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  • 特許-パワーシート制御装置及びパワーシート 図1
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  • 特許-パワーシート制御装置及びパワーシート 図5
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-30
(45)【発行日】2025-05-12
(54)【発明の名称】パワーシート制御装置及びパワーシート
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/12 20060101AFI20250501BHJP
   B60N 2/42 20060101ALI20250501BHJP
【FI】
B60N2/12
B60N2/42
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021188838
(22)【出願日】2021-11-19
(65)【公開番号】P2023075745
(43)【公開日】2023-05-31
【審査請求日】2024-06-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山田 光一
【審査官】寺澤 忠司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/011866(WO,A1)
【文献】特開2005-088614(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102018202455(DE,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0221247(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/00-2/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体床部に対してシートクッションを前後にスライドさせるスライド機構と、前記シートクッションに対してシートバックを前後に回動させるリクライニング機構とを有し、シートポジションを変更可能なパワーシートを制御するパワーシート制御装置であって、
予め登録された運転用シートポジションに前記パワーシートを自動で復帰させるメモリ機能を備え、
前記シートクッションのスライド及び前記シートバックの回動を伴って前記パワーシートを前記運転用シートポジションに復帰させる際には、前記シートクッションのスライドを停止させる直前に、前記シートクッションのスライド方向とは反対側へ前記シートバックを回動させるパワーシート制御装置。
【請求項2】
前記パワーシートを前記運転用シートポジションに復帰させる際に、前記シートクッション及び前記シートバックが前記運転用シートポジションよりも後側に位置している場合、前記シートクッションを前方へスライドさせつつ前記シートバックを前記運転用シートポジションよりも前側へ一旦回動させる請求項1に記載のパワーシート制御装置。
【請求項3】
車体床部に対してシートクッションを前後にスライドさせるスライド機構と、
前記シートクッションに対してシートバックを前後に回動させるリクライニング機構と、
請求項1又は請求項2に記載のパワーシート制御装置と、
を有するパワーシート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パワーシート及びその制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1に記載された車両の乗員姿勢制御装置では、制御部は、制御信号を出力してRY軸方向アクチュエータを駆動することにより、車両用シートの角度を調整する。制御部は、平常時は車両の前後方向の加速度により乗員が受ける力を打ち消す方向に力が働くように車両用シートを回転させる。また、制御部は、車速センサ、X軸加速度センサから入力される信号に基づき、車両に揺り戻しが発生することを予知する。制御部は、揺り戻しを予知した場合、車両用シートを、基準角度に戻す方向に回転させる前に反対側に素早く回転させる。その後、制御部は、ゆっくりと車両用シートを基準角度に戻す方向に回転させる。これにより、車両の揺り戻しがある場合に乗員の姿勢調整を適切に行うようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-173232号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
自動運転が可能な車両では、運転者は、例えばパワーシートのシートクッションを後方に大きくスライドさせ且つシートバックを後方に大きくリクライニングさせることにより、脚を伸ばしてリラックスした姿勢をとることができる。しかしながら、例えばレベル3の自動運転では、自動運転システムからの手動運転への切り替え要求に対して運転者が適切に対応することが必要となる。その場合、パワーシートを上記のリラックス用のシートポジションから運転用のシートポジションに迅速に復帰させることが求められる。その際、シートクッションを高速でスライドさせると、当該スライドの停止時に運転者がショック感を受けることとなる。このショック感を和らげるために、例えばスライドの停止直前でスライド速度を低下させると、運転用シートポジションへの迅速な復帰が妨げられる。
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、運転用シートポジションへの復帰の際に、シートクッションのスライド速度を低下させることなく、運転者が受けるショック感を和らげることができるパワーシート操作装置及びパワーシートを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様のパワーシート制御装置は、車体床部に対してシートクッションを前後にスライドさせるスライド機構と、前記シートクッションに対してシートバックを前後に回動させるリクライニング機構とを有し、シートポジションを変更可能なパワーシートを制御するパワーシート制御装置であって、予め登録された運転用シートポジションに前記パワーシートを自動で復帰させるメモリ機能を備え、前記シートクッションのスライド及び前記シートバックの回動を伴って前記パワーシートを前記運転用シートポジションに復帰させる際には、前記シートクッションのスライドを停止させる直前に、前記シートクッションのスライド方向とは反対側へ前記シートバックを回動させる。
【0007】
第1の態様によれば、車体床部に対してシートクッションを前後にスライドさせるスライド機構と、シートクッションに対してシートバックを前後に回動させるリクライニング機構とを有し、シートポジションを変更可能なパワーシートがパワーシート制御装置によって制御される。このパワーシート制御装置は、予め登録された運転用シートポジションにパワーシートを自動で復帰させるメモリ機能を備えており、シートクッションのスライド及びシートバックの回動を伴ってパワーシートを運転用シートポジションに復帰させる際には、シートクッションのスライドを停止させる直前に、シートクッションのスライド方向とは反対側へシートバックを回動させる。これにより、シートクッションのスライド速度を低下させることなく、運転者の上半身が受けるショック感を和らげることができる。
【0008】
第2の態様のパワーシート制御装置は、第1の態様において、前記パワーシートを前記運転用シートポジションに復帰させる際に、前記シートクッション及び前記シートバックが前記運転用シートポジションよりも後側に位置している場合、前記シートクッションを前方へスライドさせつつ前記シートバックを前記運転用シートポジションよりも前側へ一旦回動させる。
【0009】
第2の態様によれば、パワーシート制御装置は、パワーシートを運転用シートポジションに復帰させる際に、シートクッション及びシートバックが運転用シートポジションよりも後側に位置している場合、シートクッションを前方へスライドさせつつシートバックを運転用シートポジションよりも前側へ一旦回動させる。そして、シートクッションのスライドを停止させる直前に、シートクッションのスライド方向とは反対側すなわち後側へシートバックを回動させる。これにより、シートクッションの前方へのスライドが停止する際に、運転者の上半身が受けるショック感を和らげることができる。
【0010】
第3の態様のパワーシートは、車体床部に対してシートクッションを前後にスライドさせるスライド機構と、前記シートクッションに対してシートバックを前後に回動させるリクライニング機構と、第1の態様又は第2の態様に記載のパワーシート制御装置と、を有する。
【0011】
第3の態様によれば、パワーシートは、車体床部に対してシートクッションを前後にスライドさせるスライド機構と、シートクッションに対してシートバックを前後に回動させるリクライニング機構とを有しており、シートポジションを変更可能である。このパワーシートが有するパワーシート制御装置は、第1の態様又は第2の態様のものであるため、前述した効果が得られる。
【発明の効果】
【0012】
以上説明したように、本発明に係るパワーシート制御装置及びパワーシートでは、運転用シートポジションへの復帰の際に、シートクッションのスライド速度を低下させることなく、運転者が受けるショック感を和らげることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施形態に係るパワーシートが運転用シートポジションに位置する状態を示す側面図である。
図2】実施形態に係るパワーシートがリラックス用シートポジションに位置する状態を示す側面図である。
図3】実施形態に係るパワーシートの制御システムを示すブロック図である。
図4】実施形態に係るパワーシートにおける運転用シートポジションへの復帰時の動作について説明するための図2に対応した側面図である。
図5】実施形態に係るパワーシート制御装置の制御の流れを示すフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図1図3を参照して本発明の一実施形態に係るパワーシート10及びパワーシート制御装置30について説明する。なお、図2に示される矢印FR及び矢印UPは、パワーシート10の前方及び上方をそれぞれ示している。このパワーシート10の前後方向、左右方向(幅方向)および上下方向は、このパワーシート10が搭載された車両(自動車)の前後方向、左右方向(幅方向)および上下方向と一致している。以下、単に前後左右上下の方向を用いて説明する場合、特に断りのない限り、パワーシート10に対する方向を示すものとする。
【0015】
図1及び図2には、本実施形態に係るパワーシート10が側面図にて示されている。このパワーシート10は、レベル3の自動運転が可能な車両の運転席であり、運転者が着座するシートクッション12と、運転者の背凭れとなるシートバック14とを有している。このパワーシート10は、一例として8wayのパワーシートであり、車体床部Fに対してシートクッション12を前後にスライドさせるスライド機構16と、シートクッション12に対してシートバック14を前後に回動させるリクライニング機構18と、車体床部Fに対してシートクッション12を上下に移動させるリフター機構20と、シートクッション12の座面の傾きを変化させるチルト機構22とを有しており、シートポジションを多様に変更可能とされている。このパワーシート10は、図3に示されるパワーシート制御装置30を有しており、当該パワーシート制御装置30によって動作を制御される。
【0016】
パワーシート制御装置30は、制御部であるシートECU(Electronic Control Unit)32と、8wayパワーシートスイッチ34と、メモリスイッチ36とを有している。シートECU32は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、及び入出力I/F(Inter Face)がバスに接続されたマイクロコンピュータで構成されている。このシートECU32の入出力I/Fには、車両に搭載された各種の車両ECUやバッテリ等の車両側電装品38が電気的に接続されている。車両ECUには、車両の自動運転を制御する自動運転ECUが含まれている。
【0017】
また、シートECU32の入出力I/Fには、スライド機構16の駆動源であるスライド高速モータ16A、リクライニング機構18の駆動源であるリクラ高速モータ18A、リフター機構20の駆動源であるリフターモータ20A、及びチルト機構22の駆動源であるチルトモータ22Aが電気的に接続されている。スライド高速モータ16A、リクラ高速モータ18A、リフターモータ20A及びチルトモータ22Aはそれぞれ、各モータの出力軸の回転位置に応じてパルス信号を出力するホールセンサを有している。シートECU32は、各モータ16A、18A、20A、22Aのホールセンサからのパルス信号に基づいて各モータ16A、18A、20A、22Aの出力軸の回転位置を検出し、当該検出結果に基づいてシートクッション12及びシートバック14の位置を検知する。
【0018】
8wayパワーシートスイッチ34は、シートECU32の入出力I/Fに電気的に接続されている。この8wayパワーシートスイッチ34は、例えば2つの操作ノブを有している。シートECU32は、上記2つの操作ノブの操作に応じてスライド高速モータ16A、リクラ高速モータ18A、リフターモータ20A又はチルトモータ22Aを作動させる。これにより、スライド機構16、リクライニング機構18、リフター機構20又はチルト機構22が動作する。
【0019】
メモリスイッチ36は、シートECU32の入出力I/Fに電気的に接続されている。このメモリスイッチ36は、シートECU32のメモリ機能を利用する際に使用される。このメモリ機能は、予め登録(記憶)されたシートポジションにパワーシート10を自動で動かす機能である。このメモリスイッチ36は、例えば「SET」のスイッチと、「メモリ1」のスイッチと、「メモリ2」のスイッチとを有しており、2つのシートポジションを登録可能とされている。シートポジションを登録する際には、例えば登録したいシートポジションにパワーシート10を動かした状態で、「SET」のスイッチを押しながら「メモリ1」又は「メモリ2」のスイッチを押す。これにより、登録したいシートポジションがシートECU32に記憶される。シートECU32は、その後に「メモリ1」又は「メモリ2」のスイッチが押された際には、登録されたシートポジションにパワーシート10を移動(復帰)させる。
【0020】
本実施形態では、「メモリ1」のスイッチには、図1に示される運転用シートポジション(以下、「ドライビングポジション」と称する)が登録され、「メモリ2」のスイッチには、図2に示されるリラックス用シートポジション(以下、「リラックスポジション」と称する)が登録されているものとする。ドライビングポジションは、運転者が運転しやすいシートポジションであり、リラックスポジションは、運転者が脚を伸ばしてリラックスできるシートポジションである。リラックスポジションでは、シートクッション12がドライビングポジションよりも後方にスライドされ、シートバック14がドライビングポジションよりも後方に回動(リクライニング)される。その他、リラックスポジションでは、シートクッション12の上下位置及び座面の傾きが予め登録された状態に調整される。
【0021】
シートECU32は、パワーシート10がリラックスポジションに位置する状態で、自動運転ECUから手動運転への切り替え要求があった場合、スライド機構16、リクライニング機構18、リフター機構20及びチルト機構22の動作を制御して、パワーシート10をドライビングポジションへと自動で復帰させる。リラックスポジションからドライビングポジションへの復帰の際には、シートクッション12が前方へスライドされ且つシートバック14が前側へ回動される。この際、シートECU32は、シートクッション12のスライドを停止させる直前に、シートクッション12のスライド方向とは反対側へシートバック14が回動するように、スライド機構16及びリクライニング機構18を制御する。
【0022】
上記の制御について図4を参照しながら具体的に説明する。図4には、シートクッション12及びシートバック14がリラックスポジションに位置する状態が図示されている。図4において二点鎖線SL0で示される位置は、シートクッション12がドライビングポジションに位置する状態でのシートクッション12の前面の位置を示している。図4において二点鎖線RC0で示される位置は、シートバック14がドライビングポジションに位置する状態でのシートバック14の前面の位置(角度)を示している。図4において一点鎖線SL1で示される位置は、シートクッション12がドライビングポジションとリラックスポジションとの間の中間に位置する状態でのシートクッション12の前面の位置を示している。図4において一点鎖線RC1で示される位置は、シートバック14がドライビングポジションよりも若干前側に回動した状態でのシートバック14の前面の位置を示している。
【0023】
シートECU32は、シートクッション12をリラックスポジションから図4の一点鎖線SL1の位置までスライドさせる際に、シートバック14をリラックスポジションから図4の一点鎖線RC1の位置まで回動させる。そして、シートECU32は、シートクッション12を図4の一点鎖線SL1の位置から二点鎖線SL0の位置までスライドさせる際に、シートバック14を図4の一点鎖線RC1の位置から二点鎖線RC0の位置まで回動させる。つまり、シートECU32は、パワーシート10をリラックスポジションからドライビングポジションへと復帰させる際には、シートクッション12及びシートバック14がドライビングポジションよりも後側に位置しているため、シートクッション12を前方へスライドさせつつシートバック14をドライビングポジションの位置(角度)よりも前側へ一旦回動させる。そして、シートクッション12のスライドを停止させる直前に、シートクッション12のスライド方向とは反対側すなわち後方へシートバック14を回動させる。
【0024】
次に、図5に示されるフローチャートを参照して、シートECU32の上記制御の流れについて説明する。なお、図5では、スライドを「SLIDE」と記載し、リクライニングを「RCL」と記載し、リフターを「LIFT」と記載し、チルトを「TILT」と記載している。図5に示されるように、シートECU32は、先ずステップS1において、「メモリ1」のスイッチがONになったか否かを判断する。「メモリ1」のスイッチは、当該スイッチが乗員によって操作された場合の他、自動運転ECUによる姿勢切り替え要求があった場合にもONになる。このステップS1での判断が否定された場合、ステップS2に移行し、この判断が肯定された場合、ステップS4に移行する。
【0025】
ステップS2に移行した場合、シートECU32は、「メモリ2」のスイッチがONになったか否かを判断する。この判断が否定された場合、ステップS1に戻って前述した処理を繰り返す。この判断が肯定された場合、ステップS3に移行する。ステップS3に移行した場合、シートECU32は、各機構16、18、20、22の各モータ16A、18A、20A、22Aを適宜作動させて、パワーシート10をリラックスポジションへと動作させる。
【0026】
一方、ステップS4に移行した場合、シートECU32は、各モータ16A、18A、20A、22Aから出力されるパルス信号のカウントを開始し、次のステップS5およびステップS8に移行する。
【0027】
ステップS5では、シートECU32は、リクライニング機構18のリクラ高速モータ18Aを作動させ、シートバック14を前側へ回動(リクライニング動作)させ、次のステップS6に移行する。ステップS6では、シートECU32は、シートバック14が図4の一点鎖線RC1の位置に到達したか否かを判断する。具体的には、シートECU32は、リクラ高速モータ18Aからのパルス信号に基づいて、「メモリ1」のスイッチに登録されているシートバック14の位置(すなわちドライビングポジション)からシートバック14の現在位置までの差がB(図4の二点鎖線RC0の位置から一点鎖線RC1の位置までの距離)になったか否かを判断する。この判断が否定された場合、ステップS5に戻って前述した処理を繰り返す。この判断が肯定された場合、ステップS7に移行する。ステップS7では、シートECU32は、シートバック14の前側への回動を停止させる。
【0028】
一方、ステップS8では、シートECU32は、スライド機構16のスライド高速モータ16Aを作動させ、シートクッション12を前方へスライド(前進)させ、次のステップS9に移行する。ステップS9では、シートECU32は、シートクッション12が図4の一点鎖線SL1の位置に到達したか否かを判断する。具体的には、シートECU32は、スライド高速モータ16Aからのパルス信号に基づいて、「メモリ1」のスイッチに登録されているシートクッション12の位置(すなわちドライビングポジション)からシートクッション12の現在位置までの差がA(図4の二点鎖線SL0の位置から一点鎖線SL1の位置までの距離)になったか否かを判断する。この判断が否定された場合、ステップS8に戻って前述した処理を繰り返す。この判断が肯定された場合、ステップS10に移行する。ステップS10では、シートECU32は、リクライニング機構18のリクラ高速モータ18Aを作動させ、シートバック14をドライビングポジション(図4の二点鎖線RC0の位置)まで後側へ回動させ、ステップS11に移行する。ステップS10でのシートバック14の動作距離は、図4に符号Bで示される距離となる。
【0029】
ステップS11に移行した場合、シートECU32は、シートクッション12が図4の二点鎖線SL0で示される位置に到達したか否かを判断する。具体的には、シートECU32は、リクライニング機構18のリクラ高速モータ18Aからのパルス信号に基づいて、「メモリ1」のスイッチに登録されているシートバック14の位置(すなわちドライビングポジション)からシートバック14の現在位置までの差が0になったか否かを判断する。この判断が否定された場合、ステップS11に戻って上記の処理を繰り返す。この判断が肯定された場合、ステップS12に移行する。ステップS12では、シートECU32は、シートクッション12のスライド動作(前進)を停止させる。ステップS12での処理が完了すると、次のステップS13に移行する。
【0030】
ステップS13では、シートECU32は、リフター機構20のリフターモータ20Aを作動させ、「メモリ1」のスイッチに登録されているシートクッション12の上下位置までシートクッション12を動作させる。ステップS13での処理が完了すると、次のステップS14に移行する。ステップS14では、シートECU32は、チルト機構22のチルトモータ22Aを作動させ、「メモリ1」のスイッチに登録されているシートクッション12の座面角度までシートクッション12を動作させる。ステップS14での処理が完了すると、次のステップS15に移行する。ステップS15では、シートECU32は、各モータ16A、18A、20A、22Aから出力されるパルス信号のカウントを停止する。このステップS15での処理が完了すると、シートECU32は、パワーシート10をドライビングポジションへ復帰させる制御処理を終了する。
【0031】
以上、シートECU32がパワーシート10をリラックスポジションからドライビングポジションに復帰させる場合(すなわちシートECU32がパワーシート10をドライビングポジションに復帰させる際に、シートクッション12及びシートバック14がドライビングポジションよりも後側に位置している場合)の制御について説明したが、シートECU32による制御はこれに限るものではない。例えば、シートECU32がパワーシート10をドライビングポジションに復帰させる際に、シートクッション12及びシートバック14がドライビングポジションよりも前側に位置している場合、シートECU32は、シートクッション12を後方へスライドさせつつシートバック14をドライビングポジションよりも後側へ一旦回動させる。そして、シートクッション12のスライドを停止させる直前に、シートクッション12のスライド方向とは反対側すなわち前側へシートバックを回動させる。
【0032】
本実施形態によれば、車体床部Fに対してシートクッション12を前後にスライドさせるスライド機構16と、シートクッション12に対してシートバック14を前後に回動させるリクライニング機構18とを有し、シートポジションを変更可能なパワーシート10がパワーシート制御装置30によって制御される。このパワーシート制御装置30は、予め登録されたドライビングポジションにパワーシート10を自動で復帰させるメモリ機能を備えており、シートクッション12のスライド及びシートバック14の回動を伴ってパワーシートをドライビングポジションに復帰させる際には、シートクッションのスライドを停止させる直前に、シートクッション12のスライド方向とは反対側へシートバック14を回動させる。これにより、運転者の上半身に作用する慣性が緩和されるので、シートクッション12のスライド速度を低下させることなく、運転者の上半身が受けるショック感を和らげることができる。
【0033】
また、本実施形態によれば、パワーシート制御装置30は、パワーシート10をドライビングポジションに復帰させる際に、シートクッション12及びシートバック14がドライビングポジションよりも後側に位置している場合、シートクッション12を前方へスライドさせつつシートバック14をドライビングポジションよりも前側へ一旦回動させる。そして、シートクッション12のスライドを停止させる直前に、シートクッション12のスライド方向とは反対側すなわち後側へシートバックを回動させる。これにより、シートクッションの前方へのスライドが停止する際に、運転者の上半身が受けるショック感を和らげることができる。
【0034】
なお、上記実施形態では、パワーシート10がリフター機構20及びチルト機構22を有する場合について説明したが、これに限らず、パワーシート10がランバーサポート機構、チルト機構、オットマン機構、サイサポート機構など他の機構を有する構成にしてもよい。
【0035】
その他、本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更して実施できる。また、本発明の権利範囲が上記実施形態に限定されない
【符号の説明】
【0036】
10 パワーシート
12 シートクッション
14 シートバック
16 スライド機構
18 リクライニング機構
30 パワーシート制御装置
F 車体床部
図1
図2
図3
図4
図5