(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-30
(45)【発行日】2025-05-12
(54)【発明の名称】部材品トレーサビリティ管理装置及びその管理方法
(51)【国際特許分類】
G05B 19/418 20060101AFI20250501BHJP
G06Q 50/04 20120101ALI20250501BHJP
【FI】
G05B19/418 Z
G06Q50/04
(21)【出願番号】P 2024068422
(22)【出願日】2024-04-19
(62)【分割の表示】P 2021067087の分割
【原出願日】2021-04-12
【審査請求日】2024-04-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】坂村 華怜
(72)【発明者】
【氏名】池澤 克就
(72)【発明者】
【氏名】大石 聡
【審査官】石田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-209180(JP,A)
【文献】特開2005-108048(JP,A)
【文献】特開2008-171205(JP,A)
【文献】特開2002-6929(JP,A)
【文献】特開2017-38084(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/293980(US,A1)
【文献】特許第4380426(JP,B2)
【文献】特開2003-157110(JP,A)
【文献】特開平11-188583(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 19/418
G06Q 50/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
製造品を製造する工程における前記製造品を構成する部材品の製造ロット識別情報を管理する部材品トレーサビリティ管理装置であって、
前記製造品の製造品識別情報を受け付ける製造品識別情報取得部と、
前記製造品識別情報と該製造品識別情報ごとの型式情報から前記製造品を構成する前記部材品の組付けフラグを算出する部材品情報受付部と、
部材品箱ごとに前記製造ロット識別情報を取得する部材品箱格納情報取得部と、
部材品箱
識別情報および前記部材品の前記製造品に組み込む使用部材品または組み込まない不良部材品
を検知し各々の数量をカウントする残量検知部と、
前記使用部材品及び前記不良部材品の数量から前記部材品の残量が閾値以下になった場合に残量閾値フラグを算出する残量受付部と、
前記組付けフラグおよび前記残量閾値フラグに基づいて前記製造品への部材品組付け時の部材品の残量を算出し
、前記製造品への部材品組付け時の部材品の前記残量に基づいて
前記製造ロット識別情報の切替えポイントを算出する製造ロット識別情報算出部と、
前記製造ロット識別情報の切替えポイントに応じて、前記製造品の製造品識別情報、前
記製造品を構成する前記部材品の部材品識別情報、および、前記製造ロット識別情報を紐
付けて記憶部に格納するデータベース蓄積部と、
前記データベース蓄積部で蓄積したデータを部材品識別情報または製造ロット識別情報
を指定して検索し作業時刻でソートするソート処理部と、を有する
ことを特徴とする部材品トレーサビリティ管理装置。
【請求項5】
製造品を構成する部材品の製造ロット識別情報を管理する部材品トレーサビリティ管理装置の管理方法であって、
製造ライン上を通過する前記製造品の製造品識別情報を取得し、
前記製造品識別情報と該製造品識別情報ごとの型式情報から前記製造品を構成する前記部材品の組付けフラグを算出し、
部材品箱ごとに前記製造ロット識別情報を取得し、
部材品箱
識別情報および前記部材品の前記製造品に組み込む使用部材品または組み込まない不良部材品
を検知し各々の数量をカウントし、
前記使用部材品及び前記不良部材品の数量から前記部材品の残量が閾値以下になった場合に残量閾値フラグを算出し、
前記組付けフラグおよび前記残量閾値フラグに基づいて前記製造品への部材品組付け時の部材品残量を算出し、
前記製造品への部材品組付け時の部材品の前記残量に基づいて前
記製造ロット識別情報の切替えポイントを算出し、
前記製造ロット識別情報の切替えポイントに応じて、前記製造品の製造品識別情報、前
記製造品を構成する前記部材品の部材品識別情報、および、前記製造ロット識別情報を紐
付けてデータベース蓄積部に格納し、
前記
データベース蓄積部で蓄積したデータを部材品識別情報または製造ロット識別情報
を指定して検索し作業時刻でソートする
ことを特徴とする部材品トレーサビリティ管理装置の管理方法。
【請求項6】
通信網を介して製造品識別情報取得媒体とコード情報読み取り媒体と残量検知媒体と通信可能な製造品を構成する部材品の製造ロット識別情報を管理する部材品トレーサビリティ管理装置の管理方法であって、
前記製造品識別情報取得媒体から製造ライン上を通過する前記製造品の製造品識別情報を受信するステップと、
前記製造品識別情報と該製造品識別情報ごとの型式情報から前記製造品を構成する前記部材品の組付けフラグを算出するステップと、
前記コード情報読み取り媒体から部材品箱ごとに前記製造ロット識別情報を受信するステップと、
前記残量検知媒体から映像情報を受信するステップと、
前記映像情報から、AI姿勢抽出の処理手段により部材品箱
識別情報および前記部材品の前記製造品に組み込む使用部材品または組み込まない不良部材品
を検知し各々の数量を
カウントするステップと、
前記使用部材品及び前記不良部材品の数量から前記部材品の残量が閾値以下になった場合に残量閾値フラグを算出するステップと、
前記組付けフラグおよび前記残量閾値フラグに基づいて前記製造品への部材品組付け時の部材品残量を算出するステップと、
前記製造品への部材品組付け時の部材品の前記残量に基づいて前記製造ロット識別情報の
切替えポイントを算出するステップと、
前記製造ロット識別情報の切替えポイントに応じて、前記製造品の製造品識別情報、前
記製造品を構成する前記部材品の部材品識別情報、および、前記製造ロット識別情報を紐
付けてデータベース蓄積部に格納するステップと、
前記
データベース蓄積部で蓄積したデータを部材品識別情報または製造ロット識別情報
を指定して検索し作業時刻でソートするステップと、を含む
ことを特徴とする部材品トレーサビリティ管理装置の管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トレーサビリティシステムに関し、製造物の不良原因分析や品質管理の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
製造ライン、特に自動車産業では分単位で新しい車両が生産されている。一方、製造品が市場に出た後に、不具合(リコール含)が見つかった場合は、原因を究明し、要因となる部位、例えば部材品などの特定や、その部材品の他製造品への影響範囲を、トレーサビリティシステムをもとに調査している。
【0003】
部材品は、製造品と1対1で紐づけられるものもあるが、ロット(例えば梱包単位)で管理されている部材品の多くは、ロットごとの使用時間と組付け先製造品の製造工程通過時刻とを突き合わせ、紐づける手法が主流となっている。製造品組み立て時の分単位の作業中に取り扱われる部材品と組付け先製造品の紐づけ精度の向上は難しく、または紐付けの記録が残っていないため、調査が長引き、要因の特定範囲を短期で狭めることができないことがあり、調査費用と時間が増大し企業の負担となることが問題になっている。
【0004】
上記品質管理等に係わる先行技術としては、特開2006-65841号公報(特許文献1)が挙げられる。特許文献1には、製造品の製造開始時刻および製造終了時刻と、部材品の供給開始時刻および供給停止時刻とに基づき、製造品に使用され得る部材品の製造ロット識別情報を抽出し、製造品識別情報と部材品名称とに対応付けて記録する部材品トレーサビリティ管理装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1によれば、部材品の供給に関する時刻に基づいて、製造ロット識別情報(以降、“製造ロット”と省略する場合がある)を抽出している。しかしながら、部材品の製造ロットが切替わるタイミングの周辺時刻においては、切替わるタイミングの前後の製造ロットのどちらでも、その部材品が取り付けられた可能性があり、製造品に取り付けられた部材品の製造ロットの特定が困難であり、複数の製造ロットを対応せざるをえなくなる。これにより、製造ロットの管理において、不確定要素が生じてしまうため、部材品トレーサビリティ効率の更なる向上が難しいという課題が残っていた。
【0007】
本発明の目的は、上記課題に鑑み、連続して使用される部材品の製造ロットごとの製造品への組付け区間を明確にし、製造品の不具合の原因究明を、早期かつ高精度に発見することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、その一例を挙げるならば、製造品を製造する工程における製造品を構成する部材品の製造ロット識別情報を管理する部材品トレーサビリティ管理装置であって、製造品の製造品識別情報を受け付ける製造品識別情報取得部と、製造品識別情報と製造品識別情報ごとの型式情報から製造品を構成する部材品の組付けフラグを算出する部材品情報受付部と、部材品箱ごとに製造ロット識別情報を取得する部材品箱格納情報取得部と、部材品箱情報および部材品の製造品に組み込む使用部材品または組み込まない不良部材品の数量を検知する残量検知部と、使用部材品及び不良部材品の数量から部材品の残量が閾値以下になった場合に残量閾値フラグを算出する残量受付部と、組付けフラグおよび残量閾値フラグに基づいて製造品への部材品組付け時の部材品残量を算出する製造ロット識別情報算出部を備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、連続して使用される部材品の製造ロットごとの製造品への組付け区間を明確にすることが可能となり、製造ラインのトレーサビリティ技術の精度が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施例における部材品トレーサビリティ管理装置の適用場面を説明する概要図である。
【
図2】実施例における部材品トレーサビリティ管理装置の機能構成図である。
【
図3】従来技術と実施例における部材品の製造ロット識別情報と製造品識別情報との紐づけを説明する図である。
【
図4】実施例における工程ごとに実施される部材品組付け作業の処理フローである。
【
図5】実施例における製造品識別情報取得部で取得する製造品通過時の取得情報である。
【
図6】実施例における製造品型式情報DBのデータ例である。
【
図7】実施例における型式別部材品構成情報DBのデータ例である。
【
図8】実施例における部材品情報受付部の部材品組付けフラグを更新する処理テーブルである。
【
図9A】実施例における部材品箱格納情報DBの格納情報が更新される前のデータ例である。
【
図9B】実施例における部材品箱格納情報DBの格納情報が更新された後のデータ例である。
【
図10A】実施例における残量検知部の処理フローである。
【
図10B】実施例における残量検知部の取得情報を示すデータ例である。
【
図11】
図10Bに示した残量検知部における不良品検出時の場合の作業場面のイメージ図である。
【
図12A】実施例における同部材品が部材品棚の複数の部材品箱に格納されている場合の残量検知時の作業場面のイメージ図である。
【
図12B】
図12Aに示した残量検知時の残量検知部の取得情報を示すデータ例である。
【
図13A】実施例における残量受付部の残量閾値フラグを計算する処理前の処理テーブルである。
【
図13B】実施例における残量受付部の残量閾値フラグを計算する処理後の処理テーブルである。
【
図14】実施例における製造ロット識別情報算出部にて行う部材品車両組付け時の残量算出方法を説明する図である。
【
図15】実施例における組付け部材品実績DBのデータ例である。
【
図16】実施例における製造ロット検索画面の部材品識別情報と製造ロット識別情報を検索条件に指定した場合の画面例である。
【
図17】実施例における車両検索画面の製造品識別情報と作業時刻を検索条件に指定した場合の画面例である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施例について図面を用いて説明する。
【実施例】
【0012】
図1は、本実施例における部材品トレーサビリティ管理装置10の適用場面を説明する概要図である。本実施例における部材品トレーサビリティ管理装置10は、製造品80への部材品組付け時に製造品識別情報ごとに組付けた部材品の製造ロット識別情報を紐づけることができる装置である。ここで、製造品識別情報とは、製造品ごとに持つ製造品の一つ一つを識別する情報のことである。また、部材品の製造ロット識別情報とは、部材品が製造メーカへ納入される単位をロットとし、部材品のロットを識別する情報のことである。
【0013】
図1において、格納ロット21は部材品箱23に格納されるロットであって、格納ロット21は各工程の部材品棚24に格納される部材品箱23に移し替えるものとし、部材品補充時に部材品箱識別情報と格納する部材品の製造ロット識別情報、部材品格納時刻が紐づけられる。ここで、部材品箱識別情報とは、部材品22を格納する部材品箱23ごとを識別する情報のことである。また、部材品箱識別情報は独立に発行されているものとする。なお、部材品箱識別情報と製造ロット識別情報は、コード情報読み取り媒体11により取得される。なお、
図1において、部材品箱識別情報と製造ロット識別情報はバーコード、コード情報読み取り媒体11はバーコードリーダなどを想定しているが、部材品箱と製造ロット識別情報が1対1で紐づくことができればその他の手段でもよい。
【0014】
また、部材品22には、不良品が混ざっている可能性があるため、各工程には部材品棚24と不良品棚25が存在する。作業者は部材品棚24に格納された部材品箱23から部材品22を取り出し、製造ライン上の製造品80へ組付ける。手に取った部材品が不良品だとわかった際は、不良品棚25へ部材品を格納する。
【0015】
部材品置き場では、残量検知媒体12が、不良品棚25への部材品格納作業を監視できる場所に固定され設置され、部材品箱識別情報および部材品の使用実績に関する情報を取得する。すなわち、残量検知媒体12はカメラを想定し、カメラで取得した映像から、部材品箱識別情報の取得と、部材品トレーサビリティ管理装置10内に設けたAI姿勢抽出の処理手段により部材品の使用実績を判定できる。しかしながら、部材品箱識別情報と部材品の使用実績に関する情報を取得することが可能であれば、例えば残量検知媒体12は重量計であり、部材品箱の重量を重量計で計り、部材品トレーサビリティ管理装置10内で部材品の使用実績を算出するなど、他の手段でもよい。
【0016】
製造ラインでは、工程ごとに製造品80の製造品識別情報を製造品識別情報取得媒体13により取得できる。なお、製造品識別情報取得媒体13は、例えば、RFID読み取り装置である。また製造品には、製造品識別情報を書き込み済みのRFIDなどを生産ライン導入前に搭載してあるものとし、工程のRFID読み取り装置からオンラインで読み取れるものとする。なお、上記のRFIDは、製造品識別情報が格納でき、工程で読み取ることができれば他の手段でもよい。
【0017】
部材品トレーサビリティ管理装置10により製造品識別情報ごとに組付け部材品がデータベース(DB)に登録された情報は画面表示部14により画面上に出力可能である。
【0018】
図2は、本実施例における部材品トレーサビリティ管理装置10の機能構成図である。
図2において、部材品トレーサビリティ管理装置10は、製造品識別情報取得部31と、部材品情報受付部32と、部材品箱格納情報取得部33と、部材品箱格納情報蓄積部34と、残量検知部35と、残量受付部36と、製造ロット識別情報算出部37と、データベース蓄積部38と、製造品型式情報DB41と、型式別部材品構成情報DB42と、部材品箱格納情報DB43と、組付け部材品実績DB44を含む。通信網50は例えばLANである。ここで、型式情報とは、製造品ごとに持つ製造品の型式の情報のことである。
【0019】
また、画面表示部14は、通信網50を介して、部材品トレーサビリティ管理装置10により各種情報を表示してもよいし、部材品トレーサビリティ管理装置10の内部に設けて各種情報を表示してもよい。
【0020】
なお、図示していないが、コード情報読み取り媒体11、残量検知媒体12、製造品識別情報取得媒体13は、通信網50を介して、部材品トレーサビリティ管理装置10と通信を行ない、部材品トレーサビリティ管理装置10は、必要な情報を受信することで、情報を取得する。
【0021】
部材品トレーサビリティ管理装置10は、そのハードウェアイメージとしては、一般的なCPU(Central Processing Unit)等の処理プロセッサと記憶装置で構成され、
図2で示す機能は、記憶装置からそれぞれの機能を実現するプログラムや情報を読み出して、所定の処理をソフトウェア処理にて行なうことで実行される。
【0022】
なお、通信網50が、オンライン処理の可能な一定の通信速度が担保されていれば、部材品トレーサビリティ管理装置10は、例えばサーバ装置として、遠隔に配置されてもよい。また、組付け部材品実績DB44に関しては、オンライン処理ではなくバッチ処理にて蓄積することも可能である。また、通信網50は、有線、無線を問わず一般的な公衆回線網、例えば、「多数同時接続」、「超低遅延」を可能とした第5世代移動通信システム、いわゆる5G(5th Generation)を用いることができる。
【0023】
製造品識別情報取得部31は、工程ごとに設置された製造品識別情報取得媒体13により製造ライン上を通過する製造品の製造品識別情報を取得する。
【0024】
製造品型式情報DB41は、製造品識別情報ごとの型式が格納されているDBである。工程に関係なくマスタとして一つ存在する。
【0025】
型式別部材品構成情報DB42は、型式ごとに組み付け部材品と部材品数、組付け工程情報が格納されているDBである。工程に関係なくマスタとして一つ存在する。
【0026】
部材品情報受付部32では、製造品識別情報をもとに製造品型式情報DB41から型式を抽出し、型式別部材品構成情報DB42から各工程で必要な部材品構成情報を抽出し、自工程での製造品への部材品ごとの組付け必要有無を、組付けフラグとして算出する。
【0027】
部材品箱格納情報取得部33では、コード情報読み取り媒体11から部材品箱識別情報と格納する製造ロット識別情報を取得し、部材品箱と製造ロット識別情報が紐づけられる。
【0028】
部材品箱格納情報蓄積部34では、部材品箱格納情報DB43へ部材品箱識別情報と製造ロット識別情報を部材品箱にロットが格納された時点でオンラインにて格納する。部材品箱格納情報DB43は、工程に関係なくマスタとして一つ存在する。
【0029】
残量検知部35では工程ごとに設置されている残量検知媒体12を介し、部材品箱識別情報と部材品の使用実績情報を取得する。ここで、部材品の使用実績情報とは、部材品がどの部材品箱から取り出されたか、取り出された部材品が使用部材品として製造品に組み込まれたか、取り出された部材品が不良部材品として製造品に組み込まれず不良品棚に入れられたかの実績である。残量検知部35では、使用部材品または組み込まない不良部材品の数量を検知する。
【0030】
残量受付部36では部材品箱格納情報DB43と残量検知部35の部材品箱情報と部材品使用実績情報より、部材品箱ごとに格納された部材品ごとに、残量が閾値以下になった場合に、残量閾値フラグを算出する。あらかじめ部材品ごとにフラグ算出の残量閾値は決まっているものとする。
【0031】
製造ロット識別情報算出部37では部材品情報受付部32の組付けフラグ情報と残量受付部36の残量閾値フラグより製造品への部材品組付け時の部材品残量を算出する。なお、製造ロット識別情報算出部37で残量をもとに部材品の製造ロット識別情報の切替えポイントを算出してもよいし、ユーザが、残量が1からゼロになることで切替えポイントを判断してもよい。
【0032】
データベース蓄積部38では製造ロット識別情報算出部37の情報を組付け部材品実績DB44に格納する。
【0033】
組付け部材品実績DB44には、データベース蓄積部38で蓄積される製造品識別情報ごとの部材品の組付け情報が格納される。工程に関係なくマスタとして一つ存在する。
【0034】
図3は、従来技術である特許文献1と本実施例における、部材品の製造ロット識別情報と製造品識別情報との紐づけを説明する図である。
【0035】
図3において、自動車産業においては製造品識別情報をVINとし、例えば、工程60において、Iで示すVIN001からVIN010と、製造ロット(識別情報)A001とA002の部材品X000001を車両に紐づける場合を想定する。
【0036】
従来技術では、部材品X000001の製造ロットA001とA002の開封時刻と、製造品の工程通過時刻Tを突き合わせ、確実に製造ロットA001が使用された時間帯と、確実に製造ロットA002が使用された時間帯と、製造ロットA001かA002が使用された時刻を切り分ける。すなわち、製造ロットA002が2020/12/01 11:50に開封された場合は独自の計算ロジックより製造ロットA001が確実に車両に組付けられた時間は11:49まで、製造ロットA001もしくはAO02のどちらかが車両に組付けられた時刻は11:50-12:03、製造ロットA002が確実に車両に組付けられた時間は12:04以降と計算された場合、
図3に示す各車両の通過時刻Tを突き合わせると、VIN001からVIN005には製造ロットA001の部材品X000001、VIN006からVIN008には製造ロット識別A001かA002の部材品X000001、VIN009とVIN010には製造ロットA002の部材品X000001が組付けられたことを紐づけることが可能である。しかしながら、A001とA002の使用時刻の明確な切り分けが不可能であった。
【0037】
これに対して、本実施例では、残量検知部35の実績情報から、製造ロット識別情報算出部37での部材品ごとの残量計算をすることで、
図3に示すように、製造ロットA001の部材品X000001が組付けられた製造品と、製造ロットA002の部材品X000001が組付けられた製造品を明確に区別することが可能となる。以下、本実施例の詳細について説明する。
【0038】
図4は、本実施例における、工程ごとに実施される部材品組付け作業の処理フローである。現場である工場において、型式や製造品によってそれぞれ異なる工程で複数の部材品が製造品に組付けられる。作業者は生産ライン稼働開始とともに作業するものとし、作業開始時に工程の部材品棚に設置されている部材品箱と部材品箱の部材品は、部材品箱格納情報取得部33により事前に部材品箱識別情報と製造ロット識別情報とが紐づいているものとする。
【0039】
まず、ステップS41で、製造品識別情報取得部31にて製造品識別情報を取得し、生産ライン上で工程に入る製造品の工程通過情報を取得する。
【0040】
次に、ステップS42で、製造品識別情報取得部31で取得した製造品識別情報をキーに製造品型式情報DB41へ製造品識別情報に紐づく型式情報を抽出する。部材品情報受付部32では情報取得時に自身の工程情報を持っているものとし、製造品型式情報DB41より取得した型式情報をキーに、型式別部材品構成情報DB42をアクセスし、部材品情報を取得する。そして、取得した部材品情報と、自身の工程情報から、自工程で組付けるべき部材品の組付けフラグを0から1に更新する。
【0041】
前記ステップS42の処理と平行してステップS43で、残量検知部35にて部材品棚に設置されている部材品箱識別情報を取得し、作業員が部材品箱から部材品を取り出し組付ける作業から部材品の使用実績情報を取得し、ステップS44で、残量受付部36にて部材品箱格納情報DB43より部材品箱に格納されている部材品の製造ロット識別情報を取得し、取得した情報から部材品箱ごとの部材品の残量を算出し、残量が閾値以下になった場合に、残量閾値フラグを0から1に更新する。そして、ステップS45で、残量が0かどうかを判断する。
【0042】
ステップS45で残量が0の場合は、ステップS43に戻り、新たな部材品箱情報を取得し、以降の処理を繰り返す。なお、現場では作業者は空の部材品箱を部材品棚から取り出し、必要な部材品が格納された部材品箱を部材品棚に設置し、残量検知部35では部材品箱が入れ替えられたことを検知する。一方、空になった部材品箱はその部材品箱識別情報と格納する部材品の製造ロット識別情報を、次に部材品が格納される時に、部材品箱格納情報取得部33にて取得し、部材品箱格納情報蓄積部34により部材品箱格納情報DB43を更新する。
【0043】
ステップS45で残量の計算後に残量が0でない場合は、ステップS46で、製造ロット識別情報算出部37にて、部材品情報受付部32にて算出した組付けフラグと残量受付部36にて算出した残量閾値フラグより製造品への部材品組付け時の部材品残量を計算する。
【0044】
そして、ステップS47で、データベース蓄積部38にて、製造品識別情報、工程情報、工程通過時刻情報、部材品識別情報、製造ロット識別情報と組付数量情報、製造ロット識別情報算出部37にて算出した残量情報を組付け部材品実績DB44に格納する。そして、工程ごとに実施される部材品組付け作業の処理を終了する。
【0045】
部材品トレーサビリティ管理装置10の適用について、自動車産業での具体的な例を用いて以下説明する。例えば、工程60において、製造品識別情報VIN001からVIN010がVIN001から順番に通過する場合を想定する。なお、製造品識別情報取得部31にて取得する工程の製造品通過時刻の実績情報をもとに処理フローは進んでいくので、VIN001から順番に流れてこない場合でも製造品識別情報ごとに処理は実装され、データは蓄積される。
【0046】
図5は、本実施例における
図2に示した製造品識別情報取得部31で取得するVIN001通過時の取得情報である。製造品識別情報取得媒体13は設置された工程アドレス(最左列の工程情報)を持つものとし、製造品識別情報取得部31では、工程情報60と、製造品識別情報VIN001と、VIN001の通過時刻を取得する。
【0047】
図6は、本実施例における、製造品型式情報DB41に格納されているVIN001からVIN010のデータ例である。製造品識別情報に対して「AB」「CD」「EF」などの型式情報を有する。
【0048】
図7は、本実施例における、型式別部材品構成情報DB42に格納されている型式情報「AB」「CD」「EF」ごとの部材品構成情報を示す。型式情報ごとに、取り付ける工程、部材品識別情報、部材品の組付数量情報を有する。
【0049】
図8は、本実施例における、部材品情報受付部32にて
図4の部材品組付け時の処理フローで示したステップS42の組付けフラグを更新する処理テーブルである。
図5の製造品識別情報をキーに
図6の型式情報を取得し、取得した型式情報をキーに
図7の部材品構成情報を抽出し、
図8に示す処理テーブルが作成される。
図8において、製造品識別情報VIN001の工程60で組付けるべき部材品の組付けフラグを0から1に更新する。
【0050】
図9A、9Bは、本実施例における、部材品箱格納情報DB43に格納されている情報の例である。部材品箱識別情報、部材品識別情報、製造ロット識別情報、入数、他にも部材品格納時刻情報などをもつことも可能である。
図9Aは、VIN001が通過した時点(2020/12/1 11:32)の部材品箱格納情報DB43に格納されている部材品箱BOX001からBOX009の格納情報であり、
図4の部材品組付け時の処理フローで説明したように、残量が0になった場合は新たな部材品が格納され、上書きされていく。
図9Bは、工程60でVIN010まで部材品組付けが終了した時点(2020/12/1 12:08)に部材品箱格納情報DBに格納されている部材品箱BOX001からBOX009の格納情報が更新された後のデータ例であり、部材品箱BOX001の部材品X000001の製造ロットA001の次に、2020/12/1 12:10に部材品Y000001の製造ロットB003、BOX002の部材品Y000001の製造ロットB001の次に2020/12/1 12:30部材品Z000001の製造ロットC002、BOX4の部材品W000001の製造ロットD001の次に2020/12/1 12:55に部材品X000001の製造ロットD005が格納された場合のDBである。DB容量があれば製造ロット識別情報の更新履歴を持つことも可能である。
【0051】
図10Aは、本実施例における残量検知部35の処理フローである。残量検知媒体12は、工程ごとに設置され、設置された工程アドレスを持つものとし、残量検知媒体12は、作業員によって部材品の取り出された部材品箱情報の取得、部材品数、取り出した部材品の使用部材品/不良部材品の実績を検知し、残量検知部35へ情報を送る。残量検知部35は工程情報、部材品箱識別情報、使用部材品/不良部材品の実績、他にも作業時刻情報などを持つことも可能である。例えば、残量検知部35ではAI姿勢抽出の活用を想定する。
【0052】
AI姿勢抽出では動画から人物の骨格を検知することができる。残量検知媒体12であるカメラは固定され、部材品棚の各部材品箱の領域、不良品棚の領域、組付け領域も登録しておくものとする。残量検知媒体12の取得情報に基づき残量検知部35にて、人物の骨格の指定部位が動画内の指定領域に入ったことを検知できる。よって、残量検知部35では前記AI姿勢抽出の機能を使用して、取り出した部材品、個数、使用部材品/不良部材品の実績を検知することが可能である。
【0053】
図10Aにおいて、ステップS51で、残量検知部では部材品棚の各部材品箱識別情報を、例えば、バーコードを残量検知媒体12で検知することで取得し、上記した残量検知媒体12の処理により、部材品棚の各部材品箱領域から部材品が取り出されたイベントを検知し、取り出された部材品のカウントを開始する。
【0054】
ステップS52で、取り出された部材品が、不良品棚の領域と組付けのための作業領域のどちらの領域に入ったかの領域判定を行う。そして、部材品が不良品棚領域に入った場合は、ステップS53に移行し、不良数をカウントし、作業領域に部材品が入った場合は、ステップS54に移行し、使用数をカウントする。
【0055】
そして、ステップS55で、部材品箱識別情報と使用実績情報を残量受付部に渡す。例えば、領域判定において、部材品箱BOX001から1つ、BOX002から2つ、BOX003から1つ、部材品を取得し車両に組付ける場合に、BOX002から取り出した部材品に一つ不良品が見つかった場合は、
図10Bに示すような残量検知部取得情報を残量受付部36に渡す。
【0056】
図11は
図10Bに示した残量検知場面の不良品検出における作業場面のイメージ図である。点線で囲われた領域は、残量検知媒体12で検知する部材品箱、不良品棚25、組付け領域を示す。この場合の残量検知部35で取得したデータは
図10Bである。
【0057】
図12Aは、同部材品が部材品棚の複数の部材品箱に格納されている場合の作業場面のイメージ図である。点線で囲われた領域は、残量検知媒体12で検知する部材品箱、不良品棚25、組み付付け領域を示す。例えば、領域判定において、部材品箱BOX004から1つ、BOX005から1つ、部材品を取得し車両に組付ける場合を想定する。残量検知部35で取得したデータを
図12Bに示す。同部材品が部材品棚の複数の部材品箱に格納されている場合でも残量検知媒体12にて部材品が取り出された領域がわかれば、残量受付部にて部材品箱格納情報と突き合わせることで、製造ロット識別情報が判明する。
【0058】
図13A、13Bは、本実施例における残量受付部の残量閾値フラグを計算する処理テーブルである。すなわち、残量受付部36にて
図4の部材品トレーサビリティ管理装置10の部材品組付け時の処理フローに示した手順で残量閾値フラグを計算する処理テーブルである。前述した自動車産業での、工程60において、製造品識別情報VIN001からVIN010に部材品を組付ける場合を想定し、部材品棚には部材品箱BOX001からBOX006が設定されている場合のデータを示す。
図13Aは処理前の残量受付部の処理テーブルであり、
図9に示した部材品箱格納情報DBの部材品情報と、
図10Bに示す残量検知部で取得した部材品箱識別情報と使用実績情報より、部材品箱識別情報をキーに部材品の残量が計算され、
図13Bに示すように処理テーブルが更新される。残量が閾値以下となった場合に、各部材品箱の残量閾値フラグが0から1に更新される。本実施例に示す部材品はすべて残量閾値を5とし、残量が閾値以下となった場合に残量閾値フラグが更新されるように設定されていているとする。
図10Bより使用実績は部材品箱BOX001から使用品が1つ、BOX002から使用品が2つ、不良品が一つ、BOX003から使用品が一つ、となっているので
図13Bの部材品箱BOX001からBOX003の残数は図に示す4、5、8となり、残量閾値以下の部材品箱BOX001とBOX002の残量閾値フラグが1となる。
【0059】
図14は、製造ロット識別情報算出部37にて行う、
図4のステップS46の計算を図に表したものである。前述した例であるVIN001からVIN010までの車両と部材品箱BOX001に格納された製造ロットA001の部材品X000001との紐づけを想定する。
図14に示すように、部材品X000001はVIN001への部材品組付け時は残量が6以上であり、VIN001からVIN010が通過するまでの間に空になり、BOX007に格納された製造ロットA002の部材品X000001に変わるとする。部材品X000001は残量が5の場合に残量閾値フラグが0から1へ更新されるように設定されていて、部材品X000001は部材品箱BOX001にのみ格納されているものとする。
図14には、
図8の部材品情報受付部32にて算出される組付けフラグを上段に、
図13の残量受付部36にて算出される残量閾値フラグを下段に示しており、フラグが上段、下段ともに1の場合に部材品の残量が算出され、残量閾値以下である場合に残数が残量受付部の処理テーブルに記録される。処理テーブルの情報はデータベース蓄積部38より組付け部材品実績DB44に格納される。
図14の場合、VIN009において組付けた部材品X000001は、VIN008が残量1の時に組付けられた部材品だとわかるので、部材品X000001の製造ロットA001とA002の組付け実績の境界はVIN008とVIN009の間である。
【0060】
図15は、工程60におけるVIN001からVIN010の組付け部材品実績DB44に格納されている情報の例を示す。製造品識別情報、工程情報、部材品識別情報、組付け数量、製造ロット識別情報、残量、工程通過時刻、その他にも作業時刻などを有する。残量情報は
図14で示した製造ロット識別情報算出部37にて記録された残量情報が入力され、残量情報がない場合はNULLのまま渡される。なお、残量情報は、見やすさの観点から残量閾値5以下の場合で製造ロット識別情報の切替え前後の場合のみ表示しているが、常に残量表示をしてもよい。
【0061】
図15に示した例では、工程60でVIN001からVIN010まで部材品組付けがされた際に、製造ロット識別情報が変更された部材品は、X000001、Y000001、W000001であることを示している。
【0062】
例えば、工程60の部材品X000001の製造ロットA001がVIN008組付け時に残量1になった場合、組付け部材品実績DBより、次のVIN009組付け時には製造ロットA002が使用されていることから、部材品X000001の製造ロットA001からA002に切替わったタイミングはVIN008とVIN009の間である。
【0063】
例えば、工程60の部材品Y000001はVIN008に対して組付け数量2となっているが、製造ロットB001がVIN008に一つ組付けた時点で残量1の部材品を使用していることが分かる。その下のレコードを参照すると、もう1つの部材品は組付け部材品実績DBより、次の製造ロットB002にいれかえられた後の部材品を使用しており、入数はMAXなので残量がNULLで入力されている。このことから部材品Y000001の製造ロットB001からB002に切替わったタイミングはVIN008への組付け中である。
【0064】
また、工程60の部材品W00001においては同部材品が複数部材品箱に格納されている部材品である。
図15より、W000001はD001、D002、D003の三か所に格納されていることがわかる。D001が残量3になったのはVIN002の組付け時だが、その後通過したVIN004とVIN005にはD002からW000001の部材品が使用され、D001の残量1が使用されたのはVIN006なので、組付け部材品実績DBより、BOX4の部材品D001の次のD004の組付け開始は、VIN007からであり、部材品W000001の製造ロットD001からD004に切替わったタイミングはVIN006とVIN007の間である。
【0065】
図16は、本実施例における画面表示部14の製造ロット検索画面にて部材品識別情報と製造ロット識別情報、工程情報を条件に検索する場合の画面例である。必須条件としては、部材品識別情報か製造ロット識別情報のどちらかが指定されていれば検索可能である。また検索条件項目には、最低限、部材品識別情報、製造ロット識別情報の他に、例えば工程情報などを指定することができる。検索条件項目の追加も可能であり、作業時刻などの情報を追加して検索することも可能とする。また、図中の画面の右上のソート機能では、作業時刻を選択し、ソートが行われて表示されていることを示しているが、他の項目、例えば製造ロット識別情報を選択してソートすることも可能である。さらに、製造品識別情報をクリックすると、リンク機能によって
図17の車両検索画面で製造品識別情報をキ―にした情報を参照することも可能である。
【0066】
図16は、検索条件は部材品識別情報がX000001、製造ロット識別情報がA001/A002、工程情報は60のものを検索対象として検索をした結果の画面が、画面左側に出力された状況を示している。出力されるデータ項目は基本的には組付け部材品実績DBのデータを想定している。例えば、工程通過時刻も出力可能である。
【0067】
工程60の部材品X000001における残量閾値に基づき残量がカウントダウンされたタイミングには、例えばVIN001とVIN002の間の点線のように、区切られて表示されるものとする。部材品の製造ロット識別情報の切替え時点を製造ロット識別情報の切替えポイントと定義し、工程60の部材品X000001における製造ロット識別情報の切替えポイントにおいては、例えばVIN008とVIN009の間の太い線のように、分かりやすく区切られて表示されるものとする。これにより管理者は、製造ロット識別情報の切替えポイントを容易に視認できることができ、管理の効率化につながる。
【0068】
図17に画面表示部の車両検索画面にて製造品識別情報と作業時刻をキーにした場合の例を示す。
図17において、検索条件項目には、製造品識別情報、作業開始/終了時刻を指定することができる。検索条件項目の追加も可能であり、部材品識別情報や製造ロット識別情報などの情報を追加して検索することも可能とする。また、図中の画面の右上のソート機能では、製造品識別情報を選択し、ソートが行われて表示されていることを示しているが、他の項目、例えば作業時刻を選択してソートすることも可能である。さらに、製造ロット識別情報をクリックすると、リンク機能によって
図16の製造ロット検索画面でロット品識別情報をキ―にした情報を参照することも可能である。
【0069】
図17は、検索条件は製造品識別情報がVIN001/VIN002、作業開始時刻が2020/12/1 9:00、作業終了時刻が2020/12/1 12:00であるものを検索対象として検索を実施し、結果が、画面左側に出力された状況を示している。出力されるデータ項目は基本的には組付け部材品実績DBのデータを想定しているが、例えば、工程通過時刻も出力可能である。
【0070】
工程情報は指定していないので全工程における上記に示した条件に当てはまるデータが出力される。VIN001の工程60のY000001では部材品箱の残量が閾値以下である2の時に格納されたデータだとわかるように、例えば太線や色の異なるレコードなどで強調される。これにより管理者は、製造ロット識別情報の切替えポイント直前かどうかを容易に視認できることができ、製造品識別情報ごとの構成部材品の製造ロット管理の効率化につながる。
【0071】
このように、本実施例のうち代表的な製造ロット識別情報算出機能では、部材品箱格納情報DBと使用部材品/不良部材品を検知できる残量検知部の部材品箱識別情報と使用実績情報から残量受付部にて算出される残量閾値フラグと、製造品識別情報取得部と製造品型式情報DBと型式別部材品構成情報DBから各工程で組付ける部材品識別情報により部材品情報受付部にて算出される組付けフラグにて、製造品識別情報ごとに組付けられた部材品と部材品の製造ロット識別情報の紐づけと、部材品ごとにきめられた任意の残量に達した部材品については、紐づけ時の部材品残量を製造ロット識別情報算出部にて算出する。これにより、製造品に対する部材品の使用部材品/不良部材品の実績に基づく部材品組付けが可能となることで製造品に取り付けられた部材品の製造ロット識別情報の紐づけ精度が向上し、製造ラインのトレーサビリティ技術の精度が向上する。
【0072】
以上のように、本実施例によれば、各工程の部材品箱ごとの部材品残量に基づいて製造ロット識別情報を記録しているため、
図3に示した従来の時刻突き合わせだけでは製造ロット識別情報の特定が難しかった場合でも特定が容易になる。これにより、部材品トレーサビリティの効率向上に寄与できる。
【0073】
なお、トレーサビリティデータの活用形態には、トレースフォワードとトレースバックという二つの考え方がある。上記、部材品トレーサビリティの効率向上により、これらの活用形態の促進にもつながる。すなわち、トレースバックでは、本実施例を導入することで不具合の起きた製造品から原因となる部材品の製造ロットの特定を容易に行うことが可能となり、リコール発生時の調査期間および調査費用の削減が見込める。また、トレースフォワードでは、本実施例を導入することで部材品の製造ロットに紐づく製造品の特定を明確な範囲で行うことができ、さらに品質の作り込みにより作業員のモチベーションアップ、および技能の向上を引き出すとともに、製造過程が明確になることでモノとしての品質証明、モノづくりの信頼性が高まり、メーカの企業価値向上に貢献することができる。
【0074】
以上実施例について説明したが、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0075】
10:部材品トレーサビリティ管理装置、11:コード情報読み取り媒体、12:残量検知媒体、13:製造品識別情報取得媒体、14:画面表示部、21:格納ロット、22:部材品、23:部材品箱、24:部材品棚、25:不良品棚、31:製造品識別情報取得部、32:部材品情報受付部、33:部材品箱格納情報取得部、34:部材品箱格納情報蓄積部、35:残量検知部、36:残量受付部、37:製造ロット識別情報算出部、38:データベース蓄積部、41:製造品型式情報DB、42:型式別部材品構成情報DB、43:部材品箱格納情報DB、44:組付け部材品実績DB、80:製造品