(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-30
(45)【発行日】2025-05-12
(54)【発明の名称】監視制御システム
(51)【国際特許分類】
G05B 23/02 20060101AFI20250501BHJP
H02J 13/00 20060101ALI20250501BHJP
【FI】
G05B23/02 301Z
G05B23/02 301T
G05B23/02 301R
H02J13/00 301A
H02J13/00 301J
(21)【出願番号】P 2021186900
(22)【出願日】2021-11-17
【審査請求日】2023-11-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002941
【氏名又は名称】弁理士法人ぱるも特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高木 結花
(72)【発明者】
【氏名】浅野 七瀬
(72)【発明者】
【氏名】平塚 剛洋
【審査官】岩▲崎▼ 優
(56)【参考文献】
【文献】特開平03-075693(JP,A)
【文献】特開2004-021300(JP,A)
【文献】特開平09-022278(JP,A)
【文献】特開平01-270096(JP,A)
【文献】特開平05-296889(JP,A)
【文献】特開平06-250636(JP,A)
【文献】特開2016-045213(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 23/00-23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
監視制御の対象となる管轄エリアの電力系統の全体の設備状態を示す画像である系統監視盤画像を表示可能な系統監視盤と、
前記管轄エリアの前記電力系統の各設備の情報を受信して前記系統監視盤画像を作成し、前記系統監視盤に前記系統監視盤画像を出力する画像出力装置と、
前記系統監視盤に隣接して設置され、前記系統監視盤よりも表示面積の小さいモニタと、
前記モニタに表示する画像パターン
であって前記系統監視盤画像の一部の表示範囲を表示して前記管轄エリアの前記電力系統の一部設備の設備状態を示した画像を複数予め前記画像出力装置に登録する操作卓と、を備
え、
前記画像出力装置は、
前記操作卓からの信号により、登
録された複数の前記画像パターンのうち選択された画像パターンを前記モニタに表示するとともに、前記管轄エリアの前記電力系統の設備の異常を受信した場合、登録された複数の前記画像パターンから異常発生箇所を含む前記画像パターンを選択して前記モニタに
自動的に表示することを特徴とする監視制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、監視制御システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
監視制御システムは、プラント、上下水道、電力系統等の多数の設備によって構成される監視対象を監視制御するシステムである。その中で電力系統監視制御システムは、送電線、開閉器、変電機器、発電機といった多数の設備を監視制御するためのシステムであり、これら監視対象の多数の設備を表示可能な表示装置を有する。
【0003】
この電力系統監視制御システムに備わる表示装置は、目的に応じて複数の種類が電力系統監視制御システムの中に組み込まれている。その中に、電力系統を構成する多数の設備の全容を把握する目的で、1式の電力系統監視制御システムが管轄する電力系統全体の設備に関して、設備を表す図形(以後、設備)を表示する表示装置を設けており、系統監視盤と呼ばれている。
【0004】
系統監視盤は、複数人の運用者(電力系統監視制御システムの運用者)が電力系統全体の設備の状況を共有するという目的も有するため、系統監視盤は広い表示面積が必要とされ、大画面モニタあるいは複数のモニタを組み合わせたものが使用される。
【0005】
一方、運用者は、系統監視盤の表示全体を視界に収めながら電力系統監視制御システムの操作を行うため、系統監視盤から一定距離離れた操作卓という装置上で操作(監視及び制御)を実施する。
【0006】
電力系統監視制御システムでは、監視制御の対象となる管轄エリア(電力系統の範囲)が複雑な構成を有し、かつ系統監視盤に表示すべき設備数が増加する場合、系統監視盤の表示面積を拡大する必要がある。しかし、拡大できない場合は、系統監視盤上では設備を小さく表示する必要がある。このため、管轄エリアが有する設備構成が複雑な場合は系統監視盤の視認性が悪くなり、運用者が操作するにあたって、業務効率が悪くなる課題があった。また、系統監視盤の視認性が悪くなることで、運用者が誤操作しやすくなる課題があった。
【0007】
このような課題に対し、複雑な管轄エリアでの状態変化を落とさないように、状態変化と判定された監視制御対象に対応する機器シンボルを系統監視盤で強調表示させ、視認性を向上させることが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0008】
また、運用者の使用する操作卓に2つの表示装置を配置し、一方をオペレータ用、他方を指定された部分画面の表示用とし、画面選択を容易とするとともに視認性を向上させることが開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2014-56609号公報
【文献】特開昭54-121379号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1においては、状態変化の生じた機器シンボルが系統監視盤上でフリッカし、管轄エリア全体表示に置き換わって、状態変化の生じた機器シンボルが系統監視盤に表示されるため、その間は系統監視盤上で管轄エリアの監視が行えないという課題があった。あるいは強調表示に注目がいき、系統監視盤上での監視がおろそかになるという課題があった。
【0011】
特許文献2においては、個々の運用者が指定した画面をすぐに表示できるものの、複数の運用者でその情報を共有化できないという課題があった。
【0012】
本願は、上記のような課題を解決するための技術を開示するものであり、管轄エリア全体を監視しつつ複数の運用者で状態変化等の情報を共有でき、視認性も向上可能な系統監視制御システムを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本願に開示される監視制御システムは、監視制御の対象となる管轄エリアの電力系統の全体の設備状態を示す画像である系統監視盤画像を表示可能な系統監視盤と、前記管轄エリアの前記電力系統の各設備の情報を受信して前記系統監視盤画像を作成し、前記系統監視盤に前記系統監視盤画像を出力する画像出力装置と、前記系統監視盤に隣接して設置され、前記系統監視盤よりも表示面積の小さいモニタと、前記モニタに表示する画像パターンであって前記系統監視盤画像の一部の表示範囲を表示して前記管轄エリアの前記電力系統の一部設備の設備状態を示した画像を複数予め前記画像出力装置に登録する操作卓と、を備え、前記画像出力装置は、前記操作卓からの信号により、登録された複数の前記画像パターンのうち選択された画像パターンを前記モニタに表示するとともに、前記管轄エリアの前記電力系統の設備の異常を受信した場合、登録された複数の前記画像パターンから異常発生箇所を含む前記画像パターンを選択して前記モニタに自動的に表示する、ように構成されている。
【発明の効果】
【0014】
本願に開示される監視制御システムによれば、系統監視盤に隣接して表示装置を配置することで、管轄エリア全体を監視しつつ複数の運用者で状態変化等の情報を共有でき、視認性も向上可能な電力系統監視制御システムを得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】実施の形態1に係る電力系統監視制御システムの構成を示すブロック図である。
【
図2】実施の形態1に係る電力系統監視制御システムにおいて、モニタの表示状態を示す図である。
【
図3】実施の形態1に係る電力系統監視制御システムのハードウエア構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本願で開示される監視制御システムの実施の形態について図を参照して説明する。以下では、監視制御システムの代表例として電力系統監視制御システムを例に説明するが、プラント、上下水道等複数の設備が一連の設備として監視対象とされるものであれば電力系統に限定されるものではない。なお、各図中、同一符号は、同一または相当部分を示すものとする。
【0017】
実施の形態1.
以下に、実施の形態1に係る電力系統監視制御システムについて図を用いて説明する。
図1は、実施の形態1に係る電力系統監視制御システムの構成を示すブロック図、
図2は、電力系統監視制御システムの具備するモニタの表示状態の一例を説明するための図である。
電力系統監視制御システム1は、監視制御の対象となる管轄エリアの全体を表示可能な系統監視盤14と、監視制御の対象となる管轄エリアにおける電力系統の各設備の情報を外部のネットワーク2を介して受信し、系統監視盤14に画像を出力する画像出力装置12と、運用者が操作し制御を実行するための操作卓18と、系統監視盤14に隣接して設置され、系統監視盤14よりも表示面積の小さいモニタ16と、を備えている。
【0018】
画像出力装置12は、実際には、演算装置、記憶装置、操作デバイス、表示装置などを個々に備えた数台から数十台の計算機群を情報ネットワークで接続されたものである。ここではそれらをまとめて画像出力装置として扱う。
【0019】
また、画像出力装置12は、系統監視盤14、操作卓18、及びモニタ16とそれぞれ電力系統監視制御システム1内のネットワークで接続されている。画像出力装置12は、外部のネットワーク2から取得した管轄エリア内の電力系統の設備状態の情報をもとに、管轄エリアの電力系統全体の設備状態を示す画像を作成する。以降、この画像を系統監視盤画像と呼ぶ。画像出力装置12は、周期的に取得する情報をもとに、系統監視盤画像を周期的に最新の状態へ更新し、系統監視盤14へ送信する。
【0020】
系統監視盤14は、画像の受信部にあたる計算機と画像の表示部を備えた装置である。系統監視盤14は、画像出力装置12から、電力系統監視制御システム1内のネットワークを介して、系統監視盤画像を周期的に受信する。系統監視盤14は、受信した系統監視盤画像を表示する。すなわち、系統監視盤14には管轄エリア内の電力系統全体の最新の設備状態を示す画像が表示される。
【0021】
操作卓18は、運用者が操作し制御を行うために使用する計算機と表示部を備え、本実施の形態においては、系統監視盤14に隣接するモニタ16へ拡大表示する画像パターン作成し、画像出力装置12に登録する。運用者は、登録した画像パターンを選択し、操作卓18の所定の釦を押下することで、画像出力装置12に登録した画像パターンを読み出し、モニタ16へ拡大表示させることができる。
【0022】
図2において、例えば運用者Aが設備の異常等に気づき、操作卓18の所定の釦を押下すると、操作卓18から画像出力装置12に表示要請信号が送信され、予め登録されていた画像パターンのうち選択された画像パターンが画像出力装置12から読みだされモニタ16に拡大表示される。運用者Aは系統監視盤14に表示されている管轄エリア内の電力系統全体の設備状態を監視しつつ、モニタ16上で拡大表示された異常箇所を確認できる。同時に、複数の運用者がいる場合、運用者Aが異常箇所と認識した設備情報をモニタ16に拡大表示することにより、運用者Bにもその情報を共有化することが可能となる。また、運用者Bは系統監視盤14に表示されている管轄エリア内の電力系統全体の設備状態の監視を継続することもできる。
【0023】
図2に示すようにモニタ16は、管轄エリア内の電力系統全体の設備状態と対応して、拡大表示された注目箇所が確認できるように、系統監視盤14と横並びに配置する等、隣合わせに配置するのがよい。
【0024】
操作卓18から画像出力装置12に予め登録しておく画像パターンとしては、異常発生箇所、日常点検の必要な箇所、定期点検の必要な箇所等がある。
また、モニタ16への表示は、操作卓18から釦を押下することに限らず、異常発生など緊急を要するものは、画像出力装置12からモニタ16へ自動的に表示するようにすればよい。なお、異常発生には事故発生及び事故に繋がる異常事象の発生を含んでいる。
【0025】
以上のように、本実施の形態1に係る電力系統監視制御システムによれば、監視制御の対象となる管轄エリアの全体を表示可能な系統監視盤14に隣接して、系統監視盤14よりも表示面積の小さいモニタ16を設置し、予め画像出力装置12に登録された画像パターンから読みだされた注目箇所の拡大画像をモニタ16に表示させるようにしたので、管轄エリア全体を監視しつつ複数の運用者で状態変化等の情報を共有でき、視認性も向上可能な系統監視制御システムを得ることができる。また、視認性が向上することにより、運用者の作業効率及び誤操作の防止につながるという効果を奏する。
【0026】
系統監視盤14よりも表示面積の小さいモニタ16を設置するので、系統監視盤14の表示面積を拡大したものに更新するよりも低コストで、視認性を向上させることが可能となる。
【0027】
また、拡大表示させる画像を画像パターンとして予め登録しておくので、異常発生、事故発生時に該当箇所を速やかに拡大表示でき、迅速な対処が可能となる。
【0028】
系統監視盤14と隣接してモニタが設置されているので、管轄エリア内の電力系統全体の設備状態と対応して、拡大表示された注目箇所が確認できるとともに、系統全体の監視を継続しながら事故発生箇所の対応も可能となる。
さらに、系統監視盤14と隣接してモニタが設置されているので、複数の運用者で異常発生箇所、事故発生箇所の情報を容易に共有化可能となる。
【0029】
なお、電力系統監視制御システム1は、ハードウエアの一例を
図3に示すように、プロセッサ100と記憶装置200から構成される。記憶装置は図示していないが、ランダムアクセスメモリ等の揮発性記憶装置と、フラッシュメモリ等の不揮発性の補助記憶装置とを具備する。また、フラッシュメモリの代わりにハードディスクの補助記憶装置を具備してもよい。プロセッサ100は、記憶装置200から入力されたプログラムを実行する。この場合、補助記憶装置から揮発性記憶装置を介してプロセッサ100にプログラムが入力される。また、プロセッサ100は、演算結果等のデータを記憶装置200の揮発性記憶装置に出力してもよいし、揮発性記憶装置を介して補助記憶装置にデータを保存してもよい。また、電力系統監視制御システム1の画像出力装置12、系統監視盤14、操作卓18が個別に
図3のようなハードウエア構成を有していてもよい。
【0030】
本願は、例示的な実施の形態が記載されているが、実施の形態に記載された様々な特徴、態様、及び機能は特定の実施の形態の適用に限られるのではなく、単独で、または様々な組み合わせで実施の形態に適用可能である。
従って、例示されていない無数の変形例が、本願明細書に開示される技術の範囲内において想定される。例えば、少なくとも1つの構成要素を変形する場合、追加する場合または省略する場合、さらには、少なくとも1つの構成要素を抽出し、他の実施の形態の構成要素と組み合わせる場合が含まれるものとする。
【符号の説明】
【0031】
1:電力系統監視制御システム、 2:ネットワーク、 12:画像出力装置、 14:系統監視盤、 16:モニタ、 18:操作卓、 100:プロセッサ、 200:記憶装置。