%、及び、少なくとも約10%である。この処理の後は、キャビティ表面313の断面形状は、袋状体コア120の断面形状と一致する。さらに、この時点において、袋状体膜130と袋状体コア120の組み合わせは、袋状体組立てツール300から取り外し可能である。
【0035】
いくつかの実施例において、方法200は、さらに、例えば
図9A及び
図9Bに示す様に、袋状体110を袋状体組立てツール300から取り外す処理(ブロック258)を含む。この処理は、袋状体膜130の一部が袋状体コア120に沿った状態であって、袋状体膜130がキャビティ表面313には沿っていない状態で実行される。よって、袋状体膜130とキャビティ表面313とは、いずれの部分においても接触しておらず、袋状体110を袋状体組立てキャビティ312から取り外すことができる。
図9Bは、この取外し処理が実行された後の袋状体110を示している。例えば、袋状体膜130は、袋状体コア120を超えて延びる延出部133及び第2延出部134を有する。
【0036】
いくつかの実施例において、方法200は、さらに、例えば
図10A~
図10Cに示す様に、端部材140を袋状体膜130の延出部133に封着する処理(ブロック260)を含む。具体的には、延出部133は、袋状体コア120を超えて延びており、よって、袋状体コア120は、端部材140に接触していない。例えば、延出部133は、端部材140を被覆し、また、端部材の形状に適合する。
【0037】
いくつかの実施例において、端部材140は、第1コンポーネント141及び第2コンポーネント142を含む。このような実施例では、端部材140を延出部133に封着することは、第1コンポーネント141を袋状体膜130の延出部133の内方に挿入すること(ブロック262)と、第2コンポーネント142を第1コンポーネント141に取り付けること(ブロック264)と、を含む。いくつかの実施例において、
図3のブロック262及びブロック264に示すこれらの処理は、袋状体膜130の延出部133の一部が、第1コンポーネント141と第2コンポーネント142との間のチャネル143に入り込むように実行される。より具体的には、延出部133における当該部分は、例えば
図10Cに示す様に、チャネル143において、第1コンポーネント141と第2コンポーネント142との間に挟まれて圧縮されている。いくつかの実施例において、また、
図3のブロック264に示すように、第2コンポーネント142は、ねじ144を用いて第1コンポーネント141に取り付けられる。より具体的には、通し穴145は、ねじ144も貫通している。
【0038】
いくつかの実施例において、方法200は、さらに、例えば
図11Aに示す様に、袋状体膜130の第2延出部134を封止すること(ブロック270)を含む。第2延出部134は、延出部133から離間する方向に、袋状体コア120を超えて延びており、よって、袋状体コア120は、延出部133と第2延出部134との間に位置する。
【0039】
いくつかの実施例において、方法200は、さらに、例えば
図11Bに示す様に、第2端部材150を袋状体膜130の第2延出部134に封着すること(ブロック280)を含む。第2端部材150は、袋状体コア120に流体接続された第2端部材通し穴155を有する。さらに、端部材140は、袋状体コア120に流体接続された通し穴145を有する。
<複合材ストリンガの形成方法の実施例>
【0040】
図12は、いくつかの実施例による、複合材ストリンガアセンブリ190の作製方法600のプロセスを示すフローチャートである。複合材ストリンガアセンブリ190は、ストリンガ成形ツール100を用いて複合材チャージ180から作製される。上述の記載において、
図1A及び
図1Bを参照して、複合材チャージ180及び複合材ストリンガアセンブリ190の様々な実施例を説明した。いくつかの実施例において、ストリンガ成形ツール100は、
図2A~
図11Bを参照して説明した様々な実施例の袋状体110を含む。
【0041】
いくつかの実施例において、方法600は、例えば
図13Aに示す様に、袋状体110をチャージベース部182の上に配置すること(ブロック610)を含む。チャージベース部182は、複合材チャージ180の一部であって、ストリンガ成形ツール100のツールベース102上に配置される。いくつかの実施例において、チャージベース部182は、実質的に平面である。袋状体110は、複合材ストリンガアセンブリ190の設計に従って成形される。上述したように、袋状体110は、袋状体コア120及び袋状体膜130を含む。袋状体コア120は、形状を規定するものであり、袋状体膜130は、袋状体コア120を囲うとともに、チャージベース部182に接触する。
【0042】
いくつかの実施例において、方法600は、例えば
図13Bに示す様に、チャージハット部181を袋状体110の上に配置すること(ブロック620)を含む。例えば、この処理において、チャージハット部181は、少なくとも部分的に袋状体110に沿わせられる。いくつかの実施例において、チャージハット部181は、最初は、平面状のコンポーネントとして提供され、次いで、袋状体110の周りに沿わせられる。この際に、袋状体110は、その形状を維持する。
【0043】
いくつかの実施例において、方法600は、次に、例えば
図13Cに示す様に、ストリンガ成形ツール100の可撓性カバー104をチャージハット部181に被せ、この可撓性カバー104をツールベース102に封着する処理(ブロック630)に進む。このように封着することにより、可撓性カバー104とツールベース102との間における圧力を低減させることが可能になり、例えば、(大気圧による)外圧を加えて、チャージハット部181を袋状体110に沿わせることができる。いくつかの実施例において、チャージハット部181は、チャージベース部182に直接接触するハット端部183を有する。
【0044】
いくつかの実施例において、方法600は、次に、例えば
図13Cに示す様に、可撓性カバー104とツールベース102との間における第1成形圧を低減させる処理(ブロック640)に進む。第1成形圧は、カバー外表面105における第2成形圧よりも低くされる。この圧力差によって、可撓性カバー104及びチャージハット部181が袋状体110に対して押圧され、これによりチャージハット部181を袋状体110に沿わせることができる。
【0045】
さらに、いくつかの実施例において、例えば
図13Cに示す様に、第1成形圧は、袋状体110内部における第3成形圧よりも低い圧力に低減される。この第3圧力によって、チャージハット部181が袋状体110に対して押圧されても、袋状体110の形状が維持される。いくつかの実施例において、第2成形圧と第3成形圧は、それぞれ関連する構造が大気に開放されており、大気圧レベルである。
【0046】
いくつかの実施例において、方法600は、次に、チャージベース部182及びチャージハット部181を硬化させる処理(ブロック650)に進む。例えば、
図13Cに示すアセンブリ全体が、オートクレーブ、オーブン、又は、他の類似のツールの中に配置される。硬化処理は、チャージハット部181が袋状体110に対して押圧された状態で実行される。さらに、この硬化処理の間、袋状体110の形状は維持される。硬化処理によって、複合材ストリンガアセンブリ190を構成するストリンガベース部192及びストリンガハット部191が形成される。ストリンガベース部192及びストリンガハット部191は、剛性の構造体であり、袋状体110による支持は不要になる。したがって、硬化後、袋状体110は、ストリンガキャビティ193から取り外される。
【0047】
いくつかの実施例において、方法600は、次に、袋状体110をストリンガキャビティ193から取り外す処理(ブロック660)に進む。より具体的には、袋状体110をストリンガキャビティ193から取り外すことは、袋状体110の内部の第1除去圧を低減させる処理(ブロック662)を含む。第1除去圧は、ストリンガキャビティ193の内部の第2除去圧よりも低い圧力に低減される。この圧力差によって、例えば
図13Dに示すように、袋状体110が圧縮され、袋状体110は、ストリンガベース部192及びストリンガハット部191から分離される。いくつかの実施例において、第2除去圧は、大気圧である。
【0048】
いくつかの実施例において、方法600は、次に、袋状体110の袋状体コア120を取り換える処理(ブロック670)に進む。例えば、袋状体コア120は、袋状体110がストリンガキャビティ193から取り外されるときに潰されており、もはや所望の形状を有していない。袋状体コア120を取り換えるこのプロセスは、
図3~
図11Bを参照して上述した袋状体110の組み立てプロセスと同様に行うことができる。
<航空機の実施例>
【0049】
いくつかの実施例において、上述の方法及びシステムは、航空機に対して用いることができ、さらには、航空機業界全般に用いることができる。特に、これらの方法及びシステムは、航空機の製造、並びに、航空機の使用及び保守方法において用いることができる。
【0050】
したがって、上述の装置及び方法は、
図14に示す航空機の製造及び使用方法900、及び、
図15に示す航空機902に適用可能である。生産開始前の工程として、方法900は、航空機902の仕様決定及び設計904と、材料調達906とを含む。生産中の工程としては、航空機902の部品/小組立品の製造908及びシステム統合910が行われる。その後、航空機902は、認証及び納品912の工程を経て、就航914の工程に入る。顧客による使用の期間中は、航空機902は、改良、再構成、改修などを含む、定例の整備及び保守916に組み込まれる。
【0051】
いくつかの実施例において、方法900の各工程は、システムインテグレータ、第三者、及び/又は、顧客を例とするオペレータによって実行又は実施することができる。説明のために言及すると、システムインテグレータは、航空機メーカ及び主要システム下請業者をいくつ含んでいてもよいが、これに限定されない。第三者は、売主、下請業者、供給業者をいくつ含んでいてもよいが、これに限定されない。また、オペレータは、航空会社、リース会社、軍事団体、サービス組織等であってもよい。
【0052】
方法900によって製造される航空機902は、
図15に示す様に、複数のシステム920及び内装922を有する機体918を備える。機体918は、航空機902の翼を含む。複数のシステム920の例としては、推進系924、電気系926、油圧系928、及び環境系930のうちの1つ又は複数が挙げられる。また、その他のシステムをいくつ含んでいてもよい。
【0053】
本明細書に提示の装置及び方法は、方法900の任意の1つ又は複数の段階において採用することができる。例えば、製造工程908に対応する部品及び小組立品は、航空機902の就航の段階において製造される部品及び小組立品と同様に作製又は製造することができる。また、装置の実施例、方法の実施例、又は、それらの組み合わせの1つ又は複数を、例えば、製造工程908及びシステム統合910に用いることで、例えば、航空機902の組み立て速度やコストを大幅に改善することができる。同様に、装置の実施例、方法の実施例、又は、それらの組み合わせの1つ又は複数を、航空機902の就航中において、限定するものではないが例えば、整備及び保守916に用いることができる。
<他の実施例>
【0054】
本開示は、さらに、以下の付記による実施例を含む。
【0055】
付記1.
複合材ストリンガアセンブリの作製において複合材チャージを成形するための袋状体であって、
発泡体で構成されているとともに、ベース面及びハット成形面を含む袋状体コアと、
弾性材料で構成された袋状体膜と、を備え、前記袋状体膜は、前記袋状体コアを囲んでおり、前記袋状体膜の少なくとも一部が前記ベース面及び前記ハット成形面の各々に接触しており、各々に沿っており、及び、各々を圧縮している、袋状体。
【0056】
付記2.前記袋状体膜は、前記袋状体コアを超えて延びる延出部を有する、付記1に記載の袋状体。
【0057】
付記3.さらに、前記袋状体膜の前記延出部に封着された端部材を備え、前記端部材は、前記袋状体コアに流体接続された通し穴を有する、付記2に記載の袋状体。
【0058】
付記4.前記通し穴は、大気又は真空源に選択的に接続可能である、付記3に記載の袋状体。
【0059】
付記5.前記端部材は、第1コンポーネントと、前記第1コンポーネントに着脱可能に接続されているとともに、前記第1コンポーネントとの間にチャネルを形成する第2コンポーネントと、を含み、
前記袋状体膜の前記延出部は、前記第1コンポーネントを囲んでおり、前記第1コンポーネントに沿っており、及び、前記第1コンポーネントを圧縮しているとともに、前記延出部の一部が前記チャネル内に入り込んで前記第1コンポーネントと前記第2コンポーネントの間で圧縮されている、付記3に記載の袋状体。
【0060】
付記6.前記第1コンポーネントと前記第2コンポーネントとは、ねじを用いて着脱可能に接続されており、前記通し穴が前記ねじを貫通する、付記5に記載の袋状体。
【0061】
付記7.前記袋状体膜は、前記延出部から離間するように前記袋状体コアを超えて延びる第2延出部を含んでおり、前記袋状体コアは、前記延出部と前記第2延出部との間に位置する、付記2~6のいずれか1つに記載の袋状体。
【0062】
付記8.前記第2延出部は、封止されており、気体を透過させない、付記7に記載の袋状体。
【0063】
付記9.さらに、前記袋状体膜の前記第2延出部に封着された第2端部材を備え、前記第2端部材は、前記袋状体コアに流体接続された第2端部材通し穴を有する、付記7に記載の袋状体。
【0064】
付記10.前記袋状体コアを構成する前記発泡体は、ポリエチレンテレフタレート発泡体を含む、付記1に記載の袋状体。
【0065】
付記11.前記袋状体膜を構成する前記弾性材料は、シリコーン、バイトン、及びブチルゴムから成る群より選択される1つ又は複数の材料を含む、付記1~10のいずれか1つに記載の袋状体。
【0066】
付記12.前記袋状体膜は、前記袋状体コアに沿って少なくとも約5%伸張されている、付記1~11のいずれか1つに記載の袋状体。
【0067】
付記13.袋状体組立てツールを用いて袋状体を組み立てる方法であって、前記袋状体組立てツールは、袋状体組立てキャビティを有しており、当該方法は、
膜内表面を有する袋状体膜を、キャビティ表面を有する前記袋状体組立てキャビティの中に配置することと、
前記袋状体組立てツールの各端部において、前記袋状体膜を前記キャビティ表面に封着することと、
前記キャビティ表面と前記袋状体膜との間における第1圧力を、前記膜内表面における第2圧力に対して低減させ、これにより、前記袋状体膜を伸張させるとともに、前記袋状体膜を前記キャビティ表面に沿わせることと、
前記袋状体膜を前記キャビティ表面に沿わせた状態で、袋状体コアを前記袋状体膜の内方へ挿入することと、
前記第1圧力と前記第2圧力とを等しくし、これにより、前記袋状体膜を収縮させるとともに前記袋状体膜の少なくとも一部を前記袋状体コアに沿わせることと、を含む方法。
【0068】
付記14.前記第2圧力は、大気圧レベルに維持される、付記13に記載の方法。
【0069】
付記15.前記キャビティ表面の断面形状は、前記袋状体コアの断面形状と一致する、付記13~14のいずれか1つに記載の方法。
【0070】
付記16.前記袋状体膜を前記キャビティ表面に封着することは、ウェッジを前記袋状体膜の内方へ挿入することにより、前記袋状体膜を前記キャビティ表面に押し付けることを含み、
前記ウェッジは、ウェッジ通し穴を有しており、
前記袋状体コアを前記袋状体膜の内方へ挿入することは、前記袋状体コアを前記ウェッジ通し穴から押し入れることを含む、付記13~15のいずれか1つに記載の方法。
【0071】
付記17.さらに、前記袋状体膜の延出部に端部材を封着することを含み、
前記端部材は、前記袋状体コアに流体接続された通し穴を有しており、
前記延出部は、前記袋状体コアを超えて延びる、付記13~16のいずれか1つに記載の方法。
【0072】
付記18.前記端部材は、第1コンポーネント及び第2コンポーネントを含み、
前記延出部に前記端部材を封着することは、
前記第1コンポーネントを前記袋状体膜の前記延出部の内方へ挿入することと、
前記第2コンポーネントを前記第1コンポーネントに取り付け、この際に、前記第1コンポーネントと前記第2コンポーネントの間に形成されるチャネル内に前記袋状体膜の前記延出部の一部が入り込んで、当該部分が前記チャネル内で前記第1コンポーネントと前記第2コンポーネントの間で圧縮されるようにすることと、を含む、付記17に記載の方法。
【0073】
付記19.前記第2コンポーネントを前記第1コンポーネントに取り付けることは、ねじを用いて行われ、この際に、前記通し穴が当該ねじを貫通するようにして行われる、付記18に記載の方法。
【0074】
付記20.さらに、前記袋状体膜に第2延出部を封着することを含み、
前記第2延出部は、前記延出部から離間するように前記袋状体コアを超えて延びており、前記袋状体コアは、前記延出部と前記第2延出部との間に位置する、付記17に記載の方法。
【0075】
付記21.さらに、前記袋状体膜の第2延出部に第2端部材を封着することを含み、
前記第2端部材は、前記袋状体コアに流体接続された第2端部材通し穴を有しており、
前記端部材は、前記袋状体コアに流体接続された通し穴を有している、付記17に記載の方法。
【0076】
付記22.前記袋状体組立てツールは、前記キャビティ表面から前記袋状体組立てキャビティの内方に突出する内側突出部を有する、付記13~21のいずれか1つに記載の方法。
【0077】
付記23.さらに、前記袋状体膜の前記一部を前記袋状体コアに沿わせた後に、前記袋状体組立てツールから前記袋状体を取り外すことを含む、付記13~22のいずれか1つに記載の方法。
【0078】
付記24.前記第1圧力を低減させる間に、前記袋状体膜が少なくとも5%伸張する、付記13~23のいずれか1つに記載の方法。
【0079】
付記25.袋状体を含むストリンガ成形ツールを用いて、複合材チャージから複合材ストリンガアセンブリを作製する方法であって、
前記ストリンガ成形ツールのツールベース上に配置されたチャージベース部の上に前記袋状体を配置することと、
袋状体コア及び袋状体膜を含む前記袋状体の上にチャージハット部を配置することと、
前記チャージハット部の上に前記ストリンガ成形ツールの可撓性カバーを配置するとともに、前記可撓性カバーを前記ツールベースに封着することと、
前記可撓性カバーと前記ツールベースとの間における第1成形圧を、カバー外表面における第2成形圧及び前記袋状体の内部における第3成形圧よりも低くし、これにより、前記チャージハット部を前記可撓性カバーによって前記袋状体に押し付けることと、
前記チャージハット部が前記袋状体に押し付けられた状態で前記チャージベース部及び前記チャージハット部を硬化させ、これにより、前記複合材ストリンガアセンブリのストリンガベース部及びストリンガハット部であって、ストリンガキャビティを構成するストリンガベース部及びストリンガハット部を形成することと、
前記袋状体を前記ストリンガキャビティから取り外すことと、を含む方法。
【0080】
付記26.前記袋状体を前記ストリンガキャビティから取り外すことは、前記袋状体の内部の第1除去圧を、前記ストリンガキャビティの内部の第2除去圧に対して低減させることにより、前記袋状体を圧縮させて、前記袋状体を前記ストリンガベース部及び前記ストリンガハット部から分離させることを含む、付記25に記載の方法。
【0081】
付記27.前記第2除去圧は、大気圧である、付記26に記載の方法。
【0082】
付記28.さらに、前記袋状体の前記袋状体コアを取り換えることを含む、付記26に記載の方法。
【0083】
付記29.前記第2成形圧及び前記第3成形圧の各々は、大気圧である、付記25~28のいずれか1つに記載の方法。
【0084】
付記30.前記チャージハット部は、前記チャージベース部に直接接触するハット端部を有する、付記25~29のいずれか1つに記載の方法。
<結語>
【0085】
上述の概念は、明確な理解を助けるべく詳細に説明されているが、付記の範囲内で特定の変更や変形が可能であることは明らかであろう。記載のプロセス、システム、及び装置は、多くの代替的な方法によっても実施可能である。したがって、提示された実施例は、あくまでも例示として解釈されるべきであって、限定として解釈されるべきではない。