(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-30
(45)【発行日】2025-05-12
(54)【発明の名称】セラミック発泡体、その製造方法、及びその使用
(51)【国際特許分類】
C01B 33/16 20060101AFI20250501BHJP
【FI】
C01B33/16
(21)【出願番号】P 2021540431
(86)(22)【出願日】2020-01-13
(86)【国際出願番号】 US2020013409
(87)【国際公開番号】W WO2020146901
(87)【国際公開日】2020-07-16
【審査請求日】2022-11-28
(32)【優先日】2019-06-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-01-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519411043
【氏名又は名称】ザ リサーチ ファウンデイション フォー ザ ステイト ユニバーシティー オブ ニューヨーク
(74)【代理人】
【識別番号】110000475
【氏名又は名称】弁理士法人みのり特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】レン,シェンチィァン
(72)【発明者】
【氏名】イァン,ルゥイヂゥー
(72)【発明者】
【氏名】チァイ,ピィンポォー
(72)【発明者】
【氏名】フゥー,フォン
【審査官】青木 千歌子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/132117(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B
C04B
B01J
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミックエアロゲルの製造方法であって、
セラミック前駆体;
尿素、及び、重炭酸ナトリウムと尿素との組み合わせから選択される、細孔形成ガス形成添加剤;
触媒;及び
界面活性剤
を接触させることを含み、
前記接触が、不活性ガス及びセラミックエアロゲルの形成をもたらし、
該セラミックエアロゲルが、セラミックエアロゲルの第一の表面から、前記第一の表面と反対側の第二の表面に移動する方向に沿って細孔のサイズが減少又は増加する細孔勾配構造を有する、方法。
【請求項2】
前記セラミック前駆体が、シリカ前駆体、アルミナ前駆体、遷移金属酸化物前駆体、及び、それらの組み合わせから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記シリカ前駆体が、テトラアルコキシシラン、アルキルトリアルコキシシラン、メタケイ酸ナトリウム、及び、それらの組み合わせから選択される;
前記アルミナ前駆体が、アルミニウムアルコキシド、アルマトラン、トリス(アルマトラニルオキシ-i-プロピル)アミン、及びそれらの組み合わせから選択される;及び/又は
前記遷移金属酸化物前駆体が、遷移金属アルコキシドから選択される;
請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記シリカ前駆体が、オルトケイ酸テトラメチル、オルトケイ酸テトラエチル、メチルトリメトキシシラン、ケイ酸ナトリウム、及びそれらの組み合わせから選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
遷移金属酸化物前駆体が、式M(OR)xを有する遷移金属アルコキシドから選択され、式中、MはAl、Ti、Zr、W、Cr、およびMoから選択される遷移金属であり、Rはアルキルであり、xは1、2、3、4、又は5から選択される、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
触媒が、アンモニア、フッ化アンモニウム、水酸化アンモニウムおよびそれらの組み合わせから選択される塩基触媒である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
触媒が、プロトン酸、ハロゲン化水素酸、およびそれらの組み合わせから選択される酸触媒である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
触媒が酢酸である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
界面活性剤が、臭化セチルトリメチルアンモニウムおよびドデシル硫酸ナトリウムから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記セラミック前駆体、前記細孔形成ガス形成添加剤、及び前記界面活性剤を接触させ、次いで、
前記触媒を、前記セラミック前駆体、前記細孔形成ガス形成添加剤、及び前記界面活性剤と接触させ;
ここで、前記接触が、
溶媒中に配置されてもよい、前記セラミック前駆体、
水中に配置されてもよい、前記細孔形成ガス形成添加剤、及び
水中に配置されてもよい、前記触媒
を混合することを含み;又は
ここで、前記接触が、室温~70℃の温度で、及び/又は、1分~96時間行われる、
請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記セラミック前駆体が、前記セラミック前駆体、前記触媒、前記細孔形成ガス形成添加剤、及び、前記界面活性剤の総重量に基づいて、2~10重量%で存在する;
前記細孔形成ガス形成添加剤が、前記セラミック前駆体、前記触媒、前記細孔形成ガス形成添加剤、及び、前記界面活性剤の総重量に基づいて、0.4~2重量%で存在する;
前記触媒が、前記セラミック前駆体、前記触媒、前記細孔形成ガス形成添加剤、及び、前記界面活性剤の総重量に基づいて、1~2重量%で存在する;
前記界面活性剤が、前記セラミック前駆体、前記触媒、及び前記細孔形成ガス形成添加剤の総重量に基づいて、200~1000重量%で存在する;又は
前記セラミック前駆体:前記細孔形成ガス形成添加剤:前記触媒:前記界面活性剤の比が、5:1:1:50である、
請求項1に記載の方法。
【請求項12】
さらに、
セラミックエアロゲルから溶媒を除去すること;
セラミックエアロゲルを洗浄すること;及び
セラミックエアロゲルを乾燥すること
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
洗浄が、セラミックエアロゲルを水溶液と接触させることを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
さらに、
セラミックエアロゲルの表面の少なくとも一部に配置された疎水性炭素含有物質の層を形成すること;
前記セラミックエアロゲルからフィルムを形成すること、ここで任意で、前記フィルムが基材上に形成されること、前記形成が連続プロセスであること、前記形成が、ドクターブレーディング、ドロップキャスティング、又は積層造形によって実施されること、又は、前記フィルムが、前記セラミック前駆体、前記細孔形成ガス形成添加剤、前記触媒、及び前記界面活性剤を含む反応混合物のゲル化形態のスプレーコーティングによって形成されること;
基材に前記セラミックエアロゲルを含浸させること;又は
前記セラミックエアロゲルの表面の少なくとも一部を装飾又はコーティングすること、ここで、前記セラミックエアロゲルが、物質で装飾又はコーティングされ、ここで、前記物質が、ナノ粒子であり、ここで、前記ナノ粒子が、セラミックエアロゲルにナノ粒子前駆体を含浸させることによって形成され、ナノ複合材料が形成されること;
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか1項に記載の方法によって形成された、セラミックマトリックスと細孔とを含むセラミックエアロゲルであって、
前記細孔の少なくとも一部が相互接続しており、
セラミックエアロゲルの第一の表面から、前記第一の表面と反対側の第二の表面に移動する方向に沿って細孔のサイズが減少又は増加している細孔勾配構造を有する、セラミックエアロゲル。
【請求項16】
セラミックエアロゲルが、シリカエアロゲルであり、透明である
請求項
15に記載のセラミックエアロゲル。
【請求項17】
前記細孔が、500ミクロン~1ミクロンのサイズを有する、請求項
15に記載のセラミックエアロゲル。
【請求項18】
セラミックエアロゲルが、90~99%airである;
セラミックエアロゲルが、100nm未満の平均細孔径を有する;
セラミックエアロゲルが、約0.003g/cm
3の密度を有する;又は
セラミックエアロゲルが、約0.017W/mKの熱伝導率を有する、
請求項
15に記載のセラミックエアロゲル。
【請求項19】
セラミックエアロゲルが、セラミックエアロゲルの表面の少なくとも一部に配置された疎水性炭素含有物質の層を含む、請求項
15に記載のセラミックエアロゲル。
【請求項20】
セラミックエアロゲルが、セラミックエアロゲルの表面の少なくとも一部に配置されたナノ粒子をさらに含む、請求項
15に記載のセラミックエアロゲル。
【請求項21】
セラミックエアロゲルが、モノリス、自立フィルム、又は、基材の少なくとも一部上に配置されたフィルムであり、ここで、
前記フィルムが、1/4インチ(0.635cm)~2インチ(5.08cm)の厚さを有し、又は、前記フィルムが、基材の表面の少なくとも一部の上に配置される、
請求項
15に記載のセラミックエアロゲル。
【請求項22】
セラミックエアロゲルが、
少なくとも100MPaの圧縮強度;又は
防音特性/音響絶縁特性;
を示す、請求項
15に記載のセラミックエアロゲル。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本願は米国仮出願第62/791,778号(2019年1月12日出願)及び米国仮出願第62/861,892号(2019年6月14日出願)の優先権を主張し、これらの開示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
軽量で機械的に強い超絶縁材(熱・音響)を探すことは、エネルギー効率の良い建物や他の多くの部門にとって重要である一方、スケーラビリティを備えた低コスト製造は、大規模、実用的、そして省エネルギーの適用に不可欠である。
【0003】
建物のHVAC(暖房、換気、空調)は、世界のエネルギー消費の40%を占めている。既設ビルのHVACや将来の建築物のHVACは、向上した断熱材を導入し、CO2排出量を削減することで改善することができる。建物の熱損失を減少させる経済的なアプローチは、断熱材のより厚い層を設置することである。しかしながら、それはより多くのスペースを占有し、従って、生活スペースは減少するであろう。シリカエアロゲルは、従来設置されていた断熱材の半分の厚さで同等の断熱性能を得ることができる。シリカエアロゲルは、周知の任意の固形物のうち、最も低い熱伝導率を示し、環境温度、環境気圧、及び環境相対湿度で0.015 W/mKのオーダーである。このような低い熱伝導率は、その低い密度と製造中に作製された細孔との組合せから生じる。建築業界では、薄いファサード断熱材、サイドバルコニー、ルーフバルコニー構造はもちろん、建物のレトロフィットにも高性能断熱材を使用する最も重要な理由の1つが、省スペースである。建物における標準断熱材としてのシリカエアロゲルの大規模使用の主な欠点は、それらの製造コストである。
【0004】
超絶縁材は、熱伝達の厳しい規制を必要とする。これに関連して、シリカエアロゲルは最も効率的な断熱材料の1つであり、静止空気よりも少ない超低熱伝導率にさえ達することができる。セラミックエアロゲルの超絶縁は、多孔質材料の幾何学的形態(高い細孔容積、最適化された空隙サイズ、及び、境界と欠陥とを有する多孔質固体壁を含む)から生じ、ここで、フォノン散乱下の低固体フラクションを通る熱輸送のためのガス空隙と散逸経路を通る限られた熱伝導が、その良好な断熱性に寄与する。その超絶縁性能があったとしても、大規模シリカエアロゲル適用は、超臨界乾燥(乾燥プロセス中の毛管誘発構造劣化を回避する)によるその高価で時間のかかる製造のために法外に高い。さらに、エアロゲルの機械的安定性が乏しいため、モノリシック適用が妨げられている。カーボンナノワイヤ及びポリマー繊維などの添加剤は、機械的安定性を高めるためにエアロゲルとブレンドされて使用されるが、絶縁性能を損なうことなく機械的強度を達成することは依然として非常に困難である。
【0005】
人間の皮膚構造から着想される孔径勾配を有するエアロゲル様発泡材料は、優れた断熱性能を付与するだけでなく、新しい機能性の開発の基礎を提供することができるその非対称構造のために、最近関心を集めている。さらに、細孔勾配構造を有するこのようなエアロゲル様発泡材料は、均一な細孔径を有する高密度又は多孔質材料よりも機械的特性を最適化するのに有望であることを示す。同じ多孔度を有する勾配-細孔ポリ(乳酸)発泡体は、均一な発泡体よりも吸音能力が~20%向上することが見出された。調整可能な空隙率、細孔径、及び質量密度が制御された中空ナノ/ミクロ構造を有するシリカ発泡体は、超絶縁材料の開発に関与してきた。
【0006】
断熱のためには、軽量エアロゲル材料が望ましい場合がある。しかし、機械的完全性が低く、製造コストが高いため、エネルギー効率の良い建築用断熱材への大規模な採用が妨げられていた。さらに、より高い防音・耐熱特性を達成することは、温度管理にとって重要であろう。
【0007】
シリカエアロゲルの内部表面化学は、その非常に大きな表面-体積比(~2×109 m-1)及び比表面積(~900m2/g)のために、その熱的及び化学的挙動において重大な役割を果たす。伝統的な超臨界乾燥は、強力な水素結合能力(親水性)を有する水酸基(-OH)基(~5-OH/nm2)だけで覆われた表面を生成する。結果として、それらは湿った空気から水を吸収し、それはそれらの質量を20%まで増加させる。さらに、ナノメートル規模の細孔内の水分の凝縮は、シリカ骨格を破壊し、エアロゲルモノリスを潰すのに十分な強さの毛管力を及ぼす。加えて、比較的高い温度では、シリカエアロゲル中の熱伝導の放射成分は、大きな影響を与える。
【0008】
シリカエアロゲルは、通常、超臨界抽出と組み合わされたゾル-ゲルプロセスを介して調製され、構造的完全性及び高い多孔性を維持する。超臨界抽出による従来のエアロゲル製造は、高いエネルギー消費、大きな環境フットプリント、長い処理時間、及び高い材料コストを含む多くの制限を受ける。しかしながら、超臨界乾燥に含まれる複雑な処理及び高圧は、建築用断熱材のためのシリカエアロゲルの大規模製造のためのそのスケーラビリティを制限する。最も一般的なエアロゲル合成手法は、低表面張力超臨界流体(例えば、CO2又はCH4)を使用する臨界点乾燥によるゲルからの液抽出を含む。しかしながら、超臨界抽出は、高価な高圧装置を必要とし、危険で時間のかかるプロセスとなる可能性がある。代替的なアプローチとして、有機溶媒揮散が挙げられるが、これは、溶媒揮散のための高真空及び凍結乾燥のための比較的低い温度というエネルギー集約的要件のために、スケールアップすることが困難である。従来の大気圧乾燥プロセスは、よりエネルギー集約的ではない代替方法として、ゲル形成に使用されるもともとの溶媒を、低表面張力有機溶媒(ヘキサン、ヘプタン、及びオクタンなど)に置き換える。さらに、それは通常、塩酸の生成をもたらし、除去するための有機溶媒をさらに必要とする。したがって、現在のAPD法は、大量の有機溶媒の使用のために、依然として時間がかかり、費用のかかるプロセスである。これらはすべて、建物断熱用の大規模エアロゲルの生産を制限している。2014年のアライドマーケットリサーチによる報告によれば、エアロゲル市場の急速な成長によって、シリカエアロゲル断熱材(18.5ドル/ft2-inch)への関心が示されている;2004年には約2500万ドルのエアロゲル断熱材が販売されたが、これは2013年までに5億ドルに増加した(2021年までに19億2700万ドルを予想している)。さらに、建物における標準的な断熱材料としてシリカエアロゲルを大規模に採用することの主な欠点は、それらの高い製造コストである。その結果、現在のエアロゲル生産は、大部分がパイプライン断熱材のような工業用途に使用されている。
【0009】
望ましい機械的完全性と低コストを有する絶縁材料(例えば、勾配構造の絶縁材料)のための新しい方法が、特に絶縁材料(例えば、勾配構造の絶縁材料)の拡張可能な製造のために望まれている。
【発明の概要】
【0010】
本開示では、様々な実施例において、例えば、セラミック発泡体、モノリス(例えば、PGAeros)と称され得る、細孔勾配セラミックエアロゲルなどのスケーラブルなセラミックエアロゲルが設計され、合成された。PGAerosの低コスト製造は、細孔勾配をサポートするためのインサイツ(in-situ)気泡形成によってさらに促進される。PGAerosは、広い温度範囲(例えば、それぞれ0.040W/mK、及び100.56MPaの圧縮強度)にわたって強固な機械的及び熱的安定性を示すことができる。例えば、PGAerosの一体型セラミックモノリスの性質は、強固な防音性能及び耐火性能を示すことができる。セラミックエアロゲル材料のスケーラブルな製造のこの実証は、例えば、望ましい温度管理、機械的強度、低質量密度、及び防音・難燃性能を有する断熱用途に使用され得る。
【0011】
一態様では、本開示は、セラミック発泡体を製造する方法を提供する。セラミック発泡体はセラミックエアロゲル又はセラミックエアロゲル様発泡体(例えば、シリカエアロゲル様発泡体)とも称される。セラミック発泡体は、シリカエアロゲルであってもよい。シリカエアロゲルは、シリカエアロゲルフィルムであってもよい。この方法は、細孔形成ガス反応のインサイツ生成に基づく。反応は、密閉された環境(例えば、周囲圧力より高い反応)中で実施することができる。セラミック発泡体は、水熱条件下で形成することができる。一例では、方法は、超臨界ガス種の使用を含まない。方法の非限定的な例が、本明細書において提供される。
【0012】
様々な例において、セラミック発泡体を形成するための方法は、1つ以上のセラミック前駆体(例えば、1つ以上のシリカ前駆体)、1つ以上の細孔形成ガス形成添加剤(1つ以上の不活性ガス発生剤)、1つ以上の触媒、及び任意で1つ以上の添加剤を接触させること(例えば、密閉容器などの密閉環境内であってもよい)を含み、この際、前記接触は、不活性ガス(例えば、二酸化炭素)及びセラミック発泡体(例えば、シリカエアロゲル)の形成をもたらす。セラミック発泡体(例えば、シリカエアロゲル)は、水熱条件下で形成することができる。反応物質(1つ又は複数のセラミック前駆体、1つ又は複数の細孔形成ガス形成添加剤、1つ又は複数の触媒、及び任意で1つ又は複数の添加剤)は、任意の順序で添加/接触させることができる。反応物質は、単一の容器内で接触させることができる。形成されたままのセラミック発泡体(例えば、シリカエアロゲル)は、周囲圧力乾燥(APD)に供されてもよい。様々な実施例では、方法は、セラミック発泡体(例えば、シリカエアロゲル)の表面の少なくとも一部に対する、セラミック発泡体形成後の改質をさらに含む。例えば、トリメチルクロロシラン処理及び/又は炭素コーティングを含む高度な表面改質を使用して、毛管現象及び超疎水性を設計することができる。方法は連続方法であってもよい(例えば、roll-to-roll法)。
【0013】
一態様では、本開示は、セラミック発泡体を提供する。セラミック発泡体は、セラミック発泡体フィルムであってもよい。セラミック発泡体は、セラミックエアロゲルと呼ぶことができる。セラミック発泡体は、シリカエアロゲルであってもよい。シリカエアロゲルは、シリカエアロゲルフィルムであってもよい。セラミック発泡体の非限定的な例が、本明細書において提供される。セラミック発泡材料(例えば、セラミック発泡複合材料)は、セラミック発泡体を含む。セラミック発泡体は、セラミック材料のマトリクスを含む。セラミック発泡体は、本開示の方法によって製造することができる。セラミック発泡体(例えば、シリカエアロゲル)は、様々な形態を有することができる。例えば、セラミック発泡体(例えば、シリカエアロゲル)はモノリスである。別の例では、セラミック発泡体(例えば、シリカエアロゲル)はフィルムである。セラミック発泡体(例えば、シリカエアロゲル)フィルムは、自立フィルムであってもよく、又は基材上に配置されてもよい。セラミック発泡体(例えば、シリカエアロゲル)フィルムを、基材に浸透させてもよい。セラミック発泡体は、多孔質であってもよく、階層的な勾配細孔構造を示してもよい。セラミック発泡体のセラミックマトリクスは、メソポーラスであってもよい。セラミック発泡体材料は、複合材料(例えば、複合シリカエアロゲルなどの複合セラミック発泡体)であってもよい。複合材料は、セラミック発泡体の細孔の一部又は全てにポリマー材料を含むことができる(ハイブリッド複合材料又はハイブリッドセラミック発泡体と呼ぶことができる)。セラミック発泡体は、望ましい音響透過/遮音/音響絶縁特性を有し得る。一例では、セラミック発泡体は、絶縁材料(例えば、建築材料及び/又は防音材料)として使用される。種々の例において、セラミック発泡体は、触媒、膜、分離などの用途における複合材料として、他の機能材料でコーティングするためのテンプレート又は支持基材として使用される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
本開示の性質及び目的をより完全に理解するために、添付の図面と併せて以下の詳細な説明が参照される。
【0015】
図1は、低コストのシリカエアロゲルを製造するインサイツAPDと組み合わせた、本開示のR2Rプロセスの例を示す。
【0016】
図2は、本開示のシリカエアロゲルの一例の走査型電子顕微鏡(SEM)画像を示す。
【0017】
図3は、本開示のシリカエアロゲルの一例のSEM画像を示す。
【0018】
図4は、本開示のシリカエアロゲルの一例のEDX画像を示す。
【0019】
図5は、本開示のシリカエアロゲルの一例のEDX画像を示す。
【0020】
図6は、実施例1に記載の方法を用いて製造されたシリカエアロゲルの一例の熱画像(赤外線画像)を示す。
【0021】
図7は、実施例2に記載された方法を用いて製造されたシリカエアロゲルの一例が、加熱されている画像を示し、シリカエアロゲルの難燃性を実証するものである。
【0022】
図8は、本開示のシリカエアロゲルの一例の画像、及び本開示の炭素材料被覆シリカエアロゲルの画像を示す。
【0023】
図9は、実施例2に記載の方法を用いて作製したシリカエアロゲルの一例の画像(Aは、シリカ前駆体としてTEOSを用いて作製した白色シリカエアロゲル;Bは、シリカ前駆体としてMTMSを用いて作製した透明シリカエアロゲル)及び、
異なる条件下で熱処理した白色シリカエアロゲル(Bは透明)の画像(Cは400℃、3時間、及びDは600℃、6時間)を示す。熱処理は管状炉で行った。
【0024】
図10は、実施例2に記載の方法(及びシリカ前駆体としてTEOS)を用いて製造されたシリカエアロゲルの一例についての熱伝導率データを示す。耐熱性のために使用される式は、q=P/A
*d/ΔT、ここで、P/AはFluxTapによって記録され、dはサンプルの厚さであり、ΔTは2つの温度センサの測定値を引くことによって計算される。
【0025】
図11は、実施例2に記載の方法(及びシリカ前駆体としてTEOS)を用いて製造された白色シリカエアロゲルの一例のSEM画像を示す。画像は、白色シリカエアロゲル表面上の多孔質構造を示す。
【0026】
図12は、実施例2に記載の方法(及びシリカ前駆体としてTEOS)を用いて製造された白色シリカエアロゲルの一例のSEM画像を示す。画像は、白色シリカエアロゲルの側面上の多孔質構造を示す。
【0027】
図13は、実施例2に記載の方法(及びシリカ前駆体としてTEOS)を用いて製造された白色シリカエアロゲルの一例のSEM画像を示す。画像は、白色シリカエアロゲル表面上の多孔質構造を示す。
【0028】
図14は、実施例2に記載の方法(及びシリカ前駆体としてTEOS)を用いて製造された白色シリカエアロゲルの一例のSEM画像を示す。画像は、白色シリカエアロゲル表面上の多孔質構造を示す。細孔構造は、小さい細孔及び大きい細孔を含む。
【0029】
図15は、実施例2に記載の方法(及びシリカ前駆体としてTEOS)を用いて製造された白色シリカエアロゲルの一例のSEM画像を示す。
【0030】
図16は、実施例2に記載の方法(及びシリカ前駆体としてMTMS)を用いて製造された透明シリカエアロゲルの一例のSEM画像を示す。画像は、白色シリカエアロゲル表面上の多孔質構造を示す。
【0031】
図17は、実施例2に記載の方法(及びシリカ前駆体としてTEOS)を用いて製造され、400℃で3時間加熱された、白色シリカエアロゲルの一例のSEM画像を示す。画像は、白色シリカエアロゲル表面上の多孔質構造を示す。
【0032】
図18は、本開示のシリカエアロゲル試料の機械的検査を説明する画像を示す。
【0033】
図19は、実施例2に記載した方法(及びシリカ前駆体としてTEOS)を用いて製造した白色シリカエアロゲルの一例の機械的検査のデータを示す。この材料は、7.6054MPaのヤング率を有する。
【0034】
図20は、実施例2に記載の方法(及びシリカ前駆体としてTEOS)を用いて製造された白色シリカエアロゲルの一例について、ピクノメーターを使用して得られた多孔度データを示す。この材料は、89.587%の多孔度を有する。
【0035】
図21は、実施例2に記載の方法(及びシリカ前駆体としてMTMS)を用いて製造された透明シリカエアロゲルの一例について、ピクノメーターを使用して得られた多孔度データを示す。この材料は、83.925%の多孔度を有する。
【0036】
図22は、実施例2に記載の方法(及びシリカ前駆体としてTEOS)を用いて製造された白色シリカエアロゲルを、2000℃に加熱した一例の画像を示し、シリカエアロゲルの難燃性を実証している。
【0037】
[
図23]
a)3つの工程を有するシリカPGAerosの合成プロセスの概略図。工程1:尿素水溶液中でCTABによって補助されるミセルの形成。工程2: CTABミセルの界面でのTEOSの加水分解。工程3:NH
3とCO
2の放出を伴う尿素の分解。
b)直径6cmの典型的なシリカ発泡体の光学像。
c)厚さ0.6cmの研磨シリカPGAero試料。
d)鮮明な細孔勾配を示す、シリカPGAeroの典型的なSEM画像。挿入図は、底部から頂部にかけて増加する平均細孔径を示す。
e、f)
図23dの頂部エリア及び底部エリアにそれぞれ対応する大きい孔(e)と、小さい孔(f)を示す高解像度のSEM画像。
g、h)PGAerosのシリカネットワークの粒子のg)低解像度とh)高解像度のTEM画像。
【0038】
[
図24]
a)48時間及びb)72時間の反応時間でのシリカPGAerosのSEM画像。挿入図は、孔の対応するサイズ分布を示す。
c)異なる反応時間によって合成されたシリカPGAerosの熱伝導率。
【0039】
[
図25]
a)~f)前駆体の量を変化させることによって合成されたシリカPGAeros(それぞれPGAero-1、5、6、7、8、及び9と呼ばれる)のSEM画像。
g)一連のPGAerosの熱伝導率は、平均細孔径と空隙率に依存した。
【0040】
[
図26]
a)400℃でのアニール処理前後のシリカPGAeroの機械的特性を示す。挿入図は、アニール処理の前(上)と後(下)のSEM画像を示す。
b)模式図は、シリカPGAeroの勾配構造によって低減された熱及び音を示す。
c)500Hzから1800Hzまでの音周波数下での、シリカPGAeroの防音性能を、ポリウレタン、ケブラー、及びUnifrax社の2種類のセラミック繊維ブランケット(セラミック繊維1:PC-Max 2000i、セラミック繊維2:Saffil Alumina)と比較する。
d)2000Hzの周波数下での、シリカPGAero及び基準発泡スチロールの防音性能。
e)周波数500Hz、800Hz、2000Hzでの音響強度と防音係数の防音性能プロット。
【0041】
図27は、PGAero-2試料のSEM画像の、a)ラージスケール及びb)拡大図を示す。
【0042】
【0043】
図29は、試料PGAero-1、PGAero-5~10の調整の詳細を示す。
【0044】
[
図30]
a)~g)は、試料PGAero-1、PGAero-5~PGAero-10の平均細孔径分布を示す。
【0045】
[
図31]
a)、b)は、機械的検査の写真を示す。
【0046】
[
図32]
a)6ポンド下の当初試料PGAero-1の応力・ひずみ曲線。
b)破断するまで圧縮した当初試料の応力・ひずみ曲線。
c)20ポンド下で、400℃でアニールした試料の応力・ひずみ曲線。
【0047】
図33は、1000℃で24時間アニールした試料の写真を示す。
【0048】
図34は、ブランク、発泡スチロール及びシリカPGAeroの、20Hz~5000Hz周波数での音響強度の差を示す。
【0049】
図35は、500Hzと800Hzでの音響強度の差を示す。
【0050】
図36は、60%及び80%下での、シリカ発泡体の湿度老化サイクル測定を示す。
【0051】
図37は、界面活性剤の濃度が増加するにつれて不透明相及び透明相が変化することを示す概略図である。
a)界面活性剤CTABについては、親水性粒子が前駆体中で大部分を占めるため、CTABの濃度の増加につれて、不透明相がより多くなる。
b)界面活性剤SDSについては、疎水性粒子が前駆体中で大部分を占めるため、SDSの濃度が増加するにつれて、透明相がより多くなる。
c)SDSの濃度が増加するにつれて、SDSのミセル形成が変化する。ミセル形成はより組織化され、各ミセル粒子はSDSの濃度が増加するにつれて小さくなる。
【0052】
[
図38]
a)ゲル部分の光学画像を示す。
b、c)SEM及びTEMは、ゲル部分の微細構造を示す。
d)SDSの濃度により、ゲル部分の密度と多孔度は変化した。
e)ゲル部分のBET結果を示す。
f)熱伝導率及び平均細孔径及び密度の関係。
【0053】
[
図39]
a、b、c)SEM画像は、開放孔から閉鎖孔への白色部分の変化の構造を示す。
d)白色部分の光学画像。
e)密度と多孔度は、SDSの濃度により変化する。
f)熱伝導率及び密度、平均細孔径の関係。
【0054】
[
図40]
a)ひずみ・応力曲線は、高い機械的強度を示す。機械的強度はSDS濃度の増加と共に低下した。
b)SDS濃度の増加に起因して密度が増加するにつれてヤング率は低下した。
c)機械的圧縮試験前後の3.33%SDS試料の光学画像。
【0055】
[
図41]
a)3000Hzから8500Hzまでの高音周波数下での、異なる濃度のSDSの防音性能。
b)500Hzの音周波数下での、異なる濃度のSDSの防音性能。
c)800Hzの音周波数下での、異なる濃度のSDSの防音性能。
【発明を実施するための形態】
【0056】
請求される主題が、特定の実施形態及び実施例を参照して記載されるが、本明細書に記載される利点及び特徴のすべてを提供しない実施形態及び実施例を含む他の実施形態及び実施例もまた、本開示の範囲内である。本開示の範囲から逸脱することなく、様々な構造的、論理的、及びプロセス工程を変化させることができる。
【0057】
値の範囲が、本明細書に開示される。前記範囲は、下限値及び上限値を設定する。特に断らない限り、前記範囲は、最小値(下限値又は上限値のいずれか)の大きさまでの全ての値、及び記載された範囲の値の間に存在する範囲を含む。
【0058】
本明細書中で使用される場合、別段の記載がない限り、用語「基」は、他の化学種に共有結合され得る1つの末端又は2つ以上の末端を有する化学実体を指す。基の例には、以下のものが含まれるが、これらに限定されない:
【化1】
用語「基」はラジカルを含む。
【0059】
本明細書中で使用される場合、特に断らない限り、用語「アルキル」は、分岐又は非分岐の飽和炭化水素基を指す。アルキル基の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソプロピル基、tert-ブチル基などが挙げられるが、これらに限定されない。例えば、アルキル基は、C1~C5(例えば、C1、C2、C3、C4、又はC5のアルキル基)である。アルキル基は置換されていなくてもよいし、1個以上の置換基で置換されていてもよい。置換基の例としては、ハロゲン(-F、-Cl、-Br、及び-I)、脂肪族基(例えば、アルキル基、アルケニル基、及びアルキニル基)、アリール基、アルコキシド基、カルボキシレート基、カルボン酸、エーテル基など、及びこれらの組合せが挙げられるが、これらに限定されない。
【0060】
本明細書中で使用される場合、特に断らない限り、用語「アルコキシ」は、-OR基を差し、ここで、Rは、本明細書中で定義されるアルキル基である。アルコキシ基の例としては、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、i-プロポキシ基、n-ブトキシ基、i-ブトキシ基、s-ブトキシ基などが挙げられるが、これらに限定されない。一実施形態では、アルコキシ基は、C1~C5アルキル基を含む。
【0061】
本開示は、セラミック発泡体を提供する。本開示はまた、セラミック発泡体を製造する方法及びセラミック発泡体の使用を提供する。
【0062】
本開示では、様々な実施例において、例えば、セラミック発泡体、モノリス(例えば、PGAeros)と称され得る、細孔勾配セラミックエアロゲルなどのスケーラブルなセラミックエアロゲルが設計され、合成された。PGAerosの低コスト製造は、細孔勾配をサポートしうるインサイツ(in-situ)気泡形成によってさらに促進される。PGAerosは、広い温度範囲(例えば、それぞれ0.040 W/mK、及び100.56MPaの圧縮強度)にわたって強固な機械的及び熱的安定性を示すことができる。例えば、PGAerosの一体型セラミックモノリスの性質は、強固な防音性能及び耐火性能を示すことができる。セラミックエアロゲル材料のスケーラブルな製造のこの実証は、例えば、望ましい温度管理、機械的強度、低質量密度、防音性能、及び難燃性能のうちの1つ以上あるいは全てを有する断熱用途に使用され得る。
【0063】
本開示は、様々な実施例において、密閉された環境における反応(例えば、周囲圧力を超える反応条件での反応)及びインサイツ周囲圧力乾燥と結びついたセラミックエアロゲル化学を提供する。本方法は、階層的な細孔勾配を有するセラミックエアロゲルを製造することができる。
【0064】
本開示はまた、様々な実施例において、セラミック発泡体の表面改質を提供する。本明細書に記載されるような表面改質は、減少した毛管現象及び熱伝導の放射成分を有するセラミック発泡体材料を提供することができる:例えば、強い水素結合及び毛管力を生成する超臨界乾燥-誘起水酸基(-OH)(~5OH/nm2)を、例えば、メチル基(-CH3)及び/又はカーボン材料コーティングで置き換えて、毛管圧及びエネルギーの放射輸送を減少させる。様々な例において、表面改質は、湿気及び/又は耐火性表面改質である。表面改質は、フラクタル様の超疎水性ネットワークを形成することができる。一例では、シリカフレームワーク上のナノ結晶性堆積物がより小さい細孔径、より強い機械的完全性、より高い耐湿性及び耐火性、ならびにより低い熱伝導率をもたらす。
【0065】
一例では、カップリングセラミック発泡体(例えば、シリカエアロゲル)化学、インサイツ周囲圧力乾燥、及びロール・ツー・ロール(R2R:roll-to-roll)製造は、連続的な低コスト製造(~90%低減)、高いR値、及び高耐久性セラミック発泡体(例えば、シリカエアロゲル様)建築用断熱材を提供することが期待される。従って、例えば、結合シリカエアロゲル化学、インサイツ周囲圧力乾燥、及びロール・ツー・ロール(R2R)製造努力は、低コスト(~90%の減少)、高いR値、及び高耐久性シリカエアロゲル建築断熱材を連続的に製造するために使用されることが期待される。現在の製造プロセスは、シリカエアロゲルの望ましい断熱特性を維持しながら、セラミック発泡体(例えば、シリカエアロゲル様発泡体)シートのコスト効率の良い連続製造(例えば、ラピッドプロトタイピング)を可能にするように改良することができると考えられる。したがって、現在のR2R製造プロセスは、シリカエアロゲルの望ましい断熱特性を維持しながら、シリカエアロゲルシートのコスト効率の良い連続生産(例えば、ラピッドプロトタイピング)を可能にするように改良できると考えられる。例えば、低コストのシリカエアロゲル絶縁材の製造方法を
図1示す。このアプローチは、1)生産効率を改善し得るR2R製造、2)エアロゲルコストをコントロールし得るインサイツ周囲圧力乾燥(APD)、及び3)R値及び耐久性を改善するための表面改質、を組み合わせる。
【0066】
本開示では、様々な実施例において、シリカエアロゲル化学が、インサイツ周囲圧力乾燥と組み合わされる。本方法は、現在の超臨界抽出工程、すなわち、低表面張力有機溶媒及び高圧超臨界乾燥を使用する複雑なプロセスを、周囲圧力を使用することによって、例えば、その場で生成される細孔サポート気泡(例えば、二酸化炭素、アンモニアなど)を伴う乾燥によって、置き換えることができる。本明細書に記載されるプロセスは、例えば、60nm未満の制御された多孔度及び細孔径を有するシリカエアロゲルを製造するためのエネルギー入力、時間、及びコストの1つ以上又は全てを著しく低減することができる。
【0067】
例えば、低コストの水ベースAPDシリカエアロゲルのR2Rラピッドプロトタイピング製造、続いての連続的表面改質は、より小さな孔径(<60nm、熱伝導率のガス成分を最小化する)、強化された耐久性(機械的強度、耐水性及び耐火性)、及び増加した赤外線放射吸収(熱伝導の放射成分を最小化する)を達成することが期待される。水性ゲルのR2R製造を使用することの利点は、周囲条件での連続稼働が、スケーラブルで、低コストで、耐久性があり、ラピッドプロトタイピング絶縁材料の合成及び設置を可能にすることである。
【0068】
様々な実施例において、本開示は以下を提供する:1)例えばテトラエトキシシラン、CTAB、及び尿素を使用して、インサイツで、細孔をサポートするシリカゲルを生成し、シリカエアロゲル製造におけるエネルギー、時間、及びコストの大幅な低減のためのAPDを可能にする、低コストかつスケーラブルな水性エアロゲル合成、2)細孔径を制御し、毛管現象を低減し、放射熱伝達を抑制し、耐久性要件(火災、構造、湿気、及び音響による劣化に関する)を満たすための表面改質、ならびに、3)より容易な設置を可能にするラピッドプロトタイピングのための、R2R連続製造によって可能になる、低コストかつロバストな設置。
【0069】
本開示は、様々な実施例において、高価な化学処理工程を回避することができ、材料が脆い場合に、超臨界抽出プロセスを回避することができるエアロゲル材料を製造する方法を提供する。本発明の方法は、例えば、重炭酸ナトリウムを組み込むことによって可能になるシリカエアロゲルのインサイツAPDに基づいており、これは、シリカエアロゲル製造におけるエネルギー、時間及びコストを有意に減少させるために、インサイツで細孔をサポートする二酸化炭素を生成する。
【0070】
この方法は、シリカエアロゲル合成コストを低減するために、ほぼ室温及び周囲圧力での処理を利用することができる。R2R製造による形状及び寸法のカスタマイズを伴うエアロゲル製品のラピッドプロトタイピングは、設置コストをさらに低減することができる。例えば、シリカエアロゲル中に元素状炭素を導入することは、放射熱伝達を抑制するのに有効である。例えば、エアロゲルに追加のCを添加すると、周囲圧力で、熱伝導率が0.016から0.0135W/mKに低下した。
【0071】
一態様では、本開示は、セラミック発泡体を製造する方法を提供する。セラミック発泡体は、セラミックエアロゲル又はセラミックエアロゲル様発泡体(例えば、シリカエアロゲル様発泡体)と呼ぶことができる。セラミック発泡体は、シリカエアロゲルであってもよい。シリカエアロゲルは、シリカエアロゲルフィルムであってもよい。この方法は、気孔形成ガス反応の現場(インサイツ)生成に基づく。反応は、密閉された環境(例えば、周囲圧力より高い反応)中で実施することができる。セラミック発泡体は、水熱条件下で形成することができる。一例では、方法は、超臨界ガス種の使用を含まない。方法の非限定的な例が、本明細書において提供される。
【0072】
様々な例において、セラミック発泡体を形成するための方法は、以下の工程を含む:1つ以上のセラミック前駆体;1つ以上の細孔形成ガス形成添加剤(1つ以上の不活性ガス生成剤);1つ以上の触媒;及び任意で1つ以上の添加剤を接触させる(例えば、密閉容器などの密閉環境中の反応混合物中であってもよい)、ここで、接触は、不活性ガス(例えば、二酸化炭素)及びセラミック発泡体の形成をもたらす。セラミック発泡体は、水熱条件下で形成することができる。反応物質(セラミック前駆体(単数又は複数)、細孔形成ガス形成添加剤(単数又は複数)、触媒(単数又は複数)、及び任意で添加剤(単数又は複数))は、任意の順序で添加/接触させることができる。反応物質は、単一の容器内で接触させることができる。
【0073】
様々な例において、シリカエアロゲルを形成するための方法は(例えば、反応混合物中で)、1つ以上のシリカ前駆体と、1つ以上の細孔形成ガス形成添加剤(1つ以上の不活性ガス生成剤)と、1つ以上の触媒と、任意で1つ以上の添加剤とを接触させることを含み、この接触により、不活性ガス(例えば、二酸化炭素)及びシリカエアロゲルが形成される。シリカエアロゲルは、水熱条件下で形成することができる。反応物質(シリカ前駆体(単数又は複数)、細孔形成ガス形成添加剤(単数又は複数)、触媒(単数又は複数)、及び任意で添加剤(単数又は複数))は、任意の順序で添加/接触させることができる。反応物質は、単一の容器内で接触させることができる。
【0074】
反応は、密閉環境中で実施することができる。反応は、密閉容器又は密閉モールド内で実施することができる。例示的な非限定的な例として、反応はオートクレーブ中で行われる。容器内の圧力は、自己生成圧力(例えば、容器の閉鎖性及び反応物質の状態から生じる)であってもよく、又は、圧力は、例えば密封容器を所望の圧力(例えば、1~100psi、その間のすべての0.1psiの値及び範囲)に加圧することによって、外部から増加されてもよい。容器は、外因性ガス(例えば、不活性ガス、例えば、アルゴン、窒素など、及びそれらの組合せ)の添加によって加圧され得る。
【0075】
一例では、セラミック発泡体(例えば、シリカエアロゲル様発泡体)を形成する方法は、以下を含む:密閉容器中で(例えば、反応混合物中で)、TEOS、MTMS、水ガラス/ケイ酸ナトリウム、又はシリカ前駆体の組み合わせ(例えば、57mLのTEOS又はMTMS、又は1:3~3:1のTEOS:MTMS混合物);細孔形成ガス形成添加剤(不活性ガス発生剤)としての、尿素(例えば、33.33g);触媒としての、水溶液(例えば、100mLの1mmol/L溶液)の形態であってもよい酢酸;界面活性添加剤としての、CTAB又はSDS(例えば、3.33g);を接触させること、ここで、この接触により不活性ガス(例えば、二酸化炭素、アンモニアなど)が形成され、シリカエアロゲル様発泡体が形成される。様々な例において、この例における1つ以上又は全ての値は、5%まで、又は10%まで変更される。様々な例において、1つ以上の追加の添加剤が、接触に供される(例えば、反応混合物中に含まれる)。
【0076】
一例では、シリカエアロゲルを形成する方法は、以下を含む:(例えば、反応混合物中で)、TEOS、MTMS、又はそれらのシリカ前駆体の組み合わせ(例えば、57mLのTEOS又はMTMS、又は1:3~3:1のTEOS:MTMS混合物);細孔形成ガス形成添加剤(不活性ガス発生剤)としての尿素(例えば、33.33g);触媒としての水溶液(例えば、100mLの1mmol/L溶液)の形態であってもよい酢酸;及び添加剤としてのCTAB(例えば、3.33g)を接触させること、ここで、この接触は不活性ガス(例えば、二酸化炭素、アンモニアなど)の形成をもたらし、シリカエアロゲルが形成される。様々な例において、この例における1つ以上又は全ての値は、5%まで、又は10%まで変更される。様々な例において、1つ以上の追加の添加剤が接触に供される(例えば、反応混合物中に含まれる)。
【0077】
種々のセラミック前駆体を使用することができる。前駆体はゾル-ゲル前駆体であってもよい。適切なゾル-ゲル前駆体は、当技術分野で公知である。前駆体の非限定的な例としては、シリカ前駆体、アルミナ前駆体、遷移金属酸化物前駆体、及びそれらの組合せが挙げられる。様々な例において、シリカ前駆体(単数又は複数)は、テトラアルコキシシラン(例えば、TMOS、TEOSなど)(例えば、C1~C5アルコキシテトラアルコキシシラン)、アルキルトリアルコキシシラン(例えば、メチルトリメトキシシラン(MTMS)など)(例えば、C1~C5アルキル、C1~C5アルコキシアルキルトリアルコキシシラン)、ナトリウムメタシリケート(例えば、水ガラス)、アルキル、及びそれらの組合せから選択される。様々な例において、アルミナ前駆体(単数又は複数)は、アルミニウムアルコキシド(例えば、C1~C6アルミニウムアルコキシド)、アルマトラン、又はトリス(アルマトラニルオキシ-i-プロピル)アミンなど、及びそれらの組合せから選択される。種々の例において、遷移金属酸化物前駆体(単数又は複数)は、遷移金属アルコキシドなどから選択される(例えば、式M(OR)xを有する遷移金属アルコキシド、式中、Mは遷移金属(例えば、Al、Ti(例えば、チタン(IV)-イソプロポキシドなど)、Zr、W、Cr、Moなど)であり、Rはアルキル基であり、xは例えば、1、2、3、4、又は5)。遷移金属は、さまざまな酸化状態(例えば、+1、+2、+3、+4、又は+5)を有し得る。
【0078】
一例では、水ガラスが、シリカ前駆体として使用される(例えば、単独で、又は1つ以上の追加のシリカ前駆体と組み合わせて)。水ガラスは、ケイ酸ナトリウム又は可溶性ガラスとも呼ばれる。一例では、水ガラスは、ガラス状の固形物を形成する、酸化ナトリウム(Na2O)及びシリカ(例えば、二酸化ケイ素、SiO2など)を含む物質である。
【0079】
セラミック前駆体の組合せを使用してもよい。例えば、二成分、三成分、及びより高次の混合酸化物セラミック発泡体を、前駆体の混合物を使用して製造することができる。例示的な例として、混合酸化物セラミック発泡体、例えば、所望のAl2O3とTiO2の比に対応する組成式を有するセラミック発泡体等を、1つ以上のAl2O3ゾル-ゲル前駆体(例えば、アルマトラン、トリス(アルマトラニルオキシ-i-プロピル)アミン、又はこれらの組合せなど)と、TiO2ゾル-ゲル前駆体(例えば、チタン(IV)-イソ-プロポキシド等)との組合せを用いて作成することができる。当業者は、所望の組成式を有するセラミック発泡体が、適切なセラミック前駆体(単数又は複数)及び/又は相対量の前駆体の選択によって形成され得ることを理解するであろう。
【0080】
セラミック発泡体の形成後、セラミック発泡体を焼結することができる。例えば、セラミック発泡体は、200~800℃(例えば、350~450℃又は約400℃;その間の全ての0.1℃の値及び範囲を含む)の温度で焼結される。セラミック発泡体は、空気及び/又は周囲圧力(例えば、1atm)で焼結することができる。いかなる特定の理論に拘束されることも意図しないが、焼結は、セラミック発泡体の特性を改善することができると考えられる。この改善は、残留有機残渣(存在する場合)の炭化から生じ得る。
【0081】
様々な実施例では、方法は、セラミック発泡体(例えば、シリカエアロゲル)の表面の少なくとも一部に関する、セラミック発泡体形成後の改質をさらに含む。セラミック発泡体形成後修飾の例は、表面の少なくとも一部(例えば、表面の全て、又は、セラミック発泡体(例えば、シリカエアロゲル)の表面の全て)上に炭素含有物質の層を形成することである。炭素含有物質は、超疎水性外表面を提供することができる。例えば、炭素スート(炭素すす)コーティングは、セラミック発泡体サンプルの下でキャンドルを燃焼させてスートコーティングを可能にすることによって、又はポスト-熱アニーリングによって形成される。
【0082】
トリメチルクロロシラン処理及びカーボンコーティングを含む高度な表面改質を使用して、毛管現象及び超疎水性を設計することができる。これは、(CH3)3-Si-Si-O≡ の形成により、表面水酸基を、シリカゲル表面上でメチル基に置換し、続いて連続的な炭素材料コーティングを行う。これらの改質工程は、所望の断熱性能及び耐久性を達成するために、細孔径及び表面化学を制御する。
【0083】
例えば、トリメチルクロロシラン:(CH3)3SiClは、連続的な炭素材料コーティングと組み合わされて、メチル基形成及びナノ結晶性炭素コーティングによる表面改質の目標を満たし、より高温での毛管現象及び放射輸送モード熱伝達の両方を低減することができる。表面修飾シリカは、より小さな孔径、より強い機械的完全性、より高い耐水性及び耐火性、及びより低い熱伝導性をもたらすであろう。
【0084】
セラミック発泡体形成後の改質の別の例としては、セラミック発泡体の表面の少なくとも一部又は表面の全てを、ナノ粒子で装飾又はコーティングすることが挙げられる。
【0085】
方法は、連続的な方法であってもよい。例えば、方法は、ロール・ツー・ロール連続製造方法である。R2Rは、例えば、低コストで高断熱性の無機紙基材担体上での、セラミック発泡体形成のニアネットシェイプ製造と寸法カスタマイズを可能にする。
【0086】
ロール・ツー・ロール連続製造を使用すると、改善されたR値のエアロゲルベースの絶縁材料が低コストで形成され(例えば、テトラエトキシシラン又は水ガラスシリカゲル前駆体、及び、例えば、無機セラミック繊維紙基材担体(UnifraxのFiberfrax(登録商標))上で、形状及び寸法のカスタマイズを可能にするR2R製造プロセスを使用して)、シリカエアロゲルの望ましい材料コストにつながることが期待される。
【0087】
本開示の方法は、熱アニーリング工程を含むことができる。熱アニーリング工程は、セラミック発泡体(例えば、シリカエアロゲル)が形成され、洗浄され、乾燥された後に実施されてもよい。例えば、熱アニーリングは、セラミック発泡体(例えば、シリカエアロゲル)を製造する際の最後の工程である。様々な例では、熱アニーリングが300℃~600℃で行われ(その間の全ての整数の℃の値及び範囲を含む)、様々な時間(例えば、1時間~6時間(その間の全ての整数の分の値及び範囲を含む))にわたって行われてもよい。
【0088】
セラミックマトリクスとも呼ぶことができるセラミックネットワーク(例えば、シリカネットワーク、アルミナネットワーク、アルミノケイ酸塩ネットワーク、遷移金属酸化物ネットワーク、又はそれらの組合せ)は、細孔形成ガスの存在下で形成され得るセラミックエアロゲルのセラミックナノ粒子(例えば、シリカナノ粒子)を含んでもよく、このセラミックナノ粒子は、例えば、20~200nm(例えば、150~200又は約200nm)(それらの間のすべての整数のnm値及び範囲を含む)のサイズ(最大寸法又は最小寸法であってもよい)を有することができ、あるいは、20~200nm(例えば、150~200又は約200nm)(それらの間のすべての整数のnm値及び範囲を含む)の平均サイズ(平均最大寸法又は平均最小寸法であってもよい)を有することができる。セラミックナノ粒子は、セラミックナノ粒子の90%以上、95%以上、99%以上、又は全てが、20~200nm(例えば、150~200又は約200nm)(これらの間の全ての整数nm値及び範囲を含む)のサイズ及び/又は平均サイズを有する狭いサイズ分布を有してもよい。細孔形成ガスは、セラミック前駆体の存在下で生成されてもよい(例えば、細孔形成ガスは、シリカネットワーク形成中に生成される)。一例では、実質的に全てのセラミックマトリクス(例えば、シリカマトリクス)形成は、細孔形成ガスの存在下で完了する。実質的に全てのセラミックマトリクス形成とは、セラミック発泡体(例えば、シリカエアロゲル)のセラミックマトリクス(例えば、シリカマトリクス)を形成するために追加の処理を必要としないことを意味する。様々な実施例において、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上のシリカ前駆体が、細孔形成ガスの存在下で反応する。
【0089】
一態様では、本開示は、セラミック発泡体を提供する。セラミック発泡体は、セラミック発泡体フィルムであってもよい。セラミック発泡体は、セラミックエアロゲルとも呼ぶことができる。セラミック発泡体は、シリカエアロゲルであってもよい。シリカエアロゲルは、シリカエアロゲルフィルムであってもよい。セラミック発泡体の非限定的な例が、本明細書において提供される。セラミック発泡材料(例えば、セラミック発泡複合材料)は、セラミック発泡体を含む。セラミック発泡体は、セラミック材料のマトリクスを含む。セラミック発泡体は、本開示の方法によって製造することができる。
【0090】
セラミック発泡体は、酸化物であってもよい。酸化物の非限定的な例としては、酸化ケイ素(例えば、シリカ)、酸化アルミニウム(例えば、アルミナ)、遷移金属酸化物など、及びそれらの組合せが挙げられる。セラミック発泡体は、化学量論的であっても、非化学量論的であってもよい。
【0091】
セラミック発泡体は、酸化物の混合物であってもよい。セラミック発泡体は、二元酸化物系、三元酸化物系、又はより高次の酸化物系であってもよい。セラミック発泡体の非限定的な例示的な例としては、アルミノシリケート発泡体、アルミノチタネート発泡体などが挙げられる。
【0092】
一例では、セラミック発泡体及び/又はセラミック発泡材料は、フッ素原子(例えば、当技術分野で知られている従来の方法によって検出可能なフッ素原子)を有さない。前記フッ素原子は、シリコン原子に結合したフッ素原子(例えば、-Si-F)であってもよい。
【0093】
セラミック発泡体(例えば、シリカエアロゲル)は、様々な形態を有することができる。例えば、セラミック発泡体(例えば、シリカエアロゲル)は、モノリスである。別の例では、セラミック発泡体(例えば、シリカエアロゲル)は、フィルムである。セラミック発泡体(例えば、シリカエアロゲル)フィルムは、自立フィルムであってもよく、又は基材上に配置されてもよい。セラミック発泡体(例えば、シリカエアロゲル)フィルムを基材に浸透させてもよい。
【0094】
セラミック発泡体は多孔質であり、階層的な勾配細孔構造を示すことができる。セラミック発泡体は、内部として、ミクロ細孔(マクロ細孔とも呼ばれ得る) (例えば、セラミックマトリクス中の空隙)と、シェル(例えば、マトリクス)内部のメソ細孔とを有する階層的中空構造を含むものとして説明できる。細孔の少なくとも一部又は全ては、相互接続されていてもよい。細孔は、メソ細孔及び/又はマクロ細孔であってもよい。細孔は、IUPACによって定義されるようなメソ細孔であってもよい。
【0095】
セラミック発泡体の細孔は、ミクロ細孔又はマクロ細孔と呼ぶことができ、セラミックマトリクスのメソ細孔ではないが、様々なサイズを有することができる。例えば、孔のサイズ(例えば、平均サイズ、及び/又は、90%、95%、99%、99.9%、又は100%)は、500ミクロン~1ミクロン(それらの間の全ての0.1ミクロン値及び範囲を含む)である。サイズは、孔の軸に平行な平面で測定されるように、少なくとも1つの寸法(例えば、直径)であってもよい。例えば、細孔は、500ミクロン~1ミクロン(例えば、200ミクロン~10ミクロン、200ミクロン~1ミクロン、又は100ミクロン~1ミクロン)のサイズ(例えば、細孔の軸に平行な平面で測定される少なくとも1つの寸法(例えば、直径)、及び/又は、細孔の軸に垂直な平面で測定される少なくとも1つの寸法(例えば、高さ))を有する。気孔のサイズは、一般に、セラミック発泡体の第一の表面から、第一の表面と反対側の第二の表面に移動する方向に沿って減少又は増加する。勾配は線形勾配でも非線形勾配でもよい。
【0096】
セラミック発泡体のセラミックマトリクスは、メソポーラスであってもよい(例えば、IUPACによって定義されるメソ細孔であってもよいメソ細孔を含む)。例えば、セラミックマトリクスは、2nm~100nm(例えば、2nm~60nm、10nm~60nm、又は10nm~100nm)(それらの間の0.1nmの値及びそれらの間の範囲を含む)の直径を有する複数の細孔を含む。例えば、セラミックマトリクスは、2.5nm~30nm(例えば、2.5nm~10nm又は15nm~30nm)(それらの間の0.1nmの値及びそれらの間の範囲を含む)の平均直径を有する複数の細孔を含む。細孔のサイズ分布は、例えば、二峰性のような多峰性であってもよい。例えば、セラミックマトリクスは、平均直径が2nm~100nm(例えば、2nm~60nm、10nm~60nm、又は10nm~100nm)の複数の細孔と、平均直径が2.5nm~30nm(例えば、2.5nm~10nm、又は15nm~30nm)の複数の細孔とを有する。
【0097】
セラミック発泡体及び/又はセラミックマトリクスの細孔径及び/又は細孔径分布は、当技術分野で公知の方法を使用して決定することができる。例えば、細孔径及び/又は細孔径分布は、BET分析を用いて決定される。
【0098】
シリカエアロゲルは多孔質である。例えば、シリカエアロゲルは、直径が2nm~100nm(例えば、2nm~60nm、10nm~60nm、又は10nm~100nm)(それらの間の0.1nmの値及び範囲を含む)である複数の細孔を有する。例えば、シリカエアロゲルは、平均直径が2.5nm~30nm(例えば、2.5nm~10nm又は15nm~30nm)(それらの間の0.1nmの値及び範囲を含む)である複数の細孔を有する。細孔径分布は、二峰性であってもよい。例えば、シリカエアロゲルは、平均直径が2nm~100nm(例えば、2nm~60nm、10nm~60nm、又は10nm~100nm)(二峰性であってもよい)である複数の細孔と、平均直径が2.5nm~30nm(例えば、2.5nm~10nm、又は15nm~30nm)である複数の細孔とを有する。細孔径及び/又は細孔径分布は、当技術分野で公知の方法を使用して決定することができる。例えば、細孔径及び/又は細孔径分布は、BET分析を用いて決定される。
【0099】
セラミック発泡材料は、複合材料(例えば、複合シリカエアロゲルなどの複合セラミック発泡体)であってもよい。複合材料は、セラミック発泡体の細孔の一部又は全てにポリマー材料を含むことができる(ハイブリッド複合材料又はハイブリッドセラミック発泡体と呼ぶことができる)。ポリマーは、セラミック発泡体中でインサイツ重合によって形成することができる。これに加えて、又はこれに代えて、複合材料は、セラミック発泡体上に炭素コーティングを含むことができる(セラミック-カーボンエアロゲルとも呼ばれる)。例えば、セラミック発泡体(例えば、セラミック発泡体モノリス又はセラミック発泡体フィルム)は、炭素材料で少なくとも部分的に(又は完全に)コーティングされる。
【0100】
シリカエアロゲル物質は、炭素材料で少なくとも部分的に(又は完全に)コーティングされたシリカエアロゲル(例えば、シリカエアロゲルモノリス又はシリカエアロゲルフィルム)を含む複合材料(シリカ-カーボンエアロゲルと呼ばれてもよい)であってもよい。
【0101】
建築用断熱材は、本開示の方法により製造される、本開示のセラミック発泡体(例えば、シリカエアロゲル)(例えば、シリカエアロゲルなどのセラミック発泡体)を含むことができる。
【0102】
【0103】
本開示の方法により、低コストの建築用絶縁材を提供することが期待される。本開示の方法により、例えば、既存の建物及び将来の建設における屋根及び壁のような、広範囲の建築エンベロープ用途に影響を与え得る、高R値の建築用絶縁材料(例えば、シリカエアロゲルのようなセラミック発泡体)の安価な大規模生産及び設置を提供することが期待される。例えば、シリカエアロゲル(例えば、Spaceloft(登録商標)、2018年7月)のような超臨界乾燥セラミック発泡体を、本開示のセラミック発泡体(例えば、シリカエアロゲル)で置き換えることによって、現在の技術に対して90%以上のコスト削減が期待される。また、本開示のセラミック発泡体による絶縁材の建物エネルギー効率は、少なくとも45%であることが期待される。本開示のセラミック発泡体による絶縁材は、室温において、市販のセラミック発泡体と同等のR値及び熱伝導率を有することができる。しかしながら、本開示のセラミック発泡体(例えば、シリカエアロゲル)を用いた絶縁材は、高温で(例えば、市販のセラミック発泡体と比較して)増加したR値を有することができ、単価を著しく低減することができる。従来の高圧超臨界乾燥によるセラミック発泡体の製造に関与する複雑な処理及び揮発性有機溶媒は、建築用絶縁材料製造業者によるその使用を、法外なコストにする。
【0104】
建築用絶縁材は、断熱シートであってもよい。断熱シートは、商業用又は住宅用途で使用することができる。また、断熱シートは、R2R製造方法を用いて形成してもよい。断熱シートは、既存の建物を改装するために使用することができる。様々な例において、本開示のセラミック発泡体(例えば、シリカエアロゲル)を含む断熱シートは、0.01W/mK以下の熱伝導率を有し得るR15/インチ断熱シートである。
【0105】
一例では、セラミック発泡体(例えば、シリカエアロゲル)は、TEOSを使用して形成され、白色である。別の例では、セラミック発泡体(例えば、シリカエアロゲル)は、MTMSを使用して形成され、望ましい透明性を示す。例えば、MTMSを使用して形成されたセラミック発泡体(例えば、シリカエアロゲル)は、85%以上、90%以上、95%以上、又は98%以上の可視光波長(例えば、400~800nmの光波長、例えば、530nmなど)の透過率を示す(例えば、2~3mm(例えば、2.7mm)のサンプル厚で測定された際)。さらに別の例では、セラミック発泡体(例えば、シリカエアロゲル)は、TEOS及びMTMSを使用して形成され、1つ以上の白色領域及び1つ以上の透明領域(例えば、90%以上、95%以上、又は98%以上の可視光波長(例えば、400~800nmの光波長)の透過率を示す)を有する。
【0106】
一例では、セラミック発泡体又はセラミック発泡材料(例えば、シリカエアロゲル又はシリカエアロゲル物質)は、いかなる外因性材料(例えば、当技術分野で知られている従来の方法によって検出することができる任意の検出可能な外因性材料)も含まない。外因性材料としては、シリカ材料(例えば、セラミック発泡材料)から建築材料を形成する際に使用される材料が挙げられるが、これらに限定されない。外因性材料の非限定的な例としては、バインダー(例えば、ポリマーバインダー)、ポリマーなどが挙げられる。
【0107】
セラミック発泡体(例えば、シリカエアロゲル)は、望ましい特性を有することができる。例えば、セラミック発泡体(例えば、シリカエアロゲル)は、2~100MPa(例えば、2~8MPa)(それらの間の全ての整数のMPa値及び範囲を含む)のヤング率を有する。
【0108】
セラミック発泡体は、望ましい音響透過/遮音/音響遮断特性を有し得る。様々な例では、セラミック発泡体は、500~2000Hzの周波数の1つ以上、実質的に全て、又は全てにおいて、所与の厚さの別の材料(例えば、PS発泡体、PU発泡体などの有機ポリマー発泡体、又はセラミック繊維など)に対して、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、又は少なくとも25%の防音性の改善を有する(例えば、防音係数が増大する)。別の例では、0.014mの厚さを有するシリカエアロゲル様発泡体(例えば、シリカPGAeros)は、500Hz、800Hz、及び2,000Hzの異なる周波数における基準PS発泡体と比較して、より良好な防音性能を有し、それぞれ10.9%、12.0%、及び28.4%のノイズ低減を示す。
【0109】
一例では、シリカエアロゲル及び/又はシリカエアロゲル物質は、フッ素原子(例えば、当技術分野で公知の従来の方法によって検出可能なフッ素原子)を有さない。前記フッ素原子は、シリコン原子に結合したフッ素原子(例えば、-Si-F)であってもよい。
【0110】
一態様では、本開示は、本開示のセラミック発泡体の使用を提供する。セラミック発泡体は、様々な用途に使用することができる。セラミック発泡体は、超絶縁材料であってもよく、又は超絶縁を提供してもよい。例えば、前記材料は、0.01W/mK以下の熱伝導率を有する。
【0111】
一例では、セラミック発泡体は、絶縁材料(例えば、建築材料又は防音材料)として使用される。絶縁材料は、望ましい温度管理及び/又は防音特性を示すことができる。
【0112】
一例では、セラミック発泡体は、触媒、膜、分離などの用途における複合材料として、他の機能材料でコーティングするためのテンプレート又は支持基材として使用される。
【0113】
本明細書に開示される様々な実施形態及び実施例に記載される方法のステップは、本開示の方法を実行するのに十分である。したがって、一例では、方法は、本質的に、本明細書で開示される方法のステップの組合せからなる。別の例では、方法がそのようなステップのみからなる。
【0114】
以下の記載は、本開示のセラミック発泡体の例、セラミック発泡体の製造方法、及びセラミック発泡体の使用を提供する:
陳述1.
セラミック発泡体(例えば、階層的細孔勾配セラミック発泡体)(例えば、シリカエアロゲル)を形成する方法であって、密閉された環境(例えば、密閉された反応容器)中で、セラミック前駆体(例えば、シリカ前駆体)(例えば、1つ以上のセラミック前駆体(例えば、シリカ前駆体));細孔形成ガス形成添加剤(不活性ガス生成剤(例えば、1つ以上の細孔形成ガス形成添加剤));触媒(1つ以上の触媒);及び任意で添加剤(例えば、1つ以上の添加剤)を接触させることを含み(例えば、反応混合物中で)、ここで、前記接触は、不活性ガス(例えば、二酸化炭素、窒素、又はそれらの組み合わせ)及び階層的細孔勾配セラミック発泡体(例えば、シリカエアロゲル)の形成をもたらす。例えば、階層的細孔勾配セラミック発泡体は、フィルム又はモノリスである。方法は、焼結ステップを含んでもよく、そこでは階層的細孔勾配セラミック発泡体が焼結される。
陳述2.
前記接触は、1つ以上のセラミック前駆体、及び/又は、1つ以上の細孔形成ガス形成添加剤、及び/又は、存在する場合には1つ以上の添加剤の実質的な反応(例えば、5%、1%、又は0.1%の反応)が生じる前に、1~100psiの初期圧力(その間の全ての0.1psi値及び範囲を含む)で実施される(例えば、反応容器を1~100psiに加圧する)、陳述1に記載の方法。
陳述3.
1つ以上のセラミック前駆体が、シリカ前駆体、アルミナ前駆体、遷移金属酸化物前駆体、及びそれらの組み合わせから選択される、陳述1又は2に記載の方法。
陳述4.
シリカ前駆物質(単数又は複数)が、テトラアルコキシシラン(例えば、TMOS、TEOSなど)(例えば、C1~C5アルコキシテトラアルコキシシラン)、アルキルトリアルコキシシラン(例えば、メチルトリメトキシシラン(MTMS)など)(例えば、C1~C5アルキル、C1~C5アルコキシ アルキルトリアルコキシシラン)、メタケイ酸ナトリウム(例えば、水ガラス)、アルキル、及びそれらの組合せから選択される、陳述3に記載の方法。
陳述5.
アルミナ前駆体(単数又は複数)が、アルミニウムアルコキシド(例えば、C1~C6アルミニウムアルコキシド)、アルマトラン、又はトリス(アルマトラニルオキシ-i-プロピル)アミンなど、及びそれらの組合せから選択される、陳述3又は4に記載の方法。
陳述6.
前記遷移金属酸化物前駆体(単数又は複数)が、遷移金属アルコキシド(例えば、式M(OR)xを有する遷移金属アルコキシド、ここでMは遷移金属(例えば、Al、Ti(例えば、チタン(IV)-イソ-プロポキシドなど)、Zr、W、Cr、Moなど)であり、Rはアルキル基であり、xは1、2、3、4又は5)などから選択される、陳述3又は4に記載の方法。遷移金属は、さまざまな酸化状態(例えば、+1、+2、+3、+4、+5)を有し得る。
陳述7.
前記1つ以上の触媒が、塩基触媒(例えば、アンモニア、フッ化アンモニウム、水酸化アンモニウム、尿素、臭化セチルトリメチルアンモニウムなど、及びこれらの組合せ)である、前記陳述のいずれか1つに記載の方法。
陳述8.
前記触媒が、酸触媒(例えば、プロトン酸(例えば、酢酸など)、ハロゲン化水素酸など、及びそれらの組合せ)である、陳述1~6のいずれか1つに記載の方法。
陳述9.
前記1つ以上の細孔形成ガス形成添加剤(不活性ガス生成剤)が、重炭酸ナトリウム、尿素、及びそれらの組み合わせから選択される(例えば、細孔形成ガス形成添加剤(不活性ガス生成剤)が、臨界以下の量(例えば、圧力)の不活性ガスを提供する)、前記陳述のいずれか1つに記載の方法。細孔形成ガス(不活性ガス)は、二酸化炭素及び/又は窒素及び/又はアンモニアであってもよい。
陳述10.
前記1つ以上の添加剤が、界面活性剤(例えば、臭化セチルトリメチルアンモニウム(CTAB))、尿素、及びそれらの組合せから選択される、前記陳述のいずれか1つに記載の方法。界面活性剤は、細孔形成を助けることができる。界面活性剤はまた、表面機能化を提供し得る。
陳述11.
前記1つ以上のセラミック前駆体(例えば、シリカ前駆体)、1つ以上の細孔形成ガス形成添加剤(不活性ガス生成剤)、及び任意で1つ以上の添加剤を接触させ、次いで、触媒を1つ以上のセラミック前駆体(例えば、シリカ前駆体)、1つ以上の細孔形成ガス形成添加剤(不活性ガス生成剤)、及び任意で1つ以上の添加剤と接触させる、前記陳述のいずれか1つに記載の方法。
陳述12.
前記接触が、水、溶媒(例えば、アルコール、例えば、エタノールなど)、又はそれらの組み合わせ中に配置(例えば、溶解)されてもよい1つ以上のセラミック前駆体(例えば、シリカ前駆体);水中に配置(例えば、溶解)されてもよい1つ以上の細孔形成ガス形成添加剤(不活性ガス生成剤);水中に配置(例えば、溶解)されてもよい1つ以上の触媒、を混合することを含む、前記陳述のいずれか1つに記載の方法。セラミック前駆体(単数又は複数)、不活性ガス生成剤(単数又は複数)、触媒(単数又は複数)、及び任意で添加剤(単数又は複数)は、任意の順序で組み合わせることができる。一例では、触媒(単数又は複数)が、添加される最後の構成要素である。
陳述13.
前記1つ以上のセラミック前駆体(例えば、シリカ前駆体)が、2~10重量%(複数の場合はそれぞれ)で存在する、前述の記載の1つに記載の方法(1つ以上のセラミック前駆体(例えば、1つ以上のシリカ前駆体)、1つ以上の触媒、1つ以上の細孔形成ガス形成添加剤、及び、存在する場合、1つ以上の添加剤の総重量に基づいて)。
陳述14.
前記1つ以上の細孔形成ガス形成添加剤が、0.4~2重量%で存在する、前記陳述のいずれか1つに記載の方法(1つ以上のセラミック前駆体(例えば、1つ以上のシリカ前駆体)、1つ以上の触媒、1つ以上の細孔形成ガス形成添加剤、及び、存在する場合、1つ以上の添加剤の総重量に基づいて)。例えば、1つ以上のセラミック前駆体(例えば、1つ以上のシリカ前駆体)は、1つ以上の細孔形成ガス形成添加剤(1つ以上の不活性ガス生成剤)の重量の少なくとも5倍の重量である。
陳述15.
前記1つ以上の触媒が、1~2重量%で存在する、前記陳述のいずれか1つに記載の方法(1つ以上のセラミック前駆体(例えば、シリカ前駆体)、1つ以上の触媒、1つ以上の細孔形成ガス形成添加剤、及び存在する場合には1つ以上の添加剤の総重量に基づいて)。
陳述16.
前記1つ以上の添加剤が、200~1000重量%で存在する、前記陳述のいずれか1つに記載の方法(1つ以上のセラミック前駆体(例えば、1つ以上のシリカ前駆体)、1つ以上の触媒、1つ以上の細孔形成ガス形成添加剤の総重量に基づいて)。例えば、添加剤(単数又は複数)は、セラミック前駆体(単数又は複数)よりも2倍~10倍大きい重量で存在する。例えば、前記1つ以上の添加剤は、1つ以上のシリカ前駆体、1つ以上の触媒、1つ以上の細孔形成ガス形成添加剤の10倍の重量で存在する(1つ以上のシリカ前駆体、1つ以上の触媒、1つ以上の細孔形成ガス形成添加剤の総重量に基づく)。
陳述17.
1つ以上のセラミック前駆体(例えば、1つ以上のシリカ前駆体):1つ以上の細孔形成ガス形成添加剤:1つ以上の触媒:1つ以上の添加剤の比が、5:1:1:50である、前記陳述のいずれか1つに記載の方法。種々の実施例において、これらの値の1つ以上は、10%又は20%以内の範囲である。
陳述18.
前記接触が、室温(例えば、18~23℃)~70℃の温度で、及び/又は1分~96時間(例えば、1~24時間(h))行われる、前記陳述のいずれか1つに記載の方法。
陳述19.
前記セラミック発泡体(例えば、シリカエアロゲル)から溶媒を交換する(例えば、除去する)ことをさらに含む、前記陳述のいずれか1つに記載の方法。
陳述20.
前記セラミック発泡体(例えば、シリカエアロゲル)を洗浄することをさらに含む、前記陳述のいずれか1つに記載の方法。洗浄工程は、望ましくない物質(例えば、溶媒、未反応セラミック(例えば、シリカ)反応成分など)が除去される交換工程であってもよい。様々な実施例において、90%以上、95%以上、99%以上、又は全ての観察可能な望ましくない物質がフィルムから除去される。
陳述21.
前記洗浄が、セラミック発泡体(例えば、シリカエアロゲル)を水溶液(例えば、アルコール水溶液)と接触させることを含む、陳述20に記載の方法。
陳述22.
前記方法が、前記セラミック発泡体(例えば、シリカエアロゲル)をアルコール(例えば、エタノール)で洗浄すること、及び/又は前記セラミック発泡体(例えば、シリカエアロゲル)を乾燥させることをさらに含む、前記陳述のいずれか1つに記載の方法。例えば、セラミック発泡体(例えば、シリカエアロゲル)を室温(例えば、18~23℃)~100℃(例えば、30~60℃)の温度に加熱し(例えば、セラミック発泡体加熱し)、ここで、この処理(又は加熱)は、周囲条件下であってもよい。例えば、疎水性コーティングは、セラミック発泡体構造(例えば、シリカエアロゲル構造)と相性が良い。
陳述23.
セラミック発泡体(例えば、シリカエアロゲル)の表面の少なくとも一部又は全てに配置された疎水性炭素含有物質の層(例えば、フィルム)を形成することをさらに含む、前記陳述のいずれか1つに記載の方法。一例では、セラミック発泡体(例えば、シリカエアロゲル)を、シラン(例えば、トリメチルクロロシラン(TMCS)などのトリアルキルハロシラン)、炭素材料(例えば、炭素スート)、又はそれらの組合せと接触させる。
陳述24.
前記セラミック発泡体(例えば、シリカエアロゲル)からフィルムを形成することを含む、前記陳述のいずれか1つに記載の方法。
陳述25.
前記フィルムが基材上に形成される、陳述24に記載の方法。例えば、セラミック発泡体(例えば、シリカエアロゲル様発泡体又はシリカエアロゲル)形成反応の少なくとも一部が、基材上で行われる。基材の非限定的な例としては、紙、金属(例えば、アルミニウム箔であってもよいアルミニウム、断熱紙基材、繊維など)が挙げられる。
陳述26.
前記形成が、連続処理(例えば、連続ロール・ツー・ロール処理)で行われる、陳述24又は25に記載の方法。
陳述27.
ドクターブレーディング、ドロップキャスティング、積層造形(例えば、3Dプリント)、及び/又は類似のものによって形成が行われる、陳述24又は25に記載の方法。
陳述28.
前記フィルムが、1つ以上のセラミック前駆体、1つ以上の細孔形成ガス形成添加剤、1つ以上の触媒、及び任意に1つ以上の添加剤を含む、ゲル化(例えば、凝固していない)形態の前記反応混合物のスプレーコーティングによって形成される、陳述24又は25に記載の方法。例えば、反応混合物のゲル化形態は、85~1,000cPの粘度を有する。任意で、流動性を高めるために、圧縮空気をゲルに添加してもよい。
陳述29.
基材に、前記セラミック発泡体(例えば、シリカエアロゲル様発泡体又はシリカエアロゲル)を含浸させることを含む、陳述1~23のいずれか1つに記載の方法。多孔質基材は、シリカゾル又はゲル溶液中に1時間~24時間浸漬し、インキュベートすることができる。次に、複合材料を、周囲乾燥又は低温度熱乾燥(300K~355K)して、含浸基材を形成することができる。
陳述30.
前記セラミック発泡体の表面(例えば、外面)の少なくとも一部を装飾又はコーティングすることをさらに含む、前記陳述のいずれか1つに記載の方法。
陳述31.
セラミック発泡体が、物質(例えば、金属酸化物ナノ粒子であってもよい1つ以上のナノ粒子)(例えば、磁性ナノ粒子であってもよい酸化鉄ナノ粒子)で装飾又はコーティングされている、陳述30に記載の方法。例えば、セラミック発泡体は、発泡体を物質(例えば、金属酸化物ナノ粒子前駆体であってもよいナノ粒子前駆体)で含浸させ、その後、200~1000℃(それらの間の全ての整数の℃値及び範囲を含む)の固相焼結を行うことによる、インサイツ反応を用いて装飾又はコーティングされる。
陳述32.
ナノ粒子が、セラミック発泡体にナノ粒子前駆体(例えば、CuCl2、FeCl3など、及びそれらの組み合わせ)を含浸させることによって形成され、ナノ粒子がナノ粒子前駆体の反応(例えば、含浸されたセラミック発泡体を加熱して、ナノ粒子を形成すること)によって形成され、ナノ複合材料が形成される、陳述31に記載の方法。
陳述33.
前記陳述のいずれか1つに記載の方法によって形成されたシリカエアロゲル。
陳述34.
細孔及び階層的細孔勾配を有する(例えば、含む)セラミック発泡体(例えば、前記陳述のいずれか1つに記載の方法から形成されるセラミック発泡体)。細孔の少なくとも一部又は全ては、相互接続されていてもよい。細孔(例えば、マクロ細孔)のサイズは一般に、セラミック発泡体の第一の表面から、第一の表面と反対側の第二の表面に移動する側面(方向)に沿って減少又は増加する。勾配は、線形勾配であってもよい。セラミック発泡体は、メソ細孔及び/又はマクロ細孔を含んでもよい。メソ細孔は、IUPACによって定義されるようなメソ細孔であってもよい。
陳述35.
セラミック発泡体が、セラミックマトリクスを含む、陳述34に記載のセラミック発泡体。セラミックマトリクスは、セラミックナノ粒子から形成することができる。セラミックマトリクスは、メソポーラスであってもよい。
陳述36.
セラミック発泡体が、500ミクロン~1ミクロン(例えば、200ミクロン~1ミクロン、又は100ミクロン~1ミクロン)のサイズ(例えば、孔の軸に平行な平面で測定される少なくとも1つの寸法(例えば、直径)、及び/又は、孔の軸に垂直な平面で測定される少なくとも1つの寸法(例えば、高さ))を有する孔(例えば、マクロ細孔)を含む、陳述35に記載のセラミック発泡体。
陳述37.
セラミック発泡体がシリカエアロゲル様であるか、又はシリカエアロゲルであり、透明である、陳述34~36のいずれか1つに記載のセラミック発泡体。
陳述38.
セラミック発泡体が、以下の特徴のうちの1つ以上又は全てを有する、陳述34~37のいずれか1つに記載のセラミック発泡体(例えば、シリカエアロゲル):
セラミック発泡体(例えば、シリカエアロゲル)が、90~99%airである(例えば、少なくとも90%、少なくとも95%、又は少なくとも98%air)、望ましい多孔性(<100nm)を有する、望ましい濃度(~0.003g/cm3)を有する、及び望ましい熱伝導率(典型的には、~0.017W/mK)を有する。
陳述39.
セラミック発泡体(例えば、シリカエアロゲル)が、セラミック発泡体の表面(例えば、外表面)の少なくとも一部又は全てに配置された炭素含有物質の層を含む、陳述34~38のいずれか1つに記載のセラミック発泡体(例えば、シリカエアロゲル)。ここで、例えば、厚さ(例えば、セラミック発泡体の表面に垂直な寸法)は、10nm以下(例えば、0.1~10nm)である。炭素含有物質の非限定的な例としては、炭素スート、アルキルシラン基、添加剤(例えば、界面活性剤)残渣(熱アニーリングによって生成され得る)が挙げられる。層は連続層及び/又はコンフォーマル層であってもよく、及び/又は、欠陥を所望の程度(少ない数)で有してもよい(例えば、観察可能な欠陥(これは、視覚的に観察可能な欠陥でも良い)がない)。層は、分子層(例えば、疎水性基であってもよい基の分子層)であってもよい。この層は、疎水性の外表面を提供することができる。炭素材料(例えば、炭素スート)層は、炭素源の燃焼によって形成することができる。
陳述40.
前記セラミック発泡体が、前記セラミック発泡体の表面の少なくとも一部に配置されたナノ粒子をさらに含む、陳述34~39のいずれか1つに記載のセラミック発泡体。
陳述41.
セラミック発泡体が、モノリス、自立型フィルム、又は基材の少なくとも一部又は全ての上に配置されたフィルムである、陳述34~39のいずれか1つに記載のセラミック発泡体。一例では、セラミック発泡体は、自立フィルム(例えば、シート)である。一例では、フィルムは、バインダー(例えば、ポリマーバインダー)を含まない。セラミック発泡体(例えば、シリカエアロゲル物質)のためのバインダー(例えば、ポリマーバインダー)の例は、当技術分野で公知である。
陳述42.
前記フィルムが、1/4インチ~2インチの厚さを有する、陳述41に記載のセラミックスフィルム(例えば、シリカエアロゲル)。
陳述43.
基材(例えば、アルミニウム箔、断熱紙、繊維など)の表面の少なくとも一部にフィルムが配置されている、陳述41又は42に記載のセラミック発泡体(例えば、シリカエアロゲル)。
陳述44.
含浸された基材が、望ましい多孔性(例えば、100nmより大きい)及び/又は望ましい伝導度(例えば、~0.017W/mK、又は0.017W/mK以下)を有する、陳述25~29のいずれか1つに記載の方法によって形成されたセラミック発泡体含浸基材。
陳述45.
セラミック発泡体が、以下の1つ以上又はすべてを示す、陳述34~42のいずれか1つに記載のセラミック発泡体:
・熱安定性(例えば、少なくとも2000℃までの熱安定性)
・機械的強度(例えば、少なくとも100MPaの機械的強度)
・防音・音響絶縁特性。
陳述46.
陳述1~32のいずれか1つに記載の方法によって形成されたシリカエアロゲル、又は、陳述34~45のいずれか1つに記載のセラミック発泡体(例えば、シリカエアロゲル)。一例では、シリカエアロゲルフィルムは、自立フィルム(例えば、シート)である。一例では、フィルムはバインダー(例えば、ポリマーバインダー)を含まない。シリカエアロゲル物質のためのバインダー(例えば、ポリマーバインダー)の例は、当該技術分野において公知である。
陳述47.
陳述28に記載の方法で形成したシリカエアロゲル含浸基材であって、含浸基材が、望ましい多孔性(<100nm)及び望ましい伝導率(~0.017W/mK)を有する、シリカエアロゲル含浸基材。
【0115】
以下の実施例は、本開示を例示するために提示される。これらの実施例は、いかなる事項における限定も意図しない。
【0116】
[実施例1]
この実施例は、本開示のシリカエアロゲル物質の製造、及びその特性決定に関する説明を提供する。
【0117】
1gの重炭酸ナトリウムを7.08mlのDI水と混合し、4.59mlのオルトケイ酸テトラエチル(TEOS)及び22.34mlの純粋なエタノールに添加した。1mlの触媒も加えてゲル形成を促進した。触媒は、1.457mlの水酸化アンモニウム(28%)、0.1gのフッ化アンモニウム、及び4.35mlのDI水の混合物である。3分後、ゲルをDI水で洗浄し、次いで純エタノール500mlに添加して浸漬し、24時間撹拌した。浸漬後、エタノールを除去した。次に、10mlのTMCS(98%)を溶液中に滴下した。純粋なエタノールも添加した。続く24時間、CO2の発生が連続的に観察された。最後に、ゲルを60℃の周囲環境中で、エタノールで24時間乾燥させて、エアロゲル生成物を得た。
【0118】
[実施例2]
この実施例は、本開示のシリカエアロゲル物質の製造、及びその特性決定に関する説明を提供する。
【0119】
3.3gの臭化セチルトリメチルアンモニウム(CTAB)、及び33.3gの尿素を酢酸水溶液(1mM、100mL)に溶解し、続いて20分間撹拌した。次に、オルトケイ酸テトラエチル(TEOS)56.7mLを添加した。溶液を30分間激しく撹拌して、均一な気泡エマルジョンを形成し、これを密封し、次いで、2日間の反応のために60℃で予熱したオーブンに移した。調製したままのエアロゲルを水で洗浄し、室温で乾燥させた。得られたエアロゲルは、低密度(約0.15g/cm3)及び良好な断熱性を有する。
【0120】
[実施例3]
この実施例は、本開示のシリカエアロゲル物質及びその特性決定に関する説明を提供する。
【0121】
前記反応混合物と接触させた基材(Unifrax紙)で反応を行うことによって、試料を調製した。これは、インサイツ(in-situ)浸透と呼ぶことができる。SEM;エネルギー分散X線分光法(EDX);及び熱画像が得られた(
図2~6)。
【0122】
[実施例4]
この実施例は、本開示のシリカエアロゲル物質を製造する方法及びその特性決定に関する説明を提供する。
【0123】
トリメチルクロロシラン(TMCS):(CH3)3SiClを、シリカゲルの表面修飾のために使用し、副生成物としてHClを生成し、これを重炭酸ナトリウムと自然に反応させて、細孔-サポート二酸化炭素をインサイツで生成した。形成された二酸化炭素は、湿潤シリカゲル中に捕捉され、得られた気泡中の圧力は毛管圧に対抗し、これは、周囲圧力乾燥工程における、細孔の収縮及び崩壊を防止する。使用されたシリカゲルの前駆体は、水性のテトラエトキシシラン(TEOS、Si(OC2H5)4)と重炭酸ナトリウム(NaHCO3)、及びトリメチルクロロシラン(表面修飾のために使用される)であった。
【0124】
エアロゲル断熱材料の低コスト生産は、インサイツAPD及びR2R製造で期待される。十分に処方されたゲルは、無機紙基材担体上にR2R成膜されてもよい。R2R製造を用いたエアロゲル材料の製造の中心は、印刷において堅牢であるゲル前駆体の形成である。シリカゲルのレオロジー挙動は、剪断減少挙動を有する非ニュートン液体を必要とするR2Rプロセスにおける連続成膜に、重要な役割を果たす。Weber数(We)とOhnesorge(Oh)数(又は逆数Z)を用いて、安定な成膜が達成されるかどうかを予測した:
【数1】
式中、vは流体速度、dはノズル直径、σは表面張力、μは粘度
ブルックフィールド粘度計を用いてゲル粘度を測定した。表面張力は毛管上昇、γ=1/2rhρによって測定され、ここで、rは毛管の半径であり、hは流体高さであり、ρは流体密度である。
【0125】
Brunauer-Emmett-Teller技術によるフィッティングを伴う窒素物理吸着を用いて、シリカエアロゲルの細孔分布を調査した。シリカエアロゲルのN2吸着-脱着等温線図は、階層的細孔と比較的シャープな細孔分布(主要な細孔径<60nm)の存在を示した。
【0126】
機械的性質は、シリカエアロゲルを構築するために重要である。応力-ひずみ曲線を研究するためにハニカムエアロゲル構造を作製した。以下の式から分かるように、圧縮強さσ
*は、試料の全体密度ρ
*に強く影響される。
【数2】
このように、エアロゲルの圧縮強さは、多孔度、厚さ及び長さの関数である。厚さは、R2R印刷によって調整される。多孔度は、ゲル濃度及び収縮によって調整することができる。
【0127】
断熱性能は、シリカエアロゲルの評価基準である。3D製造したシリカエアロゲルの断熱能力を調べた。サーモグラフィー解析は、シリカエアロゲルが断熱材として働くことを示した。シリカエアロゲルの断熱性は、その厚さによって異なる。有効熱伝導率は、有効媒質パーコレーション理論に従って計算できる。
【数3】
この場合のシリカエアロゲルの熱伝導率は、0.016W/mKと推定することができる。
【0128】
【0129】
[実施例5]
この実施例は、本開示のセラミック発泡体材料の製造及びその特性評価の説明を提供する。
【0130】
酢酸、尿素、及び臭化セトリモニウム(CTAB)の存在下でのテトラエチルオルトシリケート(TEOS)の加水分解によって、階層的中空構造及び勾配細孔径が制御された、細孔勾配シリカエアロゲル様発泡体モノリス(PGAeros)を設計し、合成した。CTABミセルネットワーク及び尿素の熱分解からのインサイツ起泡形成は、それぞれPGAerosにおける階層的細孔及び細孔勾配の形成を誘導する。合成されたままのシリカ絶縁材料は、0.040W/mKほどの低い熱伝導率、及び圧縮強度100.56MPaの機械的完全性を有する、優れた断熱、遮音及び耐火性能を示し、これは、所望の形状及び構造のためのさらなる成形及びカスタマイズを可能にする。音響性能は、異なる周波数下でも試験され、基準絶縁発泡体よりも良好な防音特性(周波数2000Hz/厚さ15mmで、28.3%又は22.3dbの音低減)を示す。
【0131】
結果と考察
図23aのスキームは、容易なワンポット合成によって達成される階層的中空構造のシリカPGAerosの形成を示す。界面活性剤CTABは、TEOSと水の混合溶液中でミセルを形成するために使用される。TEOSの加水分解は、形成されたままのミセルのシェルで進行し、これは、シリカシェルの形成を導く鋳型として働く。尿素の添加は、溶液のpHを上げることによってケイ素アルコキシドの重合を促進する一方、アンモニア(NH
3)及び二酸化炭素(CO
2)へ熱加水分解するため、インサイツ発泡剤として働くことができる。形成されたままのシリカPGAerosは、その低い質量密度のために水面上に浮遊する。尿素の連続的な分解、及びその後のインサイツ二酸化炭素及びアンモニア起泡の放出は、反応チャンバーの上部において高圧をもたらし、これは、PGAeros中に細孔勾配をもたらす頂部から底部への発泡プロセスを導く。
図23bは、出来上がったままの不透明シリカPGAerosの典型的な写真を示し、これは、さらなる研究のために所望の形状に切断及び研磨され得る(
図23cに示されるように)。細孔勾配は、走査型電子顕微鏡(SEM)画像(
図23d)から容易に観察することができ、頂部から底部への平均細孔径の増加を示し、ここで、細孔の寸法は、化学的濃度、反応温度、及び時間などの反応条件に依存する(これらは以下のセクションで論じられる)。底部領域から頂部領域へのPGAerosの平均細孔径を計算したところ、TEOS:CTAB:尿素=27.8:1:60.7の比で、33.3μmから174.8μmへの増加を示した(
図23dの挿入図)。大孔及び小孔領域におけるPGAerosの高分解能SEM像を、それぞれ
図23e及びfに示す。さらに、合成されたままのシリカPGAerosは、ピクノメーターによって94.1%の多孔度及び0.128g/cm
3の低密度を示す。PGAeroの固体ネットワークは、ナノスケールのシリカ粒子によって構築され、これは透過型電子顕微鏡(TEM)によってさらに特徴付けられた。
図23g及びhに示すように、おそらくCTAB分子の鋳型効果に起因して、各粒子中に多数のミクロ細孔が明確に観察された。したがって、シリカネットワーク内部に勾配のあるマクロスケール細孔及びメソ細孔を有する階層的中空構造のために、高い多孔度及び低い密度を有するシリカPGAeroが得られ、限られたガス熱伝導及び高いフォノン散乱を有する合成されたままのシリカPGAeroが、高い絶縁性能をもたらすと予期できる。
【0132】
PGAerosにおける細孔勾配形成を理解し、制御するために、一連の実験を設計して、24時間、48時間、及び72時間のより短い反応時間でPGAerosを合成した(それぞれ、PGAero-2、PGAero-3、PGAero-4と命名された)。96時間の反応時間によって合成された、細孔勾配を有する当初の試料(PGAero-1と呼ばれる)と比較して、24時間のシリカPGAeroは、27.5μmの均一な細孔径、及び9.4μmの標準偏差を有する(
図27a、b)。48時間への反応時間の増加に伴い、PGAerosの勾配細孔が徐々に形成され、
図24aに示すように、より大きな細孔偏差を生じる。反応時間を72時間に増加させると、PGAerosの細孔径は15μm~300μmの広い範囲を示し、85.3μmというはるかに大きい偏差を有する(
図24b)。シリカPGAerosの多孔度は約80%に維持され、シリカの連続成長が原因で、反応時間を増加させることによってわずかに減少した(
図28)。細孔径の増加を伴う細孔勾配と多孔度の減少は、断熱性能に対して競合効果を示す。合成シリカPGAerosの多孔度の減少(24時間から48時間への)は、主に、0.049W/mKから0.060W/mKへの熱伝導率の増加をもたらす。その一方で、増加した細孔径を有する細孔勾配が、絶縁性能を支配し、0.054W/mKというより低い熱伝導率につながる。反応時間をさらに長くすると、0.040W/mKという最も低い熱伝導率を持つシリカPGAeroが、形成される(
図24c)。
【0133】
反応条件、およびPGAerosの熱伝導率とのそれらの相関を調整することによって、平均細孔径及び多孔度を調べた(
図29)。シリカPGAeroの典型的なSEM断面画像を
図25a~fに示す。各サンプルの平均細孔径は、
図30a~gに示すように、SEM画像を介して100を超える細孔をカウントすることによって計算した。PGAero-1試料の1.4mol/L(平均細孔径138.3μm、多孔度94.1%)から、PGAero-5とPGAero-6に対応する2.1mol/Lと2.8mol/LにTEOSの濃度を増加させると、平均細孔径が85.0μmと68.4μmに、多孔度が89%と88%になった(
図25a~c)。TEOS濃度の増大は、平均細孔径と多孔度を低下させ、高密度化シリカPGAerosをもたらし、これは0.040W/mKから0.049W/mK(PGAero-5)及び0.055W/mK(PGAero-6)へのより高い熱伝導率をもたらす。熱伝導率の増加は、主に高コンポーネントシリカネットワークを通る固体熱輸送の増加のためである。CTABの濃度は、最初にシリカPGAerosの細孔径を決定し、ここで、より少ないCTAB成分は、
図25a及び25dを比較することによって、PGAerosのより小さい平均細孔径をもたらす(PGAero-7)。尿素添加は、鉱化化学物質及びインサイツ気泡発泡剤として働き、したがって、尿素添加を増加させると、より大きな細孔径及びより低い質量密度をもたらすことができる。
図25f及び25gに示すように、尿素を1.5mol/L(PGAero-8)から4.5mol/L(PGAero-9)に変化させると、形成されたままのシリカPGAerosの細孔径は、38.65μmから110.39μmに有意に増加される。断熱性能は、シリカPGAerosの細孔径及び多孔度と高度に相関している。
図25gは、細孔径及び多孔度に依存する、異なるシリカPGAerosの熱伝導率を示す。細孔径が大きく、多孔度が高いため、PGAerosの熱伝導率が低くなる。TEOS:CTAB:尿素=27.8:1:60.7によって合成されたシリカPGAerosによって、0.040W/mKの最低熱伝導率を達成することができる。
【0134】
シリカエアロゲルの機械的安定性は、その大規模な商業的用途の鍵である。勾配細孔構造は、機械的性能の最適化に大きな利点があることが報告されている。モノリシック形態として合成された細孔勾配を有するシリカPGAerosは、高い機械的強度を有し、これは一軸圧縮試験によって特徴付けられた(
図31)。シリカPGAero-1の応力-ひずみ曲線は、81.33MPaの高いヤング率を伴う高い機械的強度を示し、これは、400℃・2hのポストアニーリング処理によりさらに100.56MPaまで増加できる(
図26a及び32a~c)。
図26aの挿入図は、アニーリング前(上部)及びアニーリング後(下部)のシリカPGAeroのSEM画像を示し、ロバストな細孔構造は、シリカPGAeroに良好な機械的完全性を与える。アニーリング前後のシリカPGAerosは、それぞれ、0.040W/mKと0.044W/mKの熱伝導率を有する。アニーリング処理は、絶縁性能を損なうことなく機械的特性を改善する。重要なことに、機械的に堅牢な発泡体は、1000℃・24時間の長期アニーリング後に、0.060W/mKという低熱伝導率を維持できる(
図33)。高度な機械的堅牢性と熱安定性により、合成シリカPGAeroは、極端な環境に適用される絶縁材への増大する要求のために、非常に有望である。
【0135】
防音用の音響絶縁は、超絶縁用途で重要な役割を果たす。
図26bに示すように、音波及び熱の両方を、細孔勾配構造を有するシリカPGAeroによって著しく減少させることができた。試料なし(ブランク対照)、及び、シリカPGAeros並びにポリスチレン標準を通して検出された音響強度を、
図34に示すようにプロットする。さらに、ポリウレタン、ケブラー及び2種類のセラミック繊維ブランケット等のいくつかの一般的に使用されている市販の防音材料をプロットする。シリカPGAeroは、(500Hz~1800Hz)の全周波数範囲にわたって低い検出音響強度を示し、
図26cに示す一般的に使用されているすべての市販防音材と比較して、はるかに優れた防音性能を示す。厚さ0.014mのシリカPGAerosは、500Hz、800Hz、2000Hzの異なる周波数で、標準PS発泡体と比較して、それぞれ10.9%、12.0%、28.4%のノイズ低減を示す、より良い防音性能を有する(
図26e、35a、b)。特に2000Hzの音周波数の下で(
図26d)。厚さに依存しない防音性能を較正するために、ノイズ減少を試料厚みで割ることにより、防音係数を定義した。シリカPGAerosの防音係数は、500Hz、800Hz、及び2000Hzで、それぞれ、標準試料の防音係数より2.7、2.0、及び18.2倍高い。機械的及び音響的防音特性に加えて、シリカPGAerosの吸湿性能を、湿潤環境下で調べた。初期熱伝導率が0.045W/mKと0.052W/mKの2種のPGAerosを、それぞれ湿度60%と80%下の湿度実験のために選択した。高湿条件は熱伝導率の増加をもたらし、これは、60℃での乾燥後に回復することができる(
図36)。サイクル実験により、PGAerosの熱伝導率は、16%未満の損失で初期点に戻ることができることを示した。
【0136】
熱的及び音響的な超絶縁のために望ましい多孔性及び望ましい細孔勾配を有する軽量シリカPGAerosを開発した。シリカのミセル媒介成長及び尿素の熱加水分解によるガス発泡プロセスは、共に細孔生成及び勾配形成をもたらす。独特の細孔構造及びセラミックス特質を有する良く設計されたモノリシック形状は、そのようなPGAeroに、広い温度範囲にわたる優れた断熱及び耐火性能を提供する(0.040W/mKほどの低い熱伝導率及び圧縮強度100.56MPaの高い機械的完全性)。このようなシリカPGAerosはまた、様々な周波数の下でより良好な防音特性を示し、2,000Hzの周波数にて、15mmの厚さで28.3%又は22.3dbの音減少を伴う(標準絶縁発泡体よりも高い)。湿度環境下での安定性もまた、長期間信頼性があることが証明されている。断熱・防音性能が高く、同時に熱伝導率を維持する材料は、次世代の建設材料及び他の用途に適することが期待される。
【0137】
材料及び実験
実験:調製: 3 mol/Lの尿素(Sigma-Aldrich)、0.3 mol/LのCTAB(VWR)、1 mmolの酸酸(EMD Millipore Corporation)を添加して、蒸留水で溶解し、ビーカー中で100mLとして、すべて透明な液体になるまで3時間撹拌する。次いで、1.4 mol/LのTEOS(Sigma-Aldrich)を該溶液に添加した。10分間撹拌を続けると、溶液は均一な半透明に変わる。次に、溶液をプラスチックボトルに移し、容器をしっかりと密封する。次に、4日間、60℃に予熱されたオーブンに容器を入れた。このゲル化処理の後、2日間、60℃に予熱した蒸留水に、容器から試料を取り出して移した。この洗浄プロセスの間、上澄み水が透明になり、全てのアンモニアが除去されるまで、水を数回交換した。洗浄工程が完了した直後に、試料を、乾燥目的のために、2日間、60℃で予熱したオーブンに入れた。
【0138】
特性評価:熱伝導率測定ホームは、ASTM C518 標準熱伝導率手順に従ってカスタマイズされている。Fluxtaq社から購入し、基準ポリスチレン市販断熱材で較正した熱流束センサを使用。
【0139】
音響試験、家庭用にカスタマイズしたサウンド・ボックス(遮音材入り)、Kasuntestから購入した音響探知機。異なる厚さの試料は、音源によって生成される異なる周波数下で試験される。
【0140】
ヘリウムガスを使用してチャンバ内の多孔性試料に浸透させ、試料の固体部分の体積を得るピクノメーター試験。サンプルの固体部分が既知であれば、シリカ発泡体試料の多孔度を計算することができる。
【0141】
機械的試験:当初のシリカ発泡体試料及び400℃熱合成バルク試料の両方を、異なる負荷の下で、複数のサイクル時間で圧縮試験した。
【0142】
湿度エージングサイクル試験は、試料の熱伝導率を測定する。試料を各湿度環境下に24時間置き、予熱したオーブン中でさらに24時間乾燥させ、このサイクルを繰り返した。
【0143】
[実施例6]
この実施例は、本開示のセラミック発泡体材料の製造及びその特性評価の説明を提供する。
【0144】
実験方法:
3 mol/Lの尿素(Sigma-Aldrich)、0.3 mol/LのCTAB(臭化セチルトリメチルアンモニウム)(VWR)/SDS(ドデシル硫酸ナトリウム)(Sigma-Aldrich)、1mmolの酢酸(EMD Millipore Corporation)を添加して、蒸留水に溶解し、ビーカ中で100mLとして、溶液が全て透明になるまで3時間撹拌する。次いで、1.4 mol/LのTEOS(Sigma-Aldrich)を該溶液に添加した。10分間撹拌を続けると、溶液は均一な半透明に変わる。次に、溶液をアルミニウム容器に移し、容器をしっかりと密封する。次に、4日間、60℃に予熱されたオーブンに容器を入れた。このゲル化処理の後、試料(モノリス及びゲル)を、容器から取り出し、2日間、60℃に予熱された蒸留水で満たされた容器に移した。この洗浄プロセスの間、上澄み水が透明になり、全てのアンモニアが除去されるまで、水を数回交換した。次いで、試料(ゲル)を、さらなる適用のために密封容器中に保存した。
【0145】
図37は、セラミック発泡体製造プロセスの概略図を示す。
図38~41は、この実施例で製造されたセラミック発泡体の例の様々な特徴を示す。
【0146】
本開示を、1つ又は複数の特定の実施形態及び/又は実施例を参照して説明したが、本開示の他の実施形態及び/又は実施例が、本開示の範囲から逸脱することなく行われ得ることが理解されるであろう。