(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-30
(45)【発行日】2025-05-12
(54)【発明の名称】バイオマス水溶性界面活性剤組成物、インキ及び紙コート剤
(51)【国際特許分類】
C09K 23/38 20220101AFI20250501BHJP
C09K 23/42 20220101ALI20250501BHJP
C09D 201/00 20060101ALI20250501BHJP
C09D 7/63 20180101ALI20250501BHJP
C09D 11/02 20140101ALI20250501BHJP
D21H 19/20 20060101ALI20250501BHJP
【FI】
C09K23/38
C09K23/42
C09D201/00
C09D7/63
C09D11/02
D21H19/20 Z
(21)【出願番号】P 2023166798
(22)【出願日】2023-09-28
【審査請求日】2024-07-24
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000226666
【氏名又は名称】日信化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118599
【氏名又は名称】村上 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100160738
【氏名又は名称】加藤 由加里
(72)【発明者】
【氏名】小林 史夏
(72)【発明者】
【氏名】西川 知志
【審査官】井上 恵理
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-188368(JP,A)
【文献】特開2002-348500(JP,A)
【文献】特開2003-253599(JP,A)
【文献】特開2022-096161(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 23/00- 23/56
C09D 1/00-201/10
C09K 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記式(1)
【化1】
(式中、R
1及びR
2はそれぞれ炭素数1~5のアルキル基を示す。)
で表されるアセチレングリコール及び/又は下記式(2)
【化2】
(式中、R
3及びR
4はそれぞれ炭素数1~5のアルキル基を示し、m及びnはそれぞれ0.5~25の正数であり、m+nは1~40である。)
で表されるアセチレングリコールのエトキシル化体、及び
(B)バイオ由来のポリオキシアルキレン付加型非イオン性界面活性剤を少なくとも1つ含む、ポリオキシアルキレン付加型非イオン性界面活性剤
:
前記ポリオキシアルキレン付加型非イオン性界面活性剤は、脂肪族アルコール、不飽和 脂肪酸、飽和脂肪酸、脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、及びグリセリン脂 肪酸エステルから選ばれる
炭素数25~60を有する化合物の、ポリオキシアルキレン 付加重合物であり、オキシアルキレン付加モル数1~60モルを有する、
を含み、ASTM-D6866-22に準拠するバイオマス度10%以上を有する水溶性界面活性剤組成物。
【請求項2】
前記(B)成分が下記式(3)で表される、請求項1記載の水溶性界面活性剤組成物
R
5O(C
2H
4O)
x(C
3H
6O)
yH (3)
(式中、R
5は炭素数
25~60の、ヘテロ原子を含んでよい、直鎖、環状又は分岐状の、飽和又は不飽和炭化水素基であり、
前記炭化水素基は、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、不飽和脂肪酸残基、飽和脂肪酸残基、脂肪酸エステル残基、ソルビタン脂肪酸エステル残基、及びグリセリン脂肪酸エステル残基から選ばれる基であり、xは1~60の正数であり、yは0又は1~60の正数であり、x、yの括弧内にあるオキシアルキレン単位はランダムに結合していてもブロック構造を有していてもよい)。
【請求項3】
前記(A)成分の量が組成物全質量に対して5~80質量%であり、及び前記(B)成分の量が組成物全質量に対して20~95質量%である、請求項1記載の水溶性界面活性剤組成物。
【請求項4】
前記(B)成分のHLBが10~18である、請求項1記載の水溶性界面活性剤組成物。
【請求項5】
前記(B)成分のHLBが12~16である、請求項1記載の水溶性界面活性剤組成物。
【請求項6】
前記(B)成分が、ASTM-D6866-22に準拠するバイオマス度10%~100%を有する、請求項1記載の水溶性界面活性剤組成物。
【請求項7】
前記式(3)において
、xは1~60の正数であり、yは0である、請求項
2記載の水溶性界面活性剤組成物。
【請求項8】
前記式(3)において、R
5は炭素数30~60の、ヘテロ原子を含んでよい、直鎖、環状又は分岐状の、飽和又は不飽和炭化水素基であり、
前記炭化水素基は、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、不飽和脂肪酸残基、飽和脂肪酸残基、脂肪酸エステル残基、ソルビタン脂肪酸エステル残基、及びグリセリン脂肪酸エステル残基から選ばれる基であり、xは30~60の正数であり、yは0である、請求項
2記載の水溶性界面活性剤組成物。
【請求項9】
(C)水溶性有機溶剤を更に含む、請求項1記載の水溶性界面活性剤組成物。
【請求項10】
前記水溶性界面活性剤組成物を0.1質量%で含む水溶液の室温における1Hz及び10Hzでの動的表面張力がそれぞれ60mN/m以下である、請求項1記載の水溶性界面活性剤組成物。
【請求項11】
請求項1~
10のいずれか1項記載の水溶性界面活性剤組成物を含む紙コート剤。
【請求項12】
前記水溶性界面活性剤組成物の量が紙コート剤全量に対して0.05~10質量%である、請求項
11記載の紙コート剤。
【請求項13】
請求項1~
10のいずれか1項記載の水溶性界面活性剤組成物を含むインキ。
【請求項14】
前記水溶性界面活性剤組成物の量がインキ全量に対して0.05~10質量%である、請求項
13記載のインキ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオマス水溶性界面活性剤組成物に関する。特に、水溶性界面活性剤組成物を紙コート剤やインキなどに配合した場合、水への溶解性に優れ、静的表面張力及び動的表面張力が低いために優れた濡れ性、浸透性及び消泡性を発揮し、環境問題にも適合したバイオマス水溶性界面活性剤組成物及び該組成物を配合したインキ及び紙コート剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、印刷業界や製紙業界において、環境問題などからインキの水性化が進みつつある。しかし、水系インキを使用する場合、乾燥スピードが遅いため、溶剤系より生産スピードが遅くなることから、常に生産性向上に伴う高速化への対応が余儀なくされており、高速印刷や高速塗工に対応したインキや紙コート剤の性能向上が要求されている。
【0003】
このような背景から、インキや水性塗料業界においては、基材に対する湿潤化、浸透性及び分散性付与のため、優れた表面張力低下能を付与する界面活性剤を必要としている。界面活性剤を選択する場合、系が静的状態にある時には静的表面張力が優れていることが好ましく、また前述の生産性向上による印刷スピードアップの必要性からの高速度使用時には動的表面張力の指標が重要になっている。
【0004】
2,4,7,9-テトラメチル-5-デシン-4,7-ジオール及びそのエトキシル化体のようなアセチレングリコール系界面活性剤は、静的表面張力と動的表面張力の低下能とのバランスがとれており、インキ、塗料用の湿潤剤、分散助剤などとして使用されてきた。
【0005】
しかし、アセチレングリコール系界面活性剤は、水への溶解性が低い、あるいは常温で固体などの問題点を有するため、特開2002-348500や特開2003-253599のようにポリオキシアルキレンアルキルエーテルと併用することで、水系でも透明性、濡れ性、浸透性、消泡性、分散性を発揮できることが知られている。
【0006】
更に、近年バイオマス資源として、植物由来の資源が使用された印刷用のバイオマスインキの開発が進んでいる。植物を出発原料としたバイオマス由来原料の使用により、燃焼で排出される二酸化炭素と、植物などの生長により吸収、固定される二酸化炭素の量とが相殺されるため、空気中の二酸化炭素の増減に影響を与えない(カーボンニュートラルともいう)。従って、インキ構成成分に、バイオマス由来の原料を使用することは、温室効果ガスである二酸化炭素増加を避けるうえでの急務となっている。そのため、従来の水溶性界面活性剤組成物と同様の性能が維持しながらも、水溶性界面活性剤組成物をバイオマス化していくことが望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2002-348500号公報
【文献】特開2003-253599号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記事情を改善するためになされたもので、水への溶解性に優れると共に、優れた消泡性及び分散性を発揮し、更に低い動的表面張力を有するため、優れた濡れ性、浸透性を付与し、水への溶解性や環境問題にも配慮したバイオマス水溶性界面活性剤組成物、及び該組成物を配合したインキ、紙コート剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を行った結果、(A)特定のアセチレングリコール及び/又はアセチレングリコールのエトキシル化体と、(B)特定のポリオキシアルキレン付加型非イオン性界面活性剤とを組み合わせてなる水溶性界面活性剤組成物が、特にインキや紙コート剤などに配合した場合、優れた消泡性、分散性を発揮し、更に低い動的表面張力を有するため、優れた濡れ性、浸透性を付与し、水への溶解性が良好であり、高速印刷及び高速塗工にも対応でき、更に近年の環境問題にも適合することを見出し、本発明をなすに至った。
【0010】
すなわち本発明は、
[1](A)下記式(1)
【化1】
(式中、R
1及びR
2はそれぞれ炭素数1~5のアルキル基を示す)
で表されるアセチレングリコール及び/又は下記式(2)
【化2】
(式中、R
3及びR
4はそれぞれ炭素数1~5のアルキル基を示し、m及びnはそれぞれ0.5~25の正数であり、m+nは1~40である)
で表されるアセチレングリコールのエトキシル化体、及び
(B)バイオ由来のポリオキシアルキレン付加型非イオン性界面活性剤を少なくとも1つ含む、ポリオキシアルキレン付加型非イオン性界面活性剤
を含み、ASTM-D6866-22に準拠するバイオマス度10%以上を有する水溶性界面活性剤組成物を提供する。
【0011】
本発明は更に下記[2]~[12]に示す構成の少なくとも1を有する水溶性界面活性剤組成物を提供する。
[2]前記ポリオキシアルキレン付加型非イオン性界面活性剤が、炭素数6~60を有する、脂肪族アルコール、不飽和脂肪酸、飽和脂肪酸、脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、及びグリセリン脂肪酸エステルから選ばれる化合物の、ポリオキシアルキレン付加重合物であり、オキシアルキレン付加モル数1~60モルを有する、上記水溶性界面活性剤組成物。
[3]前記(B)成分が下記式(3)で表される、上記水溶性界面活性剤組成物
R5O(C2H4O)x(C3H6O)yH (3)
(式中、R5は炭素数6~60の、ヘテロ原子を含んでよい、直鎖、環状又は分岐状の、飽和又は不飽和炭化水素基であり、xは1~60の正数であり、yは0又は1~60の正数であり、x、yの括弧内にあるオキシアルキレン単位はランダムに結合していてもブロック構造を有していてもよい)。
[4]前記(A)成分の量が組成物全質量に対して5~80質量%であり、及び前記(B)成分の量が組成物全質量に対して20~95質量%である、上記水溶性界面活性剤組成物。
[5]前記(B)成分のHLBが10~18である、上記水溶性界面活性剤組成物。
[6]前記(B)成分のHLBが12~16である、上記水溶性界面活性剤組成物。
[7]前記(B)成分が、ASTM-D6866-22に準拠するバイオマス度10%~100%を有する、上記水溶性界面活性剤組成物。
[8]上記式(3)において、R5は炭素数6~60の、ヘテロ原子を含んでよい、直鎖、環状又は分岐状の、飽和又は不飽和炭化水素基であり、xは1~60の正数であり、yは0である、上記水溶性界面活性剤組成物。
[9]上記式(3)において、R5は炭素数30~60の、ヘテロ原子を含んでよい、直鎖、環状又は分岐状の、飽和又は不飽和炭化水素基であり、xは30~60の正数であり、yは0である、上記水溶性界面活性剤組成物。
[10]上記式(3)において、R5が、炭素数6~60の、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基、不飽和脂肪酸残基、飽和脂肪酸残基、脂肪酸エステル残基、ソルビタン脂肪酸エステル残基、及びグリセリン脂肪酸エステル残基から選ばれる基である、上記水溶性界面活性剤組成物。
[11](C)水溶性有機溶剤を更に含む、上記水溶性界面活性剤組成物。
[12]上記水溶性界面活性剤組成物を0.1質量%で含む水溶液の室温における1Hz及び10Hzでの動的表面張力がそれぞれ60mN/m以下である、上記水溶性界面活性剤組成物。
【0012】
本発明は更に下記[13]~[16]に示す構成の少なくとも1を有する紙コート剤又はインキを提供する。
[13]上記[1]~[12]のいずれかに記載の水溶性界面活性剤組成物を含む紙コート剤。
[14]上記水溶性界面活性剤組成物の量が紙コート剤全量に対して0.05~10質量%である、上記紙コート剤。
[15]上記[1]~[12]のいずれかに記載の水溶性界面活性剤組成物を含むインキ。
[16]前記水溶性界面活性剤組成物の量がインキ全量に対して0.05~10質量%である、上記インキ。
【発明の効果】
【0013】
本発明の水溶性界面活性剤組成物は、動的表面張力が低いため、紙コート剤に添加した際は、受容層に使用される微粒子の分散性を上げることができる。また、インキに添加した際は、基材への濡れ性、浸透性及び消泡性を発揮することができ、印字性、発色性を発揮し、高速印刷及び高速塗工にも対応できる。更には、本発明の水溶性界面活性剤組成物はバイオマス度10%以上を有し、環境問題にも適合している。この特性により、本発明の水溶性界面活性剤組成物は実用的に極めて有利である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の水溶性界面活性剤組成物は、(A)特定のアセチレングリコール及び/又はアセチレングリコールのエトキシル化体と(B)特定のポリオキシアルキレン付加型非イオン性界面活性剤とを含有する。
【0015】
(A)成分
本発明の(A)成分は、下記式(1)で示されるアセチレングリコール及び/又は下記式(2)で示される、アセチレングリコールのエトキシル化体から選ばれる1種又は2種以上のアセチレングリコール類である。
【化3】
(式中、R
1及びR
2はそれぞれ炭素数1~5のアルキル基を示す)
【化4】
(式中、R
3及びR
4はそれぞれ炭素数1~5のアルキル基を示し、m及びnはそれぞれ0.5~25の正数であり、m+nは1~40である)
【0016】
R1及びR2はそれぞれ炭素数1~5のアルキル基を示す。R3及びR4はそれぞれ炭素数1~5のアルキル基を示す。好ましくはR1及びR2、並びにR3及びR4は、互いに独立に炭素数3~5のアルキル基である。m及びnはそれぞれ0.5~25の正数であり、好ましくは1~20の正数である。m+nは1~40であり、好ましくは2~35の正数である。
【0017】
上記式(1)のアセチレングリコールとしては、例えば、2,5,8,11-テトラメチル-6-ドデシン-5,8-ジオール、5,8-ジメチル-6-ドデシン-5,8-ジオール、2,4,7,9-テトラメチル-5-デシン-4,7-ジオール、4,7-ジメチル-5-デシン-4,7-ジオール、8-ヘキサデシン-7,10-ジオール、7-テトラデシン-6,9-ジオール、2,3,6,7-テトラメチル-4-オクチン-3,6-ジオール、3,6-ジエチル-4-オクチン-3,6-ジオール、3,6-ジメチル-4-オクチン-3,6-ジオール、2,5-ジメチル-3-ヘキシン-2,5-ジオール等を挙げることができ、式(2)のアセチレングリコールのエトキシル化体としては、上
記アセチレングリコールのエチレンオキサイド誘導体を挙げることができる。
【0018】
ここで、上記式(2)で示されるエトキシル化体中のエチレンオキサイド付加モル総数は1~40モル、好ましくは2~12モルである。エチレンオキサイドの付加モル総数が40モルを超えた場合、インク組成物の静的及び動的表面張力が大きくなる。
【0019】
(A)成分の配合量は、有効成分としてバイオマス水溶性界面活性剤組成物に含有されていれば特に限定されないが、組成物の全質量に対して5~80質量%であることが好ましく、より好ましくは7~75質量%である。(A)成分の配合量が上記上限値を超えると、バイオマス水溶性界面活性剤組成物の水への溶解性が悪くなる。上記下限値未満であると、泡の発生が多くなる場合がある。尚、本発明のバイオマス水溶性界面活性剤組成物のバイオマス度が後述する範囲を満たす範囲において、所望のバイオマス度を有する(A)成分を用いることもできる。
【0020】
(B)成分
本発明の(B)成分は、バイオ由来のポリオキシアルキレン付加型非イオン性界面活性剤の少なくとも1を含む、非イオン性界面活性剤である。該ポリオキシアルキレン付加型非イオン性界面活性剤は、好ましくは、炭素数6~60を有する、脂肪族アルコール、不飽和脂肪酸、飽和脂肪酸、脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、及びグリセリン脂肪酸エステルなどから選ばれる化合物のポリオキシアルキレン付加重合物であり、オキシアルキレン付加モル数1~60モルを有するのがよい。ポリオキシアルキレン付加重合物とは、好ましくはポリエチレンオキシド付加重合物、ポリプロピレンオキシド付加重合物、又は、ポリエチレンオキシド―ポリプロピレンオキシド付加重合物である。オキシアルキレン付加モル数は、好ましくは1~60であり、好ましくは5~60であり、より好ましくは30~60、更に好ましくは35~60であるのがよい。
【0021】
本発明の(B)成分は、好ましくは下記式(3)で表される。
R5O(C2H4O)x(C3H6O)yH (3)
式(3)中、R5は炭素数6~60の、ヘテロ原子を含んでよい、直鎖、環状又は分岐状の、飽和又は不飽和炭化水素基であり、xは1~60の正数であり、yは0又は1~60の正数であり、x、yの括弧内にあるオキシアルキレン単位はランダムに結合していてもブロック構造を有していてもよい。
【0022】
xは1~60の正数である。xが5~30の正数、好ましくは5~25の正数である化合物でもよいが、好ましくはxは5~60の正数であり、より好ましくはxは10~60の正数であり、より好ましくはxは30~60の正数であり、更に好ましくはxは35~60の正数である。yは0又は1~60の正数であり、好ましくは0又は1~50の正数である。x+yは好ましくは1~60であり、好ましくは5~60であり、より好ましくは30~60、更に好ましくは35~60であるのがよい。特に好ましくは、yは0である。
【0023】
R5は、炭素数6~60、好ましくは炭素数10~60である、ヘテロ原子を含んでよい、直鎖、環状又は分岐状の、飽和又は不飽和炭化水素基である。該炭化水素基の炭素数は、より好ましくは炭素数10~29、更に好ましくは炭素数10~24であり、または、より好ましくは炭素数25~60、更に好ましくは炭素数30~60であるのがよい。該炭化水素基は、より好ましくは、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基、不飽和脂肪酸残基、飽和脂肪酸残基、脂肪酸エステル残基、ソルビタン脂肪酸エステル残基、及びグリセリン脂肪酸エステル残基から選ばれる基である。脂肪族炭化水素基としては例えば、デシル基、ウンデシル基、ラウリル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、パルミチル基、ヘプタデシル基、ステアリル基、ベヘニル基、2-エチルヘキシル基、イソステアリル基等のアルキル基;オレイル基、パルミトイル基、エイコセニル基等のアルケニル基が挙げられる。脂環式炭化水素基としては例えば、炭素原子数6~60の単環式又は多環式のシクロアルキル基等が挙げられる。芳香族炭化水素基としては例えば、フェニル基、ナフチル基、及びビフェニル基等が挙げられる。R5は、より好ましくはデシル基、ウンデシル基、ラウリル基、ステアリル基、及びオレイル基がよい。
【0024】
R5が不飽和脂肪酸残基、飽和脂肪酸残基、脂肪酸エステル残基、ソルビタン脂肪酸エステル残基、又はグリセリン脂肪酸エステル残基である上記ポリオキシアルキレン付加型非イオン性界面活性剤としては、パルミトレイン酸、サピエン酸、オレイン酸、エルカ酸、リノール酸、ドコサジエン酸、リノレン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、セロチン酸、ソルビタンオレイン酸、ソルビタンラウリン酸、ソルビタンステアリン酸、ヒマシ油、硬化ヒマシ油、などのポリオキシアルキレン付加重合物が挙げられる。好ましくはポリエチレンオキシド付加重合物、ポリプロピレンオキシド付加重合物、又は、ポリエチレンオキシド―ポリプロピレンオキシド付加重合物であり、より好ましくはポリエチレンオキシド付加重合物である。
【0025】
より好ましくは、前記(B)成分が下記式(4)で表されるポリオキシアルキレン付加型非イオン性界面活性剤である。
R5O(C2H4O)xH (4)
(式中、R5は炭素数6~60、ヘテロ原子を含んでよい、直鎖、環状又は分岐状の、飽和又は不飽和炭化水素基であり、xは1~60の正数である)
【0026】
より好ましくは、前記(B)成分が下記式(4’) で表されるポリオキシアルキレン付加型非イオン性界面活性剤である。
R5O(C2H4O)xH (4’)
(式中、R5は炭素数30~60の、ヘテロ原子を含んでよい、直鎖、環状又は分岐状の、飽和又は不飽和炭化水素基であり、xは30~60の正数である)
上記式(4’)において更に好ましくは、R5は炭素数35~60の、直鎖状又は分岐鎖の、飽和又は不飽和炭化水素基であり、xは35~60であるのがよい。
【0027】
より詳細には、yが0である化合物としては、例えば下記化合物が挙げられる。
C12H25O(C2H4O)1H
C12H25O(C2H4O)2H
C12H25O(C2H4O)3H
C12H25O(C2H4O)4H
C12H25O(C2H4O)5H
C12H25O(C2H4O)6H
C12H25O(C2H4O)7H
C12H25O(C2H4O)9H
C12H25O(C2H4O)10H
C12H25O(C2H4O)12H
C12H25O(C2H4O)16H
C12H25O(C2H4O)23H
C12H25O(C2H4O)30H
C16H33O(C2H4O)5H
C16H33O(C2H4O)7H
C16H33O(C2H4O)20H
C16H33O(C2H4O)25H
C18H37O(C2H4O)5H
C18H37O(C2H4O)7H
C18H37O(C2H4O)12H
C18H37O(C2H4O)20H
C18H37O(C2H4O)25H
C18H35O(C2H4O)5H
C18H35O(C2H4O)25H
C18H35O2(C2H4O)6H(飽和脂肪酸のエチレンオキサイド付加重合物)
C18H33O2(C2H4O)3H(不飽和脂肪酸のエチレンオキサイド付加重合物)
C18H33O2(C2H4O)6H(不飽和脂肪酸のエチレンオキサイド付加重合物)
C18H33O2(C2H4O)12H(不飽和脂肪酸のエチレンオキサイド付加重合物)
C18H31O6(C2H4O)20H3(ソルビタン飽和脂肪酸のエチレンオキサイド付加重合物)
C24H41O6(C2H4O)20H3(ソルビタン不飽和脂肪酸のエチレンオキサイド付加重合物)
C57H104O9(C2H4O)55H3(グリセリン不飽和脂肪酸エステルのエチレンオキサイド付加重合物)
C57H110O9(C2H4O)60H3(グリセリン飽和脂肪酸エステルのエチレンオキサイド付加重合物)
等を挙げることができる。
【0028】
yが正数である化合物は、例えば下記化合物が挙げられる。
C12H25O(C2H4O)6(C3H6O)2(C2H4O)6(C3H6O)8H、
C13H27O(C2H4O)6(C3H6O)2(C2H4O)6(C3H6O)8H、
C12H25O(C2H4O)w(C3H6O)x(C2H4O)y(C3H6O)zH (但しw+y=15、x+z=4)、
C13H27O(C2H4O)w(C3H6O)x(C2H4O)y(C3H6O)zH (但しw+y=15、x+z=4)、
C12H25O(C2H4O)8(C3H6O)2(C2H4O)6H、
C13H27O(C2H4O)8(C3H6O)2(C2H4O)6H、
C12H25O(C2H4O)12(C3H6O)2(C2H4O)12H、
C13H27O(C2H4O)12(C3H6O)2(C2H4O)12H、
CH3(CH2)9(CH3)HO(C2H4O)7(C3H6O)4.5H、
CH3(CH2)11(CH3)CHO(C2H4O)7(C3H6O)4.5H、
CH3(CH2)9(CH3)CHO(C2H4O)5(C3H6O)3.5H、
CH3(CH2)11(CH3)CHO(C2H4O)5(C3H6O)3.5H、
C14H29O(C2H4O)14(C3H6O)2H、及び
C11H23O(C2H4O)8H、C10H21O(C2H4O)11H
等を挙げることができる。その1種を単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
【0029】
上記ポリオキシアルキレン付加型非イオン性界面活性剤の市販品としては、CLARIANT社製VITAシリーズのGenapol LAシリーズ、Emulsogenシリーズ、Genagen Oシリーズ、Hostacerinシリーズを使用することができる。特に、バイオマス原料を使用しているCLARIANT社製VITAシリーズのGenapol LAシリーズ、Emulsogenシリーズ、Genagen Oシリーズ、又はHostacerinシリーズを使用することが好ましい。また、三洋化成工業株式会社のナロアクティーシリーズ、セドランシリーズ、エマルミンシリーズ、花王株式会社のエマルゲンシリーズ、新日本理化株式会社のコニオンシリーズ、リカノンシリーズ、株式会社ADEKAのアデカトールシリーズなども挙げられる。
【0030】
本発明における(B)成分は、バイオ由来のポリオキシアルキレン付加型非イオン性界面活性剤の少なくとも1種を含む。該ポリオキシアルキレン付加型非イオン性界面活性剤は、バイオマス度10%以上を有するのがよく、すなわちバイオマス度10~100%を有するのがよく、好ましくはバイオマス度20~100%、より好ましくはバイオマス度30~100%を有するのがよい。また、本発明の(B)成分は、石油由来のポリオキシアルキレン付加型非イオン性界面活性剤の1種以上を、バイオ由来のポリオキシアルキレン付加型非イオン性界面活性剤の1種以上と併用してもよい。2種以上のポリオキシアルキレン付加型非イオン性界面活性剤を組み合わせる場合、ポリオキシアルキレン付加型非イオン性界面活性剤全体としてのバイオマス度が上記範囲を満たせばよい。当該(B)成分のバイオマス度は、ASTM-D6866-22に準拠して、後述する方法で算出される。ポリオキシアルキレン付加型非イオン性界面活性剤のバイオマス度は、ポリオキシアルキレン付加型非イオン性界面活性剤中の総炭素量に対するポリオキシアルキレン付加型非イオン性界面活性剤中の14C炭素の量の割合である。
【0031】
上記(B)成分であるポリオキシアルキレン付加型非イオン性界面活性剤の平均分子量はGPC測定により測定された重量平均分子量であり、500~10,000であり、特に500~6,000であることが好ましい。この分子量が500未満では、可溶化能が低下し、水への溶解能が低下するため、インキに配合した際、溶解物が発生する。一方、上記分子量が10,000を超えた場合は、動的表面張力が大きいため、印刷時の滲みの原因になる。
【0032】
上記(B)成分であるポリオキシアルキレン付加型非イオン性界面活性剤において、エチレンオキサイド付加モル数としては1~60であることが好ましい。エチレンオキサイド付加モル数が1モル未満では、可溶化能が低下し凝集物が発生する。一方、上記エチレンオキサイド付加モル数が60モルを超えると、可溶化能がアップするものの、動的表面張力が大きくなり、高速塗工時にハジキが発生する。
【0033】
上記(B)成分であるポリオキシアルキレン付加型非イオン性界面活性剤のHLBは、10~18であることが好ましく、特に好ましくは12~16である。HLBが10未満では、疎水性が増し、水への溶解度が低下し、十分な水溶性が得られなくなる。18を超えた場合は動的表面張力が大きいため、印刷時の滲みの原因になる。
【0034】
本発明の水溶性界面活性剤組成物に含まれる(B)成分の量は、有効成分としてバイオマス水溶性界面活性剤組成物に含有されていれば特に限定されない。組成物の全質量に対して20~95質量%が好ましく、より好ましくは25~90質量%であり、更に好ましくは30~75質量%である。より好ましくは(A)成分と(B)成分の合計100質量部に対して(B)成分が20~95質量部であるのが好ましく、より好ましくは25~90質量部、更に好ましくは30~75質量部であるのがよい。上記(B)成分の含有量が上記下限値未満では、成分(A)の十分な可溶化が行われず、水溶性が低下し、配合した際に凝集物の発生が生じる。一方、上記(B)成分の含有量が上記上限値を超えると配合時の泡立ちが多くなり、動的表面張力が高くなるなどして塗工ムラやハジキが発生する。
【0035】
本発明の水溶性界面活性剤組成物は、更に第3成分である(C)成分として、イオン交換水、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、及びグリセリンなどの水溶性有機溶剤を配合してもよい。上記(C)成分の配合量は、水溶性界面活性剤組成物の特性を損なわない限り、水溶性界面活性剤組成物100質量%中、0~70質量%であり、好ましくは0~60質量%、より好ましくは0~50質量%の量で用いることができる。水溶性有機溶剤を含む場合の下限値は1質量%以上、好ましくは5質量%以上であればよい。
【0036】
本発明の水溶性界面活性剤組成物は、例えば、上記各成分をプロペラ式攪拌機などの公知の混合調製方法によって混合することによって得られる。また、常温で固体の成分については、必要により加温(50~80℃)して混合するものである。
【0037】
本発明のバイオマス水溶性界面活性剤組成物は、バイオマス度が10%以上、より好ましくは20%以上であることを特徴とする。バイオマス度の上限は特に制限されないが、好ましくは100%以下であり、より好ましくは90%以下であり、更に好ましくは80%以下である。ここで、植物(バイオマス)由来と石油由来の原料は、分子量や機械的性質・熱的性質のような物性に差を生じない。そこで、これらを区別するためには、一般的にバイオマス度が用いられている。本発明においてバイオマス度とは、界面活性剤組成物中の総炭素量に対する界面活性剤組成物中の14C炭素の量の割合である。
【0038】
石油由来の原料の炭素は14C炭素(放射性炭素14、半減期5730年)を含んでいないことから、植物(バイオマス)由来炭素との区別が可能である。界面活性剤組成物における該14C炭素の濃度を加速器質量分析により測定し、植物由来原料の含有割合の指標にするものである。従って、植物由来の水溶性界面活性剤組成物は、該水溶性界面活性剤組成物中の14C炭素濃度を測定することにより、植物由来炭素の含有量に応じたバイオマス度が得られる。
【0039】
バイオマス度の測定は、測定対象試料を燃焼して二酸化炭素を発生させ、真空ラインで精製した二酸化炭素を、鉄を触媒として水素で還元し、グラファイトを生成させる。そして、このグラファイトを、タンデム加速器をベースとしたC14―AMS専用装置(NEC社製)に装着して、14Cの計数、13Cの濃度(C13/C12)、14Cの濃度(C14/C12)の測定を行い、この測定値から標準現代炭素に対する試料炭素の14C濃度の割合を算出する。この測定では、米国国立標準局(NIST)から提供されたシュウ酸(HOXII)を標準試料とした。なお、バイオマス度の分析方法は、国際規格ASTM-D6866やISO 16620に制定されている。本発明においてバイオマス度はASTM-D6866-22に準拠して算出された値である。
【0040】
本発明のバイオマス水溶性界面活性剤組成物は、0.1質量%水溶液の1Hz及び10Hz時の動的表面張力が、それぞれ好ましくは60mN/m以下、より好ましくは55mN/m以下、更に好ましくは50mN/m以下である。水溶性界面活性剤組成物の0.1質量%水溶液の1Hz及び10Hz時の動的表面張力が上記下限値超であると、刷毛塗りやバーコーター塗工の際にハジキが認められなくても印刷機や塗工機で印刷などを行った際、ハジキや浸透力不足による滲みが発生するおそれがある。動的表面張力は、バブルプレッシャー型動的表面張力計クルスBP-100(KRUSS社製)を用いて、水溶性界面活性剤組成物の0.1質量%水溶液について1Hz及び10Hzにて測定した値である。
【0041】
本発明のバイオマス水溶性界面活性剤組成物の静的表面張力は40mN/m以下程度が好ましい。該静的表面張力は、表面張力計DY-500(協和界面科学社製)を用いて、水溶性界面活性剤組成物の0.1質量%水溶液について測定した値である。
【0042】
本発明のバイオマス水溶性界面活性剤組成物は、水溶性高分子化合物に対して消泡性を有することができる。消泡性は起泡性を測定することで評価できる。例えば、1分間振盪後の泡立ちの高さ(起泡性)が、好ましくは40ml以下であるのがよく、より好ましくは35ml以下であるのがよい。また、1分間振盪後に5分間静置した後の泡立ちの高さ(消泡性)が、好ましくは40ml以下、より好ましくは35ml以下であるのがよい。上記泡立ちが40mlを超えると、インキの分散性不良等に起因する滲みが発生する場合がある。
【0043】
上記の水溶性高分子化合物としては特に制限なく、公知のものの中から適宜選択することができる。例えば、天然の水溶性高分子化合物としては、アラビアガム、トラガンガム、グアーガム、カラヤガム、ローカストビーンガム、アラビノガラクトン、ペクチン、クインスシードデンプン等の植物性高分子化合物、アルギン酸、カラギーナン、寒天等の海藻系高分子化合物、ゼラチン、カゼイン、アルブミン、コラーゲン等の動物系高分子化合物、キサンテンガム、デキストラン等の微生物系高分子化合物などが挙げられる。また、天然物を原料として化学修飾した水溶性高分子化合物としては、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース等の繊維素系高分子化合物、デンプングリコール酸ナトリウム、デンプンリン酸エステルナトリウム等のデンプン系高分子化合物、アルギン酸プロピレングリコールエステル等の海藻系高分子化合物などが挙げられる。また、合成系の水溶性高分子化合物としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルメチルエーテル等のビニル系高分子化合物、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸又はそのアルカリ金属塩、水溶性スチレンアクリル樹脂等のアクリル系樹脂、水溶性スチレンマレイン酸樹脂、水溶性ビニルナフタレンアクリル樹脂、水溶性ビニルナフタレンマレイン酸樹脂、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリアリルアミン、ポリエチレンイミン、β-ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物のアルカリ金属塩、四級アンモニウムやアミノ基等のカチオン性官能基の塩を側鎖に有する高分子化合物等が挙げられる。
【0044】
本発明のバイオマス水溶性界面活性剤組成物を紙コート剤の水性濡れ剤として用いる場合、又は該バイオマス水溶性界面活性剤組成物を用いてインキを製造する場合には、該水溶性界面活性剤組成物は、紙コート剤全量又はインキ全量に対して好ましくは0.05~10質量%、より好ましくは0.05~5質量%の添加量で含むことが望ましい。
【0045】
本発明のバイオマス水溶性界面活性剤組成物を含む紙コート剤は、本発明の水溶性界面活性剤組成物のほか、微粒子、親水性バインダー、その他添加剤を含むことができる。
【0046】
微粒子としては、例えば、有機微粒子、シリカ微粒子、アルミナ微粒子、及び擬ベーマイト型水酸化アルミニウム微粒子から選ばれる少なくとも1種の微粒子が挙げられる。これらの中でも、シリカ微粒子、アルミナ微粒子、及び擬ベーマイト型水酸化アルミニウム微粒子が好ましい。上記微粒子の平均一次粒子径は50nm以下であることが好ましく、30nm以下であることがより好ましく、特に15nm以下であることが好ましい。特に、微粒子の平均一次粒子径が15nm以下であると、インキ吸収特性を効果的に向上させることができ、また同時にインキ受容層表面の光沢性をも高めることができる。また、微粒子の平均一次粒子径の下限は特に限定はないが、1nm以上であることが好ましい。紙コート剤に配合する微粒子の量は特に限定されないが、紙コート剤中、1~50質量%が好ましく、5~40質量%がより好ましい。
【0047】
親水性バインダーとしては、例えば、ポリビニルアルコール、酸化澱粉、エーテル化澱粉、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースなどのセルロース誘導体、カゼイン、ゼラチン、大豆タンパク、シラノール変性ポリビニルアルコール、スチレン-ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート-ブタジエン共重合体などの共役ジエン系ラテックス、アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステル共重合体などのアクリル系共重合体ラテックス、エチレン酢酸ビニル共重合体などのビニル系重合体ラテックス、無水マレイン酸樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、ポリメチルメタクリレート、ポリウレタン樹脂、不飽和ポリエステル、ポリビニルブチラール、アルキッド樹脂などの合成樹脂が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を混合して使用することができる。また、インキ吸収性の観点から、ポリビニルアルコール系樹脂、セルロース系樹脂、エーテル結合を有する樹脂、カルバモイル基を有する樹脂、カルボキシ基を有する樹脂、及びゼラチン類から選ばれる少なくとも1種を含有することがより好ましい。上記ポリビニルアルコールを使用する場合のケン化度としては、発色濃度の観点から、82モル%以上が好ましく、86~99モル%がより好ましい。また、重合度としては、十分な膜強度を得る観点から、300~4,500が好ましく、500~2,600がより好ましい。紙コート剤に配合する親水性バインダーの量は特に限定されないが、紙コート剤中、1~5質量%の水溶液として45~95質量%が好ましく、55~90質量%がより好ましい。
【0048】
その他の添加剤としては、顔料分散剤、増粘剤、流動性改良剤、消泡剤、抑泡剤、離型剤、発泡剤、浸透剤、着色染料、着色顔料、蛍光増白剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、防腐剤、防バイ剤、耐水白化剤、湿潤紙力増強剤、及び乾燥紙力増強剤などを適宜配合することもできる。これらの添加剤は、紙コート剤100質量%中に上述した各成分量を除いた残部として添加することが可能である。
【0049】
上記本発明のバイオマス水溶性界面活性剤組成物、微粒子、親水性バインダー、その他添加剤を配合させることにより、紙コート剤が得られる。該紙コート剤を、印刷用に塗工する面に、浸漬、塗布、又は噴霧などに用いられるグラビアコート等を用いた公知の方法で塗工させることで塗工紙が得られる。この際、塗工量は3~50g/m2、より好ましくは5~20g/m2で調整して塗工させればよい。塗工スピードを20~2,000m/分、より好ましくは40~2,000m/分にコントロールすることにより、塗工紙が得られる。
【0050】
本発明の水溶性界面活性剤組成物を含むインキは、本発明の水溶性界面活性剤組成物のほか、着色料、水や溶剤などの溶媒、樹脂、及び、その他添加剤を任意に含むことができる。
【0051】
着色料としては、染料、有機顔料又は無機顔料を好適に用いることができる。例えば、染料としては、カラーインデックスにおいて、酸性染料、直接染料、反応染料、建染染料、硫化染料又は食品用色素に分類されているものの他に油溶染料、塩基性染料に分類される着色剤を用いることもできる。また、顔料として、黒色インキ用としては、ファーネスブラック(カラーブラック)、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等のカーボンブラック(C.I.ピグメントブラック7)類、具体的には、例えば、レイヴァン(Raven)7000、レイヴァン5750、レイヴァン5250、レイヴァン5000、レイヴァン3500、レイヴァン2000、レイヴァン1500、レイヴァン1250、レイヴァン1200、レイヴァン1190ULTRA-II、レイヴァン1170、レイヴァン1255(以上、コロンビア社製)、ブラックパールズ(Black Pearls)L、リーガル(Regal)400R、リーガル330R、リーガル660R、モウグル(Mogul)L、モナク(Monarch)700、モナク800、モナク880、モナク900、モナク1000、モナク1100、モナク1300、モナク1400、ヴァルカン(Valcan)XC-72R(以上、キャボット社製)、カラーブラック(Color Black)FW1、カラーブラックFW2、カラーブラックFW2V、カラーブラックFW18、カラーブラックFW200、カラーブラックS150、カラーブラックS160、カラーブラックS170、プリンテックス(Printex)35、プリンテックスU、プリンテックスV、プリンテックス140U、プリンテックス140V、スペシャルブラック(Special Black)6、スペシャルブラック5、スペシャルブラック4A、スペシャルブラック4(以上、デグッサ社製)、No.25、No.33、No.40、No.47、No.52、No.900、No.2300、MCF-88、MA600、MA7、MA8、MA100(以上、三菱化学社製)等、又は銅酸化物、鉄酸化物(C.I.ピグメントブラック11)、酸化チタン等の金属類、アニリンブラック(C.I.ピグメントブラック1)等の有機顔料が挙げられる。更にカラーインキ用としては、C.I.ピグメントイエロー1(ファストイエローG)、3、12(ジスアゾイエローAAA)、13、14、17、24、34、35、37、42(黄色酸化鉄)、53、55、74、81、83(ジスアゾイエローHR)、93、94、95、97、98、100、101、104、108、109、110、117、120、128、138、153、180、C.I.ピグメントレッド1、2、3、5、17、22(ブリリアントファーストスカーレット)、23、31、38、48:2(パーマネントレッド2B(Ba))、48:2(パーマネントレッド2B(Ca))、48:3(パーマネントレッド2B(Sr))、48:4(パーマネントレッド2B(Mn))、49:1、52:2、53:1、57:1(ブリリアントカーミン6B)、60:1、63:1、63:2、64:1、81(ローダミン6Gレーキ)、83、88、101(べんがら)、104、105、106、108(カドミウムレッド)、112、114、122(キナクリドンマゼンタ)、123、146、149、166、168、170、172、177、178、179、185、190、193、202、206、209、219、C.I.ピグメントバイオレット19、23、C.I.ピグメントオレンジ36、C.I.ピグメントブルー1、2、15(フタロシアニンブルーR)、15:1、15:2、15:3(フタロシアニンブルーG)、15:4、15:6(フタロシアニンブルーE)、16、17:1、56、60、63、C.I.ピグメントグリーン1、4、7、8、10、17、18、36等が使用できる。インキに配合する着色料の量は特に限定されないが、インキ中0.1~15質量%が好ましく、より好ましくは2~10質量%である。
【0052】
溶媒としては、水、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、分子量2,000以下のポリエチレングリコール、1,3-プロピレングリコール、イソプロピレングリコール、イソブチレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、グリセリン、メソエリスリトール、ペンタエリスリトールなどのグリコール類、炭素数1~4のアルキルアルコール類、グリコールエーテル類、ホルムアミド、アセトアミド、ジメチルスルホキシド、ソルビット、ソルビタン、アセチン、ジアセチン、トリアセチン、及びスルホランなどがあり、これらの1種又は2種以上を適宜選択して使用することができる。インキに配合する溶媒の量は特に限定されないが、インキ中、50~99質量%が好ましく、より好ましくは60~95質量%である。
【0053】
樹脂としては、ポリマーを形成する物質の疎水基が少なくともアルキル基、シクロアルキル基又はアリール基から選ばれた1種以上であることが好ましい。そして、親水基が少なくともカルボキシル基、スルホン酸基、ヒドロキシル基、アミノ基、もしくはアミド基又はそれらの塩基であることが好ましい。分散ポリマーを形成する物質としては例えば、2重結合を有するアクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基あるいはアリール基を有するモノマーやオリゴマー類を用いることができる。例えば、スチレン、テトラヒドロフルフリルアクリレート、ブチルメタクリレート、(α,2,3又は4)-アルキルスチレン、(α,2,3又は4)-アルコキシスチレン、3,4-ジメチルスチレン、α-フェニルスチレン、ジビニルベンゼン、ビニルナフタレン、ジメチルアミノ(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、N,N-ジメチルアミノエチルアクリレート、アクリロイルモルフォリン、N,N-ジメチルアクリルアミド、N-イソプロピルアクリルアミド、N,N-ジエチルアクリルアミド、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、その他アルキル(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基のジエチレングリコール又はポリエチレングリコールの(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、その他含フッ素、含塩素、含珪素(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、マレイン酸アミド、(メタ)アクリル酸等の1官能の他に架橋構造を導入する場合は(モノ、ジ、トリ、テトラ、ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール及び1,10-デカンジオール等の(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセリン(ジ、トリ)(メタ)アクリレート、ビスフェノールA又はFのエチレンオキシド付加物のジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等アクリル基やメタクリル基を有する化合物を用いることができる。インキに配合する樹脂の量は特に限定されないが、インキ中、0~30質量%が好ましく、より好ましくは0~20質量%である。なお、配合する場合には1質量%以上とすることが好ましい。
【0054】
その他添加剤としては、紫外線吸収剤、酸化防止剤、pH調整剤、防腐剤、粘度調整剤などを適宜配合することもできる。これらその他の添加剤は、上記の材料のほかに、インキ組成物100質量%中の残部として配合させることができる。
【0055】
本発明のバイオマス水溶性界面活性剤組成物、着色料、溶剤、樹脂、及びその他添加剤等を分散・溶解して混合攪拌することにより、優れた特性を有するインキが得られる。該インキは、粘度を4mPa・s以下(0を含まず)に調整することで、印字特性が優れる。
【実施例】
【0056】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明をより詳細に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、下記の例において、部及び%はそれぞれ質量部、質量%を示す。
【0057】
実施例及び比較例で用いた成分は下記の通りである。
[A成分]
(A-1):2,5,8,11-テトラメチル-6-ドデシン-5,8-ジオールのエトキシル化体(分子量:430,HLB:9.8、上記式(2)においてR1が3-メチルブチル基であり、R2がメチル基であり、式(2)におけるm+nの平均値(EO基平均付加モル数)は4である。)
(A-2):2,5,8,11-テトラメチル-6-ドデシン-5,8-ジオール(分子量:430,HLB:2.7、上記式(1)においてR1が3-メチルブチル基であり、R2がメチル基である)
(A-3):2,4,7,9-テトラメチル-5-デシン-4,7-ジオール(分子量:226,HLB:3.0、上記式(1)においてR1が2-メチルプロピル基であり、R2がメチル基である)
【0058】
[B成分]下記においてHLB値はグリフィン法で計算されたものである。
(B-1):ラウリルアルコールエトキシレート R5O(C2H4O)7H
上記式においてR5がC12~C14のアルキル基である化合物の混合、EO基平均付加モル数は7(ラウレス-7)、
HLB値:12.5、分子量:500
(B-2):ラウリルアルコールエトキシレート R5O(C2H4O)10H
上記式においてR5がC12~C14のアルキル基である化合物の混合、EO基平均付加モル数は10(ラウレス-10)
HLB値:14.1、分子量:650
(B-3):ラウリルアルコールエトキシレート R5O(C2H4O)12H
上記式においてR5がC12~C14のアルキル基である化合物の混合、EO基平均付加モル数は12(ラウレス-12)
HLB値:14.8、分子量:750
(B-4):ラウリルアルコールエトキシレート R5O(C2H4O)16H
上記式においてR5がC12~C14のアルキル基である化合物の混合、EO基平均付加モル数は16(ラウレス-16)
HLB値:15.8、分子量:900
(B-5):セテアリルアルコールエトキシレート R5O(C2H4O)20H
上記式においてR5がC16~C18のアルキル基である化合物の混合、EO基平均付加モル数は20(セテアレス-20)
HLB値:15.7、分子量:1200
(B-6):モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン
モノラウリン酸ソルビタンのエチレンオキサイド付加重合物であり、EO基平均付加モル数は20である(ポリソルベート20)
HLB値:14.4、分子量:1300
(B-7):オレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン
モノオレイン酸ソルビタンのエチレンオキサイド付加重合物であり、EO基平均付加モル数は20である(ポリソルベート80)
HLB値:13.4、分子量:1300
(B-8):ポリオキシエチレン付加型ヒマシ油
ヒマシ油のエチレンオキサイド付加重合物であり、EO基平均付加モル数は55である(PEG55-ヒマシ油)
HLB値:14.8、分子量:3500
(B-9):ポリオキシエチレン付加型硬化ヒマシ油
水添ヒマシ油のエチレンオキサイド付加重合物であり、EO基平均付加モル数は60である(PEG60-水添ヒマシ油)
HLB値:14.4、分子量:3700
【0059】
参考用界面活性剤:(C-1):ナロアクティーCL-160(ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、HLB=15.2、合成高級アルコールのアルキレンオキシド付加物)
【0060】
実施例及び比較例における界面活性剤組成物の物性評価方法は下記の通りである。
【0061】
<バイオマス度の分析>
下記の実施例1~30、比較例1~12及び参考例1~3で得た各界面活性剤組成物を構成する(A)成分、(B)成分、及び各溶媒のバイオマス度を分析した。
バイオマス度の分析は、加速器質量分析装置(AMS)による14C濃度測定、解析はASTM-D6866-22に準拠して行った。
試料を錫カップに封じ、元素分析計(elementar社製 vario MICRO CUBE)でCO2ガス化し、ガラス製気体精製ライン(光信理化学製作所製)で精製し、グラファイト還元用管状炉(光信理化学製作所製)で水素還元によりグラファイトを生成させた。調整後、加速器質量分析計(コンパクトAMS:NEC製1.5ASH)を用いて14C濃度を測定した。得られた14C濃度について同位体分別効果の補正を行った後、pMC値とバイオマス度を算出した。なお、標準試料としてNIST シュウ酸(SRM4990C)を使用した。
各界面活性剤組成中のバイオマス度は、上記分析で得られた(A)成分、(B)成分、及び各溶媒のそれぞれのバイオマス度を用いて、下記式から算出した。
【0062】
下記式において「14C炭素含有割合」は、上記AMSから分析したバイオマス度を示す。また「構造中総炭素含有割合」は、各成分の化学構造中の総炭素含有割合を示す。
【0063】
界面活性剤組成中の(A)成分の14C炭素量[g]=[(A)成分の配合量]×[(A)成分中の14C炭素含有割合]×[(A)成分構造中の総炭素含有割合]
界面活性剤組成中の(B)成分の14C炭素量[g]=[(B)成分の配合量]×[(B)成分中の14C炭素含有割合]×[(B)成分構造中の総炭素含有割合]
界面活性剤組成中の溶媒成分の14C炭素量[g]=[溶媒成分の配合量]×[溶媒成分中の14C炭素含有割合]×[溶媒成分構造中総炭素含有割合]
上記で求めた界面活性剤組成中の(A)成分の14C炭素量[g]、界面活性剤組成中の(B)成分の14C炭素量[g]、及び界面活性剤組成中の溶媒成分の14C炭素量[g]の合計を、界面活性剤組成中の14C炭素量[g]とした。
【0064】
界面活性剤組成中の(A)成分が有する総炭素量[g]=[(A)成分の配合量]×[(A)成分構造中の総炭素含有割合]
界面活性剤組成中の(B)成分が有する総炭素量[g]=[(B)成分の配合量]×[(B)成分構造中の総炭素含有割合]
界面活性剤組成中の溶媒成分が有する総炭素量[g]=[溶媒成分配合量]×[溶媒成分構造中の総炭素含有割合]
上記(1)~(3)で求めた界面活性剤組成中の(A)成分の総炭素量[g]、界面活性剤組成中の(B)成分の総炭素量[g]、及び界面活性剤組成中の溶媒成分の総炭素量[g]の合計を界面活性剤組成中の総炭素量[g]とした。
【0065】
界面活性剤組成中バイオマス度は下記式から算出した。
【数1】
【0066】
<溶解性>
界面活性剤組成物の0.1質量%水溶液の外観及び不溶解物の有無の確認を目視により行った。
○:水溶液が透明で、不溶解物が認められない
△:水溶液が白濁しているが、不溶解物は認められない
×:一部不溶解物が認められる
【0067】
<静的表面張力>
協和界面科学社製表面張力計DY-500を用いて、界面活性剤組成物の0.1質量%水溶液の静的表面張力を室温にて測定した。
【0068】
<動的表面張力>
KRUSS社製バブルプレッシャー型動的表面張力計クルスBP-100を用いて、界面活性剤組成物の0.1質量%水溶液の1Hz及び10Hzの動的表面張力を室温にて測定した。
【0069】
<起泡性・消泡性>
界面活性剤組成物の0.1質量%水溶液を100mlメスシリンダーに20ml封入し、振とう機(IWAKIKM Shaker V-SX)を用いて1分間振とうさせた直後の泡立ちの高さ(泡容量ml数)を測定し起泡性とした。
その後、起泡性を測定した際の試料を5分間静置させたときの泡立ちの高さ(泡容量ml)を測定し、消泡性とした。
【0070】
[実施例1]
60℃に加温した下記表1に示される(A)アセチレングリコール50部、60℃に加温した下記表1に示される(B)B-1成分50部を添加し、プロペラ式撹拌機で2時間攪拌後、室温まで冷却して実施例1の界面活剤組成物を得た。
【0071】
[実施例2~30、比較例1~12、参考例1~3]
実施例1と同様に、表1で示した配合組成で実施例2~30を得た。また、実施例1と同様に、表2で示した配合組成で比較例1~12を得た。
【0072】
【0073】
【0074】
【0075】
上記表1及び2と表3の対比からわかる通り、本発明のバイオマス水溶性界面活性剤組成物は、優れた消泡性、分散性を有する。更に低い静的表面張力及び動的表面張力を有するため、インクなどに優れた濡れ性、浸透性を付与することができる。また、水への溶解性が良好であり不溶解物を生じない。特に、0.1質量%水溶液の1Hz及び10Hz時の動的表面張力が低いため、高速印刷及び高速塗工に対応することができる。
【0076】
青インク配合物の調製
[塗工実施例1]
青顔料分散体としてEMACOL SF BKUE H524F(水 20-25%、銅フタロシアニン 20-25%、山陽色素株式会社製)15部、水性溶媒としてイオン交換水85部、上記実施例1で得た界面活性剤組成物を0.5部添加し、プロペラ式攪拌機で1時間攪拌した後、青インク配合物(以下、これを「塗工実施例1」という)を得た。
【0077】
[塗工実施例2~5、塗工比較例1~6、及び塗工参考例1]
上記塗工実施例1において、界面活性剤組成物を上記実施例10、11、14、又は26で得た界面活性剤組成物に変えた他は塗工実施例1の工程を繰り返して青インク配合物(以下、「塗工実施例2~5」という)を得た。
また、上記塗工実施例1において、界面活性剤組成物を上記比較例1~5、又は12で得た界面活性剤組成物に変えた他は塗工実施例1の工程を繰り返して比較用青インク配合物(以下、「塗工比較例1~6」という)を得た。
更に、上記塗工実施例1において、界面活性剤組成物を上記参考例1で得た界面活性剤組成物に変えた他は塗工実施例1の工程を繰り返して参考用青インク配合物(以下、「塗工参考例1」という)を得た。
【0078】
青インク配合物の各特性の測定評価を下記に従い行った。結果を表4に記載する。
【0079】
[青インク配合物の評価]
<溶解性>
上記青インク配合物の外観及び不溶解物の有無の確認を目視により行った。
○:溶解性が良好で、不溶解物が認められない
×:一部油浮きなどの不溶解物が認められる
【0080】
<塗工性>
コート紙(日本テストパネル株式会社製 OKトップコート(王子製紙)使用紙)にバーコーターRDS07(塗布膜厚約16.0μm)を用いて上記青インク配合物を塗工し、塗工面のハジキなどの状態を目視にて確認した。
◎:ハジキ及び色むら、ピンホールが認められない
〇:概ねハジキ及び色むら、ピンホールが認められない
△:一部ハジキ又は色むら、ピンホールが認められる
×:ハジキ又は色むら、ピンホールが多く認められる
【0081】
【0082】
本発明のバイオマス水溶性界面活性剤組成物は水への溶解性に優れる。また、優れた消泡性及び分散性を有し、更に低い動的表面張力を有するためインキ及び紙コート剤などへ優れた濡れ性及び浸透性を付与し、塗工性に優れる。本発明の界面活性剤組成物は、環境問題への配慮にも適合しており、インキ及び紙コート剤等の界面活性剤として有用である。