(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-30
(45)【発行日】2025-05-12
(54)【発明の名称】光源装置、内視鏡システム及び光量制御方法
(51)【国際特許分類】
A61B 1/06 20060101AFI20250501BHJP
【FI】
A61B1/06 612
(21)【出願番号】P 2024505756
(86)(22)【出願日】2022-03-10
(86)【国際出願番号】 JP2022010578
(87)【国際公開番号】W WO2023170861
(87)【国際公開日】2023-09-14
【審査請求日】2024-06-12
(73)【特許権者】
【識別番号】304050923
【氏名又は名称】オリンパスメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004185
【氏名又は名称】インフォート弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】網野 賢太
(72)【発明者】
【氏名】浅岡 延好
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 貴之
【審査官】高松 大
(56)【参考文献】
【文献】特開平3-98008(JP,A)
【文献】特開2020-146407(JP,A)
【文献】国際公開第2016/056459(WO,A1)
【文献】特開2016-144697(JP,A)
【文献】特開2013-13566(JP,A)
【文献】特開2008-259722(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 1/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1光源と、
光センサと、
前記光センサが受光した光の光量に関する第1情報を取得する光量情報取得部と、
光学部材と、
前記光学部材を第1位置から第2位置まで移動させて、前記第1光源から発せられた光の光路上に対して前記光学部材を挿抜する光学部材移動部と、
前記第1位置から前記第2位置へ移動中の前記光学部材の位置に関する第2情報を取得する位置情報取得部と、
前記第1情報と、前記第2情報と、に基づいて、前記第1光源を制御するための制御情報を出力する制御部と、
を備えることを特徴とする光源装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記光センサが受光した光の光量のうち前記光学部材の反射光による影響を除去するための補正値を前記第2情報に基づいて補正することによって得られた第3情報と、前記第1情報と、に基づいて、前記第1光源が出射した光の第1光量を求め、求めた前記第1光量に基づいて、前記第1光源を制御するための制御情報を出力する、
ことを特徴とする請求項1に記載の光源装置。
【請求項3】
前記第2情報は、前記光学部材の前記光路上への挿入度合いを示す、
ことを特徴とする請求項1に記載の光源装置。
【請求項4】
前記第2情報と前記第3情報との対応関係を示す情報を記憶するメモリを備える
ことを特徴とする請求項2に記載の光源装置。
【請求項5】
前記メモリは、前記第1光源に対する電力一定の状態で、前記光学部材が前記第1位置に位置する場合の前記第1情報と、前記光学部材が前記第1位置から前記第2位置に位置する場合の前記第1情報との比較に基づいて求められた前記第3情報を記憶する
ことを特徴とする請求項4に記載の光源装置。
【請求項6】
第2光源を更に備える
ことを特徴とする請求項1に記載の光源装置。
【請求項7】
前記第2情報と
、前記
光センサが受光した光の光量のうち前記光学部材の反射光による影響を除去するための補正値を前記第2情報に基づいて補正することによって得られた第3情報との対応関係を示す情報を、前記第1光源及び前記第2光源について個別に記憶するメモリを備える
ことを特徴とする請求項6に記載の光源装置。
【請求項8】
前記光学部材は、回転枠部材により支持される
ことを特徴とする請求項1に記載の光源装置。
【請求項9】
前記位置情報取得部は、前記回転枠部材の回転角に基づいて前記第2情報を取得する
ことを特徴とする請求項8に記載の光源装置。
【請求項10】
前記光学部材は、光学フィルタである
ことを特徴とする請求項1に記載の光源装置。
【請求項11】
前記制御部は、前記位置情報取得部が取得した第2情報が与えられ、前記メモリを参照することで、前記第1光源及び前記第2光源を独立して制御する
ことを特徴とする請求項7に記載の光源装置。
【請求項12】
前記制御部は、前記光学部材が前記第2位置に到達するまでに、前記第1光源及び第2光源の制御を完了する
ことを特徴とする請求項11に記載の光源装置。
【請求項13】
前記制御部は、前記光学部材が前記第1位置から前記第2位置へ移動中において取得された前記第3情報に対する統計的処理により得られた結果に基づいて、前記第1及び第2光源を制御する
ことを特徴とする請求項11に記載の光源装置。
【請求項14】
前記制御部は、前記統計的処理として、相加平均、相乗平均、最頻値又は中央値を採用する
ことを特徴とする請求項13に記載の光源装置。
【請求項15】
前記制御部は、前記光学部材が前記第1位置から前記第2位置へ移動中において取得された前記第3情報に基づく前記第1及び第2光源の制御中において、前記光学部材が前記第2位置に位置する状態で新たに前記第3情報を再取得し、以後再取得した第3情報に基づいて、前記第1及び第2光源を制御する
ことを特徴とする請求項13に記載の光源装置。
【請求項16】
光源と、
光センサと、
前記光センサが受光した光の光量に関する第1情報を取得する光量情報取得部と、
光学部材と、
前記光学部材を第1特性から第2特性まで変化させて、前記光源から発せられた光を制限する光学部材駆動回路と、
前記第1特性から前記第2特性へ前記光学部材の特性変化中における特性変化の開始からの時間に関する第2情報を取得する時間情報取得部と、
前記第1情報と、前記第2情報と、に基づいて、前記光源を制御するための制御情報を出力する制御部と、
を備えることを特徴とする光源装置。
【請求項17】
内視鏡と、
第1光源と、
光センサと、
前記光センサが受光した光の光量に関する第1情報を取得する光量情報取得部と、
光学部材と、
前記光学部材を第1位置から第2位置まで移動させて、前記第1光源から発せられた光の光路上に対して前記光学部材を挿抜する光学部材移動部と、
前記第1位置から前記第2位置へ移動中の前記光学部材の位置に関する第2情報を取得する位置情報取得部と、
前記第1情報と、前記第2情報と、に基づいて、前記第1光源を制御するための制御情報を出力する制御部と、
を具備することを特徴とする内視鏡システム。
【請求項18】
プロセッサにより光源の光量を制御する光量制御方法であって、
光源が、光を発し、
光センサが、光を受光し、
前記プロセッサが、
前記光センサが受光した光の光量に関する第1情報を取得し、
前記光源から発せられた光の光路上を挿抜される光学部材の位置
であって、第1位置から第2位置へ移動中の前記光学部材の位置に関する第2情報を取得し、
前記第1情報と、前記第2情報と、に基づいて、前記光源を制御するための制御情報を出力する、
ことを特徴とする光量制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の半導体発光素子からの光を適切に制御する光源装置、内視鏡システム及び光量制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、体腔内等へ細長の内視鏡を挿入して被検部位の観察や各種処置を行う内視鏡を備えた内視鏡装置が広く用いられている。このような内視鏡装置においては、体腔内の撮影を行うために光源装置が採用される。近年、内視鏡装置では、光源としてLED等の半導体発光素子を採用した光源装置が用いられることがある。
【0003】
このような光源装置は、それぞれが異なる波長帯域の光を発光する複数の半導体発光素子を備え、NBI(登録商標)(狭帯域光観察)やIR(赤外光観察)等の観察モードに応じて、それらの複数色の光を適宜合波した合波光を出射するものがある。内視鏡装置において良好な観察及び内視鏡画像を得るために、光源装置は、複数色の光の合波光を出射する際に出射光のカラーバランス(発光バランス)を一定に保つように制御される。光源装置においては、各LEDに隣接して光センサを配置し、出射光の光量を変化させる場合、光センサの検知結果を用いて各LEDからの出射光の光量を変化させて所定のカラーバランスとするフィードバック制御を採用することがある。
【0004】
例えば、日本国特許第6072369号においては、光量が所定の値以下になると、光センサでは明るさを正確に検知することができなくなることを考慮して、光量が低い場合、光量を一旦上げた後光量の計測を行う技術が開示されている。
【0005】
ところで、光センサには、光源からの光だけでなく、各種光学素子、例えば光学フィルタにより反射された光も入射する。良好なカラーバランスを得るためには、このような反射光も考慮した光量調整が必要である。日本国特許第5393935号公報には、光源から発せられる光量を検知する際に、漏れ光だけでなく、光学系から反射される光を考慮する観点が開示されている。
【0006】
しかしながら、内視鏡装置の観察モードに応じて光学フィルタが移動し、光学フィルタの反射光の光センサへの入射光量が変化することがある。観察モードに適した光量調整を行うためには、光学フィルタの移動が終了した後に計測した光センサの光量検出値を用いた制御を行う必要があり、適正な光量を得るまでに比較的長い時間を要するという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特許第6072369号公報
【文献】特許第5393935号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、光量調整に要する時間を短縮することができる光源装置、内視鏡システム及び光量制御方法を提供することを目的とする。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様による光源装置は、第1光源と、光センサと、前記光センサが受光した光の光量に関する第1情報を取得する光量情報取得部と、光学部材と、前記光学部材を第1位置から第2位置まで移動させて、前記第1光源から発せられた光の光路上に対して前記光学部材を挿抜する光学部材移動部と、前記第1位置から前記第2位置へ移動中の前記光学部材の位置に関する第2情報を取得する位置情報取得部と、前記第1情報と、前記第2情報と、に基づいて、前記第1光源を制御するための制御情報を出力する制御部と、を備える。
【0010】
また、本発明の他の態様による光源装置は、光源と、光センサと、前記光センサが受光した光の光量に関する第1情報を取得する光量情報取得部と、光学部材と、前記光学部材を第1特性から第2特性まで変化させて、前記光源から発せられた光を制限する光学部材駆動回路と、前記第1特性から前記第2特性へ前記光学部材の特性変化中における特性変化の開始からの時間に関する第2情報を取得する時間情報取得部と、前記第1情報と、前記第2情報と、に基づいて、前記光源を制御するための制御情報を出力する制御部と、を備える。
【0011】
本発明の一態様による内視鏡システムは、内視鏡と、第1光源と、光センサと、前記光センサが受光した光の光量に関する第1情報を取得する光量情報取得部と、光学部材と、前記光学部材を第1位置から第2位置まで移動させて、前記第1光源から発せられた光の光路上に対して前記光学部材を挿抜する光学部材移動部と、前記第1位置から前記第2位置へ移動中の前記光学部材の位置に関する第2情報を取得する位置情報取得部と、前記第1情報と、前記第2情報と、に基づいて、前記第1光源を制御するための制御情報を出力する制御部と、を具備する。
【0012】
本発明の一態様による光量制御方法は、プロセッサにより光源の光量を制御する光量制御方法であって、光源が、光を発し、光センサが、光を受光し、前記プロセッサが、前記光センサが受光した光の光量に関する第1情報を取得し、前記光源から発せられた光の光路上を挿抜される光学部材の位置であって、第1位置から第2位置へ移動中の前記光学部材の位置に関する第2情報を取得し、前記第1情報と、前記第2情報と、に基づいて、前記光源を制御するための制御情報を出力する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、光量調整に要する時間を短縮することができるという効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る光源装置を示す構成図である。
【
図2】複数の光源を有する光源装置の例を示す構成図である。
【
図3】本実施形態に係る光源装置から照明光が供給される内視鏡及び内視鏡装置の例を示す概略構成図である。
【
図4】本実施形態に係る光源装置から照明光が供給される内視鏡及び内視鏡装置の例を示す概略構成図である。
【
図5】光学フィルタ5の構成の一例を示す説明図である。
【
図6】横軸に時間をとり、観察モードの切り替え時における光源2Aからの光束に対する光学フィルタ5(フィルタ部5b)の位置関係の変化と、フィルタ反射光との関係を示す説明図である。
【
図7】横軸にフィルタ移動量をとり縦軸に光センサ2Sの出力に基づく光量検出値をとって、フィルタ移動に伴う光量検出値の変化を示すグラフである。
【
図8】観察モードの変更の際に光量調整を1回行う場合の例を示すフローチャートである。
【
図9】観察モード変更時の光量調整を示すタイムチャートである。
【
図10】観察モードの変更の際に光量調整を複数回行う場合の例を示すフローチャートである。
【
図11】観察モード変更時の光量調整を示すタイムチャートである。
【
図12】本発明の第2の実施形態を示す図表である。
【
図16】本発明の第3の実施形態を示す構成図である。
【
図17】第3の実施形態においてメモリ6に記憶されている光量補正値を説明する図表である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0016】
(第1の実施形態)
図1は本発明の第1の実施形態に係る光源装置を示す構成図である。また、
図2は複数の光源を有する光源装置の例を示す構成図である。
図3及び
図4は本実施形態に係る光源装置から照明光が供給される内視鏡と内視鏡システムの例を示す概略構成図である。なお、以下の説明において、実施形態に基づく図面は、模式的なものであり、構成要素の長さと幅との関係(寸法関係)、夫々の部分の長さの比率等は実際のものとは異なることに留意すべきであり、複数の図面の間においても、寸法関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。また一部の構成要素の図示を省略する場合がある。
【0017】
本実施形態は、観察モードの切り替え時の光学フィルタの移動中において計測した光源の光量を、移動量に応じて補正することにより、移動途中において光量を正確に求めることを可能にし、光量調整に要する時間を短縮するものである。
【0018】
先ず、
図3及び
図4を参照して、本実施形態に係る光源装置から照明光が供給される内視鏡及び内視鏡システムについて説明する。
【0019】
図3の内視鏡システム20Aは、軟性内視鏡21と、照明光を出力する光源装置10と、撮像処理等を行う画像処理装置30と、内視鏡画像を表示するモニタ35とを含む。
【0020】
内視鏡21は、挿入部22と操作部23とユニバーサルコード24とスコープコネクタ25とを含む。被検体内に挿入される挿入部22は、先端部21aと湾曲部21bと細長き可撓部21cとからなる。複数の湾曲駒からなる湾曲部21bは、操作部23の湾曲操作に応じて先端部21aの向きを変える。可撓部21cは、可撓性部材により形成されている。挿入部22の基端は、操作部23に連設されている。
【0021】
操作部23は、術者が把持する把持部を構成すると共に、湾曲部21bを操作する湾曲操作ノブ23a等が配設されている。操作部23にはユニバーサルコード24が接続されている。ユニバーサルコード24の基端側には、スコープコネクタ25が配設されている。スコープコネクタ25には、画像処理装置30と接続される電気コネクタ25aと、光源装置10と接続される受光ロッド25bと、が設けられている。
【0022】
光源装置10からの照明光は、受光ロッド25bからユニバーサルコード24及び挿入部22内に挿通されたライトガイドを経由して、挿入部22の先端部21aに導かれるようになっている。先端部21aには図示しないCMOSセンサ等の撮像素子を備えた撮像装置が配設されている。照明光は、先端部21aから被写体に照射され、被写体からの反射光が撮像装置の撮像面に結像する。撮像装置は、被写体光学像に基づく撮像信号を生成する。この撮像信号は、挿入部22、ユニバーサルコード24及び電気コネクタ25aを経由して、画像処理装置30内に供給される。画像処理装置30は、受信した撮像信号に対して所定の画像信号処理を施して映像信号を生成する。画像処理装置30は、生成した映像信号をモニタ35に与える。これにより、モニタ35の表示画面上に内視鏡画像が表示される。
【0023】
図4の内視鏡システム20Bは、硬性内視鏡26と、光源装置10と画像処理装置30とモニタ35とを含む。硬性内視鏡26は硬質の挿入部27を有し、挿入部27の基端側には接眼部28が設けられる。挿入部27内には被写体像を伝送する図示しないリレーレンズ等によって構成される観察光学系や図示しないライトガイド等によって構成される照明光学系が設けられている。接眼部28にはカメラ29が着脱自在に配設される。
【0024】
光源装置10は、ライトガイドケーブル27aを介して内視鏡27に照明光を供給する。この照明光が被写体に照射され、被写体からの反射光が被写体光学像としてカメラ29の撮像素子の結像面に結像する。カメラ29は、撮像ケーブル29aを介して被写体光学像に基づく撮像信号を画像処理装置30に供給する。画像処理装置30は、受信した撮像信号に対して所定の画像信号処理を施して映像信号を生成する。画像処理装置30は、生成した映像信号をモニタ35に与えて、モニタ35の表示画面上に内視鏡画像を表示する。
【0025】
図1において、光源装置10は、制御回路1、光源2A、光源駆動部3、光センサ2S及びメモリ6を備える。制御部としての制御回路1は、光源装置10の全体を制御する。制御回路1は、CPU(Central Processing Unit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等を用いたプロセッサによって構成されていてもよい。制御回路1は、図示しないメモリに記憶されたプログラムに従って動作して各部を制御するものであってもよいし、ハードウェアの電子回路で機能の一部又は全部を実現するものであってもよい。
【0026】
光源駆動部3は、制御回路1中の光源制御部1aに制御されて、光源2Aの発光を制御する。光源2Aは、光源駆動部3に駆動されて発光する。光源2Aとしては、LED(Light Emitting Diode)、LD(Laser Diode)、有機EL(Electro Luminescence)等の各種発光素子を採用することができる。また、光源2Aとして複数種類の発光素子を混在させて用いてもよい。光源2Aの発光量は、光源駆動部3によって制御される。光源2Aからの光は、図示しないレンズ等を経由して出射される。
【0027】
図1においては、光源2Aからの出射光の光束(太線)上に、光学部材である光学フィルタ5が配設されている。光学フィルタ5は、例えば内視鏡装置による通常光観察用のフィルタ部5aとNBI(狭帯域光観察)やIR(赤外光観察)等の特殊光観察用のフィルタ部5bとを備える。光学フィルタ5は、駆動回路7によって駆動されて、光束上にフィルタ部5aを介在させるか又はフィルタ部5bを介在させるように移動自在に配設される。フィルタ部5aは、例えば、光源2Aからの白色光をそのまま通過させる開孔により構成されていてもよい。また、フィルタ部5bは所定の色光の成分を減衰させるフィルタを有していてもよい。なお、光源2Aからの光束の径はフィルタ部5a,5bの径よりも小さい。
【0028】
図5は光学フィルタ5の構成の一例を示す説明図である。
図5の左側は光束の向きに平行な方向から見た光学フィルタ5の平面形状を示しており、
図5の右側は光束の向きに直交する方向から見た光学フィルタ5の側面形状を示している。光学フィルタ5は、光学素子保持部材である円板形状の回転フィルタ枠5cを有する。回転フィルタ枠5cには、例えば回転フィルタ枠5cに設けた開孔により形成されるフィルタ部5aと、特殊光観察用に所定の波長帯域の透過を制限(吸収)するフィルタにより形成されるフィルタ部5bとを有する。
【0029】
回転フィルタ枠5cは、中心がステッピングモータ5dの回転軸に取り付けられて、ステッピングモータ5dにより光束の向きに直交する面内で回転自在である。光学部材移動部としての駆動回路7は、制御回路1に制御されて、ステッピングモータ5dを駆動することで、回転フィルタ枠5cを回転させるものであってもよい。回転フィルタ枠5cの回転によって、光束上にフィルタ部5aが介在したり、フィルタ部5bが介在したりする。
【0030】
なお、
図5では、回転フィルタ枠5cが180度回転することによって、フィルタ部5aとフィルタ部5bとのいずれが光束上に介在するかが切り替わるように構成されているが、フィルタ部5aとフィルタ部5bとの配置を適宜変更することで、フィルタ部5aとフィルタ部5bとを光束上で切り替える回転フィルタ枠5cの回転角度は適宜設定可能である。
【0031】
また、
図5は光学フィルタ5を円板形状により構成し、回転フィルタ枠5cを回転させることで、フィルタ部5a,5bを移動させる例を示したが、光学フィルタ5そのものを光束に対して移動させることで、光束上にフィルタ部5a又は5bを介在させるようになっていてもよい。また、
図1及び
図2では、光学フィルタ5を移動させて光束上にフィルタ部5aを介在させるか又はフィルタ部5bを介在させる例を示したが、ミラー等を用いて光束の光路を変化させて光束がフィルタ部5a又は5bを通過するようにしてもよい。
【0032】
光源2Aの近傍には光センサ2Sが設けられる。光センサ2Sは、その入射光の光量を検出し、検出出力を制御回路1の光量取得部1bに出力する。光量情報取得部としての光量取得部1bは、光センサ2Sの検出出力に基づいて光源2Aが発生した光量値を検出する。制御回路1の光源制御部1aは、光量取得部1bによる光量の検出値に基づいて光源駆動部3を制御することで、光源2Aから所望の光量の光が発生するように制御を行う。
【0033】
図2は光源2Aが複数の場合に対応する。なお、
図2では、5色のLEDを採用する例を示しているが、4色以下のLEDを採用してもよく、6色以上のLEDを採用してもよい。
【0034】
図2において、光源装置10は、
図1と同様の制御回路1を有する。また、光源装置10は、光学系2内に、
図1の光源2Aに対応するバイオレットLED(以下、V-LEDという)2LV、ブルーLED(以下、B-LEDという)2LB、グリーンLED(以下、G-LEDという)2LG、アンバーLED(以下、A-LEDという)2LA、レッドLED(以下、R-LEDという)2LR(以下、これらのLEDを区別する必要がない場合には代表してLED2Lという)を有する。V-LED2LVはバイオレット光を発生し、B-LED2LBはブルー光を発生し、G-LED2LGはグリーン光を発生し、A-LED2LAはアンバー光を発生し、R-LED2LRはレッド光を発生する。
【0035】
光学系2内には、LED2LBの出射光の光路上にレンズ2ZB及びダイクロイックフィルタ2MBが配設され、LED2LGの出射光の光路上にレンズ2ZG及びダイクロイックフィルタ2MGが配設され、LED2LAの出射光の光路上にレンズ2ZA及びダイクロイックフィルタ2MAが配設され、LED2LRの出射光の光路上にレンズ2ZR及びダイクロイックフィルタ2MRが配設される。LED2LVの出射光の光路上には、レンズ2ZV及びダイクロイックフィルタ2MB,2MG,2MA,2MRが配設される。
【0036】
レンズ2ZV,2ZB,2ZG,2ZA,2ZR(以下、これらのレンズを区別する必要がない場合には代表してレンズ2Zという)は、それぞれV-LED2LV、B-LED2LB、G-LED2LG、A-LED2LA及びR-LED2LRの出射光を略平行光に変換して出射する。
【0037】
ダイクロイックフィルタ2MBは、レンズ2ZVの出射光を透過させると共に、レンズ2ZBの出射光を反射させる。ダイクロイックフィルタ2MGは、ダイクロイックフィルタ2MBからの光を透過させると共に、レンズ2ZGの出射光を反射させる。ダイクロイックフィルタ2MAは、ダイクロイックフィルタ2MGからの光を透過させると共に、レンズ2ZAの出射光を反射させる。ダイクロイックフィルタ2MRは、ダイクロイックフィルタ2MAからの光を透過させると共に、レンズ2ZRの出射光を反射させる。
【0038】
こうして、各LED2Lの出力が、ダイクロイックフィルタ2MB,2MG,2MA,2MR(以下、これらのダイクロイックフィルタを区別する必要がない場合には代表してダイクロイックフィルタ2Mという)によって合成(合波)される。ダイクロイックフィルタ2MRからの合成光は、光学フィルタ5を経由してレンズ2LZを介して出射される。レンズ2LZからの合成光が照明光として軟性内視鏡21や硬性内視鏡26等に供給される。
【0039】
なお、
図2では、駆動回路7が制御回路1に制御されて、ダイクロイックフィルタ2MRの出射光の光路上に光学フィルタ5を挿抜させることにより、フィルタ部5bがダイクロイックフィルタ2MRの出射光の光束上に介在するか否かが切り替えられる例を示している。
【0040】
光源装置10には、
図1の光源駆動部3に対応するバイオレットドライバ(以下、Vドライバという)3DV、ブルードライバ(以下、Bドライバという)3DB、グリーンドライバ(以下、Gドライバという)3DG、アンバードライバ(以下、Aドライバという)3DA、レッドドライバ(以下、Rドライバという)3DR(以下、これらのドライバを区別する必要がない場合には代表してドライバ3Dという)を備える。Vドライバ3DVはV-LED2LVを駆動し、Bドライバ3DBはB-LED2LBを駆動し、Gドライバ3DGはG-LED2LGを駆動し、Aドライバ3DAはA-LED2LAを駆動し、Rドライバ3DRはR-LED2LRを駆動する。例えば、各ドライバ3Dは、各LED2Lに供給する電流量を変化させる電流駆動や、駆動パルスのパルス幅を変化させるPWM駆動によって、各LED2Lの発光量を制御してもよい。
【0041】
光学系2内に構成された各LED2Lの近傍には、それぞれ
図1の光センサ2Sに対応する光センサ2SEV,2SEB,2SEG,2SEA,2SER(以下、これらの光センサを区別する必要がない場合には代表して光センサ2SEという)が各LED2Lの出射光の光路からずれた位置に設けられる。各LED2Lと対応するレンズ2Zとの間に図示しないビームスプリッタを設けて、対応する光センサ2SEに各LED2Lからの光を入射させる構成でもよい。光センサ2SEV,2SEB,2SEG,2SEA,2SERは、
図2の矢印に示すように、それぞれ主にV-LED2LV,B-LED2LB,G-LED2LG,A-LED2LA,R-LED2LRからの照明光の光量を検出し、検出出力を光量検出回路4に出力する。
【0042】
光量検出回路4は、
図1の光量取得部1bに対応しており、光センサ2SEの検出出力に基づいて、各LED2Lが発生した光の光量値を検出する。光量検出回路4は、各LED2Lが発生した光の光量検出値を制御回路1に出力する。制御回路1は、光量検出回路4の出力に基づいて、各LED2Lの光量を個別に制御する。これにより、レンズ2LZからは所望の光量で所望のカラーバランスの照明光が出射される。
【0043】
即ち、
図2の光源装置10においては、光量調整は、各LED2Lの出射光量を調整することで行われる。この光量調整により、レンズ2LZからの合成光の光量が調整されると共に、各LED2Lの発光量の比(光量比)を調整するカラーバランス調整が行われる。制御回路1は、例えば、内視鏡システムからの明るさ制御情報に基づいて、最適なカラーバランスが得られるように、各LED2Lの発光量の比(光量比)を維持しながら、各LED2Lの光量を制御する。例えば、制御回路1は、内視鏡システムからの明るさ制御情報に応じて設定すべきG-LED2LGの光量値に対応する調光情報を求め、他のV-LED2LV、B-LED2LB、A-LED2LA及びR-LED2LRについては、G-LED2LGの光量値に応じて、所定の光量比となるように調光情報を求める。
【0044】
(光学フィルタによる反射光)
ところで、
図1及び
図2において、光センサ2S又は各光センサ2SEには光源2A又は各LED2Lが発生した光の漏れ光だけでなく、光学フィルタ5の反射光も入射する。即ち、光センサ2Sには、光源2Aからの光が光学フィルタ5において反射して得られる反射光が入射し、各光センサ2SEには、各LED2Lからの光が光学フィルタ5において反射して得られる反射光(以下、光学フィルタ5の反射光をフィルタ反射光という)が入射する。
【0045】
以下、説明を簡略化するために、
図1の単光源を例に説明する。光源2Aからの光の光束に対して、光学フィルタ5のフィルタ部5a,5bがいずれの位置に位置するかによって、フィルタ反射光の光量は変化する。例えば、観察モードの変更により、フィルタ部5aが光束上に存在する状態とフィルタ部5bが光束上に存在する状態とが切り替わる場合には、光センサ2Sに入射するフィルタ反射光の光量は異なってしまう。このため、上述したように、従来、光源2Aの光量制御を正確に行うためには、観察モードの変更に伴う光学フィルタ5の移動が完了するまで、光量制御を実施することができないという問題があった。
【0046】
そこで、本実施形態においては、光学フィルタ5の移動中においても、光源2Aの出射光の光量を正確に検出可能にすることにより、光量調整に要する時間を短縮して、観察モード切り替え直後から良好な観察画像(内視鏡画像)を得ることを可能にする。
【0047】
図6は横軸に時間をとり、観察モードの切り替え時における光源2Aからの光束に対する光学フィルタ5(フィルタ部5b)の位置関係の変化と、フィルタ反射光との関係を示す説明図である。また、
図7は横軸にフィルタ移動量をとり縦軸に光センサ2Sの出力に基づく光量検出値をとって、フィルタ移動に伴う光量検出値の変化を示すグラフである。
【0048】
図6の矢印はフィルタ部5bによって遮られることなく進む光束を示している。
図6では、時刻t0~t4の間に光学フィルタ5が移動して、フィルタ部5bが次第に光束上に介在する様子を示している。
図6のパーセントは、光束がフィルタ部5bによって遮られる面積の割合(以下、反射面積比という)、即ち、フィルタ部5bの光束上への挿入度合いを示している。
図6の時刻t0における反射面積比0%の状態は、フィルタ部5bが光束上に介在していない状態を示しており、時刻t4の反射面積比100%は光束の全域にフィルタ部5bが介在している状態を示している。同様に、時刻t1~t3の反射面積比25%、50%及び75%は、それぞれ光束の25%、50%、75%にフィルタ部5bが介在している状態を示している。
【0049】
フィルタ部5bは、光を吸収し、光の透過を制限する。透過が制限された光が反射してフィルタ反射光となる。即ち、時刻t0ではフィルタ反射光は存在しない。時刻t4におけるフィルタ反射光の光量を100%とすると、時刻t1~t3におけるフィルタ反射光の光量は、おおよそ25%、50%、75%であるものと考えられる。
【0050】
フィルタ部5bの反射面積比は、光束の何%がフィルタ部5bにより反射されているかを示す値であり、この反射面積比は、光学フィルタ5の位置によって一義的に決まる。そこで、反射面積比に対応する光学フィルタ5の位置情報、即ち、フィルタ部5bの光束上への挿入度合いを用いて光センサ2Sの出力に基づく光量検出値を補正することで、光学フィルタ5の移動途中においても、光源2Aの出射光の光量値(以下、光源光量値という)の現在の値を正確に算出することが可能である。また、光学フィルタ5の移動に要する時間が既知であるものとすると、光学フィルタ5の位置情報に基づいて光センサ2Sの出力に基づく現在の光量検出値を補正することで、光学フィルタ5の移動完了後における光源光量値を求めることも可能である。
【0051】
(光学フィルタ移動時における光源光量値の算出)
図7はこのような反射面積比(フィルタ移動量)と光センサ2Sの出力に基づく光量検出値との関係を示している。
図7に示す特性から、光学フィルタ5の移動途中においても光源光量値の算出が可能であることが分かる。
【0052】
図5に示す回転式の光学フィルタ5において、光束のX%がフィルタ部5bに照射されているものとする。この場合には、光束のX%に対応するフィルタ反射光の他に、光束の(100-X)%の領域の吸収成分は、回転フィルタ枠5cによって反射してフィルタ反射光となる。このようなフィルタ部5b及び回転フィルタ枠5cによる反射を考慮した所定の補正値(以下、反射補正値という)を、光センサ2Sの出力に基づく光量検出値に乗算することで、光源光量値を求める。更に、本実施形態においては、反射面積比、即ち、光学フィルタ5の移動量の情報を用いて、光学フィルタ5の移動途中において正確な光源光量値の算出を可能にする。
【0053】
図1において、制御回路1は、光学フィルタ位置取得部1cを備える。位置情報取得部としての光学フィルタ位置取得部1cは、公知の各種手法を用いて光学フィルタ5の位置を検出して、位置情報を取得するようになっている。例えば、光学フィルタ位置取得部1cは、回転フィルタ枠5cの回転を検出する各種センサの出力を用いて、光学フィルタ5の位置を検出するものであってもよい。また、光学フィルタ位置取得部1cは、ステッピングモータ5dを駆動する駆動回路7による駆動パルス数(ステップ数)に基づいて、光学フィルタ5の位置を検出するものであってもよい。制御回路1は、光量取得部1bによる得られる光量検出値と光学フィルタ位置取得部1cにより得られる位置情報とに基づいて、光学フィルタ5の移動途中における光源光量値を算出する。
【0054】
光学フィルタ5の移動中における光源光量値は、下記(1)式によって求めることができる。なお、(1)式の位置情報は、反射面積比を示す値である。
光源光量値=光センサ出力に基づく光量検出値 × 光学フィルタ5の位置情報 × 反射補正値 …(1)
制御回路1は、上記(1)式に基づいて、光学フィルタ5の位置の変化毎に、光源光量値をリアルタイムに算出してもよい。また、制御回路1は、事前に光学フィルタ5の位置毎に(1)式の位置情報×反射補正値(以下、この値を光量補正値という)をメモリ6に記憶させておくようにしてもよい。この場合には、制御回路1は、光学フィルタ5の位置に応じた光量補正値をメモリ6から読み出して、光量検出値に読み出した光量補正値を乗算することで、光源光量値を算出することができる。
【0055】
本実施形態においては、各LED2Lの光源光量値は、上記(1)式に基づいて算出されるか、又は、メモリ6に記憶された情報を用いて得られる。制御回路1は、求めた各LED2Lについての調光情報に基づいて、各ドライバ3Dを制御することで、最適なカラーバランスを得る。
【0056】
(統計的処理)
上記説明では、光学フィルタ5の移動途中における光源光量値を用いて光量調整を行ってもよく、また、光学フィルタ5の移動途中における光源光量値から移動完了後の光源光量値を推定して光量調整を行ってもよいものと説明した。更に、移動途中で求めた光源光量値の統計的処理によって、光量調整を行ってもよい。
【0057】
例えば、光学フィルタ5の移動量0%~100%までの間において複数の光量補正値を求めておく。これらの複数の光量補正値を用いて求めた光源光量値を統計的に処理して、光源2A、LED2Lを制御する。例えば、R-LED2LRについて、フィルタ移動量25%、50%及び75%のときの光源光量値がそれぞれa,b,cと求められたものとする。この場合には、光学フィルタ5の移動完了後において、相加平均(a+b+c)/3、相乗平均(a2+b2+c2)1/2又は(a,b,c)の最頻値や中央値等を光源光量値として、R-LED2LRへの電力供給量を求めてもよい。
【0058】
(作用)
次に、このように構成された実施形態の動作について
図8から
図11を参照して説明する。
図8は観察モードの変更の際に光量調整を1回行う場合の例を示すフローチャートであり、
図10は観察モードの変更の際に光量調整を複数回行う場合の例を示すフローチャートである。また、
図9及び
図11は観察モード変更時の光量調整を示すタイムチャートである。なお、以下の動作説明は、複数の光源を有する
図2の例を用いて説明するが、単光源を示す
図1の例でも
図2の例と同様の動作が行われる。上述したように、複数光源の光量調整ではカラーバランス調整も行われる。
【0059】
(高光量から高光量)
いま、光量が比較的高い(以下、高光量という)状態で観察モードを切り替えるものとする。例えば、フィルタ部5aを用いた白色光観察モードからフィルタ部5bを用いたNBI観察モードに観察モードの切り替えを行うものとする。
図8及び
図9は高光量の場合の切り替えを示している。制御回路1は、
図8のS1において回転フィルタ枠5cの駆動を開始する。
図9は、上段に回転フィルタ枠5cの変化を示し、中段に比較例における調光制御を示し、下段に第1の実施形態における調光制御を示している。
図9に示すように、白色光観察モード(WLI)からNBI観察モード(NBI)への移行に際して、フィルタ部5bがダイクロイックフィルタ2MRからの光の光束上に介在する割合が0%の状態から100%の状態に変化する(即ち光学フィルタ5が移動する)。この移動に要する時間は、時間TFRである。
【0060】
図9の中段に示す比較例においては、光学フィルタの移動完了後に、各LEDの光量値を求めて、カラーバランス調整を実施する。光量値の測定及びカラーバランス調整に要する時間がαであるものとすると、比較例においては、観察モードの切り替えには、時間TFR+αを要する。
【0061】
これに対し、本実施形態においては、観察モードの切り替えのために光学フィルタ5の移動を開始した直後から光量値の算出が行われる。即ち、制御回路1の光学フィルタ位置取得部1cは、回転フィルタ枠5cの位置を検出して、位置情報を求める。制御回路1は、例えば、この位置情報を用いてメモリ6から光量補正値を読み出す(S2)。各光センサ2SEは、それぞれ入射した光の光量を検出して検出出力を制御回路1の光量取得部1bに出力している。光量取得部1bは、各光センサ2SEの検出出力に基づいて光量検出値を求める(S3)。制御回路1は、この光量検出値に光量補正値を乗算することで、現在の光学フィルタ5の位置に応じた光源光量値をLED2L毎に求める(S4))。また、制御回路1は、現在の光源光量値から光学フィルタ5の移動完了後における光源光量値を推定してもよい。
【0062】
制御回路1の光源制御部1aは、算出された各LED2Lの現在の光源光量値又は光学フィルタ5の移動完了後における光源光量値に基づいて、それぞれLED2Lの発光量を規定の発光量にするための制御信号を生成する。この制御信号が各ドライバ3Dに供給され、ドライバ3Dは、各LED2Lから所望の光量の光が発生するように各LED2Lを駆動する(S5)。
【0063】
制御回路1は、光学フィルタ5の移動が完了しているか否かを判定する(S6)。光学フィルタ5の移動が完了していない場合(S6のNO判定)には移動を継続し、光学フィルタ5の移動が完了しいてる場合(S6のYES判定)には、回転フィルタ枠5cの回転を停止する(S7)。
【0064】
図9に示すように、本実施形態においては、光源光量値及びカラーバランス調整は、観察モードの切り替え開始直後に開始され、時間TFRよりも短い時間で行われることから、光学フィルタ5の移動が完了すると同時に、適切なカラーバランスでの撮像が可能となる。
【0065】
(微弱光量から微弱光量)
いま、LED2Lの出射光量が光センサ2SEでは明るさを正確に検知することができない所定の光量より低い微弱光量の状態で、観察モードの切り替えが行われるものとする。例えば、内視鏡の先端を被写体に近接させた場合等において、微弱光量の状態となることがある。
図10及び
図11はこの場合の切り替えを示している。
図10において
図8と同一の手順には同一符号を付して説明を省略する。
【0066】
微弱光量の状態では、光センサ2SEは正確な光量を検出することができないので、制御回路1は、光量を一旦上げて高光量にした後(S11)、光量の計測を行うように制御する。いま、フィルタ部5aを用いた白色光観察モードからフィルタ部5bを用いたNBI観察モードに観察モードの切り替えを行うものとする。制御回路1は、観察モードの切り替えに際して、
図11に示すように、微弱光量を高光量に切り替える。この状態で、制御回路1は、
図9のS1において回転フィルタ枠5cの駆動を開始する。
【0067】
図11は、最上段に回転フィルタ枠5cの変化を示し、2段目及び3段目に比較例における調光制御を示し、4段目及び5段目に実施形態における調光制御を示している。
図11に示すように、白色光観察モード(WLI)からNBI観察モード(NBI)へ移行するために、フィルタ部5bがダイクロイックフィルタ2MRからの光の光束上に移動して、反射面積比0%の状態から反射面積比100%の状態に変化するのに要する時間は、時間TFRである。
【0068】
図11の2段目に示す比較例においては、光学フィルタの移動途中で、各LEDの光量値を求めて、カラーバランス調整を実施する。光学フィルタの移動完了後に、高光量を微弱光量に戻す収束制御を行う。高光量を微弱光量に戻す(収束)させるために必要な時間をβとすると、観察モードの切り替えに要する時間は、時間TFR+βである。光学フィルタの移動途中において各LEDの光量値を求めていることから、求められた光量値はフィルタ反射光の影響により不正確であり、この結果、カラーバランスは誤差を有する。
【0069】
図11の2段目に示す比較例においては、光学フィルタの移動完了後においても、カラーバランス調整を実施する。カラーバランス調整後に、高光量を微弱光量に戻す制御を行う。この場合には、カラーバランスの誤差は無いものの、観察モードの切り替えに要する時間は、時間TFR+α+βとなる。
【0070】
これに対し、本実施形態においては、観察モードの切り替えのために光学フィルタ5の移動を開始した直後から光源光量値の算出が行われる(S2~S4))。こうして、現在の光源光量値又は光学フィルタ5の移動完了後における光源光量値が求められる。
図11の4段目の例は、
図8のフローに対応したものであり、カラーバランス調整は1回のみ行われる。カラーバランス調整が終了した後、高光量を微弱光量に戻す制御が行われる(S12)。この結果、
図11の4段目に示すように、カラーバランスの誤差を発生させることなく、観察モードの切り替えに要する時間を時間TFRに短縮することができる。
【0071】
また、
図11の5段目の例は、
図9のフローに対応したものである。この場合には、S6において光学フィルタ5の移動が完了していないと判定(S6のNO判定)されと、S2~S5の処理が繰り返される。即ち、光源光量値の算出及びカラーバランス調整が繰り返されることになり、より正確なカラーバランス調整が実施される。なお、この場合には、観察モードの切り替えに要する時間は、時間TFR+βとなる。
【0072】
このように本実施形態においては、光学フィルタ5の移動中においても、光源2Aの出射光の光量を正確に検出可能にすることにより、光量調整に要する時間を短縮して、観察モード切り替え直後から良好な観察画像(内視鏡画像)を得ることが可能である。
【0073】
なお、上記説明では、観察モードの移行後においては、光学フィルタ5の移動中において求めた光源光量値を用いて光量制御を実施して観察を行うものと説明した。更に、この観察の途中において、微弱光ではない通常の光強度で光源2Aを発光させ、移動量100%に対応する光量補正値を用いて光源光量値を再計測し、以後、この再計測した光源光量値を用いて、光量制御を実施して観察を継続するようにしてもよい。
【0074】
(第2の実施形態)
図12は本発明の第2の実施形態を示す図表である。第2の実施形態は光量補正値の具体的な求め方の一例を示すものである。本実施形態のハードウェア構成は第1の実施形態と同様である。また、本実施形態において、現在の光源光量値の算出式、観察モード切り替え後における光源光量値の推定、光源光量値の統計的処理、光量調整及びカラーバランス調整の手法についても、第1の実施形態と同様である。
【0075】
図12はメモリ6に記憶されている光量補正値を説明するものである。図中、P1は、ダイクロイックフィルタ2MRの出射光の光束上にフィルタ部5bが介在していない場合に各光センサ2SEの測定結果から得られる光量値を示し、P2は、ダイクロイックフィルタ2MRの出射光の光束上にフィルタ部5bが介在している場合に各光センサ2SEの測定結果から得られる光量値を示している。
図12の例は、移動量毎に、P1を1とした場合のP2を示している。
【0076】
図12の移動量(%)は、フィルタ部5bが光束の何%に介在しているかを示す値である。移動量0%の場合には、P1=P2=1であり、光量補正値γは1である。移動量が増えるに従って、フィルタ反射光が増加し、P2は大きくなる。光量補正値γは、移動量が大きくなる程小さい値となる。
【0077】
光量補正値γは、フィルタが介在しないときの光量値P1と介在したときの光量値P2の比で求められ、γ=P1/P2で表される。制御回路1は、フィルタ部5bを介在させない状態で、各光センサ2SEの測定結果から得られる光量値P1を求める。制御回路1は、各光センサ2SEに対する制御を変更することなく光学フィルタ5を移動させ、移動量を変化させながら各光センサ2SEの測定結果から得られる光量値P2を求める。制御回路1は、P1/P2の演算により光量補正値γを算出する。制御回路1は、
図12に示すように、移動量と光量補正値γとを対応付けて、メモリ6に記憶させる。
【0078】
観察モードの切り替え時には、制御回路1は、光学フィルタ5の移動量を求める。制御回路1は、求めた移動量を用いてメモリ6から光量補正値を読み出す。制御回路1は、各光センサ2SEの検出出力に基づいて光量検出値を求め、光量検出値に光量補正値を乗算することで、現在の光学フィルタ5の位置に応じた光源光量値をLED2L毎に求める。また、制御回路1は、現在の光源光量値から光学フィルタ5の移動完了後における光源光量値を推定してもよい。また、制御回路1は、上述した統計的手法によって、光学フィルタ5の移動完了後における光源光量値を求めてもよい。
【0079】
制御回路1は、求めた光源光量値に基づいて、各LED2Lの光量を制御する。これにより、光学フィルタ5の移動完了直後から正確なカラーバランスでの撮像が可能となる。
【0080】
他の構成及び作用は第1の実施形態と同様である。
【0081】
(変形例1)
図13及び
図14は変形例1を示す図表である。
図12においては、光量補正値γは、光量値P1,P2に基づいて算出される。しかし、光量補正値γは、LEDの発光強度に依存することも考えられる。
図13はこの場合を考慮したものであり、光量補正値γは、γ=(P1/P2)×δによって求められる。
図13に示す各LED2Lへの電力供給量と補正値δの値とは対応付けられてメモリ6に記憶される。
【0082】
図13の例では、LED2Lへの電力供給量が2Wより大きく3W以下の場合にはδ=1.9であり、LED2Lへの電力供給量が1W以上、2W以下の場合にはδ=1.2であり、LED2Lへの電力供給量が0Wより大きく1W以下の場合にはδ=1である。即ち、LED2Lへの電力供給量が大きいほど、光源光量値は大きな値として求められる。
【0083】
また、
図14は、光量補正値γが光センサ2SEの検知量に依存することを考慮したものである。この場合にも、光量補正値γは、γ=(P1/P2)×δによって求められる。
図14に示す各光センサ2SEの検知量と補正値δの値とは対応付けられてメモリ6に記憶される。
【0084】
図14の例では、光センサ2SEの検知量が2より大きく3以下の場合にはδ=1.9であり、光センサ2SEの検知量が1以上、2以下の場合にはδ=1.2であり、光センサ2SEの検知量が0より大きく1以下の場合にはδ=1である。即ち、光センサ2SEの検知量が大きいほど、光源光量値は大きな値として求められる。
【0085】
他の構成及び作用は第2実施形態と同様である。
【0086】
(変形例2)
図15は変形例2を示す図表である。
図12から
図14の説明では言及していないが、フィルタ反射光は、フィルタ部5bの特性に応じた特定の波長成分を主に含むことが考えられる。例えば、NBI観察モードにおいて採用されるフィルタ部5bでは、グリーン光とバイオレット光を吸収する特性を有していることがあり、これらの色光のフィルタ反射光が得られることが考えられる。
【0087】
従って、光量補正値γとしては、これらの色光を考慮すればよい。
図15はこの場合の光量補正値を示している。
図15の例では、移動量0%、25%、50%、75%及び100%におけるG-LED2LGについての光量補正値をそれぞれγNG0%、γNG25%、γNG50%、γNG75%及びγNG100%で表している。また、移動量0%、25%、50%、75%及び100%におけるV-LED2LVについての光量補正値をそれぞれγNG0%、γNG25%、γNG50%、γNG75%及びγNG100%で表している。
【0088】
なお、R-LED2LR、B-LED2LB及びA-LED2LAについては、フィルタ反射光の影響を考慮する必要はない。また、白色光観察(WLI)モードにおいて用いるフィルタ部5aは、光を吸収する特性を有していない(フィルタ無し)。また、狭帯域観察(NBI)モードであっても、微弱光については光量測定が不能であり、光量補正値は設定されていない。
図15に示す情報はメモリ6に記憶される。
【0089】
制御回路1は、光センサ2SEの検出出力に基づく光量検出値に対して、移動量に応じた光量補正値γNG0%~γNG100%を乗算することで、G-LED2LGの光源光量値を求める。また、制御回路1は、光センサ2SEVの検出出力に基づく光量検出値に対して、移動量に応じた光量補正値γNV0%~γNV100%を乗算することで、V-LED2LVの光源光量値を求める。R-LED2LR、B-LED2LB及びA-LED2LAについては、光センサ2SER、光センサ2SEB及び光センサ2SEAの検出出力に基づく光量値を光源光量値とする。
【0090】
求めた光源光量値を用いて各LED2Lを制御する手法は、上記第2実施形態と同様である。
他の構成及び作用についても第2実施形態と同様である。
【0091】
(第3の実施形態)
図16は本発明の第3の実施形態を示す構成図である。
図16において
図1と同一の構成要素には同一符号を付して説明を省略する。本実施形態における光源装置10Aは、光学フィルタ5に代えて電気光学フィルタ5Aを採用した点が第1及び第2実施形態の光源装置10と異なる。
【0092】
上記第1及び第2の実施形態においては、光学フィルタ5を物理的に移動させて観察モードを切り替える例を説明したが、本実施形態は光学素子である電気光学フィルタ5Aの特性を変更することで、観察モードを切り替え可能にしたものである。電気光学フィルタ5Aは、駆動回路7Aにより電気的に制御されて、その光学特性が変化する。例えば、このような電気光学フィルタ5Aとして、フランツ・ケルディッシュ効果により、印加電圧に応じて波長の吸収率を増減することが可能なフィルタを採用してもよい。
【0093】
制御回路1Aは、光源装置10Aの全体を制御するものである。制御回路1AはCPUやFPGA等を用いたプロセッサによって構成されていてもよい。制御回路1Aは図示しないメモリに記憶されたプログラムに従って動作して各部を制御するものであってもよいし、ハードウェアの電子回路で機能の一部又は全部を実現するものであってもよい。制御回路1Aは、第1及び第2の実施形態における制御回路1と同様の機能を有する。制御回路1Aは、
図1の光学フィルタ位置取得部1cに代えて、電気光学フィルタ5Aの特性変化における経過時間を取得する時間情報取得部を有する。
【0094】
制御回路1Aは、駆動回路7Aを制御して、電気光学フィルタ5Aの特性を白色光観察に適した特性と、特殊光観察に適した特性とに切り替えることが可能である。電気光学フィルタ5Aにおいても、印加電圧の変更による特性の変化には所定の時間を要する。従って、観察モードを切り替えるための駆動回路7Aからの印加電圧の変更開始タイミングから所定の時間が経過することによって、観察モードの切り替えが完了する。観察モードの切り替え開始から切り替え完了までの間、電気光学フィルタ5Aの特性が次第に変化し、この間フィルタ反射光の光量も変化する。従って、電気光学フィルタ5Aを採用した場合においても、電気光学フィルタ5Aの特性変更途中において、光源光量値を取得することで、観察モード切り替え完了後の短時間に、適切な光量及びカラーバランスの照明光を出射することができる。
【0095】
図17は第3の実施形態においてメモリ6に記憶されている光量補正値を説明する図表である。図中、P1は、電気光学フィルタ5Aが入射光をそのまま出射する白色光観察用の特性の場合に各光センサ2SEの測定結果から得られる光量値を示し、P2は、P1測定時における各LED2Lの制御状態と同じ制御状態において、電気光学フィルタ5Aが特殊光観察に必要な特性に変化するまでの各タイミングにおいて、各光センサ2SEの測定結果から得られる光量値を示している。
図16の例は、変化の開始からの経過時間毎に、P1を1とした場合のP2を示している。
【0096】
図17の経過時刻(秒)は、電気光学フィルタ5Aが白色光観察用の特性から特殊光観察用の特性まで変化する経過時間を示している。T1は経過時間0秒であり、T5は特殊光観察用の特性に完全に移行するまでの時間である。経過時間T1では、P1=P2=1であり、光量補正値γは1である。経過時間が増えるに従って、フィルタ反射光が増加し、P2は大きくなる。光量補正値γは、経過時間が大きくなる程小さい値となる。
【0097】
光量補正値γは、電気光学フィルタ5Aが白色光観察用の特性の場合の光量値P1と特殊光観察用の特性に変化する場合の光量値P2の比で求められ、γ=P1/P2で表される。制御回路1Aは、電気光学フィルタ5Aを白色光観察用の特性に設定した状態で、各光センサ2SEの測定結果から得られる光量値P1を求める。制御回路1Aは、各光センサ2SEに対する制御を変更することなく電気光学フィルタ5Aへの印加電圧を変化させ、印加電圧の変化開始からの経過時間毎に各光センサ2SEの測定結果から得られる光量値P2を求める。制御回路1Aは、P1/P2の演算により光量補正値γを算出する。
【0098】
また、光量補正値γは、電気光学フィルタ5Aに対する印加電圧の範囲に応じて変化することも考えられる。この場合を考慮して、光量補正値γは、印加電圧の範囲毎に求められる。制御回路1Aは、
図17に示すように、印加電圧範囲毎に、経過時間と光量補正値γとを対応付けて、メモリ6に記憶させる。
【0099】
観察モードの切り替え時には、制御回路1Aは、電気光学フィルタ5Aへの印加電圧変更開始からの経過時間を求める。制御回路1Aは、求めた経過時間を用いてメモリ6から光量補正値を読み出す。制御回路1Aは、各光センサ2SEの検出出力に基づいて光量検出値を求め、光量検出値に光量補正値を乗算することで、現在の電気光学フィルタ5Aの特性に応じた光源光量値をLED2L毎に求める。また、制御回路1Aは、現在の光源光量値から電気光学フィルタ5Aの特性変化完了後における光源光量値を推定してもよい。また、制御回路1Aは、上述した統計的手法によって、電気光学フィルタ5Aの特性変化完了後における光源光量値を求めてもよい。
【0100】
制御回路1Aは、求めた光源光量値に基づいて、各LED2Lの光量を制御する。これにより、電気光学フィルタ5Aの特性変化完了直後から正確なカラーバランスでの撮像が可能となる。
【0101】
他の構成及び作用は第1及び第2の実施形態と同様である。
【0102】
本発明は、上記各実施形態にそのまま限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記各実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素の幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。